以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(及びその変形例)に係る蓄電装置について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
また、以下の説明及び図面中において、外装体の長手方向(外装体の短側面の対向方向)、または、蓄電素子の容器の蓋の短手方向(容器の長側面の対向方向)をX軸方向と定義する。また、外装体の短手方向(外装体の長側面の対向方向)または、蓄電素子の容器の蓋の長手方向(容器の短側面の対向方向)をY軸方向と定義する。また、外装体の蓋体と外装体本体との並び方向、または、蓄電素子の容器の本体と蓋との並び方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、以下の説明において、例えば、X軸方向プラス側とは、X軸の矢印方向側を示し、X軸方向マイナス側とは、X軸方向プラス側とは反対側を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。
(実施の形態)
[1.蓄電装置の全般的な説明]
まず、実施の形態に係る蓄電装置1の構成について、説明する。図1は、実施の形態に係る蓄電装置1の外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係る蓄電装置1を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
なお、これらの図では、Z軸方向を上下方向(鉛直方向)として示しており、以下ではZ軸方向を上下方向として説明するが、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合もあり得る。以下の図においても、同様である。
蓄電装置1は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。例えば、蓄電装置1は、電力貯蔵用途または電源用途などに使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置1は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)若しくはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電車、モノレール若しくはリニアモーターカー等の電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用若しくはエンジン始動用、または、家庭用若しくは発電機用に使用される定置用のバッテリ等として用いられる。なお、複数の蓄電装置1を電気的に連結することで1つの電池パックが構成されてもよい。
本実施の形態に係る蓄電装置1は、図1及び図2に示すように、蓋体11と外装体本体12と有する外装体10、外装体10内方に収容される蓄電ユニット20、保持部材30、及び、バスバー41、42等を備えている。
外装体10は、蓄電装置1の外殻を構成する矩形状(箱状)の構造物である。つまり、外装体10は、蓄電ユニット20、保持部材30、及びバスバー41、42の外方に配置され、この蓄電ユニット20等を所定の位置に配置し、蓄電ユニット20等を衝撃などから保護する。また、外装体10は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)またはABS樹脂等の絶縁性の樹脂材料により構成されている。
外装体10が有する蓋体11は、外装体本体12の開口12aを閉塞する扁平な矩形状のカバー部材であり、正極外部端子13と負極外部端子14とが設けられている。蓄電装置1は、この正極外部端子13と負極外部端子14とを介して、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電する。また、外装体本体12は、開口が形成された有底矩形筒状のハウジングであり、蓄電ユニット20、保持部材30、及びバスバー41、42等を収容する。
なお、蓋体11と外装体本体12とは、同じ材質の部材で形成されていてもよいし、異なる材質の部材で形成されていてもかまわない。また、蓋体11の内方には、回路基板及びリレーなどの電気機器が配置されているが、これら電気機器の図示及び説明は省略する。
ここで、本実施の形態に係る外装体10には、内部と外部との間の気体の移動を許容し、かつ、外部から内部への水の流入を防止するための構造を有する通気室60が備えられている。つまり、外装体10は、通気室60を介して外装体10の内部と外部とを連通する構造を有している。これにより、外装体10の内部の気体を、外装体10の外部に排出することができる。また、外装体10の外部の気体を、外装体10の内部に取り込むことができる。通気室60の構成については、図3~図6Cを用いて後述する。
蓄電ユニット20は、複数の蓄電素子100(本実施の形態では、12個の蓄電素子100)と、これら複数の蓄電素子100を接続する複数のバスバー200とを有しており、蓋体11に設けられた正極外部端子13と負極外部端子14とに電気的に接続される。
また、蓄電ユニット20では、複数の蓄電素子100が縦置きになった状態でX軸方向に並べられて、外装体本体12内に配置され、上方から蓋体11が被せられる。なお、本実施の形態では、複数の蓄電素子100は、一対の挟持部材で挟持された状態で外装体10に収容されているが、一対の挟持部材は必須ではない。例えば、外装体本体12に設置された、または、外装体本体12に一体に設けられた複数の壁部またはリブによって、複数の蓄電素子100のそれぞれの位置が規制された状態で外装体10に収容されていてもよい。
