[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はいかに説明する内容に限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。図1は、第1実施形態に係る真空遮断器(遮断器)100の一例を示す側面図である。図2は、真空遮断器100の一例を示す正面図である。図3は、真空遮断器100の一例を示す平面図である。本実施形態に係る真空遮断器は、電力系統に設置されて、電力系統又は系統中の変圧器、断路器等の電力機器の正常時の負荷電流を開閉するとともに、事故発生時には保護継電器と連携して事故電流を遮断することにより負荷側の設備を保護し、上流側への事故波及を防止する開閉器である。
図1から図3に示すように、真空遮断器100は、真空バルブ10と、ロッド部20と、駆動部30と、伝達機構40とを備える。これら真空バルブ10、ロッド部20、駆動部30、及び伝達機構40は、ケース50等に収容されている。なお、図1において、図中の上下方向が鉛直方向であり、左右方向が水平方向である。以下、鉛直方向を第1方向D1とし、図1紙面中の左右方向を水平方向における第2方向D2とする。また、第1方向D1及び第2方向D2のそれぞれに直交する方向を第3方向D3とする。
真空バルブ10は、第2方向D2に複数、例えば3台並んで配置される。本実施形態において、複数の真空バルブ10は、それぞれ同様の構成を有する。本実施形態では、電力系統における3相交流に対応するように、位相が異なる3つの交流に対応して3台の真空バルブ10が用いられるが、この形態に限定されず、1台又は2台、4台以上の真空バルブ10が用いられてもよい。
各真空バルブ10は、内部を真空状態にした不図示の収容部を備えており、この収容部内に固定電極11と、可動電極12とを有する。固定電極11は、主回路導体15を介して、例えば、電力系統の需要側に電気的に接続されている。また、可動電極12は、主回路導体14を介して、例えば、電力系統の供給側に電気的に接続されている。ただし、固定電極11が供給側に接続され、かつ可動電極12が需要側に接続されてもよい。固定電極11は、ケース50に固定されており、第1方向D1(鉛直方向)には移動しない。
可動電極12は、第1方向D1に移動可能であり、固定電極11に対して進退可能である。真空バルブ10は、可動電極12が進退することにより、可動電極12が固定電極11から退避して、固定電極11に対して電気的な接続を回避した開極状態と、可動電極12が固定電極11に向けて進行して、固定電極11に対して当接することにより電気的な接続を行う閉極状態とが切り替え可能となっている。固定電極11と可動電極12とは面接触することにより閉極状態での電気的な抵抗を少なくしている。なお、可動電極12は、収容部内においてガイド部等によりガイドされて第1方向D1に移動可能とした構成であってもよい。
ロッド部20は、真空バルブ10ごとにそれぞれ設けられる。各ロッド部20は、一方の端部が可動電極12に連結され、他方の端部が伝達機構40の後述する変換レバー46に連結される。ロッド部20は、例えば、絶縁材料により設けられ、長手方向に直交する断面が円形又は多角形のいずれであってもよい。ロッド部20は、ガイド機構13によって第1方向D1に移動可能な状態で支持されている。ガイド機構13は、ロッド部20を第1方向D1に移動可能に支持する軸受け作用を有する摺動接点等を備えて、主回路の一部分を構成している。ロッド部20は、可動電極12と一体で可動電極12と同一の方向、つまり第1方向D1に移動可能である。
駆動部30は、ケース50内において、真空バルブ10から離れて配置される。駆動部30は、第1方向D1に駆動力を発生させる。駆動部30は、電磁ソレノイド31と、操作ロッド32と、開閉制御回路33とを有する。電磁ソレノイド31は、開閉制御回路33の制御により操作ロッド32を第1方向D1に移動させる。図1では、開閉制御回路33がケース50の外側に配置される例を示しているが、開閉制御回路33がケース50の内側に配置されてもよい。
ここで、駆動部30の電磁ソレノイド31について説明する。図4から図7は、電磁ソレノイド31の内部構成の一例を示す断面図である。図4から図7は、いずれも電磁ソレノイド31の内部構成について示している。図4は、真空バルブ10が開極状態である場合を示している。図5は、真空バルブ10が開極状態から閉極状態に遷移する場合を示している。図6は、真空バルブ10が閉極状態である場合を示している。図7は、真空バルブ10が閉極状態から開極状態に遷移する場合を示している。なお、本実施形態で示す電磁ソレノイド31は、一例を示しており、他の構成が適用されてもよい。
