JP7094916B2 - 生体情報モニタリングシステム、生体情報モニタリング方法、及びベッドシステム - Google Patents

生体情報モニタリングシステム、生体情報モニタリング方法、及びベッドシステム Download PDF

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Description

本発明は、生体情報モニタリングシステム、生体情報モニタリング方法、及びベッドシステムに関する。
医療や介護の分野において、荷重検出器を介してベッド上の被験者の荷重を検出し、検出した荷重に基づいて被験者の呼吸数、心拍数等の生体情報を取得することが提案されている。
特許文献1は、ベッド上の被験者の呼吸状態を示す呼吸波形を描画する呼吸波形描画システムであって、呼吸波形の描画状態を補償する描画補償部を備え、呼吸波形をほぼリアルタイムで表示することのできる呼吸波形描画システムを開示している。特許文献1の呼吸波形描画システムは、被験者の重心位置の過去の時間的変動に基づいて被験者の呼吸波形の予測波形を生成し、所定のサンプリング時刻における被験者の呼吸波形と予測波形との間の距離(補正距離)に基づいて呼吸波形の描画状態を補償する。具体的には例えば、補正距離が所定の範囲内である場合に、呼吸波形を所定距離だけ予測波形側にオフセットさせる。
特開2017-205220号
本発明は、被験者の生体情報を高い精度で取得及び/又は表示することのできる生体情報モニタリングシステム、生体情報モニタリング方法、及びベッドシステムを提供することを目的とする。
本発明の第1の態様に従えば、
ベッド上の被験者の生体情報をモニタする生体情報モニタリングシステムであって、
前記ベッド又は前記ベッドの脚の下に設けられて前記ベッド上の前記被験者の荷重を検出する少なくとも1つの荷重検出器と、
前記荷重検出器の検出値の前記被験者の呼吸又は心拍に応じた時間的変動を示す観測波形を取得する観測波形取得部と、
カルマンフィルタにより予測ステップ及びフィルタステップを行って前記被験者の呼吸又は心拍の状態を示す推定波形を算出するフィルタ実行部と、
前記荷重検出器の検出値に基づいて前記被験者の体動の有無を判定する体動判定部と、
前記観測波形と前記推定波形のゼロクロスの立上り、又は前記観測波形と前記推定波形のゼロクロスの立下りが同時に生じる同相時刻を検出する同相検出部と、
前記体動判定部の判定結果及び前記同相検出部の検出結果に基づいて前記フィルタ実行部の動作を制御するフィルタ制御部とを備え、
前記フィルタ実行部は、前記予測ステップと、前記観測波形に基づく前記フィルタステップとを行う通常演算、又は前記予測ステップのみを行う簡易演算を選択的に実行するよう構成されており、
前記フィルタ制御部は、前記被験者に体動が生じている期間、及び該期間の終了から該期間の後の最初の前記同相時刻までの期間に前記フィルタ実行部に簡易演算を実行させる生体情報モニタリングシステムが提供される。
第1の態様の生体情報モニタリングシステムにおいて、前記少なくとも1つの荷重検出器は複数の荷重検出器であってよく、前記観測波形取得部は、前記観測波形として、前記複数の荷重検出器の検出値に基づいて前記被験者の重心位置を求め、該重心位置の前記被験者の呼吸に応じた移動に基づき前記被験者の呼吸波形を算出してもよく、前記フィルタ実行部は、前記呼吸波形に基づいて前記フィルタステップを行ってもよい。
第1の態様の生体情報モニタリングシステムは、前記推定波形に基づいて前記被験者の呼吸数又は心拍数を算出する生体情報算出部を更に備えてもよい。
第1の態様の生体情報モニタリングシステムは、前記推定波形を描画する推定波形描画部を更に備えてもよい。
第1の態様の生体情報モニタリングシステムにおいて、前記観測波形取得部は、前記観測波形として、前記荷重検出器の検出値の前記被験者の呼吸に応じた時間的変動を示す呼吸観測波形、及び前記荷重検出器の検出値の前記被験者の心拍に応じた時間的変動を示す心拍観測波形を取得してもよく、前記フィルタ実行部は、前記推定波形として、前記被験者の呼吸の状態を示す呼吸推定波形、及び前記被験者の心拍の状態を示す心拍推定波形を算出するよう構成されていてもよく、前記フィルタ実行部が実行する前記フィルタステップは、前記呼吸観測波形に基づくフィルタステップ、及び前記心拍観測波形に基づくフィルタステップを含んでもよい。
本発明の第2の態様に従えば、
ベッドと、
第1の態様の生体情報モニタリングシステムとを備えるベッドシステムが提供される。
本発明の第3の態様に従えば、
ベッド上の被験者の生体情報をモニタする生体情報モニタリング方法であって、
前記ベッド又は前記ベッドの脚の下に設けられた少なくとも1つの荷重検出器により前記ベッド上の前記被験者の荷重を検出することと、
前記荷重検出器の検出値の前記被験者の呼吸又は心拍に応じた時間的変動を示す観測波形を取得することと、
カルマンフィルタにより予測ステップ及びフィルタステップを行って前記被験者の呼吸又は心拍の状態を示す推定波形を算出することと、
前記荷重検出器の検出値に基づいて前記被験者の体動の有無を判定することと、
前記観測波形と前記推定波形のゼロクロスの立上り、又は前記観測波形と前記推定波形のゼロクロスの立下りが同時に生じる同相時刻を検出することとを含む生体情報モニタリング方法であって、
前記推定波形を算出することは、前記予測ステップと、前記観測波形に基づくフィルタステップとを含む通常演算、又は前記予測ステップのみを含む簡易演算を選択的に実行することであり、
前記被験者に体動が生じている期間、及び該期間の終了から該期間の後の最初の前記同相時刻までの期間に簡易演算を実行する生体情報モニタリング方法が提供される。
