以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
<本発明の第1の実施の形態に係る状態推定システムの概要>
本発明の実施形態では、交通環境上の移動物(車両、歩行者等)を追跡対象物とし、大きさを持つ仮説群で構成した追跡器として表現する。
そして、追跡器内の他の仮説や障害物との重複があれば仮説を除去する。
大きさを持った少数の仮説で追跡器を構成し、解析的な相互作用の計算のみで、乱数を排除し、かつ、網羅性のある状態推定の実現を行う。
追跡器を構成する仮説に大きさを設定し、寄与度の低い仮説を削減することで、計算量を削減することができる。ここで、仮説の大きさは、任意の大きさを定義することができる。本実施形態では、仮説の大きさが、カルマンフィルタにおける予測ステップでの共分散行列で表される場合について説明する。
<本発明の第1の実施の形態に係る状態推定システムの構成>
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る状態推定システム10は、センシング装置100と、状態推定装置200とを備えて構成される。本実施形態では、交通環境が駐車場であり、追跡対象物が車両と歩行者である場合を例に説明する(図2)。
センシング装置100は、移動物の位置・速度の推定に必要な情報を計測する。
具体的には、センシング装置100は、カメラ、レーザーレーダ、電波受信機等のセンサを用いて、車両及び歩行者の位置・速度の推定に有益な情報を計測する。センシング装置100は、多数台、多数の種類が混在しても良い。
センシング装置100は、車両及び歩行者を計測できる場所であれば、任意の場所に設置されることができる。
例えば、センシング装置100は、天井等の移動しない場所に設置されることができる(図2)。この場合、センシング装置100は、設置位置を適切に選定することで、カメラの撮影範囲やレーザー等が遮蔽される領域を少なくすることができる。
また、例えば、センシング装置100は、移動物、例えば車両上に設置されることもできる(図3)。以下、本実施形態では、図2の場合を例に説明する。
そして、センシング装置100は、計測したセンサ情報を、状態推定装置200の入力部201に渡す。ここで、センシング装置100は、状態推定装置200と直接接続されていることを要せず、状態推定装置200に、インターネット等の通信網を介して接続されていてもよい。
状態推定装置200は、CPUと、RAMと、後述する状態量推定処理ルーチンを実行するためのプログラムを記憶したROMとを備え、機能的には次に示すように構成されている。
図1に示すように、状態推定装置200は、入力部201と、障害物特定部202と、遮蔽領域検出部203と、検出部204と、状態記憶部205と、仮説予測部206と、重複仮説削除部207と、静止障害物地図DB208と、状態更新部209と、衝突可能性判定部210と、出力部211とを備えて構成される。
入力部201は、センシング装置100から、センサ情報の入力を受け付ける。
そして、入力部201は、受け付けたセンサ情報を、障害物特定部202及び検出部204に渡す。
障害物特定部202は、センサ情報に基づいて、障害物領域を特定する。
具体的には、障害物特定部202は、予め移動物が存在しない状態においてレーザーレーダによるセンサ情報を用いて点群地図を作成し、障害物領域を特定する。
そして、障害物特定部202は、特定した障害物領域の情報を遮蔽領域検出部203に渡す。
遮蔽領域検出部203は、障害物領域の情報に基づいて、遮蔽領域を検出する。
具体的には、遮蔽領域検出部203は、例えばレーザーレーダにより計測された点群地図を、障害物特定部202で得られた障害物領域との差分により移動物を特定し、幾何学計算によって遮蔽領域を検出する。
そして、遮蔽領域検出部203は、検出した遮蔽領域の情報を、仮説予測部206に渡す。
検出部204は、センサ情報を用いて、観測時刻における歩行者及び車両を検出する。
具体的には、検出部204は、センサ情報から、歩行者を検出し、当該歩行者を追跡の対象である追跡対象物として、当該歩行者の位置及び速度を検出すると共に、車両を検出し、当該車両を追跡の対象である追跡対象物として、当該車両の位置および速度を検出する。
例えば、検出部204は、カメラ画像を用いた物体認識技術により画像中の人の矩形位置を検出すると共に、車両の矩形位置を検出する。
そして、検出部204は、レーザーレーダにより計測された点群をカメラ画像に投影して、矩形内の点群から距離を推定することで、歩行者の位置及び車両の位置を検出する。また、検出部204は、前時刻における、矩形内の点群と、現時刻における、矩形内の点群との比較により、歩行者の速度及び移動方向も推定すると共に、車両の速度及び移動方向も推定する。
そして、検出部204は、検出した全ての歩行者を追跡している歩行者として、追跡している歩行者の状態(位置、速度、観測時刻)を、仮説予測部206に渡すと共に、検出した全ての車両を追跡している車両として、追跡している車両の状態(位置、速度、観測時刻)を、仮説予測部206に渡す。
状態記憶部205は、追跡している歩行者の各々について、当該歩行者の状態を示す仮説を格納すると共に、追跡している車両の各々について、当該車両の状態を示す仮説を格納する。ここで、歩行者の仮説は、歩行者の存在である正規分布を仮定した仮説(位置、速度、共分散)であり、追跡器に含まれる。また、車両の仮説は、車両の存在である正規分布を仮定した仮説(位置、速度、共分散)であり、追跡器に含まれる。また、仮説にはIDや属性を含めてもよい。
