以下、図面を参照して、画像処理装置、医用画像診断装置及び画像処理プログラムの実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、画像処理装置を含んだ画像処理システムを一例として説明する。また、第1の実施形態では、被検体の心臓についての形態的情報を取得する場合を一例として説明する。
図1に示すように、第1の実施形態に係る画像処理システムは、医用画像診断装置100と、画像保管装置200と、画像処理装置300とを備える。なお、図1は、第1の実施形態に係る画像処理システムの一例を示す図である。図1に示すように、医用画像診断装置100、画像保管装置200及び画像処理装置300は、ネットワークを介して相互に接続される。
医用画像診断装置100は、被検体から形態画像データ及び機能画像データを収集する装置である。例えば、医用画像診断装置100は、X線CT(Computed Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT装置とX線CT装置とが一体化されたSPECT-CT装置、PET装置とX線CT装置とが一体化されたPET-CT装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置等である。これらの装置のうち、1又は複数の装置が、医用画像診断装置100として、形態画像データ及び機能画像データを収集する。
例えば、医用画像診断装置100としてのX線CT装置が、形態画像データとしてのCT画像データを収集し、医用画像診断装置100としてのSPECT装置が、機能画像データとしてのSPECT画像データを収集する。また、例えば、医用画像診断装置100としてのSPECT-CT装置が、形態画像データとしてのCT画像データ、及び、機能画像データとしてのSPECT画像データを収集する。本実施形態では、一例として、医用画像診断装置100としてのX線CT装置が収集したCT画像データを形態画像データとして用い、かつ、医用画像診断装置100としてのSPECT装置が収集したSPECT画像データを機能画像データとして用いる場合について説明する。
ここで、形態画像データは、被検体の心臓における形態の情報を含んだ画像データである。例えば、CT画像データは、被検体の心臓の構造(各心室の輪郭等)や冠動脈の形態的な情報を含んだ形態画像データである。形態画像データの他の例としては、MR(Magnetic Resonance)画像データや、血管領域の流体指標を表すCT画像データなどが挙げられる。ここで、流体指標は、血流に関する指標である。例えば、流体指標は、CT画像データの血管領域に対する流体解析により得られる値であり、心筋血流予備量比(FFR:Fractional Flow Reserve)や、血管領域における圧力、血液の流量、血液の流速、ベクトル、せん断応力などを含む。
例えば、X線CT装置は、被検体を略中心にX線管及びX線検出器を旋回移動させ、被検体を透過したX線を検出して投影データを収集する。次に、X線CT装置は、収集された投影データに基づいて、CT画像データ(ボリュームデータ)を生成する。そして、X線CT装置は、生成したCT画像データを画像保管装置200に格納する。
また、機能画像データは、被検体の心臓における機能の情報を含んだ画像データである。例えば、SPECT画像データは、被検体の心臓における血流の状態等、被検体の心臓における生理学的な情報を含んだ機能画像データである。機能画像データの他の例としては、PET(Positron Emission computed Tomography)画像データやCTパーフュージョン(Perfusion)画像データ、MRパーフュージョン画像データ、CT画像データに対する心機能解析の結果を表す画像データ、MR画像データに対する心機能解析の結果を表す画像データ、超音波画像データに対する心機能解析の結果を表す画像データなどが挙げられる。
例えば、SPECT装置は、被検体に投与され、被検体の生体組織に選択的に取り込まれた放射性医薬品から放射される放射線(ガンマ線)を検出し、検出した信号それぞれに対して、オフセット補正、感度補正等の補正処理を行ってSPECT投影データを収集する。次に、SPECT装置は、SPECT投影データ(例えば、360度方向分の体動補正済み投影データ)を逆投影処理することで、SPECT画像データ(ボリュームデータ)を再構成する。そして、SPECT装置は、再構成したSPECT画像データを画像保管装置200に格納する。
画像保管装置200は、医用画像診断装置100によって収集された画像データを保管する。例えば、画像保管装置200は、サーバ装置等のコンピュータ機器によって実現される。本実施形態では、画像保管装置200は、ネットワークを介して医用画像診断装置100からCT画像データ及びSPECT画像データを取得し、取得したCT画像データ及びSPECT画像データを、装置内又は装置外に設けられた記憶回路に記憶させる。
画像処理装置300は、ネットワークを介してCT画像データ及びSPECT画像データを取得し、取得したCT画像データ及びSPECT画像データを用いた種々の処理を実行する。例えば、画像処理装置300は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。本実施形態では、画像処理装置300は、ネットワークを介して、医用画像診断装置100又は画像保管装置200からCT画像データ及びSPECT画像データを取得する。また、画像処理装置300は、取得したCT画像データ及びSPECT画像データに基づいて、被検体の心臓に関する形態的情報の精度を向上させる。なお、この点については後述する。
図1に示すように、画像処理装置300は、入力回路310と、ディスプレイ320と、記憶回路330と、処理回路340とを有する。
入力回路310は、操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパネル等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、処理回路340に転送する。
ディスプレイ320は、操作者によって参照されるモニタであり、処理回路340による制御の下、種々の医用画像を操作者に提示したり、入力回路310を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
記憶回路330は、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等の不揮発性の記憶装置である。例えば、記憶回路330は、医用画像診断装置100又は画像保管装置200から取得したCT画像データ及びSPECT画像データを記憶する。
処理回路340は、制御機能341、画像生成機能342、取得機能343、算出機能344、指標取得機能345、検出機能346、特定機能347、表示制御機能348及び補正機能349を実行することで、画像処理装置300全体の動作を制御する。例えば、処理回路340は、制御機能341に対応するプログラムを記憶回路330から読み出して実行することにより、入力回路310を介して、操作者から種々の指示や設定を受け付ける。また、例えば、処理回路340は、取得機能343に対応するプログラムを記憶回路330から読み出して実行することにより、CT画像データ及びSPECT画像データを取得する。また、例えば、処理回路340は、画像生成機能342、算出機能344、指標取得機能345、検出機能346及び特定機能347に対応するプログラムを記憶回路330から読み出して実行することにより、CT画像データに基づく機能指標とSPECT画像データに基づく機能指標との不整合を検出し、不整合に対応する空間領域を特定する。この点については後述する。
図1に示す画像処理装置300においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路330へ記憶されている。処理回路340は、記憶回路330からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路340は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
なお、図1においては単一の処理回路340にて、制御機能341、画像生成機能342、取得機能343、算出機能344、指標取得機能345、検出機能346、特定機能347、表示制御機能348及び補正機能349が実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路340を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))などの回路を意味する。プロセッサは記憶回路330に記憶されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路330にプログラムを記憶させる代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
