JP7050300B2 - 建て替え工法 - Google Patents
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Description
まず、騒音の規制の問題がある。騒音の規制は特に夜間の騒音については当然に厳しい。したがって、特に街中においては、24時間工事を継続するのが難しく、殊に夜間においては、24時間工事を継続することが殆ど不可能であるというのが現状である。
次に、天候に基づいて生じる問題がある。工事は、例えば雨天の場合には中止(延期)されることが多い。その理由は、例えば、作業者の安全性確保というものであり、工事の際に行われる液状のコンクリートを打設してそれを硬化させるような作業を雨天時に行うのが難しいというものである。工事の中止があると、当然に工期は伸び、工事にかかる費用が増大する。また、建て替えによって作られる構造物が特にビルディングである場合には、当該構造物には、地下室、地下道等が典型的な例となる、構造物の地下部分である構造体が存在するのが殆ど当たり前になっている。このような地下の構造体を有する構造物においては、地面を掘下げて形成された地下空間の中で工事を行うことが必要となるが、そのような地下空間の中での作業には、雨の影響が地上での作業よりも大きく生じる。例えば降った雨が地下に溜まると地下水の撤去が必要である。また、地下掘削の進行に伴って強固な構台の構築が必要になるが、小雨の日でも感電事故の危険があるので構台の補強溶接の作業ができないために掘削工事が止まってしまい工期遅延が生じる場合がある。
また、労働環境の規制についての問題がある。近年においては、騒音についての規制だけでなく、工事現場で働く労働者の労働環境についての規制も益々厳しくなっている。例えば、労働者に十分な休養、休日を与えることが、労働者を雇用する企業に厳しく義務付けられるようになってきている。もちろん多くの労働者を集めることができ、例えば三交代で労働者に労働を行わせることができれば、毎日24時間継続して工事を行わせることは可能であろうが、そのようなことをした場合に、上述した工事の中止があると、人件費は膨れ上がる。
これらの理由から、工期の短縮は難しい。
本願発明は、所定の対象範囲に建てられた構造物である旧構造物を解体して、当該対象範囲に、地下に構造体を有する新しい構造物である新構造物を建てる建て替え工法である。
かかる建て替え工法は、前記旧構造物の所定の高さより上の地上部分である第1旧地上部分を解体する第1旧地上部分解体過程と、前記第1旧地上部分解体過程の後に実行される前記旧構造物の所定の高さより下の地上部分である第2旧地上部分を解体する第2旧地上部分解体過程と、前記第2旧地上部分解体過程の後に実行される前記対象範囲を掘り下げた部分に作業員が降りることを要する、少なくとも前記新構造物の構造体を構築する作業を実行する地下工事実行過程と、前記新構造物の地上部分を構築する地上部分構築過程と、を含んでいる。そして、かかる建て替え工法では、前記第1旧地上部分解体過程が終わるまでに、前記対象範囲を略前記所定の高さまで、平面視矩形の仮設テントの壁で覆うとともに、前記第2旧地上部分解体過程が開始される前に、前記壁の上に前記仮設テントの屋根を設けることで前記対象範囲を閉鎖的に覆う前記仮設テントを完成させ、前記第2旧地上部分解体過程、及び前記地下工事実行過程を前記仮設テントで囲まれた閉鎖的な空間内で実行する。
この建て替え工法では、前記第1旧地上部分解体過程が終わるまでに、前記対象範囲を略前記所定の高さまで、平面視矩形の仮設テントの壁で覆う。壁は、第1旧地上部分解体過程が終わるまでに作られる。第1旧地上部分解体過程は、旧構造物のうち上述の所定の高さよりも上に位置する部分を解体する過程である。つまり、第1旧地上部分解体過程は、仮設テントの壁の構築の進捗とは無関係に実行される。第1旧地上部分解体過程で実行される旧地上部分の解体方法は、従来技術と同様で構わない。なお、仮設テントの壁は、第1旧地上部分解体過程が実行されている間、或いは第1旧地上部分解体過程が実行される前に構築される。したがって、第1旧地上部分解体過程のうちの少なくとも後半から一定の作業が実行されているときには既に、仮設テントの壁が構築されている。第1旧地上部分解体過程で解体されるのは、仮設テントの壁の上側であるから、仮設テントの壁は、騒音対策にはそれ程寄与しないものの、少なくとも美観の観点から見れば十分に機能する。
この建て替え工法では、第2旧地上部分解体過程が開始される前に、壁の上に仮設テントの屋根を設けることで対象範囲を閉鎖的に覆う仮設テントを完成させる。そして、本願発明の建て替え工法では、第2旧地上部分解体過程、及び地下工事実行過程を、仮設テントで囲まれた閉鎖的な空間内で実行する。これらのうち、第2旧地上部分解体過程は、旧構造物のうち比較的地表から近い部分の解体を行うものであるため、騒音の問題が生じ易い。仮設テント内で第2旧地上部分解体過程を実行することとすれば、仮設テントの遮音性に関する構造にもよるが、周囲への音漏れを減少させることが可能となるため、第2旧地上部分解体過程における工事を夜間も含めて実行できる可能性がある。地下工事実行過程を仮設テント内で行うことによっても、地下工事実行過程を実行することによって生じる騒音の漏れ出しを防止できるから、地下工事実行過程も夜間を含めて実行できるようになる可能性がある。これも工期の短縮に寄与する。加えて、第2旧地上部分解体過程と地下工事実行過程とを仮設テントの内部で実行することとすれば、仮に雨天のときであっても、第2旧地上部分解体過程及び地下工事実行過程における作業をドライ環境下でのドライ施工として実行することが可能となる。これによっても工期の短縮が実現される。特に、地下工事実行過程は、雨天による影響を最も受けやすい。かかる地下工事実行過程を、仮設テント内で実行することとすることにより、本願の建て替え工法によれば、天候の影響を最小限に押さえつつ、予定された工期通りに地下工事実行過程を実行することができるようになる。予定通りに地下工事実行過程を実行することが可能となるということは、それ自体が工期短縮に寄与するばかりでなく、雨天により工事が中止になったときにおいて確保しておいた作業員の人件費が無駄に発生するという事態が発生することを防止することができるようになる。なお、地下工事実行過程は一般に、第1旧地上部分解体過程、第2旧地上部分解体過程、及び地上部分構築過程よりも相対的に施工の期間が長い。したがって、その長い地下工事実行過程に要する時間を短縮することにより、建て替え工法を実施する全体の期間を大きく短縮することができる。
