JP7137689B2 - 圧電フィルム、積層圧電素子および電気音響変換器 - Google Patents

圧電フィルム、積層圧電素子および電気音響変換器 Download PDF

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Description

本発明は、スピーカーおよびマイクロフォンなどの音響デバイス等に用いられる圧電フィルム、この圧電フィルムを積層した積層圧電素子、および、この圧電フィルムまたは積層圧電素子を用いる電気音響変換器に関する。
近年、プラスチック等の可撓性基板を用いたフレキシブルディスプレイに関する研究が進められている。
かかるフレキシブルディスプレイの基板としては、例えば、特許文献1において透明プラスチックフィルムにガスバリア層や透明導電層を積層したフレキシブルディスプレイ基板が開示されている。
フレキシブルディスプレイは、従来のガラス基板を用いたディスプレイと比較して、軽量性、薄さ、可撓性等において優位性を持っており、円柱等の曲面に備えることも可能である。また、丸めて収納することが可能であるため、大画面であっても携帯性を損なうことがなく、広告等の掲示用や、PDA(携帯情報端末)等の表示装置として注目されている。
このようなフレキシブルディスプレイを、テレビジョン受像機等のように画像と共に音声を再生する画像表示装置兼音声発生装置として使用する場合、音声を発生するための音響装置であるスピーカーが必要である。
ここで、従来のスピーカー形状としては、漏斗状のいわゆるコーン型や、球面状のドーム型等が一般的である。しかしながら、これらのスピーカーを上述のフレキシブルディスプレイに内蔵しようとすると、フレキシブルディスプレイの長所である軽量性や可撓性を損なう虞れがある。また、スピーカーを外付けにした場合、持ち運び等が面倒であり、曲面状の壁に設置することが難しくなり美観を損ねる虞れもある。
このような中、軽量性や可撓性を損なうことなくフレキシブルディスプレイに一体化可能なスピーカーとして、特許文献2に記載の圧電フィルム(電気音響変換フィルム)が知られている。
この圧電フィルムは、常温で粘弾性を有する高分子材料からなる粘弾性マトリックス中に圧電体粒子を分散してなる高分子複合圧電体と、高分子複合圧電体の両面に形成された薄膜電極と、薄膜電極の表面に形成された保護層とを有し、かつ、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接が0.1以上となる極大値が0~50℃の温度範囲に存在する、というものである。
特開2000-338901号公報 特開2015-29270号公報
圧電フィルムをスピーカーとして採用するためには、フィルム面に沿った伸縮運動をフィルム面の振動に変換する必要がある。この伸縮運動から振動への変換は、圧電フィルムを湾曲させた状態で保持することにより達成され、これにより、圧電フィルムをスピーカーとして機能させることが可能になる。
ところで、スピーカー用振動板の最低共振周波数f0は、下記式で与えられるのは周知である。ここで、sは振動系のスチフネス、mは質量である。
Figure 0007137689000001

このとき、圧電フィルムの湾曲程度すなわち湾曲部の曲率半径が大きくなるほど機械的なスチフネスsが下がるため、最低共振周波数f0は小さくなる。すなわち、圧電フィルムの曲率半径によってスピーカーの音質(音量、周波数特性)が変わることになる。
以上の点を考慮すると、フレキシブルディスプレイ用のスピーカーとして用いる圧電フィルムは、次の用件を具備したものであるのが好ましい。
(i) 可撓性
例えば、携帯用として新聞や雑誌のように書類感覚で緩く撓めた状態で把持する場合、絶えず外部から、数Hz以下の比較的ゆっくりとした、大きな曲げ変形を受けることになる。この時、圧電フィルムが硬いと、その分、大きな曲げ応力が発生し、高分子マトリックスと圧電体粒子との界面で亀裂が発生し、やがて破壊に繋がる恐れがある。従って、圧電フィルムには適度な柔らかさが求められる。また、歪みエネルギーを熱として外部へ拡散できれば応力を緩和することができる。従って、圧電フィルムの損失正接が適度に大きいことが求められる。
(ii) 音質
スピーカーは、20Hz~20kHzのオーディオ帯域の周波数で圧電体粒子を振動させ、その振動エネルギーによって振動板(圧電フィルム)全体が一体となって振動することで音が再生される。従って、振動エネルギーの伝達効率を高めるために圧電フィルムには、適度な硬さが求められる。また、スピーカーの周波数特性が平滑であれば、曲率の変化に伴い最低共振周波数f0が変化した際の音質の変化量も小さくなる。従って、圧電フィルムの損失正接は、適度に大きいことが求められる。
以上をまとめると、フレキシブルディスプレイ用のスピーカーとして用いる圧電フィルムは、20Hz~20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の振動に対しては柔らかく振る舞うことが求められる。また、高分子複合圧電体の損失正接は、20kHz以下の全ての周波数の振動に対して、適度に大きいことが求められる。
特許文献2に記載される圧電フィルムは、常温(0~50℃)であれば、上述の条件を満たし、優れた可撓性および音質を発現する。
しかしながら、スピーカーが使用される環境は、常温のみとは限らず、国、地域および使用場所によっては、氷点下の環境下で使用される場合も有る。ところが、特許文献2に記載される圧電フィルムは、氷点下のような低温の環境下では、十分な可撓性および音質を発現することが困難である。
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、氷点下の環境下において優れた可撓性を有し、かつ、常温でも良好な可撓性を有する圧電フィルム、この圧電フィルムを積層した積層圧電素子、および、この圧電フィルムまたは積層圧電素子を用いる電気音響変換器を提供することにある。
上述した目的を達成するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 高分子材料を含むマトリックス中に圧電体粒子を分散してなる高分子複合圧電体と、高分子複合圧電体の両面に形成された電極層とを有し、
動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接が、-80℃以上0℃未満の温度範囲に0.1以上となる極大値が存在し、かつ、0℃での値が0.05以上であることを特徴とする圧電フィルム。
[2] 電極層の表面に設けられた保護層を有する、[1]に記載の圧電フィルム。
[3] 厚さ方向に分極されたものである、[1]または[2]に記載の圧電フィルム。
[4] 圧電特性に面内異方性を有さない、[1]~[3]のいずれかに記載の圧電フィルム。
[5] 電極層と外部の電源とを接続するための引き出し線を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の圧電フィルム。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の圧電フィルムを、複数層、積層してなる積層圧電素子。
[7] 圧電フィルムが、厚さ方向に分極されたものであり、かつ、隣接する圧電フィルムの分極方向が逆である、[6]に記載の積層圧電素子。
[8] 圧電フィルムを、1回以上、折り返すことにより、圧電フィルムを、複数層、積層したものである、[6]または[7]に記載の積層圧電素子。
[9] 隣接する圧電フィルムを貼着する貼着層を有する、[6]~[8]のいずれかに記載の積層圧電素子。
[10] 振動板と、[1]~[5]のいずれかに記載の圧電フィルム、または、[6]~[9]のいずれかに記載の積層圧電素子とを有する、電気音響変換器。
[11] 圧電フィルムまたは積層圧電素子の厚さと、動的粘弾性測定による周波数1Hz、25℃での貯蔵弾性率との積が、振動板の厚さと、ヤング率との積の、0.1~3倍である、[10]に記載の電気音響変換器。
[12] 圧電フィルムまたは積層圧電素子の厚さと、動的粘弾性測定から得られたマスターカーブにおける周波数1kHz、25℃での貯蔵弾性率との積が、振動板の厚さと、ヤング率との積の、0.3~10倍である、[10]または[11]に記載の電気音響変換器。
[13] 振動板と、圧電フィルムまたは積層圧電素子とを貼着する貼着層を有する、[10]~[12]のいずれかに記載の電気音響変換器。
本発明によれば、氷点下の環境下において優れた可撓性を有し、かつ、常温においても、良好な可撓性を有する圧電フィルム、この圧電フィルムを積層した積層圧電素子、および、この圧電フィルムまたは積層圧電素子を用いる電気音響変換器が提供される。
図1は、本発明の圧電フィルムの一例の概念図である。 図2は、圧電フィルムの作製方法の一例を説明するための概念図である。 図3は、圧電フィルムの作製方法の一例を説明するための概念図である。 図4は、圧電フィルムの作製方法の一例を説明するための概念図である。 図5は、圧電フィルムの作製方法の一例を説明するための概念図である。 図6は、圧電フィルムの作製方法の一例を説明するための概念図である。 図7は、図1に示す圧電フィルムを用いる圧電スピーカーの一例の概念図である。 図8は、本発明の積層圧電素子を用いる本発明の電気音響変換器の一例の概念図である。 図9は、本発明の積層圧電素子の別の例の概念図である。 図10は、本発明の積層圧電素子の別の例の概念図である。 図11は、本発明の積層圧電素子の別の例の概念図である。 図12は、本発明の積層圧電素子の別の例の概念図である。 図13は、本発明の積層圧電素子の別の例の概念図である。 図14は、本発明の積層圧電素子の別の例の概念図である。 図15は、本発明の積層圧電素子の別の例の概念図である。 図16は、本発明の積層圧電素子における突出部を説明するための概念図である。
以下、本発明の圧電フィルム、積層圧電素子および電気音響変換器について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
図1に、本発明の圧電フィルムの一例を断面図によって概念的に示す。
図1に示すように、圧電フィルム10は、圧電性を有するシート状物である圧電体層20と、圧電体層20の一方の面に積層される下部電極24と、下部電極24に積層される下部保護層28と、圧電体層20の他方の面に積層される上部電極26と、上部電極26に積層される上部保護層30とを有する。
圧電体層20は、高分子材料を含むマトリックス34中に、圧電体粒子36を分散してなるものである。すなわち、圧電体層20は、本発明における高分子複合圧電体である。
後述するが、圧電フィルム10(圧電体層20)は、好ましい態様として、厚さ方向に分極されている。
このような圧電フィルム10は、一例として、スピーカー、マイクロフォン、および、ギター等の楽器に用いられるピックアップなどの各種の音響デバイス(音響機器)において、電気信号に応じた振動による音の発生(再生)や、音による振動を電気信号に変換するために利用される。
また、圧電フィルムは、これ以外にも、感圧センサおよび発電素子等にも利用可能である。
上述のように、フレキシブルスピーカー等に用いられる圧電フィルムは、良好な可撓性および音質を有するものであるのが好ましい。
すなわち、圧電フィルムは、20Hz~20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の振動に対しては柔らかく振る舞うことが求められる。また、圧電フィルム10の損失正接は、20kHz以下の全ての周波数の振動に対して、適度に大きいことが求められる。
一般に、高分子固体は粘弾性緩和機構を有しており、温度上昇あるいは周波数の低下とともに大きなスケールの分子運動が貯蔵弾性率(ヤング率)の低下(緩和)あるいは損失弾性率の極大(吸収)として観測される。その中でも、非晶質領域の分子鎖のミクロブラウン運動によって引き起こされる緩和は、主分散と呼ばれ、非常に大きな緩和現象が見られる。この主分散が起きる温度がガラス転移点(Tg)であり、最も粘弾性緩和機構が顕著に現れる。
本発明の圧電フィルム10は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接(tanδ)が0.1以上となる極大値が、-80℃以上0℃未満の温度範囲に、1以上、存在する。加えて、本発明の圧電フィルム10は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接の0℃での値が、0.05以上である。
