JP7103631B2 - 超音速機及びソニックブームの低減方法 - Google Patents

超音速機及びソニックブームの低減方法 Download PDF

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Description

本発明は、超音速旅客機などの超音速機及びそのような超音速機におけるソニックブームの低減方法に関する。
航空機が上空を超音速で飛行するとき、機体各部から発生する衝撃波が大気中を長い距離伝播するに従い統合し、地上では、2つの急激な圧力変動を引き起こすN型の圧力波形として観測され、人には瞬間的な爆音として聞こえる。これが一般に「ソニックブーム」と呼ばれているものである。西暦2003年に退役したコンコルドは、ソニックブームにより地上を超音速で飛行することができず、海上のみに制限されていたため、ソニックブームは将来の超音速旅客機実現のための大きな技術課題になっている。
機体形状設計によりソニックブームを低減する技術は従来からある。非特許文献1は航空機の設計条件(機体長、機体重量、飛行マッハ数、飛行高度、等)に対してソニックブームを低減するための機体等価断面積分布(機体の断面積と揚力と等価な断面積の合計)を算出する技術であり、非特許文献2及び非特許文献3では非特許文献1の技術を用いて具体的な機体形状の設計を行っている。また、特許文献1で提唱されたソニックブーム低減機体形状コンセプトは実験機に適用され飛行実証されている。
特許第5057374号公報
Christine M. Darden:Sonic-Boom Minimization With Nose-Bluntness Relaxation, NASA TP-1348, 1979. Todd E. Magee, Peter A. Wilcox, Spencer R. Fugal, and Kurt E. Acheson, Eric E. Adamson, Alicia L. Bidwell, Stephen G. Shaw: System-Level Experimental Validations for Supersonic Commercial Transport Aircraft Entering Service in the 2018-2020 Time Period Phase I Final Report, NASA/CR-2013-217797, 2013. John Morgenstern, Nicole Norstrud, Jack Sokhey. Steve Martens, and Juan J. Alonso: Advanced Concept Studies for Supersonic Commercial Transports Entering Service in the 2018 to 2020 Period Phase IFinal Report, NASA/CR-2013―217820,2013.
特許文献1、非特許文献1~3は、いずれも機体形状設計によりソニックブームを低減する技術を開示しているが、実機に適用するには、エンジン排気がソニックブームに与える影響も考慮する必要がある。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、エンジン排気によるソニックブームを低減することができる超音速機及びソニックブームの低減方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る超音速機は、機体の胴体に取り付けられたエンジンナセルと、前記エンジンナセルに収容されたジェットエンジンから噴出されるエンジン排気を挟むように前記機体に配置され、前記エンジン排気の前記機体下方への回り込みを抑制する一対の遮蔽板とを具備する。
本発明によれば、一対の遮蔽板によりエンジン排気の機体下方への回り込みが抑制され、エンジン排気によるソニックブームを低減することができる。
本発明の一形態に係る超音速機では、エンジンナセルより後方に配置された水平尾翼を有し、前記一対の遮蔽板は、前記水平尾翼に配置されている。
各前記一対の遮蔽板は、前記機体の外側に傾斜してもよい。
これにより、遮蔽板による圧力遮蔽を効果的に行い、ソニックブームを低減することができる。
各前記一対の遮蔽板が傾斜する角度は、マルチポール法における3次ポールを指標として定められてもよい。
これにより、遮蔽板による圧力遮蔽を効果的に行い、ソニックブームを低減することができる。
