JP7126163B2 - リンパ系の機能を評価する方法 - Google Patents

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Description

実施形態は、リンパ系の機能を評価する方法に関する。
リンパ系は、リンパ節、リンパ管及びその他のリンパ組織等からなる、リンパ液の循環系として機能するネットワークである。リンパ系の疾患(例えば、リンパ浮腫)等を診断する手法として、インドシアニングリーン等の蛍光色素を注入し、蛍光観察等によりリンパ管を造影する方法、99mTc標識スズコロイド等の放射性同位体を注入し、シンチグラフィーで可視化する方法等のリンパ系造影検査法が知られている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2)
Unno N.ら,J.Vasc.Surg.,2007年,45巻5号,pp.1016-1021 Maegawa J.ら,Microsurgery,2010年,30巻6号,pp.437-442
リンパ系造影検査は、リンパ浮腫診断に欠かせない検査であるが、解剖学的な問題に由来する根本的な問題を抱えている。リンパ管は、盲端から始まり、無数に存在しているため、造影剤を注入する部位の候補が無数にある。また、リンパ系の起始部とそれにつながるリンパ管やリンパ節との関係を検討した報告は、これまでに存在しない。つまり、造影剤の注射部位と、それに対応して造影剤が取り込まれてイメージングされるリンパルートとの関係を把握できる情報は、これまでに存在しない。そのため、従来行われているリンパ系造影検査には、解剖学的なエビデンスを持って注射部位が決定できているものはない。これが様々な注射部位の検査プロトコールを生み出す原因となっている。
実際、下肢の場合、大伏在静脈に伴走する前内側束を狙って第一指間部のみに造影剤を注射している場合が多いが、他部位又は多点に造影剤を注射している場合もある。注射部位が異なるのに検査結果を同様に比べてよいかは検討されていない。さらに小伏在静脈に伴走する後外側束を狙って踵部付近に造影剤を注射している場合もあるが、それに対応する起始部の情報はなく、また後外側束を確実に造影できる決められた注射部位は不明である。上肢の場合も同様に定まった情報はない。
リンパ系を造影するための統一された完全な検査プロトコールが存在しないことは、診断時のみならず、治療方針さらにはそれらの効果を共通して判断する材料がないことを意味している。
本発明者らは、下肢及び上肢のリンパ系造影検査時の注射部位決定に必要な解剖学的情報、及びそれにより造影され得るリンパルートの詳細のマッピングに成功した。そして、それらの情報に基づいて、リンパ系造影を行うための適切な注射部位とそれで可視化し得るリンパルートの関係を明らかにした。実施形態はこれらの新規知見に基づいており、リンパルートマップを用いたリンパ系機能の評価方法を提供すること、及び当該評価方法に使用するリンパ系機能評価装置を提供することを目的としている。
実施形態は、リンパ系の機能を評価する方法であって、四肢に複数存在するリンパルートから、評価対象となる1又は複数のリンパルートを選択するステップと、選択したリンパルートと、それに対応する四肢末梢の注入部位との情報に基づき、可視化剤の注入部位を決定するステップと、選択した注入部位から可視化剤を注入するステップと、注入した可視化剤を可視化し、評価対象となる1又は複数のリンパルートの機能を評価するステップと、を含む、方法に関する。
実施形態は、被験者の四肢末梢における可視化剤の注入部位の情報を取得する第1の取得手段と、可視化剤を注入された被験者の可視化剤像を取得する第2の取得手段と、第1の取得手段により取得した情報、及び四肢に複数存在するリンパルートとそれに対応する四肢末梢の注入部位との情報に基づき、第2の取得手段により取得した可視化剤像に、四肢に複数存在するリンパルート毎に異なる色を設定する色設定手段と、色設定手段により色を付した可視化剤像を出力する出力手段と、を備える、リンパ系機能評価装置にも関する。
実施形態は、コンピュータを、被験者の四肢末梢における可視化剤の注入部位の情報を取得する第1の取得手段、可視化剤を注入された被験者の可視化剤像を取得する第2の取得手段、第1の取得手段により取得した情報、及び四肢に複数存在するリンパルートとそれに対応する四肢末梢の注入部位との情報に基づき、第2の取得手段により取得した可視化剤像に、四肢に複数存在するリンパルート毎に異なる色を設定する色設定手段、色設定手段により色を付した可視化剤像を出力する出力手段、として機能させるためのリンパ系機能評価プログラムにも関する。
実施形態は、リンパ系機能評価プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体にも関する。
本発明によれば、リンパルートマップを用いたリンパ系機能の評価方法を提供することが可能となる。
図1は、造影剤の下肢注入部位1~19を示す下肢末梢の模式図である。各下肢注入部位は、足背-足底の境界線上に対し、解剖学的ランドマークに従って設定したものであり、詳細は以下に示すとおりである。 下肢注入部位1:内果の下 下肢注入部位5:第1中足骨の頭(head of first metatarsal bone) 下肢注入部位6:第1基節骨の底(base of first proximal phalanx) 下肢注入部位7:第1指間部 下肢注入部位8:第2指間部 下肢注入部位9:第3指間部 下肢注入部位10:第4指間部 下肢注入部位11:第5基節骨の底(base of fifth proximal phalanx) 下肢注入部位12:第5中足骨の頭(head of fifth metatarsal bone) 下肢注入部位16:外果の下 下肢注入部位18:踵骨隆起(calcaneal tuberosity) 下肢注入部位3:下肢注入部位1及び下肢注入部位5の中間点 下肢注入部位2:下肢注入部位1及び下肢注入部位3の中間点 下肢注入部位4:下肢注入部位3及び下肢注入部位5の中間点 下肢注入部位14:下肢注入部位12及び下肢注入部位16の中間点 下肢注入部位13:下肢注入部位12及び下肢注入部位14の中間点 下肢注入部位15:下肢注入部位14及び下肢注入部位16の中間点 下肢注入部位17:下肢注入部位16及び下肢注入部位18の中間点 下肢注入部位19:下肢注入部位18及び下肢注入部位1の中間点 図2は、造影剤の上肢注入部位1~17を示す上肢末梢の模式図である。各上肢注入部位は、手背-手掌の境界線上に対し、解剖学的ランドマークに従って設定したものであり、詳細は以下に示すとおりである。 上肢注入部位1:橈骨茎状突起遠位端(distal of radial styloid process) 上肢注入部位5:第1中手骨頭(the first head of metacarpi) 上肢注入部位3:上肢注入部位1及び上肢注入部位5の中間点 上肢注入部位2:上肢注入部位1及び上肢注入部位3の中間点 上肢注入部位4:上肢注入部位3及び上肢注入部位5の中間点 上肢注入部位6:第1指間(the first interdigital space) 上肢注入部位7:第2指間(the second interdigital space) 上肢注入部位8:第3指間(the third interdigital space) 上肢注入部位9:第4指間(the fourth interdigital space) 上肢注入部位10:第5中手骨頭(the fifth head of metacarpi) 上肢注入部位14:尺骨茎状突起遠位端(distal of radial styloid process) 上肢注入部位12:上肢注入部位10及び上肢注入部位14の中間点 上肢注入部位11:上肢注入部位10及び上肢注入部位12の中間点 上肢注入部位13:上肢注入部位12及び上肢注入部位14の中間点 上肢注入部位16:上肢注入部位1及び上肢注入部位14の中間点(手掌側) 上肢注入部位15:上肢注入部位14及び上肢注入部位16の中間点 上肢注入部位17:上肢注入部位16及び上肢注入部位1の中間点 図3は、一実施形態に係るリンパ系機能評価システムの概略構成を示すブロック図である。 図4は、一実施形態に係るリンパ系機能評価装置のハードウェア的構成を示す概要図である。 図5は、一実施形態に係るリンパ系機能評価装置の機能的構成を示す概要図である。 図6(A)は、下肢のリンパ系造影検査結果の一例を示す写真である。