JP7154496B2 - 珪化バリウム系膜及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、分光感度に優れた珪化バリウム系膜、及びその製造方法に関するものである。
シリコンを含有するワイドバンドギャップ半導体は、非常に特異的な特性を示すため、太陽電池材料や熱電変換材料等の環境・エネルギー分野で広く利用されている。
中でも、バリウム(Ba)とシリコン(Si)からなる珪化バリウム系化合物は、BaSi組成でバンドギャップが1.3eVであり、Siの1.1eVよりも大きく、注目されている(非特許文献1)。さらにSrを添加することでバンドギャップを1.4eVまで大きく調整することが可能である(特許文献1)。
珪化バリウム系化合物の使用形態としては、膜として使用することが有効であり、特許文献2にはn型とn+型珪化バリウム膜を積層した太陽電池がその例として挙げられている。
このような珪化バリウム系膜の製造方法としては、MBE法(分子線エピタキシー法)により、シリコン(111)基板上に成膜する方法が知られている。この成膜方法によれば、各元素の組成を制御した成膜が可能であるが、未だ性能において更なる改善が必要であり、また、大面積への均一成膜が困難であり、工業的な量産には課題がある。そのため、大面積への均一成膜や各元素の精密制御が可能であり、かつ成膜速度が速いスパッタリング法での成膜技術が要求されている。
スパッタリング法に関して、本発明者らは、特許文献3に高密度で割れのない珪化バリウム多結晶体及びそれを用いたスパッタリングターゲットを開示しているが、珪化バリウム系膜に関する検討は少なく、非特許文献2に挙げられるものもあるが、更なる太陽電池などの特性向上に関する検討は進んでいない。
特開2005-294810号公報 特開2008-66719号公報 特開2012-214828号公報
Japanese Journal of Applied Physics Vol.49 04DP05-01-04DP05-05(2010) Applied Physics Express 11 071401(2018)
本発明は、分光感度に優れた珪化バリウム系膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記のような背景に鑑み、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、分光感度に優れた珪化バリウム系膜、及びその製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の態様は以下の通りである。
(1)水含有量が×1018atms/cm以上1×10 20 atms/cm以下であることを特徴とする珪化バリウム系膜。
(2)ラマンスペクトルにおいて、Aピークに対するSiTOフォノンのピーク強度比が10%未満である上記(1)に記載の珪化バリウム系膜
(3)多結晶膜である上記(1)又は(2)に記載の珪化バリウム系膜。
(4)酸素含有量が0.01atm%以上10atm%以下である上記(1)~(3)のいずれかに1項に記載の珪化バリウム系膜。
(5)XRD回折試験において斜方晶帰属するピークのみで構成される結晶構造を有する上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の珪化バリウム系膜。
(6)上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の珪化バリウム系膜の製造方法であり、分子エキタキシーにより成膜し、次いで、水素の存在下にプラズマ処理することを特徴とするバリウム系膜の製造方法。
(7)上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の珪化バリウム系膜の製造方法であり、スパッタリング法により水素の存在下にて成膜することを特徴とするバリウム系膜の製造方法。
(8)珪化バリウム系スパッタリングターゲットを用いる上記(7に記載の珪化バリウム系膜の製造方法。
(9)スパッタリング後にプラズマ処理する上記(7)又は(8)に記載の珪化バリウム系膜の製造方法。
(10)ラマンスペクトルにおいて、Aピークに対するSiTOフォノンのピーク強度比が10%未満であり、スパッタリング法により成膜される珪化バリウム系膜。
(11)珪化バリウム系スパッタリングターゲットを用いる上記(10)に記載の珪化バリウム系膜。
