以下、本発明に係る中空構造物及びその製造方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る中空構造物を示す模式斜視図である。図1に示される中空構造物1は、例えば車両のフレーム等に用いられる複合構造物である。例えば、車両のフレームは、複数の中空構造物及び他の金属部材を組み合わせることによって形成される。中空構造物1は、中心軸Aに交差する断面が連続閉断面である中空金属部材100と、中空金属部材100の外周に沿って設けられる金属メンバ200とを備える。以下では、軸方向を方向Xと呼称する。また、方向Xに対して交差もしくは直交する第1方向及び第2方向を、それぞれ方向Y、方向Zとする。
中空金属部材100は、予め断面環形状を呈するリングもしくはパイプ等から構成される筒状部材である。すなわち、中空金属部材100は、複数の板金を溶接することによって構成されるものではなく、1枚の板金を加工する(例えば、ロールフォーミング等)ことによって構成されるものでもない。このため、中空金属部材100の断面には合口(ジョイント)が存在しない。本実施形態に係る中空金属部材100は、一本の円形パイプから構成される。中空金属部材100の厚さは、特に限定されないが、例えば1.0mm以上2.5mm以下である。
中空金属部材100は、例えば、高張力鋼材もしくは超高張力鋼材から構成される。高張力鋼材は、400MPa以上の引張強度を示す鋼材である。超高張力鋼材は、例えば590MPa以上もしくは1GPa(1000MPa)以上であって、1800MPa以下の引張強度を示す鋼材である。このため、中空金属部材100の引張強度は、例えば400MPa以上、590MPa以上、1GPa以上、もしくは1800MPaである。中空金属部材100の引張強度が約1GPa以上である場合、中空金属部材100の強度は好適である一方、例えばハイドロフォーミング等の冷間加工による加工が困難である。中空金属部材100の引張強度は、例えばISO 6892-1:2016もしくはJIS Z 2241:2011に基づいて算出される。中空金属部材100は、上記鋼材から構成されず、他の金属もしくは合金から構成されてもよい。中空金属部材100は、例えば、アルミニウム(Al)を含む材料(Al単体もしくはAl合金)から構成されてもよい。
中空金属部材100は、方向Xにおける端部101,102と、方向Xにおいて端部101,102の間に位置する中央部103とを有する。端部101,102は、後述する成形装置10の電極17,18(図7を参照)に支持される部分であり、方向Xから見て略円環形状を呈する。本実施形態では、中空金属部材100は、端部101,102を有するが、これに限られない。例えば、端部101,102は、中空金属部材100から除去されてもよい。
金属メンバ200は、中空金属部材100の外周に固定される部材であり、中空金属部材100が挿通される開口201を備える。本実施形態では、開口201の表面と、中空金属部材100の外周面とが、互いに嵌合している(詳細は後述)。このため、開口201は、中空金属部材100に対する被嵌合部として機能する。金属メンバ200は、一体化された第1部材210及び第2部材220から構成される。第1部材210及び第2部材220の詳細については、後述する。
続いて、図2~図6を参照しながら、中空金属部材100と金属メンバ200とを詳細に説明する。図2は、図1の方向Xに沿った断面図である。図3は、中央部103の要部を示す拡大模式図である。図4(a)は、第1部材210を示す側面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb-IVb線に沿った断面図である。図5(a)は、第2部材220を示す側面図であり、図5(b)は、図5(a)のVb-Vb線に沿った断面図である。図6(a)は、図2のVIa-VIa線に沿った断面図であり、図6(b)は、図2のVIb-VIb線に沿った断面図である。なお、図4(a)及び図5(a)は、第1部材210及び第2部材220におけるそれぞれの断面を方向Yから見た図である。また、図4(b)及び図5(b)は、第1部材210及び第2部材220をそれぞれ方向Xから見た図である。
まず、中空金属部材100の詳細について説明する。図2及び図3に示される中央部103は、中空金属部材100の本体部であり、金属メンバ200と一体化している部分である。中央部103は、中空金属部材100において成形加工された部分である。本実施形態では、中央部103は、円形パイプを膨張することによって成形される膨張部である(詳細は後述)。本実施形態では、パイプ等において成形加工によって圧縮変形された箇所も、膨張部と呼称され得る。中央部103は、金属メンバ200から露出する主部104と、金属メンバ200に接触する接触部105とを有する。本実施形態では、主部104は断面略円環形状を呈するが、これに限られない。例えば、主部104は、断面多角環形状、もしくは断面楕円環形状等を呈してもよい。また、主部104には、開口、窪み、溝等が設けられてもよい。
接触部105は、第1突出部105a、第2突出部105b、並びに、第1突出部105a及び第2突出部105bと主部104とをつなぐ接続部105cを有する。第1突出部105a、第2突出部105b、及び接続部105cのそれぞれは、金属メンバ200の開口201に沿って膨張した部分である。第1突出部105a及び第2突出部105bのそれぞれは、主部104及び接続部105cよりも膨張している。すなわち、第1突出部105a及び第2突出部105bのそれぞれは、主部104及び接続部105cよりも拡径されている。本実施形態では、第1突出部105a及び第2突出部105bのそれぞれは、方向Xにおける金属メンバ200の中心にて端部101の径より膨張している。加えて、方向Xにおいて当該中心から離れるほど、第1突出部105a及び第2突出部105bのそれぞれの膨張率が低下している。このため、第1突出部105a及び第2突出部105bのそれぞれは、金属メンバ200の開口201を画成する表面に掛止されている。