仮設テントは、骨組みとなる骨材とそれを覆う、或いは骨材の間に張り渡されるシートとを備え、その構成自体は従来のものと同じで良い。シートは、雨の侵入を防止するため防水性を有する必要があり、特に日中の作業性を確保するために透光性を有するのが好ましく、また、遮音性を有するのが好ましい。
もっとも、地下工事実行過程は、他の過程を含んでも良い。例えば、通常、新構造物を支持するための杭(例えば、場所打ち杭)は、地上から打たれるから杭を打つ作業は地下工事実行過程には含まれない。しかし、前記地下工事実行過程は、前記新構造物を支持する場所打ち杭を打つ過程を含んでも良い。つまり、この建て替え工法において、場所打ち杭は、対象範囲を掘下げて形成された地下空間の底から打たれても良い。場所打ち杭の打込みに用いられる工法は、従来工法で構わない。
例えば、仮設テントの前記壁のうち、平面視した場合に互いに平行な2つの上端に、当該2つの壁の上端に沿う屋根レールを配する。そして、前記壁の上に前記仮設テントの前記屋根を設ける作業を、前記屋根レールの長さ方向で前記屋根を複数に分割した物に相当する分割屋根を、前記屋根レールの一端側の上で次々に作り、前記屋根レールの一端側で組上げられた前記分割屋根のうち少なくとも最後に作られるもの以外のものを、前記屋根レールの上で前記屋根レールの他端側に送り、新たな前記分割屋根を、その分割屋根の前記屋根レールの他端側に位置する前記分割屋根と接続する、ことにより行うことができる。
上述の分割屋根を構築する場合、分割屋根は高所で構築されることになるから、高所での作業を行うことができる重機、例えばクレーン車が必要となる。分割屋根を屋根レールの一端側で構築し、それを屋根レールの他端側に移動させることにすれば、クレーン車の如き重機を配置すべき場所を屋根レールの一端側付近に固定することができる。これは、建て替え工法が行われる対象範囲の周囲に十分な用地がない場合に有利である。上述の屋根レールの一端側から他端側に重機を移動させながら屋根を構築しようとした場合に、そのような重機の移動が行えないことがあり得る。分割屋根を移動させることにすれば、そのような不具合は生じ難い。
このようにすれば、同じものである多数の分割屋根を繰返し構築することになるので、作業効率の向上が見込まれる。最後に作られる分割屋根は、それ以前に作られる分割屋根と同じものであっても良いが、最終的に構築される仮設テントの屋根の屋根レールの長さ方向の長さとの関係で、他の分割屋根とはその長さが異なる場合があり得る。「前記分割屋根のそれぞれを、最後に作られるものを除いて同じものとする」というのは、そのようなことがあり得るということを意味している。
壁を旧構造物と固定する、いわゆる壁つなぎを行うことで、屋根が存在する前の状態でも壁を安定した状態で直立させることが可能となる。
この実施形態では、旧構造物は、地下に構造体を有する。旧構造物は、その構造体ごと解体される。また、新たに立てられる新構造物は、地下に構造体を有する。
旧構造物10は、これには限られないが、この実施形態では、いわゆるセットバックされた1つのビルディングである。旧構造物10は、地表より上の部分である旧地上部分10Aを備えるが、旧地上部分10Aは、所定の高さまでの低層部10Lと、所定の高さより上の高層部10Hとからなる。低層部10Lの床面積は高層部10Hより広い。低層部10Lの縁は、その全周にわたって高層部10Hの縁から食み出た状態となっている。低層部10Lは例えば商用施設フロアに対応し、高層部10Hは例えばオフィスフロアに対応している。
旧構造物10は、上述した構造体である地下に位置する旧地下部分10Bを備えている。旧地上部分10Aは、公知或いは周知のビルディングの地上部分であり、旧地下部分10Bは、公知或いは周知のビルディングの地下部分である。旧地下部分10Bは典型的には、地下室、地下通路である。
ビルディングである旧構造物10は、道路15で囲まれた一区画に建てられている(図1)。当該区画においてXの符号が付された網掛けされている範囲が、後に新たな構造物であり、これもこれには限られないが1つのビルディングである新構造物が建てられる範囲であり、本願発明における対象範囲に相当する。後述する場所打ち杭は、この対象範囲内の全域に、複数本、必要に応じて打たれることになる。これには限られないが、対象範囲Xは、この実施形態では、図1において左右方向に長い、横長の矩形である。
図3に示したように、旧構造物10の旧地下部分10Bの下には、旧構造物10を支えていた杭である旧杭10Cが存在している。旧杭10Cは、場所打ち杭であるか否かを問わない。
旧構造物10の解体は、その旧地上部分10Aから行う。旧地上部分10Aの解体は、従来工法によることができる。
柱221は、鉛直方向に伸びる棒状の部材であり、仮設テント乃至シート230を支える骨材として機能する。柱221は、その下端が図示を省略の柱基礎に固定されている。柱基礎は、壁W乃至仮設テントが風に煽られて移動しないようにするためのものであり、それが可能な限りどのように構成されていても構わず、公知或いは周知の構成をそれに採用することができる。柱基礎は、例えばコンクリートのブロックにより構成されており、或いはH鋼の如き鉄製の鋼材により構成されている。
