JP7088244B2 - 鋼帯の鋼中水素量予測方法、鋼中水素量制御方法、製造方法、鋼中水素量予測モデルの生成方法及び鋼中水素量予測装置 - Google Patents

鋼帯の鋼中水素量予測方法、鋼中水素量制御方法、製造方法、鋼中水素量予測モデルの生成方法及び鋼中水素量予測装置 Download PDF

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本開示は、鋼帯の鋼中水素量予測方法、鋼中水素量制御方法、製造方法、鋼中水素量予測モデルの生成方法及び鋼中水素量予測装置に関する。本開示は、特に、高強度冷延鋼板を製造するための連続焼鈍設備におけるものである。
近年、自動車分野においては燃費向上に向けた車体軽量化及び衝突安全性確保のための高強度鋼板の適用が拡大している。しかし、高強度の冷延鋼板では、水素脆化割れについて改善の余地があると考えられている。
水素脆化割れとは、鋼板が水素を吸収して靭性が低下することにより引き起こされる破壊現象をいう。通常は、鋼材に応力が負荷された状態で、腐食などの要因により、水素が鋼中に侵入し、ある期間経過後に突然破壊が生じる現象をいう(遅れ破壊とも呼称される)。特に、高強度鋼板では、降伏応力が高いため、プレス加工などの2次加工によって生じる残留応力も大きくなることから、鋼中に水素が侵入しやすくなることが一つの原因であると考えられている。
冷延鋼板を製造する連続焼鈍設備では、製造する鋼帯の表面の酸化を防止し、還元性雰囲気とすることを目的として、水素を含有する雰囲気中で熱処理を実施する。これにより熱処理過程において、鋼帯の内部に一旦水素が侵入することになる。通常は、400℃以下の温度域で一定時間保持すれば、鋼中から水素が抜けるものの、連続焼鈍設備の出側において鋼中水素量が十分低減されていないと、上記のような環境中では、遅れ破壊が生じるリスクも想定しうる。
これに対して、特許文献1では、高強度の溶融亜鉛めっき鋼板を対象として、鋼の鋳造工程及び冷間圧延工程における製造条件を所定の条件に制御して、その後、焼鈍工程の後に、酸洗を行う前処理工程を施して、その後再び所定の温度域に加熱してからめっき処理を行う方法が開示されている。また、めっき工程の後に、所定の水素濃度と露点に制御された雰囲気中で、温度50~400℃の温度域で30秒以上の加熱を行う後処理工程を含む製造方法が開示されており、これにより鋼中水素量が低減するとされている。
特許第6673534号公報
特許文献1に記載された方法は、溶融亜鉛めっき鋼板を対象とするものであり、冷延鋼板を対象としていない。また、特許文献1に記載された方法は、複数の製造工程における製造条件を組み合わせる必要があり、焼鈍工程後の鋼帯を一旦室温まで冷却し、酸洗を行った後に、さらに再加熱を行ってからめっき処理を行う必要がある点で、効率的な水素濃度低減という観点から改善の余地があった。さらに、特許文献1に記載された方法は、鋼帯の鋼中水素量を直接的に予測するものではない。
以上の問題を解決すべくなされた本開示の目的は、鋼帯の鋼中水素量を高精度に予測する鋼帯の鋼中水素量予測方法、鋼中水素量予測モデルの生成方法及び鋼中水素量予測装置を提供することにある。また、本開示の他の目的は、その鋼中水素量予測方法を用いて、鋼中水素量を効果的に低減させる鋼帯の鋼中水素量制御方法及び製造方法を提供することにある。
本開示の一実施形態に係る鋼帯の鋼中水素量予測方法は、
鋼帯の焼鈍工程及び再加熱工程を含む製造工程を実行する連続焼鈍設備における、前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量予測方法であって、
入力データとして、前記連続焼鈍設備の操業パラメータから選択した1以上のパラメータと、前記焼鈍工程及び前記再加熱工程の少なくとも1つにおいて測定された変態率情報と、を取得する入力データ取得ステップと、
前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量に関する情報を出力データとする、機械学習により学習された鋼中水素量予測モデルを用いて、前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量を予測することと、を含む。
本開示の一実施形態に係る鋼帯の鋼中水素量制御方法は、
上記の鋼帯の鋼中水素量予測方法を用いて、前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量を予測し、予測した鋼中水素量が予め設定された上限値を超える場合には、鋼中水素量が前記上限値以下になるように、前記連続焼鈍設備の操業パラメータから選択した1以上の操業パラメータを再設定すること、を含む。
本開示の一実施形態に係る鋼帯の製造方法は、
鋼帯の焼鈍工程及び再加熱工程を含む製造工程を実行する連続焼鈍設備における、鋼帯の製造方法であって、
入力データとして、前記連続焼鈍設備の操業パラメータから選択した1以上のパラメータと、前記焼鈍工程及び前記再加熱工程の少なくとも1つにおいて測定された変態率情報と、を取得することと、
前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量に関する情報を出力データとする、機械学習により学習された鋼中水素量予測モデルを用いて、前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量を予測することと、
予測した鋼中水素量が予め設定された上限値を超える場合には、鋼中水素量が前記上限値以下になるように、前記連続焼鈍設備の操業パラメータから選択した1以上の操業パラメータを再設定することと、を含む。
本開示の一実施形態に係る鋼帯の鋼中水素量予測モデルの生成方法は、
鋼帯の焼鈍工程及び再加熱工程を含む製造工程を実行する連続焼鈍設備における、前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量を予測するための鋼帯の鋼中水素量予測モデルの生成方法であって、
少なくとも前記連続焼鈍設備の操業実績データから選択した1以上の操業実績データと、前記焼鈍工程及び前記再加熱工程の少なくとも1つにおいて測定された変態率情報の実績データと、を入力実績データとして取得することと、
前記入力実績データに基づく前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量に関する情報を出力実績データとした、複数の学習用データを取得することと、
取得した複数の学習用データを用いた機械学習によって、鋼帯の鋼中水素量予測モデルを生成することと、を含む。
本開示の一実施形態に係る鋼帯の鋼中水素量予測装置は、
鋼帯の焼鈍工程及び再加熱工程を含む製造工程を実行する連続焼鈍設備における、前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量を予測する鋼中水素量予測装置であって、
前記連続焼鈍設備の操業パラメータから選択した1以上のパラメータと、前記焼鈍工程及び前記再加熱工程の少なくとも1つにおいて測定された変態率情報と、を取得する取得部と、
前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量に関する情報を出力データとする、機械学習により学習された鋼中水素量予測モデルを用いて、前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量を予測する予測部と、を含む。
