JP7068689B2 - 体幹用運動器具 - Google Patents

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Description

本発明は、体幹用運動器具に関する。
体幹とは、一般的に、ヒトの頭部と四肢を除く部分であるとされている。体幹を鍛えることで、姿勢がよくなったり、基礎代謝が向上するなどといわれており、体幹を鍛えるための装置も開発されている。
例えば、特許文献1には、使用者の胸部の前に配置される一対のピストンと、ピストンの一端部に設けられる把持部とを有する運動装置が開示されている。この装置は、使用者が把持部を手で握った状態でピストンを前後に往復動させることによって、使用者の胸郭を開いた状態と胸郭をより大きく開いた状態を繰り返し行うとされている。
特許文献2にも、同様に、使用者の胸部の前に配置される一対の把持部を有する運動装置が開示されている。この運動装置では、把持部がストロークする動作を右側の把持部と左側の把持部とで別々に制御できるように構成したものである。
特開2009-142554号公報 特開2012-85987号公報
本発明者が研究を重ねたところ、ヒトが適正な姿勢を維持するには、以下のような能力が重要であることがわかってきた。例えば、体幹に入力される突然の負荷に対して、負荷が入力される前と同じ姿勢を維持するのに必要な筋肉を反射的に制御する能力である。この能力には負荷の検知と脳や脊椎から筋肉への情報伝達が関係する。また例えば、突然入力された負荷に対して負荷が入力される前と同じ姿勢を維持するのに必要となる筋肉が迅速に収縮又は弛緩する能力である。また例えば、突然入力された負荷に対して負荷が入力される前と同じ姿勢を維持するのに足りる筋力である。これらの機能に不全があると、姿勢が乱れて、腰痛が発生する原因となり得る。
上記の特許文献1や特許文献2のような装置では、往復動する把持部につられて使用者の手、腕、体幹などの位置が大きく揺り動かされてしまう。このため、これらの装置では、身体に負荷が入力される前と後では大きく身体の各部の位置関係が変わってしまう。このため、これらの装置は、同じ姿勢を維持するのに必要となる上記のような能力を向上させるのには向いていない。
特許文献1や特許文献2のような装置でも、駆動源から出力される動力に拮抗する力で把持部を保持することができれば、使用者の身体は大きく揺り動かさせることはない。しかしながらその場合は、駆動源が故障してしまうおそれがある。
本発明は、身体の各部の位置の変化を抑えつつ、体幹に負荷を掛けることが可能な体幹用運動器具を提供することを目的とする。
ハンドルと、使用者の背筋方向に交差する方向にハンドルが往復動可能な状態でハンドルを支える第1支持部と、使用者の背筋方向に交差する方向に第1支持部が往復動可能な状態で第1支持部を支える第2支持部とを備えており、ハンドルは、駆動源から伝達される動力によって、第1支持部に対して能動的に往復動するものであり、第2支持部は、その位置が固定されている体幹用運動器具によって、上記の課題を解決する。この体幹用運動器具においては、例えば、使用者がハンドルを手で握ることによってハンドルの往復動を止めようとすると、その位置が固定された第2支持部及び動きが制限されたハンドルに対して第1支持部の位置がずれるように往復動する。このため、例えば、ハンドルの往復動を使用者が完全に停止させたとしても、駆動源の動力は、第2支持部に対して第1支持部を往復動させる動作に費やされるので、動力源を故障させることなく、ハンドルの往復動を停止させることが可能になる。これによって、使用者は身体の位置を一定の状態に維持しながら体幹に負荷を掛ける運動を実施することが可能になる。
上記の体幹用運動器具において、ハンドルが往復動する幅は調節することが可能に構成することが好ましい。ハンドルが往復動する幅を調節することによって、体幹に作用する負荷を調節することが可能になる。例えば、前記の幅を大きくすれば、単位時間内に発生する負荷のピークの頻度を減らすことにより、運動の負荷を小さくすることができる。また、例えば、前記の幅を小さくすれば、単位時間内に発生する負荷のピークの頻度を増やすことにより、運動の負荷を大きくすることができる。
