JP7100790B2 - 生物種の判別方法 - Google Patents

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Description

本発明は、生物種の判別方法に関する。さらに、本発明は、食用の畜肉動物や水産生物等の生物種の判別方法に関する。
畜肉動物や水産生物を用いた加工食品の製造では、品質管理の一環として原料の生物種を特定することが求められる。従来の生物種を判別する方法としては、被験生物の塩基配列を解析して、その情報に基づいて生物種を判別する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、PCR法により増幅した増幅産物のDNA解離パターンを解析することにより生物種を判別する方法が開示されている。また、特許文献2には、水産動物の体色遺伝子をPCR法により増幅させ、増幅した遺伝子の塩基配列から水産動物の種を判別する方法が開示されている。
特開2008-154457号公報 特開2006-296328号公報
加工食品等の製造過程では、品質管理の一環として原料の生物種を確認している。PCR法を用いた従来の生物種の判別方法では、DNAを増殖するためのプライマーを作製する必要があり、プライマーの作製には多大な時間を要していた。そのため、従来の生物種の判別方法では、迅速に生物種を判別することができなかった。
そこで、本発明の課題は、迅速に生物種を特定することが可能な生物種の判別方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、生物種によって脂質の情報が異なることに着目し、脂質の情報から生物種を判別できることを見出して、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の生物種の判別方法である。
上記課題を解決するための本発明の生物種の判別方法は、被験生物の生物種を判別する方法であって、被験生物の有する脂質の情報に基づいて生物種を判別することを特徴とする。
この生物種の判別方法によれば、脂質の情報を解析することにより生物種を判別することができるため、プライマーを作製する必要がなく、迅速に生物種を特定することができる。また、プライマーの作製に要する費用がなく、分析費用を低減することができる。
さらに、本発明の生物種の判別方法の一実施態様によれば、脂質は、リン脂質であることを特徴とする。
リン脂質は、細胞膜を構成する脂質であり、細胞を含む部位であればどの部位にも存在する。よって、この特徴によれば、赤身肉等の脂肪の少ない部位でも生物種を判別できるという効果を奏する。
さらに、本発明の生物種の判別方法の一実施態様によれば、リン脂質は、ホスファチジルコリンであることを特徴とする。
ホスファチジルコリンは、細胞膜の主要成分であるため、この特徴によれば、脂肪の少ない部位において生物種を判別できるという効果をより一層発揮する。
さらに、本発明の生物種の判別方法の一実施態様によれば、脂質の情報は、脂肪酸組成であることを特徴とする。
この特徴によれば、脂肪酸組成を測定するだけで生物種を特定できるため、簡易的な生物種の判別方法を提供することができる。
さらに、本発明の生物種の判別方法の一実施態様によれば、次の工程を含むことを特徴とする。
工程1:被験生物からリン脂質を採取する工程
工程2:前記リン脂質を分子種ごとに分離する工程
工程3:リン脂質の有する脂肪酸種により前記分子種を同定する工程
工程4:同定した前記分子種の情報に基づいて生物種を判別する工程
この特徴によれば、高精度な生物種の判別方法を提供することができる。
さらに、本発明の生物種の判別方法の一実施態様によれば、前記の工程2は、液体クロマトグラフィーを用いて、前記リン脂質の分子種を分離することを特徴とする。
この特徴によれば、リン脂質の分子種を高精度に分離することができる。
さらに、本発明の生物種の判別方法の一実施態様によれば、前記の分子種の情報は、次のリン脂質P1~P10のいずれか1種以上の情報であることを特徴とする。
