JP7109757B2 - 海馬機能を評価するための資料の作成方法および海馬機能評価システム - Google Patents

海馬機能を評価するための資料の作成方法および海馬機能評価システム Download PDF

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Description

本発明は、海馬機能を評価するための資料の作成方法および海馬機能評価システムに関する。
従来より、海馬は、学習と記憶に重要な役割を果たすことが知られており、その機能についての様々な研究が行われている。
そして、本発明者は、1)交通事故、転倒・転落事故等によるびまん性軸索損傷、2)心筋梗塞や脳卒中による低酸素脳症、3)一酸化炭素中毒などにより引き起こされた高次脳機能障害、などに対する診断法および治療法を確立することを目的として研究を進め、被験者の海馬機能を評価するための新しい方法を確立している(特許文献1)。
具体的には、特許文献1の方法は、テストアイテム(例えば絵の描かれたカードなど)を被験者に順次提示する試行を行い、被験者に提示されたテストアイテムが、(A)初めて提示されたテストアイテム、(B)従前の試行で提示されたテストアイテムと類似する別種のテストアイテム、(C)従前の試行で提示されたことがあるテストアイテムと同一のテストアイテム、のうちのいずれであるかを回答させる。そして、その回答結果の正誤を集計することで被験者の海馬機能を評価するものである。この方法によれば、機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)などの高価な装置を利用しなくても、被験者の海馬に疾患または損傷が生じている否かや新生神経細胞の状態、放射線治療後の認知機能の回復経過、内分泌系代謝疾患、糖尿病、肥満患者の認知能力(海馬新生機能)を簡便に評価することができる。
特開2015-195835号公報
しかしながら、特許文献1の方法は、被験者への試行に対する回答結果の正誤を集計して得た数値から海馬機能を評価するものであるため、簡便ではあるものの、より直接的に精度よく海馬機能を検査、評価することができる方法を確立することが望まれていた。
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、fMRIなどの大がかりな装置を必要とせず、簡便かつ精度よく被験者の海馬機能を評価することができる資料の作成方法および海馬機能の評価システムを提供することを課題としている。
本発明は、被験者の海馬機能を評価可能な資料の作成方法であって、
被験者に対し、以下の工程:
複数のテストアイテムを被験者に順次提示する試行を繰り返し行う試行工程;
前記試行工程における各試行の終了後、被験者にその試行で提示されたテストアイテムが、以下の(A)~(C)のパターン、
(A)初めて提示されたテストアイテム
(B)従前の試行で提示されたテストアイテムと類似する別種のテストアイテム
(C)従前の試行で提示されたことがあるテストアイテムと同一のテストアイテム
のうちのいずれであるかを回答させる回答工程;および
前記試行工程で提示したテストアイテムと前記回答工程で得られた回答結果とを比較して各試行に対する回答結果の正誤を判定する正誤判定工程
を含む課題試験を行うとともに、この課題試験中の被験者の脳波データを取得し、
前記課題試験において、前記(B)のパターンであると回答すべき試行に対して正答した際の被験者の脳波データを抽出することを特徴としている。
この資料の作成方法では、脳波データは、ERP波形または時間周波数のうちの少なくともいずれかであることが好ましい。
本発明の海馬機能評価システムは、課題試験実施装置と、脳波測定装置と、海馬機能評価装置とを含む海馬機能評価システムであって、
前記課題試験実施装置は、
複数のテストアイテムを被験者に順次提示する試行を繰り返し実行するためのテストアイテム提示手段と、
各試行で提示するテストアイテムをテストアイテム提示手段に出力するテストアイテム出力手段と、
各試行の終了後、被験者が各試行で提示されたテストアイテムが、以下の(A)~(C)のパターン、
(A)初めて提示されたテストアイテム
(B)従前の試行で提示されたテストアイテムと類似する別種のテストアイテム
(C)従前の試行で提示されたことがあるテストアイテムと同一のテストアイテム
のうちのいずれであるかについての回答結果を入力する回答結果入力手段と、
回答結果入力手段を介して入力された回答結果を記憶する回答結果記憶手段と、
前記テストアイテム出力手段によって出力された各試行におけるテストアイテムと、前記回答結果記憶手段に記憶された回答結果とを比較して、各試行に対する回答結果の正誤を判定する正誤判定手段と、
を含み、
前記脳波測定装置は、前記課題試験実施装置による課題試験中の被験者の脳波データを取得可能であり、
前記海馬機能評価装置は、前記課題試験実施装置による回答結果と、前記脳波測定装置によって取得された脳波データとを処理し、前記課題試験において前記(B)のパターンであると回答すべき試行に対して被験者が正答した際の脳波の変化を検知可能であることを特徴としている。
本発明の資料の作成方法によれば、fMRIなどの大がかりな装置を必要とせず、簡便かつ精度よく被験者の海馬機能を評価可能な資料を得ることができる。本発明の海馬機能の評価システムによれば、簡便かつ精度よく被験者の海馬機能を評価することができる。