本開示によれば、鋼帯の鋼中水素量を高精度に予測する鋼帯の鋼中水素量予測方法、鋼中水素量予測モデルの生成方法及び鋼中水素量予測装置を提供することができる。本開示によれば、その鋼中水素量予測方法を用いて、鋼中水素量を効果的に低減させる鋼帯の鋼中水素量制御方法及び製造方法を提供することができる。
図1は、連続焼鈍設備の一例であって、冷延鋼板を製造する連続焼鈍ラインを示す図である。 図2は、冷延鋼板を製造する連続焼鈍ラインにおける熱履歴の例を示す図である。 図3は、鋼中水素量予測モデルの生成方法を示す図である。 図4は、鋼中水素量制御方法を示す図である。 図5は、鋼中水素量予測装置を説明する図である。
本実施形態における鋼帯の鋼中水素量予測方法は、熱間圧延工程、酸洗工程、冷間圧延工程を経て所定の板厚まで減厚された鋼板を、連続焼鈍設備により熱処理を行って製造される冷延鋼板の連続焼鈍設備出側における鋼中水素量を予測する。少なくとも熱間圧延工程以降は、薄鋼板がコイル状に巻かれてから熱処理等が行われるので、本実施形態では、当該薄鋼板を「鋼帯」と記載することがある。
<連続焼鈍設備>
本実施形態において、連続焼鈍設備は、焼鈍工程及び再加熱工程を含む製造工程を実行する連続焼鈍設備(CAL)を対象とする。以下、図面を参照して連続焼鈍設備が具体的に説明される。
図1は、冷延鋼板を製造する連続焼鈍設備の設備例を示す模式図である。図1の矢印は鋼帯の進行方向を示す。連続焼鈍設備は、入側設備、炉体部、及び出側設備に大別される。入側設備は、ペイオフリール1、溶接機2、電解清浄装置3及び入側ルーパー4を有する。炉体部は、焼鈍部及び再加熱部から構成される。出側設備は、出側ルーパー12、調質圧延設備13、検査設備14、テンションリール15を有する。検査設備14は、オフラインで鋼中水素量を測定するためのサンプル材を、鋼帯から採取するサンプル採取設備を有する。
焼鈍部は、加熱帯6、均熱帯7及び冷却帯8を有し、加熱帯6の上流側には予熱帯5を有する場合がある。本実施形態における焼鈍工程とは、焼鈍部で実施される熱処理工程である。焼鈍工程は、より具体的に言うと、鋼帯を室温付近から昇温させ、所定の温度に保持した後、室温近傍まで鋼帯の温度を低下させる工程である。再加熱部は、再加熱帯9、過時効帯10、最終冷却帯11を有し、再加熱帯9には誘導加熱装置が配置される。本実施形態における再加熱工程とは、再加熱部で実施される熱処理工程である。再加熱工程は、より具体的に言うと、冷却帯8を経た鋼帯の過時効処理を行う工程である。
加熱帯6は、鋼帯を昇温させるための設備であり、鋼種によって600~900℃程度の範囲で予め設定された温度まで加熱する。加熱帯6では、直火あるいは輻射式の燃焼バーナーが用いられる。これらの加熱装置は加熱容量が大きく、応答も比較的早いので、ヒートサイクル変更時の昇温履歴を変更させやすい。均熱帯7は、鋼帯を所定温度に保持する設備であり、炉体放散熱などを補う程度の加熱容量の設備である。
冷却帯8は、鋼帯を所定の温度まで冷却する設備であり、冷却手段としてガスジェット冷却、ロール冷却、水冷却(ウォータークエンチ)などが使用される。ガスジェット冷却は、鋼帯の表面にノズルから気体を吹き付ける冷却手段である。ロール冷却は、鋼帯を水冷ロールに接触させて冷却する冷却手段である。水冷却は、均熱帯7の下流側に設置された水冷槽に鋼帯を浸漬させて冷却する冷却手段である。これらの冷却装置による鋼帯の冷却速度はそれぞれ異なるので、冷却帯8を第1の冷却帯8Aと第2の冷却帯8Bなど複数に区分して、異なる冷却手段を組み合わせたり、同種の冷却手段の冷却条件を変更したりすることで、鋼帯の冷却時の熱履歴を制御してよい。
また、加熱帯6、均熱帯7、冷却帯8の各内部には、水素、窒素、水蒸気を含む混合ガスが供給され、焼鈍工程における雰囲気が調整される。このとき、供給ガスには水蒸気を含むため、焼鈍工程における雰囲気には、ガス組成だけではなく、露点も調整されることになる。
再加熱帯9は、冷却帯8の下流側に配置され、冷却帯8において鋼帯を所定の温度まで冷却した後に、誘導加熱装置を用いて300~400℃程度の温度に再加熱する。過時効帯10は、再加熱した鋼帯を所定時間保持する過時効処理を行う設備である。最終冷却帯11は過時効処理を行った鋼帯を室温付近まで最終冷却する設備である。最終冷却帯11も冷却帯8と同様に、第1の最終冷却帯11Aと第2の最終冷却帯11Bなど複数に区分して、鋼帯の冷却時の熱履歴が制御されてよい。
連続焼鈍設備において、焼鈍部を構成する加熱帯6、均熱帯7、冷却帯8、再加熱工程を構成する再加熱帯9、過時効帯10、最終冷却帯11では、複数の位置に鋼帯の表面温度を測定する温度計が設置される。特に、鋼帯の温度変化が大きな冷却帯8では、冷却帯8の入側と出側に温度計が設置され、これらの位置における鋼帯の表面温度を測定することで冷却帯8の冷却速度の実績値が算出される。温度計として、例えば鋼帯の板幅中央部の表面温度を連続的に測定する放射温度計が用いられる。温度計は、放射温度計に限定されず、別の例として板幅方向の温度分布を測定するプロフィール放射温度計であってよい。また、鋼帯の表面温度だけでなく、焼鈍工程及び再加熱工程の各帯域における炉内の雰囲気温度を測定する炉内温度計が設置される。測定された鋼帯の表面温度及び雰囲気温度は、連続焼鈍設備を制御し、操業を統括するプロセスコンピュータに出力される。
図2は、冷延鋼板を製造する連続焼鈍設備の焼鈍工程及び再加熱工程を含む鋼帯の熱履歴を示すグラフである。横軸が時間を示し、縦軸が鋼帯温度を示す。鋼帯温度は、例えば鋼帯の表面温度である。加熱帯6、均熱帯7、冷却帯8によって焼鈍工程が実施され、その後、再加熱帯9、過時効帯10及び最終冷却帯11によって再加熱工程が実施された鋼帯の熱履歴が示されている。鋼帯の長手方向位置による材質のばらつきを防止するために、焼鈍工程中の鋼帯の搬送速度は一定に保持される。ただし、板厚、板幅、鋼種などが異なる鋼帯が溶接されている場合には、溶接部の前後でライン速度が変化する場合もある。このため、熱履歴のグラフの形状は、鋼帯の測定位置によって変動する場合もある。
<雰囲気ガスの制御>
焼鈍工程を実施する加熱帯6、均熱帯7、冷却帯8の各内部には、水素、窒素、水蒸気を含む混合ガスが供給され、これにより焼鈍工程の雰囲気が制御されている。焼鈍工程の雰囲気に含まれる水素は、焼鈍工程において鋼帯に侵入する水素量に影響を与えるため、投入するガスの組成及び流量を測定し、必要に応じて調整及び制御が行われる。
加熱帯6においては、ラジアントチューブ(RT)又は電気ヒーター等の加熱装置を用いて、鋼帯を間接加熱し得る。加熱帯6には、均熱帯7及び冷却帯8からのガスが流れ込むと同時に、別途還元性ガス又は非酸化性ガスが供給され得る。還元性ガスとしては、通常、H2-N2混合ガスが用いられる。このようなH2-N2混合ガスとしては、例えばH2が1~20体積%、残部がN2及び不可避的不純物からなる組成を有するガス(露点:-60℃程度)が挙げられる。また、非酸化性ガスとしては、N2及び不可避的不純物からなる組成を有するガス(露点:-60℃程度)が用いられる。加熱帯6へのガス供給の方法は、特に限定されないが、加熱帯6内に均等にガスが投入されるように、高さ方向で2ヶ所以上、長さ方向で1ヶ所以上の投入口からガスを供給することが好ましい。
