JP7113720B2 - γ-アミノ酪酸捕集剤 - Google Patents
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Description
かかる吸着剤は、酸処理の程度が調整されて得られたジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理物が、茶葉に含まれるアミノ酸の一種であるテアニンを、含テアニン水溶液から有効に吸着し得るという知見に基づいてなされたものであり、酸処理されていないジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土(所謂、酸性白土)、高度に酸処理されたジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土(所謂、活性白土)、或いはシリカなどと比較しても、より効果的にテアニンの水溶液からテアニンを吸着し得るものである。
窒素吸着法により測定されるBET比表面積の値が10m2/g以上の範囲にあること、
が好適である。
前記γ-アミノ酪酸水溶液に、前記のγ-アミノ酪酸捕集剤を混合することにより、該γ-アミノ酪酸捕集剤にγ-アミノ酪酸を吸着せしめ、
次いで、固液分離により、γ-アミノ酪酸が吸着されているγ-アミノ酪酸捕集剤を回収し、
回収されたγ-アミノ酪酸捕集剤を、水及び/又は有機溶媒と混合し、該捕集剤からγ-アミノ酪酸を溶出させてγ-アミノ酪酸溶液を得ること、
を特徴とするγ-アミノ酪酸の捕集方法が提供される。
(1)前記水及び/又は有機溶媒は、6~12のpH(25℃)を有していること、
(2)発酵法で合成したGABA含有液を用いて、前記γ-アミノ酪酸を調製すること、
が好適である。
本発明では、このような親水性を示す多孔質無機材料を、γ-アミノ酪酸の水溶液中に投入して混合することにより、該溶液中のγ-アミノ酪酸を有効に吸着することができる。
また、本発明の吸着剤は、濾過性も高く、吸着処理後の溶液から容易に分離することができる。即ち、所定のBET比を満足している限り、そのまま、γ-アミノ酪酸の捕集剤として使用することができる。
γ-アミノ酪酸の水溶液中からγ-アミノ酪酸を吸着した本発明の捕集剤は、固液分離した後、水及び/又は有機溶媒中に投入し、適宜撹拌・振とうすることにより、容易に吸着されているγ-アミノ酪酸を放出し、これにより、γ-アミノ酪酸を水溶液の形で捕集することができる。
本発明において、γ-アミノ酪酸の捕集に使用する多孔質無機材料は、水蒸気吸着法により測定されるBET比表面積(A)と窒素吸着法により測定されるBET比表面積(B)との比(A/B)が0.1以上、特に0.2以上のものである。このBET比が大きい程、水蒸気吸着量が大きいということであり、親水性が増大していることを意味する。即ち、上記でも説明したように、このようなBET比を有する多孔質無機材料は、水溶性であるγ-アミノ酪酸を溶液中に存在している状態で捕集、即ち、吸着することができる。例えば、BET比が上記範囲よりも小さい場合には、この多孔質無機材料の親水性が乏しいため、水溶液中に存在しているγ-アミノ酪酸を吸着できず、効率よく捕集することができない。
SiO2;50~75質量%
Al2O3;11~25質量%
Fe2O3;2~20質量%
MgO;2~7質量%
CaO;0.1~3質量%
Na2O;0.1~3質量%
K2O;0.1~3質量%
その他の酸化物(TiO2等);2質量%以下
Ig-loss(1050℃);5~11質量%
かかる酸処理は、酸水溶液中にスメクタイト系粘土を投入し、混合攪拌することにより行われる。酸処理に用いる酸水溶液は、特に限定されるものではないが、コスト、環境への影響等の観点から硫酸水溶液が一般に使用される。このような酸処理によって、スメクタイト系粘土中のNa分やCa分が取り除かれ、さらに、酸処理の進行に伴ってAl分やMg分が溶出し、表面積や細孔が増大し、BET比表面積の増大がもたらされるものである。
