以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
図1は、本実施形態の分離膜エレメント10の構成を概略的に示している。図1に示すように、分離膜エレメント10は、第1端面10p、第2端面10q、第1原水流路15及び第2原水流路16を備えている。第1端面10p及び第2端面10qは、互いに向かい合う端面である。第1原水流路15は、第1端面10pから第2端面10qまで延びている。第2原水流路16は、第2端面10qから第1端面10pまで延びている。第1原水流路15は、第2原水流路16に直列に接続されている。
分離膜エレメント10によって処理(濾過)されるべき液体としては、水(原水)が挙げられる。本明細書では、簡単のため、液体の代表として「水」の用語を使用する。
分離膜エレメント10は、詳細には、集水管21及び積層体22を備えている。積層体22は、分離膜12を含み、集水管21の周囲に配置されている。第1原水流路15及び第2原水流路16は、積層体22の内部に形成された流路である。第1端面10pは、集水管21の長手方向における分離膜12の一方の端面である。第2端面10qは、集水管21の長手方向における分離膜12の他方の端面である。
矢印で示すように、分離膜エレメント10において、原水は、第1端面10pを通過して第1原水流路15に流入し、第2端面10qを通過して第1原水流路15から流出する。その後、原水は、第2端面10qを通過して第2原水流路16に流入し、第1端面10pを通過して第2原水流路16から流出する。原水は、第1端面10pと第2端面10qとの間を往復する。
従来の分離膜エレメントにおいて、原水流路の長さは、分離膜エレメントの端面間の距離に等しい。例えば、透過水の回収率を50%に設定して運転を行う場合、原水流路の出口付近における原水の流量は入口付近における原水の流量の約半分である。そのため、原水流路の出口付近において、原水の線速は著しく低下する。その結果、濃度分極層が発達し、塩阻止率及び透過水の流量が低下する。
これに対し、本実施形態の分離膜エレメント10において、原水流路の合計の長さは、第1端面10pと第2端面10qとの間の距離の2倍以上である。原水流路の流路断面積を減らし、原水流路の合計長さを増やすことによって、原水の線速を上げて濃度分極層が発達することを抑制できる。つまり、本実施形態の分離膜エレメント10は、高回収率運転を行っても性能(塩阻止率及び透過水の流量)が低下しにくい。また、原水の線速を上げることによって、スケールの付着を抑制することも可能である。
特に、原水の流れ方向における下流側に進むにつれて原水流路の流路断面積が段階的に減少している場合、原水の線速を上げることによる上記の効果をより十分に得ることができる。
図24に示すように、特許文献2に記載された逆浸透膜エレメントは、蛇行した原水流路を備えている。原水流路の合計の長さは、逆浸透膜エレメントの端面間の距離の2倍以上である。しかし、蛇行した原水流路は、複数の淀み領域SAを生じさせる。淀み領域SAにおける原水の線速は非常に遅い。つまり、淀み領域SAは、分離機能に殆ど寄与しない。
これに対し、本実施形態の分離膜エレメント10において、原水は、第2端面10qを通過して第1原水流路15から流出したのち、第2端面10qを通過して第2原水流路16に流入する。つまり、原水は、分離膜と分離膜との間の空間である第1原水流路15から一旦外部に出て、再度、分離膜と分離膜との間の別の空間である第2原水流路16に流入する。原水は、それぞれの原水流路内を直進し、流れの方向が変わることがないため、第1原水流路15にも第2原水流路16にも淀み領域が生じにくい。
本実施形態では、第1原水流路15も第2原水流路16も蛇行しておらず、第1端面10pと第2端面10qとの間において直線状に延びている。原水は、各原水流路を直線状に流れる。このような構成によれば、淀み領域ができることをより確実に防止できる。
本明細書において、「直線状」とは、第1端面10pから第2端面10qに至るまで、あるいは、第2端面10qから第1端面10pに至るまでに原水の流れ方向が大幅に変化しないことを意味する。すなわち、直線状に延びる流路とは、第1端面10pと第2端面10qとの間で実質的に淀み領域ができない形状及び構成を有する流路を意味する。流路には、湾曲、ねじれ、拡大、縮小などを多少伴う部分があってもよい。
本実施形態において、第1原水流路15の長さは、第2原水流路16の長さに等しい。第1原水流路15における原水の流れ方向は、第2原水流路16における原水の流れ方向と平行である。詳細には、第1原水流路15における原水の流れ方向は、第2原水流路16における原水の流れ方向と180度反対の方向である。第1原水流路15における原水の流れ方向及び第2原水流路16における原水の流れ方向は、集水管21の長手方向に平行である。第1原水流路15から第2原水流路16に移るとき、原水の流れ方向が180度反転する。このような構成によれば、分離膜エレメント10をコンパクトに構成することが可能である。
第2原水流路16の流路断面積は、例えば、第1原水流路15の流路断面積よりも小さい。このような構成によれば、第2原水流路16において原水の線速が低下しにくい。そのため、分離膜エレメント10は、高回収率運転に適している。
第1原水流路15の流路断面積は、第1原水流路15としての空間の体積を集水管21の長手方向における第1原水流路15の長さで割ることによって算出されうる。集水管21の長手方向における第1原水流路15の長さは、第1端面10pと第2端面10qとの間の最短距離に等しい。第2原水流路16の流路断面積も同じ方法で算出されうる。
本実施形態では、第1端面10pと第2端面10qとを最短距離で結ぶ線分に垂直な断面における第1原水流路15の面積が一定である。言い換えれば、第1原水流路15の流路断面積は、第1端面10pと第2端面10qとを最短距離で結ぶ線分に垂直な断面における第1原水流路15の面積で表される。このような構成によれば、淀み領域ができることをより確実に防止できる。「第1端面10pと第2端面10qとを最短距離で結ぶ線分に垂直な断面」は、集水管21の長手方向に垂直な断面である。
同様に、第1端面10pと第2端面10qとを最短距離で結ぶ線分に垂直な断面における第2原水流路16の面積が一定である。言い換えれば、第2原水流路16の流路断面積は、第1端面10pと第2端面10qとを最短距離で結ぶ線分に垂直な断面における第2原水流路16の面積で表される。このような構成によれば、淀み領域ができることをより確実に防止できる。
第1原水流路15の入口は、第1端面10pに位置している。第1原水流路15の出口は、第2端面10qに位置している。第2原水流路16の入口は、第2端面10qに位置している。第2原水流路16の出口は、第1端面10pに位置している。言い換えれば、第1原水流路15は、第1端面10p及び第2端面10qのそれぞれにおいて開口している。第2原水流路16は、第1端面10p及び第2端面10qのそれぞれにおいて開口している。
図2は、分離膜エレメント10の縦断面を概略的に示している。図2に示すように、分離膜エレメント10は、連絡流路27をさらに備えている。連絡流路27は、第2端面10qにおける第1原水流路15の出口と第2端面10qにおける第2原水流路16の入口とを接続している。連絡流路27は、第1原水流路15から第2原水流路16への原水の移送を可能にする。
本実施形態において、連絡流路27は、第2端面10qを覆っているカバー28の内部空間でありうる。カバー28は、第2端面10qを覆い、連絡流路27としての隔離部屋を形成している。このような構成によれば、第1原水流路15から第2原水流路16に原水が移送されうる。カバー28は、例えば、積層体22に取り付けられている。分離膜エレメント10は、分離膜12を覆う円筒状のシェルを備えていてもよい。カバー28は、円筒状のシェルの端部に取り付けられていてもよい。後述するように、カバー28は、分離膜エレメント10の全体を収容するケーシングの一部であってもよい。
分離膜エレメント10は、第1端面10pにおける第1原水流路15の入口と第1端面10pにおける第2原水流路16の出口とを仕切る隔壁を含むアダプタを備えていてもよい。アダプタは、処理されるべき原水と濃縮された原水(濃縮水)との混合を防ぎつつ、第1原水流路15に処理されるべき原水を導き、第2原水流路16から濃縮水を回収する。このようなアダプタは、積層体22に取り付けられてもよく、分離膜エレメント10の全体を収容するケーシングの一部であってもよい。
図3は、図1に示す分離膜エレメント10を部分的に展開して示している。積層体22は、分離膜12、原水スペーサ13及び透過水スペーサ14によって構成されている。分離膜12の端面が積層体22の端面を構成する。積層体22は、詳細には、複数の分離膜12、複数の原水スペーサ13及び複数の透過水スペーサ14によって構成されている。原水スペーサ13及び透過水スペーサ14は、例えば、網状の部材である。原水スペーサ13として、例えば、ひし形の開口を有する押出ネットが使用される。透過水スペーサ14として、トリコット編みの編物、平織りの織物などを使用してもよい。