本発明の圧電フィルム10は、これにより、氷点下の環境において、非常に高い可撓性を有すると共に、常温においても、良好な可撓性を有する。加えて、本発明の圧電フィルム10は、氷点下の環境において、20Hz~20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の遅い振動に対しては柔らかく振舞う。
なお、本発明において、「常温」とは、0~50℃程度の温度域を指す。
圧電体層20は、マトリックス34に、圧電体粒子36を分散してなるものである。
本発明の圧電フィルム10は、一例として、圧電体層20(高分子複合圧電体)のマトリックス34として、ガラス転移点が常温にある高分子材料と、ガラス転移点が0℃未満の高分子材料とを混合した混合高分子材料を用いる。
ガラス転移点が常温である高分子材料とは、すなわち、常温で粘弾性を有する高分子材料である。他方、ガラス転移点が0℃未満である高分子材料とは、すなわち、0℃未満の温度域において粘弾性を有する高分子材料である。
このよう混合高分子材料を圧電体層20のマトリックス34として用いることにより、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接が、-80℃以上0℃未満の温度範囲に0.1以上となる極大値が存在し、かつ、0℃での値が0.05以上である圧電フィルム10が得られる。
本発明の圧電フィルム10は、動的粘弾性測定による、周波数1Hzでの損失正接が0.1以上となる極大値が、-80℃以上0℃未満の温度範囲に存在する。
本発明の圧電フィルム10は、これにより、氷点下の環境において、圧電フィルム10が外力によってゆっくりと曲げられた際に、歪みエネルギーを効果的に熱として外部へ拡散できる。そのため、圧電フィルム10は、最大曲げモーメント部におけるマトリックス34と圧電体粒子36との界面の応力集中が緩和され、マトリックス34と圧電体粒子36との界面で亀裂が発生するのを防ぐことができる。その結果、本発明の圧電フィルム10は、氷点下の環境における、使用者による折り曲げおよび丸めるなどの、外力によるゆっくりとした動きに対して、非常に高い可撓性を有する。以上の点に関しては、後述する積層圧電素子、および、電気音響変換器も同様である。
周波数1Hz、-80℃以上0℃未満の温度範囲における損失正接の極大値は、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。
なお、周波数1Hzでの損失正接が0.1以上となる極大値は、-80℃以上0℃未満の温度範囲に、複数、存在してもよい。
また、本発明の圧電フィルム10は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接の0℃での値が、0.05以上である。
圧電フィルム10の使用環境は、氷点下の環境のみとは限らない。また、圧電フィルムは、例えばロール・トゥ・ロールのような巻取りを伴う製造方法で製造されるが、製造環境の温度は、通常、常温である。従って、圧電フィルム10には、常温の環境においても、ある程度の可撓性が要求される。
これに対して、本発明の圧電フィルムは、上述した低温域での損失正接の極大値に加え、周波数1Hz、0℃での損失正接が0.05以上であることにより、先と同様の理由で、常温の環境においても、良好な取り扱い性および各種の製造方法を可能にする、良好な可撓性を発現する。以上の点に関しては、後述する積層圧電素子、および、電気音響変換器も同様である。
0℃、周波数1Hzでの損失正接は、0.07以上であるのが好ましく、0.1以上であるのがより好ましい。
本発明の圧電フィルム10において、1Hzでの損失正接の極大値は、常温の温度範囲に、存在してもよく、存在しなくてもよい。
なお、本発明の圧電フィルム10は、1Hzでの損失正接の極大値が、常温の温度範囲に、1以上、存在することにより、常温環境における圧電フィルム10の可撓性を、より良好にできる。本発明の圧電フィルム10において、1Hzでの損失正接の極大値が常温の温度範囲に存在する場合、損失正接の極大値は、0.05以上であるのが好ましい。
上述のように、本発明の圧電フィルム10においては、常温で粘弾性を有する高分子材料と、0℃未満の温度域で粘弾性を有する高分子材料との混合高分子材料を、圧電体層20のマトリックス34として用いる。
常温で粘弾性を有する高分子材料としては、誘電性を有するものであれば、公知の各種のものが利用可能である。好ましくは、高分子材料は、常温において、動的粘弾性試験による周波数1Hzにおける損失正接の極大値が、0.5以上である高分子材料を用いる。
これにより、常温において、圧電フィルム10が外力によってゆっくりと曲げられた際に、最大曲げモーメント部におけるマトリックス34と圧電体粒子36との界面の応力集中が緩和され、良好な可撓性が得られる。
また、常温で粘弾性を有する高分子材料は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)が、0℃において100MPa以上、50℃において10MPa以下、であるのが好ましい。
これにより、圧電フィルム10が外力によってゆっくりと曲げられた際に発生する曲げモーメントが低減できると同時に、20Hz~20kHzの音響振動に対しては硬く振る舞うことができる。
また、常温で粘弾性を有する高分子材料は、比誘電率が25℃において10以上有ると、より好適である。これにより、圧電フィルム10に電圧を印加した際に、マトリックス中の圧電体粒子にはより高い電界が掛かるため、大きな変形量が期待できる。
しかしながら、その反面、良好な耐湿性の確保等を考慮すると、高分子材料は、比誘電率が25℃において10以下であるのも、好適である。
このような条件を満たす常温で粘弾性を有する高分子材料としては、シアノエチル化ポリビニルアルコール(シアノエチル化PVA(CR-V))、ポリ酢酸ビニル、ポリビニリデンクロライドコアクリロニトリル、ポリスチレン-ビニルポリイソプレンブロック共重合体、ポリビニルメチルケトン、および、ポリブチルメタクリレート等が例示される。また、これらの高分子材料としては、ハイブラー5127(クラレ社製)などの市販品も、好適に利用可能である。なかでも、常温で粘弾性を有する高分子材料としては,シアノエチル基を有する材料を用いることが好ましく、シアノエチル化PVAを用いるのが特に好ましい。
なお、これらの高分子材料は、1種のみを用いてもよく、複数種を併用(混合)して用いてもよい。
混合高分子材料は、このような常温で粘弾性を有する高分子材料に、ガラス転移点が0℃未満の高分子材料、すなわち、0℃未満の温度域において粘弾性を有する高分子材料を混合したものである。以下の説明では、『0℃未満の温度域において粘弾性を有する高分子材料』を、便宜的に、『低温で粘弾性を有する高分子材料』ともいう。
本発明の圧電フィルム10は、圧電体層20を構成するマトリックス34として、常温で粘弾性を有する高分子材料に、低温で粘弾性を有する高分子材料を混合した混合高分子材料を用いることで、マトリックス34のガラス転移点を低下して、氷点下での環境での優れた可撓性と、常温環境での良好な可撓性とを両立している。
低温で粘弾性を有する高分子材料は、ガラス転移点が0℃未満で、かつ、誘電性を有するものであれば、各種の材料が利用可能である。
一例として、フッ素ゴム、および、クロロプレンゴム等が例示される。
圧電体層20を構成するマトリックス34において、常温で粘弾性を有する高分子材料に対する、低温で粘弾性を有する高分子材料の添加量には、制限はない。
低温で粘弾性を有する高分子材料の添加量は、常温で粘弾性を有する高分子材料と低温で粘弾性を有する高分子材料とを混合した混合高分子材料において、31~80質量%であるのが好ましく、41~70質量%であるのがより好ましく、51~60質量%であるのがさらに好ましい。
低温で粘弾性を有する高分子材料の添加量が31質量%以上とすることにより、低温で粘弾性を有する高分子材料を添加する効果を好適に発現して、氷点下の温環境において、優れた可撓性を発現する圧電フィルム10が得られる点で好ましい。
低温で粘弾性を有する高分子材料の添加量を80質量%以下とすることにより、常温での可撓性を良好にできる点で好ましい。
マトリックス34には、誘電特性や機械的特性の調節等を目的として、常温で粘弾性を有する高分子材料および低温で粘弾性を有する高分子材料に加え、必要に応じて、その他の誘電性高分子材料を添加しても良い。
また、マトリックス34には、誘電性高分子材料以外にも、ガラス転移点を調節する目的で、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリブテン、および、イソブチレン等の熱可塑性樹脂、ならびに、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、および、マイカ等の熱硬化性樹脂を添加しても良い。
さらに、粘着性を向上する目的で、ロジンエステル、ロジン、テルペン、テルペンフェノール、および、石油樹脂等の粘着付与剤を添加しても良い。
圧電体層20は、このようなマトリックス34に、圧電体粒子36を分散してなる、高分子複合圧電体である。
圧電体粒子36は、ペロブスカイト型またはウルツ鉱型の結晶構造を有するセラミックス粒子からなるものである。
圧電体粒子36を構成するセラミックス粒子としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン酸鉛(PLZT)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化亜鉛(ZnO)、および、チタン酸バリウムとビスマスフェライト(BiFe3)との固溶体(BFBT)等が例示される。
これらの圧電体粒子36は、1種のみを用いてもよく、複数種を併用(混合)して用いてもよい。
このような圧電体粒子36の粒径には制限はなく、圧電フィルム10のサイズおよび用途等に応じて、適宜、選択すれば良い。
圧電体粒子36の粒径は、1~10μmが好ましい。圧電体粒子36の粒径をこの範囲とすることにより、圧電フィルム10が高い圧電特性とフレキシビリティとを両立できる等の点で好ましい結果を得ることができる。
なお、図1においては、圧電体層20中の圧電体粒子36は、マトリックス34中に、均一かつ規則性を持って分散されているが、本発明は、これに制限はされない。
すなわち、圧電体層20中の圧電体粒子36は、好ましくは均一に分散されていれば、マトリックス34中に不規則に分散されていてもよい。
圧電フィルム10において、圧電体層20中におけるマトリックス34と圧電体粒子36との量比には、制限はない。圧電体層20中におけるマトリックス34と圧電体粒子36との量比は、圧電フィルム10の面方向の大きさおよび厚さ、圧電フィルム10の用途、ならびに、圧電フィルム10に要求される特性等に応じて、適宜、設定すればよい。
圧電体層20中における圧電体粒子36の体積分率は、30~80%が好ましく、50%以上がより好ましい。従って、圧電体層20中における圧電体粒子36の体積分率は、50~80%とするのが、さらに好ましい。
マトリックス34と圧電体粒子36との量比を上記範囲とすることにより、高い圧電特性と可撓性とを両立できる等の点で好ましい結果を得ることができる。
圧電フィルム10において、圧電体層20の厚さには制限はなく、圧電フィルム10の用途、および、圧電フィルム10に要求される特性等に応じて、適宜、設定すればよい。圧電体層20が厚いほど、いわゆるシート状物のコシの強さなどの剛性等の点では有利であるが、同じ量だけ圧電フィルム10を伸縮させるために必要な電圧(電位差)は大きくなる。
圧電体層20の厚さは、10~300μmが好ましく、20~200μmがより好ましく、30~150μmがさらに好ましい。
圧電体層20の厚さを、上記範囲とすることにより、剛性の確保と適度な柔軟性との両立等の点で好ましい結果を得ることができる。
本発明の圧電フィルム10においては、上述した圧電フィルム10と同様の理由で、圧電体層20(高分子複合圧電体)は、動的粘弾性測定による、周波数1Hzでの損失正接が0.1以上となる極大値が、-80℃以上0℃未満の温度範囲に、1以上、存在するのが好ましい。また、圧電体層20における、周波数1Hz、-80℃以上0℃未満の温度範囲における損失正接の極大値は、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。
なお、圧電体層20において、周波数1Hzでの損失正接が0.1以上となる極大値は、-80℃以上0℃未満の温度範囲に、複数、存在してもよい。