リン脂質P1(16:0/16:0)、リン脂質P2(16:0/22:4)、リン脂質P3(O-16:0及び18:2)、リン脂質P4(16:0/18:3)、リン脂質P5(17:0/18:2)、リン脂質P6(16:0/20:5)、リン脂質P7(16:1/18:2)、リン脂質P8(15:1/16:1)、リン脂質P9(14:1/18:2)、リン脂質P10(16:1/22:0)
[ただし、カッコ内は、リン脂質の有する2種の脂肪酸種を示し、脂肪酸種は「炭素数:不飽和結合の数」で示す。]
この特徴によれば、高精度に生物種を特定することができる。
さらに、本発明の生物種の判別方法の一実施態様によれば、被験生物は、鶏、豚、ラム又は牛であることを特徴とする。
この特徴によれば、食肉原料の生物種の確認において、迅速に生物種を特定することができる。
本発明によれば、迅速に生物種を特定することが可能な生物種の判別方法を提供することにある。
本発明の実施例のリン脂質の分子種の情報に基づいて生物種を判別する方法において、統計解析ソフトウェア「JMP」(SAS Institute Japan(株))により主成分分析を行った結果を示すグラフである。 鶏肉におけるリン脂質P1~P5のLCのクロマトグラムである。 鶏肉におけるリン脂質P6~P10のLCのクロマトグラムである。 豚肉におけるリン脂質P1~P5のLCのクロマトグラムである。 豚肉におけるリン脂質P6~P10のLCのクロマトグラムである。 ラム肉におけるリン脂質P1~P5のLCのクロマトグラムである。 ラム肉におけるリン脂質P6~P10のLCのクロマトグラムである。 牛肉におけるリン脂質P1~P5のLCのクロマトグラムである。 牛肉におけるリン脂質P6~P10のLCのクロマトグラムである。 鶏、豚、ラム、牛の各生物種における全体のクロマトグラムである。 鶏、豚、ラム、牛の各生物種に特徴的なリン脂質のピークを選出した結果、及び、これらのピークのリン脂質を同定した結果を示す表である。 鶏、豚、ラム、牛の各生物種に特徴的なリン脂質のピーク面積を用いて生物種を判別する方法において、判別の基準となるピーク面積の範囲を示す表である。
本発明の生物種の判別方法は、被験生物の生物種を判別する方法であって、被験生物の有する脂質の情報に基づいて生物種を判別することを特徴とする。
被験生物は、どのような生物種でもよく、例えば、鶏、豚、ラム、牛などの畜肉動物等が挙げられる。また、サケ、タラ、マグロなどの魚類等も生物種に応じて脂質が異なるため、本発明の生物種の判別方法を適用することが可能である。
この生物種の判別方法によれば、脂質の情報を解析することにより生物種を判別することができるため、従来のPCR法のようにプライマーを作製する必要がなく、迅速に生物種を特定することができるという効果を奏する。また、プライマーの作製に要する費用がなく、分析費用を低減することができる。
脂質は、脂肪酸、又は脂肪酸を結合した化合物である。脂肪酸を結合した化合物としては、例えば、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、ロウなどの単純脂質、リン脂質、糖脂質、リポタンパク質などの複合脂質が挙げられる。また、リン脂質は、グリセロリン脂質とスフィンゴリン脂質に大別され、グリセロリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。リン脂質は、細胞膜を構成する脂質であり、すべての細胞に含まれることから、赤身肉等の脂肪の少ない部位でも生物種を判別できるという効果を奏する。さらに、ホスファチジルコリンは、細胞膜の主要成分であることから、脂肪の少ない部位でも生物種を判別できるという効果をより一層発揮することができる。また、細胞から多量に抽出されるため、抽出操作や、分子種の分離操作を容易に実施することができる。