以上、画像処理システムの構成について説明した。かかる構成の下、画像処理システムにおける画像処理装置300は、形態的情報の精度を向上させる。具体的には、画像処理装置300は、以下詳細に説明する処理回路340による処理によって、形態画像データと機能画像データとの間での心筋の機能指標の不整合を検出し、検出した不整合に基づいて形態的情報の精度を向上させる。以下、第1の実施形態に係る画像処理装置300が行う処理について、詳細に説明する。
まず、取得機能343は、医用画像診断装置100又は画像保管装置200からCT画像データ及びSPECT画像データを取得する。ここで、CT画像データ及びSPECT画像データは、それぞれ、被検体の心臓について収集されたボリュームデータである。なお、CT画像データ及びSPECT画像データが収集される順序は任意である。
次に、算出機能344及び指標取得機能345は、被検体の心臓の各位置の機能を示す機能指標を取得する。例えば、算出機能344及び指標取得機能345は、虚血の有無や程度を直接的又は間接的に示す機能指標を、心臓の各位置について、CT画像データ及びSPECT画像データのそれぞれから算出する。以下では、CT画像データに基づく機能指標を、第1の機能指標とも記載する。また、以下では、SPECT画像データに基づく機能指標を、第2の機能指標とも記載する。
例えば、算出機能344は、CT画像データについて流体解析を行い、CT画像データの血管領域と解析結果とに基づいて、第1の機能指標を算出する。一例を挙げると、算出機能344は、流体解析によって血管領域における流体指標を算出し、流体指標に基づいて、第1の機能指標を算出する。ここで、流体指標は、例えば、血管領域の流体解析により得られる値であり、FFRや、血管領域における圧力、血液の流量、血液の流速、ベクトル、せん断応力などを含む。以下では、流体指標の一例として、FFRについて説明する。また、以下では、FFRを算出するための流体解析をFFR解析とも記載する。更に、画像生成機能342は、第1の機能指標を平面上に投影して、第1指標マップを生成する。以下、この点について詳細に説明する。
まず、算出機能344は、取得機能343が取得したCT画像データに含まれる血管に対応する血管領域を抽出する。例えば、算出機能344は、画素ごとに画素値(CT値等)を閾値と比較することで、CT画像データから血管領域を抽出する。一例を挙げると、算出機能344は、CT画像データ中の血管の画素値が小さく(暗く)表現される場合、閾値よりも画素値が小さい画素を血管領域として抽出する。このような閾値は、プリセットされた値であってもよいし、操作者が設定する値であってもよい。なお、算出機能344が血管領域を抽出するのではなく、既に血管領域が特定されたCT画像データを取得機能343が取得する場合であってもよい。
次に、算出機能344は、CT画像データを用いた流体解析によりFFRを算出する。ここで、FFRは、例えば、血管において大動脈弓から近い近位部における圧力と、大動脈弓から遠い遠位部における圧力との比であり、「FFR=Pd(遠位部の圧力)/Pa(近位部の圧力)」で表される。
例えば、算出機能344は、まず、血管形状データ及び設定条件に基づいて、血管領域の位置ごとに圧力を算出する。なお、血管形状データは、例えば、血管の内腔や外壁の輪郭、血管の断面積及び芯線などである。算出機能344は、CT画像データにおける血管領域から、血管形状データを取得することができる。また、設定条件は、例えば、血液の物性値、反復計算の条件及び解析の初期値などの解析条件である。また、算出機能344は、圧力のみならず、血流に関する種々の指標(血液の流量、血液の流速、ベクトル及びせん断応力など)を算出することもできる。
ここで、算出機能344は、血管の芯線に沿った位置ごとに圧力を算出し、血管領域における圧力の分布を算出する。そして、算出機能344は、算出した圧力の分布から、血管領域の各位置のFFRを算出する。例えば、算出機能344は、血管領域のうち大動脈弓から近い位置に近位部を設定し、血管領域の各位置の圧力を近位部の圧力で除すことにより、血管領域の各位置のFFRを算出する。
次に、画像生成機能342は、CT画像データ及びFFRから、冠動脈の形態情報及びFFRの解析結果を含んだボリュームデータを生成する。即ち、画像生成機能342は、血管領域のFFRを表すCT画像データを生成する。以下では、血管領域のFFRを表すCT画像データを、FFR画像データとも記載する。FFR画像データは、例えば、FFRに応じたカラーや、FFRの値を血管領域の各位置に付したCT画像データである。なお、算出機能344によるFFRの算出、及び、画像生成機能342によるFFR画像データの生成に代えて、取得機能343がFFR画像データを取得する場合であってもよい。
算出機能344は、FFR画像データから、種々の情報を抽出することができる。例えば、算出機能344は、FFR画像データから、血管の芯線座標を抽出する。なお、算出機能344は、FFR解析のためにCT画像データから取得した血管の芯線座標を、FFR画像データにおける血管の芯線座標としてもよい。また、例えば、算出機能344は、FFR画像データを、冠動脈の形状及び名称を示すモデルデータ(例えば、AHA(American Heart Association)分類を示すモデルデータ)と比較することで、各芯線と冠動脈名称との対応を示す情報(ラベル情報)を抽出する。また、例えば、算出機能344は、FFR画像データから、心室の領域を抽出する。以下では、一例として、算出機能344が、左心室の領域を抽出する場合について説明する。一例を挙げると、算出機能344は、FFR画像データと各心室の形状及び名称を示すモデルデータとを比較し、左心室の内膜及び左心室の外膜に相当する座標を、左心室の領域として抽出する。また、例えば、算出機能344は、抽出した左心室における心軸を抽出する。また、例えば、算出機能344は、抽出した左心室を基準として、右心室の方向を抽出する。
次に、算出機能344は、FFR画像データに基づいて、被検体の心臓の位置ごとに、血管から栄養を供給される組織における機能を示す指標として、第1の機能指標を算出する。例えば、算出機能344は、まず、被検体の心臓における任意の位置(以下、位置P1と記載する)について、支配血管を特定する。例えば、算出機能344は、位置P1との距離が最小となる血管領域を、位置P1を支配する血管領域として特定する。具体的には、算出機能344は、位置P1を支配する血管領域として、位置P1の座標との距離が最小になる芯線座標を特定する。そして、算出機能344は、特定した芯線座標のFFRを、位置P1の第1の機能指標として取得する。また、算出機能344は、位置P1以外の心臓の各位置についても同様に第1の機能指標を取得する。
ここで、検出機能346は、FFR画像データから、被検体の心臓に関する形態的情報を取得する場合であってもよい。例えば、検出機能346は、第1の機能指標に基づいて、虚血が生じている心臓の領域(虚血領域)を特定したり、虚血が生じている心筋量(虚血心筋量)を算出したりすることができる。具体的には、検出機能346は、心臓の各位置について、第1の機能指標として算出されたFFRの値が閾値以下となるか否かを判定し、FFRの値が閾値以下となる位置の集合を虚血領域として特定する。また、検出機能346は、虚血領域に基づいて虚血心筋量を算出する。更に、表示制御機能348は、形態的情報を操作者に提示する場合であってもよい。例えば、表示制御機能348は、虚血領域とFFRの値とを示した表示画像をディスプレイ320に表示させる。ここで、表示制御機能348は、表示画像において、ラベル情報や左心室の領域、左心室の芯軸、右心室の方向等を示すようにしてもよい。また、例えば、表示制御機能348は、虚血心筋量をディスプレイ320に表示させる。
次に、画像生成機能342は、心臓の位置ごとの第1の機能指標を平面上に投影して、第1指標マップを生成する。ここで、FFR画像データに基づく第1指標マップについて、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係る第1指標マップを説明するための図である。なお、以下では、画像生成機能342が、第1指標マップとして、第1の機能指標の分布を示したFFR画像データからポーラーマップ(polar map、極座標表示)を生成する場合について説明する。
図2の左図は、冠動脈の各位置におけるFFRをカラーで表したFFR画像データである。なお、図2の左図では、血管領域以外の領域は省略して表現している。画像生成機能342は、図2の左図に示すFFR画像データから、図2の右図に示すポーラーマップを生成する。具体的には、画像生成機能342は、FFR画像データから抽出した左心室の内膜について、心軸に直交する各断面を心尖部を中心として重ね合わせることで、ポーラーマップを生成する。即ち、図2の右図に示すポーラーマップは、心尖部から心軸方向に左心室の内膜を見た図に対応する。また、図2の右図に示すポーラーマップの各位置には、第1の機能指標が投影される。