各前記一対の遮蔽板は、前記機体の内側にキャンバを有してもよい。
一対の遮蔽板は負圧を抑えるだけでなく、積極的に正圧を作り出すことでソニックブームを低減しているが、遮蔽板の内側にキャンバを有することでこの正圧を強めることができ、遮蔽板によるソニックブーム低減の効果を高めることができる。
前記一対の遮蔽板は、前記一対の遮蔽板の対向間隔が前記機体の前方から後方に行くに従い広くなってもよい。
この構成の一対の遮蔽板により正圧を高めることができ、遮蔽板によるソニックブーム低減の効果を高めることができる。
本発明の一形態に係る超音速機は、前記エンジンナセルより後方に設けられた後胴揚力面を有し、前記一対の遮蔽板は、前記後胴揚力面に配置され、V尾翼としての機能を有する。
各前記一対の遮蔽板は、前記一対の遮蔽板を設けたことでソニックブームを低減できる位置から逆マッハ円錐を描き、前記逆マッハ円錐に基づく位置に配置されてもよい。
これにより、最も効果の高い位置でソニックブームを低減することができる。
本発明の一形態に係るソニックブームの低減方法は、機体の胴体にエンジンナセルが取り付けられた超音速機のソニックブームを低減する方法であって、前記エンジンナセルに収容されたジェットエンジンから噴出されるエンジン排気を挟むように一対の遮蔽板を前記機体に配置し、前記一対の遮蔽板により前記エンジン排気の前記機体下方への回り込みを抑制する。
前記一対の遮蔽板を配置したことで圧力を上昇させたい位置から逆マッハ円錐を描き、前記逆マッハ円錐に基づいた位置に前記一対の遮蔽板を配置してもよい。典型的には、前記一対の遮蔽板を配置したことで圧力を上昇させたい位置であって、機体の中心を垂直に横切る対称面内にある第1の位置と、前記一対の遮蔽板を配置したことで圧力を上昇させたい位置であって、前記第1の位置から前記機体の胴体周りの周方向の第1及び第2の方向に所定の角度ずらした第2の位置及び第3の位置を設定し、前記第1~3の位置からそれぞれ第1~3の逆マッハ円錐を描き、前記第1の逆マッハ円錐と前記第2の逆マッハ円錐が交差する放物線上の点に前記一対の遮蔽板のうち前記第2の方向側にある遮蔽板の後端を位置させ、前記第1の逆マッハ円錐と前記第3の逆マッハ円錐が交差する放物線上の点に前記一対の遮蔽板のうち前記第1の方向側にある遮蔽板の後端を位置させてもよい。
各前記一対の遮蔽板が前記機体の外側に傾斜する角度をマルチポール法における3次ポールを指標として定めてもよい。典型的には、前記一対の遮蔽板がある場合の前記機体の直下におけるマルチポール法による圧力分布の修正量と前記一対の遮蔽板がない場合の前記機体の直下におけるマルチポール法による圧力分布の修正量との差分、又は前記一対の遮蔽板がある場合の三次ポール分布と前記一対の遮蔽板がない場合の三次ポール分布との差分を指標として各前記一対の遮蔽板が前記機体の外側に傾斜する角度を定めてもよい。
本発明により、エンジン排気によるソニックブームを低減することができる。
本発明の一実施形態に係る超音速機の外観を示す平面図である。 図1に示した超音速機の外観を示す側面図である。 図1に示した超音速機の外観を示す正面図である。 本発明の一実施形態を説明する上で必要な座標軸の定義を示す図である。 本発明の一実施形態を説明する上で必要な周方向の角度の定義を示す図である。 本発明の一実施形態を説明する上で必要な周方向に所定角度ずらした位置の定義を示す図である。 本発明の一実施形態に係るフィンの位置を逆マッハ円錐によって定める際の逆マッハ円錐の始点を決めるため、Φ=0度における座標軸上での圧力波形を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係るフィンの位置を逆マッハ円錐によって定める際の逆マッハ円錐の始点を決めるため、Φ=30度における座標軸上での圧力波形を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係るフィンの位置を逆マッハ円錐によって定める際に各位置から逆マッハ円錐を描いた状態を示す図である。 本発明の一実施形態に係るフィンの角度の定義を示す図である。 マルチポール法におけるポール次数と相関係数との関係を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係るマルチポール法による圧力分布の修正量のフィン有りとフィンなしの差分の波形(波形A)及び三次ポール分布のフィン有りとフィンなしの差分の波形(波形B)の例を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係るフィンの側面図である。 