以下、図面を参照して本開示の作業機械の実施形態を説明する。
[実施形態1]
図1は、本開示の作業機械の実施形態1を示す概略図である。図2は、図1に示す作業機械1の機能ブロック図である。本実施形態の作業機械1は、たとえば、情報化施工を補助するシステムを備えた半自動制御の油圧ショベルである。情報化施工は、たとえば資源採掘や建設工事の現場などでの施工において、情報通信技術を活用し、各プロセスから得られる電子情報をやり取りして、高効率、高精度の施工を実現する。詳細については後述するが、本実施形態の作業機械1は、主に、次のような構成を特徴としている。
作業機械1は、作業を行う作業装置10と、その作業装置10が取り付けられた旋回体20と、その旋回体20を旋回させる旋回装置30と、その旋回装置30を介して旋回体20を支持して走行させる走行装置40と、を備えている。また、作業機械1は、作業装置10、旋回装置30および走行装置40を駆動する駆動装置50と、作業装置10の位置および姿勢を検出する位置・姿勢検出装置としてのセンサ60と、作業装置10、旋回装置30および走行装置40の操作を指示する操作装置70と、その操作装置70の操作量を検出する操作量検出装置と、を備えている。さらに、作業機械1は、作業装置10、旋回装置30および走行装置40の操作量と作業装置10の位置および姿勢に基づいて駆動装置50を制御する制御装置80を備えている。
制御装置80は、記憶装置81と中央処理装置82とを含む。記憶装置81は、作業装置10による施工目標情報が記憶されている。中央処理装置82は、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢と、操作量検出装置によって検出された操作量と、施工目標情報とに基づいて、作業装置10の高さ変位を予測する。また、中央処理装置82は、予測した作業装置10の高さ変位に基づいて、駆動装置50の応答遅れを算出し、その応答遅れに基づいて作業装置10の操作量の補正値を算出し、作業装置10の操作量と補正値とに基づいて駆動装置50を制御してオペレータの操作を補助する。
以下、本実施形態の作業機械1の各部の構成を詳細に説明する。作業装置10は、たとえば、作業機械1が掘削作業やならし作業などの作業を行うための作業機である。作業装置10は、たとえば、ブーム11と、アーム12と、バケット13とを備えている。
ブーム11の基端部は、たとえば、作業機械1の幅方向に平行な、図示を省略する回転軸を介して旋回体20に連結されている。ブーム11は、たとえば、駆動装置50を構成するブームシリンダ51によって駆動され、旋回体20に取り付けられた図示を省略する回転軸を中心に所定の角度範囲で上下に回動する。
アーム12の基端部は、たとえば、作業機械1の幅方向に平行な回転軸12aを介してブーム11の先端部に連結されている。アーム12は、たとえば、駆動装置50を構成するアームシリンダ52によって駆動され、ブーム11に取り付けられた回転軸12aを中心に所定の角度範囲で回動する。
バケット13の基端部は、たとえば作業機械1の幅方向に平行な回転軸13a、およびリンク機構13lを介して、アーム12の先端部に連結されている。バケット13は、たとえば、駆動装置50を構成するバケットシリンダ53によって駆動され、アーム12に取り付けられた回転軸13aを中心に所定の角度範囲で回動する。
旋回体20は、前部に作業装置10が取り付けられ、後部にカウンターウェイト21が設けられている。また、旋回体20の前部には、作業機械1の幅方向において作業装置10に隣接して運転室22が設けられている。旋回体20は、旋回装置30を介して走行装置40に接続され、旋回装置30を介して走行装置40の上に支持されることで、作業機械1の上下方向に平行な回転軸を中心に走行装置40に対して旋回可能に設けられている。旋回体20は、たとえば、図示を省略する原動機、駆動装置50を構成する油圧装置および旋回モータ54、操作装置70、操作量検出装置、制御装置80、ならびに図2に示す入力装置90および表示装置100などを収容している。
旋回装置30は、走行装置40の上に取り付けられ、駆動装置50によって駆動されることで、旋回体20を走行装置40に対して旋回させる。より具体的には、旋回装置30は、駆動装置50を構成する旋回モータ54によって駆動され、作業機械1の上下方向に平行な回転軸を中心として、作業装置10および旋回体20を走行装置40に対して旋回させる。
走行装置40は、たとえば、無限軌道履帯を有する左右のクローラ41と、図示を省略する左右の走行モータとを備えている。走行装置40は、左右の走行モータによって左右のクローラ41をそれぞれ駆動することで、作業機械1を走行させる。左右の走行モータは、たとえば、駆動装置50を構成する油圧モータである。
駆動装置50は、たとえば、ブームシリンダ51、アームシリンダ52、バケットシリンダ53、旋回モータ54、および前述の走行モータを含み、作業装置10、旋回装置30、および走行装置40を駆動する。駆動装置50は、たとえば油圧装置であり、原動機によって駆動される複数の油圧ポンプや、油圧ポンプに接続されて作動油の方向を切り替える複数の方向制御弁を備えている。また、駆動装置50は、たとえば、図示を省略する圧力センサを備え、駆動装置50を構成する各部の作動油の圧力情報を制御装置80に出力する。
