JP7136417B1 - 感染症の感染リスク評価方法およびこれを用いた感染リスク低減方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】換気に加えて空気循環や空気清浄機の効果を評価することができ、特定の店舗における感染症の感染リスクを簡便に、かつ客観的に評価することができる方法を提供する。【解決手段】施設屋内の集合スペースにおける感染症の感染リスクを評価する感染リスク評価方法であって、感染リスクが、病原体を含むエアロゾルに起因するエアロゾル感染のリスクであり、集合スペースに粒子径0.1μm以上10μm以下の液体微粒子を放出し、液体微粒子を放出した後、液体微粒子の量の減少を経時的に追跡し、液体微粒子の量が十分減少するまでに要した時間である回復時間t1に基づいて、集合スペースの微粒子除去能力を評価し、微粒子除去能力と、集合スペースの必要換気能力と、を対比し、微粒子除去能力が、必要換気能力と同等以上である場合に、集合スペースのエアロゾル感染リスクが低いと評価するもの。【選択図】なし

Description

本発明は、例えば飲食店の客席スペース等、施設屋内の集合スペースにおける感染症の感染リスクを評価する方法に関し、特にウイルス等の病原体を含むエアロゾルに起因するエアロゾル感染のリスクを評価する方法に関するものである。
2019年から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界各地で猛威を奮っている。新型コロナウイルス感染症の主たる感染原因の一つに空気感染がある。従って、いわゆる三密(密閉・密集・密接)を避け、また、三密を解消することで、空気感染やクラスター発生のリスクを低減することができ、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策として有効であると考えられている。
政府や関係省庁、地方自治体等は、三密を避けるという意味で、飲食店や商業施設、娯楽施設等、人が集まる施設に出入りしないことを推奨している。特に、飲食店は狭い空間で、長時間に渡り、マスクを外した状態で飲食や会話が行われる可能性が高く、空気感染のリスクが高い。このため、飲食店は営業時間の短縮や休業を迫られ、来店者数も激減し、厳しい経営を迫られている。しかし、飲食店が十分な三密対策を行い、安心安全に飲食店を利用可能であることを客観的に証明することができれば、このような状況を打破するための一つの方法となり得る。
三密対策の一つとしては、店舗内の換気を十分に行い、店舗内からウイルスを除去することが挙げられる。従って、従来は、特定の店舗において店舗内からウイルスを除去する能力については店舗の換気能力を目安として判断していた。
店舗等の密閉空間の換気能力を測定する方法としては、例えば、
(1)測定対象となる空間に通ずる換気システムの排気口に風力計やファンネルを設置し、その排気口における風量を測定し、当該空間の換気量を算出する方法;
(2)測定対象となる空間を換気状態とし、人間が排出するCOガスの濃度をセンサー等で検出し、当該空間の換気量を算出する方法;
(3)測定対象となる空間にトレーサーガスを充満させた後、当該空間の換気を行い、当該空間に設置した吸着材にトレーサーガスを吸着させ、吸着されたトレーサーガスの量を定量分析し、そのトレーサーガスの量から当該空間の換気量を算出する方法(特許文献1又は2);
(4)測定対象となる空間にミスト粒子を充満させた後、当該空間の換気を行い、当該空間に設置した撮影手段により撮影した画像データから当該空間の換気量を算出する方法(特許文献3);
等が知られている。
特開2003-42491 特開2007-10363 特開2006-250779
ところで、換気は店舗内のウイルスで汚染された空気を店舗外に排出し、新しい空気を取り込むという方法であり、感染リスクを低減する方法の一つにすぎない。例えば、サーキュレータやエアコンにより店舗内の空気を循環させる;空気清浄機を使用する;等の方法によってもウイルスの濃度を低減し、店舗における感染リスクを抑制することができる。しかし、従来技術のような店舗の換気能力を目安に感染リスクを評価する方法では、空気循環や空気清浄機の効果を評価することができないという課題があった。
具体的には、(1)風力計やファンネルを用いる方法は、店舗の換気システム自体の能力を評価するには適しているものの、
窓開けによる換気能力やサーキュレータ、エアコン、空気清浄機等による浄化能力については評価することができない;
個々の排気口に風力計やファンネルを設置する手間が煩瑣である;
換気システムの能力を評価しても、いわゆる「ショートサーキット」による換気効率の低下を評価することができない;
という課題があった。「ショートサーキット」とは、給気口と排気口の位置が近接していることにより、吸気したフレッシュな空気が室内に行き渡らないまま排気されてしまったり、逆に排気したはずの汚染された空気が給気口から再度取り込まれてしまうことで、換気効率が低下する現象のことである。「ショートサーキット」が形成されると、風力計やファンネルで評価した値ほどの換気効率は得られておらず、ウイルス濃度が想定より低減しないことになる。
また、(2)COガスの濃度をセンサー等で検出する方法、(3)トレーサーガスを用いる方法は、
気体であるCOガスやトレーサーガスの拡散挙動がエアロゾル状のウイルスの拡散挙動とは異なり、エアロゾル感染のリスクを評価するのには適していない;
空気清浄機等の吸着・集塵による浄化能力については評価することができない;
という課題があった。特に、COガスの濃度を検出する方法は、客席でカセットコンロを使用する等、人の呼吸以外のCOガスが発生する環境では正確な測定ができない;
人間が排出するCO2ガスの濃度を実測するため、顧客が不在の閉店状態では感染リスクを評価することができず、また、本来の収容人数より少ない顧客が利用している状態ではその空間の感染リスクを低く評価してしまうおそれがある;
という課題もあった。
更に、(4)ミスト粒子を撮影する方法は、
相当量のミスト粒子を発生させなければミスト粒子を画像として撮影することができず、簡便な方法とは言えない;
例えば居酒屋等の間仕切り(パーティション)のある空間では間仕切りによって視野が遮られてしまい、ミスト粒子を撮影することができない;
ミスト粒子を使用すると、火災報知器(例えば、光電式スポット型感知器等)が反応するおそれがあり、警報音が鳴る、防火シャッターや防火扉が閉まる等の誤動作の原因となる;
という課題があった。
以上説明したように、従来技術のような店舗の換気能力を目安に感染リスクを評価する方法では、空気循環や空気清浄機の効果を評価することができず、特定の店舗における感染リスクを簡便に、かつ客観的に評価することができなかった。
より具体的には、集団感染やクラスターの発生を防止するためには、特定のスペースが「換気の悪い密閉空間」であることを簡便に、かつ客観的に評価・判断すること;「換気の悪い密閉空間」を特定し、集団感染やクラスターの発生する可能性が低いスペースを明らかにすること;「換気の悪い密閉空間」について適切な改善措置を施すこと;が重要であるが、従来の技術では特定の店舗における感染リスクを簡便に、かつ客観的に評価することができない点が問題であった。
本発明は、前記のような従来技術が有する課題を解決するものである。すなわち、本発明は、換気に加えて空気循環や空気清浄機の効果を評価することができ、特定の店舗における感染症の感染リスクを簡便に、かつ客観的に評価することができる方法を提供するものである。
本発明者らは、前記従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。そして、客席スペース等の集合スペースに液体微粒子を放出し、前記液体微粒子の数を経時的に測定すること;によって、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、前記課題は以下に示す本発明によって解決される。
[1]感染症の感染リスク評価方法:
