<<<<本実施の形態の概要>>>>
一般に、企業等の組織運営においては、限られた人員数により、コストの削減や業務の効率化を図って業績を上げていくことが必要である。このような経営課題を解決するための施策として、近年、「全体最適」の考え方が注目されている。この「全体最適」は、チーム、セクション、或いは、セグメントなどの組織の全体が最適である状態を意味している。全体最適を達成することにより、業務の効率向上、コスト削減、及び、労働生産性の向上などといった種々の効果を期待できるようになる。
この「全体最適」と対照的な考え方として「部分最適」がある。この「部分最適」は、一般に、組織の一部または個人が最適な状態であることを意味している。しかし、組織全体としてのパフォーマンスや収益を最大化するためには、「部分最適」の状態にとどまらず、全体最適化を図っていくことが必要である。
そこで、本発明は、各種製品の製造に関して、全体最適化を容易に行い得るようにした。図1は、本実施の形態に係る製造情報管理システム100を模式的に示している。本実施形態の製造情報管理システム100は、製品として鋼管を対象とし、製造工程として、鋼管製造の工程を対象としている。そして、製造情報管理システム100は、鋼管の製造工程において発生した各種の事象を検出し、検出結果に基づく所定の情報処理を行って、鋼管製造に関する情報提供を行うものとなっている。
鋼管の製造にあたっては、例えば、図10に示すような鋼管製造ラインを採用することが可能である。図10に示す鋼管製造ラインは、ライン生産方式を採用した製造システムである。以下では、製造工程の一例として、図10に示す鋼管製造ラインについて説明し、その後に、鋼管製造ラインに適用された製造情報管理システム100について説明する。
<<<<鋼管製造ライン>>>>
図10は、鋼管製造ラインの構成を示す概略図である。図10に示す鋼管製造ラインは、コイルA1、アンコイラーA2、フォーミング装置A8、内面用溶融金属めっき装置A6、溶接装置A9、切削装置A11、外面用溶融金属めっき装置A14、サイジング装置A16、及び、切断装置A17等を含んでいる。
これらのうち、アンコイラーA2は、コイルA1に巻き取られた長尺の鋼板(帯鋼)を連続的に供給する。フォーミング装置A8は、アンコイラーA2から供給された鋼板を連続的に管状に成形する。内面用溶融金属めっき装置A6は、鋼板を連続的に管状成形する直前に鋼板に所望の金属を溶融めっきする。溶接装置A9は、管状に成形されためっき鋼板の長手方向端面接合部を連続的に溶接して管状体を形成する。
切削装置A11は、管状体の外面に成形された溶接ビード部を連続的に切削する。外面用溶融金属めっき装置A14は、複数(例えば4個)の浸漬部を有し、管状体の外面に連続的に溶融金属めっきして溶融金属めっき鋼管を形成する。サイジング装置A16は、溶融亜鉛めっき鋼管を規格の寸法に成形する。切断装置A17は、溶融亜鉛めっき鋼管を所定の長さに切断する。
必要に応じて、ショットブラスト装置A3や、帯状体、管状体に対し高圧の水や薬液で洗浄を行う洗浄装置A4、A12や、帯状体、管状体の外面を乾燥させるとともに帯状体、管状体を予備加熱する加熱装置A5、A13を設け、還元雰囲気中で密閉をしても良い。めっき金属の性質により必要に応じて、溶融めっき後の鋼板を冷やすための第一冷却槽A7や、溶融めっき後の管状体を冷やすための第二冷却槽A15を設ける。当該冷却槽は、金属めっきが亜鉛めっきである場合には必須的に設けられる。
尚、本例においては、めっき対象となる鋼板の前処理として、鋼板の表面を洗浄し、還元雰囲気中で乾燥・予備加熱するセンジマー方式を採用しているが、これ以外の公知の方式によって前処理を行ってもよい。例えば、フラックス方式(酸化防止用のフラックス液を塗布し乾燥・予備加熱する方式)、U.S.スチール方式(アルカリ電解クリーニング装置によって鋼板表面に付着した圧延油を除去した後、更に酸洗を行う方式)等、公知の方式を適用してもよい。また、適当なタイミングで、鋼板の酸洗いや水洗いを行ってもよい。
次に、上記の鋼管製造ラインを用いた鋼管の製造方法について説明する。まず、コイル状に巻回された鋼板がアンコイラーA2からライン下流に向かって連続的に供給される。続いて、ショットブラスト装置A3、および洗浄装置(帯状体洗浄装置)A4により、所定の前処理が行われた後、加熱装置(帯状体加熱装置)A5に送られ加熱され、その外面は乾燥される。供給された鋼板は、その片面について内面用溶融金属めっき装置A6により内面めっき処理を施される。続いて、第一冷却槽A7により片面めっきされた鋼板を冷却した後、鋼板はフォーミング装置A8に引き込まれるとともに管状に冷間成形されて、溶接装置A9により、鋼板の長手方向端面接合部が連続的に溶接されて、連続する一本の管状体A10が形成される。
次に、管状体A10は、管状体A10の外面に沿う形状の刃物を取付けてなる切削装置A11に送られる。そして、管状体A10の外面に形成された溶接ビード部が切削装置A11の刃物によって削り落とされ、管状体A10の外面が滑らかに形成される。
その後、前記鋼板と同様の所定の洗浄を管状体洗浄装置A12にて行い、管状体A10は管状体加熱装置A13に送られ加熱され、その外面は乾燥される。
その後、管状体A10は外面用溶融金属めっき装置A14に送られる。管状体A10は外面用溶融金属めっき装置A14において、ポンプアップされた溶融金属が満たされた浸漬部内にてドブ漬けされて、外面全体に溶融金属めっきされる。浸漬部内にてドブ漬けされた管状体A10は健全な合金層を有する溶融金属めっき層が形成され、ワイピング装置(図示略)において余分の溶融金属めっきが除去された後、溶融金属めっき鋼管となる。その後、管状体A10は、第二冷却槽A15により冷却される。
そして、溶融金属めっき鋼管は、外径を規格寸法とするため、サイジング装置A16において冷間ロール加工される。本実施態様において、冷間ロール加工は溶融金属めっき層を周方向に比較的均一な厚さとするためにも必要な工程である。つまり、外面用溶融金属めっき装置によって形成された直後の溶融金属めっき層は周方向に不均一な厚さを有している場合でも、その後の冷間ロール加工等の工程を経ることにより溶融金属めっき層を比較的均一な厚さにならすことができる。このように、本最良形態においては、外面用溶融金属めっき装置による溶融金属めっき層の形成後に、例えば、冷間ロール加工等のサイジング加工等を行い、溶融金属めっき処理により形成された溶融金属めっき層を比較的均一な厚さにする工程(溶融金属層を形成した直後よりも厚さの分布を均一にする工程)が採用されることが望ましい。
溶融金属めっき鋼管は、切断装置A17により、所定の長さに切断され、鋼管製品A18となる。鋼管製品A18は、所定本数ずつ結束されて梱包され、搬出を待つための領域に順次配置される。
<<<<製造情報管理システム100>>>>
次に、上述したような鋼管製造ライン(図10)に適用可能な製造情報管理システム100について説明する。図1は、本実施形態に係る製造情報管理システム100を示している。製造情報管理システム100は、情報入力装置110、バックエンド装置(バックエンド部)120、製造情報管理装置(製造管理情報作成部)130、及び、情報提示装置140を備えている。
これらの情報入力装置110、バックエンド装置120、製造情報管理装置130、及び、情報提示装置140で行われる情報処理の詳細については後述するが、本実施形態では、情報入力装置110、バックエンド装置120、製造情報管理装置130、情報提示装置140の順で、情報の送信が行われる。そして、情報入力装置110から出力された情報(後述する「製造工程情報」)は、バックエンド装置120で収集される。
しかし、これに限定されるものではなく、例えば、情報入力装置110から出力された情報を製造情報管理装置130で収集し、製造情報管理装置130で処理された情報をバックエンド装置120へ送信してもよい。この場合は、その後、バックエンド装置120で処理された情報を製造情報管理装置130に送信し、製造情報管理装置130での処理により作成された情報(後述する「製造管理情報」)を、情報提示装置140に送信することが可能である。
或いは、これに限定されるものではなく、例えば、情報入力装置110から出力された情報をバックエンド装置120と製造情報管理装置130との両方で受信してもよい。この場合は、バックエンド装置120と製造情報管理装置130とが、それぞれの目的に応じた処理を行って、情報入力装置110から出力された情報を利用することが可能である。
<<<情報入力装置110>>>
上述の情報入力装置110は、製品の製造に関する情報を収集するための装置である。以下では、情報入力装置110を介して製造情報管理システム100に入力(インプット)される情報(製品の製造に関する情報)を「製造工程情報」と称する。
製造工程情報は、製品の製造に関して発生する各種の事象の少なくとも一部を表した情報であり、製造工程情報としては、種々のものを採用することが可能である。例えば、製品の製造のための資材に関する情報や、製品に関する情報などを例示できる。また、資材に関する情報や、製品に関する情報としては、付加価値やコスト(原価や経費などを含む)の監視結果(算出結果)の情報などを例示できる。
