JP7046543B2 - 断層画像撮影装置及び断層画像撮影方法 - Google Patents

断層画像撮影装置及び断層画像撮影方法 Download PDF

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Description

本発明は、断層画像撮影装置及び断層画像撮影方法に関する。
特許文献1~4には、X線を利用して断層画像を得る技術が開示されている。
特許文献1は、X線コンピュータ断層撮影装置を開示する。この装置は、補正パラメータに基づいて統計値を算出し、当該統計値が閾値を越えているか否かによって、稼働状態が正常であるか異常であるかを判断する。この構成により、X線コンピュータ断層撮影装置は、装置の稼働状態を判断する。特許文献2は、画像再構成方法を開示する。この方法は、第1及び第2検出器列から第1及び第2投影像情報を得る。そして、第1及び第2投影像情報を用いた再構成処理において、第1投影像情報のセンタリング処理前又は処理中に第2投影像情報の組み合わせ処理を行う。この処理により、空間分解能を向上すると共に計算量の増加を抑制する。特許文献3は、X線CT装置を開示する。この装置は、ハイレゾ再構成が可能な距離駆動型の逆投影処理を行う。この処理により、高分解能の断層画像を高速に生成する。特許文献4は、イメージング装置を開示する。この装置は、X線イメージング処理と、発光性分子プローブを用いた光イメージング処理と、を交互に行う。この処理により、空間分解能が高いマンモグラフィ画像と、病変検出感度の高い光画像とが一度の検査で得られる。
特開2014-113480号公報 特開平1-181847号公報 国際公開第2012/077694号 特開2008-278955号公報
特許文献1~4に開示されるように、断層画像を取得する場合には、X線のように試料を透過する放射線を試料に対して照射する。ここで、放射線の強度が小さくなると、信号強度に対するノイズ強度の影響が相対的に大きくなる。すなわち、S/N比が低下する。S/N比の低下は、断層画像の画質を低下させることがあり得る。
そこで、本発明は、良好な断層画像が得られる断層画像撮影装置及び断層画像撮影方法を提供することを目的とする。
本発明の一形態は、放射線を実試料に照射し、実試料を透過した放射線を利用して実試料の断層画像を得る断層画像撮影装置であって、実試料を透過した放射線に関する第1投影像情報を利用してフィルタ補正逆投影法に基づく画像再構成処理を行うことにより、第1断層画像情報を得る第1画像再構成部と、第1断層画像情報によって示される仮想試料を透過した放射線の強度を推定することにより、仮想試料を透過した放射線に関する第2投影像情報を算出する仮想投影像算出部と、第1投影像情報及び第2投影像情報を利用して、補正係数を算出する補正係数算出部と、補正係数を利用して第1投影像情報を補正することにより、実試料を透過した放射線に関する補正投影像情報を得る補正処理部と、補正投影像情報を利用して逐次近似法に基づく画像再構成処理を行うことにより、実試料の断層画像に関する第2断層画像情報を得る第2画像再構成部と、を備える。
一形態に係る断層画像撮影装置は、第1投影像情報を利用して第1画像再構成部において第1断層画像情報を得る。この第1投影像情報は、実試料の特性に起因する真の情報と、実試料の特性に起因しない背景ゆらぎの情報と、ノイズに関する情報と、を含む。断層画像撮影装置は、第1断層画像情報を得るに際して第1画像再構成部がフィルタ補正逆投影法に基づく画像再構成処理を行う。ここで、実試料の特性に起因する真の情報は高周波成分として含まれ、実試料の特性に起因しない背景ゆらぎの情報は直流成分として含まれる。第1画像再構成部の処理によれば、第1投影像情報に含まれる真の情報に対してバックグラウンド成分である背景ゆらぎに関する情報が及ぼす影響が低減される。断層画像撮影装置は、第1断層画像情報を利用して第2投影像情報を得る。第2投影像情報は、実試料の特性に起因する真の情報と、ノイズに関する情報と、を含む。続いて、断層画像撮影装置は、補正係数算出部が第1及び第2投影像情報を利用して、補正係数を得る。第1投影像情報は実試料の特性に起因しない背景ゆらぎの情報を含み、第2投影像情報は実試料の特性に起因しない背景ゆらぎの情報を実質的に含まない。従って、第1投影像情報に占める背景ゆらぎの情報の度合いを補正係数として得ることができる。さらに、断層画像撮影装置は、補正係数を利用して第1投影像情報を補正する。この補正によれば、第1投影像情報に占める背景ゆらぎの度合いを低下させた補正投影情報を得ることができる。そして、断層画像撮影装置は、補正投影情報を利用して逐次近似法に基づく画像再構成処理を行う。この逐次近似法に基づく処理によれば、補正投影情報に未だ含まれるノイズに関する情報の影響を低減させつつ、画像を再構成することが可能である。従って、一形態に係る断層画像撮影装置によれば、背景ゆらぎ及びノイズの影響が抑制されるので、良好な画質を有する断層画像を得ることができる。
一形態において、第1投影像情報は、実試料における互いに異なる位置を透過した複数の放射線に関する第1強度値を含み、第2投影像情報は、仮想試料における互いに異なる位置を透過した複数の放射線に関する第2強度値を含み、補正係数算出部は、第1強度値の合計値を算出すると共に第2強度値の合計値を算出し、第2強度値の合計値を第1強度値の合計値で除することにより、補正係数を得てもよい。この構成によれば、第1投影像情報に占める背景ゆらぎの情報の度合いを好適に示すことができる。
一形態において、第1画像再構成部は、第1投影像情報に含まれる高周波成分を強調する高周波強調フィルタ処理部と、高周波強調フィルタ処理部から出力された情報を利用して、第1断層画像情報を得る再構成処理部と、を有してもよい。この構成によれば、第1投影像情報に含まれる背景ゆらぎに起因する情報に対する真の情報の比率が拡大する。すなわち、第1投影像情報に含まれる背景ゆらぎに起因する情報を実質的にカットすることができる。