センサ60は、作業装置10の位置および姿勢を検出する。図1に示す例において、センサ60は、作業機である作業装置10の作業具であるバケット13に取り付けられて、バケット13の位置および姿勢を検出する。センサ60としては、たとえば、GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)などの衛星測位システムを例示することができる。
なお、センサ60は、バケット13に取り付けられていなくてもよく、作業装置10の位置および姿勢を検出できるものであれば特に限定されない。センサ60は、たとえば、ブームシリンダ51、アームシリンダ52、およびバケットシリンダ53のストロークを検出することで作業装置10の位置および姿勢を算出可能な位置センサであってもよい。また、センサ60は、たとえば、ブーム11、アーム12、およびバケット13の回転角度を検出することで、作業装置10の位置および姿勢を算出可能な角度センサであってもよい。
操作装置70は、たとえば、旋回体20の運転室22に収容された操作レバーや操作ペダルを含んでいる。操作量検出装置は、操作レバーの操作量や操作ペダルの操作量を含む操作装置70の操作量を検出する。操作装置70は、オペレータによって操作され、操作量検出装置は、オペレータの操作に基づいて、作業装置10、旋回装置30、および走行装置40の操作量を検出する。
制御装置80は、操作量検出装置によって検出された操作装置70の操作量と、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢に基づいて、駆動装置50を制御する。制御装置80は、記憶装置81と、中央処理装置82と、を含んでいる。また、制御装置80は、たとえば、入出力部を備え、駆動装置50、センサ60、操作装置70、操作量検出装置、入力装置90、および表示装置100などに、情報通信可能に接続されている。
記憶装置81は、たとえば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ハードディスクドライブ(HDD)などによって構成され、種々の情報やコンピュータープログラムなどが記憶される。より具体的には、記憶装置81は、作業装置10による施工目標情報が記憶されている。また、本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、たとえば、角速度情報D1(図5参照)、作業機速度情報D2(図6参照)、応答遅れ情報D3,D3’(図7A、図7B参照)、位置補正情報D4および速度補正情報D5(図8参照)などが記憶されている。これらの各情報については後述する。
中央処理装置82は、たとえば、記憶装置81に記憶された種々の情報やコンピュータープログラムを読み込んで様々な処理を実行する。具体的には、中央処理装置82は、たとえば、操作量検出装置によって検出された操作装置70の操作量に応じた操作信号と、記憶装置81に記憶された施工目標情報と、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢に基づいて、駆動装置50に動作指令を出力する。
また、中央処理装置82は、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢と、操作量検出装置によって検出された操作装置70の操作量と、記憶装置81に記憶された施工目標情報とに基づいて、作業装置10の高さ変位を予測する。さらに、中央処理装置82は、予測した作業装置10の高さ変位に基づいて駆動装置50の応答遅れを算出し、算出した応答遅れに基づいて作業装置10の操作量の補正値を算出し、作業装置10の操作量と補正値とに基づいて駆動装置50を制御してオペレータの操作を補助する。
入力装置90は、たとえば旋回体20の運転室22内に設けられ、オペレータが情報を入力可能な構成を備えている。具体的には、入力装置90は、たとえば、キーボード、ボタン、タッチパネルなどの入力装置を備え、オペレータが入力した情報を制御装置80へ出力する。
表示装置100は、たとえば、旋回体20の運転室22内に設けられ、オペレータが視認可能な位置に配置されている。表示装置100は、たとえば、液晶表示装置や有機EL表示装置によって構成され、制御装置80の制御の下、施工目標情報や、作業機の位置および姿勢などの情報を含む画像を表示する。
図3は、図1に示す作業機械1の制御装置80の機能ブロック図である。制御装置80は、たとえば、操作量演算機能F1と、遅れ演算機能F2と、補正値演算機能F3と、操作補助機能F4とを備えている。これらの機能は、たとえば、制御装置80に入力される情報、ならびに、記憶装置81に記憶された情報、およびコンピュータープログラムを用い、中央処理装置82によって実現することができる。
操作量演算機能F1において、中央処理装置82は、たとえば、操作量検出装置によって検出したオペレータによる操作装置70の操作量に基づいて、作業装置10、旋回装置30、および走行装置40の操作量を演算する。操作量検出装置によって検出したオペレータによる操作装置70の操作量は、たとえば、右レバー操作量と、左レバー操作量とを含む。操作量演算機能F1において算出される作業装置10、旋回装置30、および走行装置40の操作量は、たとえばオペレータが要求する速度など、駆動装置50の動作目標値である。すなわち、操作量演算機能F1において、中央処理装置82は、操作量検出装置によって検出された操作装置70の操作量に基づいて、駆動装置50の動作目標値を算出する。