具体的には、状態記憶部205は、状態更新部209により更新された追跡している歩行者の各々について、当該歩行者の状態(位置、速度を含む)、及び最後に観測した時刻を格納すると共に、状態更新部209により更新された追跡している車両の各々について、当該車両の状態(位置、速度を含む)、及び最後に観測した時刻を格納する。
仮説予測部206は、追跡している歩行者の各々について、センサを用いた検出タイミングでの、当該歩行者の複数の仮説を予測する。
具体的には、仮説予測部206は、全ての追跡器内の仮説に対して、カルマンフィルタの予測ステップ(線形予測/共分散拡大)を設定されたステップ数だけ繰り返すことにより、当該追跡器の将来の移動可能範囲を予測する。
ここでは、追跡器aについて仮説群
が生成されたとものとして、1ステップカルマン予測を用いた場合について説明する。仮説予測部206は、仮説x
0ai毎に次の時刻の状態を示す仮説群
を予測する。
i番目の仮説x0aiは、下記式(1)のように表すことができる。
ここで、(x0pi)x、(x0pi)yは、それぞれ当該仮説のx、y方向の位置を、(x0vi)x、(x0vi)yは、それぞれ当該仮説のx、y方向の速度を表す。
そして、下記式(2)及び(3)を用いて、次の時刻の状態を予測する。図5に、追跡器aについての予測結果のイメージを示す。
ここで、
は、次の時間への時間幅であり、σ
px、σ
py、σ
vx、σ
vyは共分散である。
そして、仮説予測部206は、追跡している歩行者の各々についての予測結果を、重複仮説削除部207に渡す。
また、仮説予測部206は、追跡している車両の各々について、歩行者と同様に、センサを用いたタイミングでの、当該車両の複数の仮説を予測する。
また、仮説予測部206は、遮蔽領域の情報を用いて、図4に示すように、センサの画角外や、車両や歩行者が出現し得るランドマークに、車両や歩行者の仮説を新たに生成してもよい。ランドマークから歩行者や車両が交通環境である駐車場に入場する場面が想定されるからである。この場合、センシング装置100が、駐車場内のランドマークの変化(例えば、エレベータの開閉等)を計測する構成としてもよい。
重複仮説削除部207は、追跡している追跡対象物(歩行者又は車両)の各々について、当該追跡対象物の複数の仮説から、当該仮説の予測結果が持つ範囲と、同一の追跡対象物の他の仮説が持つ範囲との重複度合い、及び当該仮説の予測結果が持つ範囲と、障害物が存在する範囲との重複度合いに応じて、当該仮説を削除する。
具体的には、重複仮説削除部207は、追跡器が2つ以上の仮説で構成されている場合に、以下のように、仮説数の削減を図る。
まず、重複仮説削除部207は、予め作成した静止障害物地図DB208の静止障害物地図を用いて、障害物内に仮説の状態が含まれている場合に、当該仮説を削除する。
次に、各予測ステップにおいて各仮説の組み合わせの各々についてKullback-Leibler距離(KLD)を計算し、さらに仮説間のKLDの平均であるJensen-Shannon距離(JSD)を算出する。
例えば、上記の1ステップカルマンフィルタによる予測結果を用いた場合、i番目の仮説x0aiと、j番目の仮説x0ajとのKLDは、下記式(4)を用いて求める(図6)。
次に、重複仮説削除部207は、仮説間のKLDの平均を、下記式(5)を用いて求める。
そして、重複仮説削除部207は、JSDの小さい組み合わせから順に予め設定した値ε以下かどうかを評価し(下記式(6))、設定値ε以下の場合にはJSDを構成するKLDが小さい方の仮説を削除する(図7、図8)。
削除した仮説x0akに関する評価中のJSDの組み合わせ(JSDki、JSDik)も評価の対象外とする。なお、KLDが大きい方の仮説を削除する構成としてもよい。
また、予測された仮説と、特定された障害物領域との組み合わせの各々について、当該仮説の予測結果が持つ範囲と、障害物領域との重複度が閾値以上である場合には、当該仮説を削除する。
そして、重複仮説削除部207は、追跡している追跡対象物の各々について、仮説の削除処理を行った後の仮説予測部206による予測結果を、状態更新部209に渡す。
静止障害物地図DB208は、移動物が存在する地図上の静止している障害物の情報を含む地図である静止障害物地図を格納する。
状態更新部209は、追跡している歩行者の各々について、当該歩行者の複数の仮説を、仮説の予測結果と、当該歩行者の検出結果とに基づいて更新する。
また、状態更新部209は、追跡している車両の各々について、当該車両の複数の仮説を、仮説の予測結果と、当該車両の検出結果とに基づいて更新する。
具体的には、状態更新部209は、重複仮説削除部207により仮説の削除処理を行った後の仮説予測部206による予測結果と、歩行者の検出結果とに基づいて、追跡器と歩行者の検出結果とを対応付け、追跡器の各々について、対応付けされた歩行者の検出結果に基づいて、当該追跡器の複数の仮説の各々の状態量を更新することにより、当該追跡器が表す歩行者の複数の仮説を更新する。
そして、状態更新部209は、追跡している追跡対象物(歩行者又は車両)の各々について、更新した当該追跡対象物の複数の仮説を、状態記憶部205及び衝突可能性判定部210に渡す。