電磁ソレノイド31は、図4から図7に示すように、固定鉄心34と、可動鉄心35と、投入コイル36と、遮断コイル37と、永久磁石38と、筐体39Aと、筐体39Bとを有する。筐体39Aと筐体39Bとは、第1方向D1に並んで配置され、内部に空間を形成する。筐体39A、39Bは、固定鉄心34、可動鉄心35、投入コイル36、遮断コイル37、及び永久磁石38を内部に収容する。筐体39Bは、例えば磁性材料で設けられる。筐体39Aは、磁性材料に限定されずに設けられる。従って、筐体39Aは、磁性材料で設けられてもよいし、非磁性材料で設けられてもよい。固定鉄心34は、例えば磁性材料で形成され、筐体39Bの上端に固定される。固定鉄心34と筐体39Bとは、磁気的に接続された状態となっている。固定鉄心34は、第1方向から見て中央部分又はほぼ中央部分に、第1方向D1に貫通する貫通孔34aを有する。
貫通孔34aには、操作ロッド32が挿通される。操作ロッド32は、例えば非磁性材料で形成され、第1方向D1に延びる棒状体である。操作ロッド32は、貫通孔34aに対して摺動可能である。従って、操作ロッド32は、固定鉄心34に対して第1方向D1に移動可能である。
可動鉄心35は、筐体39A内において固定鉄心34の下方に配置される。可動鉄心35は、操作ロッド32の一部に固定され、操作ロッド32と一体で第1方向D1に移動する。可動鉄心35は、例えば磁性材料で形成される。なお、筐体39A及び筐体Bは、内側に突出した環状の支持部139を挟んで保持している。支持部139は、例えば磁性材料で形成されている。可動鉄心35は、外周面が支持部139に囲まれた状態で配置されている。可動鉄心35と支持部139とは、磁気的に接続された状態となっている。可動鉄心35は、支持部139に対して第1方向D1に移動可能である。すなわち、可動鉄心35は、支持部139に案内されること、及び操作ロッド32が貫通孔34aに案内されることで、第1方向D1に沿って移動可能となっている。可動鉄心35は、第1方向D1の下方側端部にフランジ部35aを有する。フランジ部35aは、例えば磁性材料により可動鉄心35と一体で形成される。
投入コイル36及び遮断コイル37は、筐体39B内において、第1方向D1に並んだ固定鉄心34及び可動鉄心35を囲むように設けられ、第1方向D1と平行の中心軸(例えば、操作ロッド32に中心軸)の軸周り方向に巻かれている。投入コイル36及び遮断コイル37は、固定鉄心34と、筐体39A及び筐体Bに挟持されその内側に突出した支持部139との間に挟まれた状態で配置されている。投入コイル36及び遮断コイル37は、筐体39Bを貫通する不図示の配線を介して、不図示の駆動電源と電気的に接続されている。本実施形態では、投入コイル36が内側、遮断コイル37が外側に配置された構成であるが、この構成に限定されず、例えば、遮断コイル37が内側、投入コイル36が外側に配置された構成が適用されてもよく、さらに投入コイル36が上部に、遮断コイル37が下部に、あるいは投入コイル36が下部に、遮断コイル37が上部に配置されてもよい。
永久磁石38は、支持部139を挟んで投入コイル36及び遮断コイル37とは反対側に配置される。永久磁石38は、例えば環状であり、可動鉄心35を囲むように支持部139に設けられる。なお、永久磁石38は、環状に限定されず、他の形状であってもよい。例えば、複数の永久磁石38が、可動鉄心35を囲むように支持部139に設けられる形態であってもよい。なお、永久磁石38と支持部139とは磁気的に接続された状態となっている。永久磁石38は、可動鉄心35のフランジ部35aと対向する位置に配置される。
図4に示すように、投入コイル36及び遮断コイル37に電流を流さない場合、後述する接圧ばね43及び遮断ばね44の弾性力により、可動鉄心35が第1方向D1における筐体39Aの下方側に向けて開放力が作用した状態となる。この開放力により、固定鉄心34と可動鉄心35との間は、第1方向D1について所定寸法のギャップGが形成された状態となる。