一形態において、第1投影像情報は、実試料における互いに異なる位置を透過した複数の放射線に関する第1強度値を含み、第2投影像情報は、仮想試料における互いに異なる位置を透過した複数の放射線に関する第2強度値を含み、第1断層画像情報は、実試料における放射線に関する線減弱係数の分布を示す情報を含み、仮想投影像算出部は、実試料に照射された放射線の強度と、第1断層画像情報に含まれた線減弱係数の分布を示す情報と、を利用して、第2投影像情報に含まれた第2強度値を算出してもよい。この構成によれば、第2投影像情報を得ることができる。
本発明の別の形態は、放射線を実試料に照射し、実試料を透過した放射線を利用して実試料の断層画像を得る断層画像撮影方法であって、実試料を透過した放射線に関する第1投影像情報を利用してフィルタ補正逆投影法に基づく画像再構成処理を行うことにより、第1断層画像情報を得る工程と、第1断層画像情報によって示される仮想試料を透過した放射線の強度を推定することにより、仮想試料を透過した放射線に関する第2投影像情報を算出する工程と、第1投影像情報及び第2投影像情報を利用して、補正係数を算出する工程と、補正係数を利用して第1投影像情報を補正することにより、実試料を透過した放射線に関する補正投影像情報を得る工程と、補正投影像情報を利用して逐次近似法に基づく画像再構成処理を行うことにより、第2断層画像情報を得る工程と、を有する。
別の形態に係る断層画像撮影方法によれば、背景ゆらぎ及びノイズの影響が抑制されるので、良好な画質を有する断層画像を得ることができる。
本発明によれば、良好な画質を有する断層画像が得られる断層画像撮影装置及び断層画像撮影方法が提供される。
図1は、実施形態に係るコンピュータ断層画像撮影装置の構成を示す図である。 図2は、コンピュータ断層画像撮影装置の動作を説明するための図である。 図3は、背景ゆらぎを説明するための図である。 図4は、実施形態に係るコンピュータ断層画像撮影方法の主要な工程を示す図である。 図5は、コンピュータ断層画像撮影装置の動作を説明するための図である。 図6は、第1断層画像算出部における処理を説明するための図である。 図7は、変形例に係るコンピュータ断層画像撮影装置の作用を説明するための図である。 図8は、実施例及び比較例の結果を示すグラフである。
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1に示されるように、コンピュータ断層画像撮影装置1は、X線といった放射線を利用して実試料100の内部を可視化する。コンピュータ断層画像撮影装置1は、いわゆるCT装置或いはX線顕微鏡(例えば、下記の非特許文献を参照)である。
非特許文献:Ohsuka, Shinji, et al. "Laboratory-size three-dimensional x-raymicroscope with Wolter type I mirror optics and an electron-impact water windowx-ray source." Review of Scientific Instruments, 8 September 2014.
コンピュータ断層画像撮影装置1は、X線源2と、回転ステージ3と、カメラ4と、記録装置5と、処理装置10と、を有する。
X線源2は、実試料100に照射するX線を発生させる。X線源2は、例えば、強度が1keV以下の軟X線を出射するものであってもよい。また、X線源2が出射するX線は、平行に進行するX線であってもよいし、放射状に進行するX線であってもよい。すなわち、X線は、ファンビーム又はコーンビームであってもよい。また、X線の波長には特に制限はなく、実試料100に応じて適した波長を選択してよい。回転ステージ3は、実試料100を支持すると共に、X線の照射軸に対する実試料100の向きを変更する。つまり、回転ステージ3は、X線の照射軸と直交する軸線を中心として実試料100を回転させる。カメラ4は、実試料100を透過したX線の強度に対応する情報を出力する。例えば、カメラ4は、シンチレータ部と光検出部とを有する。シンチレータ部は、受け入れたX線の強度に対応した光を発生する。光検出部は、当該光に対応する情報を発生する。記録装置5は、カメラ4から出力された情報を保存する。処理装置10は、記録装置5に保存された情報を処理して、二次元画像である断層画像を生成する。
なお、コンピュータ断層画像撮影装置1は、X線源2及びカメラ4の位置を固定し、実試料100を移動させる構成を採用するが、この構成に限定されることはない。コンピュータ断層画像撮影装置1は、X線源2及びカメラ4に対する実試料100の相対的な位置が変更できればよい。例えば、コンピュータ断層画像撮影装置1は、実試料100の位置を固定し、X線源2及びカメラ4を移動させる構成としてもよい。
また、コンピュータ断層画像撮影装置1は、必要に応じて集光ミラー6及び結像ミラー7を有してもよい。集光ミラー6は、X線源2から発せられたX線を実試料100に対して集光する。結像ミラー7は、実試料100を透過したX線をカメラ4の集光面に対して結像する。
以下、処理装置10について詳細に説明する。処理装置10は、実試料100を透過したX線の強度を利用して、断層画像を再構成する。処理装置10は、CPU、メモリ、記録装置、入出力装置などを有するコンピュータである。処理装置10の画像再構成機能は、コンピュータによってプログラムを実行することにより実現される。