蓄電素子100は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。なお、蓄電素子100は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。また、蓄電素子100は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。
蓄電素子100は、図2に示すように、容器110、正極端子120及び負極端子130を備えている。なお、容器110内方には、電極体(発電要素)及び集電体(正極集電体及び負極集電体)等が配置され、また、電解液(非水電解質)などが封入されているが、詳細な説明は省略する。
容器110は、金属からなる矩形筒状で底を備える容器本体と、当該容器本体の開口を閉塞する金属製の蓋板とで構成されている。また、容器110は、電極体等を内部に収容後、蓋板と容器本体とが溶接等されることにより、内部を密封する構造を有している。容器110の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属であるのが好ましい。
また、容器110の蓋板には、ガス排出弁105が設けられている。ガス排出弁105は、容器110の内圧が上昇した場合に開放し、容器110の内部の気体を放出する機構として、各蓄電素子100に備えられている。本実施の形態では、複数の蓄電素子100それぞれのガス排出弁105は、X軸方向に沿う直線上に並んでおり、各ガス排出弁105の上方に遮熱プレート700が配置されている。つまり、遮熱プレート700は、X軸方向に長尺状の形状を有している。遮熱プレート700は、例えば異常時等に蓄電素子100のガス排出弁105から気体が排出された場合に、蓄電ユニット20の上方に配置される回路基板等の電気機器を当該気体の熱から保護する。また、遮熱プレート700に衝突した気体は、排気部70を介して外装体10の外部に導かれる。
なお、遮熱プレート700は、本実施の形態では、熱伝導性の低いステンレス鋼などの金属材料で形成されているが、これに限定されず、耐熱性が高く熱伝導性の低い材料であればよく、例えばガラス繊維で強化されたPPSやPBT等の樹脂、あるいはセラミック等で形成されていてもかまわない。また、蓄電装置1が遮熱プレート700を備えることは必須ではない。例えば、蓄電装置1が備える蓄電素子100の個数、もしくは、蓄電素子100から排出される気体の温度または量の予測値等に基づいて、蓄電装置1に遮熱プレート700を配置するか否かが適宜決定されてもよい。
保持部材30は、バスバー41、42、並びに、その他リレーなどの電気機器及び配線類等(図示せず)を保持し、当該バスバー41、42等と他の部材との絶縁、及び、当該バスバー41、42等の位置規制を行うことができる電装品トレーである。
バスバー41、42は、蓄電ユニット20内のバスバー200と、蓋体11に設けられた正極外部端子13及び負極外部端子14とを電気的に接続する。つまり、バスバー41は、蓄電ユニット20内の一端に配置されたバスバー200と正極外部端子13とを電気的に接続する導電性の部材である。バスバー42は、蓄電ユニット20内の他端に配置されたバスバー200と負極外部端子14とを電気的に接続する導電性の部材である。
バスバー200は、蓄電ユニット20内の複数の蓄電素子100のそれぞれと電気的に接続される導電部材である。つまり、バスバー200は、複数の蓄電素子100が有するそれぞれの電極端子と電気的に接続される導電部材であり、当該複数の蓄電素子100が有するいずれかの電極端子同士を電気的に接続する。例えば、並列に接続された3個の蓄電素子100からなる蓄電素子100群を4つ形成し、これら4つの蓄電素子100群が直列に接続される。なお、複数の蓄電素子100の電気的な接続の態様に特に限定はない。例えば、12個の蓄電素子100の全てが直列に接続されていてもよい。
[2.通気室の説明]
次に、上記のように構成された蓄電装置1において、外装体10の内部の気体を外装体10の外部に排出する通気室60の構成について、図3~図6Cを用いて説明する。
図3は、実施の形態に係る外装体10の構成概要を示す分解斜視図である。具体的には、図3では、外装体10を、蓋体11と外装体本体12とに分離し、さらに、蓋体11を、蓋本体11aと通気室カバー11bとに分離して図示している。また、外装体10の内部に収容される複数の蓄電素子100等の、他の要素の図示は省略されている。
図4は、実施の形態に係る外装体10が有する通気室60の構成概要を示す部分拡大斜視図である。なお、図4では、図3に示すIV-IV線を通るXZ平面で蓋本体11aを切断した場合の部分拡大斜視図が示されている。図5は、実施の形態に係る通気室カバー11bの下面側の構成を示す斜視図である。図6A~図6Cは、実施の形態に係る排気部70及び弁部材80の状態を示す第1~第3の図である。なお、図6A~図6Cのそれぞれは、外装体10の一部の断面であって、図4に示すVI-VI線を通るYZ平面における断面が図示されている。
図3~図6Cに示すように、本実施の形態に係る外装体10には、外装体10の内部と外部とを連通する通気室60が備えられている。通気室60は、通気孔90及び排気部70が配置された第一通気室61と、気体の排出経路において第一通気室61よりも下流に位置する第二通気室62とを有する。第二通気室62には、通気管15が接続されており、第一通気室61及び第二通気室62を通過した気体は、通気管15を介して外部に放出される。