接続部105cは、例えば金属メンバ200の中心もしくはその近傍を通り、且つ、方向Xから見た中空構造物1の断面において、接触部105のくびれた部分に相当する(後述する図6(a)を参照)。接触部105の強度は、主部104の強度と同一でもよいし、主部104の強度より低くてもよい。特に、第1突出部105a及び第2突出部105bの強度は、主部104の強度と同一でもよいし、主部104の強度より低くてもよい。
続いて、金属メンバ200の詳細について説明する。図2に示されるように、開口201の表面の一部には、凹部202,203が形成されている。凹部202,203は、開口201の表面から開口201の径方向に沿って後退する部分であり、曲面を呈する。凹部202,203のそれぞれは、方向Xに沿った勾配を示す。本実施形態では、方向Xにおいて金属メンバ200の中心における凹部202,203の後退量が最も大きい。加えて、方向Xにおいて上記中心から離れるほど、上記後退量が減少する。凹部202,203は、接触部105の第1突出部105aと第2突出部105bとがそれぞれ入り込む部分である。本実施形態では、凹部202は第1突出部105aによって覆われ、凹部203は第2突出部105bによって覆われる。換言すると、第1突出部105aは凹部202の表面に沿った形状を呈し、第2突出部105bは凹部203の表面に沿った形状を呈している。これにより、方向Xに沿った中空金属部材100に対する金属メンバ200の移動を規制できる。したがって、凹部202,203は、被嵌合部である開口201の表面に設けられ、金属メンバ200と中空金属部材100との相対移動を規制する規制構造として機能する。
図4(a),(b)に示されるように、第1部材210は、本体ブロック211と、方向Zにおける本体ブロック211の側面211aの両端に設けられる切欠部212,213と、方向Zにおいて切欠部212,213の間に位置すると共に側面211aに設けられる凹溝214とを有する。また、図5(a),(b)に示されるように、第2部材220は、本体ブロック221と、方向Zにおける本体ブロック221の側面221aの両端に設けられる突出部222,223と、方向Zにおいて突出部222,223の間に位置すると共に側面221aに設けられる凹溝224とを有する。
本体ブロック211,221は、少なくとも物理的に中空金属部材100に対して固定される部材であり、互いに同一材料から構成される。本体ブロック211,221は、中空金属部材100と同様に、高張力鋼材もしくは超高張力鋼材から構成されてもよいし、Alを含む材料から構成されてもよい。例えば、本体ブロック211,221と中空金属部材100とが互いにAlを含む材料から構成される場合、中空金属部材100の少なくとも一部は、本体ブロック211,221の少なくとも一方に対して溶着されてもよい。軸方向に沿った本体ブロック211,221の厚さは、特に限定されないが、例えば1mm以上7mm以下である。
第1部材210と第2部材220とが一体化しているとき、本体ブロック211の側面211aと、本体ブロック221の側面221aとのそれぞれは、互いに接触している。加えて、突出部222,223は、切欠部212,213にそれぞれ隙間なく嵌合している。第1部材210と第2部材220とは、中空金属部材100の他の部材を用いて一体化されてもよい。例えば、第1部材210と第2部材220との両方を拘束する拘束部材、第1部材210と第2部材220との両方を貫通するボルトを含む締結部材等を用いて、第1部材210と第2部材220とが一体化されてもよい。
凹溝214は、金属メンバ200における開口201の一部に相当し、膨張した中央部103(具体的には、接触部105)に対する被嵌合部である。本実施形態では、方向Xから見た凹溝214は、略半円形状を呈しており、側面211aから方向Yに沿って後退する部分である。方向Zに沿った凹溝214の幅W1は、一定ではない。本実施形態では、幅W1は、方向Xにおいて本体ブロック211の中心を通る位置にて最大である。加えて、方向Xにおいて上記中心から離れるほど、幅W1が低下する。幅W1の最大値は、例えば、幅W1の最大値の105%以上125%以下である。
凹溝214の表面には、凹部202が設けられる。凹部202は、方向Yにおける凹溝214の縁よりも奥側に位置している。このため、凹部202と凹溝214の縁との間には爪部216が画成される。凹部202は、入口部202a、底部202b、及び、方向Yにおいて入口部202aと底部202bとの間に位置する中間部202cを有する。方向Yにおいて、凹部202の後退量は、入口部202aから中間部202cにかけて上昇し、中間部202cから底部202bまで略一定である。このため、方向Zにおいて、入口部202aの径D1は、中間部202cの径D2よりも小さくなる。よって、凹部202においては、入口部202aから中間部202cにかけて方向Zに沿った径が広がった後、中間部202cから底部202bにかけて方向Zに沿った径が狭まっている。なお、径D1は、例えば、径D2の105%以上120%以下である。この場合、第1突出部105aが爪部216に確実に掛止されるので、方向Yに沿った中空金属部材100と第1部材210との分離を防止できる。よって、爪部216は、中空金属部材100と第1部材210との方向Yに沿った相対移動を規制する規制構造として機能する。加えて、接触部105の脆弱部分が入口部202a及びその周辺に形成されることを防止できる。