本発明は、施設屋内の集合スペースにおける感染症の感染リスクを評価する感染リスク評価方法であって、前記感染リスクが、病原体を含むエアロゾルに起因するエアロゾル感染のリスクであり、前記集合スペースに液体微粒子を放出し、前記液体微粒子を放出した後、前記液体微粒子の量の減少を経時的に追跡し、前記液体微粒子の量が十分減少するまでに要した時間である回復時間t1に基づいて、前記集合スペースの微粒子除去能力を評価し、前記微粒子除去能力と、前記集合スペースの必要換気能力と、を対比し、前記微粒子除去能力が、前記必要換気能力と同等以上である場合に、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが低いと評価するもの;である。
本発明の感染リスク評価方法は、
前記液体微粒子のうち、粒子径0.3μm以上10μm以下の液体微粒子の量の減少を経時的に追跡するもの;
前記液体微粒子の量の減少を微粒子計測器により追跡するもの;
前記微粒子除去能力を下記式(1)で算出される微粒子除去量Q1により評価し、前記必要換気量を下記式(2)で算出される人必要換気量Q2により規定し、前記微粒子除去量Q1と、前記人必要換気量Q2と、を対比し、前記微粒子除去量Q1が、前記人必要換気量Q2と同等以上である場合に、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが低いと評価するもの;
式(1): 微粒子除去量Q1[m/時]=集合スペースの容積V[m]*60[分]/回復時間t1[分]
式(2): 人必要換気量Q2[m/時]=顧客一人あたりの必要換気量[m/時/人]*集合スペースの収容定員数n[人]
前記微粒子除去能力を下記式(3)で算出される微粒子除去回数N1または回復時間t1により評価し、前記必要換気量を衛生試験所指針に準拠して定められる前記集合スペースの必要換気回数N2または下記式(4)で算出される必要換気時間t2により規定し、前記微粒子除去回数N1と前記必要換気回数N2とを、または前記回復時間t1と前記必要換気時間t2とを対比し、前記微粒子除去回数N1が前記必要換気回数N2と同等以上である場合、または前記回復時間t1が前記必要換気時間t2と同等以上である場合に、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが低いと評価するもの;
式(3): 微粒子除去回数N1[回/時]=60[分]/回復時間t1[分]
式(4): 必要換気時間t2[分]=60[分]/必要換気回数N2[回/時]
前記微粒子除去能力を下記式(1)で算出される微粒子除去量Q1により評価し、前記必要換気量を下記式(5)で算出される面積必要換気量Q3により規定し、前記微粒子除去量Q1と、前記面積必要換気量Q3と、を対比し、前記微粒子除去量Q1が、前記面積必要換気量Q3と同等以上である場合に、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが低いと評価するもの;
式(1): 微粒子除去量Q1[m/時]=集合スペースの容積V[m]*60[分]/回復時間t1[分]
式(5): 面積必要換気量Q3[m/時]=床面積あたり必要換気量[m/m/時]*集合スペースの床面積[m
但し、床面積あたり必要換気量は空調・衛生工学会規格(HASS 102 1972)に定められた値とする。
前記集合スペースに、エチレングリコールと水を含有する液体微粒子を放出するもの;
前記集合スペースに、前記液体微粒子を初期粒子数の少なくとも50mg/m以上放出するもの;
前記集合スペースに前記液体微粒子を放出した後、前記液体微粒子の粒子数の最大値を基準にその100分の1の数に減少するまでの時間または60分のいずれか短い方の時間内で前記液体微粒子の数を経時的に追跡するもの;
前記感染リスクが、新型コロナウイルスを含むエアロゾルに起因するエアロゾル感染のリスクであり、前記集合スペースにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のエアロゾル感染リスクを評価するもの;
前記集合スペースが、専ら従業員が利用するスペースではなく、顧客または顧客と従業員が立ち入り可能である顧客利用スペースであるもの;が好ましい。
[2]感染リスク低減方法:
本発明は、施設屋内の集合スペースにおける感染症の感染リスクを低減する感染リスク低減方法であって、前記[1]に記載の感染リスク評価方法により前記集合スペースのエアロゾル感染リスクを評価し、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが高いと評価された場合に、前記微粒子除去能力が前記必要換気能力と同等以上となるまで改善措置を施すもの;である。
本発明の感染リスク低減方法は、前記改善措置として、窓、扉または通気口の開放による換気;換気扇、全熱交換器、エアコンディショナー、サーキュレータまたは空気清浄機の運転;遮蔽板または隔壁の設置;収容定員の削減;からなる群より選択された少なくとも1つの措置を施すもの;が好ましい。
本発明の感染リスク評価方法は、換気に加えて空気循環や空気清浄機の効果を評価することができ、特定の店舗における感染症の感染リスクを簡便に、かつ客観的に評価することができる。
実施例1乃至27で使用した実験室を模式的に示す平面図である。 図1に示す実験室を模式的に示す側面図である。 実施例1乃至6の結果を示すグラフである。 実施例7乃至12の結果を示すグラフである。 実施例13乃至22の結果を示すグラフである。 実施例23乃至25の結果を示すグラフである。 実施例26および27の結果を示すグラフである。 実施例28乃至32で使用したホールを模式的に示す平面図である。 図8に示すホールの空調機器の配置を模式的に示す平面図である。 実施例28乃至32の結果を示すグラフである。 実施例33乃至34で使用した半個室を模式的に示す平面図である。 図11に示す半個室の壁を模式的に示す正面図である。 図11に示す半個室の別の壁を模式的に示す正面図である。 図11に示す半個室の更に別の壁を模式的に示す正面図である。 実施例33乃至37の結果を示すグラフである。 実施例35乃至37で使用した半個室を模式的に示す平面図である。 図16に示す半個室の空調機器の配置を模式的に示す平面図である。 図16に示す半個室の壁を模式的に示す正面図である。 図11および図16に示す半個室を含む店舗の空調機器の配置を模式的に示す平面図である。
以下、発明を実施するための形態について、さらに具体的に説明する。但し、本発明は特許請求の範囲に記載された要件を満たす全ての形態を包含し、以下に示された形態のみに限定されるものではない。
[1]本発明の特徴:
本発明の感染リスク評価方法は、
(1)液体微粒子を用いる点;
(2)前記液体微粒子の量が十分減少するまでに要した時間である回復時間t1に基づいて、前記集合スペースの微粒子除去能力を評価する点;
(3)前記微粒子除去能力と、前記集合スペースの必要換気能力と、を対比する点:
に特徴がある。
このような方法によれば、液体微粒子の挙動によりエアロゾル中の飛沫核の挙動を模擬することができ、施設の換気能力のみでは評価し難い、当該顧客スペースの実質的な飛沫核除去能力を簡易的に評価することができる。また、トレーサーガスを使用する方法と比較して、飛沫核を模した液体微粒子を目視することができ、実際の飛沫核の流動・拡散の状況を容易に把握することができる。
[2]感染リスク評価方法:
以下、本発明の感染症の感染リスク評価方法について説明する。
本発明の感染リスク評価方法は、施設屋内の集合スペースにおける感染症の感染リスクを評価するものである。
[2-1]定義等:
ここで、「施設」とは、複数の顧客が集まり、何らかの目的で一定時間滞在する建造物を指す。「施設」としては、例えば食堂、レストラン、居酒屋、カフェ等の飲食店;クラブ、バー、カラオケボックス等の遊興施設;ボーリング場、スポーツクラブ、パチンコ店、ゲームセンター等の運動・遊戯施設;デパート、スーパーマーケット、ショッピングセンター等の商業施設;劇場、映画館等の観劇施設;等を挙げることができる。
