以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態における情報処理システムの構成例を示す図である。図1に示されるように、情報処理システムは、IoT基盤1、共通認証基盤2、データ受信ゲートウェイ3、アラート発行基盤4、通信端末5、脈拍数計測機器6及び情報処理端末7を有する。IoT基盤1は、アプリケーションサーバ11、ウェブサーバ12、データベース13、ロードバランサ14及びアプリケーションゲートウェイ15を有する。例えば、IoT基盤1、共通認証基盤2、データ受信ゲートウェイ3又はアラート発行基盤4の有する各機能は、クラウドによって実現されてもよいし、機能ごとのサーバ装置等によって実現されてもよい。したがって、IoT基盤1に含まれるアプリケーションサーバ11、ウェブサーバ12、データベース13、ロードバランサ14及びアプリケーションゲートウェイ15は、それぞれがクラウドによって実現されてもよいし、サーバ装置等で実現されてもよい。
IoT基盤1は、被計測者のバイタルデータを収集し、バイタルデータの解析を行って、被計測者の状態を管理者に通知するプラットフォームである。また、IoT基盤1は、バイタルデータの解析から被計測者の状態に異変が検出された場合、アラート発行基盤4にアラート通知を行う。
共通認証基盤2は、情報処理システムが提供するサービスに係る認証を行うプラットフォームである。管理者及び被計測者は、共通認証基盤2によって認証されることで、当該サービスを使用可能となる。
データ受信ゲートウェイ3は、通信端末5から送信されるバイタルデータを受信し、キューイングを行った後、IoT基盤1にバイタルデータを送信する機能を有するゲートウェイである。
アラート発行基盤4は、IoT基盤から送信されるアラート通知を受信して、被計測者又は管理者にアラートに係るメール通知等を行うプラットフォームである。
通信端末5は、脈拍数計測機器6からバイタルデータを受信し、データ受信ゲートウェイ3に送信する機能を少なくとも有する通信装置である。例えば、通信端末5は、スマートフォンであってもよく、携帯電話回線を経由してデータ受信ゲートウェイ3にバイタルデータが送信されてもよい。図1に示される通信端末5及び脈拍数計測機器6の数は1であるが、多数の通信端末5及び脈拍数計測機器6が情報処理システムに含まれてもよい。
脈拍数計測機器6は、被計測者に装着されるか又は近傍に配置され、被計測者の脈拍を計測する機器である。脈拍数計測機器6から通信端末5へのバイタルデータの送信は、例えば、無線通信を介して実行されてもよい。以下、「被計測者」を「ユーザ」ともいう。
情報処理端末7は、IoT基盤1から被計測者のバイタルデータを解析した結果に基づく被計測者の状態を受信し、管理者が当該被計測者の状態を確認するユーザインタフェースを備える情報処理装置である。例えば、情報処理端末7は、パーソナルコンピュータであってもよい。
IoT基盤1に含まれるアプリケーションサーバ11は、受信したバイタルデータの解析を行い、解析結果に基づく被計測者の状態を情報処理端末7に送信する。また、アプリケーションサーバ11は、バイタルデータの解析から被計測者の状態に異変が検出された場合、アラート発行基盤4にアラート通知を行う。
IoT基盤1に含まれるウェブサーバ12は、静的コンテンツ配信のためのサービスを行う。例えば、ウェブサーバ12は、通信端末5又は情報処理端末7にウェブ画面を表示させてもよい。
IoT基盤1に含まれるデータベース13は、アプリケーションサーバ11が出力するバイタルデータ、バイタルデータの解析結果及びアラート通知に係る閾値等を記憶する。
IoT基盤1に含まれるロードバランサ14は、バイタルデータの受信処理に係るロードバランササービスを提供する。
IoT基盤1に含まれるアプリケーションゲートウェイ15は、バイタルデータの受信処理及び解析結果に基づく被計測者の状態の送信処理に係るゲートウェイ機能を提供する。