(12)上記(1)~(5)、(10)、(11)のいずれか1項に記載の珪化バリウム系膜とシリコン層とが積層されてなる珪化バリウム系積層膜。
(13)上記(1)~(5)、(10)、(11)のいずれか1項に記載の珪化バリウム系膜と基板とで構成されてなる珪化バリウム系膜を含む積層基板。
(14)上記(13)に記載の積層基板を用いる素子。
(15)上記(14)に記載の素子を用いる電子機器。
本発明によれば、太陽電池の吸収層に適した分光感度に優れた珪化バリウム系膜、及びその効率的な製造方法が提供される。
本発明の珪化バリウム系膜は、水素含有量が×1018atms/cm以上1×10 atms/cm以下であることを特徴とする珪化バリウム系膜(珪化バリウム系膜A)、及びラマンスペクトルにおいて、Aピークに対するSiTOフォノンのピーク強度比が10%未満あり、スパッタリング法により成膜される珪化バリウム系膜(珪化バリウム系膜B)に関するものである。
最初に、珪化バリウム系膜Aについて説明する。
本発明の珪化バリウム系膜Aは水素含有量が×1018atms/cm以上1×10 20 atms/cm下、好ましくは5×1018atms/cm以上5×1019atms/cm以下である。
この範囲に水素を含有することで、珪化バリウム系膜の結晶欠陥から生じる分光特性を改善することができる。多量に水素を含有すると結晶欠陥以外の部分に干渉し、膜の結晶性を悪化させ、膜の分光特性が悪化する。また、水素含有量が少ないことで膜中に存在する格子欠陥に起因する分光感度の低下が発生する。
本発明における珪化バリウム系膜A中の水素含有量は、SIMS(二次イオン質量分析法)により測定を行うことで求めることができる。測定では、200nmの膜厚の場合、膜の基板側と反対側から100nm厚の表層を除いた、厚さ100~200nmの間の層中に存在する水素量を求める。表層は表面酸化や、凹凸の影響を受けるため膜本体の水素量を表していると必ずしも言えないためである。
本発明の珪化バリウム系膜Aは多結晶膜であることが好ましい。多結晶膜とすることにより、単結晶と比較して膜の強度、膜内の分光特性の分布の低減などの膜特性の安定性が向上する。
本発明の珪化バリウム系膜Aはラマンスペクトルにおいて、Aピークに対するSiTOフォノンのピーク強度比が10%未満であることが好ましく、更に好ましくは2%以下であり、更に好ましくは0.5%以下である。ラマンスペクトルにおいて、SiTOフォノンを示すということは、珪化バリウムとして合金化していない独立元素として存在していることを表している。これは特に結晶欠陥が発生した際に起きると推測され、SiTOフォノンのピークが存在することで分光感度に悪影響を与えている。この原因であるSiTOフォノンを低減することで結晶欠陥を低減し、分光特性を向上させることができる。
さらに、珪化バリウム系膜Aは、酸素含有量が10atm%以下であることが好ましい。さらに好ましくは5atm%以下であり、特に好ましくは3atm%以下である。水素を導入することで結晶欠陥の影響が低減するが、酸素が多く存在すると、膜中の酸素と水素が反応し、水分として珪化バリウム膜中に存在することで珪化バリウムが珪酸化物に変化し、膜特性が悪化する。酸素含有量は、0.01atm%以上であることが好ましく、更に好ましくは0.1atm%以上である。上記範囲に酸素量を調整することで、結晶性を維持しつつ好ましいバンドギャップにすることが可能となる。
本発明における珪化バリウム系膜A中の酸素量の測定は、RBS(ラザフォード後方散乱分析法)を使用して測定することができる。さらに精度が必要な場合はSIMSを用いて測定し、atm%に換算する。酸素含有量は、膜の表層50nm厚の層を除いた、50~300nmの間の層中に存在する酸素量と定義する。
なお、本発明の珪化バリウム系膜Aにおいては、水素及び酸素以外のマグネシム、カルシウム、ストロンチウム等の微量の不純物を含有しても良い。
本発明の珪化バリウム系膜AはXRD回折試験において、斜方晶系の結晶構造に帰属されるピークのみで構成されていることが好ましい。このような結晶相を有する珪化バリウム系膜とすることにより、膜特性に優れ、安定性の高い膜を得ることが可能となる。
本発明におけるXRD回折試験において、斜方晶系の結晶構造に帰属されるピークのみで構成されていることは以下のように確認することができる。すなわち、斜方晶系の結晶構造に帰属されるピークとは、Cuを線源とするXRDの2θ=20~80°の範囲内に検出される回折ピークが、JCPDS(Joint Committee for Powder Diffraction Standards)カードのNo.01-071-2327に帰属されるピークパターンまたはそれに類似したピークパターン(シフトしたピークパターン)に指数付けできるものであることを指す。
