以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔本発明の概要〕
まず、本発明の概要について説明する。本発明は、ある白パターンに対する映像信号のノイズを、照明(白パターン)の照度若しくは輝度、またはレンズのF値の関数として測定し、映像信号がクリップされるポイント、すなわち照度若しくは輝度の増加またはF値の減少に伴い、ノイズの測定値が減少するポイントを判定し、当該ポイントの照度、輝度またはF値に基づいて、ダイナミックレンジDを求めることを特徴とする。
これにより、非線形処理の設定はノイズに反映されないから、非線形処理の設定が変わってもダイナミックレンジDが変わることはない。つまり、カメラのダイナミックレンジDを定量的に測定するようにしたから、そのダイナミックレンジDを高精度に測定することができる。
一般に、非線形処理前のリニア信号に含まれる光ショットノイズNは、a(ゲイン),bを正の定数、Eを像面における白パターンの照度とすると、以下の式にて表される。
〔数3〕
N=a・√(bE)
=a・√(L) ・・・(3)
ここで、bE=Lとし、これをシーンの相対輝度とする。
映像信号がクリップしていない場合、またはカメラが飽和していない場合、xを非線形処理への入力信号とし、非線形処理の関数をf(x)とすると、非線形処理後の映像信号Vに含まれるノイズNnleは、以下の式にて表される。
〔数4〕
Nnle=f’(L)・N
=f’(L)・a・√(L) ・・・(4)
尚、非線形処理f(x)はf(x)>0を満たし、かつ単調に増加する関数であるとする。さらに、その微分値である1次導関数f’(x)は、f’(x)>0を満たし、かつ単調に減少する関数とする。E>0とし、前記式(4)の右辺をノイズNnleの計算値g(L)とする。
図13は、非線形処理f(x)によるノイズレベルの変化を示す図である。非線形処理f(x)が連続かつ単調に増加する関数であり、映像信号のレベルをV、ノイズレベルをN、Nの絶対値が十分に小さい正の実数であるとする。非線形処理が施された後のノイズレベルを含む映像信号(V+N)は、次の式にて表される。
〔数5〕
f(V+N)=f(V)+f’(V)・N ・・・(5)
非線形処理が施された後のノイズレベルは、次の式にて表される。
〔数6〕
f(V+N)-f(V)=f’(V)・N ・・・(6)
また、ノイズがショットノイズのみであるとすると、以下の式が成立する。この場合、前記式(6)の左辺は、ノイズNnleである。
〔数7〕
Nnle=f’(V)・a・√(L) ・・・(7)
このように、前記式(7)は前記式(4)を意味するから、非線形処理後の映像信号Vに含まれるノイズNnleは、前記式(4)にて表される。
図14は、シーンの相対輝度Lと白パターンの映像信号Vの関係を示す図であり、図15は、シーンの相対輝度LとノイズNnleの測定値及び計算値g(L)の関係を示す図である。図15において、大きい丸印が付されたグラフは、ノイズNnleの測定値を示し、小さい丸印が付されたグラフは、ノイズNnleの計算値g(L)を示す。
図14に示すように、映像信号Vがあるシーンの相対輝度Lでクリップされるか、または、映像信号Vを出力するカメラ13のイメージセンサが飽和し始めると、図15に示すように、ノイズNnleの測定値が減少する。また、映像信号Vがクリップポイントを超えた後も、ノイズNnleの測定値が減少していく。シーンの相対輝度Lがさらに上がると、ノイズNnleの測定値は最小値となる。これに対し、ノイズNnleの計算値g(L)は減少しない。
図16は、シーンの相対輝度LとノイズNnleの測定値及び計算値g(L)の1次導関数の関係を示す図である。図16において、バツ印が付されたグラフは、ノイズNnleの測定値の1次導関数を示し、印が付されていないグラフは、ノイズNnleの計算値g(L)の1次導関数、すなわち計算値g’(L)を示す。図15に示したノイズNnleの測定値及び計算値g(L)の違いは、図16に示すように、これらの1次導関数を計算することにより検知することができる。
図16から、ノイズNnleの測定値の1次導関数と、ノイズNnleの計算値g(L)の1次導関数(g’(L))とがフィッテングしないこと(丸型の破線箇所を参照)、また、ノイズNnleの測定値の1次導関数が極小値(αの箇所)をとることがわかる。
本発明では、映像信号Vがクリップされるポイントまたは映像信号Vが飽和するポイント、すなわちシーンの相対輝度Lの増加に伴って漸次変化していたノイズNnleの測定値が、以前よりも減少するポイント(減少の程度が大きいポイント)を判定し、当該ポイントの相対輝度Lを求める。例えば、ノイズNnleの測定値の1次導関数が極小値となるときのシーンの相対輝度Lmax、または、ノイズNnleの測定値の1次導関数が減少し始めるときのシーンの相対輝度Lpを求める。そして、本発明では、このときの相対輝度Lmax=LiまたはLp=Li、及びカメラにより撮影された白パターンの映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの相対輝度L0を用いて、ダイナミックレンジDを求める。以下、本発明について実施例1~6を挙げて具体的に説明する。
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。実施例1は、発光シーンの白パターンの相対輝度Li(シーンの相対輝度Li)を増加させる輝度制御信号を生成して光源を制御し、白パターンに対する映像信号のトータルノイズNT(Li)を相対輝度Liの関数として測定し、相対輝度Liの増加に伴ってトータルノイズNT(Li)が減少するポイントの相対輝度Li等に基づいて、ダイナミックレンジDを求める例である。
図1は、実施例1のダイナミックレンジ測定装置を含む全体システムを示す図である。このシステムは、白パターン部材11が装着された光源装置10、レンズ12が装着されたカメラ13及びダイナミックレンジ測定装置1を備えて構成される。
光源装置10は、輝度が均一な透過型の面光源であり、カメラ13の方向に、照度が均一な透過型の白パターン部材11が装着されている。光源装置10は、白パターン部材11を介して、白パターンをカメラ13へ発光する。
光源装置10は、輝度を自動変更する機構を備えている。光源装置10は、ダイナミックレンジ測定装置1から輝度制御信号を入力し、輝度制御信号に基づいて、白パターンの相対輝度Liが輝度制御信号の示す相対輝度Liとなるように、白パターン部材11を介して白パターンを発光する。
尚、光源装置10は、透過型の白パターン部材11に代えて、反射型の白パターン部材11を装着するようにしてもよい。
カメラ13は、レンズ12が装着されており、レンズ12を介して、白パターン部材11が装着された光源装置10による発光シーンの白パターンを撮影する。カメラ13は、撮影した白パターンに対応する映像信号をダイナミックレンジ測定装置1へ出力する。
ダイナミックレンジ測定装置1は、シーンの相対輝度Liを変化させるための輝度制御信号を光源装置10へ出力し、カメラ13から、シーンの相対輝度Liを変化させたときの映像信号を入力する。
ダイナミックレンジ測定装置1は、映像信号に基づいてトータルノイズNT(Li)を測定する(トータルノイズ測定値を求める)。ダイナミックレンジ測定装置1は、映像信号がクリップされるポイントまたは映像信号が飽和するポイント、すなわちシーンの相対輝度Liの増加に伴って漸次変化していたトータルノイズNT(Li)が、以前よりも減少するポイントを判定する。例えば、ダイナミックレンジ測定装置1は、シーンの相対輝度Liに対するトータルノイズNT(Li)の1次導関数が極小値となるポイント、またはトータルノイズNT(Li)の1次導関数が減少し始めるポイントを判定する。そして、ダイナミックレンジ測定装置1は、そのポイント(例えば極小または減少開始のポイント)における相対輝度Li、及びカメラ13により撮影された白パターンの映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの相対輝度L0を用いて、ダイナミックレンジDを求める。
図1に示すように、ダイナミックレンジ測定装置1は、トータルノイズ測定部20-1、ゲイン計算部21、極値判定部22-1及びダイナミックレンジ計算部23を備えている。
