JP7117712B2 - 軸力可視化ボルト - Google Patents
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Description
特に、ロックボルトやグラウンドアンカーなどは、地盤工学、岩盤工学、コンクリート工学において頻繁に用いられる補強材である。ロックボルトはトンネル壁面などに打ち込み、またグラウンドボルトは切土などの斜面に打ち込んで、崩落や地滑りなどの災害を防止するための補強がなされる。これらは施工後も長期にわたってその強度を保持し、構造物の安定を保持するために重要な役割を果たすものである。
しかし、ロックボルトやグラウンドアンカーなどの補強材を用いた場合でも、経時的な劣化や予期しない地盤変動のために、崩落や地滑りなどの災害を生じることがある。トンネル工事では、ロックボルトを打設して地山の変形を抑制するが、トンネル掘削に伴い地山の緩みが生じるために、地山によっては崩落する動きが生じる。ロックボルトではプレート面でその崩落する動きに伴う力を支えることになる。過大な力がロックボルトに作用していてもそれを外部に伝達する手段がないため、ロックボルトの破断やトンネル崩落の危険がある。このような危険が生じる前に、通常、予兆的な規模の小さい崩落又は地滑りが先行することが多いことから、ロックボルト軸力計など歪みゲージやロードセルを用いて、ロックボルトに作用する力を計測し、異常をモニタリングしている(例えば、特許文献1を参照)。
また、トンネル周辺地山に発生するひび割れを広い範囲に亘り、短い間隔で測定してトンネル崩壊の判断の精度向上を図るために、地山に発生するアコースティックエミッションを測定する方法が知られているが(特許文献2を参照)、現場ではセンサおよび高価な測定装置を設置する必要があり実用的ではない。
高価なロックボルト軸力計など歪みゲージやロードセルを用いるのではなく、また電気的センサによって微小な変形差を読み取るといったような電気回路を備える複雑な装置構造にするのではなく、軸力に応じた微小変化の可視化を低コストで実現する必要がある。
定期点検の担当者が確認できるだけでなく、工事中や工事後の建物等インフラ全体の監視体制のレベルを格段に向上すべく、インフラに生じている異常を誰かが発見できるようなボルトにかかる軸力の可視化を実現する必要がある。
かかる状況に鑑みて、本発明は、ボルトに異常な力がかかっていることが早期に現場で発見できる安価な軸力可視化ボルトを提供することを目的とする。
1)ボルトの先端部もしくは後端部(頭部)の少なくとも一方の端面に、端面の周端面と中央端面を分断する溝。
2)ボルトの先端部もしくは後端部(頭部)の少なくとも一方の端面に、端面の中央端面が刳り貫かれた内空間の内壁に非接触で内空間の底部に固着された棒状体であってボルトと同材質の棒状体。
3)ボルトが受ける軸力に応じて、中央端面もしくは棒状体の自由端と、周端面との間に生じる段差のサイズを拡大して可視化する段差可視化手段。
ここで、ボルトとは、部品と部品を締めつけ固定するための要素のみならず、地山や岩盤内の削孔に挿し込んで使用するロックボルトやグラウンドアンカーを含むものである。ねじが切られた軸部だけのものや、雄ねじが切られた軸部と頭部から成るものがある。ナットで締めたり、雌ねじが切られた穴(タップ)に締め付けて使用する。軸部全てにねじが切られた全ねじタイプ、先端部から特定の長さだけねじが切られた半ねじタイプなど様々なバリエーションがある。
また、通常、ボルトは円形断面をしているので、この断面の中央部を一部、刳り貫いた場合には、溝の形状又は内空間の断面形状は、同じく円形断面が好ましいが、楕円形状、多角形状であっても構わない。
また、棒状体は、溶接して内空間の底部に固着してもよいし、底部に雌ネジを形成し棒状体の端部を雄ネジとして螺着させてもよい。その他、接着剤による接着でもよい。なお、棒状体の形状は、円柱、楕円柱、多角柱、円錐台、楕円錐台、多角錐台等の様々な形状が可能である。
ボルトの軸力が大きくなり、材料が降伏するレベルに達したときに、軸ひずみがおおよそ0.1%になることに鑑みて、自由部位の長さとしては10cm程度設ける。自由部位の長さが10cmの場合には、自由部位の周囲を取り囲む周壁部に軸力が加わった際に生じる軸ひずみがその0.1%、すなわち10cm×0.001=0.1mmになる。この0.1mmという段差変位を確実に表現できるようにする。更に、段差変位が0mmから0.1mmに増大していく過程が段階的に可視化できればより好ましい。
