JP7142809B2 - 膨張抑制材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セメントと骨材からなるコンクリートに混和される混和材、特に、コンクリートの膨張抑制効果を期待する膨張抑制材に関する。
コンクリートは、セメント、骨材、水を混練させて形成する。コンクリートは、一般的に広く利用される建設材料であるが、いくつかの問題がある。例えば、アルカリ骨材反応のようなセメントの異常反応による膨張などがある。このような異常膨張は、ひび割れ等コンクリート構造物の劣化要因の1つとなる。
一般にアルカリ骨材反応とは、骨材中の反応性シリカやシリケート鉱物がセメント中のアルカリと反応してひび割れを発生させる反応とされている。
また、骨材がドロマイト質石灰石の場合では、セメント中の影響により、骨材中のマグネシウムが水と反応し、水酸化マグネシウムが形成される際の膨張によりコンクリートにひび割れが起きるおそれがある。
アルカリ骨材反応によりひび割れが発生する結果、漏水、鉄筋腐食、耐久性低下などの不具合をもたらす。
ところで、本願発明者は、長年、異常膨張したコンクリートを観察して、知見を蓄積している(非特許文献1~3)。これらの知見に基づき焼成カオリン族鉱物由来の膨張抑制材を提案している(特許文献1および2)。
膨張抑制効果を実証している。
特開2014-136665号公報 特開2015-129064号公報
丸章夫:コンクリート構造物の異常ひび割れに関する岩石鉱物学的考察,コンクリート工学,vol.42,No.12,32~42,2004 丸章夫:異常ひび割れが発生した構造物コンクリートの鉱物学的考察,粘土科学,第45巻,第2号,pp.75~89,2006 丸章夫:石灰系骨材を使用して異常ひび割れが発生した構造物コンクリートの鉱物学的考察,粘土科学,第46巻,第2号,pp.105~111,2007
本願発明者は、特許文献1および2記載の膨張抑制材の実証試験を繰り返している。その過程で、いくつかの改善点を見出した。
本発明は、上記の課題を解決するものであり、従来同等の膨張抑制効果を有し、従来に比べて経済的に製造できる膨張抑制材を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は膨張抑制材の製造方法である。ハロイサイトと炭質物を含む原料を粉砕して最大径600μm以下の粉とし、前記粉を数~10mmの径の粒に造粒し、前記粒を350~700℃の温度で、30~120分間か焼する。
これによりか焼条件を従来焼成条件より低温・短時間とすることができる。その結果、経済的に製造できる。
好ましくは、前記粒を400~600℃の温度で、30~60分間か焼する。
これによりか焼条件を従来焼成条件より更に低温・短時間とすることができる。
更に好ましくは、 前記か焼温度と前記か焼時間とはexp(0.20*(104 /T)+1.0) ≦ t ≦ exp(0.24*(104 /T)+1.4) t : か焼時間( 分), T: か焼温度(絶対温度K)の範囲にある。
これによりか焼条件を従来焼成条件より更に低温・短時間とすることができる。
好ましくは、前記炭質物は前記ハロイサイトに対し3~15重量%含まれている。さらに5~10重量%含まれていることが好ましい。これは、ハロイサイト1Kgに対し炭質物の燃焼熱量数百~1000Kcalに相当する。
これにより、粒内部の炭質物が着火燃焼し、原料自体が昇温する。相対的に外部加熱温度を下げることができる。
好ましくは、所定のか焼温度までの昇温速度を一定とする。ただし、変形例として、前記か焼において、300℃までの加熱を第1昇温段階とし、300℃から前記か焼温度までの加熱を第2昇温段階とし、前記第1昇温段階の昇温速度は前記第2昇温段階の昇温速度より遅い。
これにより、粒内部の炭質物が着火燃焼し、原料自体が昇温する。相対的に外部加熱温度を下げることができる。