また、状態更新部209は、何れの追跡器とも対応付けられなかった歩行者の検出結果に基づいて、歩行者の複数の仮説を生成し、新たな歩行者の追跡器を生成する。状態更新部209は、何れの追跡器とも対応付けられなかった車両の検出結果に基づいて、車両の複数の仮説を生成し、新たな車両の追跡器を生成する。
また、状態更新部309は、何れの歩行者の検出結果とも対応付けられなかった歩行者の追跡器のうち、観測時刻から一定時間以上経過している追跡器を削除する。状態更新部309は、何れの車両の検出結果とも対応付けられなかった車両の追跡器のうち、観測した時刻から一定時間以上経過している追跡器を状態記憶部205から削除する。
衝突可能性判定部210は、追跡している歩行者の各々について、状態更新部209により更新された当該歩行者の複数の仮説と、更新された車両の複数の仮説とに基づいて、当該歩行者と、車両との衝突可能性を判定する。
具体的には、衝突可能性判定部210は、追跡器が示す歩行者の各々について、状態更新部209により更新された当該歩行者の複数の仮説の位置及び速度と、車両の複数の仮説の位置及び速度とから、当該歩行者と車両が衝突する可能性を算出し、算出した可能性が閾値以上であれば、衝突する可能性があると判定する。
なお、衝突可能性判定部210は、同様に、追跡している車両の各々について、状態更新部209により更新された当該車両の複数の仮説と、更新された他の車両の複数の仮説とに基づいて、当該車両と、他の車両との衝突可能性を判定する。
そして、衝突可能性判定部210は、判定結果を出力部211に渡す。
出力部211は、判定結果を出力する。
<本発明の第1の実施の形態に係る状態推定装置の作用>
次に、図9を参照して、本実施形態の状態推定装置200の状態推定処理ルーチンについて説明する。
まず、ステップS100において、入力部201は、センシング装置100から、センサ情報の入力を受け付ける。
ステップS110において、障害物特定部202は、上記ステップS100により受け付けたセンサ情報に基づいて、障害物領域を特定する。
ステップS120において、遮蔽領域検出部203は、上記ステップS110により特定した障害物領域の情報に基づいて、遮蔽領域を検出する。
ステップS130において、検出部204は、上記ステップS100により受け付けたセンサ情報を用いて、歩行者及び車両を検出する。
ステップS140において、仮説予測部206は、追跡している歩行者の各々について、センサを用いた検出タイミングでの、当該歩行者の複数の仮説を生成すると共に、追跡している車両の各々について、センサを用いた検出タイミングでの、当該車両の複数の仮説を生成する。
ステップS150において、仮説予測部206は、追跡している歩行者の各々について、センサを用いた検出タイミングでの、当該歩行者の複数の仮説を予測すると共に、追跡している車両の各々について、センサを用いた検出タイミングでの、当該車両の複数の仮説を予測する。
ステップS160において、重複仮説削除部207は、追跡している追跡対象物(歩行者、車両)の各々について、当該追跡対象物の複数の仮説から、当該仮説の予測結果が持つ範囲と、同一の追跡対象物の他の仮説が持つ範囲との重複度合いに応じて、当該仮説を削除する。また、重複仮説削除部207は、追跡している追跡対象物の各々について、当該追跡対象物の複数の仮説から、当該仮説の予測結果が持つ範囲と、障害物が存在する範囲との重複度合いに応じて、当該仮説を削除する。
ステップS170において、状態更新部209は、追跡している歩行者の各々について、当該歩行者の複数の仮説を、仮説の予測結果と、歩行者の検出結果とに基づいて更新する。また、状態更新部209は、追跡している車両の各々について、当該車両の複数の仮説を、仮説の予測結果と、車両の検出結果とに基づいて更新する。
ステップS180において、状態記憶部205は、追跡している追跡対象物(歩行者、車両)の各々について、当該追跡対象物の状態を示す仮説を複数格納する。
ステップS190において、衝突可能性判定部210は、追跡している歩行者の各々について、状態更新部209により更新された当該歩行者の複数の仮説と、更新された車両の複数の仮説とに基づいて、当該歩行者と、車両との衝突可能性を判定する。また、衝突可能性判定部210は、追跡している車両の各々について、状態更新部209により更新された当該車両の複数の仮説と、更新された他の車両の複数の仮説とに基づいて、当該車両と、他の車両との衝突可能性を判定する。
ステップS200において、出力部211は、判定結果を出力する。
また、上記ステップS160は、図10に示す重複仮説削除処理ルーチンによって実現される。
ステップS161において、重複仮説削除部207は、追跡している歩行者のうち、1番目の歩行者を選択する。
ステップS162において、重複仮説削除部207は、選択されている歩行者の複数の仮説と、予め作成した静止障害物地図DB208の静止障害物地図を用いて、複数の仮説と障害物との重複度を計算する。
ステップS163において、重複仮説削除部207は、障害物と重複する仮説があるか否かを判定する。
重複する仮説が無い場合(ステップS163のNO)、ステップS165に進む。
一方、重複する仮説がある場合(ステップS163のYES)、ステップS164において、重複仮説削除部207は、重複する仮説を削除する。