中でも、本発明の感染リスク評価方法は飲食店、遊興施設の感染リスクの評価に好適に用いることができる。飲食施設や遊興施設は、(1)狭い空間で、長時間に渡り、マスクを外した状態で飲食や会話が行われる可能性が高く、感染リスクが高いこと;(2)新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言やまん延防止等充填措置において営業時間短縮等の規制対象となっていること;等の理由から施設における感染リスクを的確に評価し、顧客に対して安全性を保証する意義が大きいからである。
また、「屋内」とは、施設において天井や壁で仕切られ、屋外空間とは区画された内部空間を意味する。「屋内」としたのは、施設の屋外空間を排除する趣旨である。屋外空間であれば空気の流通やエアロゾルの拡散・希釈が行われ、感染リスクは比較的低いからである。
「集合スペース」とは、施設の屋内空間のうち複数人が利用・滞在可能なスペースを意味し、後述する「顧客利用スペース」も含む。「顧客利用スペース」以外の「集合スペース」としては、例えば、会議室や応接室等の対面接客を行う可能性のあるスペース等が挙げられる。また、「顧客利用スペース」とは、施設の屋内空間のうち顧客または顧客と従業員が立ち入り可能なスペースを意味し、専ら従業員が利用するスペースは含まない。例えば、飲食店のフロアスペースや個室は顧客利用スペースに該当するが、厨房スペースは顧客利用スペースには該当しない。
「感染リスク」とは、感染症に感染する危険性を意味し、具体的には病原体を含むエアロゾルに起因するエアロゾル感染のリスクを意味する。
「感染症」とは、病原体が体内に侵入することで引き起こされる疾患を意味し、「病原体」とは、病原性の(感染症の原因となる)微生物を意味する。「病原体」としては、例えばウイルス、細菌、真菌、寄生虫等が挙げられる。
「エアロゾル」とは、分散媒となる空気中に多数の微粒子が分散された状態で浮かんでいるゾルを意味する。「エアロゾル感染」とは、病原体を含む粒子径10μm以下の飛沫核(マイクロ飛沫)を媒介とした感染を意味する。
「エアロゾル感染」は「飛沫感染」とは異なる概念である。「飛沫感染」は感染者や保菌者の咳やくしゃみによって病原体と水分を含む飛沫粒子が放出され、その飛沫粒子を媒介として起こる感染である。飛沫粒子は粒子径が比較的大きく(粒子径10μm超)、重い粒子であるため、病原体は概ね1mないし2m程度の範囲にしか飛散しない。
これに対し、「エアロゾル感染」は前記飛沫粒子から水分が蒸発して生ずる飛沫核を媒介として起こる感染である。飛沫核は粒子径が比較的小さく、軽い粒子であるため、長時間に渡って空気中を漂い、広い範囲に拡散されていき、クラスターが発生する原因になると言われている。
本発明の感染リスク評価方法は、前記感染リスクが、新型コロナウイルスを含むエアロゾルに起因するエアロゾル感染のリスクであり、前記集合スペースにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のエアロゾル感染リスクを評価する方法として好適に用いることができる。新型コロナウイルス感染症のまん延はエアロゾル感染によるクラスターの発生が大きな要因の一つと言われているからである。
[2-2]評価方法:
本発明の感染リスク評価方法は、(1)集合スペースへの液体微粒子の放出、(2)液体微粒子の量の追跡、(3)集合スペースの微粒子除去能力の評価、(4)集合スペースのエアロゾル感染リスクの評価;の4工程からなる。
(1)集合スペースへの液体微粒子の放出:
まず、前記集合スペースに液体微粒子を放出する。測定対象となる集合スペース(例えば、居酒屋の個室等)を選定し、その集合スペースに所定の粒子径の液体微粒子を放出する。放出する液体微粒子の粒子径は10μm以下とすることが好ましい。エアロゾル感染を媒介する飛沫核(マイクロ飛沫)と同程度の粒子径を有する液体微粒子を用い、前記飛沫核の挙動を把握するためである。なお、本明細書においては、「粒子径」はレーザ光散乱方式で測定した粒子径を示している。
液体微粒子の構成成分は特に限定されない。例えば、エチレングリコールと水を含有する液体微粒子を好適に用いることができる。液体微粒子の原液となる薬液としては、例えば、商品名「FLG5 ヘビータイプ」(ANTARI社製)等を好適に用いることができる。
また、液体微粒子の発生方法も特に限定されない。例えば、液体微粒子の原液となる薬液をヒーターで加熱し、気化させる方法等を用いることができる。前記方法を実施することが可能な装置としては、市販のスモークマシン(例えば、舞台演出用のスモークマシン等)を挙げることができる。スモークマシンの種類も特に限定されない。例えば、商品名「Z800II フォグマシン」(ANTARI社製)等を好適に用いることができる。
液体微粒子を放出する際には、前記集合スペースに、前記液体微粒子を少なくとも50mg/m以上放出することが好ましい。少なくとも50mg/m以上放出し、液体微粒子の濃度を十分高めることにより、定常状態で存在する微粒子の数の影響を排除することができ、粒子数の挙動をより正確に把握することができる。
(2)液体微粒子の量の追跡:
前記液体微粒子を放出した後、前記液体微粒子の量の減少を経時的に追跡する。液体微粒子の量の追跡手段は特に限定されない。例えば、重量法(フィルター秤量法)に基づき微粒子濃度を測定する濃度計、レーザ光散乱方式により算出した相対濃度から微粒子の数を計測する微粒子計測器(パーティクルカウンター)等の測定機器を利用することができる。中でも、液体微粒子の量の減少を前記微粒子計測器(パーティクルカウンター)により追跡することが好ましい。
前記微粒子計測器で微粒子の数を計測する方法は、前記濃度計で測定する方法と比較して、粒子径(粒子の大きさ)の影響を受けずに粒子数をカウントすることができ、空気中の微粒子数の変化がわかりやすい点で好ましい。一方、前記濃度計で測定する方法は、粒子径の大きい粒子ほど粒子数が少なく表示される場合がある。前記微粒子計測器としては、例えば、商品名「DT-9880」(CEM社製)等を好適に用いることができる。
液体微粒子の量を追跡する際には、前記液体微粒子のうち、粒子径0.3μm以上10μm以下の液体微粒子の量の減少を経時的に追跡することが好ましい。エアロゾル感染を媒介する飛沫核(マイクロ飛沫)と同程度の粒子径を有する液体微粒子の挙動を追跡し、前記飛沫核の挙動を把握するためである。但し、粒子径が小さすぎるとその検出が困難となるおそれがあり、逆に粒子径が大きすぎれば粒子が沈降しやすくなり、環境条件や測定条件によっては、前記飛沫核の挙動を正確に模擬することができなくなるおそれがある。従って、追跡する液体微粒子の粒子径は0.3μm以上2.5μm以下とすることが更に好ましく、0.3μm以上0.5μm以下とすることが特に好ましい。
なお、液体微粒子の量を追跡する際には定常状態で存在する微粒子の影響を排除するべく、前記液体微粒子の放出前に粒子量を測定し、その量を差し引いた形で粒子量を評価することが好ましい。例えば、前記微粒子計測器により粒子数を測定する場合には、前記液体微粒子を放出する前に前記集合スペースで実測した微粒子の数(初期粒子数)をブランク値として実測した粒子数から差し引いた形で粒子数を評価することが好ましい。
(3)集合スペースの微粒子除去能力の評価:
前記液体微粒子の量が十分減少するまでに要した時間である回復時間t1に基づいて、前記集合スペースの微粒子除去能力を評価する。
「微粒子除去能力」とは、測定対象となる集合スペースから微粒子を取り除く能力を意味する。この「微粒子除去能力」は「換気能力」とは異なる概念である。「換気能力」は換気扇等、換気システムを通じて集合スペース内から外部空間へ微粒子が除去される能力を意味する。
これに対し、「微粒子除去能力」は換気システムによる除去の他、空気清浄機による除去、換気システム以外による除去(窓開け等)、エアコンディショナー等の空気撹拌による除去等の能力も含む。
「十分減少」とは、放出された液体微粒子の量が徐々に減少し、初期状態と同一視できる程度の十分な量まで減少した状態を意味する。
「十分減少するまでに要した時間」については、前記集合スペースに前記液体微粒子を放出した後、前記液体微粒子の粒子数の最大値を基準にその100分の1の数に減少するまでの時間とすることが好ましい。
