本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
図1は、実施形態の呼吸抵抗測定装置1の主要構成例を示すブロック図である。呼吸抵抗測定装置1は、測定部10と、データ管理部20とを備える。測定部10は、呼吸抵抗の測定に用いられる。データ管理部20は、測定部10を用いて測定された呼吸抵抗に関するデータを利用した各種の処理を行う。
図2は、測定部10の主要構成例を示す模式図である。測定部10は、負荷発生部11、流量計測部12、圧力計測部13、分岐管14、ニューモタコグラフ15、マウスピース16等を備える。実施形態の測定部10は、所謂広域周波オシレーション法と呼ばれる呼吸抵抗測定方法で被験者の呼吸抵抗を測定するためのものである。
負荷発生部11は、被験者が行う呼吸により生じる気流B(安静換気)に対して負荷を与える。負荷発生部11は、例えば、気流Bが流れる流路に対して波動Oを発生して負荷を与えるスピーカである。流量計測部12は、気流Bの流量を測定するセンサである。圧力計測部13は、気流Bの圧力を測定するセンサである。
分岐管14は、気流Bが流れる管状の流路の終端側に設けられて、終端側を2分岐させるY字状の管路を有する部材である。負荷発生部11には、2分岐した流路の一端側に負荷発生部11が設けられ、他端側に終端抵抗14aが設けられている。負荷発生部11及び終端抵抗14aは、流路の終端の一部又は全部を塞いでいる。ニューモタコグラフ15は、分岐管14とマウスピース16との間に介在するように気流Bの流路に設けられる。ニューモタコグラフ15には、流量計測部12、圧力計測部13及びスクリーン15aが設けられる。スクリーン15aは、気流Bが通過可能に設けられる。気流Bがスクリーン15aに与える影響に基づいて、流量計測部12及び圧力計測部13がセンシングを行う。マウスピース16は、気流Bの流路の始端側に設けられる。マウスピース16に、被験者の口(又は、鼻及び口)が密着されて呼吸が行われる。
図2に示す負荷発生部11は、負荷制御部11aとユニット11bとを含む。負荷制御部11aは、流量計測部12が測定する流量のデータ及び圧力計測部13が測定する圧力のデータに基づいて、呼吸のタイミングに合わせてユニット11bに負荷を発生させる。ユニット11bは、負荷制御部11aの制御下で波動Oを発生させて気流Bに対して負荷を与える。
実施形態では、ユニット11bが発生させる波動Oとして、例えば、ハニング波、雑音波等の広帯域周波数成分を含む波動が採用されている。波動Oの周波数帯は、例えば、5~35Hzである。これら例示された波動Oの詳細は、あくまで広域周波オシレーション法で採用されるオシレーション波の具体例であってこれらに限られるものでなく、適宜変更可能である。
負荷制御部11aは、流量計測部12及び圧力計測部13からのデータと、ユニット11bに負荷を発生させたタイミング及び負荷の種類(周波数等)を示すデータとをデータ管理部20に出力する。流量計測部12及び圧力計測部13からのデータは、負荷制御部11aを介さずデータ管理部20に出力されてもよい。
データ管理部20は、記憶部21、演算部22、表示部23、入力部24等を備える。記憶部21は、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)、フラッシュメモリーその他の記憶装置のいずれかを有し、各種のデータを記憶する。記憶部21は、例えば、測定データ210、表示プログラム220、判定プログラム230等を記憶する。
測定データ210は、過去に測定部10を用いて行われた測定結果を示すデータである。また、被験者が新たに行った測定によって測定部10からデータ管理部20に出力された新たな測定結果を示すデータ(追加データAD)は、1人の被験者の1回分の測定データ210として扱われる。すなわち、測定部10を用いて測定が行われるたび、測定データ210に含まれる被験者のデータは増加する。
表示プログラム220は、測定データ210に基づいた表示出力を行うためのソフトウェア・プログラムである。以下、単にプログラムと記載した場合、ソフトウェア・プログラムのことをさす。判定プログラム230は、表示出力内容を制御するためのプログラムである。これらのプログラムにより実現される機能については後述する。
演算部22は、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路を有し、記憶部21に記憶されているプログラム、データを読み出して実行処理し、データ管理部20の動作に関する各種の処理を行う。表示部23は、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネセンスディスプレイその他の表示装置のいずれかを有し、演算部22の処理内容に応じた表示出力を行う。入力部24は、例えば表示部23の表示領域に対するタッチ操作を検出するタッチパネル、キーボード、マウスその他の入力装置のいずれかを有し、データ管理部20に対するユーザの手動入力操作を受け付ける。