好ましくは、前記造粒の際、バインダを用いる。
これにより、加熱バーナーの熱風により吹き飛んでしまうことを避けることができる。なお、ハロイサイトには粘性が高いものと低いものとがあり、粘性が低いハロイサイトを用いる場合は、バインダを用いるが、粘性が高いハロイサイトを用いる場合は、バインダは不要である。
好ましくは、前記原料は石炭ぼた由来である。
石炭ぼた由来の原料には揮発性炭質物を含む。石炭ぼたは廃棄物として扱われており廉価で入手可能である。また、石炭ぼた由来の原料に粘性がある場合は、バインダは不要である。
本発明の膨張抑制材は、従来同等の膨張抑制効果を有する。本発明の膨張抑制材は、従来に比べて経済的に製造できる。
炭質物を含むハロイサイト結晶のイメージ 従来焼成条件(比較例) か焼条件 造粒粒イメージ 昇温速度制御例
~基本原理~
本発明の膨張抑制にかかる基本原理について説明する。本願発明者は、長年、異常膨張したコンクリートを観察して、以下の知見を得た。
アルカリ骨材反応を含めて、膨張ひび割れ現象により、ひび割れが発生したコンクリート中のセメント硬化体を調べると、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)や3CaO・Al2O3・8~12H2O、4CaO・Al2O3・13H2O、Ca2Al(OH)7・3H2Oなどのカルシウム・アルミネート・ハイドレートならびにエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)が共通して生成している。
ところで、最近のセメントの粉末度は、コンクリート強度を早く出すために高く(細かく)なり、普通ポルトランドセメントでブレーン値が実測値3,200~3,800cm2/g,高炉セメントでは3,800~4,300cm2/gであり、JASS5で示す2,700cm2/g(この値以上の意味)よりも極めて高く、非常に細かくなっている。
このように、セメントの粉末度が高い場合や、水・セメント比が高い場合、あるいは、骨材成分がコンクリート中(セメントの系)に溶出する場合、セメント成分中のイオン化傾向が高いカルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)がイオン化し、セメントの水和反応が正常でなくなり、水酸化カルシウム、カルシウム・アルミネート・ハイドレート、エトリンガイトなどの水和物が生成される。これらの水和物の生成は膨張を伴う。これが、コンクリートの膨張原因となる。
焼成カオリン族鉱物由来の膨張抑制材は、所定時間、所定温度にて、天然のカオリン族鉱物を焼成したものである。
焼成カオリン族鉱物は、セメントから異常に溶出するカルシウムやアルミニウム、あるいは、セメント中またコンクリート中に含まれるナトリウムやカリウムを吸収し固定する。
焼成カオリン族鉱物がコンクリート中に溶出したカルシウムを吸収すると、水和セメント硬化体の骨格であるC-S-Hが形成される。C-S-HとはCaOとSiO2およびH2Oの略記号であり、セメントの水和反応により生成するセメント水和反応生成物の骨格成分を表す。物理的に安定したC-S-H組成の例として、3CaO・2SiO2・3H2Oあるいは6CaO・5SiO2・6H2Oがある。非結晶に近い物質である。組成が天然鉱物トベルモライト(3CaO・2SiO2・3H2O)と同じであるため、トベルモライト・ゲルとも呼ばれる。
これにより、膨張作用のある上記水和物の生成を抑制し、その結果、アルカリ骨材反応を含むコンクリートの異常膨張を抑制する。膨張抑制によりコンクリートのひび割れを抑制する。
~カオリン族鉱物とハロイサイト~
混和材に含まれる焼成カオリンは、所定時間、所定温度にて、天然のカオリン族鉱物を焼成したものである。カオリン族鉱物とは、唯、カオリンということもあり、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、メタハロイサイト、アロフェーンの総称である。