図4に示す状態から投入コイル36に電流を流すと、図5に示すように、投入コイル36により磁束F1が形成される。磁束F1は、固定鉄心34、筐体39B、支持部139、及び可動鉄心35により構成される磁気回路に沿って形成される。この磁束F1により、固定鉄心34と可動鉄心35との間に互いに引き合う方向の電磁力が作用し、可動鉄心35が固定鉄心34側に引き寄せられる。また、可動鉄心35が固定鉄心34側に引き寄せられることで、可動鉄心35と永久磁石38との間に吸引力が作用する。この投入コイル36による電磁力及び永久磁石38の吸引力により、可動鉄心35が第1方向D1に沿って上方に移動する。
可動鉄心35の移動により、図6に示すように、可動鉄心35が固定鉄心34及び永久磁石38にそれぞれ接触又は近接した状態となる。この場合、可動鉄心35と永久磁石38との間の吸引力が、可動鉄心35に作用する上記の開放力よりも大きくなるように永久磁石38の磁力を設定しておく。この構成により、例えば、投入コイル36への通電がなくなった場合(すなわち磁束F1が形成されない場合)においても、固定鉄心34と可動鉄心35とが接触した状態が維持される。この場合、磁束F2は、固定鉄心34、筐体39B、支持部139、永久磁石38、及び可動鉄心35により構成される磁気回路に沿って形成される。
また、図6に示す状態から遮断コイル37に電流を流す場合、図7に示すように、遮断コイル37において磁束F3が形成される。この磁束F3は、永久磁石38による磁束F2とは磁界の向きが反対である。従って、磁束F3と磁束F2とが打ち消し合い、永久磁石38の磁力が低下する。永久磁石38の磁力低下により、可動鉄心35に作用する開放力が永久磁石38との間の吸引力よりも大きくなる。その結果、可動鉄心35が第1方向D1に沿った下方に移動する。可動鉄心35の移動により、図4に示すように、固定鉄心34と可動鉄心35との間は、第1方向D1について所定寸法のギャップGが形成された状態となる。
また、操作ロッド32は、第1方向D1の下端が電磁ソレノイド31の可動鉄心35に固定され、上端が伝達機構40のスコットラッセル機構41に連結される。操作ロッド32は、可動鉄心35と一体で第1方向D1に移動する。つまり、操作ロッド32は、可動鉄心35が第1方向D1の上方に移動する場合、可動鉄心35と一体で第1方向D1の上方に移動する。また、操作ロッド32は、可動鉄心35が第1方向の下方に移動する場合、可動鉄心35と一体で第1方向D1の下方に移動する。
図1から図3の説明に戻り、開閉制御回路33は、電磁ソレノイド31の動作を制御する。開閉制御回路33は、投入コイル36及び遮断コイル37に対して電流を供給するタイミング、及び電流の供給を停止するタイミングを制御する。開閉制御回路33は、演算処理部を有するコンピュータが用いられてもよい。
伝達機構40は、駆動部30の駆動力をロッド部20に伝達する。伝達機構40は、スコットラッセル機構41と、連結板42と、接圧ばね43と、遮断ばね44と、絶縁ロッド45と、変換レバー46とを有する。スコットラッセル機構41は、電磁ソレノイド31による第1方向D1の駆動力を第2方向D2の駆動力に変換する。スコットラッセル機構41は、第3方向D3に2つ並んで配置される(図2参照)。2つのスコットラッセル機構41は、操作ロッド32を挟んで配置される。スコットラッセル機構41の配置数は任意であり、スコットラッセル機構41が1つ又は3つ以上配置されてもよい。
図8から図10は、スコットラッセル機構41の一例を示す側面図である。図8は、真空バルブ10が開極状態である場合のスコットラッセル機構41の状態を示す図である。図9は、真空バルブ10が開極状態から閉極状態に遷移する場合、又は真空バルブ10が閉極状態から開極状態に遷移する場合のスコットラッセル機構41の状態を示す図である。図10は、真空バルブ10が閉極状態である場合のスコットラッセル機構41の状態を示す図である。
図8から図10に示すように、スコットラッセル機構41は、第1アーム61と、第2アーム62と、駆動ピン63と、従動ピン64と、支持ピン65と、連結ピン66とを有する。第1アーム61は、直線状に形成され、一端が駆動ピン63により操作ロッド32の上端に連結され、他端が従動ピン64により連結板42に連結される。駆動ピン63は、支持部材67に第1方向D1に形成された長穴68に沿って第1方向D1に往復移動可能である。第1アーム61は、長手方向の中央部において連結ピン66により第2アーム62に連結される。第1アーム61は、駆動ピン63、従動ピン64、及び連結ピン66に対してそれぞれ回動可能に設けられる。