本発明の珪化バリウム系膜Aの厚みは50nm~2000nmであることが好ましく、さらに好ましくは100nm~1000nmであり、特に好ましくは100nm~800nmである。
本発明の珪化バリウム系膜Aは、その必要特性に応じて元素を含有しても構わない。例えばp型とするために、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)等の周期表13族の元素や、n型とするために、窒素(N)、リン(P)、アンチモン(Sb)などを含有しても良い。
本発明の珪化バリウム系膜Aは、水素を導入し、スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシー)法、化学蒸着法など様々な方法があるが、MBE法、もしくはスパッタリング法により成膜された膜であることが好ましい。
MBE法を用いた場合においては、バリウム、及びシリコンのターゲットを使用し、堆積速度を調整し最適な組成比の珪化バリウム系膜を得ることが可能となる。
堆積速度として、(バリウムの堆積速度)/(シリコンの堆積速度)の比で1.7以上3.1以下であることが好ましく、さらに好ましくは2.0以上2.5以下である。その範囲とすることで最適な組成の珪化バリウム(BaSi)膜を得ることが可能となる。
スパッタリング法としては、DCスパッタリング法、RFスパッタリング法、ACスパッタリング法、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等を適宜選択することができる。これらの中、大面積に均一に、かつ高速成膜可能な点でDCマグネトロンスパッタリング法、又はRFマグネトロンスパッタリング法がより好ましく、特にRFマグネトロンスパッタリング法であることが一層好ましい。
スパッタリング時の温度は特に限定されるものではないが、結晶性を向上させるためには400℃以上が好ましく、さらに好ましくは500℃以上である。上記温度は800℃以下であることが好ましい。それ以上の温度では装置に用いる材質が高価となる。スパッタリング時の雰囲気ガスは、通常、不活性ガス、例えば、アルゴンガス、窒素ガスなどを用いる。
珪化バリウム系膜中への水素の導入は、良好な珪化バリウム系膜の成膜時、もしくは成膜後に水素を導入する。
水素の導入については特に限定はないが、より欠陥部分に作用させるためには活性水素を使用することが好ましく、RFプラズマガンによる活性水素の導入やスパッタリングガス中に水素を導入することなどが挙げられる。RFプラズマガンを使用する場合、その照射時間によって、膜中水素量をコントロールすることが可能であり、照射時間として1分以上60分以下が好ましく、さらに好ましくは5分以上40分以下であり、特に好ましくは15分以上30分以下である。その範囲とすることで好ましい量の活性水素を膜中に導入することが可能となる。
また、成膜後に膜中に存在する水素を活性化することによっても同様の効果を及ぼすことができる。たとえば成膜後において珪化バリウム系膜をプラズマ中に晒しておくことで膜中の水素が活性化し、欠陥による分光特性低下を抑制することが可能となる。
水素の導入により、珪化バリウム系膜におけるラマンスペクトルにおけるSiTOフォノンが10%未満とすることができる。
なお、本発明の珪化バリウム系膜Aに用いられるスパッタリングターゲットとしては、BaSi等の珪化バリウム系スパッタリングターゲットが好ましい。該珪化バリウム系スパッタリングターゲットを前記スパッタリング法により本発明の珪化バリウム系膜が得られる。
ここで、珪化バリウム系スパッタリングターゲットの製造方法は特に限定されるものではない。珪化バリウム系スパッタリングターゲットを製造する際のスパッタリング法においては珪素-バリウム比について、珪化バリウムスパッタリングターゲット上に珪素、もしくはバリウムを載せた状態で製膜することによっても珪素-バリウム比を変えることが可能となる。
スパッタリング成膜時のガス圧力によっても珪素-バリウム比を調整することが可能である。
珪素-バリウム比は分光感度特性の良好なBaSi斜方晶の原子量比が1:2であるため、膜の組成についても1:2に近いことが好ましく、スパッタリングガス圧を上げることで珪素:バリウム比を1:2に近づけることが可能である。しかし、ガス圧を高くするだけでは結晶性が悪化すると共に成膜速度が低下する傾向がある。