製造工程情報としては、資材(製品であってもよい)のロットに係る情報や、そのロットの品質に係る情報なども例示できる。資材(製品であってもよい)のロットに係る情報としては、ロットの追跡を可能にするロットトラッキング(ロットトレースなどともいう)情報であるロット記号の情報などを例示できる。このようなロットトラッキング情報は、製品識別情報として機能する。また、製品識別情報は、個々の製品(ここでは鋼管)を識別可能な情報であってもよく、このような製品識別情報を製造工程情報として利用することも可能である。
製造工程情報としては、資材や製品についての品質管理の情報も例示できる。また、製造工程情報としては、資材や製品についての状態管理の情報も例示できる。品質管理の情報を状態管理の情報に含まれるものとしてもよく、或いは、状態管理の情報を品質管理の情報に含まれるものとしてもよい。
さらに、製造工程情報としては、鋼管製造ライン(図10)を構成する各種の機械や設備についての監視や管理に係る情報も例示できる。また、製造工程情報としては、製品の製造や、鋼管製造ラインの操業についての監視や管理に係る情報も例示できる。
これらの情報の入力に用いられる情報入力装置110には、一般的な各種の情報入力機器が含まれる。情報入力装置110としては、例えば、資材管理部門や製造管理部門のコンピュータ機器に接続されたキーボードやマウス、タブレット端末のタッチパネル、製造システムの各工程に配置された監視カメラなどを利用できる。
また、前述したような鋼管製造ライン(図10)には、作業者(製造工程関係者であるオペレータ)が適宜割り当てられて、配置されている。作業者は、頭部にヘッドセットを装着しており、ヘッドセットを利用して他者とコミュニケーションがとれるようになっている。情報入力装置110には、作業者が装着したヘッドセットなども含まれる。ヘッドセットとしては、作業者の音声を検出できるマイクを備えたものが採用されている。ヘッドセットのマイクは、情報入力装置110に含まれる機器である。
情報入力装置110の具体的な使用例として、ヘッドセットが用いられる状況について説明する。各作業者は、割り当てられた工程において、到達した製品を計測したり、製品をクレーン(天井クレーンなど)で移動させたり、流れる製品に触れたり、或いは、製品を目視したりする場合がある。製品の計測項目としては、板厚、鋼管の内径や外径、鋼管の長さ、表面処理の厚さ(めっき厚など)を挙げることができる。
製品の計測は、鋼管製造ライン上に製品を流したまま自動的に行われる場合や、鋼管製造ラインを流れる製品の一部を取り出して抜き打ちで行われる場合などがある。また、工場の一角に置かれた試験機を用いて、抜き打ちによる機械的強度試験が行われる場合などもある。
作業者は、担当する工程の設備機器を制御するための制御盤(「計器盤」や「ダッシュボード」などともいう)を操作する場合もある。制御盤を操作することにより変更を加えることができる変更可能項目(パラメータ)としては、例えば、鋼管製造ライン(図10)の搬送速度(単に「速度」と称する場合もある)、溶接出力、加熱温度、亜鉛温度、送り込む気体の圧力や量などを例示できる。
作業者の割り当ては、1工程につき単数である場合や、複数である場合がある。なお、1人の作業者が複数の工程を担当していてもよい。
前述したように作業者は、マイクを備えたヘッドセット(図11の符号150)を装着している。ヘッドセット150は、集音機器であるマイクを介して全作業者の音声を収集し、通信網(図11の符号CN、後述する)を介して、音声データ(音声情報)を、サーバ装置(例えば、バックエンド装置120)に送信する。ヘッドセット150には、イヤホン或いはヘッドホンといった発音機器も備えられている。ヘッドセット150には、骨伝導を利用したタイプのイヤホンやヘッドホンを備えたものも採用が可能である。
マイクにより集音された(拾われた)音声は、通信網(図11の符号CN、後述する)を介して、他のヘッドセット150に備えられたイヤホンやヘッドホンにも送信されるようになっている。そして、作業者は、他の作業者が発した音声を聞くことができる。
ここで、作業者が、会話したい相手の名前を呼び、呼ばれた相手と会話をするようなルール決めを予め行っておくことも可能である。また、会話相手を選択できる選択ボタン有するコントローラを各作業者に配布し、選択した相手と通話できるようにすることも可能である。この場合は、同時に複数組の作業者が会話を行うことが可能である。
作業者は、製造過程にある製品や、製造完了後の製品を、鋼管製造ラインの設備機器が有している検査機能や、鋼管製造ラインの周囲や工場の片隅などに配置された検査機器を用いて、或いは、目視や、製品を抜き打ちで手に取る行動などを経て、評価する。
この際、製品に通常と異なる事情が発見された場合には、製品の状態に関する係る情報を、声により発する場合がある。作業者による発声の内容は、マイクにより拾われ、音声データとして収集される。このような作業者の音声データの収集により、作業者同士の会話や、作業者のコメントなどの内容を、サーバ装置(例えば、バックエンド装置120)において集約することが可能となる。
また、製品に通常と異なる事情が発見されない場合であっても、作業者が、通常と異ならないことを呟く場合などもある。このような場合も、作業者の音声データをサーバ装置(例えば、バックエンド装置120)に送信し、記憶しておくことが可能である。
<<<バックエンド装置120>>>
続いて、前述のバックエンド装置120としては、サーバ装置を利用することが可能である。サーバ装置としては、図13に概略的に示すように、制御部160、記憶部162、及び、通信I/F(通信インタフェース)部164などを備えたコンピュータ機器を利用できる。バックエンド装置120は、1台のサーバ装置、或いは、機能を分散した複数台のサーバ装置により構成されるものであってもよい。また、バックエンド装置120で実行される各種の処理は、一又は複数のプロセッサによって分散して実行されてもよい。
バックエンド装置120の記憶部162としては、各種の情報を記憶するROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、又は、SSD(Solid State Drive)などを含む不揮発性の記憶装置を利用できる。記憶部162には、プロセッサ(ここでは制御部160に備えられたもの)における処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、及び、データ等が記憶されている。さらに、記憶部162は、サーバ装置に内蔵されたものであってもよく、或いは、外付けされたものであってもよい。
バックエンド装置120は、データバックエンド部122と、分析バックエンド部124を備えている。データバックエンド部122と分析バックエンド部124は、1つのコンピュータ機器により構成されていてもよく、或いは、別々なコンピュータ機器により構成されたものであってもよい。また、データバックエンド部122と分析バックエンド部124のうちの少なくとも一方が、分散して配置されたコンピュータ機器により構成されていてもよい。
データバックエンド部122には、情報入力装置110を介して入力された各種の製造工程情報が集約される。データバックエンド部122では、各種の製造工程情報が、属性付けされ、付与された属性毎に分類され、データベース化される。情報入力装置110からは、時間の経過に伴い時々刻々と、発生した製造工程情報が入力される。このため、データバックエンド部122に記憶される製造工程情報は、新たに発生するのに合わせて増えることとなる。
例えば、鋼管製造ラインの様子を連続して動画撮影しているような状況や、作業者のマイク入力を連続して録音しているような状況では、動画のデータ量(記憶されたデータ量)が順次増えることとなる。また、一定期間毎(例えば3分や6分など)毎に撮影(例えば静止画撮影)を行う状況や、作業者が所定量以上の音量の音声を発した場合のみマイクがオンする状況などでは、製造工程情報が発生する毎に、製造工程情報のデータ量(記憶されたデータ量)が増えることとなる。
データバックエンド部122に集約された製造工程情報は、分析バックエンド部124において、AI(人工知能)による学習(AI学習)に用いられる。分析バックエンド部124では、データバックエンド部122で集約されている製造工程情報について、相互関係が分析される。分析バックエンド部124での分析内容としては種々のものが考えられる。
分析内容としては、例えば、アンコイラーA2(図10)にセットされた資材(鋼板)のロットトラッキング情報と、不具合等の有無の情報との関係などを例示できる。また、鋼板に係る搬送速度や寸法(幅、長さ、厚み)の情報と、不具合の有無との関係なども例示できる。さらに、管の寸法(外径、内径、厚み)の情報と不具合の有無との関係や、各種のめっきの厚さと不具合の有無との関係なども例示できる。
また、不具合としては、実測値と目的値と差が許容範囲を超えていることを例示できる。さらに、不具合として、製造ライン上を流れる製品に通常時(正常時)と異なる状態が、作業者により視認されたことも例示できる。また、画像処理により、撮影された画像から、通常時(正常時)と異なる状態が検出されたことなども例示できる。