複数の分離膜12は、互いに重ね合わされ、袋状の構造を有するように3辺において封止され、集水管21に巻きつけられている。袋状の構造の外部に位置するように、分離膜12と分離膜12との間に原水スペーサ13が配置されている。原水スペーサ13は、分離膜12と分離膜12との間に原水流路としての空間を確保している。原水流路には、第1原水流路15及び第2原水流路16が含まれる。袋状の構造の内部に位置するように、分離膜12と分離膜12との間に透過水スペーサ14が配置されている。透過水スペーサ14は、分離膜12と分離膜12との間に透過水流路としての空間を確保している。1対の分離膜12及び透過水スペーサ14によって膜リーフ11が構成されている。透過水流路が集水管21に連通するように、膜リーフ11の開口端が集水管21に接続されている。
第1端面10p及び第2端面10qは、それぞれ、集水管21の長手方向における分離膜12の端面でありうる。このような構成によれば、分離膜12の端から端まで第1原水流路15及び第2原水流路16が形成されるので、分離膜12の分離機能を最大限に発揮させることが可能である。
本実施形態の分離膜エレメント10は、スパイラル型の分離膜エレメントでありうる。スパイラル型の分離膜エレメントの材料、構造、特性、製造方法などは良く知られている。そのため、最小限の設計変更にて、既存のスパイラル型の分離膜エレメントに本明細書に記載された技術を適用することが可能である。
分離膜12は、例えば、逆浸透膜、ナノ濾過膜、限外濾過膜又は精密濾過膜である。分離膜12は、典型的には、逆浸透膜又はナノ濾過膜である。分離膜12は、多孔性支持体と、多孔性支持体によって支持された分離機能層とを有する複合半透膜であってもよい。多孔性支持体としては、微多孔層を不織布上に形成した限外ろ過膜が用いられる。微多孔層の材料としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデンなどが挙げられる。分離機能層は、ポリアミドによって構成されうる。
集水管21は、各分離膜12を透過した透過水を集めて分離膜エレメント10の外部に導く役割を担っている。集水管21には、その長手方向に沿って複数の貫通孔21hが所定間隔で設けられている。透過水は、これらの貫通孔21hを通じて集水管21の中に流入する。
図4Aは、第1端面10p又は第2端面10qから見たときの分離膜エレメント10の正面図である。本実施形態において、第1原水流路15は、集水管21の周方向における第1角度θ1の領域を占有する流路である。第2原水流路16は、集水管21の周方向における第2角度θ2の領域を占有する流路である。第1角度θ1は、第2角度θ2と異なる。詳細には、第1角度θ1は、第2角度θ2よりも大きい。このような構成によれば、第2原水流路16における原水の線速の低下を十分に抑制することができる。また、第1角度θ1及び第2角度θ2を適切に変更することによって、第1原水流路15における原水の線速と第2原水流路16における原水の線速とを均一化することも可能である。
図4Aの例において、第1角度θ1は240度であり、第2角度θ2は120度である。したがって、第1原水流路15の流路断面積に対する第2原水流路16の流路断面積の比率は、0.5である。
分離膜エレメント10は、複数の仕切り23をさらに備えている。複数の仕切り23のそれぞれが第1原水流路15と第2原水流路16とを仕切っている。複数の仕切り23のそれぞれが集水管21の長手方向に延びている。このような構成によれば、第1原水流路15と第2原水流路16とを確実に仕切ることができる。第1原水流路15から第2原水流路16に原水がショートカットして流れることも防止できる。
仕切り23は、第1端面10pから第2端面10qまで延びている。このような構成によれば、第1原水流路15と第2原水流路16とを確実に仕切ることができる。
図4Bは、第1端面10p又は第2端面10qの一部を拡大して示している。図4Bに示すように、膜リーフ11と膜リーフ11との間に原水スペーサ13が配置されている。この例では、仕切り23の右側の空間が第1原水流路15であり、仕切り23の左側の空間が第2原水流路16である。仕切り23は、原水スペーサ13に一体化されている。言い換えれば、仕切り23は、原水スペーサ13の一部であってもよい。このような構成によれば、第1原水流路15と第2原水流路16とを確実に仕切ることができる。第1原水流路15から第2原水流路16に原水がショートカットして流れることも防止できる。各仕切り23は、帯状の形状を有する。
図4Aに示すように、複数の仕切り23は、第1の角度位置P1において集水管21の半径方向に並べられた複数の第1仕切り231と、第2の角度位置P2において集水管21の半径方向に並べられた複数の第2仕切り232と、を含む。第1の角度位置P1及び第2の角度位置P2は、集水管21の周方向における所定の角度位置である。このような構成によれば、第1原水流路15と第2原水流路16とを確実に仕切ることができる。第1原水流路15から第2原水流路16に原水がショートカットして流れることも防止できる。
図5は、原水スペーサ13に仕切り23を一体化させる方法の一例を示している。具体的には、原水スペーサ13の所定の位置に仕切り23の原料部材であるリボン23aを配置する。原水スペーサ13及びリボン23aを耐熱シート25で挟み、リボン23aが溶融し、原水スペーサ13が溶融しない温度にて、原水スペーサ13及びリボン23aに熱及び圧力を加える。耐熱シート25は、シリコーンなどで表面が剥離処理された耐熱シートである。リボン23aが溶融及び固化することによって、原水スペーサ13に一体化された仕切り23が形成される。仕切り23は、例えば、ホットメルト樹脂によって作られている。図5に示す方法によれば、原水スペーサ13に仕切り23を容易に一体化させることができる。仕切り23の厚さを原水スペーサ13の厚さに一致させることができるとともに、平滑な表面の仕切り23を形成することができる。仕切り23の形成後、耐熱シート25は、原水スペーサ13から剥離され、除去される。集水管21に膜リーフ11と原水スペーサ13を巻きつけた後、巻回体を再加熱することによって、仕切り23と分離膜12との間の封止性を向上させることも可能である。
仕切り23は、シリコーンシーラントによって作られていてもよい。シリコーンシーラントを使用する場合、耐熱シート25に代えて、ワックスペーパーを使用できる。
図6は、変形例に係る原水スペーサ131を示している。原水スペーサ131は、多数の開口を有するシート状の本体部132と、本体部132に一体化された複数の仕切り23とを備えている。複数の仕切り23は、互いに平行に並んでいる。仕切り23は、本体部132の厚さを上回る厚さを有している。このような原水スペーサ131は、シート材料を加工してロールツーロール方式で作製されうる。仕切り23を有する原水スペーサは、多数の開口部を有するネットと、仕切り23としての帯状の部材とを交互に接続することによって作製されてもよい。
図7A、図7B及び図7Cは、図4Aを参照して説明した第1角度θ1及び第2角度θ2の別の例を示している。第1角度θ1は、第1原水流路15が占有する領域の角度である。第2角度θ2は、第2原水流路16が占有する領域の角度である。図7Aに示すように、例えば、第1角度θ1が257度であり、第2角度θ2が103度である。図7Bに示すように、例えば、第1角度θ1が270度であり、第2角度θ2が90度である。図7Cに示すように、例えば、第1角度θ1が288度であり、第2角度θ2が72度である。原水の線速が十分に維持されるように、第1角度θ1及び第2角度θ2が適切に設定されうる。
(変形例1)
図8Aは、変形例1に係る分離膜エレメント20の構成を概略的に示している。図8Bは、第2端面10qから見たときの分離膜エレメント20の模式的な平面図である。図8Cは、第1端面10pから見たときの分離膜エレメント20の模式的な平面図である。分離膜エレメント10に関する全ての説明は、技術的な矛盾が無い限り、分離膜エレメント20にも適用されうる。
図8Aに示すように、分離膜エレメント20は、分離膜エレメント10の構成に加え、第1端面10pから第2端面10qまで延びる第3原水流路17をさらに備えている。矢印で示すように、分離膜エレメント20において、原水は、第1端面10pを通過して第1原水流路15に流入し、第2端面10qを通過して第1原水流路15から流出する。次に、原水は、第2端面10qを通過して第2原水流路16に流入し、第1端面10pを通過して第2原水流路16から流出する。さらに、原水は、第1端面10pを通過して第3原水流路17に流入し、第2端面10qを通過して第3原水流路17から流出する。つまり、原水は、第1端面10pと第2端面10qとの間を1.5往復する。本変形例によれば、原水流路の合計長さを更に増やすことによって、各原水流路の流路断面積が減少する。その結果、原水の線速を上げて濃度分極層が発達することを更に抑制できる。