第3の態様の生体情報モニタリングシステムにおいて、前記少なくとも1つの荷重検出器は複数の荷重検出器であってよく、前記観測波形を取得することは、前記複数の荷重検出器の検出値に基づいて前記被験者の重心位置を求め、該重心位置の前記被験者の呼吸に応じた移動に基づき前記被験者の呼吸波形を算出することであってよく、前記フィルタステップは、前記呼吸波形に基づくフィルタステップであってよい。
第3の態様の生体情報モニタリングシステムは、前記推定波形に基づいて前記被験者の呼吸数又は心拍数を算出することを更に含んでもよい。
第3の態様の生体情報モニタリングシステムは、前記推定波形を描画することを更に含んでもよい。
第3の態様の生体情報モニタリングシステムにおいて、前記観測波形を取得することは、前記荷重検出器の検出値の前記被験者の呼吸に応じた時間的変動を示す呼吸観測波形を取得することであってよく、前記推定波形を算出することは、前記カルマンフィルタにより前記被験者の呼吸の状態を示す呼吸推定波形を算出することであってよい。第3の態様の生体情報モニタリングシステムは、前記荷重検出器の検出値の前記被験者の心拍に応じた時間的変動を示す心拍観測波形を取得することを更に含んでもよく、前記カルマンフィルタにより前記被験者の心拍の状態を示す心拍推定波形を算出することを更に含んでもよい。第3の態様の生体情報モニタリングシステムにおいて、前記呼吸推定波形の算出における前記フィルタステップは前記呼吸観測波形に基づくフィルタステップであってよく、前記心拍推定波形の算出における前記フィルタステップは前記心拍観測波形に基づくフィルタステップであってよい。
本発明の生体情報モニタリングシステム、生体情報モニタリング方法、及びベッドシステムによれば、被験者の生体情報を高い精度で取得及び/又は表示することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る生体情報モニタリングシステムの構成を示すブロック図である。 図2は、荷重検出器のベッドに対する配置を示す説明図である。 図3は、生体情報モニタリングシステムを用いた生体情報のモニタリング方法を示すフローチャートである。 図4(a)は、被験者の重心が、被験者の呼吸に応じて体軸方向に振動する様子を概念的に示す説明図である。図4(b)は、被験者の呼吸に応じた重心の振動に基づいて呼吸波形を算出する方法を説明するための説明図である。図4(c)は、被験者の呼吸に応じた重心の振動に基づいて描画される呼吸波形の一例を示す図である。 図5は、推定波形取得部の具体的な構成を示すブロック図である。 図6は、呼吸波形取得部により求められた呼吸波形の一例、及び推定波形取得部により求められた推定波形の一例を示す図である。 図7は、荷重検出器により検出された荷重値の変動の様子を、被験者が呼吸のみを行っている安静期間と、被験者が体動を行っている体動期間の両方について示す概略的なグラフである。 図8は、カルマンフィルタ制御部によるカルマンフィルタ実行部の制御について説明するための図である。 図9は、変形例に係るベッドシステムの全体構成を示すブロック図である。
<実施形態>
本発明の実施形態の生体情報モニタリングシステム100(図1)について、これをベッドBD(図2)と共に使用して、ベッドBD上の被験者Sの呼吸数を算出(推定)する場合を例として説明する。
図1に示す通り、本実施形態の生体情報モニタリングシステム100は、荷重検出部1、制御部3、記憶部4を主に有する。荷重検出部1と制御部3とは、A/D変換部2を介して接続されている。制御部3には更に表示部5、報知部6、入力部7が接続されている。
荷重検出部1は、4つの荷重検出器11、12、13、14を備える。荷重検出器11、12、13、14のそれぞれは、例えばビーム形のロードセルを用いて荷重を検出する荷重検出器である。このような荷重検出器は例えば、特許第4829020号や特許第4002905号に記載されている。荷重検出器11、12、13、14はそれぞれ、配線又は無線によりA/D変換部2に接続されている。
図2に示す通り、荷重検出部1の4つの荷重検出器11~14は、被験者Sが使用するベッドBDの四隅の脚BL、BL、BL、BLの下端部に取り付けられたキャスターC、C、C、Cの下にそれぞれ配置される。
A/D変換部2は、荷重検出部1からのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器を備え、荷重検出部1と制御部3にそれぞれ配線又は無線で接続されている。
制御部3は、専用又は汎用のコンピュータであり、内部に呼吸波形取得部(観測波形取得部)31、推定波形取得部32、呼吸数算出部(生体情報算出部)33が構築されている。
記憶部4は、生体情報モニタリングシステム100において使用されるデータを記憶する記憶装置であり、例えばハードディスク(磁気ディスク)を用いることができる。
表示部5は、制御部3から出力される情報を生体情報モニタリングシステム100の使用者に表示する液晶モニター等のモニターである。
報知部6は、制御部3からの情報に基づいて所定の報知を聴覚的に行う装置、例えばスピーカを備える。
入力部7は、制御部3に対して所定の入力を行うためのインターフェイスであり、キーボード及びマウスにし得る。
このような生体情報モニタリングシステム100を使用して、ベッド上の被験者の生体情報(本実施形態では呼吸数)をモニタする動作について説明する。
生体情報モニタリングシステム100を使用した被験者の生体情報のモニタは、図3のフローチャートに示す通り、被験者の荷重を検出する荷重検出工程S1と、検出した荷重(荷重値)に基づいて被験者の呼吸波形(詳細後述)を求める呼吸波形取得工程S2と、呼吸波形とカルマンフィルタとを用いて被験者の呼吸の状態を示す推定波形(詳細後述)を求める推定波形取得工程S3と、推定波形に基づいて被験者の呼吸数を算出する呼吸数算出工程S4と、呼吸数算出工程S4で算出された呼吸数を表示する表示工程S5とを含む。
[荷重検出工程]