図4は、図3の遅れ演算機能F2の詳細を示す機能ブロック図の一例である。遅れ演算機能F2において、中央処理装置82は、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢と、操作量検出装置によって検出された操作装置70の操作量と、記憶装置81に記憶された施工目標情報とに基づいて、作業装置10の高さ変位を予測し、その高さ変位に基づいて駆動装置50の応答遅れを算出する。より詳細には、遅れ演算機能F2は、たとえば、旋回速度演算機能F21と、予測位置演算機能F22と、高さ変位判定機能F23と、駆動装置遅れ演算機能F24とを含む。
図5は、図4の旋回速度演算機能F21の詳細を示す機能ブロック図の一例である。本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、旋回装置30の操作量と作業装置10の角速度との関係である角速度情報D1が記憶されている。角速度情報D1は、たとえば、旋回装置30の操作量と、作業装置10および旋回体20の角速度との関係を示すグラフである。旋回速度演算機能F21において、中央処理装置82は、操作量検出装置によって検出された旋回装置30の操作量と、記憶装置81に記憶された角速度情報D1とに基づいて、作業装置10の旋回速度を算出する。
より詳細には、旋回速度演算機能F21は、たとえば、角速度演算機能F211と、旋回速度推定機能F212とを含む。角速度演算機能F211において、中央処理装置82は、たとえば、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢と、操作量検出装置によって検出された旋回装置30の操作量と、記憶装置81に記憶された角速度情報D1とに基づいて、作業装置10の角速度を算出する。
図5に示す角速度演算機能F211の一例において、中央処理装置82は、作業装置10の位置および姿勢に基づいて作業装置10の旋回半径を算出し、記憶装置81に記憶された旋回半径のしきい値に基づいて、旋回半径を大、中、小に分類する。また、図5に示す例において、記憶装置81は、大、中、小のそれぞれの旋回半径に応じた角速度情報D1として、横軸を旋回装置30の操作量、縦軸を作業装置10の角速度とする、異なる傾きの直線のグラフが記憶されている。
より詳細には、記憶装置81は、たとえば、作業装置10の旋回半径が「小」である場合の角速度情報D1として、図5において点線で示す最も傾きの大きい直線のグラフが記憶されている。また、記憶装置81は、たとえば、作業装置10の旋回半径が「大」である場合の角速度情報D1として、図5において破線で示す最も傾きの小さい直線のグラフが記憶されている。さらに、記憶装置81は、たとえば、作業装置10の旋回半径が「中」である場合の角速度情報D1として、図5において実線で示す中間の傾きの直線のグラフが記憶されている。
これにより、角速度演算機能F211において、中央処理装置82は、旋回装置30の任意の操作量に対し、作業装置10の旋回半径が小さいほど、より大きい角速度を算出するようになっている。また、角速度演算機能F211において、中央処理装置82は、任意の旋回半径に対し、旋回装置30の操作量が大きいほど、より大きい角速度を算出するようになっている。
次に、旋回速度推定機能F212において、中央処理装置82は、角速度演算機能F211で算出した作業装置10の角速度と、センサ60で取得した作業装置10の位置および姿勢とに基づいて、作業装置10の旋回速度を推定する。より具体的には、中央処理装置82は、たとえば、作業装置10の角速度と、作業装置10の位置および姿勢を乗算して、作業装置10の先端部に取り付けられたバケット13の爪先の旋回速度を算出する。
図4に示す予測位置演算機能F22において、中央処理装置82は、旋回速度演算機能F21で算出した作業装置10の旋回速度と、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢と、操作量検出装置によって検出された操作装置70の操作量とに基づいて、作業装置10の予測位置および予測姿勢を算出する。
図6は、図4の予測位置演算機能F22の詳細の一例を示す機能ブロック図である。予測位置演算機能F22は、たとえば、作業機速度演算機能F221と、前後速度演算機能F222と、合成速度演算機能F223と、予測位置演算機能F224と、を含んでいる。本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、たとえば、作業装置10の操作量と、作業装置10の速度との関係を示す作業機速度情報D2が記憶されている。
図6に示す例において、作業機速度情報D2は、作業装置10の操作量を横軸とし、作業装置10の速度を縦軸とするグラフである。図6に示す例において、作業機速度情報D2は、作業装置10の操作量が所定の値「-a」以下である場合、作業装置10の速度が負の一定の値であり、作業装置10の操作量が所定の値「a」以上である場合、作業装置10の速度が正の一定の値であることを示している。また、図6に示す例において、作業機速度情報D2は、作業装置10の操作量が「-a」より大かつ「a」より小である場合、作業装置10の速度が作業装置10の操作量に比例することを示している。