R=Sm/Mm (1)
式中、Smは、SiO2換算でのシリカ成分の含有量(質量%)であり、
Mmは、MgO換算でのマグネシア成分の含有量(質量%)である、
で表される質量比(R)が0.1≦R≦3.5となる割合で含有していることが好適である。
即ち、シリカとマグネシアとが上記の量比で存在していることにより、複合一体化した状態が安定に保持される。例えば、上記の質量比(R)が3.5を超える場合或いは0.1未満の場合、シリカ或いはマグネシアの脱落を生じ易く、このため、γ-アミノ酪酸に対する捕集性が不安定となり、バラツキを生じ易くなるからである。
尚、シリカ(A)とマグネシアもしくはその水和物(B)との量比は、前述した式(1)で表される質量比(R)が0.1~3.5となるように設定すればよい。
尚、傾向として、シリカの含有量が多くなるに従い、親水性が増大し、BET比が増大し、シリカの含有量が少ないとBET比が低下するする傾向がある。従って、この点を考慮して、予めラボ実験を行い、上記の質量比(R)を設定して所定のBET比を満足するシリカマグネシアを得ることができる。
また、マグネシアもしくはその水和物(B)としては、結晶子の小さく且つ経時による炭酸化が進んでいないものがよい。例えば、BET比表面積が2m2/g以上、好ましくは20m2/g以上、特に好ましくは50m2/g以上であるマグネシア粉末が使用される。
また、温度やスラリーの仕込み容量等によっても異なるが、少なくとも0.5時間かけて均質混合及び熟成を行うことが必要である。また、温度が高いほど、ナノ粒子の流動性が高くなり効率よく均質化するため、より短時間で行うことができる。一般には、1~24時間、特に3~10時間程度かけて混合及び熟成が行われる。
また、後述するγ-アミノ酪酸脱離時の液のpH調整などのために、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、かんすい、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどのpH調整剤を、γ-アミノ酪酸の捕集性に悪影響を与えない限り、混合して使用することもできる。
本発明においては、発酵法で合成したGABA含有液に代表される含γ-アミノ酪酸物質から水を用いてγ-アミノ酪酸を抽出し、このγ-アミノ酪酸の水溶液に、前述した多孔質無機材料を投入し、混合撹拌することにより、γ-アミノ酪酸を捕集することができる。
即ち、γ-アミノ酪酸は水溶性であると共に、前述したように、用いる多孔質無機材料は水に対する親和性が高い。このため、溶液中に存在しているγ-アミノ酪酸は、溶液中から多孔質無機材料側に容易に移行し、この結果、γ-アミノ酪酸を効果的に吸着して捕集することができる。
尚、興味深いことは、活性炭(BET比が著しく小さい)を用いた場合には、γ-アミノ酪酸を吸着するが、本発明における多孔質無機材料とは異なり、γ-アミノ酪酸の脱離量は極めて少なくなっていることである。恐らく、活性炭の場合には、親水性が著しく低いために水が活性炭中に侵入し難くγ-アミノ酪酸が放出されないのではないかと考えられる。
また、本発明においては、多孔質無機材料としてジオクタヘドラル型スメクタイト或いはその酸処理物を用いた場合は、脱離工程で用いる溶液のpHが高い程γ―アミノ酪酸をより多く放出することができ、好適にはpH6~12の範囲にあるものが使用される。
γ―アミノ酪酸はアミノ酸であり、水溶液中では、陽イオン、双性イオンおよび陰イオンが平衡状態にあり、水溶液中のpH変化にしたがって平衡移動を生じる。
上記の吸着剤を水溶液中に添加させるとpHは低下し、γ―アミノ酪酸の平衡は陽イオンに移行する。このγ―アミノ酪酸の陽イオンが吸着剤の有する負電荷により補足されることで吸着される。次に脱離において高pHの溶液にγ―アミノ酪酸捕集剤を混合させると、γ―アミノ酸が陰イオンに平衡移動することで、γ―アミノ酪酸を脱離用液側に溶出させているのではないかと考えられる。