荷重検出工程S1では、荷重検出器11、12、13、14を用いてベッドBD上の被験者Sの荷重を検出する。ベッドBD上の被験者Sの荷重は、ベッドBDの四隅の脚BL~BLの下に配置された荷重検出器11~14に分散して付与され、これらによって分散して検出される。
荷重検出器11~14はそれぞれ、荷重(荷重変化)を検出してアナログ信号としてA/D変換部2に出力する。A/D変換部2は、サンプリング周期を例えば5ミリ秒として、アナログ信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号(以下「荷重信号」)として制御部3に出力する。以下では、荷重検出器11、12、13、14から出力されたアナログ信号をA/D変換部2においてデジタル変換して得られる荷重信号を、それぞれ荷重信号s、s、s、sと呼ぶ。
[呼吸波形取得工程]
呼吸波形取得工程S2では、呼吸波形取得部31が、被験者Sの荷重変動の観測に基づいて、被験者Sの呼吸状態を示す呼吸波形(観測波形の一例)を求める。
人間の呼吸は、胸郭及び横隔膜を移動させて、肺を膨張及び収縮させることにより行われる。ここで吸気時、すなわち肺が膨張する時には横隔膜は下方に下がり、内臓も下方に移動する。一方で呼気時、すなわち肺が収縮する時には横隔膜は上方に上がり、内臓も上方に移動する。本件の出願人に付与された特許第6105703号の明細書に記載されている通り、この内臓移動に伴って人間の重心はわずかに移動し、その移動方向は背骨の延在方向(体軸方向)にほぼ沿っている。
本発明及び本明細書において「呼吸波形」とは、被験者の呼吸に応じて被験者の体軸方向に振動する被験者の重心の振動(以下、適宜「呼吸振動」と呼ぶ)の様子を、時間軸に展開して示す波形を意味する。呼吸波形の1周期は、被験者の1回の呼吸(呼気及び吸気)に対応する。呼吸波形の振幅は、被験者の体格や呼吸の深さの影響を受ける。具体的には例えば、被験者が大柄であったり、被験者が深い呼吸を行った場合には振幅は大きくなり、被験者が小柄であったり、被験者が浅い呼吸を行った場合には振幅は小さくなる。
呼吸波形取得部31は、具体的な一例として、次の手順により呼吸波形を示すデータを求める。
呼吸波形取得部31は、まず、荷重検出部1からの荷重信号s~sに基づいて、各サンプリング時刻ごとに被験者Sの重心Gの位置を算出する。被験者Sの重心Gは、図4(a)に示すように、被験者Sの呼吸に応じて、被験者Sの体軸SAの方向にほぼ沿って振動している。
次いで呼吸波形取得部31は、図4(b)に示す通り、算出した各サンプリング時刻の重心Gの位置を体軸SAに投影して位置GAを求め、重心Gの呼吸に応じた振動の振動中心Oと位置GAとの間の距離Xを算出する。算出された各サンプリング時刻における距離Xを、横軸を時間軸として逐次プロットすると、図4(c)に示す呼吸波形RWとなる。なお、距離Xに代えて、重心Gと振動中心Oとの間の直線距離X’を用いてもよい。なお、振動中心Oの設定方法は様々であるが、具体的には例えば、重心Gの軌跡に連続且つ近接して生じる2つの極値点(一例として、図4(a)の点E1、E2)を求め、その中間点を振動中心Oと設定することができる。
呼吸波形取得部31は、各サンプリング時刻における距離Xを呼吸波形RWを示すデータとして算出し、これを推定波形取得部32に出力する。また、呼吸波形取得部31は、呼吸波形RWを示すデータに基づいて呼吸波形RWを描画する呼吸波形描画部(不図示)を備えてもよい。この場合、呼吸波形描画部は、図4(c)に示すような呼吸波形RWを描画し、表示部5に表示してもよい。
[推定波形取得工程S3]
推定波形取得工程S3では、推定波形取得部32が、カルマンフィルタと、呼吸波形取得工程S2において求められた呼吸波形RWを示すデータとを用いて、被験者Sの呼吸の状態を示す推定波形を求める。
推定波形取得部32は、図5に示す通り、推定波形を示すデータを算出するカルマンフィルタ実行部(フィルタ実行部)321と、カルマンフィルタ実行部321の制御を行うカルマンフィルタ制御部322と、推定波形を示すデータに基づいて推定波形を描画する推定波形描画部323とを含む。また、カルマンフィルタ制御部322は、体動判定部322aと、同相検出部322bと、モード切換部(フィルタ制御部)322cとを含む。
カルマンフィルタ実行部321は、カルマンフィルタを実行して被験者Sの呼吸の状態を示す推定波形EWを示すデータを算出する。
一般に、カルマンフィルタとは、解析対象の状態を効率的に推定する計算手法であり、ある時点における解析対象の状態を示す状態推定値と、適宜作成された状態方程式とに基づいて次の時点における解析対象の状態を示す状態推定値を予測する予測ステップと、予測ステップにおいて予測した次の時点における状態推定値を当該時点における観測値を用いて修正するフィルタステップとを交互に行うものである。
カルマンフィルタ実行部321は次の2つの動作モードの下で算出を行う。
(1)通常演算モード
通常演算モードでは、カルマンフィルタ実行部321は、予測ステップとフィルタステップとを含む、一般的なカルマンフィルタ処理を行う。即ち、カルマンフィルタ実行部321は、過去の状態推定値と所定の状態方程式とを用いて新たな状態推定値を予測する予測ステップと、予測ステップにより予測された新たな状態推定値を観測値を用いて補正(更新)するフィルタステップとを行う。
具体的には、カルマンフィルタ実行部321は、予測ステップにおいて、所定のサンプリング時刻tにおける状態推定値EV(ここでは、サンプリング時刻tにおける距離Xの推定値)と所定の状態方程式とを用いて、次のサンプリング時刻tn+1における予測推定値PEVn+1(ここでは、サンプリング時刻tn+1における距離Xの予測推定値)を算出する。
