以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、この実施の形態に係る電子線照射システムの全体構成図である。図1を参照して、この実施の形態に係る電子線照射システム1は、真空度検出装置2と、電子線照射装置200と、表示装置250とを備える。真空度検出装置2は、各種回路(電圧印加回路20、検出回路60、第1信号処理回路70、及び第2信号処理回路80)と、情報処理装置100と、報知装置110と、入力装置120とを備える。
情報処理装置100は、たとえばコンピュータであり、演算装置101と、記憶装置102と、タイマー回路103とを含んで構成される。演算装置101としては、たとえばCPU(Central Processing Unit)を採用できる。記憶装置102は、作業用メモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、保存用ストレージ(ROM(Read Only Memory)、および書き換え可能な不揮発性メモリ等)とを含む。情報処理装置100は、演算装置101によってデジタル信号を処理するように構成される。たとえば、記憶装置102に記憶されているプログラムを演算装置101が実行することで、所定の制御が実行される。ただし、各種信号処理については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
タイマー回路103は、設定時刻の到来を演算装置101に知らせるように構成される。すなわち、タイマー回路103に設定された時刻になると、タイマー回路103から演算装置101へその旨を知らせる信号が送信される。ユーザは後述する入力装置120を通じて任意の時刻をタイマー回路103に設定することができる。なお、こうしたタイマー機能は、ハードウェア(タイマー回路)ではなく、ソフトウェアによって実現してもよい。
報知装置110は、情報処理装置100から要求があったときに、ユーザへ所定の報知処理を行なうように構成される。報知装置110の例としては、表示装置、スピーカー、ランプが挙げられる。また、報知装置110として、携帯機器(スマートフォン等)を採用してもよい。
入力装置120は、ユーザからの指示を受け付ける装置である。入力装置120は、ユーザによって操作され、ユーザの操作に対応する信号を情報処理装置100へ出力する。入力装置120としては、たとえばタッチパネルを採用できる。ただしこれに限られず、入力装置120として、キーボード、マウス、及び各種スイッチの少なくとも1つを採用してもよい。また、入力装置120は、携帯機器(スマートフォン等)の操作部であってもよい。
この実施の形態では、電子線照射装置200として、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を採用する。電子線照射装置200は、試料室210と、試料室210内の空間である対象空間TSを減圧(真空引き)するための真空ポンプ(図示せず)と、対象空間TSの圧力(ひいては、真空度)を検出するペニング真空計10とを含む。電子線照射装置200は、対象空間TSの真空度を検出するピラニ真空計(図示せず)をさらに含んでいてもよい。そして、低真空領域の真空度はピラニ真空計によって検出され、中~高真空領域の真空度はペニング真空計10によって検出されるようにしてもよい。
電子線照射装置200は、試料室210内に、電子線を発生する電子銃220と、試料を載せるための試料ステージ230と、二次電子を検出するための検出器240とをさらに含む。電子銃220は、対象空間TSに電子線を照射するように構成される。また、電子線照射装置200は、電子銃220から発せられる電子線を調整するために、集束レンズ、対物レンズ、及び走査コイル(いずれも図示せず)をさらに含む。
電子線照射装置200は、情報処理装置100によって制御される。情報処理装置100は、ペニング真空計10の出力信号(真空計信号)に基づいて対象空間TSの真空度を検出し、対象空間TSの真空度が十分高くなってから、電子銃220による電子線照射を実行する。電子銃220による電子線照射が実行され、試料ステージ230上の試料表面に電子線が照射されると、試料表面から二次電子が放出される。試料表面から放出される二次電子は検出器240で検出され、検出器240の検出結果は表示装置250へ出力される。試料表面を電子線で2次元的に走査することによって、試料表面の電子線照射位置ごとの二次電子の量に対応する画像(SEM像)が表示装置250に表示される。表示装置250としては、たとえば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ又はFPD(Flat Panel Display)を採用できる。
ペニング真空計10は、陽極と陰極との間における放電(以下、「電極間放電」とも称する)を利用して、対象空間TSの真空度を検出するように構成される。ペニング真空計10は、対象空間TSの真空度に応じた真空計信号(たとえば、放電電流信号)を出力する。対象空間TSの真空度が高くなるほど、電極間放電によって陽極と陰極との間を流れる電流(すなわち、放電電流)は少なくなる。ペニング真空計10の陽極と陰極との間に所定の電圧が印加されることによって、陽極と陰極との間で放電が生じ、上記の放電電流が流れる。電圧印加回路20は、ペニング真空計10の陽極及び陰極間に直流電圧を印加するように構成される。電圧印加回路20は、発振回路21と昇圧回路22と整流回路23とを含んで構成される。なお、電圧印加回路20の回路構成の詳細については後述する(図3参照)。