ステップS165において、重複仮説削除部207は、複数の仮説の各々について、当該仮説と他の仮説との、仮説同士の重複度を計算する。また、重複仮説削除部207は、複数の仮説の各々について、当該仮説が持つ範囲と障害物領域との重複度を計算する。
ステップS166において、重複仮説削除部207は、計算した重複度に基づいて、重複する仮説があるか否かを判定する。
重複する仮説が無い場合(ステップS166のNO),ステップS168に進む。
一方、仮説同士で重複する仮説がある場合(ステップS166のYES)、ステップS167において、仮説同士で重複する仮説の一方を削除する。また、障害物領域と重複する仮説がある場合(ステップS166のYES)、ステップS167において、障害物領域と重複する仮説を削除する。
ステップS168において、重複仮説削除部207は、全ての歩行者について処理を行ったか否かを判定する。
全ての歩行者について処理を行っていない場合(ステップS168のNO)、ステップS169において、次の歩行者を選択して、ステップS162~S168の処理を繰り返す。
一方、全ての歩行者について処理を行った場合(ステップS168のYES)、リターンする。
また、追跡している車両についても、上記図10に示す重複仮説削除処理ルーチンと同様の処理ルーチンを実行する。
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る状態推定装置によれば、追跡している追跡対象物の各々について、センサを用いた検出タイミングでの、追跡対象物の複数の仮説を予測し、当該追跡対象物の複数の仮説から、当該仮説の予測結果が持つ範囲に応じて、当該仮説を削除し、当該追跡対象物の複数の仮説を、当該仮説の予測結果と、当該追跡対象物の検出結果とに基づいて更新することにより、複雑な交通環境であっても、多様な移動物の状態推定を高速に行うことができる。
<本発明の第2の実施の形態に係る状態推定システムの概要>
第1の実施形態では、仮説を削除する構成としたが、第2の実施の形態では、他の追跡器との関係や、ランドマーク地図との組み合わせによって多様な状態推定を生成する。すなわち、センサにより得られたセンシング結果から推定された仮説から、将来の状態推定を求め、状態推定に対して、他の追跡器との距離に基づいた修正や、ランドマークへの誘因を考慮した修正を行う。
また、予め設定した地図により、仮説生成や状態推定を限定することで、より効果を高めることができる。
<本発明の第2の実施の形態に係る状態推定システムの構成>
本発明の第2の実施の形態に係る状態推定システム20の構成について説明する。なお、第1の実施の形態に係る状態推定システム10と同様の構成については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図11に示すように、本発明の実施の形態に係る状態推定システム20は、センシング装置100と、状態推定装置300とを備えて構成される。本実施形態では、交通環境が駐車場であり、追跡対象物が歩行者及び車両である場合を例に説明する(図3)。また、センシング装置100が、車両上に設置される場合を例に説明する(図3)。
センシング装置100は、移動物の位置・速度の推定に必要な情報を計測する。
具体的には、センシング装置100は、カメラ、レーザーレーダ、電波受信機等のセンサを用いて、車両及び歩行者の位置・速度の推定に有益な情報を計測する。また、センシング装置100は、センサにより、自車両の運動を表わすセンサ情報を計測する。
そして、センシング装置100は、計測したセンサ情報を、状態推定装置200の入力部201に渡す。
図11に示すように、状態推定装置300は、入力部201と、障害物特定部302と、遮蔽領域検出部203と、検出部204と、状態記憶部205と、仮説予測部306と、予定経路DB312と、近傍仮説修正部313と、ランドマーク修正部314と、ランドマーク地図DB315と、状態更新部309と、衝突可能性判定部310と、出力部211とを備えて構成される。
障害物特定部302は、センサ情報に基づいて、障害物領域を特定する。
具体的には、障害物特定部302は、センシング装置100が車両に設置されている場合には、当該車両の運動推定結果を用いて占有格子地図に対する投票を行うことにより、障害物領域を特定する。
そして、障害物特定部302は、特定した障害物領域の情報を遮蔽領域検出部203及び近傍仮説修正部313に渡す。
遮蔽領域検出部203は、障害物領域の情報に基づいて、遮蔽領域を検出する。
具体的には、遮蔽領域検出部203は、センシング装置100が車両に設置されている場合には、レーザーレーダにより計測された点群を投票することにより得られる占有格子地図に、カメラ画像による歩行者や車両の検出結果を投影し、移動物による遮蔽と、静止物による遮蔽を分離することにより、遮蔽領域を検出する。
そして、遮蔽領域検出部203は、検出した遮蔽領域の情報を、仮説予測部206に渡す。
仮説予測部306は、追跡している追跡対象物の各々について、センサを用いた検出タイミングでの、当該追跡対象物の複数の仮説を予測する。
具体的には、仮説予測部306は、全ての追跡器内の仮説に対して、カルマンフィルタの予測ステップ(線形予測/共分散拡大)を設定されたステップ数だけ繰り返すことにより、当該追跡器の将来の移動可能範囲を予測する。このとき、車両の追跡器については、予定経路DB312に格納された当該車両の移動する経路であって、検出結果と同じ座標系で定義されたものである予定経路の範囲に限定して、車両の複数の仮説を予測する。