図2は、本発明の実施の形態における装置のハードウェア構成例を示す図である。IoT基盤1、共通認証基盤2、データ受信ゲートウェイ3、アラート発行基盤4、通信端末5、脈拍数計測機器6、情報処理端末7及びIoT基盤1に含まれるアプリケーションサーバ11、ウェブサーバ12、データベース13、ロードバランサ14及びアプリケーションゲートウェイ15は、図2に示されるように、それぞれ相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)1001、記憶装置1002、補助記憶装置1003、通信装置1004、入力装置1005及び出力装置1006を有してもよい。
情報処理システムに含まれる装置における各機能は、プロセッサ1001、記憶装置1002等のハードウェア上に所定のプログラムを読み込ませることによって、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信を制御し、記憶装置1002及び補助記憶装置1003におけるデータの読み出し又は書き込みを制御することによって実現される。
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインタフェース、制御装置、演算装置、レジスタ等を含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成されてもよい。また、プロセッサ1001は、プログラム又はデータ等を、補助記憶装置1003又は通信装置1004から記憶装置1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。
記憶装置1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等によって構成されてもよい。記憶装置1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ、主記憶装置等と呼ばれてもよい。記憶装置1002は、本発明の実施の形態に係る情報処理方法を実施するために実行可能なプログラム等を保存することができる。補助記憶装置1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ハードディスクドライブ、光学ディスク、フラッシュメモリ等によって構成されてもよい。
通信装置1004は、有線ネットワーク及び無線ネットワークの少なくとも一方を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェアであり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイスであり、例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサ等である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイスであり、例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプ等である。なお、入力装置1005及び出力装置1006は、一体となった構成であってもよく、例えば、タッチパネルであってもよい。
図3は、本発明の実施の形態におけるアプリケーションサーバ11の機能構成例を示す図である。図3に示されるように、アプリケーションサーバ11は、取得部111、算出部112及び比較部113を有する。これら各部は、アプリケーションサーバ11にインストールされた1以上のプログラムがプロセッサ1001に実行させる処理により実現されてもよい。また、これら各部は、さらに通信装置1004を用いて実現されてもよい。
取得部111は、データ受信ゲートウェイ3及びアプリケーションゲートウェイ15を介して通信端末5から受信するバイタルデータを取得し、データベース13に記憶させる機能を有する。ここで、バイタルデータは、所定の周期(例えば、4秒)で測定された脈拍データである。
算出部112は、取得部111が所定の期間(例えば、5分)に蓄積したバイタルデータから、バイタルデータの揺らぎを判定するための指標として、RRI(R-R Interval、心拍間隔)値に類似する傾向値(以下、「傾向値」ともいう。)を算出して記録する。当該傾向値算出の詳細は後述する。