100分の1の数としたのは、空気中に放出されたウイルス数が最大値の100分の1以下まで希釈されれば感染のおそれがなくなるとする論説を根拠としている(京都大学 ウイルス・再生医科学研究所 ウイルス共進化分野 准教授 宮沢孝幸氏が提唱)。仮にウイルスが存在したとしても一定量以上が体内に取り込まれなければ感染は起こらないからである。
また、10分の1の数とした場合、液体微粒子の粒子径等によっては回復時間t1がばらつくおそれがある。従って、測定方法の如何を問わず、回復時間t1(ひいては微粒子除去能力)を正確に求めるためには前記液体微粒子の粒子数の最大値を基準にその100分の1の数に減少するまでの時間とすることが好ましい。
なお、前記液体微粒子の量が60分以内に十分減少しない場合には、追跡を60分で打ち切ってもよい。60分で十分減少しない場合には、微粒子除去能力が不十分であることが明らかであり、それ以上測定する意味がないからである。
(4)集合スペースのエアロゾル感染リスクの評価:
エアロゾル感染のリスクについては、前記微粒子除去能力と、前記集合スペースの必要換気能力と、を対比し、前記微粒子除去能力が、前記必要換気能力と同等以上である場合に、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが低いと評価する。
評価の具体的な方法としては、以下の方法のいずれかを用いることが好ましい。
(4-1)微粒子除去量Q1と人必要換気量Q2とを対比する方法:
第一の方法は、微粒子除去量Q1と、人必要換気量Q2と、を対比し、前記微粒子除去量Q1が、前記人必要換気量Q2と同等以上である場合に、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが低いと評価するものである。
第一の方法では、前記微粒子除去能力を下記式(1)で算出される微粒子除去量Q1により評価する。微粒子除去量Q1は、測定対象となる集合スペースが1時間あたりに除去することができる微粒子の量を[m]単位で示したものである。回復時間t1は当該集合スペース内に充満させた微粒子を全て排出するまでに要する時間とみなすことができるから、微粒子除去量Q1は、集合スペースの容積Vと回復時間t1とから算出することができる。

式(1): 微粒子除去量Q1[m/時]=集合スペースの容積V[m]*60[分]/回復時間t1[分]
また、第一の方法では、前記必要換気量を下記式(2)で算出される人必要換気量Q2により規定する。人必要換気量Q2は、測定対象となる集合スペースがその収容定員数に応じて必要とされる換気量であり、顧客一人あたりの必要換気量と当該集合スペースの収容定員数nとから算出することができる。

式(2): 人必要換気量Q2[m/時]=顧客一人あたりの必要換気量[m/時/人]*集合スペースの収容定員数n[人]
第一の方法は、他の方法と比較して、集合スペースの容積やその収容定員数などの個別の事情を考慮し、正確に感染リスクを評価することができるという利点がある。換気等の方策によっても十分な微粒子除去量を確保できず、収容定員数nを減ずるという施策を行う場合があるが、そのような収容定員の要素も第一の方法によれば評価することができる。
顧客一人あたりの必要換気量としては、関係法令により定められた必要換気量の値の中から適宜採用することができる。例えば、20[m/時](建築基準法施行令第二十条の二に基づく値)、30[m/時](建築物における衛生的環境の確保に関する法律の環境衛生基準に基づいて、厚生労働省がコロナ対策の観点から必要と示している値)等を挙げることができる。これら法令に基づく基準は環境衛生の専門家が感染症予防の観点から検討し、定めた値であり信用に足る値である。
以下、参考までに、法令(建築基準法施行令第二十条の二)に基づく算出方法の例を示す。

有効換気量(本書にいう「必要換気量」)は、次の式によつて計算した数値以上とすること。
(式): V=20Af/N
(この式において、V、Af及びNは、それぞれ次の数値を表すものとする。
V: 有効換気量(単位:一時間につき立方メートル)
Af: 居室の床面積(特殊建築物の居室以外の居室が換気上有効な窓その他の開口部を有する場合においては、当該開口部の換気上有効な面積に二十を乗じて得た面積を当該居室の床面積から減じた面積)(単位:平方メートル)
N: 実況に応じた一人当たりの占有面積(特殊建築物の居室にあつては、三を超えるときは三と、その他の居室にあつては、十を超えるときは十とする。)(単位: 平方メートル))
(4-2)微粒子除去回数N1と必要換気回数N2とを対比する方法:
第二の方法は、前記微粒子除去回数N1と前記必要換気回数N2とを対比し、前記微粒子除去回数N1が前記必要換気回数N2と同等以上である場合に、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが低いと評価するものである。
第二の方法では、前記微粒子除去能力を下記式(3)で算出される微粒子除去回数N1により評価する。微粒子除去回数N1は測定対象となる集合スペースに充満させた微粒子を1時間あたりに何回除去することができかを示したものである。回復時間t1は当該集合スペース内に充満させた微粒子を全て排出するまでに要する時間とみなすことができるから、微粒子除去回数N1は回復時間t1とから算出することができる。

式(3): 微粒子除去回数N1[回/時]=60[分]/回復時間t1[分]
また、第二の方法では、前記必要換気量を衛生試験所指針に準拠して定められる前記集合スペースの必要換気回数N2により規定する。必要換気回数N2は、測定対象となる集合スペースの業種業態や利用目的に応じて定められる換気回数であり、当該集合スペースを満たす空気を1時間あたりに何回換気(入れ替え)すべきかを示したものである。例えば、食堂やレストランの場合、必要換気回数は6[回/時]と規定されている。
第二の方法は、他の方法と比較して、集合スペースの容積や収容定員数等が不明確であっても、業種業態や利用目的さえ分かれば簡易的に感染リスクを評価することができる点において好ましい。但し、衛生試験所指針は業種業態や利用目的に基づく平均的な在室密度を基準にしているため、正確な評価を行いたい場合は前記第一の方法で評価を行うことが好ましい。
(4-3)回復時間t1と必要換気時間t2とを対比する方法:
第三の方法は、回復時間t1と必要換気時間t2とを対比し、前記回復時間t1が前記必要換気時間t2と同等以上である場合に、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが低いと評価するものである。
第三の方法では、前記微粒子除去能力を回復時間t1より評価する。また、第三の方法では、前記必要換気量を下記式(4)で算出される必要換気時間t2により評価する。必要換気時間t2は、測定対象となる集合スペースを満たす空気を除去するのに要する最大限の時間を規定したものである。必要換気時間t2は必要換気回数N2から換算することができる。

式(4): 必要換気時間t2[分]=60[分]/必要換気回数N2[回/時]
この方法は、第二の方法と同様に、集合スペースの容積や収容定員数等が不明確であっても、業種業態や利用目的さえ分かれば簡易的に感染リスクを評価することができる点において好ましい。但し、衛生試験所指針は業種業態や利用目的に基づく平均的な在室密度を基準にしているため、正確な評価を行いたい場合は前記第一の方法で評価を行うことが好ましい。
(4-4)微粒子除去量Q1と面積必要換気量Q3とを対比する方法:
第四の方法は、微粒子除去量Q1と、面積必要換気量Q3と、を対比し、前記微粒子除去量Q1が、前記面積必要換気量Q3と同等以上である場合に、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが低いと評価するものである。
第四の方法では、前記微粒子除去能力を下記式(1)で算出される微粒子除去量Q1により評価する。また、第四の方法では、前記必要換気量を下記式(5)で算出される面積必要換気量Q3により規定する。第一の方法で使用した人必要換気量Q2が集合スペースの容積Vに基づいて定められた換気量であったのに対し、面積必要換気量Q3は集合スペースの床面積に基づいて定められる換気量である。