まず、データ管理部20によるデータ表示機能の概要について説明する。演算部22は、流量計測部12及び圧力計測部13からのデータに基づいて高速フーリエ変換等の処理を行い、当該データが検出された被験者の呼吸抵抗値及びリアクタンス値を求める。演算部22は、測定部10を用いて行われた被験者の呼吸抵抗測定期間(時間)の時系列に沿って変化する気流Bの流量及び圧力に基づいて、時系列に沿って呼吸抵抗値及びリアクタンス値を求める。
演算部22は、表示プログラム220を実行し、時系列に沿った呼吸抵抗値の変化を表示部23に表示させる処理を行う。表示部23は、演算部22によって求められた呼吸抵抗値等を時系列に沿って表示する。以下、呼吸抵抗値の表示例について、図3を参照して説明する。
図3は、時系列に沿う呼吸抵抗値の波形の一例を示す3Dグラフである。図3に示す3Dグラフは、3軸のうち1つが呼吸抵抗値(R)、他の1つが周波数(F)、残りの1つが時間(T)を示す。図3のグラフでは、周波数(F)の軸に沿って手前側から奥側に渡って表示される呼吸抵抗値(R)の高低を示す波形Wが時間(T)の軸に沿って3D状に表示されることで、表示部23を見たユーザが周波数別の呼吸抵抗値の傾向を容易に把握可能になっている。図3に例示する波形Wは、波形W1,W2,W3,W4,W5,W6を含む。波形W1,W2,W3,W4,W5,W6は、それぞれ異なる周波数帯の5[Hz]幅の呼吸抵抗値を示す波形である。図3のようなグラフにおける周波数(F)と呼吸抵抗値(R)との関係は、負荷発生部11からの負荷の周波数が変化した場合に呼吸抵抗値がどのように変化したかを示している。図4以降の3Dグラフでは、3軸の矢印及び符号の図示を省略しているが、3Dグラフの解釈方法については図3と同様である。実施形態では、表示部23からの表示出力内容に呼吸抵抗値(R)、周波数(F)及び時間(T)を示す矢印は表示されないが、表示するようにしてもよい。また、図3及び図4以降の3Dグラフでは、吸気の期間にハッチングを付している。ハッチングが付されていない期間が呼気の期間である。
実施形態の表示プログラム220は、図3に例示するように、測定データ210に基づいて求められた呼吸抵抗値を3Dグラフの形態で表示出力するプログラムである。表示プログラム220による表示態様は図3に示す例に限定されず、測定部10を用いた測定によって求められた呼吸抵抗値を把握可能な形態であればよい。
また、図3等の3Dグラフは、原点SPの横軸に対する呼吸抵抗値(R)の波形Wの高さによって波形の色が変わるようになっている。具体的には、例えば指標Rrsが示すように、原点SPの横軸に対する高さと色との関係が設定されている。これによって、色に基づいた呼吸抵抗値の高低の評価が可能になる。図3に示す原点SPの横軸は、呼吸抵抗値(R)の高低を視覚化するための基準値を示す3Dグラフの縦軸(呼吸抵抗値(R))方向の底辺である。原点SPの横軸、例えばゼロ(0)の呼吸抵抗値を示すが、0を超える任意の値であってもよい。ただし、原点SPの横軸の位置は、3Dグラフに含まれる呼吸抵抗値の最低値以下であることが望ましい。なお、図3等では、ドットパターンを用いた色の濃さによって波形の色が表現されているが、実際にはカラー表示が可能である。
図3に示すグラフは、呼吸器系に特段の疾患を持たない成人の健常者が被験者である場合の呼吸抵抗値の一例を示すグラフである。図3に示すグラフのようなデータは、追加データADに限られない。図3に示すグラフのようなデータのうち、過去に実施済みのデータについては、呼吸機能が正常であると判定済みの測定結果を示す第1データ211として扱われる。図1に示すように、第1データ211は、記憶部21に記憶されている測定データ210に含まれる。また、図3に示すグラフのようなデータは、成人の健常者が被験者である場合の呼吸抵抗値のデータである。成人は、後述する小児に比して体格が大きい被験者であり、実施形態では第1被験者として扱われる。従って、図3に示すグラフのようなデータは、第1データ211に含まれる第1被験者データ211aとして扱われる。
測定データ210は、成人の健常者が被験者である場合のデータに限られない。以下、何らかの異常があると判定済みの測定結果を示す第2データ212の具体例として、喘息のような呼吸器系疾患を罹患している成人の被験者の呼吸抵抗値の一例について、図4を参照して説明する。
図4は、喘息を罹患している成人の呼吸抵抗値の波形の一例を示す3Dグラフである。図4で例示するように、喘息を罹患している成人の被験者では、一般的に、健常者である被験者に比して、より高い呼吸抵抗値が測定される傾向がある。