図13におけるA-A断面の形状を示す図である。 本発明の一実施形態に係るフィンの効果を確認するためのフィンがある場合及びない場合の機体直下近傍の圧力分布を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係るフィンの効果を確認するためのフィンがある場合及びない場合の機体直下地上のソニックブーム波形を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係るX軸の所定位置におけるX軸と直交する断面の圧力係数の分布を示す図である。 図17の比較例としてフィンがない場合のX軸の所定位置におけるX軸と直交する断面の圧力係数の分布を示す図である。 本発明の一実施形態に係る対称面の圧力係数の分布を示す図である。 図19の比較例としてフィンがない場合の対称面の圧力係数の分布を示す図である。 本発明の他の実施形態に係る超音速機の外観を示す平面図である。 図21に示した超音速機の外観を示す側面図である。 図21に示した超音速機の外観を示す正面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
(超音速機の構成)
図1は本発明の一実施形態に係る超音速機の外観を示す平面図、図2はその側面図、図3はその正面図である。
図1~図3に示すようにこの実施形態に係る超音速機は、機体10の胴体11に取り付けられた一対のエンジンナセル12R、12Lと、エンジンナセル12R、12Lに収容されたジェットエンジン(図示を省略)から噴出されるエンジン排気15の機体10下方への回り込みを抑制する一対の遮蔽板としてのフィン13R、13Lと、エンジンナセル12R、12Lより後方に配置された一対の水平尾翼14R、14Lとを有する。
フィン13R、13Lは、エンジン排気15を挟むように機体10のうち典型的には水平尾翼14R、14Lにそれぞれ配置される。
より詳細には、一対のフィン13R、13L及び一対の水平尾翼14R、14Lは、それぞれ、機体10の機軸を垂直に横切る対称面16に対して面対称に配置され、フィン13Rは、水平尾翼14R上に取り付けられ、フィン13Lは、水平尾翼14L上に取り付けられる。
図4は、この実施形態を説明する上で必要な座標軸の定義を示す図である。
この実施形態においては、胴体11の長さを1としている。座標軸Xの原点(X=0)は、ノーズ先端18から発生するマッハ線17と機体より下方にrだけ離れたX軸との交点、つまりノーズ先端18からの距離=β×rだけ後方にずれた位置とした。
ここで、設計効率を考慮してr=0.3とした。rの値が大きいほど解析時間が増加し、効率的な設計ができなくなるからである。
また、Mach数は、超音速機の巡航速度で、1.6とした。
β×rは、
β×r=sqrt(Mach-1)×r=sqrt(1.6-1)×0.3=0.375
となる。
(フィン位置の設定)
この実施形態では、フィン13R、13Lの位置は逆マッハ円錐に基づき定めている。
図5は、この実施形態を説明する上で必要な周方向の角度の定義を示す図である。また、図6は、この実施形態を説明する上で必要な周方向に所定角度ずらした点の定義を示す図である。
この実施形態においては、図5に示すように、機体10の機軸を垂直に横切る対称面16の下側を周方向の角度Φ=0度として(この面を対称面16Aとする。)、ここから胴体周りの周方向のうち機体1の正面から見て反時計周り正、時計周りを負とする。Φ=30度とは、図5に示すように、機体1の正面から見て反時計周りに30°回転した面16Bである。図6に示すように、後述する点AはΦ=0度の対称面16Aに含まれ、点BはΦ=30度の面16Bに含まれ、点B'はΦ=-30度の面16B'に含まれる。
まず、ソニックブーム低減の観点から圧力を上昇させる近傍場位置を定める。
ここで、この実施形態に係るフィンの位置を逆マッハ円錐によって定める際の逆マッハ円錐の始点を決めるため、対称面16AにおけるX座標軸上での圧力波形を図7のグラフ、対称面16を30度回転させた面16BにおけるX座標軸上での圧力波形を図8のグラフに示す。図7及び図8において、波形70dはフィンがある場合、波形70eはフィンがない場合を示している。図7及び図8において、Y軸のpは一様流静圧であり、dpは一様流静圧からの差分である。
図7の波形70d、70eから対称面16Aで圧力を上昇させるA点、図8の波形70d、70eからΦ=30度の面16Bで圧力を上昇させるB点を決める(ステップ1)。