式(1): 微粒子除去量Q1[m/時]=集合スペースの容積V[m]*60[分]/回復時間t1[分]
式(5): 面積必要換気量Q3[m/時]=床面積あたり必要換気量[m/m/時]*集合スペースの床面積[m
面積必要換気量Q3は床面積あたり必要換気量と集合スペースの床面積とから算出することができる。このとき、床面積必要換気量は空調・衛生工学会規格(HASS 102 1972)に定められた値とする。床面積必要換気量は測定対象となる集合スペースの業種業態や利用目的に応じて定められる。例えば、食堂やレストランの場合、床面積必要換気量は「レストラン・喫茶(普通)」で30[m/m/時]、「レストラン・喫茶(高級)」で17.7[m/m/時]と規定されている。
この方法は、他の方法と比較して、集合スペースの容積や収容定員数等が不明確であっても、業種業態や利用目的とスペースの床面積さえ分かれば簡易的に感染リスクを評価することができる点において好ましい。床面積については、例えば、飲食業の営業許可書等に記載されており、事業主が把握している可能性も高い。このため、スペースの容積と比較すると算出の基準となる数値を把握しやすく、評価が容易となる点において好ましい。但し、衛生試験所指針は業種業態や利用目的に基づく平均的な在室密度を基準にしているため、正確な評価を行いたい場合は前記第一の方法で評価を行うことが好ましい。
[3]感染リスク低減方法
本発明の感染リスク低減方法は、施設屋内の集合スペースにおける感染症の感染リスクを低減するものである。
具体的には、本発明の感染リスク評価方法により前記集合スペースのエアロゾル感染リスクを評価し、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが高いと評価された場合に、前記微粒子除去能力が前記必要換気能力と同等以上となるまで改善措置を施すものである。
本発明の感染リスク評価方法は飛沫核等の微粒子の除去効果について、換気システムによる除去の他、空気清浄機による除去、換気システム以外による除去(窓開け等)、エアコンディショナー等の空気撹拌による除去等の能力も含めて評価をすることができる。従って、換気システムその他の改善措置について評価を行い、当該改善措置が有効であるか否かを判断し、基準を満たしていない場合には更に改善を行うことが可能となる。
前記改善措置の具体的な方法としては、換気扇等、換気システムの能力向上の他、窓、扉または通気口の開放による換気;エアコンディショナー、サーキュレータまたは空気清浄機の運転;遮蔽板または隔壁の設置;収容定員の削減;からなる群より選択された少なくとも1つの措置を施すものが挙げられる。これらの改善措置は、何らかの事情により換気システムの増強を行えない施設における感染リスクの低減に好適に用いることができる。
本発明の感染リスク低減方法は、HACCP(危害分析重要管理点)の考え方に基づく評価方法である。HACCPは、食品の安全性を確保するために開発された食品の衛生管理の方式である食品衛生の技術である。
新型コロナウイルス感染症においては、食品が原因で発生する食中毒ではないが、製造環境の衛生管理、従業員の衛生管理、食品取扱者の教育・訓練、記録の必要性など、HACCPによる食品衛生管理を実施する上で整備しておくべき食品製造の衛生管理プログラムである一般的衛生管理プログラムが必要となる。一般的衛生管理プログラムを、HACCPの考え方に基づいて徹底することが、HACCPの考え方に基づく環境衛生管理の考え方である。HACCPは日本でも法制化され(改正食品衛生法<2018年6月>)、飲食店を含む全ての食品関連事業者に導入が求められている。
従来、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策としては、新型コロナウイルス感染症の感染者をPCR検査または抗原検査で発見し、感染者の行動履歴から施設を特定し(積極的疫学調査)、クラスターが発生した施設と「類似の施設」を規制するという方法で行われてきた。しかし、「類似の施設」を規制する科学的根拠は乏しく、効果の実効性が薄いばかりか、社会を混乱させ、経済活動を過度に萎縮させてしまう要因にもなっている。
本発明の感染リスク評価方法および感染リスク低減方法は実際の感染の有無を問わず、特定のスペースの環境を評価し、当該スペースが感染防止対策をできているか否かを客観的に評価・改善し、第三者に対して証明し、施設利用者の安心を図ることができる点で極めて有益である。
以下、本発明の感染リスク評価方法および感染リスク低減方法について実施例を用いて更に具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例の形態のみに限定されるものではない。
実施例1-27の評価は図1および図2に示す実験室1にて行った。実験室1は飲食店を想定した。実験室1は、縦(図1上下方向)2.6m×横(図1左右方向)3.0m×高さ2.4mで、床面積が7.8m、容積Vが18.5mの部屋である。
実験室1の収容定員数nは6人、顧客一人あたりの必要換気量は30[m/時]とした。これらの値と前記式(2)より、人必要換気量Q2[m/時]は180[m/時]と算出される。また、実験室1は想定衛生試験所指針において「食堂、レストラン、すし屋」に該当し、必要換気回数N2は6回である。この値と前記式(4)より、必要換気時間t2[分]は10[分]と算出される。
さらに、実験室1は空調・衛生工学会規格(HASS 102 1972)において「レストラン・喫茶(高級)」に該当し、床面積あたり必要換気量は17.7[m/m/時]、床面積は7.8mである。これらの値と前記式(5)より、面積必要換気量Q3[m/時]は138[m/時]と算出される。
前記条件における実験室1の人必要換気量Q2、必要換気回数N2、必要換気時間t2、面積必要換気量Q3を表1に示した。これらの値と測定値を対比し、微粒子除去量Q1≧人必要換気量Q2(または面積必要換気量Q3)、微粒子除去回数N1≧必要換気回数N2、回復時間t1≧必要換気時間t2の関係を満たした場合には感染リスクが低い、満たさない場合には感染リスクが高いと評価する。
Figure 0007136417000001
感染リスクの評価は、図1および図2に示す実験室1において、スモークマシン2から液体微粒子4を放出し、微粒子計測器6により液体微粒子4の量の減少を追跡し、前記液体微粒子の量が十分減少するまでに要した時間(回復時間)に基づいて微粒子除去能力を評価することにより行った。
なお、図1および図2中、符号8は換気扇、符号10はエアコン、符号12,14は窓、符号16はドア、符号18は設置台を示す。
実施例において、スモークマシンとしては商品名「Z800II フォグマシン」(ANTARI社製)を、液体微粒子の原液となる薬液としては、商品名「FLG5 ヘビータイプ」(ANTARI社製)を、微粒子計測器としては、商品名「DT-9880」(CEM社製)を用いた。
[液体微粒子の粒子径の影響]
(実施例1)
図1および図2に示す実験室1において、スモークマシン2から液体微粒子4を300mg/m放出し、微粒子計測器6により粒子径0.3μmの液体微粒子4の量の減少を追跡した。十分な換気量が確保された集合空間を模擬するため、換気扇8の換気量を1000m/時に設定した。評価結果を表2および図3に示す。なお、図3に示すグラフは液体微粒子の量の減少を追跡したグラフである。このグラフでは測定時の液体微粒子の粒子数を、液体微粒子を放出した後の最大粒子数に対する百分率で示し、プロットしてある(以後の図面に示すグラフも同様)。
(実施例2-6)
検出する液体微粒子の粒子径を表2に記載の値に変更したことを除いては、実施例1と同様に液体微粒子の量の減少を追跡した。その結果を表2および図3に示す。
Figure 0007136417000002
(実施例7-12)
換気が不十分な集合空間を模擬するため、図1および図2に示す換気扇8の換気量を400m/時に設定したことを除いては、実施例1-6と同様に液体微粒子の量の減少を追跡した。その結果を表3および図4に示す。
Figure 0007136417000003
