JP7101383B2 - 三酸化タングステンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、三酸化タングステンの製造方法に関する。
三酸化タングステン(WO)は、可視光応答型の光触媒材料や、エレクトロクロミズムを示す物質として知られている。
三酸化タングステンは、Monoclinic(単斜晶)、Hexagonal(六方晶)、Orthorhombic(斜方晶)、Tetragonal(正方晶)、Cubic(立方晶)等の結晶構造をとる。そして、三酸化タングステンは、室温では最安定状態の単斜晶の結晶構造を取り易い。すなわち、三酸化タングステンは、室温においては、Monoclinic-WO(単斜晶WO、以下「m-WO」とも記載する。)になり易い
一方、三酸化タングステンの準安定構造であるHexagonal-WO(六方晶WO、以下「h―WO」とも記載する。)は、内部のOpen Channelに起因したインターカレーション(intercalation)反応を示すことから注目を集めている。
h-WOを含む三酸化タングステンや、その合成方法については従来から各種報告がなされている。
例えば非特許文献1により初めてh-WOを合成したことが報告されており、脱水法によりh-WOを合成したことが開示されている。
その後、脱水法以外にも、アンモニウムタングステンブロンズの酸化や、金属タングステンの酸化、噴霧熱分解法、NaSO添加による脱水法、水熱合成法等による、h-WOの合成方法が検討されてきた。
例えば、非特許文献2には噴霧熱分解法により、アモルファスガラス基板上に六方晶系、及び単斜晶系のWOエレクトロクロミック薄膜を形成したことが開示されている。
非特許文献3には、原料にパラタングステン酸アンモニウム(ATP:ammonium tungstate pentahydrate)を用い、噴霧熱分解法によりWOナノ粒子の合成を行い、原料濃度や合成温度がWOの結晶相や粒子形状に与える影響を調べた例が開示されている。
具体的には、噴霧熱分解法により600~1300℃の様々な合成温度で三酸化タングステン粒子を合成した例が開示されている。そして、XRDパターンの結果によれば、合成温度が700℃~1050℃ではm-WOが、600℃、または1100℃~1300℃ではm-WOと、h-WOとの2種類の結晶構造を含む三酸化タングステン粒子が得られることが示されている。また、合成温度等を変化させることで、三酸化タングステンの粒子サイズを58nm~677nmの範囲でコントロールできることも開示されている。
特許文献1には、周期表上の4族、5族および6族金属からなる群より選択される1または複数の金属を含む水溶性の金属化合物と、アンモニアまたはアンモニウムイオンと、ヒドロキシル基およびカルボキシル基からなる群より選択され、前記金属に配位可能な2以上の官能基を有する炭素数2~10の水溶性有機化合物とを含む錯体水溶液を乾燥させて得られる固体を熱処理して、タングステンブロンズ構造を有するオキソ金属酸アンモニウムと、前記水溶性有機化合物または該化合物の熱分解物とを含む中間体を生成させる工程と、前記中間体を熱分解して金属酸化物微粒子を生成させる工程とを有することを特徴とする金属酸化物微粒子の製造方法が開示されている。また、金属としてタングステンが挙げられ、酸化タングステン微粒子を製造した例も開示されている。
B.Gerand, et al., "Structural study of a new hexagonal form of tungsten trioxide.", Journal of Solid State Chemistry, 1979, Vol.29, Issue3, P.429-434 Jesus M. Ortega, et al., "Structural and electrochemical studies of WO3 films deposited by pulsed spray pyrolysis." Solar energy materials and solar cells, 2006, Vol.90, Issue15 , P.2471-2479 Osi Arutanti, et al., "Controllable crystallite and particle sizes of WO3 particles prepared by a spray‐pyrolysis method and their photocatalytic activity." AIChE Journal, 2014, Vol.60, No.1, P.41-49
特開2013-075778号公報
上述のように、非特許文献1~非特許文献3においては、h-WOを含む三酸化タングステンの合成について各種検討がなされてきた。
しかしながら、非特許文献3においても例えば単斜晶であるm-WOと、六方晶であるh-WOとが共にXRDパターンで確認できる程度の割合で含有する三酸化タングステンが開示されているのみであった。このため、六方晶であるh-WOを主成分として含む三酸化タングステンの製造方法は開示されていなかった。また、特許文献1には酸化タングステンの結晶構造について検討がなされていなかった。