また、本発明の圧電フィルム10においては、上述した圧電フィルム10と同様の理由で、圧電体層20は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接の0℃での値が、0.05以上であるのが好ましい。
圧電体層20における、0℃、周波数1Hzでの損失正接は、0.07以上であるのが好ましく、0.1以上であるのがより好ましい。
さらに、本発明の圧電フィルム10の圧電体層20においては、1Hzでの損失正接の極大値は、常温の温度範囲に、存在してもよく、存在しなくてもよい。
しかしながら、上述した圧電フィルム10と同様の理由で、圧電体層20は、1Hzでの損失正接の極大値が、常温の温度範囲に、1以上、存在するのが好ましい。圧電体層20において、1Hzでの損失正接の極大値が常温の温度範囲に存在する場合、損失正接の極大値は、0.05以上であるのが好ましい。
図1に示すように、図示例の圧電フィルム10は、このような圧電体層20の一面に、下部電極24を有し、その表面に下部保護層28を有し、圧電体層20の他方の面に、上部電極26を有し、その表面に上部保護層30を有してなる構成を有する。ここで、上部電極26と下部電極24とが電極対を形成する。
なお、圧電フィルム10は、これらの層に加えて、例えば、上部電極26、および、下部電極24からの電極の引出しを行う電極引出し部を有し、電極引き出し部が電源PSに接続される。また、圧電フィルム10は、圧電体層20が露出する領域を覆って、ショート等を防止する絶縁層等を有していてもよい。
すなわち、圧電フィルム10は、圧電体層20の両面を電極対、すなわち、上部電極26および下部電極24で挟持し、この積層体を、下部保護層28および上部保護層30で挟持してなる構成を有する。
このように、圧電フィルム10において、上部電極26および下部電極24で挾持された領域は、印加された電圧に応じて伸縮される。
圧電フィルム10において、下部保護層28および上部保護層30は、必須の構成要件ではなく、好ましい態様として設けられるものである。
下部保護層28および上部保護層30は、上部電極26および下部電極24を被覆すると共に、圧電体層20に適度な剛性と機械的強度を付与する役目を担っている。すなわち、圧電フィルム10において、マトリックス34と圧電体粒子36とからなる圧電体層20は、ゆっくりとした曲げ変形に対しては、非常に優れた可撓性を示す一方で、用途によっては、剛性や機械的強度が不足する場合がある。圧電フィルム10は、それを補うために下部保護層28および上部保護層30が設けられる。
下部保護層28および上部保護層30には、制限はなく、各種のシート状物が利用可能であり、一例として、各種の樹脂フィルムが好適に例示される。
中でも、優れた機械的特性および耐熱性を有するなどの理由により、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、および、環状オレフィン系樹脂等からなる樹脂フィルムが、好適に利用される。
下部保護層28および上部保護層30の厚さにも、制限はない。また、下部保護層28および上部保護層30の厚さは、基本的に同じであるが、異なってもよい。
ここで、下部保護層28および上部保護層30の剛性が高過ぎると、圧電体層20の伸縮を拘束するばかりか、可撓性も損なわれる。そのため、機械的強度やシート状物としての良好なハンドリング性が要求される場合を除けば、下部保護層28および上部保護層30は、薄いほど有利である。
圧電フィルム10においては、下部保護層28および上部保護層30の厚さが、圧電体層20の厚さの2倍以下であれば、剛性の確保と適度な柔軟性との両立等の点で好ましい結果を得ることができる。
例えば、圧電体層20の厚さが50μmで下部保護層28および上部保護層30がPETからなる場合、下部保護層28および上部保護層30の厚さは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましい。
圧電フィルム10において、圧電体層20と下部保護層28との間には下部電極24が、圧電体層20と上部保護層30との間には上部電極26が、それぞれ形成される。
下部電極24および上部電極26は、圧電体層20に駆動電圧を印加するために設けられる。
本発明において、下部電極24および上部電極26の形成材料には制限はなく、各種の導電体が利用可能である。具体的には、炭素、パラジウム、鉄、錫、アルミニウム、ニッケル、白金、金、銀、銅、チタン、クロムおよびモリブデン等、これらの合金、これらの金属および合金の積層体および複合体、ならびに、酸化インジウムスズ等が例示される。中でも、銅、アルミニウム、金、銀、白金、および、酸化インジウムスズは、下部電極24および上部電極26として好適に例示される。
また、下部電極24および上部電極26の形成方法にも制限はなく、真空蒸着およびスパッタリング等の気相堆積法(真空成膜法)やめっきによる成膜や、上記材料で形成された箔を貼着する方法等、公知の方法が、各種、利用可能である。
中でも特に、圧電フィルム10の可撓性が確保できる等の理由で、真空蒸着によって成膜された銅およびアルミニウム等の薄膜は、下部電極24および上部電極26として、好適に利用される。その中でも特に、真空蒸着による銅の薄膜は、好適に利用される。
下部電極24および上部電極26の厚さには、制限はない。また、下部電極24および上部電極26の厚さは、基本的に同じであるが、異なってもよい。
ここで、前述の下部保護層28および上部保護層30と同様に、下部電極24および上部電極26の剛性が高過ぎると、圧電体層20の伸縮を拘束するばかりか、可撓性も損なわれる。そのため、下部電極24および上部電極26は、電気抵抗が高くなり過ぎない範囲であれば、薄いほど有利である。すなわち、下部電極24および上部電極26は、薄膜電極であるのが好ましい。
圧電フィルム10においては、下部電極24および上部電極26の厚さと、ヤング率との積が、下部保護層28および上部保護層30の厚さとヤング率との積を下回れば、可撓性を大きく損なうことがないため、好適である。
例えば、下部保護層28および上部保護層30がPET(ヤング率:約6.2GPa)で、下部電極24および上部電極26が銅(ヤング率:約130GPa)からなる組み合わせの場合、下部保護層28および上部保護層30の厚さが25μmだとすると、下部電極24および上部電極26の厚さは、1.2μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。
圧電フィルム10は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)が、-80℃で10~30GPa、0℃で1~10GPaであるのが好ましい。なお、この条件に関しては、圧電体層20も同様である。
これにより、氷点下の環境において、圧電フィルム10が貯蔵弾性率に大きな周波数分散を有することができる。すなわち、20Hz~20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の振動に対しては柔らかく振る舞うことができる。
また、圧電フィルム10は、厚さと動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率との積が、-80℃において1.0×105~2.0×106N/m、0℃において2.0×105~5.0×106N/m、であるのが好ましい。なお、この条件に関しては、圧電体層20も同様である。
これにより、氷点下の環境において、圧電フィルム10が可撓性および音響特性を損なわない範囲で、適度な剛性と機械的強度を備えることができる。
さらに、圧電フィルム10は、動的粘弾性測定から得られたマスターカーブにおいて、25℃、周波数1kHzにおける損失正接が、0.05以上であるのが好ましい。なお、この条件に関しては、圧電体層20も同様である。
これにより、圧電フィルム10を用いたスピーカーの周波数特性が平滑になり、スピーカーの曲率の変化に伴い最低共振周波数f0が変化した際の音質の変化を小さくできる。
なお、本発明において、圧電フィルム10、後述する積層圧電素子14および振動板12等の貯蔵弾性率(ヤング率)および損失正接は、動的粘弾性測定器を用いて、公知の方法で測定すればよい。動的粘弾性測定機としては、一例として、SIIナノテクノロジー社製のDMS6100粘弾性スペクトロメーターが例示される。
測定条件としては、一例として、測定周波数は0.1~20Hz(0.1Hz、0.2Hz、0.5Hz、1Hz、2Hz、5Hz、10Hzおよび20Hz)が、測定温度は-100~100℃が、昇温速度は2℃/分(窒素雰囲気中)が、サンプルサイズは40mm×10mm(クランプ領域込み)が、チャック間距離は20mmが、それぞれ、例示される。
以下、図2~図6を参照して、圧電フィルム10の製造方法の一例を説明する。
まず、図2に示すように、下部保護層28の上に下部電極24が形成されたシート状物10aを準備する。このシート状物10aは、下部保護層28の表面に、真空蒸着、スパッタリング、および、めっき等によって、下部電極24として銅薄膜等を形成して作製すればよい。
下部保護層28が非常に薄く、ハンドリング性が悪い時などは、必要に応じて、セパレータ(仮支持体)付きの下部保護層28を用いても良い。なお、セパレータとしては、厚さ25~100μmのPET等を用いることができる。セパレータは、上部電極26および上部保護層30を熱圧着した後、下部保護層28に何らかの部材を積層する前に、取り除けばよい。
一方で、有機溶媒に、常温で粘弾性を有する高分子材料および低温で粘弾性を有する高分子材料を溶解し、さらに、PZT粒子等の圧電体粒子36を添加し、攪拌して分散してなる塗料を調製する。以下の説明では、常温で粘弾性を有する高分子材料と、低温で粘弾性を有する高分子材料とを区別する必要が無い場合には、両者をまとめて『粘弾性材料』ともいう。
有機溶媒には制限はなく、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等の各種の有機溶媒が利用可能である。
シート状物10aを準備し、かつ、塗料を調製したら、この塗料をシート状物10aにキャスティング(塗布)して、有機溶媒を蒸発して乾燥する。これにより、図3に示すように、下部保護層28の上に下部電極24を有し、下部電極24の上に圧電体層20を形成してなる積層体10bを作製する。なお、下部電極24とは、圧電体層20を塗布する際の基材側の電極を差し、積層体における上下の位置関係を示すものではない。
この塗料のキャスティング方法には制限はなく、スライドコータおよびドクターナイフ等の公知の方法(塗布装置)が、全て、利用可能である。
なお、粘弾性材料がシアノエチル化PVAのように加熱溶融可能な物であれば、粘弾性材料を加熱溶融して、これに圧電体粒子36を添加/分散してなる溶融物を作製し、押し出し成形等によって、図2に示すシート状物10aの上にシート状に押し出し、冷却することにより、図3に示すような、下部保護層28の上に下部電極24を有し、下部電極24の上に圧電体層20を形成してなる積層体10bを作製してもよい。
上述したように、圧電フィルム10において、マトリックス34には、シアノエチル化PVA等の粘弾性材料以外にも、誘電性の高分子材料を添加しても良い。
マトリックス34に、これらの高分子材料を添加する際には、上述した塗料に添加する高分子材料を溶解すればよい。または、上述した加熱溶融した粘弾性材料に、添加する高分子材料を添加して加熱溶融すればよい。
下部保護層28の上に下部電極24を有し、下部電極24の上に圧電体層20を形成してなる積層体10bを作製したら、圧電体層20の分極処理(ポーリング)を行う。
圧電体層20の分極処理の方法には、制限はなく、公知の方法が利用可能である。好ましい分極処理の方法として、図4および図5に示す方法が例示される。
この方法では、図4および図5に示すように、積層体10bの圧電体層20の上面20aの上に、間隔gを例えば1mm開けて、この上面20aに沿って移動可能な棒状あるいはワイヤー状のコロナ電極40を設ける。そして、このコロナ電極40と下部電極24とを直流電源42に接続する。
さらに、積層体10bを加熱保持する加熱手段、例えば、ホットプレートを用意する。
その上で、圧電体層20を、加熱手段によって、例えば、温度100℃に加熱保持した状態で、直流電源42から下部電極24とコロナ電極40との間に、数kV、例えば、6kVの直流電圧を印加してコロナ放電を生じさせる。さらに、間隔gを維持した状態で、圧電体層20の上面20aに沿って、コロナ電極40を移動(走査)して、圧電体層20の分極処理を行う。
これにより、圧電体層20は厚さ方向に分極される。