作業機速度演算機能F221において、中央処理装置82は、操作量検出装置で検出した作業装置10の操作量と、中央処理装置82に記憶された作業機速度情報D2とに基づいて、作業装置10の速度を算出する。より具体的には、中央処理装置82は、作業機速度演算機能F221において、たとえば、操作量検出装置で検出したアーム12の操作量と、作業機速度情報D2とに基づいて、アーム12の速度を算出する。
次に、前後速度演算機能F222において、中央処理装置82は、作業機速度演算機能F221で算出された作業装置10の速度と、センサ60で検出した作業装置10の位置および姿勢に基づいて、作業機械1の前後方向における作業装置10の速度を算出する。より具体的には、前後速度演算機能F222において、中央処理装置82は、作業機速度演算機能F221で算出されたアーム12の速度と、センサ60で検出されたアーム12の角度と、アーム12およびバケット13の長さと、に基づいて、作業機械1の前後方向におけるバケット13の爪先速度を算出する。
本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、たとえば、以下の式(1)が記憶され、前後速度演算機能F222において、中央処理装置82は、式(1)に基づいて作業装置10の速度を算出する。式(1)において、「XSpdAm」は、作業機械1の前後方向における作業装置10(たとえばアーム12)の速度、「LAm+LBk」は、アーム12の動作時のアーム12およびバケット13の長さ、「AngSpdAm」は、作業装置10(たとえばバケット13の爪先)の速度、「AngAm」は、作業機の位置および姿勢(たとえばアーム12の角度)である。
XSpdAm=(LAm+LBk)*(AngSpdAm*Sin(AngAm)) …(1)
次に、合成速度演算機能F223において、中央処理装置82は、前後速度演算機能F222で算出した作業装置10の速度と、旋回速度演算機能F21で算出した作業装置10の旋回速度とに基づいて、作業装置10の合成速度を算出する。より具体的には、合成速度演算機能F223において、中央処理装置82は、バケット13の爪先の旋回速度と、アーム12の動作による作業機械1の前後方向のバケット13の爪先の速度に基づいて、バケット13の爪先の合成速度を算出する。
なお、合成速度演算機能F223において、中央処理装置82は、作業機械1の前後方向と幅方向におけるバケット13の爪先の速度をそれぞれ算出することで、バケット13の爪先の合成速度を算出してもよい。作業機械1の前後方向と幅方向のバケット13の爪先の速度は、たとえば記憶装置81に記憶された下記の式(2)、式(3)に基づいて、それぞれ算出することができる。式(2)、式(3)において、「XSpd」は、作業機械1の前後方向におけるバケット13の爪先の速度、「XSpdAm」は、作業機械1の前後方向におけるアーム12の速度、「YSpd」は、作業機械1の幅方向におけるバケット13の爪先の速度、「SpdSw」は、バケット13の爪先の旋回速度である。
XSpd=XSpdAm …(2)
YSpd=SpdSw …(3)
次に、予測位置演算機能F224において、中央処理装置82は、合成速度演算機能F223で算出した作業装置10の速度と、センサ60で検出した作業装置10の位置および姿勢に基づいて、作業装置10の予測位置および姿勢を算出する。具体的には、中央処理装置82は、たとえば、合成速度演算機能F223で算出したバケット13の爪先の速度とセンサ60で検出したバケット13の爪先の位置とに基づいて、バケット13の爪先の予測位置を算出する。
本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、たとえば下記の式(4)、式(5)が記憶されている。式(4)、式(5)において、「X2」は、作業機械1の前後方向における作業装置10、たとえばバケット13の爪先の予測位置であり、「Y2」は、作業機械1の幅方向における作業装置10、たとえばバケット13の爪先の予測位置である。「X1」、「Y1」は、それぞれ、センサ60によって検出した作業装置10の位置および姿勢に含まれる、作業機械1の前後方向、幅方向における作業装置10の位置、たとえばバケット13の爪先の位置である。「XSpd」、「YSpd」は、それぞれ、上記の式(2)、(3)に基づいて算出した、作業機械1の前後方向、幅方向における作業装置10の速度、たとえばバケット13の爪先の速度である。
X2=X1+XSpd*dt …(4)
Y2=Y1+YSpd*dt …(5)
このように、予測位置演算機能F224において、中央処理装置82は、たとえば、合成速度演算機能F223で算出した作業装置10(バケット13)の速度と、センサ60で検出した作業装置10(バケット13)の位置および姿勢と、上記の式(4)、式(5)とに基づいて、所定時間「dt」が経過した後の作業装置10(バケット13)の予測位置を算出する。
なお、所定時間「dt」としては、たとえば、センサ60のサンプリング周期や、中央処理装置82の演算周期などを例示することができる。また、予測位置演算機能F22では、たとえば、アーム12の操作量に加えて、バケット13の操作量や、ブーム11の操作量も考慮して、作業機械1の前後方向におけるバケット13の爪先の速度を算出するようにしてもよい。