第1原水流路15及び第2原水流路16と同様、第3原水流路17も第1端面10pと第2端面10qとの間を直線状に延びている。このような構成によれば、淀み領域ができることをより確実に防止できる。
第1原水流路15から第2原水流路16に移るとき、原水の流れ方向が180度反転する。第2原水流路16から第3原水流路17に移るとき、原水の流れ方向が180度反転する。このような原水の流れは、別の変形例及び別の実施形態にも適用されている。
本変形例において、第1原水流路15は、集水管21の周方向における第1角度θ1の領域を占有している。第2原水流路16は、集水管21の周方向における第2角度θ2の領域を占有している。第3原水流路17は、集水管21の周方向における第3角度θ3の領域を占有している。第1角度θ1は、第2角度θ2よりも大きい。第2角度θ2は、第3角度θ3よりも大きい。このような構成によれば、原水の線速の低下を十分に防ぐことができる。例えば、第1角度θ1が160度であり、第2角度θ2が120度であり、第3角度θ3が80度である。
第2原水流路16の流路断面積は第1原水流路15の流路断面積よりも小さい。第3原水流路17の流路断面積は第2原水流路16の流路断面積よりも小さい。つまり、下流側に位置している原水流路の流路断面積は、上流側に位置している原水流路の流路断面積よりも小さい。このような構成によれば、第2原水流路16及び第3原水流路17において原水の線速が低下しにくい。そのため、分離膜エレメント20は、高回収率運転に適している。
複数の仕切り23は、第1原水流路15、第2原水流路16及び第3原水流路17を相互に仕切っている。これにより、原水は、流路をショートカットすることなく、第1原水流路15、第2原水流路16及び第3原水流路17を順番に流れる。
図4Aを参照して説明した構成は、本変形例にも適用されうる。具体的には、複数の仕切り23は、第1の角度位置において集水管21の半径方向に並べられた複数の第1仕切りと、第2の角度位置において集水管21の半径方向に並べられた複数の第2仕切りと、第3の角度位置において集水管21の半径方向に並べられた複数の第3仕切りと、を含む。第1の角度位置、第2の角度位置及び第3の角度位置は、集水管21の周方向における所定の角度位置である。このような構成によれば、第1原水流路15、第2原水流路16及び第3原水流路17を相互に確実に仕切ることができる。
分離膜エレメント20は、連絡流路31及び連絡流路32をさらに備えている。連絡流路31は、第2端面10qにおける第1原水流路15の出口と第2端面10qにおける第2原水流路16の入口とを接続している。連絡流路31は、第3原水流路17から隔離されている。連絡流路32は、第1端面10pにおける第2原水流路16の出口と第1端面10pにおける第3原水流路17の入口とを接続している。連絡流路32は、第1原水流路15から隔離されている。連絡流路31は、第1原水流路15から第2原水流路16への原水の移送を可能にする。連絡流路32は、第2原水流路16から第3原水流路17への原水の移送を可能にする。
本変形例において、連絡流路31は、第2端面10qを覆っているカバー281の内部空間でありうる。連絡流路32は、第1端面10pを覆っているカバー282の内部空間でありうる。図8Bに示すように、カバー281は、第2端面10qを覆い、連絡流路31としての隔離部屋を形成している。カバー281は、第1原水流路15の出口及び第2原水流路16の入口を第3原水流路17の出口から隔離している。図8Cに示すように、カバー282は、第1端面10pを覆い、連絡流路32としての隔離部屋を形成している。カバー282は、第2原水流路16の出口及び第3原水流路17の入口を第1原水流路15の入口から隔離している。このような構成によれば、第1原水流路15、第2原水流路16及び第3原水流路17の順番で原水が流れる。図24を参照して説明した淀み領域SAが形成されることも防止できる。第2原水流路16を流れることなく第1原水流路15から第3原水流路17に原水がショートカットして流れたり、第3原水流路17から第1原水流路15に原水が戻ったりすることも防止できる。カバー281及びカバー282は、例えば、積層体22に取り付けられている。
(変形例2)
図9Aは、変形例2に係る分離膜エレメント30の構成を概略的に示している。図9Bは、第1端面10p又は第2端面10qから見たときの分離膜エレメント30の模式的な平面図である。分離膜エレメント10及び20に関する全ての説明は、技術的な矛盾が無い限り、分離膜エレメント30にも適用されうる。
図9A及び図9Bに示すように、分離膜エレメント30は、分離膜エレメント20の構成に加え、第2端面10qから第1端面10pまで延びる第4原水流路18をさらに備えている。矢印で示すように、分離膜エレメント30において、原水は、第1端面10pを通過して第1原水流路15に流入し、第2端面10qを通過して第1原水流路15から流出する。次に、原水は、第2端面10qを通過して第2原水流路16に流入し、第1端面10pを通過して第2原水流路16から流出する。次に、原水は、第1端面10pを通過して第3原水流路17に流入し、第2端面10qを通過して第3原水流路17から流出する。さらに、原水は、第2端面10qを通過して第4原水流路18に流入し、第1端面10pを通過して第4原水流路18から流出する。つまり、原水は、第1端面10pと第2端面10qとの間を2往復する。本変形例によれば、原水流路の合計長さを更に増やすことによって各原水流路の流路断面積が減少する。その結果、原水の線速を上げて濃度分極層が発達することを更に抑制できる。
第1原水流路15、第2原水流路16及び第3原水流路17と同様、第4原水流路18も第1端面10pと第2端面10qとの間を直線状に延びている。このような構成によれば、淀み領域ができることをより確実に防止できる。
本変形例において、第1原水流路15は、集水管21の周方向における第1角度θ1の領域を占有している。第2原水流路16は、集水管21の周方向における第2角度θ2の領域を占有している。第3原水流路17は、集水管21の周方向における第3角度θ3の領域を占有している。第4原水流路18は、集水管21の周方向における第4角度θ4の領域を占有している。第1角度θ1は、第2角度θ2よりも大きい。第2角度θ2は、第3角度θ3よりも大きい。第3角度θ3は、第4角度θ4よりも大きい。このような構成によれば、原水の線速の低下を十分に防ぐことができる。例えば、第1角度θ1が120度であり、第2角度θ2が100度であり、第3角度θ3が80度であり、第4角度θ4が60度である。
第2原水流路16の流路断面積は第1原水流路15の流路断面積よりも小さい。第3原水流路17の流路断面積は第2原水流路16の流路断面積よりも小さい。第4原水流路18の流路断面積は第3原水流路17の流路断面積よりも小さい。このような構成によれば、第2原水流路16、第3原水流路17及び第4原水流路18において原水の線速が低下しにくい。そのため、分離膜エレメント30は、高回収率運転に適している。
複数の仕切り23は、第1原水流路15、第2原水流路16、第3原水流路17及び第4原水流路18を相互に仕切っている。これにより、原水は、流路をショートカットすることなく、第1原水流路15、第2原水流路16、第3原水流路17及び第4原水流路18を順番に流れる。
変形例1及び変形例2から理解できるように、原水流路の数は、2つに限定されず、3以上であってもよい。原水流路の数を増やせば増やすほど、各原水流路の流路断面積が減少し、原水の線速は上がる。仕切り23による膜面積の減少、製造容易性などを考慮して、原水流路の数、及び、各原水流路が占有する領域の角度が決定される。
本変形例から理解できるように、本実施形態の分離膜エレメントは、第1原水流路15及び第2原水流路16に加えて、第1端面10pから第2端面10qまで直線状に延びる少なくとも1つの追加の原水流路をさらに備えていてもよい。少なくとも1つの追加の原水流路は、本変形例では、第3原水流路17及び第4原水流路18に相当する。原水は、第1端面10p又は第2端面10qを通過して追加の原水流路から流出する。その後、原水は、追加の原水流路から流出する際に通過した第1端面10p又は第2端面10qを再び通過し、追加の原水流路の下流側に位置する別の追加の原水流路に流入する。追加の原水流路同士は互いに隣接していてもよく、離れていてもよい。
例えば、分離膜エレメントがn個(nは2以上の整数)の原水流路を備えているとき、原水は、第1端面10p又は第2端面10qを通過してk番目(kは1以上、n-1以下の任意の整数)の原水流路から流出する。その後、原水は、k番目の原水流路から流出する際に通過した第1端面10p又は第2端面10qを再び通過し、k番目の原水流路の下流側に位置する(k+1)番目の原水流路に流入する。
