JP7143774B2 - コークス炉ガスの燃焼放散管 - Google Patents

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Description

本発明は、コークス炉で原料炭を乾留してコークスを製造する際に発生するガスを燃焼させて放散する燃焼放散管に関する。
コークス炉で、原料炭を乾留してコークスを製造する際に発生するガス(以下「コークス炉ガス」ということがある。)の回収・処理体系の一態様を、図1に模式的に示す。コークス炉1で、原料炭2を乾留して発生するコークス炉ガスGは、コークス炉の炉頂端部の上昇管3からドライメーン4に回収され、誘導管6からガス精製設備5へ送給され、ガス精製設備5でコールタール等が除去された後、燃料として利用されている。
しかし、コークス炉の停電、ガス回収設備の故障、及び/又は、ガス精製設備の故障が起きた場合、コークス炉ガスGは、ドライメーン4から、直接、燃焼放散管7に誘導され、黒煙が発生しないように燃焼させた後、大気中に放散される(例えば、特許文献1~5、参照)。
コークス炉ガスの燃焼においては、燃焼温度が高くなると、ガス中の炭化水素類が分解し、黒煙発生の原因となるので、炭化水素類が分解しないように燃焼温度を下げて、完全燃焼を図る必要がある。しかし、未精製のコークス炉ガスは、多量のコールタール等を含むので、黒煙が発生しないように、完全燃焼させることは容易でない。
特に、コークス炉ガスのコールタール量の変動や、コークス炉ガスの燃焼に影響する環境(風、雨等)の急変などの外乱があると、従来構造の燃焼放散管では、多量のコールタール等を含む未精製のコークス炉ガスを完全燃焼させ、黒煙の発生を防止することが困難である。
特公昭44-023987号公報 実公昭51-054277号公報 実公昭52-039091号公報 実開昭52-167455号公報 特開2018-065888号公報
多量のコールタール等を含む未精製のコークス炉ガス(以下「未精製ガス」ということがある。)を完全燃焼させ、黒煙の発生を防止するためには、未精製ガスに、燃焼用空気を十分に供給する必要がある。
これを、従来構造の燃焼放散管にて可能にするためには、エゼクタ管に多量の蒸気を噴射する必要があるが、そのためには、蒸気供給設備を大型化・高機能化する必要があり、未精製ガスの燃焼・放散コストが増大する。
そこで、本発明は、従来技術に鑑み、未精製ガスの燃焼・放散において、未精製ガスのコールタール量の変動や、未精製ガスの燃焼に影響する環境(風、雨等)の急変などの外乱があっても、近くから黒煙を視認できない水準まで、未精製ガスを完全燃焼させるために、エゼクタ管に噴射する蒸気の量の原単位を低減することを課題とし、該課題を解決し得る燃焼放散管を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決する燃焼放散管の構造について鋭意検討した。その結果、未精製ガスを完全燃焼させ、近くから黒煙を視認できない水準まで、黒煙の発生リスクを大幅に軽減し、かつ、エゼクタ管に噴射する蒸気の量の原単位を低減し得る最適構造を見いだした。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)未精製のコークス炉ガスを燃焼させて放散する燃焼放散管であって、
未精製のコークス炉ガスを誘導し、頂上部に、内側上方に傾斜する庇を備える垂直円筒管、
垂直円筒管の頂上部の中に、垂直円筒管に平行に配置され、上下に開口する短筒管、
短筒管の下部から垂直円筒管に向かって下向きに傾斜して、垂直円筒管の外側に突出して配置され、短筒管に空気を導入する複数のエゼクタ管、
エゼクタ管の下方の垂直円筒管の周囲に配置され、複数のエゼクタ管に蒸気を噴射する複数の噴射ノズルを備え、噴射する蒸気の量を制御できる下部蒸気供給管、及び、
下部蒸気供給管の上方の垂直円筒管の周囲に配置され、垂直円筒管の開口の上方に蒸気を噴射する複数の噴射ノズルを備え、噴射する蒸気の量を制御できる上部蒸気供給管からなり、
上部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量と、下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量を、それぞれ独立して制御する
ことを特徴とするコークス炉ガスの燃焼放散管。
(2)未精製のコークス炉ガスを燃焼させて放散する燃焼放散管であって、
未精製のコークス炉ガスを誘導する垂直円筒管、
垂直円筒管の上方に配置され、垂直円筒管の頂上部を包囲する風防管、
垂直円筒管の頂上部の中に、垂直円筒管に平行に配置され、上下に開口する短筒管、
短筒管の下部から垂直円筒管に向かって下向きに傾斜して、垂直円筒管の外側に突出して配置され、短筒管に空気を導入する複数のエゼクタ管、
エゼクタ管の下方の垂直円筒管の周囲に配置され、複数のエゼクタ管に蒸気を噴射する複数の噴射ノズルを備え、噴射する蒸気の量を制御できる下部蒸気供給管、及び、
下部蒸気供給管の上方の垂直円筒管の周囲に配置され、垂直円筒管の開口の上方に蒸気を噴射する複数の噴射ノズルを備え、噴射する蒸気の量を制御できる上部蒸気供給管からなり、
上部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量と、下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量を、それぞれ独立して制御する
ことを特徴とするコークス炉ガスの燃焼放散管。
(3)未精製のコークス炉ガスを燃焼させて放散する燃焼放散管であって、
未精製のコークス炉ガスを誘導し、頂上部に、内側上方に傾斜する庇を備える垂直円筒管、
垂直円筒管の上方に配置され、垂直円筒管の頂上部を包囲する風防管、
垂直円筒管の頂上部の中に、垂直円筒管に平行に配置され、上下に開口する短筒管、
短筒管の下部から垂直円筒管に向かって下向きに傾斜して、垂直円筒管の外側に突出して配置され、短筒管に空気を導入する複数のエゼクタ管、
エゼクタ管の下方の垂直円筒管の周囲に配置され、複数のエゼクタ管に蒸気を噴射する複数の噴射ノズルを備え、噴射する蒸気の量を制御できる下部蒸気供給管、及び、
下部蒸気供給管の上方の垂直円筒管の周囲に配置され、垂直円筒管の開口の上方に蒸気を噴射する複数の噴射ノズルを備え、噴射する蒸気の量を制御できる上部蒸気供給管からなり、