柱221は、上下方向に伸びる棒状の部材であるが、1本の棒状体で構成されている必要はなく、複数の部材を例えばトラス構造となるように組合せて構成されていても良い。例えば柱221は、平面視した場合に所定の正方形の4つの頂点上にその下端が位置する、鉛直方向に伸びる4本の棒状体である副柱と、それら副柱をトラス構造となるように互いに接続してなる棒状の補強材とを組合せて構成されていても構わず、これには限られないがこの実施形態ではそうされている。
柱221は、対象範囲Xの所定の2辺の外側に沿って所定の間隔で立てられる(図5参照)。隣接する2本の柱221の間の間隔は、すべての部分で同一でも良いし、そうでなくても良いが、この実施形態では、隣接する2本の柱221の間隔はすべての部分で同一となるようになっている。
シート230は、隣接する柱221の間に張り渡される。シート230は、例えば、樹脂製のシート、或いは、繊維による織物又は編物の少なくとも一方の面を樹脂でコーティングしたシートとすることができる。シート230を構成する樹脂の例は、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン等であり、その厚さは、例えば0.5mm~2.0mmである。シート230は、巻取り又は折畳みが可能とされているが、この実施形態ではその双方が可能とされている。シート230は、必ずしも1枚ものである必要はなく、複数枚のシート材を熱融着などによって貼り合わせたものであってももちろん構わない。なお、シート230は、仮設テント200の中の明るさを保つためにある程度の透光性を持つのが好ましく、また、仮設テント200内で行われる作業に基づく音が仮設テント200外に漏れるのを防止するために、ある程度の遮音性を有するのが好ましい。主に、遮音性を向上させる目的で、シート230を二重構造にすることも可能である。また、シート230の選択には、耐候性等必要な機能が勘案される。シート230の性状は、後述するシート240にも妥当する。
図5において、平面視矩形の対象範囲Xの長辺に沿って立てられた多数の柱221のうちの隣接する2本の柱221の間に張り渡されるシート230は、それら2本の柱221に挟まれた矩形の範囲に相当する形状、大きさとされた縦方向に長尺の矩形である。対象範囲Xの長辺に沿って立てられた多数の柱221のうちの隣接する2本の柱221の間のすべての部分に、そのような矩形のシート230が張り渡される。2本の柱221の間にシート230を張り渡す、或いはシート230の幅方向の縁を2本の柱221に固定する方法は、公知或いは周知の方法によれば良いので、詳しい説明を省略する。
また、図5において、平面視矩形の対象範囲Xの短辺に沿ってもシート240が張り渡される。シート240は、対象範囲Xに沿って立てられた複数の柱221のうちのもっとも端にあるもの同士の間に張り渡される。この実施形態におけるシート240は矩形である。当該2本の柱221の間にシート240を張り渡す、或いはシート240の幅方向の縁を当該2本の柱221に固定する方法は、公知或いは周知の方法によれば良い。
シート240には必要に応じて、少なくとも一つの開閉可能な扉241が設けられる。扉241は、重機や作業者が仮設テント200に出入りするためのものであり、その構成は、公知或いは周知技術に倣えばよい。
以上のようにしてシート230と、シート240が張られた結果、対象範囲Xは、壁Wによって囲まれた状態となる。壁Wに囲まれた空間の中には、旧構造物10のうちの低層部10Lが残った状態となる。
ここで、壁Wは、図4に示されたように壁繋ぎ材260によって、旧構造物10の低層部10Lに接続される。壁繋ぎ材260は、壁Wと旧構造物10の低層部10Lとを接続する機能を有するものであり、それが可能な限りどのように構成されていても構わない。壁繋ぎ材260の存在により、壁Wが安定して自立することになる。もっとも、後述する屋根が壁Wの上に設けられると、壁Wは壁繋ぎ材260が無くとも安定して直立することとなる。したがって、壁繋ぎ材260は屋根が存在する場合には、その機能を殆ど失う。壁繋ぎ材260は、公知、周知のものを用いることが可能であるが、一例となるこの実施形態における壁繋ぎ材260は、棒状体であり、その一端を柱221に、その他端を低層部10Lにそれぞれネジ止めすることによって固定可能なものとされている。なお、シート240を張る際に、それらが固定される2本の柱の間に、図示を省略の柱と梁を適宜に設けることが可能である。そのような梁が存在する場合、その梁と旧構造物10の低層部10Lとを、壁繋ぎ材260で接続しても良い。
上述したように、壁Wは、高層部10Hの解体が終わるまでに構築されればよく、高層部10Hの解体が開始される前に構築されても構わない。少なくとも壁Wが構築された後における高層部10Hの解体によって生じる騒音は、壁Wにより幾らかその漏れ出しが防止される。また、壁Wの存在により、建て替え工法が実行されている対象範囲Xの周囲の美観が保たれる。
この実施形態では、仮設テントの屋根は、以下のような方法で構築される。
屋根は屋根レールWRの上に乗る。後述するが、この実施形態において屋根は、複数の分割屋根を組合せて構築される。分割屋根が屋根レールWRの上に乗せられることにより、結果的に屋根が屋根レールWRの上に乗ることになる。
分割屋根210は、屋根レールWRの長さ方向に垂直な平面による断面が、すべての部分で同じになるようになっている。また、各分割屋根210に含まれる骨材220の構成はすべて同じとなっている。また、各最後に構築される分割屋根210を除いた各分割屋根210は、すべて同じ構造とされる。
