本発明は、局所投与された場合にWATまたはBATへの効率的な遺伝子導入を媒介可能なアデノ随伴ウイルスのAAV6、AAV7、AAV8およびAAV9血清型をベースとするベクターを開示する。図1Bおよび1Cおよび3A~3Dを参照のこと。これらのベクターの全身投与はまた、WATおよびBAT両方における効率的な遺伝子送達につながる。図5Aおよび5Dを参照のこと。AAV8およびAAV9ベクターによって媒介される遺伝子送達は効率的であるが、脂肪組織に制限されない。本発明は、AAV8およびAAV9ベクターの、脂肪組織特異的プロモーター領域との組合せが、脂肪組織における目的のポリヌクレオチドの特異的発現を可能にすることを開示する。特に、異種遺伝子(例えば、GFP)がmini/aP2調節領域の制御下にある発現カセットを含むAAV8またはAAV9ベクターの局所投与は、WATにおけるその発現につながり、肝臓および心臓では発現はない。図2Aおよび9を参照のこと。さらに、異種遺伝子(例えば、GFP)がmini/UCPl調節領域の制御下にある発現カセットを含むAAV8またはAAV9ベクターの局所投与は、BATにおけるその発現につながり、心臓発現はなく、わずかな肝臓発現のみがある。図4Aおよび11Bを参照のこと。したがって、本発明のベクターおよびプロモーターによって形成される組合せの局所投与は、in vivoでの脂肪細胞の形質導入に基づいた多数の疾患を治療するための安全な機序を提供する。
さらに、本発明の組合せの全身投与は、脂肪細胞の形質導入のための代替アプローチとなる。これに関連して、本発明は、AAV8またはAAV9-mini/UCP1およびAAV8またはAAV9-mini/aP2の組合せの全身投与が、それぞれ、BATおよびWATに形質導入するのに有効であることを開示する。図6Aおよび7Aを参照のこと。2つの調節領域のいずれが使用されようとも、本発明の組合せの全身投与は、脂肪組織における目的のポリヌクレオチドの高度に制限された発現につながり、心臓では発現はなく、肝臓におけるわずかな発現のみがある。図7Bおよび7Cを参照のこと。
1.一般用語および表現の定義
本明細書において同義的に使用されるような、用語「アデノ随伴ウイルス」、「AAVウイルス」、「AAVビリオン」、「AAVウイルス粒子」および「AAV粒子」は、少なくとも1つのAAVキャプシッドタンパク質(好ましくは、特定のAAV血清型のキャプシッドタンパク質のすべてによる)と、キャプシド形成されたポリヌクレオチドAAVゲノムとから構成されるウイルス粒子を指す。粒子が、AAV逆方向末端反復配列がそれぞれの両端に位置する、異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳動物細胞に送達される導入遺伝子などの野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合には、通常、「AAVベクター粒子」または「AAVベクター」と呼ばれる。AAVとは、パルボウイルス(Parvoviridae)科のディペンドウイルス(Dependovirus)属に属するウイルスを指す。AAVゲノムは、およそ4.7キロベースの長さであり、プラスまたはマイナスセンスのいずれであってもよい一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)からなる。ゲノムは、DNA鎖の両末端に逆方向末端反復配列(ITR)ならびに2つのオープンリーディングフレーム(ORF):repおよびcapを含む。repフレームは、AAV生活環に必要なRepタンパク質をコードする4種の重複遺伝子からできている。capフレームは、一緒に相互作用して、正二十面体対称のキャプシッドを形成するキャプシッドタンパク質:VP1、VP2およびVP3の重複するヌクレオチド配列を含有する。Carter B、Adeno-associated virus and adeno-associated virus vectors for gene delivery、Lassic Dら編、「Gene Therapy:Therapeutic Mechanisms and Strategies」(Marcel Dekker、Inc.、New York、NY、US、2000年)およびGao Gら、J.Virol.2004年;第78巻(第12号):6381~6388頁を参照のこと。
本明細書において、用語「アデノ随伴ウイルスITR」または「AAV ITR」とは、アデノ随伴ウイルスのゲノムのDNA鎖の両末端に存在する逆方向末端反復配列を指す。ITR配列は、AAVゲノムの効率的な増殖に必要である。これらの配列の別の特性は、ヘアピンを形成するその能力である。この特徴は、第2のDNA鎖のプライマーゼ独立性合成を可能にするその自己誘導の一因となる。ITRはまた、野生型AAV DNAの宿主細胞ゲノム(すなわち、ヒトにおける19番染色体)への組み込みおよびそれからのレスキューにとって、ならびに十分にアセンブルされた、デオキシリボヌクレアーゼ耐性AAV粒子の作製と組み合わせた、AAV DNAの効率的なキャプシド形成にとって必要であると示された。
用語「AAV2」とは、本明細書において、GenBank受託番号NC001401で定義されるようなゲノム配列を有するアデノ随伴ウイルスの血清型を指す。
用語「AAVベクター」とは、本明細書においてさらに、AAV末端反復配列(ITR)が両端に位置する1種以上の目的のポリヌクレオチド(または導入遺伝子)を含むベクターを指す。このようなAAVベクターは、repおよびcap遺伝子産物(すなわち、AAV RepおよびCapタンパク質)をコードし、発現するベクターでトランスフェクトされている宿主細胞中に存在し、宿主細胞が、アデノウイルスオープンリーディングフレームE4orf6をコードし、それからタンパク質を発現するベクターでトランスフェクトされている場合に、複製され、感染性ウイルス粒子中にパッケージングされ得る。AAVベクターが、より大きなポリヌクレオチドに(例えば、染色体中に、またはクローニングもしくはトランスフェクションに使用されるプラスミドなどの別のベクター中に)組み込まれる場合には、次いで、AAVベクターは、通常、「プロ-ベクター」と呼ばれる。プロ-ベクターは、AAVパッケージング機能およびE4orf6によって提供される必須のヘルパー機能の存在下で、複製およびキャプシド形成によって「レスキュー」され得る。
用語「脂肪組織」とは、本明細書において、成熟脂肪細胞(すなわち、脂肪細胞)ならびに小血管、神経組織、リンパ節および間質血管細胞群(SVF)の組合せから構成される組織を指す。SVFは、内皮細胞、線維芽細胞、脂肪細胞前駆体細胞(すなわち、前脂肪細胞)ならびにマクロファージおよびT細胞などの未熟細胞から構成される。哺乳動物では、2種の異なる種類の脂肪組織が伝統的に区別されている:白色脂肪組織(WAT)および褐色脂肪組織(BAT)。脂肪組織は、主に、脂肪の形態でエネルギーを貯蔵するよう、震えなし熱発生によって熱を生じるよう、アディポカインを分泌するよう機能する。
用語「脂肪組織細胞」または「脂肪細胞」とは、本明細書において、脂肪組織を含み、脂肪としてのエネルギーの貯蔵または震えなし熱発生による熱の生成およびアディポカインの分泌を専門とする細胞型を指す。脂肪組織細胞は、白色脂肪細胞および褐色脂肪細胞を含む。
用語「脂肪組織特異的転写調節領域」とは、本明細書において、プロモーターとして働き(すなわち、プロモーターと作動可能に連結している選択された核酸配列の発現を調節し)、脂肪細胞などの特定の組織細胞において選択された核酸配列の発現に影響を及ぼす核酸配列を指す。脂肪組織特異的転写調節領域は、構成的または誘導可能であり得る。
用語「アルカリホスファターゼ」または「AP」とは、本明細書において、ヌクレオチド、タンパク質およびアルカロイドを含めた多数の種類の分子からのリン酸基の加水分解を触媒する酵素(EC3.1.3.1)を指す。
用語「血管新生」とは、本明細書において、その他の予め存在していたものから新規血管を形成するプロセスを指し、脈管形成および動脈形成のプロセスを含む。
用語「動脈形成」とは、本明細書において、平滑筋中層を有する血管の形成、成長または発達を指す。
用語「褐色脂肪組織細胞」または「褐色脂肪細胞」とは、本明細書において、多角形であり、複数のより小さい「多胞性の」液滴への脂質の蓄積および細胞質内のひだ状クリステがつまった大きなミトコンドリアの高含量を特徴とする脂肪細胞の種類を指す。白色脂肪細胞とは異なり、これらの細胞は、相当な細胞質を有する。核は、円形であり、偏在するが、細胞の末梢にではない。褐色脂肪細胞の多数のミトコンドリアおよび褐色脂肪貯蔵所の豊富な血管分布が、BATの褐色の主な理由である。褐色脂肪細胞は、古典的なBAT貯蔵所に位置し、震えなし熱発生による熱の生成に関与している。Enerback S、N.Engl.J.Med.2009年;第360巻:2021~2023頁を参照のこと。
用語「CAG調節領域」とは、本明細書において、サイトメガロウイルス初期エンハンサーエレメントおよびニワトリβ-アクチンプロモーターによって形成される組合せを指す。Alexopoulou Aら、BMC Cell Biology 2008年;第9巻(2号):1~11頁を参照のこと。
用語「cap遺伝子」または「AAV cap遺伝子」とは、本明細書において、Capタンパク質をコードする遺伝子を指す。用語「Capタンパク質」とは、本明細書において、天然AAV Capタンパク質の少なくとも1つの機能活性(例えば、VP1、VP2、VP3)を有するポリペプチドを指す。Capタンパク質の機能的活性(例えば、VP1、VP2、VP3)の例として、キャプシッドの形成を誘導し、一本鎖DNAの蓄積を促進し、キャプシドへのAAV DNAパッケージング(すなわち、キャプシド形成)を促進し、細胞受容体と結合し、宿主へのビリオンの侵入を促進する能力が挙げられる。
用語「キャプシッド」とは、本明細書において、ウイルスのゲノムがパッケージングされる構造を指す。キャプシッドは、タンパク質でできたいくつかのオリゴマー構造サブユニットからなる。例えば、AAVは、3種のキャプシッドタンパク質:VP1、VP2およびVP3の相互作用によって形成される正二十面体のキャプシッドを有する。
用語「細胞組成物」とは、本明細書において、本発明の脂肪細胞および少なくとも別の成分を含む複合材料を指す。組成物は、単一製剤として製剤され得るか、または各成分の別個の製剤として提示され得、これを、組み合わせ調製物として共同使用のために組み合わせてもよい。組成物は、各成分が個別に製剤され、パッケージングされるパーツキットであり得る。
用語「構成的プロモーター」とは、本明細書において、その活性が、細胞環境条件にほとんどまたは全くかかわらず、生物の細胞において、またはほとんどの発達段階に、比較的一定レベルで維持されるプロモーターを指す。
用語「エンハンサー」とは、本明細書において、転写因子が結合して遺伝子転写を増大するDNA配列エレメントを指す。
用語「発現カセット」とは、本明細書において、標的細胞における特定の核酸の転写を可能にする、一連の特定の核酸エレメントを用いて組換えによってまたは合成によって作製された核酸構築物を指す。
用語「ヘルパー機能を提供する遺伝子」とは、本明細書において、AAVが複製を依存している機能(すなわち、「ヘルパー機能」)を果たすポリペプチドをコードする遺伝子を指す。ヘルパー機能は、制限するものではないが、AAV遺伝子転写、段階特異的AAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、cap発現産物の合成およびAAVキャプシッドアセンブリーの活性化に関与している部分を含めたAAV複製に必要な機能を含む。ウイルスベースの補助機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外)およびワクシニアウイルスなどの既知ヘルパーウイルスのいずれかに由来し得る。ヘルパー機能は、それだけには限らないが、アデノウイルスEl、E2a、VAおよびE4またはヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52およびUL29ならびにヘルペスウイルスポリメラーゼを含む。
用語「ヘキソキナーゼ」または「HK」とは、本明細書において、ヘキソースのリン酸化を触媒して、リン酸ヘキソースを形成する酵素を指す。ほとんどの生物において、グルコースは、HKの主な基質であり、グルコース-6リン酸は最も重要な産物である。
用語「高血圧症」または「動脈高血圧症」とは、本明細書において、動脈の血圧が上昇している医学的状態を指す。血圧は、2つの測定値、心臓筋肉が、拍動間で収縮している(収縮期)か、または弛緩している(心臓拡張期)かどうかに依存して、収縮期および拡張期を含む。安静時正常血圧は、100~140mmHg収縮期(上の読み取り)および60~90mmHg拡張期(下の読み取り)の範囲内にある。高血圧症は、持続的に140/90mmHg以上である場合に存在するといわれる。高血圧症は、原発性(本態性)高血圧症または続発性高血圧症のいずれかとして分類され、症例の約90~95%が、明白な根底にある医学的原因がない高血圧症を意味する「原発性高血圧症」として分類される。症例の残りの5~10%(すなわち、続発性高血圧症)は、腎臓、動脈、心臓または内分泌系に影響を及ぼすその他の条件によって引き起こされる。肥満症でよく見られるインスリン抵抗性も、高血圧症の一因であると考えられている。高血圧症は、卒中、心筋梗塞(すなわち、心臓発作)、心不全、動脈の瘤(例えば、大動脈動脈瘤)、末梢動脈疾患の主要な危険因子であり、慢性腎臓疾患の原因である。動脈血圧の中程度の上昇でさえ、平均余命の短縮と関連している。
用語「高血糖症」とは、本明細書において、異常に高い血糖レベルが、空腹時ベースラインレベルと関連して現れる状態を指す。特に、高血糖症は、空腹時血糖レベルが、126mg/dLよりも一貫して高く、食後グルコースレベルが140mg/dLより高いか、または体重1キログラムにつき1.75グラムのグルコースの容量の投与の2時間後の静脈血漿中のグルコースレベルが、200mg/dLを上回る場合に起こると理解される。
用語「インスリン抵抗性」とは、本明細書において、細胞がインスリンに対して正しく応答しない障害を指す。結果として、身体は、高血糖レベルに応じてより多くのインスリンを産生する。インスリン抵抗性を有する患者は、高いグルコースレベルおよび高い循環インスリンレベルを示すことが多い。インスリン抵抗性は、肥満症、高血圧症および高脂血症と関連していることが多い。さらに、インスリン抵抗性は、2型糖尿病を有する患者において現れることが多い。
用語「局所投与された」とは、本明細書において、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチドまたは医薬組成物が、特定の部位でまたはその付近で対象に投与されることを意味する。
用語「肥満症」とは、本発明において使用されるように、肥満度指数(BMI)に基づいてWHOによって提供される肥満症の定義に関し、ヒトの体重(kgで)とメートルでの身長の二乗の間の比からなる。この判定基準によれば、18.5kg/m2より小さいBMIは、不十分な体重または痩せていると考えられ、18.5~24.9kg/m2のBMIは、正常体重と考えられ、25.0~29.9kg/m2のBMIは、グレード1の過体重と考えられ、30.0~39.0kg/m2のBMIは、グレード2の過体重と考えられ、40.0kg/m2以上のBMIは、病的な肥満症と考えられる。あるいは、肋骨の下限と骨盤の上限の間の中点で測定した腰の直径(cmで)、皮膚のひだの厚みおよび除脂肪塊は脂肪塊よりも良好に電気を伝達するという原則に基づく生体インピーダンスなど、対象の肥満症の程度を規定するためのその他の方法がある。
用語「作動可能に連結している」とは、本明細書において、目的のポリヌクレオチドに関するプロモーター配列の機能的関連および位置を指す(例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合にコード配列と作動可能に連結している)。一般に、作動可能に連結しているプロモーターは、目的の配列と隣接している。しかし、エンハンサーは、その発現を制御するために目的の配列と隣接していなくてもよい。
本明細書において同義的に使用される、用語「医薬上許容される担体」、「医薬上許容される希釈剤」、「医薬上許容される賦形剤」または「医薬上許容される媒体」は、非毒性固体、半固体または液体増量剤、希釈剤、カプセル化剤または任意の従来の種類の製剤助剤を指す。医薬上許容される担体は、使用される投与量および濃度でレシピエントにとって本質的に非毒性であり、製剤のその他の成分と適合している。医薬上許容される担体の数および性質は、所望の投与形に応じて変わる。医薬上許容される担体は、公知であり、当技術分野で周知の方法によって調製され得る。Fauli i Trillo C、「Tratado de Farmacia Galenica」(Ed.Luzan 5、S.A.、Madrid、ES、1993年)およびGennaro A編、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」第20版(Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia、PA、US、2003年)を参照のこと。
用語「プロモーター」とは、本明細書において、ポリヌクレオチド配列(複数可)の上流に位置する1種以上のポリヌクレオチドの転写を制御するよう機能し、DNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位、転写開始部位ならびにそれだけには限らないが、転写因子結合部位、レプレッサーおよびアクチベータータンパク質結合部位を含めた任意のその他のDNA配列ならびに直接的または間接的に作用してプロモーターからの転写量を調節する当技術分野で公知の任意のその他のヌクレオチドの配列の存在によって構造的に同定されている核酸断片を指す。「組織特異的」プロモーターは、特定の種類の分化細胞または組織においてのみ活性である。