一方、h-WOは、その結晶構造に由来してインターカレーション反応を示すことなどから、その物性に注目が集まっており、六方晶の三酸化タングステンを主成分として含む三酸化タングステンの製造方法が求められていた。
上記従来技術の問題に鑑み、本発明の一側面では、六方晶の三酸化タングステンを主成分として含む三酸化タングステンの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明の一側面では、
被処理物である、タングステン源を含む溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、
前記被処理物を、1000℃まで昇温する昇温工程と、
前記被処理物を、1000℃以上で10秒以上熱処理する熱処理工程と、を有し、
前記昇温工程に単位時間あたりに供給される前記タングステン源を含む溶液の液滴の合計した体積が0.3mL/min以下であり、
かつ前記昇温工程に供給される、前記タングステン源を含む溶液の液滴の個数密度が6×10 12 個/m 以下である三酸化タングステンの製造方法を提供する。

本発明の一側面によれば、六方晶の三酸化タングステンを主成分として含む三酸化タングステンの製造方法を提供することができる。
本実施形態の三酸化タングステンの製造方法に好適に用いることができる三酸化タングステン製造装置の模式図 実施例1で用いた三酸化タングステン製造装置の反応部の温度分布測定結果 実施例1、比較例1、2で得られた三酸化タングステンのXRDパターン 実施例1、比較例1、2で得られた三酸化タングステンについて、リートベルト解析により求めたh-WOとm-WOの質量割合 実施例1で得られた三酸化タングステンのSEM像 実施例1で得られた三酸化タングステンのTEM像 実施例1、比較例1で得られた三酸化タングステンの窒素吸脱着曲線とCO吸着曲線 比較例1で得られた三酸化タングステンのSEM像 比較例1で得られた三酸化タングステンのTEM像 比較例2で得られた三酸化タングステンのSEM像
本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)に係る三酸化タングステンの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許の請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
以下、本実施形態の三酸化タングステンの製造方法の一構成例について説明する。
本実施形態の三酸化タングステンの製造方法は、以下の工程を有することができる。
被処理物である、タングステン源を含む溶液の液滴を形成する液滴形成工程。
被処理物を、1000℃まで昇温する昇温工程。
被処理物を、1000℃以上で10秒以上熱処理する熱処理工程。
酸化物ナノ粒子の合成方法として従来から噴霧熱分解法が知られている。噴霧熱分解法では、酸化物の原料溶液を液滴化し、この液滴を原料の熱分解温度以上の領域にガス流とともに供給して、溶媒の蒸発、溶質の熱分解を経て、目的物である酸化物ナノ粒子を製造することができる。
しかしながら、非特許文献3に開示されているように、三酸化タングステンを生成した場合、m-WOと、h-WOとがXRDパターンで確認できる程度の割合で含む三酸化タングステンが得られ、h-WOを主成分とする三酸化タングステンは得られていなかった。
一方、噴霧熱分解法は、連続かつ迅速にワンステップで目的化合物の生成を行なうことができるため、工業化に際して有力な粒子合成方法である。そこで、本発明の発明者らは、噴霧熱分解法による、六方晶の三酸化タングステンを主成分として含む三酸化タングステンの製造方法について鋭意検討を行い、本発明を完成させた。
以下、本実施形態の三酸化タングステンの製造方法について、工程ごとに説明する。
(液滴形成工程)
液滴形成工程では、被処理物である、すなわち原料である、タングステン源を含む溶液の液滴を形成することができる。
液滴を形成する具体的な手段は特に限定されない。例えばスプレーノズルを用いてタングステン源を含む溶液の液滴を形成する方法や、タングステン源を含む溶液に対して超音波照射を行い、液滴を形成する方法、二流体ノズルを用いて液滴を形成する方法、遠心アトマイザーを初めとした各種アトマイザーを用いて液滴を形成する方法等が挙げられる。
特に微細な液滴を安定して形成できることから、タングステン源を含む溶液に対して超音波照射を行い、液滴を形成することが好ましい。すなわち超音波を用いた液滴形成方法を好適に用いることができる。
タングステン源を含む溶液としては特に限定されないが、例えばパラタングステン酸アンモニウム水溶液を好ましく用いることができる。パラタングステン酸アンモニウム(ATP:ammonium tungstate pentahydrate)は、例えば(NH10(W1241)・5HOと表すことができる。
パラタングステン酸アンモニウムは、タングステン以外の元素が、N(窒素)、H(水素)、O(酸素)であり、後述する昇温工程や、熱処理工程において系外に排出される。このため、タングステン源を含む溶液の溶質として用いることで、不純物の混入を抑制した三酸化タングステン粒子を得ることができるため好ましく用いることができる。