図1(A)は、健常者のLure課題平均正答率を示す図であり、図1(B)は、健常者のLure課題平均反応時間を示す図である。 図2(A)は、前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図2(B)は、前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。 図3(A)は、右顔面部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図3(B)は、右顔面部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。 図4(A)は、左顔面部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図4(B)は、左顔面部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。 図5(A)は、症例1(治療前)のLure課題に対する正答率を示す図であり、図5(B)は、症例1(治療前)前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図5(C)は、症例1(治療前)前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。 図6(A)は、症例1(memantine 1日5mgで106日間+tDCS 2mA,30分間,10セッション治療直後)のLure課題に対する正答率を示す図であり、図6(B)は、症例1(memantine 1日5mgで106日間+tDCS 2mA,30分間,10セッション治療直後)の前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図6(C)は、症例1(memantine 1日5mgで106日間+tDCS 2mA,30分間,10セッション治療直後)前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。 図7(A)は、症例1(tDCS治療3カ月経過)のLure課題に対する正答率を示す図であり、図7(B)は、症例1(tDCS治療3カ月経過)の前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図7(C)は、症例1(tDCS治療3カ月経過)前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。 図8は、言語刺激を用いた記憶検査(HVLT-R)の結果を示す図である。 図9(A)は、症例2(術前)のLure課題に対する正答率を示す図であり、図9(B)は、症例2(術前)の前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図9(C)は、症例2(術前)の前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。 図10(A)は、症例2(術後)のLure課題に対する正答率を示す図であり、図10(B)は、症例2(術後)の前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図10(C)は、症例2(術後)の前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。 図11は、実施例2で使用した海馬機能評価システムの構成の概要を示した図である。 図12は、被験者に対するアクティブ電極の配置を示した概要図である。 図13は、健常被験者7名のLure課題正答時、Same課題正答時、New課題正答時、それぞれを加算したERPを示した図である。 図14は、両側海馬硬化症疑いの症例のERP波形を示した図である。 図15は、健常者の時間周波数解析の結果を示した図である。 図16は、海馬硬化症疑いの症例に対する課題実施時の時間周波数解析の結果を示した図である。
以下、本発明の資料の作成方法の一実施形態について説明する。本発明の資料の作成方法は、被験者の海馬機能を評価可能な資料を得るものである。なお、本発明において「海馬」には、歯状回が含まれる。
本発明の資料の作成方法では、被験者に対し所定の課題試験を行うとともに、この課題試験中の被験者の脳波データを取得する。
課題試験の実施については特許文献1の記載を踏まえることができる。
具体的には、課題試験は、以下の工程:
複数のテストアイテムを被験者に順次提示する試行を繰り返し行う試行工程;
前記試行工程における各試行の終了後、被験者にその試行で提示されたテストアイテムが、以下の(A)~(C)のパターン、
(A)初めて提示されたテストアイテム
(B)従前の試行で提示されたテストアイテムと類似する別種のテストアイテム
(C)従前の試行で提示されたことがあるテストアイテムと同一のテストアイテム
のうちのいずれであるかを回答させる回答工程;および
前記試行工程で提示したテストアイテムと前記回答工程で得られた回答結果とを比較して各試行に対する回答結果の正誤を判定する正誤判定工程
を含む。
以下、課題試験の各工程について説明する。
試行工程は、複数のテストアイテムを被験者に順次提示する試行を繰り返し行う工程である。
テストアイテムとは、被験者が目視によって図柄などを記憶すべきアイテムをいい、例えば、図柄が表されたカード、立体物、画面上に表された画像などを例示することができる。したがって、被験者にテストアイテムを提示する方法、手段もテストアイテムの種類や被験者の状態などを考慮して適宜設定することができる。