その後、カルマンフィルタ実行部321は、フィルタステップにおいて、サンプリング時刻tn+1における観測値(ここでは、サンプリング時刻tn+1における呼吸波形RWの距離Xの値)やカルマンゲインに基づいて、予測ステップにおいて算出した予測推定値PEVn+1を補正し、所定のサンプリング時刻tn+1における状態推定値EVn+1を求める。カルマンゲインをより大きくすれば、状態推定値EVn+1は観測値により近い値となる。
通常演算モードのカルマンフィルタ実行部321は、このように、過去の状態推定値と状態方程式とを用いて予測推定値を算出する予測ステップと、予測ステップにおいて算出した予測推定値を観測値によって補正して新たな状態推定値EVn+1を求めるフィルタステップとを交互に繰返すことにより、各サンプリング時刻における状態推定値EV、EVn+1、EVn+2・・・を逐次算出する。算出される状態推定値EV、EVn+1、EVn+2・・・が、推定波形EWを示すデータである。
なお、以下の説明では、通常演算モードにより算出された状態推定値EV、EVn+1、EVn+2・・・に基づいて描画される推定波形EWを、通常推定波形EW1と呼ぶ。
通常推定波形EW1の概略的な一例は、図6の時刻T1までの期間、及び時刻T3以降の期間に示す通りである。図6に示す通常推定波形EW1は、振幅及び周期が一定ではないが、これは被験者Sの実際の呼吸の状態を反映している。即ち、通常推定波形EW1は、被験者Sの実際の呼吸に基づいて取得された呼吸波形RWにより予測推定値を補正するフィルタステップを経て求められているため、被験者Sの実際の呼吸状態を反映した形状となる。
図6には、呼吸波形RWも描いており、通常推定波形EW1と呼吸波形RWとはほぼ一致している(なお、図6では、呼吸波形RWと通常推定波形EW1の両方を視認できるよう、両波形をわずかにずらして描いている)。このように、通常推定波形EW1が呼吸波形RWにほぼ一致するようにカルマンフィルタの設計を行うことが望ましいが必須ではなく、通常推定波形EW1を呼吸波形RWにどの程度近づけるかはカルマンフィルタの設計により適宜変更し得る。
(2)簡易演算モード
簡易演算モードでは、カルマンフィルタ実行部321は、予測ステップのみを実行し、フィルタステップによる予測推定値の補正は行わない。なお本明細書及び本発明のカルマンフィルタにおいて「予測ステップのみを行う」とは、単に、フィルタステップを行わずに予測ステップを行うことを意味し、その他の補助的な計算ステップを行わないことまでも意味するものではない。
具体的には、カルマンフィルタ実行部321は、所定のサンプリング時刻tnにおける予測推定値PEV(ここでは、サンプリング時刻tにおける距離Xの予測推定値)と所定の状態方程式とにより、次のサンプリング時刻tn+1における予測推定値PEVn+1(ここでは、サンプリング時刻tn+1における距離Xの予測推定値)を算出し、その後も同様に、新たに得られた予測推定値と所定の状態方程式とにより、予測推定値PEVn+1、予測推定値PEVn+2・・・を順次算出する。
簡易演算モードのカルマンフィルタ実行部321は、このように、フィルタステップを行うことなく予測ステップを連続的に実行することにより、各サンプリング時刻における予測推定値PEV、PEVn+1、PEVn+2・・・を逐次算出する。算出される予測推定値PEV、PEVn+1、PEVn+2・・・が、推定波形EWを示すデータである。
なお、以下の説明では、簡易演算モードにより算出された予測推定値PEV、PEVn+1、PEVn+2・・・に基づいて描画される推定波形EWを、簡易推定波形EW2と呼ぶ。
簡易推定波形EW2の概略的な一例は、図6の時刻T1~時刻T3の期間に示す通りである。図6に示す簡易推定波形EW2は、振幅及び周期が略一定である。これは、簡易推定波形EW2が予測ステップのみに基づいて描画された波形であり、フィルタステップの影響、換言すれば被験者Sの実際の呼吸に基づく呼吸波形RWの影響を受けていないためである。一般的に、簡易推定波形EW2は、通常推定波形EW1に比較して理想化された比較的単調な変化を示す。
なお、図6の時刻T1~時刻T3の期間のうち、時刻T1~時刻T2の期間においては、呼吸波形RWが大きくランダムに変動している。これは、被験者Sに体動(被験者の頭部、胴部(体幹)、四肢の移動を意味する。呼吸や心拍等に伴う臓器、血管等の移動は体動には含まれない)が生じて、被験者Sの重心Gが呼吸振動よりも大きく且つ非周期的に移動しているためである。呼吸波形RWに基づくフィルタステップの影響を受けない簡易推定波形EW2は、被験者Sに体動が生じ呼吸波形RWに乱れが生じている当該期間においても、略一定の振幅及び周期を示している。
カルマンフィルタ制御部322は、カルマンフィルタ実行部321を制御して、被験者Sに体動が生じていない期間には通常モードによる通常推定波形EW1の算出を行わせ、被験者Sに体動が生じている期間、及び被験者Sの体動終了後の所定期間には簡易モードによる簡易推定波形EW2の算出を行わせる。
カルマンフィルタ制御部322によるカルマンフィルタ実行部321の制御は、具体的には例えば、次のように行われる。
まず、カルマンフィルタ制御部322の体動判定部322aが、被験者Sの体動の有無を検知する。被験者Sの体動の有無の検知は、具体的には例えば、次の手順によりなされる。
体動判定部322aは、荷重信号s~sの各々について、所定のサンプリング期間(一例として過去の5秒間)に含まれるサンプリング値の標準偏差(移動標準偏差)σ、σ、σ、σを算出する。算出は各サンプリング時刻毎に行われ得る。
標準偏差は、サンプリング値のばらつきの大きさを表わすため、図7に示すように、ベッドBD上の被験者Sが安静にしており、荷重信号s~sの変動の量が小さい期間Pにおいては標準偏差σ~σも小さくなる。一方で被験者Sが身体を動かしており(被験者Sに体動が生じており)、荷重信号s~sの変動の量が大きい期間Pにおいては標準偏差σ~σも大きくなる。