そして、仮説予測部306は、追跡している追跡対象物の各々についての予測結果を、状態更新部309、近傍仮説修正部313、及びランドマーク修正部314に渡す。また、仮説予測部306は、遮蔽領域検出部203が検出した遮蔽領域を、近傍仮説修正部313に渡す。
予定経路DB312は、予定経路を格納している。
近傍仮説修正部313は、追跡している追跡対象物の各々について、当該追跡対象物の仮説の予測結果が持つ範囲と、他の追跡対象物の仮説が持つ範囲との重複度合い、及び当該追跡対象物の仮説の予測結果が持つ範囲と、障害物との重複度合いに応じて、当該追跡対象物の仮説の修正量を求める。
具体的には、まず、近傍仮説修正部313は、各追跡器同士、及び各追跡器と障害物とのユークリッド距離を算出し、追跡器の各々について、当該追跡器と最も距離が近い他の追跡器又は障害物との組を抽出する。
例えば、最も近い2つの追跡器の組(追跡器aと追跡器b)が抽出されたとする(図12)。
次に、近傍仮説修正部313は、抽出した組において、追跡器aの複数の仮説と、追跡器bの複数の仮説との組み合わせの各々についてKLDを計算し、下記式(7)及び(8)を用いて、最もKLDが短い仮説同士を求める(図13)。
ここで、i*は、追跡器aの仮説のうち、最も追跡器bに近い仮説のIDであり、j*は、追跡器bの仮説のうち、最も追跡器aに近い仮説のIDである。
そして、近傍仮説修正部313は、最小のKLDを増大させる勾配方向の、すなわち、異なる追跡器内の仮説同士が互いに回避するような各仮説の修正量を求める。近傍仮説修正部313は仮説xai
*と仮説xbj
*とのKLDであるKLDai
*
bj
*及びKLDbj
*
ai
*が大きくなるように、下記式(9)及び式(10)を用いて修正する(図14)。
ここで、
は、仮説x
aiの修正量であり、
は、仮説x
bjの修正量である。
なお、当該修正量を用いて仮説を修正すると、図15に示すように、追跡器aと追跡器bの仮説が回避するように、仮説が修正されることになる。
また、近傍仮説修正部313は、最も距離が近い追跡器と障害物との組を抽出した場合にも、上記と同様に修正量を求める。
具体的には、追跡器の複数の仮説の各々について、障害物とのKLDを計算し、最もKLDが短い仮説を求め、最小のKLDを増大させる勾配方向の、すなわち、当該追跡器の複数の仮説が回避するような各仮説の修正量を求める。
そして、近傍仮説修正部313は、追跡している追跡対象物の各々について、当該追跡対象物の複数の仮説の修正量を、状態更新部309に渡す。
ランドマーク地図DB315は、歩行者や車両を誘引し得るようなランドマークの交通環境上の位置を格納する。例えば、図3において、歩行者出入口は歩行者を誘引し得るようなランドマークであり、車両出入口は車両を誘引し得るようなランドマークである。
ランドマーク修正部314は、追跡している歩行者の各々について、当該歩行者の仮説の予測結果と、予め定められたランドマークの位置との距離に応じて、当該歩行者の仮説を修正する。
具体的には、ランドマーク修正部314は、ランドマーク地図DB315に格納された歩行者についてのランドマークの位置により、追跡している歩行者の各々について、当該歩行者の仮説を修正する修正量を求める。
まず、ランドマーク修正部314は、近傍仮説修正部313と同様に、追跡器とランドマークとの距離が最も短いランドマークを選択する。なお、追跡器とランドマークとの距離が閾値以下のランドマークのうち、最も短いランドマークを選択する構成としてもよい。
例えば、ランドマークが歩行者出入口の場合(図16)に、ランドマーク修正部314は、追跡器aとランドマークとの距離が閾値以下のランドマークを選択する。なお、閾値以下のランドマークが複数ある場合には、一番距離が近いランドマークを選んで修正する。
次に、ランドマーク修正部314は、追跡器aの各仮説を基準として、選択したランドマークlとのKLDを計算し、下記式(11)を用いてランドマークlとのKLDが最も小さい仮説xai
*を求める(図17)。
ここで、i*は、追跡器aの仮説のうち、最もランドマークlに近い仮説のIDである。
そして、ランドマーク修正部314は、最小のKLDを減少させる勾配方向の修正量を求める。すなわち、仮説xai
*とランドマークlとのKLDであるKLDlj
*
ai
*が小さくなるように、下記式(12)を用いて仮説xai
*の修正量を求める(図18)。
他の追跡器、例えば追跡器bの各仮説についても、下記式(13)及び(14)を用いて同様に修正する。
また、ランドマーク修正部314は、追跡している車両の各々について、当該車両の仮説の予測結果と、予め定められたランドマークの位置との距離に応じて、当該車両の仮説を修正する。この場合、ランドマーク地図DB315に格納された車両についてのランドマークの位置を用いて、歩行者の場合と同様に仮説を修正する。
そして、ランドマーク修正部314は、追跡している追跡対象物の各々について、当該追跡対象物の複数の仮説の修正量を、状態更新部309に渡す。
状態更新部309は、追跡している歩行者の各々について、当該歩行者の複数の仮説を、仮説の予測結果と、仮説の修正量と、歩行者の検出結果とに基づいて更新する。
具体的には、状態更新部309は、歩行者の追跡器の各々についての、近傍仮説修正部313により得られた修正量