不具合が発生した場合、例えば、作業者によって不具合の解消が行われる。この場合、作業者が行った作業の内容が、情報入力装置110を介して入力される。入力される情報としては、不具合の内容や、採られた対処策、及び、採られた対処策によって不具合が解消したか否か、解消しなかった場合にはどのような不具合が残り、残った不具合についてどのような対処策がとられたか、などといった情報を例示できる。入力される情報は、予め用意されたチェックシートのデータや、不具合や対処策などの内容を説明するテキストデータなどを例示できる。
なお、分析バックエンド部124での分析内容は、不具合に関する情報に限らず、例えば、通常の操業と変わらない(正常な操業)という内容の情報と、他の情報との関係などであってもよい。
前述したように、情報入力装置110により入力される情報には、作業者の音声データも含まれている。この音声データは音のまま記憶される一方で、音声テキスト変換用のアプリケーションソフト(テキスト・トゥ・スピーチ(T2S)エンジン)を用いて、テキストに変換され、記憶される。このようなデータ変換の処理は、データバックエンド部122において行っても良く、或いは、分析バックエンド部124のいずれで行ってもよい。
製造工程情報の収集は、製造工程情報に含まれる各種の情報(前述の製品識別情報なども含む)のほか、鋼管製造ラインにおける工程を識別可能とする情報(工程識別情報)や、タイムスタンプ(時刻情報)などを伴って行われる。工程識別情報は、各種の情報入力装置110を識別できる情報(入力装置識別情報)としたり、入力作業を行った作業者の識別情報(作業者識別情報)としたりすることが可能である。
このような工程識別情報を製造工程情報と対応付けて記憶装置に記憶し、データベース化しておくことにより、記憶された製造工程情報が、どの工程での製造工程情報であるのかを判定することが可能となる。また、上述のタイムスタンプは、製造工程情報と対応付けて記憶されることにより、製造工程情報が発生した時刻を示す情報となる。したがって、タイムスタンプと、工程識別情報と、製造工程情報との組み合わせは、記憶された製造工程情報が、どの工程でいつ発生したものであるのかを識別できる情報となる。そして、製造工程情報にロットトラッキング情報(ロット記号の情報など)を含め、製品1本単位へのタイムスタンプの付与を行うことにより、各種の製造工程情報や工程識別情報など、製品との連携が可能となる。
製造工程情報については、対応する工程や発生時刻を、少なくとも1部の属性とした情報であるといえる。ここで、本実施形態におけるタイムスタンプは、年月日の情報、及び、時分秒の情報を含んでいる。このため、製造工程情報とタイムスタンプとの対応を、コンピュータ機器等による情報処理において確認したり、或いは、人的に確認したりすることにより、当該製造工程情報について、何年の何月何日における何時何分何秒に発生したものであるのかを、即時にも、或いは、その後(事後)にも、判定することが可能である。
音声データ(テキスト変換されたデータも含む)を例に挙げれば、音声データの記憶は、鋼管製造ラインにおける工程を識別可能とする情報(工程識別情報)と、タイムスタンプ(時刻情報)とを伴って行われる。工程識別情報は、例えば、個々のヘッドセット150を識別できる情報(ヘッドセット識別情報)としたり、ヘッドセット150を配布した作業者の識別情報(作業者識別情報)としたりすることが可能である。
このようにタイムスタンプや工程識別情報と対応付けられた音声データを確認することにより、記憶された音声が、誰により、どの工程で、何年の何月何日における何時何分何秒に発せられたものであるのかを、即時にも、或いは、その後(事後)にも、判定することができる。
作業者が装着するヘッドセット150には、カメラを設けることも可能である。ヘッドセット150にカメラを設けることにより、作業者が担当する工程の様子や、工程に係る製品の様子の動画(静止画であってもよい)を撮影することが可能となる。カメラにより取得される画像データについても、バックエンド装置120に送信し、工程識別情報や、タイムスタンプを対応付けて記憶する。このようにすることで、記憶された画像データが、どの工程で誰により、何年の何月何日における何時何分何秒に録画されたものであるのかを、即時にも、或いは、その後(事後)にも、判定することができる。
なお、ここでは、各種の情報入力装置110からの製造工程情報の集約や、製造工程情報と他の情報(タイムスタンプ等)との対応付けを、バックエンド装置120で行う例について説明している。しかし、これに限らず、例えば、後述する製造情報管理装置130において、各種の製造工程情報の集約や、製造工程情報と他の情報(タイムスタンプ等)との関連付けを行ってもよい。
また、各種の製造工程情報の入力を、バックエンド装置120と製造情報管理装置130の双方に対して行ってもよい。この場合は、バックエンド装置120では、各種の製造工程情報を利用したAI学習(後述する)や、学習した結果に基づく情報(教師データなどの学習結果情報)の、製造情報管理装置130への出力を行うことが可能である。
これに対して、製造情報管理装置130では、製造工程情報と他の情報(タイムスタンプ等)との関連付けを行うことが可能である。さらに、製造情報管理装置130では、バックエンド装置120でのAI学習の結果や、AIによる判定の結果の情報を利用した演算処理を行うことが可能である。
バックエンド装置120に入力される製造工程情報は、後にAIで処理されるサンプル(AIサンプル)となる。バックエンド装置120の分析バックエンド部124においては、各種の製造工程情報を用いてAIの学習(AI学習)が継続的に行われる。AI学習のため、例えば、不具合の内容、発生時刻(日時を含む)、当該不具合に対して採られた対処策、及び、採られた対処策によって不具合が解消したか否か、解消しなかった場合にはどのような不具合が残り、残った不具合についてどのような対処策がとられたか、などといった情報が継続的に蓄積され、分析される。
そして、例えば、或る工程において不具合が起きた場合の他の工程の状況がどのようなものであったか、どの工程に対してどのような対処策がとられたことにより当該不具合が解消したか、といった情報が順次蓄積される。このようなAI学習は、通信網(図11の符号CN、後述する)を介して接続された複数台のコンピュータ機器により行われてもよい。
AI学習の方法としては、分析対象の製造工程情報や、目的とする方法に応じて、種々のものを採用することが可能である。AI学習の方法として、例えば、統計的な機械学習(マシンラーニング)の他、深層学習(ディープラーニング)を採用することも可能である。機械学習に関しては、統計学に基づく教師あり学習や教師なし学習の他、報酬(評価)が与えられる強化学習なども採用が可能である。
教師あり学習においては、教師データが結果や正解として与えられ、回帰モデルや分類モデルが構築される。代表的な教師あり学習の分析手法としては、回帰分析や決定木などが挙げられる。回帰分析では、被説明変数と説明変数の関係を定量的に分析し、分析結果に基づく予測が行われる。決定木では、分類のための基準(境界線)を学習し、未知の状況でデータが分類される。
教師なし学習においては、データのグループ分けや情報の要約などが行われる。代表的な教師なし学習の分析手法としては、k平均法やアソシエーション分析、ソーシャルネットワーク分析、主成分分析などが挙げられる。これらのうち、k平均法では、特徴・傾向が似ている標本がいくつかのグループに分類される。アソシエーション分析では、同時に発生する頻度等が算出され、不具合解消のための対処策の履歴等から、推奨すべき対処策が導出される。ソーシャルネットワーク分析では、例えば、作業者のテキスト化された音声データに基づき、不具合が発生した場合の作業者間のつながりの分析などが行われる。主成分分析では、収集された多くの情報に対して、低次元空間への要約(縮約)が行われる。
前述の強化学習では、試行錯誤を通じて、報酬(評価)が得られる行動や選択が学習される。
前述のディープラーニング(深層学習)では、ニューラルネットワークを基本とする。ニューラルネットワークにおける3層(入力層、中間層、出力層)のうち、重み付けと変換を行う中間層を1層としてもよい。また、中間層を2層以上として、より深層化してもよい。ニューラルネットワークやディープラーニングにより、画像認識、音声認識、音声合成、テキスト処理、翻訳などが効率よく行えるようになる。
<<<製造情報管理装置130>>>
続いて、製造情報管理装置130について説明する。製造情報管理装置130としては、バックエンド装置120と同様に、サーバ装置を利用することが可能である。サーバ装置としては、図14に概略的に示すように、制御部170、記憶部172、及び、通信I/F(通信インタフェース)部174などを備えたコンピュータ機器を利用できる。製造情報管理装置130は、1台のサーバ装置、或いは、機能を分散した複数台のサーバ装置により構成されるものであってもよい。また、製造情報管理装置130で実行される各種の処理は、一又は複数のプロセッサによって分散して実行されてもよい。