第2データ212として扱われるデータは、喘息を罹患している被験者のデータに限られない。例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)を罹患している被験者の呼吸抵抗値を測定したデータ、喘息とCOPDが合併したACO(Asthma and Copd Overlap)を罹患している被験者の呼吸抵抗値を測定したデータ、その他の呼吸器疾患を罹患している被験者の呼吸抵抗値を測定したデータ、測定時に測定部10の取り扱いの不備等によって正しく呼吸抵抗値が測定されなかったデータ等は、第2データ212に含まれる。また、図4に示すグラフのようなデータは、成人が被験者である場合の呼吸抵抗値のデータである。従って、図4に示すグラフのようなデータは、第2データ212に含まれる第1被験者データ212aとして扱われる。
成人のように所定年齢を超えて体格が相対的に大きいヒトと、小児のように所定年齢以下で体格が相対的に小さいヒトとでは、呼吸抵抗値が異なる傾向がある。以下、小児が被験者である場合の呼吸抵抗値の一例について、図5及び図6を参照して説明する。
図5は、健常者である小児の呼吸抵抗値の波形の一例を示す3Dグラフである。図6は、喘息を罹患している小児の呼吸抵抗値の波形の一例を示す3Dグラフである。図5及び図6で例示するように、小児の呼吸抵抗値は、一般的に、成人の呼吸抵抗値に比して高くなる傾向がある。これは、小児の体格が、一般的に、成人に比して小さいことによる。体格の大きさは、気管等、呼吸気の流路の大きさに影響を与える一因となることが知られている。一般的に、体格が小さい程、呼吸気の流路も小さくなる傾向がある。呼吸気の流路が小さいと、呼吸気の流路がより大きい場合に比して呼吸抵抗値が高くなる傾向がある。このため、小児の呼吸抵抗値は、成人の呼吸抵抗値に比して高くなる傾向がある。このような傾向を示す小児は、実施形態では第2被験者として扱われる。従って、図5に示すグラフのようなデータは、第1データ211に含まれる第2被験者データ211bとして扱われる。また、図6に示すグラフのようなデータは、第2データ212に含まれる第2被験者データ212bとして扱われる。
図5の例示では、一般的な傾向と同様、小児の呼吸抵抗値は、健常者であっても成人の呼吸抵抗値(図3参照)よりも高い。また、図6の例示では、呼吸器疾患を罹患している小児の呼吸抵抗値は、成人では一般的に測定されない程に高い。このように、被験者がどのような体格であると考えられるかという情報を考慮せずに呼吸抵抗値の測定結果を表示した場合、表示された呼吸抵抗値に基づいた診断が困難になることがある。
そこで、実施形態では、小児のように所定年齢以下である被験者(ヒト)のデータと、成人のように所定年齢を超えるである被験者(ヒト)のデータとで、グラフにおける呼吸抵抗値の原点、最高値及び最低値の少なくとも一つを異ならせる表示出力内容の制御が行われる。係る制御のため、測定データ210には、被験者の年齢を含む付加データが設定されている。
図7は、測定データ210の付加データをテーブルデータ形式で表現した場合の一例を示す図である。なお、図7では、図3のデータが「00000001」の識別番号に該当し、図4のデータが「00000002」の識別番号に該当し、図5のデータが「00000003」の識別番号に該当し、図6のデータが「00000004」の識別番号に該当することを想定している。測定データ210に含まれる複数の種類のデータは、例えば図7の識別番号のような固有の識別子によって各回の測定結果単位で区別されている。識別番号は、例えば演算部22が過去のデータに与えられていない識別番号を新たに生成し、測定部10からデータ管理部20に入力されたデータに個別に与えることで各回のデータに割り当てられる。
図7の診断結果は、例えば呼吸抵抗測定装置1のユーザが入力部24を用いて行った入力によって測定データ210に含まれる各回のデータに設定された診断結果である。「正常」の診断結果は、図1に示す第1データ211に該当するデータであることを示す。「COPD」、「喘息」、「ACO」、「その他」及び「NG」のように「正常」以外の診断結果は、図1に示す第2データ212に該当するデータであることを示す。
図7の被験者属性に含まれる年齢[歳]のカラムに設定されている値のように、測定データ210には、被験者の年齢が所定年齢以下であるか所定年齢を超えるかを判定するためのパラメータが付加されている。なお、図7の被験者属性に含まれる性別、身長[cm]、体重[kg]のカラムで例示するように、測定データ210データに含まれる各種のデータには、被験者の性別、身長[cm]、体重[kg]等、被験者の体格に関するパラメータがさらに設定されている。被験者属性のパラメータは、例えば入力部24を用いた入力を介して、ユーザにより設定される。
なお、測定データ210は、例えば、流量計測部12及び圧力計測部13からのデータを記録したもの、すなわち、高速フーリエ変換等の処理前のデータであってもよいし、流量計測部12及び圧力計測部13からのデータに基づいて演算部22が行った高速フーリエ変換等の処理によって求められた呼吸抵抗値等を示すデータであってもよい。また、図7で例示する付加データの具体的な内容はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、同様の意味を示す他の表現が用いられていてもよい。