トータルノイズ測定部20-1は、カメラ13から入力した映像信号に基づいて、シーンの相対輝度LiにおけるトータルノイズNT(Li)を測定する。トータルノイズNT(Li)の測定処理の詳細については後述する。そして、トータルノイズ測定部20-1は、トータルノイズNT(Li)をゲイン計算部21及び極値判定部22-1に出力する。ここで、トータルノイズNT(Li)には、固定パターンノイズ及びランダムノイズNR(Li)が含まれる。
ゲイン計算部21は、トータルノイズ測定部20-1からトータルノイズNT(Li)を入力し、トータルノイズNT(Li)であるノイズの測定値及びノイズの計算値に関するゲインの推定値a^を計算し、ゲインの推定値a^を極値判定部22-1に出力する。ゲインの推定値a^を計算する処理の詳細については後述する。
極値判定部22-1は、トータルノイズ測定部20-1からトータルノイズNT(Li)を入力すると共に、ゲイン計算部21からゲインの推定値a^を入力する。そして、極値判定部22-1は、シーンの相対輝度Liにおけるノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。前述のとおり、f’(Li)は、非線形処理f(Li)の微分値である1次導関数であり、非線形処理f(Li)及びその1次導関数f’(Li)は予め設定される。
極値判定部22-1は、シーンの相対輝度Liを増加させる輝度制御信号を生成して光源装置10へ出力し、トータルノイズNT(Li)及びノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))に基づいて、例えばトータルノイズNT(Li)の1次導関数の極値を判定する。そして、極値判定部22-1は、その極値における相対輝度Liをダイナミックレンジ計算部23に出力する。極値の判定手法等の詳細については後述する。
ダイナミックレンジ計算部23は、極値判定部22-1から極値における相対輝度Liを入力し、相対輝度Li等を用いてダイナミックレンジDを求める。
図2は、実施例1のダイナミックレンジ測定装置1の処理例を示すフローチャートである。まず、カメラ13は、映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの白パターンを撮影する。このときのシーンの相対輝度をL0とする。トータルノイズ測定部20-1は、このときの映像信号を入力し、映像信号に基づいて、シーンの相対輝度L0のときのトータルノイズNT(L0)を測定する(ステップS201)。
図3は、図2のステップS201,S202,S205におけるトータルノイズNT(L)の測定処理例を示すフローチャートである。映像信号における水平画素数をM、垂直画素数をNとし、被測定領域における水平画素の座標xをM1≦x≦M2、垂直画素の座標yをN1≦y≦N2とする。また、0≦x≦M-1,0≦y≦N-1とする。
トータルノイズ測定部20-1は、シーンの相対輝度Lのときの1フレームの映像信号について、被測定領域である有効エリアのデータV1(x,y)を取得する(ステップS301)。
トータルノイズ測定部20-1は、データV1(x,y)のRMS(Root Mean Square:二乗平均平方根)値をトータルノイズNT(L)として求める(ステップS302)。
具体的には、トータルノイズ測定部20-1は、以下の式にて、データV
1(x,y)の平均値V1#を求める。
〔数8〕
トータルノイズ測定部20-1は、以下の式にて、データV
1(x,y)のRMS値をトータルノイズN
T(L)として求める。
〔数9〕
図2に戻って、カメラ13は、シーンの相対輝度Liのときの白パターンを撮影する。トータルノイズ測定部20-1は、このときの映像信号を入力し、映像信号に基づいて、図3に示した測定処理にて、シーンの相対輝度LiのときのトータルノイズNT(Li)を測定する(ステップS202)。
ゲイン計算部21は、トータルノイズ測定部20-1により測定されたトータルノイズNT(Li)を用いて、以下の式にて、ゲインの推定値a^を計算する(ステップS203)。
〔数10〕
a^=NT(Li)/{f’(Li)・√(Li)} ・・・(10)
ゲインの推定値a^は、トータルノイズNT(Li)と、非線形処理の1次導関数f’(Li)に、シーンの相対輝度Liの平方根√(Li)を乗算した乗算結果との間の比である。
尚、ゲインの推定値a^を計算するときのシーンの相対輝度Liは、相対輝度L0であってもよい。また、トータルノイズ測定部20-1は、複数のシーンの相対輝度Liのそれぞれについて、トータルノイズNT(Li)を測定し、ゲイン計算部21は、複数のトータルノイズNT(Li)を用いて、曲線回帰によりゲインの推定値a^を計算するようにしてもよい。
極値判定部22-1は、カメラ13がシーンの相対輝度Liのときの白パターンを撮影するように、すなわち光源装置10がシーンの相対輝度Liのときの白パターンを発光するように、シーンの相対輝度Liに対応する輝度制御信号を生成する。そして、極値判定部22-1は、輝度制御信号を光源装置10へ出力する(ステップS204)。
例えば、極値判定部22-1は、複数のシーンの相対輝度Liと、これらに対応する輝度制御信号とが格納されたテーブルを備えている。極値判定部22-1は、第1番目のシーンの相対輝度Liを設定し、テーブルから、第1番目のシーンの相対輝度Liに対応する輝度制御信号を読み出し、これを光源装置10へ出力する。
極値判定部22-1は、後述するステップS208から移行して、第1番目のシーンの相対輝度Liに所定増分を加算し、2番目のシーンの相対輝度Liを設定する。そして、極値判定部22-1は、テーブルから対応する輝度制御信号を読み出して出力し、後述するステップS208の条件を満たすまで、相対輝度Liを増加させ、前述の処理を続ける。
尚、極値判定部22-1は、第1番目のシーンの相対輝度Liを示す輝度制御信号を生成して出力し、第2番目以降のシーンの相対輝度Liについて、出力済みの輝度制御信号に対し、相対輝度Liの所定増分を反映した新たな相対輝度Liを示す輝度制御信号を生成し、これを出力するようにしてもよい。
これにより、光源装置10は、輝度制御信号を入力し、当該輝度制御信号に基づいて、シーンの相対輝度Liのときの白パターンを発光し、カメラ13は、シーンの相対輝度Liのときの白パターンを撮影する。
ダイナミックレンジ測定装置1のトータルノイズ測定部20-1は、このときの映像信号を入力し、トータルノイズNT(Li)を測定する(ステップS205)。トータルノイズNT(Li)は、シーンの相対輝度Liにおけるトータルノイズの測定値である。
極値判定部22-1は、ゲイン計算部21によりステップS203にて計算されたゲインの推定値a^、今回のシーンの相対輝度Li、及び非線形処理f(Li)の1次導関数f’(Li)を用いて、シーンの相対輝度Liにおけるトータルノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める(ステップS206)。
極値判定部22-1は、シーンの相対輝度Liにおけるトータルノイズの測定値であるトータルノイズNT(Li)の1次導関数について、極値を判定する(ステップS207)。
極値判定部22-1は、相対輝度Liのときの前記1次導関数の値が極値でないと判定した場合(ステップS208:N)、ステップS204へ移行する。そして、極値判定部22-1は、ステップS204において、シーンの相対輝度Liを変化させて新たなシーンの相対輝度Liを設定し、新たなシーンの相対輝度Liに対応する輝度制御信号を生成して光源装置10へ出力する。
一方、極値判定部22-1は、相対輝度Liのときの前記1次導関数の値が極値であると判定した場合(ステップS208:Y)、ダイナミックレンジ計算部23は、相対輝度Li等を用いてダイナミックレンジDを計算する(ステップS209)。
例えば、極値判定部22-1は、ステップS204~S208において、以下の式を満たすiの値を求めるまで、シーンの相対輝度Liを増加させる輝度制御信号を生成して光源装置10へ出力し、増加する相対輝度Li毎に、トータルノイズNT(Li)を測定すると共に、トータルノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。
〔数11〕
i=argmax|NT(Li)-a^・f’(Li)・√(Li)| ・・・(11)