製造情報管理装置130の記憶部172としては、各種の情報を記憶するROMやRAMなどの半導体メモリ、HDD、又は、SSDなどを含む不揮発性の記憶装置を利用できる。記憶部172には、プロセッサ(ここでは制御部170に備えられたもの)における処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、及び、データ等が記憶されている。製造情報管理装置130の記憶部172に記憶された製造情報管理のためのプログラムは、製造情報管理プログラムと称することが可能なものである。さらに、記憶部172は、サーバ装置に内蔵されたものであってもよく、或いは、外付けされたものであってもよい。
なお、前述したように、情報入力装置110から出力された情報(製造工程情報)の収集を製造情報管理装置130で行う場合には、タイムスタンプ(及び工程識別情報)との対応付けを、製造情報管理装置130で行う。このようにすることで、製造工程情報とタイムスタンプ等とを対応付けた情報の一元管理が容易になる。
製造情報管理装置130は、ナビゲーション、コミュニケーション、及び、レポートの機能を有しており、これらの機能を発揮することで、製品関係者(後述する)に対して選択的に、製造管理情報を提供できる。製造管理情報は、製品の製造や供給に関係するヒト(人)、モノ(物)、カネ(金)の情報を、タイムスタンプによる時刻情報を介して統合して作成されたリアルタイムな情報である。
ここでいう「統合」は、例えば、「1つの情報を新たに生成する」といった場合のほか、「2つ以上のものを合併して(組合せて、関連付けて)1つにまとめる」といった場合も含む意味である。製造情報管理装置130における、ナビゲーション、コミュニケーション、及び、レポートの各機能や、製造管理情報の詳細については後述する。
また、本実施形態における「リアルタイム」は、例えば、或る情報が発生した状態、情報が発生して間もない状態、及び、時刻情報により複数の情報が同期した状態などを意味している。特に、ヒト(人)の情報である製造工程関係者情報、モノ(物)の情報である製造設備情報、及び、カネ(金)の情報である製品情報を、タイムスタンプによる時刻情報に基づきをリアルタイムに統合すると言った場合には、時刻情報に基づきこれらの情報が同期した状態を意味している。
なお、前述したバックエンド装置120と製造情報管理装置130とを別のグループのサーバ装置とせず、同じグループのサーバ装置(VPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)で接続されたものなど)、或いは、同じサーバ装置とすることも可能である。
<<<情報提示装置140>>>
続いて、情報提示装置140について説明する。情報提示装置140は、製造情報管理装置130で作成された製造管理情報の出力(アウトプット)を行う。情報提示装置140としては、鋼管製造ラインに配置された作業者が保有する携帯端末(スマートフォンやタブレット端末などを含む)や、工場の管理者が保有する携帯端末(スマートフォンやタブレット端末などを含む)などを例示できる。
また、情報提示装置(出力部)140としては、工場内に設置されたコンピュータ機器のモニタ装置、鋼管製造ライン(図10)を所有する企業の役員や代表取締役等に供給されたコンピュータ機器のモニタ装置、鋼管製造ライン(図10)を所有する企業の外部の関係者(協力企業、コンサルタントなどを含む)が保有する携帯端末やモニタ装置なども例示できる。
このように、情報提示装置140は、鋼管製造ラインの近辺で使用される各種の携帯端末や、鋼管製造ラインから離れた位置で使用されるモニタ装置、及び、工場から離れた遠隔地で使用されるモニタ装置なども含んでいる。そして、情報提示装置140には、鋼管製造ライン(図10)で撮影された画像(静止画や動画)を表示できるものも含まれる。ここで、製造情報管理システム100においては、鋼管製造ラインにおける作業者以外の者も、鋼管製造に関わる関係者である。このため、作業者を含めたこれらの関係者を総称して「製品関係者」などと称することが可能である。
情報入力装置110、製造情報管理装置130、及び、情報提示装置140は、直接、或いは、図11に示すような通信網CNを介して通信することが可能である。通信網CNとしては、例えば、インターネット、LAN、WAN、公衆電話回線、基地局、移動体通信網、及び、ゲートウェイなどを介して相互に接続されたもの(所謂クラウドを含む)を例示できる。また、情報入力装置110、製造情報管理装置130、及び、情報提示装置140は、通信I/F部を有しており(製造情報管理装置130のみ図14に示す)、通信I/F部を介し、所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行する。
<<<製造情報管理装置130による処理>>>
次に、前述した製造情報管理装置130により実行される各種の処理について説明する。図10に示すような鋼管製造ラインにおいては、常に計画通りに製品が製造されるとは限らず、種々の不具合やトラブルなどの事象が生じる場合がある。不具合やトラブルとしては、様々なことが起り得るが、一例を挙げれば、鋼板の寸法(幅、長さ、厚み)や鋼管の寸法(外径、内径、厚み)が許容範囲内に収まっていないことや、検出しためっきの膜厚が目的値の範囲内に収まっていないこと、及び、撮影された画像が正常な画像(基準となる正常時の画像)と異なること、などを例示できる。
これらの不具合は、各種の測定装置により検出されることや、作業者の目視により発見されることなどがある。また、測定装置として、例えば画像処理を行うものが用いられている場合には、画像処理(正常画像との比較など)によって傷、変形、異物混入などといった不具合が発見されることもある。
不具合が発生した場合、従来の生産管理システムや生産管理方法においては、不具合を発見した作業者が、不具合の原因となっている工程を特定したり、推測したりして、不具合の解消にあたることが多い。また、作業者が上長(組織により呼び名は異なるが「ライン長」や「リードマン」などの上長が存在する)にその後の行為に係る指示を仰いだり、上長が自ら、鋼管製造ライン(図10)を歩いて見て回り、他の工程の状況を把握したりすることも行われる場合がある。
不具合の発生が、製品の歩留まりの低下によって表れる場合などもあるが、この場合には、歩留まりの低下が明らかになった後に、事後的に、歩留まり低下の原因を究明し、原因となる工程の改善を図ったりすることが行われている。
しかし、このような従来通りの対応では、製造工程を全体として把握することは困難であり、製造工程の全体の管理に責任を持つ関係者(工場管理者、工場長など)や、製造を行う企業の経営者などにとっては、的確な運営や経営の判断を行うことが難しい場合があった。また、工程の作業者も、不具合が見つかる毎に自ら行動して対応したり、他の者に報告したりする必要があり、生産の効率化が難しかった。
さらに、不具合についての記録を残し、不具合の原因がどの工程で発生したのかを特定し、該当する工程について改善を図ることも行われている。しかし、このような従来の方法によったのでは、鋼管の製造管理の全体最適化は困難である。
そこで、本実施形態の製造情報管理システム100においては、製造情報管理装置130に、ナビゲーション、コミュニケーション、及び、レポートの機能を持たせている。そして、ナビゲーション、コミュニケーション、及び、レポートの機能により、製品関係者が、製品製造(ここでは造管)に係る作業者の情報(ヒトの情報である製造工程関係者情報)、設備の情報(モノの情報である製造設備情報)、製品の情報(カネの情報である製品情報)を、可能な限りリアルタイムに同期させて共有できるようにしている。
製造情報管理装置130で取り扱われる情報は、図1に示すように、バックエンド装置120を介して供給された製造工程情報である。バックエンド装置120からは、AI学習された情報(AI学習情報)や、AIにより判断された情報(AI判断情報)なども継続して供給される。
前述のように、製造情報管理装置130に、情報入力装置110から製造工程情報が直接入力されるようにした場合には、バックエンド装置120は、AI学習情報やAI判断情報を入力すればよく、バックエンド装置120が製造工程情報を製造情報管理装置130に入力することは不要である。
製造情報管理装置130によるナビゲーション、コミュニケーション、及び、レポートの機能の発揮により、図1に示すように、担当者への各種のアラート(警告)が行われる。担当者は、作業者を含めたこれらの製品関係者のうち、アラートの対象となる者を意味している。各種のアラートは、製品関係者が保有する情報提示装置140により、製品関係者に提示される。
各種のアラートについては、提示すべき内容や属性(不具合の内容や属性など)、及び、提供先などの事情に応じた態様で行われる。本実施形態では、相対的に軽度に位置付けられるアラートを「進捗アラート」とし、中間に位置付けられるアラートを「警告アラート」としている。さらに、重度のアラートを「警報アラート」としている。
また、例えば、作業者への情報提示は音声で行い、その他の製品関係者への情報提示はタブレット端末やPC(パーソナルコンピュータ)等のコンピュータ機器に対して行うといったことも可能である。一般に、作業者は、即座に不具合等の状況に対応しなければならず、画像や文字を入念に確認している余裕がないこともある。このため、音声での情報提示は、対処作業を行いながらの情報確認が可能となるため、有効である。