次に、原水スペーサ13における仕切り23の位置について説明する。
分離膜エレメント10,20及び30は、例えば、集水管21に巻きつけられた4枚の膜リーフ11(図3参照)及び4枚の原水スペーサ13を有する。各膜リーフ11は、例えば、1対の分離膜12及び透過水スペーサ14によって構成されている。集水管21に膜リーフ11及び原水スペーサ13を巻きつけるとき、ワーク(組立中の分離膜エレメント)の半径が徐々に増加するので、4枚の原水スペーサ13における仕切り23の間隔は等間隔ではない。膜リーフ11及び原水スペーサ13の数は、4以外の複数であってもよい。
図10は、変形例1の分離膜エレメント20が4枚の膜リーフ11及び4枚の原水スペーサ13で構成される場合の4枚の原水スペーサ13を展開して示している。縦方向の線の位置が仕切り23の位置を表している。図10の左側が集水管21に近い側であり、仕切り23が密に配置されている。これらの原水スペーサ13の端部は、集水管21の周りに好ましくは略90度の等間隔で配置される。4枚の膜リーフ11及び原水スペーサ13を90度の間隔で配置すると、分離膜エレメント20の外形がより円形に近づき、集水管21の中心に対する外径の偏心も極小化できる。「外径の偏心」とは、分離膜エレメント20に外接する円の中心と集水管21の中心との間のずれの大きさを意味する。
仕切り23の位置は、例えば、極座標の方程式r=r0+bθ(r0:集水管21の半径、b:定数)によって表される曲線を用いて決定することができる。図11に示すように、この曲線は、周回ごとに半径が等間隔で増加する渦巻きであり、アルキメデスの螺旋と呼ばれる。展開状態の原水スペーサ13における仕切り23の位置は、膜リーフ11及び原水スペーサ13を集水管21に巻きつけた状態における仕切り23の位置までの螺旋の弧長を算出することによって決定できる。ある巻き角度θ(単位:ラジアン)までの弧長は、微小角度Δθにおける弧長r・Δθ(rとΔθとの積)を巻き角度θまで積算することによって決定できる。定数bは、b=w/(2π)で表される。定数bは、シート状部材の厚さの合計が周回ごとの半径の増加長さwに一致するように決定される。図10の例では、シート状部材の厚さの合計は、4枚の膜リーフ11の合計厚さと4枚の原水スペーサ13の合計厚さとの合計である。
以下、他のいくつかの実施形態について説明する。各実施形態に共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。技術的に矛盾しない限り、各実施形態に関する説明は、相互に適用されうる。技術的に矛盾しない限り、各実施形態は、相互に組み合わされてもよい。
(実施形態2)
図12Aは、実施形態2に係る分離膜エレメント40を第1端面10p又は第2端面10qから見たときの平面図である。図12Aは、原水スペーサ及び透過水スペーサを省略し、折り畳まれた分離膜12のみを示している。分離膜エレメント40は、折り畳み構造を有する。具体的には、分離膜12が折り畳まれて集水管21に巻きつけられている。本実施形態では、複数の折り畳まれた分離膜12が使用されており、それぞれが集水管21に巻きつけられている。本実施形態の分離膜エレメント40も実施形態1の分離膜エレメント10(,20,30)と同じ効果を奏する。
分離膜12と分離膜12との間には、仕切り236が設けられている。分離膜エレメント40は、複数の仕切り236を備えている。これらの仕切り236によって、第1原水流路15と第2原水流路16とが仕切られている。複数の仕切り236のそれぞれは、集水管21の半径方向及び集水管21の長手方向の両方向に延びている。このような構成によれば、第1原水流路15と第2原水流路16とを確実に仕切ることができる。仕切り236は、原水スペーサ13とは異なる部材であって、遮水性のある材料で作られた部材でありうる。この場合、第1原水流路15から第2原水流路16に原水がショートカットして流れることをより確実に防止できる。
図12Bは、分離膜エレメント40に使用された分離膜12を展開して示している。図12Cは、分離膜エレメント40の分解断面図であって、分離膜12、原水スペーサ13、透過水スペーサ14及び仕切り236の位置関係を示している。図12Bに示すように、分離膜12の透過側の表面上には、封止樹脂29が設けられている。封止樹脂29は、分離膜12の透過側の空間を囲むように、分離膜12の外周部に沿って設けられている。分離膜12の透過側の空間は、封止樹脂29によって閉じられて透過水流路として機能する。透過水流路は、集水管21の貫通孔21h(図3参照)に連通している。
実線で示された位置P1は、山折りの位置を表している。一点鎖線で示された位置P2は、谷折りの位置を示している。図12Cに示すように、分離膜12は、原水スペーサ13及び透過水スペーサ14を交互に挟みながら位置P1及び位置P2においてジグザグに折り畳まれる。仕切り236は、分離膜12の端部に接着される。
原水は、分離膜12の折り目に平行な方向に直線状に流れる。透過水は、分離膜12の折り目に対して垂直な方向にらせん状に流れる。
分離膜12、原水スペーサ13、透過水スペーサ14及び仕切り236は、集水管21に巻きつけられる。折り目の前後で分離膜12の曲率に差が生じるため、折り目の前後で適切な折り幅は異なる。曲率の差を考慮に入れて折り目の前後で折り幅を変えると、集水管21に巻きつけたときに分離膜12にシワが生じるなどの不具合が発生することを回避できる。
仕切り236は、水を遮断できるフィルムによって構成されうる。フィルムの材料としては、樹脂、金属、セラミックなどが挙げられる。仕切り236が可撓性を有する材料で作られている場合、集水管21に巻きつけられるときに分離膜12とともに仕切り236が変形できる。例えば、仕切り236は、ポリ塩化ビニルなどの軟質の樹脂シートによって作られていてもよい。
本実施形態の分離膜エレメント40において、周方向に関する透過水流路の長さは、位置P1から位置P2までの距離に等しい。つまり、分離膜エレメント40の透過水流路は、スパイラル型の分離膜エレメントの透過水流路よりも短いため、分離膜エレメント40の透過水流路における流れ抵抗は小さい。したがって、スパイラル型の分離膜エレメントに使用するものよりも薄い透過水スペーサ14を分離膜エレメント40に使用して流れ抵抗が増大したとしてもこれを許容することが可能となる。分離膜エレメント40には、薄い透過水スペーサ14を使用することができる。薄い透過水スペーサ14を使用することによって、分離膜エレメント40の膜面積を増やすことができる。透過水スペーサ14の厚さは特に限定されず、5ミル(mil)以下であってもよく、1~5ミルであってもよい。分離膜12の支持体が透過水を流す機能を一定程度有している場合、透過水スペーサ14が省略されてもよい。
(実施形態3)
図13Aは、実施形態3に係る分離膜エレメント50の概略的な斜視図である。図13Bは、図13Aに示す分離膜エレメント50の断面を示している。
本実施形態の分離膜エレメント50は、積層された平板状の複数の分離膜12を備えている。第1端面10p及び第2端面10qは、積層された複数の分離膜12の互いに向かい合う端面であって、分離膜エレメント50の端面である。本実施形態の分離膜エレメント50も実施形態1及び実施形態2の分離膜エレメント10,20,30及び40と同じ効果を奏する。
詳細には、分離膜エレメント50は、積層された複数の平板状のブロック71を備えている。各ブロック71は、分離膜12、原水スペーサ13及び透過水スペーサ14によって構成されている。折り畳まれた分離膜12が各ブロック71に使用されている。分離膜12のひだとひだとの間に原水スペーサ13及び透過水スペーサ14が交互に配置されている。複数のブロック71から選ばれる1つのブロック71が第1原水流路15を有する。複数のブロック71から選ばれる別のブロック71が第2原水流路16を有する。複数のブロック71から選ばれる更に別のブロック71が第3原水流路17を有する。本実施形態では、第1原水流路15を有するブロック71、第2原水流路16を有するブロック71及び第3原水流路17を有するブロック71がこの順番で積層されている。本実施形態においても、原水流路15,16及び17のそれぞれは、第1端面10pと第2端面10qとの間で直線状に延びている。
矢印で示すように、分離膜エレメント50においても、原水は、第1端面10pと第2端面10qとの間を往復する。詳細には、原水は、第1端面10pを通過して第1原水流路15に流入し、第2端面10qを通過して第1原水流路15から流出する。その後、原水は、第2端面10qを通過して第2原水流路16に流入し、第1端面10pを通過して第2原水流路16から流出する。さらに、原水は、第1端面10pを通過して第3原水流路17に流入し、第2端面10qを通過して第3原水流路17から流出する。
