JP7119460B2 - 衛星信号受信装置、電子機器および衛星信号受信装置の制御方法 - Google Patents
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Description
特許文献1の衛星信号受信装置は、衛星信号を受信して受信信号を出力する受信部と、受信信号を記憶する受信信号記憶部と、受信信号および位置情報衛星に対応するコードの相関値を演算する相関演算処理部と、受信部および相関演算処理部の動作を制御する制御部とを有する。
制御部は、受信処理開始時は第一モードで制御し、第一モード設定時に所定の条件に該当すると第二モードに切り替えて制御し、第二モード設定時に所定の条件に該当すると第一モードに切り替えて制御している。
制御部は、第一モードでは、受信部を動作状態とし、相関演算処理部を非動作状態として、受信信号を受信信号記憶部に記憶させ、所定期間の受信信号を記憶すると、受信部を非動作状態とし、相関演算処理部を動作状態として、受信信号およびコードの相関値を演算して衛星信号を検出する処理を実行する。
制御部は、第二モードでは、受信部および相関演算処理部を動作状態として、受信信号およびコードの相関値を演算して、検出された衛星信号を追尾する追尾処理を実行し、追尾した衛星信号に基づいて情報を取得する処理を実行する。
制御部は、第一条件に該当すると、第一制御モードを実行して第一の検出処理を行う。
そして、第二条件に該当すると、制御部は、第二制御モードを実行して第二の検出処理を行う。第二条件としては、例えば、第二制御モードにおいて衛星信号を追尾する追尾処理を実行した場合に、情報の取得に成功できると判定できる条件が設定される。例えば、測位モードで受信処理が実行される場合は、第二条件は、衛星信号を3つ以上検出できた場合などに設定でき、日時同期モードや衛星航法情報収集モードの場合は、追尾できる衛星が存在していればよいので、第二条件は、衛星信号を1つ以上検出できた場合などに設定できる。
第二条件に該当して第二制御モードが実行された場合は、制御部は、受信部および相関演算処理部を動作状態として、受信信号およびコードの相関値を演算して、前記衛星信号を検出する検出処理と、前記検出処理で検出された前記衛星信号を追尾する追尾処理とを実行する。そして、追尾した衛星信号に基づいて、時刻情報や位置情報である情報を取得する。
このとき、第二制御モードでは、新たな衛星信号を検出する検出処理を行っているので、第一制御モードの実行時に検出できなかった衛星信号であっても、第二制御モードの実行時に検出することができる。したがって、第二制御モードの追尾処理では、第一制御モードで検出した衛星信号に加えて、第二制御モードの検出処理で検出した衛星信号も追尾できるため、より多くの衛星信号を追尾できる。このため、信号強度の高い衛星信号を受信できたり、多くの衛星信号を受信できるため、情報取得に成功する確率を向上できる。
本発明によれば、ホットスタートで起動可能であるため、衛星信号の検出処理時のサーチ範囲を限定でき、衛星航法情報をデコードする時間も不要になるため、位置情報を短時間で取得できる。また、衛星航法情報が既知であるため、受信する衛星信号のレベルは、衛星航法情報をデコード可能な高いレベルに設定する必要が無く、より弱いレベルの衛星信号を用いても位置情報を取得できる。このため、サーチ範囲を狭くできるために、単位時間あたりにどれだけのサーチを実施するかを設定するサーチパワーも小さくでき、消費電力も低減できる。このため、受信開始時に第一制御モードを実行しなくても、消費電力を抑えながら、位置情報を取得できる。なお、第一制御モードを実行せずに、第二制御モードを実行した場合は、第一の検出処理で検出された衛星信号も存在しない。このため、第二制御モードの追尾処理は、第二の検出処理で検出された衛星信号のみを追尾することになる。
本発明の電子機器においても、上記衛星信号受信装置の発明と同様の作用効果を得ることができる。
本発明の衛星信号受信装置の制御方法においても、上記衛星信号受信装置の発明と同様の作用効果を得ることができる。
図1は、本実施形態の電子時計1を示す概略図である。
電子機器としての電子時計1は、地球の上空を所定の軌道で周回している複数の位置情報衛星100のうち、少なくとも1つの位置情報衛星100からの衛星信号を受信して時刻情報を取得し、少なくとも3つの位置情報衛星100からの衛星信号を受信して位置情を算出して取得するように構成されている。なお、位置情報衛星100は、GPS衛星等のGNSS(Global Navigation Satellite System/全地球的航法衛星システム)で用いられる位置情報衛星であり、地球の上空に複数存在している。
図2は、電子時計1の正面図であり、図3は、電子時計1の概略を示す断面図である。
電子時計1は、図2および図3に示すように、外装ケース30と、カバーガラス33と、裏蓋34とを備えている。外装ケース30は、金属で形成された円筒状のケース31に、セラミックで形成されたベゼル32が嵌合されて構成されている。このベゼル32の内周側に、プラスチックで形成されたリング状のダイヤルリング35を介して、円盤状の文字板11が時刻表示部分として配置されている。
外装ケース30の側面には、文字板11の中心より、2時方向の位置にAボタン2と、4時方向の位置にBボタン3と、3時方向の位置にリューズ4とが設けられている。
外装ケース30の内側には、ベゼル32の内周に取り付けられているダイヤルリング35と、光透過性の文字板11と、指針21~28と、カレンダー車20と、各指針21~28およびカレンダー車20を駆動する駆動機構140などが備えられている。
文字板11と、駆動機構140が取り付けられている地板125との間には、光発電を行うソーラーセル135が備えられている。ソーラーセル135は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する複数の光発電素子を直列接続した円形の平板である。文字板11、ソーラーセル135、地板125には、指針21~23の指針軸29と、指針24~28の図示しない指針軸とが貫通する穴が形成されている。また、文字板11およびソーラーセル135には、カレンダー小窓15の開口部が形成されている。
駆動機構140は、具体的には、第1~第6駆動機構を備える。第1駆動機構は指針22および指針23を駆動し、第2駆動機構は指針21を駆動し、第3駆動機構は指針24を駆動し、第4駆動機構は指針25を駆動し、第5駆動機構は指針26~28を駆動し、第6駆動機構はカレンダー車20を駆動する。
文字板11の外周部を囲むダイヤルリング35の内周側には、図2に示すように、内周を60分割にする目盛が表記されている。この目盛を用いて、指針21は通常時に第1時刻の「秒」を表示し、指針22は第1時刻の「分」を表示し、指針23は第1時刻の「時」を表示する。なお、第1時刻の「秒」は、後述する第2時刻の「秒」と同じため、ユーザーは、指針21を確認することで、第2時刻の「秒」も把握できる。