これに対して、その他の製品関係者は、画像や文字を念入りに確認し、その後に同様の不具合等が発生しないように対策を検討する必要がある。このため、作業者を除いた製品関係者への情報提示は、画像や文字により行うのが有効である。
このように製造情報管理装置130は、製品関係者が保有する情報提示装置140により、操業状況に係る情報の共有を図る。操業状況に係る情報の共有は、工場内、事務所内、及び、工場と事務所との間で行えるようになっている。そして、製品関係者への情報提示は、製品関係者の役割、立場、或いは、責務など属性に合わせた情報提示ができるよう、異なる種類の情報提示装置140を用い、異なるタイミングで行えるようになっている。
<<ナビゲーション機能>>
製造情報管理装置130により発揮されるナビゲーション機能においては、ナビゲーションのための演算処理により、図6に示すように、セットアップチェッカー、ステータスアンドシークエンスモニター、及び、バーチャル・アンドン等の機能が発揮される。
<セットアップチェッカー機能>
これらのうち、セットアップチェッカーの機能においては、情報提示装置140を利用して、次に製造する製品に関する情報の提示が行われる。提示される情報としては、次に製造する製品の品質や操業パフォーマンスへの要件や計画などの情報を例示できる。従来、これらの情報は紙の仕様書(指示書)に印刷され、当該仕様書が関係者に配布されていた。このため、従来は、これらの情報に変更が生じた場合に、即座に対応することができなかった。
また、仕様書に記載された情報は、多岐の項目に亘っており、その数は、例えば50個前後となる場合などもある。さらに、仕様書に記載された情報は、全てがコンピュータ機器やプリンタ装置を利用して印刷により行われたものであるとは限らず、指示を出す製品関係者が手書きにより追加した情報である場合もある。そして、このように仕様書に記載された多数の情報や、読み難い情報を、対象となっている作業者が確実に認識し得るとは限らず、作業者が情報を見落としたまま作業を行うこともあり得ないわけではない。
このような事情に対して、本実施形態のように、製造情報管理装置130において、次に製造される製品の計画の品質や操業パフォーマンスに関する情報を処理し、携帯端末等の情報提示装置140を介して製品関係者に提示することで、指示書に記載されていたような情報を、対象となる作業者に選択的に提示することが可能となる。そして、作業者は、必要な情報を認識し易くなり、計画の変更等に即座に対応することが可能となる。これらの情報の提示は、製品関係者が、情報提示装置140に入力を行うことで表示されるものとすることが可能である。
また、製品関係者に必要な情報を選択して、該当する製品関係者の情報提示装置140に、必要な情報のみ(複数である場合が多い)を個々のアイコンとして表示することなども可能である。このようにした場合、例えば、情報の確認を終えた作業者が、確認が終わった作業のアイコンにタッチし、情報提示装置140は、タッチされたアイコンの彩色を所定の色に変化させる、といったことも可能である。そして、製造情報管理装置130が、同一画面中に表示されている全てのアイコンが同じ色に変化した場合に、当該作業者が漏れなく情報を確認した旨の判定を行う、といったことが可能である。
さらに、アイコンの表示から所定時間が経過してもアイコンの色が変化しない場合には、アラートの画像や音声を出力する、といったことも可能である。これらのようにすることで、作業者が、次に製造する製品に関する情報を見逃したまま作業が進行するのを防止できる。そして、作業者に対する指示の提示から作業者の対応までの処理をインタラクティブ(双方向)に行うことが可能となり、必要な作業に係る指示の徹底や、作業の漏れの監視などが、容易に行えるようになる。
<ステータスアンドシークエンスモニター機能>
ステータスアンドシークエンスモニターの機能においては、進行中の製造における操業状況及び経緯の、リアルタイムな監視が可能となっている。図2~図5は、ステータスアンドシークエンスモニターの機能が発揮された場合の、情報提示装置140における表示例を示している。
図2~図5では、タブレット端末152に製造管理情報の出力が行われた状態を示している。図2の例(時系列×レイアウト順)では、表頭(列の見出し)には、鋼管製造ライン(図10)の各工程のうち、一部の工程が抽出されて配置(レイアウト)されている。表側(行の見出し)には、時刻情報が配置(レイアウト)されている。
各工程の項目としては、左端から、「スリット」、「前面」、「帯炉」、「造管」、「鋼管炉」、「切断」、「結束」が抽出され、表示されている。これらのうち、「スリット」は、前述した鋼管製造ライン(図10)のコイルA1の前工程として、元の資材(巻回された鋼板)を長手方向に切断して相対的に細幅化する工程である。右側に続く「前面」は、鋼管製造ライン(図10)におけるショットブラスト装置A3の工程に該当し、「帯炉」は、内面用溶融金属めっき装置A6の工程に該当する。
さらに、「造管」は、フォーミング装置A8、および溶接装置A9の工程に該当し、「鋼管炉」は、外面用溶融金属めっき装置A14の工程に該当する。そして、「切断」は、切断装置A17の工程に該当し、「結束」は、鋼管製品A18を結束する工程に該当する。
行方向に並んだ時刻情報は、上段から降順に、10分毎の表示が行われている。図2の例では、最上段は「9:50~10:00」となっており、以下に「9:40~9:50」、「9:30~9:40」と続き、最下段は「8:00~8:10」となっている。ここで、時刻表示に関して、例えば、「9:40~9:50」は9時40分00秒~9時49分59秒を意味し、「9:50~10:00」は9時50分00秒~9時59分59秒を意味する、といったように表示規則を定めることが可能である。
このように、図2の例では、選択された工程について、10分毎の情報が表示できるようになっている。例えば、各工程に何も不具合が発生していない状況では、各工程における各時刻セルには何も表示されないようにする。しかし、何らかの不具合が発生すれば、製造情報管理装置130が、製造工程情報や時刻情報に基づき、対応する工程の対応する時刻のセルに、不具合の発生を意味する記号や文字が表示されたり、対応するセルの彩色が変化(白色から黄色などに変化)したりするよう、製造管理情報を出力する。
図2に示すような、工程の情報と時刻の情報の組合せは、製品関係者による選択操作に従って表示されたものである。つまり、情報提示装置140に表示させる情報(音声出力される情報でもよい)は、製品関係者により自らの判断で選択された項目(選択項目)に応じた情報である。製品関係者による選択項目としては種々のものを採用可能であるが、例えば、鋼管製造ライン(図10)における各工程や、鋼管製造に係る各種のパラメータ(搬送速度、温度、圧力、板厚、外径、膜厚等の各種寸法など)を例示できる。その他にも、製品関係者の要望に応じて変更したり追加したりすることが可能である。
図2の例(時系列×レイアウト順)のような情報の提示を行うにあたり、製品関係者が、図2の例(時系列×レイアウト順)の表示を目的として、例えば「時系列×レイアウト順」の選択項目の選択ボタンの操作(タッチ操作など)を行うことが可能である。また、例えば、「速度」、「温度」、或いは、「圧力」などといった鋼管製造ライン(図10)におけるパラメータの選択ボタンを操作すると、各工程について、パラメータに関する状況(速度値の情報や、OK/NGの情報など)を、対応する時刻のセル内に表示する、といったことも可能である。選択ボタンとしては、タッチパネル上にUI(ユーザ・インタフェース)として表示されたものを例示できる。選択ボタンの表示と併せて、例えば、音声ガイドを行うことも可能である。また、選択ボタンの種類としては、例えば、「~速度」、「~の温度」、或いは、「~の圧力」や、「~工程の~の速度」、「~工程の~の温度」、或いは、「~工程の~の圧力」といったものなども採用が可能である。ここで「~」は任意の工程名や対象名などを意味している。
また、製品関係者が、図2の例(時系列×レイアウト順)の表示を目的とした操作を行うことに限らず、具体的な目的を定めないまま、選択項目に係る選択ボタンの操作を行うようにすることも考えられる。例えば、「状況確認」のような包括的な意味を有する項目の選択を行うと、製造情報管理装置130が、製品関係者の属性や、鋼管製造ラインの操業状況などの情報に基づき、提示する製造管理情報を決定し、図2の例(時系列×レイアウト順)の表示を行う、といったことも可能である。
また、製品関係者がアプリケーションソフトの立ち上げの操作を行うと、バックエンド装置120から伝えられた情報に基づき情報提示が行われるようにしてもよい。或いは、情報提示装置140として専用端末を用いる場合は、製品関係者が電源の立ち上げの操作を行うと、バックエンド装置120から伝えられた情報に基づき情報提示が行われるようにしてもよい。これらの場合における製品関係者の操作も、項目の選択を行う操作に該当するといえる。
製品関係者が必要とする情報は、製品関係者の役割、立場、或いは、責務など属性の違いによって異なる。このため、製品関係者の属性に係る情報を利用し、鋼管製造ラインの操業状況の情報等に基づいて、異なる製造管理情報の提示を行うことで、迅速に適切な情報を提供できる。