また、算出部112は、RRI値に類似する傾向値を累積する処理により、累積脈拍数を算出する。累積脈拍数により、瞬間的な変化ではなく蓄積される状況を検知することができる。累積脈拍数の詳細は後述する。
比較部113は、算出部112が算出した傾向値に基づいて、被計測者ごとの定常状態の傾向値と、最新の傾向値とを比較して、設定された閾値を超える場合にアラート情報を発出する。閾値は、傾向値から算出されて更新される。また、算出部112が算出した累積脈拍数が、設定された閾値を超える場合にアラート情報を発出する。当該閾値及び比較の詳細は後述する。
ここで、本発明の実施の形態の背景として、バイタルデータに基づいて、「眠気の予兆」を把握することが目的の一つに挙げられる。
例えば、運輸業又は運送業において、安全にかつ安定した輸送配送への使命感を持ち日々業務を改善すべく取り組みが実施されている。しかしながら、乗務計画によっては、乗務員に負担が掛かり、乗務中に「眠気」が発生している場面がある。また、運輸業又は運送業においては、大型車を運転している性質上、むやみに路肩等に停車させられない事情があり、「眠気」が発現したことを検知したのでは安全な対応行動を取るためには遅いと考えられる。そこで、実際に眠気が及ぼす影響を改善するシステムを運用するには、「眠気」を検知するのではなく、車両を安全に停車できる程度の「眠気の予兆」を検知する必要がある。「眠気の予兆」とは、例えば、被測定者が強く眠気を感じる20分前程度であってもよく、運行中の車両等を安全に停車するために必要な時間であってもよい。
また、例えば、脈波間隔の変化を検出することで、「眠気」を検出するとした技術を採用した機器は既に市場に存在しているものの、当該機器を試験導入したところ、被計測者が眠っている状態であるにも関わらず、被計測者の状態の検出が困難であった事例もある。
上記の事例から、脈拍データから「眠気の予兆」を検出する技術として、以下1)及び2)を解決する必要があると考えられる。
1)バイタルデータは個人差が存在することを踏まえ、マクロデータに基づく一律の判定ロジックにて「眠気」が発生していると判定することは困難である。
2)脈波間隔の変化は微弱であるため、脈波間隔の変化を捉えることにより、「眠気」を検出することは困難である。
そこで、本願の実施の形態においては、被測定者が主観申告する「眠気」の強さをVAS(Visual Analogue Scale)値として記録し、個人のVAS値は異なる傾向を有するという前提にて、多くの被測定者の集合値の傾向を捉えるのではなく、個人の過去データと比較することで、「眠気」の強さの傾向を捉えるものとする。また、脈波間隔の変化を累積することで、脈波間隔の変化の傾向をより強く捉えるものとする。
以下、累積脈拍数を算出する処理、個人ごとの特徴を捉える処理及び「眠気の予兆」を捉える処理等について説明する。
例えば、累積脈拍数を算出する処理として、脈拍センサを搭載した機器にて取得する短時間(例えば4秒)における脈拍数を1分あたりの脈拍数に換算した数値を順次記録する。次に、連続した脈拍数から単位時間あたりの変動係数等を用いて、RRIに類するデータを算出する。さらに、単位時間あたりのRRIに類する値を加算して累積脈拍数データとして算出する。
例えば、個人ごとの特徴を捉える処理として、個人ごとの乗務中に限定した累積脈拍数の推移データを収集し、当該データの標準偏差による外れ値を抽出することで、個人ごとに異状を検知するための閾値を算出する。
例えば、「眠気の予兆」を捉える処理として、個人ごとに設定される閾値を判定基準とし、累積脈拍数が閾値以下となった場合には、後述する技術検証の結果から「眠気」が強いと申告がある状況と一致している傾向が得られたため、注意喚起を促す起点とする。
また、例えば、「眠気の予兆」を捉える処理として、一定時間間隔において、累積脈拍数の値が所定の値以上に減少する変化が現れている場合には、後述する技術検証の結果から「眠気」が強い傾向として現れるものとして判定し、注意喚起を促す起点とする。