なお、図2は、ポーラーマップの各位置に、第1の機能指標及び血管領域が投影された場合を示すが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、画像生成機能342は、第1指標マップとして、第1の機能指標のみを投影したポーラーマップを生成してもよい。また、例えば、画像生成機能342は、第1指標マップとして、第1の機能指標の分布に加え、血管支配領域を示したポーラーマップを生成してもよい。一例を挙げると、画像生成機能342は、右冠状動脈(RCA:Right Coronary Artery)の血管支配領域と、左前下行枝(LAD:Left Anterior Descending)の血管支配領域と、左旋回枝(LCX:Left Circumflex)の血管支配領域とに分類し、色分けや境界線を付したポーラーマップを生成してもよい。
次に、検出機能346は、第1指標マップにおける虚血領域の位置を特定する。例えば、検出機能346は、図2の右図に示すポーラーマップの各位置について、第1の機能指標(FFRの値)が閾値以下となるか否かを判定し、FFRの値が閾値以下となる位置の集合を虚血領域として特定する。一例を挙げると、検出機能346は、図2の右図に示す領域A1を、虚血領域として特定する。
これまで、第1の機能指標としてFFRを取得し、FFRをポーラーマップ上に投影し、FFRに基づいてポーラーマップの各位置が虚血領域か否かを判定する場合について説明したが実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、FFRに基づいてFFR画像データの各位置が虚血領域か否かを判定し、判定結果を第1の機能指標として取得し、判定結果をポーラーマップ上に投影し、判定結果に基づいてポーラーマップの各位置が虚血領域か否かを判定する場合であってもよい。言い換えると、算出機能344は、FFR自体を第1の機能指標として算出してもよいし、FFRに基づく指標を第1の機能指標として算出してもよい。
一例を挙げると、算出機能344は、まず、FFR画像データにおける心臓の各位置についてFFRの値が閾値以下となるか否かを判定し、FFRの値が閾値以下となる位置の集合を虚血領域として特定する。次に、算出機能344は、FFR画像データにおける心臓の各位置が虚血領域であるか否かを示す情報(例えば、Yes/No)を、第1の機能指標として算出する。そして、画像生成機能342は、心臓の位置ごとの第1の機能指標を平面上に投影してポーラーマップを生成し、検出機能346は、ポーラーマップの各位置における第1の機能指標から虚血領域を特定する。即ち、検出機能346は、ポーラーマップにおいて、第1の機能指標として「Yes」が投影された位置の集合を虚血領域として特定する。
次に、第2の機能指標、及び、第2の機能指標を平面上に投影した第2指標マップについて説明する。例えば、指標取得機能345は、SPECT画像データについてパーフュージョン解析を行い、解析結果に基づいて、血管から栄養を供給される組織における機能を示す指標として、第2の機能指標を取得する。また、画像生成機能342は、第2の機能指標を平面上に投影して、第2指標マップを生成する。以下、この点について詳細に説明する。
指標取得機能345は、取得機能343が取得したSPECT画像データを用いて心筋パーフュージョン解析を実行する。例えば、指標取得機能345は、SPECT画像データにおける画素値の大きさや、時間的間隔を置いて収集された複数のSPECT画像データ間の比較に基づいて、被検体の心臓の血管における血流動態を求め、血流動態を表す指標を第2の機能指標として取得する。言い換えると、指標取得機能345は、放射性医薬品の集積の度合いを、第2の機能指標として取得する。
例えば、被検体の心臓のうち血流が正常な位置においては、被検体に注射された放射性医薬品が徐々に集積し、検出される放射線(ガンマ線)が徐々に大きくなる。従って、指標取得機能345は、複数のSPECT画像データを比較し、画素値の変化が大きい位置については、第2の機能指標として、血流が正常であることを示す指標を取得する。一方で、被検体の心臓のうち、血管の狭窄等により血流が正常でなくなっている位置(虚血領域)においては、血流が正常な位置と比較して放射性医薬品の集積が遅い。従って、指標取得機能345は、複数のSPECT画像データを比較し、画素値の変化が小さい位置については、第2の機能指標として、血流が異常であることを示す指標を取得する。
一例を挙げると、指標取得機能345は、心臓の各位置について、SPECT画像データの画素値等の時間的変化を示した時間濃度曲線(TDC:Time Density Curve)を生成する。そして、指標取得機能345は、TDCにおける濃度の最大値、最小値、最大値の90%の値などの所定の濃度値、時間濃度曲線の傾き、所定濃度に達するまでの経過時間、血液の平均通過時間(MTT:Mean Transit Time)、血流量(CBF:Cerebral Blood Flow)、血液量(CBV:Cerebral Blood Volume)、所定領域に関する血液の流入状態または流出状態を表す値などを、第2の機能指標として取得する。
次に、画像生成機能342は、パーフュージョン解析の結果を含んだSPECT画像データを生成する。例えば、画像生成機能342は、被検体の心臓の血管における血流動態を表す指標(第2の機能指標)の分布を示したボリュームデータを生成する。以下では、パーフュージョン解析の結果を含んだSPECT画像データを、パーフュージョン画像データとも記載する。なお、画像生成機能342によるパーフュージョン画像データの生成に代えて、取得機能343がパーフュージョン画像データを取得する場合であってもよい。この場合、指標取得機能345は、パーフュージョン画像データから第2の機能指標を取得することができる。
次に、画像生成機能342は、心臓の位置ごとの第2の機能指標を平面上に投影して、第2指標マップを生成する。ここで、パーフュージョン画像データに基づく第2指標マップについて、図3を用いて説明する。図3は、第1の実施形態に係る第2指標マップを説明するための図である。なお、以下では、画像生成機能342が、第2指標マップとして、第2の機能指標の分布を示したパーフュージョン画像データから、ポーラーマップ(「ブルズアイ」とも呼ばれる)を生成する場合について説明する。
まず、指標取得機能345は、SPECT画像データを用いて心筋パーフュージョン解析を実行し、被検体の心臓の各位置について、第2の機能指標を取得する。次に、画像生成機能342は、第2の機能指標の分布を示したパーフュージョン画像データを生成する。そして、画像生成機能342は、パーフュージョン画像データから、ポーラーマップを生成する。具体的には、画像生成機能342は、パーフュージョン画像データから抽出した左心室の内膜について、心軸に直交する各断面を心尖部を中心として重ね合わせることで、ポーラーマップを生成する。例えば、図3の左図は心軸に直交する4つの断面を示し、各断面の二重円における内側の円が、心軸に直交する左心室の内膜の断面を示す。そして、図3の右図に示すポーラーマップの各位置に、第2の機能指標が投影される。
なお、画像生成機能342は、図3の左図に示すように、パーフュージョン画像データにおいて、左心室の内膜(図3の左図の二重円における内側の円)や外膜(図3の左図の二重円における外側の円)を特定することができる。そして、画像生成機能342は、特定した左心室の内膜等に基づいて、ポーラーマップを生成することができる。この点、機能画像であるパーフュージョン画像データには冠動脈等の形態情報が高精度で含まれるわけではないものの、左心室の内膜や心軸、心尖部等の位置を特定することは可能であるため、画像生成機能342は、パーフュージョン画像データからポーラーマップを生成することができる。
次に、検出機能346は、第2指標マップにおいて虚血領域を特定する。例えば、検出機能346は、図3の右図に示すポーラーマップの各位置について、第2の機能指標(例えば、血流量)が閾値以下となるか否かを判定し、血流量が閾値以下となる位置の集合を虚血領域として特定する。一例を挙げると、検出機能346は、図3の右図に示す領域B1及び領域B2を、虚血領域として特定する。
これまで、心臓の血管における血流動態を表す指標(血流量等)を第2の機能指標として取得し、血流動態を表す指標をポーラーマップ上に投影し、血流動態を表す指標に基づいて、ポーラーマップの各位置が虚血領域か否かを判定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、血流動態を表す指標に基づいてパーフュージョン画像データの各位置が虚血領域か否かを判定し、判定結果を第2の機能指標として取得し、判定結果をポーラーマップ上に投影し、判定結果に基づいてポーラーマップの各位置が虚血領域か否かを判定する場合であってもよい。言い換えると、指標取得機能345は、血流動態を表す指標自体を第2の機能指標として取得してもよいし、血流動態を表す指標に基づく指標を第2の機能指標として取得してもよい。