用語「ポリヌクレオチド」とは、本明細書において、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含有する核酸分子、DNAまたはRNAのいずれかを指す。核酸は、二本鎖であっても一本鎖であってもよく、または二本鎖もしくは一本鎖配列の両方の部分を含有する。用語「ポリヌクレオチド」は、それだけには限らないが、ポリペプチドをコードする能力を有する核酸配列および細胞または目的の内因性ポリヌクレオチドと部分的または完全に相補的であり、その結果、その転写後に、内因性ポリヌクレオチドとハイブリダイズし、その発現を阻害可能なRNA分子(例えば、マイクロRNA、shRNA、siRNA)を生成する核酸配列を含む。
用語「転写後調節領域」とは、本明細書において、カセット中に含有される配列または得られた遺伝子産物の発現、安定化または局在性を促進する任意のポリヌクレオチドを指す。
用語「防ぐ」、「防ぐこと」および「防止」とは、本明細書において、対象において疾患の発端を阻害することまたは疾患の出現を低減することを指す。防止は完全である場合も(例えば、対象において病理学的細胞が全くないこと)、部分的である場合もある。防止はまた、臨床状態に対する感受性の低下を指す。
用語「組換えウイルスゲノム」とは、本明細書において、少なくとも1つの外来発現カセットポリヌクレオチドが、天然に存在するAAVゲノム中に挿入されているAAVゲノムを指す。
用語「rep遺伝子」または「AAV rep遺伝子」とは、本明細書において、Repタンパク質をコードする遺伝子を指す。用語「Repタンパク質」とは、本明細書において、天然AAV Repタンパク質(例えば、Rep40、52、68、78)の少なくとも1つの機能活性を有するポリペプチドを指す。Repタンパク質(例えば、Rep40、52、68、78)の「機能活性」は、DNA複製のAAV開始点の認識、結合およびニッキングによるDNAの複製の促進ならびにDNAヘリカーゼ活性を含む、タンパク質の生理学的機能と関連する任意の活性である。さらなる機能として、AAV(またはその他の異種)プロモーターからの転写の調節および宿主染色体へのAAV DNAの部位特異的組み込みが挙げられる。
用語「対象」とは、本明細書において、個体、植物またはヒト、非ヒト霊長類(例えば、チンパンジーおよびその他の類人猿およびサル種)などの動物、家畜(例えば、トリ、魚、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマ)、家畜哺乳動物(例えば、イヌおよびネコ)または実験動物(例えば、マウス、ラットおよびモルモットなどのげっ歯類)を指す。この用語は、特定の年齢または性別は示さない。用語「対象」は、胚および胎児を包含する。
用語「全身に投与された」および「全身投与」とは、本明細書において、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチドまたは医薬組成物が局在化されていない方法で対象に投与されることを意味する。本発明のポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチドまたは医薬組成物の全身投与は、対象の身体全体のいくつかの臓器または組織に到達し得るか、対象の特定の臓器または組織に到達し得る。例えば、本発明の医薬組成物の静脈内投与は、対象中の2種以上の組織または臓器の形質導入をもたらし得る。
用語「転写調節領域」とは、本明細書において、多くの遺伝子のうち1種の発現を調節可能な核酸断片を指す。本発明のポリヌクレオチドの調節領域は、プロモーターおよびエンハンサーを含む。
用語「形質導入する」または「形質導入」とは、本明細書において、外来ヌクレオチド配列がウイルスベクターを介して細胞中に導入されるプロセスを指す。
用語「トランスフェクション」とは、本明細書において、レシピエント真核細胞へのDNAの導入を指す。
用語「治療する」または「治療」とは、本明細書において、その臨床徴候が現れた後に疾患の進行を制御するための本発明の化合物または組成物の投与を指す。疾患進行の制御は、それだけには限らないが、症状の低減、疾患期間の低減、病理学的状態の安定化(具体的には、さらなる増悪を避けるための)、疾患の進行の遅延、病理学的状態の改善および緩解(部分的および完全の両方)を含む、有益なまたは所望の臨床結果を意味すると理解される。疾患の進行の制御はまた、治療が適用されない場合に予測される生存と比較した生存の延長も含む。
用語「2型糖尿病」とは、本明細書において、血糖レベルの不適当な増大を特徴とする疾患を指す。糖尿病の慢性高血糖症は、種々の臓器の長期の損傷、機能障害および不全を伴い、網膜症、腎症および末梢神経障害などのさまざまな合併症につながる。2型糖尿病は、低減したβ-細胞量および機能の組合せによる、末梢組織(主に、骨格筋、脂肪組織および肝臓)におけるインスリン抵抗性および不適当な代償的インスリン分泌応答によって引き起こされる。グルコース濃度の増大に加えて、不完全なインスリン作用は、コレステロールまたはトリグリセリドレベルの増大になることが多い。
用語「脈管形成」とは、本明細書において、未分化または低分化細胞に由来する血管の形成、成長、発生または増殖を指す。
用語「ベクター」とは、本明細書において、宿主細胞中に送達し、任意選択で、1種以上の目的のポリヌクレオチドを発現することが可能な構築物を指す。ベクターの例として、それだけには限らないが、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤と会合しているDNAまたはRNA発現ベクター、リポソーム中にカプセル化されたDNAまたはRNA発現ベクターおよびプロデューサー細胞などの特定の真核細胞が挙げられる。ベクターは、安定であり得、自己複製可能である。使用可能なベクターの種類に関して制限はない。ベクターは、いくつかの異種生物に組み込まれたポリヌクレオチド、遺伝子構築物または発現ベクターを増幅させ、入手するのに適したクローニングベクターであり得る。適したベクターとして、原核生物の発現ベクター(例えば、pUC18、pUC19、Bluescriptおよびその誘導体)、mpl8、mpl9、pBR322、pMB9、CoIE1、pCR1、RP4、ファージおよびシャトルベクター(例えば、pSA3およびpAT28)ならびにウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスならびにレトロウイルスおよびレンチウイルス)ならびに非ウイルスベクター、例えば、pSilencer 4.1-CMV(Ambion(登録商標)、Life Technologies Corp.、Carslbad、CA、US)、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEFl/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER-HCMV、pUB6/V5-His、pVAXl、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびpKSV-10、pBPV-l、pML2dおよびpTDT1をベースとする真核生物の発現ベクターが挙げられる。
用語「VEGF」とは、本明細書において、血管内皮細胞増殖因子を意味する。「VEGF」として、それだけには限らないが、VEGF変異体A、B、C、D、EおよびFが挙げられる。Hamawy Aら、Curr.Opin.Cardiol.1999年;第14巻:515~522頁、Neufeld Gら、Prog.Growth Factor Res.1994年;第5巻:89~97頁、Olofsson Bら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1996年;第93巻:2576~2581頁、Chilov Dら、J.Biol.Chem.1997年;第272巻:25176~25183頁およびOlofsson Bら、Curr.Opin.Biotechnol. 1999年;第10巻:528~535頁を参照のこと。VEGF A変異体として、それだけには限らないが、アイソフォームVEGF164、VEGF121、VEGF145、VEGF167、VEGF165、VEGF189およびVEGF206が挙げられる。Tischer Eら、J.Biol.Chem.1991年;第266巻:11947~11954頁およびPoltorak Zら、J.Biol.Chem.1997年;第272巻:7151~7158頁を参照のこと。用語「VEGF」はまた、血管透過性因子またはバスキュロトロピン(VPF)を含む。Keck Pら、Science 1989年;第246巻:1309~1312頁およびSenger Dら、Science 1983年;第219巻:983~985頁を参照のこと。VPFは、VEGF Aとして現在当技術分野で公知である。胎盤増殖因子PIGF IおよびIIを含め、VEGFファミリーのその他のメンバーもまた使用できる。適したVEGFの配列は、容易に入手可能である(例えば、National Center for Biotechnology Information、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/June 2012年)。例えば、ヒトVEGFファミリーメンバーの遺伝子座として、VEGF-A-P15692およびNP003367;VEGF-B-NP003368、P49765、AAL79001、AAL79000、AAC50721、AAB06274およびAAH08818;VEGF-C-NP005420、P49767、S69207、AAB36425およびCAA63907;VEGF-D-NP004460、AAH27948、O43915、CAA03942およびBAA24264;VEGF-E-AAQ88857;VEGF-F-2VPFF;PIGF-1-NP002623、AAH07789、AAH07255、AAH01422、P49763、CAA38698およびCAA70463;PIGF-1の鎖A-1FZVAおよび鎖B-IFZVBの合成構築物;ならびにPIGF-2-AAB25832およびAAB30462が挙げられる。好ましくは、VEGFは、ヒト起源のものである。しかし、本発明に従って、マウスなどのその他の種由来のVEGFを使用してもよい。
用語「白色脂肪組織細胞」または「白色脂肪細胞」とは、本明細書において、多面体から球状であり、細胞質の薄層によって囲まれた大きな「単房性」脂質液滴を含有する脂肪細胞の種類を指す。前記細胞の核は、平板化され、末梢に局在する。白色脂肪細胞の直径は、可変性であり、貯蔵所部位に従って30から70μmの間の範囲である。貯蔵された脂肪は、半液体状態であり、主に、トリグリセリドおよびコレステリルエステルからなる。白色脂肪細胞は、まとめてアディポカインとして知られる多数のペプチドおよびタンパク質、例えば、レジスチン、アディポネクチンおよびレプチンを分泌する。
用語「ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント」または「WPRE」は、本明細書において、転写されると、遺伝子の発現を増強可能な三次構造を作製するDNA配列を指す。Lee Yら、Exp.Physiol.2005年;第90巻(l号):33~37頁およびDonello Jら、J.Virol.1998年;第72巻(6号):5085~5092頁を参照のこと。
用語「マイクロRNA」または「miRNA」とは、本明細書において、転写後レベルでのRNA媒介性遺伝子サイレンシングに関与する、小さい(約22-nt)、進化的に保存された調節RNAである。Barrel DP.Cell 2004年;第116巻:281~297頁を参照のこと。miRNAは、相補的領域(細胞メッセンジャーRNA(mRNA)の3’非翻訳領域(3’UTR)中であることが最も多い)との塩基対形成によって、mRNA翻訳を抑制するよう作用し得るか、高い配列相同性の際には、mRNAの触媒分解を引き起こす。多数のmiRNAの高度に異なる組織発現のために、細胞miRNAを利用して、遺伝子療法ベクターの組織特異的ターゲッティングを媒介できる。ウイルスベクター内の組織特異的miRNAと完全に相補的である標的エレメント(miRT)のタンデムコピーを遺伝子操作することによって、望ましくない組織における導入遺伝子発現を効率的に阻害できる。
2.脂肪組織特異的発現を提供するアデノ随伴ウイルスベクター
第1の態様では、本発明は、前記組換えウイルスゲノムが、目的のポリヌクレオチドと作動可能に連結している脂肪組織特異的転写調節領域を含む発現カセットを含む組換えウイルスゲノムを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。
本発明のAAVは、公知のAAVの42種の血清型のうち任意の血清型を含む。一般に、AAVの血清型は、アミノ酸および核酸のレベルで相当な相同性を有するゲノム配列を有し、同一の一連の遺伝子機能を提供し、生理学的および機能的に本質的に同等であるビリオンを産生し、事実上同一の機序によって複製し、アセンブルする。特に、本発明のAAVは、AAVの血清型1(AAV1)、AAV2、AAV3(3Aおよび3B型を含む)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、鳥類AAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAVおよび任意のその他のAAVに属し得る。異なるAAV血清型のゲノムの配列の例は、文献またはGenBankなどの公開データベースにおいて見出され得る。GenBank受託番号AF028704.1(AAV6)、NC006260(AAV7)、NC006261(AAV8)およびAX753250.1(AAV9)を参照のこと。好ましい実施形態では、本発明のアデノ随伴ウイルスベクターは、AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9血清型からなる群から選択される血清型のものである。
本発明のAAVのゲノムは、通常、シス作用性5’および3’逆方向末端反復配列および発現カセットを含む。Tijsser P編「Handbook of Parvoviruses」(CRC Press、Boca Raton、FL、US、1990年、155~168頁)を参照のこと。ITR配列は、約145bpの長さである。分子においてITRをコードする実質的に全配列が使用されることが好ましいが、これらの配列のある程度の微小な修飾は許容される。これらのITR配列を修飾するための手順は、当技術分野で公知である。BrownT、「Gene Cloning」(Chapman
& Hall、London、GB、1995年)、Watson Rら、「Recombinant DNA」、第2版(Scientific American Books、New York、NY、US、1992年)、Alberts Bら、「Molecular Biology of the Cell」(Garland Publishing Inc.、New York、NY、US、2008年)、Innis Mら編、「PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications」(Academic Press Inc.、San Diego、CA、US、1990年)、Erlich H編「PCR Technology. Principles and Applications for DNA Amplification」(Stockton Press、New York、NY、US、1989年)、Sambrook Jら「Molecular Cloning A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、US、1989年)、Bishop Tら、「Nucleic Acid and Protein Sequence. A Practical Approach」(IRL Press、Oxford、GB、1987年)、Reznikoff W編、「Maximizing Gene Expression」(Butterworths Publishers、Stoneham、MA、US、1987年)、Davis Lら「Basic Methods in Molecular Biology」(Elsevier Science Publishing Co.、New York、NY、US、1986年)およびSchleef M編、「Plasmid for Therapy and Vaccination」(Wiley- VCH Verlag GmbH、Weinheim、DE、2001年)を参照のこと。好ましい実施形態では、AAV組換えゲノムは、5’および3’AAV ITRを含む。別の実施形態では、5’および3’AAV ITRは、AAV2に由来する。さらにより好ましい実施形態では、AAV組換えゲノムは、repオープンリーディングフレームまたはcapオープンリーディングフレームを欠く。一実施形態では、AAV2 ITRは、偽型AAV(すなわち、異なる血清型に由来するキャプシッドおよびITRを有するAAV)を生成するよう選択される。
本発明のポリヌクレオチドは、AAV血清型のうち任意の1種に由来するITRを含み得る。好ましい実施形態では、ITRは、AAV2血清型に由来する。
本発明のAAVは、任意の血清型に由来するキャプシッドを含む。特定の実施形態では、キャプシッドは、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9からなる群のAAVに由来する。好ましい実施形態では、本発明のAAVは、AAV8またはAAV9血清型に由来するキャプシッドを含む。さらに好ましい実施形態では、AAVキャプシッドのVP1配列は、配列番号18を有する。GenBank受託番号AY530579を参照のこと。