また、ダイヤルリング35には、12分位置にアルファベットの「Y」と、18分位置にアルファベットの「N」の英字が表記されている。この英字は、位置情報衛星100から受信した衛星信号に基づく各種情報の受信(取得)結果(Y:受信(取得)成功、N:受信(取得)失敗)を示す。指針21は、「Y」および「N」のいずれか一方を指示し、衛星信号の受信結果を表示する。なお、受信結果の表示は、Aボタン2を3秒未満押すことで行われる。
指針25の回転領域の6時方向から7時方向の範囲の外周には、「DST」の英字と「○」の記号が表記されている。DST(daylight saving time)は夏時間を意味する。指針25は、これらの英字と記号を指示することで、夏時間(DST:夏時間ON、○:夏時間OFF)の設定を表示する。
指針28は、文字板11の中心から4時方向の位置に設けられ、第2時刻の午前および午後を表示する。
カレンダー小窓15は、文字板11を矩形状に開口した開口部に設けられており、開口部からカレンダー車20に印刷された数字が視認可能となっている。この数字は、年月日の「日」を表す。
また、ダイヤルリング35の周囲に設けられているベゼル32には、ダイヤルリング35に表記されている時差情報37の時差に対応した標準時を使用しているタイムゾーンの代表都市名を表す都市情報36が、時差情報37に併記されている。
図4は、電子時計1の回路構成を示すブロック図である。図4に示すように、電子時計1は、ソーラー発電充電式のGNSS対応の腕時計型デバイスである。電子時計1は、アンテナ体110と、GNSS受信回路45と、計時装置46と、記憶装置60と、入力装置47と、制御回路50と、駆動機構140と、表示装置141と、ソーラーセル135と、充電回路131と、二次電池130と、光量検知回路132とを備える。
制御回路50は、受信制御部51と、時刻情報生成部52と、時刻修正部53と、表示制御部54とを備える。
駆動機構140および表示装置141により、時刻を表示する時計表示部が構成される。
充電回路131は、ソーラーセル135で発生した電力を二次電池130に供給し、二次電池130を充電する。
光量検知回路132は、電子時計1に照射する光の光量を検知するものである。ソーラーセル135で発生した電力の大きさは、電子時計1に照射する光の光量に比例するため、本実施形態の光量検知回路132は、ソーラーセル135で発電されて充電回路131を介して二次電池130に充電される電力の大きさを検出して光量を検知している。なお、光量検知回路132は、光センサーや紫外線センサーなどで構成してもよい。
なお、GNSS受信回路45の詳細については後述する。また、以下の説明では、位置情報衛星100としてGPS衛星から衛星信号を受信した場合を例に説明する。
計時装置46は、二次電池130に蓄積された電力で駆動される水晶振動子等を備え、水晶振動子の発振信号に基づく基準信号を用いて時刻データを更新する。
時刻データ記憶部610には、受信時刻データ611と、閏秒更新データ612と、内部時刻データ613と、第1表示用時刻データ614と、第2表示用時刻データ615と、第1タイムゾーンデータ616と、第2タイムゾーンデータ617とが記憶される。
受信時刻データ611には、衛星信号から取得した時刻情報(GPS時刻)が記憶される。この受信時刻データ611は、通常は計時装置46によって1秒毎に更新され、衛星信号を受信した際には、取得した時刻情報(GPS時刻)が記憶される。
閏秒更新データ612には、少なくとも現在の閏秒のデータが記憶される。すなわち、衛星信号のサブフレーム4、ページ18には、閏秒に関するデータとして、「現在の閏秒」、「閏秒の更新週」、「閏秒の更新日」、「更新後の閏秒」の各データが含まれる。このうち、本実施形態では、少なくとも「現在の閏秒」のデータを、閏秒更新データ612に記憶している。
第2表示用時刻データ615には、内部時刻データ613の内部時刻情報に、第2タイムゾーンデータ617のタイムゾーンデータを加味した時刻情報が記憶される。第2タイムゾーンデータ617は、ユーザーが手動で選択した場合に得られるタイムゾーンデータで設定される。ここで、第2表示用時刻データ615の時刻情報は、指針21,26~28によって表示される第2時刻に相当する。
受信制御部51は、例えば、予め設定された時刻に該当すると、日時同期モードの受信条件に該当したと判定し、GNSS受信回路45を作動する。また、受信制御部51は、一定時間間隔(例えば4時間毎)に、衛星航法情報収集モードの受信条件に該当したと判定し、GNSS受信回路45を作動する。
さらに、受信制御部51は、入力装置47の出力信号に基づいて、Aボタン2が3秒以上6秒未満押されたことを検出すると、GNSS受信回路45を作動し、日時同期モードでの受信処理を実行させる。また、Aボタン2が6秒以上押されたことを検出すると、GNSS受信回路45を作動し、測位モードでの受信処理を実行させる。
詳しくは後述するが、日時同期モードでの受信処理が実行されると、GNSS受信回路45は、少なくとも1つの位置情報衛星100を捕捉し、その位置情報衛星100から送信される衛星信号を受信して時刻情報を取得する。
測位モードでの受信処理が実行されると、GNSS受信回路45は、少なくとも3個、好ましくは4個以上の位置情報衛星100を捕捉し、各位置情報衛星100から送信される衛星信号を受信して位置情報を算出して取得する。また、GNSS受信回路45は、衛星信号を受信した際に時刻情報も同時に取得できる。
すなわち、受信制御部51は、定期的な受信処理を実行する場合や、ユーザーの操作による受信処理が指示された場合に、GNSS受信回路45に対して制御を行い、日時同期モード、測位モード、衛星航法情報収集モードの各処理を実施する。
例えば、日本標準時(JST)は、UTCに対して9時間進めた時刻(UTC+9)であるため、取得した位置情報が日本である場合には、時刻情報生成部52は、タイムゾーンデータ記憶部620から日本標準時の時差情報(+9時間)を読み出して第1タイムゾーンデータ616に記憶する。
また、時刻情報生成部52は、入力装置47の操作により、時差情報37または都市情報36のいずれかが選択された場合、選択された時差情報37または都市情報36に対応するタイムゾーンデータを、第1タイムゾーンデータ616または第2タイムゾーンデータ617に記憶させる。
また、時刻修正部53は、第1表示用時刻データ614を、第1タイムゾーンデータ616を用いて修正し、第2表示用時刻データ615を、第2タイムゾーンデータ617を用いて修正する。このため、第1表示用時刻データ614および第2表示用時刻データ615は、UTCである内部時刻データ613に各タイムゾーンデータを加算した時刻となる。