なお、ボルトに軸力(引張力)が加わり、軸ひずみによりボルトが伸びる場合、ナットが取付けられている箇所からボルトの軸方向に引っ張られることになる。すなわち、厳密にいうと、自由部位の長さは、溝の深さや内空間の深さから、ボルトの端からナットが取り付けられている箇所までの距離を差し引いたものになる。
本発明の軸力可視化ボルトにおけるボルトは、ロックボルト又はグラウンドアンカーの後端部に接続される継手を介して、ロックボルトの後端部に接続されるものでもよい。あるいは、本発明の軸力可視化ボルトにおけるボルトは、ロックボルト又はグラウンドアンカーの後端部に螺合し得るものでもよい。
本実施例の軸力可視化ボルトは、ボルトの先端部もしくは後端部(頭部)の少なくとも一方の端面に、端面の周端面と中央端面を分断する溝が形成されている。
すなわち、本実施例の軸力可視化ボルトは、ボルトの先端部の端面に、周端面と中央端面を分断する溝が形成されているパターンと、ボルトの後端部(頭部)の端面に、周端面と中央端面を分断する溝が形成されているパターンと、ボルトの先端部と後端部(頭部)の両方の端面に、それぞれの周端面と中央端面を分断する2つの溝が形成されているパターンの3態様がある。
図1(2)は、図1(1)における軸力可視化ボルト2のA-A断面図を示している。溝23の深さは、上述の如く、その変形差を読み取ることが困難でない程度に、また、ボルト本体の耐圧に影響が現れる懸念が無い程度に、ボルトの全長に応じて所定の深さに適宜設計されるものであるが、図示では、ボルトの全長の約1/2程度の深さの溝となっている。
図2(2)は、図2(1)における軸力可視化ボルト20のB-B断面図を示している。溝23の深さは、上述の如く、その変形差を読み取ることが困難でない程度に、また、ボルト本体の耐圧に影響が現れる懸念が無い程度に、ボルトの全長に応じて所定の深さに適宜設計されるものであるが、図示では、ボルトの全長の約1/2程度の深さの溝となっている。
図3(3)は、図3(1)及び(2)における軸力可視化ボルト200のC-C断面図を示している。溝23の深さは、上述の如く、その変形差を読み取ることが困難でない程度に、また、ボルト本体の強度に影響が現れる懸念が無い程度に、ボルトの全長に応じて所定の深さに適宜設計されるものであるが、図示では、2つの溝を合せると、ボルトの全長の約2/3程度の深さの溝となっている。ボルト先端の中央端面21aから円筒の溝23でボルト本体から一部分断されたボルト内部に至る部位は、ボルトが受ける軸力が伝達されない自由部位21を形成する。また、ボルト後端部(頭部)の中央端面26aから円筒の溝23でボルト本体から一部分断されたボルト内部に至る部位は、ボルトが受ける軸力が伝達されない自由部位26を形成する。ボルト先端の周端面22aからボルト本体の部位は、ボルトが受ける軸力が伝達される軸力作用部位22のまま維持される。また、ボルト後端部(頭部)の周端面27aからボルト本体に至る部位は、ボルトが受ける軸力が伝達される軸力作用部位27のまま維持される。
ここで、構造物の一面側30と他面側31の距離がD1とする。例えば、捻じれや横ズレや横方向の圧縮など、構造物に応力が加わると、構造物の一面側30と他面側31の距離が離れることになり、距離D1がD2に変化する(ここで、D1<D2)。その場合、ナット3とボルト後端部(頭部)25によって、ボルト全体が引張力を受けることになり、ボルトが変形して軸方向に伸びることになる。このボルトが受ける軸力は、ボルトの周囲の軸力作用部位22には伝達されるが、溝23で分断されているボルト内部の自由部位21には伝達されない。自由部位21には軸力が伝達されないため、その部分だけは変形しないことになる。これによって、変形する部分と自由部位21の変形差が生じることになり、中央端面21aと周端面22aの間には段差Lが生じることになる。
ここで、プレート4が反り上がると、それまで見えなかったプレートの背面またはプレートが重なっていた部位の面が見えることになるので、プレートの背面やプレートが重なっていた部位の面に、光を効率よく反射する塗料、例えば、再帰性反射材を利用した塗料を、あらかじめ塗布しておくことにより、トンネルなど暗い現場において、懐中電灯で照らすと、プレートの反りがより明瞭に視認でき、危険度合を把握することができる。
ミラープレート40の材質としては、比較的安価なアルミ箔を用いることが可能である。