通気室60は、仕切板68によって第一通気室61と第二通気室62とに区画されており、仕切板68は、第二通気室62から第一通気室61へ向かう水の流れを阻害する部材として機能する。また、本実施の形態では、第二通気室62には、3つの内部壁66がX軸方向に並んで配置されている。さらに、3つの内部壁66のそれぞれは、平面視(Z軸方向プラス側から見た場合)において、ジグザグに配置されており、かつ、流体の直進路が、3つの内部壁66と仕切板68との間に確保されている。従って、仮に、通気管15を介して、外部から通気室60に水が流入した場合であっても、その水に対する抵抗として3つの内部壁66が機能する。また、仕切板68に沿って形成された流体の直進路は、通気室60に流入した水を速やかに外部に排出するための流路として機能する。
第一通気室61に設けられた通気孔90は、通常時における外装体10の内方と外方との間の気体のやり取りを行うための孔である。具体的には、通気孔90は、気体を通過させ、かつ、液体を通過させない機能を有する膜部材92によって塞がれている。これにより、例えば、通常時における蓄電装置1の環境温度の変化等によって外装体10の内圧と外圧との差が生じた場合、膜部材92を介して気体のやり取りが行われ、これにより、外装体10の内外の圧力平衡が図られる。また、仮に、通気管15及び第二通気室62を介して、外部の水が通気孔90の位置に到達した場合であっても、その水は膜部材92を通過できないため、外装体10の内部への水の浸入は防止される。なお、膜部材92は、例えばゴアテックス(Gore-Tex)(登録商標)、TEMISH(登録商標)などの防水性および通気性(透湿性)を有する防水透湿性素材からなる膜である。
第一通気室61に設けられた排気部70は、外装体10の内部の気体を外部に排出するための部位である。排気部70には弁部材80が配置されており。弁部材80は、外装体10の内圧が急激に上昇した場合等において内圧を受けて開弁動作し、これにより外装体10の内部の気体を排出することができる。その結果、例えば、外装体10の内圧の上昇に伴う外装体10へ力学的な負荷を軽減させることができる。
具体的には、排気部70は、弁部材80に覆われる位置に形成された第一排気口75及び第二排気口74を有する。本実施の形態では、図4に示すように、排気部70は筒状であり、先端に第一排気口75を有し、かつ、側壁部71に、側壁部71を貫通する第二排気口74を有している。なお、本実施の形態では、平面視において円形の第一排気口75の周縁から下方にむけて第二排気口74が延設されている。つまり、第一排気口75と第二排気口74とは連続して形成されている。また、側壁部71には周方向に4つの第二排気口74が等間隔に並んで配置されている。なお、第一排気口75と第二排気口74とが連続している(繋がっている)ことは必須ではなく、側壁部71を貫通する孔であって第一排気口75とは繋がっていない孔が第二排気口74として設けられてもよい。また、第二排気口74の数は4には限定されず1以上であればよい。以下では、説明の簡単のために、4つの第二排気口74のうちの1つの第二排気口74について説明する。
このように第一排気口75及び第二排気口74を有する排気部70に対し、弁部材80は、第一排気口75を覆う前面部81と、第二排気口74を含む側壁部71の少なくとも一部を覆う外周部82とを有するキャップ状に形成されている。つまり、図4及び図6Aに示されるように、筒状の排気部70にキャップ状の弁部材80を被せることで、弁部材80が排気部70に取り付けられる。
なお、弁部材80は、例えばシリコーンゴム等の耐熱性の高い弾性材料で形成されており、通常時(蓄電素子100の開弁などの異常が発生していないとき)の外装体10における内外圧差の変動では開弁動作をしない硬度及び形状を有している。つまり、通常時では、膜部材92に覆われた通気孔90を介して、外装体10の内部と外部との気体のやり取り(外装体10の呼吸)が行われることにより、外装体10の内圧が、外気圧と同程度に維持される。
また、排気部70は、弁部材80の弾性変形及び移動の少なくとも一方を許容し、かつ、弁部材80を係止する係止部76を有している。本実施の形態では、図4及び図6Aに示すように、側壁部71の上端部に係止部76が設けられており、弁部材80は、係止部76に係止される部分である被係止部83を有している。係止部76は、弁部材80が受ける外装体10の内圧が上昇した場合、弁部材80を係止した状態で、弁部材80の弾性変形を許容する。また、外装体10の内圧がさらに上昇した場合、係止部76による被係止部83の係止が解かれ、弁部材80が排気部70から外れるように、係止部76及び被係止部83が形成されている。
また、本実施の形態では、図5及び図6Aに示すように、外装体10の通気室カバー11bには、弁部材80を収容するための空間を形成する収容部89が設けられている。弁部材80が、外装体10の内圧を受けて排気部70から外れた場合、弁部材80は収容部89に収容される。
このように構成された通気室60において、排気部70及び弁部材80の状態は、外装体10における内圧の上昇に伴って図6A~図6Cに示すように遷移する。すなわち、通常時では、図6Aに示すように、排気部70の第一排気口75及び第二排気口74は、弁部材80に覆われる。つまり、弁部材80は、排気部70を閉塞する閉状態にする。排気部70が閉状態である場合、通気孔90以外では外装体10は密閉された状態であり、原則、通気孔90でのみ、外装体10の外部と内部との間で気体のやり取りが行われる。これにより、上述のように、外装体10の内圧が、外気圧と同程度に維持され、外装体10に、内外圧差の変動による変形の繰り返しが抑制される。その結果、外装体10の一部の変形が繰り返されることよる当該一部の脆弱化の可能性が低減される。また、通気孔90を覆う膜部材92が防水性を有し、かつ、排気部70は弁部材80で封止されていることで、通気室60を介した外装体10の内部への水の浸入は抑制される。