ところで、ペニング真空計10では、電極の汚れなどに起因して陽極及び陰極間での放電異常が起こり得る。放電異常によって電極間放電が生じなくなった場合にも、対象空間TSの真空度が高い場合と同様、ペニング真空計10から出力される放電電流信号の電流値は小さい値(すなわち、0に近い値)になる。このため、ペニング真空計10から出力される放電電流信号の電流値が放電異常によって小さくなっている場合に、対象空間TSの真空度が高いと誤検出してしまう可能性がある。
そこで、この実施の形態に係る真空度検出装置2では、ペニング真空計10の出力信号(真空計信号)から、対象空間TSの真空度を検出するための第1信号と、電極間放電の有無を判定するための第2信号とを生成し、第2信号に基づいて放電異常が検知されるようにしている。そして、放電異常が検知された場合には、ペニング真空計10による真空度の検出を行なわないことで、放電異常に起因する真空度の誤検出を抑制している。また、正常に電極間放電が生じている場合には、第1信号によって対象空間TSの真空度を検出することができる。
より具体的には、真空度検出装置2は、検出回路60と、第1信号処理回路70と、第2信号処理回路80とを備える。ペニング真空計10から端子T10に出力された真空計信号(アナログ信号)は検出回路60に入力される。真空計信号にはリップルが含まれる。検出回路60は、真空計信号から、リップルを含まないアナログ信号P1(すなわち、リップルが除去された信号)と、リップルを含むアナログ信号P2とを生成する。そして、検出回路60は、アナログ信号P1を端子T1に出力し、アナログ信号P2を端子T2に出力する。ペニング真空計10から真空計信号が出力されない場合(たとえば、電極間放電が生じていない場合)には、検出回路60においてアナログ信号P1及びP2は生成されず、端子T1及びT2の各々の電圧値は0Vになる。なお、検出回路60の回路構成の詳細については後述する(図3参照)。
検出回路60から端子T1に出力されたアナログ信号P1は第1信号処理回路70に入力される。第1信号処理回路70は、たとえばA/D(アナログ/デジタル)変換器である。第1信号処理回路70は、アナログ信号P1をA/D変換することにより対象空間TSの真空度を示すデジタル信号P3を生成し、デジタル信号P3を端子T3に出力する。
検出回路60から端子T2に出力されたアナログ信号P2は第2信号処理回路80に入力される。第2信号処理回路80は、たとえば後述する図6に示す構成を有し、アナログ信号P2から、電極間放電の有無を示すデジタル信号P4を生成するように構成される。詳細は後述するが、電極間放電が生じている場合には、第2信号処理回路80からローレベルのデジタル信号P4(以下、「L信号」とも称する)が出力され、電極間放電が生じていない場合には、第2信号処理回路80からハイレベルのデジタル信号P4(以下、「H信号」とも称する)が出力される。第2信号処理回路80によって生成されたデジタル信号P4は端子T4に出力される。なお、ハイレベル/ローレベルに関しては逆でもよい。
第1信号処理回路70から端子T3に出力されたデジタル信号P3と、第2信号処理回路80から端子T4に出力されたデジタル信号P4とは、情報処理装置100に入力される。情報処理装置100は、デジタル信号P4を用いて電極間放電が生じていると判定されるとき(すなわち、デジタル信号P4がL信号であるとき)にはデジタル信号P3を用いて対象空間TSの真空度を検出し、デジタル信号P4を用いて電極間放電が生じていないと判定されるとき(すなわち、デジタル信号P4がH信号であるとき)にはデジタル信号P3を用いて対象空間TSの真空度を検出しないように構成される。このように、放電異常(電極間放電が生じない現象)が検知された場合には、ペニング真空計10による真空度の検出を行なわないことで、放電異常に起因する真空度の誤検出が抑制される。
なお、上記の放電異常を検知する方法としては、ペニング真空計から出力される放電電流信号の挙動から電極間放電の有無を判定する方法も考えられる。たとえば、減圧処理(真空引き)を開始してから短時間しか経過していないにもかかわらず、放電電流信号が異常に小さい電流値を示している場合には、電極間放電が生じていないと判定することができる。しかし、こうした方法では、減圧処理を開始してから、ある程度の時間が経過すると、放電電流信号の挙動が正常か否かを高い精度で判定することが難しくなる。また、放電電流信号の挙動を細かく分析するなどして、高い精度で電極間放電の有無を判定しようとすると判定にかかる時間が長くなる傾向がある。
これに対し、この実施の形態に係る真空度検出装置2によれば、判定に長い時間をかけずとも、電極間放電の有無を高い精度で判定することができる。
図2は、この実施の形態に係る電子線照射システム1で用いられるペニング真空計10の構成を示す断面図である。図2を参照して、ペニング真空計10は、真空容器として機能し得る試料室210に設けられ、試料室210内の空間(すなわち、対象空間TS)の真空度を検出するように構成される。試料室210は導電性材料で形成されている。なお、試料室210のうちペニング真空計10が構成する部分は、たとえばフランジ等(図示せず)によって着脱可能とされてもよい。