第2アーム62は、直線状に形成され、第1アーム61よりも短い形態が用いられる。第1アーム61は、一端が支持ピン65により支持部材67に支持され、他端が連結ピン66により第1アーム61の長手方向の中央部に連結される。第2アーム62は、支持ピン65及び連結ピン66に対して回動可能に設けられる。第1アーム61及び第2アーム62の長さ及び連結位置は、図8に示すように、各リンク長(支持ピン65の中心と連結ピン66の中心とを結ぶ直線、駆動ピン63の中心と連結ピン66の中心とを結ぶ直線、従動ピン64の中心と連結ピン66の中心とを結ぶ直線)を同じにして、第2アーム62の支持ピン65を含む第2方向D2の線上に従動ピン64が配置されるように設定されている。
操作ロッド32が下端に配置される場合(図4参照)、図8に示すように、スコットラッセル機構41は、駆動ピン63が長穴68の下端に配置された状態となる。また、従動ピン64は、第2方向D2において最も支持ピン65側の位置に配置される。この場合、従動ピン64の中心と支持ピン65の中心とを結ぶ第2方向D2に沿った直線と、支持ピン65と連結ピン66とを結ぶ直線とがなす角度αは、最大値となる。
図8に示す状態から操作ロッド32が第1方向D1の上方に移動する場合(図5参照)、図9に示すように、スコットラッセル機構41は、駆動ピン63が長穴68に沿って上方に移動する。駆動ピン63の移動により、第1アーム61が駆動ピン63と一体で上方に移動しつつ、駆動ピン63を中心として図中の時計回りに回動する。この第1アーム61の移動及び回動により、従動ピン64は、第1方向D1における位置を変えることなく第2方向D2に沿って接圧ばね43側に移動する。従動ピン64が接圧ばね43側に移動するに従って、上記した角度αは小さくなっていく。
操作ロッド32が上端に配置される場合(図6参照)、図10に示すように、スコットラッセル機構41は、駆動ピン63が長穴68の上端に配置された状態となる。また、従動ピン64は、第2方向D2に沿って移動し、最も接圧ばね43側の位置に配置される。この場合、上記した角度αは最小値となる。
図10に示す状態から操作ロッド32が第1方向D1の下方に移動する場合、スコットラッセル機構41は、駆動ピン63が長穴68に沿って下方に移動する。駆動ピン63の移動により、第1アーム61が駆動ピン63と一体で下方に移動しつつ、駆動ピン63を中心として図中の反時計回りに回動する。この第1アーム61の移動及び回動により、従動ピン64は、第1方向D1における位置を変えることなく第2方向D2に沿って支持ピン65側に移動する。従動ピン64が支持ピン65側に移動するに従って、上記した角度αは大きくなっていく。そして、操作ロッド32が下端に配置される場合、図8に示すように、スコットラッセル機構41は、駆動ピン63が長穴68の下端に配置された状態となる。
このように、スコットラッセル機構41は、垂直直線運動を90°変換した水平直線運動が得られる機構である。つまり、スコットラッセル機構41は、第1方向D1の駆動力を、第1方向D1に直交する第2方向D2の駆動力に変換する。なお、スコットラッセル機構41により、駆動ピン63(操作ロッド32)の第1方向D1への移動量に対して、従動ピン64の第2方向D2への移動量の比率が異なる。すなわち、駆動ピン63を所定の単位量だけ第1方向D1に移動させた場合、駆動ピン63の位置に応じて、従動ピン64の第2方向D2への移動量が異なる。
例えば、図8に示す状態から駆動ピン63が上方に移動する場合は、従動ピン64は所定の比率で第2方向D2に沿って右方に移動するが、図9に示す状態から駆動ピン63が上方に移動する場合は、従動ピン64は図8の場合における所定の比率より低い比率で第2方向D2に沿って右方に移動する。従って、駆動ピン63を同じ量だけ移動させても、図8に示す状態では従動ピン64が第2方向D2に沿って大きく移動し、図9に示す状態では従動ピン64が第2方向D2に沿って小さく移動することになる。