凹溝224は、金属メンバ200における開口201の他部に相当し、第2突出部105bに対する被嵌合部である。本実施形態では、凹溝224の形状は、凹溝214の形状と略同一である。このため、方向Zに沿った凹溝224の幅W2は、方向Xにおいて本体ブロック221の中心を通る位置にて最大である。また、凹溝224の表面には、凹部202と略同一形状を呈する凹部203が設けられる。凹部203は、方向Yにおける凹溝224の縁よりも奥側に位置している。このため、凹部203と凹溝224の縁部との間には爪部226が画成される。凹部203は、凹部202と同様に、入口部203a、底部203b、及び中間部203cを有する。この場合、第2突出部105bが爪部226に確実に掛止されるので、方向Yに沿った中空金属部材100と第2部材220との分離を防止できる。よって、爪部226は、中空金属部材100と第2部材220との方向Yに沿った相対移動を規制する規制構造として機能する。加えて、接触部105の脆弱部分が入口部203a及びその周辺に形成されることを防止できる。
図6(a)は、開口201において凹部202,203が設けられる第1領域の断面図であり、図6(b)は、開口201において凹部202,203が設けられない第2領域の断面図である。図6(a)に示されるように、接触部105は、凹溝214(すなわち、開口201の一部)の形状に沿って膨張している。加えて、第1突出部105aは凹部202に嵌合するように膨張している。このため、第1突出部105aの径は、入口部202aから中間部202cにかけて拡大した後、中間部202cから底部202bまでは略一定になる。同様に、接触部105は、凹溝224の形状に沿って膨張しており、且つ、第2突出部105bは凹部203に嵌合している。このため、第2突出部105bの径は、入口部203aから中間部203cにかけて拡大した後、中間部203cから底部203bまでは略一定になる。また、接触部105において爪部216,226の形状に沿って膨張する部分は、接続部105cに相当する。このため上記第1領域においては、接触部105の形状は、凹溝214,224及び凹部202,203の形状に沿っており、方向Yにおける中央部分に爪部216,226に起因するくびれを有する。一方、図6(b)に示されるように、上記第2領域においては、接触部105の形状は略円環形状を呈している。
次に、図7及び図8を参照しながら本実施形態に係る中空構造物1の製造方法を説明する。まず、中空構造物1を成形するための成形装置について説明する。
<成形装置の構成>
図7は、成形装置の概略構成図である。図7に示されるように、中空構造物1を成形する成形装置10は、互いに対となる上型(金型)12及び下型(金型)11を有する成形金型(成形部)13と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させる駆動機構80と、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ14を保持するパイプ保持機構30と、パイプ保持機構30で保持されている金属パイプ14に通電して加熱する加熱機構50と、上型12及び下型11の間に保持され加熱された金属パイプ14内にガス(気体)を供給するための気体供給ユニット60と、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ14の内部に気体供給ユニット60からの気体を供給するための一対の気体供給部40,40と、成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とを備えると共に、上記駆動機構80の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、上記加熱機構50の駆動、及び上記気体供給ユニット60の気体供給をそれぞれ制御する制御部70と、を備える。
成形金型13は、金属パイプ14を成形加工するために用いられる型である。このため、成形金型13に含まれる下型11及び上型12のそれぞれには、金属パイプ14が収容されるキャビティ(凹部)が設けられる(詳細は後述する)。また、成形金型13は、金属パイプ14から成形加工された中空金属部材100を金属メンバ200に一体化するためにも用いられる。
下型11は、大きな基台15に固定されている。下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、その上面にキャビティ16を備える。下型11には冷却水通路19が形成されている。キャビティ16は、中空金属部材100の中央部103を成形するための窪みである。キャビティ16には、金属メンバ200の第2部材220を収容するための凹部16aが設けられる。本実施形態では、第2部材220は凹部16a内に隙間なく収容されているが、これに限られない。第2部材220を凹部16a内から容易に取り出す観点から、例えば凹部16aと第2部材220との間には隙間が設けられてもよい。この場合、凹部16a内における第2部材220の位置を定めるため、凹部16a内には第2部材220を固定する機構が設けられてもよい。キャビティ16の底面は、第2部材220の側面221a(図5(a)を参照)と面一であってもよい。
下型11の左右端(図7における左右端)近傍には、電極収納スペース11aが設けられている。電極収納スペース11a内には、上下に進退動可能に構成された電極(下側電極)17,18が設けられる。下型11と下側電極17との間及び下側電極17の下部、並びに下型11と下側電極18との間及び下側電極18の下部には、通電を防ぐための絶縁材91がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材91は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータ(不図示)の可動部である進退ロッド95に固定されている。このアクチュエータは、下側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、下型11と共に基台15側に保持されている。