この実施形態において、1つの分割屋根210に含まれる骨材220の数は4つとされているが、これはこの限りではない。分割屋根210は後述するようにしてそれらを屋根レールWRの上を移動させた後に組合せることにより仮設テントの屋根を構成するが、分割屋根210に含まれる骨材220の数が多ければ、分割屋根210の移動の回数を減らすことができるようになるから、分割屋根210の移動に関する作業の負担、及び作業時間は減る。もっとも、分割屋根210に含まれる骨材220の数を増やすことにより分割屋根210の重量が大きくなるため、分割屋根210の大きさ乃至それに含まれる骨材220の数は、移動させることの可能な分割屋根210の重量によって制限を受けることになるし、また、後述するようにして組立てられる分割屋根210の組立て場所の広さによっても制限を受けることになる。
各骨材220は、鉛直方向に伸びる短い柱部材221Xと、柱部材221Xによって支持される梁222とから構成されている。柱部材221Xと梁222とはともに、棒状ではあるが、1本の棒状体で構成されている必要はなく、複数の部材を例えばトラス構造となるように組合せて構成されていても良い。この実施形態における梁222は、仮設テント200の屋根を構成するものとなっており、中央が高くなるように2本が傾斜して接続されている。結果として、完成した仮設テント200は、図9に示されたように切妻型の屋根を持つことになるが、仮設テント200の屋根の構造はこれには限られない。完成した仮設テント200は、対象範囲X全体を覆うことが可能であり、その内部で、後述するような重機(例えば、クレーン車)が作業を行うことができるようなものとする必要がある。仮設テント200の大きさは、例えば、長辺が100mを超える場合があり、高さが50mを超える場合がある。
上述したように、柱部材221Xは、屋根レールWRの上に乗る。柱部材221Xは、その下端を屋根レールWRに接触させた状態で、分割屋根210を安定した状態で支持するものである。もっとも、屋根レールWRの幅が小さい場合には、各屋根レールWRで支えることのできる、柱部材221Xの太さにも制限が生じる可能性がある。そうすると、柱部材221Xや分割屋根210の強度にも制限が生じる可能性がある。
そのような制限を解消するために、例えば、対象範囲Xの2本の長辺の外側において壁Wの上に配される屋根レールWRをそれぞれ、二本一組の平行なものとすることで対応可能である。この場合、図27に示したように、2本で一組とされた屋根レールWRの上に、1本の柱部材221Xが乗ることになる。この1組の屋根レールWRの上に、柱部材221Xの下端が乗る。図27に示した、4つの221Aの符号で示されているのが、1本の柱部材221Xを構成する柱体221Aの断面である。柱体221Aは、例えば鉄骨であって、鉛直方向に伸びる。これには限られないが、この実施形態における1つの柱部材221Xに含まれる4つの柱体221Aは、平面視した場合に所定の正方形の頂点上に位置するような位置関係とされ、且つ屋根レールWRの上に乗るようになっている。そのような鉛直な4本の柱体221Aの間に、例えば、トラス構造を構成するような梁状の補強部材を適宜固定することにより、この場合の柱部材221Xは構成されることになる。その場合、梁も、同様にトラス構造で構成されるのが通常である。
次いで、各骨材220間を上述の図示せぬ部材で繋いで、各骨材220の間隔が一定に保たれるようにする。そして、隣接する2本の骨材220の間に、シート230が張り渡される。
このようにして、1つ目の分割屋根210が、屋根レールWRの一端側の上で構築される(図6)。
結果として、分割屋根210は、屋根レールWRの他端側まで移動させられる(図7)。
構築された2つ目の分割屋根210は、1つ目の分割屋根210と同様に、屋根レールWRの上を、屋根レールWRの他端側に向けて移動させられる。
2つ目の分割屋根210は、屋根レールWRの他端側寄りで、1つ目の分割屋根210と接続される。2つ目の分割屋根210と、1つ目の分割屋根210とを接続する方法は、以下の2通りであり、そのいずれかを採用する。
1つ目の方法は、1つ目の分割屋根210の骨材220のうち、分割屋根210の進行方向で考えて最も後ろのものと、2つ目の分割屋根210の骨材220のうち、分割屋根210の進行方向で考えて最も前のものとを、そのまま接続する、というものである。その場合、接続された部分の骨材220は、分割屋根210の進行方向で考えて、他の骨材220の2倍の厚さとなる。それを嫌うのであれば、各分割屋根210の骨材220のうち、分割屋根210の進行方向で考えて最も前と最も後ろのものとの分割屋根210の進行方向で考えた厚さを、他の骨材220の半分としておけば良い。そうすることで、接続された部分の骨材220の厚さを、他の部分の骨材220の厚さと揃えることが可能となる。
2つ目の方法では、まず、1つ目の分割屋根210の骨材220のうち、分割屋根210の進行方向で考えて最も後ろのものと、2つ目の分割屋根210の骨材220のうち、分割屋根210の進行方向で考えて最も前のものとの間に、各分割屋根210における骨材220間の距離に相当する間隔が空くところまで、2つ目の分割屋根210を進める。そして、その後、1つ目の分割屋根210の骨材220のうち、分割屋根210の進行方向で考えて最も後ろのものと、2つ目の分割屋根210の骨材220のうち、分割屋根210の進行方向で考えて最も前のものとの間に、分割屋根210を作る場合と同様にして、シート230を張り渡す、というものである。この場合、1つ目の分割屋根210の骨材220のうち、分割屋根210の進行方向で考えて最も後ろのものと、2つ目の分割屋根210の骨材220のうち、分割屋根210の進行方向で考えて最も前のものとの間に、それら2つの骨材の距離を一定に保つための上述した部材を配しても良い。