また、通常の状態であった蓄電装置1において、例えばBMS(バッテリマネジメントシステム)の故障、過充電、短絡、または外力の作用等に起因して1つの蓄電素子100が開弁することで、外装体10の内圧が急激に上昇した場合を想定する。この場合、弁部材80は、被係止部83が、排気部70の係止部76に係止されていることで、図6Bに示すように、全体的な位置はそのままに維持され、外周部82が外装体10の内圧を受けて弾性変形する。これにより、排気部70は、外周部82に覆われていた第二排気口74の少なくとも一部が開放される第一開状態となり、その結果、外装体10の内部の気体が第二排気口74を通じて排出される。つまり、外装体10の内圧が所定の値(第一閾値)を超える場合、弁部材80は、排気部70を第一開状態にする。第一開状態である排気部70から排出された気体は、第一通気室61、第二通気室62及び通気管15を介して、外装体10の外部に移動する。
なお、第一閾値は、例えば、外装体10の外部の気圧が標準気圧(約1013ヘクトパスカル)である場合に、外装体10に破損が生じる内圧よりも小さい値である。また、第一閾値は、1つの蓄電素子100が開弁した場合における外装体10の内圧の最大値よりも小さい値であり、かつ、通常時における内圧の最大値(推定値または実験値)よりも大きい値である。つまり、通常時では排気部70が密閉され、かつ、1つの蓄電素子100が開弁した場合には、第二排気口74の少なくとも一部が開放されるように、排気部70及び弁部材80の形状及びサイズ等が設計される。また、1つの蓄電素子100が開弁した場合における外装体10の内圧の最大値は、論理計算による推定値であってもよく、複数の蓄電素子100のそれぞれを外装体10の内部で開弁させることで得られる最大圧力の平均値(実験値)であってもよい。また、第一閾値として具体的な数値を求めることは必須ではない。例えば、実機を用いた試験において、通常時において閉状態が維持され、かつ、1つの蓄電素子100が開弁した場合に第一開状態になるように、第二排気口74のサイズ及び弁部材80の厚み等の調整ができればよい。つまり、その調整が完了した蓄電装置1において、排気部70が閉状態から第一開状態に遷移するときの内圧が第一閾値である、と言える。
このように、排気部70が第一開状態となることで、外装体10の内圧の上昇が抑制され、その結果、内圧の上昇に起因する外装体10の破損の可能性が低減される。また、蓄電素子100が開弁した場合、高温の気化した電解液がガス排出弁105から排出されるが、排気部70が第一開状態となることで、外装体10の内部の温度上昇が抑制される。これにより、1つの蓄電素子100が開弁したことに起因する他の蓄電素子100の開弁、すなわち、開弁の連鎖が発生する可能性が低減される。
上記のように、排気部70が第一開状態となったことで外装体10の内部の気体が外部に排出され、かつ、内圧の上昇の原因となった蓄電素子100からの気体の排出が減少した場合、外装体10の内圧が第一閾値以下となる場合がある。この場合、弁部材80が弾性変形することで第一開状態となった排気部70は、図6Aに示す閉状態に戻る。つまり、排気部70が第一開状態となることで、外装体10の破損及び開弁の連鎖の可能性が低くなった場合、弁部材80は、復元力によって元の形状に戻ることで排気部70を閉状態に戻す。つまり、排気部70は、再び弁部材80によって閉塞される。その結果、外装体10から外部への気体の排出が停止する。また、開弁した蓄電素子100から電解液が流出した場合であっても、その電解液の排気部70からの漏れ出しが防止される。
また、図6Bに示すように、排気部70が第一開状態となった場合であっても、例えば開弁した蓄電素子100からの気体の排出量が予測量よりも多い場合、または、開弁の連鎖が生じた場合、第一閾値を超えた外装体10の内圧がさらに増加することが考えられる。この場合、本実施の形態に係る弁部材80は、排気部70を第一開状態から第二開状態に遷移させる。具体的には、外装体10の内圧が、第一閾値よりも大きい第二閾値を超える場合、弁部材80は、当該内圧を受けて排気部70から外れるまたは壊れることで、排気部70を、第一開状態よりも大きく開放する第二開状態にする。本実施の形態では、図6Cに示すように、弁部材80が排気部70から外れ、上方に設けられた収容部89に収容される。これにより、排気部70は、第一排気口75及び第二排気口74が弁部材80に覆われない第二開状態となる。つまり、弁部材80は、外装体10の内圧を受けることで、排気部70の係止部76と、弁部材80の被係止部83との係止が解かれ、上方への移動が許容された状態となる。その結果、弁部材80は、排気部70から排出される気体に押されて上方に移動し、収容部89に収容される。
なお、第二閾値は、例えば、外装体10の外部の気圧が標準気圧(約1013ヘクトパスカル)である場合に、外装体10に破損が生じる内圧よりも小さい値であり、かつ、第一閾値よりも大きい値である。つまり、排気部70が第一開状態となった場合でも外装体10の内圧の上昇が収束しない場合、外装体10からの気体及び電解液の流出の防止よりも外装体10の保護を優先し、排気部70を第二開状態にする。この場合、第一開状態とは異なり、弁部材80は、排気部70を閉状態に戻す動作はできない。つまり、排気部70の第一開状態は、閉状態から可逆的に変化した状態であるのに対し、第二開状態は、第一開状態から不可逆的に変化した状態である。