下側電極17,18の上面には、金属パイプ14の下側外周面に対応した半円弧状の凹溝17a,18aがそれぞれ形成されている(図8(c)を参照)。このため、下型11側に位置する一対の下側電極17,18は、パイプ保持機構30の一部を構成しており、金属パイプ14を上型12と下型11との間で昇降可能に支えることができる。下側電極17,18にて支持される金属パイプ14は、例えば凹溝17a,18aにて嵌め込まれ載置される。下側電極17,18の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝17a,18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17b,18bが形成されている。なお、絶縁材91には、上記凹溝17a,18aに連通すると共に、金属パイプ14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。
上型12は、下型11と同様に大きな鋼鉄製ブロックによって構成されており、駆動機構80を構成するスライド81(詳細は後述)に固定されている。上型12の下面にはキャビティ24が形成されている。キャビティ24は、キャビティ16と同様に、中空金属部材100の中央部103を成形するための窪みである。キャビティ24は、下型11のキャビティ16に対向する位置に設けられている。上型12の内部には、冷却水通路25が設けられている。キャビティ24には、金属メンバ200の第1部材210を収容するための凹部24aが設けられる。本実施形態では、第1部材210は凹部24a内に隙間なく収容されているが、これに限られない。第1部材210を凹部24a内から容易に取り出す観点から、例えば凹部24aと第1部材210との間には隙間が設けられてもよい。この場合、凹部24aからの第1部材210の脱落を防止するため、凹部24a内には第1部材210を固定する機構が設けられてもよい。キャビティ24の底面は、第1部材210の側面211a(図4(a)を参照)と面一であってもよい。
上型12の左右端(図7における左右端)近傍には、下型11と同様な電極収納スペース12aが設けられている。電極収納スペース12a内には、下型11と同じく、上下に進退動可能に構成された電極(上側電極)17,18が設けられる。上型12と上側電極17との間及び上側電極17の上部、並びに上型12と上側電極18との間及び上側電極18の上部には、通電を防ぐための絶縁材92がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材92は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータ(不図示)の可動部である進退ロッド96に固定されている。このアクチュエータは、上側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、上型12と共に駆動機構80側に保持されている。
上側電極17,18の下面には、金属パイプ14の上側外周面に対応した半円弧状の凹溝17a,18aがそれぞれ形成されている(図8(c)を参照)。このため、上側電極17,18は、パイプ保持機構30の他の一部を構成している。上下一対の電極17,18で金属パイプ14を上下方向から挟持すると、金属パイプ14の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができる。上側電極17,18の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝17a,18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17b,18bが形成されている。なお、絶縁材92には、上記凹溝17a,18aに連通すると共に、金属パイプ14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。
図7に戻って、駆動機構80は、上型12及び下型11同士が合わさるように上型12を移動させるスライド81と、スライド81を移動させるための駆動力を発生するシャフト82と、該シャフト82で発生した駆動力をスライド81に伝達するためのコネクティングロッド83とを備えている。シャフト82は、スライド81上方にて左右方向に延在していると共に回転自在に支持されており、その軸心から離間した位置にて左右端から突出して左右方向に延在する偏心クランク82aを有している。この偏心クランク82aと、スライド81の上部に設けられると共に左右方向に延在している回転軸81aとは、コネクティングロッド83によって連結されている。偏心クランク82aの位置変化をスライド81に伝達する際に発生するコネクティングロッド83の揺動(回転運動)は、回転軸81aによって吸収される。なお、シャフト82は、例えば制御部70によって制御されるモータ等の駆動に応じて回転又は停止する。
加熱機構(電力供給部)50は、電力供給源55、及び、電力供給源55と電極17,18とを電気的に接続する電力供給ライン52を備える。電力供給源55は、直流電源及びスイッチを含み、電力供給ライン52、電極17,18を介して金属パイプ14に通電可能になっている。本実施形態では、電力供給ライン52は、下側電極17,18に接続されているが、これに限られない。制御部70は、上記加熱機構50を制御することによって、金属パイプ14を焼入れ温度(例えば、AC3変態点温度以上)まで加熱できる。
一対の気体供給部40の各々は、ブロック41を介して基台15上に載置固定されるシリンダユニット42と、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動するシリンダロッド43と、シリンダロッド43の先端に連結された気体供給ノズル44とを有する。気体供給ノズル44の先端には、先細になるように設けられるテーパー面45が設けられる。また、気体供給ノズル44の内部には、ガス通路46が設けられる。