次に、図4に示す高さ変位判定機能F23において、中央処理装置82は、予測位置演算機能F22で算出した作業装置10の予測位置および予測姿勢に基づいて、作業装置10の高さ変位を予測する。本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、たとえば、以下の式(6)が記憶されている。式(6)において、「Z1」は、作業機械1の高さ方向または鉛直方向における作業装置10(たとえばバケット13の爪先)の位置と施工目標との間の距離である。「Z2」は、作業機械1の高さ方向または鉛直方向における作業装置10(たとえばバケット13の爪先)の予測位置と施工目標との間の距離である。「dZ」は、「Z1」と「Z2」の偏差である。
dZ=Z1-Z2 …(6)
本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、たとえば次のような条件式1、2が記憶されている。条件式1:「dZ=0」を満たす場合、「高さ変位なし」と判定する。条件式2:「dZ=0」を満たさない場合、「高さ変位あり」と判定する。なお、条件式1、2は、たとえば、偏差「dZ」が所定値未満の場合に「高さ変位なし」と判定し、偏差「dZ」が所定値以上の場合に「高さ変位あり」と判定する条件式であってもよい。これにより、ノイズの影響を除去することができる。
以上のように、高さ変位判定機能F23において、中央処理装置82は、たとえば、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢(たとえばバケット13の爪先の位置)と、予測位置演算機能F22で算出した作業装置10(たとえばバケット13の爪先)の予測位置および予測姿勢と、記憶装置81に記憶された施工目標情報および上記条件式1、2に基づいて、作業装置10(たとえばバケット13の爪先)の高さ変位の有無を判定する。
次に、図4に示す駆動装置遅れ演算機能F24において、中央処理装置82は、高さ変位判定機能F23で予測または判定した作業装置10の高さ変位に基づいて、駆動装置50の応答遅れを算出する。
図7Aおよび図7Bは、それぞれ、図4の駆動装置遅れ演算機能F24の詳細の一例を示す機能ブロック図である。本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、たとえば、作業装置10の速度と、作業装置10の高さ変位と、駆動装置50の応答遅れとの関係を示す応答遅れ情報D3、D3’が記憶されている。
図7Aに示す例において、応答遅れ情報D3は、作業装置10の速度と、作業装置10の高さ変位の有無に応じて駆動装置50の応答遅れの大小が規定されたテーブルである。より具体的には、記憶装置81は、たとえば、応答遅れ情報D3に加えて、作業装置10(たとえばバケット13の爪先)の旋回速度を、低速、中速、高速の三段階に分類するためのしきい値が記憶されている。
駆動装置遅れ演算機能F24において、中央処理装置82は、たとえば、旋回速度演算機能F21で算出された作業装置10(たとえばバケット13の爪先)の旋回速度と、高さ変位判定機能F23で判定された高さ変位の有無の判定と、応答遅れ情報D3のテーブルに基づいて、駆動装置50の応答遅れの大きさを算出する。
より具体的には、中央処理装置82は、まず中央処理装置82に記憶されたしきい値に基づいて、作業装置10(たとえばバケット13の爪先)の旋回速度を、「低速」、「中速」、「高速」のいずれかに分類する。さらに、中央処理装置82は、作業装置10の旋回速度が「低速」の場合、応答遅れ情報D3に基づいて、作業装置10(たとえばバケット13の爪先)の高さ変位の有無によらず、駆動装置50の応答遅れを「小」と判定する。
また、中央処理装置82は、作業装置10の旋回速度が「中速」で、かつ、作業装置10(たとえばバケット13の爪先)の高さ変位が「あり」の場合、応答遅れ情報D3に基づいて、駆動装置50の応答遅れを「中」と判定する。また、中央処理装置82は、作業装置10の旋回速度が「中速」で、かつ、作業装置10(たとえばバケット13の爪先)の高さ変位が「なし」の場合、応答遅れ情報D3に基づいて、駆動装置50の応答遅れを「小」と判定する。
また、中央処理装置82は、作業装置10の旋回速度が「高速」で、かつ、作業装置10(たとえばバケット13の爪先)の高さ変位が「あり」の場合、応答遅れ情報D3に基づいて、駆動装置50の応答遅れを「大」と判定する。また、中央処理装置82は、作業装置10の旋回速度が「高速」で、かつ、作業装置10(たとえばバケット13の爪先)の高さ変位が「なし」の場合、応答遅れ情報D3に基づいて、駆動装置50の応答遅れを「中」と判定する。
図7Bに示す例において、応答遅れ情報D3’は、作業装置10の速度を横軸とし、駆動装置50の応答遅れを縦軸とするグラフである。応答遅れ情報D3’は、たとえば、作業装置10の高さ変化が「あり」の場合のグラフと、作業装置10の高さ変化が「なし」の場合のグラフを含んでいる。応答遅れ情報D3’において、作業装置10の高さ変化が「あり」の場合のグラフは、作業装置10の速度と駆動装置50の応答遅れが比例していることを示している。また、応答遅れ情報D3’において、作業装置10の高さ変化が「なし」の場合のグラフは、作業装置10の速度が「中速」以下であれば、駆動装置50の応答遅れは「小」であり、作業装置10の速度が「中速」以上になると、作業装置10の速度と駆動装置50の応答遅れが比例していることを示している。