判定プログラム230を実行中の演算部22は、付加データ(図7参照)に含まれるパラメータに基づいて、測定データ210に含まれるデータの各々が測定された被験者の体格を判定する。演算部22は、表示プログラム220の実行による3Dグラフの表示に際して、当該判定結果に応じた表示出力を表示部23に行わせる。
図8は、被験者の体格に基づいてグラフにおける呼吸抵抗値の原点と最高値の位置関係を補正した例を示す図である。図8に示すように、演算部22は、例えば、周波数及び周波数帯に関わらず、一律で原点と最高値の位置関係を補正するようにしてもよい。例えば、測定データ210に含まれる各種のデータのうち、第2被験者データ211bの呼吸抵抗値の最高値の平均値が、第1被験者データ211aの呼吸抵抗値の最高値の平均値のm倍(mは実数)である場合、演算部22は、健常者である小児の呼吸抵抗値の3Dグラフにおける最高値を、健常者である成人の呼吸抵抗値の3Dグラフにおける最高値のm倍の値にする。これによって、3Dグラフが示す呼吸抵抗値の原点に対する最高値の位置が、小児と成人とで見かけ上同じ程度の位置になる。
図8に示す例では、補正前の3Dグラフにおける呼吸抵抗値の最高値M1が、補正後に最高値M2に置換されている。ここで、最高値M1は、図3及び図4を参照して説明した成人のような第1被験者の呼吸抵抗値の3Dグラフの表示で採用される最高値である。一方、最高値M2は、小児のような第2被験者の呼吸抵抗値の3Dグラフを見かけ上成人の呼吸抵抗値と同様の観点で評価可能とするように採用される最高値である。また、例えば、M2=M1×mである。これによって、補正前の3Dグラフにおける負荷の周波数と呼吸抵抗値の高低との関係を概略的に示す曲線C1が、補正後に曲線C2の位置まで下がるように見かけ上の補正D1が生じている。補正D1及び後述の補正D21,D22,D23,D24,D25,D26(図9参照)は、呼吸抵抗値そのものの補正でなく、3Dグラフの原点SPと最高値M1,M2との間の呼吸抵抗値の尺度が補正前後で変化したことによって生じた3Dグラフの見かけ上の補正である。
図8に示す例では、補正前に波形W11側から波形W12,W13,W14,W15,W16のように負荷の周波数帯が移行するに従って呼吸抵抗値がより高くなる周波数依存性を示していた波形W10が、補正後の波形W20でも同様に、波形W21側から波形W22,W23,W24,W25,W26のように負荷の周波数帯が移行するに従って呼吸抵抗値がより高くなっている。
図8を参照して説明した補正によって、周波数間の呼吸抵抗値の高低関係を明示しつつ、被験者の年齢を考慮した測定結果の表示が可能になる。従って、成人の呼吸抵抗値の測定結果を観測する場合と同様の水準を想定して小児の呼吸抵抗値の測定結果を観測可能になり、呼吸抵抗値に基づいたユーザによる診断がより容易かつ正確になるよう支援できる。
図9及び図10は、複数の周波数帯で個別に呼吸抵抗値の原点と最高値の位置関係を補正した例を示す図である。図9は、被験者が健常者である場合の例を示す。図10は、被験者が喘息を罹患している場合の例を示す。図9に示す例では、補正前の3Dグラフにおける負荷の周波数と呼吸抵抗値の高低との関係を概略的に示す曲線C1が、補正後に曲線C3の位置まで下がるように見かけ上の補正D21,D22,D23,D24,D25,D26が生じている。補正D21と、補正D22と、補正D23と、補正D24と、補正D25と、補正D26とでは、補正の度合いが異なる。具体的には、補正の度合いがより強い順から、補正D26,D25,D24,D23,D22,D21の順に並ぶように補正の度合いが設定されている。
図3で例示したように、健常者である成人の呼吸抵抗値は、特段の周波数依存性を示さない。すなわち、波形W1,W2,W3,W4,W5,W6が概ね同じような呼吸抵抗値の最高値、最低及び増減パターンを示す。これに対し、小児の呼吸抵抗値は、成人に比して体格が小さいことによって、健常者であっても、波形W10が含む波形W11,W12,W13,W14,W15,W16の呼吸抵抗値の相違のように周波数依存性を示すことがある。成人の場合、周波数依存性を示す波形はCOPD等の呼吸器疾患を罹患している被験者に現れやすい波形であるが、小児の場合は呼吸器疾患を罹患していなくても周波数依存性を示す波形が現れることがあり、診断を困難にする一因になることがある。
具体的には、高周波数帯の負荷が与えられる条件下では、COPDを罹患している被験者の呼吸抵抗値が減少する周波数依存性が生じることがあるが、このような周波数依存性は、小児のような体格の小さい被験者特有の生理的要因(例えば、upper airway shunt)により生じることもある。