被験生物の有する脂質の情報とは、被験生物の生物種に特徴的な脂質の情報であり、例えば、トリアシルグリセロールやリン脂質等の分子種又はその組成や、脂肪酸又はその組成などの情報である。分子種とは、トリアシルグリセロールやリン脂質等において、結合する脂肪酸種により特定されたものである。また、分子種組成とは、2以上の分子種に関する情報である。脂肪酸は、トリアシルグリセロールやリン脂質又はそれらの混合物などから分離されたものであり、脂肪酸組成とは、2種以上の脂肪酸に関する情報である。
本発明の生物種の判別方法は、これらの脂質の情報に基づいて生物種を特定するものである。例えば、生物種に固有の脂肪酸又はその組成パターン、分子種又はその組成パターンを求め、それらのパターンと被験生物から得られた脂質に関する情報を対比することにより生物種を判別する。
以下に、生物種の判別方法の具体例として、リン脂質の分子種の情報に基づいて生物種を判別する方法を示す。この判別方法の一実施態様によれば、次の工程を含むことを特徴とする。
工程1:被験生物からリン脂質を採取する工程
工程2:前記リン脂質を分子種ごとに分離する工程
工程3:リン脂質の有する脂肪酸種により前記分子種を同定する工程
工程4:同定した前記分子種の情報に基づいて生物種を判別する工程
工程1は、被験生物からリン脂質を採取する工程である。リン脂質を採取する方法は、特に制限されないが、例えば、溶媒等により抽出する方法が挙げられる。溶媒としては、好ましくは、クロロホルムとメタノールの混合溶媒であり、特に好ましくは、クロロホルムとメタノールを2:1(v/v)で混合した混合溶媒である。
また、抽出後、必要に応じて薄層クロマトグラフィー等により脂質を分離してもよい。
工程2は、リン脂質を分子種ごとに分離する工程である。リン脂質を分離する方法は、特に制限されないが、例えば、液体クロマトグラフィーを用いて分離することが好ましい。液体クロマトグラフィーを用いることにより、高精度で分離することができる。
工程3は、リン脂質の有する脂肪酸種により前記分子種を同定する工程である。分子種を同定する方法は、リン脂質の有する脂肪酸種を特定できればよく、例えば、LC/MS/MSを使用して液体クロマトグラフィーにより分離したリン脂質の分子種を質量分析法により同定する方法や、液体クロマトグラフィーにより分離したリン脂質を分取し、ガスクロマトグラフィーにより脂肪酸種を特定してリン脂質の分子種を同定する方法などが挙げられる。分析操作の簡易化という観点から、LC/MS/MSを使用することが好ましい。これにより、工程2と工程3をまとめて操作することができる。
また、液体クロマトグラフィーのピークについてリン脂質の分子種を特定した後、そのピークに関する情報(例えば、リテンションタイムやピーク面積など)を記憶しておき、この情報によりリン脂質の分子種を同定してもよい。液体クロマトグラフィーの情報によれば、リン脂質の同定のための新たな操作が不要となり、分析操作を簡易化することができる。
工程4は、同定した分子種の情報に基づいて生物種を判別する工程である。生物種を判別する方法は、特に制限されないが、例えば、多変量解析ソフト等を用いて分子種の検出パターンの相同性を統計的に解析する方法や、各生物種に特徴的なリン脂質の分子種を選出し、その分子種の情報に基づいて生物種を判別する方法などが挙げられる。
多変量解析ソフト等を用いて分子種の検出パターンの相同性を統計的に解析する方法としては、例えば、統計解析ソフトウェア「JMP」(SAS Institute Japan(株))により主成分分析を行う方法などが挙げられる。多変量解析ソフト等を用いて分子種の検出パターンの相同性を統計的に解析する方法は、リン脂質の分子種の検出パターンを高度に解析することができるため、高精度の判別が可能となる。また、多種の生物種の中から特定の生物種を判別することもできる。
各生物種に特徴的なリン脂質の分子種を選出し、その分子種の情報に基づいて生物種を判別する方法としては、特徴的なリン脂質の検出の有無に関する情報を利用して生物種を特定する方法や、特徴的なリン脂質のピーク面積に関する情報を利用して生物種を特定する方法などが挙げられる。特定の分子種の情報に基づいて生物種を判別する方法は、簡単な判断基準により生物種を判別することができる。