いずれの方法を取るにせよ、これにより、2つ目の分割屋根210は1つ目の分割屋根210に接続される。
最後の分割屋根210は、屋根レールWRの上を送られなくともよい。最終的に、屋根レールWRの略全長にまたがる仮設テント200の屋根が略完成する(図8)。
この状態では、仮設テント200の分割屋根210の移動方向で考えた場合における前方と後方には、開放されている部分がある。その開放されている部分を、この実施形態であれば五角形のシート242で覆うことにより、対象範囲Xをすっぽり覆う仮設テント200が完成する(図9)。シート242は、シート230と形状のみ異なるものとすることが可能であり、この実施形態ではそうされている。シート242の仮設テント200の最も前と後ろの骨材220への固定の方法は、公知或いは周知技術に倣えばよい。なお、シート242を張るタイミングは、仮設テント200が図9で示す状態になった後でなくとも良い。
まず、旧構造物10のうちの旧地上部分10Aにおける低層部10Lを仮設テント200の中で解体する。かかる解体は、従来技術と同様の方法で行うことができ、この実施形態ではこれには限られないがそうしている。
高層部10Hを解体したときもそうであるが、旧地上部分10Aの低層部10Lを解体したことによって生じた瓦礫は、対象範囲Xから、外部へ搬出する。かかる瓦礫の搬出も、公知或いは周知技術によって行えば良い。
その後、対象範囲Xの全体を整地する。対象範囲Xを整地するとき、旧地下部分10Bに空間がある場合には、当該空間を埋め戻すのが好ましい。例えば、旧地下部分10Bにある空間は、床スラブや、旧地上部分10Aを破砕することによって生成したコンクリート再生砕石材等によって埋め戻すことができる。
ここで打たれる場所打ち杭20Cは、図10に示したように、対象範囲Xの一部である特定範囲Y内にのみ打たれる。なお、図10は、対象範囲Xの平面図であるが、仮設テント200の図示を省略している。特定範囲Yは、後述する構台で覆われる範囲であり、言い換えれば構台の下側に位置する範囲である。
図11~図15を参照して、具体的な場所打ち杭20Cの打ち方について説明する。なお、場所打ち杭20Cの打ち方は、公知或いは周知技術に倣えばよい。今回の特定範囲Yにおける場所打ち杭20Cの打込みの他に、後でもう一度、場所打ち杭20Cを打つ場面が登場するが、その場合も同様である。なお、図11~図14は、図1においてAで示した矢印で矢視された方向から見た、地下も含む対象範囲Xの側面図である。図15は、図1においてBで示した矢印で矢視された方向から見た、地下も含む対象範囲Xの側面図である。図11~14、及び図15はいずれも模式的なものであり、作図上の都合から、図10とは、特に場所打ち杭20Cの本数について正確性を欠いている。
図11に示したように、まず、対象範囲Xのうち、特定範囲Yの場所打ち杭20Cを打つべき位置に対応する整地された地表の所定の位置に、杭打機300を置く。この杭打機300は、地下に向けて鉛直に穴を穿つ機能と、コンクリートを流し込む機能とを備えている。これら機能は、複数の装置に割り振られていてもよく、その場合には杭打機300は複数の装置から構成されることになる。
そして、杭打機300により、鉛直方向に穴301を掘る。穴301は、旧構造物10の旧地下部分10Bや、旧杭10Cと干渉するのであれば、それらを貫きつつ地下に向けて掘り進められる。穴301は、場所打ち杭20Cが後に建てられるビルディングを支えるに足る強度が得られる位置にまで掘り進められる。一般的には、硬い地盤に到達するまで穴301が掘り進められることが多い。穴301の底付近の径をその上の部分よりも大きくすることも可能である。
次いで、穴301の中に、穴301の内壁に沿う円筒形の図示を省略の一般には鉄筋で作られた、金属製のかごを入れる。かごは、穴301の底から、所定の高さにまで及ぶようにする。そして、穴301の中に杭打機300から、液状のコンクリートを流し込む。コンクリートは、穴301の底から、かごの上端までを満たす。そのコンクリートが硬化することで、場所打ち杭20Cとなる(図12)。かごは、場所打ち杭20C内で、その強度を保証する鉄筋となる。穴301の底付近の径がその上の部分よりも大きくなっている場合には、場所打ち杭20は拡底杭となる。
次いで、他の場所に杭打機300を移動して、同様に穴301を穿つ。そして、上述の場合と同様に、穴301の中にかごを入れ、コンクリートを流し込みそれを硬化させることで、場所打ち杭20Cとする(図13)。
以上を繰返すことにより、図10、図14、図15に示したように、特定範囲Yの全域に、場所打ち杭20Cが打たれることとなる。なお、この実施形態では、場所打ち杭20Cの下端の深さ(高さ位置)は揃っているものとするが、これはこの限りではない。各場所打ち杭20Cの下端の深さは、上述したように、各場所打ち杭20Cが、後に建てられるビルディングを支えるに足る強度が得られるかという観点から決定される。また、この実施形態では、場所打ち杭20Cの上端の深さ(高さ位置)は揃っているものとするが、これもこの限りではない。各場所打ち杭20Cの上端の深さは、後に作られるビルディングの後述する地下部分の、各場所打ち杭20Cがある部分の下面に相当する高さとされる。結果として、場所打ち杭20Cは、下方から構造物としてのビルディングの地下部分を支持することになる。
なお、一般的な場所打ち杭の工法では、場所打ち杭の上端が地下にある場合には、穴の場所打ち杭よりも上側の部分は埋め戻されるのが通常であるが、この実施形態では、当該部分は後述するように周囲の土砂ごと除去されるので、かかる埋め戻しを行う必要は特に無い。
また、この例では、杭打機300は一つとされ、場所打ち杭20Cは一本ずつ打たれていたが、複数の杭打機300を用いて、複数の場所打ち杭20Cを同時並行して同時に打つことももちろん可能である。工期短縮を目指すのであれば、もちろんその方が良い。