「×」は、外果の後縁を示す。「△」は、内果の前縁を示す。「〇」は、踵骨粗面を示す。「□」は、内果の前縁と外果の後縁との間の前方の中点を示す。「×」と「△」を境界として踵側が「後」であり、その反対側が「前」である。「内」と「外」は、踵骨粗面(「〇」で示す。)と、内果の前縁と外果の後縁との間の前方の中点(「□」で示す。)を基準として定義した。「〇」と「□」を境界として内果側が「内」であり、外果側が「外」である。図6(B)は、図6(A)をトレースしたトレース図である。 図7(A)は、下肢の前内側ルートを造影した結果の一例を示す写真である。「□」は内果の前縁と外果の後縁との間の前方の中点を示す。「◇」は、「□」と脛骨粗面との中点を示す。図7(B)は、図7(A)をトレースしたトレース図である。 図8(A)は、下肢の前外側ルートを造影した結果の一例を示す写真である。「×」は外果の後縁を示す。「□」は内果の前縁と外果の後縁との間の前方の中点を示す。「◇」は、「□」と脛骨粗面との中点を示す。図8(B)は、図8(A)をトレースしたトレース図である。 図9(A)は、下肢の後内側ルートを造影した結果の一例を示す写真である。「△」は内果の前縁を示す。図9(B)は、図9(A)をトレースしたトレース図である。 図10は、下腿のリンパ管に色素を注入後、解剖して撮影した写真である。 図11は、下腿のリンパ管に色素を注入後、解剖して撮影した写真である。 図12は、下腿のリンパ管に色素を注入後、解剖して撮影した写真である。 図13は、下腿のリンパ管に色素を注入後、解剖して撮影した写真である。 図14は、図10~図13の結果を模式的にまとめた図である。 図15は、各献体における下肢注入部位1~19と、それぞれに対応する下肢のリンパルート(前内側ルート、後外側ルート、前外側ルート又は後内側ルート)との関係をマッピングした表である。 図16は、下肢の各リンパルート(前内側ルート、後外側ルート、前外側ルート又は後内側ルート)について、造影が可能であった頻度を下肢注入部位毎に示すグラフである。 図17は、下肢下方において、下肢の各リンパルート(前内側ルート、後外側ルート、前外側ルート又は後内側ルート)が占める領域をマッピングした模式図である。 図18(A)は、実施形態の方法によりリンパ管を造影した患者の下肢を示す写真である。図18(B)は、図18(A)をトレースしたトレース図である。 図19は、本明細書における鼠径部の浅リンパ節群の定義を示す図である。 図20は、後内側ルートを造影したときのリンパルートの走行を示すCTリンパ管造影画像を3次元構築した像である。 図21は、後内側ルートが最初に到達するリンパ節の頻度をプロットしたグラフである。 図22は、前内側ルートを造影したときのリンパルートの走行を示すCTリンパ管造影画像を3次元構築した像である。 図23は、前内側ルートが最初に到達するリンパ節の頻度をプロットしたグラフである。 図24は、前外側ルートを造影したときのリンパルートの走行を示すCTリンパ管造影画像を3次元構築した像である。 図25は、前外側ルートが最初に到達するリンパ節の頻度をプロットしたグラフである。 図26は、後外側ルートを造影したときのリンパルートの走行を示すCTリンパ管造影画像を3次元構築した像である。 図27は、後外側ルートが最初に到達するリンパ節の頻度をプロットしたグラフである。 図28は、下肢の各リンパルートが2番目以降に到達するリンパ節(最初に到達するリンパ節以外で、各リンパルートが到達するリンパ節)の頻度をプロットしたグラフである。 図29(A)は、上肢のリンパ管造影検査結果の一例を示す写真である。図29(B)は、図29(A)のトレース図である。 図30は、リンパルートの走行を説明するための上肢領域の定義を示す図である。 図31は、各献体における上肢注入部位1~17と、それぞれに対応する上肢のリンパルート(副橈側ルート、副尺側ルート、橈側ルート、尺側ルート及び前腕正中ルート)との関係をマッピングした表である。 図32は、各リンパルート(副橈側ルート、副尺側ルート、橈側ルート、尺側ルート及び前腕正中ルート)について、造影が可能であった頻度(造影が可能であった献体数/総献体数)を上肢注入部位毎に示すグラフである。 図33は、上肢において、各リンパルート(副橈側ルート、副尺側ルート、橈側ルート、尺側ルート及び前腕正中ルート)が占める領域をマッピングした模式図である。
以下、実施形態について詳細に説明する。ただし、実施形態は、これらに限定されるものではなく、その要旨に沿って、種々の変形が可能である。
〔リンパ系の機能を評価する方法〕
本実施形態のリンパ系の機能を評価する方法は、四肢に複数存在するリンパルートから、評価対象となる1又は複数のリンパルートを選択するステップと、選択したリンパルートと、それに対応する四肢末梢の注入部位との情報に基づき、可視化剤の注入部位を決定するステップと、選択した注入部位から可視化剤を注入するステップと、注入した可視化剤を可視化し、評価対象となる1又は複数のリンパルートの機能を評価するステップと、を含む。
本明細書における「リンパ系」には、リンパ節、リンパ管及びその他のリンパ組織(例えば、胸管、胸腺、脾臓等)が含まれる。
選択ステップは、四肢に複数存在するリンパルートから、評価対象となる1又は複数のリンパルートを選択するステップである。
リンパ系を構成するリンパ管は、四肢(特に四肢下方)では、互いに連通しない独立のリンパルート(リンパの経路)を形成している場合が多い。選択ステップでは、評価対象とする1又は複数のリンパルートを選択する。選択ステップでは、評価対象として、互いに連通しない独立のリンパルートを全て網羅するように、複数のリンパルートを選択するものであってもよい。
選択ステップは、下肢の前内側ルート、前外側ルート、後内側ルート及び後外側ルートから、評価対象となる1又は複数のリンパルートを選択するものであってもよい。
下肢の前内側ルート、前外側ルート、後内側ルート及び後外側ルートとは、下肢を足関節レベルで4つの領域に分割したとき、下肢の足関節レベルにおいてリンパ管が通過する領域に応じて命名される下肢のリンパルートである。ここで、外果の後縁と内果の前縁を境界として、踵側が「後」であり、その反対側が「前」である。踵骨粗面と、内果の前縁と外果の後縁との間の前方の中点を境界として、内果側が「内」であり、外果側が「外」である。前内側ルートは、下肢の足関節レベルにおいてリンパ管が「前」かつ「内」の領域を通過する下肢のリンパルートを意味する。同様に、前外側ルートは、下肢の足関節レベルにおいてリンパ管が「前」かつ「外」の領域を通過する下肢のリンパルートを意味する。後内側ルートは、下肢の足関節レベルにおいてリンパ管が「後」かつ「内」の領域を通過する下肢のリンパルートを意味する。後外側ルートは、下肢の足関節レベルにおいてリンパ管が「後」かつ「外」の領域を通過する下肢のリンパルートを意味する。
選択ステップはまた、上肢の前腕正中ルート、橈側ルート、副橈側ルート、尺側ルート又は副尺側ルートから、評価対象となる1又は複数のリンパルートを選択するものであってもよい。
上肢の前腕正中ルート、橈側ルート、副橈側ルート、尺側ルート及び副尺側ルートとは、各リンパルートに概ね一致して走行する上肢皮静脈系の分類に基づいて命名した上肢のリンパルートである。
選択ステップでは、下肢の前内側ルート、前外側ルート、後内側ルート及び後外側ルートの全てを評価対象として選択してもよい。これにより、下肢のリンパ管の機能を網羅的に評価することができる。同様に、選択ステップでは、上肢の前腕正中ルート、橈側ルート、副橈側ルート、尺側ルート及び副尺側ルートの全てを評価対象として選択してもよい。これにより、上肢のリンパ管の機能を網羅的に評価することができる。
決定ステップは、選択したリンパルートと、それに対応する四肢末梢の注入部位との情報に基づき、可視化剤の注入部位を決定するステップである。
従来、可視化剤の注入部位と、それに対応して可視化剤が取り込まれてイメージングされるリンパルートとの関係を把握できる情報は存在しなかった。実施形態では、後述の実施例で具体的に示したとおり、解剖学的情報に基づいて設定した可視化剤の注入部位と、それに対応して可視化剤が取り込まれてイメージングされるリンパルートとの対応関係のマッピングに成功した(例えば、図1、図15及び図16、並びに図2、図31及び図32)。そして、当該情報(例えば、図15及び図16、並びに図31及び図32に示した対応関係)又はそれに準ずる情報(例えば、更なる検体について取得した情報等)に基づけば、選択したリンパルートを可視化し得る注入部位を決定することができる。
