JP7149472B2 - 脳機能改善組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、アルツハイマー型認知症による記憶障害や知的能力の減退の改善機能を有する脳機能改善組成物に関する。
近年、高齢化社会の進行に伴って、認知症への対応が大きな課題となっている。認知症は、まず早期に発見し、適切な診断・治療を行うことによって、学習能力や記憶能力や判断力などの脳機能が低下する様々な症状の進行を遅らせること、その予防に努めることが大切である。認知症の中でもアルツハイマー型は過半数を占めているが、アミロイドβタンパクの沈着による老人斑や神経原線維変化がみられ、著しい脳萎縮をきたすことが知られている。
これまで、アルツハイマー型認知症の治療薬としては、代表的にはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(塩酸ドネペジルなど)のほか、非ステロイド系抗炎症薬、β-セレクターゼ阻害薬などがある。また、日常的に摂取してアルツハイマー型認知症を防ぎ、進行を遅らせる効果が報告されている野菜や果物等の天然由来成分としては、ウコンに含まれるクルクミン、ブドウに含まれるレスベラトロール、米ぬかに含まれるフェルラ酸、イチョウの葉エキス、麹に含まれる5-ヒドロキシルメチルフルフラールなどがある。
例えば、特許文献1には、麹を特定の条件下で加熱処理することを含む抗酸化活性が増強した液化麹の製造方法と、これにより得られた液化麹の抗酸化剤、あるいは認知症の治療及び/又は予防剤が記載されている。すなわち、発酵食品の機能性成分である麹の抗酸化活性を高め、麹自体を機能性食品などの素材として利用することが開示されている。
特許文献2には、ワインから取得した新規ペプチドを有効成分とするプロリルエンドペプチターゼ阻害剤が記載されており、認知症の予防、治療に有用である旨が記載されている。また、特許文献3には、大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、この液体部分を合成吸着剤を用いた吸着処理に付して吸着画分を得、この吸着画分をアルカリ又はエタノールを用いて溶出することにより得られる脱着画分からなる学習性向上組成物が提案されている。
特許第5880856号公報 特開2002-80497号公報 特許第4524342号公報
Meunier J. et al.:The anti-amnesic and neuroprotective effects of donepezil against amyloid β25-35 peptide-induced toxicity in mice involve an interaction with the σ1 receptor, British J Pharmacol., 149:998 (2006) Chavant F. et al.:Imipramine, in part through tumor necrosis factor α inhibition, prevents cognitive decline and β-amyloid accumulation in a mouse model of Alzheimer’s disease, J. Pharmacol. Exp.Ther., 332:505 (2010) D’Agostino G. et al.:Palmitoylethanolamine protects against the amyloid-β25-35-induced learning and memory impairment in mice, an experimental model of Alzheimer disease, Neruopsychopharmacology., 37:1784 (2012) Suk Lee D. et al.:Ameliorating effects of HX106N, a water-soluble botanical formulation, on Aβ25-35-induced memory impairment and oxidative stress in mice, Biol. Pharm. Bull., 37:954 (2014) Sanabria-Castro A et al., (2017) Molecular Pathogenesis of Alzheimer's Disease: An Update. Ann Neurosci. 24: 46-54. Alonso AD et al., (1997) Abnormal phosphorylation of tau and the mechanism of Alzheimer neurofibrillary degeneration: sequestration of microtubule-associated proteins 1 and 2 and the disassembly of microtubules by the abnormal tau. Proc Natl Acad Sci U S A. 94: 298-303. Wang C et al., (2014) The role of pro-inflammatory S100A9 in Alzheimer's disease amyloid-neuroinflammatory cascade. Acta Neuropathol. 127: 507-522. Wang P et al., (2014) Aggravation of Alzheimer's disease due to the COX-2-mediated reciprocal regulation of IL-1β and Aβ between glial and neuron cells. Aging Cell. 13: 605-615. Helmfors L et al., (2015) Protective properties of lysozyme on β-amyloid pathology: implications for Alzheimer disease. Neurobiol Dis. 83:122-133. Abisambra JF et al.,(2012) DnaJA1 antagonizes constitutive Hsp70-mediated stabilization of tau. J Mol Biol. 421: 653-661. Hong S et al., (2016) Complement and microglia mediate early synapse loss in Alzheimer mouse models. Science. 352: 712-716. Zabel MK and Kirsch WM, (2013) From development to dysfunction: microglia and the complement cascade in CNS homeostasis. Ageing Res Rev. 12: 749-756. Zhang T et al., (2006) Cellular effect of high doses of silica-coated quantum dot profiled with high throughput gene expression analysis and high content cellomics measurements. Nano Lett. 6: 800-808. Ripoll VM et al., (2007) Gpnmb is induced in macrophages by IFN-gamma and lipopolysaccharide and acts as a feedback regulator of proinflammatoryresponses. J Immunol. 178: 6557-6566. Li B et al, (2010) The melanoma-associated transmembrane glycoprotein Gpnmb controls trafficking of cellular debris for degradation and is essential for tissue repair. FASEB J. 24: 4767-4781 Murata K et al., (2015) The extracellular fragment of GPNMB (Glycoprotein nonmelanosoma protein B, osteoactivin) improves memory and increases hippocampal GluA1 levels in mice. J Neurochem.132: 583-94. Arnaud L et al., (2011) Mechanism of inhibition of PP2A activity and abnormal hyperphosphorylation of tau by I2(PP2A)/SET. FEBS Lett. 585: 2653-2659.