図4は、脈拍の時系列推移の例を示す図である。脈拍数計測機器6を使用して、4秒間隔にて取得した被計測者の脈拍数を時系列に並べた例を図4で示す。図4に示されるように、ある被計測者の脈拍は時系列で変化する。図4に示される高低2値の脈拍数を示す二つの線は、定常脈拍範囲を示す。個人ごとの定常脈拍範囲から、アラート通知を判定する閾値が算出される。
図5は、心電図の例を示す図である。図5に示される心電図は、心筋が縮小するときの一例の電気信号の流れ、P、Q、R、S、Tと名付けられる心電図成分で構成されている。このうち、R波は血液を左心室から大動脈に送り出すときに発生し、図5に示されるように、R波とR波の間隔は、RRIと呼ばれている。
RRIは常に一定ではなく体位又はその時点での状態等の影響を受けて変動するため、心電図波形において、振幅が大きいRRIの変動を用いて疲労度又はストレス等を定量的に評価する手法は既に数多く公表されている。
RRIは心電計を用いて取得するデータであるが、本発明の実施の形態では、連続的な脈拍数の推移の変化をもって、RRIに類するデータとして加工することで、公表されている既存のRRIを活用した定量評価を適用できるものと想定する。
図6は、本発明の実施の形態におけるデータ算出処理の例を説明するための図である。RRIに類するデータを算出するため、図4に示される脈拍の時系列推移から、図6に示される矩形の範囲のように一定時間(例えば5分間)に着目する。
図7は、本発明の実施の形態におけるデータ算出処理の例を説明するためのフローチャートである。図7に示されるフローチャートは、算出部112による傾向値算出処理の例であり、予め取得部111は、必要となる期間のバイタルデータをデータベース13に記憶させているものとする。当該必要となる期間は、数週間、数か月又は数年等のいかなる期間であってもよい。
ステップS11において、算出部112は、ある被計測者個人に係るバイタルデータが記憶されている期間に含まれる所定期間のバイタルデータを標本とする。標本は、例えば、図6に示されるように、4秒間隔で取得される脈拍数を5分間にわたり記録したバイタルデータであってもよい。脈拍数は、1分間あたりの脈拍数に換算された値が使用されてもよい。
ステップS12において、算出部112は、標本の平均値(以下、「単位平均脈拍数」ともいう。)を算出してデータベース13に記録する。続いて、算出部112は、標本の変動係数を算出してデータベース13に記録する(S13)。ここで、「変動係数」は、計算式「標本の標準偏差」/「母平均(全体平均)」で算出されてもよい。また、「変動係数」は、計算式「標本の標準偏差」/「標本の平均値」で算出されてもよい。
ステップS14において、算出部112は、標本を定める所定期間を更新する。例えば、算出部112は、直前の所定期間を1分後にシフトさせた期間を次の所定期間としてもよい。
ここで、RRI値に類するデータとは、上記のように算出される単位平均脈拍数及び変動係数の集合であり、バイタルデータの変動の傾向を示す値である。また、RRI値のゆらぎは、変動係数から把握するものとする。例えば、アプリケーションサーバ11は、単位平均脈拍数が大きければRRI間隔は狭く、単位平均脈拍数が小さければRRI間隔は広いと判定する。また、所定の周期における時系列データに基づいて変動係数を算出しているため、アプリケーションサーバ11は、変動係数が大きければRRI間隔が変化している状況であると判定し、変動係数が小さければRRI間隔の変化は小さい状況であると判定する。上記のRRI値のゆらぎに基づいて、IoT基盤1は、自律神経機能の変化、ストレス、肉体的疲労又は精神的疲労等を把握する。IoT基盤1は、上記の単位平均脈拍数及び変動係数の解釈によるRRI値のゆらぎを示す情報を情報処理端末7に送信して管理者がRRI値のゆらぎを示す情報を確認できるようにしてもよい。
図8は、本発明の実施の形態における累積脈拍数算出の例を説明するための図である。図7に示されるフローチャートで算出した単位平均脈拍数を蓄積する処理において、累積脈拍数を算出する。「眠気の予兆」を捉える処理として、RRI間隔の広狭を累積し増幅させることで、RRI間隔の変化を捉える。RRIに類するデータのうち、RRI間隔の広狭の大きさ、すなわち単位平均脈拍数を利用して、「眠気の予兆」を捉える。「眠気の予兆」を検出するにあたり、瞬間的な変化を検知するよりも、蓄積していく状況を検知することを重視する。