まず、画像再構成の基本原理について説明する。図2に示されるように、回転ステージ3上の空間Aに実試料100を配置する。そして、X線源2は、実試料100に対してX線R0i,R0i+1,R0i+2を照射する。実試料100を透過したX線R,Ri+1,Ri+2はカメラ4の各画素P,Pi+1,Pi+2に入射される。カメラ4は、画素P,Pi+1,Pi+2ごとに、X線の強度に応じた電気信号を出力する。X線源2から出射された直後のX線R0i,R0i+1,R0i+2は、それぞれ強度値Iを有する。また、実試料100を透過後のX線R,Ri+1,Ri+2は、それぞれ強度値I,Ii+1,Ii+2を有する。ここで、カメラ4に入射されるX線R,Ri+1,Ri+2には、X線源2から出射されてカメラ4に入射するまでに、実試料100を透過するもの(X線Ri+1)がある。従って、実試料100を透過したX線Ri+1は、実試料100の透過によって強度値Iが強度値Ii+1に変化する。この変化の度合いは、実試料100内部の線減弱係数μとX線Ri+1の透過長さlijとに基づく。従って、実試料100に入射する前のX線R0i+1の強度値Iと、実試料100を透過した後のX線Ri+1の強度値Ii+1との関係は、式(1)により示される。なお、強度値Iは、位置依存性を有するものであってもよい。
Figure 0007046543000001

式(1)において、各要素は以下の意味を有する。
:実試料を透過した後のX線の強度値(第2強度値)。
:実試料に入射する前のX線の強度値(第1強度値)。
ij:X線が実試料を通過するときに横断する透過長さ。
μ:線減弱係数。
i:画素の位置。
j:ボクセルの位置。
線減弱係数μは、実試料100の内部構成に基づく。従って、断層撮影(CT)は、実試料100の内部における線減弱係数μの分布を得ることである。線減弱係数μは、連続関数である。線減弱係数μは、座標(x,y)を用いると式(2)のように示される。コンピュータといった計算機を用いて計算する場合には、式(2)を離散化して扱う。つまり、有限の大きさを有する微小領域Aijに離散化し、微小領域Aijごとに線減弱係数{μij}を求める。
Figure 0007046543000002
線減弱係数μは、式(1)を式(3)のように変形することにより得られる。式(3)は、透過長さlijを係数とする線形連立方程式である。
Figure 0007046543000003
<フィルタ補正逆投影法に基づく画像再構成処理>
今、理想的な条件を想定する。理想的な条件とは、X線R0i,Rの強度値I,Iがノイズを含まず、カメラ4の画素Pのサイズが無限小であり、角度の刻み幅が無限小である。この理想条件のもとでは、式(3)には解析解が存在する。解析解を利用する画像再構築処理は、フィルタバックプロジェクション法(FBP法)と呼ばれる。FBP法は、式(3)における左辺(-ln(I/I))に対してフィルタ処理を行った後に、逆投影することにより断層画像を得る。FBP法は、撮影条件によっては良好な画質の断層画像を得ることができる。また、FBP法は、計算コストが少なく、高速な処理が可能である。一方、FBP法は、実際の撮影時の条件が理想条件と乖離するほどに、画質が低下する。つまり、FBP法は、理想条件を前提としているので、撮影条件の変化に敏感である。
<逐次近似法に基づく画像再構成処理>
FPB法が式(3)の解析解を利用するのに対し、逐次近似法に基づく画像再構成処理は、上記式(3)の近似解を利用する。近似解を得るために用いる計算手法には、特に限定はない。例えば、最小二乗法を利用してもよい。式(3)の左辺と右辺とは、最適解の時に一致する。従って、式(3)において左辺と右辺との差分が小さくなる解(式(4)参照)は、近似解として採用することができる。式(4)は、勾配法といった最適化アルゴリズムによって近似的に解ける。
Figure 0007046543000004
逐次近似法に基づく画像再構成処理は、式(3)の近似解を得るものであり、式(3)の近似解を得る方法に特に制限はないことはすでに述べた。逐次近似法に基づく画像再構成処理には、いくつかの種類があり得る。逐次近似法に基づく画像再構成処理は、入力情報に含まれるノイズなどの影響を考慮に入れることが可能である。従って、逐次近似法に基づく画像再構成処理は、FBP法と比較して優れた画質の断層画像を得ることができる。しかしながら、逐次近似法に基づく画像再構成処理は、FBP法と比較して近似解を得るための計算コストが高い。例えば、逐次近似法に基づく画像再構成処理に要する計算コストは、FBP法に要する計算コストの数倍から数十倍程度である。従って、過去には、研究分野を除き、医療現場といった実利用分野において、逐次近似法に基づく画像再構成処理の導入事例は少なかった。近年は、計算機の能力の向上により、徐々に実利用分野への導入が進んでいる。例えば、下記の電子技術情報(1),(2)には、逐次近似法に基づく画像再構成処理を医療現場へ導入した事例が報告されている。
電子技術情報(1):[online]、愛染橋病院、[2017年8月15日検索]、インターネット〈http://www.aizenen.or.jp/byouin/info/hosyasenka/ct〉。
電子技術情報(2):菅原崇、"CT-iDose─最大80%の被ばく低減を実現する画像再構成法"、2010年10月、[online]、株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン、[2017年8月15日検索]、インターネット〈http://www.innervision.co.jp/suite/philips/technote/101068/index.html〉。
逐次近似法に基づく画像再構成処理は、FBP法にはない利点を有する。例えば、人体の断層画像を得る場合には、人体への影響を低減するために、照射するX線の強度をできるだけ小さくすることが望ましい。しかし、X線の強度を小さくすると、カメラ4の入射されるX線Rの強度値Iに対して相対的にノイズ等の影響が大きくなる。換言すると、X線Rの強度値Iを小さくすると、S/N比が低下する。FBP法を用いる場合、S/N比の低下は画質の低下を招く。一方、逐次近似法に基づく画像再構成処理は、ノイズ等の影響を受けにくいことはすでに述べた。従って、逐次近似法に基づく画像再構成処理によれば、人体へ照射されるX線Rの強度値Iを小さくしつつも、良好な画質を有する断層画像を得ることができる。