このように、排気部70が第二開状態となった場合、排気部70の第一排気口75及び第二排気口74が全開にされる。これにより、外装体10からの気体の排出が促され、外装体10の内圧の上昇がさらに抑制される。その結果、外装体10が、内圧の上昇に起因して破損するような事態が回避される。
[3.効果等]
以上説明したように、本実施の形態に係る蓄電装置1は、外装体10の内圧に応じて排気部70の開閉状態を変化させる弁部材80を備えている。弁部材80は、内圧が第一閾値以下である場合、排気部70を覆っていることで排気部70を閉状態にする。弁部材80は、内圧が第一閾値を超える場合、内圧を受けて弾性変形することで、排気部70を、排気部70の一部が開放された第一開状態にする。弁部材80は、内圧が第一閾値より大きい第二閾値を超える場合、内圧を受けて排気部70から外れることで、排気部70を、第一開状態よりも大きく開放する第二開状態にする。
この構成によれば、例えば1つの蓄電素子100が開弁することで外装体10の内圧が第一閾値を超えた場合、排気部70が第一開状態となることで、内圧が低減される。また、その後、内圧が第一閾値以下となった場合、弁部材80の弾性力(復元力)によって、排気部70が閉状態にされる。これにより、例えば1つの蓄電素子100が開弁した場合において、外装体10の内圧の上昇を抑制でき、その結果、開弁の連鎖の発生が抑制される。さらに、その後に内圧が下がった場合に、排気部70を閉状態に戻すことができる。これにより、例えば、開弁した蓄電素子100から流出した電解液が排気部70から外に漏れだす可能性が低減される。そのため、例えば、使用不可となった蓄電装置1を、蓄電装置1を搭載した車体等から取り外す作業の安全性が向上される。
また、例えば蓄電装置1が置かれた環境の急激な変化に起因して、外装体10の内圧が外圧に対して急激に増加した場合、通気孔90に配置された膜部材92を介した気体のやり取りだけでは、内外圧差の変動を吸収できないことも考えられる。この場合、例えば膜部材92が破損する可能性も生じる。しかしながら、本実施の形態に係る蓄電装置1では、弁部材80が外装体10の内圧を受けて弾性変形することで排気部70を第一開状態にし、これにより、外装体10の内外の圧力平衡が図られる。その結果、外装体10の内外圧差の大きさに起因した膜部材92の破損が防止される。つまり、蓄電素子100が開弁しない場合であっても、何等かの要因により外装体10の内圧が外圧に対して急激に増加した場合、弁部材80が開弁動作することで、外装体10及び外装体10に設けられた部材の破損が抑制される。
また、仮に、開弁の連鎖が生じた場合、外装体10の内圧が第二閾値を超えることで、排気部70が、第一開状態よりも大きく開放される第二開状態にされる。これにより、例えば、内圧の過度な上昇に伴う外装体10の破損の可能性が低減される。
ここで、1つの蓄電素子100のみに着目すれば、蓄電素子100の開弁の条件となる容器110の内圧はどの程度であるか等の予測は比較的に容易である。しかし、このような蓄電素子100を複数備える場合、例えば、どの蓄電素子100がどのタイミングで開弁するか、どのような条件で開弁の連鎖が生じるか、及び、開弁の連鎖が生じる場合も含め内圧の上昇がどの程度継続するか、等をあらかじめ予測するのは困難である。
このような、各蓄電素子100の挙動の予測が困難な状況が生じ得る蓄電装置1において、本実施の形態では、外装体10の内圧が上昇した場合に排気部70が第一開状態となることで、内圧の上昇を抑制することができる。さらに、その後の内圧の状況に応じて排気部70が閉状態または第二開状態にされる。その結果、外装体10を破損するほど内圧が上昇しなかった場合は排気部70が閉状態に戻ることで、外装体10の内部の気体及び電解液の外部への漏れ出しが防止される。また、外装体10の破損の可能性が生じるほど内圧が上昇した場合は、排気部70が第二開状態となることで、外装体10の破損が防止される。このように、蓄電装置1は、排気部70の閉状態と第一開状態との間の遷移を可能とし、かつ、第二開状態への遷移を可能にする弁部材80が備えられることで、複数の蓄電素子100の状況に応じた安全のための開弁動作がなされる。すなわち、本実施の形態に係る蓄電装置1は、安全性が向上された蓄電装置である。また、蓄電装置1によれば、電気的な制御を行うことなく、上記開弁動作を実行するこができるため、例えば蓄電素子100から気体が排出されるような異常時における開弁動作の実現性を確保しやすい。
なお、排気部70は、実質的に第一開状態を経ずに、閉状態から第二開状態に遷移してもよい。例えば、複数の蓄電素子100がほぼ同時に開弁するなど、外装体10の内圧が極めて短い期間で第二閾値を超えた場合、弁部材80は、極めて短い期間だけ図6Bに示す状態になった後に、排気部70から外れてもよい。
また、本実施の形態において、排気部70は、弁部材80に覆われる位置に形成された第一排気口75及び第二排気口74を有する。弁部材80は、内圧が第一閾値を超える場合、第一排気口75を覆い、かつ、第二排気口74の少なくとも一部を覆わないように弾性変形することで、排気部70を第一開状態する。弁部材80は、内圧が第二閾値を超える場合、排気部70から外れることで、排気部70を、第一排気口75及び第二排気口74が弁部材80に覆われない状態である第二開状態にする。
