JP7105396B2 - 天びん用風防 - Google Patents

Description

本発明は、天びん、特に高分解能の天びんに使用する風防に関する。

従来から、天びんには、秤量皿の周囲の空気の流動、たとえばエアコンの風、計量時の人の息、人が歩くときに発生する空気の流れなど、が秤量皿を中心とした荷重負荷部分に風圧として作用して、計量に悪影響を与えるのを防ぐために、風防を設けている。風防には、秤量皿に計量する試料を載置するために、開閉扉を設けているが、この開閉扉の開閉時に空気の流れが発生する。この空気の流れは開閉扉の閉鎖後には風防内を移動しつつ減衰していくが、この移動過程で秤量皿にあたると計量に悪影響を与えてしまう。この悪影響は、特に高分解能、例えば分解能が１０００万分の１程度の天びんでは、大きなものとなる。

この悪影響を回避する方策として、従来、風防内にさらに秤量皿を覆う風防を設ける構成が知られている。例えば、天井付きの円筒形で側壁に開口部を有する外側風防の内側に、側壁に開口部を有し、この開口部の下方位置にある底板を3つのコマによって回動自在に支持した有底円筒形の内側風防を設け、この内側風防の内部に秤量皿を配置した天びん（特許文献１）がある。

特開平５－３２２６３８号公報

特許文献１の天びんでは、外側風防に対して内側風防が非接触状態で回動して、両者の開口部が一致したときに風防は開放状態となり、一致しない状態では風防は閉塞状態となる。そして、内側風防は、底板をコマで支持された状態で回動するため、この回動時に発生した粉塵は前記コマの位置が内側風防の開口部よりも下方に位置するので自重によって落下し、秤量皿方向に流れることはない。また、上方から下方に流れるダウンフローが存在する場合には、外側風防の開口部から流入した空気は外側風防と内側風防の間隙を、コマを通過するように下方に流れ、秤量皿方向に流れることはない。

しかしながら、横方向に流れる空気が存在する場合には、風防が開放状態にあると、各開口部を通って内側風防内に流入した空気が、主に内側風防の底板に沿って、秤量皿方向に流れる。また、風防が閉塞状態にある場合でも、外側風防の開口部から外側風防と内側風防の各側壁で形成される空隙に流入した空気が、内側風防の開口部から底板に沿って内側風防内に流入して、秤量皿方向に流れる。このように、特許文献１の天びんでは、内側風防は単に外側風防の開口部を開閉するシャッターとして機能するにすぎず、内側風防内への横方向に流れる空気の流入を阻止できないので、秤量皿に空気があたってしまい、計量時における空気の流れによる悪影響を回避できないという不都合がある。

本発明は、この不都合を解消した天びん用風防を提供することを目的とする。

上記問題を解決するため、本発明に係る天びん用風防は、秤量室を形成する外側風防と、この外側風防の内側に配置されて秤量皿を覆う内側風防と、を備え、前記外側風防は、側面に開閉可能なスライド扉を有し、前記内側風防は、前記スライド扉に向き合う面が開口され、この開口部の下部には遮蔽壁を有するものである。

内側風防の開口部の下部に遮蔽壁を設けたので、外側風防のスライド扉が開放されることで形成された開口部分から流入した空気は、前記外側風防の床面に沿って前記内側風防に向かって移動するが、遮蔽壁に阻止されて前記内側風防内には流入しない。そして、計量にあたっての秤量皿への試料の載置及び計量後の試料の取り出しは、前記外側風防に形成された開口部分と前記内側風防の開口部を通して行うことができる。

また、遮蔽壁の上端を、秤量皿の高さ位置とほぼ同一高さ位置に設定すると、空気の内側風防内への流入を確実に阻止するとともに、秤量皿に試料を載置する作業、あるいは取り出す作業を行うために必要な開口部の広さを十分確保することができる。