ペニング真空計10は、筒状(たとえば、円筒状)の陽極11と、板状の陰極12a,12bと、板状の永久磁石13a,13bと、リング状の強磁性体であるヨーク14とを備える。陰極12a,12bは、陽極11を挟むように配置され、陽極11の2つの開口端に対向する。陰極12a及び12bは、電線W1を介して互いに電気的に接続されている。また、陰極12bは、電線W2を介して試料室210に電気的に接続されている。
永久磁石13a,13bは、試料室210の外側に設けられ、陽極11及び陰極12a,12bを挟んで互いに対向する。永久磁石13a,13bは、陽極11の筒内に磁界(より特定的には、軸方向の磁界)を発生させるように構成される。ヨーク14は、永久磁石13a,13bの外側に設けられ、永久磁石13a,13bをつなぐ閉磁気回路を形成するように構成される。
ペニング真空計10は、筒状(たとえば、円筒状)の端子部材15と、端子部材15の筒内の軸中心に配置される棒状の端子部材16と、端子部材15と端子部材16との隙間を埋める絶縁体17(たとえば、セラミック)とをさらに備える。端子部材16は、電線W3を介して陽極11に電気的に接続されている。そして、端子部材16(ひいては、陽極11)は、端子T10に電気的に接続されている。
端子部材15は、試料室210に接続されている。すなわち、端子部材15は、試料室210(ひいては、陰極12a,12b)に電気的に接続されている。端子部材15は、試料室210と一体的に形成されていてもよいし、試料室210に溶接されていてもよい。端子部材15(ひいては、試料室210)は、COM(共通)端子(以下、「HVCOM」とも称する)に電気的に接続されている。
図2とともに図1を参照して、ペニング真空計10(より特定的には、端子T10とHVCOMとの間)には、電圧印加回路20によって直流電圧が印加される。そして、ペニング真空計10に直流電圧を印加したときの電極間放電(すなわち、陽極11と陰極12a,12bとの間における放電)によって陽極11と陰極12a,12bとの間を流れる電流を示す放電電流信号が、検出回路60に入力される。図3は、電圧印加回路20及び検出回路60の回路構成の詳細を示す図である。
図3を参照して、電圧印加回路20は、発振回路21と昇圧回路22と整流回路23とを含む。発振回路21は、スイッチング素子S1及びS2を含み、所定周波数の交流電圧を生成するように構成される。スイッチング素子S1及びS2が所定の発振周波数で駆動(スイッチング)されることによって、発振周波数に対応する周波数の交流電圧が生成される。発振回路21は、情報処理装置100によってスイッチング素子S1及びS2が制御されるように構成されてもよい。また、発振回路21は、電源がオンされることによってスイッチング素子S1及びS2の駆動(所定の発振周波数でのスイッチング)を開始するように構成されてもよい。
発振回路21によって生成される交流電圧の周波数(ひいては、発振周波数)は、たとえば15kHz以上30kHz以下であることが好ましいが、この周波数範囲に限定されない。この実施の形態では、発振回路21によって周波数20kHzの交流電圧を生成する。
昇圧回路22は、たとえば電源電圧24Vの直流電源Vccに接続される1次コイル221と、2次コイル222とを含み、コイル間での電磁誘導を利用して昇圧するように構成される。発振回路21によって1次コイル221に交流電圧が生成される。2次コイル222は、1次コイル221に生成された交流電圧を昇圧して、整流回路23へ出力する。
整流回路23は、ダイオードD1,D2及びコンデンサC1を含み、昇圧回路22によって昇圧された交流電圧を直流電圧に変換(整流)するように構成される。そして、整流回路23による整流を経て生成された電圧(直流電圧)は、ペニング真空計10(より特定的には、端子T10とHVCOMとの間)に印加される。ペニング真空計10に印加される直流電圧(ひいては、電圧印加回路20によって生成される直流電圧)は、たとえば1kV以上5kV以下であることが好ましいが、この電圧範囲に限定されない。この実施の形態では、電圧印加回路20によって3kVの直流電圧を生成する。
電圧印加回路20(より特定的には、整流回路23)は信号線SL11を介して検出回路60に電気的に接続されている。また、検出回路60は、信号線SL11、整流回路23、及び2次コイル222を介してペニング真空計10に電気的に接続されている。ペニング真空計10に直流電圧を印加したときに生じる放電電流DisCは、図3中の矢印の向きに流れる。すなわち、放電電流DisCは、信号線SL11、2次コイル222、ダイオードD1又はD2、端子T10、ペニング真空計10の順に流れる。さらに、放電電流DisCは、図2に示されるペニング真空計10の内部では、端子部材16、陽極11、陰極12a,12b、真空容器(試料室210)、端子部材15、HVCOMの順に流れる。
検出回路60は、電流電圧変換を行なう電流電圧変換回路61と、リップルを除去するリップル除去回路62と、インピーダンス変換を行なうバッファ回路63とを含む。以下、オペアンプに関しては、反転入力端子を「-端子」、非反転入力端子を「+端子」とも称する。