いくつかの実施形態では、本発明の方法において使用するためのAAV Capを、上記のAAV Capのうち1種またはそのコード核酸の突然変異誘発によって(すなわち、挿入、欠失または置換によって)作製してもよい。いくつかの実施形態では、AAV Capは、上記のAAV Capのうち1種以上と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%またはそれ以上類似している。
いくつかの実施形態では、AAV Capは、前記のAAV Capのうち2、3、4種またはそれ以上に由来するドメインを含むキメラである。いくつかの実施形態では、AAV Capは、2または3種の異なるAAVまたは組換えAAVに由来するVP1、VP2およびVP3単量体のモザイクである。いくつかの実施形態では、rAAV組成物は、上記のCapのうち2種以上を含む。
いくつかの実施形態では、rAAV組成物において使用するためのAAV Capは、異種配列またはその他の修飾を含有するよう遺伝子操作される。例えば、選択的ターゲッティングまたは免疫回避を付与するペプチドまたはタンパク質配列が、Capタンパク質に遺伝子操作され得る。あるいは、またはさらに、Capは、rAAVの表面がポリエチレングリコール付加される(すなわち、ペグ化される)よう化学的に修飾され得、これは、免疫回避を促進し得る。Capタンパク質はまた、突然変異誘発され得る(例えば、その天然受容体結合を除去するよう、または免疫原性エピトープをマスクするよう)。
別の特定の実施形態では、AAVベクターは、偽型AAVベクターである(すなわち、ベクターは、少なくとも2種の別個のAAV血清型を起源とする配列または成分を含む)。特定の実施形態では、偽型AAVベクターは、1種のAAV血清型(例えば、AAV2)に由来するAAVゲノムおよび別個のAAV血清型に少なくとも幾分か由来するキャプシッドを含む。このような偽型AAVベクターの具体例として、限定するものではないが、AAV6、AAV7、AAV8またはAAV9由来キャプシッド中に、任意のAAV血清型(例えば、AAV1~AAV11)に由来するゲノムを含むベクターが挙げられる。
一実施形態では、AAVベクターは、以下の一覧から選択され得る少なくとも1種のmiRNAの少なくとも1種の標的配列:miR122(miRBaseデータベース受託番号MI0000442)、miR152(MI0000462)、miR199(MI0000242)、miR215(MI0000291)、miR192(MI0000234)、miR148a(MI0000253)、miR194(MI0000488)、miR1(MI0000651)、miRT133(MI0000450)、miR206(MI0000490)、miR208(MI0000251)、miR124(MI0000443)、miR125(MI0000469)、miR216(MI0000292)、miR130(MI0000448)を付加した1種のプロモーターを含有する。配列参照は、miRBase(http://www.mirbase.org/、31/07/2013としてのバージョンに従って)から得た。
一実施形態では、AAVベクターは、以下の一覧から選択され得る少なくとも1種のmiRNA標的配列を付加した1種のプロモーターを含有する:
一覧1
miRT122a(5’CAAACACCATTGTCACACTCCA3’)、
miRT152(5’AGTCACGTACTGTCTTGAACC3’)、
miR199a-5p(5’GGGTCACAAGTCTGATGGACAAG3’)、
miR99a-3p(5’TGTCATCAGACGTGTAACCAAT3’)、
miRT215(5’TACTGGATACTTAACTGTCTG3’)、
miRT192(5’GGCTGTCAATTCATAGGTCAG3’)、
miRT194(5’ACATTGTCGTTGAGGTACACCT3’)、
miRT1(5’TTACATACTTCTTTACATTCCA3’)、
mirT148(5’AGTCACGTGATGTCTTGAAACA3’)、
miRT133a(5’AAACCAGGGGAAGTTGGTCGAC3’)、
miRT206(5’ACCTTACATTCCTTCACACACC3’)、
miRT124(5’ATTCCGTGCGCCACTTACGG3’)、
miRT125(5’AGGGACTCTGGGAAATTGGACACT3’)、
miRT216(5’ATTAGAGTCGACCGTTGACACT3’)、
miRT130(5’GTCACGTTACAATTTTCCCGTA3’)。
一実施形態では、AAVベクターは、上記の一覧1から選択されたmiRNA標的配列と85%の相同性を有する少なくとも1種のmiRNA標的配列を付加した1種のプロモーターを含有する。
一実施形態では、AAVベクターは、上記の一覧1から選択されるmiRNA標的配列と機能的に同等である少なくとも1種のmiRNA標的配列を付加した1種のプロモーターを含有する。この場合には、用語機能的に同等とは、元の配列と結合する同一miRNAと結合可能な任意のヌクレオチド配列を意味する。例えば、miRT122aの機能的に同等物は、miRT122aとハイブリダイズするであろう同数のmiRNAとハイブリダイズする任意の配列である。
機能的に同等なヌクレオチド配列は、参照mirT配列の相対生物活性を保持する。それは、mirTの機能的同等物は、参照mirT配列が行うのと同一方法で望ましくない組織における導入遺伝子発現を阻害する能力を有するということを意味する。
別の特定の実施形態では、miRNA標的配列は、配列番号19と呼ばれるmirT122a(5’CAAACACCATTGTCACACTCCA3’)または配列番号20と呼ばれるmirT1(5’TTACATACTTCTTTACATTCCA3’)から選択され得る。
転写調節領域は、プロモーターと、任意選択で、エンハンサー領域を含み得る。プロモーターは、脂肪組織に特異的であることが好ましい。エンハンサーは、脂肪組織に特異的である必要はない。あるいは、転写調節領域は、脂肪組織特異的プロモーターおよび脂肪組織特異的エンハンサーを含み得る。
一実施形態では、組織特異的プロモーターは、例えば、脂肪細胞タンパク質2(aP2、脂肪酸結合タンパク質4(FABP4)としても知られる)、PPARyプロモーター、アディポネクチンプロモーター、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)プロモーター、ヒトアロマターゼシトクロムp450に由来するプロモーター(p450arom)またはFoxa-2プロモーターなどの脂肪細胞特異的プロモーターである。Graves Rら、Genes Dev.1991年;第5巻:428~437頁、Ross Sら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1990年;第87巻:9590~9594頁、Simpson Eら、米国特許第5,446,143号明細書、Mahendroo Mら、J.Biol.Chem.1993年;第268巻:19463~19470頁、Simpson Eら、Clin.Chem.1993年;第39巻:317~324頁およびSasaki Hら、Cell 1994年;第76巻:103~115頁を参照のこと。好ましい実施形態では、エンハンサー領域は、脂肪特異的aP2エンハンサーおよび脂肪特異的UCP1エンハンサーからなる群から選択される。
好ましい実施形態では、本発明のAAVの脂肪組織特異的調節領域は、脂肪特異的aP2エンハンサーおよび基礎aP2プロモーターを含む。Rival Yら、J.Pharmacol.Exp.Ther.2004年:第311巻(2号):467~475頁を参照のこと。脂肪特異的aP2エンハンサーおよび基礎aP2プロモーターを含む領域はまた、「mini/aP2調節領域」としても知られ、aP2遺伝子の基礎プロモーターおよび前記aP2遺伝子の脂肪特異的エンハンサーによって形成される。好ましくは、aP2プロモーターは、マウスである。Graves Rら、Mol.Cell Biol.1992年;第12巻(3号):1202~1208頁およびRoss Sら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1990年;第87巻:9590~9594頁を参照のこと。特定の実施形態では、mini/aP2調節領域は、配列番号2を有する。
別の好ましい実施形態では、本発明のAAVの脂肪組織特異的調節領域は、脂肪特異的UCP1エンハンサーおよび基礎UCP1プロモーターを含む。del Mar Gonzalez-Barroso Mら、J.Biol.Chem.2000年;第275巻(41号):31722~31732頁およびRim Jら、J.Biol.Chem.2002年;第277巻(37号):34589~34600頁を参照のこと。脂肪特異的UCP1エンハンサーおよび基礎UCP1プロモーターを含む領域は、「mini/UCP調節領域」としても知られ、UCP1遺伝子の基礎プロモーターおよび前記UCP1遺伝子の脂肪特異的エンハンサーの組合せを指す。ラットUCP1プロモーターが使用されることが好ましい。Larose Mら、J.Biol.Chem.1996年;第271巻(49号):31533~31542頁およびCassard-Doulcier
Aら、Biochem.J.1998年;第333巻:243~246頁を参照のこと。特定の実施形態では、mini/UCP1調節領域は、配列番号3を有する。
別の実施形態では、本発明のAAVの一部を形成する発現カセットは、それだけには限らないが、適当な転写配列(すなわち、開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー)、効率的なRNAプロセシングシグナル(例えば、スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナル)、細胞質mRNAを安定化する配列、翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列)、タンパク質安定性を増強する配列および、望ましい場合には、コードされる産物の分泌を増強する配列を含めた発現制御配列をさらに含む。天然、構成的、誘導可能または組織特異的であるプロモーターを含めた多数の発現制御配列が、当技術分野で公知であり、本発明に従って利用され得る。
別の実施形態では、本発明のAAVの一部を形成する発現カセットは、転写後調節領域をさらに含む。好ましい実施形態では、転写後調節領域は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後領域(WPRE)またはその機能的変異体および断片ならびにPPT-CTSまたはその機能的変異体および断片である。Zufferey Rら、J.Virol.1999年;第73巻:2886~2892頁およびKappes Jら、国際公開第2001/044481号を参照のこと。特定の実施形態では、転写後調節領域は、WPREである。
本発明のAAVの一部を形成する発現カセットは、「目的のポリヌクレオチド」を含む。好ましい実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、全身に作用するタンパク質をコードする。別の実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、脂肪細胞でまたはその付近で作用するタンパク質をコードする。好ましい実施形態では、前記脂肪細胞でまたはその付近で作用するタンパク質は、ヘキソキナーゼ(HK)であり、細胞内位置および種々の基質に関する動態学の点で変わる4種の哺乳動物HKアイソザイム(EC2.7.1.1)のいずれも含む。例として、HKは、HK1(GenBank受託番号NP000179、NP277031、NP277032、NP277033、NP277035)、HK2(GenBank受託番号NP000180)、HK3(GenBank受託番号NP002106)およびHK4またはグルコキナーゼ(GenBank受託番号NP000153、NP277042、NP277043)を含む。別の好ましい実施形態では、HKは、本明細書においてヘキソキナーゼ4またはHK4と同義的に使用されるグルコキナーゼであり、グルコースについてHK1、HK2またはHK3よりも100倍高いKmを有するヘキソキナーゼのアイソフォームを指す。
一実施形態では、前記脂肪細胞でまたはその付近で作用するタンパク質は、アルカリホスファターゼ(AP)であり、それだけには限らないが、腸型またはIAP(GenBank受託番号NP001622)、胎盤型またはPLAP(GenBank受託番号NP001623)および組織非特異的アイソザイムまたはALPL(GenBank受託番号NP000469、NP001120973.2およびNP001170991.1)を含む。別の実施形態では、前記脂肪細胞でまたはその付近で作用するタンパク質は、VEGFであり、それだけには限らないが、VEGF変異体A、B、C、D、EおよびFを含む。
別の実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、普通、脂肪細胞によって産生され、分泌されるポリペプチドをコードする。別の実施形態では、脂肪細胞によって産生され、分泌されるポリペプチドは、アディプシン(例えば、特に、セリンプロテアーゼ相同体であるアディプシン)、アディポネクチン、レプチン、レジスチンまたはob遺伝子のタンパク質産物である。
さらにその他の有用な目的のポリヌクレオチドとして、それだけには限らないが、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、アンギオポエチン、アンギオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン増殖因子IおよびII(IGF-IおよびTGF-II)、TGFaを含めたトランスフォーミング増殖因子aスーパーファミリーのいずれか1種、アクチビン、インヒビンまたは骨形態形成タンパク質(BMP)BMP1~15のいずれか、ヘレグルイン(heregluin)/ニューレグリン/ARIA/増殖因子のneu分化因子(NDF)ファミリーのいずれか1種、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT-3およびNT-4/5、繊毛様神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アグリン、セマフォリン/コラプシンのファミリーのいずれか1種、ネトリン-1およびネトリン-2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグおよびチロシンヒドロキシラーゼを含めたコーディングホルモンならびに成長および分化因子が挙げられる。
その他の有用な目的のポリヌクレオチドとして、それだけには限らないが、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL)IL-1からIL-25(例えば、IL-2、IL-4、IL-12およびIL-18)、単球走化性タンパク質、白血病阻害因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子αおよびβ、インターフェロンα、βおよびγ、幹細胞因子、flk-2/flt3リガンドなどのサイトカインおよびリンホカインを含めた免疫系を調節するコーディングタンパク質が挙げられる。免疫系によって産生される遺伝子産物もまた、本発明において有用である。これらとして、それだけには限らないが、免疫グロブリンIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、一本鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、一本鎖T細胞受容体、クラスIおよびクラスII MHCおよびHLA分子並びに遺伝子操作された免疫グロブリンおよびMHCおよびHLA分子が挙げられる。有用な遺伝子産物としてまた、補体調節タンパク質、補体調節タンパク質(membrane cofactor protein)(MCP)、崩壊促進因子(DAF)、CR1、CF2およびCD59などの補体調節タンパク質が挙げられる。
さらにその他の有用な目的のポリヌクレオチドとして、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、リンホカイン、調節タンパク質および免疫系タンパク質の受容体のいずれか1種をコードするものが挙げられる。本発明は、低比重リポタンパク質(LDL)受容体、高比重リポタンパク質(HDL)受容体、極低比重リポタンパク質(VLDL)受容体およびスカベンジャー受容体を含めた、コレステロール調節または脂質調節のための受容体を包含する。本発明はまた、グルココルチコイド受容体およびエストロゲン受容体、ビタミンD受容体およびその他の核受容体を含めた、ステロイドホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーなどの遺伝子産物も包含する。さらに、有用な遺伝子産物として、jun、fos、max、mad、血清応答因子(SRF)、API、AP2、myb、MyoDおよびミオゲニン、ETSボックス含有タンパク質、TFE3、E2F、ATF1、ATF2、ATF3、ATF4、ZF5、NFAT、CREB、HNF-4、C/EBP、SP1、CCAATボックス結合タンパク質、インターフェロン調節因子(IRF-1)、ウィルムス腫瘍タンパク質、ETS結合タンパク質、STAT、GATAボックス結合タンパク質(例えば、GATA-3)およびウィングドヘリックスタンパク質のフォークヘッドファミリーなどの転写因子が挙げられる。