鶏、豚、ラム、牛などの畜肉動物における生物種の判定において、特徴的なリン脂質の分子種としては、例えば、リン脂質P1(16:0/16:0)、リン脂質P2(16:0/22:4)、リン脂質P3(O-16:0及び18:2)、リン脂質P4(16:0/18:3)、リン脂質P5(17:0/18:2)、リン脂質P6(16:0/20:5)、リン脂質P7(16:1/18:2)、リン脂質P8(15:1/16:1)、リン脂質P9(14:1/18:2)、リン脂質P10(16:1/22:0)が挙げられる。なお、カッコ内は、リン脂質の有する2種の脂肪酸種を示しており(第1の脂肪酸/第2の脂肪酸)、脂肪酸種は「炭素数:不飽和結合の数」で示す。また、「O-16:0」における「O-」とは、グリセロールと脂肪酸の結合がエーテル結合であることを意味する。
この分子種の情報によれば、高精度かつ簡易的に畜肉動物の生物種を判別することができる。
生物種の判定では、これらの特徴的なリン脂質の分子種の一種又は二種以上を利用することができる。判別の精度を向上するという観点から、二種以上を利用することが好ましい。
上記の具体例は本発明の生物種の判別方法の一例であり、その他の判別方法でもよい。例えば、総リン脂質の脂肪酸組成の情報に基づいて生物種を判別する方法、トリアシルグリセロールの脂肪酸組成や分子種を解析して生物種を判別する方法等が挙げられる。
本発明の生物種の判別方法では、判別の精度を高めるという観点から、複数の判別方法を用いて生物種を特定することが好ましい。例えば、多変量解析ソフト等を用いて分子種の検出パターンの相同性を統計的に解析する方法や、各生物種に特徴的なリン脂質の分子種を選出し、その分子種の情報に基づいて生物種を判別する方法や、総リン脂質の脂肪酸組成の情報に基づいて生物種を判別する方法や、トリアシルグリセロールの脂肪酸組成や分子種を解析して生物種を判別する方法等を組み合わせて総合的に生物種を特定することにより、判別の精度を高めることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例>
鶏(31検体)、豚(33検体)、ラム(5検体)、牛(30検体)について、それぞれホスファチジルコリン(以下、「PC」という。)を抽出し、LC/MS/MSを用いて各検体に含まれるPCの分子種を特定した。特定した分子種のデータを解析した。PCの抽出方法、LC/MS/MSの測定条件、解析方法は、以下のとおり行った。
[PCの抽出]
各検体をマイクロチューブに計量した(約0.015g)。酸化防止剤として0.2mg/mLのジブチルヒドロキシトルエン(BHT)と、内部標準として0.01mg/mLのホスファチジルコリン(17:0/17:0)を含むクロロホルム:メタノール溶液(クロロホルム:メタノール=2:1,v/v)を調整し、抽出溶液とした。計量した検体に、1mLの抽出溶液を添加し、混合した。室温で一晩遮光静置し、ホスファチジルコリンを抽出した。遠心分離(10,000rpm、10分、室温)し、400μLの上清をマイクロチューブに移した。減圧遠心(40℃、2時間程度)で溶媒を除いた。400μLの測定溶液(アセトニトリル:2-プロパノール:精製水=65:30:5,v/v)を添加し、超音波処理で再溶解させた。溶液をフィルターろ過し、ろ液をマイクロチューブに移した。10μLのろ液と90μLの測定溶液を混合し、10倍に希釈した。10μLをLC/MS/MS(島津製作所、MS-8040)に供した。
[LC/MS/MSの測定条件]
(LC条件)
カラム:Accucore RP-MS 2.6 mm, 2.1 x 50 mm (Thermo Fisher Scientific社)
ガードカラム: SecurityGuard C18 (Phenomenex社)
移動相A:精製水/アセトニトリル(精製水:アセトニトリル=60:40,v/v)、10mMギ酸アンモニウム、0.1%ギ酸
移動相B:2-プロパノール/アセトニトリル(2-プロパノール:アセトニトリル=90:10,v/v)、10mMギ酸アンモニウム、0.1%ギ酸