分離膜エレメント50は、例えば、平面視で矩形の形状を有する。原水は、第1端面10pから第2端面10q、又は、第2端面10qから第1端面10pに向かって各原水流路を流れる。透過水は、原水の流れ方向及びブロック71の積層方向に対して垂直な方向に導かれる。
分離膜エレメント50は、複数の平板状の仕切り237を備えている。仕切り237は、第1原水流路15と第2原水流路16とを仕切っている。別の仕切り237は、第2原水流路16と第3原水流路17とを仕切っている。各仕切り237は、分離膜12と分離膜12との間に配置されている。詳細には、各仕切り237は、ブロック71とブロック71との間に配置されている。このような構成によれば、第1原水流路15と第2原水流路16とを確実に仕切ることができる。第2原水流路16と第3原水流路17とを確実に仕切ることができる。仕切り237は、原水スペーサ13とは異なる部材であって、遮水性のある材料で作られた部材でありうる。この場合、第1原水流路15から第2原水流路16に原水がショートカットして流れることをより確実に防止できる。第2原水流路16から第3原水流路17に原水がショートカットして流れることをより確実に防止できる。仕切り237は、水を遮断できるフィルム、水を遮断できるプレートなどによって構成されうる。フィルム及びプレートの材料としては、樹脂、金属、セラミックなどが挙げられる。
原水スペーサ13は、分離膜12の分離機能層側に配置されている。透過水スペーサ14は、分離膜12の支持体側に配置されている。分離膜12の透過側の表面上には、封止樹脂29が設けられている。封止樹脂29は、分離膜12の透過側の空間を囲むように、分離膜12の外周部に沿って設けられている。分離膜12の透過側の空間は、封止樹脂29によって閉じられて透過水流路として機能する。
ブロック71は、図12B及び図12Cを参照して説明した分離膜エレメント40の作製方法と同じ方法で作製されうる。
図12B及び図12Cを参照して説明したように、封止樹脂29は、分離膜12の透過側の空間を囲むように、分離膜12の外周部に沿って設けられている。分離膜12の透過側の空間は、封止樹脂29によって囲まれて透過水流路として機能する。分離膜12を折り畳んだとき、ブロック71の3辺に封止樹脂29が存在し、ブロック71の1辺に封止樹脂29が存在しない。封止樹脂29が存在しない1辺から透過水が流出する。
実線で示された位置P1は、山折りの位置を表している。一点鎖線で示された位置P2は、谷折りの位置を示している。図12Cに示すように、分離膜12は、原水スペーサ13及び透過水スペーサ14を交互に挟みながら位置P1及び位置P2においてジグザグに折り畳まれる。仕切り236に代えて、仕切り237が分離膜12の端部に接着される。
図13Aに示すように、連絡流路31は、第2端面10qにおける第1原水流路15の出口と第2端面10qにおける第2原水流路16の入口とを接続している。連絡流路31は、第3原水流路17から隔離されている。連絡流路32は、第1端面10pにおける第2原水流路16の出口と第1端面10pにおける第3原水流路17の入口とを接続している。連絡流路32は、第1原水流路15から隔離されている。連絡流路31は、第1原水流路15から第2原水流路16への原水のスムーズな移送を可能にする。連絡流路32は、第2原水流路16から第3原水流路17への原水のスムーズな移送を可能にする。
連絡流路31は、第2端面10qを覆っているカバー285の内部空間でありうる。カバー285は、第2端面10qを覆い、連絡流路31としての隔離部屋を形成している。連絡流路32は、第1端面10pを覆っているカバー286の内部空間でありうる。カバー286は、第1端面10pを覆い、連絡流路32としての隔離部屋を形成している。このような構成によれば、第1原水流路15から第2原水流路16に原水がスムーズに移送され、第2原水流路16から第3原水流路17に原水がスムーズに移送されうる。図24を参照して説明した淀み領域SAが形成されることも防止できる。カバー285及び/又はカバー286は、分離膜エレメント50の全体を収容するケーシングの一部であってもよい。
分離膜エレメント50は、透過水を集めるために設けられた集合流路33をさらに備えている。集合流路33は、第3端面10rを通じて透過水を集めるための流路である。第3端面10rは、積層された複数の分離膜12の互いに向かい合う他の一対の端面から選ばれる1つの端面である。このような構造によれば、原水と透過水との混合を避けつつ、透過水を分離膜エレメント50の外部へと導くことができる。
詳細には、集合流路33は、第3端面10rを覆っているカバー287の内部空間でありうる。カバー287は、第3端面10rを覆い、集合流路33としての隔離部屋を形成している。カバー287には、流出口289が設けられている。流出口289を通じて、透過水が分離膜エレメント50の外部へと導かれる。
ブロック71の数は、2つであってもよい。この場合、1組の仕切り237及びブロック71が省略され、第3原水流路17が省略される。分離膜エレメント50は、第1原水流路15及び第2原水流路16を備える。分離膜エレメント50は、仕切り237を1つのみ備えていてもよい。
ブロック71は、複数の分離膜12を有していてもよい。ブロック71は、複数の原水スペーサ13を有していてもよい。ブロック71は、複数の透過水スペーサ14を有していてもよい。
本実施形態において、第1原水流路15の流路断面積は、第2原水流路16の流路断面積に等しく、第3原水流路17の流路断面積に等しい。つまり、同じ構造を有する複数のブロック71が使用されている。そのため、量産効果が高く、分離膜エレメント50の製造コストを抑えることができる。もちろん、第2原水流路16の流路断面積は、第1原水流路15の流路断面積よりも小さくてもよい。第3原水流路17の流路断面積は、第2原水流路16の流路断面積よりも小さくてもよい。このような構成によれば、原水の線速が低下しにくいので、高回収率運転に適した積層型の分離膜エレメントを提供できる。
本実施形態の分離膜エレメント50の透過水流路は、スパイラル型の分離膜エレメントの透過水流路よりも短いため、分離膜エレメント50の透過水流路における流れ抵抗は小さい。したがって、スパイラル型の分離膜エレメントに使用するものよりも薄い透過水スペーサ14を分離膜エレメント50に使用して流れ抵抗が増大したとしてもこれを許容することが可能となる。薄い透過水スペーサ14を使用することによって、分離膜エレメント50の膜面積を増やすことができる。透過水スペーサ14の厚さは特に限定されず、5ミル(mil)以下であってもよく、1~5ミルであってもよい。分離膜12の支持体が透過水を流す機能を一定程度有している場合、透過水スペーサ14が省略されてもよい。
例えば、分離膜12の支持体に多孔質構造を付与したり、分離膜12の支持体の表面に微細な凹凸を設けたりして、分離膜12の支持体に透過水スペーサ14の代替機能を一定程度付与することが可能である。この場合、透過水スペーサ14を省略したとしても分離膜エレメント50を構成できる。分離膜エレメント50の透過水流路は短いため、透過水流路の流れ抵抗が比較的大きかったとしても透過水の圧力損失は大きくなりすぎず、分離膜エレメント50の使用時の有効圧力に大きな影響は及ばない。透過水流路が短い場合、流路そのものが短いだけでなく、分離膜12を透過して透過水流路に流れ込む透過水の量も少ない。これらの効果が相まって、透過水流路での透過水の圧力損失(流動損失)が減少する。
(実施形態4)
図14Aは、実施形態4に係る分離膜エレメント60を第1端面10p又は第2端面10qから見たときの模式的な平面図である。図14Aに示すように、本実施形態の分離膜エレメント60は、集水管21の周方向に並べられた複数の分割エレメント81を備えている。分割エレメント81は、部分円環の断面形状を有している。「部分円環」は、特定の角度範囲にて円環の一部を切り取ることによって得られる形状を意味する。複数の分割エレメント81の1つ1つが独立したコンパートメントである。分離膜エレメント60は、全体としては、円筒の形状を有する。
各分割エレメント81は、第1原水流路15、第2原水流路16又は第3原水流路17を形成している。本実施形態では、4つの分割エレメント81が第1原水流路15を形成し、3つの分割エレメント81が第2原水流路16を形成し、2つの分割エレメント81が第3原水流路17を形成している。したがって、第1原水流路15の流路断面積は、第2原水流路16の流路断面積よりも大きい。第2原水流路16の流路断面積は、第3原水流路17の流路断面積よりも大きい。下流側に進むにつれて原水流路の流路断面積が縮小しているので、高回収率運転を行っても原水流路における原水の流速を高く維持できる。