その他の有用な目的のポリヌクレオチドとして、カルバモイルシンセターゼI、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノスクシネート(arginosuccinate)シンセターゼ、アルギノスクシネート(arginosuccinate)リアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセトアセテート(fumarylacetacetate)ヒドロラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、α-1アンチトリプシン、グルコース-6-ホスファターゼ、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ、シスタチオン(cystathione)β-シンターゼ、分枝鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリル-coAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、β-グルコシダーゼ、ピルベートカルボキシレート(pyruvate carboxylate)、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、H-タンパク質、T-タンパク質、嚢胞性線維症膜貫通調節(CFTR)配列およびジストロフィン遺伝子産物(例えば、ミニ-またはマイクロ-ジストロフィン)などの酵素をコードするものが挙げられる。さらにその他の有用な遺伝子産物として、補充療法において有用な酵素、例えば、リソソーム貯蔵疾患の治療のためのマンノース-6-リン酸を含有する酵素(例えば、β-グルクロニダーゼ(GUSB)をコードするのに適した遺伝子)などが挙げられる。
AAVベクターのパッケージングサイズの限界は、親の野生型AAVゲノムの大きさに制限され、AAV血清型に基づいて大きさに幅がある(すなわち、4,087~4,767)。Wu Zら、Mol.Ther.2010年;第7巻(1号):80~86頁を参照のこと。例えば、野生型AAV-2は、4,679のゲノムの大きさを有し、野生型AAV-6は、4,683のゲノムの大きさを有する。いくつかの実施形態では、組換えRNAベクターのクローニング能力は、制限され得、所望のコード配列は、ウイルスの4.8キロベースのゲノムの完全な置換を含み得る。したがって、いくつかの場合には、大きな遺伝子は、標準組換えAAVベクターにおいて使用するには適していないことがある。当業者ならば、制限されたコーディング能力を克服するための選択肢が、当技術分野において利用可能であるということは理解するであろう。例えば、2つのゲノムのAAV ITRは、アニールして、ヘッドトゥーテールコンカテマーを形成し、ベクターの能力を倍増し得る。スプライス部位の挿入によって、転写物からのITRの除去が可能となる。制限されたクローニング能力を克服するためのその他の選択肢は、当業者には明らかとなろう。
3.AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9の脂肪組織に対する指向性に基づく治療法
第2の態様において、本発明は、脂肪組織細胞を効率的に形質導入可能なAAV6、AAV7、AAV8およびAAV9血清型のアデノ随伴ウイルスベクターを開示する。この特徴によって、脂肪細胞における目的のポリヌクレオチドの発現を必要とするか、またはそれから恩恵を受け得る疾患の治療方法の開発が可能となる。特に、この知見は、患者に本発明のAAVベクターを投与することによる、目的のポリペプチドの、それを必要とする対象への送達を促進し、従って、in vivoで、目的のポリヌクレオチドを発現可能な脂肪細胞およびそのコードされるポリペプチドを作製する。コードされるポリペプチドが分泌型ポリペプチドである場合には、脂肪細胞によって分泌され得、このような方法でポリペプチドの全身送達が可能になる。
したがって、別の実施形態では、本発明は、組換えウイルスゲノムを含むアデノ随伴ウイルスベクターを提供し、前記組換えウイルスゲノムは、目的のポリヌクレオチドと作動可能に連結している転写調節領域を含む発現カセットを含み、AAVの血清型は、目的のポリヌクレオチドの発現を必要とする疾患の治療または予防において使用するために、AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9からなる群から選択される。
別の実施形態では、本発明は、組換えウイルスゲノムを含むアデノ随伴ウイルスベクターを提供し、前記組換えウイルスゲノムは、目的の前記ポリヌクレオチドの発現を必要とする疾患の治療または予防において使用するために、目的のポリヌクレオチドと作動可能に連結している脂肪組織特異的転写調節領域を含む発現カセットを含む。
別の実施形態では、本発明は、組換えウイルスゲノムを含むアデノ随伴ウイルスのベクターの前記対象への投与を含む、対象における目的のポリヌクレオチドの発現を必要とする疾患の治療または予防のための方法を提供し、前記組換えウイルスゲノムは、目的のポリヌクレオチドと作動可能に連結している転写調節領域を含む発現カセットを含み、AAVの血清型は、AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9からなる群から選択される。
別の実施形態では、本発明は、組換えウイルスゲノムを含むアデノ随伴ウイルスベクターの前記対象への投与を含む、対象における目的のポリヌクレオチドの発現を必要とする疾患の治療または予防のための方法を提供し、前記組換えウイルスゲノムは、目的のポリヌクレオチドと作動可能に連結している脂肪組織特異的転写調節領域を含む発現カセットを含む。
本発明の治療法において使用するためのAAVは、目的のポリヌクレオチドおよび転写調節領域を含む発現カセットを含む。転写調節領域は、プロモーターと、任意選択で、エンハンサー領域を含み得る。
一実施形態では、転写調節領域は、目的のポリヌクレオチドの構成的発現を可能にする。構成的プロモーターの例として、制限するものではないが、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意選択で、RSVエンハンサーとともに)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意選択で、CMVエンハンサーとともに)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーターおよびEF1aプロモーターが挙げられる。Boshart Mら、Cell 1985年;第41巻:521~530頁を参照のこと。
別の実施形態では、転写調節領域は、β-アクチンプロモーターを含む。β-アクチンプロモーターは、ヒトおよびげっ歯類を含めた任意の哺乳動物またはニワトリを含めたトリに由来するものであり得る。ニワトリβ-アクチンが使用されることが好ましい。
さらに別の実施形態では、転写調節領域は、エンハンサー領域をさらに含む。エンハンサー領域は、CMVエンハンサー領域であることが好ましい。
特定の実施形態では、調節領域は、CAG調節領域である。好ましい実施形態では、CAG調節領域は、配列番号1を有する。
別の実施形態では、転写調節領域は、脂肪組織特異的転写調節領域である。
プロモーターが、脂肪組織に特異的であり、そのためエンハンサーは、同様に脂肪組織に特異的でなくてもよい。あるいは、転写調節領域は、脂肪組織特異的プロモーターおよび脂肪組織特異的エンハンサーを含み得る。
一実施形態では、組織特異的プロモーターは、脂肪細胞特異的プロモーター、例えば、脂肪細胞タンパク質2(aP2、脂肪酸結合タンパク質4(FABP4)としても知られる)プロモーター、PPARyプロモーター、アディポネクチンプロモーター、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)プロモーター、ヒトアロマターゼシトクロムp450(p450arom)由来のプロモーターおよびFoxa-2プロモーターなどである。Graves(1991年)、Ross(1990年)、Simpson(米国特許第5,446,143号明細書)、Mahendroo(1993年)、Simpson(1993年)およびSasaki(1994年)、前掲を参照のこと。
一実施形態では、エンハンサー領域は、脂肪特異的aP2エンハンサーおよび脂肪特異的UCP1エンハンサーからなる群から選択される。
好ましい実施形態では、本発明のAAVの脂肪組織特異的調節領域は、脂肪特異的aP2エンハンサーおよび基礎マウスaP2プロモーターを含む。特定の実施形態では、mini/aP2調節領域は、配列番号2を有する。
別の好ましい実施形態では、本発明のAAVの脂肪組織特異的調節領域は、脂肪特異的UCP1エンハンサーおよび基礎ラットUCP1プロモーターを含む。特定の実施形態では、mini/UCP1調節領域は、配列番号3を有する。
別の実施形態では、発現カセットは、転写後調節領域をさらに含む。好ましい実施形態では、転写後調節領域は、WPREまたはその機能的変異体および断片ならびにPPT-CTSまたはその機能的変異体および断片である。
その他の適した目的のポリヌクレオチドは、本発明のAAVを用いて運ばれ(vectorized)、疾患の治療または予防のために使用され得る。表1を参照のこと。
用語「目的のポリヌクレオチドの発現を必要とする疾患」とは、本明細書において、目的のポリヌクレオチドの発現が望ましい任意の疾患を指す。目的のポリヌクレオチドとは、本明細書において、目的のポリペプチドをコードする遺伝子、あるいは、転写されると、細胞において内因性ポリヌクレオチドの発現を調節可能な分子を生成する核酸配列であり得る。したがって、目的のポリヌクレオチドの発現を必要とする疾患は、遺伝子の発現レベルを増大または低減することが望ましい疾患であり得る。
さらに、目的のポリヌクレオチドは、分泌され、全身に作用するタンパク質または前記脂肪細胞でまたはその付近で作用するタンパク質をコードし得る。特定の実施形態では、目的のポリヌクレオチドの発現を必要とする疾患は、脂肪組織における、より好ましくは、白色脂肪組織または褐色脂肪組織における目的のポリヌクレオチドの発現を必要とする疾患である。
目的のポリヌクレオチドの発現を必要とする疾患の例として、それだけには限らないが、肥満症、高血糖症、インスリン抵抗性、2型糖尿病、高血圧症、癌、心疾患、免疫疾患、関節炎、中枢神経系の疾患および加齢関連疾患が挙げられる。
本発明のAAVは、基礎グルコース取り込みを増大させるためのWATおよびBATの両方における本発明のAAVによって媒介されるヘキソキナーゼの送達などの脂肪組織関連疾患の遺伝子療法にとって有用であると証明された。図2Dおよび4Bを参照のこと。したがって、特定の実施形態では、目的のポリヌクレオチドの発現の調節を必要とする疾患は、肥満症、高血糖症、インスリン抵抗性、2型糖尿病および高血圧症からなる群から選択される疾患である。
例示的遺伝子および関連疾患として、それだけには限らないが、糖尿病の治療のためのインスリン、嚢胞性線維症の治療のためのCFTR、血友病Bの治療のための第IX因子、血友病Aの治療のための第VIII因子、グリコーゲン貯蔵欠乏症1A型と関連しているグルコース-6-ホスファターゼ、Pepck欠乏症と関連しているホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、ガラクトース血症と関連しているガラクトース-1リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、フェニルケトン尿症と関連しているフェニルアラニンヒドロキシラーゼ、メープルシロップ尿症と関連している分枝鎖α-ケト酸デヒドロゲナーゼ、チロシン血症1型と関連しているフマリルアセト酢酸ヒドラーゼ、メチルマロン酸血症と関連しているメチルマロニル-CoAムターゼ、中鎖アセチルCoA欠乏症と関連している中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ欠乏症と関連しているオルニチントランスカルバミラーゼ、シトルリン血症と関連しているアルギニノコハク酸シンセターゼ、家族性高コレステロール血症と関連している低比重リポタンパク質受容体タンパク質、クリグラー・ナジャー病と関連しているUDP-グルコウロノシルトランスフェラーゼ、重症複合免疫不全症と関連しているアデノシンデアミナーゼ、痛風およびレッシュ・ナイハン(Lesch-Nyan)症候群と関連しているヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、ビオチミダーゼ(biotimidase)欠乏症と関連しているビオチミダーゼ(biotimidase)、ゴーシェ病と関連しているβ-グルコセレブロシダーゼ、スライ症候群と関連しているβ-グルクロニダーゼ、ツェルウェーガー症候群と関連しているペルオキシソーム膜タンパク質70kDa、急性間欠性ポルフィリン症と関連しているポルフォビリノーゲンデアミナーゼ、α-1アンチトリプシン欠乏症(肺気腫)の治療のためのα-1アンチトリプシン、地中海貧血症または腎不全による貧血の治療のためのエリスロポエチン、虚血性疾患の治療のための血管内皮細胞増殖因子、アンジオポエチン-1および線維芽細胞増殖因子、例えば、アテローム性動脈硬化症、血栓症または塞栓症において見られるような閉塞血管の治療のためのトロンボモジュリンおよび組織因子経路阻害薬、パーキンソン病の治療のための芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)およびチロシンヒドロキシラーゼ(TH)、うっ血性心不全の治療のためのβ-アドレナリン受容体、ホスホランバンのアンチセンスまたはその突然変異体形態、筋小胞体(小胞体)アデノシントリホスファターゼ-2(SERCA2)および心臓アデニリルシクラーゼ、種々の癌の治療のためのp53などの腫瘍サプレッサー遺伝子、炎症性および免疫性障害および癌の治療のための種々のインターロイキンの1種などのサイトカイン、筋ジストロフィーの治療のためのジストロフィンまたはミニジストロフィンおよびユートロフィンまたはミニユートロフィン、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠乏症の治療のためのアデノシンデアミナーゼ(ADA)、ハンチントン舞踏病を治療する為のハンチンジン(huntingin)(HTT)、家族性高コレステロール血症を治療するための低密度リポタンパク質受容体(LDLR)またはアポリポタンパク質B(APOB)、フェニルケトン尿症を治療するためのフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)、多発性嚢胞腎疾患を治療するための多発性嚢胞腎疾患1(PKD1)および多発性嚢胞腎疾患2(PKD2)、関節炎を治療するためのTNFR:Fc、遺伝性肺気腫の治療ためのAAT、筋ジストロフィーの治療のためのサルコグリカン、パーキンソン病の治療のためのGAD65またはGAD67、カナバン病の治療のためのAAC、バッテン病の治療のためのCLN2、アルツハイマー病の治療のためのNGF、黄斑変性症の治療のためのVEGFアンタゴニスト、うっ血性心不全の治療のためのIGF/HGF、中枢神経系障害の疾患の治療のためのNGFおよびHIV、HIV感染またはAIDSを治療するためのHIVに対する中和抗体が挙げられる。
本発明のAAVによって送達され得る目的のポリヌクレオチドの例として、それだけには限らないが、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、UCP2、UCP3、PPAR-α、レプチン、レプチン受容体OB-RbおよびGLP-1が挙げられる。特定の実施形態では、目的の遺伝子は、ヘキソキナーゼ(HK)、グルコキナーゼ(GK)、アルカリホスファターゼ(AP)および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)からなる群から選択される。1つのさらなる実施形態では、ヘキソキナーゼまたはグルコキナーゼを発現するポリヌクレオチドを含む本発明のAAVは、2型糖尿病の治療または予防のためにそれを必要とする対象に投与される。別のさらなる実施形態では、血管内皮細胞増殖因子を発現するポリヌクレオチドを含む本発明のAAVは、肥満症の治療または予防のためにそれを必要とする対象に投与される。
本発明の方法を用いて治療可能な疾患の例示的であるが、限定されない例として、肥満症、高血糖症、インスリン抵抗性、2型糖尿病、高血圧症および動脈高血圧症が挙げられる。2型糖尿病は、レプチンを脂肪細胞の近くで、または全身のいずれかで発現させ、その結果、それが視床下部に到達することによって治療され得ることが好ましい。
さらに、AAV9-mini/UCP1によるVEGF164のiBAT内投与が、総VEGFの発現レベルの増大に、およびiBATにおける血管数の増大につながるので、本発明のAAVは、BATの遺伝子操作にとって有用であると証明された。図4C~4Fを参照のこと。したがって、特定の実施形態では、本発明は、VEGFの発現を必要とする疾患、例えば、その管理が血管新生、動脈形成または脈管形成の誘導から恩恵を受け得る疾患などの治療または予防において使用するための本発明のAAVまたは医薬組成物に関する。VEGFの発現を必要とする疾患の例として、それだけには限らないが、急性手術創および外傷性創傷、火傷、熱傷、静脈性潰瘍、動脈性潰瘍、褥瘡(aka褥瘡性潰瘍)、糖尿病性潰瘍、照射後創傷、皮膚移植、混合病因論の潰瘍およびその他の慢性または壊死性創傷が挙げられる。