GPSをはじめとするGNSSは、送信している信号に乗せて衛星航法情報(航法メッセージ)を放送している。ここで、位置情報衛星100から送信される衛星信号である航法メッセージ(衛星航法情報)について、GPSを例に説明する。GPSの航法メッセージは、50bpsのデータとして衛星の電波に変調されている。
図6~図8は、GPSの航法メッセージの構成について説明するための図である。
図6に示すように、航法メッセージは、全ビット数1500ビットのメインフレームを1単位とするデータとして構成される。メインフレームは、それぞれ300ビットの5つのサブフレーム1~5に分割されている。1つのサブフレームのデータは、各位置情報衛星(GPS衛星)100から6秒で送信される。従って、1つのメインフレームのデータは、各GPS衛星100から30秒で送信される。
週番号データは、現在のGPS時刻情報が含まれる週を表す情報であり、1週間単位で更新される。
サブフレーム2、3には、エフェメリスパラメーター(各GPS衛星100の詳細な軌道情報)が含まれる。また、サブフレーム4、5には、アルマナックパラメーター(全GPS衛星100の概略軌道情報)が含まれている。アルマナックパラメーターは、追尾しているどのGPS衛星100からも同じ情報が放送されている。これに対し、エフェメリスパラメーターは、追尾しているGPS衛星100のみから放送されている。そして、追尾している衛星からエフェメリスパラメーターを取得できないと測位を行うことができない。また、エフェメリスパラメーターは、一度取得すれば、約4時間利用することができる。したがって、継続的な測位を行うためには、定期的、例えば4時間毎に取得する必要がある。
したがって、電子時計1は、リセット後や電源投入時のように、内部に週番号データ(日付情報)を記憶していない場合のみ、サブフレーム1の週番号データを取得すれば良い。そして、週番号データを記憶している場合は、電子時計1は、TLMワードおよびHOWワードを取得すれば、現在時刻が分かるようになっている。
図9は、GNSS受信回路45の回路構成を示すブロック図である。
図9に示すように、GNSS受信回路45は、RF(Radio Frequency)部70と、ベースバンド部80とを備えている。
受信部としてのRF部70は、アンテナ体110を用いて、衛星信号の周波数帯の電波を受信し、受信信号を出力する。RF部70は、具体的には、受信信号を増幅する増幅回路(LNA)や、受信信号から衛星信号の周波数帯以外の信号成分を除去するバンドパスフィルター(BPF)や、局部発振信号を混合させて受信信号を中間周波数帯の信号に変換するミキサー回路などの衛星信号を受信して処理する処理部を備えて構成されている。
また、RF部70は、受信可能なGNSS毎に処理部が設けられ、受信するGNSSに対応した処理部を動作させる。例えば、GPS、ガリレオ、GLONASS、Beidouの4種類のGNSSを受信可能な場合、RF部70は、対応する4種類の処理部を備え、受信するGNSSに対応する処理部を動作させる。受信するGNSSの種類は、ユーザーが選択してもよいし、前回の受信時に情報取得に成功したGNSSを優先するように設定してもよい。
ベースバンド部80は、サンプリング部81と、サンプルメモリー部82と、レプリカコード生成部83と、相関演算処理部84と、ベースバンド制御部85とを備えている。
サンプリング部81は、アナログ・デジタル変換器(ADC)などを備えて構成され、RF部70から出力された受信信号を、所定のサンプリング周期でデジタル信号に変換して出力する。
受信信号記憶部としてのサンプルメモリー部82には、サンプリング部81から出力された受信信号が蓄積(記憶)される。なお、サンプルメモリー部82は、GNSSの種類毎に専用の領域を確保してもよいし、複数種類のGNSSで共用してもよく、蓄積可能な受信信号のサイズ(蓄積サイズ)を変更可能に構成してもよい。サンプルメモリー部82は、少なくとも受信するGNSSに対応できるようなサイズを設定可能とされている。また、サンプルメモリー部82は、後述する第一制御モード、第二制御モード、第三制御モードでGNSS受信回路45が制御される際に、受信信号を蓄積するサイズを変更してもよい。
レプリカコード生成部83は、ベースバンド制御部85によって指定されたGNSSの種類および受信対象となる位置情報衛星100に対応するPRNコードのレプリカを生成する。
相関演算処理部84は、サンプルメモリー部82に記憶された受信信号と、レプリカコード生成部83が生成したレプリカコード(コードとも称す)との相関値を演算する相関処理を実行する。
さらに、レプリカコード生成部83、相関演算処理部84を制御して、レプリカコードを生成し、サンプルメモリー部82に記憶された受信信号とレプリカコードとの相関値を演算して、衛星信号を検出する検出処理を実行する。
ここで、衛星信号追尾部852は、上記処理を、RF部70および相関演算処理部84を同時に両方動作させることで実行する。
なお、位置情報を取得するには、衛星毎に衛星信号を最低3フレーム分(18秒)受信することが必要である。サンプルメモリー部82における受信信号の蓄積サイズに制限がなければ、RF部70を動作状態とすることなく、サンプルメモリー部82に蓄積された受信信号を用いて追尾処理を実行することもできる。しかしながら、現実的には、サンプルメモリー部82の消費電力やフットプリントやコストなどを考慮した場合、蓄積サイズは最大でも1秒の受信信号を蓄積可能なサイズにしかできないため、RF部70および相関演算処理部84を両方動作させて追尾処理を実行する。
時刻・位置情報演算部854は、デコードされたデータ(衛星航法情報や追尾信号に含まれるコード情報等)に基づいて、時刻情報や位置情報を計算して取得する。すなわち、時刻・位置情報演算部854は、日時同期モードで動作している場合は、時刻情報を取得し、測位モードで動作している場合は、時刻情報および位置情報を取得する。
ここで、第一制御モード(RF・BB独立動作モード)は、RF部70で受信したデータのサンプルメモリー部82への蓄積中は相関演算処理部84を動作させず、RF部70を非動作状態としてから、相関演算処理部84を動作させて衛星信号を検出する第一の検出処理を行うものである。すなわち、RF部70および相関演算処理部84を切り替えて動作させるものである。
第二制御モード(高精度受信処理用RF・BB並列動作モード)は、RF部70とベースバンド部80とを並列に動作させて衛星信号を検出する第二の検出処理(サーチ処理)と、衛星信号追尾処理とを行うものである。
第三制御モード(低電力受信処理用RF・BB並列動作モード)は、RF部70とベースバンド部80とを並列に動作させるが、衛星信号の検出処理は行わず、第一の検出処理で検出された衛星信号の追尾処理を行うものである。
次に、受信制御部51による受信処理について、図10~図14のフローチャートを用いて説明する。
受信制御部51は、受信処理を開始すると、図10に示すように、GNSS受信回路45の電源をオンし(S1)、受信モードを確認する(S2)。