一例を挙げると、指標取得機能345は、まず、パーフュージョン画像データにおける心臓の各位置について血流量が閾値以下となるか否かを判定し、血流量が閾値以下となる位置の集合を虚血領域として特定する。次に、指標取得機能345は、パーフュージョン画像データにおける心臓の各位置が虚血領域であるか否かを示す情報(例えば、Yes/No)を、第2の機能指標として取得する。そして、画像生成機能342は、心臓の位置ごとの第2の機能指標を平面上に投影してポーラーマップを生成し、検出機能346は、ポーラーマップの各位置における第2の機能指標から虚血領域を特定する。即ち、検出機能346は、ポーラーマップにおいて、第2の機能指標として「Yes」が投影された位置の集合を虚血領域として特定する。
次に、画像生成機能342は、第1指標マップと第2指標マップとを位置合わせして合成することで、合成マップを生成する。例えば、画像生成機能342は、図2の右図に示したポーラーマップと、図3の右図に示したポーラーマップとを位置合わせして合成することで合成マップを生成する。ここで、第1指標マップ及び第2指標マップに基づく合成マップについて、図4を用いて説明する。図4は、第1の実施形態に係る合成マップを説明するための図である。
図4の左上図は、各位置に第1の機能指標が投影された第1指標マップ(図2の右図に示したポーラーマップ)であり、虚血領域として領域A1が特定されている。また、図4の左下図は、各位置に第2の機能指標が投影された第2指標マップ(図3の右図に示したポーラーマップ)であり、虚血領域として、領域B1及び領域B2が特定されている。画像生成機能342は、第1指標マップ及び第2指標マップを位置合わせして合成することで、図4の右図に示す合成マップを生成する。
ここで、第1指標マップ及び第2指標マップの位置合わせの例について説明する。例えば、画像生成機能342は、第1指標マップ及び第2指標マップの生成に先立って、FFR画像データとパーフュージョン画像データとを位置合わせする。一例を挙げると、画像生成機能342は、FFR画像データ及びパーフュージョン画像データのそれぞれから特徴点(ランドマーク)を抽出し、特徴点の位置が相互に合うように、FFR画像データとパーフュージョン画像データとを位置合わせする。ここで、特徴点は、例えば、画像中の右心室と左心室との接合部分(中隔)など、心臓の構造的な特徴点である。なお、特徴点の抽出は、操作者からの指定操作により行われてもよい。また、一例を挙げると、画像生成機能342は、心臓のアトラスデータ(心臓の構造に関するモデルデータ)と比較することで、FFR画像データ及びパーフュージョン画像データのそれぞれについて左心室領域を特定し、左心室領域の位置が相互に合うように、FFR画像データとパーフュージョン画像データとを位置合わせする。
このように、FFR画像データ及びパーフュージョン画像データを位置合わせしておくことにより、画像生成機能342は、第1指標マップ及び第2指標マップを生成する際の投影の条件を揃え、第1指標マップ及び第2指標マップを位置合わせすることができる。例えば、画像生成機能342は、まず、FFR画像データの左心室の内膜について、心軸に直交する各断面を心尖部を中心として重ね合わせることで、第1指標マップを生成する。そして、画像生成機能342は、パーフュージョン画像データにおいて、FFR画像データにおける左心室の内膜、心軸及び心尖部に対応する位置を特定し、特定した位置に基づいて、第2指標マップを生成する。即ち、画像生成機能342は、ボリュームデータの段階で位置合わせを行い、同じ条件で平面への投影を行うことで、第1指標マップ及び第2指標マップを位置合わせすることができる。
図4の右図に示す合成マップにおいては、各位置に第1の機能指標及び第2の機能指標が投影されている。ここで、検出機能346は、第1の機能指標と第2の機能指標との不整合を、合成マップから検出する。例えば、検出機能346は、第2指標マップにおいて虚血領域(領域B2)であり、かつ、第1指標マップにおいて虚血領域でない領域C2を、不整合として検出する。
即ち、第1の機能指標と第2の機能指標との不整合とは、第1の機能指標に基づく心筋の機能評価と、第2の機能指標に基づく心筋の機能評価とが合わないことであり、単なる数値の不一致の場合に限られるものではない。例えば、合成マップの領域C1において、第1の機能指標と第2の機能指標とで数値が大きく異なっていたとしても、領域C1は第1指標マップ及び第2指標マップの双方で虚血領域であり、各機能指標が示す機能は一致している。従って、検出機能346は、領域C1を不整合として検出しない。
なお、虚血領域であるか否かの評価が異なる領域を不整合として検出する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、検出機能346は、第1の機能指標及び第2の機能指標のそれぞれから、心臓の各位置における虚血の程度を、数値(例えば、0から1までの数値)として評価する。そして、検出機能346は、合成マップにおいて、数値の乖離が閾値より大きくなる領域を、不整合として検出することができる。
ここで、表示制御機能348は、合成マップをディスプレイ320に表示させてもよい。例えば、画像データのアーチファクトにより不整合が生じていた場合、合成マップを参照すれば、操作者は、アーチファクトの存在を認識し、取得機能343に対して画像データを再取得するよう指示することができる。また、例えば、合成マップを生成する際の第1指標マップと第2指標マップとの位置合わせが原因となって不整合が生じていた場合、第1指標マップ及び第2指標マップのいずれかで虚血領域であった領域のうちの略全域が不整合として検出されるため、合成マップを参照した操作者は位置合わせが不適切であったと判断し、画像生成機能342に対して位置合わせを再度行うよう指示することができる。
次に、特定機能347は、被検体の心臓において不整合に対応する空間領域を特定する。例えば、特定機能347は、FFR画像データ等のCT画像データにおいて、合成マップから不整合として検出した領域C2に対応する領域を特定する。例えば、特定機能347は、図4の右図に示す合成マップの各位置と、被検体の左心室の内膜の各位置との対応関係に基づいて、領域C2に対応する領域を特定する。
一例を挙げると、特定機能347は、FFR画像データ(図2左図)から第1指標マップ(図2の右図)を生成した際に画像生成機能342が用いた位置の対応関係を取得する。即ち、特定機能347は、左心室の内膜の各位置と第1指標マップの各位置との対応関係を取得する。ここで、合成マップは、第1指標マップと第2指標マップとを合成したものであるため、左心室の内膜の各位置と第1指標マップの各位置との対応関係は、左心室の内膜の各位置と合成マップの各位置との対応関係を表す。従って、特定機能347は、取得した対応関係を用いて、被検体の左心室の内膜のうち、合成マップの領域C2に対応する領域を特定することができる。
同様に、特定機能347は、FFRを表していない状態のCT画像データにおいて、領域C2に対応する領域を特定することもできる。更に、特定機能347は、空間領域を特定したFFR画像データ等のCT画像データと位置合わせすることにより、被検体の心臓を含んだ任意の画像データ(パーフュージョン画像データや、パーフュージョン解析の結果を表していない状態のSPECT画像データ等)において、領域C2に対応する領域を特定することができる。
そして、表示制御機能348は、空間領域を示す画像データを、ディスプレイ320に表示させる。例えば、まず、画像生成機能342は、CT画像データに対して種々の画像処理を実行することで表示画像を生成する。ここで、画像生成機能342は、特定機能347が特定した空間領域を操作者が認識できるようにして、表示画像を生成する。例えば、画像生成機能342は、領域C2に対応する空間領域について、他の領域と異なる色で表現したり、輪郭を強調したりして、FFR画像を生成する。一例を挙げると、表示制御機能348は、図5に示すように、被検体の心臓を示す表示画像において、領域C2に対応する空間領域D1を示して、ディスプレイ320に表示させる。なお、図5は、第1の実施形態に係る不整合に対応する空間領域を説明するための図である。
領域C2に対応する空間領域D1をディスプレイ320に表示することにより、表示制御機能348は、空間領域D1において不整合があった旨の注意喚起を行うことができる。即ち、画像生成機能342は、CT画像データから取得した形態的情報のみを参照する限りでは虚血領域ではないと判断される領域が、実際は虚血領域であるという可能性を操作者に提示することができる。そして、操作者は、空間領域D1をCT画像データやSPECT画像データにおいて観察し、空間領域D1が虚血領域であるか否かを判断したり、CT画像データやSPECT画像データの再収集が必要であると判断したりすることができる。即ち、表示制御機能348は、空間領域を示す画像データを表示させることで、形態的情報の精度を向上させることができる。
また、補正機能349は、検出された不整合に基づいて、CT画像データの補正を行うことができる。例えば、補正機能349は、不整合が検出された場合、CT画像データから血管を再抽出し、再抽出した血管に応じてCT画像データの血管領域を補正する。なお、補正機能349によるCT画像データの補正は、表示制御機能348による空間領域を示す画像データの表示に代えて行うものであってもよいし、併せて行うものであってもよい。以下、補正機能349によるCT画像データの補正について、詳細に説明する。