また、ここでの特定範囲Yに場所打ち杭20Cを打つ作業は地上で行われる。かかる作業は、必ずしも仮設テント200が完成してから行われる必要はない。仮設テント200が作られる前、或いは仮設テント200を構築する作業と並行して、特定範囲Yに場所打ち杭20を打つ作業が行われても良い。特に、仮設テント200を構築する作業と並行して、特定範囲Yに場所打ち杭20Cを打つ作業を行うと工期短縮の効果が大きい。なお、特定範囲Yは、後述する構台の下の範囲には限らず、後述する地下空間の底から後述するように場所打ち杭20を打つのが難しい範囲を特定範囲Yとして決定することができる。
特定範囲Yの全体に上述したようにして場所打ち杭20Cを打ったら、次いで、構台410を設置する(図16)。
構台410は、その上に重機、車両、作業員が乗って作業を行うための台である。それを行えるだけの強度、広さが構台410には必要である。この実施形態における構台410は、板状である。構台410は、最初に構築されるときはそれのみであっても良いし、それに加えて、後述する支持体のうち上側の最小限の部分を含んでいてもよい。構台410が覆うのは、上述した特定範囲Yである。この実施形態における特定範囲Yは、図10で示したように矩形であったが、これは必ずしもこの限りではなく、また、特定範囲Yの長さは、対象範囲Xの長手方向の全長に及ぶ必要もない。もっとも、構台410の一部は、対象範囲X外から構台410の上に車両等が侵入できるようにするために、対象範囲Xの外縁の一部に接している必要がある。例えば、この実施形態でいえば、仮設テント200の扉241のある部分において、構台410と対象範囲Xの縁とを接するようにするのが便利であり、これには限られないがこの実施形態ではそうされている。
ブルドーザ510によって対象範囲Xの全体を掘り下げていくと、土砂が除去されることにより空間が現れる。これが地下空間Sである。地下空間Sを形成する場合、そこに旧構造物10の旧地下部分10Bや、旧杭10Cが存在するのであれば、それらを土砂と一緒に破壊して除去する。旧構造物10Bや、旧杭10Cを土砂と一緒に除去することが可能であるから、この作業に費やされる労力と時間はそれ程大きくない。土砂、破壊された旧地下部分10B及び旧杭10Cは、地下空間Sから取り除かれる。この実施形態では、現れた地下空間Sの底に配置された公知又は周知の排土機520によって土砂等を構台410の上にまで引上げることによりそれを行う。排土機520によって構台410の上に引き上げられた土砂等は、例えば、構台410の上に乗入れているダンプカー530の荷台に積み替えられる。ダンプカー530は、構台410の上を走り、仮設テント200の扉241から外部へ出て、所定の場所に土砂を捨てに走る。このようにして、構台410を利用することにより、土砂を地下空間Sから、対象範囲X外の適当な場所に排出する作業が容易になる。かかる土砂の排出も、昼間のみならず夜間にも行うことができる。夜間であれば一般に、車両の渋滞を考慮する必要がないから、ダンプカー530の往来を予定通りに通常よりも長い距離で行うことができるし、また多くのダンプカー530を集めることも容易であるから、工期短縮に有用である。土砂と、破壊された旧地下部分10B及び旧杭10Cとを分別する必要があるのであれば、対象範囲X外で行うのが容易であろうが、それは必ずしもその限りではない。
地下空間Sの底が掘り下げられて行くと、当然に構台410は支えを必要とする。地下空間Sを掘り下げていく場合、構台410の下には、支持体420が設けられる。支持体420は、構台410を下から支えることが可能であればどのような構成でも構わない。支持体420は、例えば、柱と、梁とを適宜に組合せて構成可能である。もっとも、深い穴を掘って打つ必要のある場所打ち杭20Cの数を減らすためには、特定範囲Yの範囲を狭くすべきであるから、その観点からすると、支持体420は、平面視した場合に構台410により隠れる範囲にのみ存在するようにするのが良い。この実施形態ではそうされている。支持体420の下端は、例えば、地下空間Sの底に当接しており、地下空間Sの底が下方に下がっていくと、それに追随して下方に向けてその長さを伸ばされる。このようにすることで、構台410は、当初設けられた位置から、その位置が移動することがない。
地下空間Sを構築する場合、地下空間Sの側面は、例えば鉛直である。地下空間Sの深さは、最終的に、例えば50mを超える場合もあり、何らの処置もしない場合には、地下空間Sの側面が崩落することも考えられる。そのような危険から、地下空間Sで作業を行う作業者を守るため、この実施形態では、これには限られないが、矢板430によって、地下空間Sの側面を補強することとしている。矢板430は、縦長の細長い矩形の板を、並列して地下空間Sの側面に沿って打込むことによって構成される。矢板430は、止水連壁でもよく、SMWでも良い。これらは、板を地中に打込むのではなく、液状のコンクリートを地中に打設してから硬化させることで、地中にコンクリートによる板を形成するものである。矢板430は、例えば、地下空間Sの全面を覆い、且つ最終的に形成される地下空間Sの底よりも深い位置にまでその下端が及ぶようになっている。矢板430には、外側から地下空間Sの側に向けて矢板430を内側に押し倒そうとする力がはたらくが、矢板430がその力に抗することができるようにするために、矢板430の外側に公知のアースアンカー440を設けてもよい。この実施形態では、例えば、図18に示したようにそうされている。アースアンカー440は、矢板430に対して、外向き、且つ下方向きの力を与える。かかる力は、矢板430の上下方向の複数の箇所に与えられる。矢板430は、地下空間Sの形成のための対象範囲Xの掘削開始の前に構築されても構わないし、対象範囲Xの掘削が開始された後、地下空間Sの側面の崩落が予想されない段階の適宜のタイミングで構築されても構わない。