と、ランドマーク修正部314によって得られた修正量
とを、仮説予測部306による当該追跡器の各仮説の予測結果に適用した結果と、歩行者の検出結果とに基づいて、追跡器と歩行者の検出結果とを対応付け、追跡器の各々について、対応付けされた歩行者の検出結果に基づいて、当該追跡器の複数の仮説の各々の状態量を更新することにより、当該追跡器が表す歩行者の複数の仮説を更新する。
まず、状態更新部309は、仮説毎に、近傍仮説修正部313により得られた修正量
と、ランドマーク修正部314によって得られた修正量
とを、合成した仮説x
aiの修正量
を、下記式(15)を用いて計算する(図19)。
なお、修正量を加算合成する場合に、重みηを付けてもよい。仮説毎に重みηに異なる値を設定してもよいし、加算合成する際に重みηを設けてもよい。
次に、状態更新部309は、仮説毎に、仮説予測部306により予測された仮説x
aiの状態量と共分散を、修正量
を用いて修正する(下記式(16)~(18)、図20、21)。
次に、状態更新部309は、修正後の歩行者の追跡器の仮説と、歩行者の検出結果とに基づいて、歩行者の追跡器と歩行者の検出結果とを対応付け、歩行者の追跡器の各々について、対応付けされた歩行者の検出結果に基づいて、当該追跡器の複数の仮説の各々の状態量を更新する。
同様に、状態更新部309は、車両の追跡器の各々についての、近傍仮説修正部313により得られた修正量を、仮説予測部306による当該追跡器の各仮説の予測結果に適用した結果と、車両の検出結果とに基づいて、車両の追跡器と車両の検出結果とを対応付け、追跡器の各々について、対応付けされた車両の検出結果に基づいて、当該追跡器の複数の仮説の各々の状態量を更新することにより、当該追跡器が表す車両の複数の仮説を更新する。
そして、状態更新部309は、追跡している追跡対象物の各々について、更新した当該追跡対象物の複数の仮説を、状態記憶部205及び衝突可能性判定部210に渡す。
また、状態更新部309は、何れの追跡器とも対応付けられなかった歩行者の検出結果に基づいて、歩行者の複数の仮説を生成し、新たな歩行者の追跡器を生成する。状態更新部309は、何れの追跡器とも対応付けられなかった車両の検出結果に基づいて、車両の複数の仮説を生成し、新たな車両の追跡器を生成する。
また、状態更新部309は、何れの歩行者の検出結果とも対応付けられなかった歩行者の追跡器のうち、最後に観測した時刻から一定時間以上経過している追跡器を削除する。状態更新部309は、何れの車両の検出結果とも対応付けられなかった車両の追跡器のうち、最後に観測した時刻から一定時間以上経過している追跡器を状態記憶部205から削除する。
衝突可能性判定部310は、追跡している歩行者の各々について、状態更新部309により更新された当該歩行者の複数の仮説と、自車両の運動を表すセンサ情報とに基づいて、自車両と、当該歩行者との衝突可能性を判定する。
具体的には、衝突可能性判定部310は、追跡している歩行者の各々について、状態更新部309により更新された当該歩行者の複数の仮説の位置及び速度と、自車両の位置及び速度とから、当該歩行者と自車両とが衝突する可能性を算出し、算出した可能性が閾値以上であれば、衝突する可能性があると判定する。
また、衝突可能性判定部310は、追跡している車両の各々について、歩行者と同様に、状態更新部309により更新された当該車両の複数の仮説と、自車両の運動を表すセンサ情報とに基づいて、自車両と、当該車両との衝突可能性を判定する。
そして、衝突可能性判定部310は、判定結果を出力部211に渡す。
<本発明の第2の実施の形態に係る状態推定装置の作用>
図22は、本発明の第2の実施の形態に係る状態推定処理ルーチンを示すフローチャートである。なお、第1の実施の形態に係る状態推定処理ルーチンと同様の処理については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
ステップS300において、近傍仮説修正部313は、追跡している追跡対象物の各々について、当該追跡対象物の仮説の予測結果が持つ範囲と、他の追跡対象物の仮説が持つ範囲との重複度合い、及び当該追跡対象物の仮説の予測結果が持つ範囲と、障害物との重複度合いに応じて、当該追跡対象物の仮説の修正量を求める。
ステップS310において、ランドマーク修正部314は、追跡している追跡器の各々について、当該追跡器の仮説の予測結果と、予め定められたランドマークの位置との距離に応じて、当該追跡器の仮説を修正量を求める。
ステップS320において、状態更新部309は、上記ステップS300により得られた修正量と、上記ステップS310により得られた修正量とを合成した仮説の修正量を用いて、上記ステップS150により予測された仮説の状態と共分散を修正する。
また、上記ステップS300は、図23に示す近傍仮説修正量算出処理ルーチンによって実現される。
ステップS301において、近傍仮説修正部313は、追跡している歩行者の各追跡器同士、及び歩行者の各追跡器と障害物とのユークリッド距離を算出する。
ステップS302において、近傍仮説修正部313は、最も近い2つの追跡器の組を抽出する。
ステップS303において、抽出した組において、追跡器aの複数の仮説と、追跡器bの複数の仮説との組み合わせの各々についてKLDを計算し、最もKLDが短い仮説同士を求め、最小のKLDを増大させる勾配方向の修正量を求め、リターンする。