結晶系は異なるがカオリナイト、ディッカイト、ナクライトならびにメタハロイサイトは、Al2O3・2SiO2・2H2Oの組成を有し、ハロイサイト(加水ハロイサイト)はAl2O3・2SiO2・4H2O、アロフェーンはAl2O3・2SiO2・nH2Oの組成である。
焼成カオリン族鉱物は、結晶水が飛ぶことにより、Al2O3・2SiO2の組成となり化学反応性の高い物質となる。
本願では、カオリン族鉱物のうち特にハロイサイトに着目している。
ハロイサイトはカオリナイトと一緒に産したり、火山灰層や泥岩、頁岩、火成岩類あるいはその構成鉱物である長石や雲母が長年月の化学変化、風化作用、温泉作用によって生成する。堆積層では、表層がカオリナイト、深層がハロイサイトであることがある。
ハロイサイトは組成Al2O3・2SiO2・4H2Oに示すように結晶水が多く、カオリナイトよりも酸性度の低い条件下で生成する。
なお、本願において、原料主成分としてハロイサイトを用いる際に、他のカオリン族鉱物が混じることを除外するものではない。主成分とは原材料のうち5割以上であることを言う。
また、原料主成分としてハロイサイトが含まれているかは、原料の一部を取り出し、粉末X線回析により確認する。これは、他の粘土鉱物の確認と同様である。
~石炭ぼた~
ぼた山とは石炭の採掘に伴い発生する捨石(ぼた)の集積場である。ぼたはずりということもある。ぼたは石炭としての商品価値はないが、揮発性炭質物を含む。炭質物は数~数十μm程度である。
そのため、ぼた山から自然発火し、防災上の問題にもなり得る。
本願発明者は、石炭ぼたにハロイサイトやカオリナイト等のカオリン族鉱物が含まれることに気が付いた。したがって、石炭ぼた由来のハロイサイト原料には炭質物が含まれる。具体的には、ハロイサイトやカオリナイト等のカオリン族鉱物を主成分とする石炭ぼたは、数~数十μmのカオリン鉱物結晶と、当該結晶間または結晶のひび割れに浸み込んだ同等の大きさの炭質物との集合体である。炭質物には、固相、液相、気相の状態のものがある。図1に炭質物を含むハロイサイト結晶のイメージを示す。
ところで、高品質のカオリン族鉱物は陶磁器用として高額で取引される。これに対し、石炭ぼた由来の原料を用いることで、原価コストを大きく低減できる。
なお、石炭ぼた同等に炭質物が含まれるのであれば、石炭ぼた由来以外の原料を用いてもよい。
また、石炭ぼた中の炭質物は通常ハロイサイトに対し3~13重量%含まれているが多くは5~10重量%含まれていることが好ましい。これは、ハロイサイト1Kgに対し炭質物の燃焼熱量数百~1000Kcalに相当する。700~1000Kcalであると好ましい。所定の炭質物が含まれているかは、目視により確認(炭質物により黒くなっている)するとともに、原料の一部を取り出し、燃焼試験により発熱量を計測する。
~従来焼成条件~
本願発明者は、焼成温度600~900℃、焼成時間180分以下、より好ましくは、焼成温度750℃以上850℃以下、焼成時間60分以上120分以下を焼成カオリン族鉱物の焼成条件とした。
さらに、最適な焼成温度と焼成時間との組み合わせを検討し、アレニウス則を参考に、最適条件を近似式として求めた。
t=exp(1.41*(104/T)-9.34) (中央値)
t:焼成時間(分),T:焼成温度(絶対温度K)
t=exp(3.08*(104/T)-22.64) (上限式:上側ライン)
t=exp(0.81*(104/T)-4.45) (下限式:下側ライン)
従来の焼成条件を比較例として図2に示す。
~本願発明に至る経緯~
本願発明者は、さらに、実証試験を繰り返し、下記の知見を得た。