このようなコロナ放電を利用する分極処理において、コロナ電極40の移動は、公知の棒状物の移動手段を用いればよい。以下の説明では、コロナ放電を利用する分極処理を、便宜的に、『コロナポーリング処理』とも言う。
また、コロナポーリング処理では、コロナ電極40を移動する方法にも、制限はされない。すなわち、コロナ電極40を固定し、積層体10bを移動させる移動機構を設け、この積層体10bを移動させて分極処理をしてもよい。この積層体10bの移動も、公知のシート状物の移動手段を用いればよい。
さらに、コロナ電極40の数は、1本に限定はされず、複数本のコロナ電極40を用いて、コロナポーリング処理を行ってもよい。
また、分極処理は、コロナポーリング処理に制限はされず、分極処理を行う対象に、直接、直流電界を印加する、通常の電界ポーリングも利用可能である。ただし、この通常の電界ポーリングを行う場合には、分極処理の前に、上部電極26を形成する必要が有る。
なお、この分極処理の前に、圧電体層20の表面を加熱ローラ等を用いて平滑化する、カレンダー処理を施してもよい。このカレンダー処理を施すことで、後述する熱圧着工程がスムーズに行える。
このようにして積層体10bの圧電体層20の分極処理を行う一方で、上部保護層30の上に上部電極26が形成されたシート状物10cを、準備する。このシート状物10cは、上部保護層30の表面に、真空蒸着、スパッタリング、めっき等によって上部電極26として銅薄膜等を形成して、作製すればよい。
次いで、図6に示すように、上部電極26を圧電体層20に向けて、シート状物10cを、圧電体層20の分極処理を終了した積層体10bに積層する。
さらに、この積層体10bとシート状物10cとの積層体を、上部保護層30と下部保護層28とを挟持するようにして、加熱プレス装置や加熱ローラ対等で熱圧着して、圧電フィルム10を作製する。
後述する本発明の積層圧電素子14は、このような本発明の圧電フィルム10を積層して、好ましい態様として貼着層19で貼着した構成を有する。図8に示す積層圧電素子14は、好ましい態様として、圧電体層20に付した矢印で示すように、隣接する圧電フィルム10における分極方向が互いに逆である。
圧電セラミックスを積層した一般的な積層セラミック圧電素子は、圧電セラミックスの積層体を作製した後に分極処理を行う。各圧電層の界面には共通電極しか存在せず、そのため、各圧電層の分極方向は積層方向で交互になる。
これに対して、本発明の積層圧電素子を構成する圧電フィルム10は、積層前の圧電フィルム10の状態で分極処理を行うことができる。圧電フィルム10は、好ましくは、図4および図5に示すように、上部電極26および上部保護層30を積層する前に、コロナポーリング処理によって圧電体層20の分極処理を行う。
従って、本発明の積層圧電素子は、分極処理済の圧電フィルム10を積層して作製できる。好ましくは、分極処理を施した長尺な圧電フィルム(大面積の圧電フィルム)を作製し、切断して個々の圧電フィルム10とした後に、圧電フィルム10を積層して積層圧電素子14とする。
そのため、本発明の積層圧電素子は、隣接する圧電フィルム10における分極方向を、図10に示す積層圧電素子61のように積層方向で揃えることもできるし、図8に示す積層圧電素子14のように、交互にもできる。
また、PVDF等の高分子材料からなる一般的な圧電フィルムは、分極処理後に一軸方向に延伸処理することで、延伸方向に対して分子鎖が配向し、結果として延伸方向に大きな圧電特性が得られることが知られている。そのため、一般的な圧電フィルムは、圧電特性に面内異方性を有し、電圧を印加された場合の面方向の伸縮量に異方性がある。
これに対して、マトリックス34中に圧電体粒子36を分散してなる高分子複合圧電体からなる本発明の圧電フィルム10は、分極処理後に延伸処理をしなくても大きな圧電特性が得られる。そのため、本発明の圧電フィルム10は、圧電特性に面内異方性がなく、後述するように駆動電圧を印加すると、面内方向では全方向に等方的に伸縮する。
このような本発明の圧電フィルム10の製造は、カットシート状のシート状物を用いて行っても良いが、好ましくは、ロール・トゥ・ロール(Roll to Roll)を利用する。以下の説明では、ロール・トゥ・ロールを『RtoR』ともいう。
周知のように、RtoRとは、長尺な原材料を巻回してなるロールから、原材料を引き出して、長手方向に搬送しつつ、成膜や表面処理等の各種の処理を行い、処理済の原材料を、再度、ロール状に巻回する製造方法である。
RtoRによって、前述の製造方法で圧電フィルム10を製造する際には、長尺な下部保護層28の上に下部電極24が形成されたシート状物10aを巻回してなる第1のロール、および、長尺な上部保護層30の上に上部電極26が形成されたシート状物10cを巻回してなる第2のロールを用いる。
第1のロールおよび第2のロールは、全く、同じものでよい。
このロールから、シート状物10aを引き出して、長手方向に搬送しつつ、粘弾性材料および圧電体粒子36を含有する塗料を塗布し、加熱等によって乾燥して、下部電極24の上に圧電体層20を形成し、前述の積層体10bとする。
次いで、上述したコロナポーリングを行って、圧電体層20の分極処理を行う。ここで、RtoRによって圧電フィルム10を製造する際には、積層体10bを搬送しつつ、積層体10bの搬送方向と直交する方向に長尺な固定した棒状のコロナ電極40によって、コロナポーリングによる圧電体層20の分極処理を行う。なお、この分極処置の前に、カレンダー処理を行ってもよいのは、前述のとおりである。
次いで、第2のロールからシート状物10cを引き出し、このシート状物10cおよび積層体を搬送しつつ、貼り合わせローラ等を用いる公知の方法で、前述のように、上部電極26を圧電体層20に向けて、積層体10bの上にシート状物10cを積層する。
その後、加熱ローラ対によって、積層した積層体10bとシート状物10cとを挟持搬送することで熱圧着して、本発明の圧電フィルム10を完成し、この圧電フィルム10を、ロール状に巻回する。
なお、圧電フィルム10の生産環境は、通常、常温であると考えられる。これに対して、本発明の圧電フィルム10は、上述のように、低温領域で良好な可撓性を有するが、常温でも、十分な可撓性を有する。従って、本発明の圧電フィルム10は、RtoRのような巻取りを伴う製造方法にも、好適に対応できる。
なお、以上の例は、RtoRによって、シート状物(積層体)を、1回だけ、長手方向に搬送して、本発明の圧電フィルム10を作製しているが、これに限定はされない。
例えば、上述した積層体10bを形成し、コロナポーリングを行った後に、一度、ロール状に、この積層体を巻回した積層体ロールとする。次いで、この積層体ロールから積層体を引き出して、長手方向に搬送しつつ、前述のように、上部保護層30の上に上部電極26が形成されたシート状物の積層を行って、圧電フィルム10を完成し、この圧電フィルム10を、ロール状に巻回してもよい。
このような圧電フィルム10は、下部電極24および上部電極26に電圧を印加すると、印加した電圧に応じて圧電体粒子36が分極方向に伸縮する。その結果、圧電フィルム10(圧電体層20)が厚さ方向に収縮する。同時に、ポアゾン比の関係で、圧電フィルム10は、面内方向にも伸縮する。この伸縮は、0.01~0.1%程度である。なお、面内方向では全方向に等方的に伸縮するのは、上述のとおりである。
上述したように、圧電体層20の厚さは、好ましくは10~300μm程度である。従って、厚さ方向の伸縮は、最大でも0.3μm程度と非常に小さい。
これに対して、圧電フィルム10すなわち圧電体層20は、面方向には、厚さよりもはるかに大きなサイズを有する。従って、例えば、圧電フィルム10の長さが20cmであれば、電圧の印加によって、最大で0.2mm程度、圧電フィルム10は伸縮する。
また、圧電フィルム10に圧力を加えると、圧電体粒子36の作用によって、電力を発生する。
これを利用することで、圧電フィルム10は、上述のように、スピーカー、マイクロフォン、および、感圧センサ等の各種の用途に利用可能である。
図7に、本発明の圧電フィルム10を利用する、平板型の圧電スピーカーの一例の概念図を示す。
この圧電スピーカー45は、本発明の圧電フィルム10を、電気信号を振動エネルギーに変換する振動板として用いる、平板型の圧電スピーカーである。なお、圧電スピーカー45は、マイクロフォンおよびセンサー等として使用することも可能である。
圧電スピーカー45は、圧電フィルム10と、ケース43と、粘弾性支持体46と、枠体48とを有して構成される。
ケース43は、プラスチック等で形成される、一面が開放する薄い正四角筒状の筐体である。
また、枠体48は、中央に貫通孔を有する、ケース43の上端面(開放面側)と同様の形状を有する板材である。
粘弾性支持体46は、適度な粘性と弾性を有するものである。粘弾性支持体46は、圧電フィルム10を支持すると共に、圧電フィルムのどの場所でも一定の機械的バイアスを与えることによって、圧電フィルム10の伸縮運動を無駄なく前後運動(フィルムの面に垂直な方向の運動)に変換させるためのものである。粘弾性支持体46としては、一例として、羊毛のフェルト、レーヨンやPETを含んだ羊毛のフェルトなどの不織布、グラスウール等が例示される。
圧電スピーカー45は、ケース43の中に粘弾性支持体46を収容して、圧電フィルム10によってケース43および粘弾性支持体46を覆い、圧電フィルム10の周辺を枠体48によってケース43の上端面に押圧した状態で、枠体48をケース43に固定して、構成される。
ここで、圧電スピーカー45においては、粘弾性支持体46は、高さ(厚さ)がケース43の内面の高さよりも厚い、四角柱状である。
そのため、圧電スピーカー45では、粘弾性支持体46の周辺部では、粘弾性支持体46が圧電フィルム10によって下方に押圧されて厚さが薄くなった状態で、保持される。また、同じく粘弾性支持体46の周辺部において、圧電フィルム10の曲率が急激に変動し、圧電フィルム10に、粘弾性支持体46の周辺に向かって低くなる立上がり部45aが形成される。さらに、圧電フィルム10の中央領域は四角柱状の粘弾性支持体46に押圧されて、(略)平面状になっている。
圧電スピーカー45は、下部電極24および上部電極26への駆動電圧の印加によって、圧電フィルム10が面内方向に伸長すると、この伸長分を吸収するために、粘弾性支持体46の作用によって、圧電フィルム10の立上がり部45aが、立ち上がる方向に角度を変える。その結果、平面状の部分を有する圧電フィルム10は、上方に移動する。
逆に、下部電極24および上部電極26への駆動電圧の印加によって、圧電フィルム10が面内方向に収縮すると、この収縮分を吸収するために、圧電フィルム10の立上がり部45aが、倒れる方向(平面に近くなる方向)に角度を変える。その結果、平面状の部分を有する圧電フィルム10は、下方に移動する。
圧電スピーカー45は、この圧電フィルム10の振動によって、音を発生する。
なお、本発明の圧電フィルム10において、伸縮運動から振動への変換は、圧電フィルム10を湾曲させた状態で保持することでも達成できる。
従って、本発明の圧電フィルム10は、このような圧電スピーカー45ではなく単に湾曲状態で保持することでも、可撓性を有するスピーカーとして機能させることができる。
図8に、本発明の電気音響変換器の一例を概念的に示す。
本発明の電気音響変換器は、本発明の積層圧電素子または圧電フィルムと、振動板とを有するものである。また、本発明の積層圧電素子は、本発明の圧電フィルムを、複数層、積層したものである。
上述したように、本発明の圧電フィルム10は、氷点下の環境において優れた可撓性を有し、かつ、常温環境でも、良好な可撓性を有する。従って、このような圧電フィルム10を積層した本発明の積層圧電素子も、氷点下の環境において優れた可撓性を有し、かつ、常温環境でも、良好な可撓性を有する。
さらに、本発明の電気音響変換器は、振動板として、可撓性を有するものを用いるのが好ましい。可撓性を有する振動板を用いることにより、本発明の電気音響変換器は、上述した積層圧電素子の作用効果によって、氷点下の環境において優れた可撓性を有し、かつ、常温環境でも、良好な可撓性を有する。
図8に示す電気音響変換器50は、積層圧電素子14と、振動板12とを有する。積層圧電素子14は、本発明の積層圧電素子である。図示例の積層圧電素子14は、上述した本発明の圧電フィルム10を、3層、積層したものである。
電気音響変換器50において、積層圧電素子14と振動板12とは、貼着層16によって貼着されている。
電気音響変換器50の積層圧電素子14を構成する圧電フィルム10には、駆動電圧を印加するための電源PSが接続されている。