また、タングステン源を含む溶液としては、取扱いの容易さ等から、タングステン源を含む水溶液を好適に用いることができる。このため、タングステン源としては水溶性の塩を好適に用いることができる。そして、パラタングステン酸アンモニウムは水への溶解が容易であり、タングステン源を含む溶液を容易に形成できるため、好ましく用いることができる。
タングステン源を含む溶液に含まれるタングステン源の濃度は特に限定されない。例えば、タングステン源を含む溶液のタングステン濃度が0.012mol/L以上120mol/L以下であることが好ましい。これは、タングステン源を含む溶液のタングステン濃度を0.012mol/L以上とすることで、単位時間当たりの三酸化タングステン粒子の生産量を十分に確保でき、例えばフィルター等で十分な量を回収することができ、生産性を高めることができるからである。また、タングステン源を含む溶液のタングステン濃度を120mol/L以下とすることで、生成した粒子が凝集することを抑制し、例えば数μm以上の粗大な三酸化タングステン粒子が混入することを抑制できるからである。
なお、タングステン源を含む溶液として、例えば既述のパラタングステン酸アンモニウム水溶液を用いる場合、パラタングステン酸アンモニウムはその分子内に12個のタングステンを含むことから、その濃度は0.001mol/L以上10mol/L以下が好ましい。
液滴形成工程で形成する液滴のサイズは特に限定されないが、液滴の直径は100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、7μm以下であることがさらに好ましい。液滴の直径を100μm以下とすることで、得られる三酸化タングステン粒子が粗粒化することを防ぎ、ナノメートルオーダーの三酸化タングステン粒子を得ることが可能になる。なお、液滴形成工程で形成する液滴のサイズの下限値は特に限定されない。ただし、過度に小さい液滴を形成することは困難であり、生産性が低下する恐れがあることから、例えば1μm以上であることが好ましい。
液滴形成工程で形成した液滴は、例えばキャリアガスにより搬送し、昇温工程、熱処理工程に供することができる。
液滴形成工程で形成し、昇温工程に供給される、タングステン源を含む溶液の液滴、すなわち被処理物の個数密度は特に限定されないが、液滴の個数密度は6×1012個/m以下であることが好ましい。昇温工程に供給される該液滴の個数密度が6×1012個/mより大きい場合、昇温工程や熱処理工程で用いる炉体内の液滴の個数密度が過度に高くなるため炉体(ヒーター)からの輻射による伝熱が阻害され、炉体の外壁に近い液滴は炉体からの輻射熱を受けるが炉体の中心軸を通過する液滴は炉体からの輻射熱を十分に得られないことがある。また、液滴同士の衝突頻度が増加して粗大な液滴を生成する場合がある。
一方、該液滴の個数密度が6×1012個/m以下の場合、全ての液滴について、より確実に炉体からの輻射熱を均一、かつ十分に得ることが可能になる。また、液滴同士の衝突、凝集を抑制できるため、粗大な液滴が生成することを特に抑制できる。
本発明の発明者らの研究によると液滴の個数密度は以下の(1)式により算出できる。
Figure 0007101383000001
上記(1)式中のnunitはタングステン源を含む溶液の液滴の個数密度を表している。また、Qdropletは昇温工程に単位時間あたりに供給されるタングステン源を含む溶液の液滴の合計した体積(全体積)であり、昇温工程に単位時間あたりに供給される該液滴の全体積である。言い換えると、Qdropletは液滴形成工程においてタングステン源を含む溶液が単位時間に液滴に変化して減少する体積を表している。Qはキャリアガス流量[L/min]を、Dは液滴の平均粒子径(平均液滴径)[μm]をそれぞれ表している。
本発明の発明者らが検討を行った三酸化タングステンの製造装置においては、キャリアガス流量Qが3L/minのとき、Qdropletは1.5mL/minであった。また、キャリアガス流量Qが1L/minのとき、Qdropletは0.277mL/minであった。
液滴の平均粒子径Dは、タングステン源を含む溶液に超音波を照射して液滴を形成する場合には、照射する超音波の条件に依存し、キャリアガス流量Qには依存しない。また、既述のスプレーノズル等により液滴を形成する場合も同様に、液滴の平均粒子径はキャリアガス流量Qに依存しない。
液滴の平均粒子径Dの測定方法は特に限定されないが、例えば液滴の供給経路上にレーザー光を照射しておき、複数の液滴が該レーザー光を通過する時に散乱した光のパターンから、液滴の粒度分布や平均粒子径を測定することができる。係るレーザー光を用いた液滴の平均粒子径等を測定するためのシステムとしては、例えば英国Malvern Panalytical社のSpray particle analyzer systemを用いることができる。
例えば、液滴の平均粒子径Dを4.5μm、キャリアガス流量Qを3L/minとした場合、本発明の発明者らが用いた製造装置では上述のようにQdropletは1.5mL/minとなることから、式(1)より、液滴の個数密度nunitは1.0×1013個/mであった。
また、液滴の平均粒子径Dを4.5μm、キャリアガス流量Qを1L/minとした場合、本発明の発明者らが用いた製造装置では上述のようにQdropletは0.277mL/minとなることから、式(1)より、液滴の個数密度nunitは5.8×1012個/mであった。