駆動装置遅れ演算機能F24において、中央処理装置82は、作業装置10の高さ変化が「なし」で、かつ、作業装置10の速度が「低速」から「中速」まで場合に、応答遅れ情報D3’に基づいて、駆動装置50の応答遅れを「小」と判定する。また、中央処理装置82は、作業装置10の高さ変化が「なし」で、かつ、作業装置10の速度が「中速」よりも高い場合に、応答遅れ情報D3’に基づいて、「中速」から「高速」までの作業装置10の速度に比例して連続的に変化する駆動装置50の応答遅れ「小」から「中」までを算出する。また、中央処理装置82は、作業装置10の高さ変化が「あり」の場合に、応答遅れ情報D3’に基づいて、「低速」から「高速」までの作業装置10の速度に比例して連続的に変化する駆動装置50の応答遅れ「小」から「大」までを算出する。
なお、図7Aおよび図7Bに示す例において、応答遅れ情報D3および応答遅れ情報D3’は、たとえば、作業装置10の旋回速度と、駆動装置50のブームシリンダ51の応答遅れとの関係を示すテーブルおよびグラフである。以上のように、図3および図4に示す遅れ演算機能F2により、駆動装置50の応答遅れ、たとえばブームシリンダ51の応答遅れを算出することができる。
次に、図3に示す補正値演算機能F3において、中央処理装置82は、遅れ演算機能F2で算出した駆動装置50の応答遅れに基づいて、操作量検出装置で検出した作業装置10の操作量すなわち動作目標値の補正値を算出する。
図8は、図3の補正値演算機能F3の詳細の一例を示す機能ブロック図である。補正値演算機能F3は、たとえば、位置係数算出機能F31と、位置補正値算出機能F32と、速度係数算出機能F33と、速度補正値算出機能F34と、補正値算出機能F35と、を含む。
本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、たとえば、駆動装置50の応答遅れと、作業装置10の位置補正係数との関係を示す位置補正情報D4が記憶されている。また、本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、たとえば、駆動装置50の応答遅れと、作業装置10の速度補正係数との関係を示す速度補正情報D5が記憶されている。すなわち、記憶装置81は、補正値を算出するための補正係数と駆動装置50の応答遅れとの関係である補正情報として、たとえば位置補正情報D4と速度補正情報D5が記憶されている。
図8に示す例において、位置補正情報D4は、横軸を駆動装置50の応答遅れとし、縦軸を位置補正係数とするグラフである。図8に示す例において、位置補正情報D4は、駆動装置50の応答遅れと作業装置10の位置補正係数が、それぞれ「小」から「大」までの範囲で比例していることを示している。すなわち、位置補正情報D4は、駆動装置50の応答遅れが大きいほど、位置補正係数が大きいことを示している。
また、図8に示す例において、速度補正情報D5は、横軸を駆動装置50の応答遅れとし、縦軸を速度補正係数とするグラフである。図8に示す例において、速度補正情報D5は、駆動装置50の応答遅れが「小」から「中」までの範囲で、作業装置10の速度補正係数が「小」であることを示している。また、速度補正情報D5は、駆動装置50の応答遅れが「中」から「大」までの範囲で、作業装置10の速度補正係数が「小」から「中」まで増加するように、駆動装置50の応答遅れと作業装置10の速度補正係数が比例していることを示している。すなわち、速度補正情報D5は、駆動装置50の応答遅れが「小」から「中」までの範囲で、作業装置10の速度補正係数が「小」であり、駆動装置50の応答遅れが「中」から「大」までの範囲で、駆動装置50の応答遅れが大きいほど、速度補正係数が大きいことを示している。
位置係数算出機能F31において、中央処理装置82は、遅れ演算機能F2で算出された駆動装置50の応答遅れと、記憶装置81に記憶された位置補正情報D4とに基づいて、作業装置10の位置補正係数を算出する。位置補正値算出機能F32において、中央処理装置82は、センサ60で検出した作業装置10の位置および姿勢(たとえばバケット13の爪先位置)と施工目標情報との間の位置の偏差と、位置係数算出機能F31で算出した位置補正係数とを乗算する。これにより、位置補正値算出機能F32において、中央処理装置82は、駆動装置50(たとえばブームシリンダ51)の操作量すなわち動作目標値の補正値を算出する。
速度係数算出機能F33において、中央処理装置82は、遅れ演算機能F2で算出された駆動装置50の応答遅れと、記憶装置81に記憶された速度補正情報D5とに基づいて、作業装置10の速度補正係数を算出する。速度補正値算出機能F34において、中央処理装置82は、操作量演算機能F1で算出された動作目標値(たとえばブーム11の目標速度)と、センサ60で検出された作業装置10(たとえばブーム11)の実速度との間の速度の偏差と、速度係数算出機能F33で算出した速度補正係数とを乗算する。これにより、速度補正値算出機能F34において、中央処理装置82は、駆動装置50(たとえばブームシリンダ51)の操作量すなわち動作目標値の補正値を算出する。