すなわち、極値判定部22-1は、前記式(11)にて、シーンの相対輝度LiにおけるトータルノイズNT(Li)から、シーンの相対輝度Liにおけるトータルノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を減算し、減算結果の絶対値を求め、当該絶対値が最大となるiの値を求める。
尚、極値判定部22-1は、前記式(11)に代えて、以下の式を満たすiの値を求めるようにしてもよい。
〔数12〕
i=argmin{NT(Li)-a^・f’(Li)・√(Li)} ・・・(12)
すなわち、極値判定部22-1は、前記式(12)にて、シーンの相対輝度LiにおけるトータルノイズNT(Li)から、シーンの相対輝度Liにおけるトータルノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を減算し、減算結果が最小となるiの値を求める。
ダイナミックレンジ計算部23は、ステップS209において、ステップS207,S208にて求めたiの値における(極値における)相対輝度Li、及びカメラ13により撮影された白パターンの映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの相対輝度L0(ステップS201)を用いて、以下の式にて、ダイナミックレンジDを求める。
〔数13〕
D=(Li/L0)×100% ・・・(13)
以上のように、実施例1のダイナミックレンジ測定装置1によれば、トータルノイズ測定部20-1は、シーンの相対輝度Liのときの映像信号を入力し、映像信号に基づいて、トータルノイズNT(Li)を測定する。極値判定部22-1は、シーンの相対輝度Liにおけるトータルノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。これにより、シーンの相対輝度Liにおけるトータルノイズの測定値及び計算値が得られる。
極値判定部22-1は、シーンの相対輝度Liを増加させる輝度制御信号を生成して光源装置10へ出力し、増加する相対輝度Li毎に、トータルノイズNT(Li)を測定すると共に、トータルノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。そして、極値判定部22-1は、トータルノイズNT(Li)及びトータルノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))に基づいて、極値を判定する。
ダイナミックレンジ計算部23は、極値における相対輝度Li、及びカメラ13により撮影された白パターンの映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの相対輝度L0を用いて、ダイナミックレンジDを求める。
これにより、白パターンに対する映像信号のトータルノイズNT(Li)を、相対輝度Liの関数として測定することができ、トータルノイズNT(Li)及びその計算値(a^・f’(Li)・√(Li))に基づいて、ダイナミックレンジDを求めることができる。
非線形処理の設定が変わってもトータルノイズNT(Li)は変化しないから、非線形処理の設定が変わってもダイナミックレンジDが変わることはない。つまり、ダイナミックレンジDを定量的に測定するようにしたから、そのダイナミックレンジDを高精度に測定することができる。
また、トータルノイズNT(Li)は、1フレームの映像信号から測定されるから、2フレーム以上の映像信号から測定される後述する実施例3~6のランダムノイズNR1(Li),NR2(Li)を用いる場合に比べ、処理が簡易となる。
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。実施例2では、前述の実施例1と同様に、トータルノイズNT(Li)を測定する。また、実施例2では、実施例1にて用いた輝度制御信号の代わりに絞り制御信号を用いる。
具体的には、実施例2は、シーンの相対輝度Liを増加させるために、レンズ12のF値を減少させる絞り制御信号を生成してレンズ12の絞りを制御し、白パターンに対する映像信号のトータルノイズNT(Li)を相対輝度Liの関数として測定し、相対輝度Liの増加に伴ってトータルノイズNT(Li)が減少するポイントの相対輝度Li等に基づいて、ダイナミックレンジDを求める例である。
図4は、実施例2のダイナミックレンジ測定装置を含む全体システムを示す図である。このシステムは、白パターン部材11が装着された光源装置10、レンズ12が装着されたカメラ13及びダイナミックレンジ測定装置2を備えて構成される。
白パターン部材11及びカメラ13は、図1の実施例1に示したものと同様であるから、ここでは説明を省略する。光源装置10は、図1に示した光源装置10と同様に、輝度が均一な透過型の面光源であり、カメラ13の方向に、照度が均一な透過型の白パターン部材11が装着されている。光源装置10は、白パターン部材11を介して、白パターンを発光する。光源装置10は、実施例1において、ダイナミックレンジ測定装置1から輝度制御信号を入力するが、実施例2では輝度制御信号を入力しない。
レンズ12は、絞りを自動変更する機構を備えており、ダイナミックレンジ測定装置2から絞り制御信号を入力し、絞り制御信号に基づいて、当該レンズ12の絞りが絞り制御信号の示すF値となるように(カメラ13が撮影する白パターンの相対輝度Liに対応するF値となるように)、白パターンの入射を制限する。
ダイナミックレンジ測定装置2は、シーンの相対輝度Liを変化させるための絞り制御信号をレンズ12へ出力し、カメラ13から、シーンの相対輝度Liを変化させたときの映像信号を入力する。
ダイナミックレンジ測定装置2は、図1のダイナミックレンジ測定装置1と同様に、映像信号に基づいてトータルノイズNT(Li)を測定する。ダイナミックレンジ測定装置2は、映像信号がクリップされるポイントまたは映像信号が飽和するポイント、すなわちシーンの相対輝度Liの増加に伴って漸次変化していたトータルノイズNT(Li)が、以前よりも減少するポイントを判定する。例えば、ダイナミックレンジ測定装置2は、シーンの相対輝度Liに対するトータルノイズNT(Li)の1次導関数が極小値となるポイント、またはトータルノイズNT(Li)の1次導関数が減少し始めるポイントを判定する。そして、ダイナミックレンジ測定装置2は、そのポイント(例えば極小または減少開始のポイント)における相対輝度Li、及びカメラ13により撮影された白パターンの映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの相対輝度L0を用いて、ダイナミックレンジDを求める。
図4に示すように、ダイナミックレンジ測定装置2は、トータルノイズ測定部20-1、ゲイン計算部21、極値判定部22-2及びダイナミックレンジ計算部23を備えている。
図1に示した実施例1のダイナミックレンジ測定装置1と図4に示す実施例2のダイナミックレンジ測定装置2とを比較すると、両ダイナミックレンジ測定装置1,2は、トータルノイズ測定部20-1、ゲイン計算部21及びダイナミックレンジ計算部23を備えている点で共通する。一方、ダイナミックレンジ測定装置2は、ダイナミックレンジ測定装置1に備えた極値判定部22-1の代わりに極値判定部22-2を備えている点で、ダイナミックレンジ測定装置1と相違する。
トータルノイズ測定部20-1、ゲイン計算部21及びダイナミックレンジ計算部23は、図1の実施例1に示したものと同様であるから、ここでは説明を省略する。
極値判定部22-2は、トータルノイズ測定部20-1からトータルノイズNT(Li)を入力すると共に、ゲイン計算部21からゲインの推定値a^を入力する。そして、極値判定部22-2は、シーンの相対輝度Liにおけるノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。
極値判定部22-2は、シーンの相対輝度Liを増加させる絞り制御信号を生成してレンズ12へ出力し、トータルノイズNT(Li)及びノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))に基づいて、例えばトータルノイズNT(Li)の1次導関数の極値を判定する。そして、極値判定部22-2は、その極値における相対輝度Liをダイナミックレンジ計算部23に出力する。
ダイナミックレンジ測定装置2は、図2に示したフローチャートにおいて、ステップS201~S203,S205~S209と同様の処理を行う。