グラジェント条件:B%=40%(0分)-40%(2分)-52%(8分)-60%(20分)-100%(23分)-100%(25分)-40%(25.01分)-40%(30分)※カッコ内は、LC測定の総時間を示す。
カラム温度:40℃、流速:0.35mL/min
(MS/MS条件)
Mode:Precursor ion scanning、Polarity:ESI positive
Precursor ion m/z range:600-1000、Product ion m/z:184.00
[解析例1]
解析例1として、多変量解析ソフト等を用いて分子種の検出パターンの相同性を統計的に解析する方法を以下に示す。
SignpostMS(ライフィクス社)を用いてリテンションタイムとm/zごとにピーク面積を求めた。各ピーク面積をサンプル重量で除し、内部標準物質ホスファチジルコリン(17:0/17:0)のピーク面積で除した。ホスファチジルコリンごとに平均ピーク面積を引いた後に、標準偏差で除した値を用いて、統計解析ソフトウェア「JMP」(SAS Institute Japan(株))により主成分分析を行った。結果を図1に示す。
主成分分析とは、多次元のデータを2次元や3次元などの低次元化することにより、各サンプル間の差異を視覚的に表示する分析方法である。本発明の主成分分析では、牛、鶏、豚、ラムの各動物種のホスファチジルコリンの複数の分子種を第1主成分及び第2主成分の2次元化し、グラフとして表示した。図1の左図は、鶏(31検体)、豚(33検体)、ラム(5検体)、牛(30検体)の各検体における主成分1と主成分2をプロットしたものである。なお、鶏の検体は「○」、豚の検体は「△」、ラムの検体は「+」、牛の検体は「□」でプロットした。図1の右図は第1主成分および第2主成分に対する各リン脂質分子種の主成分負荷量のグラフを示す。値が大きくなるほど各主成分に大きく寄与することを示す。
図1の左図に示すとおり、各動物種のホスファチジルコリンについて、主成分1と主成分2の値(プロット位置)が異なることが分かる。これにより、食品サンプルの動物種を簡単に特定することができる。
[解析例2]
解析例2として、各生物種に特徴的なリン脂質の分子種を選出し、その分子種の情報に基づいて生物種を判別する方法を以下に示す。
LCのピークから、各生物種に特徴的なPCを求めた。特徴的なPCとして、リン脂質P1~P10を選出した。図2-1~図2-8に、各生物種のリン脂質P1~P10についてのLCのクロマトグラムの一例を示す。なお、図2-1、図2-2は、鶏肉におけるリン脂質P1~P10のLCのクロマトグラムであり、図2-3、図2-4は、豚肉におけるリン脂質P1~P10のLCのクロマトグラムであり、図2-5、図2-6は、ラム肉におけるリン脂質P1~P10のLCのクロマトグラムであり、図2-7、図2-8は、牛肉におけるリン脂質P1~P10のLCのクロマトグラムである。図2-9には、各生物種における全体のクロマトグラムの一例を示す。
各生物種について、特定のPC(リン脂質P1~P10)を含む検体の割合を以下の式1から算出した。図3に特定のPCを含む割合の結果をまとめた。

特定のPCを含む割合(%)=(特定のPCを含む検体数/生物種の総検体数)×100
・・・式1
各生物種において、特定のPC(リン脂質P1~P10)を含む検体の割合を算出し、図3左表に示した。また、質量分析によりそれぞれのピークの分子種を特定した(図3右表)。
図3を見ると、鶏は、すべての検体においてリン脂質P1、リン脂質P2が検出され、リン脂質P5、リン脂質P7、リン脂質P8、リン脂質P9、リン脂質P10は検出されなかった。豚は、すべての検体においてリン脂質P3が検出され、リン脂質P2、リン脂質P5、リン脂質P6、リン脂質P8、リン脂質P9、リン脂質P10は検出されなかった。ラムは、すべての検体においてリン脂質P3、リン脂質P4、リン脂質P5が検出され、リン脂質P2、リン脂質P8、リン脂質P9、リン脂質P10は検出されなかった。また、牛は、すべての検体においてリン脂質P4が検出され、すべての検体において検出しなかったPCはなかった。