アースアンカー440は、公知或いは周知のように、地下空間Sが下方に向かって掘り進められるに連れ、その上方のものから順に設置されていく。
次いで、地下空間Sの底に、新たに場所打ち杭20Cが打たれる。新たに打たれる場所打ち杭20Cは、平面視した場合における、対象範囲Xのうちの特定範囲Yを除いた範囲に打たれる。今回打たれる場所打ち杭20Cは、地表からではなく、地下空間Sの底から打たれる。
地下空間Sの底で場所打ち杭20Cを打つために、地下空間Sの底に、先程説明したのと同じ杭打機300を降ろす。杭打機300は、一つでも良いし複数でも良い。杭打機300は、例えば、構台410の上に乗入れたクレーン車540によって、構台410の上から、地下空間Sの底に降ろされる(図20)。
この場合における、特定範囲Y外の場所打ち杭20Cの打ち方は、上述した、特定範囲Y内の場所打ち杭20Cの打ち方と変わらない。穴301(図20)を掘って、そこに図示せぬかごを入れ、穴301の中に液状のコンクリートを流し込んで、それを硬化させる。それにより、場所打ち杭20Cが打たれる。場所打ち杭20Cは、地下空間Sの底を平面視した場合における、特定範囲Y外の対象範囲X内の全域にわたって必要に応じて打たれることになる(図21、図22)。ここで場所打ち杭20Cを打つために掘られる穴301の上下方向の長さは、特定範囲Y内に場所打ち杭20Cを打つために掘られる穴301の上下方向の長さよりも短く、また、穴301を掘る際に、旧地下部分10Bや旧杭10Cが穴301を掘る邪魔になることが無いか、少ない。したがって、特定範囲Y外に1本の場所打ち杭20Cを打つ作業は、特定範囲Y内に1本の場所打ち杭20Cを打つ作業にくらべて、格段に時間がかからない。したがって、特定範囲Y外に打たれる場所打ち杭20Cの数が一般に、特定範囲Y内に打たれる場所打ち杭20Cの数よりも遥かに多いことも相俟って、場所打ち杭20Cを打つために必要となる時間の全体は、大幅に節約されることになる。
この実施形態では、特定範囲Y外に打たれる複数の場所打ち杭20Cの下端の高さ位置は、特定範囲Y内に打たれる複数の場所打ち杭20Cの下端の高さ位置と同じく揃っている。しかしこれは、特定範囲Y内に打たれる各場所打ち杭20Cの場合と同じ理由でこの限りではない。また、この実施形態では、特定範囲Y外に打たれる複数の場所打ち杭20Cの上端の高さ位置は、特定範囲Y内に打たれる複数の場所打ち杭20Cの上端の高さ位置と同じく揃っている。しかしこれは、特定範囲Y内に打たれる各場所打ち杭20Cの場合と同じ理由でこの限りではない。
場所打ち杭20Cが打たれたら、次に、新しいビルディングの地下構造物である地下部分20Bが構築される(図23)。
地下部分20Bを構築するには例えば、構台410の上に乗せられた重機が利用される。この重機は例えば、クレーン、或いはクレーン車である。この実施形態では、重機は、クレーン車540であるものとする。クレーン車540により、例えば、図示せぬダンプカーによって構台410の上に運ばれた図示せぬ資材を地下空間Sの内部に降ろすことにより、地下部分20Bは、地下空間Sの底から順に、上方に向けて構築されていく。地下部分20Bは、柱、壁、床等、公知或いは周知の構造を備えており、また、必要に応じて複数フロアに分割されている。もちろん、地下空間Sには作業者が降りて作業を行っても良い。地下部分20Bの底は、場所打ち杭20Cの上端によって支持される。それにより、地下部分20Bは、下方から場所打ち杭20Cによって支持されることになる。
地下空間S内で地下部分20Bが構築されて行くと、地下部分20Bが、構台410の支持体420と干渉することがある。その場合には、地下部分20Bと干渉する支持体420を撤去して、撤去された直上の支持体420を地下部分20Bに固定すれば良い。撤去された支持体420は、例えば、クレーン車540によって、構台410の上に引き上げることが可能であり、構台410の上に引き上げられた支持体420は、例えば図示せぬダンプカーによって、仮設テント200外に搬出すれば良い。また、地下部分20Bが構築されていくに連れて、アースアンカー440は、その下方のものから順に撤去されていく。
なお、構台410の支持体420の始末は、以下のように行っても良い。この場合の、支持体420の構成は、ここまで説明したものと若干異なるものとなる。この場合における支持体420には、鉛直方向に伸びる柱と、柱と柱の間を補強的に繋ぐ梁とにより構成される。まず、特定範囲Yに地表から場所打ち杭20Cを打つ場合と同様に、地表から、柱を打込む。この作業は、特定範囲Yに場所打ち杭20Cを打込む作業と同時に、或いはそれに前後して行われる。柱の下端は、少なくとも地下空間Sの底となるよりも深い場所にまで至るようにし、支持体420により構台410を安定して支持できる深さまで至るようにする。例えば、支持体420は、特定範囲Yに打たれる場所打ち杭20Cの下端とその下端が揃うようにする。このようにして設けた柱の上に構台410を設置する。その後、上述した如き、対象範囲Xを下方に掘り進め地下空間Sを形成する。地下空間Sを掘り進めて行くと、支持体420の一部である上述した柱がその上側から徐々に露出してくる。露出した柱の長さが長くなってくると、柱の強度に不安が生じる。そこで、露出した部分の柱に対して、適宜梁を固定していく。この作業を地下空間Sを掘り進めて行きながら適宜行い、柱には十分な数の梁が設けられる。結果として、地下空間Sに存在する構台410及び支持体420は、柱の下端が地下空間Sの底よりも下方に至っているという点を除けば、図20、21に示したものと同じになる。