ところで、上記の説明においては、X線Rの強度値Iの減衰は、X線Rが実試料100を透過した際に生じるものとした。従って、実試料100を透過しないX線Rは、X線Rの強度値Iの変化はないはずである。しかし、いくつかの理由により、実試料100を透過しないX線Rにも、強度値Iの変化が生じることがある。また、実試料100を透過するX線Rにも、実試料100の特性に起因しない強度値Iの変化が生じることがある。例えば、X線源2から出射されたX線Rの強度値Iが変化(α倍)した場合は、式(5)によって示される。
Figure 0007046543000005

つまり、逐次近似法に基づく画像再構成処理において精度のよい解を得るためには、実試料100の特性に起因しない強度の変化(右辺におけるln(α))を考慮する必要がある。以下の説明において、実試料100の特性に起因しない強度値Iの変化を「背景ゆらぎ」と呼ぶ。
この背景ゆらぎは、空間方向における強度値Iの変化ではなく、時間方向における強度値Iの変化である。例えば、図3の(a)部に示されるように、横軸に位置を示し、縦軸に背景光強度を示したとき、グラフG3aに示すように位置に応じて背景光強度が変化することがあり得る。本実施形態で補正される背景ゆらぎは、図3の(a)部に示されるような位置に応じたゆらぎではない。一方、図3の(b)部に示されるように、あるタイミング(t)で背景光強度(グラフG3c)を得たとする。そして、時間Δtの経過後(t+Δt)に再び背景光強度(グラフG3b)を得たとする。そうすると、時間Δtの経過によって、時間(t+Δt)における背景光強度(グラフG3b)は時間(t)における背景光強度(グラフG3c)に対して高くなる(例えばα倍)場合が生じ得る。本実施形態で補正される背景ゆらぎは、図3の(b)部におけるグラフG3b,G3cに示されるような時間的なゆらぎである。このような時間方向における強度のゆらぎは、例えば、X線源の安定性に起因し得る。
そうすると、実試料100の断層画像を得る場合には、実試料100を回転させながら複数の情報を得る。このとき、ある回転角度(θ)における情報を得た時間と、次の回転角度(θ+Δθ)における情報を得た時間との間には、例えば時間(Δt)が存在する。従って、角度ごとに得た情報は強度のゆらぎを含むが、このゆらぎは角度位置の相違に起因するものではなく、時間の経過に起因するものである。
要するに、FBP法に基づく画像再構成処理は、背景ゆらぎの影響を受けにくいが、ノイズの影響を受けやすい。一方、逐次近似法に基づく画像再構成処理は、ノイズの影響を受けにくくすることが可能であるが、背景ゆらぎの影響を無視することができない。そこで、処理装置10は、FBP法に基づく画像再構成処理と逐次近似法に基づく画像再構成処理とを組み合わせる。具体的には、処理装置10は、FBP法に基づく画像再構成処理の利用により背景ゆらぎの影響が低減された仮想投影像情報を算出し、当該仮想投影像情報を逐次近似法に基づく画像再構成処理を利用して断層画像を得る。
図1に示されるように、処理装置10は、機能的構成要素として、情報取得部11と、第1画像再構成部12と、仮想投影像算出部13と、補正係数算出部14と、補正処理部15と、第2画像再構成部16と、を有する。これらの要素は、プログラムをメモリ上に展開し、CPUによってプログラムを実行することにより機能を発揮する。
情報取得部11は、記録装置5に接続される。情報取得部11は、記録装置5から実投影像情報(第1投影像情報)を受け取る。実投影像情報は、画素Pの位置と、X線の強度値Iを示す数値と、が関連付けられた情報である。
第1画像再構成部12は、情報取得部11に接続される。第1画像再構成部12は、実投影像情報を入力として、フィルタ補正逆投影処理を行う。フィルタ補正逆投影処理は、上述したFBP法である。従って、第1画像再構成部12は、FBP法による推定断層画像情報(第1断層画像情報)を出力する。推定断層画像情報は、微小領域Aijと線減弱係数{μij}とが関連付けられた情報を含む。
第1画像再構成部12は、まず、実投影像情報に対してフィルタ処理を行う。第1画像再構成部12は、高周波強調フィルタ処理部12aと、再構成処理部12bと、を含む。高周波強調フィルタ処理部12aは、実投影像情報における高周波成分を強調すると共に、実投影像情報における直流成分をカットする。次に、再構成処理部12bは、フィルタ処理がなされた実投影像情報を重ね合わせる再構成処理を行う。この再構成処理によって、第1断層画像に関する推定断層画像情報が得られる。
仮想投影像算出部13は、第1画像再構成部12と補正係数算出部14とに接続される。仮想投影像算出部13は、第1画像再構成部12から推定断層画像情報を得る。そして、仮想投影像算出部13は、推定断層画像情報が示す仮想試料に対してX線Rを照射したときに得られる仮想投影像情報(第2投影像情報)を算出する。この処理は、いわゆる順投影処理である。
補正係数算出部14は、第1画像再構成部12と情報取得部11と補正処理部15とに接続される。補正係数算出部14は、第1画像再構成部12から推定断層画像情報を得る。また、補正係数算出部14は、情報取得部11から投影像情報を得る。そして、補正係数算出部14は、背景ゆらぎを補正するための係数を算出する。具体的には、きざみ角度Δθごとに、補正係数G(θ)を算出する。
補正処理部15は、補正係数算出部14と情報取得部11と第2画像再構成部16とに接続される。補正処理部15は、補正係数算出部14から補正係数G(θ)を得る。また、補正処理部15は、情報取得部11から実投影像情報を得る。補正処理部15は、補正係数G(θ)を利用して、実投影像情報を補正する。この補正処理により、背景ゆらぎ成分が補正された補正投影像情報を得る。