図14Bは、図14Aに示す分離膜エレメント60に使用された分割エレメント81の断面を示している。断面は、集水管21の長手方向に垂直な断面である。複数の分割エレメント81のそれぞれは、外壁部83と、外壁部83の内側に配置された分離膜12とを含む。集水管21の周方向に沿った原水の流れは、複数の分割エレメント81のそれぞれの外壁部83によって遮断されている。このような構成によれば、第1原水流路15と第2原水流路16とを確実に仕切ることができる。第2原水流路16と第3原水流路17とを確実に仕切ることができる。分割エレメント81のそれぞれが独立しているので、第1原水流路15から第2原水流路16に原水がショートカットして流れることを確実に防止できる。第2原水流路16から第3原水流路17に原水がショートカットして流れることを確実に防止できる。
本実施形態によれば、小区画をなす分割エレメント81を流路の単位構造として、各原水流路の流路断面積を調整することが可能である。つまり、分割エレメント81を1単位として、原水の流れを制御することが可能である。
分割エレメント81は、複数の原水スペーサ13及び透過水スペーサ14をさらに備えている。分割エレメント81において、分離膜12は、折り畳まれて外壁部83の内側に配置されている。外壁部83には、集水管21の貫通孔21hに連通する貫通孔83hが設けられている。外壁部83は、例えば、両端が開口した筒の形状を有する。分離膜12のひだとひだとの間に原水スペーサ13及び透過水スペーサ14が交互に配置されている。複数の原水スペーサ13は、1つにつながっていてもよい。透過水スペーサ14は、複数の部分に分かれていてもよい。
外壁部83の材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂で作られた樹脂シートが使用されうる。樹脂シートを折り曲げることによって、筒状の外壁部83が作製されていてもよく、複数の部材を組み合わせることによって外壁部83が作製されていてもよい。筒状の外壁部83の内部に分離膜12、原水スペーサ13及び透過水スペーサ14が配置される。
本実施形態によれば、透過水流路が非常に短い。そのため、分割エレメント81には、薄い透過水スペーサ14を使用することができる。薄い透過水スペーサ14を使用することによって、分離膜エレメント60の膜面積を増やすことができる。透過水スペーサ14の厚さは特に限定されず、5ミル(mil)以下であってもよく、1~5ミルであってもよい。分離膜12の支持体が透過水を流す機能を一定程度有している場合、透過水スペーサ14が省略されてもよい。
図14Cは、分割エレメント81に使用された分離膜12を展開して示している。図14Dは、分割エレメント81における分離膜12、原水スペーサ13、透過水スペーサ14及び仕切り外壁部83の位置関係を示している。
図14Cに示すように、分離膜12の透過側の表面上には、封止樹脂29が設けられている。封止樹脂29は、分離膜12を折りたたみながら貼り合せた際に透過側の空間を形成するように、分離膜12の外周部に沿って設けられている。分離膜12の透過側の空間は、封止樹脂29によって原水流路と隔離された透過水流路として機能する。分離膜12の支持体と外壁部83の内面との隙間が封止樹脂29によって水密にシールされる。透過水流路は、集水管21の貫通孔21hに連通している。
実線で示された位置P1は、山折りの位置を表している。一点鎖線で示された位置P2は、谷折りの位置を示している。図14Cに示すように、分離膜12は、原水スペーサ13及び透過水スペーサ14を交互に挟みながら位置P1及び位置P2においてジグザグに折り畳まれる。
原水は、分離膜12の折り目に平行な方向に直線状に流れる。透過水は、分離膜12の折り目に対して垂直な方向に流れる。
分割エレメント81が部分円環の断面形状を有しているので、この部分円環の内部を分離膜12、原水スペーサ13及び透過水スペーサ14によって隙間なく埋めるために、分離膜12の適切な折り幅は場所によって異なる。外壁部83の内部に大きい隙間が生じないように分離膜12の折り幅を変えることによって、内部に隙間が生じにくい。これにより、原水流路の全体に均一に原水を流すことができる。分割エレメント81には、スパイラル型膜エレメントの膜リーフ11を折り畳んで使用してもよい。
図14Dに示すように、外壁部83は、例えば、4つの部分83a,83a,83b及び83cによって構成されている。封止樹脂29(図14C参照)は、折り畳まれた分離膜12の支持体同士、及び、分離膜12の支持体と外壁部83との間を封止する。これにより、分割エレメント81において、原水流路と透過水流路とが互いに隔離される。
図14Eは、透過水流路を含む位置における分離膜エレメント60の縦断面を示している。図14Eにおいて、矢印は、透過水の流れを表している。図14Fは、原水流路を含む位置における分離膜エレメント60の縦断面を示している。図14Fにおいて、矢印は、原水の流れを示している。なお、図14E及び図14Fでは、先の実施形態で説明したカバー281及びカバー282が省略されている。
図14Eに示すように、複数の分割エレメント81は、それらの透過水流路が集水管21の貫通孔21hに連通するように、集水管21の周囲に配置されている。分割エレメント81と集水管21との間には、封止樹脂34によって閉じられた接続流路36が設けられている。接続流路36は、トリコット編みの編物、メッシュなどの多孔体を集水管21に1周又は複数周巻きつけることによって形成されうる。例えば、透過水スペーサ14が集水管21に巻きつけられて接続流路36が形成される。つまり、接続流路36は、集水管21を360°にわたって取り囲んでいる。そのため、集水管21の貫通孔21hと分割エレメント81の貫通孔83hとの位置合わせが不要であるとともに、集水管21の貫通孔21hの数を減らすことができる。接続流路36の働きによって、分割エレメント81の外壁部83に設けられた貫通孔83hから集水管21の貫通孔21hへと透過水がスムーズに導かれる。
分割エレメント81の透過水流路は、原水流路の入口及び出口に対応する位置に配置された封止樹脂29によって閉じられている。集水管21の長手方向と直交する方向において、分離膜12の端部は、外壁部83に接着されている。詳細には、図14Dに示す分離膜12の谷折り部の折り目の頂部(図中の下側の頂部)が外壁部83に接着される。これにより、分割エレメント81において、原水流路と透過水流路とが互いに隔離される。
図14Fに示すように、集水管21の長手方向において、第1原水流路15の両端は開口している。
図15A、図15B及び図15Cは、変形例に係る分割エレメント85,87及び89の断面を示している。これらの変形例から理解できるように、分離膜12、原水スペーサ13及び透過水スペーサ14の配置及び形状は特に限定されない。
図15Aに示す分割エレメント85において、分離膜12は、折り畳まれている。透過水スペーサ14は、樹木の枝の形状を有している。言い換えれば、透過水流路が樹木の枝の形状を有している。
図15Bに示す分割エレメント87は、折り畳まれた分離膜12を備えている。分離膜12は、透過水スペーサ14を挟むように折り畳まれており、透過水スペーサとともに膜リーフ11を形成している。分離膜12及び透過水スペーサ14を含む膜リーフ11がジグザグに折り畳まれている。分離膜12と分離膜12との間に位置するように、折り畳まれた膜リーフ11の外側に原水スペーサ13が配置されている。
図15Cに示す分割エレメント89において、分離膜12は、透過水スペーサ14を挟むように折り畳まれており、透過水スペーサとともに膜リーフ11を形成している。膜リーフ11は、渦巻き状に巻かれて外壁部83の内側に配置されている。分離膜12と分離膜12との間に位置するように、渦巻き状に巻かれた膜リーフ11の外側に原水スペーサ13が配置されている。原水スペーサ13と透過水スペーサ14との間に分離膜12が位置している。この変形例では、単一の原水スペーサ13が使用されている。
従来のスパイラル型の分離膜エレメントにおいて、集水管に巻きつけられる前の分離膜は、2つ折りの状態で約1mの長さを有しており、長い。そのため、分離膜エレメントの製造設備も必然的に大きい床面積を必要とする。
これに対し、本実施形態の分離膜エレメント60において、分離膜12は、集水管21に巻きつけられていない。分割エレメント81の製造工程は、分割エレメント81を集水管21に取り付けるための工程とは独立して実施されうる。そのため、分離膜エレメント60は、製造設備の床面積の大幅な削減をもたらす。また、必要な封止部を熱融着法などの工法で形成することが可能である。
本実施形態の分離膜エレメント60は、従来のスパイラル型の分離膜エレメントと同じ使い方をすることも可能である。つまり、分離膜エレメント60の一方向にのみ原水を流して原水を処理してもよい。
従来のスパイラル型の分離膜エレメントは、集水管に巻きつけられた複数の膜リーフ及び複数原水スペーサを備えている。各膜リーフは、例えば、1対の分離膜及び透過水スペーサによって構成されている。従来のスパイラル型の分離膜エレメントを製造するとき、膜リーフを形成するために分離膜に接着剤が塗布される。接着剤が固化するタイミングは、膜リーフ及び原水スペーサが集水管に巻き付けられた後に完了するように調整されている。つまり、固化するまでの時間を稼ぐことができる接着剤を使用せざるを得ず、製造に費やされる時間が長くなりがちである。