カオリン族鉱物のうちハロイサイトの結晶は、パイプ状または球状で空隙を有し、その結果、他のカオリン族鉱物に比べて、低温で脱水し結晶が崩れて化学的に活性化しやすくなることに気が付いた。また、適切な焼成温度の上限も、他のカオリン族鉱物に比べて低温であることに気が付いた。
また、炭質物を多く含む原料を加熱すると、300℃強の温度で炭質物が着火し、原料内部が昇温するので、相対的に外部からの加熱を低温とすることができることに気が付いた。
さらに、原料を粉砕し、粒度(粉度)の管理をすることにより、均一性が向上することに気が付いた。その結果、燃焼熱は発散し、原料中に籠ることがなく、従来に比べて低温加熱により脱水構造崩壊が容易となり、化学的に活性化しやすくなる。また、原料を粉砕し、粒度(粉度)の管理をすることにより、粉砕紛体中の炭質物が均質になることに気が付いた。
以上3つの知見を組み合わせて、本願膨張抑制材を発明するに至った。
~か焼前~
ハロイサイトと炭質物を含む原料を用いる。石炭ぼた由来の原料を用いても良い。原料を粉砕して最大径600μm以下の粉とする。なお、最大径600μmとはそれよりも細かい粉を含む。さらに最大径300μm以下の粉とするとより好ましい。
粉砕した粉を数~10mmの径の粒に造粒する。実用的には2~5mm程度とする。造粒成形には皿型造粒機や押し出し造粒成形機を用いてもよい。
ハロイサイトの結晶は、管状のものもあるが、球状のものもある。管状のハロイサイトは、太さ0.5~1.0μm、長さ0.5~数μmである。ハロイサイトには粘性が高いものと低いものもある。
粘性が低い場合は、バインダ(糊)を用いる。バインダとして、微細セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉粉、α‐グルコースアミロペクチン、天然ゴム糊、米糊、木材パルプを原料とする糊などのエコ糊が挙げられる。
造粒時に加水する。バインダを用いる場合は、バインダを水に1~5重量%溶かす。
なお、粉状のままでもよいが、ロータリーキルンによりか焼する際、加熱バーナーの熱風により吹き飛んでしまう場合は、造粒することが好ましい。
~か焼条件~
か焼(calcination)とは、鉱石などの固体を加熱して熱分解や相転移を起こしたり、揮発成分を除去したりする熱処理プロセスであり、通常その物質の融点より低い温度で行うことを言う。本願では、従来の焼成条件に比べて低温であることをか焼という。なお、か焼の「か」は火偏に「暇」の旁を組み合わせた漢字である。
本願では、ハロイサイトへの着目、炭質物の着火、原料粉砕の相互作用により、従来焼成条件に比べて低温・短時間にできる。
以下、化学反応性の高いか焼ハロイサイトが得られるか焼条件を検討した。化学反応性については、ナトリウム水溶液と反応させて生成する人工A型ゼオライトの生成率により判定した。検討結果を表1に示す。
Figure 0007142809000001
か焼温度350~700℃、か焼時間30~120分間すると、人工A型ゼオライト70%以上であった。か焼温度400~600℃、か焼時間30~60分間すると、人工A型ゼオライト80%以上であった。
さらに、詳細なか焼温度とか焼時間との組み合わせを検討し、アレニウス則を参考に、最適条件を近似式として求めた。
t=exp(0.22*(104/T)+1.2) (中央値)
t:焼成時間(分),T:焼成温度(絶対温度K)
t=exp(0.24*(104/T)+1.4) (上限式:上側ライン)
t=exp(0.20*(104/T)+1.0) (下限式:下側ライン)
本願か焼条件を図3に示す。比較のため図2に示した従来例を図3にも示す。
図3に示すように、本願か焼条件は従来焼成条件に比べて低温・短時間となっている。
~昇温速度制御~
本願原料には炭質物が含まれている。炭質物は300℃強で着火する。
室温から所定温度(か焼温度)まで一定速度で昇温させる。100~200℃付近にてハロイサイトの層間水が脱水する。300℃強付近から炭質物が着火燃焼を始める。やや遅れて、ハロイサイトのOH基の脱水が起こる。