そこで、図9で例示するように、補正D21,D22,D23,D24,D25,D26のように周波数帯によって異なる補正が生じるように周波数帯毎の最高値を設定する。これによって、補正後の波形W30は、波形W31,W32,W33,W34,W35,W36間の周波数依存性が実質的に現れなくなっている。このように、健常者である小児の呼吸抵抗値が見かけ上周波数依存性を示さない波形となった3Dグラフを表示可能になる。言い換えれば、図9に示す例では、成人の呼吸抵抗値の3Dグラフに基づいた診断と同様の判断を下せるよう、小児の呼吸抵抗値の3Dグラフの見かけを補正している。このため、図9に示す例では、図8を参照して説明した最高値M1と最高値M2との関係のような一律の最高値の補正係数(m)が適用されず、周波数帯毎に呼吸抵抗値の最高値の補正係数が設定される。
補正D21,D22,D23,D24,D25,D26のように周波数帯によって異なる補正が生じるような周波数帯毎の最高値を設定するためのパラメータは、例えば、予め設定されて記憶部21等に記憶されている。具体的には、例えば、呼吸抵抗測定装置1の管理者が、測定部10を用いて、健常者である成人の呼吸抵抗値と、健常者である小児の呼吸抵抗値とをそれぞれ取得し、成人と小児との間で生じる周波数依存性の度合いの差異に対応した「周波数帯毎の最高値の補正の度合い」を周波数帯毎に決定しておく。このようにして決定された補正の度合いによって、上述の補正D21,D22,D23,D24,D25,D26のように周波数帯によって異なる補正が生じるように周波数帯毎の最高値が決定される。当該管理者は、例えば呼吸抵抗測定装置1の出荷前に判定プログラム230の機能を決定するエンジニアであってもよいし、呼吸抵抗測定装置1のユーザであってもよい。
以上、周波数帯毎の最高値の補正の度合いについて例示的に説明したが、周波数毎であってもよい。すなわち、最高値の補正の度合いをより細分化してもよい。また、周波数帯(又は周波数)毎の補正の度合いは、上述したupper airway shuntのような体格の小さい被験者特有の生理的要因を考慮して決定することが望ましい。
図10に示す例では、図9を参照して説明した補正と同様の補正が施されている。図9と図10との差異は、図9における補正前の3Dグラフが図5の3Dグラフと同様であるのに対し、図10における補正前の3Dグラフが図6の3Dグラフと同様であることによる。すなわち、図9を参照して説明した補正の度合いは、呼吸器疾患を罹患している被験者の呼吸抵抗値を3Dグラフで表示する場合に呼吸器疾患相応の呼吸抵抗値の高さ、周波数依存性等が現れるように決定されている。従って、補正によって、小児の被験者に対しても、3Dグラフを利用した診断を成人と同様に行うことができるよう支援できる。なお、第1データ211と第2データ212とで、補正の度合いを個別に設定し、呼吸抵抗値の原点と最高値の位置関係を個別に対応させるようにしてもよい。また、図8を参照して説明したような一律での呼吸抵抗値の最高値の補正と、図9を参照して説明したような周波数帯(又は周波数)毎の補正の両方を適用してもよい。この場合、結果としての補正は、周波数帯(又は周波数)毎に補正がされた状態になる。
周波数帯(又は周波数)毎の補正は、小児のUpper Airway Shuntの影響を考慮したものとすることが望ましい。具体的には、小児における強制オシレーション法による呼吸機能の測定結果として得られる呼吸抵抗値は、当該小児が健常者であっても、健常者である成人と異なる特徴を示すことが一般的に知られている。この異なる特徴として、大きく2点の特徴があげられる。1点目は、小児の気管の径が成人気管の径に比して小さいことによって呼吸抵抗値が成人のものよりも高くなる傾向を示す。2点目は、小児の場合、Upper Airway Shuntの影響により高周波領域(20Hz~35Hz)の呼吸抵抗値が下がる傾向がある。この2点のパラメータが複合されるため、全体的に呼吸抵抗値が上昇し、高周波領域が低周波領域から中周波領域よりも相対的に若干下がった傾向を示す。従って、小児の呼吸抵抗値に対して行われる周波数毎の補正において、低域周波数から中域周波数に適用される補正の度合いよりも高域周波領域に適用される度合いよりも高域周波領域に適用される補正の度合いを相対的に緩和することで、このような特徴を考慮した補正が可能になる。
また、上述のような小児の特徴は、年齢、性別、身長、体重のように、体格と関連性のある要因によって変わる傾向がある。そこで、測定データ210の付加データから把握可能な年齢、性別、身長、体重に基づいて補正の度合いを適宜決定することで、体格を考慮した補正の精度をより高められる。また、Upper Airway Shuntによる影響は、成長過程の小児に現れる影響であり、仮に小児と全く同じ体格の成人がいた場合、当該成人には現れない。そこで、付加データの被験者属性に含まれる年齢[歳]のカラムを参照し、小児に該当しない年齢である場合にはUpper Airway Shuntによる影響を考慮した補正、すなわち、高域周波領域に適用される補正の度合いを相対的に緩和する補正を行わないようにすることで、このような小児と成人との差異を考慮した補正を行うことができる。