受信制御部51は、受信モードが衛星航法情報収集モードであるか否かを判定し(S3)、S3で「YES」と判定した場合は、衛星航法情報収集モードを実行する(S4)。
受信制御部51は、S3で「NO」と判定した場合は、日時同期モード(測時モード)であるか否かを判定する(S5)。受信制御部51は、S5で「YES」と判定した場合は、日時同期モードを実行し(S6)、S5で「NO」と判定した場合は、測位モードを実行する(S7)。
受信制御部51は、各モードの処理が終了すると、GNSS受信回路45の電源をオフし(S8)、受信処理を終了する。
衛星航法情報収集モードは、衛星システムから主として衛星軌道に関する情報(エフェメリス、アルマナック)を定期的に収集・保存することを目的とした受信モードである。
エフェメリス情報は一度取得すると約4時間利用することができる。このため、継続的な測位を行うためには定期的なエフェメリス情報の取得が必要である。この受信モードは衛星からエフェメリス情報が取得できる確率が高い時に、最適な設定でGNSS受信回路45を制御することを目的としている。
受信制御部51は、図10のS4の衛星航法情報収集モードを開始すると、図11に示すように、まず本モードの受信終了条件を設定する(S11)。受信終了条件とは主に受信処理のタイムアウトや、エフェメリス情報の取得個数(衛星数)、測定中の衛星の信号強度等の要素を複合的に設定できるものとする。
以下に、受信終了条件の一例を挙げる。
(1)RF・BB並列動作移行までのタイムアウト時間:10秒
RF・BB独立動作モード(第一制御モード)で起動後に10秒経過してもRF・BB並列動作モード(第二制御モード)に移行しない場合は本モードを終了する。
(2)RF・BB並列動作移行後のタイムアウト時間:30秒
RF・BB独立動作モードからRF・BB並列動作モードに移行後、30秒経過したら本モードを終了する。
この衛星数の閾値を超えない場合は、RF・BB独立動作モードからRF・BB並列動作モードに移行しないため、例えば室内のようなGNNS衛星が可視できず、エフェメリス情報が取得できる可能性が低いような場合は、無駄にRF・BB並列動作モードを実施しないため、電力消費を少なくすることができる。
サーチを実施する感度域の設定とは、どこまでの信号強度をサーチ対象とするかの設定であり、たとえば弱い信号の衛星を時間をかけて探すより、強い信号の衛星をより短時間で探すほうが適する場合もある。衛星航法情報収集モードでは、GNSS衛星から衛星航法情報を取得するためには、信号レベルもある程度強い必要がある。このため、感度域としては、ある程度強い信号域までサーチするように設定する。
サーチパワーの設定とは、単位時間当たりどれだけのサーチを実施するかを設定であり、パワーを大きくするとより早く対象範囲をサーチできるため衛星も早く見つけることができる反面、消費電力が大きくなる。逆にパワーを小さくすると衛星を見つける時間は遅くなるが、消費電力は小さくなる。衛星航法情報収集モードでは、通常設定のサーチパワーを設定する。
次に、受信制御部51は、RF・BB独立動作モード(第一制御モード)でGNSS受信回路45を起動する(S14)。従って、第一制御モードを実行する第一条件の一つは、衛星航法情報収集モードで受信を開始したことである。
次に、受信制御部51は、衛星信号サーチ処理を実行する(S15)。この衛星信号サーチ処理S15は、図12のフローチャートで説明する。
GNSS受信回路45の衛星信号検出部851は、最初にRF部70を動作状態に設定し(S21)、衛星信号の受信を開始する(S22)。
RF部70で受信された衛星信号は、ベースバンド部80のサンプリング部81でA/D変換されてデジタルデータに変換される(S23)。サンプリング部81でデジタルデータに変換された衛星信号データは、サンプルメモリー部82に蓄積される(S24)。
衛星信号検出部851は、サンプルメモリー部82に蓄積された衛星信号データが、予め設定された容量まで蓄積されたか否かを判定する(S25)。なお、サンプルメモリー部82に蓄積されるデータ容量は、受信開始からの時間に比例するため、衛星信号検出部851は、S25において、サンプルメモリー部82に設定容量までデータが蓄積されたか否かを判定することで、所定期間分の受信信号をサンプルメモリー部82に記憶させたか否かを判定できる。
一方、RF・BB独立動作モード時(第一制御モード)は、相関演算処理時はRF部70を停止するため、RF部70の動作中にサンプルメモリー部82に蓄積されたデータのみを利用することになる。このため、RF・BB独立動作モード時は、相関演算処理が終了するまでサンプルメモリー部82の内容は保持される。
したがって、RF・BB独立動作モード時に、サンプルメモリー部82に蓄積する衛星信号データの設定容量は、RF・BB並列動作モード時に比べて大きく設定することが好ましい。
一方、衛星信号検出部851は、S26でNOと判定した場合、つまり現在の動作モードが、RF・BB並列動作モードであった場合、RF部70を非動作状態に設定することなく、現在の状態を維持する。
次に、衛星信号検出部851は、サンプルメモリー部82に保持されているデータを読み出し(S28)、信号検出処理を行う(S29)。
この信号検出処理について、図13のフローチャートにて説明する。
衛星信号検出部851は、まず検出対象の衛星のPRNコードを設定し(S32)、レプリカコード生成部83を制御して対応したレプリカコードを生成させる(S33)。相関演算処理部84は、生成されたレプリカコードを用いてピーク検出処理(相関処理)を実施する(S34)。
衛星信号検出部851は、S34のピーク検出処理において、信号ピークを検出できたか否かを判定する(S35)。結果として信号ピークを検出できた場合(S35でYES)は、ベースバンド制御部85は、衛星信号追尾部852によって、現在のコード、周波数を基準として衛星追尾状態に移行する(S36)。衛星追尾状態に移行すると正しいコード、周波数が分かっているので非常に小さいサーチパワーで衛星を追尾することができ、サーチする範囲を狭くできるため結果的に消費電力も小さくなる。一方、衛星信号検出部851は、S35でNOと判定した場合、衛星追尾状態に移行しない。
衛星信号検出部851は、S38でNOと判定した場合は、S32~S37の処理を対象としている周波数範囲内をすべてサーチできるまで繰り返す。衛星信号検出部851は、対象周波数範囲のサーチを終了して、S38でYESと判定した場合は、信号検出処理を終了して図12に戻る。
ベースバンド制御部85は、S16でNOと判定した場合は、RF・BB独立動作モードからRF・BB並列動作モードへの移行条件(第二条件)に該当するか否かを判定する(S17)。
本実施形態では、前記移行条件は、衛星が一つ以上見つかった場合に設定されている。このため、ベースバンド制御部85は、1つ以上の衛星信号を検出できてS17でYESと判定されるまで、衛星信号サーチ処理S15を繰り返し実行する。