前記した特許文献3には、焼酎蒸留残液から分取した液体分に係る記憶学習能向上の薬理作用について、以下のことが報告されている。すなわち、「大麦焼酎を製造する際に副成される大麦焼酎蒸留残液を使用して、卓越した記憶学習能向上の薬理作用を呈する物質を取得することを目指して、実験を介して検討を行った結果、大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を用いる吸着処理に付して合成吸着剤吸着画分をアルカリ又はエタノールを用いて溶出することにより分取した脱着画分が、マウスを使用した記憶学習能評価試験において卓越した記憶学習能向上の薬理作用を発揮した。大麦焼酎蒸留残液についてのこの発見は、今までに全く例のない新事実である。」としている。
しかしながら、本発明は、特許文献3における焼酎蒸留残液から分取した液体分を利用するものではなく、焼酎の製造工程中、もろみを蒸留して得られた原酒中に含まれる焼酎油の機能性(用途)に関する発明である点で、特許文献3とは大きく相違する。
本発明者は、焼酎の製造工程で産出する焼酎油の新たな機能性を見出すことを課題とし鋭意研究を重ねた結果、焼酎油にアルツハイマー型認知症による記憶障害や知的能力の減退の改善機能があることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、認知症、特にアルツハイマー型認知症の改善を図ることができる脳機能改善組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、通常は廃棄される焼酎油の有効利用を図るものである。
すなわち、本発明は、焼酎油を有効成分とする脳機能障害改善用組成物であることを第1の特徴とする。また、前記有効成分とされた焼酎油が単式蒸留焼酎由来であることを第2の特徴とする。そして、改善する脳機能障害が認知症であることを第3の特徴とし、特に脳機能障害がアルツハイマー型認知症であることを第4の特徴とする。
本発明の有効成分である焼酎油は、焼酎の製造工程中に得られるものであるが、アミロイドβ投与で惹起したマウスの脳・神経細胞障害が緩和され、記憶・学習の機能低下を改善することが認められた。
なお、本発明が提供する脳機能改善組成物は、焼酎油を有効成分として含有するものであるが、他の認知症改善物質や脳機能改善物質を配合成分として適宜添加できる。また、必要に応じて、他のビタミンやミネラル等の栄養素、保存料、賦形剤、甘味料や着色料等を適宜添加できる。
マウスへの焼酎油の投与により、記憶・学習機能低下が改善された。その作用機序としては、炎症による機能障害の緩和、異常タンパク質蓄積の改善(ユビキチン系の機能改善)、免疫応答の制御、タウタンパク質リン酸化の緩和を介して、アミロイドβ投与で惹起した脳・神経細胞障害が緩和され、記憶・学習の機能低下を改善することが認められた。したがって、特にアルツハイマー型認知症の改善組成物として有用である。また、本発明によれば、焼酎原酒に含まれる余分な焼酎油を廃棄せずに有効活用ができるという効果を有する。
焼酎製造工程の一実施例を示すフローチャートである。 Y字型迷路試験の一例を示す説明図である。 実施例1に係るマウスの体重推移を示すグラフである。 自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)結果を示すグラフである。 DNAマイクロアレイ測定結果(焼酎及び焼酎油投与群で共通してアミロイドβによる発現亢進が緩和された遺伝子)を示すグラフである。 DNAマイクロアレイ測定結果(焼酎投与群のみでアミロイドβによる発現亢進が緩和された遺伝子)を示すグラフである。 DNAマイクロアレイ測定結果(焼酎油投与群のみでアミロイドβによる発現亢進が緩和された遺伝子)を示すグラフである。 DNAマイクロアレイ測定結果(焼酎及び焼酎油投与群で共通して発現抑制の緩和見られた遺伝子)を示すグラフである。 DNAマイクロアレイ測定結果(焼酎投与群のみで発現抑制の緩和見られた遺伝子)を示すグラフである。 DNAマイクロアレイ測定結果(焼酎油投与群のみで発現抑制の緩和見られた遺伝子)を示すグラフである。 実施例2に係るマウスの体重推移を示すグラフである。 実施例2に係る自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(焼酎油産出工程)
図1に示すように、本実施例で使用する焼酎は米及び甘藷を原料に用いた単式蒸留焼酎であり、焼酎油は、その製造過程において、常圧又は減圧蒸留を行った後の焼酎原酒の冷却中に浮上したものを掬って得たもので、その主成分を表1に示す。すべての単式蒸留焼酎油にも同じ主成分が含まれる。
Figure 0007149472000001
分析の結果、焼酎油は含有率の多い順に、パルミチン酸エチル、リノール酸エチル、オレイン酸エチル、ステアリン酸エチル、カプリン酸エチル、ラウリル酸エチル、ミリスチン酸エチル、α-リノレン酸エチルを主たる成分として構成されていることが分かった。
「焼酎と焼酎油のアミロイドβ誘発記憶障害モデルに対する改善作用試験」
アミロイドβ誘発記憶障害モデルに対する改善作用試験:自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)及びマウス海馬を用いたDNAマイクロアレイ解析を行った。被験物質の構成を表2に示す。