上記の体幹用運動器具において、ハンドルが往復動する速度は調節することが可能に構成することが好ましい。ハンドルが往復動する速度を調節することによって、体幹に作用する負荷を調節することが可能になる。例えば、前記の速度を大きくすれば、体幹に作用する負荷のピーク値を大きくすると共に単位時間内に発生する負荷のピークの頻度を増やすことにより、運動の負荷を大きくすることができる。また、例えば、前記の速度を小さくすれば、体幹に作用する負荷のピーク値を小さくすると共に単位時間内に発生する負荷のピークの頻度を減らすことにより、運動の負荷を大きくすることができる。
上記の体幹用運動器具において、駆動源は、モーターであり、ハンドルはモーターの動力を受けて往復動するようにすることが好ましい。モーターを使用することにより、ハンドルを迅速に作動させることが可能になる。
上記の体幹用運動器具において、駆動源は、第1支持部に連結されており、第1支持部と一体に往復動するようにすることが好ましい。これによって、駆動源の動力を伝達する経路を短くして、装置を小型化することが可能になる。
上記の体幹用運動器具は、第1支持部及び第2支持部のうちいずれか一方が凹条を備えており、第1支持部及び第2支持部のうち残りの他方が凸条を備えており、凹条と凸条とが嵌め合わされているものとすることが好ましい。これにより、体幹用運動器具の作動中において、第1支持部と第2支持部が意図せず分離することを防止することが可能になる。
上記の体幹用運動器具において、ハンドルは、使用者の体幹部の範囲に配置されるものとすることが好ましい。これによって、無理のない姿勢で、使用者の体幹に負荷をかける運動を行うことが可能になる。
本発明によれば、身体の各部の位置の変化を抑えつつ、体幹に負荷を掛けることが可能な体幹用運動器具を提供することが可能になる。
一実施形態に係る体幹用運動器具の正面図である。 図1の体幹用運動器具の側面図である。 図2のA部の拡大図である。 ハンドルを取り外した状態における図1の体幹用運動器具の平面図である。 第一支持部の断面図である。 ハンドルを保持していない状態で駆動源を作動させた状態を示す正面図である。 ハンドルを保持していない状態で駆動源を作動させた状態を示す正面図である。 使用者がハンドルを保持した状態を示す正面図である。 使用者がハンドルを保持した状態で駆動源を作動させた状態を示す正面図である。 使用者がハンドルを保持した状態で駆動源を作動させた状態を示す正面図である。 実施例で使用した試験装置の構成を示す図である。 試験装置に設置した圧縮型ロードセルに入力された力と経過時間との関係を示すグラフである。 体幹用運動器具を使用した場合における右外腹斜筋と左外腹斜筋の筋活動量の平均値を示すグラフである。 体幹用運動器具の第1支持部の動作の条件を変更した場合における右外腹斜筋と左外腹斜筋の筋活動量の平均値を示すグラフである。
以下、図面を参照しながら、体幹用運動器具の一実施形態について説明する。以下に挙げる体幹用運動器具は一例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
図1及び図2に示したように、本実施形態の体幹用運動器具1は、ハンドル11と、第1支持部13と、第2支持部15とを含む。
ハンドルは、体幹用運動器具1の使用者が手で把持しやすい形状であり、ハンドルの位置を固定していない状態において、駆動源から伝達される動力によって第1支持部に対して能動的に往復動することが可能に構成すればよい。
本実施形態の体幹用運動器具1では、ハンドル11は、図1に示したように、左右一対の把持部111、111と、把持部111、111を固定する台座112とを有する。把持部111は、図2に示したように、台座112から突出する第1棒状部111aと、台座112から突出する第2棒状部111bと、第1棒状部111aの端部と第2棒状部111bの端部と連続する第3棒状部111cとを備える形状である。使用者は、体格や装置を使用する姿勢に応じて、第1棒状部111a、第2棒状部111b、及び第3棒状部のうち任意の部分を把持することができる。
第1支持部は、使用者の背筋方向に交差する方向にハンドルが往復動可能な状態でハンドルを支えることができるように構成すればよい。
本実施形態の体幹用運動器具1では、図1及び図5に示したように、第1支持部13は、駆動源の動力を受けて駆動する作動部131を有しており、往復動する作動部131にハンドル11の平板状の台座112が連結された構成となっている。作動部は、ハンドル11を連結することができる形状であればよい。本実施形態では作動部131は直方体状である。