第2画像再構成部16は、補正処理部15に接続される。第2画像再構成部16は、補正処理部15から補正投影像情報を得る。そして、第2画像再構成部16は、逐次近似法に基づく画像再構成処理により、補正投影像情報から補正断層画像情報(第2断層画像情報)を算出する。
<断層画像撮影方法>
以下、断層画像撮影方法について説明する。断層画像撮影方法は、上述したコンピュータ断層画像撮影装置1によって実行される。図4に示されるように、断層画像撮影方法は、準備工程S1と、情報取得工程S2と、第1画像再構成工程S3と、仮想投影像算出工程S4と、補正係数算出工程S5と、補正処理工程S6と、第2画像再構成工程S7と、を有する。
<準備工程>
まず、準備工程S1を実施する。具体的には、まず、X線源2からX線R0iを照射して、カメラ4にX線像が結像するように集光ミラー6、結像ミラー7及びカメラ4の相対的な位置を調整する。次に、回転ステージ3に実試料100を配置する。その後、X線源2からX線R0iを実試料100に向けて照射する。
<情報取得工程>
情報取得工程S2は、情報取得部11において実行される。情報取得工程S2では、複数の実投影像情報を得る。実投影像情報は、きざみ角度Δθごとに得る。図2に示されるように、この実投影像情報は、X線R0iの照射方向と直交する方向に並置された複数の画素Pの位置と、当該位置における画素Pから出力される強度値Iと、の組み合わせである。実投影像情報は、画素Pの位置を第1軸に示し、当該位置における強度値Iを第2軸に示した分布図により示すことも可能である。
まず、コンピュータ断層画像撮影装置1は、回転ステージ3の初期の角度θ(0)における実投影像情報を得る。次に、コンピュータ断層画像撮影装置1は、回転ステージ3を刻み角度(Δθ)だけ回転させる(図5参照)。次に、コンピュータ断層画像撮影装置1は、角度(θ+Δθ)における実投影像情報を得る。以下同様に、コンピュータ断層画像撮影装置1は、回転ステージ3をきざみ角度Δθだけ回転させる動作と、回転後に実投影像情報を得る動作と、を繰り返し実行する。これらの動作は、回転ステージ3の角度θが、初期角度に対して+180度となるまで繰り返し実行する。コンピュータ断層画像撮影装置1は、この情報取得工程S2を実施することにより、(180/Δθ)個の実投影像情報を得る。これらの実投影像情報は、記録装置5に記録される。
<第1画像再構成工程>
第1画像再構成工程S3は、情報取得部11及び第1画像再構成部12において実行される。第1画像再構成工程S3では、実投影像情報を処理対象として、いわゆるフィルタ補正逆投影法であるFBP法による画像再構成処理を行う。この処理によれば、推定断層画像を示す推定断層画像情報が得られる。推定断層画像は、高周波フィルタ処理により背景ゆらぎが低減されている。
まず、第1画像再構成部12は、それぞれの角度θにおける実投影像情報に対して、高周波フィルタ処理を行う。具体的には、第1画像再構成部12は、情報取得部11を介して記録装置5から実投影像情報を読み出す。続いて第1画像再構成部12は、実投影像情報を示す近似線(図6の(a)部参照)に対して、所定の周波数以上を強調し、所定の周波数以下を減衰させるフィルタ関数(ハイパスフィルタ関数)を乗算する。実投影像情報を示す近似線において、実試料100に起因する部分は高周波成分であるため、強調される。一方、背景ゆらぎに起因する部分は高周波成分ではなく、直流成分であるため、減衰される(図6の(b)部参照)。そして、第1画像再構成部12は、フィルタ処理がなされた実投影像情報を逆投影し、重ね合わせることで画像を再構成する。すべての実投影像情報を重ね合わせると、推定断層画像を示す推定断層画像情報が得られる。具体的には、推定断層画像情報は、線減弱係数{μij}の分布を示す情報を有する。第1画像再構成部12は、推定断層画像情報を仮想投影像算出部13に出力する。
<仮想投影画像算出工程>
仮想投影像算出工程S4は、仮想投影像算出部13によって実行される。仮想投影像算出工程S4では、推定断層画像情報を利用して、順投影処理を行う。順投影処理とは、逆投影処理の逆処理である。逆投影処理は、投影像情報から断層画像を得る処理である。一方、順投影処理は、断層画像から投影像情報を計算により得る処理である。具体的には、推定断層画像情報に示される仮想試料に対して強度値Iを有するX線Rを照射した場合に、仮想試料を透過した後のX線Rの強度値Iを計算により得る。推定断層画像情報を用いた順投影処理によれば、背景ゆらぎが低減された仮想投影像情報が得られる。
まず、仮想投影像算出部13は、第1画像再構成部12から推定断層画像情報を読み込む。続いて、初期の角度θとしたときに、強度値Iを有するX線Rを仮想試料に照射したとする。このときに仮想試料を透過した後のX線Rの強度値Iは、式(6)により得られる。ここで、式(6)における線減弱係数μは、推定断層画像情報から得る。透過長さlijは、第1画像再構成工程S3において設定した微小領域Aijの長さと同じであるとする。仮想試料に入射するX線Rの強度値Iは、情報取得工程S2において実試料100に照射されたX線Rの強度値Iであるとする。計算の結果、画素Pに入射されるX線Rは、強度値IKiを有し、画素Pi+1に入射されるX線Ri+1は、強度値IKi+1を有し、画素Pi+2に入射されるX線Ri+2は、強度値IKi+2を有する。従って、仮想投影像算出部13は、実投影像情報と同様の形式を有する仮想投影像情報を得る。要するに、生データである実投影情報に基づいて、図6の(a)部に示される情報を得た後に、図6の(a)部に示される情報に対して高周波強調フィルタ処理を行い、図6の(b)部に示される分布を得る。そして、図6の(b)部に示される情報に基づく逆投影処理によって、仮想投影像を得る。仮想投影像算出部13は、上記の計算を、きざみ角度Δθごとに実行する。仮想投影像情報は、補正係数算出部14に出力される。