この場合においても、上述したように、地下空間Sには、地下部分20Bがその下方から上方に向けて構築されていく。この場合においては、地下部分20Bと干渉する構台410の支持体420は撤去されない。構台の支持体420が存在していても、それに構わず地下部分20Bを構築していく。地下部分は、非常に大雑把に言えば、鉄骨と打設され硬化されたコンクリート等でできている。支持体420は、鉄骨とは干渉しない位置に予め作られており、部分的にコンクリートの中に埋め込まれる。地下部分20Bの中には、例えば、廊下、居室となる空間があり、支持体420の一部は地下部分20Bの中に埋め込まれ、また支持体420の残部は、その空間内に露出することになる。そして、どこかのタイミングで、例えば、地下部分20Bが完成した後の適当なタイミングで、支持体420のうち、地下部分20Bに埋め込まれている部分はそのままに、地下部分20B内の空間に露出している部分のみを撤去する。そうすると、地下部分20Bの壁、天井等には、支持体420の柱や梁の断面が露出することになる。そのような露出した柱や梁の断面が美観的に問題なのであれば、その上から塗装を行ったり、壁紙を張る等すれば、美観の問題を解消することができる。このように構台410及び支持体420の始末を行うことも可能である。
以上のように作業を行い、地下空間S内に、地下部分20Bが完成する(図24)。低層部10Lの解体の開始から、ここまでの作業はすべて仮設テント200内で行われる。
新しいビルディングの地上部分を構築する際に、仮設テント200、或いは仮設テント200の屋根のみを撤去しても良い。また、矢板430と地下部分20Bとの間の空間を埋め戻すことで、矢板430が不要になったのであれば、矢板430を撤去しても構わない。矢板430は残しても良い。
仮設テント200、或いはその屋根の撤去は、公知或いは周知技術によれば良い。
仮設テント200の屋根を撤去する場合において、新しいビルディングの地上部分1000のうち、仮設テント200内で作れる部分を仮設テント200内で作るようにしても良い(図26)。このようにすることで、新しいビルディングの地上部分のうち、地表に近い部分を騒音の影響無く作れるようになるし、また、新しいビルディングのうちの当該部分を構築する作業を雨の影響なく行えるようになる。
仮設テント200内でこれ以上新しいビルディングの地上部分を高層化できない状態となったら、仮設テント200の全体を撤去しても良いし、仮設テント200の屋根のみを撤去し、例えば、新しいビルディングの地上部分がすべて完成するまで、或いは完成が近づくまで仮設テント200の壁Wを残しておいても良い。このとき、仮設テント200から屋根が除去されることによって壁Wが不安定となるのであれば、壁Wを新しいビルディングの地上部分1000と、例えば、上述した壁繋ぎ材260と同様の物を用いて繋ぐことが可能である。
新しいビルディングの地上部分は、例えば、地下部分20Bの上に構築された、タワークレーン用の土台20Dの上に設けられたタワークレーン550を用いてそれを行えば良い(図25、図26)。タワークレーン550はマストクライミングタイプでも良いが、フロアクライミングタイプでももちろん構わない。地上部分は、上方に向かって伸びていき、やがて完成する。
地下部分と地上部分とが完成することにより、新しいビルディングが完成する。これにより、ビルディングの建て替えが終了する。
10A 旧地上部分
10B 旧地下部分
10C 旧杭
20B 地下部分
20C 場所打ち杭
20D 土台
200 仮設テント
210 分割屋根
220 骨材
221 柱
222 梁
230 シート
240 シート
300 杭打機
301 穴
410 構台
420 支持体
430 矢板
440 アースアンカー
510 ブルドーザ
520 排土機
S 地下空間
W 壁
WR 屋根レール
X 対象範囲
Y 特定範囲
Claims (4)
- 所定の対象範囲に建てられた構造物である旧構造物を解体して、当該対象範囲に、地下に構造体を有する新しい構造物である新構造物を建てる建て替え工法であって、
前記旧構造物の所定の高さより上の地上部分である第1旧地上部分を解体する第1旧地上部分解体過程と、前記第1旧地上部分解体過程の後に実行される前記旧構造物の所定の高さより下の地上部分である第2旧地上部分を解体する第2旧地上部分解体過程と、前記第2旧地上部分解体過程の後に実行される前記対象範囲を掘り下げた部分に作業員が降りることを要する、少なくとも前記新構造物の構造体を構築する作業を実行する地下工事実行過程と、前記新構造物の地上部分を構築する地上部分構築過程と、
を含んでおり、
前記第1旧地上部分解体過程が終わるまでに、前記対象範囲を略前記所定の高さまで、平面視矩形の仮設テントの壁で覆うとともに、
前記第1旧地上部分解体過程が終わった後であり前記第2旧地上部分解体過程が開始される前に、前記壁の上に前記仮設テントの屋根を設けることで前記対象範囲を閉鎖的に覆う前記仮設テントを完成させ、
前記第2旧地上部分解体過程、前記地下工事実行過程、及び前記新構造物のうち前記仮設テントで囲まれた前記閉鎖的な空間内で構築することが可能な部分の構築を前記仮設テントで囲まれた閉鎖的な空間内で実行するとともに、
前記壁を、その上に前記仮設テントの屋根が設けられているときに、前記屋根を支えて自立するものとする、
建て替え工法。 - 前記地下工事実行過程は、
前記新構造物を支持する場所打ち杭を打つ過程を含む、
請求項1記載の建て替え工法。 - 前記仮設テントの前記壁を構築する際に、前記壁を前記旧構造物と固定する、
請求項1記載の建て替え工法。 - 前記旧構造物は、前記所定の高さよりも上の部分の床面積が、それよりも下の部分の床面積よりも小さくなっている、
請求項1記載の建て替え工法。
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