均熱帯7においては、加熱手段としてラジアントチューブを用いて、鋼帯を間接加熱し得る。均熱帯7の内部の平均温度は700~900℃とすることが好ましい。均熱帯7には還元性ガス又は非酸化性ガスが供給される。還元性ガスとしては、通常、H2-N2混合ガスが用いられ、例えばH2が1~20体積%、残部がN2及び不可避的不純物からなる組成を有するガス(露点:-60℃程度)が挙げられる。また、非酸化性ガスとしては、N2及び不可避的不純物からなる組成を有するガス(露点:-60℃程度)が挙げられる。
冷却帯8は、冷却装置を備え、冷却帯8中での通板過程において鋼帯が冷却される。冷却帯8にも、均熱帯7同様、上記ガスが供給され得る。冷却帯8内にガスが均等に投入されるように、冷却帯8の高さ方向で2ヶ所以上、長さ方向で2ヶ所以上の投入口からガスを供給することが好ましい。
焼鈍工程を実行する加熱帯6、均熱帯7、冷却帯8には、炉内のガス雰囲気を測定するための水素濃度計、露点計が設置される。水素濃度計は、触媒表面でのガスの接触燃焼による白金線コイルの温度上昇を測定する接触燃焼式センサを用いられる。例えば、新コスモス電機株式会社製の可燃性ガス探知機XP-3110を用いることができる。ただし、ガス濃度による熱伝導率の変化に基づいて水素濃度を検出する方式など、他の測定方式による水素濃度計が用いられてよい。露点計は、静電容量式又は鋼面冷却式のものを用いればよい。例えば、VAISALA社製のDMT345露点変換器を用いることができる。
水素濃度計は、加熱帯6、均熱帯7、冷却帯8のいずれかに設置するのが好ましい。水素濃度計の設置位置は、加熱帯6、均熱帯7、冷却帯8であれば任意の位置で構わない。ただし、鋼中の水素は鋼帯の温度が高いほど拡散しやすいため、水素濃度計が加熱帯6の出側近傍又は均熱帯7に設置されることが好ましい。また、水素濃度計の設置位置は、いずれか一か所でよいが、複数個の水素濃度計を異なる位置に設置するのが好ましい。複数の水素濃度情報を得ることによって、鋼中水素量の予測精度が向上するからである。測定された値は、プロセスコンピュータに出力される。
露点計も同様に、加熱帯6、均熱帯7、冷却帯8のいずれかに設置するのが好ましい。露点計の設置位置は、加熱帯6、均熱帯7、冷却帯8であれば任意の位置で構わない。設置位置はいずれか一か所でよいが、複数個の露点計を異なる位置に設置するのが好ましい。複数の露点情報を得ることによって、鋼中水素量の予測精度が向上するからである。測定された値は、プロセスコンピュータに出力される。
再加熱工程の各帯域内部には、水素、窒素、水蒸気を含む混合ガスが供給され、これにより雰囲気が制御される。雰囲気に含まれる水素は、再加熱工程において鋼帯に侵入する水素量に影響を与えるため、投入するガスの組成及び流量を測定し、必要に応じて調整及び制御が行われる。
再加熱工程にも、ガス雰囲気を測定するための水素濃度計、露点計が設置される。水素濃度計、露点計の設置位置は、任意の位置で構わない。設置個数は、それぞれ一か所ずつでよいが、複数個の水素濃度計、露点計を異なる位置に設置するのが好ましい。複数の水素濃度計情報、露点情報を得ることによって、鋼中水素量の予測精度が向上するからである。測定された値は、プロセスコンピュータに出力される。
<変態率計>
変態率計20は、熱処理工程における鋼帯の内部組織として、オーステナイト相(γ相)の全体に対する比率を測定する計測器である。連続焼鈍設備においては、鋼板の組織を特定のオーステナイト相(γ相)とフェライト相(α相)の2相状態から、相変態を利用して組織制御が行われる場合が多い。そのため、変態率計20としては、X線回折を利用した変態率計20を用いることができる。γ相とα相は結晶構造が異なるため、X線を当てるとそれぞれから固有の角度で回折ピークが生じる。これは、この回折ピーク強度から変態率(γ率)を定量化する方法である。例えば、SMS社製のX-CAPと呼ばれる製品を使用することができる。また、磁気検出器、すなわち鋼帯の磁気変態率を測定する装置として、磁場を発生する駆動コイルと、鋼帯を通過した磁場を測定する検出コイルとから構成される磁気変態率測定装置を用いて、オーステナイト相率を測定する方法が用いられてよい。具体的には、特開2019-7907号公報に記載された装置を用いることができる。
本実施形態では、このようなオーステナイト相の比率を測定する変態率計20を、上記連続焼鈍設備の焼鈍工程又は再加熱工程の少なくともいずれかに設置する。例えば図1の変態率計20は設置個所の候補位置を示す。設置場所としては、例えば焼鈍工程の均熱帯7の入口、均熱帯7の出口、冷却帯8の入口であり、再加熱工程における再加熱帯9の入口又は出口に設置するのが好ましい。また、変態率計20の設置個所は、いずれか一か所でよいが、複数の異なる位置に設置するのが好ましい。複数の変態率情報を得ることにより、鋼中水素量予測精度が向上するからである。
<鋼帯の鋼中水素量に関する情報>
鋼中水素量に関する情報は、上記連続焼鈍設備のサンプル採取設備において採取される鋼帯のサンプル材から試験片を採取して、オフラインの鋼中水素量測定装置により測定される拡散性水素量の値を用いる。鋼中水素量測定装置としては、鋼中に含まれる水素量として、0.01~10ppmの範囲で測定できる任意の測定装置を用いることができる。具体的には、ガスクロマトグラフによる昇温水素分析法による測定装置を用いることができる。
水素量測定方法には、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)、昇温脱離ガス分析法(TDS)等がある。装置としては、ジーエルサイエンス株式会社のGC-4000 Plus、株式会社UBE科学分析センターのTDS1200等がある。
鋼中水素量は以下の昇温分析法により測定することができる。まず、冷延鋼板から、5×30mm程度の試験片が切り出される。試験片は、ルータ(精密グラインダ)を使って試験片表面が除去されて、石英管中に入れられる。次いで、石英管中をArで置換した後、200℃/hrで昇温し、400℃までに発生した水素がガスクロマトグラフにより測定される。このとき、鋼中の拡散性水素量は、室温(25℃)から400℃までの温度域で検出された水素量の累積値とした。
このようにして取得した鋼帯の鋼中水素量に関する情報は、試験片を採取した鋼帯の識別番号(コイル番号)、必要に応じてその採取位置に関する情報と共に上位コンピュータ(プロセスコンピュータに対する製造指示を与えるコンピュータ)に送られる。
<鋼中水素量予測モデルの生成方法>
図3は、本実施形態に係る鋼帯の鋼中水素量予測モデルの生成方法を示す。
連続焼鈍設備の操業実績データ、変態率計20によって測定される鋼帯の変態率情報の実績データ及び鋼帯の鋼中水素量に関する情報の実績データがデータベースに蓄積される。連続焼鈍設備の操業実績データの詳細については後述するが、連続焼鈍設備の操業を統括するプロセスコンピュータが有する操業実績データから選択された実績データが、鋼中水素量予測モデル生成部のデータベースに送られる。また、鋼帯の変態率情報の実績データは、上記の変態率計20から得られた変態率情報であり、変態率情報がプロセスコンピュータに蓄積される場合には、プロセスコンピュータからデータベースに送られる。ただし、変態率情報がプロセスコンピュータに蓄積されない場合には、鋼中水素量予測モデル生成部のデータベースに直接送られる。