決定ステップでは、選択した1のリンパルートに対して、注入部位を1カ所のみ選んで可視化剤の注入部位として決定してもよいし、注入部位を2カ所以上選んで可視化剤の注入部位として決定してもよい。後述の実施例で示したとおり、例えば、下肢の前内側ルート及び前外側ルートでは、可視化剤(造影剤)が取り込まれる確率がピーク(極大値)を示す下肢注入部位が2つ存在している。例えば、これらの下肢注入部位の一方を可視化剤の注入部位に選んでもよく、これらの下肢注入部位の両方を可視化剤の注入部位に選んでもよい(なお、これら以外の下肢注入部位を可視化剤の注入部位に選んでもよい。)。
例えば、選択ステップにおいて、下肢のリンパルートを選択した場合、可視化剤の注入部位は、図1に示す下肢注入部位1~19から選択される1又は複数の注入部位であってよく、図1に示す下肢注入部位1、7、14及び16から選択される1又は複数の注入部位であってもよい。
また、例えば、選択ステップにおいて、下肢の前内側ルート、前外側ルート、後内側ルート及び後外側ルートの全てを評価対象として選択した場合、可視化剤の注入部位は、図1に示す下肢注入部位1、7、14及び16であってよい。下肢注入部位1、7、14及び16の全てを可視化剤の注入部位とすることで、下肢の4つのリンパルートの全てを網羅的に評価することができる。
また、例えば、選択ステップにおいて、上肢のリンパルートを選択した場合、可視化剤の注入部位は、図2に示す上肢注入部位1~17から選択される1又は複数の注入部位であってよく、図2に示す上肢注入部位4、7、9、14及び16から選択される1又は複数の注入部位であってもよい。
また、例えば、選択ステップにおいて、上肢の前腕正中ルート、橈側ルート、副橈側ルート、尺側ルート及び副尺側ルートの全てを評価対象として選択した場合、可視化剤の注入部位は、図2に示す上肢注入部位4、7、9、14及び16であってよい。上肢注入部位4、7、9、14及び16の全てを可視化剤の注入部位とすることで、上肢の5つのリンパルートの全てを網羅的に評価することができる。
可視化剤は、人体への投与が許容されるものであれば、特に制限されない。また、可視化剤は、可視化方法(検出方法)に応じて、適切なものを選択すればよい。可視化剤としては、例えば、従来リンパ系造影検査法に用いられている造影剤(例えば、リピオドール、インドシアニングリーン、99mTc標識スズコロイド等)を用いることができる。可視化剤としては、従来の造影剤に加えて、例えば、その他の色素(例えば、パテントブルー)、蛍光色素(例えば、インジコカルミン)、放射性同位体標識化合物(例えば、99mTc標識テクネチウム人血清アルブミン)を用いることもできる。
注入ステップは、選択した注入部位から可視化剤を注入するステップである。
可視化剤の注入方法は、特に制限されず、従来の造影剤の注入方法と同様の方法を採用できる。例えば、生理食塩水、緩衝液等の適切な溶媒に溶解又は懸濁させた可視化剤を注射器を使用して注入部位に注射する方法等を採用することができる。
評価ステップは、注入した可視化剤を可視化し、評価対象となる1又は複数のリンパルートの機能を評価するステップである。
可視化剤の可視化方法は、使用する可視化剤の種類に応じて選択すればよい。例えば、可視化剤として蛍光色素(例えば、インドシアニングリーン、リピオドール、パテントブルー、インジコカルミン)を採用した場合、当該蛍光色素を励起及び蛍光検出可能な光源(又はフィルター)を備えた赤外観察カメラシステムにより、可視化及びデータ収集が可能である。赤外観察カメラシステムとしては、例えば、PDE(浜松ホトニクス社製)、ハイパーアイメディカルシステム(ミズホ社製)、LIGHTVISION(島津製作所社製)、SPYシステム(Novadaq Technologies社製)などを挙げることができる。また、例えば、可視化剤として放射性同位体標識化合物(例えば、99mTc標識スズコロイド、99mTc標識フィチン酸塩、99mTc標識テクネチウム人血清アルブミン)を採用した場合、放射線検出器により、可視化及びデータ収集が可能である。放射線検出器としては、例えば、ガンマカメラ、単一光子放射断層撮影(SPECT)装置、ポジトロン断層法(PET)装置、SPECT-CT装置を挙げることができる。
注入した可視化剤を可視化した結果、リンパルートが可視化されなかった場合は、リンパ管が消失している、リンパがリンパ管内を移動できない等の理由が考えられ、リンパ系(リンパ管)の機能が障害されていると判断することができる。また、注入した可視化剤を可視化した結果、注入部位から想定されるリンパルートとは異なるリンパルートが可視化された場合は、想定されるリンパルートが何らかの障害を受け、可視化されたリンパルートが、代替ルートになっている等の理由が考えられ、同様にリンパ系(リンパ管)の機能が障害されていると判断することができる。
また、リンパ管はリンパ節等の他のリンパ組織と連結しているため、実施形態の方法によれば、リンパ管のみならず、リンパ節及び他のリンパ組織をも選択的に可視化することができる。したがって、例えば、リンパ節が可視化されなかった場合、リンパ節が消失している、リンパ管とリンパ節の連結が途切れている等の理由が考えられ、リンパ系(リンパ節、リンパ管)の機能が障害されていると判断することもできる。
実施形態の方法は、例えば、原発性リンパ浮腫、続発性リンパ浮腫、静脈性浮腫、廃用性浮腫等の疾患の診断、治療効果の確認、予後の診断等に応用することができる。実施形態の方法はまた、例えば、リンパ節郭清術後のリンパ浮腫予防のためのリバースマッピングに応用することもできる。
〔リンパ系機能評価装置〕
一実施形態において、リンパ系機能評価装置は、撮像装置と組み合わせてリンパ系機能評価システムとして使用される。撮像装置としては、例えば、蛍光検出器、放射線検出器が挙げられる。
図3は、一実施形態に係るリンパ系機能評価システム1の概略構成を示すブロック図である。図3に示すリンパ系機能評価システム1は、撮像装置3及び光照射装置5を内蔵するカメラユニット7(蛍光検出器)とリンパ系機能評価装置Dとにより構成される。
(カメラユニット)
光照射装置5は、観察対象物P(例えば、被験者)に対して蛍光観察のために蛍光色素を励起するための励起光Lを出力する光源5aと、光源5aの励起光Lの出力を制御する光源制御部5bとを内蔵する。光源5aは、LED(発光ダイオード)、LD(レーザダイオード)及びSLD(スーパールミネッセントダイオード)等の発光素子、並びにハロゲンランプ及びキセノンランプ等のランプ光源などであり、蛍光色素を励起する波長の光を出力する。例えば、蛍光色素がICGの場合、蛍光色素の吸収波長のピークが体内で800nm付近であるため、光源5aは、例えば、出力光の波長が700nm~810nmのものが使用される。光源制御部5bは、電気的に接続された光照射制御部(図示せず)による制御により、光源5aの励起光Lの出力及び出力強度(照射強度)を制御する光照射制御回路(例えば、プロセッサ)である。なお、光源5aから出力される光の波長は蛍光の波長を含まないことが好ましいが、光源5aから出力される光の波長が蛍光の波長を含む場合、光照射装置5は、光源5aから出力される光のうち蛍光の波長と同じ波長の光を遮光する光学フィルタ(図示せず)を備えてもよい。
光照射制御部は、光照射装置5による励起光照射に関する光照射条件を設定する。そして、光照射制御部は、設定した光照射条件で励起光を照射するように、光源制御部5bを制御する。光照射制御部は、光照射条件の設定や光源制御部5bの制御を行う光照射制御回路(例えば、プロセッサ)である。光照射制御部は、リンパ系機能評価装置Dに内蔵されていてもよい。
撮像装置3は、撮像制御部(図示せず)の制御によって観察対象物Pからの蛍光を含む観察光Lの像を撮像する装置である。撮像装置3は、蛍光色素が発する蛍光の波長を含む光を透過させ、励起光Lの波長の光を遮断する光学フィルタ3aと、光学フィルタ3aを透過した観察光Lを受光し、それらの光を光電変換することにより画像データを出力する撮像素子(image sensor)3bと、撮像制御部の制御により撮像素子3bの露光タイミング、露光時間、及び信号読み出しを制御する撮像素子制御部3cとを含んで構成される。撮像素子制御部3cは、撮像制御部の制御により撮像素子3bのフレームレート、露光タイミング、露光時間、及び信号読み出し等を制御する撮像制御回路(例えば、プロセッサ)である。撮像素子3bは、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサ等のエリアイメージセンサであり、2次元的に配列された複数の画素(光電変換素子)によって構成された受光面を有している。この撮像素子3bは、撮像制御部3cからの制御により露光時間を可変に調整可能にされている。