電流電圧変換回路61は、オペアンプA1及び抵抗素子R1を含んで構成される。信号線SL11はオペアンプA1の-端子に接続される。オペアンプA1の+端子はHVCOMに電気的に接続され、オペアンプA1の出力端子には信号線SL12が接続される。抵抗素子R1は、オペアンプA1の-端子と出力端子との間に接続されている。
オペアンプA1において放電電流信号が電圧信号に変換され、オペアンプA1の出力端子には、放電電流信号に対応する電圧信号が出力される。
信号線SL12は、分岐部Dで信号線SL1と信号線SL2とに分岐される。信号線SL1はリップル除去回路62に接続され、信号線SL2はバッファ回路63に接続される。ペニング真空計10から出力される真空計信号(電流信号)は、電流電圧変換回路61を経て電圧信号に変換された後、分岐部Dで信号線SL1及びSL2に分配され、信号線SL1及びSL2の各々を通じてリップル除去回路62及びバッファ回路63の両方に入力される。
リップル除去回路62は、オペアンプA2及びローパスフィルタLFを含んで構成される。信号線SL1はオペアンプA2の+端子に接続される。ローパスフィルタLFは、オペアンプA2の-端子と出力端子との間に接続される。ローパスフィルタLFは、互いに並列に接続されたコンデンサC2及び抵抗素子R2を含み、所定の周波数(カットオフ周波数)よりも高い高周波成分を減衰させるように構成される。オペアンプA2の出力端子は、端子T1に電気的に接続される。
この実施の形態に係る真空度検出装置2では、発振回路21によって生成した交流電圧を直流電圧に変換してペニング真空計10に印加しているため、発振回路21の発振周波数に対応する周波数のリップルがペニング真空計10の出力信号(放電電流信号)に含まれやすくなる。ローパスフィルタLFは、こうしたリップルを除去するように構成される。ローパスフィルタLFにおいてリップルが除去されることによって、リップルを含まないアナログ信号P1が生成される。リップル除去回路62は、リップルを含まないアナログ信号P1を端子T1に出力する。ローパスフィルタLFのカットオフ周波数は、発振回路21の発振周波数(この実施の形態では、20kHz)よりも低い周波数に設定される。ローパスフィルタLFのカットオフ周波数は、たとえば100Hzに設定される。
図4は、リップル除去回路62から端子T1に出力されるアナログ信号P1(電圧信号)の一例を示す図である。図4において、横軸は時間、縦軸は電圧を示している。線L0は、縦軸における電圧0Vの位置を示している。
図4を参照して、線L1はアナログ信号P1の一例を示している。アナログ信号P1の電圧値は、放電電流DisC(ひいては、対象空間TSの真空度)に対応する。対象空間TSの真空度が高くなる(すなわち、放電電流DisCが少なくなる)ほどアナログ信号P1の電圧値(ひいては、端子T1の電圧値)は低くなる。放電電流DisCが無いとき(すなわち、電極間放電が生じていないとき)には、アナログ信号P1は生成されず、端子T1の電圧値は0Vになる。ローパスフィルタLF(図3)によって高周波成分(たとえば、リップル)が除去されるため、アナログ信号P1はリップルを含まない。アナログ信号P1は、線L1で示されるような平滑な電圧になる。真空度検出においてはリップルがノイズとして作用するため、アナログ信号P1がリップルを含まないことで、アナログ信号P1から対象空間TSの真空度を高い精度で検出することが可能になる。一方で、アナログ信号P1が平滑な電圧になることによって、対象空間TSの真空度が高いときの端子T1の電圧値(アナログ信号P1)と、ペニング真空計10から真空計信号が出力されないとき(たとえば、電極間放電が生じていないとき)の端子T1の電圧値(線L0)とを区別しにくくなる。
再び図3を参照して、バッファ回路63としては、公知のバッファ回路を採用できる。この実施の形態では、バッファ回路63として、オペアンプA3によって構成されるボルテージフォロアを採用する。信号線SL2はオペアンプA3の+端子に接続され、オペアンプA3の出力端子は端子T2に電気的に接続される。バッファ回路63はローパスフィルタを含まないため、リップルはバッファ回路63を通過する。よって、バッファ回路63からは、リップルを含むアナログ信号P2が出力される。
図1~図3を参照して、ペニング真空計10の陽極11と陰極12a,12bとの間に放電電流が流れなければ、真空計信号が生成されないため、リップルもペニング真空計10から出力されない。一方で、ペニング真空計10の陽極11と陰極12a,12bとの間に放電電流が流れると、リップルを含む真空計信号がペニング真空計10から出力される。リップルの周波数は、発振回路21の発振周波数(この実施の形態では、20kHz)と一致する。ペニング真空計10から出力される真空計信号は、電流電圧変換回路61において電流電圧変換され、バッファ回路63を経て端子T2に入力される。バッファ回路63ではリップルが除去されないため、電極間放電が生じている場合には、リップルを含むアナログ信号P2が端子T2に入力される。一方で、電極間放電が生じていない場合には、アナログ信号P2は生成されず、端子T2の電圧値は0Vになる。