第1支持部13は、より具体的には、図5に示したように、ボール螺子132と、ボール螺子132に螺合するナット部133と、ボール螺子132とナット部133を内蔵する筐体134とを有する。筐体134には、ボール螺子132を回転可能に支える軸受135が配されている。筐体134の内壁にはガイド部として溝136が設けられている。溝136は、ナット部133が筐体134の長手方向に沿って移動できるように案内する。ナット部133には溝136に対応する突条が設けられる。溝136に替えて筐体134の内壁に突条を設けて、この突条に対応する凹溝をナット部133に設けてもよい。
本実施形態の体幹用運動器具1では、図5に示したように、駆動源18は、第1支持部13に連結されている。このため、第1支持部13と駆動源18は、一体の関係になっている。本実施形態の体幹用運動器具1では、駆動源18としてモーターを採用している。駆動源18は、上述のボール螺子132に動力を伝達可能に構成されており、駆動源18を順方向又は逆方向に回転させることによって、ボール螺子132が連動して順方向又は逆方向に回転して、作動部131を使用者の背筋方向に交差する方向に対して往復動させることが可能になっている。後述の図8及び図9に示すように、本実施形態では、使用者の背筋方向に交差する方向は略水平な方向と一致する。
作動部131には、上述の通り、ハンドル11の台座112が固定されている。駆動源18を作動させると、図6及び図7において破線と矢印で示したように、使用者がハンドル11の位置を固定していない状態では、駆動源から伝達される動力によって、ハンドル11及び作動部131が、第1支持部13に対して一体に往復動する。
本実施形態の体幹用運動器具1では、駆動源としてモーターを採用している。駆動源として、油圧シリンダーやエアシリンダーを使用する場合に比べて迅速にハンドルを往復動させることができるので好ましい。使用者の状態を考慮して、ハンドルの動作が緩慢である方が望ましい場合は、エアシリンダーや油圧シリンダーなどの流体シリンダーを駆動源として使用してもよい。流体シリンダーを使用する場合は、作動部131に対して、流体シリンダーに内蔵されたピストンの先端部を固定すればよい。また、ハンドルを流体シリンダーのピストンに直接固定してもよい。
本実施形態の体幹用運動器具1では、より具体的には、駆動源としてサーボモーターを使用している。サーボモーターでは、コントローラーで設定したパラメーターに基づいて、モーターを電気的に制御することにより、ボール螺子132が回転する方向、速度、一度に回転する回数、正転と逆転を繰り返す回数などを任意に調節することができる。これによって、ハンドルが往復動する回数、ハンドルが往復動する幅、ハンドルが往復度する速度、又は加減速Gを容易に設定することが可能になる。ハンドルが往復動する回数、ハンドルが往復動する方向、幅、速度、又は加速度Gを制御は、例えば、制御用のプログラムを格納した制御部(サーボアンプ)によって行うことができる。駆動源としてエアシリンダーや油圧シリンダーを使用する場合においても、同様にパラメーターの設定を行うコントローラーと作動部131の制御を行う制御部を設ければよい。
第2支持部は、使用者の背筋方向に交差する方向に対して往復動可能な状態で第1支持部13を支える構成とし、第2支持部はその位置が固定されている構成とするとよい。
本実施形態の体幹用運動器具1では、図2及び図3に示したように、第2支持部15は、台座151と、台座151の上面に配される2条のレール部152とを含む。レール部152は、その左右の側面に凹条133を備えている。一方、上述の第1支持部13は、この凹条133に対応する形状を有する凸条132を備えている。凹条133と凸条132とを、摺動可能な状態で嵌め合わせることによって、第2支持部15は、第1支持部13を往復動可能な状態で支えると共に、意図せずに第1支持部13と第2支持部15とが意図せずに分離することを防止することが可能になる。第1支持部13と第2支持部15との分離を防ぐことによって、体幹用運動器具1を使用時における事故を防止することができる。
図2及び図3の例では、第1支持部13に凸条132を設けて、第2支持部15に凹条133を設ける構成とした。第1支持部13に凹条を設けて、第2支持部15に凸条を設ける構成としてもよい。すなわち、第1支持部及び第2支持部のうちいずれか一方が凹条を備えており、第1支持部及び第2支持部のうち残りの他方が凸条を備えており、凹条と凸条とが嵌め合わされているものとすることが好ましい。