体動判定部322aは、標準偏差σ~σの単純平均値(算術平均値)σAVを算出し、単純平均値σAVと所定の閾値σthとの比較により、被験者Sに体動が生じているか否かの判定を行う。即ち、単純平均値σAVが閾値σthよりも大きい場合に被験者Sに体動が生じていると判定し、単純平均値σAVが閾値σth以下である場合に被験者Sに体動が生じていないと判定する。
体動判定部322aは上記の判定に基づき、被験者Sが体動を生じている期間に立上りを示す体動パルスBMPをモード切換部322cに出力する。
体動パルスBMPの一例は図8の2段目に示す通りである。図8の1段目は、図6に示す呼吸波形RW、及び推定波形EWである。図8の2段目の体動パルスBMPは、被験者Sに体動が生じている時刻T1~時刻T2の期間においてオンとなっており、その他の期間においてオフとなっている。
体動判定部322aによる被験者Sの体動の有無の検知に並行して、カルマンフィルタ制御部322の同相検出部322bは、呼吸波形RWがゼロクロスの立ち上がり(即ち、波形の負側から正側への立ち上がり)を示し、且つ推定波形EWがゼロクロスの立ち上がりを示す時刻(以下、「同相時刻t」と呼ぶ)を検出する。
同相検出部322bは、具体的には、呼吸波形RWがゼロクロスの立ち上がりを示す時刻tR0、及び推定波形EWがゼロクロスの立ち上がりを示す時刻tE0をそれぞれ特定し(図8の3、4段目)、時刻tR0と時刻tE0とが一致する同相時刻tに立上り及び立下りを示す同相パルスSPPをモード切換部322cに出力する。なお、時刻tR0と時刻tE0との一致は必ずしも完全一致でなくてもよく、ある程度のタイミングのずれは、所望の精度を達成するために必要な範囲内で許容可能である。具体的には例えば、呼吸(下記の変形例では心拍)の周期±5%程度の位相ずれはタイミングが一致しているとみなしてもよい。この場合、同相時刻tは呼吸(下記の変形例では心拍)の周期±5%程度の幅を有する。本明細書及び本発明において「観測波形と推定波形のゼロクロスの立ち上がり(又は立下り)が同時に生じている」という場合、呼吸(又は心拍)の周期±5%程度の幅を有する期間内に両者が共に生じていることを意味してもよく、「同相時刻」は、呼吸(又は心拍)の周期±5%程度の時間幅を有する期間であり得る。
同相パルスSPPの一例は図8の5段目に示す通りである。同相パルスSPPは、呼吸波形RW及び推定波形EWのゼロクロスの立ち上がりが同時に生じる時刻tにおいて立ち上がっており、被験者Sの体動が無くなった後、最初の時刻tは、時刻T3に等しい。
モード切換部322cは、体動判定部322aから出力された体動パルスBMPと、同相検出部322bから出力された同相パルスSPPとに基づき、カルマンフィルタ実行部321の演算モードを、通常演算モードと簡易演算モードとの間で切換える。
具体的には、モード切換部322cは、体動パルスBMPの立ち上がりと同時に立上り、体動パルスBMPの立下りの後、最初に生じる同相パルスSPPの立下りと同時に立ち下がるタイミングパルスTMP(図8の6段目)を生成する。そして、タイミングパルスTMPがオンである期間(図8の時刻T1~時刻T3)には、カルマンフィルタ実行部321の演算モードを簡易演算モードに設定し、タイミングパルスTMPがオフである期間には、カルマンフィルタ実行部321の演算モードを通常演算モードに設定する。
即ち、モード切換部322cは、体動パルスBMPと同相パルスSPPとに基づき、被験者Sに体動が生じている期間、及び被験者Sの体動が無くなった後、呼吸波形RW及び推定波形EWのゼロクロスの立ち上がりが生じるまでの期間は、カルマンフィルタ実行部321の動作モードを簡易演算モードに設定し、その他の期間はカルマンフィルタ実行部321の動作モードを通常演算モードに設定する。
なお、タイミングパルスTMPは、体動パルスBMPの立下りの後、最初に生じる同相パルスSPPの立上がりと同時に立ち下がるよう生成されてもよい。また、モード切替部322cは、タイミングパルスTMPを求めなくてもよい。すなわち、タイミングパルスTMPに依拠することなく、体動パルスBMPが立ち上がりを示す時点でカルマンフィルタ実行部321を簡易演算モードに切り替え、体動パルスBMPの立下り後、最初に生じる同相パルスSPPの立上りから立下りまでのいずれかの時点でカルマンフィルタ実行321を通常演算モードに切り替えるのみでもよい。
推定波形描画部323は、カルマンフィルタ実行部321の演算結果に基づいて、推定波形EWを描画し、制御部3に出力する。具体的には、通常演算モードにより算出された状態推定値EV、EVn+1、EVn+2・・・に基づいて通常推定波形EW1を描画し、簡易演算モードにより算出された予測推定値PEV、PEVn+1、PEVn+2・・・に基づいて簡易推定波形EW2を描画する。
ここで、本実施形態のカルマンフィルタ制御部322のモード切換部322cが、被験者Sの体動がなくなる時点(時刻T2)ではなく、被験者Sの体動がなくなった後、呼吸波形RWのゼロクロスの立ち上がりと、推定波形EWのゼロクロスの立ち上がりとが一致する時点(時刻T3)で、カルマンフィルタ実行部321を簡易演算モードから通常演算モードに切り替える理由を説明する。
被験者Sの体動がなくなった時点においては、通常、推定波形EWと、呼吸波形RWとの間に位相差が生じている(一例として、図6の時刻T2における簡易推定波形EW2と呼吸波形RWの位相差を参照されたい)。このようなタイミングでカルマンフィルタ実行部321を簡易演算モードから通常演算モードに戻せば、呼吸波形RWを用いたフィルタステップが適用されることにより、簡易演算モードにおいて算出されていた簡易推定波形EW2と、通常演算モードにより算出される通常推定波形EW1との間に不連続性(即ち、位相のずれ、X軸方向の波形のシフト等)が生じてしまう。このような不連続性は、推定波形描画部323によって描かれる推定波形EWにも現れるため波形を観察する上で好ましくない。また、推定波形EWを用いた呼吸数算出(詳細後述)の際の誤差の原因ともなる。