次に、図9に示すように、点A及び点Bの2点からそれぞれ逆マッハ円錐20A、20Bを描き、これらが交差する放物線上の点をフィン13Lの翼端後縁の位置として、フィン13Lの位置を設定する(ステップ2)。
そして、ステップ2で設定したフィン13Lの位置が排気ジェット遮蔽に好ましい位置かの観点を加え、つまり必要に応じて前記放物線上の点、もしくは、A点及びB点を修正して上記のステップ1及びステップ2を繰り返す(ステップ3)。
排気ジェット遮蔽に好ましい位置かの観点とは、例えば逆マッハ円錐から得られた位置が排気ジェットのはるか上方となった場合には遮蔽としての意味がない等から判断する。
(フィン傾斜角の設定)
図10はこの実施形態に係るフィンの角度の定義を示す図である。
この実施形態では、図10に示すように、一対のフィン13R、13Lは、それぞれ、機体の外側に傾斜している。この傾斜角度をフィンの角度とする。このようにフィン13R、13Lを適切に傾斜させることで、ソニックブームを低減することができる。
図4に示したように、X軸は機体1から胴体長から0.3倍離れた位置となっている。この位置が機体1から離れるにつれて圧力波形は変化する(後述する図19や図20を参照)。変化の要因の一つとして、膨張波が機体10の周方向に伝播することで、3次元的に周方向に圧力が変化することが挙げられる。ここで、X軸上の圧力分布を基準波形とする。
地上におけるソニックブームの波形を計算する際に(後述の図16を参照)、この基準波形を使うと、X軸の位置から地上に伝播する中で上記の3次元的な周方向の圧力伝播が考慮されない。そこで、この実施形態では、この問題を解決するため、マルチポール(multipole)法を採用する。
ここで、3次元的な周方向の圧力伝播を考慮して基準波形を修正した仮想的な圧力波形を用いる。この仮想的な圧力波形をマルチポール波形とする。基準波形の修正は、より具体的には、機体を等価なマルチポール分布に置き換え、ポール次数毎に与えられる周方向圧力伝播の強度減衰を反映して、周方向圧力伝播による圧力波形の変形を仮想的に基準波形に付加することである。
そして、マルチポール波形-基準波形を修正量とする。
この修正量(=マルチポール波形-基準波形)が大きいと、3次元的な周方向の圧力伝播の影響が大きいことになる。
この実施形態では、エンジン排気15が作り出す圧力波の3次元的な周方向の圧力伝播をフィン13R、13Lによって小さくするものであるので、フィン傾斜角の設定はこの修正量を指標とする。
図11は、上記の修正量に関するフィンが有る場合とない場合の差分と、マルチポール法におけるポールの分布に関するフィンが有る場合とない場合の差分との相関に関する、ポール次数と相関係数との関係を示すグラフである。この図から分かるように、3次ポールの相関係数が大きい。すなわち、3次ポールがフィン13R、13Lによる圧力遮蔽を最もよく表現できる。従って、3次ポール分布を指標としてフィン傾斜角を設定することが効果的といえる。この3次ポール分布は、より具体的には、流れ場の上下非対称性の強さを表す指標である。この3次ポールの指標をマルチポールの相関とする。
上記の修正量のフィン有りとフィンなしの差分の波形(波形A)及びマルチポールの相関のフィン有りとフィンなしの差分の波形(波形B)の例を図12のグラフに示す。
ここで、波形Aから修正量の差分の0.95~1の間の山は、フィン有りの場合はこの位置における修正量がフィンなしの場合よりも大きいことを示している。フィンがないとエンジン排気が作り出す膨張波が3次元的に周方向に回り込むため、修正量が負となる。フィンが有るとこの回り込みが抑制されるため、負側の修正量が小さくなることで山ができることになる。この膨張波の回り込みの抑制がソニックブーム低減化に効いているので、この山が高くなるようにフィン傾斜角を設定すればよい。
また、修正量の差分の波形Aとマルチポールの相関の差分の波形Bとを比較すると、これらの波形は横軸の0.95~1の間で山が有るという点で相関がある。従って、上記と同様に、マルチポールの相関の差分の波形における0.95~1の山を高くするようにフィン傾斜角を設定してもソニックブーム低減化を実現できる。
本発明においては、修正量を指標としてフィン傾斜角を設定してもよく、マルチポールの相関を指標してフィン傾斜角を設定してもよく、更に修正量及びマルチポールの相関の両方を指標としてフィン傾斜角を設定してもよい。
(フィンのキャンバなどの設定)
図13はフィン13Rの側面図であり、図14は図13に示したフィン13RのA-A断面図である。なお、フィン13Lは、対称面16に対してフィン13Rと面対称となっている。