また、追跡している車両についても、上記図23に示す近傍仮説修正量算出処理ルーチンと同様の処理ルーチンを実行する。
また、上記ステップS310は、図24に示すランドマーク修正量算出処理ルーチンによって実現される。
ステップS311において、ランドマーク修正部314は、ランドマーク地図DB315に格納されたランドマークを取得する。
ステップS312において、ランドマーク修正部314は、追跡している歩行者のうち、1番目の歩行者を選択する。
ステップS313において、ランドマーク修正部314は、選択している歩行者とランドマークとの距離が最も短いランドマークを選択する。
ステップS314において、ランドマーク修正部314は、最小のKLDを減少させる勾配方向の修正量を求める。
ステップS315において、ランドマーク修正部314は、全ての歩行者について処理を行ったか否かを判定する。
全ての歩行者について処理を行っていない場合(ステップS315のNO)、ステップS316において、次の歩行者を選択して、ステップS313~S315の処理を繰り返す。
一方、全ての歩行者について処理を行っている場合(ステップS315のYES)、リターンする。
また、追跡している車両についても、上記図24に示すランドマーク修正量算出処理ルーチンと同様の処理ルーチンを実行する。
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る状態推定装置によれば、追跡している追跡対象物の各々について、センサを用いた検出タイミングでの、追跡対象物の複数の仮説を予測し、当該追跡対象物の複数の仮説から、当該仮説の予測結果が持つ範囲と、他の追跡対象物の仮説が持つ範囲との重複度合い、又は当該仮説の予測結果が持つ範囲と、障害物との重複度合いに応じて、当該仮説を修正し、当該追跡対象物の複数の仮説を、当該仮説の修正結果と、当該追跡対象物の検出結果とに基づいて更新することにより、複雑な交通環境であっても、多様な移動物の状態推定を精度よく行うことができる。
<本発明の第3の実施の形態に係る状態推定システムの概要>
第1の実施形態では、仮説を削除する構成、第2の実施の形態では、仮説を修正する構成としたが、本実施形態では、これを組み合わせた構成について説明する。削除と修正量の順は任意の構成とすることができるが、本実施形態では、仮説を削除した後に、修正量を算出する。
また、第1の実施形態及び第2の実施形態では、カルマンフィルタのKLDを用いて仮説の削除・修正を行ったが、本実施形態では、予測後の仮説に一定の大きさを想定することにより、仮説の削除・修正を行う。
<本発明の第3の実施の形態に係る状態推定装置の構成>
本発明の第3の実施の形態に係る状態推定システム30の構成について説明する。なお、第1の実施の形態に係る状態推定システム10及び第2の実施の形態に係る状態推定システム20と同様の構成については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図25に示すように、本発明の実施の形態に係る状態推定システム30は、センシング装置100と、状態推定装置400とを備えて構成される。本実施形態では、第2の実施形態と同様に、交通環境が駐車場であり、追跡対象物が歩行者及び車両であり、センシング装置100が、車両上に設置される場合を例に説明する(図3)。
図25に示すように、状態推定装置400は、入力部201と、障害物特定部302と、遮蔽領域検出部203と、検出部204と、状態記憶部205と、仮説予測部306と、予定経路DB312と、重複仮説削除部407と、静止障害物地図DB208と、近傍仮説修正部413と、ランドマーク修正部414と、ランドマーク地図DB315と、状態更新部309と、衝突可能性判定部310と、出力部211とを備えて構成される。
重複仮説削除部407は、追跡している追跡対象物の各々について、当該歩行者の複数の仮説から、当該仮説の予測結果が持つ範囲と、同一の追跡対象物の他の仮説が持つ範囲との重複度合いに応じて、当該仮説を削除する。
具体的には、重複仮説削除部407は、追跡対象物の複数の仮説の各々について、当該仮説が示す位置を中心とする予め定めた半径の円と、同一の追跡対象物の他の仮説が示す位置を中心とする当該半径の円の各々との交点を算出し、当該仮説の円内に存在する交点を数える。
例えば、図26のように、中央に位置する仮説は円内に交点が16個含まれ、他の仮説は円内に13個の交点が含まれている。
次に、重複仮説削除部407は、円内に閾値以上の交点を含む仮説を削除する。例えば、閾値を15個とすると、図26における中央に位置する仮説を削除する(図27)。
そして、重複仮説削除部407は、追跡している追跡対象物の各々について、仮説の削除処理を行った後の仮説予測部206による予測結果を、状態更新部309、近傍仮説修正部413及びランドマーク修正部414に渡す。
近傍仮説修正部413は、追跡している追跡対象物の各々について、当該追跡対象物の複数の仮説の各々に対し、当該仮説の予測結果が持つ範囲と、他の追跡対象物の仮説が持つ範囲との重複度合い、及び当該仮説の予測結果が持つ範囲と、障害物との重複度合いに応じて、当該仮説の修正量を求める。
具体的には、まず、近傍仮説修正部413は、各追跡器同士のユークリッド距離を算出し、最も近い2つの追跡器の組(追跡器aと追跡器b)を抽出する(図12)。