撮像制御部は、撮像装置3の動作を制御する撮像制御回路(例えば、プロセッサ)である。具体的には、例えば、撮像制御部は、撮像素子3bの露光時間、露光タイミング、フレームレート等の撮像条件を設定し、設定された撮像条件に基づいて撮像を行うように撮像素子制御部3cを制御する。撮像素子3bとしては、CCDイメージセンサ、又はグローバルシャッタ方式のCMOSイメージセンサ、ローリングシャッタ方式のCMOSイメージセンサ等が挙げられる。露光時間の調整は、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサの電子シャッタにより調整してもよいし、観察対象物Pと撮像素子3bとの間に物理的な絞りやシャッタ等を設け、それらの開閉を制御してもよいし、それらの開閉量を調整してもよい。撮像制御部は、リンパ系機能評価装置Dに内蔵されていてもよい。
上記構成のカメラユニット7により、撮像素子3bは観察対象物Pからの蛍光を含む観察光Lを受光(撮像)し、それに応じて画像データを出力する。リンパ系機能評価装置Dは、第2の取得手段によりこの画像データ(可視化剤を注入された被験者の可視化剤像)を取得する。
(リンパ系機能評価装置)
リンパ系機能評価装置Dの構成について説明する。図4は、一実施形態に係るリンパ系機能評価装置Dのハードウェア的構成を示す概要図であり、図5は、一実施形態に係るリンパ系機能評価装置Dの機能的構成を示す概要図である。
図4に示すように、リンパ系機能評価装置Dは、物理的には、CPU D11、ROM D12及びRAM D13等の主記憶装置、キーボード、マウス及びタッチスクリーン等の入力デバイスD14、ディスプレイ(タッチスクリーンを含む)等の出力デバイスD15、例えばカメラユニット7(蛍光検出器)等の他の装置との間でデータの送受信を行うためのネットワークカード等の通信モジュールD16、ハードディスク等の補助記憶装置D17などを含む、通常のコンピュータとして構成される。後述するリンパ系機能評価装置Dの各機能は、CPU D11、ROM D12、RAM D13等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU D11の制御の下で入力デバイスD14、出力デバイスD15、通信モジュールD16を動作させるとともに、主記憶装置D12、D13、及び補助記憶装置D17におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
図5に示すように、リンパ系機能評価装置Dは、機能的構成要素として、第1の取得手段D1、第2の取得手段D2、色設定手段D3、及び出力手段D4を備える。また、リンパ系機能評価装置Dは、機能的構成要素として、撮像装置を制御する撮像制御部、及び/又は光照射装置を制御する光照射制御部を更に備えるものであってもよい。
第1の取得手段D1は、被験者の四肢末梢における可視化剤の注入部位の情報を取得するものである。例えば、出力デバイスに図1に示すような図を表示し、当該図の番号に基づき、可視化剤を注入する注入部位の番号を入力デバイスから入力することで、第1の取得手段が、被験者の四肢末梢における可視化剤の注入部位の情報を取得する。また、例えば、出力デバイスがタッチスクリーンで構成されている場合、タッチスクリーンに図1に示すような図を表示し、可視化剤を注入する注入部位をタッチすることで、第1の取得手段が、被験者の四肢末梢における可視化剤の注入部位の情報を取得するものであってもよい。
第2の取得手段D2は、可視化剤を注入された被験者の可視化剤像(例えば、蛍光像)を取得するものである。例えば、撮像装置が出力する可視化剤像(例えば、蛍光像、放射線像)を第2の取得手段が取得する。
色設定手段D3は、第1の取得手段により取得した情報、及び四肢に複数存在するリンパルートとそれに対応する四肢末梢の注入部位との情報に基づき、第2の取得手段により取得した可視化剤像に、四肢に複数存在するリンパルート毎に異なる色を設定するものである。例えば、下肢におけるリンパルートは、少なくとも4つのリンパルート(前内側ルート、前外側ルート、後内側ルート及び後外側ルート)に分類でき、可視化剤の注入部位によって、可視化剤が流れるリンパルートが異なる。そこで、色設定部は、可視化剤の注入部位の情報、及び下肢のリンパルートとそれに対応する下肢末梢の注入部位との情報(例えば、図1、図15及び図16に示した対応関係の情報、又はそれに準ずる情報(例えば、更なる検体について取得した情報等))に基づいて、可視化剤像がそれぞれのリンパルートに対応する色(例えば、前内側ルートは青、前外側ルートは緑、後内側ルートは紫、後外側ルートは赤など)となるように設定する。これにより、各リンパルートを視覚的に把握しやすくなり、リンパ系の評価が容易に行えるようになる。また、例えば、上肢におけるリンパルートは、少なくとも5つのリンパルート(前腕正中ルート、橈側ルート、副橈側ルート、尺側ルート及び副尺側ルート)に分類でき、可視化剤の注入部位によって、可視化剤が流れるリンパルートが異なる。そこで、色設定部は、可視化剤の注入部位の情報、及び上肢のリンパルートとそれに対応する上肢の注入部位との情報(例えば、図2、図31及び図32に示した対応関係の情報、又はそれに準ずる情報(例えば、更なる検体について取得した情報等))に基づいて、可視化剤像がそれぞれのリンパルートに対応する色(例えば、前腕正中ルートはピンク、橈側ルートは紫、副橈側ルートは青、尺側ルートは赤、副尺側ルートは緑など)となるように設定する。これにより、各リンパルートを視覚的に把握しやすくなり、リンパ系の評価が容易に行えるようになる。
出力手段D4は、色設定手段により色を付した可視化剤像を出力するものである。色を付した可視化剤像は、出力デバイスに出力してもよいし、通信モジュールから他の装置に出力してもよいし、補助記憶装置に出力して記録してもよい。
〔リンパ系機能評価プログラム〕
リンパ系機能評価プログラムは、コンピュータを、上述した第1の取得手段D1、第2の取得手段D2、色設定手段D3、及び出力手段D4として機能させるものである。コンピュータにリンパ系機能評価プログラムを読み込ませることにより、コンピュータはリンパ系機能評価装置Dとして動作する。リンパ系機能評価プログラムは、例えば、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。記録媒体は、非一時的記録媒体であってもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク、CD、DVD等の記録媒体、ROM等の記録媒体、半導体メモリ等が例示される。
(リンパ系機能の評価方法)
リンパ系機能評価装置Dにより行われるリンパ系機能の評価方法について説明する。最初に、第1の取得手段D1が被験者の四肢末梢における可視化剤の注入部位の情報を取得する。次に、第2の取得手段D2が可視化剤を注入された被験者の可視化剤像を取得する。第1の取得手段D1及び第2の取得手段D2による情報の取得は、逆の順番であってもよい。
次に、色設定手段D3が、第1の取得手段により取得した情報、及び四肢に複数存在するリンパルートとそれに対応する四肢末梢の注入部位との情報(例えば、図1、図15及び図16、並びに図2、図31及び図32に示した対応関係の情報、又はそれに準ずる情報(例えば、更なる検体について取得した情報等))に基づき、第2の取得手段により取得した可視化剤像に、四肢に複数存在するリンパルート毎に異なる色を設定する。次いで、出力手段D4が、色設定手段により色を付した可視化剤像を出力する。例えば、各リンパルートが異なる色付けをされた被験者のリンパ系の可視化剤像(例えば、蛍光像)が、出力手段D4により表示等される。
以下、実施形態を試験例に基づいてより具体的に説明する。以下の全ての試験は、岡山大学病院の倫理委員会の承認(K1605-020)のもと実施された。
〔試験例1:下肢のリンパルートのマッピング〕
<材料及び方法>
53体のヒト新鮮遺体の下肢100本(55本は男性、45本は女性)に対して、インドシアニングリーン(ICG)リンパ管造影検査を実施した。全ての献体者から事前に書面によるインフォームドコンセントを得た。