まず、CT画像データに基づく第1指標マップにおいて虚血領域であり、かつ、SPECT画像データに基づく第2指標マップにおいて虚血領域でない領域(以下、第1の不整合領域とも記載する)が不整合として検出された場合について説明する。この場合、CT画像データの血管領域の形状は、第1の不整合領域に対応する心臓の領域に虚血が生じていることを示している。一方で、SPECT画像に基づくパーフュージョン解析の結果は、第1の不整合領域に対応する心臓の領域に虚血が生じていないことを示している。
この場合、CT画像データから血管を抽出する際に、血管の見落としがあった可能性がある。即ち、CT画像データから抽出されなかった血管によって第1の不整合領域に対応する心臓の領域が栄養され、実際には虚血が生じていない可能性がある。仮に、第1の不整合領域に対応する心臓の領域を栄養する血管が存在するのであれば、操作者は、血行再建術を施さなくてもよいと判断することができる。
次に、SPECT画像データに基づく第2指標マップにおいて虚血領域であり、かつ、CT画像データに基づく第1指標マップにおいて虚血領域でない領域(以下、第2の不整合領域とも記載する)が不整合として検出された場合について説明する。なお、図4の右図に示す領域C2は、第2の不整合領域の一例である。この場合、SPECT画像に基づくパーフュージョン解析の結果は、第2の不整合領域に対応する心臓の領域に虚血が生じていることを示している。一方で、CT画像データの血管領域の形状は、第2の不整合領域に対応する心臓の領域に虚血が生じていないことを示している。
この場合、CT画像データから血管を抽出する際に、血管の狭窄の見落としがあった可能性がある。即ち、CT画像データから抽出されなかった狭窄によって、第1の不整合領域に対応する心臓の領域におけるFFRが低下し、虚血が生じている可能性がある。また、CT画像データから抽出されなかった血管が責任狭窄を有しており、第1の不整合領域に対応する心臓の領域に虚血が生じている可能性がある。仮に、第1の不整合領域に対応する心臓の領域に虚血が生じているのであれば、操作者は、血行再建術を施した方がよいと判断することができる。
そこで、補正機能349は、血管領域の抽出パラメータを変更してCT画像データから血管を再抽出し、第1の不整合領域や第2の不整合領域が生じた原因となった血管や狭窄を検索する。例えば、補正機能349は、CT画像データから血管領域を抽出するために算出機能344が用いた抽出パラメータとは異なる抽出パラメータを用いて、血管を再抽出する。ここで、抽出パラメータとは、例えば、シード点の位置や、抽出の基準となる画素値などである。
以下、CT画像データの各画素が「1024」の階調を有する場合を一例として説明する。まず、算出機能344は、CT画像データから血管領域を抽出するため、シード点の位置を「近位部」とし、閾値を「300」として、血管を抽出する。即ち、算出機能344は、CT画像データ中の左心室において大動脈弓に近い位置に近位部を設定し、近位部に含まれる1又は複数の点をシード点としてCT画像データを構成する画素を順次検索し、画素値が「300」よりも小さい画素を血管として抽出する。
そして、検出機能346による不整合の検出及び特定機能347による空間領域の特定の後、補正機能349は、シード点の位置を「不整合に対応する領域」とし、閾値を「150」として、血管を再抽出する。即ち、補正機能349は、CT画像データにおいて、不整合に対応する領域に含まれる1又は複数の点をシード点としてCT画像データを構成する画素を順次検索し、画素値が「150」よりも小さい画素を血管として再抽出する。その後、補正機能349は、再抽出した血管に応じて、CT画像データにおける血管領域を補正する。例えば、補正機能349は、再抽出の結果に基づいて、血管領域を追加したり、血管領域の形状を補正したりする。
なお、シード点の位置を「近位部」から「不整合に対応する領域」に変更することにより、血管抽出アルゴリズムの適用のされ方が変更され、先に検出されなかった血管や狭窄を再抽出できる場合がある。例えば、シード点の位置を「近位部」とする場合には「近位部」を始点として血管に相当する画素を上流から順に抽出していくことになるのに対し、シード点の位置を「不整合に対応する領域」とする場合には、まずは「不整合に対応する領域」の中から血管に相当する画素を抽出し、抽出した画素を始点として、血管に相当する画素を血管の上流又は下流から順に抽出することになる。このように、血管に相当する画素を抽出するための処理内容が変更される結果として、シード点の位置が「近位部」の場合に抽出されなかった血管や狭窄を再抽出できる場合がある。
また、閾値を「300」から「150」に変更することにより、閾値が「300」の場合には血管と判定されなかった画素が血管として判定され、先に検出されなかった血管や狭窄を再抽出できる場合がある。また、閾値を小さな値から大きな値に変更することにより、閾値が小さな値である場合に誤って血管として判定された画素が血管として判定されないようになる場合がある。なお、シード点の位置及び閾値の双方を変更して再抽出を行う場合について説明したが、シード点の位置及び閾値のいずれか一方のみを変更して再抽出を行う場合であってもよい。
また、血管中に狭窄がある場合、不連続に血管が抽出される場合がある。例えば、まず、算出機能344は、図6に示す位置a1をシード点として、血管を抽出する。これにより、算出機能344は、図6の位置a1から位置a2までを血管として抽出する。また、検出機能346により不整合が検出された後、補正機能349は、「不整合に対応する領域」に含まれる位置b1、位置b2、位置b3及び位置b4をシード点としてCT画像データから血管を再抽出する。即ち、補正機能349は位置b1をシード点として矢印方向に血管を探索し、位置b2をシード点として矢印方向に血管を探索し、位置b3をシード点として矢印方向に血管を探索し、位置b4をシード点として矢印方向に血管を探索する。ここで、補正機能349は、例えば、位置b2をシード点とした血管探索により、図6の位置a3から位置a4までの血管を再抽出する。その後、補正機能349は、再抽出した血管に応じて、CT画像データにおける血管領域を補正する。例えば、補正機能349は、再抽出の結果に基づいて、血管領域を追加したり、血管領域の形状を補正したりする。なお、図6は、第1の実施形態に係る血管再抽出処理について説明するための図である。
ここで、補正機能349により再抽出された血管(位置a3から位置a4までの血管)は、RCA、LAD及びLCXのいずれとも不連続な状態で抽出されてはいるものの、他の血管と関連している場合がある。例えば、位置a3から位置a4までの血管は、RCAやLAD、LCXの一部である場合がある。そこで、補正機能349は、再抽出した血管に関連する血管を特定する。
例えば、補正機能349は、まず、位置a3から位置a4までの血管における芯線と、図6に示すLADの芯線とを曲線により接続する。この時、補正機能349は、曲線の曲率が最小となるように、位置a3から位置a4までの血管における芯線と、LADの芯線と接続する。同様に、補正機能349は、位置a3から位置a4までの血管における芯線と、図6に示すRCAの芯線とを曲線により接続する。同様に、補正機能349は、位置a3から位置a4までの血管における芯線と、図6に示すLCXの芯線とを曲線により接続する。そして、補正機能349は、LAD、RCA及びLCXのうち、最小曲率の曲線を用いて接続可能な血管を、位置a3から位置a4までの血管に関連する血管として特定する。即ち、補正機能349は、芯線の間を接続する曲線の曲率に基づいて、再抽出した血管に関連する血管を特定する。
別の例を挙げると、補正機能349は、まず、位置a3から位置a4までの血管における芯線と、図6に示すLADの芯線とを直線により接続する。同様に、補正機能349は、位置a3から位置a4までの血管における芯線と、図6に示すRCAの芯線とを直線により接続する。同様に、補正機能349は、位置a3から位置a4までの血管における芯線と、図6に示すLCXの芯線とを直線により接続する。そして、補正機能349は、LAD、RCA及びLCXのうち、最短の直線を用いて接続可能な血管を、位置a3から位置a4までの血管に関連する血管として特定する。即ち、補正機能349は、芯線の間の距離に基づいて、再抽出した血管に関連する血管を特定する。なお、補正機能349は、芯線の間を接続する曲線の曲率と、芯線の間の距離とに基づいて、再抽出した血管に関連する血管を特定することとしてもよい。
図6に示す場合、位置a3から位置a4までの血管における芯線とLADの芯線との間の距離は短く、かつ、芯線の間を略直線により接続することが可能である。従って、図6に示す場合、補正機能349は、LADを、位置a3から位置a4までの血管に関連する血管として特定する。換言すると、補正機能349は、位置a3から位置a4までの血管が、LADの一部であると判定する。
ここで、表示制御機能348は、補正機能349による再抽出処理の結果を表示することとしてもよい。例えば、表示制御機能348は、図7に示すように、位置a1から位置a2までの血管、及び、位置a3から位置a4までの血管を、LADとして表示させる。更に、表示制御機能348は、位置a2と位置a3との間に狭窄があることを2つの三角形により表示する。更に、表示制御機能348は、点線により、位置a1から位置a2までの血管と位置a3から位置a4までの血管とが一続きの血管であることを表示する。なお、図7は、第1の実施形態に係る再抽出された血管の表示例を示す図である。