このように、本実施の形態では、排気部70の第一開状態と第二開状態とが、弁部材80による第一排気口75及び第二排気口74それぞれの開閉状態によって規定される。そのため、例えば、第一排気口75及び第二排気口74の位置、サイズまたはサイズの比率等を調整することで、閉状態と第一開状態との間の遷移がなされる第一閾値、及び、第一開状態から第二開状態への遷移がなされる第二閾値の調整(設定)が可能である。つまり、例えば設計通りに弁部材80を動作させやすくなり、このことは、蓄電装置1の安全性の向上に寄与する。なお、第一閾値及び第二閾値の調整は、排気口の調整に換えて、または加えて、弁部材80の調整によって行うこともできる。例えば、弁部材80の硬度(弾性係数)の変更、弁部材80の全体もしくは部分の厚みの変更、弁部材80の形状の変更、または、係止部83の係止強度(排気部70からの外れ難さ)を変更する等によって、第一閾値及び第二閾値の調整を行うことも可能である。
また、本実施の形態において、排気部70は、先端に第一排気口75を有し、かつ、側壁部71に、側壁部71を貫通する第二排気口74を有する筒状に形成されている。弁部材80は、第一排気口75を覆う前面部と、第二排気口74を含む側壁部71の少なくとも一部を覆う外周部82とを有するキャップ状に形成されている。
この構成によれば、キャップ状の弁部材80を筒状の排気部70にはめるだけで、弁部材80の排気部70への配置が完了する。また、第一排気口75と第二排気口74とが、互いに交差する方向に向いているため、キャップ状の弁部材80の一部(前面部81)で第一排気口75を塞ぎながら、他の部分(外周部82)の弾性変形によって第二排気口74からの排気を許容する、という動作が容易に実現できる。つまり、弁部材80の構成が簡易であるため、弁部材80の開弁動作の確実性が向上される。
また、本実施の形態において、排気部70は、弁部材80の弾性変形及び移動の少なくとも一方を許容し、かつ、弁部材80を係止する係止部76を有する。なお、本実施の形態では、係止部76は、弁部材80を係止した状態を維持しつつ、弁部材80の弾性変形を許容している。
この構成によれば、弁部材80が弾性変形する場合に、排気部70に係止されていることで弾性変形が安定して実行される。つまり、弁部材80が弾性変形することによる閉状態と第一開状態との間の遷移が安定して実行される。
また、本実施の形態において、排気部70は、筒状に形成された側壁部71の内側から外側に気体を排出する構造を有している。係止部76は、側壁部71に設けられた、弁部材80の弾性変形を許容し、かつ、弁部材80を係止する。
具体的には、排気部70には、図4及び図6Aに示すように、側壁部71の上端部に径方向外側に突出した形状の係止部76が設けられている。また、弁部材80は、係止部76に係止される部分である被係止部83を有しており、被係止部83の内面に形成された環状の溝に係止部76がはまることで、弁部材80は、排気部70に取り付けられている。なお、係止部76の位置は、図4等に示される位置には限定されず、例えば、第一排気口75が形成されている端面(排気部70の先端)に、弁部材80を係止する係止部が設けられていてもよい。
このように、排気部70が弁部材80を係止していることで、第一開状態では、弁部材80が排気部70にとどまった状態で、弁部材80の外周部82が弾性変形することで、第二排気口74の少なくとも一部が開き、内圧が低下すると、排気部70は閉状態に復帰する。つまり、第一排気口75及び第二排気口74は弁部材80で閉じられた状態に戻る。さらに、係止部76による弁部材80の係止が解かれることで、弁部材80が排気部70から外れ、第一排気口75及び第二排気口74が開く。このように、本実施の形態に係る蓄電装置1では、簡易な構成で、複数の蓄電素子100の状況に応じた安全のための開弁動作が実現される。
また、本実施の形態において、外装体10はさらに、排気部70の外方に配置され、排気部70から外れた弁部材80を収容する空間を形成する収容部89を有する。
この構成によれば、内圧の上昇に伴って排気部70から外れた弁部材80が、収容部89に受け止められる。そのため、弁部材80が、排気部70に接続された排気流路(例えば、第一通気室61と第二通気室62との境界部分)を塞ぐ可能性が低減される。すなわち、排気部70が第二開状態となった場合において、外装体10の内部の気体をスムーズに外装体10の外部まで導くことができる。その結果、内圧の過度な上昇に伴う外装体10の破損の可能性がさらに低減される。
以上、実施の形態に係る蓄電装置1について説明したが、蓄電装置1は、例えば、排気部70及び周辺の構成について、図4~図6Cを用いて説明した構成とは異なる構成を有してもよい。そこで、以下に、排気部70及び周辺の構成についての変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。
(変形例1)
図7は、実施の形態の変形例1に係る弁部材80及びストッパ部86の外観を示す斜視図である。図8A~図8Cは、実施の形態の変形例1に係る排気部70及び弁部材80の状態を示す第1~第3の図である。なお、図8A~図8C、及び、後述する図9に示される断面の位置は、図6A~図6Cに示す断面の位置に準ずる。