図2及び図3の例では、第2支持部15はレール部152を台座151に設ける構成とした。レール部を省略して台座151の側面に凹条又は凸条を設ける構成としてもよいし、台座151を省略して凹条又は凸条を設けたレール部のみから第2支持部を構成してもよい。
第2支持部15は、使用者の背筋方向に交差する方向に往復動可能な状態で第1支持部13を支えている。このため、図8に示したように、使用者9がその手でハンドル11を把持することによってハンドル11の位置が動かないように固定すると、図9及び図10において破線と矢印で示しように、第1支持部13が背筋方向に交差する方向に往復動する。すなわち、使用者9がハンドルの往復動に拮抗する力をハンドル11に加えることによって、ハンドル11の往復動を完全に停止させることが可能になる。このとき、駆動源18の動力は、図9及び図10において破線と矢印で示したように、第2支持部15及びハンドル11に対して第1支持部13を往復動する動作に費やされる。これによって、使用者9がハンドル11を停止させようとする負荷を体幹用運動器具1にかけた際に駆動源18が故障する事態を防ぐことが可能になる。例えば、モーターの場合は、モーターの回転が止められることによって生じる焼き付きを防止することが可能になる。
第2支持部15は、図1及び図3に示したように、その台座151が架台2に対して固定されている。そして、架台2は床面に対して螺子止めによって固定されている。このため、図9及び図10に示したように、第1支持部13が往復動する動作をする際に、第1支持部13の往復動に連動して第2支持部15が揺動する事態を防止することが可能になっている。第2支持部15の位置を固定するには、例えば、架台2の重量を大きく設定したり、第2支持部15を壁や床などの不動体に固定することによって実現することが可能である。
図8ないし図10に示したように、本実施形態の体幹用運動器具1は、使用者9が立位かつ無理のない姿勢でハンドル11を把持することができるようにするために、ハンドル11を使用者の体幹部の範囲に配置した。これによって、無理のない姿勢で使用者9の体幹に負荷をかける運動を行うことが可能になる。使用者9の状態に合わせて、椅子などに座った状態で体幹用運動器具を使用することも可能である。その場合もハンドルが使用者9の体幹部の範囲に配置されるようにすることが好ましい。
上述の通り、ヒトが適正な姿勢を維持するには、体幹に入力される突然の負荷に対して、負荷が入力される前と同じ姿勢を維持するのに必要な筋肉を反射的に制御する能力を有すること、突然入力された負荷に対して負荷が入力される前と同じ姿勢を維持するのに必要となる筋肉そのものが制御信号に応じて迅速に収縮又は弛緩する能力を有すること、突然入力された負荷に対して負荷が入力される前と同じ姿勢を維持するのに足りる筋力を有することが必要である。
例えば、ヒトがしゃがむ動作をするときには体幹が屈曲する。また、例えば、ヒトが振り返る動作をするときには体幹が旋回する。このような動作を行うと、体幹に突然の負荷が作用し、腰の位置も突然に変位する。上記の能力に不全があると、体幹に入力された突然の負荷に対して、腰部を支える筋肉が対応しきれずに、腰部が過度に動いてしまう。すなわち、脳や脊椎から筋肉への情報伝達が迅速になされないと筋肉が迅速に収縮又は弛緩できずに腰部が過度に動いてしまう。情報伝達が迅速になされても筋肉自体が迅速に収縮又は弛緩する能力を欠くとやはり腰部が過度に動いてしまう。情報伝達や筋肉の収縮又は弛緩が十分でも、筋力が不足していると、負荷を支えきれずに、腰部が過度に動いてしまう。そして、腰部が過度に動くと、腰痛が発症する原因となる。
本実施形形態の体幹用運動器具1では、ハンドル11が往復動しようとする力に拮抗する力でハンドル11を把持することで、第1支持部13を第2支持部15に対して往復動させて、ハンドル11の位置は不動の状態に維持することができる。例えば、ハンドル11が右方向に移動する際には、使用者9はハンドル11を左側に押すように拮抗する力を加える。ハンドル11が左方向に移動する際には、使用者9はハンドル11を右側に押すように拮抗する力を加える。このようにすれば、使用者自身の姿勢はハンドルの動きに影響されず一定の姿勢を維持することができる。拮抗する力とは、ハンドルが動く力と、手がハンドルを押す力とが同等であることをいう。