なお、図7の表示は一例であり、種々の変形が可能である。例えば、表示制御機能348は、図7の点線に代えて、位置a1、位置a2、位置a3及び位置a4を接続する線を表示してもよい。即ち、表示制御機能348は、狭窄を含むLADの芯線を一続きの線により表示してもよい。
また、図6では、「不整合に対応する領域」に含まれる複数の点(位置b1、位置b2、位置b3及び位置b4)をシード点として、CT画像データから血管を再抽出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、補正機能349は、「不整合に対応する領域」に含まれる1つの点をシード点として、CT画像データから血管を再抽出する。ここで、「不整合に対応する領域」において血管が再抽出されなかった場合、補正機能349は、「不整合に対応する領域」の中でシード点の位置を変更して、CT画像データから血管を再抽出する。一方で、「不整合に対応する領域」において血管が再抽出された場合、補正機能349は、再抽出処理を終了する。
補正機能349によるCT画像データの補正の後、算出機能344は、補正後のCT画像データにおける血管領域に基づいて、第1の機能指標を再算出する。例えば、算出機能344は、補正後のCT画像データにおける血管領域に基づいて流体解析を行い、血管領域の各位置のFFRを算出する。次に、画像生成機能342は、血管領域のFFRを表すCT画像データ(FFR画像データ)を生成する。次に、算出機能344は、FFR画像データの各位置を支配する血管領域を特定し、特定した血管領域のFFRを、第1の機能指標として再算出する。
そして、検出機能346は、FFR画像データから、被検体の心臓についての形態的情報を再取得する。例えば、検出機能346は、再算出された第1の機能指標に基づく虚血領域をCT画像データにおいて特定する。具体的には、検出機能346は、FFR画像データにおける心臓の各位置について、第1の機能指標として再算出されたFFRの値が閾値以下となるか否かを判定し、FFRの値が閾値以下となる位置の集合を虚血領域として特定する。更に、検出機能346は、虚血領域に基づいて、虚血が生じている心筋量を算出する。また、表示制御機能348は、虚血領域を示したFFR画像や虚血心筋量をディスプレイ320に表示させる。
次に、画像処理装置300による処理の手順の一例を、図8を用いて説明する。図8は、第1の実施形態に係る画像処理装置300の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。図8において、ステップS1040は、画像生成機能342に対応するステップである。ステップS1010は、取得機能343に対応するステップである。ステップS1050、ステップS1100及びステップS1110は、検出機能346に対応するステップである。ステップS1070は、特定機能347に対応するステップである。ステップS1060及びステップS1080は、表示制御機能348に対応するステップである。ステップS1090は、補正機能349に対応するステップである。
まず、処理回路340は、X線CT装置が収集したCT画像データ、及び、SPECT装置が収集したSPECT画像データを取得する(ステップS1010)。次に、処理回路340は、CT画像データに基づく第1指標マップを生成し(ステップS1020)、SPECT画像データに基づく第2指標マップを生成する(ステップS1030)。なお、ステップS1020とステップS1030との順序は任意であり、同時に行われてもよい。また、ステップS1020における処理の流れ、及び、ステップS1030における処理の流れについては後述する。
次に、処理回路340は、第1指標マップと第2指標マップとを位置合わせして合成し、合成マップを生成し(ステップS1040)、第1指標マップと第2指標マップとの不整合を合成マップから検出したか否かを判定する(ステップS1050)。不整合を検出した場合(ステップS1050肯定)、処理回路340は、合成マップを参照した操作者からの操作等に基づいて、第1指標マップと第2指標マップとの位置合わせが適切であったか否かを判定する(ステップS1060)。位置合わせが適切でないと判定した場合(ステップS1060否定)、処理回路340は、再度ステップS1040に移行する。
一方で、位置合わせが適切であったと判定した場合(ステップS1060肯定)、処理回路340は、CT画像データにおいて、不整合に対応する空間領域を特定する(ステップS1070)。次に、処理回路340は、不整合に対応する空間領域を示すCT画像データ等の画像データを、ディスプレイ320に表示させる(ステップS1080)。また、処理回路340は、不整合に基づいて、CT画像データを補正する(ステップS1090)。その後、処理回路340は、補正後のCT画像データに基づいて血管支配領域の再計算を行い(ステップS1100)、第1の機能指標を再取得する。そして、処理回路340は、再取得した第1の機能指標に基づいて虚血範囲及び虚血心筋量の再計算を行った後(ステップS1110)、又は、ステップS1050において不整合を検出しなかった場合、処理を終了する。
次に、図9を用いて、第1の実施形態に係る第1指標マップの生成について説明する。図9は、第1の実施形態に係る第1指標マップの生成処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。ここで、図9は、図8のステップ1020に対応する処理を示す。図9において、ステップS1023及びステップS1025は、画像生成機能342に対応するステップである。ステップS1021、ステップS1022及びステップS1024は、算出機能344に対応するステップである。
まず、処理回路340は、図8のステップS1010にて取得したCT画像データを用いて、FFRを算出するための前処理を行う(ステップS1021)。例えば、処理回路340は、FFR用前処理として、CT画像データにおける血管領域の特定や、血管形状データの取得を行う。次に、処理回路340は、CT画像データの血管領域を解析モデルとして用いた流体解析により、血管領域の各位置についてFFRを算出する(ステップS1022)。
次に、処理回路340は、冠動脈の形態情報を含むCT画像データと、CT画像データから算出したFFRとから、FFR画像データを生成する(ステップS1023)。その後、処理回路340は、FFR画像データの血管領域に基づいて血管支配領域の計算を行い(ステップS1024)、第1の機能指標を算出する。そして、処理回路340は、第1の機能指標を平面上に投影して、第1指標マップを生成する(ステップS1025)。
次に、図10を用いて、第1の実施形態に係る第2指標マップの生成について説明する。図10は、第1の実施形態に係る第2指標マップの生成処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。ここで、図10は、図8のステップ1030に対応する処理を示す。図10において、ステップS1033及びステップS1034は、画像生成機能342に対応するステップである。ステップS1031及びステップS1032は、指標取得機能345に対応するステップである。
まず、処理回路340は、図8のステップS1010にて取得したSPECT画像データを用いて、心筋パーフュージョンを算出するための前処理を行う(ステップS1031)。例えば、処理回路340は、心筋パーフュージョン用前処理として、複数のSPECT画像データ間の比較に基づくTDCの生成処理を行う。次に、処理回路340は、パーフュージョンを計算し(ステップS1032)、心臓の各位置について第2の機能指標を取得する。例えば、処理回路340は、TDCから求めた濃度の最大値や血流量等を第2の機能指標として取得する。
次に、処理回路340は、SPECT画像データとパーフュージョンの計算結果とから、第2の機能指標の分布を示したパーフュージョン画像データを生成する(ステップS1033)。そして、処理回路340は、パーフュージョン画像データにおける第2の機能指標を平面上に投影して、第2指標マップを生成する(ステップS1034)。
上述したように、第1の実施形態によれば、取得機能343は、被検体の心臓を含むCT画像データ及びSPECT画像データを取得する。また、算出機能344は、CT画像データに含まれる血管に対応する血管領域を抽出し、血管領域におけるFFRを算出し、FFRに基づいて、血管から栄養を供給される組織における機能を示す指標として、第1の機能指標を算出する。また、指標取得機能345は、SPECT画像データに基づいて、血管から栄養を供給される組織における機能を示す指標として、第2の機能指標を取得する。また、検出機能346は、第1の機能指標と第2の機能指標との不整合を検出する。また、特定機能347は、被検体の心臓において不整合に対応する空間領域を特定する。