気体供給ユニット60は、ガス源61と、このガス源61によって供給されたガスを貯留するアキュムレータ62と、このアキュムレータ62から気体供給部40のシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62から気体供給部40の気体供給ノズル44まで延びている第2チューブ67と、この第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68及び逆止弁69と、を有する。圧力制御弁64は、気体供給ノズル44の金属パイプ14に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内でガスが逆流することを防止する役割を果たす。
圧力制御弁68は、制御部70の制御により、第2チューブ67内の圧力を調節するバルブである。例えば、金属パイプ14を仮膨張させるための作動圧力(以下、第1到達圧力とする)を有するガス(以下、低圧ガスとする)と、中空金属部材を成形するための作動圧力(以下、第2到達圧力とする)を有するガス(以下、高圧ガスとする)とを、第2チューブ67内に供給する役割を果たす。これにより、第2チューブ67に接続される気体供給ノズル44に低圧ガス及び高圧ガスを供給できる。なお、高圧ガスの圧力は、例えば低圧ガスの約2倍~5倍である。
また、制御部70は、図7に示す(A)から情報が伝達されることによって、熱電対21から温度情報を取得し、加熱機構50及び駆動機構80を制御する。水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19及び上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とを備える。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。なお、図示しないが、成形装置10は、成形加工物の温度を測定するためのセンサ(例えば、熱電対)を備える。
<成形装置を用いた中空構造物の成形方法>
次に、成形装置10を用いた中空構造物1の成形方法の一例について説明する。以下では、金属パイプ14及び金属メンバ200が共に鋼材から構成される場合の成形方法について説明する。
まず、金属パイプ14及び金属メンバ200を上型12及び下型11の間に準備する(第1工程)。第1工程では、上型12のキャビティ24に設けられる凹部24aに第1部材210を収容すると共に、下型11のキャビティ16に設けられる凹部16aに第2部材220を収容する。続いて、下型11及び上型12の間に金属パイプ14を配置する。この金属パイプ14は、パイプ保持機構30の上側電極17,18及び下側電極17,18によって挟持されている。
電極17,18によって挟持された金属パイプ14は、制御部70による加熱機構50の制御によって、通電加熱される。具体的には、制御部70による加熱機構50の制御によって金属パイプ14に電力を供給する。すると、電力供給ライン52を介して下側電極17,18に伝達される電力が、金属パイプ14を挟持している上側電極17,18及び金属パイプ14に供給される。そして、金属パイプ14自身の電気抵抗により、金属パイプ14自体がジュール熱によって発熱する。
次に、上型12及び下型11の少なくとも一方を金型同士が合わさる方向に移動させることによって、上型12と下型11との間にて金属パイプ14の外周面に金属メンバ200を近接させる(第2工程)。第2工程では、制御部70による駆動機構80の制御によって、上型12を下型11に向かって移動させる。これにより、上型12と下型11とを合わせ、中空金属部材100を成形するためのキャビティ16,24による空間を形成する。このとき、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ14は、キャビティ16,24による空間内に位置する。ここで本実施形態では、開口201の径は金属パイプ14の外径よりも大きくなっている。上記第2工程では、上型12と下型11とが合わさることによって第1部材210と第2部材220とが合わさったとき、開口201の表面と金属パイプ14との間には隙間を形成する。この隙間は、例えば0.2mm以上である。これにより、金属パイプ14と金属メンバ200との間におけるスパーク(放電)の発生を防止できる。
なお、金属パイプ14を通電加熱する前に、上型12を下型11側に近づけてもよい。すなわち、金属パイプ14を加熱する工程は、上記第1工程の最中でもよいし、上記第1工程後でもよいし、上記第2工程後でもよい。いずれの場合であっても、金属パイプ14と金属メンバ200とが互いに離間した状態にて、金属パイプ14を加熱してもよい。例えば上記第2工程後に金属パイプ14を加熱する場合、金属パイプ14の通電加熱が完了するまで、開口201の表面と金属パイプ14との間には上記隙間を形成する。
次に、加熱された金属パイプ14内に気体を供給することによって、金属メンバ200の表面に沿った形状を呈する第1突出部105a及び第2突出部105bを有する中空金属部材100(図3等を参照)を成形する(第3工程)。第3工程では、まず、加熱された金属パイプ14内に一度に気体を供給する、もしくは、段階的に気体を供給する。これにより、キャビティ16,24内にて金属パイプ14を膨張させる。具体的には、まず、気体供給部40のシリンダユニット42を作動させることによって、気体供給ノズル44を前進させ、金属パイプ14の両端に気体供給ノズル44を挿入する。このとき、各気体供給ノズル44の先端部44Aを金属パイプ14の両端に挿入してシールする。これにより、金属パイプ14の内部と、ガス通路46とが、気密性よく連通する。続いて、制御部70による気体供給ユニット60、駆動機構80、及び開閉弁47の制御によって、加熱後の金属パイプ14内に気体(ガス)を供給する。これにより、加熱により軟化した金属パイプ14が膨張して成形金型13と接触する。そして、金属パイプ14は、成形金型13の形状に沿うように成形される。同時に、金属パイプ14が第1部材210及び第2部材220にも接触し、金属パイプ14において膨張した部分は、第1部材210の凹部202及び第2部材220の凹部203の形状に沿うように成形される(図2を参照)。これにより、図6(a),(b)に示される断面形状を呈する中空金属部材100が成形される。特に図6(a)に示されるように、第1突出部105a及び第2突出部105bが凹部202,203にそれぞれ嵌合されることによって、中空金属部材100と、金属メンバ200の第1部材210及び第2部材220とが一体化する。加えて、金属メンバ200に対する中空金属部材100の移動は、第1突出部105a及び第2突出部105bと、凹部202,203とによって規制される。