製品関係者に必要な情報の選択は、例えば、バックエンド装置120におけるAI学習の結果を利用して行うことが可能である。具体的には、分析バックエンド部124において、過去の履歴情報に基づき、製品関係者の属性に係る情報と、鋼管製造ラインの操業状況に係る情報との対応(該当する条件で最も利用頻度が高い情報など)を、各種の統計的により学習しておく。また、製品製造に異常がない状況(正常な状況)において、或る工程における或るパラメータ(速度など)に対して、他の工程の速度や、その他のパラメータがどのような値であるか、といったパラメータ間の相関について、バックエンド装置120で学習しておくことが可能である。さらに、製品製造に異常がある状況においても同様に、複数のパラメータ間の相関を学習しておくことなども可能である。
分析バックエンド部124は、製造情報管理装置130からの要求があると、学習した結果の情報を、製造情報管理装置130に伝える。製造情報管理装置130は、分析バックエンド部124から伝えられた内容に基づき、情報入力装置110を介して収集された情報の中から必要な情報を抽出して、製造管理情報を作成する。製造情報管理装置130は、例えば図2の例のように、作成した製造管理情報を情報提示装置140に表示するための情報出力を行う。製造情報管理装置130において、分析バックエンド部124から伝えられた情報に対して統計処理を行って、必要な情報を抽出してもよい。
なお、情報提示装置140に提示される情報(音声出力を含む)は、製品関係者の属性等の情報により異なることとなるが、製造異関係者の属性が異なっても、同じ情報が提示される場合もあり得る。
ここで、製品関係者による選択は、タッチパネルに限らず、キーボード操作や、マイク入力等を介して行われる場合がある。マイク入力を利用する場合は、製造情報管理装置130において、音声データのテキスト変換が行われ、テキストデータに該当する(或いは近似する)と判定された項目が選択される。
続いて、図3の例(時系列×因果関係×相関性)では、選択された選択項目に対する因果性の情報(因果情報)と相関性の情報(相関情報)の表示を時系列に行うための画面構成が示されている。因果情報は、因果性の演算の結果、因果性があるものとして表示される情報である。因果情報は、例えば、過去の履歴から、不具合等の事象に係る情報を数式化し、求めた数式に該当する情報を因果性のある情報とする。
図3の例では、「情報」が、検出された不具合などの情報を表しており、「データX」や「データY」が、「情報」の事象に対して因果性があると判断された情報を表している。図3の例では、「データX」は、「データY」よりも「情報」との因果性が強いと判断された情報である。因果性の強弱は、例えば、「情報」の事象に係る数式に当て嵌まる情報の多寡により決定することなどが考えられる。図3では、因果性に係る「データX」と「データY」の表示範囲を、白抜きの両矢印を付加して示している。
これに対して相関性は、前述の数式には当て嵌らないが、一定範囲内で近似した数式に当て嵌まる情報に対して認められる。図3の例では、「情報」に対して相関性のある情報(相関情報)が、データα~データδのセルに表示され得るようになっている。相関情報は、相関性の演算の結果、相関性があるものとして表示される情報である。
具体的には、「情報」として「歩留まり」の選択項目が製品関係者により選択されたとすると、歩留まりの演算に必要な情報の収集に用いられる機器(寸法や膜厚の検出に係るセンサーなど)の出力値は、「データX」や「データY」として表示され、これ以外の情報(搬送速度の情報など)がデータα~データδに表示される、といったことを例示できる。図3では、相関性に係るデータα~データδの表示範囲を、白抜きの両矢印を付加して示している。また、データα、データβ、データγ、データδの順で、相関性が低くなっている。
上述の「データX」や「データY」は、収集された多くの情報から、状況に応じて抽出された情報である。そして、「データX」や「データY」としては、製品関係者が自ら予想した情報となる場合や、製品関係者が予想していない情報が抽出される場合もある。このようになるのは、バックエンド装置120から製造情報管理装置130に伝えられる情報が、AIにより判断された情報(AI判断情報)であることに起因している。また、製造情報管理装置130で行われる統計処理によって、製品関係者が予想していないような情報が、「データX」や「データY」として表示される場合もあり得る。
このことを具体的に説明するために、例えば、或る工程(例えば、「前面」、「帯炉」、「造管」、及び、「鋼管炉」のいずれかの工程など)における製品製造のパラメータとして、「速度」、「圧力」、及び、「温度」に着目する。さらに、当該工程において、製品搬送の速度をV1(例えば60m/分)としたときの、送り込まれている気体について設定されている圧力P1、設定されている温度T1を考える。また、速度をV2(例えば100m/分)としたときの、圧力P2や温度T2を考える。そして、速度がV1の場合のV1、P1、T1の関係や、速度がV2の場合のV2、P2、T2の関係が、バックエンド装置120においてAI学習されているものとする。
なお、ここで挙げたパラメータはあくまでも例示であり、種々のパラメータが関わるものとする。例えば、原材料となる資材の購入段階から製品の出荷検査に至るまでの、すなわち、上流から下流に亘る蓄積可能なパラメータが、情報抽出の要素になり得る。さらに、上流から下流までの複数の工程のうち、ある程度離れた工程(1以上離れた工程)の各々のパラメータであっても、対象とし得る。
さらに、製品製造の良否(不具合の有無)が、或るしきい値を超えていない場合は良(不具合なし、OK)となり、当該しきい値を超えていない場合は不良(不具合あり、NG)となるものとする。また、速度がV1の場合のP1、T1は或る関係式を満たし、当該数式は、V2、P2、及び、T2によっても満たされるものとする。これらのような各種の状況における関係式は、AI学習により導き出すことができる。また、関係式を満たすようパラメータの設定を行うためには、速度をV1からV2に変化させた場合に、P1をP2に変化させ、T1もT2に変化させることが必要となる。
そして、例えば、或る項目選択を行った場合に、上記工程について、AI学習により伝えられた情報(数式を含む)を用い、製造情報管理装置130が演算を行う。製造情報管理装置130は、例えば、演算結果の値が最も大きいパラメータの名称(例えば「速度」など)を「データX」のセルに表示し、演算結果の値が2番目に大きいパラメータの名称(例えば「圧力」など)を「データY」のセルに表示する。この際、上述の例でいえば、「温度」のパラメータは、「データX」や「データY」とする対象から除外される。つまり、情報の取捨選択が行われ3種類以上存在する情報(ここでは特定の工程におけるパラメータ)から、2種類が抽出されている。
さらに、抽出された「データX」及び「データY」に対し、相関性のある情報として予め学習されている複数(ここでは上位4種類)の情報が抽出され、データα~データδとして表示される。これらは、バックエンド装置120におけるAI判断情報において、相関性の高い複数種類(ここでは4種類)の情報が上位から順に表示されたものとすることが可能である。
続いて、図4の例(製品順×レイアウト順)では、表頭(列の見出し)に工程が配置されている点は、前述した図2の例と同様であるが、表側(行の見出し)には、ロット記号が順に配置(レイアウト)されている。図4の例では、製品のロットと工程との関係に係る情報を、製品関係者に提示することができる。
続いて、図5の例(製品順×因果関係×相関性)では、選択された選択項目に対する因果性の情報(因果情報)と相関性の情報(相関情報)の表示を行う点は、図3の例と同様であるが、表側(行の見出し)には、ロット記号(ここでは「♯1001」~「♯1012」)が配置されている。図5の例では、製品のロットと、因果性及び相関性との関係に係る情報を、製品関係者に提示することができる。
図2~図5に例示したような情報提示を行うことにより、或る製品関係者が、提示された情報を確認し、何時何分における各工程や、どの製品に係る各工程から、気になる時間帯や、気になる工程を拾い上げることができ得るようになる。そして、気になった工程に関して、因果性のある情報や、因果性のある情報に相関性の或る情報が、自動的に選択されて提示される。このため、製品関係者は、経験上、発生した不具合や、発生し得る状況にある不具合への対処を迅速かつ的確に行い得るようになる。
このような製品関係者の対応は、不具合が発生した状況では勿論のこと、不具合が発生していない状況においても予測的に行われ得るものである。さらに、製品関係者は、提示された情報に基づいて、例えば、良否判断のためのしきい値を変更したりすることが可能となる。また、問題となった工程や、問題となり得る状況にある工程の作業者が気付き難い点に、他の製品関係者が気付いて対処を行ったりすることが可能となる。
<バーチャル・アンドン機能>
バーチャル・アンドンの機能においては、各々の機械及び設備の状態もしくは状況がリアルタイムに表示される。ここでいう「アンドン」は、一般に知られている生産状態報告システムのことであるが、「バーチャル・アンドン」は、情報提示装置140により、製品の製造に関係する各々の機械及び設備の状態もしくは状況が、タイムスタンプによる時刻情報を介して、製品関係者に提示される。
<<コミュニケーション機能>>