RRI間隔の広狭を累積するにあたり、広狭の基準となる値は、個人にて得られる脈拍数の全数の平均値とする。例えば、図6に示される標本区間の単位平均脈拍数と、脈拍数の全数の平均値との差分を、単位時間あたりのRRI間隔の広狭の大きさとする。すなわち、RRI間隔の広狭の大きさ=単位平均脈拍数-全数平均脈拍数とする。
さらに、RRI間隔の広狭の大きさを加算していくことで、「眠気の予兆」を捉えるために増幅させた累積脈拍数の時系列データを算出する。図8に示されるように、時刻iの累積脈拍数yiは、時刻jから時刻iまでの単位平均脈拍数xjと、全数平均脈拍数xバーから算出される。図8では、j=i-5minとしているが、これは例であり、さらに長い又は短い期間の単位平均脈拍数xjを加算することで、時刻iの累積脈拍数yiが算出されてもよい。なお、単位平均脈拍数xjは、脈拍数としてyiが算出されてもよい。なお、全数平均脈拍数xバーは、新たに脈拍数が測定されるごとに更新されてもよいし、所定の周期で更新されてもよい。
図9は、累積脈拍数の傾向の例(1)を説明するための図である。上述した累積脈拍数を用いた技術検証の結果の例を示す。図9に示されるように、時刻5:30:00付近の累積脈拍数が低位となる変化に伴い、VAS値は急激に上昇し、被計測者に強い眠気が発生していることがわかる。
図10は、累積脈拍数の傾向の例(2)を説明するための図である。上述した累積脈拍数を用いた技術検証の結果の例を示す。図10に示されるように、時刻12:15:00付近の累積脈拍数が急に低下する変化に伴い、VAS値は急激に上昇し、被計測者に強い眠気が発生していることがわかる。
なお、技術検証の結果から、被計測者の累積脈拍の推移は、個人ごとに特徴は異なっていた。また、図9、図10に示されるように、脈拍から推定されるRRI間隔の変化の累積は、変化している状況の傾向が、時間推移に伴い大きく現れてくる特徴があった。当該特徴は、瞬間的な変化を捉えることには不向きであるが、一方で、時間推移による変化を捉え、変化の傾向をパターンとして分類することができる。したがって、当該変化の傾向と分類されたパターンとによる示唆から、「眠気」に至る早い段階での「予兆」気付くことが可能となる。
図11は、本発明の実施の形態における閾値算出処理の例を説明するための図である。図11は、所定期間中の脈拍数の分布を示すヒストグラムの例である。図11に示されるように定常脈拍範囲は、所定期間中の脈拍数の平均値±標準偏差×2で算出されてもよい。所定期間を長期(例えば、数か月又は数年等)に設定してバイタルデータを蓄積することで、個人の特性を把握し、かつ個人の特性の変化に追従することができる。なお、定常脈拍範囲は、所定期間中の脈拍数の平均値±標準偏差×1で算出されるとしてもよい。
図11に示される「下限閾値」を下回る脈拍数が検出された場合又は「上限閾値」を上回る脈拍数が検出された場合、比較部113はアラート通知を実行する。「下限閾値」は、図11に示されるように定常脈拍範囲の下限と同値である。「上限閾値」に関して、図11に示される定常脈拍範囲の上限をこえる脈拍数に対して、箱ひげ図による外れ値検出を行う。すなわち、「上限閾値」は第三四分位数+1.5×IQR(Inter Quarter Range、四分位範囲)を超える値とする。IQRは、第三四分位数から第一四分位数を引いて算出される。したがって、蓄積されたバイタルデータに基づく脈拍数のパーセンタイルにおいて、第三四分位数及び第一四分位数を求めることで上限閾値の検出が可能となる。なお、図11に示されるヒストグラムのビンの幅は、例えば、脈拍数1であってもよいし、他の値であってもよい。同じビンに属する単位平均脈拍は、同じ値であるとしてパーセンタイルが計数されてもよい。
実測時に脈拍数が上振れることはしばしば発生するため、上記のように定常脈拍範囲の上限を上回る外れ値を閾値として判定することで、実際には異常を伴わない可能性の高い瞬間的な脈拍数の上振れによってアラート通知が発行されることを防止することができる。