さらに、スライド扉を外側風防の一対の側面にそれぞれ設けるとともに、内側風防を着脱可能に、あるいは回転可能に設けて、前記内側風防の開口部が希望する一方のスライド扉と向き合うように設置可能に構成すると、前記外側風防の希望する側面方向から試料の載置及び取り出し作業が可能になる。

本発明によれば、外側風防と内側風防を設けて風防を二重構造にするとともに、内側風防の開口部の下部に遮蔽壁を設けることによって、内側風防内に設けた秤量皿に対する空気の流動による悪影響を阻止することにより、円滑で確実な計量を行うことができ、特に高分解能の天びんにおける正確な計量が実現できる。

本発明に係る天びんの一実施形態を外側風防内を図示省略して示す斜視図。 外側風防のスライド扉を開いた状態を示す側面図。 外側風防及びシリンダボックスを省略して示す斜視図。 外側風防および内側風防の一部を省略して遮蔽壁と秤量皿の高さ関係を示す正面図。

以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、各添付図面においては、便宜上、外側風防と内側風防の各構成要素は透視不能なものとして図示し、内部は図示省略している。

図１～図４に示すように、天びん１は、電磁平衡式やロードセル式などの質量センサ（図示省略）が収容されたハウジング５０と、質量センサと連結されて試料が載置される秤量皿５１とを有する。また、秤量皿５１を囲むように環状壁５２を設けている。ハウジング５０の上面には風防１０が設けられている。風防１０は、秤量室Ｓを形成する外側風防１１と、この外側風防１１の内側に配置されて秤量皿５１を覆う内側風防２１とからなる。前記風防１０は、秤量室Ｓの周囲の空気の流動、たとえばエアコンの風、秤量時の人の息、人が歩くときに発生する空気の流れなど、が秤量皿５１を中心とした荷重負荷部分に風圧として作用して、計量に影響を与えるのを防ぐものである。

外側風防１１は、正面板１２と、側面をそれぞれ開閉する左右一対のスライド扉１３，１３と、上面を開閉する上面扉１４と、背面を閉塞する箱型のケース１５の一面を形成する背面板１６を有し、ほぼ直方体状の秤量室Ｓを形成する。前記正面板１２、前記一対のスライド扉１３，１３及び前記上面扉１４は、ガラスまたは樹脂からなり、内部の状態が観察可能なように透明であることが望ましい。また、静電気の発生を防止するために、ガラスは表面に導電膜を設けた導電ガラス、樹脂は導電性を有する導電樹脂が望ましい。なお、前記外側風防１１は、ハウジング５０に公知の着脱機構によって着脱可能に設けても良いし、着脱不能に固定しても良い。

次いで、左右一対のスライド扉１３，１３について説明するが、各スライド扉１３，１３は同一構成なので、一方のみについて説明する。図１及び図２に示すように、スライド扉１３は四角状の外枠１３ａを有し、外枠１３ａの上部が上面扉１４の一側部に沿って設けた上部フレーム３１とシリンダボックス３２とに摺動可能に支持されて、吊持されている。スライド扉１３は、シリンダボックス３２内に配置したエアシリンダ（図示せず）の駆動力で往復移動するよう構成されている。この往復移動は、外枠１３ａの下部が下部フレーム３３の水平部３３ａと立ち上り部３３ｂで形成される断面Ｌ字状の案内レール３４に案内されてなされる。スライド扉１３の外枠１３ａの下端は、下部フレーム３３の水平部３３ａから離反した非接触状態にあると好適である。なお、スライド扉１３は、エアシリンダの駆動力で往復移動するほか、手動でも往復移動可能であり、手動で移動するために、正面板１２側に取っ手１３ｂが設けられている。

図１で最もよく理解できるように、上面扉１４はシリンダボックス３２，３２に設けられた図示しない案内溝に沿って、前後方向に往復移動可能に構成されている。前記上面扉１４には、手動で移動するために、ケース１５側に取っ手１４ａが設けられている。