ダイナミックレンジ測定装置2の極値判定部22-2は、ステップS204において、レンズ12が白パターンの入射を制限して、カメラ13がシーンの相対輝度Liのときの白パターンを撮影するように、シーンの相対輝度Liに対応する絞り制御信号を生成する。そして、極値判定部22-2は、絞り制御信号をレンズ12へ出力する。
例えば、極値判定部22-2は、複数のシーンの相対輝度Liと、これらに対応するF値と、これらのF値に対応する絞り制御信号とが格納されたテーブルを備えている。極値判定部22-2は、第1番目のシーンの相対輝度Liを設定し、テーブルから、第1番目のシーンの相対輝度Liに対応するF値の絞り制御信号を読み出し、これをレンズ12へ出力する。
極値判定部22-2は、図2のステップS208から移行して、第1番目のシーンの相対輝度Liに所定増分を加算し、2番目のシーンの相対輝度Liを設定し、テーブルから対応するF値の絞り制御信号を読み出して出力する。極値判定部22-2は、図2のステップS208の条件を満たすまで、相対輝度Liを増加させ(F値を減少させ)、前述の処理を続ける。
尚、極値判定部22-2は、第1番目のシーンの相対輝度Liに対応するF値を示す絞り制御信号を生成して出力し、第2番目以降のシーンの相対輝度Liについて、出力済みの絞り制御信号に対し、相対輝度の所定増分に対応するF値の所定減分を反映した新たなF値を示す絞り制御信号を生成し、これを出力するようにしてもよい。
これにより、レンズ12は、絞り制御信号を入力し、当該絞り制御信号に基づいて、カメラ13がシーンの相対輝度Liのときの白パターンを撮影するように、入射を制限する。
つまり、極値判定部22-2は、図2のステップS204~S208において、前記式(11)または(12)を満たすiの値を求めるまで、シーンの相対輝度Liを増加させる(F値を減少させる)絞り制御信号を生成してレンズ12へ出力し、増加する相対輝度Li毎に、トータルノイズNT(Li)を測定すると共に、トータルノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。
以上のように、実施例2のダイナミックレンジ測定装置2によれば、トータルノイズ測定部20-1は、シーンの相対輝度Liのときの映像信号を入力し、映像信号に基づいて、トータルノイズNT(Li)を測定する。極値判定部22-2は、シーンの相対輝度Liにおけるトータルノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。これにより、シーンの相対輝度Liにおけるトータルノイズの測定値及び計算値が得られる。
極値判定部22-2は、シーンの相対輝度Liを増加させる(F値を減少させる)絞り制御信号を生成してレンズ12へ出力し、増加する相対輝度Li毎に、トータルノイズNT(Li)を測定すると共に、トータルノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。そして、極値判定部22-2は、トータルノイズNT(Li)及びトータルノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))に基づいて、極値を判定する。
ダイナミックレンジ計算部23は、極値における相対輝度Li、及びカメラ13により撮影された白パターンの映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの相対輝度L0を用いて、ダイナミックレンジDを求める。
これにより、実施例1と同様に、白パターンに対する映像信号のトータルノイズNT(Li)を、相対輝度Liの関数として測定することができ、トータルノイズNT(Li)及びその計算値(a^・f’(Li)・√(Li))に基づいて、ダイナミックレンジDを求めることができる。また、実施例1と同様の効果を奏し、ダイナミックレンジDを高精度に測定することができる。
〔実施例3〕
次に、実施例3について説明する。前述の実施例1,2では、トータルノイズNT(Li)を用いてダイナミックレンジDを測定するようにしたが、一般に、トータルノイズNT(Li)には固定パターンノイズ成分が含まれるため、ランダムノイズNR(Li)のみを用いてダイナミックレンジDを測定する方が、より高精度な測定が可能となる。実施例3では、2フレームの画像間の差分を用いてランダムノイズNR1(Li)を測定する。
具体的には、実施例3は、シーンの相対輝度Liを増加させる輝度制御信号を生成して光源を制御し、白パターンに対する映像信号のランダムノイズNR1(Li)を相対輝度Liの関数として測定し、相対輝度Liの増加に伴ってランダムノイズNR1(Li)が減少するポイントの相対輝度Li等に基づいて、ダイナミックレンジDを求める例である。
図5は、実施例3のダイナミックレンジ測定装置を含む全体システムを示す図である。このシステムは、白パターン部材11が装着された光源装置10、レンズ12が装着されたカメラ13及びダイナミックレンジ測定装置3を備えて構成される。
光源装置10、白パターン部材11、レンズ12及びカメラ13は、図1の実施例1に示したものと同様であるから、ここでは説明を省略する。
ダイナミックレンジ測定装置3は、シーンの相対輝度Liを変化させるための輝度制御信号を光源装置10へ出力し、カメラ13から、シーンの相対輝度Liを変化させたときの映像信号を入力する。
ダイナミックレンジ測定装置3は、映像信号に基づいてランダムノイズNR1(Li)を測定する(ランダムノイズ測定値を求める)。ダイナミックレンジ測定装置3は、映像信号がクリップされるポイントまたは映像信号が飽和するポイント、すなわちシーンの相対輝度Liの増加に伴って漸次変化していたランダムノイズNR1(Li)が、以前よりも減少するポイントを判定する。例えば、ダイナミックレンジ測定装置3は、シーンの相対輝度Liに対するランダムノイズNR1(Li)の1次導関数が極小値となるポイント、またはランダムノイズNR1(Li)の1次導関数が減少し始めるポイントを判定する。そして、ダイナミックレンジ測定装置3は、そのポイント(例えば極小または減少開始のポイント)における相対輝度Li、及びカメラ13により撮影された白パターンの映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの相対輝度L0を用いて、ダイナミックレンジDを求める。
図5に示すように、ダイナミックレンジ測定装置3は、ランダムノイズ測定部20-2、ゲイン計算部21、極値判定部22-1及びダイナミックレンジ計算部23を備えている。
ランダムノイズ測定部20-2は、カメラ13から入力した映像信号に基づいて、シーンの相対輝度LiにおけるランダムノイズNR1(Li)を測定する。ランダムノイズNR1(Li)の測定処理の詳細については後述する。そして、ランダムノイズ測定部20-2は、ランダムノイズNR1(Li)をゲイン計算部21及び極値判定部22-1に出力する。ここで、トータルノイズNT(Li)は、固定パターンノイズ及びランダムノイズNR1(Li)からなるから、ランダムノイズNR1(Li)は、トータルノイズNT(Li)から固定パターンノイズ成分を除いたノイズ成分である。後述するランダムノイズNR2(Li)についても同様である。
ゲイン計算部21は、ランダムノイズ測定部20-2からランダムノイズNR1(Li)を入力し、ランダムノイズNR1(Li)であるノイズの測定値及びノイズの計算値に関するゲインの推定値a^を計算し、ゲインの推定値a^を極値判定部22-1に出力する。ゲインの推定値a^を計算する処理の詳細については後述する。
極値判定部22-1は、ランダムノイズ測定部20-2からランダムノイズNR1(Li)を入力すると共に、ゲイン計算部21からゲインの推定値a^を入力する。そして、極値判定部22-1は、シーンの相対輝度Liにおけるノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。
極値判定部22-1は、シーンの相対輝度Liを増加させる輝度制御信号を生成して光源装置10へ出力し、ランダムノイズNR1(Li)及びノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))に基づいて、例えばランダムノイズNR1(Li)の1次導関数の極値を判定する。そして、極値判定部22-1は、その極値における相対輝度Liをダイナミックレンジ計算部23に出力する。極値の判定手法等の詳細については後述する。