従って、第1の実施形態に係る画像処理装置300は、CT画像データにおける血管領域から求めた虚血範囲等の形態的情報を、SPECT画像データにより評価することで、形態的情報の精度を向上させることができる。例えば、画像処理装置300は、不整合が検出された場合には、CT画像データの補正等、不整合を解消するための種々の対応を可能とし、不整合が検出されなかった場合には、形態的情報の信頼性を高めることができる。
また、第1の実施形態によれば、補正機能349は、不整合に基づいてCT画像データを補正する。従って、第1の実施形態に係る画像処理装置300は、SPECT画像データからの情報を含んだより精度の高い血管領域に基づいて、虚血領域や虚血心筋量といった形態的情報をより精度良く取得し、治療方針の検討や治療効果の判定に有用な情報を提供することができる。
また、第1の実施形態によれば、補正機能349は、CT画像データからは虚血領域と判断され、かつ、SPECT画像データからは虚血領域でないと判断された心臓の領域から血管を再抽出する。従って、第1の実施形態に係る画像処理装置300は、血管領域特定の段階における血管の見落としを回避し、虚血の生じていない領域に対する不要な治療を回避することができる。
また、第1の実施形態によれば、補正機能349は、SPECT画像データからは虚血領域と判断され、かつ、CT画像データからは虚血領域でないと判断された心臓の領域から血管を再抽出する。従って、第1の実施形態に係る画像処理装置300は、責任狭窄の見落としを回避し、より正確な形態的情報に基づいて適切な治療計画を立てることを可能とする。
また、第1の実施形態によれば、表示制御機能348は、不整合に対応する空間領域を示した被検体の心臓の画像データをディスプレイ320に表示させる。従って、第1の実施形態に係る画像処理装置300は、不整合に対応する心臓の領域が虚血領域であるか否かを操作者が判断することを可能とし、また、虚血領域であるか否か判断できない場合にはCT画像データの補正等をすることで、形態的情報の精度を向上させることができる。
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、第1の機能指標及び第2の機能指標を平面に投影して第1指標マップ及び第2指標マップを生成し、第1指標マップ及び第2指標マップを合成した合成マップにおいて不整合を検出する場合について説明した。これに対して、第2の実施形態では、第1の機能指標及び第2の機能指標を平面に投影せずに比較し、CT画像データやSPECT画像データといったボリュームデータから不整合を検出する場合について説明する。
第2の実施形態に係る画像処理装置300は、図1に示した画像処理装置300と同様の構成を有し、画像生成機能342、算出機能344、指標取得機能345、検出機能346及び特定機能347による処理の一部が相違する。そこで、第1の実施形態において説明した構成と同様の構成を有する点については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
まず、算出機能344は、FFR画像データに基づいて、被検体の心臓の位置ごとに、血管から栄養を供給される組織における機能を示す指標として、第1の機能指標を算出する。また、指標取得機能345は、SPECT画像データに基づいて、被検体の心臓の位置ごとに、血管から栄養を供給される組織における機能を示す指標として、第2の機能指標を算出する。また、画像生成機能342は、第2の機能指標の分布を示したパーフュージョン画像データを生成する。
また、検出機能346は、FFR画像データにおいて虚血領域を特定する。例えば、検出機能346は、FFR画像データに含まれる心臓の各位置について、第1の機能指標(FFRの値)が閾値以下となるか否かを判定し、FFRの値が閾値以下となる位置の集合を虚血領域として特定する。また、検出機能346は、パーフュージョン画像データにおいて虚血領域を特定する。例えば、検出機能346は、パーフュージョン画像データに含まれる心臓の各位置について、第2の機能指標(例えば、血流量)が閾値以下となるか否かを判定し、血流量が閾値以下となる位置の集合を虚血領域として特定する。
また、画像生成機能342は、第1の機能指標の分布を示したFFR画像データと第2の機能指標の分布を示したパーフュージョン画像データとを位置合わせする。一例を挙げると、画像生成機能342は、FFR画像データ及びパーフュージョン画像データのそれぞれから特徴点を抽出し、特徴点の位置が相互に合うように、FFR画像データとパーフュージョン画像データとを位置合わせする。
そして、検出機能346は、第1の機能指標と第2の機能指標との不整合を、FFR画像データ又はパーフュージョン画像データから検出する。一例を挙げると、検出機能346は、FFR画像データにおいて虚血領域であり、かつ、パーフュージョン画像データにおいて虚血領域でない被検体の心臓の領域を、不整合として検出する。また、一例を挙げると、検出機能346は、パーフュージョン画像データにおいて虚血領域であり、かつ、FFR画像データにおいて虚血領域でない被検体の心臓の領域を、不整合として検出する。そして、特定機能347は、FFR画像データやパーフュージョン画像データ等のボリュームデータにおいて、不整合に対応する空間領域を特定する。
なお、FFR画像データとパーフュージョン画像データとを比較して不整合を検出する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、まず、画像生成機能342は、FFR画像データから第1の機能指標の分布のみを抽出した3次元のマップを生成し、パーフュージョン画像データから第2の機能指標の分布のみを抽出した3次元のマップを生成する。そして、検出機能346は、生成された3次元のマップ同士の比較を行うことで、不整合を検出することができる。
上述したように、第2の実施形態によれば、画像処理装置300は、第1の機能指標と第2の機能指標とをボリュームデータ(3次元の機能指標マップ)において比較し、不整合を検出する。従って、第2の実施形態に係る画像処理装置300は、ポーラーマップを生成することなく、形態的情報の精度を向上させることができる。即ち、第2の実施形態に係る画像処理装置300は、心臓に限らず、脳や肝臓といった種々の部位の検査に適用することができる。
(第3の実施形態)
さて、これまで第1~第2の実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
上述した実施形態では、FFR画像データの被検体の部位における各位置について支配血管を特定し、特定した支配血管におけるFFRを、第1の機能指標として取得する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。
例えば、算出機能344は、FFRに代えて、又は、FFRと併せて、血管内の力学的な流体指標や血液の流量に関する流体指標を用いて第1の機能指標を算出する場合であってもよい。即ち、算出機能344は、FFRのみならず、種々の流体指標に基づいて、第1の機能指標を算出することができる。なお、血管内の力学的な流体指標とは、例えば、圧力やベクトル、せん断応力などである。また、血液の流量に関する流体指標とは、例えば、流量や流速などである。
また、例えば、算出機能344は、CT画像データの位置ごとに支配血管を特定し、特定した支配血管における血管の太さを示す値を、第1の機能指標として取得する場合であってもよい。即ち、算出機能344は、流体指標として、血管の太さを示す値を用いてもよい。一例を挙げると、検出機能346は、CT画像データの血管領域の形態情報から冠動脈壁輪郭を取得し、冠動脈壁輪郭断面積を血管の太さを示す値として取得することができる。また、一例を挙げると、検出機能346は、冠動脈壁輪郭に基づく冠動脈の直径や周を、血管の太さを示す値として取得することができる。なお、太い血管に支配される領域は虚血領域でない場合が多く、細い血管に支配される領域は虚血領域となる場合が多い。従って、検出機能346は、第1の機能指標として取得した血管の太さを示す値が閾値よりも小さい領域を、虚血領域として特定することができる。なお、支配血管の太さを示す値を第1の機能指標として取得する場合、算出機能344は、血管領域のFFRを表していない状態のCT画像データから第1の機能指標を取得できる。即ち、支配血管の太さを第1の機能指標として取得する場合、FFR解析及びFFR画像データの生成は行わない場合であってもよい。
また、上述した実施形態では、被検体の部位における各位置と血管領域との距離のみに基づいて、支配血管を特定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、算出機能344は、重み付き距離に基づいて、支配血管を特定する場合であってもよい。ここで、重みとは、例えば、FFRや血管の太さなどである。
一例を挙げると、算出機能344は、まず、FFRや血管の太さの値に応じて(例えば、FFRに比例して直径が大きくなるように)血管領域を拡張する。次に、算出機能344は、被検体の部位における各位置について、拡張された血管領域の端(輪郭)までの距離が最小となる血管領域を、支配血管として特定する。即ち、算出機能344は、血管領域の芯線までの距離でなく、FFRに応じて拡張された領域までの距離(重み付き距離)に基づいて、支配血管を特定する。これにより、栄養する能力が大きい血管の支配領域がより広く算出され、虚血領域等の形態的情報をより精度よく算出することができる。