試行工程における試行回数(テストアイテムの提示回数)やテストアイテムの提示時間、各試行間の時間的間隔などは特に限定されず、例えば、試行回数(テストアイテムの提示回数)については、被験者の状態や難易度などを考慮して、例えば30回~150回程度の範囲を例示することができる。
回答工程では、試行工程における各試行の終了後(1回のテストアイテムの提示後)、被験者にその試行で提示されたテストアイテムが、以下の(A)~(C)のパターン、
(A)初めて提示されたテストアイテム、
(B)従前の試行で提示されたテストアイテムと類似する別種のテストアイテム、
(C)従前の試行で提示されたことがあるテストアイテムと同一のテストアイテム
のうちのいずれであるかを回答させる。
すなわち、回答工程において被験者が正答するためには、従前の試行で提示されたテストアイテムの内容(図柄など)をすべて記憶し、現在提示されているテストアイテムとの比較によって、(A)~(C)のパターンを選択して回答する必要がある。したがって、試行回数(テストアイテムの提示数)が増えるに従って、被験者が記憶すべきテストアイテムの種類は増えることになるため回答の難易度は高まることになる。また、テストアイテムの図柄の類似性や、テストアイテムの提示の順番などによっても回答の難易度は変わり得るため、試行工程におけるテストアイテムの提示条件を統一して、予め基準となる健常者の正答率の平均値を得ておくことが好ましい。
以下、便宜的に、(A)初めて提示されたテストアイテムを「New」、(B)従前の試行で提示されたテストアイテムと類似する別種のテストアイテムを「Lure」、(C)従前の試行で提示されたことがあるカードと同一のテストアイテムを「Same」と記載することがある。
回答工程における回答形式は特に限定されず、被験者の口頭での回答を第三者が記録してもよいし、被験者自身に回答用紙に回答を記入させたりすることができるが、回答結果の保存や検討が容易なコンピューターに回答を入力させることが好ましい。
なお、パターン(B)の「類似する別種のテストアイテム」とは、例えば、図柄が表されたテストアイテムの場合では、従前の試行で提示されたテストアイテムの図柄に対して、図柄の一部が欠損または付加されているもの、図柄の外形が同一形状であるが色彩が異なるもの、図柄が左右対称に表されているものなどを例示することができる。正誤判定工程では、試行工程で提示したテストアイテムと回答工程で得られた回答結果とを比較して各試行に対する回答結果の正誤を判定する。回答結果の正誤を判定する方法は特に限定されず、例えば第三者が被験者の回答の正誤を判定してもよいが、コンピューターなどによって自動的に回答の正誤を判定させることが好ましい。
本発明の資料の作成方法では、上記の課題試験中の被験者の脳波データを取得する。
被験者の脳波データを取得する手段は特に限定されない。例えば、脳波データを取得する手段としては、従来知られている機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)、高密度脳波計測装置、簡易脳波計測装置などを例示することができるが、本発明によれば、簡易脳波計測装置によっても簡便かつ精度よく被験者の海馬機能を評価することができるため、例えば、機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)などの高価な装置を有していない施設においても容易に実施することができる。
また、被験者の脳波データの取得は、海馬の電気活動を取得できる右・左顔面部位(特に、左右頬骨突起下部)に電極を配置するなどして、使用する装置のプロトコルなどに従って適宜行うことができる。
さらに、取得される脳波データは、事象関連電位(ERP)によるERP波形または時間周波数のうちの少なくともいずれかの形態であることが好ましい。
そして、本発明の資料の作成方法では、正誤判定工程において、試行工程で順次提示したテストアイテムと回答工程で得られた回答結果とを比較して各試行に対する回答結果の正誤が得られるが、このうち、「(B)従前の試行で提示されたテストアイテムと類似する別種のテストアイテム(Lure)」であると回答すべき試行(以下、「Lure課題」と記載する場合がある)に対して正答した際の被験者の脳波データを抽出する。この脳波データ(脳波の変化)に基づいて海馬機能を評価することができる。
なお、以下、「(A)初めて提示されたテストアイテム(New)」であると回答すべき試行を「New課題」、「(C)従前の試行で提示されたことがあるテストアイテムと同一のテストアイテム(Same)であると回答すべき試行を「Same課題」と記載することがある。本発明者らによれば、上記の課題試験中の被験者から得られた脳波データのうち、New課題、Same課題、Lure課題ごとに加算平均化して得られた事象関連電位(ERP)を解析すると、Lure課題に対して正答した時のみに、1000ms周辺で特徴的な陰性成分が惹起することが確認されている。そして、この1000ms周辺の陰性成分は、New課題やSame課題に正答した際には惹起しないことが確認されている。したがって、被験者がLure課題に正答した際の事象関連電位(ERP)を得ることで、これを海馬機能(海馬神経新生能)のバイオマーカーとすることができる。
さらに、本発明者らによれば、上記の課題試験中の被験者から得られた脳波データの時間周波数分析では、PatterrnSeparationを担うθ帯域(4~6Hz)の特徴的な活動が検出され、右側海馬歯状回、神経幹細胞もしくは前駆細胞のシナプス発火が示唆される。このθ帯域波は、左海馬では生じず、右海馬においてLure課題に対して正答した時のみに特異的に反応していることが確認されたことから、被験者がLure課題に正答した際の時間周波数(特にθ帯域波)を得ることで、これを海馬機能(海馬神経新生能)のバイオマーカーとすることができる。