製造の煩雑さを取り除くために、新規な構造の分離膜エレメントが望まれている。しかし、分離膜エレメントの形状を大きく変更することは、既存の水処理設備の変更が必要になったり、設置スペースの増加を招いたりするので敬遠されがちである。そのため、スパイラル型の分離膜エレメントと同じ大きさ及び同じ形状を有しうる新規な分離膜エレメントが望まれている。
本実施形態の分離膜エレメント60は、上記の要望に応えることができる。本実施形態の分離膜エレメント60は、集水管21と、集水管21の周方向に並べられた複数の分割エレメント81とを備えている。複数の分割エレメント81は、集水管21の長手方向に平行に延びる第1原水流路15を形成している少なくとも1つの分割エレメント81と、第2原水流路16を形成している少なくとも1つの分割エレメント81とを有する。複数の分割エレメント81のそれぞれは、外壁部83と、外壁部83の内側に配置された分離膜12とを含む。集水管21の周方向に沿った原水の流れは、分割エレメント81の外壁部83によって遮断される。本実施形態の分離膜エレメント60は、高回収率運転に適しているだけでなく、上記した要望を満たすことができる。例えば、本実施形態の分離膜エレメント60を既存の圧力容器に入れ、分離膜モジュールを構成することも可能である。
(分離膜エレメントを用いた水道水の浄化)
例えば、分離膜エレメント10を用いて水道水を浄化することができる。第1端面10pを通じて第1原水流路15に水道水を流入させる。第2端面10qを通じて第1原水流路15から水道水を排出させる。水道水の流れ方向を180度反転させ、第2端面10qを通じて、第1原水流路15から排出された水道水を第2原水流路16に流入させる。第1端面10pを通じて第2原水流路16から水道水を排出させる。透過水は、高度に浄化された水であり、高い付加価値を持つ。例えば、水道水が飲用に適していない国及び地域においても、分離膜エレメント10によって処理することによって水道水から飲用水を作ることができる。高回収率運転を行えば、濃縮されて排出され、廃棄される水道水の量も少なく、経済的である。
分離膜エレメント10が逆浸透膜エレメント又はナノ濾過膜エレメントであるとき、水道水からヒ素、重金属などの原子レベルの有害物質も大幅に除去できる。その結果、より安全な飲用水が得られる。硬水から軟水を製造できるという利点もある。
分離膜エレメント20を用いた場合、第1端面10pを通じて第2原水流路16から水道水を流出させ、水道水の流れ方向を再度180度反転させ、第1端面10pを通じて、第2原水流路16から排出された水道水を第3原水流路17に流入させる。第2端面10qを通じて第3原水流路17から水道水を排出させる。透過水は、飲用水としての使用に適している。高回収率運転を行えば、濃縮水の量も少なく、経済的である。
本発明の分離膜エレメントは、コンパクトでありながら高い回収率を達成できるので、設置スペースが限られる場所、例えば、家庭での水道水の浄化に特に適している。
以上の通り、本実施形態の分離膜エレメント10~60によれば、高い回収率にて原水を処理することができる。「高い回収率」は、例えば、50%以上であり、60%以上であってもよい。回収率の上限値は特に限定されない。例えば、分離膜エレメント10~60を用いて高い回収率で水道水を処理することによって、廃棄される水の量を減らすことができる。その結果、水資源を大幅に節約することが可能である。「回収率」は、原水の流量に対する透過水の流量の比率である。「原水の流量」は、第1原水流路15の入口における原水の流量である。
(分離膜モジュールの実施形態)
図16は、本発明の一実施形態に係る分離膜モジュール100の断面を示している。分離膜モジュール100は、ケーシング42及び分離膜エレメント10を備えている。分離膜エレメント10は、ケーシング42の内部に配置されている。ケーシング42の内部空間によって連絡流路27が形成されている。このような構成によれば、ケーシング42を再利用しやすく、分離膜エレメント10のみを交換することによって、分離膜モジュール100の性能を簡単に回復させることができる。
ケーシング42は、原水入口42a、濃縮水出口42b及び透過水出口42cを有する。原水入口42aは、分離膜エレメント10の第1端面10pにおける第1原水流路15の入口に連通している。濃縮水出口42bは、分離膜エレメント10の第1端面10pにおける第2原水流路16の出口に連通している。濃縮水出口42bは、分離膜エレメント10における最も下流側の原水流路の出口に連通していてもよい。透過水出口42cは、集水管21に連通している。
図17A、図17B、図17C、図17D及び図17Eは、それぞれ、変形例に係る分離膜モジュール101,102,103,104及び105の断面を示している。これらの図は、理解を容易にするために集水管21が省略されている。これらの図において、矢印は、原水の流れを示している。
図17Aに示す分離膜モジュール101は、図16を参照して説明した分離膜モジュール100の構成に加えて、パッキン43及びアダプタ44をさらに備えている。パッキン43は、分離膜エレメント10の外周面とケーシング42の内周面との間に配置されており、原水と濃縮水との混合を防止する。パッキン43は、ブラインシールとも呼ばれる。アダプタ44は、第2原水流路16の出口とケーシング42の原水出口42bとを接続している。アダプタ44によって、第1原水流路15に供給されるべき原水と第2原水流路16から排出された原水との混合を防止できる。第1原水流路15は、連絡流路27によって第2原水流路16に接続されている。連絡流路27は、ケーシング42の内部空間の一部である。
図17Bに示す分離膜モジュール102は、図8A、図8B及び図8Cを参照して説明した分離膜エレメント20を備えている。原水入口42aは、ケーシング42の長手方向(円筒の高さ方向)の一方の端面に設けられている。原水出口42bは、ケーシング42の長手方向の他方の端面に設けられている。分離膜エレメント20において、第1原水流路15と第2原水流路16とがカバー281の内部に形成された連絡流路31によって接続されている。第2原水流路16と第3原水流路17とがカバー282の内部に形成された連絡流路32によって接続されている。ケーシング42の内部空間は、パッキン43によって、原水入口42aに連通する空間と原水出口42bに連通する空間とに分かれている。原水入口42aに連通する空間に向かって第1原水流路15が開口している。原水出口42bに連通する空間に向かって第3原水流路17が開口している。
図17Cに示す分離膜モジュール103は、図9A及び図9Bを参照して説明した分離膜エレメント30を備えている。分離膜エレメント30において、第1原水流路15と第2原水流路16とがカバー283の内部に形成された連絡流路38によって接続されている。第2原水流路16と第3原水流路17とがカバー284の内部に形成された連絡流路39によって接続されている。第3原水流路17は、ケーシング42の内部空間を通じて第4原水流路18に接続されている。アダプタ44は、第4原水流路18の出口とケーシング42の原水出口42bとを接続している。
図17Dに示す分離膜モジュール104は、分離膜エレメント70を備えている。分離膜エレメント70は、第1原水流路15、第2原水流路16、第3原水流路17、第4原水流路18及び第5原水流路19を有する。第1原水流路15と第2原水流路16とがカバー291の内部に形成された連絡流路51によって接続されている。第2原水流路16と第3原水流路17とがカバー293の内部に形成された連絡流路52によって接続されている。第3原水流路17と第4原水流路18とがカバー292の内部に形成された連絡流路53によって接続されている。第4原水流路18と第5原水流路19とがカバー294の内部に形成された連絡流路54によって接続されている。ケーシング42の内部空間は、パッキン43によって、原水入口42aに連通する空間と原水出口42bに連通する空間とに分かれている。原水入口42aに連通する空間に向かって第1原水流路15が開口している。原水出口42bに連通する空間に向かって第5原水流路19が開口している。
図17Eに示す分離膜モジュール105は、分離膜エレメント80を備えている。分離膜エレメント80は、第1原水流路15、第2原水流路16、第3原水流路17及び第4原水流路18を有する。第1原水流路15と第2原水流路16とがカバー295の内部に形成された連絡流路55によって接続されている。第2原水流路16と第3原水流路17とがカバー296の内部に形成された連絡流路56によって接続されている。第3原水流路17と第4原水流路18とがカバー297の内部に形成された連絡流路57によって接続されている。連絡流路55及び57のそれぞれは、互いに隣接していない原水流路同士を接続している。アダプタ44は、第4原水流路18の出口とケーシング42の原水出口42bとを接続している。