Figure 0007149472000002
[試験方法]
マウス(Slc:ddY,SPF,雄,5週齢)に被験物質を1日1回の頻度で15日間反復投与した。投与8日目に被験物質を投与した後、30分後にアミロイドβ25-35を脳室内投与した。最終投与の24時間後に自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)を行い、アミロイドβ誘発自発的交替行動(作業記憶)障害に対する被験物質の改善作用について検討した。なお、自発的交替行動試験終了後にマウスの脳を摘出して海馬及び皮質をRNAlater処理し、冷凍(-70℃以下)保管後、DNAマイクロアレイでの網羅的遺伝子発現解析を実施し、文献検索等のインフォマティクスを駆使して関与遺伝子を特定し、作用機序を考察した。
ここで、Slc:ddYマウスは、発育・繁殖性が良好で、ワクチン検定・貝毒性検査・精神疾患(うつ)・各種研究などにもっとも広く使用されている。また、自発的交替行動試験(spontaneous alternation;Y字型迷路試験)とは、図2に示すように、3本のアームをすべて同じ大きさにしてアーム間の角度を120度とした略Y字型に分岐した迷路を使用し、マウスが探索行動で自発的に異なるアームに入る性質を利用した試験方法で、既に入ったアームを記憶していることにより可能となる行動試験である。
[自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)の測定]
自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)は、上述したように、マウス1を図2に示す装置2内を探索させた際に認められる自発的交替行動を短期記憶として評価する方法である。具体的には、被験物質の最終投与の24時間後に、マウス1をY字迷路のいずれかのアーム2a、2b又は2cの先端に置き、8分間にわたって迷路内を自由に探索させ、マウス1が移動したアーム2a、2b又は2cの位置を選択した順に記録した。マウス1が測定時間内に各アーム2a、2b又は2cに進入した回数(総進入数)及び連続して異なる3本のアーム2a、2b又は2cに進入した組み合わせの数(交替行動数)を抽出し、下記の数式より交替行動率(%)を算出し、短期記憶の指標とした。
[数式]
交替行動率(%)=交替行動数÷(総アーム進入回数-2)×100
[自発的交替行動試験測定結果の数理統計学的解析]
総進入数及び自発的交替行動率は、実験群を、後述するA1~A4の4群に分け、群ごとに平均値±標準誤差で表した。実験群A1及び実験群A2、実験群A2及び実験群A3、実験群A2及び実験群A4については、それぞれ2群の検定を行った。2群の検定にはF検定(フィッシャーの正確確率検定:検定統計量が、帰無仮説の下でF分布に従うことを仮定して行う統計的検定。)により2群に一様性(等分散)が認められた場合にはAspin Welchのt検定を行った。統計解析には、StatLight(商品名:ユックムス株式会社製)を使用し、有意水準は5%未満とした。
[被験物質の投与]
被験物質の投与方法は、自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)実施の15日前から1日1回の頻度で15日間反復投与した。投与方法は、1mLのディスポーザブルシリンジ及びディスポーザブル経口ゾンデを用いて各々10mL/kgずつ経口投与した。投与液量の算出は投与日の直前の体重測定結果に基づいて個体別に行った。
[脳室内へのアミロイドβ25-35又は注射用水の投与]
マウスの脳室内へのアミロイドβ25-35又は注射用水の投与方法は、先ず、麻酔剤(ケタミン75mg/kg+メデトミジン1mg/kg)を皮下投与してマウスを麻酔し、脳定位固定装置に固定後、PE20サイズのポリエチレンチューブを介して27Gサイズの注射針を接続した50μL容量のマイクロシリンジをシリンジポンプに取り付けて、30μL/minの流速で5μLを脳室内に投与した。投与の位置はBregma(前頭の十字縫合)から後方に0.2mm、左方へ1.0mm、頭骸骨の表面から下方へ2.5mmとした。
[体重測定]
体重は被験物質投与開始日、アミロイドβ投与日及び自発的交替行動実施日(被験物質最終投与24時間後)に測定した。
[体重測定結果]
被験物質として、媒体(注射用水)、焼酎2000mg/kg又は焼酎油2000mg/kgを、15日間経口投与し、投与8日目にアミロイドβ25-35又は注射用水を脳室内投与したマウスの投与期間中の体重推移を図3及び表3示す。
Figure 0007149472000003
媒体として注射用水を脳室内に投与し、注射用水を15日間経口投与した群の投与開始日(Day1)、脳室内投与日(Day8)及び最終投与翌日(Day16)の体重は、それぞれ33.0g、37.0g及び38.3gであり、順調な体重増加を示した。アミロイドβ25-35を脳室内に投与し、媒体(注射用水)、焼酎又は焼酎油をそれぞれ15日間経口投与したマウスについても、同様の体重推移が観察された。また、投与期間中に特記すべき一般状態の変化を示したマウスは、いずれの実験群にも認められなかった。