即ち、このγ-アミノ酪酸濃度が上記範囲にあるものを使用することにより、γ-アミノ酪酸をγ-アミノ酪酸捕集剤に効率よく吸着することができる。また、前記濃度が、過度に高いものは、γ-アミノ酪酸の抽出を行うことはできても、吸着剤を過度に投入しなければならず、固液分離することが困難となる。さらに、前記濃度が上記範囲よりも低いものは、廃水量が過度に多くなる恐れがあり、本発明では使用することが望ましくない。
即ち、このpHが上記範囲にあるものを使用することにより、γ-アミノ酪酸が吸着されているγ-アミノ酪酸捕集剤からγ-アミノ酪酸を溶出することができる。また、pHが、過度に高いものは、γ-アミノ酪酸の抽出を行うことはできても、γ-アミノ酪酸捕集剤自体が溶解してしまいこの回収が困難となる。さらに、pHが上記範囲よりも低いものは、γ-アミノ酪酸溶出が困難で、本発明では使用することができない。
水
エタノール
また、上記範囲のpH調整のため、以下の物質を適宜用いることができる。
水酸化ナトリウム
水酸化カリウム
炭酸ナトリウム
炭酸水素ナトリウム
炭酸カリウム
かんすい
酸化マグネシウム
酸化カルシウム
本発明においては、取扱いが容易であり、且つ容易に入手できることから、水酸化ナトリウムが好適に使用される。
さらに、茶葉の代わりに野菜類、穀類も利用可能であり、これらを嫌気的に処理してγ-アミノ酪酸含量を増加させたものも利用することができる。
固液分離された多孔質無機材料は、例えば、多孔質無機材料1g当り6ml以上の水及び/又は有機溶媒中に投入し、超音波振動等により撹拌処理することにより、多孔質無機材料に吸着保持されているγ-アミノ酪酸を前記溶媒中に溶出することができる。前記溶媒中に捕集されたγ-アミノ酪酸は、加熱等により濃縮することにより捕集され、サプリメントや食品等の用途に使用される。
また、γ-アミノ酪酸を多孔質無機材料で吸着して捕集した後、多孔質無機材料からγ-アミノ酪酸を溶出させるという手段を用いることにより、高純度のγ-アミノ酪酸を捕集することができることも、本発明の大きな利点である。
日本ベル株式会社製BELSORPを用いて水蒸気吸着法により測定を行ない、BET法により算出した。なお、前処理は150℃で2時間行った。
マイクロメリティクス社製TriStar 3000を用いて窒素吸着法により測定を行い、BET法により算出した。なお、前処理は150℃で2時間行った。
先ず、γ-アミノ酪酸(東京化成工業(株)製)を純水に溶かし、0.02質量%濃度のγ-アミノ酪酸溶液を得た。
次に遠心分離機((株)クボタ製7780II)により遠心加速度10000rpmで10分処理した液の上澄みをメンブレンフィルター(ADVANTEC製A045A025A)で濾過した液(試料液)を得た。試料液の190nm波長光の吸光度を分光光度計((株)島津製作所製UV―2600)により測定した。このとき、吸着剤の溶解性塩類等の影響を差し引くため、あらかじめγ-アミノ酪酸未溶解の純水30gに同重量の吸着剤を加えて同様の操作をしたときの吸光度を試料液の吸光度から差し引き、試料液の補正吸光度とした。そして、予め作成したγ-アミノ酪酸濃度と190nm波長光の吸光度の関係を示す検量線を用いて試料液のγ-アミノ酪酸残存量を算出し、吸着剤添加前のγ-アミノ酪酸量から差し引いた値をγ-アミノ酪酸吸着量とした。
尚、イオン交換水のpHは、東亜ディーケーケー製pHメーターHM-30Rを用い、25℃で測定した。
次に遠心分離機((株)クボタ製7780II)により遠心加速度10000rpmで10分処理した液の上澄みをメンブレンフィルター(ADVANTEC製A045A025A)で濾過した液(試料液)を得た。上記吸着試験と同様の操作により、補正吸光度を測定し、試料液中のγ-アミノ酪酸量を測定した。このγ-アミノ酪酸量から残存していた吸着試験液由来のγ-アミノ酪酸量を差し引いた値をγ-アミノ酪酸脱離量とした。
γ-アミノ酪酸溶液の濃度を0.4質量%、吸着剤を5.0gにした以外は試験(I)と同様にして、γ-アミノ酪酸吸着試験およびγ-アミノ酪酸脱離試験を行った。