被験生物が、鶏、豚、ラムのいずれかである場合、これらのリン脂質の分子種の情報から、鶏、豚、ラムの生物種を判別することができる。例えば、リン脂質P2が検出されれば、鶏であることが特定され、リン脂質P5が検出されれば、ラムであると特定することができる。リン脂質P2、リン脂質P5がいずれも検出されなければ、豚であると特定することができる。
また、被験生物として、鶏、豚、ラム、牛を含む可能性がある場合には、リン脂質P8又はリン脂質P9又はリン脂質P10が検出されれば牛であると特定することができる。但し、リン脂質P8~P10が検出されない場合には、図3の結果から生物種を特定するに至らない。例えば、リン脂質P8~P10が検出されない場合において、リン脂質P2が検出されると、鶏と牛の可能性があり、リン脂質P5が検出されると、ラムと牛の可能性があり、リン脂質P2とリン脂質P5がいずれも検出されなければ、豚と牛の可能性があるからである。このような場合には、他の判別方法と組み合わせて総合的に判断することにより生物種を特定すればよい。
また、その他の判別方法としては、図4に示すように、全リン脂質中の各リン脂質の含有割合からも鶏、豚、ラム、牛の生物種を判別することができる。例えば、リン脂質P1の含有割合が0.8%以上の場合には、鶏であると判断され、リン脂質P3の含有割合が8%以上である場合には、豚であると判断され、リン脂質P7、リン脂質P8、リン脂質P9およびリン脂質P10の合計をリン脂質P4、リン脂質P5およびリン脂質P6の合計で除した値が0.15未満の場合には、ラムであると判断され、リン脂質P7、リン脂質P8、リン脂質P9およびリン脂質P10の合計をリン脂質P4、リン脂質P5およびリン脂質P6の合計で除した値が0.15以上10以下である場合には、牛であると判断される。
その他、特徴的なリン脂質の含有割合をピーク面積の比に置き換えて生物種を判別してもよい。ピーク面積の比による判別では、検体を正確に計量する操作や複雑な計算が必要がなく、簡易的な分析方法とすることができる。
本発明の生物種の判別方法は、畜肉動物や水産生物を用いた加工食品等の品質管理として、原料の生物種の特定に利用することができる。


Claims (3)

  1. 被験生物の有する脂質の情報に基づいて生物種を判別する方法であって、
    前記脂質は、ホスファチジルコリンであり、
    前記被験生物は、鶏、豚、ラム又は牛であり、
    次のすべての工程を含むことを特徴とする 、生物種の判別方法。
    工程1:被験生物からホスファチジルコリンを採取する工程
    工程2:前記ホスファチジルコリンを分子種ごとに分離する工程
    工程3:ホスファチジルコリンの有する脂肪酸種により前記分子種を同定する工程
    工程4:同定した前記分子種の情報に基づいて生物種を判別する工程
  2. 前記工程2は、液体クロマトグラフィーを用いて、前記ホスファチジルコリンの分子種を分離することを特徴とする、請求項に記載の生物種の判別方法。
  3. 前記分子種の情報は、ホスファチジルコリンとして、次のリン脂質P1~P10のいずれか1種以上の情報であることを特徴とする、請求項又はに記載の生物種の判別方法。
    リン脂質P1(16:0/16:0)、リン脂質P2(16:0/22:4)、リン脂質P3(O-16:0及び18:2)、リン脂質P4(16:0/18:3)、リン脂質P5(17:0/18:2)、リン脂質P6(16:0/20:5)、リン脂質P7(16:1/18:2)、リン脂質P8(15:1/16:1)、リン脂質P9(14:1/18:2)、リン脂質P10(16:1/22:0)
    [ただし、カッコ内は、リン脂質の有する2種の脂肪酸種を示し、脂肪酸種は「炭素数:不飽和結合の数」で示す。また、「O-16:0」における「O-」とは、グリセロールと脂肪酸の結合がエーテル結合であることを意味する。
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