[自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)の結果]
アミロイドβ25-35又は注射用水を脳室内投与したマウスに媒体(注射用水)、焼酎又は焼酎油を15日間反復経口投与し、最終投与の24時間後に実施した自発的交替行動におけるアームへの総進入数及び自発的交替行動率を表4と図4に示す。
Figure 0007149472000004
マウスにアミロイドβ25-35を脳室内投与することにより、自発的交替行動の障害が認められることが報告されており(非特許文献1~4参照)、本実施例試験においてもアミロイドβ25-35を脳室内投与して媒体(注射用水)を経口投与した群のマウスは、注射用水を脳室内投与した群に比べて自発的交替行動率の有意な減少(低下)を示し、アミロイドβ25-35による自発的交替行動の障害が観察された。
表4及び図4から分かるように、総進入数に関しては、実験群A1(被験物質:媒体(注射用水)+脳室内投与物質:媒体(注射用水))の平均値が29.9、実験群A2(被験物質:媒体(注射用水)+脳室内投与物質:アミロイドβ25-35)の平均値が34.3であり、両群間に有意な差は認められなかった。また、実験群A3(被験物質:焼酎+脳室内投与物質:アミロイドβ25-35)の平均値が31.3、実験群A4(被験物質:焼酎油+脳室内投与物質:アミロイドβ25-35)の平均値が30.8であり、いずれの実験群においても総進入数に有意な差は認められなかった。これらのことから、アミロイドβ25-35投与の有無(A1vsA2~A4)及びアミロイドβ25-35投与マウスへの焼酎又は焼酎油投与の比較(A2vsA3又はA2vsA4)において、いずれの比較条件下でもマウスの行動活性に影響がないことを確認した。
一方で、自発的交替行動率に関しては、実験群A1が70.3%であったのに対し、実験群A2が49.2%であり、実験群A2においてアミロイドβ25-35の脳室内投与による有意な減少(低下)が認められた。これに対し、アミロイドβ25-35を脳室内投与したマウスに焼酎又は焼酎油を経口投与した各群(実験群A3又はA4)の自発的交替行動率は、62.9%又は59.5%であり、各群では実験群A2との比較において有意な増加(改善)が認められた。
以上の結果から、焼酎又は焼酎油を15日間反復経口投与することにより、アミロイドβ25-35の脳室内投与で誘発されるマウスの自発的交替行動障害に対して改善作用を奏することが認められた。アミロイドβ25-35による自発的交替行動の障害は、認知症治療薬の塩酸ドネペジルの経口投与により改善されることが報告されていることから、これらの被験物質は、認知症に対して予防、改善又は治療効果を有する可能性がある。
[DNAマイクロアレイ解析]
自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)により、マウスへの焼酎又は焼酎油の投与は自発的交替行動に対して改善作用を有することが認められた。その作用機序についてゲノミクスレベルで解析するため、剖検時に海馬及び大脳皮質を採取してRNAlater処理し、冷凍保管したマウス海馬から抽出したRNAを用いてDNAマイクロアレイでの網羅的遺伝子解析を実施し、文献検索等のインフォマティクスを駆使して関与遺伝子を特定し、作用機序を考察した。
[脳の摘出]
自発的交替行動の測定終了後にマウスを断頭し、全脳を摘出した。摘出した脳から海馬及び大脳皮質を採取後、RNAlaterに浸漬して前処理した。RNAlater処理した海馬及び大脳皮質は、冷凍(-70℃以下)保存し、DNAマイクロアレイ解析試料とした。
DNAマイクロアレイは、細胞内の遺伝子発現量を測定するために、多数のDNA断片をプラスチックやガラス等の基板上に高密度に配置した分析器具のことである。細胞内の遺伝子発現量を測定するために、数万から数十万に区切られた基板の上にDNAの部分配列を高密度に配置して固定したものを指し、固定した遺伝子断片と、細胞から抽出したmRNAを逆転写酵素でcDNAに変換したものを基板上のDNA配列に対してハイブリダイゼーションすることによって、細胞内で発現している遺伝子情報を網羅的に検出することができる。
[RNA抽出]
RNAlater処理凍結海馬を使用し、各群2例ずつプールしてRNAiso plus(商品名:タカラバイオ株式会社製)を用いて常法どおりtotalRNAを抽出、さらに液相でDNase処理し、RNeasy MinElute Cleanup Kit(QLAGEN)で精製した。得られたtotalRNAを吸光度(260nm、280nm及び320nm)測定し、濃度算定及び純度確認(260nm/280nmの比で2.0以上)した。抽出したtotalRNAは冷凍(-70℃以下)保管した。
[RNA品質管理]
得られたtotalRNAは、各群5サンプルを等量ずつプールした後、マイクロチップ電気泳動装置Agilent2100バイオアナライザ(商品名:Agilent Technologies,Inc)を用いて電気泳動し、RIN(RNA Integrity Number)を算出した。RINの値が基準値(6.5)以上の6.8であることを確認した。基準値以上のtotalRNAは次のステップまで冷凍(-70℃以下)保管した。