図7に示すように、本変形例に係る蓄電装置1は、弁部材80に接続されたストッパ部86を備えている。また、本変形例に係る排気部70が有する係止部77は、図8Aに示すように、排気部70の先端に設けられた第一係止部77aを有しており、第一係止部77aは、上記実施の形態に係る係止部76と同じ形状を有している。本変形例では、係止部77はさらに、排気部70の内方に配置された第二係止部77bを有している。具体的には、筒状の排気部70における、外装体10の内方側の開口部周縁が第二係止部77bとして機能する。
ストッパ部86は、弁部材80が排気部70を覆っている状態で、排気部70の内方に配置された被係止部86aを有している。被係止部86aは、図8B及び図8Cに示すように、弁部材80が排気部70から外れた場合に、第二係止部77bに係止される。
具体的には、本変形例に係るストッパ部86は、図7及び図8Aに示すように、弁部材80の前面部81の裏側に接続されたストッパ軸部86bと、ストッパ軸部86bの端部から、ストッパ軸部86bの延設方向(Z軸方向)に交差する方向に延設された被係止部86aとを有している。被係止部86aの横幅(図8AにおけるY軸方向の長さ)は、筒状の排気部70の内径よりも大きく、排気部70から抜け出しにくいように、または、引っ掛かりやすいように、排気部70に向けて傾けられている。
ストッパ部86の、少なくとも被係止部86aは、弁部材80と同じくシリコーンゴム等の弾性材料で形成されている。そのため、弁部材80を、排気部70に取り付ける場合、被係止部86aを、横幅を縮めるように弾性変形させて第一排気口75から排気部70の内方に挿入し、弁部材80を筒状の排気部70に被せる。このとき、排気部70から、外装体10の内方側に抜け出た被係止部86aは、図8Aに示すように、復元力により元の状態に戻る。
このように、構成された排気部70及び弁部材80の状態は、上記実施の形態に係る構成された排気部70及び弁部材80と同様に、外装体10における内外圧差の変動により図8A~図8Cに示すように遷移する。すなわち、通常時では、図8Aに示すように、排気部70の第一排気口75及び第二排気口74は弁部材80に覆われ、弁部材80は、排気部70を閉塞する閉状態にする。その後、蓄電素子100の開弁等に起因して外装体10の内圧が上昇して第一閾値を超えた場合、図8Bに示すように、弁部材80は、被係止部83が第一係止部77aに係止されていることで排気部70にとどまった状態で、外周部82が外装体10の内圧を受けて弾性変形する。これにより、排気部70は、第一開状態となる。
排気部70が第一開状態となった後に、外装体10の内圧が低下し、第一閾値以下となった場合、排気部70は、図8Aに示す閉状態に戻る。つまり、弁部材80は、復元力によって元の形状に戻ることで排気部70を閉状態に戻す。
また、排気部70が第一開状態となった後においても外装体10の内圧が上昇し、外装体10の内圧が第二閾値を超えた場合、第一係止部77aによる被係止部83の係止が解かれ、弁部材80は、上方への移動が許容された状態となる。その結果、弁部材80は、排気部70から排出される気体に押されて上方に移動する。このとき、弁部材80に接続されたストッパ部86の被係止部86aが、排気部70の第二係止部77bに係止され、その結果、弁部材80は、おおよそ図8Cに示す位置で移動が規制される。
このように、本変形例において、弁部材80は、ストッパ部86を介して第二係止部77bに係止される。従って、例えば、内圧の上昇に伴って弁部材80が排気部70から外れた場合であっても、ストッパ部86の被係止部86aが排気部70から抜け出せないため、弁部材80が、排気部70に接続された排気流路を塞ぐ可能性が低減される。すなわち、排気部70が第二開状態となった場合において、外装体10の内部の気体をスムーズに外装体10の外部まで導くことができる。その結果、内圧の過度な上昇に伴う外装体10の破損の可能性がさらに低減される。
なお、図8A~図8Cでは、外装体10に収容部89(例えば図6A参照)は設けられていないが、本変形例においても外装体10に収容部89が設けられていてもよい。この場合、排気部70が第二開状態になった場合、弁部材80は、収容部89に収容され、かつ、ストッパ部86によって移動が規制される。これにより、たとえば、仮に、排気部70から外れた弁部材80が収容部89にしっかりと収容されなかった場合であっても、弁部材80の移動はストッパ部86によって規制される。
また、本変形例のように、弁部材80にストッパ部86を接続する場合、排気部70は、例えば、第一係止部77aを備えなくてもよい。この場合、例えばストッパ部86のストッパ軸部86bの長さを、筒状の排気部70の長さ以下にし、弁部材80を排気部70に取り付ける場合に、前面部81aを押下することでストッパ軸部86bを排気部70の内方に押し込むようにして取り付ける。これにより、ストッパ部86の被係止部86aが、第二係止部77bに引っ掛かった状態となり、弁部材80は、ストッパ軸部86bから下方向けの付勢力(引っ張り力)を受けて、排気部70に仮固定された状態となる。その状態で、外装体10の内圧が上昇して第一閾値を超えた場合、弁部材80は、図8Aに示すように弾性変形し、排気部70は第一開状態となる。また、外装体10の内圧がさらに上昇して第二閾値を超えた場合、ストッパ軸部86bが弁部材80によって上方に引っ張られ、これにより、被係止部86aは横幅を縮めるように変形して第二係止部77bとの係止が解かれる。その結果、弁部材80は排気部70から外れ、外装体10の内部の気体が第一排気口75及び第二排気口74から排出される。弁部材80が上記のように開弁動作を行うことで、排気部70の閉状態、第一開状態、及び第二開状態の間の遷移が実現されてもよい。なお、この場合、排気部70の上方に、収容部89が設けられていれば、排気部70から外れた弁部材80を収容部89に収容させることができる。