本発明の発明者らの検討によれば、昇温工程に単位時間あたりに供給されるタングステン源を含む溶液の液滴の合計した体積Qdropletは、0.3mL/min以下であることが好ましい。これは、昇温工程に単位時間あたりに供給されるタングステン源を含む溶液の液滴の合計した体積Qdropletを0.3mL/min以下とすることで液滴形成工程で形成し、昇温工程に供給されるタングステン源を含む溶液の液滴の個数密度をより確実に所望の範囲とすることができるからである。
(昇温工程)
昇温工程では、被処理物である、液滴形成工程で形成した液滴を1000℃まで加熱、昇温することができる。
タングステン源を含む溶液の液滴中に含まれる溶媒は、昇温工程の昇温する過程で蒸発し、より高温になるとアモルファス状の三酸化タングステンを生じる。
タングステン源を含む溶液としてパラタングステン酸アンモニウム水溶液を用いた場合、まず液滴に含まれる溶媒の水は50℃~120℃程度で蒸発すると考えられる。次いで、パラタングステン酸アンモニウム等に含まれる結晶水が120℃以上で乖離し、より高温になるとアンモニアが乖離し、例えば500℃以上で上述のアモルファス状の三酸化タングステンを生じると考えられる。
なお、ここではタングステン源を含む溶液として、パラタングステン酸アンモニウム水溶液を用いた場合を例に説明したが、他のタングステン源を含む溶液を用いた場合も500℃以上でアモルファス状の三酸化タングステンが生じると推認される。
そして、1000℃未満では三酸化タングステンの結晶がスピネル型に成長するが、1000℃以上まで加熱することで、単斜晶、六方晶から選択された1種類以上の三酸化タングステンの結晶が成長すると考えられる。
このため、上述のように昇温工程では1000℃まで昇温することが好ましい。
昇温工程に要する時間は特に限定されるものではなく、任意に選定することができる。
(熱処理工程)
昇温工程で1000℃まで加熱、昇温した後、熱処理工程では被処理物について、1000℃以上の熱処理温度で10秒以上保持することが好ましい。
本発明の発明者らが、噴霧熱分解法によりh-WOを主成分として含む三酸化タングステンを製造する方法について鋭意検討を行ったところ、1000℃以上で10秒以上保持する方法を見出した。
1000℃以上での保持時間を10秒以上とすることで、h-WOを主成分として含む三酸化タングステンが得られる原因については明らかではないが、以下のように推測している。
1000℃以上に加熱した場合、昇温工程で生じた三酸化タングステンが昇華し、h-WOが生成する。しかし、1000℃以上の温度領域での保持時間が10秒未満の場合、昇華が十分に進行せずに結晶が単斜晶に成長する。一方、1000℃以上の温度領域での保持時間を10秒以上とすることで、昇華に十分なエネルギーが使われるので六方晶の三酸化タングステン、すなわちh-WOが形成され、h-WOを主成分とする三酸化タングステンを得ることができる。
なお、h-WOを主成分とする三酸化タングステン酸化物とは、その粉末X線回折パターンにおいて、三酸化タングステン酸化物の相として六方晶の三酸化タングステンであるh-WOのピークのみが確認されることを意味する。特に得られた粉末X線回折の回折パターンから、Rietveld法により解析した、三酸化タングステンのうち、h-WOの占める質量割合が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、99%以上であることがさらに好ましい。
熱処理工程において、被処理物の熱処理温度の上限は特に限定されないが、過度に高温まで昇温しようとすると、加熱装置のコストが高くなる恐れがあることから、1500℃以下であることが好ましい。
また、1000℃以上の熱処理温度での熱処理時間の上限値は特に限定されない。ただし、過度に長くしようとすると、熱処理工程に多くの時間を要することになり、生産性が低下する恐れがある、もしくは析出した粉末がフィルターまで到達せずに反応部の配管の内部に落下して閉塞する恐れがある。このため、熱処理時間は例えば100秒以下とすることが好ましい。
本実施形態の三酸化タングステンの製造方法によれば、ロッド状粒子と、多角形粒子とから選択される1種類以上を含む三酸化タングステンを製造することができる。例えば長径が200nm以下のロッド状粒子や、粒子径が100nm以下の多角形粒子を得ることができる。なお、本実施形態の三酸化タングステンの製造方法によれば、上述のようにナノメートルオーダーの三酸化タングステン粒子(三酸化タングステンナノ粒子)を製造することができる。
特に、本実施形態の三酸化タングステンの製造方法の熱処理工程後に得られる三酸化タングステンは、粒子径が200nm以下の粒子を含むことが好ましい。なお、本実施形態の三酸化タングステンの製造方法の熱処理工程後に得られる三酸化タングステンは粒子径が200nm以下の粒子から構成することもできる。
本実施形態の三酸化タングステンの製造方法により得られる三酸化タングステンの粒子の粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば1nm以上とすることができる。