図12に示すように、本実施例の段差可視化手段では、中央端面21aの外縁部に設けられた支持部21b、周端面22aの内縁部に設けられた支持部22b及び指針付き回転体9を用いる。指針付き回転体9は、円柱形状を呈しており、一方の端面には指針9aが設けられている。支持部(21b,22b)は、指針付き回転体9を支持し得る構造を有していればよく、例えば、棒状体でもよいし、直方体形状でもよい。
図12(1)及び(2)に示すように、指針付き回転体9は、支持部(21b,22b)によって挟持されており、支持部(21b,22b)が上下に摺動することで、正面視上、指針付き回転体9が回転し、同時に指針9aの角度も変位する構造となっている。
図13に示すように、本実施例の段差可視化手段では、中央端面21aの中央に設けられた支持部21c、周端面22aの一部に設けられた直方体形状の支持部22c及びプレート4bを用いる。支持部21cの上には支持プレート21dが固着して設けられている。プレート4bは、支持プレート21d及び支持部22cによって挟持されており、支持部22cとは、接着力の低い接着剤(図示せず)で接着されているが、支持プレート21dとは接着されていない。かかる構成とは異なり、プレート4bを支持プレート21dと接着力の低い接着剤で接着し、支持部22cとは接着されていない構成としてもよい。
図14は、アルミニウム、銅、焼入鋼及びポリプロピレン(ファイル)についての、微小変位に対するたわみ角の変化のグラフを示している。横軸は変位(mm)を表し、縦軸はたわみ角(°)を表している。
実験に用いたプレートのサイズは、72mm×12mmであり、厚さは0.1mmである。また、下記表1は各素材のヤング率(GPa)を表している。なお、ヤング率とは、弾性範囲における応力とひずみの比例関係を表す比例係数のことである。
図14に示すように、ヤング率の低いポリプロピレンが最もたわみ角が大きくなっており、以下、アルミニウム、銅、焼入鋼の順となっている。以上より、ヤング率の低い柔らかい素材をプレートとして用いた場合の方が、たわみ角が大きくなっていることが確認できる。
図15に示すように、0.15mmまでの微小変位であれば、実施例2、実施例4、実施例1、実施例5の順に変化が大きく有効的であるといえる。
図16及び図17は実施例7の軸力可視化ボルトの構成模式図を示している。図16は丸ワッシャを用いなかった場合、図17は丸ワッシャを用いた場合を示している。
図16(2)に示すように、軸力可視化ボルト2に軸力65がかかり、伸び変位66が発生すると、軸力作用部位22には、ボルトが受ける軸力が伝達されるが、自由部位21には、ボルトが受ける軸力が伝達されないため、実施例1と同様に、ボルト先端の周端面と中央端面に段差が生じる。中央端面が下に下がった場合、プレート4は中央端面と固着されているため、周端面によってプレート周辺が反り上がる。
図19に示すように、ロックボルト71は、掘削された直径数cmの穴に挿入され、この余空間にセメントグラウト72が注入され、セメントグラウト72が固化した後に、トンネル周辺地山に変形が生じると、ロックボルト71がその変形を抑制する効果を発揮する。露出している端部にはフェイスプレート74とナット75が装着され、表面での変位抑制効果を確実なものにしている。図中の矢印に示すように、ロックボルト71が打設された地山に変形が生じると、ロックボルト71の奥の健全領域73bで固定されているために、手前の緩み領域73aの地山が矢印方向に押し出されるのをフェイスプレート74で受け止めることになる。
図20は、軸力可視化ボルト77が、ロックボルト71にカプラ76を介して連結されるパターンを3つ示している。軸力可視化ボルト77は、通常のロックボルトの一部として使用される。図20(1)では、10~30cm程度の自由部位を有する軸力可視化ボルト77がカプラ76で全長数mのロックボルト71と連結する様子を示している。この場合、軸力可視化ボルト77の部分は、セメントグラウト72との定着がない状態にするため、低い荷重でも軸力可視化ボルト77は伸びることになる。
また、図20(2)では、図20(1)の場合よりも、変形量を大きくして可視化しやすくするために、軸力可視化ボルトの長さを1~4mにして、変形量を大きくする。ロックボルトとしての定着長は2m程度必要なので、全長4mのロックボルトなら軸力可視化ボルトの長さは2m、全長6mのロックボルトなら軸力可視化ボルトの長さは4mとすることが可能である。そして、軸力可視化ボルトの長さをロックボルトの全長の80~90%にする場合は、図20(3)のように、アンカー部78を設けることも可能である。
2,20,77,200 軸力可視化ボルト
3,62,75 ナット
4,4b プレート