(変形例2)
図9は、実施の形態の変形例2に係る弁部材80aの開弁動作の一例を示す断面図である。具体的には、図9では、本変形例に係る弁部材80aが破裂した状態を示しており、この場合、排気部70は第二開状態である。
図9に示す本変形例に係る弁部材80aは、実施の形態に係る弁部材80と同様に、第一排気口75を覆う前面部81aと、第二排気口74を含む側壁部71の少なくとも一部を覆う外周部82とを有するキャップ状の部材である。従って、弁部材80aは、例えば、図6A及び図6Bにおける弁部材80と同じく、排気部70を閉状態と第一開状態の一方から他方に遷移させるように開弁動作を行う。
しかし、本変形例では、例えば前面部81aの中央部分を薄く形成することで、前面部81aが壊れやすくなっており、この点で、上記実施の形態に係る弁部材80と異なる。
これにより、仮に、排気部70の係止部76と、弁部材80の被係止部83との嵌め合いの箇所で癒着が発生するなど、外装体10の内圧が第二閾値を超えた場合であっても弁部材80が排気部70から外れない場合に、第一排気口75を開放することができる。つまり、弁部材80の一部または全部が壊れる(裂ける、割れる、砕ける、溶断する、溶解する、またはこれらの組み合わせなど)ことで、排気部70を第二開状態にすることができる。
なお、上記の開弁動作は、前面部81aに壊れやすい加工を施さない場合において実行されてもよい。また、外装体10の内圧が第二閾値を超えた場合に、弁部材80の一部または全部が壊れる、という動作が高確率で実行されるように、係止部76と被係止部83とを、互いの嵌め合い面積を大きくする、または、互いを接着剤で接着するなどにより、より強固に結合してもよい。
また、弁部材80が壊れることで排気部70を第二開状態にする場合、図9に示すように、排気部70の上方に収容部89を設けることで、弁部材80の破片を収容部89に収容させることも可能である。これにより、弁部材80の破片が排気流路を塞ぐ可能性が低減される。
このような弁部材80aを備える蓄電装置1は以下のように説明される。すなわち、本変形例に係る蓄電装置1は、外装体10の内圧に応じて排気部70の開閉状態を変化させる弁部材80aを備えている。弁部材80aは、内圧が第一閾値以下である場合、排気部70を覆っていることで排気部70を閉状態にする。弁部材80は、内圧が第一閾値を超える場合、内圧を受けて弾性変形することで、排気部70を、排気部70の一部が開放された第一開状態にする。弁部材80は、内圧が第一閾値より大きい第二閾値を超える場合、内圧を受けて壊れることで、排気部70を、第一開状態よりも大きく開放する第二開状態にする。
この構成より、本変形例に係る蓄電装置1は、上記実施の形態1に係る蓄電装置1と同じ効果を奏することができる。すなわち、蓄電装置1では、排気部70の閉状態と第一開状態との間の遷移を可能とし、かつ、第二開状態への遷移を可能にする弁部材80aが備えられることで、複数の蓄電素子100の状況に応じた安全のための開弁動作がなされる。すなわち、本変形例に係る蓄電装置1は、安全性が向上された蓄電装置である。
(他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電装置1について説明したが、本発明は、実施の形態及び変形例に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態及び変形例は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
例えば、筒状の排気部70は円筒状である必要はなく、例えば、角筒状であってもよい。この場合、第一排気口75は、角型の開口であってもよい。また、排気部70は、Z軸方向に沿って真っすぐな筒状である必要はなく、例えば、第一排気口75がY軸方向を向くように、途中で湾曲または屈曲した筒状であってもよい。これにより、例えば、外装体10の内部の気体を効率よく外部に排出することができる方向に、第一排気口75を向けることができる。
また、排気部70の状態は、閉状態、第一開状態及び第二開状態の3段階には限定されない。例えば、弁部材80の外周部82の変形度合いより、第一開状態をさらに2段階に分けてもよい。例えば、排気部70の側壁部71に、上下方向に並ぶ2つの貫通孔(下排気口及び上排気口)を設ける。この場合、弁部材80の外周部82が弾性変形することで下排気口が開放された状態を、第一開状態Aとし、外周部82がさらに弾性変形することで下排気口及び上排気口が開放された状態を、第一開状態Bと規定してもよい。
これにより、例えば、弁部材80を弾性域で変形させながら、排気部70から排出される気体の量を少量から少しずつ増やしていくことができる。そのため、例えば、外装体10の外部の温度の変化等に起因して外装体10の内圧が高まった場合は、弁部材80が小さく弾性変形することで、排気部70を第一開状態Aにし、これにより、外装体10の内外の圧力平衡を図ることができる。この場合、弁部材80の変形量が小さいため、外装体10の内圧が所定の値以下になった場合、弁部材80は、排気部70を即座に閉状態に戻すことができる。また、例えば1つの蓄電素子100が開弁した場合は、弁部材80が大きく弾性変形することで、排気部70を第一開状態Bにし、外装体10の内外の圧力平衡を図ることができる。これにより、例えば開弁の連鎖の可能性を低減させることができる。
また、本発明は、このような蓄電装置1として実現することができるだけでなく、当該蓄電装置1が備える外装体10として実現することもできる。