これに対して、本実施形態のカルマンフィルタ制御部322のように、呼吸波RWのゼロクロスの立ち上がりと、推定波形EWのゼロクロスの立ち上がりとが一致する時点、即ち呼吸波形RWの位相が簡易推定波形EW2の位相に一致している時点でカルマンフィルタ実行部321の動作モードを簡易モードから通常モードに切り替えれば、切り換え時点におけるフィルタステップの影響をなくすか、或いは小さくすることが出来る。これにより、簡易推定波形EW2と通常推定波形EW1を滑らかに連続させることができる(一例として、図8の4段目の時刻T3における簡易推定波形EW2と通常推定波形EW1の接続部を参照されたい)。
[呼吸数算出工程S4]
呼吸数算出工程S4では、呼吸数算出部33が、推定波形取得部32において算出された推定波形EWに基づいて、被験者Sの呼吸数の算出(推定)を行う。呼吸数算出部33における呼吸数の算出は、具体的には例えば、推定波形EWのピーク検出を用いて次のように行われる。
呼吸数算出部33は、まず、推定波形EW(即ち、通常推定波形EW1及び簡易推定波形EW2)の正のピークpp(以下、単に「ピークpp」と記載する)を逐次検出する。図6に、呼吸数算出部33が時刻Tn-2、Tn-1、Tに特定した推定波形EWのピークppn-2、ppn-1、ppを示す。
次いで、呼吸数算出部33は、推定波形EWのピークが特定された時刻に基づいて、次のようにして被験者Sの1分間当たりの呼吸数の推定値である呼吸数Rを算出する。
呼吸数算出部33は、時刻Tn-1にピークppn-1が特定された時点で、時刻Tn-1と、その直前にピークppn-2が特定された時刻Tn-2との間の経過時間TTn-1を算出し、下記の(式1)を用いて呼吸数Rを算出する。
(式1)
R=60/TT [回/分](m=1、2、・・・、n-1、n)
即ち、60秒を最新の呼吸の周期で除することにより、最新の呼吸状態を反映した、1分間当たりの呼吸数の推定値を算出する。呼吸数算出部33は、同様に、時刻Tにピークppが特定された時点で、時刻Tと、その直前にピークppn-1が特定された時刻Tn-1との間の経過時間TTを算出し、(式1)を用いて呼吸数Rを算出する。算出された呼吸数Rは、制御部3に出力される。
[表示工程]
表示工程S5においては、制御部3が、呼吸数算出部33の出力に基いて被験者Sの呼吸数を表示部5に表示し、推定波形描画部323の出力に基づいて被験者Sの推定波形EWを表示部5に表示する。
また表示工程S5では、表示部5を用いた表示に加えて、又はこれに代えて、報知部6を用いた報知を行っても良い。この場合は例えば、被験者Sの呼吸数が所定の閾値よりも小さくなった場合に報知音を発し、体動の発生を生体状態モニタリングシステム100の使用者である看護師や介護士等に報せる。
本実施形態の生体情報モニタリングシステム100の効果を以下にまとめる。
本実施形態の生体状態モニタリングシステム100は、カルマンフィルタ実行部321の動作モードを制御するカルマンフィルタ制御部322を備え、カルマンフィルタ制御部322は、被験者Sの体動がなくなる時点ではなく、被験者Sの体動がなくなった後、呼吸波形RWのゼロクロスの立ち上がりと、推定波形EWのゼロクロスの立ち上がりとが一致する時点で、カルマンフィルタ実行部321を簡易演算モードから通常演算モードに切り換える。このように、簡易演算モードから通常演算モードへの切換え、換言すればフィルタステップの再開を、呼吸波形RWと推定波形EWとの位相が揃っており、カルマンフィルタの演算に与えるフィルタステップの影響が小さいタイミングで行うことにより、フィルタステップの再開による簡易推定波形EW2と通常推定波形EW1とのずれを抑制することができる。
そのため、推定波形EWを描画して表示部5に表示する際には滑らかな推定波形EWを表示することができ、推定波形EWに基づいて被験者Sの呼吸数を算出する際には高い精度で算出を行うことができる。即ち、被験者Sの呼吸の状態を示す波形を高い精度で表示することができ、被験者Sの呼吸数を高い精度で取得することができる。
本実施形態の生体状態モニタリングシステム100は、ベッドBDの脚BL~BLの下に配置した荷重検出器11~14を用いて被験者Sの生体状態をモニタしている。したがって、被験者Sの身体に計測装置を取り付ける必要がなく、被験者Sに不快感や違和感を与えることがない。
[変形例]
上記実施形態の生体情報モニタリングシステム100において、次の変形態様を採用することもできる。
上記実施形態の生体情報モニタリングシステム100においては、呼吸波形取得部31を、呼吸波形RWに加えて被験者Sの心拍に応じた荷重変動を示す波形も求める波形取得部として構成してもよい。この場合、推定波形取得部32は、被験者Sの呼吸の状態を示す推定波形に加えて被験者Sの心拍の状態を示す推定波形も求める構成であってよく、呼吸数算出部(生体情報算出部)33は、被験者Sの呼吸数に加えて被験者Sの心拍数を算出する構成であってよい。
この変形態様においては、波形取得部は、荷重信号s~sの少なくとも1つから、バンドパスフィルタ等により、心拍の周波数帯域(約0.5Hz~約3.3Hz)に含まれる成分を分離し、これを被験者Sの心拍に応じた荷重変動を示す波形として推定波形取得部32に送る。
推定波形取得部32は、上記の実施形態の推定波形取得工程S3と同様の工程により、被験者Sの心拍の状態を示す推定波形を求める。被験者Sの心拍に応じた荷重変動を示す波形も、呼吸波形RWと同様の時間領域の波形であるため、変形例の推定波形取得部32は、上記実施形態の推定波形取得部32が呼吸波形RWに対して行う処理と同等の処理により、被験者Sの心拍の状態を示す推定波形を求めることが出来る。この時、カルマンフィルタ実行部321は、予測ステップにおいては被験者Sの心拍の状態を示す波形を求めるための状態方程式を用いて予測推定値を算出し、フィルタステップにおいては波形取得部から受け取る、被験者Sの心拍に応じた荷重変動を示す波形を用いて予測推定値の補正を行う。