(ICGリンパ管造影検査)
インドシアニングリーン(Diagnogreen(登録商標),第一三共株式会社製)25mgを純水10mLに溶解させた。注射針(30G)を使用して、ICG溶液0.05mLを、図1に示す下肢注入部位1~19それぞれの皮下層に注射した(19注入部位/1下肢)。
図1に示す下肢注入部位1~19は、足背-足底の境界線上に対し、解剖学的ランドマークに従って設定した。各下肢注入部位の詳細は以下に示すとおりである。
下肢注入部位1:内果の下
下肢注入部位5:第1中足骨の頭(head of first metatarsal bone)
下肢注入部位6:第1基節骨の底(base of first proximal phalanx)
下肢注入部位7:第1指間部
下肢注入部位8:第2指間部
下肢注入部位9:第3指間部
下肢注入部位10:第4指間部
下肢注入部位11:第5基節骨の底(base of fifth proximal phalanx)
下肢注入部位12:第5中足骨の頭(head of fifth metatarsal bone)
下肢注入部位16:外果の下
下肢注入部位18:踵骨隆起(calcaneal tuberosity)
下肢注入部位3:下肢注入部位1及び下肢注入部位5の中間点
下肢注入部位2:下肢注入部位1及び下肢注入部位3の中間点
下肢注入部位4:下肢注入部位3及び下肢注入部位5の中間点
下肢注入部位14:下肢注入部位12及び下肢注入部位16の中間点
下肢注入部位13:下肢注入部位12及び下肢注入部位14の中間点
下肢注入部位15:下肢注入部位14及び下肢注入部位16の中間点
下肢注入部位17:下肢注入部位16及び下肢注入部位18の中間点
下肢注入部位19:下肢注入部位18及び下肢注入部位1の中間点
ICG溶液を注射後、直ちに注射部位を優しく手でマッサージした。ICGの蛍光像は、赤外観察カメラシステムで撮影した(励起波長760nm,蛍光波長830nm)。赤外観察カメラシステムのスライダーで撮影した像をイメージコンポジットエディタ(マイクロソフト社製)で合成し、リンパルート毎に異なる色を設定したパノラマ写真を得た。
<結果>
(下肢のリンパルートの分類)
図6(A)は、下肢のリンパ管造影検査結果の一例を示す写真(パノラマ写真)である。図6(B)は、図6(A)のトレース図である。下肢を足関節レベルで4つの領域(前内側、前外側、後内側、及び後外側)に分割した。「前」と「後」は、外果の後縁(「×」で示す。)と内果の前縁(「△」で示す。)を基準として定義した。「×」と「△」を境界として踵側が「後」であり、その反対側が「前」である。「内」と「外」は、踵骨粗面(「〇」で示す。)と、内果の前縁と外果の後縁との間の前方の中点(「□」で示す。)を基準として定義した。「〇」と「□」を境界として内果側が「内」であり、外果側が「外」である。
下肢のリンパ管は、足関節レベルで通過する位置に応じて、前内側ルート、後外側ルート、前外側ルート、及び後内側ルートの4つのリンパルートに大別できることが判明した。図6(B)中、各リンパルート(前内側ルート、後外側ルート、前外側ルート又は後内側ルート)は、ハッチングの種類の違いにより区別している。
(各リンパルートの詳細分析)
1.前内側ルート
図7(A)は、前内側ルートを造影した結果の一例を示す写真である。図7(B)は、図7(A)のトレース図である。「□」は内果の前縁と外果の後縁との間の前方の中点を示し、「◇」は、「□」と脛骨粗面との中点を示す。前内側ルートは、従来から認識されてきた前内側束に一致しており、出現率は100%(100/100)であった。
前内側ルートは、足背部の大部分から始まり、足背部では多くの分岐及び融合を繰り返しているが、足関節以後(足関節より中枢側)は分岐融合は少なくなる。前内側ルートは、足関節レベルでは、はっきりとした束となって、前内側を通過する(100%:100/100)。前内側ルートが、足関節レベルで前外側又は後内側まで広がる例は、ごく少数であった(4%:4/100)。
前内側ルートは、下腿下方では外側に弧を描き、かつ下腿上方では内側に弧を描くため、シグモイドを描きながら上向する。前内側ルートは、下腿中点において前外側まで広がって通過するものはまれであった(15%:15/100)。前内側ルートは、下腿途中で後内側に移動し、かつ膝関節では内側から後面を通るため、下腿途中で大伏在静脈を乗り越える形で上向する。
2.後外側ルート
後外側ルートは、従来から認識されてきた後外側束に一致しており、出現率は92%(92/100)であった。
後外側ルートは、踵部外側から始まり、足関節レベルでは、1又は2本の直線として後外側を通過した(98.91%:91/92)。後外側ルートが、足関節レベルで後外側以外の領域に広がる例は、ごく少数であった(4.4%:4/92)。
後外側ルートは、膝窩付近まで上向した後、大腿部の深部に移行する。後外側ルートが、膝窩から鼠径部にかけて大腿部内側の表層を上向する例も時々観察された。後外側ルートが、後内側ルート又は前外側ルートと連結する例が、まれに観察された(7.6%:4/92)。
3.前外側ルート
図8(A)は、前外側ルートを造影した結果の一例を示す写真である。図8(B)は、図8(A)のトレース図である。「×」は外果の後縁を示し、「□」は内果の前縁と外果の後縁との間の前方の中点を示し、「◇」は、「□」と脛骨粗面との中点を示す。前外側ルートは、前内側ルート(前内側束)の外側に位置しており、出現率は87%(87/100)であった。
前外側ルートは、足背部の外側から始まっており、また前内側ルートとは明らかに独立した始部(盲端)を有する。前外側ルートは、足関節レベルでは、1又は2本の直線として前外側を上向しており、前内側ルートの束からは離れた領域を通過している。
前外側ルートは、下腿では前外側を上向することがほとんどだが、時に大きく後外側にまで広がる場合もある。前外側ルートは、最終的には前内側に移動するが、下腿の中点以下で前内側に移行するもの(11.5%:10/87)、下腿の中点と脛骨粗面の間で前内側に移行するもの(49.4%:43/87)、脛骨粗面より上で前内側に移行するもの(39.1%:34/87)があった。
前外側ルートは、大腿部で前内側ルートと近接するが、前内側ルートとは交錯せず、相対的な位置関係は変わらない。前外側ルートが、前内側ルートと連結する例が、少数観察された(17.2%:17/87)。
4.後内側ルート
図9(A)は、後内側ルートを造影した結果の一例を示す写真である。図9(B)は、図9(A)のトレース図である。「△」は内果の前縁を示す。後内側ルートは、前内側ルート(前内側束)の内側に位置しており、出現率は95%(95/100)であった。
後内側ルートは、足側部の中央から始まっており、前内側ルートとは独立した始部(盲端)を有する。後内側ルートは、下腿では直線的に、又は前側に弧を描いて上向する。後内側ルートは、大部分は下腿で前内側ルートの下側(足の深部方向)に潜り込んでいた(69.47%:66/95)。後内側ルートは、大伏在静脈に沿ったルートであった。
後内側ルートと前内側ルートとの連結の詳細は、両ルートが交錯しているため観察できなかった。しかし、下腿において、両者が少なくとも数点で連結していることが確認された。
図10~図13は、下腿のリンパ管に色素を注入後、解剖して撮影した写真である。図10から、後内側ルート(実線矢印で示す。)が、大伏在静脈本幹(破線矢印で示す。)に沿っていること、前内側ルート(矢印頭で示す。)が、大伏在静脈本幹(破線矢印で示す。)とは伴走しないことが分かる。図11から、前内側ルート(矢印頭で示す。)が、大伏在静脈分枝(破線矢印で示す。)と伴走することが分かる。図12から、前内側ルート(矢印頭で示す。)をめくると、大伏在静脈本幹(破線矢印で示す。)に沿って、後内側ルート(実線矢印で示す。)が伴走するのが更によく分かる。図13から、後内側ルート(実線矢印で示す。)が、筋膜直上に存在することが分かる。図14は、図10~図13から分かることを模式的にまとめたものである(図14(B)は、下肢の断面図である。)。図14に示すとおり、後内側ルートは、大伏在静脈本幹に沿ったメインルートであること、従来メインルートだと考えられていた前内側ルートは、大伏在静脈分枝に沿ったサブルートであることが分かる。
(下腿下方における各リンパルートの始部(盲端)のマッピング)