鋼中水素量の情報は、例えば鋼帯のコイル番号等、連続焼鈍設備の操業実績データと対応付けができる付帯情報と共にデータベースに送られる。さらに、鋼帯の鋼中水素量に関する情報の実績データは、オフラインの試験により得られる情報であり、上位コンピュータに蓄積されている。この情報も、鋼帯のコイル番号等、連続焼鈍設備の操業実績データと対応付けができる付帯情報と共にデータベースに送られる。そして、連続焼鈍設備の操業実績データ、変態率計20によって測定される鋼帯の変態率情報の実績データ及び鋼帯の鋼中水素量に関する情報の実績データは、コイル番号等により対応付けされ、一組のデータセットとしてデータベースに蓄積される。このとき、データベースに蓄積されるデータセットは、1本の鋼帯につき1つのデータセットを取得する。ただし、鋼帯の鋼中水素量に関する情報の実績データが、鋼帯の先端部及び尾端部のように複数個所で得られている場合には、その鋼帯の先端部及び尾端部など複数個所において取得した連続焼鈍設備の操業実績データと鋼帯の変態率情報の実績データを用いて、1本の鋼帯につき複数のデータセットを取得するようにしてよい。
また、データベースは、鋼帯の成分組成に関する鋼帯の属性パラメータから選択した1以上のパラメータを有することが好ましい。鋼帯の成分組成に関する鋼帯の属性パラメータの実績データは、製鋼工程における実績値として、コイル番号と共にプロセスコンピュータ又は上位コンピュータに蓄積されており、適宜データベースに送ることにより、データセットを構成できる。鋼帯の成分組成に関する鋼帯の属性パラメータを入力に加えることにより、成分組成が異なる鋼帯に対して、本実施形態の鋼中水素量予測モデルを広く適用できる。
本実施形態の鋼中水素量予測モデルの生成に用いるデータベースのデータセット数としては、200個以上が好ましく、より好ましくは1000個以上である。
本実施形態では、このようにして作成されたデータベースを用いて、少なくとも連続焼鈍設備の操業実績データから選択した1以上の操業実績データと、焼鈍工程及び再加熱工程のいずれか1か所以上に設置された変態率計20により測定された変態率情報の実績データを入力実績データとして、その入力実績データを用いる機械学習によって学習された鋼帯の鋼中水素量予測モデルを生成する。
機械学習の方法は、公知の学習方法を適用すればよく、実用上十分な鋼板の鋼中水素量の予測精度が得られれば、いずれの機械学習モデルでよい。例えば、ディープラーニング、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、リカレントニューラルネットワーク(RNN)などを含むニューラルネットワークによる公知の機械学習手法が用いられてよい。他の手法としては、決定木学習、ランダムフォレスト、サポートベクター回帰、ガウス過程などが例示できる。また、複数のモデルを組み合わせたアンサンブルモデルが用いられてよい。また、鋼中水素量予測モデルは、最新の学習データを用いて、適宜更新すればよい。連続焼鈍設備の長期的な操業条件の変化に対応できるからである。
<連続焼鈍設備の操業パラメータ>
連続焼鈍設備における操業パラメータとして、変態率計20によって測定される変態率情報以外のパラメータであって、鋼帯の鋼中水素量に影響を与える任意の操業パラメータを用いることができる。連続焼鈍設備における操業パラメータとしては、主に鋼帯の熱履歴に関連する操業パラメータ、鋼帯が通板される連続焼鈍設備の雰囲気ガスに関連する操業パラメータに大別される。
<熱履歴に関連する操業パラメータ>
図2に示した焼鈍工程及び再加熱工程における鋼帯の熱履歴の例を用いると、以下のような連続焼鈍設備における操業パラメータを用いることができる。
例えば、加熱帯6の操業パラメータとして、鋼帯が加熱帯6を通過する時間と温度上昇量を用いてよく、又は、これらの値から算出される平均昇温速度を用いてよい。
均熱帯7の操業パラメータとして、均熱帯7での鋼帯の平均温度である均熱温度と均熱帯7を通過する時間である均熱時間が用いられてよい。冷却帯8の操業パラメータとして、鋼帯が第1の冷却帯8Aを通過する時間と温度低下量を用いてよく、又は、これらの値から算出される平均冷却速度を用いてよい。また、冷却帯8の操業パラメータとして、鋼帯が第2の冷却帯8Bを通過する時間と温度低下量を用いてよく、又は、これらの値から算出される平均冷却速度を用いてよい。
また、加熱帯6における加熱装置の制御出力値及び冷却帯8における冷却装置の制御出力値が操業パラメータとして用いられてよい。これらの操業パラメータは焼鈍工程における鋼帯の温度履歴を制御するために用いられる操業パラメータだからである。さらに、均熱帯7における鋼帯のライン速度、冷却帯8における平均冷却速度、ガス噴射等の冷却装置の噴射圧力などが用いられてよい。これらも鋼帯の熱履歴に影響を与える因子だからである。
再加熱帯9の操業パラメータとして、再加熱帯9に設置された誘導加熱装置の入側と出側に配置された放射温度計により測定される温度上昇量とその通過時間が用いられてよく、又は、これらの値から算出される平均昇温速度が用いられてよい。過時効帯10の操業パラメータとして、過時効帯10での鋼帯の平均温度と過時効帯10を通過する時間が用いられてよい。最終冷却帯11の操業パラメータとして、鋼帯が最終冷却帯11を通過する時間と温度低下量が用いられてよく、又はこれらの値から算出される平均冷却速度が用いられてよい。さらに、再加熱帯9における加熱装置の制御出力値及び最終冷却帯11における冷却装置の制御出力値が操業パラメータとして用いられてよい。これらの操業パラメータは再加熱工程における鋼帯の温度履歴を制御するために用いられる操業パラメータだからである。
<雰囲気ガスに関連する操業パラメータ>
本実施形態に係る連続焼鈍設備における操業パラメータとして、上記のような鋼帯の熱履歴に関連する操業パラメータの他に、鋼帯が通板される連続焼鈍設備の雰囲気ガスに関連する操業パラメータを選択してよい。
焼鈍部における操業パラメータとして、加熱帯6、均熱帯7、冷却帯8の各帯域における雰囲気ガスのガス組成を用いることができる。特に、水素濃度を用いるのが好ましい。焼鈍工程において鋼帯に侵入する水素量に影響を与えるからである。
再加熱部における操業パラメータとして、再加熱帯9、過時効帯10、最終冷却帯11の各帯域における雰囲気ガスのガス組成を用いることができる。特に、水素濃度を用いるのが好ましい。再加熱工程において鋼中水素の外部への抜けやすさに影響を与えるからである。
また、焼鈍部及び再加熱部に供給されるH2、N2、H2Oにより各内部のガス成分の濃度が変化するため、内部の露点が変化する、すなわちH2O濃度が変化する。これにより、雰囲気中のH2の濃度に影響が生じることから、焼鈍部及び再加熱部における露点を連続焼鈍設備における操業パラメータとして用いてよい。
<連続焼鈍設備の操業パラメータの選択>
本実施形態では、以上の連続焼鈍設備の操業パラメータから選択した1以上の操業パラメータを、鋼帯の鋼中水素量予測モデルの入力とする。
このとき、焼鈍部、再加熱部における鋼帯の熱履歴に関する操業パラメータを用いるのは、鋼帯の温度によって鋼中における水素の拡散速度が影響を受けるからである。また、水素の拡散速度が大きい場合には、鋼帯の表面から水素が侵入しやすくなるからである。
また、鋼帯が焼鈍部、再加熱部を通過する際の、各帯域を通過する時間(滞在時間)を操業パラメータとして用いるのは、鋼中へ水素が侵入し、あるいは排出される量に影響を与えるからである。さらには鋼中での拡散時間を通じて、それらの量が変化するからである。