このように、本発明の資料の作成方法では、特許文献1の方法のように回答結果の正誤を集計して得た数値から海馬機能を評価する必要はなく、課題試験中の被験者の脳波データを取得し、Lure課題に対して正答した際の被験者の脳波データを抽出して資料を得ることができ、脳波の変化から海馬機能を簡便かつ精度よく評価することができる。
また、本発明の方法で得られる資料によれば、必ずしもfMRIなどの高価な装置を使用なくとも、海馬機能に影響する疾患や環境について簡便かつ精度よく評価することができる。具体的には、本発明の方法で得られる資料によれば、脳卒中、頭部外傷、ハンチンソン病、ストレス、うつ病、パーキンソン病、統合失調症、アルツハイマー型認知症などの病態をリアルタイムで簡便に評価することができる。このため、脳の病気の進行の程度、治療効果の判定、鑑別などに有用である。さらに、本発明の海馬機能の評価方法は、肥満患者の認知能力、糖尿病、内分泌代謝疾患の治療や管理などにも有効利用することができる。
次に、本発明の海馬機能評価システムの一実施形態について説明する。
本発明の海馬機能評価システムは、本発明の海馬機能の評価方法を自動化して行うものである。したがって、上記の海馬機能の評価出方法と共通する内容については、説明を一部省略する。
本発明の海馬機能評価システムは、課題試験実施装置と、脳波測定装置と、海馬機能評価装置とを含んでいる。
課題試験実施装置は、テストアイテム提示手段と、テストアイテム出力手段と、回答結果入力手段と、回答結果記憶手段と、正誤判定手段とを含んでいる。
テストアイテム提示手段は、複数のテストアイテムを被験者に順次提示する試行を繰り返し実行するためのものである。具体的には、例えばコンピューターと接続するディスプレイなどを例示することができ、ディスプレイ上に表示される画像によってテストアイテムを表示するができる。 テストアイテム出力手段は、各試行で提示するテストアイテムをテストアイテム提示手段に出力して表示する。テストアイテム出力手段は、予め設定されたテストアイテムの提示パターンを実行するためのシステムやプログラムなどを例示することができる。
回答結果入力手段は、各試行の終了後、被験者がテストアイテム提示手段によって提示されたテストアイテムを確認し、自身の記憶に照らして、以下の(A)~(C)のパターン、
(A)初めて提示されたテストアイテム(New)、
(B)従前の試行で提示されたテストアイテムと類似する別種のテストアイテム(Lure)、
(C)従前の試行で提示されたことがあるテストアイテムと同一のテストアイテム(Same)、
のうちのいずれであるかについて回答を入力するための手段である。具体的な実施形態は特に限定されないが、例えば、ボタンを押して回答を入力する形態や、ディスプレイ(テストアイテム提示手段)上においてタッチパネル形式で入力する形態などを例示することができる。 回答結果記憶手段は、回答結果入力手段を介して入力された回答結果を記憶する記憶媒体(メモリー)などを例示することができ、コンピューターなどに格納されたものであってよい。
正誤判定手段は、テストアイテム出力手段によって出力された各試行におけるテストアイテムと、回答結果記憶手段に記憶された回答結果とを比較して、各試行に対する回答結果の正誤を判定する。例えば、正誤判定手段は、コンピューターに格納されたプログラムによって自動的に回答の正誤を判定することができる。
脳波測定装置は、課題試験実施装置による課題試験中の被験者の脳波データを取得可能であれば特に限定されないが、具体的には、従来知られている機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)、高密度脳波計測装置、簡易脳波計測装置などを例示することができる。
海馬機能評価装置は、課題試験実施装置による回答結果と、脳波測定装置によって取得された脳波データとを処理することができる。そして、海馬機能評価装置は、課題試験実施装置によって実行される課題試験において、(B)のパターン(Lure)であると回答すべき試行(Lure課題)に対して被験者が正答した際の脳波の変化を検知可能である。
具体的には、海馬機能評価装置は、例えば、課題試験中の被験者から得られた脳波データのうち、New課題、Same課題、Lure課題ごとに加算平均化して得られた事象関連電位(ERP)の解析から、Lure課題に対して正答した時の1000ms周辺の陰性成分を基準として、脳波の変化を検知することで海馬神経新生能を評価することができる。
また、海馬機能評価装置は、例えば、課題試験中の被験者から得られた脳波データの時間周波数分析から、Lure課題に対して正答した時のみに特異的に反応する帯域波を基準として、脳波の変化を検知することで海馬神経新生能を評価することができる。
本発明の資料の作成方法、海馬機能の評価システムは、以上の実施形態に限定されることはない。
以下、本発明の資料の作成方法とこれを用いた海馬機能の評価方法等について実施例とともにより詳細に説明するが、本発明の資料の作成方法、海馬機能の評価システムは、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>高密度脳波計を用いた海馬機能の解析
(1)対象および方法