このRF・BB並列動作モードでの受信処理について、図14のフローチャートにて説明する。
ベースバンド制御部85は、RF部70を動作状態に設定してRF・BB並列動作モードの動作を開始する(S41)。これにより、衛星信号追尾部852による衛星追尾処理が可能となり、追尾している衛星から衛星航法情報を連続的に取得(デコード)することができる。
次に、衛星信号検出部851は、現在追尾できていない衛星に対しても、サーチ処理を実施する(S42)。今回の例では、図11のS15で追尾できていない衛星に対してサーチ処理を実施する。なお、衛星信号サーチ処理S42は、基本的には、図12,13に示す処理を行う。この際、前記衛星信号サーチ処理S15では、RF・BB独立動作モードで動作していたため、図12のS26でYESと判定されてS27でRF部70を非動作状態に設定していた。これに対し、衛星信号サーチ処理S42は、RF・BB並列動作モードで動作しているため、S26でNOと判定されてRF部70を非動作状態に設定しない点が、衛星信号サーチ処理S15と異なる。
衛星信号追尾部852は、衛星信号サーチ処理S42で検出した衛星の追尾処理を実行する(S43)。
ここでRF・BB並列動作モードのままサーチ処理を継続する理由は、RF・BB独立動作モードでは、RF部70を非動作状態に設定する仕組み上、サーチ処理と追尾処理とを並行して実施できないからである。
衛星信号検出部851は、S44でNOと判定すると、衛星信号追尾部852によって追尾中の衛星が存在するかを判定する(S45)。そして、S45でNOと判定すると、S42に戻り、衛星信号サーチ処理S42、衛星信号追尾処理S43を継続する。
衛星信号追尾処理S43により追尾中の衛星が存在する場合は、ベースバンド制御部85の衛星航法情報デコード部853および時刻・位置情報演算部854は、衛星航法情報のデコード・日時同期・測位処理を実施する(S46)。
次に、S46のデコード・日時同期・測位処理を、図15に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、衛星航法情報デコード部853は、追尾中の衛星から受信した衛星信号から、衛星航法情報をデコードする(S51)。衛星航法情報デコード部853は、衛星航法情報をデコードできたか否かを判定し(S52)、デコードできた場合(S52でYES)は、そのデータをGNSS受信回路45内に設けられた図示略のバックアップメモリーに保存する(S53)。このメモリーの内容は測定動作が終了しても保持され、測位動作に利用する。一方、衛星航法情報デコード部853は、衛星航法情報をデコードできていない場合(S52でNO)、S53の保存処理は行わない。
なお、本実施形態では、衛星航法情報収集モードにおけるデコード・日時同期・測位処理S46では、図15に示すように、衛星航法情報のデコード処理に続けて、日時の同期やタイムゾーン修正(測位動作)が実施されるが、衛星航法情報収集モードであるため、衛星航法情報のデコード処理のみを行い、日時の同期、測位処理は実施しない設定としてもよい。
図15に示すデコード・日時同期・測位処理を終了すると、図14に示すように、ベースバンド制御部85は、受信終了条件(タイムアウト30秒)に該当したか否かを判定し(S47)、S47でNOと判定すると、S42に戻って処理を継続する。一方、ベースバンド制御部85は、S47でYESと判定すると、並列動作モード受信処理を終了し、図11に戻って、衛星航法情報収集モードも終了する。
衛星航法情報収集モード終了後は、図10に戻り、受信制御部51は、GNSS受信回路45の電源をOFFし(S8)、受信処理を終了する。
ここで得られた衛星航法情報は、後に説明する「測位モード」でホットスタート用に利用でき、より高速・高効率な測位処理が行える。
日時同期モードは衛星システムから受信した信号からデコードされた、時刻同期情報、日情報を用いて受信機(電子時計1)の時刻、日を修正することを目的としたモードである。
前述した図6に示す衛星航法情報には、各サブフレーム1~5の先頭に正秒に同期するタイミングと、時刻に関する情報が含まれている。またサブフレーム1には現在日を求めることができる情報が存在する。これらの情報を取得することで、電子時計1の日時を修正することができる。
なお、基本的な動作は前述した「衛星航法情報収集モード」と同じである。ただし、時刻もしくは日の情報は最低1個の衛星から信号を受信し、衛星航法情報をデコードすることができれば取得できるため、最小限のサーチ動作で目的を達成できる。よって、日時同期モードではRF・BB独立動作モード(第一制御モード)で起動し、RF・BB並列動作モードに移行後はRF・BB独立動作モード時に取得した衛星のみ、つまり第一の検出処理で検出された衛星信号のみを追尾する。すなわち、日時同期モードのRF・BB並列動作モードは、移行後は新たなサーチを行わない第三制御モードである。
また、RF・BB並列動作モード移行後に追尾中の衛星が存在しなくなった場合は、再度独立動作モードに移行して衛星サーチ動作を実施する。
受信制御部51は、日時同期モードを開始すると、図16に示すように、受信終了条件の設定処理S61、RF・BB独立動作モード(第一制御モード)のパラメーター設定処理S62、衛星サーチパラメーターの設定処理S63を実行する。
日時同期モードにおける受信終了条件は、RF・BB並列動作モードへの移行までのタイムアウト時間を15秒とし、日時同期モードの全体処理の終了条件はタイムアウト時間を60秒、または日時が同期できた場合とする。RF・BB独立動作パラメーター設定、衛星サーチパラメーター設定は、図11に示す衛星航法情報収集モードの処理S12,S13と同じである。
衛星信号検出部851がS66でNOと判定した場合、移行条件の判定処理S67を行う。第三条件に該当してS67でYESと判定した場合、具体的には1つ以上の衛星信号を検出できた場合、ベースバンド制御部85は、RF部70を動作状態に設定してRF・BB並列動作モード(第三制御モード)の動作を開始する(S68)。衛星信号追尾部852は、衛星信号追尾処理S69を実行する。
ベースバンド制御部85は、S70でYESと判定すると、RF・BB独立動作モードでの起動処理S64を行い、以下、S65~S70の処理を繰り返す。
衛星信号検出部851は、S70でNOと判定すると、追尾中の衛星信号のデコード・日時同期・測位処理S71を実行する。この処理S71は、図15に示す衛星航法情報収集モードでのS46の処理と同じである。なお、本実施形態では、衛星航法情報収集モードと同様に、S71でも日時同期やタイムゾーン修正(測位動作)を実施するようになっているが、演算処理が必要で消費電力が増大するタイムゾーン修正(測位動作)は実施しない制御としてもよい。
ベースバンド制御部85は、S71の処理後、受信終了条件(タイムアウト60秒)に該当したか否かを判定し(S72)、S72でNOと判定すると、S69に戻って処理を継続する。一方、ベースバンド制御部85は、S72でYESと判定すると、日時同期モードを終了する。