続いて、製造情報管理装置130のコミュニケーション機能について説明する。コミュニケーション機能においては、T2S(テキスト・トゥ・スピーチ)エンジンによるリアルタイムアラートの機能や、S2T(スピーク・トゥ・テキスト)エンジンを伴うチームトークの記録の機能が発揮される。
これらのうち、T2Sエンジンによるリアルタイムアラート機能においては、進捗及びトラブル(不具合を含む)や、問題(トラブルや不具合等)の警報(又は警告)が、各作業者に対し、T2Sエンジンで生成された音声によりリアルタイムに伝えられる。このため、不具合等の発生があれば、即時に作業者にその旨や、不具合等の情報が提示される。
作業者の作業中は、監視や制御盤操作等のように、何らかの作業を行っていることが多い。このため、文字により情報を提示した場合には、確実に情報が伝わらないことも想定可能である。しかし、ヘッドセット150を介して音声により情報を提示することで、作業者が作業中であっても、より確実に情報伝達を行うことが可能である。
また、S2T(スピーク・トゥ・テキスト)を伴うチームトークの記録の機能においては、作業者による操業チーム(予め決められたチーム)における作業者同士の会話(チームトーク)をリアルタイムに行うことが可能である。さらに、この時の会話の内容は、音声として記録されると共に、音声データがS2Tエンジンによりでテキスト変換されて保存される。このときテキスト情報にも、会話の発生時刻の情報や、工程の識別情報(工程識別情報)が付加される。工程識別情報は、作業者識別情報に置き換えてもよく、或いは、作業者識別情報とともに付加されてもよい。
このようなコミュニケーション機能によれば、対象者に対して的確なアラートを発することが可能となる。さらに、音声を基にしたコミュニケーションが可能となり、会話を基にしていない情報のみを提示した場合に比べて、より深化したコミュニケーションが可能となる。さらに、音声のやり取りの情報をAI学習に用い、他の製造工程情報や作業者識別情報及び、時刻情報などとの関係を数学的に定めることにより、音声と作業者の行動との関係を客観的に定めることができるようになる。そして、このような学習を継続的に繰り返す、製造プロセス制御のAI化ツールを提供できるようになる。そして、後述するように(図9の右下段)、ヒトとAIとの融合によるフルオートメーションに向けた継続的なプロセスの改善(継続的プロセス改善)を行うことが可能となる。
<<レポート機能>>
続いて、製造情報管理装置130のレポート機能について説明する。レポート機能においては、プランアンドアクチュアルレポートの機能や、アラート+チームトークレポートの機能、及び、マシーンユティリゼーションレポートの機能が発揮される。
プランアンドアクチュアルレポート機能においては、次シフト又は次ロールでの改善の為の予実間のギャップ分析(分析結果の情報)を提供する。ここでいう「次シフト」は、作業者の勤務体制に係る事項であり、勤務シフトが次のシフトに移行することを意味している。次シフトでは、作業者が交代して異なる作業者により監視が行われたり、同じ作業者が他の工程に移動したりする場合がある。
上述の「次ロール」は、コイルA1(図10)として、鋼管製造ラインに新たにセットされるコイル(ロール)を意味している。上述の「予実」は、予定(計画)と実績を意味しており、「予実間のギャップ」は、予定と実績との相違(差や比率など)を意味している。そして、勤務シフトやロールが変更されるのに際し、それ以前の勤務シフトやロールにおける「予実間のギャップ」が演算され、演算結果の評価が行われる。
評価の内容としては、予定の達成率がどの程度か、予定の達成率は許容範囲に収まっているか、といった事項を例示できる。そして、プランアンドアクチュアルレポート機能においては、このような評価の結果が分析結果として、情報提示装置140を介して、製品関係者に提示される。このような評価は、歩留まりとしても表れる。ここで、1つのロールの途中で勤務シフトが行われる場合もある。
アラート+チームトークレポート機能においては、次のシフト、同シフト(そのときの同じシフト)、或いは、次ロールでの改善の為のアラート記録が、音声又はテキストの情報と一緒に提供される。ここでいう「アラート記録」は、それ以前において発生した不具合等についての各種アラートの記録である。
マシーンユティリゼーションレポート機能においては、より良いパフォーマンスを継続的に発揮する為の、機械設備の連続した使用データが提供される。
このようなレポート機能により得られた製造管理情報をAI学習に利用し、AI学習を継続的に繰り返す、製造プロセス制御のAI化ツールを提供できるようになる。そして、後述するように(図9の右下段)、ヒトとAIとの融合によるフルオートメーションに向けた継続的なプロセスの改善(継続的プロセス改善)を行うことが可能となる。
なお、前述した製造工程関係者情報(ヒトの情報)、製造設備情報(モノの情報)、及び、製品情報(カネの情報)は、その情報の内容や性質が、製造工程関係者に係る情報であるのか、製造設備に係る情報であるのか、或いは、製品に係る情報であるのか、といった違いにより区別される。そして、情報の内容や性質によっては、製造工程関係者情報、製造設備情報、及び、製品情報のうちの複数に該当する場合もある。
<<<製造情報管理システム100における作業手順>>>
図12は、上述のような製造情報管理システム100における作業手順を概略的に示している。先ず、情報入力装置110を用いて各種の製造工程情報が収集される(ステップ(S)100)。続いて、収集された製造工程情報に時刻情報や、工程識別情報が付与されて対応付けられる(S110)。そして、これらの収集された情報が、順次データベースに記録され、保存される(S120)。
収集された製造工程情報は、バックエンド装置120におけるAI学習に用いられる(S130)。AI学習においては、製造工程情報の性質や、提供可能な情報の内容等との要因を考慮して、適切な学習方法が採用される。そして、情報の性質や内容に応じた統計分析や、分類の結果が順次蓄積される。
製品に何らかの不具合が発見された場合や、状況確認すべき事象が発生した場合などには、製品関係者が、項目選択を行う(S140)。そして、項目選択の結果が製造情報管理装置130に伝えられ、製造情報管理装置130が、選択項目に応じた製造管理情報を作成し、選択項目の選択を行った製品関係者の情報提示装置140に、製造管理情報を送信する。そして、情報提示装置140において、製造管理情報に従った内容の情報の提示が行われる(S160)。
<<<製造情報管理システム100により得られるメリット>>>
(1)以上説明したような本実施形態の製造情報管理システム100によれば、製造情報管理装置130が、製品(鋼管など)の製造工程に割り当てられた製造工程関係者(各工程に配置された作業者など)に係る製造工程関係者情報(ヒトの情報など)と、
前記製品の製造に用いられる製造設備(鋼管製造ラインや鋼管製造ラインに係る各種設備など)に係る製造設備情報(モノの情報など)と、
前記製品に係る製品情報(カネの情報など)と、を含む製造工程情報(ヒト、モノ、カネの情報など)の入力が可能な入力部(通信I/F部174など)と、
前記製造工程情報を時刻情報(年月日や時間の情報など)と対応付け、少なくとも、前記製造工程関係者情報、前記製造設備情報、及び、前記製品情報を、前記時刻情報に基づきリアルタイムに統合して製造管理情報(各種端末に出力される情報や、製品関係者間で共有される情報など)を作成する製造管理情報作成部(制御部170など)と、
前記製造工程関係者を含む製品関係者(各工程に配置された作業者と、その他の関係者(工場管理者、経営者、工場運営や経営に関わる第三者など)とを含む関係者など)により選択された選択項目(各工程や、搬送速度・板厚・外径等のパラメータなど)に応じて、前記製造管理情報を出力する出力部(通信I/F部174など)と、を備えている。
(2)さらに、製造情報管理装置130は、前記製造工程関係者情報が、前記製造工程関係者の音声情報(ヘッドセット150のマイクで検出した音声の情報など)を含む。
(3)また、前記製造工程関係者情報、前記製造設備情報、及び、前記製品情報のうちの少なくとも1つと、前記製品を識別可能とする製品識別情報(ロット記号の情報など)とを対応付けて、前記製造管理情報(図4の例に係る「製品順×レイアウト順」の情報や、図5の例に係る「製品順×因果関係×相関性」の情報など)を出力可能である。
(4)また、前記製品関係者により選択された前記項目に対し因果性があるものとして演算された因果情報(因果性の演算の結果、因果性があるものとして表示される情報など)と、前記因果情報に相関があるものとして演算された相関情報(相関性の演算の結果、相関性があるものとして表示される情報)とを組合せ、前記時刻情報に対応付けて、前記製造管理情報を出力可能である。
(5)また、前記製品の製造工程が鋼管の製造工程であり、
前記製造工程には、少なくとも、アンコイラーを使用する工程、フォーミング装置を使用する工程、内面用溶融金属めっき装置を使用する工程、溶接装置を使用する工程、切削装置を使用する工程、外面用溶融金属めっき装置を使用する工程、サイジング装置を使用する工程、及び、切断装置を使用する工程のうちのいずれかを含む。
(6)また、製品の製造工程に割り当てられた製造工程関係者に係る製造工程関係者情報と、