ダイナミックレンジ計算部23は、極値判定部22-1から極値における相対輝度Liを入力し、相対輝度Li等を用いてダイナミックレンジDを求める。
図6は、実施例3のダイナミックレンジ測定装置3の処理例を示すフローチャートである。まず、カメラ13は、映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの白パターンを撮影する。このときのシーンの相対輝度をL0とする。ランダムノイズ測定部20-2は、このときの映像信号を入力し、映像信号に基づいて、シーンの相対輝度L0のときのランダムノイズNR1(L0)を測定する(ステップS601)。
図7は、図6のステップS601,S602,S605におけるランダムノイズNR1(L)の測定処理例を示すフローチャートである。図5を参照して、ランダムノイズ測定部20-2は、フレームメモリ30、減算部31、RMS計算部32及び乗算部33を備えている。
図7において、映像信号における水平画素数をM、垂直画素数をNとし、被測定領域における水平画素の座標xをM1≦x≦M2、垂直画素の座標yをN1≦y≦N2とする。また、0≦x≦M-1,0≦y≦N-1とする。
ランダムノイズ測定部20-2は、シーンの相対輝度Lのときの連続する2フレームの映像信号について、被測定領域である有効エリアのデータV1(x,y),V2(x,y)を取得する(ステップS701)。具体的には、ランダムノイズ測定部20-2のフレームメモリ30は、映像信号のデータV1(x,y),V2(x,y),・・・を順次保存する。
ランダムノイズ測定部20-2は、データV1(x,y),V2(x,y)の差分ΔV(x,y)を計算する(ステップS702)。ここで、連続する2フレームでは固定パターンノイズが変動しないから、差分ΔV(x,y)は、ランダムノイズが反映された値となる。
具体的には、ランダムノイズ測定部20-2の減算部31は、フレームメモリ30から現在のフレームに対して1つ手前のフレームのデータV1(x,y)を読み出し、以下の式にて、当該データV1(x,y)と現在のフレームのデータV2(x,y)との差分ΔV(x,y)を計算する。
〔数14〕
ΔV(x,y)=V1(x,y)-V2(x,y) ・・・(14)
ランダムノイズ測定部20-2は、差分ΔV(x,y)のRMS値を計算し(ステップS703)、差分ΔV(x,y)のRMS値に1/√2を乗算し、ランダムノイズNR1(L)を求める(ステップS704)。
具体的には、RMS計算部32は、以下の式にて、差分ΔV(x,y)の平均値ΔV#を求める。
〔数15〕
RMS計算部32及び乗算部33は、以下の式にて、差分ΔV(x,y)のRMS値に1/√2を乗算し、ランダムノイズN
R1(L)を求める。
〔数16〕
図6に戻って、カメラ13は、シーンの相対輝度Liのときの白パターンを撮影する。ランダムノイズ測定部20-2は、このときの映像信号を入力し、映像信号に基づいて、図7に示した測定処理にて、シーンの相対輝度LiのときのランダムノイズNR1(Li)を測定する(ステップS602)。
ゲイン計算部21は、ランダムノイズ測定部20-2により測定されたランダムノイズNR1(Li)を用いて、以下の式にて、ゲインの推定値a^を計算する(ステップS603)。
〔数17〕
a^=NR1(Li)/{f’(Li)・√(Li)} ・・・(17)
ゲインの推定値a^は、ランダムノイズNR1(Li)と、非線形処理の1次導関数f’(Li)に、シーンの相対輝度Liの平方根√(Li)を乗算した乗算結果との間の比である。
尚、ゲインの推定値a^を計算するときのシーンの相対輝度Liは、相対輝度L0であってもよい。また、ランダムノイズ測定部20-2は、複数のシーンの相対輝度Liのそれぞれについて、ランダムノイズNR1(Li)を測定し、ゲイン計算部21は、複数のランダムノイズNR1(Li)を用いて、曲線回帰によりゲインの推定値a^を計算するようにしてもよい。
極値判定部22-1は、図2のステップS204と同様に、カメラ13がシーンの相対輝度Liのときの白パターンを撮影するように、すなわち光源装置10がシーンの相対輝度Liのときの白パターンを発光するように、シーンの相対輝度Liに対応する輝度制御信号を生成する。そして、極値判定部22-1は、輝度制御信号を光源装置10へ出力する(ステップS604)。
ランダムノイズ測定部20-2は、このときの映像信号を入力し、ランダムノイズNR1(Li)を測定する(ステップS605)。ランダムノイズNR1(Li)は、シーンの相対輝度Liにおけるランダムノイズの測定値である。
極値判定部22-1は、図2のステップS206と同様に、前記式(4)にて、シーンの相対輝度Liにおけるランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める(ステップS606)。
極値判定部22-1は、図2のステップS207と同様に、シーンの相対輝度Liにおけるランダムノイズの測定値であるランダムノイズNR1(Li)の1次導関数について、極値を判定する(ステップS607)。
極値判定部22-1は、図2のステップS208と同様に、相対輝度Liのときの前記1次導関数の値が極値でないと判定した場合(ステップS608:N)、ステップS604へ移行する。そして、極値判定部22-1は、ステップS604において、シーンの相対輝度Liを変化させて新たなシーンの相対輝度Liを設定し、新たなシーンの相対輝度Liに対応する輝度制御信号を生成して光源装置10へ出力する。
一方、極値判定部22-1は、図2のステップS208と同様に、相対輝度Liのときの前記1次導関数の値が極値であると判定した場合(ステップS608:Y)、ダイナミックレンジ計算部23は、図2のステップS209と同様に、相対輝度Li等を用いてダイナミックレンジDを計算する(ステップS609)。
例えば、極値判定部22-1は、ステップS604~S608において、以下の式を満たすiの値を求めるまで、シーンの相対輝度Liを増加させる輝度制御信号を生成して光源装置10へ出力し、増加する相対輝度Li毎に、ランダムノイズNR1(Li)を測定すると共に、ランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。
〔数18〕
i=argmax|NR1(Li)-a^・f’(Li)・√(Li)| ・・・(18)
すなわち、極値判定部22-1は、前記式(18)にて、シーンの相対輝度LiにおけるランダムノイズNR1(Li)から、シーンの相対輝度Liにおけるランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を減算し、減算結果の絶対値を求め、当該絶対値が最大となるiの値を求める。
尚、極値判定部22-1は、前記式(18)に代えて、以下の式を満たすiの値を求めるようにしてもよい。
〔数19〕
i=argmin{NR1(Li)-a^・f’(Li)・√(Li)} ・・・(19)
すなわち、極値判定部22-1は、前記式(19)にて、シーンの相対輝度LiにおけるランダムノイズNR1(Li)から、シーンの相対輝度Liにおけるランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を減算し、減算結果が最小となるiの値を求める。
以上のように、実施例3のダイナミックレンジ測定装置3によれば、ランダムノイズ測定部20-2は、シーンの相対輝度Liのときの映像信号を入力し、映像信号に基づいて、ランダムノイズNR1(Li)を測定する。極値判定部22-1は、シーンの相対輝度Liにおけるランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。これにより、シーンの相対輝度Liにおけるランダムノイズの測定値及び計算値が得られる。
極値判定部22-1は、シーンの相対輝度Liを増加させる輝度制御信号を生成して光源装置10へ出力し、増加する相対輝度Li毎に、ランダムノイズNR1(Li)を測定すると共に、ランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。そして、極値判定部22-1は、ランダムノイズNR1(Li)及びランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))に基づいて、極値を判定する。