実施例1-6の換気量が十分な条件においては、いずれの粒子径の液体微粒子を追跡した場合でも感染リスクが低いと評価された。また、実施例7-12の換気量が不十分な条件においても、いずれの粒子径の液体微粒子を追跡した場合でも感染リスクが高いと評価された。即ち、いずれの粒子系の液体微粒子を追跡した場合でも、同様の評価結果を得ることができた。
但し、実施例1-12のデータ見る限り、粒子径が大きくなると回復時間t1が短くなる傾向にある。これは液体微粒子の粒子径が大きくなると、液体微粒子が沈降し、空間から除去されることが原因と考えられる。このため、粒子径を小さくした方が正確な評価をすることができると言える。その点においては、粒子径0.3μm以上2.5μm以下の液体微粒子を追跡することが好ましいと言え、粒子径0.3μm以上0.5μm以下の液体微粒子を追跡することがより好ましいと言える。
[液体微粒子の放出量の影響]
(実施例13)
図1および図2に示す実験室1において、スモークマシン2から液体微粒子4を517g/m放出し、微粒子計測器6により粒子径0.3μmの液体微粒子4の量の減少を追跡した。なお、換気扇8の換気量は600m/時に設定した。評価結果を表4および図5に示す。
(実施例14-22)
液体微粒子の放出量を表4に記載の値に変更したことを除いては、実施例13と同様に液体微粒子の量の減少を追跡した。その結果を表4および図5に示す。
Figure 0007136417000004
実施例13-19においては液体微粒子の放出量に拘らず、感染リスクが高いと評価された。即ち、液体微粒子の放出量が50-517mg/mの範囲においては同様の評価結果を得ることができた。
但し、実施例20-22においては、感染リスクが低いと評価され、実施例13-19とは異なる傾向を示した。これは液体微粒子の放出量が少なくなると、自然環境中に存在する微粒子数の影響を受けやすくなり、測定条件によっては正確な評価をすることができなくなる可能性を示していると言える。即ち、自然環境中に存在する微粒子数の影響を無視することができる程度に十分な量、具体的には50mg/m以上の液体微粒子を放出することが好ましいと言える。
[空気清浄機および扇風機による感染リスクの改善効果]
(実施例23)
図1および図2に示す実験室1において、スモークマシン2から液体微粒子4を300g/m放出し、空気清浄機と扇風機を運転させた状態で、微粒子計測器6により粒子径0.3μmの液体微粒子4の量の減少を追跡した。
なお、換気扇8の換気量は400m/時に設定した。空気清浄機としては、加湿空気清浄機(商品名:KC-G40-W、シャープ製)を用い、1時間あたり240mの空気を清浄化する条件で運転した。扇風機としては、リビング扇風機(商品名:AMT-KC30、山善製)を用い、風量最大で運転した。評価結果を表5および図6に示す。
(実施例24,25)
空気清浄機および扇風機の運転状況を表5に記載のとおりに変更したことを除いては、実施例23と同様に液体微粒子の量の減少を追跡した。その結果を表5および図6に示す。
Figure 0007136417000005
空気清浄機、扇風機とも停止させた実施例25、空気清浄機のみを運転させた実施例24、空気清浄機、扇風機とも運転させた実施例23の順に回復時間t1は短くなっている。即ち、空気清浄機や扇風機を運転することによる感染リスクの改善効果が認められた。但し、実施例24、実施例23についても「感染リスクが低い」という評価にまでは至っておらず、追加の改善措置が必要と認められた。
[エアコンによる感染リスクの改善効果]
(実施例26)
図1および図2に示す実験室1において、スモークマシン2から液体微粒子4を300g/m放出し、エアコンを運転させた状態で、微粒子計測器6により粒子径0.3μmの液体微粒子4の量の減少を追跡した。
なお、換気扇8の換気量は400m/時に設定した。エアコンとしては、商品名:CSH-B2220R、コロナ製を用い、冷房・風量最大で運転した。評価結果を表6および図7に示す。
(実施例27)
エアコンを停止したことを除いては、実施例26と同様に液体微粒子の量の減少を追跡した。その結果を表6および図7に示す。
Figure 0007136417000006
エアコンを停止させた実施例27と比較して、エアコンを運転した実施例26は回復時間t1が短くなった。即ち、エアコンを運転することによる感染リスクの改善効果が認められた。但し、実施例26についても「感染リスクが低い」という評価にまでは至っておらず、追加の改善措置が必要と認められた。
[実店舗における感染リスクの改善事例1]
実施例28-32の評価は図8および図9に示す居酒屋のホール101にて行った。ホール101は、縦(図8上下方向)4.9m×横(図8左右方向)4.85m×高さ2.69mで、床面積が23.8m、容積Vが63.9mの部屋である。
ホール101の収容定員数nは14人、顧客一人あたりの必要換気量は30[m/時]とした。これらの値と前記式(2)より、人必要換気量Q2[m/時]は420[m/時]と算出される。また、ホール101は想定衛生試験所指針において「食堂、レストラン、すし屋」に該当し、必要換気回数N2は6回である。この値と前記式(4)より、必要換気時間t2[分]は10[分]と算出される。
さらに、ホール101は空調・衛生工学会規格(HASS 102 1972)において「レストラン・喫茶(高級)」に該当し、床面積あたり必要換気量は17.7[m/m/時]、床面積は23.8mである。これらの値と前記式(5)より、面積必要換気量Q3[m/時]は420[m/時]と算出される。
前記条件における実験室1の人必要換気量Q2、必要換気回数N2、必要換気時間t2、面積必要換気量Q3を表7に示した。これらの値と測定値を対比し、微粒子除去量Q1≧人必要換気量Q2(または面積必要換気量Q3)、微粒子除去回数N1≧必要換気回数N2、回復時間t1≦必要換気時間t2の関係を満たした場合には感染リスクが低い、満たさない場合には感染リスクが高いと評価する。
Figure 0007136417000007
(実施例28)
図8および図9に示すホール101において、スモークマシンから液体微粒子を300g/m放出し、空気清浄機110(2台)、エアコン114(2基)および全熱交換器112を運転させた状態で、微粒子計測器106により粒子径0.3μmの液体微粒子の量の減少を追跡した。
なお、換気扇108(2基)の換気量はいずれも170m/時に、換気扇109の換気量は78m/時に設定した。空気清浄機110としては、加湿ストリーマ空気清浄機(商品名:ACK55X、ダイキン工業製)を用い、1時間あたり330mの空気を清浄化する条件で運転した。エアコン114としては、据え付けの業務用エアコン(機種不明)を用い、冷房・風量最大で運転した。全熱交換器112としては、全熱交換器ユニット(商品名:VAH500GB、ダイキン工業製)を用い、換気量は500m/時に設定した。評価結果を表8および図10に示す。
(実施例29-32)
空気清浄機、エアコンおよび全熱交換器の運転状況を表8に記載のとおりに変更したことを除いては、実施例28と同様に液体微粒子の量の減少を追跡した。その結果を表8および図10に示す。
Figure 0007136417000008
空気清浄機、エアコンおよび全熱交換器を全て停止させた実施例32、エアコンのみを運転させた実施例31、エアコンおよび全熱交換器を運転させた実施例30、空気清浄機1台、エアコンおよび全熱交換器を運転させた実施例29、空気清浄機2台、エアコンおよび全熱交換器を運転させた実施例28の順に回復時間t1は短くなっている。即ち、空気清浄機、エアコンまたは全熱交換器を運転することによる感染リスクの改善効果が認められた。また、実施例28については、これらの改善措置により図8および図9に示すホール101を「感染リスクが低い」という評価にまで改善することができ、特に良好な改善効果を得られた。
[実店舗における感染リスクの改善事例2]