なお、室温からか焼温度までの平均昇温速度は10~20℃/分とする。その後、か焼温度を所定時間(か焼時間)維持する。これにより、炭質物は完全燃焼し、ハロイサイトは完全脱水し、化学的活性化を促す。その後、自然冷却する。
図4は造粒粒のイメージ図である。理解容易のため炭質物サイズ等を誇張している。また、理解容易のため炭質物を粒として表現しているが、実際の炭質物は、ハロイサイト結晶間またはハロイサイト結晶のひび割れに浸み込んで存在する。粉砕粉による造粒物(粒)は内部まで略均等に炭質物を含む。
昇温過程において炭質物は原料の粉体化に伴い低温から着火燃焼する。燃焼した箇所には空隙が形成されると思われる。これによりか焼温度が比較的低温でも粒内部まで熱が伝導しやすくなり、炭質物の燃焼はさらに促進される。また、空隙があることにより、ハロイサイトの脱水も容易になるものと推測される。
上記の通り昇温速度一定を前提とするが。昇温速度制御の変形例について説明する。
室温から炉内温度300℃までの加熱を第1昇温段階とし、炉内温度300℃からか焼温度までの加熱を第2昇温段階としたとき、第1昇温段階の昇温速度V1が第2昇温段階の昇温速度V2より遅くなるように、炉内温度を制御する。
図5は、変形例に係る昇温速度制御の概念図である。か焼温度600℃の例である。第1昇温段階の昇温速度V1と第2昇温段階の昇温速度V2とを比べれば、昇温速度V1の傾きは昇温速度V2の傾きより緩やかである。なお、比較の為、一般例における昇温速度制御についても追加している。
変形例において炉内温度300℃までを緩やかに昇温させることにより、上記メカニズムが確実に再現される。
~化学反応性~
か焼ハロイサイトの化学的活性度(反応性)を調べる方法として、ナトリウム水溶液と反応させて生成する人工A型ゼオライトの生成量から推定する方法について説明した。A型ゼオライトの合成は、か焼ハロイサイトを水酸化ナトリウム水溶液と共に封管中に封入して温度100℃で12~24時間攪拌しながら加熱、冷却、濾過、水洗、乾燥した産物について粉末X線回折分析を行なう。
A型ゼオライトの生成率は、化学試薬を用いて合成する純度が高いA型ゼオライトのX線回折強度と被試験試料のA型ゼオライトのX線回折強度とを比較することによって知ることができる。
また、か焼ハロイサイトの活性度は、ガス吸着試験を行った試験値と試薬を使って合成した純度の高いA型ゼオライトのガス吸着試験の参考値と比較すれば調べることができる。
他に、か焼ハロイサイトの化学的活性度(反応性)を調べる方法として、粉末X線回析法によってか焼生成物を調べる方法がある。粉末X線回析分析により、ハロイサイトの結晶が崩れて非晶質に近い状態になっているかをX線回折図から読み取り、同時に加熱変化しないハロイサイトが残っているか否か、また、高温生成鉱物のシリマナイトやムライトの生成の有無を調べて、良否を判定する。
~使用方法~
粒状のか焼ハロイサイトを膨張抑制材として用いる。さらに、粉状とすると、反応性と速効性が増す。
本願膨張抑制材をコンクリートの混練時に混和する。か焼ハロイサイトは分散性が高く、均一に分散する。本願膨張抑制材は、セメント重量に対し数~10%混和される。実用的には2~5%混和される。
膨張抑制材混和後は、通常コンクリート同様に打設すればよい。本願膨張抑制材は、生コンクリートの流動性等その他の特性に影響を与えないため、実用的である。
~効果実証試験~
本願膨張抑制材のアルカリ骨材反応抑制効果の実証試験および参考試験を行なった。実証試験はJIS A 5308 附属8 骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法)に基づく。アルカリ骨材反応を抑制し、コンクリートの膨張を抑制できるということは、セメントの水和反応が正常化していることを示唆する。