図12は、本発明の実施の形態における閾値算出処理の例を説明するためのフローチャートである。図12は、図11で説明した下限閾値及び上限閾値を算出する閾値算出処理の例である。取得部111は、少なくとも必要となる所定期間のバイタルデータをデータベース13に記憶させているものとする。
ステップS21において、比較部113は、ある被計測者個人に係る所定期間のバイタルデータに基づく脈拍数から、図11に示されるように所定期間の定常脈拍範囲を算出する。続いて、比較部113は、当該定常脈拍範囲から下限閾値を算出し、所定期間の脈拍数分布における第三四分位数及び第一四分位数から上限閾値に使用する値「第三四分位数+1.5×IQR」を算出する(S22)。続いて、比較部113は、閾値を更新する(S23)。比較部113は、算出した下限閾値及び上限閾値をデータベース13に記録する。ステップS21からS23に示される閾値の更新処理は、任意の時点で実行されてもよいし、所定の周期で実行されてよい。例えば、閾値の更新処理は、1日に1回実行されてもよい。
図12に示される方法において、脈拍数を累積脈拍数に置換して、個人ごとの乗務中の累積脈拍数データから標準偏差に基づいた閾値を設定する。脈拍数の分布を正規分布とするモデル化を行い、累積脈拍数も同様に正規分布に収斂されると想定する。累積脈拍数から、「眠気の予兆」を把握するための閾値を図11に示されるような分布として、下限の閾値を決定する。図11においては閾値に対応する定常脈拍範囲を標準偏差の2倍すなわち2σとして図示しているが、閾値に対応する定常脈拍範囲を、標準偏差の1倍すなわち1σとして算出してもよい。すなわち、下限の閾値を、平均脈拍数から1σ減じた値としてもよい。
図13は、本発明の実施の形態における累積脈拍数の例(1)を説明するための図である。累積脈拍数が下限閾値以下の状態は、「眠気」が強い傾向とし、注意喚起を促す起点とする。睡眠時には、脈拍数は低位な数値で推移する。累積脈拍数における「眠気」の傾向は、脈拍数と同様であり、睡眠時には累積脈拍数は低位になる。技術検証時、個人差の特徴を考慮した上でなお、睡眠時と同程度もしくは睡眠時に近い値の累積脈拍数の推移が乗務中に発現している状況が発生することがあった。当該状況では、被計測者である乗務員はVAS値の記録として「眠気」が強かったと申告している。このような睡眠時に類似する累積脈拍数における傾向が『乗務中に発現した最初の状態』を検知することを、「眠気の予兆」を捉える処理と定義する。
図13に示されるように、累積脈拍数が、時刻5:39付近で下限の閾値とする-1σを下回ったとき、「眠気の予兆」を検出したと判定し、アラート通知が発行されてもよい。
図14は、本発明の実施の形態におけるアラート通知処理の例(1)を説明するためのフローチャートである。図14は、図13で説明した下限の閾値を使用してアラート通知処理を行う例である。下限の閾値は、図12に示される方法で算出されているものとする。
ステップS31において、算出部112は、時刻iの累積脈拍数を算出する。続いて、比較部113は、算出された時刻iの累積脈拍数が下限閾値よりも低いか否か判定する。時刻iの累積脈拍数が下限閾値よりも低い場合(S32のYES)、ステップS33に進み、時刻iの累積脈拍数が下限閾値よりも低くない場合(S32のNO)、ステップS31に戻り、算出部112は、時刻iの次の時刻の累積脈拍数を算出する。
ステップS33において、比較部113は、「眠気の予兆」を検出し、アラートを発行する。アラートは、アプリケーションサーバ11からアラート発行基盤4に送信される。アラート発行基盤4は、受信したアラートに基づいて、被計測者又は管理者にアラートに係るメール通知等を行う。なお、『乗務中に発現した最初の「眠気の予兆」が検出される』とは、例えば、ユーザが乗務を開始して、時刻iの累積脈拍数を算出するステップS31を開始した後、最初にステップS32において累積脈拍数が下限閾値を下回った場合に対応してもよい。