ガス圧の好ましい範囲は0.5Pa以上1.0Pa以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.6Pa以上0.8Pa以下である。そのガス圧力にすることで結晶性を向上させた珪化バリウム膜を得ることが可能となる。
次に、珪化バリウム系膜Bについて説明する。
珪化バリウム系膜Bは、ラマンスペクトルにおいて、Aピークに対するSiTOフォノンのピーク強度比が10%未満であり、スパッタリング法により成膜される珪化バリウム系膜である。
本発明の珪化バリウム系膜Bはラマンスペクトルにおいて、Aピークに対するSiTOフォノンのピーク強度比が10%未満であり、好ましくは2%以下であり、更に好ましくは0.5%以下である。ラマンスペクトルにおいて、SiTOフォノンを示すということは珪化バリウムとして合金化していない独立元素として存在していることを表している。これは特に結晶欠陥が発生した際に起きると推測され、SiTOフォノンのピークが存在することで分光感度に悪影響を与えている。この原因であるSiTOフォノンを低減することで結晶欠陥を低減し、分光特性を向上させることができる。
本発明の珪化バリウム系膜Bの水素含有量は、1×1017atms/cm以上1×1021atms/cm以下が好ましく、更に好ましくは3×1018atms/cm以上1×1020atms/cm以下、特に好ましくは5×1018atms/cm以上5×1019atms/cm以下である。この範囲に水素を含有することで、珪化バリウム系膜の結晶欠陥から生じる分光特性を改善することができる。ただし、多量に水素を含有すると結晶欠陥以外の部分に干渉し、膜の結晶性を悪化させ、膜の分光特性が悪化する。また、水素含有量が少ないことで膜中に存在する格子欠陥に起因する分光感度の低下が発生する。
本発明の珪化バリウム系膜Bは多結晶膜であることが好ましい。多結晶膜とすることにより、単結晶と比較して膜の強度、膜内の分光特性の分布の低減など膜特性の安定性が向上する。
さらに、珪化バリウム系膜Bの酸素含有量が10atm%以下であることが好ましい。さらに好ましくは5atm%以下であり、特に好ましくは3atm%以下である。水素を導入することで結晶欠陥の影響が低減するが、酸素が多く存在すると、膜中の酸素と水素が反応し、水分として珪化バリウム膜中に存在することで珪化バリウムが珪酸化物に変化し、膜特性が悪化する。下限値としては、0.01atm%以上であることが好ましく、更に好ましくは0.1atm%以上である。その範囲に酸素量を調整することで、結晶性を維持しつつ好ましいバンドギャップにすることが可能となる。
なお、本発明の珪化バリウム系膜Bにおいては、水素及び酸素以外のマグネシム、カルシウム、ストロンチウム等の微量の不純物を含有しても良い。
本発明の珪化バリウム系膜BはXRD回折試験において、斜方晶系の結晶構造に帰属されるピークのみで構成されていることが好ましい。このような結晶相を有する珪化バリウム系膜とすることにより、膜特性に優れ、安定性の高い膜を得ることが可能となる。
本発明の珪化バリウム系膜Bの厚みは50nm~2000nmであることが好ましく、さらに好ましくは100nm~1000nmであり、特に好ましくは100nm~800nmである。
本発明の珪化バリウム系膜Bは、その必要特性に応じて元素を含有しても構わない。例えばp型とするためにホウ素(B)やアルミニウム(Al)等の13族やn型とするために窒素(N)、リン(P)、アンチモン(Sb)を含有しても良い。
本発明の珪化バリウム系膜Bは、スパッタリング法により成膜された膜である。
スパッタリング法としては、DCスパッタリング法、RFスパッタリング法、ACスパッタリング法、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等を適宜選択することができ、これらの中、大面積に均一に、かつ高速成膜可能な点でDCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法がより好ましく、特にRFマグネトロンスパッタリング法であることが一層好ましい。
スパッタリング時の温度は特に限定されるものではなく、結晶性を向上させるためには400℃以上で製膜することが好ましい。さらに好ましくは500℃以上である。上限としては800℃以下であることが好ましい。それ以上の温度では装置に用いる材質が高価となる。スパッタリング時の雰囲気ガスは、通常、不活性ガス、例えばアルゴンガス、窒素ガスなどを用いる。