図8から図10を参照した説明による補正は、第1被験者データ211a,212aには適用されない。すなわち、判定プログラム230を実行中の演算部22は、成人のような第1被験者に該当する被験者の呼吸抵抗値の3Dグラフにおける原点SPと呼吸抵抗値の最高値との位置関係と、小児のような第2被験者に該当する被験者の呼吸抵抗値の3Dグラフにおける原点SPと呼吸抵抗値の最高値との位置関係とを個別に制御する。表示プログラム220を実行して3Dグラフを表示部23に表示させる演算部22は、係る制御によって決定された原点SPと呼吸抵抗値の最高値との位置関係に基づいた3Dグラフの表示出力制御を行う。結果、成人のような第1被験者に該当する被験者の呼吸抵抗値の3Dグラフの表示態様は、図3、図4のような態様になる。また、仮に、図8から図10を参照した説明による補正がない場合、小児のような第2被験者に該当する被験者の呼吸抵抗値の3Dグラフの表示態様は、図5、図6のような態様になる。
付加データに基づいた第1被験者(例えば、成人)と第2被験者(例えば、小児)との区別は、例えば、第1被験者に該当する被験者の身長[cm]、体重[kg]等の閾値を示すデータに基づいて行われる。当該データは、判定プログラム230に含まれるか、判定プログラム230の実行中に参照可能なデータとして記憶部21等に記憶されている。当該データによって定められる閾値は、後述する機械学習によって更新可能であってもよい。また、当該データによって定められる閾値は、身長[cm]、体重[kg]の両方が該当すれば第1被験者として扱う閾値であってもよいし、身長[cm]、体重[kg]の一方が該当すれば第1被験者として扱う閾値であってもよい。また、身長[cm]、体重[kg]の両方が該当すれば第1被験者として扱う閾値と、身長[cm]、体重[kg]の一方が該当すれば第1被験者として扱う閾値とが個別に設定されてもよい。これらの閾値の利用方法として、例えば、閾値を超えれば第1被験者に該当し、閾値以下であれば第2被験者に該当するものとして扱う。また、閾値以上であれば第1被験者に該当し、閾値未満であれば第2被験者に該当するようにしてもよい。また、年齢[歳]で所定年齢以下であれば自動的に体格が小さいものとみなして第2被験者として扱う年齢の閾値が設定されてもよい。
図11は、データ管理部20による処理の流れの一例を示すフローチャートである。特筆しない限り、図11に示す処理は、判定プログラム230を実行中の演算部22による処理である。演算部22は、3Dグラフとして表示する表示態様になるデータを取得する(ステップS1)。ステップS1で取得されるデータは、測定データ210に含まれるデータであってもよいし、追加データADであってもよい。演算部22は、付加データに基づいて、ステップS1で取得されたデータが小児のデータに該当するか判定する(ステップS2)。ステップS2の処理で、演算部22は、例えば上述の閾値に基づいた判定によって小児であるかの判定を行う。
ステップS1で取得されたデータが小児のデータに該当すると判定された場合(ステップS2;Yes)、演算部22は、呼吸抵抗値の原点と最高値との位置関係を成人のものに合わせる補正を行う(ステップS3)。ステップS3の処理は、例えば図8を参照して説明したように最高値を最高値M2に設定するような補正であってもよいし、図9を参照して説明したように周波数帯(又周波数)毎の最高値の補正であってもよい。ステップS1で取得されたデータが小児のデータに該当すると判定された場合、演算部22は、ステップS3の処理後、表示プログラム220を実行して3Dグラフを表示部23に表示させる(ステップS4)。一方、ステップS1で取得されたデータが小児のデータに該当しないと判定された場合(ステップS2;No)、ステップS4の処理に移行する。すなわち、小児の呼吸抵抗値を成人の呼吸抵抗値と同様の見かけにするための最高値の補正は行われず、3Dグラフが表示される。
以上説明したように、呼吸抵抗測定装置1は、呼吸抵抗測定結果を示す測定データ210(追加データADを含む)を記憶する記憶部21と、測定データ210に基づいた波形のグラフ(例えば、3Dグラフ)を含む表示を行う表示部23と、表示部23の表示出力内容を制御する演算部22とを備える。測定データ210は、相対的に体格が大きい第1被験者のデータ(例えば、第1被験者データ211a,212a)と、相対的に体格が小さい第2被験者のデータ(例えば、第2被験者データ211b,212b)とを含む。測定データ210は、被験者の体格が第1被験者に該当するか第2被験者に該当するかを判定するためのパラメータ(付加データ)を含む。演算部22は、第1被験者のデータと第2被験者のデータとで、グラフにおける呼吸抵抗値の原点、最高値及び最低値の少なくとも一つを異ならせる。
これによって、第1被験者のデータに基づいたグラフと第2被験者のデータに基づいたグラフとが区別なく表示されることによる第2被験者のデータの誤認を抑制することができる。例えば、図8から図10を参照して説明したように、小児のような第2被験者のデータの3Dグラフの呼吸抵抗値の最高値と、成人のような第1被験者のデータの3Dグラフの呼吸抵抗値の最高値とを異ならせることで、3Dグラフの見かけ上の評価を同様のものにすることができる。このため、呼吸抵抗測定装置1のユーザは、第1被験者と第2被験者の区別を意識せずにグラフに基づいた評価(例えば、診断)を行える。従って、体格を考慮した診断を支援可能になる。