補正値算出機能F35において、中央処理装置82は、位置補正値算出機能F32で算出された補正値と、速度補正値算出機能F34で算出された補正値とを加算し、駆動装置50(たとえばブームシリンダ51)の動作目標値の最終的な補正値を算出する。なお、位置補正情報D4および速度補正情報D5は、適宜、変更、または、調整することが可能である。
これにより、たとえばブームシリンダ51の応答遅れが小さい場合に、バケット13の爪先位置と施工目標との間の位置の偏差に基づいて、ブームシリンダ51の動作目標値を補正することができる。また、たとえばブームシリンダ51の応答遅れが大きい場合に、上記位置の偏差に加えてブーム11の目標速度と実速度との間の速度の偏差に基づいてブームシリンダ51の動作目標値を補正するなど、適切な補正を行うことが可能になる。以上のように、補正値演算機能F3において、中央処理装置82は、駆動装置50の動作目標値の補正値を算出することができる。
次に、図3に示す操作補助機能F4において、中央処理装置82は、操作量検出装置によって検出した作業装置10の操作量と、補正値演算機能F3で算出した補正値とに基づいて、駆動装置50を制御してオペレータの操作を補助する。より詳細には、操作補助機能F4において、中央処理装置82は、操作量演算機能F1で算出した駆動装置50の動作目標値と、補正値演算機能F3で算出した補正値と、センサ60で検出した作業装置10の位置および姿勢と、記憶装置81に記憶された施工目標情報とに基づいて、駆動装置50に対する動作指令値を出力する。以上のように、作業機械1は、制御装置80による駆動装置50の半自動制御を行って、オペレータの操作を補助する。
以下、本実施形態の作業機械1の作用を説明する。
作業機械1の運転室22に搭乗したオペレータは、たとえば、運転室22内に配置された入力装置90に必要な情報を入力して、記憶装置81に施工目標情報を記憶させる。なお、記憶装置81にあらかじめ複数の施工目標情報を記憶させておき、入力装置90に必要な情報を入力して記憶装置81に記憶された任意の施工目標情報を選択するようにしてもよい。また、無線通信や有線通信などの情報通信によって、記憶装置81に施工目標情報を記憶させてもよい。施工目標情報は、たとえば地表や表土などの施工対象の三次元形状や位置情報などを含む。
オペレータは、たとえば、運転室22内の操作装置70の操作レバーや操作ペダルを操作し、その操作方向や操作量によって、作業機械1の作業装置10、旋回装置30、および走行装置40の動作方向および動作速度を決定する。操作量検出装置は、オペレータによる操作装置70の操作に基づく操作量を検出して制御装置80へ出力する。制御装置80は、入力された操作量に基づき、中央処理装置82により動作指令を算出して駆動装置50へ出力する。
駆動装置50は、入力された動作指令に応じて、ブームシリンダ51、アームシリンダ52、バケットシリンダ53を伸縮させて、作業装置10を駆動する。また、駆動装置50は、入力された動作指令に応じて旋回モータ54を回転させ、旋回装置30を駆動して作業装置10および旋回体20を旋回させる。また、駆動装置50は、入力された動作指令に応じて走行モータを回転させ、走行装置40を駆動させて作業機械1を走行させる。
作業機械1による作業には、旋回装置30によって作業装置10および旋回体20を旋回させる旋回動作をともなう作業がある。具体的には、たとえば、作業装置10および旋回体20の旋回動作をともなう掘削作業やならし作業である。たとえば、施工目標情報に含まれる施工目標が、おおむね水平な平坦面と水平に対して傾斜した法面を含み、作業装置10を旋回させながら作業装置10の先端部の作業具であるバケット13を施工対象に沿って変位させ、施工目標に合わせて施工対象を掘削する場合を想定する。
この場合、平坦面と法面との間で施工目標の高さが変化するため、施工目標が平坦面のみである場合と比較して、作業装置10の高さ変位、たとえば、作業機械1の高さ方向または鉛直方向におけるバケット13の変位が大きくなる。このように作業装置10の高さ変位が大きくなると、たとえばブーム11を上下方向に大きく変位させる必要が生じる。操作補助機能を有しない作業機械では、オペレータは、操作レバーの入力と作業機械の動作とに基づいてバケットの高さ変位を予測し、ブームの上下方向の動作を調節して施工対象の過剰な掘削を防止している。
しかし、作業機械1の作業装置10を構成するブーム11は、バケット13などの作業装置10の他の部分と比較して重量が大きいため、ブーム11の動作には応答遅れが生じやすい。そのため、操作補助機能を有しない作業機械では、オペレータはブームの動作の応答遅れを考慮して操作装置70の操作レバーを操作しなければ意図した動作を行うことはできず、作業装置10の高さ変位をともなう作業には熟練を要する。このような作業装置10の高さ変位をともなう作業は、作業装置10の旋回をともなわない場合でも、たとえば法面の近傍などで生じ得る。
また、作業装置10の旋回をともなう作業では、作業装置10の高さ変位をともなう作業が特に生じやすい。しかし、前記特許文献1に記載された従来の作業機械では、たとえば旋回動作をともなう作業において目標掘削地形の高さが変化する場合に、作業機をどのように動作させるかが考慮されていない。そのため、この従来の作業機械では、たとえば作業機の旋回動作にともなって標掘削地形の高さが変化する場合に、オペレータの意図に反してバケットの刃先による掘り込み量が大きくなり、施工精度が低下するおそれがある。