なお、本実施形態の三酸化タングステンの製造方法により得られる三酸化タングステンの粒子の粒子径は、該粒子を例えばSEMやTEMで観察し、該粒子に外接する最小の外接円を描いた場合の、直径とすることができる。
次に、本実施形態の三酸化タングステンの製造方法を実施する際に好適に用いることができる三酸化タングステン製造装置の構成例を図1を用いながら説明する。
図1は、三酸化タングステン製造装置10を模式的に示した図である。
三酸化タングステン製造装置10は、液滴形成部11と、輸送部12と、反応部13と、回収部14とを有することができる。
なお、図1に示すように、液滴形成部11と、輸送部12と、反応部13と、回収部14とは配管により接続しておくことが好ましい。
液滴形成部11には、原料溶液であるタングステン源を含む溶液を格納する格納部15や、液滴形成部11で形成した液滴を輸送部12等に搬送するためのキャリアガスを収納したキャリアガスタンク16等の付帯設備を配管により接続しておくことができる。なお、格納部15と液滴形成部11の配管上には、ポンプ151等を設け、格納部15内のタングステン源を含む溶液を所望の供給速度で液滴形成部11に供給可能に構成できる。
液滴形成部11は、例えば超音波発振部111を有することができ、格納部15から液滴形成部11内に供給、貯留されたタングステン源を含む溶液の液滴を形成できる。そして、キャリアガスタンク16から液滴形成部11に供給されたキャリアガスにより、輸送部12を介して反応部13へと液滴を供給することができる。
輸送部12は、液滴形成部11と、反応部13とを接続しており、液滴形成部11で形成した液滴を反応部13へと供給することができる。輸送部12を通過する液滴を予め加熱し、反応部13の温度が下がらないように、輸送部12内を加熱できるように構成しておくことが好ましい。具体的には例えば、輸送部12の外側にヒーターを巻きつける等して設置し、輸送部12の内部の温度を30℃以上80℃以下に保つことが好ましい。
反応部13では、既述の昇温工程、及び熱処理工程を実施することができる。このため、反応部13は、例えば図1に示したように耐熱性の配管131と、該配管131を加熱するヒーター132とを有することができる。
配管131としては、例えばセラミック製の配管を用いることができる。
反応部13の長さは特に限定されるものではなく、昇温工程、及び熱処理工程の所定の温度まで加熱することができ、熱処理工程の時間を十分に確保できるように選択することが好ましい。
反応部13の配管131の長さは、所定の温度まで加熱し、熱処理工程の時間を十分に確保する観点から1m以上であることが好ましい。配管131の長さの上限は特に限定されないが、過度に長くすると多くのキャリアガスを要することになり、また装置のサイズも大きくなることから、5m以下であることが好ましい。
また、配管131の直径(内径)についても特に限定されないが、生産性の観点から2cm以上であることが好ましい。配管131の直径(内径)の上限値は特に限定さないが、その中心部と、壁面部との温度差が過度に大きくならないように選択することが好ましく、配管131の直径は例えば20cm以下であることが好ましい。
反応部13の配管131は、その長手方向に沿って温度勾配を有するのが通常である。例えば、反応部入口131A側の温度が低く、反応部出口131Bに向かって温度が上昇する。
このため、反応部出口131B近傍の温度が1000℃以上となる温度領域を、被処理物が通過する時間が10秒以上となるように、すなわち、1000℃以上の熱処理温度での熱処理時間が10秒以上となるように、各種条件を設定することが好ましい。具体的には例えば、配管131内の温度分布を予め測定しておき、キャリアガスの供給速度等を調整することが好ましい。
回収部14では、反応部13で生成した三酸化タングステンの粒子を回収することができる。回収部14の構成は特に限定されるものではなく、製造する三酸化タングステンの粒子の粒径等に応じて選択することができる。回収部14としては、例えば各種フィルターを用いることができる。もしくは、静電型捕集器を用いることができる。なお、回収部14でタングステン源を含む溶液等に含まれていた液体などが析出しないように、回収部14の周囲にヒーター等の加熱手段を配置し、加熱しておくこともできる。
三酸化タングステン製造装置10の内部は密閉されており、キャリアガスタンク16から液滴形成部11にガスが流入し、回収部14からガス流が流出するように構成されていることが好ましい。
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示した三酸化タングステン製造装置10を用いて、三酸化タングステンの製造を行い、評価を行った。以下、具体的な条件について説明する。
図1に示した三酸化タングステン製造装置10の構成については既述のため、ここでは説明を省略する。
予めタングステン源を含む溶液として、(NH10(W1241)・5HOで表されるパラタングステン酸アンモニウム(ATP)(関東化学製 純度:88~90%)、及び超純水を用いて10mmol/Lのパラタングステン酸アンモニウム水溶液を調製した。そして、係るパラタングステン酸アンモニウム水溶液は、格納部15に入れ、格納部15に配管を介して接続された液滴形成部11に、ポンプ151により連続して供給されるように構成した。