か焼ハロイサイトおよび骨材産地の異なる実証試験1~2をおこなった。まず共通の条件について説明する。
コンクリートの骨材となる岩石、砂利、砂は、表2の粒度分布となる様に粉砕する。骨材産地については実証試験1~3ごとに説明する。セメントは、JIS A 5210に規定される普通ポルトランドセメントを用いる。セメントのアルカリ量は事前に求めておき、NaOHを加えてセメントのアルカリ量がR2Oで1.2±0.05%となるように調整する。
Figure 0007142809000002
表3に示す配合の供試体を3本作製する。成形は、4cm×4cm×16cmの型枠を用い、型枠ごとに湿空箱に入れ24±2時間後脱型し、密封容器中で、温度40±2℃、相対湿度95%以上で貯蔵する。
Figure 0007142809000003
膨張抑制材については実証試験1~2および参考試験ごとに説明する。膨張抑制材混和の有無に対し膨張率を比較する。
供試体の長さ測定は、脱型時、4週間、8週間、3ヶ月、6ヶ月で行なう。供試体3本の平均膨張率が、6ヶ月後に0.100%未満の場合は無害(ひび割れに至る膨張はない)と判定する。一方、6ヶ月後に0.100%以上の場合は無害ではない(ひび割れに至る膨張)と判定する。
・実証試験1
コンクリート骨材として山形県産の玻璃質安産岩を用いる。山形県産の玻璃質安産岩は、斜長石と普通輝石の斑晶、斑晶の間隔を埋める石基(マトリックス)からなり、石基は、結晶の小さい斜長石、磁鉄鉱、玻璃からなる。玻璃の一部はクリストバライトに変っている。岩石中の玻璃とクリストバライトはアルカリ反応性鉱物と呼ばれ、合せて30~40%である。
か焼ハロイサイトの原料として、中国産の炭質物を含むハロイサイト粘土頁岩、すなわち石炭ぼたを用いる。
原料のハロイサイト岩を最大径0.15mm以下に粉砕する。さらに、原料を水を加えながら、皿型造粒機により、直径2~5mmの球状に造粒し、乾燥させる。なお、本実証試験におけるハロイサイトは粘性があるため、バインダを使用しない。
か焼条件は、炉内温度600℃、か焼時間50分とする。ロータリーキルンを用いる。冷却後、か焼ハロイサイトを最大径0.15mm以下に粉砕する。か焼ハロイサイト粉をセメント重量に対し4%混和する。
実証試験1の結果を表4に示す。
Figure 0007142809000004
上記結果について考察する。比較例(混和なし)における材令6ヶ月の膨張率は0.512%となり、規格値0.100%以下を満たさず、アルカリ骨材反応の膨張が発生する。すなわち、有害であると判定される。これに対し、実施例(4%混和)における材令6ヶ月の膨張率は0.080%であり規格値を満たす。無害であると判定される。
また、比較例(混和なし)における材令6ヶ月供試体では、表面に白色ゾルが発生する。これに対し、実施例(4%混和)における材令6ヶ月供試体では、ひび割れもアルカリシリカゲルの生成も確認できない。
・実証試験2
コンクリート骨材として東京都下産の砂岩を用いる。東京都下産の砂岩は、石英、長石、黒雲母などの鉱物破片と、頁岩、安山岩などの岩石砂粒ならびに微細な結晶である緑泥石、絹雲母、褐鉄鉱などの膠結物からなる。圧力変性作用によって二次生成された隠微晶質石英を含むこともある。
か焼ハロイサイトの原料として、日本産の植物起源の有機物(炭質物)を含む木節粘土や蛙目粘土と呼ばれる粘土のうち、ハロイサイトを粘土鉱物の主体とする粘土を用いる。
原料の粘土から、篩い分けと水篩によって石塊や石英・長石等の鉱物砂粒ならびに植物片を除き、最大径0.3mm以下に粉砕する。さらに、原料を水と、更にハロイサイトの粘性が低いため、バインダーとして微細セルロースとともに混練し、押し出し造粒機により、直径4mm、長さ4-6mmの短柱状に成形し、乾燥させる。
か焼条件は、炉内温度500℃、か焼時間60分とする。大型電気炉を用いる。冷却後、か焼ハロイサイトを最大径0.15mm以下に粉砕する。か焼ハロイサイト粉をセメント重量に対し2%混和する。