上部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量と、下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量を、それぞれ独立して制御する
ことを特徴とするコークス炉ガスの燃焼放散管。
(4)前記庇の幅が、垂直円筒管の内径(mm)×(0.05~0.20)であることを特徴とする前記(1)又は(3)に記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
(5)前記垂直円筒管の頂上部の中に配置する短筒管の上部に、コークス炉ガスと空気の混合を促進する小孔が、複数、穿孔されていることを特徴とする前記(1)~(4)のいずれかに記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
(6)前記エゼクタ管が、式:La/D≧4(La:エゼクタ管の最大長さ、D:エゼクタ管の内径)を満たすことを特徴とする前記(1)~(5)のいずれかに記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
(7)前記垂直円筒管の頂上部の中に、複数の短筒管が、隣接又は近接して環状に配置されていることを特徴とする前記(1)~(4)のいずれかに記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
(8)前記複数の短筒管の上部に、コークス炉ガスと空気の混合を促進する小孔が、複数、穿孔されていることを特徴とする前記(7)に記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
(9)前記複数の短筒管に空気を導入する複数のエゼクタ管が、式:La/D≧4(La:エゼクタ管の最大長さ、D:エゼクタ管の内径)を満たすことを特徴とする前記(7)又は(8)に記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
(10)前記複数の短筒管の下開口、及び、複数の短筒管で形成される内側下開口の一方、又は、両方が遮蔽されていることを特徴とする前記(7)~(9)のいずれかに記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
(11)前記垂直円筒管の頂上部の中に、短筒管を垂直管部として一体化した複数のエゼクタ管が、垂直管部を隣接又は近接して環状に配列して、配置されていることを特徴とする前記(1)~(4)のいずれかに記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
(12)前記複数のエゼクタ管の垂直管部の上部に、コークス炉ガスと空気の混合を促進する小孔が、複数、穿孔されていることを特徴とする前記(11)に記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
(13)前記複数のエゼクタ管が、式:Lb/D≧4(Lb:エゼクタ管の直管部の長さ、D:エゼクタ管の内径)を満たすことを特徴とする前記(11)又は(12)に記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
(14)前記複数のエゼクタ管の垂直管部で形成される内側下開口が遮蔽されていることを特徴とする前記(11)~(13)のいずれかに記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
本発明によれば、未精製のコークス炉ガスの燃焼・放散において、コールタール量の変動や、燃焼に影響する環境(風、雨等)の急変などの外乱があっても、近くから黒煙を視認できない水準まで完全燃焼させるためにエゼクタ管に噴射する蒸気の量の原単位を、大幅に低減することができる。
コークス炉ガスの回収・処理体系の一態様を模式的に示す図である。 コークス炉ガスの燃焼放散管(基本型)の断面態様を模式的に示す図である。 コークス炉ガスの燃焼放散管の断面態様を模式的に示す図である。 コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す図である。 図4に示す燃焼放散管の頂上部を模式的に示す図である。 コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す図である。 図6に示す燃焼放散管の頂上部と、該頂上部を包囲する風防管の態様を模式的に示す図である。 コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す図である。 コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す図である。 コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す図である。 コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す図である。 コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す図である。 図12に示す燃焼放散管におけるA-A断面を示す図である。 コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す図である。 コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す図である。 図15に示す燃焼放散管におけるA-A断面を示す図である。 煤排出量(mg/m3)と蒸気原単位(ton/10km3)の関係を示す図である。 煤排出量(mg/m3)と蒸気原単位(ton/10km3)の別の関係を示す図である。 煤排出量(mg/m3)と蒸気原単位(ton/10km3)の別の関係を示す図である。 煤排出量(mg/m3)と蒸気原単位(ton/10km3)の別の関係を示す図である。
本発明のコークス炉ガスの燃焼放散管(以下「本発明燃焼放散管」ということがある。)は、三つの基本構造で区分できるので、まず、それらを、本発明燃焼放散管1、本発明燃焼放散管2、及び、本発明燃焼放散管3として、以下、説明する。