また、液滴形成部11には、キャリアガスタンク16が配管により接続されており、キャリアガスタンク16としては空気ボンベを用いた。そして、三酸化タングステン粒子を製造している間、液滴形成部11にはキャリアガスとして空気ガスが1L/minの流量で供給されるように構成した。
液滴形成部11には、超音波発振部111が設けられており、格納部15から供給されたパラタングステン酸アンモニウム水溶液に対して超音波を照射し、直径が1μm以上7μm以下の液滴を形成できるように超音波の出力を調整しておいた。なお、液滴形成部11としては、超音波式ネブライザ(オムロンヘルスケア株式会社製 型式:NE-U17 超音波発信周波数1.7MHz)を用いた。
そして、輸送部12の外側にヒーターを配置し、輸送部12の内部の温度を70℃に保つように構成した。
反応部13は、配管131を備えており、配管131にはセラミック製の長さ1.3m、内径28.5mmの円筒形状の管を用いた。
反応部13は、ヒーター132により配管131の外部から加熱するように構成されており反応部入口131Aから、反応部出口131Bに向かって温度が高くなるように温度を設定した。
本実施例では、反応部出口131B近傍における最高温度が1200℃となるようにヒーター132の温度を設定した。本実施例で用いた反応部の温度分布を図2に示す。図2は、配管131の長さ方向に沿って2cm毎に温度を熱電対により測定して得られた温度分布曲線を示したものである。なお、配管131と回収部14との間の配管部分でも一部温度を測定している。図2中横軸は、反応部入口131Aの位置を0とした場合の、反応部入口131Aからの、配管131の長さ方向に沿った測定点の位置(距離)x(cm)を示している。また、図2中縦軸は、配管131の長さ方向の各位置における炉内温度を示している。
図2に示したように、反応部入口131Aから、反応部出口131Bに向かって温度が徐々に高くなるように温度分布が形成され、1000℃以上になる温度領域も設定されていることが確認できる。
回収部14には、ガラスフィルターを配置し、反応部13で昇温工程、及び熱処理工程を終え、形成された三酸化タングステン粒子を回収できるように構成した。粉末を乾燥させた状態で回収するため、ガラスフィルターの周囲をガラス繊維テープで目張りし、120℃に加熱した。なお、加温しないと蒸発した液滴が析出する場合がある。
以上の条件により、三酸化タングステンの製造を行った。
具体的には、液滴形成部11において、パラタングステン酸アンモニウム水溶液の液滴を形成し(液滴形成工程)、炉体温度が1200℃に設定された反応部13にキャリアガスにより該液滴を供給し、昇温工程と、熱処理工程とを実施した。反応部13の配管131内は、図2に示した温度分布を有し、キャリアガスの流量を1L/minとしたことから、液滴は1000℃にまで昇温され(昇温工程)、1000℃以上の熱処理温度で15.3秒間熱処理がなされている(熱処理工程)。
液滴形成工程における液滴の個数密度を既述の式(1)を用いて算出した。
上述のように、キャリアガス流量を1L/minとしたところ、用いた三酸化タングステン酸化物製造装置では、既述の式(1)内の昇温工程に単位時間あたりに供給されるタングステン源を含む溶液の液滴の合計した体積Qdropletは0.277mL/minであった。液滴の平均粒子径Dを英国Malvern Panalytical社のSpray particle analyzer systemを用いて測定したところ4.5μmであった。
上述の数値を用いて既述の式(1)により液滴の個数密度nunitを計算すると5.8×1012個/mであった。液滴の形成速度が遅いため、その個数密度が低く、液滴同士は衝突しにくいと推察される。このため、液滴は溶媒の蒸発等が生じるまでその平均粒子径を4.5μmに維持したまま炉体内に設置した配管131内部において昇温工程、熱処理工程を経ることができる。供給した液滴の個数密度が低いため、全ての粒子が他の粒子に妨害されずに炉体からの輻射熱を受けることが可能となり、昇温工程で生じた全ての三酸化タングステンを熱処理工程において昇華することができた。
回収部14で回収された三酸化タングステンについて以下の評価を行った。
(1)粉末X線回折
得られた三酸化タングステンについて、粉末X線回折装置(ブルカー社製 型式:D2 PHASER)を用い、粉末X線回折パターン(XRDパターン)の測定を行った。なお、線源としてはCuKα線(波長λ=1.54Å)を用い、管電圧40kV、管電流30mAとし、ScanStepを0.02°として粉末X線回折パターンの測定を行った。
得られたXRDパターンを図3に示す。図3に示したように、XRDパターンから、得られた三酸化タングステンは、六方晶の三酸化タングステンのピークのみが確認され、六方晶の三酸化タングステンを主成分として含むことが確認できた。
また、得られたXRDパターンを用いて、リートベルト解析(ブルカー社製 TOPAS)により、得られた三酸化タングステンに含まれるm-WO相と、h-WO相との質量割合を算出した。その結果、h-WO相の質量割合が100%であり、m-WO相の質量割合は0%であることを確認できた。