実施例33-34の評価は図11に示す居酒屋の半個室201にて行った。半個室201は、縦(図11上下方向)2.3m×横(図11左右方向)3m×高さ2.7mで、床面積が6.9m、容積Vが18.6mの部屋である。半個室201にはエアコン、換気扇は設置されていない。また、図13に示すように、半個室201を仕切る四方の壁のうち一方の壁222には外部と連通する窓224が2つ形成されており、図12および図14に示すように、残り三方の壁220,226,228の上部には欄間220A,226A,228Aが形成されている。さらに、図12に示すように、引き戸216の上下部には桟216Aが組み込まれ、複数の隙間が形成されている。前記壁の欄間部分と前記ドアの桟部分は半個室外と連通しており、通気(換気)が可能な構造となっている。
図19に、図11に示す居酒屋の半個室201および後述する図16に示す半個室301を含む店舗の空調機器の配置を示す。換気扇408、空気清浄機410、全熱交換器412、エアコン414、引き戸416、窓424は半個室201および半個室301の外部に設置されている。表8および表10において、窓の「開放」は窓224のみならず、窓424も開放した状態を、窓の「閉鎖」は窓224および窓424の閉鎖を指す。また、エアコンの「運転」はエアコン314のみならず、エアコン414も運転した状態を、エアコンの「停止」はエアコン314およびエアコン414の停止を指す。更に、空気清浄機の「運転」「停止」は空気清浄機410の運転・停止を、全熱交換器の「運転」「停止」は全熱交換器412の運転・停止を指す。
半個室201の収容定員数nは8人、顧客一人あたりの必要換気量は30[m/時]とした。これらの値と前記式(2)より、人必要換気量Q2[m/時]は240[m/時]と算出される。また、半個室201は想定衛生試験所指針において「食堂、レストラン、すし屋」に該当し、必要換気回数N2は6回である。この値と前記式(4)より、必要換気時間t2[分]は10[分]と算出される。
さらに、半個室201は空調・衛生工学会規格(HASS 102 1972)において「レストラン・喫茶(普通)」に該当し、床面積あたり必要換気量は30[m/m/時]、床面積は6.9mである。これらの値と前記式(5)より、面積必要換気量Q3[m/時]は207[m/時]と算出される。
前記条件における半個室201の人必要換気量Q2、必要換気回数N2、必要換気時間t2、面積必要換気量Q3を表9に示した。これらの値と測定値を対比し、微粒子除去量Q1≧人必要換気量Q2(または面積必要換気量Q3)、微粒子除去回数N1≧必要換気回数N2、回復時間t1≦必要換気時間t2の関係を満たした場合には感染リスクが低い、満たさない場合には感染リスクが高いと評価する。
Figure 0007136417000009
(実施例33)
図11および図19に示す半個室201において、スモークマシンから液体微粒子を300g/m放出し、窓224,424は閉鎖、換気扇408、空気清浄機410および全熱交換器412を運転させた状態で、微粒子計測器206により粒子径0.3μmの液体微粒子の量の減少を追跡した。
なお、空気清浄機410および全熱交換器412については実施例28で使用したのと同じ機種のものを用い、実施例28と同じ運転条件で運転した。評価結果を表10および図15に示す。
(実施例34)
窓224,424の開閉状況、空気清浄機410および全熱交換器412の運転状況を表10に記載のとおりに変更したことを除いては、実施例33と同様に液体微粒子の量の減少を追跡した。その結果を表10および図15に示す。
Figure 0007136417000010
窓224,424を閉鎖し、空気清浄機410および全熱交換器412を運転させた実施例33より、窓224,424を開放し、空気清浄機410および全熱交換器412を運転させた実施例34の方が回復時間t1は大幅に短くなっている。即ち、窓224,424を開放することによる感染リスクの改善効果が認められた。また、実施例34については、これらの改善措置により図5および図6に示す半個室201を「感染リスクが低い」という評価にまで改善することができ、特に良好な改善効果を得られた。
[実店舗における感染リスクの改善事例3]
実施例35-37の評価は図16および図19に示す居酒屋の半個室301にて行った。半個室301は、縦(図16上下方向)1.8m×横(図16左右方向)3.3m×高さ2.7mで、床面積が5.9m、容積Vが16mの部屋である。半個室301は窓を有しないことを除いては、図11に示す半個室201と同様の構造を有する。具体的には、引き戸316を有する壁は図12に示す壁220と同様に構成されており、引き戸316を有する壁に隣接する2つの壁は図14に示す壁226,228と同様に構成されており、引き戸316を有する壁と対向する壁322は図18に示すように、壁322の上部に欄間322Aが形成されている。即ち、半個室301を仕切る四方の壁の上部には欄間が形成されており、引き戸316の上下は桟が組み込まれ、複数の隙間が形成されている。前記壁の欄間部分と前記ドアの桟部分は半個室外と連通しており、通気(換気)が可能な構造となっている。
半個室301の収容定員数nは8人、顧客一人あたりの必要換気量は30[m/時]とした。これらの値と前記式(2)より、人必要換気量Q2[m/時]は240[m/時]と算出される。また、半個室301は想定衛生試験所指針において「食堂、レストラン、すし屋」に該当し、必要換気回数N2は6回である。この値と前記式(4)より、必要換気時間t2[分]は10[分]と算出される。
さらに、半個室301は空調・衛生工学会規格(HASS 102 1972)において「レストラン・喫茶(普通)」に該当し、床面積あたり必要換気量は30[m/m/時]、床面積は5.9mである。これらの値と前記式(5)より、面積必要換気量Q3[m/時]は177[m/時]と算出される。
前記条件における半個室301の人必要換気量Q2、必要換気回数N2、必要換気時間t2、面積必要換気量Q3を表11に示した。これらの値と測定値を対比し、微粒子除去量Q1≧人必要換気量Q2(または面積必要換気量Q3)、微粒子除去回数N1≧必要換気回数N2、回復時間t1≦必要換気時間t2の関係を満たした場合には感染リスクが低い、満たさない場合には感染リスクが高いと評価する。
(実施例35)
図16および図19に示す半個室301において、スモークマシンから液体微粒子を300g/m放出し、窓224,424は閉鎖、換気扇408、空気清浄機410および全熱交換器412を運転させ、エアコン314,414を停止させた状態で、微粒子計測器306により粒子径0.3μmの液体微粒子の量の減少を追跡した。
図17および図19にエアコン314と全熱交換器412の配置を示した。なお、空気清浄機410および全熱交換器412については実施例28で使用したのと同じ機種のものを用い、実施例28と同じ運転条件で運転した。エアコン314,414としては、天井埋込み型のエアコン(商品名:FHCP160EC、ダイキン工業製)を用い、冷房・風量最大で運転した。評価結果を表10および図15に示す。
(実施例36,37)
空気清浄機410、エアコン314,414および全熱交換器412の運転状況を表10に記載のとおりに変更したことを除いては、実施例35と同様に液体微粒子の量の減少を追跡した。その結果を表10および図15に示す。
窓224,424を閉鎖し、エアコン314,414を停止し、空気清浄機410および全熱交換器412を運転させた実施例35、窓224,424を閉鎖し、空気清浄機410、エアコン314,414および全熱交換器412を運転させた実施例36、窓224,424を開放し、空気清浄機410、エアコン314,414および全熱交換器412の全てを運転させた実施例37の順で回復時間t1は短くなっている。即ち、窓を開放し、空気清浄機、エアコンおよび全熱交換器を運転することによる感染リスクの改善効果が認められた。但し、実施例35-37のいずれも「感染リスクが低い」という評価にまでは至っておらず、追加の改善措置が必要と認められた。
なお、実施例37と同様の条件であっても、空気清浄機や全熱交換器を追加設置したり、或いは半個室301の収容定員を削減したりすることで、半個室301を「感染リスクが低い」という評価に改善することはできる。