良好な珪化バリウム系膜を作製するに当たり、成膜時、もしくは成膜後に水素を導入することが好ましい。
水素の導入方法について特に限定はなく、より欠陥部分に作用させるためには活性水素を利用することが好ましい。そのためには、RFプラズマガンによる活性水素の導入やスパッタリングガス中に水素を導入することなどが挙げられる。RFプラズマガンを利用する場合、その照射時間によって、膜中水素量をコントロールすることが可能であり、照射時間として1分以上60分以下が好ましく、さらに好ましくは5分以上40分以下であり、特に好ましくは15分以上30分以下である。その範囲とすることで好ましい量の活性水素を膜中に導入することが可能となる。
また、成膜後に膜中に存在する水素を活性化することによっても同様の効果を及ぼすことができる。たとえば成膜後において珪化バリウム系膜をプラズマ中に晒しておくことで膜中の水素が活性化し、欠陥による分光特性低下を抑制することが可能となる。
水素の導入により、珪化バリウム系膜におけるラマンスペクトルにおけるSiTOフォノンが10%未満となる。
なお、本発明の珪化バリウム系膜Bに用いられるスパッタリングターゲットとしては、BaSi等の珪化バリウム系スパッタリングターゲットが好ましく、該珪化バリウム系スパッタリングターゲットを前記スパッタリング法により本発明の珪化バリウム系膜が得られる。ここで、珪化バリウム系スパッタリングターゲットの製造方法は特に限定されるものではない。
珪化バリウム系スパッタリングターゲットを製造する際のスパッタリング法においては珪素-バリウム比について、珪化バリウムスパッタリングターゲット上に珪素、もしくはバリウムを載せた状態で製膜することによっても珪素-バリウム比を変えることが可能となる。
スパッタリング成膜時のガス圧力によっても珪素-バリウム比を調整することが可能である。
珪素-バリウム比は分光感度特性の良好なBaSi斜方晶の原子量比が1:2であるため、膜の組成についても1:2に近いことが好ましく、スパッタリングガス圧を上げることで珪素:バリウム比を1:2に近づけることが可能である。しかし、ガス圧を高くするだけでは結晶性が悪化すると共に成膜速度が低下する傾向がある。
ガス圧の好ましい範囲は0.5Pa以上1.0Pa以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.6Pa以上0.8Pa以下である。そのガス圧力にすることで結晶性を向上させた珪化バリウム膜を得ることが可能となる。
本発明の珪化バリウム系膜A,Bは、シリコン層を積層して珪化バリウム系積層膜とすることもできる。また、本発明の珪化バリウム系膜A,Bは、基板と構成される珪化バリウム系膜を含む積層基板とすることもできる。
基板の材質は特に限定はなく、例えばシリコンやアルカリフリーガラス、石英ガラス、ゲルマニウム、サファイア等が挙げられ、その中でも珪化バリウム膜を高結晶に成長させるためにはシリコン基板を用いることが好ましい。シリコン基板に単結晶シリコンを用いることで、基板と膜との間の格子不整合を低減し、膜の結晶性を向上させることが可能となる。また、シリコンの方位は(111)に配向したものを用いることが好ましい。
さらに基板にシリコンを用いることで、バンドギャップ1.1eVのシリコン層と1.3の珪化バリウム層を利用したタンデム構造を構築することでさらなる太陽電池特性の向上を見込むことができる。
珪化バリウム系膜A,Bを含む積層基板の表層はキャップ層が存在することが好ましい。表層をキャップすることで表面からの酸化の進行を抑制することが可能となる。
キャップ層として用いる層の材質は特に限定はなく、例えばシリコン(結晶性、非晶質)、等が挙げられ、その中でも酸化を抑制するためには金属など酸素を含まない層であることが好ましい。
これら珪化バリウム系積層膜、珪化バリウム系膜を含む積層基板の製造方法としては、例えば、太陽電池用吸収層を想定した場合、ドーパントを添加しない珪化バリウム膜、n型珪化バリウム系膜、p型珪化バリウム系膜、キャップ層を少なくとも二つ以上含む層を成膜する。成膜方法の限定はなく、物理蒸着、化学蒸着など各種成膜方法を利用することが可能である。
本発明の珪化バリウム膜A,Bは分光感度に優れることから、珪化バリウム系膜を含む積層基板を用いた素子に好適であり、特に太陽電池光吸収層部分や熱電変換素子に好適で
ある。また、該素子を用いることにより、電気機器に好適であり、特に太陽電池モジュールや熱電変換モジュールに好適である。