[ラベル化cRNA作製]
各群5サンプルを等量ずつプールした200ngのtotalRNAサンプルを、Low Input Quick Amp Labeling Kit(Agilent)を用いてcDNAの濃度、Cy3インコーポレーションを260nm、280nm、550nm及び320nmでの吸光度より算出し、基準値(CY3-CTPincorporetion>6pmol/μg)を満たしていることを確認した。
[ハイブリダイゼーションとアレイ洗浄]
Gene Expression Hybridization Kit(商品名:アジレント・テクノロジー株式会社製)を用い、それぞれ1.65μgのラベル化cRNAをフラグメンテーションし、Whole Mouse Genome Microarray Ver2.0(Agilent)にアプライ、65℃で17時間ハイブリダイゼーションした。アレイ洗浄はGene Expression Wash Buffer1及び2(Agilent)を用い、アレイスライドを洗浄した。
[スキャン・蛍光強度数値化・解析]
マイクロアレイスキャナーGenePix4000B(商品名:モレキュラーデバイスジャパン株式会社製:Molecular Devices)でスキャンしたアレイ画像を、アレイ解析ソフトウエアGenePixPro(Molecular Devices)で数値化した。蛍光強度値をノーマライズし、A1群vsA2群、A2A群vs3群及びA2群vsA4群のRatioを算出した。
[解析評価]
変動遺伝子の選定は、各条件による変動遺伝子を解析し、1.5倍及び0.75倍変化した遺伝子を選定した。選定した変動遺伝子に関して、変動の大きかった遺伝子から順に、文献検索等のインフォマティクスを駆使して関与遺伝子の特定を行った。
関与遺伝子の特定及び作用機序の検討は、特に認知、学習あるいは記憶に関与する遺伝子及びアミロイドβによる神経障害に関与する遺伝子を中心にインフォマティクス解析評価を進め、被験物質の作用に関する分子基盤情報を蓄積しながら作用機序を検討した。
[DNAマイクロアレイ解析]
DNAマイクロアレイ結果については、実験群A2で、アミロイドβ投与により発現亢進した遺伝子(注射用水を投与した実験群A1に対するRatio1.5以上)数は145、アミロイドβ投与により発現抑制された遺伝子(注射用水を投与した実験群A1に対するRatio0.75以下)数は332であった。これらの変動遺伝子のうち、実験群A3あるいは実験群A4で焼酎あるいは焼酎油の経口投与により発現変動が緩和された遺伝子、すなわち、アミロイドβによる発現変動を3/4以下に抑えた遺伝子を検出した。その結果、アルツハイマー型認知症等の神経疾患への関与が報告されている遺伝子や記憶・学習に関与する遺伝子を含む興味深い遺伝子について発現変動が観察された。
[DNAマイクロアレイ測定結果]
(1)焼酎及び焼酎油投与群で共通してアミロイドβによる発現亢進が緩和された遺伝子としては17種類(図5参照)があり、炎症応答に関わる遺伝子であるS100a9(S100 calcium binding protein A9)、免疫応答・2型マクロファージ関連遺伝子Chi3l3(chitinase 3-like 3)、神経発達に関わる転写因子Sox1(SRY-box containing gene 1)、海馬における長期増強(Long-term potentiation:神経細胞を同時刺激することにより2つの神経細胞間の信号伝達が持続的に向上する現象のことであり、学習と記憶の根底にある主要な細胞学的メカニズムの1つ)に関与するBtbd9(BTB(POZ)domain containing 9)、ニューロン一次繊毛・微小管(microtubule)構造に寄与するC2cd3(C2cacium-dependent domain cotaining 3)、アミロイドβ蓄積に影響するヘパラン硫酸の硫化に関与するSulf1(Sulfatase1)等が検出された。
(2)さらに、焼酎投与群のみでアミロイドβによる発現亢進が緩和された遺伝子としては13種類(図6参照)があり、炎症応答に関与してアルツハイマー型認知症で亢進するPtma(prothymosin alpha)、小胞体ストレスで亢進するユビキチキン酵素のUbe2ji(ubiquitin-conjugating enzyme E2,J1)、脂肪酸代謝に関わりアルツハイマー型認知症での亢進が報告されているEchdc3(enoyl Coenzyme A hydratase domain containing 3)等が検出された。