図14に示すように、フィン13R、13Lは、ぞれぞれ、機体10の内側に向かうキャンバ21を有する。
ここで、フィン13R、13Lの翼端後縁から延びるマッハ円錐と対称面16との交線は、圧力分布とほぼ一致する。また、フィン13R、13Lは負圧を抑えるだけでなく、積極的に正圧を作り出す。キャンバ21はこの正圧を強める。従って、フィン13R、13Lは、キャンバ21を有することで、機体の内側に向かってより強い衝撃波が形成され、これにより対称面16における弓型衝撃波が強まり、ソニックブームをより低減することができる。
また、図1に示すように、フィン13Rとフィン13Lとの対向間隔Cは、機体10の前方から後方に行くに従い広くなっている。フィン13R、13Lをこのように構成することで、キャンバと同様に強い弓形衝撃波が形成され、ソニックブームをより低減することができる。
なお、フィン13R、13Lのフィン形状や対向間隔Cは、上述したフィン傾斜角の設定と同様に、マルチポール(multipole)法を用いて設定することで、ソニックブーム低減の効果を高めることができる。
(フィンの効果)
この実施形態に係る超音速機は、フィン13R、13Lを有することで、エンジン排気15がソニックブームに及ぼす影響を低減することができる。
ここで、図15は、フィン13R、13Lがある場合(70d)及びない場合(70e)の機体直下近傍場の圧力波形を示すグラフである。図16は、フィン13R、13Lがある場合(70d)及びない場合(70e)の機体直下地上のソニックブーム波形を示すグラフである。
計算条件は、
高度:14.4km
マッハ数:1.6
迎角:2.76度
100%推力
とした。
図15及び図16から、いずれの場合もフィン13R、13Lを有する方が、圧力が上がっている。これから、フィン13R、13Lを有することで、エンジン排気15のソニックブームに及ぼす影響を低減していることが分かる。
図17及び図18はX軸の所定位置(フィンの位置付近)におけるX軸と直交する断面の圧力係数の分布を示しており、図17はフィン13R、13Lを有する場合、図18はフィンがない場合である。
図17の矢印Dの領域をみて、それに対応する図18の領域と比較すると、図17に示すフィン13R、13Lを有する場合の方が圧力係数が高く、膨張波の回り込みを抑えていることが分かる。
また、図19及び図20は対称面16の圧力係数の分布を示しており、図19はフィン13R、13Lを有する場合、図20はフィンがない場合である。
図19と図20とを比較すると、フィン13R、13Lを有する場合の方か、弓形衝撃波が強く、圧力が上昇していることが分かる。これは、対称面16においてもフィン13R、13Lによる膨張波回り込みの抑制効果が確認できることを意味する。
以上の観点から、フィン13R、13Lを有することで、エンジン排気15のソニックブームに及ぼす影響を低減していることが分かる。
<第2の実施形態>
本発明は、上記の実施形態で示した構成の超音速機だけでなく、様々形態の超音速機に提供可能である。
図21は第2の実施形態に係る超音速機の外観を示す平面図、図22はその側面図、図23はその正面図である。
図21~図23に示すようにこの実施形態に係る超音速機は、機体110の胴体111に取り付けられた一対のエンジンナセル112R、112Lと、エンジンナセル112R、112Lの後方に配置された一対の遮蔽板113R、113Lとを有する。
一対の遮蔽板113R、113Lは、エンジンナセル112R、112Lより後方に設けられた後胴揚力面114に機体外側に傾斜するように取り付けられている。
一対の遮蔽板113R、113Lは、エンジンナセル112R、112Lに収容されたジェットエンジン(図示を省略)から噴出されるエンジン排気15の胴体111への回り込みを抑制すると共に、V尾翼としての機能を有する。
この実施形態に係る超音速機も、第1の実施形態で説明したとおり、一対の遮蔽板113R、113Lを有することで、ソニックブームを低減することができる。
<その他>
本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲において様々に変形して或いは応用して実施することが可能である。そのような実施の範囲も本発明の技術的範囲の属する。
1 :機体
10 :機体
11 :胴体
12L :エンジンナセル
12R :エンジンナセル
13L :フィン
13R :フィン
14L :水平尾翼
14R :水平尾翼
15 :エンジン排気
16 :対称面
16A :対称面