供給するガスのタイミング、圧力等の調整によって、凹部202,203に膨張した金属パイプ14を確実に侵入させる。これにより、凹部202に嵌合する第1突出部105aと、凹部203に嵌合する第2突出部105bとを有する中空金属部材100を良好に成形できる。なお、金属パイプ14のブロー成形から中空構造物1の成形完了までに至るまでの時間は、金属パイプ14の種類にもよるが、概ね数秒から数十秒程度である。
ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ14の外周面は、下型11のキャビティ16と上型12のキャビティ24とに接触して急冷される。また、金属パイプ14の外周面は、第1部材210及び第2部材220にも接触されて冷却される。これにより、金属パイプ14の焼き入れが実施される。上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されている。このため、金属パイプ14のキャビティ16,24への接触によって、パイプ表面の熱が急激に金型側へと奪われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイト等)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を例えばキャビティ24内に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型(上型12及び下型11)に金属パイプ14を接触させて冷却し、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を金属パイプ14へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。なお、金属パイプ14において第1部材210もしくは第2部材220に接触する部分は、金属パイプ14においてキャビティ16,24に接触する部分よりもマルテンサイト変態率が低くてもよい。すなわち、金属パイプ14において第1部材210もしくは第2部材220に接触する部分の強度は、金属パイプ14においてキャビティ16,24に接触する部分の強度よりも低くてもよい。
<作用効果>
次に、本実施形態に係る中空構造物1の作用効果について説明する。上記成形装置10を用いて製造された中空構造物1では、中空金属部材100の膨張部である接触部105が、金属メンバ200の被嵌合部である凹溝214,224に対して嵌合している。このため、継手部材を用いることなく中空金属部材100と金属メンバ200とを一体化できるので、中空構造物1の軽量化を実現できる。加えて、凹溝214,224には、金属メンバ200と中空金属部材100との相対移動を規制する規制構造として機能する凹部202,203が設けられる。そして第1突出部105a及び第2突出部105bは、凹部202,203に沿った形状をそれぞれ呈しており、且つ、爪部216,226にそれぞれ掛止されている。これにより、例えば中空金属部材100に第1突出部105a及び第2突出部105bを形成するとき、凹溝214の凹部202に第1突出部105aを単に嵌合させ、且つ、凹溝224の凹部203に第2突出部105bを単に嵌合させるだけで、金属メンバ200に対する中空金属部材100の位置を容易且つ確実に固定化できる。したがって本実施形態に係る製造方法を実施することによって、中空構造物1の生産性を向上可能である。さらに本実施形態では、爪部216,226の存在によって、中空金属部材100の周方向に沿った金属メンバ200の回転も良好に規制できる。
本実施形態では、凹部202は、入口部202a、底部202b、及び、方向Yにおいて入口部202aと底部202bとの間に位置する中間部202cを有し、方向Zにおいて入口部202aの径D1は、中間部202cの径D2よりも小さい。このため、凹部202の入口部202aが第1突出部105aに対して食い込むので、第1突出部105aが入口部202aに対して良好に掛止される。このため、方向Yに沿った中空金属部材100と金属メンバ200との分離を良好に防止できる。加えて、方向Zにおける中空金属部材100と金属メンバ200との相対移動も確実に規制できる。
本実施形態では、中空金属部材100において、第1突出部105aの強度は、他の部分よりも低くてもよい。この場合であっても、第1突出部105aの強度は金属メンバ200によって補償されるので、中空構造物1の強度を十分に確保できる。
本実施形態では、中空金属部材100の引張強度は、590MPa以上1800MPa以下であってもよい。この場合、中空構造物1の強度を十分に確保できる。
本実施形態では、中空金属部材100と金属メンバ200とは、互いにAlを含む材料から構成され、接触部105の少なくとも一部は、開口201の表面に対して溶着してもよい。この場合、中空金属部材100と金属メンバ200とが強固に一体化される。
本実施形態では、中空構造物1の製造方法は、金属パイプ14と金属メンバ200とが互いに離間した状態にて、金属パイプ14を加熱する工程を備えてもよい。この場合、金属パイプ14の加熱時に、金属パイプ14と金属メンバ200との間における電蝕の発生を抑制できる。