1000℃以上での熱処理時間、すなわち1000℃以上の熱処理温度での保持時間(Residence Time)と、リートベルト解析により求めた三酸化タングステンに含まれるm-WO相、及びh-WO相の質量割合との関係をグラフ化したものを図4に示す。
(2)SEM像観察
得られた三酸化タングステンの粒子について、電界放出形走査型電子顕微鏡(FE-SEM:Field Emission-Scanning Electron Microscope 日立ハイテクノロジーズ製 型式:S-5200)を用いて観察を行った。観察は印加電圧を5~20kVとして行った。
得られたSEM像を図5に示す。
図5に示したSEM像から、得られた三酸化タングステンの粒子としては、ロッド状粒子と、多角形粒子とを含むことが確認できた。
ロッド状粒子は長さ100nm~200nm程度であり、多角形粒子は粒子サイズが50nm程度であり、いずれも粒子径が200nm以下であることを確認できた。
(3)TEM像観察
得られた三酸化タングステンの粒子について、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope 日本電子株式会社製 型式:JEM-3000F)を用いて観察を行った。観察は印加電圧を297kVとして行った。
得られたTEM像を図6に示す。
図6(A)に示すように、TEM像においても、長さ100nm~200nm、アスペクト比5~10のロッド状粒子が確認できた。
図6(B)に、ロッド状粒子のHRTEM(High-resolution transmission electron microscopy)像、及びそのFFT(Fast Fourier Transform)像を図中右上に示す。
図6(B)に示したHRTEM像からは格子間隔が0.67nmの格子縞を確認でき、そのFFT像からその方向には積層欠陥が生じていることを確認できた。この格子間隔の大きさはh―WO(JCPDS:01-075-2187)の(001)方向と一致しているため、本粒子はh-WOと考えられる。
図6(C)に、多角形粒子のHRTEM像を示す。また、そのFFT像を図中右上に示す。図6(C)に示したHRTEM像からは、格子間隔が0.34nmの格子縞を確認でき、そのFFT像からその方向においても積層欠陥が生じていることを確認できた。この格子縞はm-WO(JCPDS:01-072-0677)の(110)方向と一致していると考えられるため、m-WOが極微量ではあるが混入したと推察される。
係る格子間隔が0.34nm程度の三酸化タングステンの多角形粒子は、格子間隔が0.67nmのロッド状粒子とも接合していた。このように異なる格子間隔を有する酸化タングステン粒子同士の結合が積層欠陥の原因である可能性がある。
(4)窒素吸脱着曲線、CO吸着曲線
得られた三酸化タングステンの比表面積を測定するため、窒素吸脱着曲線の測定を行った。窒素吸脱着曲線は、高精度表面積/細孔分布測定装置(日本ベル株式会社製 型式:BELSORP-28SA)を用いて測定を行った。
評価結果を図7(A)に示す。
また、得られた三酸化タングステンの粒子内部のOpen Channelの存在を調査するために、CO吸着曲線の測定を行った。CO吸着曲線についても上記高精度表面積/細孔分布測定装置を用いて評価した。
評価結果を図7(B)に示す。
図7(A)に示した窒素吸脱着曲線より、得られた三酸化タングステンの比表面積は12.8m/gであることを確認できた。
また、図7(B)に示したCO吸着曲線の形状が直線的ではなく、その吸着量に対して圧力p/pが二次関数的に増加したことから、本実施例の三酸化タングステンはOpen Channelを有すると考えられる。
[比較例1]
キャリアガスの流量を3L/minとした点以外は実施例1と同様にして三酸化タングステンの合成を行った。
なお、本比較例の場合、形成された液滴は、1000℃まで昇温された後(昇温工程)、1000℃以上で5.3秒間熱処理がなされている(熱処理工程)。
本比較例の液滴形成工程における液滴の個数密度を既述の式(1)を用いて算出した。
上述のように、キャリアガス流量を3L/minとしたところ、用いた三酸化タングステン酸化物製造装置では、式(1)内の昇温工程に単位時間あたりに供給されるタングステン源を含む溶液の液滴の合計した体積Qdropletは1.5mL/minであった。液滴の平均粒子径Dを英国Malvern Panalytical社のSpray particle analyzer systemを用いて測定したところ4.5μmであった。
上述の数値を用いて既述の式(1)により液滴の個数密度nunitを計算すると1.0×1013個/mであった。液滴形成工程での液滴の形成速度が速いため、液滴は昇温工程開始前や、昇温工程において互いに衝突しやすく、液滴は昇温工程において溶媒の蒸発が開始される直前において平均粒子径が4.5μm以上となり、粗大な液滴が生成している可能性がある。また、炉体内に設置した配管131内の液滴の個数密度が多いため、昇温工程で生じた三酸化タングステンに対して、熱処理工程では炉体からの輻射熱を十分に供給することができずに昇華が不十分になることがあると考えられる。
得られた三酸化タングステンについて、実施例1と同様の評価を行った。
(1)粉末X線回折
三酸化タングステンについて、粉末X線回折パターン(XRDパターン)の測定を行った。