図15は、各献体における下肢注入部位1~19と、それぞれに対応する下肢のリンパルート(前内側ルート、後外側ルート、前外側ルート又は後内側ルート)との関係をマッピングした表である。図16は、各リンパルート(前内側ルート、後外側ルート、前外側ルート又は後内側ルート)について、造影が可能であった頻度(造影が可能であった献体数/総献体数)を下肢注入部位毎に示すグラフである。
図15及び図16に示すとおり、1つの下肢注入部位に対して1つのリンパルートにのみ造影剤が取り込まれる場合が大多数であったが、1つの下肢注入部位から2つのリンパルートに造影剤が取り込まれることも稀にあった。一方、1つの下肢注入部位から3つ以上のリンパルートに造影剤が取り込まれることはなかった。
図15及び図16に示すとおり、前内側ルートは、下肢注入部位7及び10に造影が可能であった頻度のピーク(極大値)を有していた。後外側ルートは、下肢注入部位16に造影が可能であった頻度のピーク(極大値)を有していた。前外側ルートは、下肢注入部位10及び14に造影が可能であった頻度のピーク(極大値)を有していた。後内側ルートは、下肢注入部位1に造影が可能であった頻度のピーク(極大値)を有していた。
<考察>
本試験により、下肢のリンパルートは、前内側ルート、後外側ルート、前外側ルート、及び後内側ルートの4つのリンパルートに大別できることが判明した。これら4つのリンパルートは、特に下腿では各リンパルート同士の合流が少なく、独立して存在していた。
また、これら4つのリンパルートを造影し得る造影剤の注入部位は、足背-足底の境界線上にリンパルート毎に分布しており、各下肢注入部位に対して各リンパルートに造影剤が取り込まれる確率(造影が可能であった頻度)が明らかとなった。図17は、試験例1の結果に基づき、下肢下方において、各リンパルート(前内側ルート、後外側ルート、前外側ルート又は後内側ルート)が占める領域をマッピングした模式図である。
下腿では各リンパルート同士の合流が少ないため、従来行われているように下肢末梢から一つのリンパルートのみを造影しても、他のリンパルートの評価が充分ではない可能性が高い。特にリンパ管が変性を起こし、リンパルート障害が生じているリンパ浮腫では、内側有意の浮腫が多いため、障害されるリンパルートに偏りがあることが予想される。そのため、存在し得るリンパルート全てを評価する必要があると考えられる。このような評価は、残存するリンパ管・リンパ節やリンパルートを検索することが重要になるリンパ管静脈吻合術、及びリンパ節移植時に必須になる。加えて、全てのリンパ系造影法でも、独立した4つのリンパルートを意識して、検査プロトコールを作成することが今後必要になる。
〔試験例2:患者における下肢のリンパ管の造影〕
<方法>
患者は、骨盤内リンパ節郭清、及び骨盤の放射線治療により、右下肢に続発性リンパ浮腫(ISL(international society of lymphology)分類ステージ2)を発症した72歳の女性であった。左下肢には浮腫はなかった(ISL分類ステージ0)。
この患者に対し、試験例1のICGリンパ管造影検査と同様の手順で下肢のリンパ管造影を実施した。造影剤の注入部位は、試験例1で得られた結果(特に、図1、図15及び図16に示す結果)を参考にして決定した。
<結果及び考察>
図18(A)に造影結果を示した。図18(B)は、図18(A)をトレースしたトレース図である。図18(B)中、下肢の各リンパルート(前内側ルート、後外側ルート、前外側ルート又は後内側ルート)は、線種の違いにより区別している。前内側ルート:一点鎖線、後外側ルート:二点鎖線、前外側ルート:実線、後内側ルート:破線。
右下肢は、下肢注入部位16(図1参照)から造影剤を注入することで、後外側ルートを下腿途中まで造影できたが、途中でリンパ液溜まり(ダーマルバックフロー)に変化した。右下肢の後内側ルートは、いずれの下肢注入部位からも造影することができず、下肢注入部位1(図1参照)に注入した場合は、注入部位からリンパ液溜まりが造影された。下肢注入部位1及び16に造影剤を注入した後、前内側ルート及び前外側ルートは造影されなかった。
右下肢の下肢注入部位7、10及び16(図1参照)に造影剤を注入することで、前外側ルートのみが造影された。前内側ルートは欠損していた。前外側ルートは、下腿途中でリンパ液溜まりに変化した。
試験例1では、前内側ルートの出現率が100%であり、下肢注入部位7からは5%の確率でしか前外側ルートは造影されなかった。このことから、本患者において、下肢注入部位7から前外側ルートが造影されたこと、及び前内側ルートが造影されなかったことは、異常状態を示しているといえる。
患者の左下肢は、下肢注入部位1、7、10、14及び16から造影剤を注入することで、全リンパルートが問題なく造影された。なお、図15及び図16に示した結果から分かるように、下肢注入部位1、7、14及び16から造影剤を注入することで、全リンパルートを造影可能である。
〔試験例3:下肢のリンパ管及びリンパ節の造影〕
試験例1で定義した下肢の各リンパルート(前内側ルート、後外側ルート、前外側ルート及び後内側ルート)について、(i)最初に到達するリンパ節、(ii)2番目以降に到達するリンパ節、及び(iii)各リンパルートの走行を解析した。
<方法>
ヒト新鮮遺体の下肢120本に対して、コンピューター断層撮影(以下、CT)リンパ系造影検査を実施した。全ての献体者から事前に書面によるインフォームドコンセントを得た。
(CTリンパ系造影検査)
各リンパルートあたり、下肢30本(4リンパルートで計120本)をCTリンパ系造影検査に供した。まずICGリンパ管造影を行い同定したリンパ管に直接CT造影剤を注入することでCTリンパ系造影の画像を得た。全てのリンパルートの造影検査では、図1に示す下肢注入部位1~19にICG溶液を注射し、解剖学的特徴に基づいてリンパ管を同定した。
ICG溶液を注射後、直ちに注射部位を優しく手でマッサージした。ICGの蛍光像は、赤外観察カメラシステムで撮影した(励起波長760nm,蛍光波長830nm)。同定されたリンパ管を足関節付近で剖出した。CT造影剤はヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル注射液(リピオドール(登録商標),ゲルベ・ジャパン)5mlをジエチルエーテル20mLに溶解させた溶液とした。注射針(32G)を使用して、同定し剖出されたリンパ管にリピオドール溶液2mLを直接注射した。
<結果>
図19は、本明細書における鼠径部の浅リンパ節群の定義を示す図である(参考:Foldi's Textbook of Lymphology 3rd Edition for Physicians andLymphedema Therapists, Editors: Michael Foldi, Ethel Foldi, Published Date:30th April 2012, Imprint: Urban & Fischer)。図19に示すとおり、鼠径部の浅リンパ節群を、大伏在静脈を縦軸、伏在裂孔(大腿静脈との合流部)から水平を横軸にとり、(1)下外側群(IL1~3)、(2)下内側群(IM1~3)、(3)上内側群(SM)、(4)上外側群(SL)及び(5)中心群(C)に分ける。そして、IL及びIMリンパ節群は、大伏在静脈に沿ったものを1番(IL1)、横軸付近のものを3番(IL3)、その間を2番(IL2)と定義する。
(後内側ルート)
図20は、後内側ルートを造影したときのリンパルートの走行を示すCTリンパ系造影画像を3次元構築したものである。3カ所の下肢断面図において、リンパルートが白く造影されている。後内側ルートは、実際の解剖所見と同様に脛骨内縁に沿うように上行し、深筋膜直上の層を走行した。後内側ルートは、大腿部では縫工筋後縁に沿うように上行した。後内側ルートは、大伏在静脈と同等又は深い層を走行した。後内側ルートは、一部大腿遠位部で深筋膜下に潜り込み、大腿動脈付近を走行した。リンパ節に達する前に深部系と合流する走行は、他のリンパルートにはない所見である。後内側ルートは、概して大伏在静脈本幹の走行に一致する。
図21は、後内側ルートが最初に到達するリンパ節の頻度をプロットしたグラフである。図21に示すとおり、後内側ルートの多くは、IL1リンパ節に到達した。また、後内側ルートの一部は、IL2リンパ節、IM1~IM3リンパ節に到達した。さらに、後内側ルートの中には、頻度は低いものの、直接深鼠径リンパ節(DI)に合流したものがあった。DIに合流するのは、他のリンパルートにはない特徴である。
(前内側ルート)