図11は、比較例に係るリンク機構141の一例を示す図である。リンク機構141は、カム部161と、駆動ピン163と、従動ピン164と、支持ピン165とを有する。カム部161は、例えば直角三角形状である。カム部161のうち1つの角部は、駆動ピン163によって支持部材167の長穴168に連結される。カム部161のうち他の鋭角部は、従動ピン164により不図示の出力部に連結される。カム部161のうち直角部は、支持ピン165により支持される。カム部161は、駆動ピン163、従動ピン164、及び支持ピン165に対して回動可能に設けられる。リンク機構141は、駆動ピン163と支持ピン165とを結ぶ線と、従動ピン164と支持ピン165とを結ぶ線のなす角度が90度のいわゆる90度リンク機構である。
図12(A)及び(B)は、伝達機構40においてスコットラッセル機構41を用いた場合のリンク比(可動鉄心35の移動量と可動電極12の移動量との比)と、スコットラッセル機構41に代えて図11に記載のリンク機構141を用いた場合のリンク比とを示すグラフである。なお、図12(B)は、図12(A)の一部を拡大して示している。図12(A)及び(B)の横軸がリンク回転角を示し、図12(A)及び(B)の縦軸がリンク比を示す。なお、スコットラッセル機構41のリンク回転角は、上記の角度αである。また、リンク機構141のリンク回転角は、例えば駆動ピン163を中心とする場合のカム部161の回転角である。
図12(A)及び(B)に示すように、リンク機構141を用いた場合のリンク比(破線L2で示す)は、駆動ピン163と支持ピン165との間の長さと、従動ピン164と支持ピン165との間の長さとの比であり、リンク回転角によらず一定値のリンク比Rとなる。この値に対して、図12(A)に示すように、スコットラッセル機構41を用いた場合のリンク比(実線L1で示す)は、リンク回転角αが大きくなるに従って増加しており、リンク回転角が90°に近づくにつれて増加幅が大きくなっている。
本実施形態において、スコットラッセル機構41は、図12(B)に示すように、可動鉄心35が下端に位置する場合(角度α1の場合)には、リンク比がリンク機構141を用いた場合のリンク比Rよりも大きいリンク比R1となるように設定される。また、スコットラッセル機構41は、可動鉄心35が下端から上端に移動するに従ってリンク回転角αが小さくなり、リンク比が二次関数的(曲線的)に小さくなっている。また、スコットラッセル機構41は、可動鉄心35が上端に位置する場合(角度α2の場合)には、リンク比がリンク機構141を用いた場合よりも小さいリンク比R2となるように設定される。なお、リンク回転角αが角度α1と角度α2の中間点近傍(角度α3)で、リンク比がリンク機構141を用いた場合のリンク比Rとほぼ等しい値となるように設定されている。
図13(A)は、可動鉄心35の上方への移動量と、電磁ソレノイド31の負荷特性との関係を示すグラフである。図13(A)に示すように、電磁ソレノイド31の負荷特性(実線L3で示す)は、接圧ばね43による弾性力(一点鎖線L4で示す)と、遮断ばね44による弾性力(二点鎖線L5で示す)と、真空バルブ10において可動電極12に作用する自閉力(破線L6で示す)との和で表される。電磁ソレノイド31の負荷特性は、可動鉄心35の上昇量(ストローク)が所定値(所定位置)Sに到達するまでは緩やかに上昇し、所定値Sを超えた場合に急激に上昇し、その後は一定の上昇割合で上昇する。
ここで、電磁ソレノイド31の負荷は、図13(A)に示す負荷特性に対して、図12(A)に示すリンク比を乗じて算出される。図13(B)は、スコットラッセル機構41を用いた場合とリンク機構141を用いた場合とのそれぞれについて、電磁ソレノイド31の負荷を示すグラフである。
リンク機構141を用いた場合のリンク比については、上記したように電磁ソレノイド31の可動鉄心35の上昇量によらず一定値である(図12(A)のリンク比R参照)。このため、電磁ソレノイド31の負荷(破線L6で示す)は、図12(A)に示す負荷特性のグラフを相似形にしたグラフとして表される。つまり、図13(B)に示すように、リンク機構141において電磁ソレノイド31の負荷は、可動鉄心35の上昇量が所定値(所定位置)Sに到達するまでは緩やかに上昇し、所定値Sを超えた場合に急激に上昇し、その後は一定の上昇割合で上昇する。
また、スコットラッセル機構41を用いた場合、可動鉄心35の上昇量が所定値(所定位置)Sに到達するまでは緩やかに上昇し、所定値Sを超えた場合に急激に上昇し、その後は一定の上昇割合で上昇する。ただし、電磁ソレノイド31の可動鉄心35の上昇量が大きくなるに従って角度αが減少し、角度αが小さくなるに従ってリンク比が減少する。このため、電磁ソレノイド31の負荷(実線L7で示す)は、図13(B)に示すように、可動鉄心35の上昇量が所定値Sを超える範囲について、リンク機構141に比べて上昇量が抑制される。