Figure 0007046543000006
<補正係数算出工程>
補正係数算出工程S5は、補正係数算出部14において実行される。補正係数算出工程S5では、実投影像情報と、仮想投影像情報と、を用いて補正係数G(θ)を算出する。この計算は、きざみ角度Δθごとに実行される。
まず、補正係数算出部14は、情報取得部11から実投影像情報を読み込む。さらに、補正係数算出部14は、仮想投影像算出部13から仮想投影像情報を読み込む。続いて、補正係数算出部14は、角度θにおける、実投影像情報が有する強度値Iの合計値K1(θ)を得る(式(7)参照)。具体的には、補正係数算出部14は、画素Pにおける強度値Iと、画素Pi+1における強度値Ii+1と、画素Pi+2における強度値Ii+2と、を足し合わせる。さらに、補正係数算出部14は、角度θにおける、仮想投影像情報が有する数値の合計値K2(θ)を得る(式(8)参照)。具体的には、補正係数算出部14は、画素Pにおける強度値IKiと、画素Pi+1における強度値IKi+1と、画素Pi+2における強度値IKi+2と、を足し合わせる。そして、補正係数算出部14は、仮想投影像情報の合計値K2(θ)を実投影像情報の合計値K1(θ)で除する(式(9)参照)。補正係数算出部14は、この除算により、角度θにおける補正係数G(θ)を得る。補正係数算出部14は、上述した処理をきざみ角度Δθごとに行う。補正係数算出部14は、その結果、きざみ角度Δθごとに補正係数G(θ)が得られる。
Figure 0007046543000007

Figure 0007046543000008

Figure 0007046543000009
<補正処理工程>
補正処理工程S6は、補正処理部15において実行される。補正処理部15では、補正係数G(θ)を利用して実投影像情報を補正する。この処理は、きざみ角度Δθごとに実行される。
まず、補正処理部15は、情報取得部11から実投影像情報を読み込む。さらに、補正処理部15は、補正係数算出部14から補正係数G(θ)を読み込む。続いて、補正処理部15は、角度θにおける実投影像情報に角度θにおける補正係数G(θ)を乗ずる。具体的には、実投影像情報は、強度値I、Ii+1、Ii+2を含む。補正処理部15はそれぞれの強度値I、Ii+1、Ii+2に対して補正係数G(θ)を乗ずる。その結果、補正された強度値ISi、ISi+1、ISi+2を得る。この処理により、これら補正された強度を含む情報として、きざみ角度Δθごとに補正投影像情報を得る。
<第2画像再構成工程>
第2画像再構成工程S7は、第2画像再構成部16において実行される。第2画像再構成工程S7では、補正投影像情報を処理対象として、逐次近似法に基づく画像再構成処理を行う。この処理によれば、補正断層画像を示す補正断層画像情報が得られる。補正断層画像は、背景ゆらぎが低減されており、かつ、ノイズの影響が考慮されるので、良好な画質を有する。
具体的には、第2画像再構成部16は、所定の逐次近似型の画像再構成アルゴリズムを実行する。この逐次近似型の画像再構成アルゴリズムとして、例えば、Simultaneous Algebraic Reconstruction Technique法及びMaximum LikelihoodExpectation Maximization法などを利用してよい。
以上の各工程を実行することにより、良好な画質を有する補正断層画像が得られる。
コンピュータ断層画像撮影装置1及び断層画像撮影方法は、実投影像情報を利用して第1画像再構成部12において推定断層画像情報を得る。この実投影像情報は、実試料100の特性に起因する真の情報と、実試料100の特性に起因しない背景ゆらぎの情報と、ノイズに関する情報と、を含む。コンピュータ断層画像撮影装置1は、推定断層画像情報を得るに際して第1画像再構成部12がフィルタ補正逆投影法に基づく画像再構成処理を行う。ここで、実試料100の特性に起因する真の情報は高周波成分として含まれ、実試料100の特性に起因しない背景ゆらぎの情報は直流成分として示される。第1画像再構成部12の処理によれば、実投影像情報に含まれる真の情報に対してバックグラウンド成分である背景ゆらぎに関する情報が及ぼす影響が低減される。
コンピュータ断層画像撮影装置1は、推定断層画像情報を利用して仮想投影像情報を得る。仮想投影像情報は、実試料100の特性に起因する真の情報と、ノイズに関する情報と、を含む。続いて、コンピュータ断層画像撮影装置1は、補正係数算出部14が実投影画像情報及び仮想投影像情報を利用して、補正係数G(θ)を得る。実投影像情報は実試料100の特性に起因しない背景ゆらぎの情報を含み、仮想投影像情報は実試料100の特性に起因しない背景ゆらぎの情報を実質的に含まない。従って、実投影像情報に占める背景ゆらぎの情報の度合いを補正係数G(θ)として得ることができる。
さらに、コンピュータ断層画像撮影装置1は、補正係数G(θ)を利用して実投影像情報を補正する。この補正によれば、実投影像情報に占める背景ゆらぎの度合いを低下させた補正投影情報を得ることができる。そして、コンピュータ断層画像撮影装置1は、第2画像再構成部16が補正投影情報を利用して逐次近似法に基づく画像再構成処理を行う。この逐次近似法に基づく処理によれば、補正投影情報に未だ含まれるノイズに関する情報の影響を低減させつつ、画像を再構成することが可能である。従って、コンピュータ断層画像撮影装置1によれば、背景ゆらぎ及びノイズの影響が抑制されるので、良好な画質を有する断層画像を得ることができる。