日時同期モード終了後は、図10に戻り、受信制御部51は、GNSS受信回路45の電源をOFFし(S8)、受信処理を終了する。
測位モードは、衛星システムから受信した信号からデコードされた、エフェメリス情報を用いて測位を行い、受信機(電子時計1)の時刻、タイムゾーンを修正したり、測位した位置情報を他アプリケーション等で利用することを目的としたモードである。
この測位モードに関して、図17~図20を参照して説明する。測位モードの基本的な動作は前述した「衛星航法情報収集モード」、「日時同期(測時)モード」と同じであるため、主に変更部分について説明する。
なお、前述した「衛星航法情報収集モード」は、主にホットスタート条件を満たすため、特に測位可能な数(3つ以上)のエフェメリス情報を取得する目的のモードである。
受信制御部51は、ホットスタート条件に該当する場合、RF・BB並列動作モード(第三制御モード)のみで動作し、測位動作を実施する。サーチ処理により衛星が見つかった場合は追尾処理を行う。追尾中の衛星航法情報の取得、日時の同期処理等のフローは「衛星航法情報収集モード」でのRF・BB並列動作モード(第二制御モード)での受信処理S18と同様である。
このため、受信制御部51は、ホットスタート条件に該当する場合(S80でYES)、ホットスタート条件における受信終了条件の設定処理S81と、衛星サーチパラメーター設定処理S82とを実行する。
S81で設定する受信終了条件は、全体処理のタイムアウト時間を120秒とし、タイムアウト時間を経過しても測位が完了しない場合と、タイムアウト時間以内で測位が完了した場合に測定を終了する条件とする。
またサーチパワーを通常より小さく設定するのは、前述したとおりサーチする範囲をホットスタート条件に該当しない場合より大幅に狭めることができるため、通常より小さいサーチパワーでも実用的な衛星サーチが実現でき、より消費電力を抑えることができるためである。
受信制御部51は、S80でNOと判定した場合、つまりホットスタート条件に該当しない場合は、コールドスタート用の測位モードでの受信処理S90を実行する。
まず、コールドスタート時の概略の処理の流れを説明する。コールドスタート時は、前述しているように衛星信号をサーチする範囲が大きくサーチ能力を必要とするため、測定開始時はRF・BB独立動作モード(第一制御モード)で起動する。そして、RF・BB独立動作モード時に測位に必要な衛星数(測位のため3衛星以上)が見つかる等の条件を満たすと、RF・BB並列動作モードとなる。
そして、消費電力を重視するか否かで、RF・BB並列動作モードでの処理を分岐している。測位精度や測位成功率を重視する高精度受信処理の場合は、「衛星航法情報収集モード」と同様に、RF・BB独立動作モード時に見つかった衛星に対する追尾処理だけでなく、追尾できていない衛星に対してもサーチ・追尾処理を実施するRF・BB並列動作モード(第二制御モード)を実行する。これにより、信号レベルの高い衛星信号を用いた測位処理が可能となり、測位精度や測位成功率を向上できる。一方で、RF・BB並列動作モード時に、追尾できていない衛星のサーチ処理も行うため、消費電力は増大する。
一方、消費電力を重視する低電力受信処理の場合は、「日時同期(測時)モード」と同様に、RF・BB独立動作モードにて見つかった衛星のみに追尾処理を実施するRF・BB並列動作モード(第三制御モード)を実行する。これにより、低電力受信処理は、高精度受信処理に比べて、消費電力を低減できる。一方、低電力受信処理は、RF・BB並列動作モード時に、新たな衛星をサーチしないため、高精度受信処理に比べると、測位精度や測位成功率が低下する可能性がある。
受信制御部51は、受信終了条件設定処理S91、衛星サーチパラメーター設定処理S92、RF・BB独立動作パラメーター設定処理S93を実行する。
S91で設定する受信終了条件は、RF・BB並列動作移行までのタイムアウト時間を15秒、全体処理(測位処理)のタイムアウト時間を120秒とし、タイムアウト時間を経過しても測位が完了しない場合と、タイムアウト時間以内で測位が完了した場合に測定を終了する条件とする。
S92で設定する衛星サーチパラメーターにおいて、サーチを実施する感度域の設定は、衛星信号から衛星航法情報を取得できるように、ある程度、強い信号感度域までとする。また、サーチパワーの設定は、通常レベルに設定され、ホットスタート条件時に比べて高く設定されている。
S93で設定するRF・BB独立動作モードのパラメーターは、独立動作モードから並列動作モードへの移行条件であり、基本的にはサーチで見つかった衛星数が測位に必要な最低衛星数である3衛星以上であることを条件とする。
受信制御部51は、S97でYES、つまり独立動作モードでの衛星信号サーチ処理S95で、3衛星以上を見付けた場合には、コールドスタート時の測位処理として、消費電力を重視する設定であるか否かを判定する(S98)。そして、受信制御部51は、S98でNOと判定した場合は、高精度受信処理S100を実行し、S98でYESと判定した場合は、低電力受信処理S110を実行する。
ここで、S98の判定は、例えば、受信機(電子時計1)の電池残量レベルによって判定してもよいし、測位処理で得られた位置情報の用途(アプリケーション)によって判定してもよい。例えば、電子時計1のタイムゾーンを判定するために測位処理を行う場合は、測位誤差がある程度大きくても実用上問題がないため、低電力受信処理を実行すればよい。一方で、GPSロガーのように、受信機を装着した人や車などの移動情報を取得する場合は、位置精度も高くする必要があるため、高精度受信処理を実行すればよい。
高精度受信処理S100が実行されると、図19に示すように、ベースバンド制御部85は、RF・BB並列動作モードでGNSS受信回路45を動作する(S101)。
そして、衛星信号検出部851、衛星信号追尾部852は、現在追尾できていない衛星をサーチする衛星信号サーチ処理S102、衛星信号追尾処理S103、受信終了条件判定処理S104、追尾中衛星の存在判定処理S105、デコード・日時同期・測位処理S106、受信終了条件の判定処理S107を実行する。これらの処理S101~S107は、衛星航法情報収集モードにおけるRF・BB並列動作モード(第二制御モード)の処理と同様である。
なお、受信終了条件判定処理S104、S107の受信終了条件は、測位受信に成功した場合と、測位受信に成功せずに測位モード開始からタイムアウト時間(120秒)経過した場合である。また、処理S105の判定条件は、追尾中の衛星が測位に必要な3衛星以上であればYESと判定し、3衛星未満であればNOと判定する。
そして、処理S104、S107で受信終了条件に該当してYESと判定されると、受信制御部51は、高精度受信処理を終了し、図18に戻り、測位モードを終了する。さらに、受信制御部51は、図10に戻り、GNSS受信回路45の電源をオフし(S8)、受信処理を終了する。