本発明燃焼放散管1は、
未精製のコークス炉ガスを燃焼させて放散する燃焼放散管であって、
未精製のコークス炉ガスを誘導し、頂上部に、内側上方に傾斜する庇を備える垂直円筒管、
垂直円筒管の頂上部の中に、垂直円筒管に平行に配置され、上下に開口する短筒管、
短筒管の下部から垂直円筒管に向かって下向きに傾斜して、垂直円筒管の外側に突出して配置され、短筒管に空気を導入する複数のエゼクタ管、
エゼクタ管の下方の垂直円筒管の周囲に配置され、複数のエゼクタ管に蒸気を噴射する複数の噴射ノズルを備え、噴射する蒸気の量を制御できる下部蒸気供給管、及び、
下部蒸気供給管の上方の垂直円筒管の周囲に配置され、垂直円筒管の開口の上方に蒸気を噴射する複数の噴射ノズルを備え、噴射する蒸気の量を制御できる上部蒸気供給管からなり、
上部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量と、下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量を、それぞれ独立して制御する
ことを特徴とする。
本発明燃焼放散管2は、
未精製のコークス炉ガスを燃焼させて放散する燃焼放散管であって、
未精製のコークス炉ガスを誘導する垂直円筒管、
垂直円筒管の上方に配置され、垂直円筒管の頂上部を包囲する風防管、
垂直円筒管の頂上部の中に、垂直円筒管に平行に配置され、上下に開口する短筒管、
短筒管の下部から垂直円筒管に向かって下向きに傾斜して、垂直円筒管の外側に突出して配置され、短筒管に空気を導入する複数のエゼクタ管、
エゼクタ管の下方の垂直円筒管の周囲に配置され、複数のエゼクタ管に蒸気を噴射する複数の噴射ノズルを備え、噴射する蒸気の量を制御できる下部蒸気供給管、及び、
下部蒸気供給管の上方の垂直円筒管の周囲に配置され、垂直円筒管の開口の上方に蒸気を噴射する複数の噴射ノズルを備え、噴射する蒸気の量を制御できる上部蒸気供給管からなり、
上部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量と、下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量を、それぞれ独立して制御する
ことを特徴とする。
本発明燃焼放散管3は、
未精製のコークス炉ガスを燃焼させて放散する燃焼放散管であって、
未精製のコークス炉ガスを誘導し、頂上部に、内側上方に傾斜する庇を備える垂直円筒管、
垂直円筒管の上方に配置され、垂直円筒管の頂上部を包囲する風防管、
垂直円筒管の頂上部の中に、垂直円筒管に平行に配置され、上下に開口する短筒管、
短筒管の下部から垂直円筒管に向かって下向きに傾斜して、垂直円筒管の外側に突出して配置され、短筒管に空気を導入する複数のエゼクタ管、
エゼクタ管の下方の垂直円筒管の周囲に配置され、複数のエゼクタ管に蒸気を噴射する複数の噴射ノズルを備え、噴射する蒸気の量を制御できる下部蒸気供給管、及び、
下部蒸気供給管の上方の垂直円筒管の周囲に配置され、垂直円筒管の開口の上方に蒸気を噴射する複数の噴射ノズルを備え、噴射する蒸気の量を制御できる上部蒸気供給管からなり、
上部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量と、下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量を、それぞれ独立して制御する
ことを特徴とする。
本発明燃焼放散管1、及び、本発明燃焼放散管3は、前記庇の幅が、垂直円筒管の内径(mm)×(0.05~0.20)であることを特徴とする。
本発明燃焼放散管1、本発明燃焼放散管2、及び、本発明燃焼放散管3は、前記垂直円筒管の頂上部の中に配置する短筒管の上部に、コークス炉ガスと空気の混合を促進する小孔が、複数、穿孔されていることを特徴とする。
本発明燃焼放散管1、本発明燃焼放散管2、及び、本発明燃焼放散管3は、前記エゼクタ管が、式:La/D≧4(La:エゼクタ管の最大長さ、D:エゼクタ管の内径)を満たすことを特徴とする。
本発明燃焼放散管1、本発明燃焼放散管2、及び、本発明燃焼放散管3は、前記垂直円筒管の頂上部の中に、複数の短筒管が、隣接又は近接して環状に配置されていることを特徴とする。この特徴を有する本発明燃焼放散管を、以下、本発明燃焼放散管4という。
本発明燃焼放散管4は、前記複数の短筒管の上部に、コークス炉ガスと空気の混合を促進する小孔が、複数、穿孔されていることを特徴とする。
本発明燃焼放散管4は、前記複数の短筒管に空気を導入する複数のエゼクタ管が、式:La/D≧4(La:エゼクタ管の最大長さ、D:エゼクタ管の内径)を満たすことを特徴とする。
本発明燃焼放散管4は、前記複数の短筒管の下開口、及び、複数の短筒管で形成される内側下開口の一方、又は、両方が遮蔽されていることを特徴とする。
本発明燃焼放散管1、本発明燃焼放散管2、及び、本発明燃焼放散管3は、前記垂直円筒管の頂上部の中に、短筒管を垂直管部として一体化した複数のエゼクタ管が、垂直管部を隣接又は近接して環状に配列して、配置されていることを特徴とする。この特徴を有する本発明燃焼放散管を、以下、本発明燃焼放散管5という。
本発明燃焼放散管5は、前記複数のエゼクタ管の垂直部の上部に、コークス炉ガスと空気の混合を促進する小孔が、複数、穿孔されていることを特徴とする。
本発明燃焼放散管4は、前記複数のエゼクタ管が、式:Lb/D≧4(Lb:エゼクタ管の直管部の長さ、D:エゼクタ管の内径)を満たすことを特徴とする。
本発明燃焼放散管5は、前記複数のエゼクタ管の垂直管部で形成される内側下開口が遮蔽されていることを特徴とする。
以下、本発明燃焼放散管について図面に基づいて説明する。最初に、本発明燃焼放散管の基本型となる燃焼放散管について説明する。
(1)燃焼放散管(基本型)
図2に、コークス炉ガスの燃焼放散管(基本型)の断面態様を模式的に示す。未精製のコークス炉ガス(未精製ガス)Gを上部に誘導し燃焼させて放散する垂直円筒管7の頂上部の中に、垂直円筒管7に平行に、上下に開口する短筒管8が配置されている。
短筒管8の大きさ(外径、高さ)は、垂直円筒管7と短筒管8の間における未精製ガスGの流れ(流束)、短筒管8の内部における未精製ガスGの流れ(流束)が偏らないような大きさ(外径、高さ)であればよい。