実投影像情報は、実試料100における互いに異なる位置を透過した複数のX線R,Ri+1,Ri+2に関する強度値I,Ii+1,Ii+2を含み、仮想投影像情報は、仮想試料における互いに異なる位置を透過した複数のX線R,Ri+1,Ri+2に関する強度値IKi,IKi+1,IKi+2を含み、補正係数算出部14は、強度値I,Ii+1,Ii+2の合計値K1(θ)を算出すると共に強度値IKi,IKi+1,IKi+2の合計値K2(θ)を算出し、合計値K2(θ)を合計値K1(θ)で除することにより、補正係数G(θ)を得る。この補正係数G(θ)によれば、実投影像情報に占める背景ゆらぎの情報の度合いを好適に示すことができる。
第1画像再構成部12は、実投影像情報に含まれる高周波成分を強調する高周波強調フィルタ処理部12aと、高周波強調フィルタ処理部12aから出力された情報を利用して、推定断層画像情報を得る再構成処理部12bと、を有する。この構成によれば、実投影像情報に含まれる背景ゆらぎに起因する情報に対する真の情報の比率が拡大する。すなわち、実投影像情報に含まれる背景ゆらぎに起因する情報を実質的にカットすることができる。
実投影像情報は、実試料100における互いに異なる位置を透過した複数のX線R,Ri+1,Ri+2に関する強度値I,Ii+1,Ii+2を含む。仮想投影像情報は、仮想試料における互いに異なる位置を透過した複数のX線R,Ri+1,Ri+2に関する強度値IKi,IKi+1,IKi+2を含む。推定断層画像情報は、実試料100におけるX線Rに関する線減弱係数{μij}の分布を示す情報を含む。仮想投影像算出部13は、実試料100に照射されたX線Rの強度値Iと、推定断層画像情報に含まれた線減弱係数{μij}の分布を示す情報と、を利用して、仮想投影像情報に含まれた強度値IKiを算出する。この構成によれば、仮想投影像情報を得ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、図7に示されるような構成を有するコンピュータ断層画像撮影装置1Aにおいても良好な画質を有する断層画像を得ることができる。コンピュータ断層画像撮影装置1Aは、回転ステージ3Aを有する。回転ステージ3Aの試料保持面3aには、生体試料101が配置されている。回転ステージ3Aは、試料保持面3aがX線源2と対面可能に配置されている。そして、回転ステージ3Aは、試料保持面3aがX線源2と対面する方向と直交する軸線Mのまわりに回転する。
今、回転ステージ3AがX線源2と正対する位置において、投影像情報を得る。X線R0i,R0i+1,R0i+2は、回転ステージ3Aを透過してカメラ4に至る。このとき、X線R0i,R0i+1,R0i+2が回転ステージ3Aを透過するときに通過する長さは、それぞれ長さtである。次に、回転ステージ3Aが時計方向へ角度Δθだけ回転する。そして、この位置において、投影像情報を得る。このとき、X線R0iが回転ステージ3Aを透過するときに通過する長さは、長さt1である。X線R0i+1が回転ステージ3Aを透過するときに通過する長さは、長さt2である。そして、X線R0i+2が回転ステージ3Aを透過するときに通過する長さは、長さt3である。これらの長さt1,t2,t3は、長さtと異なる。そうすると、カメラ4に入射されるX線R,Ri+1,Ri+2の強度値I,Ii+1,Ii+2は、見かけ上ゆらいでいるようにみえる。つまり、X線R,Ri+1,Ri+2の強度値I,Ii+1,Ii+2は、回転角度ごとに異なる値を取る場合が生じ、回転角度の相違は強度を取得した時間の相違でもある。従って、時間方向に強度値I,Ii+1,Ii+2がゆらいでいるようにみえる。
このようなゆらぎに対して、回転ステージ3Aの回転に起因するゆらぎを予め補正情報として取得し、生体試料101の撮像時に当該補正情報を利用して、投影像情報を補正することもあり得る。しかし、この場合には、補正情報を得るときの角度と、生体試料101を配置したときの角度とを、正確に一致させる。また、角度θがゼロであるときに回転ステージ3Aを透過した後のX線の強度を予め取得する。そして、当該強度に対して1/cosθを乗算することによって、補正情報を得ることもあり得る。しかし、基準となる回転ステージ3Aを透過した後のX線の強度を得るときに、回転ステージ3Aの角度を精度良く調整する。
一方、コンピュータ断層画像撮影装置1Aによれば、予め補正情報を取得する必要がない。従って、ゆらぎの影響を低減し、良好な画質を有する生体試料101の断層画像を容易に得ることができる。
<実験例>
実験例として、実施形態に係る断層画像撮影方法の効果をシミュレーションにより確認した。試料として平板状試料を用いた。この試料に対してX線を照射し、試料を透過した後のX線に関する情報を得た。そして、当該情報を利用して、断層像のプロファイルを得た。また、仮想的なゆらぎとして、試料の回転角度が0度以上90度以下であるときに、ゆらぎ強度(IN)を導入した。そして、試料の回転角度が90度より大きく180度以下であるときにゆらぎ強度(IN/2)を導入した。つまり、ゆらぎ強度は、回転角度が90度より大きく180度以下であるとき、0度以上90度以下の半分に変化するものとした。
図8は、断層像のプロファイルを示す。横軸は、板の厚み方向における位置である。縦軸は、当該位置における線減弱係数である。グラフG1に示されるように、試料が配置された領域C1においては、有意な線減弱係数の分布が確認できた。さらに、試料が配置されていない領域C2においては、線減弱係数の分布のゆらぎが現れていないことが確認できた。つまり、領域C2には試料がないので、線減弱係数の真値はゼロであり、強度ゆらぎの影響を低減できていることが確認された。従って、実施形態に係る断層画像撮影方法は、導入された仮想的な強度ゆらぎを低減できることがわかった。