高密度脳波計を用いて計測した患者は110例、健常成人は19例、合計129例であった。健常成人19例のうち、機械的問題による計測の問題を認めた例、これまでの健常成人データ平均の正答率と比べて-2SDを超えた例を除いた15名(女性9名,男性6名,平均年齢28±12歳)を健常者群とした。患者データは、治療前後の比較が可能で効果が検討できる2例を対象とした。
海馬機能を測定するために独自に開発した課題試験実施中の脳活動を、高密度センサー脳波とfMRIを用いて同時計測を行った。
課題試験は、特許文献1の方法を踏まえ、画面(テストアイテム提示手段)に写真(テストアイテム)を1枚ずつ提示し、その写真についてボタン(回答結果入力手段)を押すことで回答を求めた。ボタンは3つあり、初めて見る写真(New)、従前の試行で見た写真と同じもの(Same)、従前の試行で見た写真と似ているが異なる写真(Lure)を判断し、異なる指でボタン押しを行うように教示した。課題(テストアイテムの提示)の提示時間は2500 ms、課題間の間隔は0~1000 msとした。写真の提示順序は疑似ランダムとし、New課題は76個,Same課題は16個,そしてLure課題は16個で構成した。
高密度センサー脳波計測は、EGI社製 HydroCel Geodesic Sensor Net 256-cannelを用いた。fMRIは、GE社製 3T Discoveryを用いた。脳波計測のサンプリング周波数は1000 Hz,Referenceは全電極平均とした。電極インピーダンスはシステム推奨の50 kΩ以下とした。計測後、EGI Net Station Toolsを用い、0.10HzのHighpassフィルタを適用、そしてMRI計測に伴うグラディエントノイズと心拍動のノイズを除去した。分析時はSSI EMSEを用いて,0.5-40 HzのBandpass,ICAによる眼球運動ノイズ除去を適用した。課題試験における各試行による課題提示前100 msから課題提示後2000 msの区間を分析区間とし、課題ごとに加算平均を行い、事象関連電位(ERP)を算出した。
(2)結果
課題試験中の被験者の海馬パターン分離のERPを解析した。図1(A)に、健常者のLure課題平均正答率を示し、図1(B)に、健常者のLure課題平均反応時間を示す。Lureの正答率は45%と、先行研究同様にNewやSameに比べて難易度が高いことが示された。反応時間も同様で、Lureでは約1535.73±234.62msとNewの1138.70 ± 229.74 msやSameの1206.48 ± 226.66 msより時間が延長していた。
図2(A)は、前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図2(B)は、前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。
図3(A)は、右顔面部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図3(B)は、右顔面部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。
図4(A)は、左顔面部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図4(B)は、左顔面部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。
図2に示したように、Lure課題に対し、前頭部位電極のERPは課題提示後約1000 msと1400 ms付近に陰性成分を惹起した。
図3、図4に示したように、海馬体の電気活動を取得できると報告されている右・左顔面部位電極のERPにおいて、Lure課題正答時には前頭より速い800 ms付近の時間帯で陰性成分を惹起した。時間周波数分析では,記憶活動に関連するθ帯域(4~8 Hz)の活動が前頭部では0.02μV2と弱く、右顔面部位では0.2μV2と強く見られた。一方、左顔面部位ではθ帯域のパワーは相対的に弱かった。顔面部位電極の脳活動は左よりも右において、Lure課題に対する特異的な反応を示す可能性を示唆している。
さらに、高次脳機能障害を持つ患者の評価において海馬パターン分離のERPおよび時間周波数解析がどのように活用できるのか、個別データの検討を行った。
症例1(治療前)は交通外傷後の患者である(図5~図8)。事故直後に脳画像上の異常所見は認められなかったが、職場復帰後に認知機能の低下を自覚している。
図5(A)は、症例1(治療前)のLure課題に対する正答率を示す図であり、図5(B)は、症例1(治療前)前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図5(C)は、症例1(治療前)前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。
図5に示したように、Lure課題に対する正答率は0%であった。誤答に対するERPを分析したところ、約1600 msに陰性成分を認め、時間周波数分析では、θ帯域を含めた幅広い帯域の強い活動を認めた。脳の機能不全による過活動的な状態が示唆される。