さらに、AAV9-mini/aP2ウイルスベクターを用いるhSeAP遺伝子(すなわち、ヒト胎盤由来分泌型アルカリホスファターゼ(secreted alkaline phosphase))のeWAT内投与は、hSeAPの循環レベルの持続した増大につながる。したがって、特定の実施形態では、本発明は、APの発現を必要とする疾患、例えば、LPS(すなわち、リポ多糖類)媒介性または増悪性疾患などの治療または予防において使用するための本発明のAAVまたは医薬組成物に関する。APの発現を必要とする疾患の例として、それだけには限らないが、炎症性腸疾患、敗血症または敗血性ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、髄膜炎菌血症、外傷性出血性ショック、hum傷害、心臓血管手術または心肺バイパス術、肝臓手術または移植、肝臓疾患、膵炎、壊死性腸炎、歯周病、肺炎、嚢胞性線維症、喘息、冠動脈心疾患、うっ血性心不全、腎疾患、溶血性尿毒症症候群、腎臓透析、癌、アルツハイマー病ならびに関節リウマチおよび全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患が挙げられる。
4.in vitroで細胞に形質導入する方法
第3の態様では、本発明は、本発明のAAVベクターを使用することによって、in vitroで細胞に形質導入する方法に関する。したがって、本発明は、前記細胞を、組換えウイルスゲノムを含むAAVと接触させることを含み、前記組換えウイルスゲノムが、目的のポリヌクレオチドと作動可能に連結している脂肪組織特異的転写調節領域を含む発現カセットを含む、in vitroで細胞に形質導入する方法に関する。
好ましい実施形態では、in vitroで細胞に形質導入する方法において使用されるアデノ随伴ウイルスベクターは、AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9からなる群から選択される血清型を有する。別の実施形態では、アデノ随伴ウイルスITRは、AAV2 ITRである。
別の実施形態では、アデノ随伴ウイルスベクターは、脂肪組織特異的転写調節領域を含む。さらに別の実施形態では、脂肪組織特異的転写調節領域は、基礎マウスaP2プロモーターおよび基礎ラットUCP1プロモーターからなる群から選択されるプロモーター領域を含む。さらに別の実施形態では、脂肪組織特異的転写調節領域は、プロモーター領域と作動可能に連結しているエンハンサー領域をさらに含む。さらに別の実施形態では、エンハンサー領域は、脂肪特異的aP2エンハンサーおよび脂肪特異的UCP1エンハンサーからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態では、脂肪組織特異的転写調節領域は、
i)脂肪特異的aP2エンハンサーおよび基礎マウスaP2プロモーターを含むポリヌクレオチド、
ii)脂肪特異的UCP1エンハンサーおよび基礎ラットUCP1プロモーターを含むポリヌクレオチド
からなる群から選択される。
別の実施形態では、発現カセットは、転写後調節領域をさらに含む。さらに別の実施形態では、転写後調節領域は、WPREである。
別の実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、全身に作用する分泌型タンパク質および前記脂肪細胞でまたはその付近で作用するタンパク質からなる群から選択されるタンパク質をコードする。さらにより好ましい実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、アルカリホスファターゼおよび血管内皮細胞増殖因子からなる群から選択されるタンパク質をコードする。
別の実施形態では、本発明は、組換えウイルスゲノムを含むAAVを用いてin vitroで細胞に形質導入し、前記組換えウイルスゲノムが、目的のポリヌクレオチドと作動可能に連結している転写調節領域を含む発現カセットを含み、AAVの血清型が、AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9からなる群から選択される方法に関する。
一実施形態では、アデノ随伴ウイルスITRは、AAV2 ITRである。
別の実施形態では、アデノ随伴ウイルスベクターは、転写調節領域を含有する組換えゲノムを含む。一実施形態では、転写調節領域は、構成的プロモーターである。好ましい実施形態では、構成的転写調節領域は、アクチンプロモーターを含む。さらに別の実施形態では、構成的転写調節領域は、プロモーター領域と作動可能に連結しているエンハンサー領域をさらに含む。さらにより好ましい実施形態では、エンハンサー領域は、サイトメガロウイルスエンハンサーである。
一実施形態では、転写調節領域は、脂肪組織特異的転写調節領域である。さらに別の実施形態では、脂肪組織特異的転写調節領域は、基礎マウスaP2プロモーターおよび基礎ラットUCP1プロモーターからなる群から選択されるプロモーター領域を含む。さらに別の実施形態では、脂肪組織特異的転写調節領域は、プロモーター領域と作動可能に連結しているエンハンサー領域をさらに含む。さらに別の実施形態では、エンハンサー領域は、脂肪特異的aP2エンハンサーおよび脂肪特異的UCP1エンハンサーからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態では、脂肪組織特異的転写調節領域は、
i)脂肪特異的aP2エンハンサーおよび基礎マウスaP2プロモーターを含むポリヌクレオチドおよび
ii)脂肪特異的UCP1エンハンサーおよび基礎ラットUCP1プロモーターを含むポリヌクレオチド
からなる群から選択される。
別の実施形態では、発現カセットは、転写後調節領域をさらに含む。さらに別の実施形態では、転写後調節領域は、WPREである。
別の実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、全身に作用する分泌型タンパク質および前記脂肪細胞でまたはその付近で作用するタンパク質からなる群から選択されるタンパク質をコードする。さらにより好ましい実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、アルカリホスファターゼおよび血管内皮細胞増殖因子からなる群から選択されるタンパク質をコードする。
本発明のin vitro法を使用して、任意の細胞が形質導入され得る。特定の実施形態では、脂肪組織細胞に形質導入するためにAAVが使用される。さらにより好ましい実施形態では、脂肪組織細胞は、褐色脂肪細胞または白色脂肪細胞である。
白色脂肪細胞に形質導入するために、本発明に従って、細胞に形質導入するためのin vitro法が実施される場合には、AAV内の転写調節領域は、好ましくは、mini/aP2調節領域を含む。別の実施形態では、褐色脂肪細胞に形質導入するために、本発明に従って、細胞に形質導入するためのin vitro法が実施される場合には、AAV内の転写調節領域は、好ましくは、mini/UCP1調節領域を含む発現カセットを含む。
本発明の別の態様では、mini/aP2およびmini/UCP1プロモーターによって得られる導入遺伝子発現を改善するために、脂肪組織において高い発現レベルを得、オフターゲット臓器から導入遺伝子発現を標的化解除しようとして、CAGプロモーターは組織特異的miRNA標的配列とともに使用される。これは、局所または全身投与された場合に、AAVベクターが脂肪組織を遺伝子修飾する可能性のさらなる強化をもたらした。
さらなる実施形態では、本発明は、本発明のAAVベクターを使用することおよびin
vitroでそれらを培養することによって、in vivoで形質導入された細胞を単離する方法に関する。別の実施形態では、本発明は、前記の単離された形質導入された細胞ならびにそれらを含む細胞および医薬組成物に関する。
5.形質導入された脂肪細胞および脂肪細胞組成物、ex-vivo治療法
第4の態様では、本発明は、本発明のin vitro法によって得られた脂肪細胞に関する。別の実施形態では、本発明は、本発明の方法に従って得られた脂肪細胞を含む細胞組成物に関する。さらに、本発明はまた、本発明のAAVのゲノムを含む脂肪細胞(adipocyte)または脂肪細胞(adipocyte cell)組成物に関する。好ましくは、細胞組成物の少なくとも50%は、本発明の脂肪細胞からなる。より好ましくは、細胞組成物の少なくとも60%、70%、80%、90%、95%および100%は、本発明の脂肪細胞からなる。
上記のように、目的のポリヌクレオチドを前記細胞に導入するために、本発明のAAVをin vitroで細胞に形質導入するために使用できる。続いて、形質導入された細胞を、所望の治療効果を得るためにヒトまたは動物の身体に埋め込み可能である。
したがって、別の実施形態では、本発明は、医薬において使用するために本発明の方法に従って得られた、脂肪細胞に、または脂肪細胞を含む細胞組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、目的のポリヌクレオチドの発現を必要とする疾患の治療において使用するために本発明の方法に従って得られた、脂肪細胞に、または脂肪細胞を含む細胞組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象に本発明の方法に従って得られた脂肪細胞または細胞組成物を投与することを含む、疾患を治療または予防するための方法に関する。このアプローチを用いて対処可能な疾患の例は、本発明のAAVとの関連で上記に定義されている。
6.ポリヌクレオチド、ベクターおよびプラスミド
第5の態様では、本発明は、本発明のAAVを製造するために有用であるポリヌクレオチドに関する。したがって、別の実施形態では、本発明は、アデノ随伴ウイルスITRがそれぞれの両端に位置する発現カセットを含むポリヌクレオチド(「本発明のポリヌクレオチド」)に関し、前記発現カセットは、目的のポリヌクレオチドと作動可能に連結している脂肪組織特異的調節領域を含む。
好ましい実施形態では、脂肪組織特異的調節領域は、基礎マウスaP2プロモーターおよび基礎ラットUCP1プロモーターからなる群から選択されるプロモーター領域を含む。
別の実施形態では、脂肪組織特異的調節領域は、プロモーター領域と作動可能に連結しているエンハンサー領域をさらに含む。さらにより好ましい実施形態では、エンハンサー領域は、脂肪特異的aP2エンハンサーおよび脂肪特異的UCP1エンハンサーからなる群から選択される。
別の実施形態では、調節領域は、
i)脂肪特異的aP2エンハンサーおよび基礎マウスaP2プロモーターを含むポリヌクレオチドおよび
ii)脂肪特異的UCP1エンハンサーおよび基礎ラットUCP1プロモーターを含むポリヌクレオチド
からなる群から選択される。
別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドの発現カセットは、転写後調節エレメントをさらに含む。さらに別の実施形態では、転写後調節領域は、WPREである。
別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチド中に含まれる目的のポリヌクレオチドは、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、アルカリホスファターゼおよび血管内皮細胞増殖因子からなる群から選択されるタンパク質をコードする。
本発明のポリヌクレオチドは、ベクター、例えば、プラスミドなど中に組み込まれ得る。したがって、さらなる実施形態では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターまたはプラスミドに関する。本発明によれば、用語「ベクター」および「プラスミド」は、互換的である。
特定の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、アデノ随伴ウイルスベクターまたはプラスミドに組み込まれる。アデノ随伴ウイルスの製造にとって必要なすべてのその他の構造および非構造コード配列は、ウイルスベクター中に存在しないことが好ましいが、それらはプラスミドなどの別のベクターによってトランスに、またはパッケージング細胞株中に配列を安定に組み込むことによって提供され得るからである。
本発明のポリヌクレオチドは、当技術分野で周知の分子生物学の技術を使用して得ることが可能である。Brown(1995年)、Watson(1992年)、Alberts(2008年)、Innis(1990年)、Erlich(1989年)、Sambrook(1989年)、Bishop(1987年)、Reznikoff(1987年)、Davis(1986年)およびSchleef(2001年)、前掲を参照のこと。別の実施形態では、本発明は、ゲノムが本発明のポリヌクレオチドを含むAAVベクターに関する。
7.AAVを得る方法
第6の態様では、本発明は、本発明のAAVを得る方法に関する。前記AAVは、本発明のポリヌクレオチドを、repおよびcapを構成的に発現する細胞中に導入することによって得ることが可能である。したがって、別の実施形態では、本発明は、
i)AAV ITRがそれぞれの両端に位置する本発明のポリヌクレオチド、AAV capタンパク質、AAV repタンパク質およびAAVが複製のために依存するウイルス性または細胞性タンパク質を含む細胞を提供するステップと
ii)AAVのアセンブリーにとって適切な条件下で細胞を維持するステップと
iii)細胞によって製造されたアデノ随伴ウイルスベクターを精製するステップとを含むアデノ随伴ウイルスベクターを得る方法に関する。
好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドの一部を形成する脂肪組織特異的調節領域は、基礎マウスaP2プロモーターおよび基礎ラットUCP1プロモーターからなる群から選択されるプロモーター領域を含む。
別の実施形態では、脂肪組織特異的調節領域は、プロモーター領域と作動可能に連結しているエンハンサー領域をさらに含む。さらにより好ましい実施形態では、エンハンサー領域は、脂肪特異的aP2エンハンサーおよび脂肪特異的UCP1エンハンサーからなる群から選択される。
別の実施形態では、調節領域は、
i)脂肪特異的aP2エンハンサーおよび基礎マウスaP2プロモーターを含むポリヌクレオチドおよび
ii)脂肪特異的UCP1エンハンサーおよび基礎ラットUCP1プロモーターを含むポリヌクレオチド
からなる群から選択される:
別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドの発現カセットは、転写後調節エレメントをさらに含む。さらに別の実施形態では、転写後調節領域は、WPREである。
別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチド中に含まれる目的のポリヌクレオチドは、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、アルカリホスファターゼおよび血管内皮細胞増殖因子からなる群から選択されるタンパク質をコードする。
導入遺伝子を運ぶ(vectoring)ための組換えAAV(rAAV)の製造は、これまでに記載されている。Ayuso Eら、Curr. Gene Ther.2010年;第10巻:423~436頁、Okada Tら、Hum. Gene Ther.2009年;第20巻:1013~1021頁、Zhang Hら、Hum. Gene Ther.2009年;第20巻:922~929頁およびVirag Tら、Hum. Gene Ther.2009年;第20巻:807~817頁を参照のこと。これらのプロトコールを、本発明のAAVを作製するために使用または適用できる。一実施形態では、プロデューサー細胞株は、本発明のポリヌクレオチド(ITRがそれぞれの両端に位置する発現カセットを含む)を用いて、ならびにrepおよびcapタンパク質をコードし、ヘルパー機能を提供する構築物(複数可)を用いて一過性にトランスフェクトされる。別の実施形態では、細胞株は、ヘルパー機能を安定に供給し、本発明のポリヌクレオチド(ITRがそれぞれの両端に位置する発現カセットを含む)を用いて、ならびにrepおよびcapタンパク質をコードする構築物(複数可)を用いて一過性にトランスフェクトされる。別の実施形態では、細胞株は、repおよびcapタンパク質およびヘルパー機能を安定に供給し、本発明のポリヌクレオチドを用いて一過性にトランスフェクトされる。別の実施形態では、細胞株は、repおよびcapタンパク質を安定に供給し、本発明のポリヌクレオチドおよびヘルパー機能をコードするポリヌクレオチドを用いて一過性にトランスフェクトされる。さらに別の実施形態では、細胞株は、本発明のポリヌクレオチド、repおよびcapタンパク質およびヘルパー機能を安定に供給する。これらおよびその他のAAV製造系を製造し、使用する方法は、当技術分野で記載されている。Muzyczka Nら、米国特許第5,139,941号明細書、Zhou Xら、米国特許第5,741,683号明細書、Samulski Rら、米国特許第6,057,152号明細書、Samulski Rら、米国特許第6,204,059号明細書、Samulski Rら、米国特許第6,268,213号明細書、Rabinowitz Jら、米国特許第6,491,907号明細書、Zolotukhin Sら、米国特許第6,660,514号明細書、Shenk Tら、米国特許第6,951,753号明細書、Snyder Rら、米国特許第7,094,604号明細書、Rabinowitz Jら、米国特許第7,172,893号明細書、Monahan Pら、米国特許第7,201,898号明細書、Samulski Rら、米国特許第7,229,823号明細書およびFerrari Fら、米国特許第7,439,065号明細書を参照のこと。