例えば、実施例37では微粒子除去量Q1が139[m/時]であり、人必要換気量Q2の240[m/時]を下回っているため、感染リスクが高いと評価されている。しかし、半個室301の収容定員nを8人から4人に削減すると人必要換気量Q2は120[m/時]まで下がる。即ち、半個室301の収容定員nを4人とすれば、微粒子除去量Q1(139[m/時])が人必要換気量Q2の120[m/時]を上回り、感染リスクは低いと評価することができる。
本発明の感染症の感染リスク評価方法は、例えば食堂、レストラン、居酒屋、カフェ等の飲食店;クラブ、バー、カラオケボックス等の遊興施設;等の空間における感染症の感染リスクの評価や感染リスクの低減に好適に用いることができる。
現状、クラスターが発生した施設と類似の施設、関連する業種については、仮に十分な感染対策を施していたとしても個々の施設を評価することなく一律に時短要請・休業要請が行われている。このような対策手法は風評被害や経済的損失を生み、社会全体が疲弊する要因になっている。本発明の感染リスク評価方法や感染リスク低減方法によれば、特定の施設が感染防止対策をできているか否かを簡便かつ客観的に評価することができるため、基準を満たした施設は時短要請や休業要請を解く等の合理的な判断・施策を行うことも可能となり、感染防止対策と経済の両立を図ることができる点で極めて有益である。
1:実験室、2:スモークマシン、4:液体微粒子、6:微粒子計測器、8:換気扇、10:エアコン、12:窓、14:窓、16:ドア、18:設置台、101:ホール、102:テーブル、104:椅子、106:微粒子計測器、108,109:換気扇、110:空気清浄機、112:全熱交換器、114:エアコン、116:入口、201:半個室、202:テーブル、204:椅子、206:微粒子計測器、216:引き戸、216A:桟、220,222,226,228:壁、224:窓、220A,226A,228A:欄間、301:半個室、302:テーブル、304:椅子、306:微粒子計測器、314:エアコン、316:引き戸、322:壁、322A:欄間、408:換気扇、410:空気清浄機、412:全熱交換器、414:エアコン、416:引き戸、424:窓。

Claims (13)

  1. 施設屋内の集合スペースにおける感染症の感染リスクを評価する感染リスク評価方法であって、
    前記感染リスクが、病原体を含むエアロゾルに起因するエアロゾル感染のリスクであり、
    前記集合スペースに液体微粒子を放出し、
    前記液体微粒子を放出した後、前記液体微粒子の量の減少を経時的に追跡し、
    前記液体微粒子の量が十分減少するまでに要した時間である回復時間t1に基づいて、前記集合スペースの微粒子除去能力を評価し、
    前記微粒子除去能力と、前記集合スペースの必要換気能力と、を対比し、前記微粒子除去能力が、前記必要換気能力と同等以上である場合に、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが低いと評価するもの。
  2. 請求項1に記載の感染リスク評価方法であって、
    前記液体微粒子のうち、粒子径0.3μm以上10μm以下の液体微粒子の量の減少を経時的に追跡するもの。
  3. 請求項1に記載の感染リスク評価方法であって、
    前記液体微粒子の量の減少を微粒子計測器により追跡するもの。
  4. 請求項1に記載の感染リスク評価方法であって、
    前記微粒子除去能力を下記式(1)で算出される微粒子除去量Q1により評価し、
    要換気量を下記式(2)で算出される人必要換気量Q2により規定し、
    前記微粒子除去量Q1と、前記人必要換気量Q2と、を対比し、前記微粒子除去量Q1が、前記人必要換気量Q2と同等以上である場合に、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが低いと評価するもの。
    式(1): 微粒子除去量Q1[m3/時]=集合スペースの容積V[m3]*60[分]/回復時間t1[分]
    式(2): 人必要換気量Q2[m3/時]=顧客一人あたりの必要換気量[m3/時/人]*集合スペースの収容定員数n[人]
  5. 請求項1に記載の感染リスク評価方法であって、
    前記微粒子除去能力を下記式(3)で算出される微粒子除去回数N1または回復時間t1により評価し、
    要換気量を衛生試験所指針に準拠して定められる前記集合スペースの必要換気回数N2または下記式(4)で算出される必要換気時間t2により規定し、
    前記微粒子除去回数N1と前記必要換気回数N2とを、または前記回復時間t1と前記必要換気時間t2とを対比し、前記微粒子除去回数N1が前記必要換気回数N2と同等以上である場合、または前記回復時間t1が前記必要換気時間t2と同等以上である場合に、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが低いと評価するもの。
    式(3): 微粒子除去回数N1[回/時]=60[分]/回復時間t1[分]
    式(4): 必要換気時間t2[分]=60[分]/必要換気回数N2[回/時]
  6. 請求項1に記載の感染リスク評価方法であって、
    前記微粒子除去能力を下記式(1)で算出される微粒子除去量Q1により評価し、
    要換気量を下記式(5)で算出される面積必要換気量Q3により規定し、
    前記微粒子除去量Q1と、前記面積必要換気量Q3と、を対比し、前記微粒子除去量Q1が、前記面積必要換気量Q3と同等以上である場合に、前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが低いと評価するもの。
    式(1): 微粒子除去量Q1[m3/時]=集合スペースの容積V[m3]*60[分]/回復時間t1[分]
    式(5): 面積必要換気量Q3[m3/時]=床面積あたり必要換気量[m3/m2/時]*集合スペースの床面積[m2]
    (但し、床面積あたり必要換気量は空調・衛生工学会規格(HASS 102 1972)に定められた値とする。)
  7. 請求項1に記載の感染リスク評価方法であって、
    前記集合スペースに、エチレングリコールと水を含有する液体微粒子を放出するもの。
  8. 請求項1に記載の感染リスク評価方法であって、
    前記集合スペースに、前記液体微粒子を少なくとも50mg/m3以上放出するもの。
  9. 請求項1に記載の感染リスク評価方法であって、
    前記集合スペースに前記液体微粒子を放出した後、前記液体微粒子の粒子数の最大値を基準にその100分の1の数に減少するまでの時間または60分のいずれか短い方の時間内で前記液体微粒子の数を経時的に追跡するもの。
  10. 請求項1に記載の感染リスク評価方法であって、
    前記感染リスクが、新型コロナウイルスを含むエアロゾルに起因するエアロゾル感染のリスクであり、
    前記集合スペースにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のエアロゾル感染リスクを評価するもの。
  11. 請求項1に記載の感染リスク評価方法であって、
    前記集合スペースが、専ら従業員が利用するスペースではなく、顧客または顧客と従業員が立ち入り可能である顧客利用スペースであるもの。
  12. 施設屋内の集合スペースにおける感染症の感染リスクを低減する感染リスク低減方法であって、
    請求項1乃至11に記載の感染リスク評価方法により前記集合スペースのエアロゾル感染リスクを評価し、
    前記集合スペースのエアロゾル感染リスクが高いと評価された場合に、前記微粒子除去
    能力が前記必要換気能力と同等以上となるまで改善措置を施すもの。
  13. 請求項12に記載の感染リスク低減方法であって、
    前記改善措置として、窓、扉または通気口の開放による換気;換気扇、全熱交換器、エ
    アコンディショナー、サーキュレータまたは空気清浄機の運転;遮蔽板または隔壁の設置
    ;収容定員の削減;からなる群より選択された少なくとも1つの措置を施すもの。
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