低電力受信処理S110が実行されると、図20に示すように、ベースバンド制御部85は、RF・BB並列動作モードでGNSS受信回路45を動作する(S111)。
そして、衛星信号検出部851、衛星信号追尾部852は、衛星信号追尾処理S112、並列から独立動作への移行条件判定処理S113、デコード・日時同期・測位処理S114、受信終了条件の判定処理S115を実行する。これらの処理S111~S115は、日時同期モードにおける処理と同様である。
ただし、測位モードであるため、並列から独立動作への移行条件(第一条件)を判定する判定処理S113は、追尾中の衛星が測位に必要な3衛星よりも少なくなればYESと判定し、3衛星以上を維持していればNOと判定する。そして、衛星信号検出部851は、S113でYESと判定した場合は、図18の処理S94に戻り、RF・BB独立動作モードでの動作に切り替えて衛星信号サーチ処理S95以降の処理を実行する。
また、受信終了条件判定処理S115の判定条件は、測位受信に成功した場合と、測位受信に成功せずに測位モード開始からタイムアウト時間(120秒)経過した場合である。
そして、処理S115で受信終了条件に該当してYESと判定されると、受信制御部51は、低電力受信処理を終了し、図18に戻り、測位モードを終了する。さらに、受信制御部51は、図10に戻り、GNSS受信回路45の電源をオフし(S8)、受信処理を終了する。
また、コールドスタート時であり、かつ、測位精度や測位成功率を重視する場合は、RF・BB独立動作モードで起動することで消費電力を抑えながら必要最低限の衛星をサーチし、RF・BB並列動作モード移行後はまだ見つかっていない衛星に対してもサーチを行うことで、さらに多くの衛星をサーチすることができより多くの衛星を利用して測位計算を実施することにより高精度、高測位率を実現することができる。
また、コールドスタート時であり、かつ、消費電力の低減を重視する場合においては、RF・BB独立動作モードで見つかった最小限の衛星数に対してRF・BB並列動作モードで追尾、デコード、測位処理が行われるため、ホットスタート時と、コールドスタート時で高精度受信処理を行う場合との2条件よりもさらに消費電力を抑えながら測位動作を実現することができる。
電子時計1によれば、制御部であるベースバンド制御部85は、RF部70および相関演算処理部84の制御として、第一制御モード(RF・BB独立動作モード)と、第二制御モード(RF・BB並列動作モード)とを備えているため、消費電力を抑制しつつ、衛星信号を取得できる衛星数を増やすことができる。
すなわち、受信処理の開始時に第一制御モードを実行すれば、RF部70と、相関演算処理部84とが同時に動作することがないため、ピーク電流を抑制できて消費電力も低減できる。したがって、最初に第一制御モードを実行して第一の検出処理を行うことで、低消費電力で衛星を検出可能な環境であるか否かを判断できる。このため、電子時計1が室内に配置された状態で受信処理を開始した場合でも、低消費電力で受信に適さない環境であることを判定して受信処理を終了できる。
また、第二制御モードが実行された場合は、ベースバンド制御部85は、RF部70および相関演算処理部84を動作状態として、衛星信号を検出する第二の検出処理(サーチ処理)と、衛星信号を追尾する追尾処理とを実行する。このとき、第二制御モードでは、新たな衛星信号を検出する検出処理を行っているので、第一制御モードの実行時に検出できなかった衛星信号であっても、第二制御モードの実行時に検出することができる場合がある。したがって、第二制御モードの追尾処理では、第一制御モードの第一の検出処理で検出した衛星信号に加えて、第二制御モードの第二の検出処理で検出した衛星信号も追尾できるため、より多くの衛星信号を追尾できる。このため、信号強度の高い衛星信号を受信できたり、多くの衛星信号を受信できるため、位置情報の取得に成功する測位成功率を向上でき、位置情報の精度も向上できる。
したがって、ベースバンド制御部85が、受信目的、すなわち、取得する情報の種類や、位置精度を重視するかあるいは低電力消費を重視するかの違いによって各制御モードを選択しているので、受信目的に適した最適の消費電力で最適なパフォーマンスを実現できる。
また、衛星航法情報収集モード、日時同期モード、測位モード等の受信モードに応じて、サーチ対象感度域やサーチパワーを設定しているので、さらに消費電力を抑制しながら受信目的を実現できる。
さらに、受信終了条件として、受信モードに応じて、全体処理のタイムアウト時間と、独立動作モードから並列動作モードへの移行のタイムアウト時間とを設定しているので、受信目的に応じて受信処理を継続すべきか否かを適切に判定でき、無駄な受信処理が継続することを防止でき、その分、消費電力も低減できる。
すなわち、ホットスタート時は、第一制御モードを実行せずに、第二制御モードで受信処理を実行する。ホットスタート時は、衛星信号のサーチ範囲(サーチする周波数範囲)を限定でき、サーチパワーも小さくできるため、第二制御モードを実行しても消費電力を低減できる。さらに、受信開始時から第二制御モードを実行することで、サーチと追尾とをリアルタイムで実施できるため、測位時間も短縮でき、測位率も向上できる。
また、コールドスタート時でかつ高精度受信処理を目的とする場合は、第一制御モードで受信処理を開始し、第一制御モードで検出された前記衛星信号の数が測位に必要な衛星数(例えば3衛星以上)であれば、第二制御モードに切り替えて受信処理を継続する。このため、第一制御モード時に検出できなかった衛星も、第二制御モード時に検出できるため、第一制御モード時および第二制御モード時にそれぞれ検出できた衛星を追尾処理でき、より多くの衛星信号を取得できる。このため、信号レベルの高い衛星信号を用いて位置情報を取得できる確率も高くなるため、測位成功率も向上でき、精度の高い位置情報を取得できる。
さらに、コールドスタート時でかつ低電力受信処理を目的とする場合は、第一制御モードで受信処理を開始し、第一制御モードで検出された前記衛星信号の数が測位に必要な衛星数(例えば3衛星以上)であれば、第三制御モードに切り替えて受信処理を継続する。第三制御モード時は、第一制御モード時に検出した衛星のみを追尾するため、第二制御モードを実行する場合に比べて、消費電力を低減できる。
これによれば、第三制御モードの実行後、第一制御モードを実行することがない場合と比べて、時刻情報や位置情報の取得成功率を向上できる。
これによれば、情報の取得に必要な数の衛星信号を検出できている場合にのみ、並列動作モードを設定でき、追尾処理を実行できる。これにより、情報の取得に成功できない状況で追尾処理が実行されることを抑制できる。
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
但し、前記実施形態のように、3種類の制御モードを実行可能としたほうが、各受信目的に応じて制御モードを選択できるため、最適な消費電力で最適なパフォーマンスを実現できる利点がある。