図面を簡略化するために、図8では、下部保護層28および上部保護層30を省略している。しかしながら、図8に示す積層圧電素子14は、好ましい態様として、全ての圧電フィルム10が、下部保護層28および上部保護層30の両方を有している。
なお、本発明の積層圧電素子は、これに制限はされず、保護層を有する圧電フィルムと、有さない圧電フィルムとが混在してもよい。さらに、圧電フィルムが保護層を有する場合には、圧電フィルムは、下部保護層28のみを有してもよく、上部保護層30のみを有してもよい。一例として、図8に示すような3層構成の積層圧電素子14であれば、図中最上層の圧電フィルムが上部保護層30のみを有し、真ん中の圧電フィルムが保護層を有さず、最下層の圧電フィルムが下部保護層28のみを有するような構成でもよい。
この点に関しては、後述する図9に示す積層圧電素子56および図10に示す積層圧電素子61も、同様である。
後に詳述するが、このような電気音響変換器50は、積層圧電素子14の圧電フィルム10に駆動電圧を印加することで、圧電フィルム10が面方向に伸縮し、この圧電フィルム10の伸縮によって、積層圧電素子14が面方向に伸縮する。
この積層圧電素子14の面方向の伸縮によって、振動板12が撓み、その結果、振動板12が、厚さ方向に振動する。この厚さ方向の振動によって、振動板12は、音を発生する。振動板12は、圧電フィルム10に印加した駆動電圧の大きさに応じて振動して、圧電フィルム10に印加した駆動電圧に応じた音を発生する。
すなわち、この電気音響変換器50は、本発明の積層圧電素子14をエキサイターとして用いるスピーカーである。
本発明の電気音響変換器50において、振動板12は、好ましい態様として、可撓性を有するものである。なお、本発明において、可撓性を有するとは、一般的な解釈における可撓性を有すると同義であり、曲げること、および、撓めることが可能であることを示し、具体的には、破壊および損傷を生じることなく、曲げ伸ばしができることを示す。
振動板12は、好ましくは可撓性を有し、後述する積層圧電素子14との関係を満たすものであれば、制限はなく、各種のシート状物(板状物、フィルム)が利用可能である。
振動板12としては、一例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)および環状オレフィン系樹脂などからなる樹脂フィルム、発泡ポリスチレン、発泡スチレンおよび発泡ポリエチレンなどからなる発泡プラスチック、べニア板、コルクボード、牛革などの皮革類、カーボンシート、和紙などの各種板紙、ならびに、波状にした板紙の片面または両面に他の板紙をはりつけてなる各種の段ボール材等が例示される。
また、本発明の電気音響変換器50では、可撓性を有するものであれば、振動板12として、有機エレクトロルミネセンス(OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、マイクロLED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、無機エレクトロルミネセンスディスプレイなどの表示デバイス、および、プロジェクター用スクリーン等も好適に利用可能である。
図示例の電気音響変換器50においては、好ましい態様として、このような振動板12と、積層圧電素子14とは、貼着層16によって貼着されている。
本発明において、貼着層16は、振動板12と積層圧電素子14とを貼着可能であれば、公知のものが、各種、利用可能である。
従って、貼着層16は、貼り合わせる際には流動性を有し、その後、固体になる、接着剤からなる層でも、貼り合わせる際にゲル状(ゴム状)の柔らかい固体で、その後もゲル状の状態が変化しない、粘着剤からなる層でも、接着剤と粘着剤との両方の特徴を持った材料からなる層でもよい。また、貼着層16は、液体等の流動性を有する貼着剤を塗布して形成するものでも、シート状の貼着剤を用いて形成するものでもよい。
ここで、本発明の電気音響変換器50では、積層圧電素子14を伸縮させることで、振動板12を撓ませ振動させて、音を発生させる。従って、本発明の電気音響変換器50では、積層圧電素子14の伸縮が、直接的に振動板12に伝達されるのが好ましい。振動板12と積層圧電素子14との間に、振動を緩和するような粘性を有する物質が存在すると、振動板12への積層圧電素子14の伸縮のエネルギーの伝達効率が低くなってしまい、電気音響変換器50の駆動効率が低下してしまう。
この点を考慮すると、貼着層16は、粘着剤からなる粘着剤層よりも、固体で硬い貼着層16が得られる、接着剤からなる接着剤層であるのが好ましい。より好ましい貼着層16としては、具体的には、ポリエステル系接着剤およびスチレン・ブタジエンゴム(SBR)系接着剤等の熱可塑タイプの接着剤からなる貼着層が例示される。
接着は、粘着とは異なり、高い接着温度を求める際に有用である。また、熱可塑タイプの接着剤は『比較的低温、短時間、および、強接着』を兼ね備えており、好適である。
貼着層16の厚さには、制限はなく、貼着層16の材料に応じて、十分な貼着力(接着力、粘着力)が得られる厚さを、適宜、設定すればよい。
ここで、本発明の電気音響変換器50においては、貼着層16が薄い方が、振動板12に伝達する積層圧電素子14の伸縮エネルギー(振動エネルギー)の伝達効果を高くして、エネルギー効率を高くできる。また、貼着層16が厚く剛性が高いと、積層圧電素子14の伸縮を拘束する可能性もある。
この点を考慮すると、貼着層16は、薄い方が好ましい。具体的には、貼着層16の厚さは、貼着後の厚さで0.1~50μmが好ましく、0.1~30μmがより好ましく、0.1~10μmがさらに好ましい。
なお、電気音響変換器50において、貼着層16は、好ましい態様として設けられるものであり、必須の構成要素ではない。
従って、電気音響変換器50は、貼着層16を有さず、公知の圧着手段、締結手段、および、固定手段等を用いて、振動板12と積層圧電素子14とを固定してもよい。例えば、積層圧電素子14が矩形である場合には、四隅をボルトナットのような部材で締結して電気音響変換器を構成してもよく、または、四隅と中心部とをボルトナットのような部材で締結して電気音響変換器を構成してもよい。
しかしながら、この場合には、電源PSから駆動電圧を印加した際に、振動板12に対して積層圧電素子14が独立して伸縮してしまい、場合によっては、積層圧電素子14のみが撓んで、積層圧電素子14の伸縮が振動板12に伝わらない。このように、振動板12に対して積層圧電素子14が独立して伸縮した場合には、積層圧電素子14による振動板12の振動効率が低下してしまい。振動板12を十分に振動させられなくなってしまう可能性がある。
この点を考慮すると、本発明の電気音響変換器においては、振動板12と積層圧電素子14とは、図示例のように、貼着層16で貼着するのが好ましい。
図8に示す電気音響変換器50において、積層圧電素子14は、圧電フィルム10を、3枚、積層して、隣接する圧電フィルム10を、貼着層19で貼着した構成を有する。各圧電フィルム10には、圧電フィルム10を伸縮させる駆動電圧を印加する電源PSが接続される。
なお、図8に示す積層圧電素子14は、圧電フィルム10を、3層、積層したものであるが、本発明は、これに制限はされない。すなわち、本発明の積層圧電素子は、圧電フィルム10を、複数層、積層したものであれば、圧電フィルム10の積層数は、2層でもよく、あるいは、4層以上であってもよい。この点に関しては、後述する図9に示す積層圧電素子56および図10に示す積層圧電素子61も、同様である。
また、本発明の電気音響変換器は、本発明の積層圧電素子14に変えて、本発明の圧電フィルムによって、同様の作用効果で振動板12を振動させて、音を発生するものであってもよい。すなわち、本発明の電気音響変換器は、本発明の圧電フィルムをエキサイターとして用いてもよい。
図1に示す積層圧電素子14は、好ましい態様として、隣接する圧電フィルム10の分極方向を互いに逆にして、複数層(図示例は3層)の圧電フィルム10を積層し、隣接する圧電フィルム10を貼着層19で貼着した構成を有する。
本発明において、貼着層19は、隣接する圧電フィルム10を貼着可能であれば、公知のものが、各種、利用可能である。
従って、貼着層19は、上述した、接着剤からなる層でも、粘着剤からなる層でも、接着剤と粘着剤との両方の特徴を持った材料からなる層でもよい。また、貼着層19は、液体等の流動性を有する貼着剤を塗布して形成するものでも、シート状の貼着剤を用いて形成するものでもよい。
ここで、積層圧電素子14は、積層した複数枚の圧電フィルム10を伸縮させることで、振動板12を振動させて、音を発生させる。従って、積層圧電素子14は、各圧電フィルム10の伸縮が、直接的に伝達されるのが好ましい。圧電フィルム10の間に、振動を緩和するような粘性を有する物質が存在すると、圧電フィルム10の伸縮のエネルギーの伝達効率が低くなってしまい、積層圧電素子14の駆動効率が低下してしまう。
この点を考慮すると、貼着層19は、粘着剤からなる粘着剤層よりも、固体で硬い貼着層19が得られる、接着剤からなる接着剤層であるのが好ましい。より好ましい貼着層19としては、具体的には、ポリエステル系接着剤およびスチレン・ブタジエンゴム(SBR)系接着剤等の熱可塑タイプの接着剤からなる貼着層が好適に例示される。
接着は、粘着とは異なり、高い接着温度を求める際に有用である。また、熱可塑タイプの接着剤は『比較的低温、短時間、および、強接着』を兼ね備えており、好適である。
積層圧電素子14において、貼着層19の厚さには制限はなく、貼着層19の形成材料に応じて、十分な貼着力を発現できる厚さを、適宜、設定すればよい。
ここで、図示例の積層圧電素子14は、貼着層19が薄い方が、圧電フィルム10の伸縮エネルギーの伝達効果を高くして、エネルギー効率を高くできる。また、貼着層19が厚く剛性が高いと、圧電フィルム10の伸縮を拘束する可能性もある。
この点を考慮すると、貼着層19は、圧電体層20よりも薄いのが好ましい。すなわち、積層圧電素子14において、貼着層19は、硬く、薄いのが好ましい。具体的には、貼着層19の厚さは、貼着後の厚さで0.1~50μmが好ましく、0.1~30μmがより好ましく、0.1~10μmがさらに好ましい。
なお、後述するが、図示例の積層圧電素子14は、隣接する圧電フィルムの分極方向が互いに逆であり、隣接する圧電フィルム10同士がショートする恐れが無いので、貼着層19を薄くできる。
図示例の積層圧電素子14においては、貼着層19のバネ定数(厚さ×ヤング率)が高いと、圧電フィルム10の伸縮を拘束する可能性がある。従って、貼着層19のバネ定数は圧電フィルム10のバネ定数と同等か、それ以下であるのが好ましい。
具体的には、貼着層19の厚さと、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)との積が、0℃において2.0×106N/m以下、50℃において1.0×106N/m以下であるのが好ましい。
また、貼着層の動的粘弾性測定による周波数1Hzでの内部損失が、粘着剤からなる貼着層19の場合には25℃において1.0以下、接着剤からなる貼着層19の場合には25℃において0.1以下であるのが好ましい。
なお、電気音響変換器50を構成する積層圧電素子14において、貼着層19は、好ましい態様として設けられるものであり、必須の構成要素ではない。
従って、本発明の電気音響変換器を構成する積層圧電素子は、貼着層19を有さず、公知の圧着手段、締結手段、および、固定手段等を用いて、圧電フィルム10を積層して、密着させて、積層圧電素子を構成してもよい。例えば、圧電フィルム10が矩形である場合には、四隅をボルトナット等で締結して積層圧電素子を構成してもよく、または、四隅と中心部とをボルトナット等で締結して積層圧電素子を構成してもよい。あるいは、圧電フィルム10を積層した後、周辺部(端面)に粘着テープを貼着することで、積層した圧電フィルム10を固定して、積層圧電素子を構成してもよい。
しかしながら、この場合には、電源PSから駆動電圧を印加した際に、個々の圧電フィルム10が独立して伸縮してしまい、場合によっては、各圧電フィルム10各層が逆方向に撓んで空隙ができてしまう。このように、個々の圧電フィルム10が独立して伸縮した場合には、積層圧電素子としての駆動効率が低下してしまい、積層圧電素子全体としての伸縮が小さくなって、当接した振動板等を十分に振動させられなくなってしまう可能性がある。特に、各圧電フィルム10各層が逆方向に撓んで空隙ができてしまった場合には、積層圧電素子としての駆動効率の低下は大きい。