使用者9がハンドル11の動きにあわせてハンドルの動きに拮抗する力を繰り返しハンドル11に加える練習を行うことによって、突然に身体に入力される負荷に対して同じ姿勢を維持するために必要となる能力、すなわち、突然の負荷に対して筋肉を反射的に制御する能力、筋肉そのものが制御信号に応じて迅速に収縮又は弛緩する能力、又は姿勢を維持するのに足りる筋力を鍛えることが可能になる。
すなわち、使用者は、突然に右側に動くハンドルを止めるには、対応する筋肉を迅速に収縮又は弛緩させて、ハンドルの動きに拮抗する力を加えなければならない。ハンドルは突然に左側に動くので、今度は左側に動くハンドルを止めるために、対応する筋肉を迅速に収縮又は弛緩させて、ハンドルの動きに拮抗する力を加えなければならない。こうした動作を繰り返すうちに同じ姿勢を維持するのに必要となる能力や筋力が鍛えられる。使用者は、目隠しをして体幹用運動器具を使用してもよい。目隠しをすることによって視覚が遮断される。これによって、より効率的に手から体幹へ入力される力に応じて姿勢を維持する能力や筋力を鍛えることが可能になる。
本実施形態の体幹用運動器具1では、第1支持部13及びハンドル11の動作を使用者自身が目視確認することによって、姿勢を維持するための能力や筋力を適切に鍛えられているか否かを確認することができる。すなわち、ハンドル11が不動の状態を維持し第1支持部13が第2支持部15に対して往復動していれば、適切な運動が行えていると判断することができる。ハンドル11が往復動していれば適切な運動が行えていないと判断することができる。
上記の実施形態に係る体幹用運動器具1のハンドル11を固定する動作を行った際に体幹に対してどの程度の力(N)が入力されるかについて以下の方法により検証した。
[試験装置の構成]
図11に示したように、上記の実施形態に係る体幹用運動器具1にハンドル11を固定する枠体81を取り付けてハンドル11の位置が動かないように固定した。枠体81は床面に対して固定されている。このため、ハンドル11が往復動する動作につられて枠体81が動かないようにされている。枠体81とハンドル11との間に圧縮型ロードセル82を固定した。第1支持部13の加減速G、スピード(mm/s)、往復幅(±mm)は、図示しない制御部とコントローラーによって変更することが可能になっている。加減速Gは、第1支持部の加速時又は減速時に第1支持部に作用する加速度のことを意味し、スピードは第1支持部13の移動速度を意味し、往復幅は第1支持部13の中央を原点とした際に原点からプラス方向又はマイナス方向に第1支持部13が移動した距離を意味する。これらのパラメーターは、コントローラーで設定し、サーボアンプとサーボモーターによるフィードバック制御によって自動的に運転される。
枠体81に対してハンドル11が固定された状態の体幹用運動器具1の駆動源を作動させると、ハンドル11が枠体81に固定された圧縮型ロードセルを押圧する。圧縮型ロードセルの圧縮によって生じた電圧は、センサインタフェースを経由してコンピュータに入力し、力(N)に変換してコンピュータに記録した。サンプリング周波数は、1000Hzとした。
第1支持部13が往復動する回数は7回に設定し、第1支持部13の加減速Gは1Gに設定した。第1支持部13のスピードは、100mm/s、200m/s、300mm/sで変更し、第1支持部13の往復幅は、±20mm、±40mm、±60mmで変更した。すなわち、スピードと往復幅とを変更して計9条件で圧縮型ロードセルに入力される力(N)を測定した。
力の測定結果の一例を図12に示す。図12においてX軸は時間(ミリ秒)を示す。図12に示したように、第1支持部13が左側にスライドし始める際に第1支持部13の右側に設置している圧縮型ロードセルに力が加わり力の値が大きく上昇し、やがて減衰する。後述する力が小さめに上昇する波形に比べて力が大きく上昇する波形をピークと呼び、その時の値をピーク値と呼ぶ。その後、第1支持部13の動作は右方向に折り返す。第1支持部が右側にスライドして止まる際に力の値がやや小さめに上昇した。そして、300ミリ秒後に第1支持部13が再度、左側にスライドし始めて力の値が大きく上昇した。以降、このパターンを繰り返した。
第1支持部13が右側にスライドして止まった後に左側に動き始めるまでの時間は全ての条件で約300ミリ秒であった。