図22は、前内側ルートを造影したときのリンパルートの走行を示すCTリンパ系造影画像を3次元構築したものである。3カ所の下肢断面図において、リンパルートが白く造影されている。前内側ルートは、下腿では脛骨内縁を交差するように走行した。前内側ルートは、大腿部では縫工筋より内側を走行した。前内側ルートは、大伏在静脈本幹と同等か浅い層を走行した。
図23は、前内側ルートが最初に到達するリンパ節の頻度をプロットしたグラフである。図23に示すとおり、前内側ルートが最初に到達するリンパ節の分布は、後内側ルートのものとよく似ていたが、深鼠径リンパ節(DI)に到達することはなかった。また、前内側ルートは、IL3リンパ節、IL2リンパ節、IM1リンパ節及びIM2リンパ節に到達する頻度が、後内側ルートより高かった。
(前外側ルート)
図24は、前外側ルートを造影したときのリンパルートの走行を示すCTリンパ系造影画像を3次元構築したものである。3カ所の下肢断面図において、リンパルートが白く造影されている。前外側ルートは、下腿前面を外側より通過し、下腿近位にて下肢内側に移行した。前外側ルートは、大腿部では縫工筋の前面を通過した。
図25は、前外側ルートが最初に到達するリンパ節の頻度をプロットしたグラフである。図25に示すとおり、前外側ルートは、IL2リンパ節に最も多く到達し、次いでIL1リンパ節に多く到達した。また、前外側ルートの一部は、SLリンパ節群に到達した。SLリンパ節群に到達するのは、他のリンパルートにはない特徴である。
(後外側ルート)
図26は、後外側ルートを造影したときのリンパルートの走行を示すCTリンパ系造影画像を3次元構築したものである。3カ所の下肢断面図において、リンパルートが白く造影されている。後外側ルートは、1~2本存在し、下腿の後面を上行した。後外側ルートは、膝下で浅膝下リンパ節に合流した後は、筋膜下に入り、多くは大腿動脈に沿って上行した。後外側ルートの一部は、下腿若しくは膝下から、又は時折大腿部の途中で、前内側又は前外側グループに枝を出した。
図27は、後外側ルートが最初に到達するリンパ節の頻度をプロットしたグラフである。図27には、他のリンパルートが最初に到達するリンパ節の頻度も併せてプロットしてある(すなわち、図21、図23及び図25のプロットも併合している。)。図27に示すとおり、後外側ルートは、ほとんどが、浅膝下リンパ節(SP)に到着した。後外側ルートの一部は、下腿、膝下又は大腿部で枝を出すことにより、IL2リンパ節又はIL1リンパ節に到達した。
下記表1に下肢の各リンパルートが最初に到達するリンパ節の頻度を示す。
Figure 0007126163000001
図28は、下肢の各リンパルートが2番目以降に到達するリンパ節(すなわち、最初に到達するリンパ節以外で、各リンパルートが到達するリンパ節)の頻度をプロットしたグラフである。図28に示すとおり、後内側ルートは、SLリンパ節群、IL3リンパ節、IL2リンパ節、IM2リンパ節、IM3リンパ節、SMリンパ節群、深鼠径リンパ節(DI)及びCリンパ節群に到達した。図28に示すとおり、前内側ルートは、SLリンパ節群、IL3リンパ節、IL2リンパ節、IM2リンパ節、IM3リンパ節、深鼠径リンパ節(DI)及びCリンパ節群に到達した。図28に示すとおり、前外側ルートは、SLリンパ節群、IL3リンパ節、IM2リンパ節、IM3リンパ節、SMリンパ節群、深鼠径リンパ節(DI)及びCリンパ節群に到達した。図28に示すとおり、後外側ルートは、IL1リンパ節、IM2リンパ節、SMリンパ節群、深鼠径リンパ節(DI)及び深膝下リンパ節(DP)に到達した。
図28に示すとおり、前内側ルートが最も高い頻度で2番目以降のリンパ節に到達した。中でも、前内側ルートは、SLリンパ節群に到達する頻度が最も高く、また他のどのリンパ節にも到達する可能性があった。下肢の各リンパルートのいずれも、IL1リンパ節及びIL2リンパ節に2番目以降に到達する可能性はほぼなかった。
<考察>
下肢のリンパルートを網羅的に解析した結果、下肢末梢側からのリンパは、IL1リンパ節、IL2リンパ節及び浅膝下リンパ節のいずれかのリンパ節に高頻度に最初に到達することが分かった。下肢末梢側からのリンパは、鼠径部の浅リンパ節群のうち、IL1リンパ節、IL2リンパ節及び浅膝下リンパ節以外のリンパ節に到達する頻度(可能性)は低いため、IL1リンパ節、IL2リンパ節及び浅膝下リンパ節以外のリンパ節は、補助的な役割を果たしていると推察される。また、下肢末梢側からのリンパが、2番目以降に到達するリンパ節は無数のつながりを有していた。試験例3の結果より、下肢のリンパ節を評価する際は、IL1リンパ節、IL2リンパ節及び浅膝下リンパ節を造影対象とすることで、下肢末梢からのリンパ系(リンパ節、リンパ管)の機能全体を評価できることが分かる。
従来、下肢のリンパ系造影検査時に1カ所造影剤を注入することで、全てのリンパ節を検査できていると考えられていた。しかし、試験例3の結果は、下肢の各リンパルート(前内側ルート、後外側ルート、前外側ルート及び後内側ルート)は、責任リンパ節(最初に到達するリンパ節)が必ずしも一致するわけではないことを示しており、リンパ節を網羅的に評価するためには、下肢のリンパルートを網羅的に解析する必要があることが分かる。また、無数にある鼠径リンパ節のうち、下肢リンパ系の責任リンパ節と、それ以外の補助リンパ節を分けて機能評価することができる。
〔試験例4:上肢のリンパルートのマッピング〕
<材料及び方法>
53体のヒト新鮮遺体の上肢100本に対して、インドシアニングリーン(ICG)リンパ管造影検査を実施した。全ての献体者から事前に書面によるインフォームドコンセントを得た。
(ICGリンパ管造影検査)
インドシアニングリーン(Diagnogreen(登録商標),第一三共株式会社製)25mgを純水10mLに溶解させた。注射針(30G)を使用して、ICG溶液0.05mLを、図2に示す上肢注入部位1~17それぞれの皮下層に注射した(17注入部位/1上肢)。
図2に示す上肢注入部位1~17は、手背-手掌の境界線上に対し、解剖学的ランドマークに従って設定した。各上肢注入部位の詳細は以下に示すとおりである。
上肢注入部位1:橈骨茎状突起遠位端(distal of radial styloid process)
上肢注入部位5:第1中手骨頭(the first head of metacarpi)
上肢注入部位3:上肢注入部位1及び上肢注入部位5の中間点
上肢注入部位2:上肢注入部位1及び上肢注入部位3の中間点
上肢注入部位4:上肢注入部位3及び上肢注入部位5の中間点
上肢注入部位6:第1指間(the first interdigital space)
上肢注入部位7:第2指間(the second interdigital space)
上肢注入部位8:第3指間(the third interdigital space)
上肢注入部位9:第4指間(the fourth interdigital space)
上肢注入部位10:第5中手骨頭(the fifth head of metacarpi)
上肢注入部位14:尺骨茎状突起遠位端(distal of radial styloid process)
上肢注入部位12:上肢注入部位10及び上肢注入部位14の中間点
上肢注入部位11:上肢注入部位10及び上肢注入部位12の中間点
上肢注入部位13:上肢注入部位12及び上肢注入部位14の中間点
上肢注入部位16:上肢注入部位1及び上肢注入部位14の中間点(手掌側)
上肢注入部位15:上肢注入部位14及び上肢注入部位16の中間点
上肢注入部位17:上肢注入部位16及び上肢注入部位1の中間点
ICG溶液を注射後、直ちに注射部位を優しく手でマッサージした。ICGの蛍光像は、赤外観察カメラシステムで撮影した(励起波長760nm,蛍光波長830nm)。赤外観察カメラシステムのスライダーで撮影した像をイメージコンポジットエディタ(マイクロソフト社製)で合成し、リンパルート毎に異なる色を設定したパノラマ写真を得た。
<結果>
(上肢のリンパルートの分類)
図29(A)は、上肢のリンパ管造影検査結果の一例を示す写真(パノラマ写真)である。図29(B)は、図29(A)のトレース図である。上肢のリンパルートを、それらの解剖学的な走行に応じて、サブグループに分類した。上肢のリンパ管は、腋窩リンパ節方向へ収束するように走行していくため、上腕では非常に密集している。そのため、手関節から肘までのリンパ管の走行に対して、解剖学的ランドマークを用いて分類した。その結果、副橈側ルート(Accessory cephalic)、副尺側ルート(Accessory basilic)、橈側ルート(Cephalic)、尺側ルート(Basilic)及び前腕正中ルート(Median)の5つのサブグループに分けることができた(図29(B)参照)。これらは概ね皮静脈の走行に一致していたため、それに応じた名前をつけている。