この点を考慮すると、本発明の積層圧電素子は、図示例の積層圧電素子14のように、隣接する圧電フィルム10同士を貼着する貼着層19を有するのが好ましい。
図8に示すように、電気音響変換器50において、各圧電フィルム10の下部電極24および上部電極26には、圧電フィルム10を伸縮させる駆動電圧を印加すなわち駆動電力を供給する、電源PSが接続される。
電源PSには、制限はなく、直流電源でも交流電源でもよい。また、駆動電圧も、各圧電フィルム10の圧電体層20の厚さおよび形成材料等に応じて、各圧電フィルム10を適正に駆動できる駆動電圧を、適宜、設定すればよい。
後述するが、図示例の積層圧電素子14は、隣接する圧電フィルム10の分極方向が逆である。そのため、隣接する圧電フィルム10では、下部電極24同士および上部電極26同士が対面する。従って、電源PSは、交流電源でも直流電源でも、対面する電極には、常に同じ極性の電力を供給する。例えば、図8に示す積層圧電素子14では、図中最下層の圧電フィルム10の上部電極26と、2層目(真ん中)の圧電フィルム10の上部電極26とには、常に同じ極性の電力が供給され、2層目の圧電フィルム10の下部電極24と、図中最上層の圧電フィルム10の下部電極24とには、常に同じ極性の電力が供給される。
下部電極24および上部電極26から電極の引き出し方法には、制限はなく、公知の各種の方法が利用可能である。
一例として、下部電極24および上部電極26に銅箔等の導電体を接続して外部に電極を引き出す方法、および、レーザ等によって下部保護層28および上部保護層30に貫通孔を形成して、この貫通孔に導電性材料を充填して外部に電極を引き出す方法、等が例示される。
好適な電極の引き出し方法として、特開2014-209724号公報に記載される方法、および、特開2016-015354号公報に記載される方法等が例示される。
上述したように、圧電体層20は、マトリックス34に圧電体粒子36を分散してなるものである。また、圧電体層20を厚さ方向で挟むように、下部電極24および上部電極26が設けられる。
このような圧電体層20を有する圧電フィルム10の下部電極24および上部電極26に電圧を印加すると、印加した電圧に応じて圧電体粒子36が分極方向に伸縮する。その結果、圧電フィルム10(圧電体層20)が厚さ方向に収縮する。同時に、ポアゾン比の関係で、圧電フィルム10は、面内方向にも伸縮する。
この伸縮は、0.01~0.1%程度である。
上述したように、圧電体層20の厚さは、好ましくは10~300μm程度である。従って、厚さ方向の伸縮は、最大でも0.3μm程度と非常に小さい。
これに対して、圧電フィルム10すなわち圧電体層20は、面方向には、厚さよりもはるかに大きなサイズを有する。従って、例えば、圧電フィルム10の長さが20cmであれば、電圧の印加によって、最大で0.2mm程度、圧電フィルム10は伸縮する。
積層圧電素子14は、圧電フィルム10を積層して貼着したものである。従って、圧電フィルム10が伸縮すれば、積層圧電素子14も伸縮する。
振動板12は、貼着層16によって積層圧電素子14に貼着されている。従って、積層圧電素子14の伸縮によって、振動板12は撓み、その結果、振動板12は、厚さ方向に振動する。
この厚さ方向の振動によって、振動板12は、音を発生する。すなわち、振動板12は、圧電フィルム10に印加した電圧(駆動電圧)の大きさに応じて振動して、圧電フィルム10に印加した駆動電圧に応じた音を発生する。
上述したように、PVDF等の高分子材料からなる一般的な圧電フィルムは、圧電特性に面内異方性を有し、電圧を印加された場合の面方向の伸縮量に異方性がある。
これに対して、図示例の電気音響変換器50において、積層圧電素子14を構成する本発明の圧電フィルム10は、圧電特性に面内異方性がなく、面内方向では全方向に等方的に伸縮する。すなわち、図示例の電気音響変換器50において、積層圧電素子14を構成する圧電フィルム10は、等方的に二次元的に伸縮する。
このような等方的に二次元的に伸縮する圧電フィルム10を積層した積層圧電素子14によれば、一方向にしか大きく伸縮しないPVDF等の一般的な圧電フィルムを積層した場合に比べ、大きな力で振動板12を振動することができ、より大きく、かつ、美しい音を発生できる。
図示例の積層圧電素子14は、圧電フィルム10を、複数枚、積層したものである。図示例の積層圧電素子14は、好ましい態様として、さらに、隣接する圧電フィルム10同士を、貼着層19で貼着している。
そのため、1枚毎の圧電フィルム10の剛性が低く、伸縮力は小さくても、圧電フィルム10を積層することにより、剛性が高くなり、積層圧電素子14としての伸縮力は大きくなる。その結果、積層圧電素子14は、振動板12がある程度の剛性を有するものであっても、大きな力で振動板12を十分に撓ませて、厚さ方向に振動板12を十分に振動させて、振動板12に音を発生させることができる。
また、圧電体層20が厚い方が、圧電フィルム10の伸縮力は大きくなるが、その分、同じ量、伸縮させるのに必要な駆動電圧は大きくなる。ここで、上述したように、積層圧電素子14において、好ましい圧電体層20の厚さは、最大でも300μm程度である。従って、個々の圧電フィルム10に印加する電圧が小さくても、十分に、圧電フィルム10を伸縮させることが可能である。
本発明の電気音響変換器50においては、積層圧電素子14の厚さと動的粘弾性測定による周波数1Hz、25℃での貯蔵弾性率との積が、振動板12の厚さとヤング率との積の、0.1~3倍であるのが好ましい。
上述したように、本発明の圧電フィルム10は、良好な可撓性、特に氷点下の環境で優れた可撓性を有するものであり、この圧電フィルム10を積層した本発明の積層圧電素子14も、良好な可撓性、特に氷点下の環境で優れた可撓性を有する。
一方、振動板12は、ある程度の剛性を有するものである。このような振動板12に剛性の高い積層圧電素子14が組み合わされると、硬く、曲げにくくなり、電気音響変換器50の可撓性の点で不利である。
これに対して、本発明の電気音響変換器50は、好ましくは、積層圧電素子14の厚さと動的粘弾性測定による周波数1Hz、25℃での貯蔵弾性率との積が、振動板12の厚さとヤング率との積の、3倍以下である。すなわち、積層圧電素子14は、ゆっくりとした動きに対しては、バネ定数が、振動板12の3倍以下であるのが好ましい。
このような構成を有することにより、本発明の電気音響変換器50は、折り曲げる、および、丸める等の外力によるゆっくりした動きに対しては、柔らかく振舞うことができ、すなわち、ゆっくりとした動きに対して、良好な可撓性を発現する。
本発明の電気音響変換器50において、積層圧電素子14の厚さと動的粘弾性測定による周波数1Hz、25℃での貯蔵弾性率との積は、振動板12の厚さとヤング率との積の、2倍以下であるのがより好ましく、1倍以下であるのがさらに好ましく、0.3倍以下であるのが特に好ましい。
他方、積層圧電素子14に利用される材料、および、好ましい積層圧電素子14の構成等を考慮すると、積層圧電素子14の厚さと動的粘弾性測定による周波数1Hz、25℃での貯蔵弾性率との積は、振動板12の厚さとヤング率との積の、0.1倍以上であるのが好ましい。
本発明の電気音響変換器50は、積層圧電素子14の厚さと動的粘弾性測定から得られたマスターカーブにおける周波数1kHz、25℃での貯蔵弾性率との積が、振動板12の厚さとヤング率との積の、0.3~10倍であるのが好ましい。すなわち、積層圧電素子14は、駆動された状態の早い動きでは、バネ定数が、振動板12の0.3~10倍であるのが好ましい。
上述したように、電気音響変換器50は、積層圧電素子14の面方向の伸縮によって振動板12を振動させることにより、音を発生する。従って、積層圧電素子14は、オーディオ帯域の周波数(20Hz~20kHz)では、振動板12に対して、ある程度の剛性(硬さ、コシ)を有するのが好ましい。
本発明の電気音響変換器50は、積層圧電素子14の厚さと動的粘弾性測定から得られたマスターカーブにおける周波数1kHz、25℃での貯蔵弾性率との積を、振動板12の厚さとヤング率との積の、好ましくは0.3倍以上、より好ましくは0.5倍以上、さらに好ましくは1倍以上とする。すなわち、積層圧電素子14は、早い動きに対しては、バネ定数が、振動板12の0.3倍以上であるのが好ましく、0.5倍以上であるのがより好ましく、1倍以上であるのがさらに好ましい。
これにより、オーディオ帯域の周波数において、振動板12に対する積層圧電素子14の剛性を十分に確保して、電気音響変換器50が、高いエネルギー効率で、高い音圧の音を出力できる。
他方、積層圧電素子14に利用可能な材料、好ましい積層圧電素子14の構成等を考慮すると、積層圧電素子14の厚さと動的粘弾性測定による周波数1kHz、25℃での貯蔵弾性率との積は、振動板12の厚さとヤング率との積の、10倍以下であるのが好ましい。
上述の説明からも明らかなように、エキサイター14の厚さと、動的粘弾性測定による周波数1Hz、25℃での貯蔵弾性率との積には、貼着層19の厚さはもちろん、貼着層19の貯蔵弾性率等の物性も、大きく影響する。
他方、振動板12の厚さとヤング率との積、すなわち、振動板のバネ定数には、振動板の厚さはもちろん、振動板の物性も、大きく影響する。
従って、本発明の電気音響変換器50では、積層圧電素子14の厚さと、動的粘弾性測定による周波数1Hz、25℃での積層圧電素子14の貯蔵弾性率との積が、振動板12の厚さとヤング率との積の0.1~3倍である条件を満たすためには、貼着層19の厚さおよび材料、ならびに、振動板の厚さおよび材料が、重要である。また、本発明の電気音響変換器50では、積層圧電素子14の厚さと、周波数1kHz、25℃での積層圧電素子14の貯蔵弾性率との積が、振動板12の厚さとヤング率との積の0.3~10倍である条件を満たすためにも、同様に、貼着層19の厚さおよび材料、ならびに、振動板の厚さおよび材料が、重要である。
すなわち、本発明の電気音響変換器50では、上述の条件を満たすように、貼着層19の厚さおよび材料、ならびに、振動板12厚さおよび材料を、適宜、選択するのが好ましい。
言い換えれば、本発明の電気音響変換器50においては、圧電フィルム18の特性等に応じて、貼着層19の厚さおよび材料、ならびに、振動板12厚さおよび材料を、適宜、選択することで、好適に、積層圧電素子14の厚さと、動的粘弾性測定による周波数1Hz、25℃での積層圧電素子14の貯蔵弾性率との積が、振動板12の厚さとヤング率との積の0.1~3倍であるという条件、および/または、積層圧電素子14の厚さと、周波数1kHz、25℃での積層圧電素子14の貯蔵弾性率との積が、振動板12の厚さとヤング率との積の0.3~10倍である条件を、満たすことが可能になる。
上述した厚さと貯蔵弾性率との積に関しては、積層圧電素子14に変えて、圧電フィルム10を用いて電気音響変換器を構成する場合にも、同様である。
図示例の電気音響変換器50は、好ましい態様として、上述したように、積層圧電素子14は、隣接する圧電フィルム10の圧電体層20の分極方向が、互いに逆である。
圧電フィルム10において、圧電体層20に印加する電圧の極性は、分極方向に応じたものとなる。従って、印加する電圧の極性は、図8に矢印で示す分極方向において、矢印が向かう方向側(矢印の下流側)の電極の極性と、逆側(矢印の上流側)の電極の極性とは、全ての圧電フィルム10で一致させる。
図示例においては、分極方向を示す矢印が向かう方向側の電極を下部電極24、逆側の電極を上部電極26として、全ての圧電フィルム10において、上部電極26と下部電極24との極性を同極性にする。
従って、隣接する圧電フィルム10の圧電体層20の分極方向が、互いに逆である積層圧電素子14においては、隣接する圧電フィルム10では、一方の面で上部電極26同士が対面し、他方の面で下部電極同士が対面する。そのため、積層圧電素子14では、隣接する圧電フィルム10の電極同士が接触しても、ショート(短絡)する恐れがない。
上述したように、積層圧電素子14を良好なエネルギー効率で伸縮するためには、貼着層19が圧電体層20の伸縮を妨害しないように、貼着層19を薄くするのが好ましい。
これに対して、隣接する圧電フィルム10の電極同士が接触しても、ショートする恐れが無い図示例の積層圧電素子14では、貼着層19が無くてもよく、好ましい態様として貼着層19を有する場合でも、必要な貼着力が得られれば、貼着層19を極めて薄くできる。
そのため、高いエネルギー効率で積層圧電素子14を伸縮させることができる。
なお、上述したように、圧電フィルム10においては、厚さ方向の圧電体層20の伸縮の絶対量は非常に小さく、圧電フィルム10の伸縮は、実質的に、面方向のみとなる。