前記製品の製造に用いられる製造設備に係る製造設備情報と、
前記製品に係る製品情報と、を含む製造工程情報の入力が可能な入力する第1ステップ(S100)と、
前記製造工程情報を時刻情報と対応付け、少なくとも、前記製造工程関係者情報、前記製造設備情報、及び、前記製品情報を、前記時刻情報に基づきリアルタイムに統合して製造管理情報を作成する第2ステップ(S110)と、
前記製造工程関係者を含む製品関係者により選択された選択項目に応じて、前記製造管理情報を出力する第3ステップ(S140~S160)と、を備えた。
(7)また、製造情報管理装置130は製造情報管理プログラムにより、製品の製造工程に割り当てられた製造工程関係者に係る製造工程関係者情報と、
前記製品の製造に用いられる製造設備に係る製造設備情報と、
前記製品に係る製品情報と、を含む製造工程情報の入力を可能とする処理と、
前記製造工程情報を時刻情報と対応付け、少なくとも、前記製造工程関係者情報、前記製造設備情報、及び、前記製品情報を、前記時刻情報に基づきリアルタイムに統合して製造管理情報を作成する処理と、
前記製造工程関係者を含む製品関係者により選択された選択項目に応じて、前記製造管理情報を出力する処理と、を実行する。
これらのことから、本実施形態の製造情報管理システム100によれば、製品製造に係る作業者の情報(ヒト(人)の情報である製造工程関係者情報)、設備の情報(モノ(物)の情報である製造設備情報)、製品の情報(カネ(金)の情報である製品情報)が、時刻情報を介して紐付けされて統合される。そして、ヒト・モノ・カネの情報をリアルタイムに同期させて、製品関係者の間で共有することが可能となる。そして、図9の右上段に示すように、リアルタイムの人・モノ・カネに関する包括的なデータの収集及び統合が可能になる。
また、情報入力装置110により収集された情報に基づき、製造情報管理装置130において製造管理情報が作成され、情報提示装置140を介して製品関係者に提示されるので、その時に発生している状況が、即時に、製品関係者にフィードバックされる。製造情報管理装置130により出力されるアラートは、リアルタイムな指示となる。
さらに、バックエンド装置120により、各種の工程情報を利用してAI学習された内容が、製造情報管理装置130に送信されることから、製造情報管理装置130では、AIの支援を得て、より最適な製造管理情報の出力が可能である。この結果、製品関係者が全体最適化のために行動するに際して、過去の経緯に関係した情報を提示することが可能となる。そして、図9の右中段に示すように、リアルタイムのマシンディープラーニング支援による標準最適化(作業標準の最適化)が可能である。
本実施形態の製造情報管理システム100によれば、鋼管製造ラインに配置された作業者(製造工程関係者)以外の関係者である、工場管理者、経営者、或いは、製品製造に関係のある第三者などの関係者(製品関係者)であっても、不具合の原因や解決策を短時間で見い出し得るようになる。
製造情報管理装置130は、ナビゲーション機能やコミュニケーション機能の発揮により、ナビゲーションとコミュニケーションが相関し合った製造管理情報の提供が可能である。そして、これらのことから、図9の右下段に示すように、ヒトとAIとの融合によるフルオートメーションに向けた継続的なプロセスの改善(継続的プロセス改善)を行うことが可能となる。
さらに、作業者を含めた製品関係者が、個々に提示された情報を踏まえたうえで、どのような行動をとったのかの情報も継続して蓄積されることとなる。このため、製造プロセス制御のAI化ツールを提供できるようになる。そして、製造プロセス制御を、AIツールを介してフルに自動化され、継続的な改善によって、より高度な全体最適化を実現し得る製造情報管理装置130や製造情報管理システム100を提供できる。
また、継続的プロセス改善では、作業者の情報(音声データなど)が活用されることから、鋼管製造の現場を巻き込んだユニークな開発環境を提供することが可能となる。
具体的な例を挙げれば、例えば、ある製品識別情報がマーキングされた鋼管に、製造上の瑕疵(例えば、異常なキズがあるなど)があることが、鋼管の完成後に判明した場合を想定する。この場合、鋼管の製品識別情報をデータベースで検索することにより、鋼管の製品識別情報と対応付けられた、鋼鈑の肉厚の情報、鋼管の外形の情報、作業者の音声情報を出力し、出力結果を製品関係者が確認する。このようにすることで、製造上の瑕疵の原因を、作業者以外の製品関係者であっても短時間で的確に調査し得るようになる。
他にも、例えば、鋼管の製造工程において、いずれかの測定結果に異常値が発生した場合に、測定結果に基づき、測定結果に対応付けられた条件と音声情報を出力することにより、測定結果に異常値が発生した原因を調査することが可能となる。具体的には、内面めっき後の板厚測定を行う内面めっき後板厚測定装置の測定結果が異常値であった場合、内面めっき装置の内面めっき条件や、内面めっき処理装置を担当する作業者の音声情報を再生して(或いはテキスト化されたものを表示したり、音声出力したりして)確認し、内面めっきの数値が異常であった原因を調査することができる。
また、本実施形態の製造情報管理システム100については、以下のようにも説明することが可能である。例えば、各種のカメラにより撮影された画像を、工場外の製品関係者が確認することにより、あたかも遠隔地からの工場の巡視(リモート工場巡視)を行っているかのような環境を作り出すことができる。これにより、製造現場、製造工程を管理するエンジニア、製造工程の制御システムの開発を行ったSE(システム・エンジニア)による三位一体での(共同での)工場巡視を、容易に行うことが可能となる。
また、図2や図4の例のようにレイアウト順の情報を含めた情報提示を行うことにより、確認すべき事象のあった製品が、どのような工程を通って製造されたものであるのかが一目で理解し得ることとなる。鋼管製造ライン(図10)における上工程から下工程までの長さが例えば100m程度であったとすると、確認すべき事象のあった製品と、100mほどの長さの鋼管製造ラインとの関係(どの工程が影響しているのかなど)の情報が、一目で認識し得ることとなる。
選択項目の入力に関しては、鋼管製造ラインにおける製品の流れを考慮した選択項目を考えることができる。さらに、製品の流れに対応した工程の選択項目を、流れてきた工程に応じて複数入力することで、確認すべき事象の原因として演算し得る結果を提示することなども考えられる。さらに、確認すべき事象の原因となっている工程の、前後の工程についての情報を提示することも可能である。
さらに、ロール1本単位のへの製造工程情報へのタイムスタンプ(時刻情報)の付与により、他の多くの情報や製品を連携させた情報提示を行うことが考えられる。また、時系列な時刻情報の付与により、例えば、3分毎、或いは、6分毎におけるログを参照し、搬送速度や温度等の変化を確認するなどといったことも考えられる。
また、下工程で起っていることを上工程で把握すると言ったことも可能になる。作業者や、作業者以外の製品関係者が、リアルタイムな情報を介して繋がることが可能となる。製品の品質を示す情報を記憶しておくことも可能である。不具合が起きた状況だけでなく、不具合が起きていない状況の製造工程情報も記録されることとなる。
設備の情報(モノの情報である製造設備情報)は、設備の保全計画に使用することが可能である。製品の情報(カネの情報である製品情報)については、例えば、12トンの製品の生産が目標であるところ、生産の実績が8トンであれば、8/12の演算結果を情報提示装置140に表示することで、製品関係者は、8/12の経済的価値が得られているものとして状況を把握し得ることとなる。
選択項目の選択に関しては、例えば、彩色が反転するUIに手指でタッチすれば、関係するものとして分類されている情報の現在値が、操作を行った製品関係者の情報提示装置140に出力される、といったことが可能となる。
また、例えば、国外のエンジニアを製品関係者に含め、当該エンジニアの情報提示装置140に製造管理情報を送信し、当該エンジニアに全体最適化のための情報を求める、といったことも可能となる。
そして、実際に作業している人間(作業者)と、製造設備、及び、製品とが、製造情報管理システム100により紐付けられ、各製品関係者が、時間単位や製品単位で、全体最適化に向けた軌道修正などの行動をとり易くなり得る。また、AI学習を行い、AI学習の結果を、製造管理情報の出力に利用することにより、経時的に経験が積み上がる製造情報管理システム100を提供できる。
また、カメラで撮影された画像を作業者以外の製品関係者(例えば工場からの遠隔地に居るエンジニアなど)の情報提示装置140に送信した場合には、近年の解像度の向上により、作業者が目視で気付かなかった事象に、作業者以外の製品関係者が気付き、当該製品関係者が全体最適化のための行動をとる、といったことも可能になる。
また、本発明は、鋼管の製造に限らず、素材から一次加工された製品に対して二次加工を行って得られる種々の製品の製造に適用することが可能なものである。また、本発明は、ライン生産方式に限らず、例えば、セル生産方式の製品製造にも適用が可能である。
なお、前述した実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。