次に、近傍仮説修正部413は、抽出した追跡器a及び追跡器bの組における一方の追跡器aの複数の仮説の各々について、当該仮説が示す位置を中心とする予め定めた半径の円と、他方の追跡器bの各仮説が示すが位置を中心とする円の各々との交点を算出し、各円内に存在する交点を数える(図28)。同様に、追跡器bの複数の仮説の各々についても、各円内に存在する交点を数える。
また、近傍仮説修正部413は、一方の追跡器aの複数の仮説の各々について、他方の追跡器bの仮説のうち、最も近い仮説を特定する。例えば、図28において、追跡器aの仮説xa2については、追跡器bの仮説xb2が最も近い仮説である。同様に、追跡器bの複数の仮説の各々について、追跡器aの仮説のうち、最も近い仮説を特定する。
その後、近傍仮説修正部413は、一方の追跡器aの複数の仮説の各々について、最も近い仮説へのベクトルの反対方向のベクトルに対して、当該仮説の円内に存在する交点の数及び定係数を乗じて、当該仮説の修正量を算出する(図29)。同様に、追跡器bの複数の仮説の各々について、最も近い仮説へのベクトルの反対方向のベクトルに対して、当該仮説の円内に存在する交点の数及び定係数を乗じて、当該仮説の修正量を算出する。
また、近傍仮説修正部413は、追跡対象物の追跡器の各々について、当該追跡器の複数の仮説の各々に対し、当該仮説が示す位置を中心とする予め定めた半径の円と、最も近い障害物領域との交点を算出し、各円内に存在する交点を数える。
そして、近傍仮説修正部413は、追跡対象物の追跡器の各々について、当該追跡器の複数の仮説の各々に対し、最も近い障害物領域の中心へのベクトルの反対方向のベクトルに対して、当該仮説の円内に存在する交点の数及び定係数を乗じて、当該仮説の修正量を算出する。
そして、近傍仮説修正部413は、追跡している追跡対象物の各々について、当該追跡対象物の複数の仮説の修正量を、状態更新部309に渡す。
ランドマーク修正部414は、追跡している追跡対象物の各々について、当該仮説の予測結果と、予め定められたランドマークの位置との距離に応じて、当該仮説を修正する。
具体的には、まず、ランドマーク修正部414は、追跡器の複数の仮説の各々について、当該仮説を中心とする予め定めた半径の円と、ランドマーク地図DB315に格納されたランドマークlを中心とする予め定めた半径の円との交点を算出し、当該仮説を中心とする円内に存在する交点を数える(図30)。
また、ランドマーク修正部414は、追跡対象物の追跡器の各々について、当該追跡器の複数の仮説の各々に対し、ランドマークlの中心へのベクトルに対して、当該仮説の円内に存在する交点の数及び定係数を乗じて、当該仮説の修正量を算出する(図31)。
そして、ランドマーク修正部414は、追跡している追跡対象物の各々について、当該追跡対象物の複数の仮説の修正量を、状態更新部309に渡す。
<本発明の第3の実施の形態に係る状態推定装置の作用>
図32は、本発明の第3の実施の形態に係る状態推定処理ルーチンを示すフローチャートである。なお、第1の実施の形態に係る状態推定処理ルーチン及び第2の実施の形態に係る状態推定処理ルーチンと同様の処理については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る状態推定装置によれば、追跡している追跡対象物の各々について、センサを用いた検出タイミングでの、追跡対象物の複数の仮説を予測し、当該追跡対象物の複数の仮説から、当該仮説の予測結果が持つ範囲と、同一の追跡対象物の他の仮説が持つ範囲との重複度合いに応じて、当該仮説を削除し、当該追跡対象物の複数の仮説から、当該仮説の予測結果が持つ範囲と、他の追跡対象物の仮説が持つ範囲との重複度合い、又は当該仮説の予測結果が持つ範囲と、障害物との重複度合いに応じて、当該仮説を修正することにより、複雑な交通環境であっても、多様な移動物の状態推定を高速かつ精度よく行うことができる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
例えば、センシング装置100は、第1の実施形態において、移動しない場所に設置される場合について説明したが、移動物上に設置されてもよい。また、センシング装置100は、第2、第3の実施形態において、移動物上に設置される場合について説明したが、移動しない場所に設置されてもよい。
また、第3の実施形態において、仮説を中心とした予め定めた半径の円の交点を用いたが、所定の距離内の仮説やランドマークを算出して、仮説の削除、修正を行ってもよい。
また、第2の実施形態及び第3の実施形態において、近傍仮説修正部は、追跡している歩行者の各々について、当該歩行者の複数の仮説から、当該仮説の予測結果が持つ範囲と、他の歩行者の仮説が持つ範囲との重複度合い、及び当該仮説の予測結果が持つ範囲と、障害物との重複度合いに応じて、当該仮説の修正量を求めたが、当該仮説の修正量を、当該仮説の予測結果が持つ範囲と、他の歩行者の仮説が持つ範囲との重複度合い、又は当該仮説の予測結果が持つ範囲と、障害物との重複度合いに応じて求める構成としてもよい。
また、上記第1の実施形態、第2の実施形態において、第3の実施形態と同様に、予測後の仮説に一定の大きさを想定することにより、仮説の削除・修正を行う方法を適用してもよい。
また、本願明細書中において、プログラムが予めインストールされている実施形態として説明したが、当該プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。