このとき、鋼中の水素量は、鋼帯が高温に保持される焼鈍部では増加し、比較的低温に保持される再加熱部で減少する。したがって、熱履歴に関連する操業パラメータとしては、焼鈍部の操業パラメータから選択した1以上のパラメータと、再加熱部の操業パラメータから選択した1以上のパラメータを組み合わせて用いるのが好ましい。連続焼鈍設備の出側において検出される鋼帯の鋼中水素量は、鋼中への水素の侵入と排出のバランスによって大きな影響を受けるからである。
一方、焼鈍部、再加熱部の各帯域における雰囲気に関連する操業パラメータを用いるのは、上記のように、雰囲気ガスの組成により鋼中への水素の侵入と排出に影響を与えるからである。したがって、本実施形態においては、熱履歴に関連する操業パラメータから選択した1以上のパラメータと、雰囲気ガスに関連する操業パラメータから選択したパラメータを組み合わせて用いるのが好ましい。いずれも鋼中への水素の侵入と排出挙動に影響を与えるからである。
本実施形態における連続焼鈍設備における操業パラメータは、上記操業データとして、1本の鋼帯あたり、1組の操業パラメータを学習用データとして取得する。鋼中水素量予測モデルの出力となる鋼中水素量に関する情報は、基本的には鋼帯単位で収集されるからである。その場合に、上記の熱履歴のデータ、雰囲気ガスのデータなどは、鋼帯の長手方向に対して連続的に収集されるデータであるが、1本の鋼帯に対して代表値を算出して、これを連続焼鈍設備における操業パラメータとする。例えば、鋼帯の先端部又は尾端部から予め設定された距離だけ離れた位置で収集されたデータが用いられたり、長手方向の測定値を平均化したデータが用いられたりしてよい。
<変態率情報>
本実施形態では、オーステナイト相の比率を測定する変態率計20を、連続焼鈍設備の焼鈍工程又は再加熱工程の少なくともいずれかに設置して、変態率計20による測定結果を変態率情報として、上記鋼中水素量予測モデルの学習用データの一つとする。
変態率計20によって得られるデータは、鋼帯のオーステナイト相の比率データとして、鋼帯の長手方向に対してサンプリング周期ごとに得られる連続的なデータであるが、1本の鋼帯に対して代表値を算出して、これを変態率情報の実績データとする。このとき、鋼中水素量予測モデルの出力となる、鋼帯の鋼中水素量に関する情報の実績データを取得する位置に概ね対応する位置で測定される変態率の測定結果を、変態率情報の実績データとするのが好ましい。連続焼鈍設備においては鋼帯の変態率が長手方向で変動する場合もあり、変態率と鋼帯の鋼中水素量との相関関係は比較的高いことから、変態率の測定値と、鋼中水素量の実績データ採取位置とを対応させることで、より高い精度で鋼中水素量予測が可能となる。
ここで、鋼中水素量の予測に対して、鋼帯のオーステナイト相(γ相)の比率は重要なパラメータとなる。一般的に、オーステナイト相はフェライト相(α相)に比べて水素の拡散係数が約一桁小さい。そのため、連続焼鈍設備の均熱部のように高温に保持され、γ相が主体となる帯域では、周囲の雰囲気ガスから鋼中への水素の侵入が遅くなると共に、一旦鋼中に侵入した水素が周囲へ放出されにくくなる。一方、過時効帯10のようにフェライト相(α相)が一定程度含まれる内部組織が形成される帯域では、周囲の雰囲気ガスから鋼中への水素の侵入が促進される一方で、一旦鋼中に水素が侵入しても周囲へ放出されやすくなる。
連続焼鈍設備では、鋼帯の相変態を利用した組織制御により鋼の機械的特性を制御しており、鋼帯が焼鈍部(加熱帯6、均熱帯7、冷却帯8)、再加熱部(再加熱帯9、過時効帯10、最終冷却帯11)の各帯域を通過する途中段階で、鋼帯の内部組織が変化することから、変態率計20によって鋼帯のオーステナイト相(γ相)についての情報を取得することで、鋼帯の鋼中水素量の予測精度が向上する。
また、鋼帯の相変態挙動は、製品となる鋼帯の強度レベル及び成分組成によって変わり、その内部組織が変化する履歴も変化する。したがって、異なる鋼種に対して、鋼中の水素量を予測しようとする場合に、鋼帯の内部組織の情報を反映した変態率計20による変態率情報を、鋼中水素量の予測モデルに用いる意義が高くなる。
一方、本実施形態において、連続焼鈍設備の操業パラメータに加えて、変態率計20で測定される変態率情報を用いる理由は以下のとおりである。連続焼鈍設備の操業パラメータは、鋼帯の内部組織における回復、再結晶、粒成長、析出、相変態などの過程を通じて鋼帯の鋼中水素量に影響を与える。しかし、このような内部組織の変化は、連続焼鈍設備の操業パラメータによってのみ決定されるのではなく、その前工程である熱間圧延工程及び冷間圧延工程における加工履歴の影響を受ける。例えば、熱間圧延工程における巻取り温度は、熱延鋼板の内部組織として析出物の大きさ(分布)及び量に影響を与え、熱処理工程における粒成長及び変態挙動に影響を与える。また、冷間圧延工程における圧下率は冷延鋼板の内部組織に蓄積されるひずみ状態を通じて、焼鈍工程の再結晶、粒成長及び変態挙動に影響を与える。そのため、鋼中水素量予測モデルの学習用データとして、連続焼鈍設備の操業パラメータのみでは、このような焼鈍工程よりも前工程の操業パラメータが、鋼帯の熱処理後の鋼中水素量に与える影響を考慮できないために、鋼中水素量の予測が困難であった。
これに対して、加熱工程又は再加熱工程において変態率計20により測定される変態率情報を学習用データに用いることで、焼鈍工程の前工程である熱間圧延工程及び冷間圧延工程における操業パラメータが鋼帯の熱処理後の鋼中水素量に与える影響を、連続焼鈍設備における工程において、間接的な情報として考慮できるようになる。これにより、鋼中水素量予測モデルとして鋼中水素量の予測が可能となる。
以上から、本実施形態では、オーステナイト相の比率を測定する変態率計20を、連続焼鈍設備の焼鈍工程又は再加熱工程の少なくともいずれかに設置して、変態率計20による測定結果を変態率情報として、上記鋼中水素量予測モデルの学習用データの一つとする。
<鋼帯の成分組成に関する属性パラメータ>
本実施形態においては、上記鋼中水素量予測モデルの入力データとして、更に、鋼帯の成分組成に関する鋼帯の属性パラメータから選択した1以上のパラメータを有することが好ましい。鋼帯の成分組成によって、熱処理工程における相変態挙動及び内部組織が影響を受けるからである。また、連続焼鈍設備によって製造する冷延鋼板として、各種の成分組成を有する鋼帯の鋼中水素量を予測する鋼中水素量予測モデルを生成することができ、鋼中水素量予測モデルの適用範囲が拡大するからである。
鋼帯の成分組成に関する属性パラメータとしては、鋼帯に含まれる化学成分として、C、Si、Mnの含有量を用いることができる。また、鋼帯の成分組成に関する属性パラメータは、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、Ti、V、B、Zrの含有量を含んでよい。ただし、これらの成分組成を鋼帯の成分組成に関する属性パラメータとしてすべて用いる必要はない。連続焼鈍設備において製造対象とする鋼帯の種類に応じて、適宜、一部が選択されればよい。
Cは鋼板の高強度化に有効な元素であり、鋼組織の硬質相の一つであるマルテンサイトを形成することで高強度化に寄与する。
Siは主に固溶強化により高強度化に寄与する元素であり、強度上昇に対して延性の低下が比較的少なく強度のみならず強度と延性のバランス向上にも寄与する。一方でSiは鋼板表面にSi系酸化物を形成しやすく、焼鈍時にオーステナイトを安定化させ、最終製品に残留オーステナイトを形成させやすくする。
Mnは固溶強化及びマルテンサイト形成により高強度化に寄与する元素として有効である。