操業実績によれば、短筒管8の外径は、垂直円筒管7の内径/2を超えない外径が好ましい。例えば、垂直円筒管7の内径が800mmの場合、短筒管8の外径は300mmが好ましい。短筒管8の高さは、エゼクタ管9’の外径×3程度の高さが好ましい。
短筒管8と垂直円筒管7は、短筒管8の下部から垂直円筒管7に向かって下向きに傾斜し、垂直円筒管7上の開口9aから、短筒管8に燃焼用空気を導入するエゼクタ管9’で接続されている。エゼクタ管9’の内径は、未精製ガスGの燃焼に必要な量の空気を十分に導入できる内径であればよい。
短筒管8に接続するエゼクタ管9’の本数は、特に限定されないが、未精製ガスGの燃焼に必要な量の空気の導入、圧力損失の低減、短筒管8との接続構造等の点で3~5本が好ましい。エゼクタ管9’の傾斜角度も、特に特定の角度に限定されないが、構造上、40~50°が好ましい。
エゼクタ管9’の長さは、傾斜角度にも依るので、特に限定されないが、垂直円筒管7の内径が800mmで、短筒管8の外径が300mmの場合、エゼクタ管9’の傾斜角度を、例えば、45°とすると、エゼクタ管9’の長さは約350mmとなる。
エゼクタ管9’の下方の垂直円筒管7の周囲には、複数のエゼクタ管9’のそれぞれに、下方から開口9a中に蒸気を噴射する複数の噴射ノズル10aを備え、噴射する蒸気の量を制御できる下部蒸気供給管10が配置されている。噴射ノズル10aから、エゼクタ管9’の開口9a中に蒸気を噴射し、短筒管8の内部に、エゼクタ管9’から、蒸気とともに燃焼用空気を導入して、未精製ガスGを、燃焼温度を抑制しつつ燃焼させる。
下部蒸気供給管10の上方の垂直円筒管7の周囲には、垂直円筒管7の開口7aの上方に蒸気を噴射する複数の噴射ノズル11aを備え、噴射する蒸気の量を制御できる上部蒸気供給管11が配置されている。噴射ノズル11aから、垂直円筒管7の開口7aの上方に蒸気を噴射して、垂直円筒管7と短筒管8の間から上昇する未精製ガスGに、蒸気とともに燃焼用空気を送給して、未精製ガスGを、燃焼温度を抑制しつつ燃焼させる。
上部蒸気供給管11に備える噴射ノズル11aの本数は、特に限定されない。未精製ガスGの完全燃焼を図る点から、適宜設定すればよい。噴射ノズル11aの本数は、例えば、噴射ノズル10aの本数(エゼクタ管9’の本数)の2倍か、それ以上でもよい。
そして、上部蒸気供給管11の噴射ノズル11aから噴射する蒸気の量と、下部蒸気供給管10の噴射ノズル10aから噴射する蒸気の量は、制御装置(図示なし)により、未精製ガスGが完全燃焼した火炎の状態で燃焼放散管7の頂上部から放散されるように、それぞれ独立して制御することができる。
通常、燃焼放散管の頂上部に形成される燃焼火炎の中心部近傍の空燃比が0.3~1.0となるように、上部蒸気供給管11の噴射ノズル11aから噴射する蒸気の量と、下部蒸気供給管10の噴射ノズル10aから噴射する蒸気の量を、それぞれ独立して制御する。
このように、(i)未精製ガスに蒸気を噴射する噴射ノズルを備える蒸気供給管を、上部蒸気供給管11と下部蒸気供給管10に分離して配置し、(ii)上部蒸気供給管11の噴射ノズル11aから噴射する蒸気の量と、下部蒸気供給管10の噴射ノズル10aから噴射する蒸気の量を、それぞれ独立して制御することができる点が、燃焼放散管(基本型)の特徴である。
本発明者らは、図2に示す燃焼放散管(基本型)を基本構造として、未精製ガスの燃焼・放散において、未精製ガスのコールタール量の変動や、未精製ガスの燃焼に影響する環境(風、雨等)の急変などの外乱があっても、近くから黒煙を視認できない水準まで、未精製ガスを完全燃焼させるためにエゼクタ管に噴射する蒸気の量の原単位を低減することが可能な燃焼放散管の最適構造について検討し、本発明燃焼放散管に至った。
(2)本発明燃焼放散管
(2-1)本発明燃焼放散管1
図3に、コークス炉ガスの燃焼放散管の断面態様を模式的に示す。図3に示す燃焼放散管には、図2に示す燃焼放散管(基本型)と同じように、垂直円筒管7の頂上部の中に、垂直円筒管7に平行に、上下に開口する短筒管8が配置されているが、(a)短筒管8の下部から垂直円筒管7に向かって下向きに傾斜するエゼクタ管9は、垂直円筒管7の外側に突出するように配置され、(b)垂直円筒管7の頂上部に、内側上方に傾斜する庇7bが形成されている。この点が、図3に示す燃焼放散管の構造上の特徴である。
(a)エゼクタ管9
短筒管8の下部から傾斜して延びるエゼクタ管の“長さ”を長くすると、エゼクタ管流量(Nm3/h)が増大するので、エゼクタ管9を、垂直円筒管7の外側に突出するように延長した。
エゼクタ管9の傾斜角度は、特に限定されないが、構造上、40~50°が好ましい。エゼクタ管9の長さは、エゼクタ管9の傾斜角度にも依るので、特に限定しないが、例えば、燃焼放散管(基本型)で350mmとした場合に比べ、700mm程度が好ましい。
エゼクタ管9の内径Dは、未精製ガスGの燃焼に必要な量の空気を十分に導入できる内径であればよい。短筒管8に接続するエゼクタ管9の本数は、特に限定されないが、未精製ガスGの燃焼に必要な量の空気の導入、圧力損失の抑制、短筒管8との接続構造の点で3~5本が好ましい。
図3に示すように、エゼクタ管9の最上部の短筒管8までの距離をエゼクタ管の最大長さLa(mm)とした場合、本発明者らの実機試験によれば、所要のエゼクタ管流量(Nm3/h)を確保するうえで、エゼクタ管9の最大長さLa(mm)とエゼクタ管9の内径D(mm)は、La/D≧4が好ましい。La/Dが4以上であると、未精製ガスを、近くから黒煙を視認できない水準まで完全燃焼させるのに最小限必要な量の燃焼用空気を確保することができる。
(b)庇7b
未精製ガスを誘導する垂直円筒管7が、その頂上部に、内側上方に傾斜し、垂直円筒管7の開口7aから上昇する燃焼ガスを縮流する庇7bを備えている。庇7bの傾斜角度は、構造上、特に限定されないが、縮流作用を効果的に行う点で、40~50°が好ましい。
庇7bの幅(図3中「w」参照)は、有効な縮流作用を確保するため、庇7bの先端と短筒管の外周の間に、所要の間隔を保持する幅とするが、本発明者らの実機試験によれば、縮流作用を効果的に確保する点で、垂直円筒管の内径(mm)×(0.05~0.20)が好ましい。