図17Aから図17Eを参照して説明した分離膜モジュールは、以下のような構成を有する。原水流路の数n(nは2以上の整数)が偶数であるとき、原水入口42aと原水出口42bとが同じ側に位置しているので、ケーシング42の原水出口42bと原水流路とを接続するためのアダプタ44が使用されている。原水流路と原水流路とを接続するための連絡流路の数は(n-1)個である。
原水流路の数nが奇数であるとき、ケーシング42の原水出口42bと原水流路とを接続するためのアダプタ44は不要である。原水流路と原水流路とを接続するための連絡流路の数は(n-1)個である。
原水流路の数によらず、ケーシング42の原水入口42aと第1原水流路15とを接続するためのアダプタは不要である。ケーシング42の原水出口42bと最下流の原水流路とを接続するためのアダプタ44に代えて、ケーシング42の原水入口42aと第1原水流路15とを接続するためのアダプタを用いることも考えられる。しかし、以下の理由により、ケーシング42の原水出口42bと最下流の原水流路とをアダプタ44によって接続することが有利である。
例えば、第1原水流路15の開口面積は、第3原水流路17の開口面積よりも大きい。第1原水流路15と原水入口42aとを接続するためのアダプタの寸法は、第3原水流路17と原水出口42bとを接続するためのアダプタの寸法を上回る。つまり、アダプタ44が出口側に設けられていることは、部品寸法の観点で有利である。また、ケーシング42の原水入口42aにおける原水の圧力は相対的に高く、ケーシング42の原水出口42bにおける原水の圧力は相対的に低い。原水入口42aにアダプタが取り付けられた場合、アダプタの内部が相対的に高圧となり、アダプタの外部が相対的に低圧となる。原水出口42bにアダプタが取り付けられた場合、アダプタの内部が相対的に低圧となり、アダプタの外部が相対的に高圧となる。後者の場合の方がアダプタに耐圧性を付与しやすいので、有利である。
図18Aは、カバー282の一例の斜視図である。図18Aの上図は、カバー282の外面側から見たときの図である。図18Aの下図は、カバー282の内面側から見たときの図である。カバー282は、第1原水流路15に面する開口部15p及び連絡流路32として機能する凹部を有する。
図18Bは、カバー281の一例の斜視図である。図18Bの上図は、カバー281の外面側から見たときの図である。図18Bの下図は、カバー281の内面側から見たときの図である。カバー281は、第3原水流路17に面する開口部17p及び連絡流路31として機能する凹部を有する。
カバー281及び282は、例えば、射出成形によって作製された樹脂部品である。カバー281及び282は、それぞれ、平面視で円形の形状を有する。図18Aに示す構造によれば、カバー282と分離膜エレメントのエレメント本体(積層体22)との接続が容易である。図18Bに示す構造によれば、カバー281と分離膜エレメントのエレメント本体(積層体22)との接続が容易である。
図19は、図18Aに示すカバー282の変形例を示している。図19に示すように、カバー282には、ブラインシール(Uパッキン)を嵌めるための溝282aが設けられていてもよい。溝282aは、カバー282の周方向の全域にわたって設けられている。このような構造によれば、図17Aを参照して説明したパッキン43をカバー282に保持させることが可能である。
図20は、図17Cに示す分離膜モジュール103の分離膜エレメント30に使用されたカバー284の一例の斜視図である。図20の上図は、分離膜エレメント30の外面側から見たときの図である。図20の下図は、分離膜エレメント30の内面側から見たときの図である。カバー284は、第1原水流路15に面する開口部15p及び連絡流路39として機能する凹部を有する。連絡流路39は、第2原水流路16と第3原水流路17とを接続する流路である。カバー284は、第4原水流路18とケーシング42の原水出口42b(図17C参照)とを接続するアダプタ44を含む。アダプタ44として機能するノズル状の部分は、他の部分と一体に形成されている。Oリングなどの封止部材を使用して、アダプタ44をケーシング42の原水出口42bに嵌め合わせることが可能である。
(浄水器の実施形態)
図21は、本発明の一実施形態に係る浄水器の正面図である。浄水器200は、プレフィルタ90、活性炭フィルタ91及び分離膜フィルタ92を備えている。プレフィルタ90、活性炭フィルタ91及び分離膜フィルタ92は、原水がこの順番で流れるように互いに接続されている。プレフィルタ90は、例えば、不織布によって構成されている繊維フィルタである。分離膜フィルタ92には、本実施形態の分離膜エレメント10,20,30,40,50,60,70又は80が使用されうる。このような構成によれば、高い回収率及び高い透過水の流量にて、清浄な水を生成することができる。
原水は、例えば、水道水である。本実施形態の浄水器200は、高い回収率及び高い透過水の流量を達成できるので、水資源の乏しい国及び地域での使用に特に適している。
本実施形態の浄水器200によれば、水道水は、プレフィルタ90に通されて浄化される。プレフィルタ90によって浄化された水道水が分離膜フィルタ92によってさらに浄化される。詳細には、水道水は、プレフィルタ90に通されて浄化される。プレフィルタ90は繊維フィルタであり、繊維によって固形分がこしとられる。プレフィルタ90によって浄化された水道水がさらに活性炭フィルタ91に通されて浄化される。活性炭フィルタ91は、水道水に溶解している成分を吸着して除去する。特に、分離膜フィルタ92に分離膜として逆浸透膜が用いられている場合、逆浸透膜は塩素によってダメージを受けやすい。殺菌のために水道水に添加されている塩素成分を活性炭フィルタ91によって除去することによって、分離膜フィルタ92の逆浸透膜を保護することができる。プレフィルタ90及び活性炭フィルタ91によって浄化された水道水が分離膜フィルタ92によってさらに浄化される。浄水器200によって生成された透過水は、極めて清浄であり、飲用水としての使用に適している。
プレフィルタ90、活性炭フィルタ91及び分離膜フィルタ92は、それぞれ、ケーシングに収められており、浄水器200の本体部93に取り付けられている。プレフィルタ90、活性炭フィルタ91及び分離膜フィルタ92は、本体部93から取り外し可能であり、必要に応じて交換される。
本発明の分離膜エレメントの優位性を確かめるために、以下の実験を行った。実施例の分離膜エレメントとして、図13A及び図13Bを参照して説明した分離膜エレメントを作製した。第1原水流路、第2原水流路及び第3原水流路のそれぞれの流路断面積は等しかった。参照例の分離膜エレメントとして、図22に示す構造を有する積層型の分離膜エレメントを作製した。この分離膜エレメントは、連絡流路を有さず、原水は、1方向にのみ流れる。
実施例及び参照例の分離膜エレメントにおける透過水の流量(cm3/min)を以下の方法で測定した。原水として、NaClを750重量ppmの濃度で含むNaCl水溶液を用いた。分離膜エレメントの入口における原水の圧力を0.3MPaに設定し、分離膜エレメントの下流側に配置された弁の開度を変更しながら、回収率と透過水の流量との関係を調べた。結果を図23に示す。
図23において、横軸は透過水の回収率を示している。縦軸は透過水の流量を示している。図23のグラフから明らかなように、実験を行った全ての回収率において、実施例の分離膜エレメントの透過水の流量は、参照例の分離膜エレメントの透過水の流量を大幅に上回っていた。このような大きな差を生じさせた要因として、下記が挙げられる。
実施例の分離膜エレメントの原水流路の流路断面積は、参照例の分離膜エレメントの原水流路の流路断面積の1/3である。そのため、濃縮水の流量が同一である場合、実施例の分離膜エレメントの原水流路の出口における濃縮水の流速は、参照例の分離膜エレメントの原水流路の出口における濃縮水の流速の3倍である。濃縮水の流速が速いと濃度分極を抑えることができるので、透過水の流量は増加する。
例えば、50%の回収率で比較すると、実施例における透過水の流量は、参照例における透過水の流量の約1.6倍であった。同一の回収率で比較する場合、透過水の流量が60%増加することは、濃縮水の流量が60%増加することを意味する。実施例の分離膜エレメントにおける濃縮水の流量は、参照例の分離膜エレメントにおける濃縮水の1.6倍であるから、実施例の分離膜エレメントの原水流路の出口における濃縮水の流速は、参照例の分離膜エレメントの原水流路の出口における濃縮水の流速と比較して、約5倍(3×1.6=4.8)となる。この大きな濃縮水の流速の差が透過水の流量の大きな差をもたらしていると言える。