Nb、Ti、V、Zrは、C又はNと炭化物又は窒化物(炭窒化物の場合もある)を形成する、微細析出物とすることで鋼板の高強度化に寄与する。
Cu、Ni、Cr、Mo、Bは、焼入れ性を高めてマルテンサイトを生成させやすくするため、高強度化に寄与する元素である。
ここで、これらの成分組成は、鋼帯の長手方向の分布がおおむね一定であって、一つの鋼帯に対して一つの属性パラメータを実績データとして取得することができる。
さらに、本実施形態の鋼中水素量予測モデルの学習用データとして、鋼帯の成分組成に関する鋼帯の属性パラメータ以外に、鋼帯の属性パラメータとして、鋼帯の板厚、板幅、鋼帯の長さなど、鋼帯の寸法に係る属性パラメータが用いられてよい。これらは、連続焼鈍設備内での伝熱挙動に影響を与えるため、同じ炉内雰囲気温度であっても、鋼板の温度変化が異なることにより、鋼帯の鋼中水素量に影響を与えるからである。
<鋼帯の鋼中水素量制御方法>
図4は、上記のような鋼中水素量予測方法を用いた鋼帯の鋼中水素量制御方法を示す。
本実施形態における鋼中水素量制御方法は、連続焼鈍設備の焼鈍工程又は再加熱工程の少なくともいずれかに設置された変態率計20の設置位置により実施形態が異なる。具体的には、上記のようにして生成された鋼中水素量予測モデルの入力に用いる変態率情報として、複数の変態率計20が設置されている場合に、その最も下流側に設置された変態率計20よりも上流側の帯域と、その下流側の帯域とを区分する。連続焼鈍設備の入側から上記変態率計20までの帯域は鋼中水素量同定帯と呼ばれる。また、上記変態率計20よりも下流側の帯域は鋼中水素量制御帯と呼ばれる。そして、鋼中水素量予測の対象とする鋼帯の先端部が、上記変態率計20の位置に到達し、鋼帯の変態率情報が取得された時点で、図4に示す制御フローが開始される。
この時点で、鋼中水素量の制御対象とする鋼帯に対して、連続焼鈍設備の鋼中水素量同定帯において得られている連続焼鈍設備の操業実績データと、変態率計20により測定された変態率情報が、鋼中水素量予測モデルの入力データとなる。これらの入力データを取得するステップを入力データ取得ステップと記載することがある。入力データ取得ステップにおいて、さらに、その時点での鋼中水素量制御帯における連続焼鈍設備の操業実績データ又は連続焼鈍設備の操業条件の設定値が、鋼中水素量予測モデルの入力データとして取得されてよい。このようにして取得されたデータを入力として、鋼中水素量予測モデルを用いて、再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量が予測される。
一方、本実施形態では、さらに上位コンピュータにおいて鋼帯の鋼中水素量の上限値が設定されており、予測される鋼中水素量とその上限値が比較される。ここで、鋼中水素量の上限値は、水素脆化割れが実用上問題となり得る環境で使用される鋼材に対して、使用上の問題が生じない程度に鋼帯の鋼中水素量を低減する目標値に一定の余裕代を考慮した値として設定されるのが好ましい。例えば、鋼中水素量の上限値を、0.30ppmのように設定することができる。
このとき、連続焼鈍設備の操業条件設定部では、以上のようにして予め設定される鋼中水素量の上限値と、鋼中水素量の予測結果とが比較され、予測される鋼中水素量が上限値以下であれば、初期設定のまま連続焼鈍設備の操業条件を決定し、連続焼鈍設備の制御部に送られる。一方、予測される鋼中水素量が上限値を超える場合には、上記鋼中水素量制御帯における操業条件を再設定する。
具体的には、連続焼鈍設備の中で、最も下流側に設置された変態率計20(ただし、鋼中水素量予測モデルの入力に使用されている変態率情報を与える変態率計20のうちで、最も下流側の意味)が、焼鈍工程の均熱帯7の出口に設置される場合には、連続焼鈍設備の入側から均熱帯7の出口までが鋼中水素量同定帯となり、均熱帯7の出口よりも下流側が鋼中水素量制御帯となる。このとき、鋼帯の先端部が均熱帯7の出口に到達し、変態率計20により変態率情報が取得されると、図4に示す鋼中水素量制御のフローが開始される。このとき、鋼中水素量制御帯において、鋼中水素量を制御するために用いることができる操業条件としては、冷却帯8(第1の冷却帯8A及び第2の冷却帯8B)における冷却条件、再加熱帯9における再加熱条件、過時効帯10における保熱温度及び保熱時間、最終冷却帯11における冷却速度などから選択した操業条件を再設定することができる。また、再設定する操業条件は、必ずしも鋼中水素量予測モデルの入力として用いるものには限定されない。
一方、最も下流側の変態率計20を再加熱帯9の入口又は出口に設置している場合には、鋼中水素量制御帯が、過時効帯10又は最終冷却帯11以降の帯域に限定されるため、連続焼鈍設備において再設定する操業条件として、過時効帯10における保熱時間、過時効帯10の雰囲気ガス成分の混合比、最終冷却帯11の冷却速度等に限定される。
したがって、鋼中水素量予測モデルの入力として用いる最も下流側の変態率計20の位置としては、再設定するための操業条件の自由度と鋼中水素量予測モデルによる予測精度との兼ね合いにより、適宜決定すればよい。すなわち、鋼中水素量同定帯を長くすることで、鋼中水素量の予測精度は向上するが、鋼中水素量制御帯における再設定できる操業条件の自由度が低くなる。これに対して、鋼中水素量同定帯を短くすると、鋼中水素量の予測精度は低下するものの、鋼中水素量制御帯において再設定できる操業条件の自由度が高くなる。
ここで、γ相が主体の内部組織を有する鋼帯は鋼中水素が放出されにくく、α相の比率が大きくなると水素が放出されやすい。したがって、鋼中水素量を効果的に低減させるための鋼中水素量制御帯は、焼鈍部の冷却帯8よりも下流側に設定するのが好ましい。
<鋼中水素量予測装置>
図5は、鋼中水素量予測装置の構成を示す図である。鋼中水素量予測装置は、取得部と、出力部と、記憶部と、予測部と、を有する。
取得部は、例えば、機械学習部によって生成された鋼中水素量予測モデルを鋼中水素量予測モデル生成装置から取得可能な任意のインタフェースを含む。例えば、取得部は、鋼中水素量予測モデルを鋼中水素量予測モデル生成装置から取得するための通信インタフェースを含んでよい。この場合、取得部は、機械学習部から所定の通信プロトコルで鋼中水素量予測モデルを受信してよい。
また、取得部は、例えばプロセスコンピュータ又は上位コンピュータから、連続焼鈍設備の操業条件を取得する。例えば、取得部は、操業条件を取得するための通信インタフェースを含んでよい。
取得部は、ユーザの操作に基づく入力情報を取得してよい。この場合、鋼中水素量予測装置は、ユーザ入力を検出して、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インタフェースを含む入力部をさらに有する。例えば、入力部は、物理キー、静電容量キー、出力部のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又は音声入力を受け付けるマイクロフォン等であるが、これらに限定されない。例えば、入力部は、取得部により鋼中水素量予測モデル生成装置から取得された鋼中水素量予測モデルに対する操業条件の入力を受け付ける。