従って、積層される圧電フィルム10の分極方向が逆であっても、下部電極24および上部電極26に印加する電圧の極性さえ正しければ、全ての圧電フィルム10は同じ方向に伸縮する。
なお、積層圧電素子14において、圧電フィルム10の分極方向は、d33メーター等で検出すれば良い。
または、上述したコロナポーリング処理の処理条件から、圧電フィルム10の分極方向を知見してもよい。
図示例の積層圧電素子14は、好ましくは、上述したように、長尺(大面積)の圧電フィルムを作製し、長尺な圧電フィルムを切断して、個々の圧電フィルム10とする。従って、この場合は、積層圧電素子14を構成する複数枚の圧電フィルム10は、全て同じものである。
しかしながら、本発明は、これに制限はされない。すなわち、本発明の電気音響変換器において、圧電積層体は、例えば、下部保護層28および上部保護層30を有する圧電フィルムと有さない圧電フィルムなど、異なる層構成の圧電フィルムを積層した構成、および、圧電体層20の厚さが異なる圧電フィルムを積層した構成等、各種の構成が利用可能である。
図8に示す電気音響変換器50において、積層圧電素子14は、複数枚の圧電フィルム10を、隣接する圧電フィルム同士で分極方向を逆にして積層して、好ましい態様として、隣接する圧電フィルム10を貼着層19で貼着したものである。
本発明の積層圧電素子は、これに制限はされず、各種の構成が利用可能である。
図9に、その一例を示す。なお、図9に示す積層圧電素子56は、上述した積層圧電素子14を同じ部材を、複数、用いるので、同じ部材には同じ符号を付し、説明は、異なる部位を主に行う。
図9に示す積層圧電素子56は、本発明の積層圧電素子のより好ましい態様であり、長尺な圧電フィルム10Lを、長手方向に、1回以上、好ましくは複数回、折り返すことにより、圧電フィルム10Lを複数層、積層したものである。また、上述した図8等に示す積層圧電素子14と同様、図9に示される積層圧電素子56も、好ましい態様として、折り返しによって積層された圧電フィルム10Lを、貼着層19によって貼着している。
厚さ方向に分極された長尺な1枚の圧電フィルム10Lを、折り返して積層することで、積層方向に隣接(対面)する圧電フィルム10Lの分極方向は、図9中に矢印で示すように、逆方向になる。なお、この圧電フィルムの折り返しは、長手方向ではなく、短手方向であってもよい。
この構成によれば、一枚の長尺な圧電フィルム10Lのみで積層圧電素子56を構成でき、また、駆動電圧を印加するための電源PSが1個で済み、さらに、圧電フィルム10Lからの電極の引き出しも、1か所でよい。
そのため、図9に示す積層圧電素子56によれば、部品点数を低減し、かつ、構成を簡略化して、圧電素子(モジュール)としての信頼性を向上し、さらに、コストダウンを図ることができる。
図9に示す積層圧電素子56のように、長尺な圧電フィルム10Lを折り返した積層圧電素子56では、圧電フィルム10Lの折り返し部に、圧電フィルム10Lに当接して芯棒58を挿入するのが好ましい。
上述したように、圧電フィルム10Lの下部電極24および上部電極26は、金属の蒸着膜等で形成される。金属の蒸着膜は、鋭角で折り曲げられると、ヒビ(クラック)等が入りやすく、電極が断線してしまう可能性がある。すなわち、図9に示す積層圧電素子56では、屈曲部の内側において、電極にヒビ等が入り易い。
これに対して、長尺な圧電フィルム10Lを折り返した積層圧電素子56において、圧電フィルム10Lの折り返し部に芯棒58を挿入することにより、下部電極24および上部電極26が折り曲げられることを防止して、断線が生じることを好適に防止できる。
本発明の電気音響変換器において、積層圧電素子は、導電性を有する貼着層19を用いてもよい。特に、図9に示すような、長尺な1枚の圧電フィルム10Lを、折り返して積層した積層圧電素子56では、導電性を有する貼着層19は、好ましく利用される。
図8および図9に示すような、隣接する圧電フィルム10の分極方向が逆である積層圧電素子においては、積層される圧電フィルム10において、対面する電極には、同じ極性の電力が供給される。従って、対面する電極間で短絡が生じることは無い。
一方で、上述したように、圧電フィルム10Lを、折り返して積層した積層圧電素子56は、鋭角的に折り返される屈曲部の内側において、電極の断線が生じやすい。
従って、導電性を有する貼着層19によって、積層した圧電フィルム10Lを貼着することにより、屈曲部の内側において電極の断線が生じても、貼着層19によって導通を確保できるので、断線を防止して、積層圧電素子56の信頼性を大幅に向上できる。
ここで、積層圧電素子56を構成する圧電フィルム10Lは、好ましくは、図1に示すように、下部電極24および上部電極26に対面して積層体を挟持するように、下部保護層28および上部保護層30を有する。
この場合には、導電性を有する貼着層19を用いても、導電性を確保できない。そのため、圧電フィルム10Lが保護層を有する場合には、積層される圧電フィルム10Lの下部電極24同士および上部電極26同士が対面する領域において、下部保護層28および上部保護層30に貫通孔を設けて、下部電極24および上部電極26と、導電性を有する貼着層19とを接触させればよい。好ましくは、下部保護層28および上部保護層30に形成した貫通孔を銀ペーストまたは導電性の貼着剤で塞ぎ、その上で、導電性を有する貼着層19で隣接する圧電フィルム10Lを貼着する。
下部保護層28および上部保護層30の貫通孔は、レーザ加工、ならびに、溶剤エッチングおよび機械研磨などによる保護層の除去等によって形成すればよい。
下部保護層28および上部保護層30の貫通孔は、好ましくは圧電フィルム10Lの屈曲部以外で、積層される圧電フィルム10Lの下部電極24同士および上部電極26同士が対面する領域に1か所でもよく、複数個所でもよい。または、下部保護層28および上部保護層30の貫通孔は、下部保護層28および上部保護層30の全面に、規則的または、不規則に形成してもよい。
導電性を有する貼着層19には、制限はなく、公知のものが、各種、利用可能である。
以上の積層圧電素子は、積層された圧電フィルム10の分極方向が、隣接する圧電フィルム10で逆方向であるが、本発明は、これに制限はされない。
すなわち、本発明において、圧電フィルム10を積層した積層圧電素子は、図10に示す積層圧電素子61のように、圧電体層20の分極方向が、全て同方向であってもよい。
ただし、図10に示すように、積層する圧電フィルム10の分極方向が、全て同方向である積層圧電素子61では、隣接する圧電フィルム10同士では、下部電極24と上部電極26とが対面する。そのため、貼着層19を十分に厚くしないと、貼着層19の面方向の外側の端部において、隣接する圧電フィルム10の下部電極24と上部電極26とが接触して、ショートしてしまう恐れがある。
そのため、図10に示すように、積層する圧電フィルム10の分極方向が、全て同方向である積層圧電素子61では、貼着層19を薄くすることができず、図8および図9に示す積層圧電素子に対して、エネルギー効率の点で、不利である。
ところで、図9に示すように、1枚の圧電フィルムを折り返すことで、複数の圧電フィルムを積層した積層圧電素子は、2つの構成が考えられる。
1つ目の構成は、圧電フィルムの折り返しによる屈曲部が、積層圧電素子の長手方向に沿う構成である。すなわち、1つ目の構成は、圧電フィルムの折り返しによる屈曲部が、積層圧電素子の長手方向に一致する構成である。
2つ目の構成は、圧電フィルムの折り返しによる屈曲部が、積層圧電素子の短手方向に沿う構成である。すなわち、2つ目の構成は、圧電フィルムの折り返しによる屈曲部が、積層圧電素子の短手方向に一致する構成である。
言い換えれば、圧電フィルムを折り返して積層した積層圧電素子は、圧電フィルムの折り返しによって形成される稜線が、積層圧電素子の長手方向に一致する構成と、積層圧電素子の短手方向に一致する構成とが考えられる。
なお、積層圧電素子の長手方向および短手方向とは、具体的には、積層圧電素子を、圧電フィルム12の積層方向に観察した平面形状における長手方向および短手方向である。
積層圧電素子を圧電フィルム12の積層方向に観察した平面形状とは、言い換えれば、積層圧電素子を、圧電フィルム12の主面と直交する方向から観察した際における形状である。
具体的には、1枚の圧電フィルムを折り返すことで、5層の圧電フィルムを積層して、20×5cmの積層圧電素子を作製する場合には、以下の2つの構成が考えられる。
1つ目の構成は、図11に概念的に示すように、20×25cmの矩形の圧電フィルム10Laを、25cmの方向に、5cmずつ4回、折り返すことにより、5層の圧電フィルム10Laを積層した積層圧電素子56Aである。この積層圧電素子56Aでは、圧電フィルム10Laの折り返しによる屈曲部は、積層圧電素子56Aの長手方向である20cmの方向に沿う。すなわち、この積層圧電素子56Aでは、圧電フィルム10Laを折り返すことによって形成される稜線が、積層圧電素子56Aの長手方向に一致する。
2つ目の構成は、図12に概念的に示すように、100×5cmの矩形の圧電フィルム10Lbを、100cmの方向に、20cmずつ4回、折り返すことにより、5層の圧電フィルム10Lbを積層した積層圧電素子56Bである。この積層圧電素子56Bでは、圧電フィルム10Lbの折り返しによる屈曲部は、積層圧電素子56Bの短手方向である5cmの方向に沿う。すなわち、この積層圧電素子56Bでは、圧電フィルム10Lbを折り返すことによって形成される稜線が、積層圧電素子56Bの短手方向に一致する。
本発明において、圧電フィルムを折り返して積層した積層圧電素子は、圧電フィルムの折り返しによる屈曲部が、積層圧電素子の長手方向に沿う構成、および、積層圧電素子の短手方向に沿う構成の、いずれも好適に利用可能である。
すなわち、圧電フィルムの折り返しによる屈曲部が、積層圧電素子の長手方向に沿う構成と、短手方向に沿う構成とは、それぞれに利点が有る。従って、いずれの構成を利用するかは、積層圧電素子の用途等に応じて、適宜、設定すればよい。
また、積層圧電素子には、電源装置などの外部装置と接続するために、下部電極24および上部電極26に接続して、積層圧電素子の外部に至る、引出配線を設けてもよい。なお、引出配線は、必ずしも物理的に外部に突出している必要はなく、電極から電気的に引出すものであることを意味する
引出配線は、上述した方法を利用して形成可能である。例えば、引出配線は、圧電フィルムの端部、もしくは外部に突出した領域において、圧電体層20を設けずに、下部電極24および上部電極26をむき出しにして、此処に接続して設けられる。別の例として、引出配線は、圧電フィルムの端部、もしくは外部に突出した領域において、保護フィルムおよび電極層を剥離して、圧電体層20と電極層との間に銅箔テープ等を挿入するようにして、設けられる。さらに別の例として、引出配線は、圧電フィルムの端部、もしくは外部に突出した領域において、圧電フィルムの保護層に貫通孔を設け、貫通孔に銀ペーストなどの導電性ペーストを用いて導通部材を形成し、この導通部材に銅箔テープ等を接続して、設けられる。
ここで、圧電フィルム12の圧電体層20は、好ましい厚さが8~300μmで、非常に薄い。そのため、ショートを防止するためには、引出配線は、圧電フィルムの面方向に異なる位置に設けるのが好ましい。すなわち、引出配線は、圧電フィルムの面方向にオフセットして設けるのが好ましい。
本発明の積層圧電素子においては、圧電フィルム12が積層圧電素子から突出する突出部を設け、この突出部に引出配線を接続するのが好ましい。
例えば、圧電フィルム10Laの折り返しによる屈曲部が、長手方向に沿う積層圧電素子56Aであれば、図13に概念的に示すように、折り返し方向の一方の端部に出島状の突出部60を設け、此処に、引出配線62および引出配線64を接続してもよい。
また、圧電フィルム10Lbの折り返しによる屈曲部が、短手方向に沿う積層圧電素子56Bであれば、図14に概念的に示すように、折り返し方向の一方の端部を延長して突出部60とし、この突出部に、引出配線62および引出配線64を接続してもよい。
さらに、圧電フィルム10Lbの折り返しによる屈曲部が、短手方向に沿う積層圧電素子56Bであれば、図15に概念的に示すように、折り返し方向と直交する方向の端部、すなわち、圧電フィルム10Lbの長手方向の端部に、出島状の突出部60を設け、此処に、引出配線62および引出配線64を接続してもよい。