別の実施形態では、アニールして、ヘッドトゥーテールコンカテマーを形成可能な2種のゲノムのAAV ITRを提供することによって、AAVの導入遺伝子送達能力を増大できる。一般に、AAVが宿主細胞中に侵入すると、導入遺伝子を含有する一本鎖DNAが、宿主細胞DNAポリメラーゼ複合体によって二本鎖DNAに変換され、その後、ITRが、核におけるコンカテマー形成に役立つ。代替法として、AAVを、自己相補性(sc)AAVであるよう遺伝子操作してもよく、これによって、標的細胞への侵入時に、ウイルスベクターが第2鎖合成のステップを回避し、より迅速な、潜在的に、より高い(例えば、最大100倍)導入遺伝子発現を有するscAAVウイルスベクターを提供することが可能となる。例えば、AAVを、それぞれ導入遺伝子ユニットおよびその補体をコードする2つの接続している一本鎖DNAを含むゲノムを有するよう遺伝子操作してもよく、これは、以下の標的細胞への送達、目的の導入遺伝子ユニットをコードする二本鎖DNAを得ることとかみ合い得る。自己相補性AAVは、当技術分野で記載されている。Carter B、米国特許第6,596,535号明細書、Carter B、米国特許第7,125,717号明細書およびTakano Hら、米国特許第7,456,683号明細書を参照のこと。
Capタンパク質は、宿主指向性、細胞、組織または臓器特異性、受容体使用、感染効率およびAAVウイルスの免疫原性に対して効果を有すると報告されている。したがって、rAAVにおいて使用するためのAAV Capは、例えば、対象の種(例えば、ヒトまたは非ヒト)、対象の免疫学的状態、長期または短期治療に対する対象の適合性または特定の治療適用(例えば、特定の疾患もしくは障害の治療または特定の細胞、組織もしくは臓器への送達)を考慮して選択され得る。別の実施形態では、rAAV Capは、2または3種のまたはそれ以上のAAV血清型に由来するCapに基づいている。特定の実施形態では、AAV cap遺伝子は、血清型AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8またはAAV9に由来する。好ましい実施形態では、AAV cap遺伝子は、血清型AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9に由来する。
いくつかの実施形態では、本発明の方法において使用するためのAAV Capは、 上記のAAV Capまたはそのコーディング核酸の1種の突然変異誘発によって(すなわち、挿入、欠失または置換によって)作製できる。いくつかの実施形態では、AAV Capは、上記のAAV Capのうち1種以上と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%またはそれ以上類似している。
いくつかの実施形態では、AAV Capは、上記のAAV Capのうち少なくとも2種に由来するドメインを含むキメラである。いくつかの実施形態では、AAV Capは、2または3種の異なるAAVまたは組換えAAVに由来するVP1、VP2およびVP3単量体のモザイクである。いくつかの実施形態では、rAAV組成物は、上記のCapのうち2種以上を含む。
いくつかの実施形態では、rAAV組成物において使用するためのAAV Capは、異種配列またはその他の修飾を含有するよう遺伝子操作される。例えば、選択的ターゲッティングまたは免疫回避を付与するペプチドまたはタンパク質配列が、Capタンパク質中に遺伝子操作され得る。あるいはまたはさらに、Capは、rAAVの表面がポリエチレングリコール付加される(すなわち、ペグ化される)よう化学的に修飾され得、これは、免疫回避を促進し得る。Capタンパク質はまた、突然変異誘発され得る(例えば、その天然受容体結合を除去するよう、または免疫原性エピトープをマスクするよう)。
特定の実施形態では、AAV rep遺伝子は、血清型AAVl、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8またはAAV9に由来する。好ましい実施形態では、AAV repおよびcap遺伝子は、血清型AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9に由来する。
遺伝子AAV rep、AAV capおよびヘルパー機能を提供する遺伝子を、前記遺伝子をベクター、例えば、プラスミドなどの中に組み込むことおよび前記ベクターを細胞中に導入することによって細胞中に導入できる。遺伝子を、同一プラスミド中にまたは異なるプラスミド中に組み込むことが可能である。好ましい実施形態では、AAV repおよびcap遺伝子は、1種のプラスミド中に組み込まれ、ヘルパー機能を提供する遺伝子は、別のプラスミド中に組み込まれる。本発明の方法とともに使用するのに適したAAV repおよびcap遺伝子を含むプラスミドの例として、pHLP19およびpRep6cap6ベクターが挙げられる。Colisi P、米国特許第6,001,650号明細書およびRussell Dら、米国特許第6,156,303号明細書を参照のこと。好ましい実施形態では、ヘルパー機能を提供する遺伝子は、アデノウイルスに由来する。
本発明のポリヌクレオチドならびにAAV repおよびcap遺伝子またはヘルパー機能を提供する遺伝子を含むポリヌクレオチドは、当技術分野で周知の任意の適した方法を使用することによって細胞中に導入できる。Ausubel Fら編、「Short Protocols in Molecular Biology」第4版(John Wiley and Sons、Inc.、New York、NY、US、1997年)、Brown(1995年)、Watson(1992年)、Alberts(2008年)、Innis(1990年)、Erlich(1989年)、Sambrook(1989年)、Bishop(1987年)、Reznikoff(1987年)、Davis(1986年)およびSchleef(2001年)、前掲を参照のこと。トランスフェクション法の例として、それだけには限らないが、リン酸カルシウムを用いる共沈、DEAE-デキストラン、ポリブレン、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム媒介性融合、リポフェクション、レトロウイルス感染および微粒子銃トランスフェクションが挙げられる。特定の実施形態では、トランスフェクションは、リン酸カルシウムを用いる共沈によって実施される。細胞が、AAV repおよびcap遺伝子およびアデノウイルスヘルパー機能を提供する遺伝子のいずれかの発現を欠く場合には、前記遺伝子を、本発明の第1の態様のポリヌクレオチドと同時に細胞中に導入してもよい。あるいは、前記遺伝子を、本発明の第1の態様のポリヌクレオチドの導入の前後に導入してもよい。特定の実施形態では、細胞は、3種のプラスミド:
1)本発明のポリヌクレオチドを含むプラスミド
2)AAV repおよびcap遺伝子を含むプラスミド
3)ヘルパー機能を提供する遺伝子を含むプラスミドと同時にトランスフェクトされる。
パッケージング細胞を培養する方法および細胞溶解物の製造などのAAVベクター粒子の放出を促進する例示的条件は、本明細書において実施例に記載されるように実施すればよい。プロデューサー細胞は、ウイルスベクターの培地への放出を促進するために適した期間増殖される。一般に、細胞を、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、最大約10日間増殖すればよい。約10日後(または、培養条件および使用される特定のプロデューサー細胞に応じてより早く)、製造のレベルは、一般に、大幅に低下する。一般に、培養の時間は、ウイルス製造の時点から測定される。例えば、AAVの場合には、ウイルスの製造は、一般に、本明細書において記載されるような適当なプロデューサー細胞においてヘルパーウイルス機能を供給すると始まる。一般に、細胞を、ヘルパーウイルス感染後(またはウイルス製造開始後)、約48~約100、好ましくは、約48~約96、好ましくは、約72~約96、好ましくは、約68~約72時間で回収する。
本発明のAAVは、i)本発明のポリヌクレオチドでトランスフェクトされた細胞およびii)トランスフェクション後一定期間後の、好ましくは、72時間後の前記細胞の培養培地の両方から得ることが可能である。本発明のAAVを得るために、前記細胞または前記培養培地からのAAVの精製のための任意の方法を使用できる。特定の実施形態では、本発明のAAVは、ポリエチレングリコール沈殿ステップおよび2種の連続塩化セシウム(CsCl)勾配に基づいて最適化された方法に従って精製される。Ayuso、2010年、前掲を参照のこと。本発明の精製されたAAVをPBSに対して透析し、濾過し、-80℃で保存してもよい。ウイルスゲノムの力価は、標準曲線として線形化プラスミドDNAを使用し、AAV2参照標準材料について記載されたプロトコールに従って定量的PCRによって決定できる。Lock Mら、Hum. Gene Ther. 2010年;第21巻:1273~1285頁を参照のこと。
いくつかの実施形態では、方法は、ベンゾナーゼを用いる細胞溶解物の処理、CsCl勾配にわたる細胞溶解物の精製または硫酸ヘパリンクロマトグラフィーの使用による細胞溶解物の精製などの精製ステップをさらに含む。Halbert Cら、Methods Mol.Biol.2004年;第246巻:201~212頁を参照のこと。
種々の天然に存在するAAVおよび組換えAAV、そのコーディング核酸、AAV CapおよびRepタンパク質およびその配列ならびにこのようなAAV、特に、AAVの製造において使用するのに適したそのキャプシドを単離または作製、増殖および精製するための方法は、当技術分野で公知である。Gao、2004年、前掲、Russell Dら、米国特許第6,156,303号明細書、Hildinger Mら、米国特許第7,056,502号明細書、Gao Gら、米国特許第7,198,951号明細書、Zolotukhin S、米国特許第7,220,577号明細書、Gao Gら、米国特許第7,235,393号明細書、Gao Gら、米国特許第7,282,199号明細書、Wilson Jら、米国特許第7,319,002号明細書、Gao Gら、米国特許第7,790,449号明細書、Gao Gら、米国特許出願公開第2003/0138772号明細書、Gao Gら、米国特許出願公開第2008/0075740号明細書、Hildinger Mら、国際公開第2001/083692号、Wilson Jら、国際公開第2003/014367号、Gao Gら、国際公開第2003/042397号、Gao Gら、国際公開第2003/052052号、Wilson
Jら、国際公開第2005/033321号、Vandenberghe Lら、国際公開第2006/110689号、Vandenberghe Lら、国際公開第2007/127264号およびVandenberghe Lら、国際公開第2008/027084号を参照のこと。
8.医薬組成物
本発明のAAVは、ヒトまたは動物身体に従来法によって投与してもよく、これは、前記ベクターの医薬組成物への製剤化を必要とする。したがって、第7の態様では、本発明は、AAVを含む医薬組成物(本明細書において以下、「本発明の医薬組成物」と呼ばれる)に関し、前記AAVは、組換えウイルスゲノムを含み、前記組換えウイルスゲノムは、目的のポリヌクレオチドと作動可能に連結している脂肪組織特異的転写調節領域を含む発現カセットを含む。あるいは、本発明の医薬組成物は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含み得る。
前記医薬組成物は、治療上有効な量の本発明のAAVおよび医薬上許容される担体を含み得る。
本発明の組成物は、獣医学目的での動物(例えば、家畜(ウシ、ブタ、その他))およびその他の非ヒト哺乳動物対象への、ならびにヒト対象への送達のために製剤化され得る。AAVは、遺伝子導入および遺伝子療法適用において使用するための生理学的に許容される担体とともに製剤化され得る。製剤の投与量は、ウイルス粒子として、またはゲノムコピー(「GC」)/ウイルスゲノム(「vg」)として測定または算出され得る。
当技術分野で公知の任意の方法を使用して、本発明のウイルス組成物のゲノムコピー(GC)数を決定できる。AAV GC数設定を実施するための1つの方法は、以下の通りである。まず、精製されたAAVベクターサンプルを、DNアーゼで処理して、製造プロセスからキャプシド形成されていないAAVゲノムDNAまたは混入プラスミドDNAを排除する。次いで、DNアーゼ耐性粒子を熱処理に付して、ゲノムをキャプシッドから放出する。次いで、放出されたゲノムを、ウイルスゲノムの特定の領域を標的とするプライマー/プローブセットを使用するリアルタイムPCRによって定量化する。
また、ウイルス組成物を、ヒト患者に対して、約1.0×109GC~約1.0×1015GC(体重70kgの平均対象を治療するために)、好ましくは、1.0×1012GC~1.0×1014GCの範囲である一定量のウイルスベクターを含有するよう投与量単位に製剤化してもよい。好ましくは、製剤中のウイルスの用量は、1.0×109GC、5.0×109GC、1.0×1010GC、5.0×1010GC、1.0×1011GC、5.0×1011GC、1.0×1012GC、5.0×1012GCまたは1.0×1013GC、5.0×1013GC、1.0×1014GC、5.0×1014GCまたは1.0×l015GCである。
ウイルスベクターは、1種以上の生理学的に許容される担体または賦形剤を使用して従来法で製剤してもよい。AAVは、注射による(例えば、ボーラス注射または連続注入による)非経口投与のために製剤化してもよい。注射のための製剤は、防腐剤を添加した単位投与形で(例えば、アンプルでまたは複数回用量容器で)提示され得る。ウイルス組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態をとり得、懸濁剤、安定化剤または分散剤などの製剤化物質(formulatory agents)を含有し得る。AAV製剤の液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または硬化食用脂)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアガム)、非水性媒体(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコールまたは分画植物油)および保存料(例えば、メチルまたはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)などの医薬上許容される添加剤を用いて従来手段によって調製してもよい。調製物はまた、バッファー塩を含有し得る。あるいは、組成物は、使用前に適した媒体(例えば、滅菌パイロジェンフリー水)を用いて構成するための粉末形態であってもよい。
また、本発明のAAVと組み合わせた、または本発明のAAVとの混合物でのアジュバントの使用も包含される。考慮されるアジュバントとして、それだけには限らないが、無機塩アジュバントまたは無機塩ゲルアジュバント、粒子状アジュバント、微粒子状アジュバント、粘膜アジュバントおよび免疫賦活性アジュバントが挙げられる。
アジュバントは、本発明のAAVとの混合物として対象に投与されてもよく、または組合せAAVで使用されてもよい。
本発明の医薬組成物は、局所的にまたは全身に投与されてもよい。好ましい実施形態では、医薬組成物は、その細胞が形質導入される予定の組織または臓器の近くに投与される。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、WAT内またはBAT内注射によって白色脂肪組織(WAT)または褐色脂肪組織(BAT)中に局所投与される。別の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は全身に投与される。
医薬組成物は、ヒトへの静脈内、皮下または筋肉内投与に適応している医薬組成物として常法に従って製剤化できる。注射用物質は、液体溶液または懸濁液、注射に先立って液体中の溶液もしくは懸濁液に適した固体形態またはエマルジョンのいずれかとして従来形態で調製してもよい。必要な場合には、組成物はまた、注射部位の疼痛を軽減するためにリドカインなどの局所麻酔薬も含み得る。組成物が浸潤によって投与される場合には、製薬品質の水または生理食塩水溶液を含有する浸潤瓶を用いて分配され得る。組成物が、注射によって投与される場合には、投与の前に成分が混合され得るように、注射または滅菌生理食塩水溶液のために水バイアルが提供され得る。
用語「治療上有効な量」とは、所望の効果をもたらすよう算出された本発明のポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチドまたは医薬組成物の量を指し、一般に、その他の理由の中でも、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチドおよび医薬組成物自身の特徴および得られる治療効果によって決定される。疾患の治療において有効となる、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチドまたは医薬組成物の量は、本明細書において記載されるか、そうでなければ当技術分野で公知の標準臨床技術によって決定できる。さらに、最適投与量範囲を同定するのを補助するために、in vitro試験も任意選択で使用してもよい。製剤化において使用するための正確な用量は、投与経路および状態の重症度に応じて変わり、医師の判断で各患者の状況に応じて決定されなくてはならない。有効な用量は、in vitroアッセイ系における、または動物におけるモデルに由来する用量に対する反応曲線の対から推定できる。全身投与のために、治療上有効な用量は、in vitroアッセイから最初に推定できる。例えば、用量は、細胞培養において決定されたIC50を含む循環濃度範囲を達成するよう動物モデルにおいて処方できる。前記情報を使用して、ヒトにおける有用な用量を正確に決定できる。初期用量は、公知の技術における周知の技術を使用して、in vivoデータ(例えば、動物モデル)から推定できる。公知の技術において通常の経験を有する人であれば、動物におけるデータに基づいてヒトへの投与を容易に最適化できる。