その結果、可動鉄心35の上昇量よりも従動ピン64の第2方向D2への移動量が小さくなると、倍力作用により電磁ソレノイド31の駆動力が大きくなる。従って、電磁ソレノイド31の最大負荷を減らすことが可能となり、電磁ソレノイド31を駆動するための電圧(すなわち、可動電極12を固定電極11に圧接させるための駆動電圧)を下げることが可能となる。また、必要となる最大駆動力が小さくなるので、電磁ソレノイド31を小型化することができる。
また、可動鉄心35が下端位置から上昇する間は、角度αが大きく、リンク比が大きいので、可動鉄心35の上昇量に対して従動ピン64の第2方向D2への移動量が大きくなっている。従って、閉極動作において十分な投入速度を実現することができる。また、閉極時において電磁ソレノイド31の駆動力が大きくなるので、永久磁石38を小型化することができる。また、上記したリンク機構141では、直線-円弧変換を行っており、従動ピン164を第2方向D2の移動とするためには従動ピン164の逃げが必要となる。この構成に対して、スコットラッセル機構41を用いた場合、リンク機構141で必要な直線-円弧変換の逃げが不要なため、ガタの少ない機構を実現できる。
図1から図3の説明に戻り、連結板42は、各スコットラッセル機構41の第1アーム61の他端が従動ピン64により連結される。連結板42は、各スコットラッセル機構41の第1アーム61及び従動ピン64が第2方向D2に移動することにより、第1アーム61及び従動ピン64と一体で第2方向D2に移動する。
接圧ばね43は、第3方向D3に延びるプレート状の連結板42と、第2方向D2に延びる棒状の絶縁ロッド45との間に、例えば弾性変形した状態(収縮した状態)で挿入される。その結果、接圧ばね43は、連結板42及び絶縁ロッド45に対して両者が離れる方向に弾性力を付与する。接圧ばね43としては、例えばコイルバネが用いられる。本実施形態では、3本の絶縁ロッド45のそれぞれに接圧ばね43が配置されているが、この形態に限定されず、例えば1本又は2本の絶縁ロッド45に接圧ばね43が配置されてもよい。接圧ばね43は、可動電極12が固定電極11に当接した際に収縮して、可動電極12に対して、固定電極11への当接方向に接圧力を付与する。
遮断ばね44は、連結板42と、ケース50に設けられた仕切り板51との間に、例えば弾性変形した状態(収縮した状態)で挿入される。その結果、遮断ばね44は、連結板42及び仕切り板51に対して両者が離れる方向に弾性力を付与する。遮断ばね44としては、例えばコイルバネが用いられる。遮断ばね44は、電磁ソレノイド31による駆動力が所定の大きさ以上である場合に収縮して駆動力をロッド部20に作用させることにより、真空バルブ10の可動電極12を移動させて固定電極11に当接させる。また、遮断ばね44は、駆動力の解放時には蓄勢した弾性力を解放して可動電極12を固定電極11から離間させる。本実施形態では、遮断ばね44は、連結板42と仕切り板51との間に2本配置されているが、この形態に限定されず、1本又は3本以上連結板42と仕切り板51との間に配置されてもよい。
接圧ばね43及び遮断ばね44は、ケース50内において仕切り板51で仕切られた空間のうち、駆動部30が配置された空間(真空バルブ10が配置された空間と異なる空間)に設置される。この構成により、駆動部30の電磁ソレノイド31、接圧ばね43及び遮断ばね44の調整作業(例えばワイプ量の調整)等の作業性が向上し、閉極動作(投入動作)及び開極動作(遮断動作)の双方を適正な速度範囲に収めることが容易となる。
3本の絶縁ロッド45は、真空バルブ10のそれぞれに対応して配置される。各絶縁ロッド45は、ケース50の仕切り板51を貫通した状態で配置される。各絶縁ロッド45は、第2方向D2に沿った棒状部材であり、絶縁材料により形成される。絶縁ロッド45は、一端が連結板42に連結され、他端が変換レバー46に連結される。絶縁ロッド45は、連結板42と一体で第2方向D2に移動する。絶縁ロッド45は、接圧ばね43により変換レバー46側に弾性力が付与されている。