図6(A)は、症例1(memantine 1日5mgで106日間+tDCS 2mA,30分間,10セッション治療直後)のLure課題に対する正答率を示す図であり、図6(B)は、症例1(memantine 1日5mgで106日間+tDCS 2mA,30分間,10セッション治療直後)の前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図6(C)は、症例1(memantine 1日5mgで106日間+tDCS 2mA,30分間,10セッション治療直後)前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。治療は、安全性が高く汎用性、効果も高いtDCS(transcranial Direct current stimulation)(DC-STIMULATOR Plus;neuroConn)を用いて1日1回1mA, 30分間まで左側DLPFC(dorsolateral prefrontal cortex)を陽極刺激し右側前額部に陰極電極を留置し1クール5回とし, 最大2クール(10 sessions )まで施行した。
図6に示したように、症例1(memantine 1日5mgで106日間+tDCS 2mA,30分間,10セッション治療直後)では、Lure課題に対する正答率は劇的に改善している。そして、ERP分析では1000 msに大きな陰性成分が惹起しており、時間周波数分析では、θ帯域活動を認めている。
図7(A)は、症例1(tDCS治療3カ月経過)のLure課題に対する正答率を示す図であり、図7(B)は、症例1(tDCS治療3カ月経過)の前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図7(C)は、症例1(tDCS治療3カ月経過)前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。
図7に示したように、症例1(tDCS治療3ヶ月経過)では、図6と比べパワーは低いものの1000 ms以降にθ帯域の活動を認める。過活動が収束し,適切な脳活動になってきていることが示唆される。
このような脳活動の改善は、神経心理学的検査においても反映されている。図8は、言語刺激を用いた記憶検査(HVLT-R)の結果を示す図である。
図8に示したように、言語刺激を用いた記憶検査(HVLT-R)では、以前に記憶した項目に類似した項目との判別を反映する再認識別指数が治療前では特に低下していた。memantine+tDCS治療直後のERPおよび時間周波数解析では海馬機能の改善が示唆されたが(図6)、HVLT-Rによる言語記憶の再認識別指数は改善していなかった。これに対し、tDCS治療3ヶ月経過の時点では,大幅な改善が見られた。時間を要して、治療の効果が言語記憶にまで波及したことを反映している。
症例2(術前)は、左前頭葉退形成性上衣腫の患者である(図9、図10)。
図9(A)は、症例2(術前)のLure課題に対する正答率を示す図であり、図9(B)は、症例2(術前)の前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図9(C)は、症例2(術前)の前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。
図9に示したように、症例2(術前)は、Lure課題に対する正答率は25%とやや低かった。また、症例2(術前)のERPは脳全体で非常に高振幅となっており、乱れた様相であった。さらに、症例2(術前)の時間周波数解析ではLure課題に対し、前顔部電極の400 ms付近や1500 ms以降に強いパワーを認めるが、主に3 Hzまでの帯域となっていて、θ帯域の活動は弱かった。
図10(A)は、症例2(術後)のLure課題に対する正答率を示す図であり、図10(B)は、症例2(術後)の前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対するERPを示す図であり、図10(C)は、症例2(術後)の前頭部位電極によるLure課題のパターン分離に対する時間周波数分析の結果を示す図である。
症例2(術後)は、Lure課題に対する正答率は大幅に改善した(56%)。症例2(術後)は、ERPでは700、1200、そして1800 ms付近に大きな陰性成分が認められた。症例2(術後)の時間周波数分析では、θ帯域の活動も相対的に強くなっていた。術前と比べパワーは低いものの、過活動が収束し、安定した脳活動を示していると考えられる。
以上のことから、課題試験中の被験者の脳波データを取得し、Lure課題に対して正答した際の被験者の脳波データを抽出して得た資料から、脳波の変化に基づいて海馬機能を評価することができることが確認された。
<実施例2>簡易脳波計測システムを用いた海馬機能の解析
(1)対象および方法
健常成人7名(女性4名、男性3名、平均年齢23.4±3.9歳)と両側海馬硬化症疑いの症例(女性、49歳)を対象とした。
特許文献1に記載しているように、海馬機能を評価するために独自に開発した課題試験実施中の脳活動を、図11に例示した海馬機能評価システムを用いて計測した。この海馬機能評価システムは、簡易的な脳波計測システムとして構成されており、課題試験実施装置(記憶課題提示プログラム用PC)と、脳波測定装置(アクティブ電極、アクティブ電極変換ボックスなど)と、海馬機能評価装置(トリガ変換ボックス)とを含んでいる。
被験者は、記憶課題提示プログラム用PCのタッチパネル(テストアイテム提示手段)に表示される写真(テストアイテム)による課題に対し、課題実施中に初めて提示された写真(New)であれば、パネル下部左の「新」の表示(回答結果入力手段)を、提示された写真が従前の試行で提示された写真と同じ(Same)ならばパネル下部右「同」の表示(回答結果入力手段)を、提示された写真が従前の試行で提示された写真と似て非なる場合(Lure)はパネル下部真ん中の「似」の表示(回答結果入力手段)をタッチするよう指示された。