図15は、本発明の実施の形態における累積脈拍数の例(2)を説明するための図である。累積脈拍の低下が急な状態は、「眠気の予兆」が現れる傾向とし、注意喚起を促す起点とする。図13のように累積脈拍数が下限閾値よりも低い値に達しない場合であっても、図10及び図11で示されるように、累積脈拍数の急速な低下に伴い、VAS値の記録として「眠気」が強かったと申告される場面があった。このような累積脈拍数の急速な低下の傾向が『乗務中に発現した最初の状態』を検知することを、「眠気の予兆」を捉える処理と定義する。
累積脈拍数の急速な低下として検知する傾きは、図15に示されるように、単位時間あたり-1σ累積脈拍数が低下した場合、累積脈拍数が急速に低下していると判定してもよい。当該単位時間は、「眠気」は継続するものとし、累積脈拍数が算出可能な3点、5点又は7点といった累積脈拍数が算出される周期の整数倍となる期間において低下傾向が持続していることを条件としてもよい。単位時間あたりの標準偏差を使用することで個人差の特徴を「眠気の予兆」の検出方法に加味することが可能となる。
図15に示される例では、単位時間を5とし、時刻12:38から時刻12:42までで、累積脈拍数の低下が1σを超えて下回ったため、「眠気の予兆」を検出したと判定し、アラート通知が発行されてもよい。
図16は、本発明の実施の形態におけるアラート通知処理の例(2)を説明するためのフローチャートである。図16は、図15で説明した累積脈拍数の急速な低下を検知してアラート通知処理を行う例である。
ステップS41において、算出部112は、時刻iの累積脈拍数を算出する。続いて、続いて、比較部113は、算出された時刻iの累積脈拍数の単位時間あたりの減少する傾きは-1σよりも大か否か判定する。傾きが-1σよりも大である場合(S42のYES)、ステップS43に進み、傾きが-1σよりも大でない場合(S42のNO)、ステップS41に戻り、算出部112は、時刻iの次の時刻の累積脈拍数を算出する。
ステップS43において、比較部113は、「眠気の予兆」を検出し、アラートを発行する。アラートは、アプリケーションサーバ11からアラート発行基盤4に送信される。アラート発行基盤4は、受信したアラートに基づいて、被計測者又は管理者にアラートに係るメール通知等を行う。なお、『乗務中に発現した最初の「眠気の予兆」が検出される』とは、例えば、ユーザが乗務を開始して、時刻iの累積脈拍数を算出するステップS41を開始した後、最初にステップS42において累積脈拍数の単位時間あたりに減少する傾きが-1σよりも大きくなった場合に対応してもよい。
上述したように、本発明の実施の形態によれば、IoT基盤1は、被計測者に装着される脈拍数計測機器が取得する所定期間のバイタルデータに基づいて、RRI値に類するデータを算出して蓄積して、当該データの変化と、個人ごとの特徴とに基づいて、「眠気の予兆」を検出するために判定を行い、アラート通知を発出することができる。
すなわち、バイタルデータを時系列で累積して解析を実行することにより、ユーザの眠気の予兆を検出することができる。
(実施の形態のまとめ)
以上、説明したように、本発明の実施の形態によれば、第1の期間において所定の周期で計測される被測定者のバイタルデータを取得する取得部と、ある時刻に対応する、前記第1の期間に含まれる第2の期間における前記バイタルデータの平均値から、前記第1の期間における前記バイタルデータの平均値を減じた値を、第1の時刻から第2の時刻まで前記ある時刻に対応する値を加算した累積値を算出し、前記累積値を所定の周期で算出し記録する算出部と、前記累積値が、前記第1の期間における前記バイタルデータの標準偏差に係る所定の条件を満たすか否か周期的に判定し、前記判定を開始した後、最初に前記所定の条件が満たされる場合、眠気の予兆を検出したことを示すアラート通知を発行する比較部とを有する情報処理装置が提供される。
上記の構成により、IoT基盤1は、被計測者に装着される脈拍数計測機器が取得する所定期間のバイタルデータに基づいて、RRI値に類するデータを算出して蓄積して、当該データの変化と、個人ごとの特徴とに基づいて、「眠気の予兆」を検出するために判定を行い、アラート通知を発出することができる。すなわち、バイタルデータを時系列で累積して解析を実行することにより、ユーザの眠気の予兆を検出することができる。