図5は、バッファ回路63から端子T2に出力されるアナログ信号P2(電圧信号)の一例を示す図である。図5において、横軸は時間、縦軸は電圧を示している。線L0は、縦軸における電圧0Vの位置を示している。
図5を参照して、線L2はアナログ信号P2の一例を示している。アナログ信号P2は、リップルを含むため、線L2で示されるようにスパイク状の波形になる。このため、対象空間TSの真空度が高いときの端子T2の電圧値(アナログ信号P2)と、ペニング真空計10から真空計信号が出力されないとき(たとえば、電極間放電が生じていないとき)の端子T2の電圧値(線L0)とは区別しやすい。
図1とともに図3を参照して、端子T1の電圧値は、第1信号処理回路70及び端子T3を経て情報処理装置100に入力され、端子T2の電圧値は、第2信号処理回路80及び端子T4を経て情報処理装置100に入力される。情報処理装置100は、端子T3の電圧値を用いて対象空間TSの真空度を検出し、端子T4の電圧値を用いて電極間放電の有無を判定する。なお、端子T1の電圧値が0Vになるときは端子T3の電圧値も0Vになり、端子T2の電圧値が0Vになるときは端子T4の電圧値も0Vになる。
第1信号処理回路70は、リップル除去回路62によって生成されるアナログ信号P1をデジタル信号P3(より特定的には、端子T1の電圧値を示すデジタル信号)に変換するように構成される。情報処理装置100は、デジタル信号P3に基づいて対象空間TSの真空度を検出することができる。デジタル信号P3の電圧値が低いほど対象空間TSの真空度が高いこと(すなわち、圧力が低いこと)を意味する。
第2信号処理回路80は、端子T2の電圧値から、電極間放電の有無を示すデジタル信号P4を生成するように構成される。情報処理装置100は、デジタル信号P4の値(ハイレベル/ローレベル)に基づいて電極間放電の有無を判定することができる。図6は、第2信号処理回路80の構成の一例を示す図である。
図6を参照して、第2信号処理回路80は、比較器81とマルチバイブレータ82とを含んで構成される。マルチバイブレータ82としては、たとえば工業規格HC123集積回路を採用できる。
比較器81は、たとえば端子T2に電気的に接続される+端子を有するオペアンプによって構成される。比較器81においては、オペアンプの+端子に入力される端子T2の電圧値と、オペアンプの-端子に入力される基準電圧VREFとが比較され、比較結果がオペアンプの出力端子に出力される。オペアンプの出力端子には、比較結果(より特定的には、端子T2の電圧値が基準電圧VREFよりも高いか否か)を示すパルス信号(以下、「COMPOUT」とも称する)が出力される。
図7は、端子T2にアナログ信号P2が入力される場合のCOMPOUTの一例を示す図である。図7を参照して、アナログ信号P2(線L11)が基準電圧VREF(線L10)よりも高いときにはCOMPOUT(線L12)がハイレベルになり、アナログ信号P2(線L11)が基準電圧VREF(線L10)以下であるときにはCOMPOUT(線L12)がローレベルになる。線L12で示されるCOMPOUTの周波数1/ΔTは、アナログ信号P2(線L11)に含まれるリップルの周波数(たとえば、20kHz)と一致する。
この実施の形態では、基準電圧VREFを固定値とする。ただし、基準電圧VREFは、情報処理装置100によって変更可能であってもよい。基準電圧VREFは、電子線照射装置200における所定部位の温度(たとえば、ペニング真空計10の温度)と、所定のタイミングからの経過時間(たとえば、ペニング真空計10をクリーニングした時点からの経過時間)と、ペニング真空計10の電極間に印加される電圧(たとえば、電圧センサによる検出値)との少なくとも1つに基づいて変更されてもよい。
再び図6を参照して、マルチバイブレータ82には、比較器81の出力信号(COMPOUT)と、基準周波数FREFとが入力され、マルチバイブレータ82からは、電極間放電の有無を示すデジタル信号P4が出力される。マルチバイブレータ82の出力端子は、端子T4に電気的に接続される。
マルチバイブレータ82は、比較器81によって生成されるパルス信号(COMPOUT)の周波数1/ΔT(図7)が所定の周波数範囲(以下、「リップル周波数範囲」とも称する)内にあるか否かに基づいて、電極間放電の有無を示すデジタル信号P4を生成するように構成される。この実施の形態では、リップル周波数範囲として、基準周波数FREF以上の範囲を採用する。基準周波数FREFは、リップル周波数範囲に発振回路21の発振周波数(ひいては、アナログ信号P2に含まれるリップルの周波数)が含まれるように設定される。この実施の形態では、基準周波数FREFを18kHzとする。こうすることで、リップル周波数範囲(18kHz以上の範囲)に発振回路21の発振周波数(20kHz)が含まれるようになる。
この実施の形態では、上記のリップル周波数範囲を下限周波数(基準周波数FREF)のみで規定しているが、リップル周波数範囲は下限周波数及び上限周波数で規定されてもよい。マルチバイブレータ82(たとえば、74HC123)に下限及び上限を示す2つの基準周波数を入力することによって、リップル周波数範囲の下限及び上限を規定することができる。たとえば、リップル周波数範囲を18kHz以上25kHz以下の範囲にしてもよい。