(3)くわえて、焼酎油投与群のみでアミロイドβによる発現亢進が緩和された遺伝子としては18種類(図7参照)があり、パーキンソン病の変異遺伝子のひとつであり、ミトコンドリア機能不全に寄与し、アルツハイマー型認知症では発現抑制が報告されているPink(PTEN induced putative kinase 1)、炎症応答に関与しアルツハイマー型認知症での亢進が報告されているPtgs2(prostaglandin-endoperoxide synthase 2)、免疫応答に関与するH2-Eb1(potassium voltage-gated channel,Isk-related subfamily,gene 2)、αシヌクレイン(レビー小体型認知症やパーキンソン病でも蓄積)の分解に関わるKlk6(kallikrein related-peptidase 6)、損傷神経線維の修復における神経機能障害に関わると報告されているCwc22(CWC22 spliceosome-associated protein homolog)、アルツハイマー型認知症でアミロイドβ沈着に関与するBACE1(Beta-secretase)の増加によって亢進することが報告されているKcne2(potassium voltage-gated channelIsk-related subfamily,gene 2)等が検出された。
(4)焼酎及び焼酎油投与群で共通してアミロイドβによる発現抑制が緩和された遺伝子としては18種類(図8参照)があり、自然免疫システムのリゾチームであり、アルツハイマー型認知症におけるアミロイドβ沈着抑制が報告されているLyz1(lysozyme 1)、アルツハイマー型認知症におけるタウタンパク質のクリアランスに寄与するDnaja1(DnaJ heat shock protein family(Hsp40)memberA1)、神経突起成長やシナプス間伝達に関わるLlph(LLP homolog,long-term synaptic facilitation)、海馬における長期増強、シナプス可塑性に関与するPtprd(protein tyrosine phosphatase,receptor type,D)、免疫応答・活性化タイプ2マクロファージ、成長因子やサイトカインとしての多機能性を示し、記憶増強にも関与するGpnmb(glycoprotein(transmembrane)nmb)等が検出された。免疫応答・補体遺伝子C1qb(complement component 1 ,q subcomponent,beta polypeptide)、C1qc(complement component 1 ,q subcomponent,C chain)においても焼酎及び焼酎油による発現抑制緩和が見られた。
(5)さらに、焼酎投与群のみでアミロイドβによる発現抑制が緩和された遺伝子としては12種類(図9参照)があり、タウタンパク質リン酸化を抑制し、アルツハイマー型認知症では抑制されているPP2Aのサブユニット遺伝子Ppp2r3d(protein phosphatase 2(formerly 2A),regulatory subunitB“,delta)、多機能遺伝子でユビキチン活性を持ちPP2Aを分解する一方で、BACE1の転写を促進し、アルツハイマー型認知症においてタウタンパク質のリン酸化とアミロイドβ沈着に関与するMid1(midline 1)、微小管構造に関与するMzt1(mitotic spindle oranizing protein 1)、Pinx2(PIN2/TERF1 interacting,telomeerase inhibitor 1)等が検出された。
(6)くわえて、焼酎油投与群のみでアミロイドβによる発現抑制が緩和された遺伝子としては27種類(図10参照)があり、タウタンパク質リン酸化を抑制し、アルツハイマー型認知症では抑制されているPP2Aのサブユニット遺伝子Ppp2r3d(protein phosphatase 2(formerly 2A),regulatory subunitB“,delta)、多機能遺伝子でユビキチン活性を持ちPP2Aを分解する一方で、BACE1の転写を促進し、アルツハイマー型認知症においてタウタンパク質のリン酸化とアミロイドβ沈着に関与するMid1(midline 1)、微小管構造に関与するMzt1(mitotic spindle oranizing protein 1)、Pinx2(PIN2/TERF1 interacting,telomeerase inhibitor 1)等が検出された。
[DNAマイクロアレイ解析結果]
アルツハイマー型認知症は神経細胞外におけるアミロイドβの過剰沈着、神経細胞におけるタウタンパク質の過剰リン酸化を特徴とする神経細胞死を伴う疾患である(非特許文献5参照。)。アミロイドβ沈着は、BACE1(βセクレターゼ)がアミロイドβ前駆体タンパク質(APP:Amyloid Precursor Protein)を非生理学的に切断することによって引き起こされる。また、タウタンパク質は通常は微小管に付随するタンパク質で、微小管集合体の安定性に貢献しているが、リン酸化されたタウタンパク質は微小管から離れてしまい、微小管の不安定化を引き起こし細胞機能不全、細胞死につながる(非特許文献6参照。)。本試験で用いたのはアミロイドβを脳室内投与して作製した脳機能障害モデルマウスであるので、アミロイドβの蓄積・沈着を起因とする病態(類アルツハイマー型認知症様機能障害)が予想される。
1.炎症による機能障害の緩和