また、図8を参照して説明したように、第1被験者のデータのグラフにおける呼吸抵抗値の原点SPと最高値M1の位置関係と、第2被験者のデータのグラフにおける呼吸抵抗値の原点SPと最高値M2の位置関係とを対応させることで、第1被験者のデータのグラフと第2被験者のデータのグラフの見かけ上の評価を同様のものにすることができる。従って、体格を考慮した診断を支援可能になる。
また、図9及び図10を参照して説明したように、第1被験者のデータのグラフにおける呼吸抵抗値の原点SPと最高値M1の位置関係と、第2被験者のデータのグラフにおける呼吸抵抗値の原点SPと最高値M2の位置関係とを、複数の周波数又は複数の周波数帯毎に異ならせることで、第1被験者ならば周波数依存性が生じないデータに該当する第2被験者のデータのグラフで周波数依存性が現れることを抑制可能になる。従って、体格を考慮した診断を支援可能になる。
また、第1データ211と第2データ212とで個別に、グラフにおける呼吸抵抗値の原点と最高値の位置関係を対応させることで、呼吸抵抗値の測定における異常(疾患又は測定時のエラー)の有無及び異常の種類に対応したグラフの表示が可能になる。
なお、図1を参照して説明した実施形態の構成では、データ管理部20が呼吸抵抗測定装置1に含まれているが、データ管理部20の構成は、測定部10を備える呼吸抵抗測定装置1と別体の情報処理装置に含まれていてもよい。この場合、データ管理部20は、測定部10を備える呼吸抵抗測定装置1から出力される追加データADを取得し、予め記憶されている測定データ210を参照した判定を行う。
また、実施形態の呼吸抵抗測定装置1は、所謂機械学習によって、3Dグラフの表示における呼吸抵抗値の原点と最高値との位置関係の制御の精度をより高められる。例えば、所謂ニューラルネットワークにおける入力を追加データAD又は過去の測定データ210に含まれるデータとし、出力を追加データAD又は過去の測定データ210に含まれるデータの表示出力における最高値(又は最高値及び最低値)を示すデータとし、教師データを過去の測定データ210に含まれる小児のデータの表示出力において採用された呼吸抵抗値の原点と最高値との位置関係の決定に関する各種のデータとする。ここで、判定プログラム230を実行中の演算部22は、当該ニューラルネットワークにおける入力と出力との間に介在し、上述の処理(特に、図11参照)を行って入力から出力を導出するための重み付けを行う隠れ層として機能する。当該隠れ層としての演算部22は、追加データADが示す呼気及び吸気の各々の周波数又は周波数帯毎の呼吸抵抗値の最高値、最低値、一連の呼吸における増減パターンその他の特徴に基づいて追加データADに基づいた重み付けの度合いを示す値を出力することで、追加データADの表示出力における補正の度合いを決定する。
より具体的には、例えば追加データADが小児の健常者である場合に高い値を出力するニューロンと、追加データADが小児の喘息罹患者である場合に高い値を出力するニューロンと、追加データADが小児のCOPD罹患者である場合に高い値を出力するニューロンと、追加データADが小児のACO罹患者である場合に高い値を出力するニューロンと、…のように、データの種類の各々に対応したニューロンとして演算部22が機能する判定プログラム230が採用される。各ニューロンの出力は、呼吸抵抗値の最高値をどのようにするかを決定する個別の基準値と対応付けられる。すなわち、各ニューロンの出力の重みの高低が、最終的に採用される呼吸抵抗値の最高値を決定するために参照される基準値の重みの高低として機能する。ここで、個別の基準値は、例えば、上述のmであってもよいし、上述の「周波数帯(又は周波数)毎の最高値の補正の度合い」であってもよいし、最高値を決定するための絶対値として機能する基準値であってもよいし、原点に対する所定距離毎の呼吸抵抗値の上昇度合いを決定するための基準値であってもよい。
これによって、実施形態では、機械学習(ニューラルネットワーク)を利用して呼吸抵抗値の最高値を決定することができる。すなわち、判定プログラム230は、機械学習プログラムとして機能する。また、判定プログラム230を実行中の演算部22を含む構成は、所謂機械学習システムとして機能する。当段落では、追加データADの場合について例示したが、過去の測定データ210に含まれるデータについても同様に処理可能である。また、3Dグラフにおける呼吸抵抗値の最高値に限らず、3Dグラフにおける呼吸抵抗値の最低値についても同様に決定可能である。また、3Dグラフにおける原点を第1被験者と第2被験者とで異ならせることで、3Dグラフにおける呼吸抵抗値(R)の尺度を異ならせて両者の3Dグラフを見かけ上同じ程度にするようにしてもよい。