課題提示は、テストアイテム出力手段としてのPresentation(R)(Neurobehavioral Systems社製)にて制御され、被験者がパネルをタッチした後に新たな課題が提示されるようにプログラムされた。課題の種類と課題が提示された時間及び被験者がパネルにタッチした時間は記憶課題提示用PC(回答結果記憶手段)に記録される。
電極は電極接触インピーダンスに左右されにくく、電極コードが揺れても高精度の測定が可能なアクティブ電極を用いた。図12の概要図に示したように、電極は10/20法のFz、Cz、Pz、左右頬骨突起下部(Foreface: FF1、FF2)に導出電極を設置し、基準電極は耳朶に設置した(図3)。また、glabellaにアース電極を設置した。Fz、Cz、Pzはキャップを用いて、白いフォルダに付けたActive電極にシリンジを用いて電極ジェリーを注入して抵抗を下げた。海馬を含む領域の情報が得られるFF1、FF2は糊つきディスポタイプのアクティブ電極を用いた。脳波計はPolymate II AP2516(ミユキ技研)を用い、サンプリング周波数1000Hzで脳波計側を行なった。分析にはEMSE(R)Suite(CORTECH SOLUTIONS, INC)を用いて、0.5-40 HzのBandpassフィルターを適用した。課題提示前100 msから課題提示後2000 msの区間を分析区間とし、New課題、Lure課題、Same課題の各課題ごとに加算平均を行い、事象関連電位(ERP)を算出し、さらにwavelet法による時間周波数解析を行なった。
(2)結果
簡易脳波計測における健常被験者7名の海馬機能検査のための課題に対する正答率と反応時間の結果を表1に示す。
Figure 0007109757000001
平均正答率は、New課題正答率86±11%、Lure課題正答率45±20%、Same課題正答率89±11%であった。New課題、Same課題に対しLureと反応したLure課題のbiasを差分したLure課題正答率は23±26%であった。fMRIでの海馬機能検査を計測した19名(平均年齢35.1±15.8歳)の平均正答率は、New課題正答率96±3%、Lure課題正答率45±22%、Same課題正答率86±11%であり、二つの計測方法でのLure課題正答率はほぼ同値であった。
図13に、健常被験者7名のLure課題正答時、Same課題正答時、New課題正答時、それぞれを加算したERPを示す。
Lure課題正答時では、FF1電極及びFF2電極において300msと500ms付近に陽性成分の惹起を認めた。FF1電極では、1000ms付近におよそ500ms持続する陰性成分の惹起を認めた。FF2電極では1000ms付近に陰性成分を認め、その後陽性成分、陰性成分の振幅を確認できた。Fz電極では課題提示後、500ms付近から緩やかな1000msほど持続する陽性成分が惹起された。
Same課題正答時のERPは、Fzでは800ms付近での陽性成分の惹起を認めた。Pz電極の波形では、500ms付近での陰性成分が確認された。FF1電極では800ms付近での陰性成分の惹起が認められた。FF2では500msでの陽性成分と1000msでの陰性成分の惹起を認めた。New課題正答時のERPは全ての電極において、Lure課題、Same課題正答時に比べ振幅が小さかった。電極Fz、FF1では1000msに陰性成分の惹起を認めた。
両側海馬硬化症疑いの症例の海馬機能検査の結果、New課題正答率88%、Lure正答率31%、Same正答率44%であった。New 課題、Same課題に対しLureと反応したLure課題のbiasを差分したLure正答率は-17%と健常者群の成績と比べるとかなり低値であった。
両側海馬硬化症疑いの症例のERP波形を図14に示す。
Lure課題正答時は、電極Fzにおいて700ms、1000msにて陽性成分の惹起が認められ、FF1、FF2電極では700msに陰性成分の惹起が観察された。Same課題正答時は、電極Fz、Czにおいて700msにて陽性成分の振幅が確認され、FF1、FF2では700msにて陰性成分の波形が見られた。Lure課題正答時のERP波形は、健常者群と両側海馬硬化症疑いの症例では異なることが分かった。
次に、健常者の時間周波数解析の結果を図15に示す。
Lure課題(刺激)正答時の電極FF1では1300msからθ波の増強が観察され、電極FF2では500msにてθ波が増強し、1000ms辺りでθ波は減弱するが、1500msにて再度θ波は増強した。Same課題(刺激)正答時では、電極FF1、FF2ともに500msからθ波とα波の増強が見られる。FF1に限って、1000ms以降のα波は減弱し、θ波の増強は継続した。New課題(刺激)正答では電極FF1の500ms付近にてθ波の増強が観察されたが、800ms辺りでθ波は減弱した。
海馬硬化症疑いの症例に対する課題実施時の時間周波数解析の結果を図16に示す。
Lure課題(刺激)正答時では、電極Fzにおいて500msから1500msの時間帯でθ波の増強を認め、電極FF1、FF2では500ms辺りからθ波とα波の増強が見られた。Same課題(刺激)正答時の時間周波数解析の結果では、電極Fz、FF1において500msから1000msの時間帯でθ波からα波の増強を認めた。電極FF2では100msからθ波の増強を認め、1300msまで継続している。また、500ms辺りでα波の増強も観察される。1300ms付近でθ波とα波のパワーは減弱するが、1500msからθ波の増強を認める。New課題(刺激)正答時では、特徴的な周波数帯域の増強は確認できなかった。