例えば、垂直円筒管の内径が800mmで、短筒管の外径が300mmの場合、庇7bの幅wは40~160mmが好ましい。垂直円筒管の内周と短筒管の外周の間隔が250mmであるので、庇の縮流作用を効果的に確保することができる。
垂直円筒管7の頂上部に、内側上方に傾斜し、垂直円筒管7の開口7aから上昇する燃焼ガスを縮流する庇7bを形成したので、蒸気供給管11の噴射ノズル11aの先端部分を、庇7bの傾斜に対応して、内側に傾斜させることが好ましい。
庇7bの縮流作用で縮流された燃焼ガスに、噴射ノズル11aから蒸気を噴射することで、蒸気とともに、該蒸気に随伴される燃焼用空気が燃焼ガスに送給されて、燃焼ガスと空気の混合が促進され、燃焼ガス中に残存するコールタールの熱分解が進行して、燃焼ガスの燃焼がさらに促進される。その結果、未精製ガスGが完全燃焼した燃焼火炎が形成される。
そして、上部蒸気供給管11の噴射ノズル11aから噴射する蒸気の量と、下部蒸気供給管10の噴射ノズル10aから噴射する蒸気の量を、制御装置(図示なし)により、未精製ガスGが完全燃焼するように、それぞれ独立して制御するので、噴射ノズル10aと噴射ノズル11aから噴射する蒸気の量の原単位を低減することが可能となる。
したがって、多量のコールタールを含む未精製ガスGの燃焼・放散において、コールタール量の変動や、燃焼に影響する環境(風、雨等)の急変などの外乱があっても、垂直円筒管7の外側に突出するエゼクタ管9の管流量増大効果、及び、垂直円筒管7の頂上部に備える庇7bの燃焼ガス縮流効果が相乗して、上部蒸気供給管及び下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量の原単位を低減して、近くから黒煙を視認できない水準まで、黒煙の発生リスクを大幅に軽減することができる。
図4に、コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す。図5に、図4に示す燃焼放散管の頂上部を模式的に示す。
図4及び図5に示す燃焼放散管は、図3に示す燃焼放散管において、短筒管8の上部に、小孔8aが、複数、穿孔されている燃焼放散管である。
小孔8aは、短筒管8の内部を上昇する空気と蒸気の混合気と、垂直円筒管7と短筒管8の間を上昇する未精製ガスGとの混合を促進する作用(混合促進作用)をなすので、上部蒸気供給管及び下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量の原単位をより低減することが可能になるとともに、未精製ガスGのコールタール量の変動や、未精製ガスの燃焼に影響する環境(風、雨等)の急変などの外乱があっても、黒煙の発生リスクをより大幅に抑制することが可能になる。
短筒管8の上部に穿孔する小孔8aの大きさ・個数は、短筒管8の内径及び高さに応じて適宜設定すればよく、特に、特定の大きさ・個数に限定されないが、例えば、内径:300mm、高さ:550mmの短筒管の場合、短筒管8の上部外周に6個×3段の小孔群を穿孔するのが好ましい。
(2-2)本発明燃焼放散管2
図6に、コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す。図7に、図6に示す燃焼放散管の頂上部と、該頂上部を包囲する風防管の態様を模式的に示す。図6及び図7に示す燃焼放散管は、図2に示す燃焼放散管(基本型)において、エゼクタ管9を垂直円筒管7の外側に突き出して配置するとともに、垂直円筒管7の頂上部の上方に、該頂上部を包囲する風防管12を配置する燃焼放散管である。
(c)風防管12
風防管12は、垂直円筒管7の開口7aから上昇する燃焼火炎が、垂直円筒管7の周辺の強風・強雨に曝されて、未精製ガスGの燃焼・放散が阻害されないように、燃焼火炎周囲の強風・強雨等の劣悪環境を阻止する作用(劣悪環境阻止作用)をなすので、図6及び図7に示す燃焼放散管は、エゼクタ管9の管流量増大作用と相俟って、未精製ガスGの完全燃焼をより促進することができる。
それ故、図6及び図7に示す燃焼放散管においては、上部蒸気供給管及び下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量の原単位を低減することが可能になるとともに、未精製ガスGのコールタール量の変動や、未精製ガスの燃焼に影響する環境(風、雨等)の急変などの外乱があっても、黒煙の発生リスクを、より大幅に抑制することが可能になる。
風防管12の全体形状は、垂直円筒管7の周辺の強風・強雨が、直接、垂直円筒管7の開口7aから上昇する燃焼火炎に直接当たらないように、開口7aの上方を包囲する形状であればよく、特定の形状に限定されないが、風防管12の下部形状は、垂直円筒管7の開口7aと、該開口7aの上方に蒸気を噴射する噴射ノズル11aを包囲する形状が好ましい。例えば、風防管12の下部形状の内径は、燃焼用空気の導入の点から、垂直円筒管7の外径の1.5倍程度が好ましい。
防風管12の上部形状も、同様に、特定の形状に限定されないが、上昇して拡がる燃焼火炎(燃焼ガス)を包囲して、強風・強雨から保護することを考慮すると、防風管12の上部形状は、垂直円筒管7の外径より大きい内径を有する形状が好ましい。防風管12の高さは、強風・強雨に対する防風管の強度をも考慮して適宜設定する。
なお、防風管12の上部形状と下部形状の間の形状は、上部形状と下部形状を滑らかに繋ぐ形状であればよく、特定の形状に限定されない。
本発明燃焼放散管2において、エゼクタ管の最大長さLa(mm)は、所要のエゼクタ管流量(Nm3/h)を確保するうえで、式:La/D≧4(D(mm):エゼクタ管9の内径)を満たす長さが好ましい(図6、参照)。La/Dが4以上であると、未精製ガスを、近くから黒煙を視認できない水準まで完全燃焼させるのに最小限必要な量の燃焼用空気を確保することが容易である。
図8に、コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す。図8に示す燃焼放散管は、図6及び図7に示す燃焼放散管において、短筒管8の上部に、短筒管8の内部を上昇する空気と蒸気の混合気と、垂直円筒管7と短筒管8の間を上昇する未精製ガスGとの混合を促進する小孔8aを、複数、穿孔した燃焼放散管である。