16B :面
16B' :面
20A :逆マッハ円錐
20B :逆マッハ円錐
20B' :逆マッハ円錐
21 :キャンバ
110 :機体
111 :胴体
112L :エンジンナセル
112R :エンジンナセル
113L :遮蔽板
113R :遮蔽板
114 :後胴揚力面
C :対向間隔
Φ :角度

Claims (11)

  1. 機体の胴体に取り付けられたエンジンナセルと、
    前記エンジンナセルに収容されたジェットエンジンから噴出されるエンジン排気を挟むように前記機体に配置され、前記エンジン排気の前記機体下方への回り込みを抑制する一対の遮蔽板と
    を具備し、
    前記一対の遮蔽板の翼端後縁は、前記一対の遮蔽板を配置したことで圧力が上昇する位置を始点として描かれる逆マッハ円錐上に配置される
    超音速機。
  2. 請求項1に記載の超音速機であって、
    前記エンジンナセルより後方に配置された水平尾翼を有し、
    前記一対の遮蔽板は、前記水平尾翼に配置されている
    超音速機。
  3. 請求項1又は2に記載の超音速機であって、
    各前記一対の遮蔽板は、前記機体の外側に傾斜する、
    超音速機。
  4. 請求項3に記載の超音速機であって、
    各前記一対の遮蔽板が傾斜する角度は、マルチポール法における3次ポールを指標として定められている
    超音速機。
  5. 請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の超音速機であって、
    各前記一対の遮蔽板は、前記機体の内側にキャンバを有する
    超音速機。
  6. 請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の超音速機であって、
    前記一対の遮蔽板は、前記一対の遮蔽板の対向間隔が前記機体の前方から後方に行くに従い広くなる
    超音速機。
  7. 請求項1に記載の超音速機であって、
    前記エンジンナセルより後方に設けられた後胴揚力面を有し、
    前記一対の遮蔽板は、前記後胴揚力面に配置され、V尾翼としての機能を有する
    超音速機。
  8. 機体の胴体にエンジンナセルが取り付けられ、前記エンジンナセルに収容されたジェットエンジンから噴出されるエンジン排気を挟むように一対の遮蔽板が前記機体に配置された超音速機のソニックブームを低減する方法であって、
    前記一対の遮蔽板を配置したことで圧力を上昇させたい位置から逆マッハ円錐を描き、
    前記逆マッハ円錐に基づいた位置に前記一対の遮蔽板を配置することで、
    前記一対の遮蔽板により前記エンジン排気の前記機体下方への回り込みを抑制する
    ソニックブームの低減方法。
  9. 請求項に記載のソニックブームの低減方法であって、
    前記一対の遮蔽板を配置したことで圧力を上昇させたい位置であって、機体の中心を垂直に横切る対称面内にある第1の位置と、前記一対の遮蔽板を配置したことで圧力を上昇させたい位置であって、前記第1の位置から前記機体の胴体周りの周方向の第1及び第2の方向に所定の角度ずらした第2の位置及び第3の位置を設定し、
    前記第1~3の位置からそれぞれ第1~3の逆マッハ円錐を描き、
    前記第1の逆マッハ円錐と前記第2の逆マッハ円錐が交差する放物線上の点に前記一対の遮蔽板のうち前記第2の方向側にある遮蔽板の後端を位置させ、
    前記第1の逆マッハ円錐と前記第3の逆マッハ円錐が交差する放物線上の点に前記一対の遮蔽板のうち前記第1の方向側にある遮蔽板の後端を位置させる
    ソニックブームの低減方法。
  10. 請求項8又は9に記載のソニックブームの低減方法であって、
    各前記一対の遮蔽板が前記機体の外側に傾斜する角度をマルチポール法における3次ポールを指標として定める
    ソニックブームの低減方法。
  11. 請求項10に記載のソニックブームの低減方法であって、
    前記一対の遮蔽板がある場合の前記機体の直下におけるマルチポール法による圧力分布の修正量と前記一対の遮蔽板がない場合の前記機体の直下におけるマルチポール法による圧力分布の修正量との差分、又は前記一対の遮蔽板がある場合の三次ポール分布と前記一対の遮蔽板がない場合の三次ポール分布との差分を指標として各前記一対の遮蔽板が前記機体の外側に傾斜する角度を定める
    ソニックブームの低減方法。
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