<変形例>
次に、図9~15を参照しながら、上記実施形態の各変形例について説明する。変形例の説明において上記実施形態と重複する記載は省略し、上記実施形態と異なる部分を記載する。
図9(a)は、第1変形例に係る中空構造物の要部を示す拡大断面図である。各図9(a)に示されるように、中空構造物1Aは、互いに異なる材料から構成される中空金属部材100及び金属メンバ200、並びに、中空金属部材100と金属メンバ200との間に位置する絶縁部材300を備える。絶縁部材300は、高い耐熱性及び絶縁性を示し、金属メンバ200の開口201に沿って設けられる。絶縁部材300の一部300aは第1部材210の凹溝214に沿って設けられ、絶縁部材300の他部300bは、第2部材220の凹溝224に沿って設けられる。絶縁部材300は、例えば開口201の表面に貼り付けられる絶縁シート、開口201の表面に塗布される絶縁膜等である。
図9(b)は、第1変形例に係る中空構造物の製造方法に含まれる工程を示す概略断面図である。図9(b)に示されるように、上記第1工程では、金属パイプ14と金属メンバ200との間に絶縁部材300を準備する。続いて、例えば、第1部材210における凹溝214の表面に絶縁部材300の一部300aを設け、第2部材220における凹溝214の表面に絶縁部材300の他部300bを設ける。そして、上記第2工程及び上記第3工程を実施することによって、絶縁部材300を介して中空金属部材100と金属メンバ200とが一体化される中空構造物1Aが製造される。
このような第1変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、絶縁部材300を用いることによって、例えば金属パイプ14を通電加熱する際等における電蝕の発生を抑制できる。なお、第1変形例においては、上記第1工程にて絶縁部材300は金属メンバ200に設けられているが、これに限られない。例えば、上記第1工程にて、絶縁部材300は、単に金属パイプ14と金属メンバ200との間に配置されてもよい。
図10は、第2変形例に係る中空構造物を示す概略斜視図である。図11(a)は、図10のXIa-XIa線に沿った断面図である。図10に示される中空構造物1Bの金属メンバ200Aは、上記実施形態と異なり、単一部材から構成されており、中空金属部材100が挿通される開口201Aを備える。図11(a)に示されるように、開口201Aの表面には、方向Xに交差する方向(例えば、方向Yもしくは方向Z等)に延在する凹部202Aが設けられる。上記実施形態と同様に、中空金属部材100の接触部105Aは、開口201Aの形状に沿った形状を呈する。このため、接触部105Aは、凹部202Aに嵌合する突出部106を有し、凹部202Aは突出部106に覆われている。
図12(a),(b)は、第2変形例において、金属パイプ及び金属メンバを準備する上記第1工程に用いる搬送治具の一例を示す模式図である。図12(a),(b)に示される搬送治具400は、方向Xに沿って延在する本体部401と、方向Yに沿って延在する把持部402,403と、絶縁材404とを有する。本体部401は、方向Xに沿った中心軸を軸として回転可能に構成される。把持部402は、金属パイプ14を把持する部分であり、方向Xにおける本体部401の一端に設けられる。把持部403は、金属パイプ14を把持する部分であり、方向Xにおける本体部401の他端に設けられる。絶縁材404は、本体部401と金属メンバ200Aとの接触を防止する部材であり、方向Xにおいて把持部402,403の間に位置している。
このような搬送治具400を用いて上記第1工程を実施する場合、まず、金属メンバ200Aの開口201Aに金属パイプ14を挿通する。続いて図12(a)に示されるように、把持部402,403によって、金属パイプ14の両端部を把持する。このとき、本体部401と金属メンバ200Aとによって絶縁材404を挟持する。続いて、搬送治具400を移動させることによって、金属パイプ14及び金属メンバ200Aを成形装置10(図7を参照)へ搬送する。続いて図12(b)に示されるように、搬送された金属パイプ14をパイプ保持機構30の電極17,18によって把持する。そして、把持部402,403から金属パイプ14を分離させた後、本体部401を回転させる。これにより、把持部402,403を金属パイプ14から遠ざける。なお、電極17,18によって把持された金属パイプ14は、通電加熱される。
このような第2変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。図11(b)は、第2変形例の別例を示す断面図である。図11(b)に示されるように、金属メンバ200Bの開口201Bの表面には、方向Xに交差する方向に延在する凸部205が設けられる。このため、接触部105Bは、凸部205に嵌合する膨張部107を有し、凸部205は膨張部107に覆われている。このような別例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。
図13は、第3変形例に係る中空構造物を示す概略斜視図である。図14(a)は、図13のXIVa-XIVa線に沿った断面図である。図14(b)は、第3変形例に係る中空構造物の要部拡大側面図である。図13及び図14(a)に示されるように、中空構造物1Cの中空金属部材100Aにおける中央部103Aは、断面ハット形状を呈する。また、中空構造物1Cの金属メンバ200Cは、方向Zに沿って延在する板形状を呈しており、方向Yに沿って後退する後退部230を有する。後退部230は、金属メンバ200Cにおいて中央部103Aに接触する表面から方向Yに沿って後退する窪みである。また、中央部103Aは、方向Yに沿って延在し、後退部230に嵌合する突出部108を有する。このため、後退部230は、突出部108に対する被嵌合部に相当する。なお、突出部108は、後退部230に向かって膨張した部分である。