次に、圧縮型ロードセルに入力される力のピーク値の平均値と、力のピーク値が出現する時間的な間隔(ミリ秒)を求めた。図12に示したように、第1支持部が7回往復動するうちの3から5往復目の力(N)のピーク値とピーク値が出現する時間の間隔(ミリ秒)を抽出して、平均化した。力のピーク値の平均値を表1に示し、ピーク値の出現の時間の間隔の平均値を表2に示す。表1及び表2においては、括弧書きで測定値の最小値と最大値を示した。
Figure 0007068689000001
Figure 0007068689000002
表2から明らかなように、第1支持部が往復動する幅を小さくするほど圧縮型ロードセルに入力される力のピーク値が出現する時間的な間隔が短くなることが確認された。このことから、第1支持部が往復動する幅を小さくすれば単位時間内に発生する力のピーク値の出現頻度を大きくして運動の負荷を大きくすることができることがわかる。反対に第1支持部が往復動する幅を大きくすれば単位時間内に発生する力のピーク値の出現頻度を小さくして運動の負荷を小さくすることができることがわかる。
表2から明らかなように、第1支持部が往復動するスピードを大きくするほど圧縮型ロードセルに入力される力のピーク値が出現する時間的な間隔が短くなることが確認された。このことから、第1支持部が往復動するスピードを大きくすれば単位時間内に発生する力のピーク値の出現頻度を大きくして運動の負荷を大きくすることができることがわかる。反対に第1支持部が往復動するスピードを小さくすれば単位時間内に発生する力のピーク値の出現頻度を小さくして運動の負荷を小さくすることができることがわかる。
表1から明らかなように、第1支持部が往復動するスピードを大きくするほどロードセルに入力される力のピーク値が大きくなることが確認された。このことから、第1支持部が往復動するスピードを大きくすれば、体幹に入力される力を大きくして運動の負荷を大きくすることができることがわかる。反対に第1支持部が往復動するスピードを小さくすれば、体幹に入力される力を小さくして運動の負荷を小さくすることができることがわかる。
一般的に、体幹の安定を目的とする運動では、最大筋力の20~30%での低強度の運動が推奨されている。健常な男性場合は等尺性最大体幹回旋トルクが約90Nmであるとされている。ゴルファーの場合は、等尺性最大体幹回旋トルクは100~140Nmであるとされている。
例えば、等尺性最大体幹回旋トルクが90Nmの使用者が体幹用運動器具1に向かって両肘の関節を90°屈曲した状態でハンドルの往復動を止めようとした場合であって、使用者の体幹の回旋運動の中心からハンドルまでの長さが0.3mの場合においては、その使用者が発揮できるハンドルの部分における最大体幹回旋筋力は300Nとなる。この場合、体幹の安定を促す運動を実施するには、300Nの30%である90Nの負荷が最適となる。
使用者の等尺性最大体幹回旋トルクが150Nmである場合は、体幹の安定を促す運動を実施するには、150Nの負荷が最適となる。
表1から明らかなように、体幹用運動器具1によれば、往復幅を±20~±60mmの範囲で変更し、かつスピードを100~300mm/sの範囲で変更することによって、60~150Nの負荷をかけることができる。このことから、体幹用運動器具1によれば、体幹の安定を促す運動を好適に実施することが可能であることがわかる。また、表2に示したように、ハンドルから使用者の手に入力される力の最大値が出現する間隔を700~3200ミリ秒の間隔で調節することができる。使用者の状態に合わせて、力の最大値が出現する頻度を調節することによっても、運動の強度を調節することが可能になる。
次に、健常な男子大学生9名を被検者として、体幹が左方向に回旋する際の主動作筋である右外腹斜筋と左内腹斜筋の筋活動量を検証した。検証は、以下の3条件で行った。
[実施例1]
体幹用運動器具1において、第1支持部13のスピードを300mm/sとし、第1支持部13の往復幅を±20mmとして、各被検者にハンドル11の位置が移動しないように固定してもらった。その際の右外腹斜筋と左内腹斜筋の筋活動量を最大随意収縮で正規化(標準化)した値%MVC(Maximal Voluntary Contraction)を求めた。
[比較例1]
市販のボディブレードをできるだけ弱く振り、その際の右外腹斜筋と左内腹斜筋の筋活動量を最大随意収縮で正規化した値%MVCを求めた。
[比較例2]
市販のボディブレードをできるだけ強く振り、その際の右外腹斜筋と左内腹斜筋の筋活動量を最大随意収縮で正規化した値%MVCを求めた。