記憶部には、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせが含まれる。記憶部は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部は、鋼中水素量予測装置の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部は、例えば、取得部により鋼中水素量予測モデル生成装置から取得された鋼中水素量予測モデル、取得部により上位コンピュータから取得された操業条件、及び予測部により予測された鋼中水素量情報を記憶する。例えば、記憶部は、システムプログラム及びアプリケーションプログラム等を記憶してよい。
予測部は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。予測部は、鋼中水素量予測装置を構成する各構成部と通信可能に接続され、鋼中水素量予測装置全体の動作を制御する。
予測部は、例えば、PC(Personal Computer)又はスマートフォン等の任意の汎用の電子機器であり得る。予測部は、これらに限定されず、1つ又は互いに通信可能な複数のサーバ装置であってよいし、鋼中水素量予測システムに専用の他の電子機器であってよい。
予測部は、取得部を介して取得した操業条件に基づいて、鋼中水素量予測モデル生成装置から取得した鋼中水素量予測モデルに基づいて、鋼中水素量の予測値を算出する。
出力部は、予測部から供給された鋼中水素量の予測値を、後述する操業条件設定装置に供給する。
出力部は、情報を出力してユーザに通知する1つ以上の出力インタフェースを含んでいてよい。出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイである。ディスプレイは、例えば、LCD又は有機ELディスプレイである。出力部は、鋼中水素量予測装置の動作によって得られるデータを出力する。出力部は、鋼中水素量予測装置に備えられる代わりに、外部の出力機器として鋼中水素量予測装置に接続されてよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)などの任意の方式を用いることができる。例えば、出力部は、情報を映像で出力するディスプレイ、又は情報を音声で出力するスピーカ等であるが、これらに限定されない。例えば、出力部は、予測部によって予測された鋼中水素量の予測値をユーザに対して提示する。ユーザは、出力部により提示された鋼中水素量情報の予測値に基づいて、連続焼鈍設備の操業条件を適切に設定可能である。
以上のような鋼帯の鋼中水素量予測装置について、より好ましい形態は、タブレット端末として、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する入力部と、予測部による鋼中水素量を表示する表示部を有する端末装置を含む鋼中水素量予測装置である。これは、入力部からユーザの操作に基づく入力情報を取得し、取得した入力情報により、既に鋼中水素量予測装置に入力された連続焼鈍設備の操業パラメータの一部又は全部を更新するものである。すなわち、連続焼鈍設備において処理を行っている鋼帯について、鋼中水素量予測装置の予測部によって鋼帯の鋼中水素量が予測されている場合に、操業担当者がタブレット端末を用いて、既に取得部に入力されている連続焼鈍設備の操業パラメータの一部を修正入力する操作を受け付けるものである。このとき、取得部は、連続焼鈍設備の操業パラメータの中で、タブレット端末から修正入力がされない操業パラメータについては、当初の入力データを保持して、修正入力がされた操業パラメータのみを変更する。これにより、取得部では鋼中水素量予測モデルの新たな入力データが生成され、予測部によってその入力データに基づく鋼中水素量の予測値が算出される。さらに、算出された鋼中水素量の予測値は、出力部を通じて端末の表示部に表示される。
これにより、連続焼鈍設備の操業担当者又は工場責任者などが、連続焼鈍設備の操業パラメータを変更した場合の鋼中水素量の予測値を即座に確認できるようになり、適切な操業条件への変更を迅速に行うことができる。
以下、実施例を用いて、本開示が具体的に説明される。
図1に示すような連続焼鈍設備において、200コイルの冷延鋼板(鋼中水素量の上限値は0.30ppm)が製造された。このとき、連続焼鈍設備に装入される鋼板の属性情報の実績データと、連続焼鈍設備における操業パラメータの操業実績データを入力実績データとし、その入力実績データを用いた連続焼鈍設備の出側における鋼板の鋼中水素量を出力実績データとして、複数の学習用データが取得された。取得された複数の学習用データを用いた機械学習によって、図3に示すような方法により、再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量に関する情報を出力データとする鋼中水素量予測モデルが生成された。
鋼中水素量予測モデルの生成にあたって、入力となる鋼帯の成分組成に関する鋼帯の属性パラメータには、C、Si、Mnの含有量を用いた。また、連続焼鈍設備の操業実績データとして、均熱帯7における鋼板温度、鋼帯の先端部が均熱帯7を通過する際の搬送速度を入力とした。さらに、本実施例においては、オンラインの変態率計20を図1に示す連続焼鈍設備の均熱帯7の出口と過時効帯10の入口の2箇所に設置し、これらの変態率により測定された変態率情報の実績データを入力実績データとして用いた。さらに、本実施例においては、その他の入力として、鋼帯の板厚及び板幅の設定値を用いて、水素量予測モデルを生成した。
ここで、学習用データとして取得した鋼帯の鋼中水素量は、連続焼鈍設備での通板後、試験片を採取し、ガスクロマトグラフによる昇温水素分析法から得られる鋼中水素量である。
このようにして生成した鋼中水素量予測モデルを、図4に示す鋼中水素量制御における鋼中水素量予測部に適用し、100コイルの冷延鋼板が製造された。つまり、鋼中水素量予測モデルを用いる鋼帯の鋼中水素量予測方法が、鋼帯の鋼中水素量制御方法及び製造方法に適用された。
このとき、上記の鋼中水素量予測モデルを用いて、連続焼鈍設備の出側における鋼板の鋼中水素量を予測し、予測した鋼中水素量が予め設定された上限値(この場合には0.30ppmに設定)に入るように連続焼鈍設備における操業パラメータが再設定された。このとき、最も下流側の変態率計20が、過時効帯10の入口に設置されているため、連続焼鈍設備の入側から過時効帯10の入口までが鋼中水素量同定帯となり、過時効帯10の入口よりも下流側が鋼中水素量制御帯となっている。図4に示すフローは、鋼帯の先端部が過時効帯10の入口に到達した後に、開始される。鋼中水素量制御帯においては、鋼中水素量を制御するために用いた操業条件として、過時効帯10における保熱温度と保熱時間、冷却帯8における冷却速度を再設定した。その後、これらの鋼帯の鋼中水素量測定試験により得られた鋼中水素量が収集された。その結果、98%の鋼帯が、鋼中水素量の上限値(0.30ppm)以下となった。
一方、比較例として、上記のような鋼中水素量予測部を備えていない連続焼鈍設備において、連続焼鈍設備の操業条件を再設定することなしに操業を行った。その結果、鋼中水素量の上限値以下となった鋼帯は、75%であった。
以上のように、本開示による鋼中水素量予測方法の適用により、上記の機械学習モデルを用いて直接的な予測を行うため、鋼帯の鋼中水素量を高精度に予測することができ、また、鋼中水素量を効果的に低減させることができる。
1 ペイオフリール
2 溶接機
3 電解清浄装置
4 入側ルーパー
5 予熱帯
6 加熱帯
7 均熱帯
8 冷却帯
8A 第1の冷却帯
8B 第2の冷却帯
9 再加熱帯
10 過時効帯