図8に示す燃焼放散管においては、図6及び図7に示す燃焼放散管の機能に、小孔の上記混合促進作用が重畳するので、未精製ガスGの完全燃焼をさらに促進することができる。その結果、上部蒸気供給管及び下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量の原単位を低減することが可能となるとともに、未精製ガスGのコールタール量の変動や、未精製ガスの燃焼に影響する環境(風、雨等)の急変などの外乱があっても、黒煙の発生リスクを、より大幅に抑制することが可能となる。
(2-3)本発明燃焼放散管3
図9に、コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す。図9に示す燃焼放散管は、図3に示す燃焼放散管において、垂直円筒管7の頂上部の上方に、該頂上部を包囲し、垂直円筒管7の開口7aから上昇する燃焼火炎が、垂直円筒管7の周辺の強風・強雨に曝されて、未精製ガスGの燃焼・放散が阻害されないように、燃焼火炎を包囲する風防管12(図6、参照)を配置する燃焼放散管である。
本発明燃焼放散管3において、庇7bの幅wは、縮流作用を効果的に確保する点で、垂直円筒管の内径(mm)×(0.05~0.20)が好ましい。
図9に示す燃焼放散管は、図3に示す燃焼放散管の機能に、風防管12の劣悪環境阻止作用が重畳するので、未精製ガスGの完全燃焼をさらに促進することができる。
図9には、直線状の噴射ノズル11aを図示したが、噴射ノズル11aの先端部分を、庇7bの傾斜に対応して、内側に傾斜させてもよい(図3、参照)。
エゼクタ管9の最大長さLa(mm)は、所要のエゼクタ管流量(Nm3/h)を確保するうえで、式:La/D≧4(D(mm):エゼクタ管9の内径)を満たす長さが好ましい。La/Dが4以上であると、未精製ガスを、近くから黒煙を視認できない水準まで完全燃焼させるのに最小限必要な量の燃焼用空気を確保することが容易である。
図10に、コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す。図10に示す燃焼放散管は、図9に示す燃焼放散管において、短筒管8の上部に、短筒管8の内部を上昇する空気と蒸気の混合気と、垂直円筒管7と短筒管8の間を上昇する未精製ガスGとの混合を促進する作用をなす小孔8aを、複数、穿孔した燃焼放散管である。
図10に示す燃焼放散管においては、図3に示す燃焼放散管の機能に、風防管12の劣悪環境阻止作用と、小孔の混合促進作用が重畳するので、上部蒸気供給管及び下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量の原単位を低減することが可能となるとともに、未精製ガスGの完全燃焼をさらに促進することができる。
(2-4)本発明燃焼放散管4
図11に、コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す。図11に示す燃焼放散管は、図9に示す燃焼放散管において、垂直円筒管7を拡径して、垂直円筒管7の頂上部の中に、垂直円筒管7に平行に、上下に開口する複数の短筒管8を、隣接又は近接して環状に配置した燃焼放散管である。
図11には、直線状の噴射ノズル11aを図示したが、図3に示す燃焼放散管と同様に、噴射ノズル11aの先端部分を、庇7bの傾斜に対応して、内側に傾斜させてもよい。
環状に配置する短筒管の本数は、特に限定されないが、未精製ガスGの燃焼に必要な空気の導入や、圧力損失の抑制や、短筒管同士の接続構造の点で3~5本が好ましい。例えば、内径が1000mmの垂直円筒管の場合、その頂上部の中に、外径200mmの短筒管を5本配置するのが好ましい。
図12に、コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す。図13に、図12に示す燃焼放散管におけるA-A断面を示す。図12及び図13に示す燃焼放散管は、図11に示す燃焼放散管の垂直円筒管7の頂上部に、5本の短筒管8を、隣接して環状に配置し、5本の短筒管8の下開口を遮蔽板13aで遮蔽するとともに、隣接する5本の短筒管8で形成される内側下開口を遮蔽板13bで遮蔽した燃焼放散管である。
隣接する5本の短筒管8の下開口を遮蔽板13aで遮蔽するとともに、隣接する5本の短筒管8で形成される内側下開口を遮蔽板13bで遮蔽するとともに、下部蒸気供給管10の噴射ノズル10aから噴射する蒸気の量を、それぞれ独立して制御することにより、燃焼放散管の垂直円筒管7の頂上部に形成される燃焼火炎の中心部近傍の空燃比を、常に0.3~1.0に維持することができる。ここで、空燃比0.3~1.0は、水分を多量に含む未精製のコークス炉ガスが大気中で燃焼する際の一般的な空燃比範囲である。
図12及び図13には、燃焼放散管の垂直円筒管7の頂上部に、5本の短筒管8を、隣接して環状に配置する燃焼放散管を示したが、環状に配置する短筒管の本数は、5本に限定されないし、また、複数の短筒管は、所要の間隔で近接して環状に配置してもよい。環状に配置する短筒管の本数は、3~5本が好ましいが、例えば、短筒管の本数が3本の場合、3本の短筒管を、所要の間隔で近接して環状に配置するのが好ましい。
本発明燃焼放散管4において、庇7bの幅wは、庇7bの縮流作用を効果的に確保する点で、垂直円筒管の内径(mm)×(0.05~0.20)が好ましい。また、エゼクタ管の長さLa(mm)は、式:La/D≧4(D(mm):エゼクタ管9の内径)を満たす長さが好ましい。La/Dが4以上であると、未精製ガスを、近くから黒煙を視認できない水準まで完全燃焼させるのに最小限必要な量の燃焼用空気を確保するのが容易である。
本発明燃焼放散管4において、垂直円筒管7の頂上部に、複数の短筒管を、所要の間隔で近接して環状に配置した場合、複数の短筒管の下開口を遮蔽板で遮蔽するとともに、近接する複数の短筒管で形成される内側下開口を遮蔽板で遮蔽してもよい。
この遮蔽構造の燃焼放散管においても、下部蒸気供給管10の噴射ノズル10aから噴射する蒸気の量を、それぞれ独立して制御することにより、燃焼放散管の垂直円筒管7の頂上部に形成される燃焼火炎の中心部近傍の空燃比を、常に、0.3~1.0に維持することができる。
また、本発明燃焼放散管4において、垂直円筒管7の頂上部に、環状に配置する複数の短筒管8の上部に、短筒管8の内部を上昇する空気と蒸気の混合気と、垂直円筒管7と短筒管8の間を上昇する未精製ガスGとの混合を促進する小孔(図示なし)を、複数、穿孔してもよい。