γ-アミノ酪酸溶液の濃度を30.0質量%にした以外は試験(I)と同様にして、γ-アミノ酪酸吸着試験を行い、試料液回収後に残った吸着剤に、75質量%硫酸でpH2に調製した水溶液30gを添加し、あとは試験(I)と同様にしてγ-アミノ酪酸脱離試験を行った。
また、pH2の水溶液に代えてイオン交換水を用いたパターン、pH2の水溶液に代えて0.1N水酸化ナトリウム水溶液でpH10に調製した水溶液を用いたパターンでもそれぞれγ-アミノ酪酸脱離試験を行った。
尚、各水溶液のpHは、東亜ディーケーケー製pHメーターHM-30Rを用い、25℃で測定した。
吸着剤として市販のジオクタへドラル型スメクタイト(水澤化学工業(株)製酸性白土)を用い、試験(I)および(II)を行った。
山形県鶴岡市産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を110℃で乾燥し、粉砕し、さらに分級して粘土粉末を得た。ビーカーに5質量%硫酸水溶液220mlを採り、90℃に加熱した。そこへ粘土粉末30gを添加し、液温90℃に維持した状態で撹拌し、30分間酸処理を行った。酸処理終了後、酸処理物を水でろ過洗浄し、洗浄後のろ過ケーキを110℃で乾燥し、粉砕し、さらに分級して弱酸処理白土粉末を得た。当該弱酸処理白土粉末を用い、試験(I)を行った。
市販のジオクタへドラル型スメクタイトの酸処理物(a)(水澤化学工業(株)製活性白土)を用い、試験(I)、(II)および(III)を行った。
水澤化学工業(株)製シリカマグネシア製剤を用い、試験(I)を行った。
水澤化学工業(株)製シリカゲルを用い、試験(I)および(III)を行った。
市販のジオクタへドラル型スメクタイトの酸処理物(b)(水澤化学工業(株)製活性白土)を用い、試験(II)を行った。
市販のジオクタへドラル型スメクタイトの酸処理物(c)(水澤化学工業(株)製活性白土)を用い、試験(II)を行った。
新潟県胎内市産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土2000kgを80℃に加熱した5質量%硫酸水溶液1700lに添加し、液温80℃~85℃で撹拌し、30分間酸処理を行った。酸処理終了後、酸処理物を水洗し、150℃で乾燥し、粉砕し、さらに分級して弱酸処理白土粉末を得た。当該弱酸処理白土粉末を用い、試験(II)を行った。
市販の活性炭粉末を用い、試験(I)、(II)および(III)を行った。
Claims (5)
- 水蒸気吸着法により測定されるBET比表面積(A)と窒素吸着法により測定されるBET比表面積(B)との比(A/B)が0.1以上の範囲にある多孔質無機材料からなり、前記多孔質無機材料が、ジオクタヘドラル型スメクタイトもしくは、ジオクタヘドラル型スメクタイトの酸処理物、シリカ、シリカマグネシア、スチブンサイト或いはケイ酸マグネシウムであることを特徴とするγ-アミノ酪酸溶液からのγ-アミノ酪酸捕集剤。
- 窒素吸着法により測定されるBET比表面積の値が10m2/g以上の範囲にある請求項1に記載のγ-アミノ酪酸捕集剤。
- 濃度0.02~30.0質量%のγ-アミノ酪酸水溶液を調製し、
前記γ-アミノ酪酸水溶液に、請求項1または2に記載のγ-アミノ酪酸捕集剤を混合することにより、該γ-アミノ酪酸捕集剤にγ-アミノ酪酸を吸着せしめ、
次いで、固液分離により、γ-アミノ酪酸が吸着されているγ-アミノ酪酸捕集剤を回収し、
回収されたγ-アミノ酪酸捕集剤を、水及び/又は有機溶媒と混合し、該捕集剤からγ-アミノ酪酸を溶出させてγ-アミノ酪酸溶液を得ること、
を特徴とするγ-アミノ酪酸の捕集方法。 - 前記水及び/又は有機溶媒は、6~12のpH(25℃)を有している請求項3に記載のγ-アミノ酪酸の捕集方法。
- 発酵法で合成したγ-アミノ酪酸含有液を用いて、前記γ-アミノ酪酸水溶液を調製する請求項3または4に記載の捕集方法。
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