分光感度はA(λ)/W(λ)(A:出力電流、W:照射強度)で表され、太陽電池特性を示す指標となる。また、バイアス電圧をかけることで、その電圧における出力電流を把握することが可能となる。ここでの評価として、下記の数式で分光感度(規格化)を定義した。
分光感度(規格化)=最大の分光感度(A/W)/バイアス電圧(V)
バイアス電圧(V):バイアス電圧の絶対値
分光感度が高いほど、解放電圧以下の電圧値において、取り出し電流が高くなり、太陽電池変換効率が向上することが期待される。本発明の珪化バリウム系膜の分光感度(規格化)は0.2以上にでき、更には0.6以上にでき、特には2.0以上にすることもできる。
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、各特性の評価は、それぞれ、以下のようにして行った。
(ラマンスペクトル)
ラマンスペクトルはラマン分光法(JASCO製、NRS-5100)を用いて、励起波長532nmの条件で測定を実施し、480cm-1付近のピークをAピーク、520cm-1付近のピークをSTOフォノンに由来するピークとしてそのピーク強度の比を算出した。
ピーク強度比(%)=SiTOピーク強度/Aピーク強度
なお、2本のピークは分離した上で強度を算出した。
(バリウム量、シリコン量、酸素量分析)
珪化バリウム系膜中のバリウム量、シリコン量、及び酸素量は、いずれも、RBS(ラザフォード後方散乱分析法装置(筑波大学応用加速部門1MVタンデトロン加速器)により定量した。
(水素含有量)
200nmの膜厚の場合、SIMSを用いて測定を行い、基板から見て上面から深さ方向に測定し、表層100nmを除いた厚み100~200nmにおける測定値の平均値を算出した。
(X線回折試験)
珪化バリウム系膜の結晶相は、X線回折試験で同定した。測定条件は以下の通りである。
・X線源 :CuKα
・パワー :40kV、40mA
・走査速度 :1°/分
得られた回折パターンを解析し、(1)斜方晶系の結晶構造に帰属されるピークで構成されている相、及び(2)前記(1)以外の他の結晶相に分類し、(1)、(2)の結晶相のそれぞれにおいて同定された場合は「有」とし、同定されなかった場合は「無」とした。
(分光感度)
珪化バリウム系膜の分光感度の測定は、表層側に直径1mm、厚さ80nmのITO電極、基板の裏面にAl電極を作製し、電極間に電圧を印加した上で、分光計器社製装置、SM-1700Aを用いて測定した。
(実施例1~3)
バリウム並びにシリコンターゲットを用いて下記の条件にてMBE法を用いて成膜を行った。
基板 :(111)シリコン単結晶基板
到達真空度 :10-7 Pa
膜厚 :200nm
水素導入は、成膜後RFプラズマガンを使用下記の条件で行った。
パワー :10 W
照射時間 :0~30分
得られた珪化バリウム膜に対して、基板として非結晶シリコンを用い、3nmMBE法にてシリコン膜を積層した。
(実施例4)
珪化バリウムのスパッタリングターゲットを用いて、下記の条件にてスパッタリング製膜試験を実施した。バリウムのチップを珪化バリウムスパッタリングターゲット上に載せ、アルゴンを衝突させて、珪化バリウムからは珪素元素とバリウム元素が飛び出るようにし、また、バリウムからはバリウム元素が飛び出るようにして、スパッタリング処理した。
(スパッタリング条件)
放電方式 :RFスパッタリング
製膜装置 :マグネトロンスパッタリング装置
ターゲットサイズ :50mmφ
バリウムチップサイズ :5mm角
バリウムチップ数 :3個(エロージョン部に設置)
ターゲット―基板間距離:200mm
製膜圧力(装置内ガス圧力):0.25~1Pa
導入ガス :アルゴン(3体積%の水素を含有)
放電パワー :100W(5.1W/cm2)
基板 :(111)シリコン単結晶基板
(25mm角 0.5mm厚み)
基板温度 :600℃
膜厚 :200nm
その後、膜中に導入した水素濃度を調整するためにプラズマを発生させた状態で、ターゲットのシャッターを閉じ、30分間のプラズマ処理を実施した。
成膜後プラズマ処理 :180℃、30分
上記のプラズマ処理後、キャップ層として非結晶シリコンを3nmスパッタリング法にて180℃で3nmの膜厚になるように成膜した。
以上の条件にて製膜を行なった結果、表2に示されるようなラマンスペクトル、水素濃度、分光特性、並びに結晶相を有する珪化バリウム系膜が得られた。
参考例1