海馬硬化症疑いの症例の海馬機能課題時の時間周波数解析の結果は、どの課題条件においても、健常者のパターンと異なりFFIでのθ波のpeakの遷時が速くそのパターンはsameと区別がつかないことから嗅内野-歯状回(CA4)-CA3-CA1-海馬台というpolysynaptic pathwayを介さない嗅内野(III)-CA1-海馬台というdirect pathwayを介する可能性が示唆された。
Lure課題正答時のFF1、FF2のERP波形では300msと500msの陽性成分が他の課題条件に比べ、特徴的であった。また、Lure課題正答時に観察された1000ms付近の波形はSame正答時のものと似ているが、波形成分の持続時間はLure正答時がSame正答時よりも長かった。時間周波数解析では電極FF1、FF2にθ波の増強が確認され、特に500msと1500msと周期的にθ波の増強が見られた右前顔部のFF2はパターン分離に関連した海馬の活動を反映していると考えられる。これは海馬のパターン分離能は海馬のpolysynaptic pathwayの情報伝達を反映している可能性が示唆された。
また、健常者と高次機能障害症例のLure課題正答時のERP波形、時間周波数解析は異なっていた。症例では健常者に比べ、電極Fzすなわち、前頭葉での活動が強く、海馬の活動を反映するFF1、FF2電極ではα波の増強も確認され、健常者のSame課題正答時のパターンに似ており、健常者とのintrahippocampal pathwayの相違が認められ興味深い。
健常者のERP波形、時間周波数解析のパターンと大脳病変の患者のそれは異なることが示された。
以上のように、簡易脳波計測においても課題試験中の被験者の脳波データを取得し、Lure課題に対して正答した際の被験者の脳波データを抽出して得た資料から、脳波の変化に基づいてfMRIなどと同様に海馬機能を評価することができることが確認された。
簡易脳波計測での海馬機能検査は、高密度脳波計で観察された頬骨上電極上の1000ms付近の陰性成分と同等の波形成分を検出できた。高密度脳波計に比べ、簡便に装着でき、海馬機能検査を実施することが可能であるため、機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)などの高価な装置を有していない施設においても容易に実施することができる。

Claims (3)

  1. 被験者の海馬機能を評価可能な資料の作成方法であって、
    被験者に対し、以下の工程:
    複数のテストアイテムを被験者に順次提示する試行を繰り返し行う試行工程;
    前記試行工程における各試行の終了後、被験者にその試行で提示されたテストアイテムが、以下の(A)~(C)のパターン、
    (A)初めて提示されたテストアイテム
    (B)従前の試行で提示されたテストアイテムと類似する別種のテストアイテム
    (C)従前の試行で提示されたことがあるテストアイテムと同一のテストアイテム
    のうちのいずれであるかを回答させる回答工程;および
    前記試行工程で提示したテストアイテムと前記回答工程で得られた回答結果とを比較して各試行に対する回答結果の正誤を判定する正誤判定工程
    を含む課題試験を行うとともに、この課題試験中の被験者の脳波データを取得し、
    前記課題試験において、前記(B)のパターンであると回答すべき試行に対して正答した際の被験者の脳波データを抽出することを特徴とする資料の作成方法。
  2. 脳波データは、ERP波形または時間周波数のうちの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1の資料の作成方法。
  3. 課題試験実施装置と、脳波測定装置と、海馬機能評価装置とを含む海馬機能評価システムであって、
    前記課題試験実施装置は、
    複数のテストアイテムを被験者に順次提示する試行を繰り返し実行するためのテストアイテム提示手段と、
    各試行で提示するテストアイテムをテストアイテム提示手段に出力するテストアイテム出力手段と、
    各試行の終了後、被験者が各試行で提示されたテストアイテムが、以下の(A)~(C)のパターン、
    (A)初めて提示されたテストアイテム
    (B)従前の試行で提示されたテストアイテムと類似する別種のテストアイテム
    (C)従前の試行で提示されたことがあるテストアイテムと同一のテストアイテム
    のうちのいずれであるかについての回答結果を入力する回答結果入力手段と、
    回答結果入力手段を介して入力された回答結果を記憶する回答結果記憶手段と、
    前記テストアイテム出力手段によって出力された各試行におけるテストアイテムと、前記回答結果記憶手段に記憶された回答結果とを比較して、各試行に対する回答結果の正誤を判定する正誤判定手段と、
    を含み、
    前記脳波測定装置は、前記課題試験実施装置による課題試験中の被験者の脳波データを取得可能であり、
    前記海馬機能評価装置は、前記課題試験実施装置による回答結果と、前記脳波測定装置によって取得された脳波データとを処理し、前記課題試験において前記(B)のパターンであると回答すべき試行に対して被験者が正答した際の脳波の変化を検知可能であることを特徴とする海馬機能評価システム。
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