ダイナミックレンジ計算部23は、極値における相対輝度Li、及びカメラ13により撮影された白パターンの映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの相対輝度L0を用いて、ダイナミックレンジDを求める。
これにより、白パターンに対する映像信号のランダムノイズNR1(Li)を、相対輝度Liの関数として測定することができ、ランダムノイズNR1(Li)及びその計算値(a^・f’(Li)・√(Li))に基づいて、ダイナミックレンジDを求めることができる。
非線形処理の設定が変わってもランダムノイズNR1(Li)は変化しないから、非線形処理の設定が変わってもダイナミックレンジDが変わることはない。また、ランダムノイズNR1(Li)には固定パターンノイズが含まれていないから、トータルノイズNT(Li)を用いるよりも、精度の高いダイナミックレンジDを求めることができる。つまり、ダイナミックレンジDを、ランダムノイズNR1(Li)を用いて定量的に測定するようにしたから、そのダイナミックレンジDを一層高精度に測定することができる。
また、ランダムノイズNR1(Li)は、連続する2フレームの映像信号から測定されるから、2フレームを超えるフレーム数の映像信号から測定される後述する実施例5,6のランダムノイズNR2(Li)を用いる場合に比べ、処理が簡易となる。
〔実施例4〕
次に、実施例4について説明する。実施例4では、前述の実施例3と同様に、2フレームの画像間の差分を用いてランダムノイズNR1(Li)を測定する。また、実施例4では、実施例3にて用いた輝度制御信号の代わりに絞り制御信号を用いる。
具体的には、実施例4は、シーンの相対輝度Liを増加させるために、レンズ12のF値を減少させる絞り制御信号を生成してレンズ12の絞りを制御し、白パターンに対する映像信号のランダムノイズNR1(Li)を相対輝度Liの関数として測定し、相対輝度Liの増加に伴ってランダムノイズNR1(Li)が減少するポイントの相対輝度Li等に基づいて、ダイナミックレンジDを求める例である。
図8は、実施例4のダイナミックレンジ測定装置を含む全体システムを示す図である。このシステムは、白パターン部材11が装着された光源装置10、レンズ12が装着されたカメラ13及びダイナミックレンジ測定装置4を備えて構成される。
光源装置10、白パターン部材11、レンズ12及びカメラ13は、図4の実施例2に示したものと同様であるから、ここでは説明を省略する。
ダイナミックレンジ測定装置4は、シーンの相対輝度Liを変化させるための絞り制御信号をレンズ12へ出力し、カメラ13から、シーンの相対輝度Liを変化させたときの映像信号を入力する。
ダイナミックレンジ測定装置4は、図5のダイナミックレンジ測定装置3と同様に、映像信号に基づいてランダムノイズNR1(Li)を測定する。ダイナミックレンジ測定装置4は、映像信号がクリップされるポイントまたは映像信号が飽和するポイント、すなわちシーンの相対輝度Liの増加に伴って漸次変化していたランダムノイズNR1(Li)が、以前よりも減少するポイントを判定する。例えば、ダイナミックレンジ測定装置4は、シーンの相対輝度Liに対するランダムノイズNR1(Li)の1次導関数が極小値となるポイント、またはランダムノイズNR1(Li)の1次導関数が減少し始めるポイントを判定する。そして、ダイナミックレンジ測定装置4は、そのポイント(例えば極小または減少開始のポイント)における相対輝度Li、及びカメラ13により撮影された白パターンの映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの相対輝度L0を用いて、ダイナミックレンジDを求める。
図8に示すように、ダイナミックレンジ測定装置4は、ランダムノイズ測定部20-2、ゲイン計算部21、極値判定部22-2及びダイナミックレンジ計算部23を備えている。
図5に示した実施例3のダイナミックレンジ測定装置3と図8に示す実施例4のダイナミックレンジ測定装置4とを比較すると、両ダイナミックレンジ測定装置3,4は、ランダムノイズ測定部20-2、ゲイン計算部21及びダイナミックレンジ計算部23を備えている点で共通する。一方、ダイナミックレンジ測定装置4は、ダイナミックレンジ測定装置3に備えた極値判定部22-1の代わりに極値判定部22-2を備えている点で、ダイナミックレンジ測定装置3と相違する。
ランダムノイズ測定部20-2、ゲイン計算部21及びダイナミックレンジ計算部23は、図5の実施例3に示したものと同様であるから、ここでは説明を省略する。また、極値判定部22-2は、図4の実施例2に示したものと同様であり、トータルノイズNT(Li)の代わりにランダムノイズNR1(Li)を用いるから、ここでは説明を省略する。
以上のように、実施例4のダイナミックレンジ測定装置4によれば、ランダムノイズ測定部20-2は、シーンの相対輝度Liのときの映像信号を入力し、映像信号に基づいて、2フレームの画像間の差分を用いてランダムノイズNR1(Li)を測定する。極値判定部22-2は、シーンの相対輝度Liにおけるランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。これにより、シーンの相対輝度Liにおけるランダムノイズの測定値及び計算値が得られる。
極値判定部22-2は、シーンの相対輝度Liを増加させる(F値を減少させる)絞り制御信号を生成してレンズ12へ出力し、増加する相対輝度Li毎に、ランダムノイズNR1(Li)を測定すると共に、ランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。そして、極値判定部22-2は、ランダムノイズNR1(Li)及びランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))に基づいて、極値を判定する。
ダイナミックレンジ計算部23は、極値における相対輝度Li、及びカメラ13により撮影された白パターンの映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの相対輝度L0を用いて、ダイナミックレンジDを求める。
これにより、実施例3と同様に、白パターンに対する映像信号のランダムノイズNR1(Li)を、相対輝度Liの関数として測定することができ、ランダムノイズNR1(Li)及びその計算値(a^・f’(Li)・√(Li))に基づいて、ダイナミックレンジDを求めることができる。また、実施例3と同様の効果を奏し、ダイナミックレンジDを一層高精度に測定することができる。
〔実施例5〕
次に、実施例5について説明する。前述の実施例3では、2フレームの画像間の差分を用いてランダムノイズNR1(Li)を測定するようにしたが、実施例5では、実施例3のランダムノイズNR1(Li)とは異なり、複数フレームの加算平均画像と当該フレームの画像との間の差分を用いてランダムノイズNR2(Li)を測定する。
具体的には、実施例5は、シーンの相対輝度Liを増加させる輝度制御信号を生成して光源を制御し、白パターンに対する映像信号のランダムノイズNR2(Li)を相対輝度Liの関数として測定し、相対輝度Liの増加に伴ってランダムノイズNR2(Li)が減少するポイントの相対輝度Li等に基づいて、ダイナミックレンジDを求める例である。
図9は、実施例5のダイナミックレンジ測定装置を含む全体システムを示す図である。このシステムは、白パターン部材11が装着された光源装置10、レンズ12が装着されたカメラ13及びダイナミックレンジ測定装置5を備えて構成される。
光源装置10、白パターン部材11、レンズ12及びカメラ13は、図1の実施例1に示したものと同様であるから、ここでは説明を省略する。
ダイナミックレンジ測定装置5は、シーンの相対輝度Liを変化させるための輝度制御信号を光源装置10へ出力し、カメラ13から、シーンの相対輝度Liを変化させたときの映像信号を入力する。