変換レバー46は、絶縁ロッド45とロッド部20とを連結する。変換レバー46は、スコットラッセル機構41とは異なる種類のリンク機構である。ただし、実施形態はこれに限定されるものではなく、スコットラッセル機構41が用いられてもよい。変換レバー46は、レバー本体46aと、回動軸46bと、駆動ピン46cと、従動ピン46dとを有する。レバー本体46aは、回動軸46bを中心に回動可能である。レバー本体46aは、駆動ピン46cにより絶縁ロッド45に連結される。レバー本体46aは、従動ピン46dによりロッド部20に連結される。
変換レバー46は、絶縁ロッド45が第2方向D2に移動する場合、絶縁ロッド45の移動に伴って、レバー本体46aが回動軸46bを中心として回動する。このレバー本体46aの回動により、従動ピン46dが第1方向D1に移動する。従動ピン46dが上端の位置に配置される場合、ロッド部20が最も上側に引き上げられた状態となる。従動ピン46dが下端の位置に配置される場合、ロッド部20が最も下側に押し下げられた状態となる。
次に、上記のように構成された真空遮断器100の動作を説明する。図14から図16は、真空遮断器100の動作を示す図である。まず、真空バルブ10を開極状態とする場合、図14に示すように、電磁ソレノイド31の可動鉄心35を下端に配置した状態で投入コイル36及び遮断コイル37に対して電流を流さない状態とする。その結果、連結板42は、遮断ばね44が伸長する弾性力を受けて支持ピン65側に(左方に)移動し、スコットラッセル機構41の従動ピン64が同様に支持ピン65側に(左方に)移動した状態となっている。
この状態では、スコットラッセル機構41の駆動ピン63が第1方向D1において長穴68の下端に配置されている。また、従動ピン64が第2方向D2において最も支持ピン65側に配置される。このため、絶縁ロッド45は、第2方向D2においてスコットラッセル機構41側に引き寄せられる。従って、変換レバー46の従動ピン46dが上端の位置に配置され、ロッド部20が最も上側に引き上げられた状態となる。その結果、真空遮断器100は、遮断ばね44の弾性力により、真空バルブ10の可動電極12が固定電極11に対して上方に離れた開極状態が保持される。
続いて、真空バルブ10を開極状態から閉極状態に遷移させる場合、投入コイル36に電流を供給して可動鉄心35を上方に移動させる。その結果、スコットラッセル機構41の駆動ピン63が第1方向D1の上方に移動し、従動ピン64が第2方向D2において変換レバー46側に(右方に)移動する。このため、連結板42及び絶縁ロッド45は、第2方向D2において変換レバー46側に(右方に)押し出される。従って、連結板42は、遮断ばね44を圧縮(収縮)させながら移動し、変換レバー46の従動ピン46dが下方に移動することにより、ロッド部20が押し下げられた状態となる。その結果、図15に示すように、真空バルブ10の可動電極12が固定電極11側に移動し、可動電極12が固定電極11に接触した状態となる。
続いて、投入コイル36への電流供給を継続することにより、さらに可動鉄心35を上方に移動させる。その結果、スコットラッセル機構41の駆動ピン63が第1方向D1の最上位置に移動し、従動ピン64が第2方向D2において変換レバー46側にさらに移動する。このため、連結板42及び絶縁ロッド45は、第2方向D2において変換レバー46側にさらに押し出される。従って、連結板42は、接圧ばね43を収縮させながら第2方向D2において変換レバー46側に移動する。その結果、ロッド部20には押し下げる力が作用し、図16に示すように、可動電極12が固定電極11に所定の接圧力により接触した閉極状態となる。なお、閉極状態では、可動鉄心35のフランジ部35aが永久磁石38に吸着することにより、閉極状態が保持される。
次に、真空バルブ10を閉極状態から開極状態に遷移させる場合、遮断コイル37に電流を供給して可動鉄心35を下方に移動させる。その結果、スコットラッセル機構41の駆動ピン63が第1方向D1の下方に移動し、従動ピン64が第2方向D2において支持ピン65側に(左方に)移動する。このため、連結板42及び絶縁ロッド45は、第2方向D2において支持ピン65側に引き戻される。従って、接圧ばね43が伸長し、次いで、遮断ばね45が伸長しつつ変換レバー46の従動ピン46dが上方に移動し、ロッド部20が上方に引き上げられる。その結果、真空バルブ10の可動電極12が固定電極11から離間する方向に移動して真空バルブ10が開極状態となる。また、可動鉄心35が固定鉄心34及び永久磁石38から離れて下端に配置され、図14に示す状態に戻る。