アミロイドβにより発現亢進した炎症応答遺伝子S100a9が、焼酎及び焼酎油で緩和を示した。S100a9はアルツハイマー型認知症において、アミロイドβ沈着を増悪することが報告されている(非特許文献7参照。)。また、炎症応答遺伝子Ptgs2(旧名Cox2)のアミロイドβによる発現亢進が、焼酎油で緩和されていた。Ptgs2もまたアルツハイマー型認知症で亢進し、アミロイドβ沈着を増悪する(非特許文献8参照。)。このように、アミロイドβ投与により炎症応答が惹起され、S100a9あるいはPtgs2が亢進して炎症による機能障害を悪化させる方向に対して、焼酎油が緩和していることが示された。
2.異常タンパク質蓄積の改善(ユビキチン系の機能改善)
アミロイドβにより発現抑制され、それを焼酎及び焼酎油が共通して緩和した遺伝子の中に、リゾチーム遺伝子Lyzl、ユビキチンシステム・ヒートショックタンパク質遺伝子Dnaja1が見出された。Lyz1はアルツハイマー型認知症においてアミロイドβ蓄積を阻害して機能障害を改善することが報告されている(非特許文献9参照。)。また、Dnaja1は、タウタンパク質の安定化及び蓄積したタウタンパク質の除去に関与し、アルツハイマー型認知症での発現減少が知られている(非特許文献10参照。)。これらのことから、焼酎及び焼酎油投与により、アミロイドβやタウタンパク質の異常な蓄積が緩和された可能性が示唆される。
3.免疫応答の改善
本試験では、焼酎及び焼酎油投与による補体Clqb、Clqcの発現抑制緩和が観察された。補体は、主に病原体を排除する際に活性化されて抗体あるいはマクロファージ等の貪食細胞の機能を補助するタンパク質である。先行研究によると、補体Clqはアミロイドβで亢進し、Clqがミクログリアを活性化することによって、神経細胞貪食・シナプス貪食が促進され病態が悪化する(非特許文献11参照。)。本試験ではアミロイドβ投与によりClqの抑制が見られたのでヒト臨床結果とは相反しているが、Clqがシナプスの再構築に関与することも知られているため(非特許文献12参照。)、焼酎及び焼酎油投与においてはClqが損傷神経細胞の再構築に寄与している可能性もある。また、免疫系その他機能遺伝子であるGpnmb(非特許文献13参照。)の発現抑制緩和、むしろ亢進が観察された。GpnmbはLPS(Lipopolysaccharide,リポ多糖、細菌エンドトキシン)によっても発現亢進し(非特許文献14参照。)、ダメージを受けた細胞を処理して組織のリペアにも関与していることから(非特許文献15参照。)、アミロイドβによる障害からの回復、さらに学習・記憶維持に寄与している可能性が窺われる。
4.タウタンパク質リン酸化の緩和
アミロイドβ投与でPP2Aのサブユニット遺伝子Ppp2r3dの発現が抑制されたが、焼酎油で発現抑制緩和されていた。PP2A(Protein phosphatase 2A)はタウタンパク質リン酸化を制御する酵素で、アルツハイマー型認知症ではPP2A活性が低下しているため、タウタンパク質過剰リン酸化が続き、機能障害が悪化する(非特許文献17参照。)。本試験ではタウタンパク質リン酸化については検討していないため、実際にリン酸化が抑えられているか不明であるが、焼酎油によってタウタンパク質リン酸化が緩和されている可能性が示唆される。
本試験でのゲノミクス解析の結果より、先に実施した「自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)」で明らかとなった自発的交替行動障害に対する改善作用が、遺伝子レベルにおいても裏付けられた。また、アミロイドβ投与により脳・神経細胞障害(炎症や微小管構造・機能不全をはじめとする細胞機能障害等)が発生し、記憶・学習機能低下が引き起こされるが、焼酎油を投与することにより、記憶・学習機能低下が改善された。
その作用機序としては、(1)炎症による機能障害の緩和、(2)異常タンパク質蓄積の改善(ユビキチン系の機能改善)、(3)免疫応答の制御、(4)タウタンパク質リン酸化の緩和を介して、アミロイドβ投与で惹起した脳・神経細胞障害が緩和され、記憶・学習の機能低下を改善することが示唆される。
「代表的な酒類におけるアミロイドβ誘発記憶障害モデルに対する改善作用試験」
実施例1の結果を受け、任意に選択した焼酎油の主成分を含む代表的な酒類(焼酎、ウィスキー、赤ワイン及び清酒)における脳機能改善効果の検証として、アミロイドβ誘発記憶障害モデルに対する改善作用試験:自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)を行った。被験物質の構成を表5に示す。
Figure 0007149472000005
[試験方法]
自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)の方法は実施例1と同様とし、アルツハイマーモデルマウスの記憶障害に対する焼酎、ウィスキー、赤ワイン又は清酒の有効性について検討する目的で、マウスにアミロイドβ25-35を脳室内投与して作製したアルツハイマーモデルマウスにこれらの被験物質を15日間反復投与し、自発的交替行動を指標にして実験を行った。なお、これらの有効性を確認するため、媒体(注射用水)又はアミロイドβ25-35を脳室内投与し、それぞれに媒体(注射用水)を反復経口投与した実験群との比較実験も行った。アミロイドβ25-35は10nmol/mouseを左側脳室内に投与し、焼酎、ウィスキー、赤ワイン又は清酒を、それぞれ4mL/kgの用量でアミロイドβ25-35投与の7日前から15日間それぞれ反復経口投与した。なお、焼酎、ウィスキー、赤ワイン又は清酒にはエタノールが含まれているため、アルコールによる感覚神経及び運動神経への直接的な影響を避けるため、自発的交替行動は最終投与の24時間後に実施した。