11 最終冷却帯
11A 第1の最終冷却帯
11B 第2の最終冷却帯
12 出側ルーパー
13 調質圧延設備
14 検査設備
15 テンションリール
20 変態率計

Claims (9)

  1. 鋼帯の焼鈍工程及び再加熱工程を含む製造工程を実行する連続焼鈍設備における、前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量予測方法であって、
    入力データとして、鋼中水素量予測モデルの生成で用いられた前記連続焼鈍設備の操業パラメータから選択した1以上のパラメータと、前記焼鈍工程及び前記再加熱工程の少なくとも1つにおいて測定された変態率情報と、鋼帯の成分組成に関する鋼帯の属性パラメータから選択した1以上のパラメータと、を取得する入力データ取得ステップと、
    前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量に関する情報を出力データとする、機械学習により学習された前記鋼中水素量予測モデルを用いて、前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量を予測することと、を含む、鋼帯の鋼中水素量予測方法。
  2. 前記鋼中水素量予測モデルは、少なくとも前記連続焼鈍設備の操業実績データから選択した焼鈍部と再加熱部における鋼帯の熱履歴に関する操業パラメータ、前記焼鈍部と前記再加熱部のそれぞれにおける鋼帯の滞在時間、前記焼鈍部と前記再加熱部のそれぞれにおける雰囲気に関連する操業パラメータを含む操業実績データと、前記焼鈍工程及び前記再加熱工程の少なくとも1つにおいて測定された変態率情報の実績データと、前記鋼帯の成分組成に関する鋼帯の属性パラメータから選択した1以上の実績データと、を入力実績データとして、前記入力実績データに基づく前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量に関する情報を出力実績データとした、複数の学習用データを用いて学習された、請求項1に記載の鋼帯の鋼中水素量予測方法。
  3. 前記鋼中水素量予測モデルは、少なくとも鋼帯の成分組成に関する鋼帯の属性パラメータから選択したCの含有量、Siの含有量、Mnの含有量、鋼帯の板厚の設定値及び鋼帯の板幅の設定値と、前記連続焼鈍設備の操業実績データから選択した均熱帯における鋼板温度、鋼帯の先端部が均熱帯を通過する際の搬送速度を含む操業実績データと、前記焼鈍工程及び前記再加熱工程の少なくとも1つにおいて測定された均熱帯の出口の変態率及び過時効帯の入口の変態率を含む変態率情報の実績データと、を入力実績データとして、前記入力実績データに基づく前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量に関する情報を出力実績データとした、複数の学習用データを用いて学習された、請求項1に記載の鋼帯の鋼中水素量予測方法。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の鋼帯の鋼中水素量予測方法を用いて、前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量を予測し、予測した鋼中水素量が予め設定された上限値を超える場合には、鋼中水素量が前記上限値以下になるように、前記連続焼鈍設備の操業パラメータから選択した1以上の操業パラメータを再設定すること、を含む、鋼帯の鋼中水素量制御方法。
  5. 鋼帯の焼鈍工程及び再加熱工程を含む製造工程を実行する連続焼鈍設備における、鋼帯の製造方法であって、
    入力データとして、鋼中水素量予測モデルの生成で用いられた前記連続焼鈍設備の操業パラメータから選択した1以上のパラメータと、前記焼鈍工程及び前記再加熱工程の少なくとも1つにおいて測定された変態率情報と、鋼帯の成分組成に関する鋼帯の属性パラメータから選択した1以上のパラメータと、を取得することと、
    前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量に関する情報を出力データとする、機械学習により学習された前記鋼中水素量予測モデルを用いて、前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量を予測することと、
    予測した鋼中水素量が予め設定された上限値を超える場合には、鋼中水素量が前記上限値以下になるように、前記連続焼鈍設備の操業パラメータから選択した1以上の操業パラメータを再設定することと、を含む、鋼帯の製造方法。
  6. 鋼帯の焼鈍工程及び再加熱工程を含む製造工程を実行する連続焼鈍設備における、前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量を予測するための鋼帯の鋼中水素量予測モデルの生成方法であって、
    少なくとも前記連続焼鈍設備の操業実績データから選択した1以上の操業実績データと、前記焼鈍工程及び前記再加熱工程の少なくとも1つにおいて測定された変態率情報の実績データと、鋼帯の成分組成に関する鋼帯の属性パラメータの実績データから選択した1以上のパラメータと、を入力実績データとして取得することと、
    前記入力実績データに基づく前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量に関する情報を出力実績データとした、複数の学習用データを取得することと、
    取得した複数の学習用データを用いた機械学習によって、鋼帯の鋼中水素量予測モデルを生成することと、を含む、鋼帯の鋼中水素量予測モデルの生成方法。
  7. 前記機械学習として、ニューラルネットワーク、決定木学習、ランダムフォレスト、及び、サポートベクター回帰から選択される手法が用いられる、請求項6に記載の鋼帯の鋼中水素量予測モデルの生成方法。
  8. 鋼帯の焼鈍工程及び再加熱工程を含む製造工程を実行する連続焼鈍設備における、前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量を予測する鋼中水素量予測装置であって、
    鋼中水素量予測モデルの生成で用いられた前記連続焼鈍設備の操業パラメータから選択した1以上のパラメータと、前記焼鈍工程及び前記再加熱工程の少なくとも1つにおいて測定された変態率情報と、鋼帯の成分組成に関する鋼帯の属性パラメータから選択した1以上のパラメータと、を取得する取得部と、
    前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量に関する情報を出力データとする、機械学習により学習された前記鋼中水素量予測モデルを用いて、前記再加熱工程の下流側における鋼帯の鋼中水素量を予測する予測部と、を含む、鋼帯の鋼中水素量予測装置。
  9. ユーザの操作に基づく入力情報を取得する入力部と、前記予測部によって予測された鋼中水素量を表示する表示部を有する端末装置を、さらに含み、
    前記取得部は、前記入力部から取得した入力情報により、前記連続焼鈍設備の操業パラメータの一部又は全部を更新し、
    前記表示部は、前記予測部が前記更新された操業パラメータを用いて予測した前記鋼中水素量を表示する、請求項8に記載の鋼帯の鋼中水素量予測装置。
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