このように、本実施形態に係る真空遮断器100によれば、スコットラッセル機構41により駆動部30の移動量とロッド部20の移動量とのリンク比を移動量に応じて変動させるので、閉極動作を行う際、負荷荷重の増大に応じてリンク比が小さくなるようにスコットラッセル機構41を設定することにより、適正な投入速度を確保しつつ、倍力作用により閉極時の駆動力を容易に確保することができる。その結果、安定した閉極動作及び開極動作を実現しつつ、駆動部30の小型化及び機器のコンパクト化を図ることができる。さらに、スコットラッセル機構41により駆動部30の駆動力を小さく抑えるので、例えば駆動部30に与える駆動電圧を小さく設定でき、この駆動電圧が変動してもその影響が小さくなるので駆動電圧の調整が容易となる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図17は、第2実施形態に係る真空遮断器(遮断器)100Aの一例を示す図である。図17に示す真空遮断器100Aは、駆動部30Aがケース50の上部に配置され、電磁ソレノイド31が操作ロッド32を第2方向D2に沿って移動させる構成を示している。このように、駆動部30Aは、第2方向に駆動力を発生させる構成であってもよい。なお、駆動部30Aは、ケース50における配置以外の構成については、第1実施形態の駆動部30と同様である。第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。
真空遮断器100Aにおける伝達機構40Aは、スコットラッセル機構41Aを備える。伝達機構40Aは、第1実施形態の伝達機構40と異なり、変換レバー46を省略している。スコットラッセル機構41Aは、従動ピン64により第1アーム61の一端が連結板42を介してロッド部20に直接連結され、第2方向D2の駆動力を第1方向D1の駆動力に変換する。また、遮断ばね44は、連結板42と、真空バルブ10の上方に配置される仕切り板51Aとの間に配置される。仕切り板51Aは、ケース50に設けられる。なお、スコットラッセル機構41Aの他の構成については、第1実施形態のスコットラッセル機構41と同様である。
本実施形態に係る真空遮断器100Aは、スコットラッセル機構41Aにより駆動部30Aの移動量とロッド部20の移動量とのリンク比を移動量に応じて変動させるので、第1実施形態と同様に、閉極動作を行う際、負荷荷重の増大に応じてリンク比が小さくなるようにスコットラッセル機構41Aを設定することにより、適正な投入速度を確保しつつ、倍力作用により駆動力を閉極時の駆動力を容易に確保する小さく抑えることができる。その結果、安定した閉極動作及び開極動作を実現しつつ、駆動部30Aの小型化及び機器のコンパクト化を図ることができる。さらに、スコットラッセル機構41Aにより駆動部30Aの駆動力を小さく抑えるので、例えば駆動部30Aに与える駆動電圧を小さく設定でき、この駆動電圧が変動してもその影響が小さくなるので駆動電圧の調整が容易となる。また、スコットラッセル機構41Aが直接ロッド部20を移動させるため、電磁ソレノイド31による駆動力を効率的にロッド部20に伝達することができる。
また、真空遮断器100Aは、第1実施形態の真空遮断器100と比較して、伝達機構40Aにおいて変換レバー46がないので、伝達機構40Aの簡略化を図ることによりコストを削減することができる。
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記した実施形態では、駆動部30が電磁ソレノイド31を有する構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されず、他の駆動機構を用いた構成であっても同様の説明が可能である。
また、上記した実施形態では、接圧ばね43及び遮断ばね44がスコットラッセル機構41と変換レバー46との間に配置された構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されず、例えば、真空バルブ10側に配置されるなど、他の位置に設けられてもよい。なお、遮断ばね44は、真空バルブ10側に近い方に配置した方が電磁ソレノイド31側に組み込むより、遮断動作時に接圧ばね43の力をリンク比に左右されることなく効率的に作用させることができる。