実証試験2の結果を表5に示す。
Figure 0007142809000005
上記結果について考察する。比較例(混和なし)における材令6ヶ月の膨張率は0.130%となり、規格値0.100%以下を満たさず、アルカリ骨材反応の膨張が発生すると判定する。すなわち、有害であると判定される。これに対し、実施例(2%混和)における材令6ヶ月の膨張率は0.059%であり規格値を満たす。無害であると判定される。
・参考試験
コンクリート骨材として東京都下産の砂岩を用いる(実証試験2参照)。
膨張抑制材として焼成カオリナイトを用いる。ただし、原料に炭質物を含まない。また、原料粉砕もしていない。
従来の焼成条件、焼成温度750℃ 、焼成時間120分で焼成し、最大径0.15mm以下に粉砕する。焼成カオリナイト粉をセメント重量に対し5%混和する。
参考試験の結果を表6に示す。
Figure 0007142809000006
上記結果について考察する。比較例(混和なし)における材令6ヶ月の膨張率は0.120%となり、規格値0.100%以下を満たさず、アルカリ骨材反応の膨張が発生する。すなわち、有害であると判定される。これに対し、参考例(5%混和)における材令6ヶ月の膨張率は0.051%であり規格値を満たす。無害であると判定される。
~効果まとめ~
本願方法により製造される膨張抑制材は、従来同様に、アルカリ骨材反応を抑制し、コンクリートの膨張を抑制できる。
本願か焼条件は従来焼成条件に比べて低温・短時間である。その結果、品質管理が容易になる。また、低温か焼であるため製造時の消費エネルギーが少ない。短時間であることにより生産効率に優れている。これらにより製造コストを軽減でき経済的である。
さらに、原料として石炭ぼたを用いることにより、原価コストを大きく低減できるとともに、石炭ぼたを処分することができる。
~その他~
本実施形態では膨張ひび割れ抑制効果について説明したが、ポップアウト及び鉄錆汁発生抑制及び強度向上に係る効果もある。適用範囲はこれに限定されず、最近注目されてきた100N/mm2前後の高強度コンクリートやそれ以上の強度の超高強度コンクリートの強度向上混和材として期待できる。

Claims (7)

  1. ハロイサイトと炭質物を含む原料を粉砕して最大径600μm以下の粉とし、
    前記粉を~10mmの径の粒に造粒し、
    前記粒を350~700℃の温度で、30~120分間か焼する
    ことを特徴とする膨張抑制材の製造方法。
  2. 前記粒を400~600℃の温度で、30~60分間か焼する
    ことを特徴とする請求項1記載の膨張抑制材の製造方法。
  3. 前記か焼温度と前記か焼時間とは
    exp(0.20*(104 /T)+1.0) ≦ t ≦ exp(0.24*(104 /T)+1.4)
    t : か焼時間( 分), T: か焼温度(絶対温度K)
    の範囲にある
    ことを特徴とする請求項1または2記載の膨張抑制材の製造方法。
  4. 前記炭質物は前記ハロイサイトに対し3~15重量%含まれている
    ことを特徴とする請求項1~3記載の膨張抑制材の製造方法。
  5. 前記か焼において、
    300℃までの加熱を第1昇温段階とし、
    300℃から前記か焼温度までの加熱を第2昇温段階とし、
    前記第1昇温段階の昇温速度は前記第2昇温段階の昇温速度より遅い
    ことを特徴とする請求項1~4記載の膨張抑制材の製造方法。
  6. 前記造粒の際、バインダを用いる
    ことを特徴とする請求項1~5記載の膨張抑制材の製造方法。
  7. 前記原料は石炭ぼた由来である
    ことを特徴とする請求項1~6記載の膨張抑制材の製造方法。
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