[体重測定結果]
アルコール含有量13.5%の焼酎、ウィスキー、赤ワイン又は清酒の4mL/kg(原液)に注射用水6mL/kgを加えて混和した溶液を用いて、10mL/kgを15日間経口投与し、投与8日目にアミロイドβ25-35又は注射用水を脳室内投与したマウスの投与期間中の体重推移を図11及び表6に示す。媒体(注射用水)を脳室内投与し、媒体(注射用水)を15日間経口投与した群(媒体群)の投与開始日(Day1)、脳室内投与日(Day8)及び最終投与翌日(Day16)の体重は、それぞれ30.5g、34.7g及び36.3gで経日的に順調な体重増加を示した。アミロイドβ25-35を脳室内投与し、媒体(注射用水)、焼酎、ウィスキー、赤ワイン又は清酒をそれぞれ15日間経口投与した各群についても、媒体群と同様の体重推移が観察された。また、投与期間中に特記すべき一般状態の変化を示したマウスは、いずれの実験群にも認められなかった。
Figure 0007149472000006
[自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)の結果]
アミロイドβ25-35又は注射用水を脳室内投与したマウスに媒体(注射用水)、焼酎、ウィスキー、赤ワイン又は清酒を15日間反復経口投与し、最終投与の24時間後に実施した自発的交替行動における総進入数及び自発的交替行動率を表7と図12に示す。
Figure 0007149472000007
自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)の総進入数に関しては、媒体群の平均値が32.8、アミロイドβ25-35を脳室内投与し、媒体(注射用水)を経口投与した群の平均値が33.9であったが、両群間に有意な変化は認められなかった。また、焼酎、ウィスキー、赤ワイン又は清酒投与群の総進入数の平均値は、31.0、31.3、31.0又は29.1であり、これらの実験群の間においても総進入数に有意な変化は認められなかった。アミロイドβ25-35の投与の有無、及びアミロイドβ25-35投与マウスへ焼酎、ウィスキー、赤ワイン又は清酒の反復経口投与は、実施例1の自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)の結果と同様、マウスの行動活性に影響を与えないことが確認された。
一方で、自発的交替行動率に関しては、媒体群が70.6%であったのに対して、アミロイドβ25-35を脳室内投与し、媒体(注射用水)を経口投与した群が50.3%であり、実施例1の自発的交替行動試験(Y字型迷路試験)の結果と同様、アミロイドβ25-35の脳室内投与による自発的交替行動の障害を示す有意な減少(低下)が認められた。これに対し、アミロイドβ25-35を脳室内投与したマウスに焼酎、ウィスキー、赤ワイン又は清酒を15間反復経口投与した群の自発的交替行動率は、62.6%、57.1%、60.8%及び58.1%であり、これらの投与群もアミロイドβ25-35を脳室内投与し、媒体(注射用水)を経口投与した群との2群の比較において増加(改善)傾向が認められ、特に焼酎、赤ワイン又は清酒では有意な増加(改善)を示した。
以上の結果から、投与した被験物質(酒類)、特に焼酎、赤ワイン又は清酒は15日間反復経口投与することにより、アミロイドβ25-35の脳室内投与で誘発されるマウスの自発的交替行動障害に対して有意な改善作用を示し、中でも焼酎に最も高い有効性が認められた。なお、本試験で被験物質として用いた酒類に限らず、全ての酒類においては、アルコール発酵、熟成の醸造プロセスを経由(醸造物を形成)して製造されるものであり、成分別含有量の違いはあれ、醸造物の成分として表1で示した焼酎油主成分と同種の成分を含有している。よって、本試験の結果(脳機能改善効果)は本試験で被験物質として用いた酒類に限定されるものではなく、同時に、赤ワインはポリフェノール、清酒はグルタミン酸などの脳機能改善の成分が含まれ、焼酎油主成分との相乗効果も考えられる。
焼酎油を廃棄せず、焼酎油の持つ機能性を利用し、脳機能改善食品又は薬の原料として用いることで、焼酎油の有効利用を図るものである。
1 マウス
2 Y字型迷路
2a アーム
2b アーム
2c アーム

Claims (4)

  1. 焼酎油を有効成分とする脳機能障害改善用組成物。
  2. 焼酎油が単式蒸留焼酎由来であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
  3. 脳機能障害が認知症であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の組成物。
  4. 脳機能障害がアルツハイマー型認知症であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の組成物。
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