この実施の形態では、リップル周波数範囲が一定の範囲(18kHz以上の範囲)に設定される。ただし、リップル周波数範囲は、情報処理装置100によって変更可能であってもよい。リップル周波数範囲を規定する基準周波数(たとえば、基準周波数FREF)は、電子線照射装置200における所定部位の温度(たとえば、ペニング真空計10の温度)と、所定のタイミングからの経過時間(たとえば、ペニング真空計10をクリーニングした時点からの経過時間)と、ペニング真空計10の電極間に印加される電圧(たとえば、電圧センサによる検出値)との少なくとも1つに基づいて変更されてもよい。
マルチバイブレータ82は、COMPOUTの周波数1/ΔTが基準周波数FREF以上であるときにはL信号(ローレベルのデジタル信号P4)を出力し、COMPOUTの周波数1/ΔT(図7)が基準周波数FREF未満であるときにはH信号(ハイレベルのデジタル信号P4)を出力するように構成される。L信号(TRUE)は、電極間放電が生じていることを示し、H信号(FALSE)は、電極間放電が生じていないことを示す。なお、ハイレベル/ローレベルに関しては逆でもよい。
端子T2には、前述したアナログ信号P2のほかに、非周期的ノイズ(たとえば、低周波ノイズ)が入力される可能性があり、こうした非周期的ノイズによってもCOMPOUT(パルス信号)が生成され得る。アナログ信号P2に含まれるリップルは周期的ノイズであり、リップルによって生成されるCOMPOUTの周波数はリップルの周波数に対応する。このため、COMPOUTの周波数がリップルの周波数に対応しているか否か(すなわち、COMPOUTの周波数がリップル周波数範囲内にあるか否か)に基づいて、パルス信号がリップルと非周期的ノイズとのいずれによって生成されたか(ひいては、端子T2にアナログ信号P2が入力されたか否か)を判別することができる。この実施の形態では、発振回路21の発振周波数に対応して周波数20kHzのリップルが生成される。そこで、COMPOUTの周波数が18kHz以上である場合には、端子T2にアナログ信号P2が入力されたと判断して、電極間放電が生じていることを示すデジタル信号P4(L信号)を生成するようにしている。他方、COMPOUTの周波数が18kHz未満である場合には、端子T2に非周期的ノイズ(低周波ノイズ)が入力された(すなわち、端子T2にアナログ信号P2は入力されていない)と判断して、電極間放電が生じていないことを示すデジタル信号P4(H信号)を生成するようにしている。こうすることで、端子T2に非周期的ノイズが入力され得る環境においても、電極間放電の有無を的確に判定することが可能になる。
この実施の形態に係るデジタル信号P3、P4はそれぞれ、本開示に係る「第1信号」、「第2信号」の一例に相当する。また、この実施の形態では、リップル除去回路62及び第1信号処理回路70が、本開示に係る「第1信号生成回路」を構成する。また、バッファ回路63及び第2信号処理回路80が、本開示に係る「第2信号生成回路」を構成する。
情報処理装置100は、デジタル信号P4を用いて電極間放電が生じていると判定されるときには、デジタル信号P3を用いて対象空間TSの真空度を検出し、デジタル信号P4を用いて電極間放電が生じていないと判定されるときには、デジタル信号P3を用いて対象空間TSの真空度を検出しない。すなわち、ペニング真空計10において電極間放電が生じている場合にのみ、デジタル信号P3に基づいて対象空間TSの真空度が検出される。また、情報処理装置100は、デジタル信号P3及びP4に基づいて電子線照射装置200を制御するように構成される。
図8は、情報処理装置100により実行される電子線照射のインターロックに係る制御の処理手順を示すフローチャートである。情報処理装置100によって電子線照射が許可されなければ、電子線照射装置200は電子線照射を行なうことができない。図8に示される一連の処理は、所定の制御周期毎にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて繰り返し実行される。
図8を参照して、ステップ(以下、単に「S」とも表記する)11では、情報処理装置100が、第1信号処理回路70及び第2信号処理回路80からデジタル信号P3及びP4を取得する。
続けて、情報処理装置100は、S12において、デジタル信号P4に基づいて電極間放電が正常であるか否かを判断する。より具体的には、情報処理装置100は、第2信号処理回路80からL信号を受信した場合には、電極間放電が生じている(すなわち、電極間放電が正常である)と判断し、第2信号処理回路80からH信号を受信した場合には、電極間放電が生じていない(すなわち、電極間放電が異常である)と判断する。この実施の形態では、L信号の受信が所定時間(たとえば、3秒間)継続した場合に、電極間放電が正常であると判断され、H信号の受信が所定時間(たとえば、3秒間)継続した場合に、電極間放電が異常であると判断される。
電極間放電が正常である場合(S12にてYES)には、情報処理装置100は、S13において、デジタル信号P3を用いて対象空間TSの真空度を検出する。たとえば、デジタル信号P3の電圧値と対象空間TSの真空度(圧力)との関係を示す情報(以下、「真空度検出情報」とも称する)を、予め実験等によって求めて記憶装置102に格納してもよい。真空度検出情報は、たとえば、デジタル信号P3の電圧値が低くなるほど対象空間TSの真空度が高くなるような関係を規定する。情報処理装置100は、真空度検出情報を参照することにより、S11で取得したデジタル信号P3の電圧値から対象空間TSの真空度を求めることができる。真空度検出情報は、マップでもテーブルでも数式でもモデルでもよい。