前記バイタルデータは、1分あたりの脈拍数であってもよい。当該構成により、IoT基盤1は、被計測者に装着される脈拍数計測機器が取得する所定期間のバイタルデータに基づいて、RRI値に類似する傾向値を算出することができる。
前記所定の条件は、前記累積値が、ゼロから前記標準偏差を減じた値よりも下回った場合であってもよい。当該構成により、IoT基盤1は、累積脈拍数が、個人ごとの標準偏差に基づく下限閾値を下回った場合にアラートを発行することができる。
前記所定の条件は、前記累積値が、所定の期間内に、前記第1の期間における前記バイタルデータの標準偏差よりも減少した場合であってもよい。当該構成により、IoT基盤1は、累積脈拍数が、個人ごとの標準偏差に基づく減少率を上回って減少した場合にアラートを発行することができる。
前記所定の期間は、前記所定の周期の整数倍で規定されてもよい。当該構成により、IoT基盤1は、累積脈拍数が、個人ごとの標準偏差に基づく減少率を上回って減少する傾向が持続した場合にアラートを発行することができる。
また、本発明の実施の形態によれば、第1の期間において所定の周期で計測される被測定者のバイタルデータを取得する取得手順と、ある時刻に対応する、前記第1の期間に含まれる第2の期間における前記バイタルデータの平均値から、前記第1の期間における前記バイタルデータの平均値を減じた値を、第1の時刻から第2の時刻まで前記ある時刻に対応する値を加算した累積値を算出し、前記累積値を所定の周期で算出し記録する算出手順と、前記累積値が、前記第1の期間における前記バイタルデータの標準偏差に係る所定の条件を満たすか否か周期的に判定し、前記判定を開始した後、最初に前記所定の条件が満たされる場合、眠気の予兆を検出したことを示すアラート通知を発行する比較手順とを情報処理装置が実行する情報処理方法が提供される。
上記の構成により、IoT基盤1は、被計測者に装着される脈拍数計測機器が取得する所定期間のバイタルデータに基づいて、RRI値に類するデータを算出して蓄積して、当該データの変化と、個人ごとの特徴とに基づいて、「眠気の予兆」を検出するために判定を行い、アラート通知を発出することができる。すなわち、バイタルデータを時系列で累積して解析を実行することにより、ユーザの眠気の予兆を検出することができる。
また、本発明の実施の形態によれば、コンピュータが実行可能なプログラムであって、第1の期間において所定の周期で計測される被測定者のバイタルデータを取得する取得手順と、ある時刻に対応する、前記第1の期間に含まれる第2の期間における前記バイタルデータの平均値から、前記第1の期間における前記バイタルデータの平均値を減じた値を、第1の時刻から第2の時刻まで前記ある時刻に対応する値を加算した累積値を算出し、前記累積値を所定の周期で算出し記録する算出手順と、前記累積値が、前記第1の期間における前記バイタルデータの標準偏差に係る所定の条件を満たすか否か周期的に判定し、前記判定を開始した後、最初に前記所定の条件が満たされる場合、眠気の予兆を検出したことを示すアラート通知を発行する比較手順とを前記コンピュータに実行させるプログラムが提供される。
上記の構成により、IoT基盤1は、被計測者に装着される脈拍数計測機器が取得する所定期間のバイタルデータに基づいて、RRI値に類するデータを算出して蓄積して、当該データの変化と、個人ごとの特徴とに基づいて、「眠気の予兆」を検出するために判定を行い、アラート通知を発出することができる。すなわち、バイタルデータを時系列で累積して解析を実行することにより、ユーザの眠気の予兆を検出することができる。
なお、本発明の実施の形態において、IoT基盤1又はアプリケーションサーバ11は、情報処理装置の一例である。全数平均脈拍数を構成する脈拍数が測定される期間は、第1の期間の一例である。単位平均脈拍数を構成する脈拍数が測定される期間は、第2の期間の一例である。累積脈拍数は、累積値の一例である。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。