複数の短筒管8の上部に小孔を穿孔すると、本発明燃焼放散管4に、小孔の前記混合促進機能が重畳されて、未精製ガスGの完全燃焼がさらに促進するので、上部蒸気供給管及び下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量の原単位を低減することが可能となるとともに、未精製ガスGのコールタール量の変動や、未精製ガスの燃焼に影響する環境(風、雨等)の急変などの外乱があっても、黒煙の発生リスクを、より大幅に抑制することが可能となる。
(2-5)本発明燃焼放散管5
図14に、コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す。図14に示す燃焼放散管は、図11に示す燃焼放散管において、垂直円筒管7の頂上部に配置した短筒管8と、短筒管8に接続するエゼクタ管9を一体化した構造の燃焼放散管である。
即ち、短筒管を垂直管部9cとし、垂直管部9cとエゼクタ管の直管部9bを、曲管部9dで連結して一体化してエゼクタ管9”を構成し、垂直円筒管7の頂上部の中に、複数のエゼクタ管9”の垂直管部9cを、隣接又は近接して環状に配列して、複数のエゼクタ管9”を、円筒垂直管7の内部に配置した構造の燃焼放散管である。
エゼクタ管9”の“長さ”が、図11に示す燃焼放散管の短筒管8の長さ分長くなり、エゼクタ管の管流量増大効果が増大するので、燃焼放散管の垂直円筒管7の頂上部の中に、複数のエゼクタ管9”の垂直管部9cを、隣接又は近接して環状に配列することにより、垂直円筒管7を上昇し、庇7bで縮流される未精製ガスGに、下方から、蒸気と空気の混合気を十分に送給して、未精製ガスGの完全燃焼をより促進することができる。
環状に配置するエゼクタ管9”の本数は特に限定されないが、構造上、3~5本が好ましい。例えば、3本のエゼクタ管9”を配置する場合、垂直円筒管7の頂上部の中に、エゼクタ管9”の垂直管部9cを、所要の間隔で近接して環状に配列してもよく、また、エゼクタ管9”の外径を大きくして、垂直管部9cを、隣接して環状に配列してもよい。
5本のエゼクタ管9”を配置する場合、垂直円筒管の内径、及び、垂直管部9bの外径を考慮し、垂直円筒管7の頂上部の中に、5本のエゼクタ管9”の垂直管部9cを、隣接又は近接して環状に配列する。
エゼクタ管9”の垂直管部の上部に、未精製ガスGと、エゼクタ管9”内を上昇する蒸気と空気の混合気の混合を促進する小孔を、複数、穿孔してもよい(図示なし)。エゼクタ管の管流量増大効果に、小孔による混合促進効果が重畳するので、未精製ガスGの完全燃焼がさらに促進される。
また、エゼクタ管9”は、その直管部9b(図14、参照)の長さ:Lbが、他のエゼクタ管と同様に、式:Lb/D≧4(Lb:エゼクタ管の直管部の長さ、D:エゼクタ管の内径)を満たすものが好ましい。Lb/Dが4以上であると、未精製ガスを、近くから黒煙を視認できない水準まで完全燃焼させるのに最小限必要な量の燃焼用空気を確保することが容易である。
庇7bの幅wは、縮流作用を効果的に確保する点で、他の燃焼放散管と同様に、垂直円筒管の内径(mm)×(0.05~0.20)が好ましい。
図14には、上部蒸気供給管11の直線状の噴射ノズル11aを図示したが、噴射ノズル11aの先端部分を、図3に示すように、庇7bの傾斜に対応して、内側に傾斜させてもよい。
図15に、コークス炉ガスの燃焼放散管の別の断面態様を模式的に示す。図16に、図15に示す燃焼放散管におけるA-A断面を示す。
図15及び図16に示す燃焼放散管は、垂直円筒管7の頂上部の中に、5本のエゼクタ管9”の垂直管部9cを、所要の間隔で近接して環状に配列して、5本のエゼクタ管9”を、円筒垂直管7の内部に配置し、さらに、5本のエゼクタ管9”の垂直管部9cで形成される内側下開口を、遮蔽板13bで遮蔽した構造の燃焼放散管である。
5本のエゼクタ管9”の垂直管部9cで形成される内側下開口を遮蔽板13bで遮蔽し、下部蒸気供給管10の噴射ノズル10aから噴射する蒸気の量を、それぞれ独立して制御することにより、燃焼放散管の頂上部に形成される燃焼火炎の中心部近傍の空燃比を、常に0.3~1.0に維持しつつ、下部蒸気供給管10の噴射ノズル10aから、エゼクタ管9”の開口9aに噴射する蒸気の量を低減して、未精製ガスGの完全燃焼をより促進することができる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(比較例)
図2に示す燃焼放散管(基本型)において、下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量と、上部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量を1:1として、燃焼ガス中の煤の量(煤排出量:mg/m3)を測定し、煤排出量(mg/m3)と蒸気原単位(ton/10km3)の関係を解析した。
解析は汎用解析コードのFLUENT(Ver.17.1)を使用し、乱流モデルにはk-εを、燃焼モデルには部分予混合を、煤解析モデルにはMoss-Brookesを、それぞれ使用した。
解析条件は、未精製ガスの放散量を104Nm3/h(dry)、水分含有量を50%、ガス組成を、H2=58体積%、CH4=27体積%、CO=7体積%、C24=3体積%、残部は、CO2=2体積%、N2=3体積%として、燃焼放散管の頂上部に形成される燃焼火炎の上端から排出される煤の量を算出した。
図17に、煤排出量(mg/m3)と蒸気原単位(ton/10km3)の関係を示す。蒸気原単位3ton/10km3では、煤排出量が約9mg/m3となり、実機で実際に燃焼試験を行なったところ、淡い黒煙を視認したので、蒸気原単位を4ton/10km3に増大した。その結果、近くから黒煙を視認できないことを確認した。この時の数値解析で得た煤排出量は0.642mg/m3であった。
(実施例1)
図8に示す燃焼放散管において、下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量と、上部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量を1:1として、燃焼放散管の頂上部に形成される燃焼火炎の上端から排出される煤の量(mg/m3)を解析した。