また、一例を挙げると、算出機能344は、まず、被検体の部位における位置P1について、位置P1と血管領域における各位置までの距離を取得する。次に、算出機能344は、血管領域における各位置について、FFRや血管の太さの値と、位置P1までの距離とに基づく値を、重み付き距離として算出する。例えば、算出機能344は、血管領域における各位置について、位置P1までの距離を冠動脈壁輪郭断面積で除した値を重み付き距離として算出する。そして、算出機能344は、重み付き距離が最小となる血管領域を、位置P1の支配血管として特定する。また、算出機能344は、位置P1以外の位置についても同様に支配血管を特定する。これにより、栄養する能力が大きい血管の支配領域がより広く算出され、虚血領域等の形態的情報をより精度よく算出することができる。
また、上述した実施形態におけるCT画像データは、形態画像データの一例であり、CT画像データに代えて他の形態画像データを用いても同様の画像処理が可能である。例えば、算出機能344は、MR画像データに基づいて、第1の機能指標を算出することができる。また、例えば、算出機能344は、流体指標の空間分布を表す種々のCT画像データ(例えば、FFR画像データ)に基づいて、第1の機能指標を算出することができる。即ち、算出機能344は、血管形状データを取得することができる任意の形態画像データに基づいて、第1の機能指標を算出することができる。
また、上述した実施形態におけるSPECT画像データは、機能画像データの一例であり、SPECT画像データに代えて他の機能画像データを用いても同様の画像処理が可能である。例えば、指標取得機能345は、PET画像データやCTパーフュージョン画像データ、MRパーフュージョン画像データに基づいて、第2の機能指標を取得することができる。
また、例えば、指標取得機能345は、CT画像データに対する心機能解析の結果を表す画像データ、MR画像データに対する心機能解析の結果を表す画像データ、又は、超音波画像データに対する心機能解析の結果を表す画像データに基づいて、第2の機能指標を取得することができる。一例を挙げると、指標取得機能345は、心電同期撮像によるMR画像データから、左心室容積の一心拍内の時間変化等の心機能の解析結果を、第2の機能指標として取得する。そして、指標取得機能345は、第2の機能指標と、モデルデータ(虚血が生じていない心臓における心機能解析の結果など)とを比較することで、虚血領域を特定することができる。
また、上述した実施形態では、形態画像データに基づく第1の機能指標と、機能画像データに基づく第2の機能指標とを比較して、不整合を検出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、検出機能346は、形態画像データから抽出された血管領域と、機能画像データに基づく第2の機能指標とを比較して、不整合を検出してもよい。
例えば、取得機能343は、被検体の心臓を含むCT画像データ及びSPECT画像データを取得する。次に、算出機能344は、取得機能343が取得したCT画像データに含まれる血管に対応する血管領域を抽出する。また、指標取得機能345は、SPECT画像データに基づいて、血管から栄養を供給される組織における機能を示す第2の機能指標を取得する。
次に、検出機能346は、血管領域と第2の機能指標とを比較して、不整合を検出する。例えば、検出機能346は、まず、抽出された血管領域に基づいて、被検体における各血管の長さを取得する。一例を挙げると、検出機能346は、被検体におけるRCA、LAD及びLCXそれぞれの長さを取得する。
また、検出機能346は、RCA、LAD及びLCXのそれぞれについて、長さの基準値を取得する。即ち、検出機能346は、各血管の一般的な長さを取得する。かかる基準値は、記憶回路330に事前に格納される。例えば、検出機能346は、複数の患者について、各血管の長さを取得する。次に、検出機能346は、取得した血管の長さを患者情報(性別や体格等)ごとに分類する。次に、検出機能346は、取得した血管の長さの平均値や中央値等を、長さの基準値として記憶回路330に格納する。そして、検出機能346は、取得機能343がCT画像データを取得した後、被検体の患者情報に応じて、記憶回路330から各血管の長さの基準値を取得する。即ち、検出機能346は、血管の長さに個人差があることを考慮して、適当な基準値を選択する。
次に、検出機能346は、取得した基準値に対する被検体の各血管の長さの比を算出する。例えば、検出機能346は、図11に示すように、RCAの長さの基準値と、被検体のCT画像データに基づくRCAの長さとの比として、「1.2」を算出する。また、検出機能346は、LADの長さの基準値と、被検体のCT画像データに基づくLADの長さとの比として、「0.5」を算出する。また、検出機能346は、LCXの長さの基準値と、被検体のCT画像データに基づくLCXの長さとの比として、「1.1」を算出する。なお、図11は、第3の実施形態に係る不整合領域の検出について説明するための図である。
図11に示す場合、被検体のRCA及びLCXは、基準値に対する比が「1」に近い値となっている。即ち、被検体のRCA及びLCXは、一般的な長さを有している。一方で、被検体のLADは、基準値に対する比が「0.5」となっている。即ち、被検体のLADは、一般的な長さの半分程度の長さとなっている。従って、CT画像データから抽出された血管領域は、LADにより栄養を供給される組織に虚血が生じている可能性を示している。ここで、LADにより栄養を供給される組織について、第2の機能指標が、虚血が生じていないことを示す場合がある。この場合、検出機能346は、LADにより栄養を供給される組織を不整合として検出する。即ち、検出機能346は、CT画像データに基づく血管領域が虚血領域であることを示し、SPECT画像データに基づく第2の機能指標が虚血領域でないことを示す領域を、不整合として検出する。
或いは、被検体の各血管の長さが基準値と同程度であるのに対して、第2の機能指標が、虚血が生じていることを示す場合がある。この場合、検出機能346は、CT画像データに基づく血管領域が虚血領域でないことを示し、SPECT画像データに基づく第2の機能指標が虚血領域であることを示す領域を、不整合として検出する。例えば、検出機能346は、第2の機能指標が虚血領域であることを示す領域のうち、CT画像データに基づく血管領域、及び、血管領域から所定の距離に含まれる領域を、不整合として検出する。
上述したように、検出機能346は、CT画像データから抽出された血管領域と、SPECT画像データに基づく第2の機能指標との不整合を検出する。即ち、検出機能346は、CT画像データに基づく流体指標及び第1の機能指標を用いずとも、不整合を検出することができる。
なお、これまで、CT画像データから抽出された血管領域から被検体の各血管の長さを取得し、基準値に対する被検体の各血管の長さの比に基づいて、第2の機能指標との不整合を検出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、検出機能346は、被検体の各血管の長さを相互に比較した結果に基づいて、第2の機能指標との不整合を検出してもよい。例えば、CT画像データから抽出した血管領域においてLADの長さが他の血管に対して著しく短くなっており、かつ、第2の機能指標がLADにより栄養を供給される組織に虚血が生じていないことを示す場合、検出機能346は、LADにより栄養を供給される組織を不整合として検出する。
また、上述した実施形態では、画像処理装置300を一例として説明した。即ち、画像処理装置300が、X線CT装置が収集した形態画像データとSPECT装置が収集した機能画像データとを取得して、上記の各処理を実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線CT装置が、収集した形態画像データと、SPECT装置から取得した機能画像データとを用いて、上記の各処理を実行する場合であってもよい。また、例えば、SPECT装置が、収集した機能画像データと、X線CT装置から取得した形態画像データとを用いて、上記の各処理を実行する場合であってもよい。言い換えると、形態画像データ及び機能画像データの取得が可能な任意の医用画像診断装置及び画像処理装置において、上述した画像処理が可能である。
第1~第3の実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
また、第1~第3の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この画像処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、形態的情報の精度を向上させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。