このような全身投与は、制限するものではないが、脂肪組織への直接注射を意味しない任意の投与経路を含む。より詳しくは、全身投与は、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチドおよび医薬組成物の、筋肉内(im)、血管内(ie)、動脈内(ia)、静脈内(iv)、腹膜内(ip)、皮下または経皮注射などの全身注射を含む。末梢投与はまた、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチドおよび医薬組成物の経口投与、埋込錠を使用する送達またはスプレー、エアゾールもしくは任意のその他の適当な製剤を使用する呼吸系による滴下注入による投与(例えば、鼻腔内)も含む。好ましくは、全身投与は、im、ip、iaまたはiv注射によってである。最も好ましくは、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチドおよび医薬組成物は、iv注射によって投与される。During M、国際公開第1996/040954号およびMonahan Pら、国際公開第2001/091803号を参照のこと。
本発明の医薬組成物は、単回用量で投与されてもよく、または本発明の特定の実施形態では、治療効果を達成するために複数回用量(例えば、2、3、4回またはそれ以上の投与)が使用されてもよい。複数回用量が必要である場合には、本発明の医薬組成物中に含まれるAAVは、異なる血清型に由来することが好ましい。
本明細書において上記で記載されたすべての刊行物は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
前記の発明は、明確さおよび理解を目的として幾分か詳細に記載したが、本発明の真の範囲および添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の種々の変更が可能であることは、この開示の読み取りから当業者に理解される。
一般手順
1.対象特徴
雄のICRマウス8~12週齢、C57B1/6Jマウス9~13週齢およびB6.V-Lepob/OlaHsd(ob/ob)およびBKS.Cg-+Leprdb/+Leprdb/OlaUsd(db/db)マウス8週齢を使用した。マウスに、標準食(Teklad Global Diets(登録商標)、Harlan Labs.、Inc.、Madison、WI、US)を自由に給餌し、12時間の明暗周期(8:00a.m.に点灯)下で維持した。組織サンプリングのために、マウスに吸入麻酔薬イソフラン(IsoFlo(登録商標)、Abbott Laboratories、Abbott Park、IL、US)によって麻酔し、断頭した。目的の組織を切り出し、-80℃で、またはホルマリンを用いて解析まで維持した。
2.組換えAAVベクター
標準法にしたがって、HEK293細胞の三重トランスフェクションによってベクターを作製した。Ayuso、2010年、前掲を参照のこと。細胞をDMEM 10% FBS中、10個のローラーボトル(850cm2、flat;Corning(商標)、Sigma-Aldrich Co.、Saint Louis、MO、US)中で80%コンフルエンスまで培養し、AAV2 ITRがそれぞれ両端に位置する発現カセットを保持するプラスミド、AAV2 rep遺伝子および血清型1、2、4、5、6、7、8または9 cap遺伝子のAAVを保持するヘルパープラスミドおよびアデノウイルスヘルパー機能を保持するプラスミドを用い、リン酸カルシウム法によって同時トランスフェクトした。使用した導入遺伝子は以下であった:a)a1)ハイブリッドサイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン構成的プロモーター(CAG)およびWPRE調節エレメント、a2)マウスmini/aP2調節領域またはa3)ラットmini/UCPl調節領域によって駆動されるeGFP;b)b1)CMV偏在性プロモーターおよびWPRE、b2)マウスmini/aP2調節領域またはb3)ラットmini/UCP1調節領域によって駆動されるマウスヘキソキナーゼII(mHkII)cDNA、c)マウスmini/aP2調節領域およびWPREによって駆動されるヒト胎盤由来分泌型アルカリホスファターゼ(hSeAP)、d)ラットmini/UCP1調節領域によって駆動されるマウスVEGF164およびe)CMV偏在性プロモーターによって駆動されるRFP。Ross、1990年、Graves、1992年およびCassard-Doulcier、1998年、前掲を参照のこと。CMVプロモーター(pAAV-MCS、Stratagene(商標)、Agilent Technologies、Inc.、Santa Clara、CA、US)、mini/aP2調節領域またはmini/UCP1調節領域およびマルチクローニング部位を保持する非コーディングプラスミドを使用して、ヌル粒子を製造した。AAVは、ポリエチレングリコール沈殿ステップおよび2種の連続塩化セシウム(CsCl)勾配に基づく最適化された方法で精製した。この第2世代CsClベースのプロトコールは、空のAAVキャプシドならびにDNAおよびタンパク質不純度を著しく低減した。Ayuso、2010年、前掲を参照のこと。精製されたAAVベクターを、PBSに対して透析し、濾過し、-80℃で保存した。ウイルスゲノムの力価は、標準曲線として線形化プラスミドDNAを使用し、AAV2参照標準材料について記載されたプロトコールに従って定量的PCRによって決定した。Lock Mら、Hum. Gene Ther.2010年;第21巻:1273~1285頁を参照のこと。ベクターは、当技術分野で公知の分子生物学の技術に従って構築した。Brown(1995年)、Watson(1992年)、Alberts(2008年)、Innis(1990年)、Erlich(1989年)、Sambrook(1989年)、Bishop(1987年)、Reznikoff(1987年)、Davis(1986年)およびSchleef(2001年)、前掲参照のこと。
3.AAVベクターのin vivo eWAT内投与
マウスを、ケタミン(100mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)の腹膜内注射を用いて麻酔した。精巣上体白色脂肪組織を露出させるために開腹手術を実施した。AAVベクターを、2%Pluronics F88(BASF Corp.、Florham Park、NJ、US)を含むか含まない生理食塩水溶液に再懸濁し、精巣上体脂肪パッド中に直接注射した。50μLのAAV溶液を用いて各精巣上体脂肪パッドに2回注射した(一方の注射は精巣に近接して、もう一方は脂肪パッドの中央に)。腹部を滅菌生理食塩水溶液ですすぎ、2層アプローチを用いて閉じた。
4.AAVベクターのin vivo iBAT内およびiWAT内投与
マウスをケタミン(100mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)の腹膜内注射を用いて麻酔した。それぞれiBATまたはiWATを露出させるために、肩甲骨間または鼠径部領域で長軸方向の1.5~2cmの長さの切開を実施した。貯蔵所全体にベクターを分布させるために、各iBATまたはiWATに、Hamiltonシリンジを使用して10μlのAAV溶液の4回の注射を施した。1層アプローチを使用して皮膚を閉じた。
5.AAVベクターの全身投与
適当な量のAAV溶液を200μLの生理食塩水溶液に希釈し、送達の瞬間の行使圧を伴わずに片側尾静脈に手作業で注射した。注射の前に、動物を250Wの赤外線加熱ランプ(Philips NV、Amsterdam、NL)下に数分おいて、血管を拡張させ、尾静脈を見ることおよび容易に接近することを容易にした。プラスチック抑制器(Harvard Apparatus、Holliston、MA、US)を使用して、注射のために動物を固定した。適当な抑制装置が使用されたので麻酔は使用しなかった。30ゲージのニードルを使用して動物に注射した。
6.免疫組織化学
GFP、RFPおよびα-SMAを検出するために、組織を10%ホルマリン中で12~24時間固定し、パラフィンに包埋し、切片にした。切片を、1:300希釈したヤギ抗GFP抗体(Abcam plc、Cambridge、MA、US)とともに、1/400希釈したウサギ抗RFP抗体(Abcam plc、Cambridge、MA、US)または1/300希釈したマウス抗α-SMA抗体(Sigma-Aldrich Co.、Saint Louis、MO、US)とともに4℃で一晩インキュベートした。二次抗体として、1:300希釈したビオチン化ロバ抗ヤギ抗体(Santa Cruz Biotechnology、Inc.、Santa Cruz、CA、US)または1:300希釈したビオチン化ヤギ抗ウサギ抗体(Pierce Antibodys、Thermo Fisher Scientific Inc.、Rockford、IL、US)または1/300希釈したビオチン化ウマ抗マウス抗体(Vector Laboratories、Burlingame、CA、US)を使用した。蛍光色素として、1:300希釈したストレプトアビジンAlexa Fluor 488(Molecular Probes(登録商標)、Life Technologies Corp.、Carslbad、CA、US)を使用し、核対比染色のためにHoeschtビスベンズイミド(Sigma-Aldrich Co.、Saint Louis、MO、US)を使用した。あるいは、1:50希釈したABCペルオキシダーゼキット(Pierce Biotechnology、Inc.、Rockford、IL、US)を使用し、切片をMayerのヘマトキシリンで対比染色した。
7.eWATサンプルにおけるβ-ガラクトシダーゼ発現の解析
全体としてeWATにおけるβ-ガラクトシダーゼの存在を検出するために、組織サンプルを4%パラホルムアルデヒド中で1時間固定し、PBS溶液で2回洗浄し、次いで、PBS中の、5mM K3Fe(CN)5、5mM K4Fe(CN)6および1mM MgCl2中のX-Gal(5-ブロモ-4-クロロ-3-β-D-ガラクトピラノシド)中、37℃暗所で6~8時間インキュベートした。
8.GFP含量
GFP含量を決定するために、Polytron(登録商標)型組織ホモジナイザーを用いて、組織を1mLの溶解バッファー(PBS中の、50mM/L Tris、1% Nonidet P40、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、150mM/L NaCl、1mM/L EDTA、pH7.4、滅菌濾過)中で機械的に破壊し、RTで10分間インキュベートした。インキュベートした後、サンプルを14,000rpmで10分間遠心分離した。上清を新規試験管に移し、100μLのこの溶液中のGFP含量を、488nmの励起波長および512nmの発光波長を用い発光分光計Flx800(Bio-Tek Instruments、Inc、Winooski、VT、US)を用いて測定した。総GFP含量値はサンプルのタンパク質含量(contain)によって補正した。
9.精巣上体脂肪パッドからの脂肪細胞の単離
Rodbellの方法の改変を使用してAAV-形質導入された脂肪細胞を単離した。Rodbell M、J. Biol.Chem.1964年;第239巻:375~380頁を参照のこと。イソフルオラン(Isofluorane)麻酔したマウスを、断頭によって屠殺し、精巣上体WATを細かく刻み、37℃で4% BSA(脂肪酸不含)、0.5mM/Lグルコースおよび0.5mg/mLコラゲナーゼII型(C6885;Sigma-Aldrich Co.、Saint Louis、MO、US)を含有するKrebs-Ringer重炭酸HEPESバッファー(KRBH)中で35~45分間消化した。脂肪細胞を穏やかな遠心分離によって単離し、グルコースを含まない新鮮なコラゲナーゼ不含KRBHで3回洗浄した。脂肪細胞をグルコースを含まない新鮮なKRBHに再懸濁し、これまでに記載されたように細胞数を推定した。DiGirolamo
Mら、Am.J.Physiol 1971年;第221巻:850~858頁を参照のこと。
10.RNA解析
全RNAは、それぞれQIAzol Lysis試薬(Qiagen NV、Venlo、NL)またはtripure単離試薬(Roche Diagnostics Corp.、Indianapolis、IN、US)およびRNeasy脂質組織ミニキット(Qiagen NV、Venlo、NL)を使用することによって単離された脂肪細胞および脂肪貯蔵所または肝臓から得た。残存するウイルスゲノムを排除するために、全RNAをDNAsel(Qiagen NV、Venlo、NL)で処理した。RT-PCRのために、1μgのRNAサンプルをスーパースクリプトVILO cDNA合成キット(Invitrogen(商標)、Life Technologies Corp.、Carslbad、CA、US)を使用して逆転写した。リアルタイム定量的PCRは、EXPRESS SYBRGreen qPCR supermix (Invitrogen(商標)、Life Technologies Corp.、Carslbad、CA、US)を使用してSmartCyclerll(登録商標)(Cepheid、Sunnyvale、USA)で実施した。センスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドプライマーの配列は以下である:
データを36B4値を用いて正規化し、これまでに記載されたように解析した。Pfaffl M、Nucleic Acids Res.2001年;第29巻(9号):e45を参照のこと。
11.単離された脂肪細胞におけるex vivoでのグルコース取り込み
マウスからの単離された脂肪細胞について、これまでに記載されたように種々のインスリン濃度で2-[1-3H]デオキシ-D-グルコース(2-DG;Amersham Pharmacia Biotech Inc.、Piscataway、NJ、US)取り込みを測定した。Traxinger Rら、J.Biol.Chem.1989年;第264巻:8156~8163頁を参照のこと。手短には、単離された脂肪細胞を、先に記載したように給餌したマウスから得た精巣上体WATのコラゲナーゼ消化によって得た。250μLの脂肪細胞懸濁液を、KRBH+4% BSA(脂肪酸不含)、10mM/Lデオキシ-グルコース、0.4μCiの2-[1-3H]デオキシ-D-グルコースおよび種々のインスリン濃度とともに5分間インキュベートした。最後に脂肪細胞およびインキュベーション培地を、ポリプロピレンチューブ中でシリコンオイル(Sigma-Aldrich Co.、Saint Louis、MO、US)によって分離し、脂肪細胞サンプル中の放射能を液体シンチレーション計数によって評価した。結果は、1分あたり106個細胞あたりの2-[3H]-DGのpmolとして表した。
12.in vivoでのグルコース取り込み
in vivo基礎グルコース利用指数をこれまでに記載されたように決定した。Franckhauser Sら、Diabetes 2002年;第51巻:624~630頁を参照のこと。手短には、148GBq(4μCi)の非代謝可能グルコース類似体デオキシ-D-[1,2-3H]グルコース(2-DG;PerkinElmer、Inc.、Waltham、MA、US)を、BSA-クエン酸バッファー中で混合した。放射標識した混合物のフラッシュ注射を、時間ゼロで麻酔した(ケタミン+キシラジン)給餌したマウスの頸動脈中に投与した。注射後1、15および30分で得られた血液サンプル(尾静脈)25μLを用いて特定の血液2-DGクリアランスを、これまでに記載したように決定した。Somogyi M、J.Biol.Chem.1945年;第160巻:69~73頁を参照のこと。注射後30分で組織サンプルを採取した。放射標識した化合物の蓄積を測定することによってグルコース利用指数を決定した。Ferre Pら、Biochem.J.1985年;第228巻:103~110頁を参照のこと。タンパク質1ミリグラムあたりの2-DG-6リン酸の量を、測定された未標識グルコースに対する2-DGの濃度比の積分で除した。値は、グルコース代謝経路中の2-DGの「識別定数」によって補正されないので、結果は、1分あたりのタンパク質1ミリグラムあたりのピコモルでグルコース利用の指数として表される。
13.血液hSeAPレベルの測定
循環hSeAPレベルを、Tropix(登録商標)Phospha-Light(商標)システム(Applied Biosystems(商標)、Life Technologies Corp.、Carslbad、CA、US)を使用して5μLの血清から決定した。
14.統計解析
すべての値は、平均±SEMとして表される。群間の相違を、スチューデントのt検定によって比較した。相違は、p<0.05で有意と考えた。
[実施例1]
AAVの局所投与による白色脂肪細胞のin vivo形質導入