ダイナミックレンジ測定装置5は、映像信号に基づいてランダムノイズNR2(Li)を測定する(ランダムノイズ測定値を求める)。ダイナミックレンジ測定装置5は、映像信号がクリップされるポイントまたは映像信号が飽和するポイント、すなわちシーンの相対輝度Liの増加に伴って漸次変化していたランダムノイズNR2(Li)が、以前よりも減少するポイントを判定する。例えば、ダイナミックレンジ測定装置5は、シーンの相対輝度Liに対するランダムノイズNR2(Li)の1次導関数が極小値となるポイント、またはランダムノイズNR2(Li)の1次導関数が減少し始めるポイントを判定する。そして、ダイナミックレンジ測定装置5は、そのポイント(例えば極小または減少開始のポイント)における相対輝度Li、及びカメラ13により撮影された白パターンの映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの相対輝度L0を用いて、ダイナミックレンジDを求める。
図9に示すように、ダイナミックレンジ測定装置5は、ランダムノイズ測定部20-3、ゲイン計算部21、極値判定部22-1及びダイナミックレンジ計算部23を備えている。
ランダムノイズ測定部20-3は、カメラ13から入力した映像信号に基づいて、シーンの相対輝度LiにおけるランダムノイズNR2(Li)を測定する。ランダムノイズNR2(Li)の測定処理の詳細については後述する。そして、ランダムノイズ測定部20-3は、ランダムノイズNR2(Li)をゲイン計算部21及び極値判定部22-1に出力する。
ゲイン計算部21、極値判定部22-1及びダイナミックレンジ計算部23は、図5の実施例3に示したものと同様であるから、ここでは説明を省略する。ゲイン計算部21及び極値判定部22-1は、ランダムノイズ測定部20-3からランダムノイズNR2(Li)を入力し、図5の実施例3に示したランダムノイズNR1(Li)の代わりに、ランダムノイズNR2(Li)を用いる。
ダイナミックレンジ測定装置5は、図6に示したフローチャートにおいて、ステップS601~S609と同様の処理を行う。この場合、ランダムノイズNR1(Li)の代わりに、ランダムノイズNR2(Li)を用いる。
図10は、図6のステップS601,S602,S605におけるランダムノイズNR1(L)の代わりに用いるランダムノイズNR2(L)の測定処理例を示すフローチャートである。図9を参照して、ランダムノイズ測定部20-3は、加算平均部34、減算部35、RMS計算部36及び乗算部37を備えている。
図10において、映像信号における水平画素数をM、垂直画素数をNとし、被測定領域における水平画素の座標xをM1≦x≦M2、垂直画素の座標yをN1≦y≦N2とする。また、0≦x≦M-1,0≦y≦N-1,0≦i≦T-1とする。Tは、フレームの数を示し、2以上の整数であり、iはフレーム番号を示す。また、以下に示すパラメータjは0以上の整数であり、フレームの番号を示す。
ランダムノイズ測定部20-3は、シーンの相対輝度LのときのTフレームの映像信号について、被測定領域である有効エリアのデータVi(x,y)を取得する(ステップS1001)。Tフレームは、予め設定された複数の番号のフレームを対象とする。
ランダムノイズ測定部20-3は、取得した有効エリアのデータVi(x,y)の加算平均V#(x,y)を計算する(ステップS1002)。
具体的には、ランダムノイズ測定部20-3の加算平均部34は、Tフレームの映像信号について、有効エリアのデータV
i(x,y)を取得し、以下の式にて、加算平均V#(x,y)を計算する。
〔数20〕
ランダムノイズ測定部20-3は、j番目のフレームのデータVj(x,y)を取得し(ステップS1003)、ステップS1002にて計算した加算平均V#(x,y)とデータVj(x,y)との間の差分ΔV(x,y)を計算する(ステップS1004)。ここで、加算平均V#(x,y)とデータVj(x,y)との間の差分を計算することで、固定パターンノイズが除去され、差分ΔV(x,y)は、ランダムノイズが反映された値となる。
具体的には、減算部35は、j番目のフレームのデータVj(x,y)を取得し、以下の式にて、データVj(x,y)から加算平均V#(x,y)を減算し、差分ΔV(x,y)を求める。
〔数21〕
ΔV(x,y)=Vj(x,y)-V#(x,y) ・・・(21)
ランダムノイズ測定部20-3は、差分ΔV(x,y)のRMS値を計算する(ステップS1005)。そして、ランダムノイズ測定部20-3は、パラメータjが0≦j≦T-1を満たす場合、差分ΔV(x,y)のRMS値に√(T/T-1)を乗算し、パラメータjが0≦j≦T-1を満たさない場合、差分ΔV(x,y)のRMS値に√(T/T+1)を乗算し、ランダムノイズNR2(L)を求める(ステップS1006)。
ここで、パラメータjが0≦j≦T-1を満たす場合とは、j番目のフレームが、ステップS1002における加算平均V#(x,y)の計算対象であるTフレームに含まれる場合を示す。また、パラメータjが0≦j≦T-1を満たさない場合とは、j番目のフレームが、前述のTフレームに含まれない場合を示す。
また、ランダムノイズNR2(L)を求める際に、差分ΔV(x,y)のRMS値に√(T/T-1)を乗算するか、または√(T/T+1)を乗算するか、すなわち0≦j≦T-1を満たすj番目のフレームのデータVj(x,y)を用いるか、または0≦j≦T-1を満たさないj番目のフレームのデータVj(x,y)を用いるかは、ユーザにより予め設定される。
具体的には、RMS計算部36は、ステップS1006にてランダムノイズN
R2(L)を求める際に、以下の式にて、差分ΔV(x,y)の平均値ΔV#を求める。
〔数22〕
RMS計算部36は、差分ΔV(x,y)のRMS値を計算し、乗算部37は、パラメータjが0≦j≦T-1を満たす場合、差分ΔV(x,y)のRMS値に√(T/T-1)を乗算し、ランダムノイズN
R2(L)を求める。この場合のRMS計算部36及び乗算部37の演算は、以下の式にて行われる。
〔数23〕
また、乗算部37は、パラメータjが0≦j≦T-1を満たさない場合、差分ΔV(x,y)のRMS値に√(T/T+1)を乗算し、ランダムノイズN
R2(L)を求める。この場合のRMS計算部36及び乗算部37の演算は、以下の式にて行われる。
〔数24〕
以上のように、実施例5のダイナミックレンジ測定装置5によれば、ランダムノイズ測定部20-3は、シーンの相対輝度Liのときの映像信号を入力し、映像信号に基づいて、複数フレームの加算平均画像と当該フレームの画像との間の差分を用いてランダムノイズNR2(Li)を測定する。極値判定部22-1は、シーンの相対輝度Liにおけるランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。これにより、シーンの相対輝度Liにおけるランダムノイズの測定値及び計算値が得られる。
極値判定部22-1は、シーンの相対輝度Liを増加させる輝度制御信号を生成して光源装置10へ出力し、増加する相対輝度Li毎に、ランダムノイズNR2(Li)を測定すると共に、ランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。そして、極値判定部22-1は、ランダムノイズNR2(Li)及びランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))に基づいて、極値を判定する。
ダイナミックレンジ計算部23は、極値における相対輝度Li、及びカメラ13により撮影された白パターンの映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの相対輝度L0を用いて、ダイナミックレンジDを求める。
これにより、実施例3と同様の効果を奏し、ダイナミックレンジDを、ランダムノイズNR2(Li)を用いて定量的に測定するようにしたから、トータルノイズNT(Li)を用いるよりも、ダイナミックレンジDを一層高精度に測定することができる。
〔実施例6〕
次に、実施例6について説明する。実施例6では、前述の実施例5と同様に、複数フレームの加算平均画像と当該フレームの画像との間の差分を用いてランダムノイズNR2(Li)を測定する。また、実施例6では、実施例5にて用いた輝度制御信号の代わりに絞り制御信号を用いる。
具体的には、実施例6は、シーンの相対輝度Liを増加させるために、レンズ12のF値を減少させる絞り制御信号を生成してレンズ12の絞りを制御し、白パターンに対する映像信号のランダムノイズを相対輝度Liの関数として測定し、相対輝度Liの増加に伴ってランダムノイズNR2(Li)が減少するポイントの相対輝度Li等に基づいて、ダイナミックレンジDを求める例である。