得られたXRDパターンを図3に示す。図3に示したように、XRDパターンから、得られた三酸化タングステンは、六方晶の三酸化タングステンに加えて、単斜晶の三酸化タングステンも含むことが確認できた。
また、得られたXRDパターンを用いて、リートベルト解析により、得られた三酸化タングステン粒子に含まれるm-WO相と、h-WO相との質量割合を算出した。その結果、h-WO相の質量割合が32.5%であり、m-WO相の質量割合は67.5%であることを確認できた。
1000℃以上での熱処理時間、すなわち1000℃以上の熱処理温度での保持時間(Residence Time)と、リートベルト解析により求めた三酸化タングステン粒子に含まれるm-WO相、及びh-WO相の質量割合との関係をグラフ化したものを図4に示す。
(2)SEM像観察
得られた三酸化タングステンの粒子のSEM像を図8に示す。
図8に示したSEM像等から、得られた三酸化タングステンの粒子としては、ロッド状粒子と、多角形粒子とを含むことが確認できた。
ロッド状粒子は長さ120nm程度であり、多角形粒子は粒子サイズが10nm~80nm程度であり、いずれも粒子径が200nm以下であることを確認できた。
(3)TEM像観察
得られた三酸化タングステンの粒子のTEM像を図9に示す。
図9(A)に示すように、TEM像においては、粒子径が50nm~200nmの多角形粒子が確認できた。
図9(B)に、多角形粒子のコントラストが大きく変化する箇所におけるHRTEM像を示す。また、図中右上にFFT像をあわせて示す。係るコントラストが大きく変化する箇所は、三酸化タングステンの粒子内部に生成した結晶粒界と考えられる。
コントラストの異なる各々の領域において、格子間隔はいずれも0.34nmであった。このため、係る三酸化タングステンは、m-WOであると考えられる。ただし、その向きが異なっていたことから、係る三酸化タングステン粒子は単結晶ではなく、結晶粒界から複数の方向に異方性をもって結晶成長した多結晶である可能性が示唆される。
(4)窒素吸脱着曲線、CO吸着曲線
得られた三酸化タングステンの窒素吸脱着曲線、及びCO吸着曲線を図7(A)、図7(B)にそれぞれ示す。
図7(A)に示した窒素吸脱着曲線より、得られた三酸化タングステンの比表面積は 17.2m/gであることを確認できた。実施例1よりも増加したのは、粒子同士の凝集が少なかったためと考えられる。
[比較例2]
キャリアガスの流量を2L/minとした点以外は実施例1と同様にして三酸化タングステンの合成を行った。
なお、本比較例の場合、形成された液滴は、1000℃まで昇温された後(昇温工程)、1000℃以上で7.7秒間熱処理がなされている(熱処理工程)。
得られた三酸化タングステンについて、実施例1と同様の評価を行った。
(1)粉末X線回折
三酸化タングステンについて、粉末X線回折パターン(XRDパターン)の測定を行った。
得られたXRDパターンを図3に示す。図3に示したように、XRDパターンから、得られた三酸化タングステンは、六方晶の三酸化タングステンに加えて、単斜晶の三酸化タングステンも含むことが確認できた。
また、得られたXRDパターンを用いて、リートベルト解析により、得られた三酸化タングステン粒子に含まれるm-WO相と、h-WO相との質量割合を算出した。その結果、h-WO相の質量割合が60.9%であり、m-WO相の質量割合は39.1%であることを確認できた。
1000℃以上での熱処理時間、すなわち1000℃以上の熱処理温度での保持時間(Residence Time)と、リートベルト解析により求めた三酸化タングステン粒子に含まれるm-WO相、及びh-WO相の質量割合との関係をグラフ化したものを図4に示す。
(2)SEM像観察
得られた三酸化タングステンの粒子のSEM像を図10に示す。
図10に示したSEM像から、得られた三酸化タングステンの粒子としては、ロッド状粒子と、多角形粒子とを含むことが確認できた。
以上に説明した実施例1、比較例1、比較例2の結果から、熱処理工程において、1000℃以上で10秒以上熱処理を行うことにより、六方晶の三酸化タングステンであるh-WOを主成分とする三酸化タングステンが得られることを確認できた。

Claims (3)

  1. 被処理物である、タングステン源を含む溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、
    前記被処理物を、1000℃まで昇温する昇温工程と、
    前記被処理物を、1000℃以上で10秒以上熱処理する熱処理工程と、を有し、
    前記昇温工程に単位時間あたりに供給される前記タングステン源を含む溶液の液滴の合計した体積が0.3mL/min以下であり、
    かつ前記昇温工程に供給される、前記タングステン源を含む溶液の液滴の個数密度が6×10 12 個/m 以下である三酸化タングステンの製造方法。
  2. 前記タングステン源を含む溶液が、パラタングステン酸アンモニウム水溶液である請求項1に記載の三酸化タングステンの製造方法。
  3. 前記熱処理工程後に得られる三酸化タングステンが、粒子径が200nm以下の粒子を含む請求項1または請求項に記載の三酸化タングステンの製造方法。
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