AAVベクターを用いる白色脂肪組織(WAT)のin vivo形質導入効率を評価するために、4×1011のウイルスゲノム(vg)/偏在性プロモーターCAG(AAV-CAG-GFP)の制御下でマーカータンパク質GFPをコードする血清型1、2、4、5、6、7、8および9のAAVのマウスを、非イオン性界面活性剤Pluronics F88とともにまたは伴わずにマウスの精巣上体白色脂肪組織(eWAT)に両側性に注射した。Croyle Mら、Mol.Ther.2001年;第4巻:22~28頁、Gebhart Cら、J.Control Release 2001年;第73巻:401~416頁、Mizukami Hら、Hum.Gene Ther.2006年;第17巻:921~928頁およびSommer Jら、Mol.Ther.2003年;第7巻:122~128頁を参照のこと。Pluronics F88を伴わないAAV1、AAV2、AAV4およびAAV5の投与は、eWATにおけるGFPに対する免疫染色によって評価されるように、注射の2週間後に極めて低いパーセンテージの形質導入された白色脂肪細胞をもたらした。さらに、試験したAAV血清型のいずれかによって媒介される脂肪形質導入効率の改善は、Pluronics F88添加によって達成されなかった。図1Aを参照のこと。したがって、この非イオン性界面活性剤の使用は、その後の実験に対しては破棄した。Pluronics F88の添加とは独立に、AAVlは、in vivoでのeWATの形質導入においてAAV2、AAV4およびAAV5よりも効率的であった。Mizukami、2006年、前掲を参照のこと。AAVlによって形質導入された脂肪細胞がわずかに散在し、脂肪細胞の群がほとんどないこととは対照的に、AAV6およびAAV7を用いて注射された動物は、GFP+白色脂肪細胞の複数の大きな群を提示した。さらに、AAV8およびAAV9を用いて処理した動物は、eWATのかなり多くの形質導入を示し、eWAT領域あたりの脂肪細胞の大部分が形質導入された。図1Bを参照のこと。投与の2週間後のeWAT中のGFP含量の蛍光定量的解析による定量から、in vivoでのeWATの形質導入においてAAV1よりも血清型6、7、8および9のAAVは、より効率的であるということがさらに確認された。図1Cを参照のこと。AAV8およびAAV9を用いて注射された精巣上体脂肪パッドが、最高GFP含量を示し、それらの間に有意な統計上の相違はないということは注目に値する。図1Cを参照のこと。LacZ基質5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(X-gal)を用いる染色は、2×1011vg/マウスの偏在性CMVプロモーターの制御下にLacZ遺伝子をコードするAAV8(AAV8-CMV-LacZ)の片側性eWAT内投与の2週間後に、eWATのいたるところでの形質導入された脂肪細胞の広範な分布を示した。図1Dを参照のこと。AAV8およびAAV9-CAG-GFPベクターの鼠径部WAT(iWAT)への局所投与は、この貯蔵所における白色およびベージュ脂肪細胞の広範な形質導入を媒介した。図1GおよびHを参照のこと。結局、これらの結果は、AAV8およびAAV9は、in vivoでWATを遺伝子操作するのに最も適したベクターであったと示す。
さらに、AAVベクターのeWAT内投与は、eWATに実質的に制限された形質導入をもたらした。注射の2週間後に、AAVl、AAV6、AAV7、AAV8またはAAV9-CAG-GFPを用いて処理した動物は、腸間膜、後腹膜および鼠径部貯蔵所の形質導入を示さなかったが、わずかなGFP+褐色脂肪細胞が、AAV9を用いてeWAT内注射されたマウスのiBAT中に存在した。図8Aを参照のこと。しかし、BATにおける導入遺伝子発現は、eWATにおいて検出されたものと比較して最小であった。図8Bを参照のこと。非脂肪組織の形質導入に関して、AAV7、AAV8およびAAV9-CAG-GFPのeWAT内投与はまた、肝臓および心臓への相当な遺伝子導入を、およびわずかな数の膵臓の外分泌細胞への遺伝子導入をもたらした。図8Cを参照のこと。
in vivoでAAV-形質導入された脂肪細胞は、脂肪機能を研究するための生存モデルであり得るかどうかを評価する考えの証しとして、4×1011vg/マウスの偏在性プロモーターCMV(AAV9-CMV-mHKII)の制御下にマウス酵素ヘキソキナーゼII(mHKII)をコードするAAV9ベクターまたは等用量のAAV9-CMV-ヌルベクターを、健康なマウスのeWATに両側性に注射した。注射の2週間後、AAV9-CMV-mHKIIを用いて処理した動物から得られた単離された脂肪細胞は、AAV9-CMV-ヌルを注射したマウスから得られた脂肪細胞と比較してmHKIIの発現の3倍の増大を示した。図1Eを参照のこと。脂肪細胞におけるmHKIIのAAV媒介性過剰発現の効果を解析するために、単離された脂肪細胞へのex vivo基礎およびインスリン刺激された2-[1-3H]デオキシ-D-グルコース取り込みを調べた。AAV9-CMV-mHKII-形質導入された脂肪細胞では、基礎2-[1-3H]デオキシ-D-グルコース取り込みは、AAV9-CMV-ヌル-形質導入された脂肪細胞と比較してわずかに増大した。対照的に、インスリン刺激は、AAV9-CMV-ヌルベクターを用いて処理した動物から得られた脂肪細胞と比較して、AAV9-CMV-mHKII-形質導入された脂肪細胞による2-[l-3H]デオキシ-D-グルコース取り込みの大幅な増大につながった。図1Fを参照のこと。
[実施例2]
白色脂肪細胞のin vivo AAV媒介性特異的遺伝子操作
aP2基礎プロモーターとともに単に脂肪細胞特異的エンハンサーからなるマウス脂肪細胞タンパク質2(mini/aP2)プロモーターの短い型の使用を評価した。Ross、1990年およびGraves、1992年、前掲を参照のこと。このアッセイの目的は、AAV媒介性導入遺伝子発現を脂肪細胞に制限することであった。1012vg/マウスのmini/aP2調節領域の制御下にGFPをコードするAAV8およびAAV9の片側性eWAT内投与は、白色脂肪細胞の制限された形質導入を媒介し、注射の2週間後に肝臓および心臓では検出可能なGFP発現はなかった。図2Aおよび9を参照のこと。
マウスにおいてmini/aP2調節領域によって媒介される導入遺伝子発現の時間的経過を評価するために、4×1012vg/マウスの用量のmini/aP2調節領域の制御下にヒト胎盤由来分泌型アルカリホスファターゼ(hSeAP)cDNAをコードするAAV9ベクター(AAV9-mini/aP2-SeAP)または生理食塩水溶液を、eWAT中に両側性に注射し、AAV投与後の種々の時点で循環hSeAPレベルを測定した。AAV送達の2週間後すぐに血液において高レベルのhSeAPが検出され、最大40日目まで漸増した。その後、循環hSeAPレベルは、フォローアップの期間、注射後少なくとも1年間持続した。qPCRによる肝臓およびeWATにおけるhSeAP発現レベルの定量化によって、eWATが、hSeAPの主要な製造に関与している組織であることが確認された。図2B~2Cを参照のこと。
白色脂肪細胞のAAV媒介性特異的遺伝子操作が、マウスにおいてin vivoで脂肪細胞機能、分化および代謝を研究するための新規ツールとなり得るかどうかを評価するために、1.4×l012vg/マウスのmini/aP2調節領域の制御下にmHKIIをコードするAAV9ベクター(AAV9-mini/aP2-mHII)または等用量のAAV9-mini/aP2-ヌルベクターをeWATに投与した。注射の2週間後、in vivo基礎2-[1-3H]デオキシ-D-グルコース取り込みを調べた。AAV9-mini/aP2-mHKIIベクターを投与された動物は、AAV9-mini/aP2-ヌルベクターを用いて処理された動物と比較して、eWATによる基礎2-[l-3H]デオキシ-D-グルコース取り込みの増大を示した。基礎条件下では2-[l-3H]デオキシ-D-グルコース取り込みにおいて、iBATにおいて、およびmini/aP2調節領域の使用が導入遺伝子発現を妨害した心臓のような組織において群間で相違は見られなかった。図2Dを参照のこと。
[実施例3]
AAVベクターの局所送達による褐色脂肪細胞のin vivo遺伝子操作
AAV8およびAAV9は、白色脂肪細胞の遺伝子操作を媒介する最も効率的なベクターであったということを考慮して、同一血清型による褐色脂肪細胞の形質導入を評価した。肩甲骨間褐色脂肪組織(iBAT)への2×109vg/マウスのAAV8およびAAV9-CAG-GFPベクターの投与の2週間後、多数のGFP+褐色脂肪細胞が検出された。図3Aを参照のこと。qPCRによるGFP発現レベルの評価は、2×l09vg/マウスの用量でのAAV9との比較において、AAV8によるiBATの高い形質導入効率を示した。図3Bを参照のこと。AAV8およびAAV9ベクターを使用する褐色脂肪細胞の形質導入が実証されると、本発明者らは、血清型1、2、4、5、6、7、8および9のAAVを用いる褐色脂肪組織(BAT)のin vivo形質導入効率を特性決定した。この目的を達成するために、偏在性プロモーターCMVの制御下にマーカータンパク質RFPをコードする、1.2×l010vg/マウスの用量の血清型4および8のAAVまたは1011vg/マウスの用量の血清型1、2、5、6、7、8および9のAAV(AAV-CMV-RFP)をマウスのiBATに注射した。iBAT内投与の2週間後、qPCRによるRFP発現レベルの定量化によって、AAVl、2、4、5および6との比較においてAAV7、AAV8およびAAV9によるiBATの高い形質導入効率が示された。図3Cを参照のこと。一致して、AAV9ベクターを与えた動物のiBATにおいて、RFP+褐色脂肪細胞の広範な分布が検出された。図3Dを参照のこと。
さらに、AAVのiBAT内投与は、この貯蔵所の制限された形質導入をもたらし、精巣上体、腸間膜、後腹膜および鼠径部貯蔵所では、導入遺伝子発現は検出不能であった。非脂肪組織の形質導入に関して、AAV7、AAV8およびAAV9ベクターを用いてiBAT内で処理された動物は、心臓および肝臓の形質導入を示したのに対し、膵臓、腸、脾臓、肺、腎臓、骨格筋、精巣、精巣上体および脳では、GFP発現は、検出不能であった。図10を参照のこと。
[実施例4]
褐色脂肪細胞のin vivo AAV媒介性特異的遺伝子操作
褐色脂肪細胞特異的発現を付与するエンハンサーおよびラットUCP1遺伝子の基礎プロモーターから構成されるmini UCP1(mini/UCPl)調節領域を利用して、褐色脂肪組織における目的の遺伝子の発現を特異的に媒介した。Boyer Bら、Mol.Cell Biol.1991年;第11巻:4147~4156頁、Kozak Uら、Mol.Cell Biol.1994年;第14巻:59~67頁、Cassard-Doulcier、1998年およびLarose、1996年、前掲を参照のこと。2×1011vg/マウスのAAV8またはAAV9-mini/UCPl-GFPベクターのiBAT内投与の2週間後、褐色脂肪細胞の効率的な形質導入が達成された。図4Aを参照のこと。同様に、2×1011vg/マウスのAAV8およびAAV9-mini/aP2-GFPのiBAT内送達はまた、褐色脂肪細胞に形質導入した。図11Aを参照のこと。さらに、mini/UCPl調節領域は、高度に脂肪細胞特異的なGFP発現を果たし、心臓におけるAAV媒介性導入遺伝子発現を完全に消失させ、わずかな肝臓形質導入のみを媒介した。図11Bを参照のこと。
iBATのAAV媒介性形質導入が、褐色脂肪細胞機能を研究するための新規モデルであり得るかどうかを調べるために、7×1010vg/マウスのAAV8-mini/UCPl-mHKIIベクターをiBATに投与した。AAV8-mini/UCPl-mHKIIベクターを与えた動物は、AAV8-mini/UCPl-ヌルベクターを用いて処理した動物と比較して、iBATによる基礎2-[1-3H]デオキシ-D-グルコース取り込みの増大を示し、基礎条件下で2-[1-3H]デオキシ-D-グルコース取り込みにおいて、eWATおよび心臓において群間で相違は見られなかった。図4Bを参照のこと。次いで、2×1011vg/マウスのAAV9-mini/UCPl-VEGF164ベクターまたはAAV9-mini/UCP1-ヌルベクターをiBAT内に送達した。注射の2週間後、AAV9-mini/UCPl-VEGF164ベクターを与えた動物は、AAV9-mini/UCPl-ヌルベクターを用いて処理した動物と比較して、iBATにおいてVEGF164の過剰発現および総VEGFのレベルの増大を示した。さらに、VEGF164を過剰発現する動物において、PECAM1(よく使用される内皮細胞マーカー)の過剰発現が得られた。AAV9-mini/UCPl-VEGF164ベクターを用いて処理した動物は、iBATにおけるα-SMAに対する免疫染色によって実証されるように、AAV9-mini/UCPl-ヌルベクターを与えた動物と比較して、血管数の増大を示した。図4C~4Fを参照のこと。
[実施例5]
AAV8およびAAV9の全身投与による白色および褐色脂肪細胞のin vivo遺伝子操作
5×1012vg/マウスの用量のAAV8またはAAV9-CAG-GFPベクターを、痩せたマウスに尾静脈を介して投与した。注射の2週間後に、脂肪貯蔵所の形質導入を評価した。eWAT切片のGFPに対する免疫染色は、白色脂肪細胞のAAV8-およびAAV9-媒介性形質導入を示した。さらに、GFP発現レベルおよびGFP含量の測定は、AAV8およびAAV9両方について同様の形質導入効率を実証した。さらに、5×1012vg/マウスのAAV8またはAAV9ベクターの全身送達は、iBATの褐色脂肪細胞の形質導入を効率的に媒介した。qPCRによるGFP発現レベルおよび蛍光定量解析によるGFP含量の測定は、AAV8は、AAV9よりも優れたiBAT形質導入効率を示す傾向を提示することを示唆した。さらに、qPCRによるGFP発現レベルの測定は、鼠径部、後腹膜および腸間膜貯蔵所への遺伝子導入を実証した。しかし、貯蔵所間での形質導入効率の顕著な相違は観察された。図5A~5Hを参照のこと。糖尿病-肥満症ob/obマウスまたはdb/dbマウスへのAAV8またはAAV9ベクターのiv投与もまた、WATおよびBATの遺伝子操作をもたらし、痩せたマウスにおいて果たされたものと同様の効率を有していたことは重要である。図13を参照のこと。AAV8またはAAV9-CAG-GFPベクターの全身投与は、多様な非脂肪組織を形質導入した。図12を参照のこと。
[実施例6]
AAV-mini/aP2およびAAV-mini/UCP1ベクターを用いる白色および褐色脂肪細胞のin vivo特異的遺伝子操作
2×1012vg/マウスのAAV8またはAAV9-mini/aP2-GFPの全身送達は、白色および褐色脂肪細胞の形質導入をもたらした、低レベルの導入遺伝子発現も提供された。図7Aを参照のこと。対照的に、2×1012vg/マウスのAAV8またはAAV9-mini/UCPl-GFPベクターの全身投与は、褐色脂肪細胞の相当な形質導入を媒介した。図6Aを参照のこと。さらに、静脈内に送達されたAAV-mini/aP2-GFPおよびAAV-mini/UCP1-GFPベクターは、高度に脂肪細胞特異的GFP発現を果たし、心臓では検出可能な導入遺伝子発現はなく、肝臓のわずかな形質導入があり、これは、わずかな散在するGFP+肝細胞を示したに過ぎない。図7B~7Cを参照のこと。
AAVの全身投与による脂肪細胞の遺伝子操作をさらに実証するために、2×1012vgのAAV9-mini/UCPl-VEGF164またはAAV9-mini/UCP1-ヌルベクターを、尾静脈を介して送達した。注射の2か月後、AAV9-mini/UCPl-VEGF164ベクターを与えた動物は、AAV9-mini/UCPl-ヌルベクターを用いて処理した動物と比較して、VEGF164および総VEGFの発現の増大を示した。図6B~6Cを参照のこと。さらに、8×l012vgの用量のAAV9-mini/UCPl-VEGF164またはAAV9-mini/UCPl-ヌルベクターも尾静脈を介して送達した。注射の1カ月後、8×1012vgのAAV9-mini/UCPl-VEGF164ベクターを与えた動物は、VEGF164およびPECAM1の発現の増大ならびに血管密度の増大を示した。図6D~6Gを参照のこと。
[実施例7]
AAV-mini/aP2-GKを用いる褐色脂肪細胞のin vivo特異的遺伝子操作
2×1011vg/マウスの用量のmini/aP2調節領域の制御下にラットグルコキナーゼ酵素をコードするAAV9ベクター(AAV9-mini/aP2-rGK)または等用量のAAV9-mini/aP2-ヌルベクターのいずれかを、マウスのiBATに局所投与する。注射の2週間/1ヶ月後、in vivo基礎およびインスリン刺激された2-[1-3H]デオキシ-D-グルコース取り込みを調べて、AAV9-mini/aP2-ヌルベクターを用いて処理した動物と比較して、AAV9-mini/aP2-rGKベクターを与えた動物が、iBATによる基礎2-[l-3H]デオキシ-D-グルコース取り込みの増大を特異的に示すかどうかを評価する。
[実施例8]
AAVベクターの全身投与後のmirT配列を用いる、効率的な脂肪細胞形質導入ならびに肝臓および心臓からの導入遺伝子発現の標的化解除
1012vg/マウスの用量の、偏在性CAGプロモーターまたは肝臓特異的miR122a(AAV9-CAG-GFP-miRT122)、心臓特異的miR1(AAV9-CAG-GFP-miRT1)もしくは両方(AAV9-CAG-GFP-doublemiRT)の4つのタンデム標的部位を付加したCAGプロモーターの制御下に、発現カセットの3’UTRにクローニングされたGFPマーカータンパク質をコードするAAV9ベクター(AAV9-CAG-GFP)を全身投与した。注射の2週間後、AAV9-CAG-GFP、AAV9-CAG-GFP-miRT122、AAV9-CAG-GFP-miRT1またはAAV9-CAG-GFP-doublemiRTベクターを与えたマウスから得られた白色および褐色脂肪細胞において高レベルのGFP発現が観察された。対照的に、肝臓または心臓におけるGFP製造は、それぞれ、AAV9-CAG-GFP-miRT122またはAAV9-CAG-GFP-miRT1ベクターを用いて処理したマウスでほぼ完全に消失した。AAV9-CAG-GFP-doublemiRT処理されたマウスから得られた肝臓および心臓の両方においてGFP製造は大幅に阻害されたことは顕著である。図14を参照のこと。