図18に、煤排出量(mg/m3)と蒸気原単位(ton/10km3)の関係を示す。蒸気原単位3ton/10km3で、煤排出量が、近くから黒煙を視認できない水準の0.642mg/m3である。即ち、図8に示す燃焼放散管においては、燃焼放散管(基本型)に比べ、近くから黒煙を視認できない煤排出量0.642mg/m3)を達成する蒸気原単位を低減できることが解かる。
(実施例2)
図9に示す燃焼放散管において、下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量と、上部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量を1:1として、燃焼放散管の頂上部に形成される燃焼火炎の上端から排出される煤の量(mg/m3)を解析した。
図19に、煤排出量(mg/m3)と蒸気原単位(ton/10km3)の関係を示す。蒸気原単位2.6ton/10km3で、煤排出量が、近くから黒煙を視認できない水準の0.642mg/m3である。
即ち、図9に示す燃焼放散管においては、燃焼放散管(基本型)に比べ、近くから黒煙を視認できない煤排出量(0.642mg/m3)を達成する蒸気原単位を大幅に低減できることが解かる。また、蒸気原単位4ton/10km3で、煤排出量が、近くから黒煙を視認できない0.01mg/m3に達することが解かる。
(実施例3)
図12に示す燃焼放散管において、下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量と、上部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量を1:1として、燃焼後放散されるガス中の煤の量(mg/m3)を解析した。
図20に、煤排出量(mg/m3)と蒸気原単位(ton/10km3)の関係を示す。蒸気原単位2.3ton/10km3で、煤排出量が、近くから黒煙を視認できない水準の0.642mg/m3である。
即ち、図12に示す燃焼放散管においては、燃焼放散管(基本型)に比べ、近くから黒煙を視認できない煤排出量(0.642mg/m3)を達成する蒸気原単位を大幅に低減できることが解かる。また、蒸気原単位4ton/10km3で、煤排出量が、近くから黒煙を視認できない0.001mg/m3に達することが解かる。
前述したように、本発明によれば、未精製のコークス炉ガスの燃焼・放散において、コールタール量の変動や、燃焼に影響する環境(風、雨等)の急変などの外乱があっても、近くから黒煙を視認できない水準まで完全燃焼させるためにエゼクタ管に噴射する蒸気の量の原単位を、大幅に低減することができる。よって、本発明は、鉄鋼産業及び公害防止産業において利用可能性が高いものである。
1 コークス炉
2 原料炭
3 上昇管
4 ドライメーン
5 ガス精製設備
6 誘導管
7 垂直円筒管
7a 開口
7b 庇
8 短筒管
8a 小孔
9、9’、9” エゼクタ管
9a 開口
9b 直管部
9c 垂直管部
9d 曲管部
10 下部蒸気供給管
10a 噴射ノズル
11 上部蒸気供給管
11a 噴射ノズル
12 風防管
13a、13b 遮蔽板
G コークス炉ガス(未精製ガス)

Claims (5)

  1. 未精製のコークス炉ガスを燃焼させて放散する燃焼放散管であって、
    未精製のコークス炉ガスを誘導する垂直円筒管、
    垂直円筒管の頂上部の中に、垂直円筒管に平行に配置され、上下に開口する短筒管、
    短筒管の下部から垂直円筒管に向かって下向きに傾斜して、垂直円筒管の外側に突出して配置され、短筒管に空気を導入する複数のエゼクタ管、
    エゼクタ管の下方の垂直円筒管の周囲に配置され、複数のエゼクタ管に蒸気を噴射する複数の噴射ノズルを備え、噴射する蒸気の量を制御できる下部蒸気供給管、及び、
    下部蒸気供給管の上方の垂直円筒管の周囲に配置され、垂直円筒管の開口の上方に蒸気を噴射する複数の噴射ノズルを備え、噴射する蒸気の量を制御できる上部蒸気供給管からなり、
    (ア)前記垂直円筒管の頂上部に、内側上方に傾斜する庇、及び
    (イ)前記垂直円筒管の頂上部を包囲する風防管、
    の一方又は両方を備え、
    (ウ)前記垂直円筒管の頂上部の中に、複数の短筒管が、隣接又は近接して環状に配置され、前記複数の短筒管の下開口、及び、複数の短筒管で形成される内側下開口の一方、又は、両方が遮蔽されているか、又は
    (エ)前記垂直円筒管の頂上部の中に、短筒管を垂直管部として一体化した複数のエゼクタ管が垂直管部を隣接又は近接して環状に配列して配置され、前記複数のエゼクタ管の垂直管部で形成される内側下開口が遮蔽されており、
    上部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量と、下部蒸気供給管の噴射ノズルから噴射する蒸気の量を、それぞれ独立して制御する
    ことを特徴とするコークス炉ガスの燃焼放散管。
  2. 前記庇の幅が、垂直円筒管の内径(mm)×(0.05~0.20)であることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
  3. 前記垂直円筒管の頂上部の中に配置する短筒管の上部に、コークス炉ガスと空気の混合を促進する小孔が、複数、穿孔されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
  4. 前記複数の短筒管、又は前記短筒管を垂直管部として一体化した複数のエゼクタ管の垂直管部の上部に、コークス炉ガスと空気の混合を促進する小孔が、複数、穿孔されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
  5. 前記複数の短筒管に空気を導入する複数のエゼクタ管が式:La/D≧4(La:エゼクタ管の最大長さ、D:エゼクタ管の内径)を満たすこと、又は
    前記短筒管を垂直管部として一体化した複数のエゼクタ管が式:Lb/D≧4(Lb:エゼクタ管の直管部の長さ、D:エゼクタ管の内径)を満たすこと、
    を特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のコークス炉ガスの燃焼放散管。
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