続けて、情報処理装置100は、S14において、所定の照射条件が成立しているか否かを判断する。照射条件の成立要件を全て満たすことによって照射条件は成立する。照射条件の成立要件には、デジタル信号P4を用いて電極間放電が生じている(すなわち、S12にてYES)と判定されていること(第1の要件)と、上記S13で検出された真空度が所定圧力(たとえば、10-3Pa)以下まで高くなっていること(第2の要件)とが含まれる。また、第1及び第2の要件に加えて、他の要件(電子銃220が電子線照射が可能な状態になっていることなど)を、照射条件の成立要件に追加してもよい。なお、第1の要件についてはS12で判断されているため、S14では判断しなくてもよい。
照射条件が成立する場合(S14にてYES)には、情報処理装置100は、S15において、電子線照射装置200における電子線照射を許可する。他方、照射条件が成立しない場合(S14にてNO)には、情報処理装置100は、S16において、電子線照射装置200における電子線照射を禁止する。たとえば、予め記憶装置102に照射フラグを用意し、照射フラグの値として1(禁止)/0(許可)のいずれかが設定されるようにしてもよい。S15において電子線照射が許可されると、照射フラグに0が設定され、S16において電子線照射が禁止されると、照射フラグに1が設定されるようにしてもよい。S14における判断結果がYES/NOのいずれであっても、電子線照射が許可又は禁止された後、処理はメインルーチンへと戻される。
なお、情報処理装置100は、上記S15及びS16の少なくとも一方において報知装置110(表示装置、スピーカー、ランプ等)を制御することにより、電子線照射が許可されているか否かをユーザに報知してもよい。たとえば、情報処理装置100は、S15において、所定のランプ(READYランプ)を点灯(点滅を含む)させてもよい。また、情報処理装置100は、S15において、後述する照射ボタンに内蔵されるランプを点灯させることにより、照射ボタンがアクティブ(操作可能な状態)になったことをユーザに知らせてもよい。また、情報処理装置100は、表示装置への表示(文字や画像等)でユーザに知らせてもよいし、スピーカーにより音(音声を含む)でユーザに知らせてもよい。
電極間放電が異常である場合(S12にてNO)には、情報処理装置100は、S16と同様にして、電子線照射装置200における電子線照射を禁止する(S17)。続けて、情報処理装置100は、S18において報知装置110を制御して報知処理を行なう。この報知処理により、情報処理装置100は、放電異常が生じている旨をユーザに知らせる。ユーザへの報知方法は任意であり、表示装置への表示で知らせてもよいし、スピーカーにより音で知らせてもよいし、所定のランプを点灯させてもよい。
S18の処理が実行されると、図8の処理が終了する。ユーザによって所定の復帰操作がなされるまで、図8の処理は実行されなくなる。なお、情報処理装置100は、図8の処理を終了させる前に、記憶装置102内のダイアグ(自己診断)のフラグをONする(フラグの値を0から1にする)ことにより、ペニング真空計10において放電異常が生じたことを記憶装置102に記録してもよい。
図9は、情報処理装置100により実行される電子線照射装置200の電子線照射制御の処理手順を示すフローチャートである。図9に示される一連の処理は、所定の制御周期毎にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて繰り返し実行される。
図9を参照して、情報処理装置100は、S21において、電子線照射装置200における電子線照射が許可されているか否かを判断する。たとえば、情報処理装置100は、記憶装置102に記憶されている照射フラグの値を確認し、照射フラグの値が0であれば電子線照射が許可されていると判断し、照射フラグの値が1であれば電子線照射が禁止されていると判断する。
電子線照射が許可されている場合(S21にてYES)には、情報処理装置100が、S22において、ユーザから電子線照射の指示があったか否かを判断する。ユーザは、入力装置120に対して所定の操作を行なうことによって、情報処理装置100に電子線照射を指示することができる。情報処理装置100は、所定の操作の有無を監視することによって、ユーザから電子線照射の指示があったか否かを判断することができる。たとえば、入力装置120として照射ボタンを用意し、ユーザが照射ボタンを押すことによって情報処理装置100に電子線照射を指示できるようにしてもよい。この場合、情報処理装置100は、照射ボタンが押された場合に、ユーザから電子線照射の指示があったと判断する。
ユーザからの電子線照射の指示が無い場合(S22にてNO)には、情報処理装置100が、S23において、タイマー回路103から電子線照射の指示があったか否かを判断する。ユーザは入力装置120を通じてタイマー回路103に電子線照射の開始時刻を設定することができる。タイマー回路103は、設定された時刻になると、その旨を演算装置101に通知する。情報処理装置100(より特定的には、演算装置101)は、タイマー回路103に設定された時刻が到来した場合に、タイマー回路103から電子線照射の指示があったと判断する。