4a プレート留め具
5 ダイヤルゲージ
5a 測定子
5b ゲージ固定治具
6 L型プレート
6a 固着部
6b 非固着部
7 光源部
7a~7c 光路
8 受光板
9 指針付き回転体
9a 指針
21,26 自由部位
21a,26a 中央端面
21b,21c,22b 支持部
21d 支持プレート
22,27 軸力作用部位
22a,27a 周端面
23 溝
25,28,29 後端部(頭部)
40 ミラープレート
60 反力壁
61 鋼材プレート
63 角プレート
64 溶接部
65 軸力
66 伸び変位
67 丸ワッシャ
70 トンネル内壁面
71 ロックボルト
72 セメントグラウト
74 フェイスプレート
76 カプラ
78 アンカー部
A 支点
B 力点
C 作用点
D1,D2 距離
E,F 矢印
H 拡大段差
L 段差
R 回転方向
Claims (13)
- ボルトの先端部もしくは後端部(頭部)の少なくとも一方の端面に、
前記端面の周端面と中央端面を分断する溝、又は、前記端面の中央端面が刳り貫かれた内空間の内壁に非接触で内空間の底部に固着された棒状体であってボルトと同材質の前記棒状体、の何れかと、
ボルトが受ける軸力に応じて前記中央端面もしくは前記棒状体の自由端と前記周端面との間に生じる段差のサイズを拡大して可視化する段差可視化手段、
を備えたことを特徴とする軸力可視化ボルト。 - 前記段差可視化手段は、前記中央端面又は前記棒状体を力点側とし、前記周端面の内壁周縁を支点とし、梃子により移動する作用点側で前記段差のサイズを拡大して可視化することを特徴とする請求項1に記載の軸力可視化ボルト。
- 前記段差可視化手段は、前記端面の周端面と当接し、前記中央端面又は前記棒状体に固着されたプレートを備え、前記段差のサイズを拡大させた変位である前記プレートの周縁の変位を検知することを特徴とする請求項2に記載の軸力可視化ボルト。
- 前記段差可視化手段は、梃子により移動する作用点側の変位を計測するダイヤルゲージであって、変位の大きさに応じた色分けが表示盤に施された前記ダイヤルゲージを備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載の軸力可視化ボルト。
- 前記プレートがミラープレートであり、該ミラープレートの変化を、光の反射光の変位から検知することを特徴とする請求項3に記載の軸力可視化ボルト。
- 前記プレートがアルミ箔であり、該アルミ箔の変化を、光の反射光の変位から検知することを特徴とする請求項3に記載の軸力可視化ボルト。
- 前記段差可視化手段は、前記溝の中央端面側の側壁又は前記棒状体の側壁の全周もしくは一部に固着され、前記端面で外側に屈曲して前記端面の周端面と当接するプレートを備え、該プレートの周縁の変位が前記段差のサイズを拡大させた変位であることを特徴とする請求項2に記載の軸力可視化ボルト。
- 前記段差可視化手段は、前記中央端面と前記周端面との間に設けられた前記溝、又は、前記棒状体と前記内空間との隙間に設けられる球体もしくは円柱体を備え、前記球体もしくは円柱体に指針が取り付けられ、前記段差の発生により前記球体もしくは円柱体が回転することにより、前記指針の変位が前記段差のサイズを拡大して可視化することを特徴とする請求項1に記載の軸力可視化ボルト。
- 前記段差可視化手段は、前記ボルトの前記端面の外側に設けられた基準端面の内縁を力点側とし、前記周端面の外壁周縁を支点とし、梃子により移動する作用点側で前記段差のサイズを拡大して可視化することを特徴とする請求項1に記載の軸力可視化ボルト。
- 前記溝の深さ又は内空間の深さは、前記ボルトの軸方向の長さの9/10以下、かつ、前記端面の周端面から10cm以上であることを特徴とする請求項1~9の何れかに記載の軸力可視化ボルト。
- 前記ボルトは、ロックボルト又はグラウンドアンカーであり、前記ロックボルト又はグラウンドアンカーの後端部側に、前記溝又は前記棒状体が設けられることを特徴とする請求項1~10の何れかに記載の軸力可視化ボルト。
- 前記ボルトは、ロックボルト又はグラウンドアンカーの後端部に接続される継手を介して、前記ロックボルト又はグラウンドアンカーの後端部に接続されることを特徴とする請求項1~10の何れかに記載の軸力可視化ボルト。
- 前記ボルトは、ロックボルト又はグラウンドアンカーの後端部に螺合し得ることを特徴とする請求項1~10の何れかに記載の軸力可視化ボルト。
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