また、比較例1として仮想的な強度のゆらぎを導入しない条件下において、FBP法に基づく処理を行った。図8に示されるグラフG2は、比較例1の結果を示す。グラフG2によれば、比較例1ではそもそもゆらぎを導入しないので、試料が配置されていない領域C2において線減弱係数のゆらぎが現れていない。すなわち、グラフG2の例では、そもそも強度ゆらぎの影響が存在しないので、線減弱係数の分布は真値に近い値となることが確認できた。実施例1の結果を、比較例1の結果と比較すると、断層像のプロファイルを示すグラフG1,G2は略同様の傾向を示すことがわかった。従って、実施形態に係る断層画像撮影方法は、導入された仮想的な強度ゆらぎを有効に低減し得ることがわかった。
さらに、比較例2として仮想的な強度のゆらぎを導入し、逐次近似法に基づく処理として共役勾配法に基づく処理を行った。すなわち、比較例2では、強度のゆらぎを低減する処理を行っていない。図8に示されたグラフG3は、比較例2の結果を示す。グラフG3によれば、試料が配置されていない領域C2において真値と乖離する線減弱係数の分布が現れていることが確認できた。つまり、比較例2では、強度ゆらぎの影響によって、線減弱係数の誤差が拡大することが確認された。従って、強度のゆらぎを低減する処理を含む実施形態に係る断層画像撮影方法によれば、導入された仮想的な強度ゆらぎを有効に低減し得ることがわかった。
1,1A…コンピュータ断層画像撮影装置、2…X線源、3,3A…回転ステージ、3a…試料保持面、4…カメラ、5…記録装置、6…集光ミラー、7…結像ミラー、10…処理装置、11…情報取得部、12…第1画像再構成部、12a…高周波強調フィルタ処理部、12b…再構成処理部、13…仮想投影像算出部、14…補正係数算出部、15…補正処理部、16…第2画像再構成部、100…実試料、101…生体試料、R,R0i…X線、P…画素、I,I…強度値、lij…透過長さ、μij…線減弱係数。

Claims (4)

  1. 放射線を実試料に照射し、前記実試料を透過した前記放射線を利用して前記実試料の断層画像を得る断層画像撮影装置であって、
    前記実試料を透過した前記放射線に関する第1投影像情報を利用してフィルタ補正逆投影法に基づく画像再構成処理を行うことにより、第1断層画像情報を得る第1画像再構成部と、
    前記第1断層画像情報によって示される仮想試料を透過した前記放射線の強度を推定することにより、前記仮想試料を透過した前記放射線に関する第2投影像情報を算出する仮想投影像算出部と、
    前記第1投影像情報及び前記第2投影像情報を利用して、補正係数を算出する補正係数算出部と、
    前記補正係数を利用して前記第1投影像情報を補正することにより、前記実試料を透過した前記放射線に関する補正投影像情報を得る補正処理部と、
    前記補正投影像情報を利用して逐次近似法に基づく画像再構成処理を行うことにより、前記実試料の前記断層画像に関する第2断層画像情報を得る第2画像再構成部と、を備え
    前記第1投影像情報は、前記実試料における互いに異なる位置を透過した複数の前記放射線に関する第1強度値を含み、
    前記第2投影像情報は、前記仮想試料における互いに異なる位置を透過した複数の前記放射線に関する第2強度値を含み、
    前記補正係数算出部は、
    前記第1強度値の合計値を算出すると共に前記第2強度値の合計値を算出し、前記第2強度値の合計値を前記第1強度値の合計値で除することにより、前記補正係数を得る、断層画像撮影装置。
  2. 前記第1画像再構成部は、
    前記第1投影像情報に含まれる高周波成分を強調する高周波強調フィルタ処理部と、
    前記高周波強調フィルタ処理部から出力された情報を利用して、前記第1断層画像情報を得る再構成処理部と、を有する、請求項1に記載の断層画像撮影装置。
  3. 前記第1投影像情報は、前記実試料における互いに異なる位置を透過した複数の前記放射線に関する第1強度値を含み、
    前記第2投影像情報は、前記仮想試料における互いに異なる位置を透過した複数の前記放射線に関する第2強度値を含み、
    前記第1断層画像情報は、前記実試料における前記放射線に関する線減弱係数の分布を示す情報を含み、
    前記仮想投影像算出部は、前記実試料に照射された前記放射線の強度と、前記第1断層画像情報に含まれた線減弱係数の分布を示す情報と、を利用して、前記第2投影像情報に含まれた前記第2強度値を算出する、請求項1又は2に記載の断層画像撮影装置。
  4. 放射線を実試料に照射し、前記実試料を透過した前記放射線を利用して前記実試料の断層画像を得る断層画像撮影方法であって、
    前記実試料を透過した前記放射線に関する第1投影像情報を利用してフィルタ補正逆投影法に基づく画像再構成処理を行うことにより、第1断層画像情報を得る工程と、
    前記第1断層画像情報によって示される仮想試料を透過した前記放射線の強度を推定することにより、前記仮想試料を透過した前記放射線に関する第2投影像情報を算出する工程と、
    前記第1投影像情報及び前記第2投影像情報を利用して、補正係数を算出する工程と、
    前記補正係数を利用して前記第1投影像情報を補正することにより、前記実試料を透過した前記放射線に関する補正投影像情報を得る工程と、
    前記補正投影像情報を利用して逐次近似法に基づく画像再構成処理を行うことにより、第2断層画像情報を得る工程と、を有し、
    前記第1投影像情報は、前記実試料における互いに異なる位置を透過した複数の前記放射線に関する第1強度値を含み、
    前記第2投影像情報は、前記仮想試料における互いに異なる位置を透過した複数の前記放射線に関する第2強度値を含み、
    前記補正係数を算出する工程では、
    前記第1強度値の合計値を算出すると共に前記第2強度値の合計値を算出し、前記第2強度値の合計値を前記第1強度値の合計値で除することにより、前記補正係数を得る、断層画像撮影方法。
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