更に、解剖学的なランドマークとして、上腕骨内側上顆(図29及び図30中、「×」で示す。)、上腕骨外側上顆(図29及び図30中、「△」で示す。)、橈骨茎状突起(図29及び図30中、「□」で示す。)、尺骨茎状突起(図29及び図30中、「○」で示す。)及び肘頭を用いて、リンパルートを分類した。図30は、リンパルートの走行を説明するための上肢領域の定義を示す図である。まず、肘窩において上腕骨内側上顆と上腕骨外側上顆との間を4等分し、内側から順にゾーン(Zone)I、II、III及びIVとし、ゾーンI~IV以外の肘頭をゾーンVと設定し、走行するリンパルートを分類した。また、前腕において、橈側では上腕骨外側上顆と橈骨茎状突起の中点(図30のR点)を設定し、尺側では上腕骨内側上顆と尺骨茎状突起の中点(図30のU点)を設定し、指標とした。
(各リンパルートの詳細分析)
1.副橈側ルート
副橈側ルートは、主に手背橈側から起始し、副橈側皮静脈に沿って走行する。副橈側ルートの出現率は94%(94/100)であった。副橈側ルートは、手関節レベルでは平均2.0本のリンパ管が通過し全体的に橈側にゆるくS状のカーブを描きながらR点より近位を通り上行し、肘窩でゾーンIVを通るリンパ管が主であった(96%:86/90)。他に、肘窩のゾーンIII(3%:3/94)、ゾーンV(1%:1/94)のみを通過する場合が認められた。11肢において、前腕で副尺側ルートとコネクションを有していた(11%:11/100)。また、鎖骨上リンパ節へつながるルートを持つものが12肢認められた(12%:12/100)。
2.橈側ルート
橈側ルートは、母指中手骨中点あたりに起始部を持ち、橈側皮静脈に沿って走行する。橈側ルートの出現率は99%(99/100)であった。橈側ルートは、手関節レベルでは平均1.8本のリンパ管が通過し、橈骨茎状突起より手背側を回り込み、R点より遠位で前腕屈側に達し肘窩ゾーンIIIを通って上腕に至るリンパ管が主であった(96%:95/99)。他に肘窩ゾーンIIを通るものが認められた(4%:4/99)。副橈側ルートよりやや屈側を橈側皮静脈に沿って走行する。肘窩を通った後に上腕二頭筋間のリンパ節を介して深部へ消えるものが3例のみ認められた(3%:3/95)。上腕では、前腕正中ルートのリンパ管と重なるため、近赤外分析(NIR)によって区別ができないことが多かった。
3.副尺側ルート
副尺側ルートは、主に、手背尺側から起始し、尺骨茎状突起を回り込み前腕尺側方向へカーブして屈側へと至り上行する。副尺側ルートの出現率は100%(100/100)であった。副尺側ルートは、手関節レベルでは平均2.8本のリンパ管が通過し肘窩ゾーンIを通過し上腕へ至るリンパ管が主であった(96%:96/100)。40肢はゾーンVを通り上腕へ上行するリンパ管も併存した。副尺側ルートのリンパ管は、前腕U点の近位と遠位の両方を通るものが多く、上腕の尺側を広く走行した。
4.尺側ルート
尺側ルートは、尺骨遠位端の掌側と手背の境界部から起始し、尺側皮静脈に沿って前腕を上行し、肘窩ゾーンIを通過して上腕へ至る。尺側ルートの出現率は81%(81/100)であった。尺側ルートは、1又は2本のリンパ管が走行し、前腕尺側において数本の副尺側ルートのリンパ管と合流しながら上行した。
5.前腕正中ルート
前腕正中ルートは、手関節腹側を起始部として、手関節レベルでは平均4.8本のリンパ管が通過し、前腕正中を上行する。前腕正中ルートの出現率は、100%(100/100)であった。前腕正中ルートは、次第に1又は2本のリンパ管に収束しながら肘窩ゾーンIIを通り上腕へ至る。上腕では橈側ルートと重なり上行する。
(上肢における各リンパルートの始部(盲端)のマッピング)
図31は、各献体における上肢注入部位1~17と、それぞれに対応する上肢のリンパルート(副橈側ルート、副尺側ルート、橈側ルート、尺側ルート及び前腕正中ルート)との関係をマッピングした表である。図32は、各リンパルート(副橈側ルート、副尺側ルート、橈側ルート、尺側ルート及び前腕正中ルート)について、造影が可能であった頻度(造影が可能であった献体数/総献体数)を上肢注入部位毎に示すグラフである。
図31及び図32に示すとおり、各上肢注入部位に対応するリンパルートはほとんど同一であり、それぞれの上肢注入部位は、特定のリンパルートの起始であることが示された。また、1つの上肢注入部位から2つのリンパルートに造影剤が取り込まれることがあったが、3つ以上のリンパルートに造影剤が取り込まれることはなかった。上肢背側では、副尺側ルートが最も大きな皮膚リンパテリトリーを有し、上肢腹側では前腕正中ルートが大きい皮膚リンパテリトリーを有していた。副橈側ルートが発達しているものでは、副尺側ルートの皮膚リンパテリトリーが小さい場合も認められた。一般的に橈側ルート及び尺側ルートの皮膚リンパテリトリーは小さかった。
<考察>
図31及び図32に示すとおり、橈側ルートは、上肢注入部位4に造影が可能であった頻度のピーク(極大値)を有していた。副橈側ルートは、上肢注入部位7に造影が可能であった頻度のピーク(極大値)を有していた。副尺側ルートは、上肢注入部位9に造影が可能であった頻度のピーク(極大値)を有していた。尺側ルートは、上肢注入部位14に造影が可能であった頻度のピーク(極大値)を有していた。前腕正中ルートは、上肢注入部位16に造影が可能であった頻度のピーク(極大値)を有していた。また、これら5箇所の上肢注入部位で上肢における5つのリンパルート全てを検出することができる。これら5箇所の上肢注入部位の解剖学的仕様は以下のとおりである。橈骨遠位端と母指中手骨頭との中点(上肢注入部位4)、第2指間(上肢注入部位7)、第4指間(上肢注入部位9)、尺骨遠位端の腹側と背側の境界点(上肢注入部位14)、手関節腹側正中(上肢注入部位16)。
図33は、試験例4の結果に基づき、上肢において、各リンパルート(副橈側ルート、副尺側ルート、橈側ルート、尺側ルート及び前腕正中ルート)が占める領域をマッピングした模式図である。
一実施形態において、リンパ系機能評価系システム1によるリンパ系機能評価の結果に基づいて、リンパマッサージや弾圧ストッキングによって、当該リンパ系を加圧してもよい。
1…リンパ系機能評価システム、3…撮像装置、3a…光学フィルタ、3b…撮像素子、3c…撮像素子制御部、5…光照射装置、5a…光源、5b…光源制御部、7…カメラユニット、D…リンパ系機能評価装置、P…観察対象物、L…励起光、L…観察光、D1…第1の取得手段、D2…第2の取得手段、D3…色設定手段、D4…出力手段、D12,D13…主記憶装置、D14…入力デバイス、D15…出力デバイス、D16…通信モジュール、D17…補助記憶装置。

Claims (4)

  1. 被験者の四肢末梢における可視化剤の注入部位の情報を取得する第1の取得手段と、
    可視化剤を注入された被験者の可視化剤像を取得する第2の取得手段と、
    第1の取得手段により取得した情報、及び四肢に複数存在するリンパルートとそれに対応する四肢末梢の注入部位との情報に基づき、第2の取得手段により取得した可視化剤像に、四肢に複数存在するリンパルート毎に異なる色を設定する色設定手段と、
    色設定手段により色を付した可視化剤像を出力する出力手段と、を備える、リンパ系機能評価装置。
  2. コンピュータを、
    被験者の四肢末梢における可視化剤の注入部位の情報を取得する第1の取得手段、
    可視化剤を注入された被験者の可視化剤像を取得する第2の取得手段、
    第1の取得手段により取得した情報、及び四肢に複数存在するリンパルートとそれに対応する四肢末梢の注入部位との情報に基づき、第2の取得手段により取得した可視化剤像に、四肢に複数存在するリンパルート毎に異なる色を設定する色設定手段、
    色設定手段により色を付した可視化剤像を出力する出力手段、
    として機能させるためのリンパ系機能評価プログラム。
  3. 請求項2に記載のリンパ系機能評価プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
  4. 非一時的記録媒体である、請求項3に記載の記録媒体。
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