実施例1、比較例1、及び比較例2の各条件で測定した%MVCを平均化して、図13に示す。図13から明らかなように、体幹用運動器具1では、右外腹斜筋と左内腹斜筋の筋活動量は約20%MVCであった。20~30%MVCの筋活動量は関節を安定させるための運動として有用であることが知られている。このことから、体幹用運動器具1は、体幹の筋肉が関節を安定させるのに有用な運動を行うのに適していることがわかる。
次いで、上記と同じ健常な男子大学生を被検者として、以下の実施例2ないし4の各条件で右外腹斜筋と左内腹斜筋の筋活動量を%MVCで比較した。
[実施例2]
体幹用運動器具1において、第1支持部13のスピードを300mm/sとし、第1支持部13の往復幅を±20mmとして、各被検者にハンドル11の位置が移動しないように固定してもらった。その際の右外腹斜筋と左内腹斜筋の筋活動量を最大随意収縮で正規化(標準化)した値%MVC(Maximal Voluntary Contraction)を求めた。
[実施例3]
体幹用運動器具1において、第1支持部13のスピードを300mm/sとし、第1支持部13の往復幅を±60mmとして、各被検者にハンドル11の位置が移動しないように固定してもらった。その際の右外腹斜筋と左内腹斜筋の筋活動量を最大随意収縮で正規化(標準化)した値%MVC(Maximal Voluntary Contraction)を求めた。
[実施例4]
体幹用運動器具1において、第1支持部13のスピードを100mm/sとし、第1支持部13の往復幅を±60mmとして、各被検者にハンドル11の位置が移動しないように固定してもらった。その際の右外腹斜筋と左内腹斜筋の筋活動量を最大随意収縮で正規化(標準化)した値%MVC(Maximal Voluntary Contraction)を求めた。
実施例2ないし実施例4の各条件で測定した%MVCを平均化して、図14に示す。図14における実施例2と実施例3の比較から明らかなように、第1支持部13の往復幅を大きくすることによって右外腹斜筋と左内腹斜筋の筋活動量を小さくすることができることが確かめられた。図14における実施例3と実施例4の比較から明らかなように、第1支持部のスピードを小さくすることによって右外腹斜筋と左内腹斜筋の筋活動量を小さくすることができることが確かめられた。このように、体幹用運動器具1においては、使用者の状態に応じて、弱い強度の運動も段階的に調節して実施することが可能である。例えば、傷病者、老齢者などにおいては負荷の小さい運動を行うことも可能である。
1 体幹用運動器具
11 ハンドル
13 第1支持部
15 第2支持部
18 駆動源
131 作動部
132 凸条
133 凹条
9 使用者

Claims (7)

  1. ハンドルと、
    使用者の背筋方向に交差する方向に前記ハンドルが往復動可能な状態で前記ハンドルを支える第1支持部と、
    使用者の背筋方向に交差する方向に前記第1支持部が往復動可能な状態で前記第1支持部を支える第2支持部とを備えており、
    前記ハンドルは、駆動源から伝達される動力によって、前記第1支持部に対して能動的に往復動するものであり、
    前記第2支持部は、その位置が固定されている体幹用運動器具。
  2. 前記ハンドルが往復動する幅は調節することが可能に構成されている請求項1に記載の体幹用運動器具。
  3. 前記ハンドルが往復動する速度は調節することが可能に構成されている請求項1又は2に記載の体幹用運動器具。
  4. 前記駆動源は、モーターであり、前記ハンドルは前記モーターの動力を受けて往復動するように構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の体幹用運動器具。
  5. 前記駆動源は、前記第1支持部に連結されており、前記第1支持部と一体に往復動する請求項1ないし4のいずれかに記載の体幹用運動器具。
  6. 前記第1支持部及び前記第2支持部のうちいずれか一方が凹条を備えており、前記第1支持部及び前記第2支持部のうち残りの他方が凸条を備えており、
    前記凹条と前記凸条とが嵌め合わされている請求項1ないし5のいずれかに記載の体幹用運動器具。
  7. 前記ハンドルは、使用者の体幹部の範囲に配置される請求項1ないし6のいずれかに記載の体幹用運動器具。
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