図11は、実施例6のダイナミックレンジ測定装置を含む全体システムを示す図である。このシステムは、白パターン部材11が装着された光源装置10、レンズ12が装着されたカメラ13及びダイナミックレンジ測定装置6を備えて構成される。
光源装置10、白パターン部材11、レンズ12及びカメラ13は、図4の実施例2に示したものと同様であるから、ここでは説明を省略する。
ダイナミックレンジ測定装置6は、シーンの相対輝度Liを変化させるための絞り制御信号をレンズ12へ出力し、カメラ13から、シーンの相対輝度Liを変化させたときの映像信号を入力する。
ダイナミックレンジ測定装置6は、図9のダイナミックレンジ測定装置5と同様に、映像信号に基づいてランダムノイズNR2(Li)を測定する。ダイナミックレンジ測定装置6は、映像信号がクリップされるポイントまたは映像信号が飽和するポイント、すなわちシーンの相対輝度Liの増加に伴って漸次変化していたランダムノイズNR2(Li)が、以前よりも減少するポイントを判定する。例えば、ダイナミックレンジ測定装置6は、シーンの相対輝度Liに対するランダムノイズNR2(Li)の1次導関数が極小値となるポイント、またはランダムノイズNR2(Li)の1次導関数が減少し始めるポイントを判定する。そして、ダイナミックレンジ測定装置6は、そのポイント(例えば極小または減少開始のポイント)における相対輝度Li、及びカメラ13により撮影された白パターンの映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの相対輝度L0を用いて、ダイナミックレンジDを求める。
図11に示すように、ダイナミックレンジ測定装置6は、ランダムノイズ測定部20-3、ゲイン計算部21、極値判定部22-2及びダイナミックレンジ計算部23を備えている。
図9に示した実施例5のダイナミックレンジ測定装置5と図11に示す実施例6のダイナミックレンジ測定装置6とを比較すると、両ダイナミックレンジ測定装置5,6は、ランダムノイズ測定部20-3、ゲイン計算部21及びダイナミックレンジ計算部23を備えている点で共通する。一方、ダイナミックレンジ測定装置6は、ダイナミックレンジ測定装置5に備えた極値判定部22-1の代わりに極値判定部22-2を備えている点で、ダイナミックレンジ測定装置5と相違する。
ランダムノイズ測定部20-3、ゲイン計算部21及びダイナミックレンジ計算部23は、図9の実施例5に示したものと同様であるから、ここでは説明を省略する。また、極値判定部22-2は、図4の実施例2に示したものと同様であり、トータルノイズNT(Li)の代わりにランダムノイズNR2(Li)を用いるから、ここでは説明を省略する。
以上のように、実施例6のダイナミックレンジ測定装置6によれば、ランダムノイズ測定部20-3は、シーンの相対輝度Liのときの映像信号を入力し、映像信号に基づいて、複数フレームの加算平均画像と当該フレームの画像との間の差分を用いてランダムノイズNR2(Li)を測定する。極値判定部22-2は、シーンの相対輝度Liにおけるランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。これにより、シーンの相対輝度Liにおけるランダムノイズの測定値及び計算値が得られる。
極値判定部22-2は、シーンの相対輝度Liを増加させる(F値を減少させる)絞り制御信号を生成してレンズ12へ出力し、増加する相対輝度Li毎に、ランダムノイズNR2(Li)を測定すると共に、ランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))を求める。そして、極値判定部22-2は、ランダムノイズNR2(Li)及びランダムノイズの計算値(a^・f’(Li)・√(Li))に基づいて、極値を判定する。
ダイナミックレンジ計算部23は、極値における相対輝度Li、及びカメラ13により撮影された白パターンの映像信号が公称ピークレベルV100%となるときの相対輝度L0を用いて、ダイナミックレンジDを求める。
これにより、実施例4と同様の効果を奏し、ダイナミックレンジDを、ランダムノイズNR2(Li)を用いて定量的に測定するようにしたから、トータルノイズNT(Li)を用いるよりも、ダイナミックレンジDを一層高精度に測定することができる。
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。前記実施例1~6のダイナミックレンジ測定装置1~6は、白パターンに対するカメラ13のノイズを、相対輝度Liの関数として測定するようにした。これに対し、ダイナミックレンジ測定装置1~6は、白パターンに対するカメラ13のノイズを、白パターン(または光源装置10)の照度または輝度の関数、またはレンズ12のF値の関数として測定するようにしてもよい。
また、前記実施例1,3,5のダイナミックレンジ測定装置1,3,5は、シーンの相対輝度Liを増加させるために、輝度制御信号を出力するようにした。また、前記実施例2,4,6のダイナミックレンジ測定装置2,4,6は、シーンの相対輝度Liを増加させるために、絞り制御信号を出力するようにした。本発明は、輝度制御信号または絞り制御信号に限定するものではなく、シーンの相対輝度Liを増加させるための信号であれば何でもよい。つまり、ダイナミックレンジ測定装置1~6は、光源装置10の輝度若しくは照度、またはレンズ12のF値等を変更することで、シーンの相対輝度Liを増加させるための制御信号を出力すればよい。
また、前記実施例1~6のダイナミックレンジ測定装置1~6は、ダイナミックレンジDを求める際に、シーンの相対輝度Liに対するトータルノイズNT(Li)等の1次導関数が極小値となるポイント、またはトータルノイズNT(Li)等の1次導関数が減少し始めるポイントを判定するようにした。ダイナミックレンジDを求める際に必要なポイントを判定するためのこれらの手法は例示であり、他の手法を用いるようにしてもよい。
例えば、ダイナミックレンジ測定装置1~6は、トータルノイズNT(Li)等が大きく減少し始めるポイントを判定するようにしてもよい。要するに、本発明は、ダイナミックレンジDを求める際に、トータルノイズNT(Li)等のノイズの測定値が変化するポイントを判定すればよい。
尚、本発明の実施例1~6によるダイナミックレンジ測定装置1~6のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。ダイナミックレンジ測定装置1~6は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。
ダイナミックレンジ測定装置1に備えたトータルノイズ測定部20-1、ゲイン計算部21、極値判定部22-1及びダイナミックレンジ計算部23の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、ダイナミックレンジ測定装置2に備えたトータルノイズ測定部20-1、ゲイン計算部21、極値判定部22-2及びダイナミックレンジ計算部23の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
また、ダイナミックレンジ測定装置3に備えたランダムノイズ測定部20-2、ゲイン計算部21、極値判定部22-1及びダイナミックレンジ計算部23の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、ダイナミックレンジ測定装置4に備えたランダムノイズ測定部20-2、ゲイン計算部21、極値判定部22-2及びダイナミックレンジ計算部23の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
また、ダイナミックレンジ測定装置5に備えたランダムノイズ測定部20-3、ゲイン計算部21、極値判定部22-1及びダイナミックレンジ計算部23の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、ダイナミックレンジ測定装置6に備えたランダムノイズ測定部20-3、ゲイン計算部21、極値判定部22-2及びダイナミックレンジ計算部23の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
これらのプログラムは、前記記憶媒体に格納されており、CPUに読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。