そして、情報処理装置100は、ユーザ又はタイマー回路103から電子線照射の指示を受けると(S22及びS23のいずれかにおいてYES)、S24において電子線照射装置200を制御して、電子銃220による電子線照射を実行する。
電子線照射が禁止されている場合(S21にてNO)、及び、ユーザとタイマー回路103とのいずれからも電子線照射の指示が無い場合(S23にてNO)には、処理はメインルーチンへと戻される。
上記図8及び図9の処理が繰り返し実行されることによって、デジタル信号P4から電極間放電が生じていると判定されるとき(図8のS12にてYES)には、デジタル信号P3に基づいて対象空間TSの真空度が検出され(図8のS13)、デジタル信号P4から電極間放電が生じていないと判定されるとき(図8のS12にてNO)には、デジタル信号P3による真空度検出が行なわれなくなる。すなわち、ペニング真空計10において電極間放電が生じている場合にのみ、デジタル信号P3に基づいて対象空間TSの真空度が検出される。こうすることで、放電異常に起因する真空度の誤検出を抑制することができる。
また、上記図8の処理では、デジタル信号P3及びP4に基づいて照射条件が成立するか否かが判断される(S14)。そして、デジタル信号P4を用いて電極間放電が生じていると判定され、かつ、デジタル信号P3を用いて検出された真空度が所定圧力以下まで高くなっていなければ、電子線照射装置200による電子線照射が許可されない。こうすることで、対象空間TSの真空度が十分高くなっている(すなわち、対象空間TSの圧力が十分低くなっている)場合に、電子線照射装置200による電子線照射を許可することが可能になる。
また、上記図9の処理では、上記の照射条件が成立している状態(S21にてYES)において、ユーザ及びタイマー回路103の各々からの電子線照射の指示の有無が監視され(S22及びS23)、ユーザ又はタイマー回路103から電子線照射の指示を受けると(S22及びS23のいずれかにおいてYES)、電子線照射装置200による電子線照射が実行される(S24)。他方、上記の照射条件が成立していない状態(S21にてNO)では、ユーザ又はタイマー回路103から電子線照射の指示があっても、電子線照射は実行されない。これにより、対象空間TSの真空度が不十分であるときに電子線照射が実行されることを抑制することができる。
上記実施の形態では、情報処理装置100が、ユーザ及びタイマー(たとえば、タイマー回路103)の各々からの照射指示の有無を監視するように構成されている。しかしこれに限られず、情報処理装置100は、ユーザ及びタイマーのいずれか一方からの照射指示の有無のみを監視するように構成されてもよい。たとえば、上記実施の形態では、タイマー回路103に照射時刻を設定できるようにしているが、この構成は必須ではない。ユーザからの指示のみによって電子線照射が実行されるようにしてもよい。
上記実施の形態では、電子線照射装置200がSEMであるが、真空度検出装置が適用される電子線照射装置は任意に変更できる。たとえば、電子線照射装置として、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)を採用してもよい。EPMAは、試料に電子線を照射することによって試料の含有元素の内殻電子が遷移する際に放出される特性X線のエネルギー(波長)及び強度に基づいて微小領域の元素分析を行なう装置である。また、電子線照射装置として、電子線描画装置を採用してもよい。
また、真空度検出装置は、電子線照射装置以外の真空装置に適用されてもよい。たとえば、半導体製造装置(CVD(Chemical Vapor Deposition)装置、PVD(Physical Vapor Deposition)装置など)における真空チャンバー内の真空度を検出するために、前述した真空度検出装置を用いてもよい。
上記実施の形態では、冷陰極電離真空計としてペニング真空計10を採用しているが、冷陰極電離真空計は、ペニング真空計に限られず、たとえばペニング真空計に代えてマグネトロン型真空計を採用してもよい。また、放電異常が無い状態で検出された真空度がユーザに報知されるようにしてもよい。検出された真空度は、数値(圧力値)で表示されてもよいし、真空度の程度を示す文字(たとえば、低真空/中真空/高真空)で表示されてもよい。また、対象空間が所定圧力以下になったときに所定のランプが点灯するようにしてもよい。
アナログ信号P1及びP2をデジタル信号に変換することは必須の構成ではない。たとえば、アナログ信号を処理できる計測機器において、アナログ信号P1に基づいて真空度が検出され、アナログ信号P2に基づいて電極間放電の有無が判定されるようにしてもよい。こうすることで、図1に示した第1信号処理回路70、第2信号処理回路80、及び情報処理装置100などを割愛できる。こうした構成においては、アナログ信号P1、P2がそれぞれ本開示に係る「第1信号」、「第2信号」の一例に相当する。
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。