さらに、前記実施形態では、第一制御モードから第三制御モードに移行する条件と、第三制御モードから第二制御モードに移行する条件とを同じ衛星数としていたが、異なる数としてもよい。
また、各制御モードを移行する条件は、受信処理の開始からの経過時間によって変更してもよい。
Claims (9)
- 位置情報衛星が送信する衛星信号の周波数帯の電波を受信し、受信信号を出力する受信部と、
前記受信信号を記憶する受信信号記憶部と、
前記受信信号および前記位置情報衛星に対応したコードの相関値を演算する相関演算処理部と、
前記受信部および前記相関演算処理部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記受信部を動作状態とし、かつ、前記相関演算処理部を非動作状態として、前記受信部から出力された前記受信信号を前記受信信号記憶部に記憶させ、所定期間分の前記受信信号を前記受信信号記憶部に記憶させると、前記受信部を非動作状態とし、かつ、前記相関演算処理部を動作状態として、前記受信信号記憶部に記憶された前記受信信号および前記コードの相関値を演算して、前記衛星信号を検出する第一の検出処理を実行する第一制御モードと、
前記受信部および前記相関演算処理部を動作状態として、前記受信部から出力された前記受信信号および前記コードの相関値を演算して、前記第一の検出処理において検出対象に設定されている衛星信号のうち、前記第一の検出処理で検出できていない衛星信号を検出する第二の検出処理と、前記第一の検出処理および前記第二の検出処理で検出された前記衛星信号を追尾する追尾処理とを実行し、追尾した前記衛星信号に基づいて情報を取得する第二制御モードと、を実行可能であり、
予め設定された第一条件に該当すると前記第一制御モードを実行し、予め設定された第二条件に該当すると前記第二制御モードを実行する
ことを特徴とする衛星信号受信装置。 - 請求項1に記載の衛星信号受信装置において、
前記制御部は、
前記受信部および前記相関演算処理部を動作状態として、前記受信部から出力された前記受信信号および前記コードの相関値を演算して、前記第一の検出処理で検出された前記衛星信号のみを追尾する追尾処理を実行し、追尾した前記衛星信号に基づいて情報を取得する第三制御モードと、を実行可能であり、
予め設定された第三条件に該当すると前記第三制御モードを実行する
ことを特徴とする衛星信号受信装置。 - 請求項2に記載の衛星信号受信装置において、
前記情報は時刻情報であって、
前記制御部は、前記時刻情報を取得する日時同期モードで動作可能とされ、
前記日時同期モードで動作される場合は、前記第一制御モードで受信処理を開始し、前記第一制御モードで検出された前記衛星信号の数が所定数以上の場合に前記第三条件に該当したと判定し、前記第三制御モードに切り替えて受信処理を実行する
ことを特徴とする衛星信号受信装置。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の衛星信号受信装置において、
前記情報は衛星航法情報であって、
前記制御部は、前記衛星航法情報を取得する衛星航法情報収集モードで動作可能とされ、
前記衛星航法情報収集モードで動作される場合は、前記第一制御モードで受信処理を開始し、前記第一制御モードで検出された前記衛星信号の数が所定数以上の場合に前記第二条件に該当したと判定し、前記第二制御モードに切り替えて受信処理を実行する
ことを特徴とする衛星信号受信装置。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の衛星信号受信装置において、
前記情報は位置情報であって、
前記制御部は、前記位置情報を取得する測位モードで動作可能とされ、
前記測位モードで動作される場合は、ホットスタートで起動可能であれば、前記第二制御モードで受信処理を実行する
ことを特徴とする衛星信号受信装置。 - 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の衛星信号受信装置において、
前記情報は位置情報であって、
前記制御部は、前記位置情報を取得する測位モードで動作可能とされ、
前記測位モードで動作される場合であり、ホットスタートで起動できず、かつ、高精度受信処理を行う場合は、前記第一制御モードで受信処理を開始し、前記第一制御モードで検出された前記衛星信号の数が測位に必要な衛星数以上の場合に前記第二条件に該当したと判定し、前記第二制御モードに切り替えて受信処理を実行する
ことを特徴とする衛星信号受信装置。 - 請求項2に記載の衛星信号受信装置において、
前記情報は位置情報であって、
前記制御部は、前記位置情報を取得する測位モードで動作可能とされ、
前記測位モードで動作される場合であり、ホットスタートで起動できず、かつ、低電力受信処理を行う場合は、前記第一制御モードで受信処理を開始し、前記第一制御モードで検出された前記衛星信号の数が測位に必要な衛星数以上の場合に前記第三条件に該当したと判定し、前記第三制御モードに切り替えて受信処理を実行する
ことを特徴とする衛星信号受信装置。 - 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の衛星信号受信装置を備える
ことを特徴とする電子機器。 - 位置情報衛星が送信する衛星信号の周波数帯の電波を受信し、受信信号を出力する受信部と、前記受信信号を記憶する受信信号記憶部と、前記受信信号および前記位置情報衛星に対応したコードの相関値を演算する相関演算処理部と、を備える衛星信号受信装置の制
御方法であって、
前記受信部を動作状態とし、かつ、前記相関演算処理部を非動作状態として、前記受信部から出力された前記受信信号を前記受信信号記憶部に記憶させ、所定期間分の前記受信信号を前記受信信号記憶部に記憶させると、前記受信部を非動作状態とし、かつ、前記相関演算処理部を動作状態として、前記受信信号記憶部に記憶された前記受信信号および前記コードの相関値を演算して、前記衛星信号を検出する第一の検出処理を実行する第一制御ステップと、
前記受信部および前記相関演算処理部を動作状態として、前記受信部から出力された前記受信信号および前記コードの相関値を演算して、前記第一の検出処理において検出対象に設定されている衛星信号のうち、前記第一の検出処理で検出できていない衛星信号を検出する第二の検出処理と、前記第一の検出処理および前記第二の検出処理で検出された前記衛星信号を追尾する追尾処理とを実行し、追尾した前記衛星信号に基づいて情報を取得する第二制御ステップと、を備え、
予め設定された第一条件に該当すると前記第一制御ステップを実行し、予め設定された第二条件に該当すると前記第二制御ステップを実行する
ことを特徴とする衛星信号受信装置の制御方法。
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