なお、波形算出部を被験者Sの心拍に応じた荷重変動を示す波形のみを算出する波形算出部として構成してもよい。この場合、推定波形取得部32は、被験者Sの心拍の状態を示す推定波形のみを求める構成であってよく、呼吸数算出部(生体情報算出部)33は、被験者Sの心拍数のみを求める構成であってよい。
上記実施形態の生体情報モニタリングシステム100において、呼吸波形取得部31は、荷重信号s~sの少なくとも1つから、呼吸の周波数帯域(約0.2Hz~約0.33Hz)に含まれる成分を分離して得られる波形を算出し、当該波形を、呼吸波形RWに代えて推定波形取得部32に送っても良い。荷重信号s~sの少なくとも1つから呼吸の周波数帯域に含まれる成分を分離して得られる波形も呼吸波形RWと同様の時間領域の波形であるため、推定波形取得部32は、上記実施形態において呼吸波形RWに対して行う処理と同等の処理により、被験者Sの呼吸の状態を示す推定波形を求めることが出来る。
呼吸波形、及び荷重信号s~sの少なくとも1つから呼吸の周波数帯域に含まれる成分を分離して得られる波形は、特許請求の範囲に記載された「荷重検出器の検出値の被験者の呼吸に応じた時間的変動を示す観測波形」の一例であり、荷重信号s~sの少なくとも1つから心拍の周波数帯域に含まれる成分を分離して得られる波形は、特許請求の範囲に記載された「荷重検出器の検出値の被験者の心拍に応じた時間的変動を示す観測波形」の一例である。また、上記実施形態の呼吸波形取得部31や変形例の波形取得部は、特許請求の範囲に記載された「観測波形取得部」の一例である。
上記実施形態の生体情報モニタリングシステム100において、カルマンフィルタ制御部322の体動判定部322aは、標準偏差σ~σの単純平均値σAVと閾値との比較により被験者Sの体動の有無を判定していたがこれには限られない。体動判定部322aは、標準偏差σ~σのいずれか一つと閾値との比較、標準偏差σ~σのいずれか二つ以上の単純平均値又は合計値と閾値との比較等により被験者Sの体動の有無を判定してもよく、標準偏差σ~σに代えて標準偏差の二乗である分散を用いても良い。
上記実施形態の生体情報モニタリングシステム100において、カルマンフィルタ制御部322の同相検出部322bは、同相時刻tとして、呼吸波形RW及び推定波形EWがゼロクロスの立ち上がりを示す時刻を検出していたがこれには限られない。同相検出部322bは、同相時刻tとして、呼吸波形RW及び推定波形EWがゼロクロスの立ち下がりを示す時刻を検出してもよい。
上記実施形態の生体情報モニタリングシステム100において、カルマンフィルタ制御部322は推定波形描画部323を備えなくてもよい。また、上記実施形態の生体情報モニタリングシステム100は呼吸数算出部33を備えなくてもよい。
上記実施形態の生体情報モニタリングシステム100において、呼吸数算出部33は、正のピークppに代えて負のピークnpの特定に基づいて、呼吸数Rの算出を行っても良い。この場合の具体的な工程は、上記実施形態と同様である。
上記実施形態の生体情報モニタリングシステム100は、必ずしも荷重検出器11~14の全てを備える必要はなく、このいずれか一つを備えるのみでもよい。また、荷重検出器は、必ずしもベッドの四隅に配置される必要はなく、ベッド上の被験者の荷重及びその変動を検出しうるように、任意の位置に配置し得る。また、荷重検出器11~14は、ビーム形ロードセルを用いた荷重センサに限られず、例えばフォースセンサを使用することもできる。
上記実施形態の生体情報モニタリングシステム100においては、荷重検出器11~14の各々は、ベッドBDの脚の下端に取り付けられたキャスターCの下に配置されていたがこれには限られない。荷重検出器11~14の各々は、ベッドBDの4本の脚とベッドBDの床板との間に設けられてもよいし、ベッドBDの4本の脚が上下に分割可能であれば、上部脚と下部脚との間に設けられても良い。また、荷重検出器11~14をベッドBDと一体に又は着脱可能に組み合わせて、ベッドBDと本実施形態の生体情報モニタリングシステム100とからなるベッドシステムBDSを構成してもよい(図9)。なお、本明細書において「ベッドに設けられた荷重検出器」とは、上述のようにベッドBDの4本の脚とベッドBDの床板との間に設けられた荷重検出器や、上部脚と下部脚との間に設けられた荷重検出器を意味する。
上記実施形態の生体情報モニタリングシステム100において、荷重検出部1とA/D変換部2との間に、荷重検出部1からの荷重信号を増幅する信号増幅部や、荷重信号からノイズを取り除くフィルタリング部を設けても良い。
上記実施形態の生体状態モニタリングシステム100において、表示部5は、モニターに代えて、又はこれに加えて、生体情報を表わす情報を印字して出力するプリンタや、生体情報を表示するランプ等の簡易な視覚表示手段を備えてもよい。報知部6はスピーカーに代えて、又はこれに加えて、振動により報知を行う振動発生部を備えてもよい。
本発明の特徴を維持する限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
本発明の生体情報モニタリングシステムによれば、被験者の生体情報をより正確に取得及び/又は表示することができ、医療、介護等の質の向上に資することができる。
1 荷重検出部、11,12,13,14 荷重検出器、2 A/D変換部、3 制御部、31 呼吸波形取得部、32 推定波形取得部、321 カルマンフィルタ実行部、322 カルマンフィルタ制御部、322a 体動判定部、322b 同相検出部、322c モード切換部、323 推定波形描画部、33 呼吸数算出部、4 記憶部、5 表示部、6 報知部、7 入力部、100 生体情報モニタリングシステム、BD ベッド、BDS ベッドシステム、S 被験者

Claims (11)