スパッタリング成膜時のガスを、水素ガスを含まないアルゴンとし、かつ、成膜後プラズマ処理を実施しなかった以外は実施例4と同じ条件にてスパッタリング成膜試験を実施した。結果を表2に示す。
参考例2
成膜時のガス圧力を0.6Paとした以外は参考例1と同じ条件でスパッタリング成膜試験を実施した。結果を表2に示す
参考例3
成膜後のプラズマアニール処理を行わなかった以外は実施例4と同じ条件にてスパッタリング成膜試験を実施した。結果を表2に示す。
(比較例1)
成膜後のプラズマガンによる水素導入を行わない以外は実施例1と同じ条件にて製膜試験を実施した。
その結果、表1に示されるように、ラマンスペクトル、水素濃度、分光特性、並びに結晶相となり、求めるものは得られなかった。
(比較例2、3)
成膜後のプラズマ処理を行わず水素導入を行わなかった以外は実施例4と同じ条件にてスパッタリング製膜試験を実施した。なお、比較例2、3では、スパッタガス圧力を表2中のものを変えた。結果を表2に示す。
(比較例4)
スパッタガス圧力を1Paとし、かつ成膜後にシリコンを成膜しなかった以外は、参考例1と同じ条件で実施した。結果は、表2に示されるように、水素濃度、分光特性、並びに結晶相となり、求めるものは得られなかった。
Figure 0007154496000001
Figure 0007154496000002
実施例1~4は、成膜時水素を導入することにより、膜に所定の水素量を含有することから、分光感度に優れるものである。
実施例5~7はスパッタリング法より成膜することから、分光感度に優れるものである。
一方、水素を導入せず、MBE法で成膜した比較例1及びスパッタリング法で成膜しているがラマンスペクトル強度比が高い比較例2-4では、分光感度に劣るものである。

Claims (13)

  1. 水素含有量が×1018atms/cm以上1×10 20 atms/cm以下であることを特徴とする珪化バリウム系膜。
  2. ラマンスペクトルにおいて、Aピークに対するSiTOフォノンのピーク強度比が10%未満である請求項1に記載の珪化バリウム系膜。
  3. 多結晶膜である請求項1又は2に記載の珪化バリウム系膜。
  4. 酸素含有量が0.01atm%以上10atm%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の珪化バリウム系膜。
  5. XRD回折試験において斜方晶帰属するピークのみで構成される結晶構造を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の珪化バリウム系膜。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の珪化バリウム系膜の製造方法であり、分子エキタキシーにより成膜し、次いで、水素の存在下にてプラズマ処理することを特徴とする珪化バリウム系膜の製造方法。
  7. 請求項1~5のいずれか1項に記載の珪化バリウム系膜の製造方法であり、スパッタリング法により水素の存在下に成膜することを特徴とする珪化バリウム系膜の製造方法。
  8. 珪化バリウム系スパッタリングターゲットを用いる請求項7に記載の珪化バリウム系膜の製造方法。
  9. スパッタリング後にプラズマ処理する請求項7又は8に記載の珪化バリウム系膜の製造方法。
  10. 請求項1~5のいずれか1項に記載の珪化バリウム系膜とシリコン層とが積層されてなる珪化バリウム系積層膜。
  11. 請求項1~5のいずれか1項に記載の珪化バリウム系膜と基板とで構成されてなる珪化バリウム系膜を含む積層基板。
  12. 請求項11に記載の積層基板を用いる素子。
  13. 請求項12に記載の素子を用いる電子機器。
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Yilei Tian,Oxidation-Induced Structure Transformation: Thin-Film Synthesis and Interface Investigations of Barium Disilicide toward Potential Photovoltaic Applications,ACS Applied Energy Materials,2018年06月06日,1巻、7号,3267-3276,DOI: 10.1021/acsaem.8b00486

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