さらに、呼吸抵抗値の最高値及び最低値に基づいた重み付けを行うためのニューロンと、呼吸抵抗値の増減に基づいた重み付けを行うためのニューロンと、被験者の性別、身長、体重等の身体的特徴との関係に基づいた重み付けを行うためのニューロンと、…のように、入力と出力との間に介在する隠れ層を構成するニューロンを階層化するアルゴリズムを含む判定プログラム230が採用されることで、より高い精度が望める。これらをさらに発展させて所謂ディープラーニングによる追加データADの判定を行うようにしてもよい。
より具体的な例を挙げると、機械学習では、追加データADの呼吸抵抗値の最高値と、被験者の体格に関するパラメータ(被験者の年齢[歳]、性別、身長[cm]、体重[kg]等)との関係を測定データ210として累積的に記憶することで、蓄積された測定データ210のうち成人の体格に該当する被験者から得られた呼吸抵抗値の最高値を基準値として設定、更新する学習が行われる。また、この基準値に基づいた3Dグラフが表示されることを前提として、成人よりも体格が小さい被験者(例えば、小児)の呼吸抵抗値の最高値と基準値との差異に基づいて、係る体格が小さい被験者の呼吸抵抗値の3Dグラフを成人の呼吸抵抗値の3Dグラフと同様に表示するための最高値の補正値(例えば、m)を設定、更新する学習が行われる。すなわち、機械学習では、追加データADが測定データ210に加わる度、当該追加データADに設定された被験者の体格に関するパラメータに基づいて、基準値、最高値の補正値又はその両方を再評価し、設定、更新する学習が行われる。これによって、成人のような第1被験者の呼吸抵抗値の3Dグラフの表示における最高値(例えば、最高値M1)、小児のような第2被験者の呼吸抵抗値の3Dグラフの表示における最高値(例えば、最高値M2又は図9を参照して説明した周波数帯(又は周波数)毎の最高値)の精度をより高められる。
上述の機械学習によって追加データADと3Dグラフの表示出力における呼吸抵抗値の最高値(又は最高値及び最低値)との関係が決定されると、その後、当該関係を示すデータが教師データとして機能する。すなわち、追加データADが生じる程、測定データ210及び当該関係を示すデータがより多様なデータを含み、かつ、正しい判定結果を得るための「学習後の教師データ」として機能する。ここで、万が一、判定結果に誤りがあったとしても、例えば入力部24を介した手動入力によってユーザが当該誤りを訂正してより好ましい表示出力となる呼吸抵抗値の最高値(又は最高値及び最低値)を設定することで、演算部22は、判定プログラム230による隠れ層の重み付けを訂正する機会を得ることができる。すなわち、実施形態では、必要に応じてユーザが教師データをより正確なデータにすることができる。これによって、判定プログラム230を実行中の演算部22は、より好ましい表示出力を得られる重み付けに基づいて追加データADと3Dグラフの表示出力における呼吸抵抗値の最高値(又は最高値及び最低値)との関係を導出することができる。このような教師データと出力とのすりあわせの機会が生じ得ることを考慮し、演算部22による演算処理で機械学習を実現するための判定プログラム230は更新可能に設けられることが望ましい。
さらに、実施形態の呼吸抵抗測定装置1は、所謂機械学習によって、追加データADが過去に測定された測定データ210に含まれる各種のデータのうちどのデータに該当するかを判定可能になる。すなわち、判定プログラム230が、演算部22を追加データADに設定された付加データに基づいて特定された年齢、性別、身長、体重等のパラメータによって呼吸抵抗値の傾向の類似判定を行う対象とするデータを限定する重み付けを行うニューロン、類似の度合いに応じて重み付けを行うニューロン等として機能させることで、追加データADが第1データ211に該当するか第2データ212に該当するか等を判別可能になる。さらに、判定結果に応じて、図8から図11を参照して説明したような3Dグラフの見かけ上の補正を追加データADに対して行うことも可能になる。
また、図3等を参照した説明では、グラフが波形上の3Dグラフである場合を例としているが、グラフの具体的な形態は波形上の3Dグラフに限られるものでなく、適宜変更可能である。例えば、棒グラフの組み合わせによる3Dグラフであってもよいし、周波数又は周波数帯毎に個別に表示された2Dグラフであってもよい。
また、表示部23を用いた3Dグラフの具体的な表示態様は、適宜変更可能である。例えば、補正前後の3Dグラフを並べて表示してもよいし、入力部24からの入力に応じて3Dグラフの補正有り無しを切り替え可能にしてもよい。
また、上述の説明における「成人」と「小児」との区別は、あくまで体格の差異を区別するための例示的な表現に過ぎず、特許請求の範囲における第1被験者と第2被験者との区別が年齢に依存した区別であることを意味するものでない。第1被験者と第2被験者との区別は、年齢に関係なく、被験者の性別、身長[cm]、体重[kg]等、被験者の体格に関するパラメータによって区別されてよい。無論、被験者の年齢[歳]を被験者の体格に関するパラメータとして扱ってもよい。