  1. ベッド上の被験者の生体情報をモニタする生体情報モニタリングシステムであって、
    前記ベッド又は前記ベッドの脚の下に設けられて前記ベッド上の前記被験者の荷重を検出する少なくとも1つの荷重検出器と、
    前記荷重検出器の検出値の前記被験者の呼吸又は心拍に応じた時間的変動を示す観測波形を取得する観測波形取得部と、
    カルマンフィルタにより予測ステップ及びフィルタステップを行って前記被験者の呼吸又は心拍の状態を示す推定波形を算出するフィルタ実行部と、
    前記荷重検出器の検出値に基づいて前記被験者の体動の有無を判定する体動判定部と、
    前記観測波形と前記推定波形のゼロクロスの立上り、又は前記観測波形と前記推定波形のゼロクロスの立下りが同時に生じる同相時刻を検出する同相検出部と、
    前記体動判定部の判定結果及び前記同相検出部の検出結果に基づいて前記フィルタ実行部の動作を制御するフィルタ制御部とを備え、
    前記フィルタ実行部は、前記予測ステップと、前記観測波形に基づく前記フィルタステップとを行う通常演算、又は前記予測ステップのみを行う簡易演算を選択的に実行するよう構成されており、
    前記フィルタ制御部は、前記被験者に体動が生じている期間、及び該期間の終了から該期間の後の最初の前記同相時刻までの期間に前記フィルタ実行部に簡易演算を実行させる生体情報モニタリングシステム。
  2. 前記少なくとも1つの荷重検出器は複数の荷重検出器であり、
    前記観測波形取得部は、前記観測波形として、前記複数の荷重検出器の検出値に基づいて前記被験者の重心位置を求め、該重心位置の前記被験者の呼吸に応じた移動に基づき前記被験者の呼吸波形を算出し、
    前記フィルタ実行部は、前記呼吸波形に基づいて前記フィルタステップを行う請求項1に記載の生体情報モニタリングシステム。
  3. 前記推定波形に基づいて前記被験者の呼吸数又は心拍数を算出する生体情報算出部を更に備える請求項1又は2に記載の生体情報モニタリングシステム。
  4. 前記推定波形を描画する推定波形描画部を更に備える請求項1~3のいずれか一項に記載の生体情報モニタリングシステム。
  5. 前記観測波形取得部は、前記観測波形として、前記荷重検出器の検出値の前記被験者の呼吸に応じた時間的変動を示す呼吸観測波形、及び前記荷重検出器の検出値の前記被験者の心拍に応じた時間的変動を示す心拍観測波形を取得し、
    前記フィルタ実行部は、前記推定波形として、前記被験者の呼吸の状態を示す呼吸推定波形、及び前記被験者の心拍の状態を示す心拍推定波形を算出するよう構成されており、
    前記フィルタ実行部が実行する前記フィルタステップは、前記呼吸観測波形に基づくフィルタステップ、及び前記心拍観測波形に基づくフィルタステップを含む請求項1~4のいずれか一項に記載の生体情報モニタリングシステム。
  6. ベッドと、
    請求項1~5のいずれか一項に記載の生体情報モニタリングシステムとを備えるベッドシステム。
  7. ベッド上の被験者の生体情報をモニタする生体情報モニタリング方法であって、
    前記ベッド又は前記ベッドの脚の下に設けられた少なくとも1つの荷重検出器により前記ベッド上の前記被験者の荷重を検出することと、
    前記荷重検出器の検出値の前記被験者の呼吸又は心拍に応じた時間的変動を示す観測波形を取得することと、
    カルマンフィルタにより予測ステップ及びフィルタステップを行って前記被験者の呼吸又は心拍の状態を示す推定波形を算出することと、
    前記荷重検出器の検出値に基づいて前記被験者の体動の有無を判定することと、
    前記観測波形と前記推定波形のゼロクロスの立上り、又は前記観測波形と前記推定波形のゼロクロスの立下りが同時に生じる同相時刻を検出することとを含む生体情報モニタリング方法であって、
    前記推定波形を算出することは、前記予測ステップと、前記観測波形に基づくフィルタステップとを含む通常演算、又は前記予測ステップのみを含む簡易演算を選択的に実行することであり、
    前記被験者に体動が生じている期間、及び該期間の終了から該期間の後の最初の前記同相時刻までの期間に簡易演算を実行する生体情報モニタリング方法。
  8. 前記少なくとも1つの荷重検出器は複数の荷重検出器であり、
    前記観測波形を取得することは、前記複数の荷重検出器の検出値に基づいて前記被験者の重心位置を求め、該重心位置の前記被験者の呼吸に応じた移動に基づき前記被験者の呼吸波形を算出することであり、
    前記フィルタステップは、前記呼吸波形に基づくフィルタステップである請求項7に記載の生体情報モニタリング方法。
  9. 前記推定波形に基づいて前記被験者の呼吸数又は心拍数を算出することを更に含む請求項7又は8に記載の生体情報モニタリング方法。
  10. 前記推定波形を描画することを更に含む請求項7~9のいずれか一項に記載の生体情報モニタリング方法。
  11. 前記観測波形を取得することは、前記荷重検出器の検出値の前記被験者の呼吸に応じた時間的変動を示す呼吸観測波形を取得することであり、
    前記荷重検出器の検出値の前記被験者の心拍に応じた時間的変動を示す心拍観測波形を取得することを更に含み、
    前記推定波形を算出することは、前記カルマンフィルタにより前記被験者の呼吸の状態を示す呼吸推定波形を算出することであり、
    前記カルマンフィルタにより前記被験者の心拍の状態を示す心拍推定波形を算出することを更に含み、
    前記呼吸推定波形の算出における前記フィルタステップは前記呼吸観測波形に基づくフィルタステップであり、前記心拍推定波形の算出における前記フィルタステップは前記心拍観測波形に基づくフィルタステップである請求項7~10のいずれか一項に記載の生体情報モニタリング方法。
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