なお、突出部60は、積層される圧電フィルムのいずれの層に設けてもよいが、圧電効率等の点で、最上層または最下層に設けるのが好ましい。また、突出部60は、圧電フィルムの最上層と最下層、および、最上層と中間の層と最下層など、複数層に設けてもよく、圧電フィルムの全ての層に設けてもよい。突出部60を圧電フィルムの複数層に設ける場合、突出部は、積層圧電素子の短手方向の端部に設けてもよく、あるいは、長手方向の端部に設けてもよく、あるいは、短手方向の端部の突出部と、長手方向の端部の突出部とが、混在してもよい。
ここで、本発明の積層圧電素子においては、圧電フィルムの突出部は、積層圧電素子の長手方向の端部から突出し、かつ、積層圧電素子の長手方向における突出部60の長さが、積層圧電素子の長手方向の長さの10%以上であるのが好ましい。
以下の説明では、積層圧電素子の長手方向における突出部の長さを、単に、『突出部の長さ』ともいう。
なお、突出部60を積層圧電素子の短手方向の端部に設ける場合には、突出部60の短手方向の長さは、積層圧電素子の短手方向の長さの50%以上であるのが好ましい。
図16の積層圧電素子56Bの概念図を用いて、具体的に説明する。
この積層圧電素子56Bは、圧電フィルム10Lbの折り返しによる屈曲部が、積層圧電素子の短手方向に沿う積層圧電素子である(図12および図15参照)。従って、積層圧電素子56Bの長手方向は、図16に示すように、圧電フィルム10Laの折り返し方向と直交する方向である。すなわち、積層圧電素子56Bの長手方向は、圧電フィルム10Lbの長手方向に一致する。
図16に示すように、積層圧電素子56Bの長手方向の長さをLとする。本発明においては、突出部60は、長さLaが長さLの10%以上すなわち『La≧L/10』となるようにするのが好ましい。
これにより、引出配線から積層圧電素子に駆動電流を流す経路における電流密度を下げられるので、電圧降下を少なくして、圧電特性を向上できる。例えば、上述した電気音響変換器であれば、音圧を向上できる。
突出部60の長さLaは、積層圧電素子の長手方向の長さLの50%以上であるのがより好ましく、70%以上であるのがさらに好ましく、90%以上であるのが特に好ましく、積層圧電素子56Bの平面形状の長手方向の長さと同じ、または、それ以上であるのが最も好ましい。
従って、図11および図13に示す、圧電フィルム10Laの折り返しによる屈曲部が、長手方向に沿う積層圧電素子56Aの場合には、図14に示す積層圧電素子56Bと同様、折り返し方向の一方の端部を延長して突出部とし、この突出部に、引出配線62および引出配線64を接続するのが好ましい。この場合には、突出部の長さLaは、積層圧電素子の長手方向の長さLと一致する。すなわち、この場合には、突出部は、積層圧電素子の長手方向の全域となる。
以上、本発明の圧電フィルム、積層圧電素子および電気音響変換器について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明についてより詳細に説明する。
[実施例1]
上述した図2~図6に示す方法によって、図2に示すような圧電フィルムを作製した。
まず、下記の組成比で、マトリックス材料をメチルエチルケトン(MEK)に溶解した。その後、この溶液に、PZT粒子を下記の組成比で添加して、プロペラミキサー(回転数2000rpm)で分散させて、圧電体層を形成するための塗料を調製した。
・PZT粒子・・・・・・・・・・・1000質量部
・マトリックス材料・・・・・・・・・100質量部
・MEK・・・・・・・・・・・・・・600質量部
なお、PZT粒子は、市販のPZT原料粉を1000~1200℃で焼結した後、これを平均粒径3.5μmになるように解砕および分級処理したものを用いた。
また、マトリックス材料は、シアノエチル化PVA(信越化学工業社製、CR-V)およびクロロプレンゴム(デンカ社製)を用いた。マトリックス材料中における両者の量比は、シアノエチル化PVAが40質量%、クロロプレンゴムが60質量%とした。
一方、幅が23cm、厚さ4μmの長尺なPETフィルムに、厚さ0.1μmの銅薄膜を真空蒸着してなる、図2に示すようなシート状物を用意した。すなわち、本例においては、上部電極および下部電極は、厚さ0.1mの銅蒸着薄膜であり、上部保護層および下部保護層は厚さ4μmのPETフィルムとなる。
なお、プロセス中、良好なハンドリングを得るために、PETフィルムには厚さ50μmのセパレータ(仮支持体PET)付きのものを用い、薄膜電極および保護層の熱圧着後に、各保護層のセパレータを取り除いた。
このシート状物の下部電極(銅蒸着薄膜)の上に、スライドコータを用いて、先に調製した圧電体層を形成するための塗料を塗布した。塗料は、乾燥後の塗膜の膜厚が40μmになるように、塗布した。
次いで、シート状物の上に塗料を塗布した物を、120℃のオーブンで加熱乾燥することでMEKを蒸発させた。これにより、図3に示すような、PET製の下部保護層の上に銅製の下部電極を有し、その上に、厚さが40μmの圧電体層を形成してなる積層体を作製した。
この積層体の圧電体層を、上述した図4および図5に示すコロナポーリングによって、厚さ方向に分極処理した。なお、分極処理は、圧電体層の温度を100℃として、下部電極とコロナ電極との間に6kVの直流電圧を印加してコロナ放電を生じさせて行った。
分極処理を行った積層体の上に、図6に示すように、PETフィルムに銅薄膜を真空蒸着してなる同じシート状物を積層した。
次いで、積層体とシート状物との積層体を、ラミネータ装置を用いて120℃で熱圧着することで、圧電体層と上部電極および下部電極とを接着して、圧電体層を上部電極と下部電極とで挟持し、この積層体を、上部保護層と下部保護層とで挟持した。
これにより、図1に示すような圧電フィルムを作製した。
作製した圧電フィルムについて、1×4cmの短冊状の試験片を作製して動的粘弾性測定を行い、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)を測定した。
測定は、動的粘弾性測定機(SIIナノテクノロジー社製、DMS6100粘弾性スペクトロメーター)を用いて行った。
測定条件は、測定温度範囲は-100~100℃とし、昇温速度は2℃/分(窒素雰囲気中)とした。測定周波数は0.1Hz、0.2Hz、0.5Hz、1Hz、2Hz、5Hz、10Hzおよび20Hzとした。測定モードは引っ張り測定とした。さらに、チャック間距離は20mmとした。
その結果、圧電フィルムは、周波数1Hzでの損失正接が、-80℃以上0℃未満以下の温度範囲において、-30℃に0.25の極大値(最大値)を有していた。
また、圧電フィルムの周波数1Hz、0℃における損失正接は、0.06であった。
[比較例1]
圧電体層を形成するための塗料において、マトリックス材料における材料の量比を、シアノエチル化PVAが70質量%、クロロプレンゴムが30質量%とした。この塗料を用いた以外は、実施例1と同様に、圧電フィルムを作製した。
作製した圧電フィルムについて、実施例1と同様に、周波数1Hzにおける損失正接を測定した。
その結果、圧電フィルムは、周波数1Hzでの損失正接が、-80℃以上0℃未満の温度範囲において、-15℃に0.09の極大値(最大値)を有していた。また、圧電フィルムの周波数1Hz、0℃における損失正接は、0.08であった。
[比較例2]
圧電体層を形成するための塗料において、マトリックス材料を、クロロプレンゴム100質量%とした。この塗料を用いた以外は、実施例1と同様に、圧電フィルムを作製した。
作製した圧電フィルムについて、実施例1と同様に周波数1Hzにおける損失正接を測定した。
その結果、圧電フィルムは、周波数1Hzでの損失正接が、-80℃以上0℃未満の温度範囲において、-45℃に0.4の極大値(最大値)を有していた。
また、圧電フィルムの周波数1Hz、0℃における損失正接は、0.03であった。
作製した圧電フィルムについて、以下のようにして、可撓性の評価を行った。
鉄製の丸棒を用い、振動板の中央部が曲率半径5cmになるように180°折り返す屈曲試験を、10000回、行った。なお、可撓性の評価は、低温(-30℃)、および、常温(25℃)の、2つの温度環境で行った。
10000回の屈曲試験を行っても、いずれの界面からも剥離を生じない場合をA;
1000~9999回の屈曲試験の間に、何れかの界面から剥離を生じた場合をB;
999回までの屈曲試験の間に、何れかの界面から剥離を生じた場合をC;
と評価した。
結果を下記の表に示す。
Figure 0007137689000002
表1に示すように、周波数1Hzにおける損失正接が、-80℃以上0℃未満の温度範囲に0.1以上となる極大値を有し、かつ、0℃における値が0.05以上である本発明の圧電フィルムは、低温域において優れた可撓性を有し、また、常温域においても、良好な可撓性を有する。
これに対して、周波数1Hzにおける損失正接が、0℃における値が0.05以上であり、かつ、-80℃以上0℃未満の温度範囲に極大値を有するものの、その極大値が0.1未満である比較例1の圧電フィルムは、常温域では優れた可撓性を有するが、低温域での可撓性は、本発明に比して低い。
さらに、周波数1Hzにおける損失正接が、-80℃以上0℃未満の温度範囲に0.1以上となる極大値を有するものの、0℃における値が0.05未満である比較例1の圧電フィルムは、低温域において優れた可撓性を有するが、常温域における可撓性が低い。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
スピーカーおよびマイクロフォン等の音響機器、ならびに、感圧センサなど、各種の用途に好適に利用可能である。
10,10L,10La,10Lb 圧電フィルム
10a、10c シート状物
10b 積層体
12 振動板
14,56,56A,56B,61 積層圧電素子
16,19 貼着層
20 圧電体層
24 下部電極
26 上部電極
28 下部保護層
30 上部保護層
34 マトリックス
36 圧電体粒子
40 コロナ電極
42 直流電源
43 ケース
45 圧電スピーカー
46 粘弾性支持体
48 枠体
50 電気音響変換器
58 芯棒
60 突出部
62,64 引出配線
PS 電源

Claims (13)

  1. 高分子材料を含むマトリックス中に圧電体粒子を分散してなる高分子複合圧電体と、前記高分子複合圧電体の両面に形成された電極層とを有し、
    動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接が、-80℃以上0℃未満の温度範囲に0.1以上となる極大値が存在し、かつ、0℃での値が0.05以上であることを特徴とする圧電フィルム。
  2. 前記電極層の表面に設けられた保護層を有する、請求項1に記載の圧電フィルム。
  3. 厚さ方向に分極されたものである、請求項1または2に記載の圧電フィルム。
  4. 圧電特性に面内異方性を有さない、請求項1~3のいずれか1項に記載の圧電フィルム。
  5. 前記電極層と外部の電源とを接続するための引き出し線を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の圧電フィルム。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の圧電フィルムを、複数層、積層してなる積層圧電素子。
  7. 前記圧電フィルムが、厚さ方向に分極されたものであり、かつ、隣接する前記圧電フィルムの分極方向が逆である、請求項6に記載の積層圧電素子。
  8. 前記圧電フィルムを、1回以上、折り返すことにより、前記圧電フィルムを、複数層、積層したものである、請求項6または7に記載の積層圧電素子。
  9. 隣接する前記圧電フィルムを貼着する貼着層を有する、請求項6~8のいずれか1項に記載の積層圧電素子。
  10. 振動板と、請求項1~5のいずれか1項に記載の圧電フィルム、または、請求項6~9のいずれか1項に記載の積層圧電素子とを有する、電気音響変換器。
  11. 前記圧電フィルムまたは前記積層圧電素子の厚さと、動的粘弾性測定による周波数1Hz、25℃での貯蔵弾性率との積が、前記振動板の厚さと、ヤング率との積の、0.1~3倍である、請求項10に記載の電気音響変換器。
  12. 前記圧電フィルムまたは前記積層圧電素子の厚さと、動的粘弾性測定から得られたマスターカーブにおける周波数1kHz、25℃での貯蔵弾性率との積が、前記振動板の厚さと、ヤング率との積の、0.3~10倍である、請求項10または11に記載の電気音響変換器。
  13. 前記振動板と、前記圧電フィルムまたは前記積層圧電素子とを貼着する貼着層を有する、請求項10~12のいずれか1項に記載の電気音響変換器。


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