図１～図４に示すように、下部フレーム３３の水平部３３ａには、各スライド扉１３，１３の移動経路に沿った位置に、前記各スライド扉１３，１３の下端が、下部フレーム３３の立ち上り部３３ｂ、すなわち案内レール３４の垂直部分、に対する離反方向に変位しないように規制する規制突起３５，３５を、各スライド扉１３，１３に毎に設けている。この規制突起３５，３５の形状は、図では明確ではないが八角柱である。前記規制突起３５，３５は、その側面において、前記各スライド扉１３，１３が閉鎖状態にあっても、開放状態にあっても、常に対応する前記スライド扉１３，１３の下端部分と接触できる位置にある。この規制突起３５，３５によって、案内レール３４の水平部３３ａとは非接触状態にあるスライド扉１３，１３の下部のばたつきを防止し、スライド扉１３，１３の円滑な移動を確保する。また、前記規制突起３５，３５は常に対応する前記スライド扉１３，１３の下端部分と接触できる位置にあるので、前記ばたつきの防止は各スライド扉１３，１３の移動の全範囲において確実になされる。なお、前記各規制突起３５，３５の形状は八角柱のほか、他の多角柱や円柱であっても良い。

図２～図４に示すように、内側風防２１は、正面板２２と、上面板２３と、側面板２４と、背面板２５と、側面の一方が開放されてなる開口部２６を有する。前記正面板２２、前記側面板２４、前記背面板２５の各上端隅部は、前記上面板２３の四隅部と樹脂製の固定具２７，２７，２７，２７で連結固定されている。また、前記正面板２２、前記側面板２４、前記背面板２５の各下端隅部は、樹脂製で四角形状の固定枠２８で固定されている。そして、前記内側風防２１は一面が開口された直方体状を形成する。

内側風防２１は、固定枠２８によって下部フレーム３３の上面板３６に、秤量皿５１を覆うようにして、開口部２６が右側面側のスライド扉１３と向き合うように配置され、公知の着脱機構（図示せず）によって着脱可能に取り付けられている。したがって、内側風防２１を、開口部２６が他方のスライド扉１３（図２参照）と向き合うように配置することもできる。そして、固定枠２８の開口部２６の下部に対応位置する部分が遮蔽壁２８ａを構成する。この遮蔽壁２８ａの上端の高さ位置は、前記秤量皿５１の高さ位置とほぼ同一高さにある。通常、前記遮蔽壁２８ａの上端の高さ位置は、前記秤量皿５１の高さ位置と同一または若干高い位置にあり、内側風防２１内への空気の流入阻止をより確実なものとしている。一方、前記遮蔽壁２８ａの上端の高さ位置が、前記秤量皿５１の高さ位置よりも若干低い位置にあると、確実性は下がるものの前記流入阻止機能は維持できる。そしてこの場合は、主として元素分析用の液体や粉体の試料を入れたボートと称されるアルミ箔製、セラミック製、白金製等のボート型の浅い容器を、ピンセットでつまんで水平方向に移動して、試料をこぼすことなく秤量皿５１上に載置する際に、前記遮蔽壁２８ａが邪魔にならず作業を容易かつ確実になし得る。

内側風防２１の正面板２２、上面板２３、側面板２４、背面板２５は、ガラスまたは樹脂からなり、内部の状態が観察可能なように透明であることが望ましい。また、静電気の発生を防止するために、ガラスは表面に導電膜を設けた導電ガラス、樹脂は導電性を有する導電樹脂が望ましい。

以上の構成において、計量にあたっては、図２に示すように、外側風防１１の右側面のスライド扉１３を開いて、開放された側面から、内側風防２１の開口部２６を通して、秤量皿５１上に試料を載置したうえ、前記スライド扉１３を閉じて秤量室Ｓを閉塞状態として行う。この計量時には、秤量室Ｓは閉塞状態にあるので外部の影響を受けることがない。