後退部230は、入口部230a、底部230b、及び、方向Yにおいて入口部230aと底部230bとの間に位置する中間部230cを含む。図14(a)に示されるように、後退部230においては、入口部230aから中間部230cにかけて方向Zに沿った径が広がった後、中間部230cから底部230bにかけて方向Zに沿った径が狭まっている。このため、入口部230aの径D11は、中間部230cの径D12よりも小さい。なお、径D11は、例えば、径D12の105%以上120%以下である。この場合、突出部108が後退部230の入口部230aにて確実に掛止される。加えて、中央部103Aの脆弱部分が入口部230a及びその周辺に形成されることを防止できる。
このような第3変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。図15(a)は、第3変形例の別例の要部拡大断面図であり、図15(b)は、第3変形例の別例を示す要部拡大側面図である。図15(a)に示されるように、中空金属部材100Bにおける中央部103Bは、断面Wハット形状を呈する。中央部103Bは、上記第3変形例と同様に、金属メンバ200Dの開口201Cに嵌合する突出部108Aを有する。突出部108Aの露出面は、例えば、金属メンバ200Dの表面と面一になっている。方向Zに沿った開口201Cの径は、方向Yにおいて中空金属部材100Bから遠ざかるほど大きい。方向Zに沿った開口201Cの最大径は、例えば、方向Zに沿った開口201Cの最小径の105%以上120%以下である。このような開口201Cに突出部108Aが嵌合することによって、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態、並びに上記変形例及びその別例に何ら限定されるものではない。
上記実施形態と、上記変形例及びその別例とは、適宜組み合わせてもよい。例えば、上記実施形態に対して上記第2変形例及びその別例を適宜組み合わせてもよい。具体的には、凹溝の表面に、方向Yに交差する方向(例えば、方向Xもしくは方向Z)に沿って延在する凸部を設けてもよい。この場合、当該凸部が中空金属部材と金属メンバとの分離を防止する楔として機能する。当該凸部は、金属メンバの回転を防止する楔としても機能する。上記実施形態にて上記凸部が設けられる場合、凹部は設けられなくてもよいし、凹部と凸部との両方が設けられてもよい。また、上記実施形態に設けられる凹部の表面に、上記第2変形例にて示される凹部及び凸部の少なくとも一方がさらに設けられてもよい。図16は、中央部の要部の一例を示す模式断面図である。図16に示されるように、金属メンバ200Eの第1部材210Aは、凸部218を含む凹部202Bを有し、第2部材220Aは、凸部228を含む凹部203Bを有する。この場合、凸部218,228によって、金属メンバの回転等を良好に規制できる。
同様に、上記第3変形例及びその別例に対して、上記第2変形例及びその別例を適宜組み合わせてもよい。具体的には、第3変形例及びその別例における後退部の表面に、方向Yに交差する方向(例えば、方向Xもしくは方向Z等)に沿って延在する凹部及び凸部の少なくとも一方を設けてもよい。この場合、後退部の径は、一定であってもよい。この場合であっても、凹部及び凸部に膨張部が入り込んで掛止されることによって、上記作用効果が奏される。
上記実施形態等において、凹部においては、入口部から中間部にかけて方向Zに沿った径が広がった後、中間部から底部にかけて方向Zに沿った径が狭まっているが、これに限られない。例えば、凹部において、入口部から中間部にかけて方向Xに沿った径が広がった後、中間部から底部にかけて方向Xに沿った径が狭まってもよい。また、凹部において、入口部から底部にかけて方向Yに交差する方向であり、且つ、方向X及び方向Zに沿った径が広がってもよい。もしくは、凹部において、入口部から中間部にかけて方向X及び方向Zに沿った径が広がった後、中間部から底部にかけて方向X及び方向Zに沿った径が狭まってもよい。
上記実施形態等において凸部が設けられる場合、凸部の径は一定でもよいし、一定でなくてもよい。例えば、凸部が方向Yに沿って延在する場合、方向Yに交差する方向における凸部の径は、先端から根元にかけて狭まってもよい。この場合、凸部に沿った膨張部が、凸部に対して強固に掛止される。
上記実施形態等において、凹部及び凸部の少なくとも一方は、複数設けられてもよい。この場合、凹部及び/または凸部に沿った形状を呈する突出部もしくは膨張部に加わる力を分散できるので、突出部もしくは膨張部の破損を抑制できる。
上記実施形態等において、中空金属部材と金属メンバとは、溶接されてもよい。例えば、中空金属部材と金属メンバとに対して隅肉溶接等が実施されてもよい。これにより、中空金属部材と金属メンバとを強固に一体化できる。
図17は、中空構造物の一例を示す断面図である。図17に示されるように、中空金属部材100Cは、方向Xにおいて金属メンバ200を挟持するように膨張している。具体的には、中空金属部材100Cは、金属メンバ200における端部101側の表面200aに接する膨張部109aと、金属メンバ200における端部102側の表面200bに接する膨張部109bとを有する。膨張部109a,109bのそれぞれは、方向Xから見て略円環形状を呈している。膨張部109a,109bは、例えば金属メンバ200とキャビティ16,24の凹部16a,24aとの隙間に膨張することによって、形成される。この場合、中空金属部材の軸方向に沿ったずれを良好に抑制できる。
上記第2変形例では、開口の周方向に沿った凹部及び凸部の少なくとも一方が設けられてもよい。この場合、開口には、上記凹部及び/または凸部とは他の凹部及び凸部の少なくとも一方が設けられてもよい。この場合、他の凹部及び/または凸部によって、中空金属部材の周方向に沿った金属メンバの回転を確実に規制できる。