試料の計量に際して、試料を秤量皿５１に載置するために、スライド扉１３を開閉する動作時に、下部フレーム３３の上面板３６に沿って空気が風防１０内に流入する可能性がある。しかし、空気が外側風防１１から内側風防２１に向けて秤量皿５１方向に流動しても、空気は内側風防２１の遮蔽壁２８ａに阻止されて固定枠２８に沿って側面板２４方向に流動することになるので、内側風防２１内に流入することはなく、秤量皿５１に達することはない。したがって、試料を載置した秤量皿５１は常に空気の流れの影響を受けることなく、正確な計量がなされる。また、この空気の流れとともに粉塵が流入しても、同様にして粉塵が前記内側風防２１内に流入することはない。

また、左側面側のスライド扉１３（図２参照）を開放して計量作業を行いたい場合には、内側風防２１の開口部２６を当該スライド扉と向き合うようにする必要がある。このため、内側風防２１を上面板３６から一旦取り外し、開口部２６の向きが反対になるようにして、前記内側風防２１を前記上面板３６に取り付ける。そして、外側風防１０の左側面のスライド扉１３を開いて、開放された側面から、内側風防２１の開口部２６を通して、秤量皿５１上に試料を載置したうえ、前記スライド扉１３を閉じて秤量室Ｓを閉塞状態とし、計量を行うことができる。

なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば、外側風防１１と内側風防２１の形状は直方体状に限らず、ともに上面を閉塞した円筒形状でもよい。また、外側風防１１が直方体状で、内側風防２１は平面形状Ｕ字状の箱体としてもよい。この平面形状Ｕ字状の箱体の内側風防２１は直方体状と同様に、円筒形状と比較して開口部を十分確保できるので好適である。内側風防２１を回転可能に構成した場合には、内側風防を所定方向に回転することで、内側風防２１の開口部２６を外側風防１１の希望する側のスライド扉１３と向い合せることができる。この回転可能な構成は、従来公知の手段を用いて実現可能である。

また、環状壁５２も空気流及びそれに伴う粉塵の秤量皿５１への到達を阻止する機能を有するが、本発明においては、遮蔽壁２８ａによって内側風防２１内への空気の流入を阻止するので、この環状壁５２は必ずしも設ける必要はないものである。

１ 天びん
１０ 風防
１１ 外側風防
１２ 正面板
１３ スライド扉
１４ 上面扉
１６ 背面板
２１ 内側風防
２２ 正面板
２３ 上面板
２４ 側面板
２５ 背面板
２６ 開口部
２７ 固定具
２８ 固定枠
２８ａ 遮蔽壁
３４ 案内レール
５０ ハウジング
５１ 秤量皿
Ｓ 秤量室

Claims (4)

1. 秤量室を形成する外側風防と、この外側風防の内側に配置されて秤量皿を覆う内側風防と、を備え、
   前記外側風防は、側面に開閉可能なスライド扉を有し、
   前記内側風防は、前記スライド扉に向き合う面が開口されて開口部となり、この開口部の下部には内側風防への空気の流入を阻止する遮蔽壁を有する
   天びん用風防。
2. 前記遮蔽壁の上端は、前記秤量皿の高さ位置とほぼ同一高さ位置にある
   請求項１に記載の天びん用風防。
3. 前記スライド扉は、外側風防の一対の側面にそれぞれ設けられ、
   前記内側風防は着脱可能に設けられ、その開口部が前記スライド扉の一方と向き合うように設置される
   請求項１または請求項２に記載の天びん用風防。
4. 前記スライド扉は、外側風防の一対の側面にそれぞれ設けられ、
   前記内側風防は回転可能に設けられ、その開口部が前記スライド扉の一方と向き合うように設置される
   請求項１または請求項２に記載の天びん用風防。

Images