これに対し、本実施形態の作業機械1は、前述のように、作業を行う作業装置10と、その作業装置10が取り付けられた旋回体20と、その旋回体20を旋回させる旋回装置30と、その旋回装置30を介して旋回体20を支持して走行させる走行装置40と、作業装置10、旋回装置30および走行装置40を駆動する駆動装置50と、作業装置10の位置および姿勢を検出する位置・姿勢検出装置としてのセンサ60と、作業装置10、旋回装置30および走行装置40の操作を指示する操作装置70と、その操作装置70の操作量を検出する操作量検出装置と、その操作量と作業装置10の位置および姿勢に基づいて駆動装置50を制御する制御装置80と、を備えている。この制御装置80は、記憶装置81と中央処理装置82とを含んでいる。記憶装置81は、作業装置10による施工目標情報が記憶されている。中央処理装置82は、センサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢と、操作量検出装置によって検出された操作装置70の操作量と、施工目標情報とに基づいて、作業装置10の高さ変位を予測し、その高さ変位に基づいて駆動装置50の応答遅れを算出し、その応答遅れに基づいて作業装置10の操作量の補正値を算出し、作業装置10の操作量と補正値とに基づいて駆動装置50を制御してオペレータの操作を補助する。
このような構成により、本実施形態の作業機械1は、オペレータの操作と、施工目標情報と、作業装置10の位置および姿勢との関係に基づいて、施工目標の過剰な掘削を防止しながら作業装置10のバケット13を施工目標に沿って移動させ、施工対象の掘削作業やならし作業などの作業を行うことができる。すなわち、制御装置80による駆動装置50の半自動制御により、オペレータの操作を補助し、施工対象の施工精度を向上させることができる。より具体的には、本実施形態の作業機械1は、施工目標の高さの変化にともなう作業装置10の高さ変位を予測し、駆動装置50の応答遅れを予測することができる。また、作業機械1は、操作量検出装置によってオペレータによる操作装置70の操作に基づく操作量を検出し、その操作量に基づく駆動装置50の動作目標値を、予測した応答遅れに応じた補正値によって補正することができる。したがって、本実施形態の作業機械1によれば、ブームシリンダ51を含む駆動装置50の応答遅れを補償して、作業装置10のバケット13の爪先が施工目標を越えて施工対象に食い込むことを防止し、オペレータの意図に沿った操作補助を行うことができる。
また、本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、旋回装置30の操作量と作業装置10の角速度との関係である角速度情報D1が記憶されている。また、中央処理装置82は、操作量検出装置によって検出された旋回装置30の操作量と、角速度情報D1とに基づいて、作業装置10の旋回速度を算出し、その旋回速度と、位置・姿勢検出装置であるセンサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢と、操作量検出装置によって検出された操作装置70の操作量とに基づいて、作業装置10の予測位置および予測姿勢を算出し、その予測位置および予測姿勢に基づいて、作業装置10の高さ変位を予測する。
このような構成により、本実施形態の作業機械1は、たとえば、旋回装置30による作業装置10および旋回体20の旋回動作をともなう作業においても、施工目標の高さの変化による作業装置10の高さ変位をより正確かつ確実に予測することができる。これにより、施工目標の高さの変化が生じやすい旋回動作をともなう作業においても、より正確かつ確実に駆動装置50の応答遅れを予測して、駆動装置50の動作目標値を補正することができる。しがたって、作業装置10を駆動する駆動装置50の応答遅れによる施工精度の低下をより確実に防止して、施工精度をさらに向上させることができる。
また、本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、補正値を算出するための補正係数と駆動装置の応答遅れとの関係である補正情報として、位置補正情報D4と速度補正情報D5が記憶されている。また、中央処理装置82は、駆動装置50の応答遅れと上記補正情報に基づいて補正係数を算出し、位置・姿勢検出装置であるセンサ60によって検出された作業装置10の先端部の作業具であるバケット13の位置と、施工目標情報との位置偏差を算出し、操作量検出装置によって検出した作業装置10の操作量に基づいて作業装置10の目標速度を算出し、その目標速度とセンサ60によって検出された作業装置10の実速度との速度偏差を算出し、算出した位置偏差と速度偏差にそれぞれ補正係数を乗じて上記補正値を算出する。
このような構成により、本実施形態の作業機械1は、作業装置10の位置と施工目標との間の位置偏差に基づいて、作業装置10の動作目標値を補正することができる。また、上記位置偏差に加えて作業装置10の目標速度と実速度との間の速度偏差に基づいて駆動装置50の動作目標値を補正することができる。これにより、前述のように、たとえば駆動装置50の応答遅れが小さい場合に位置偏差に基づく補正を行い、たとえば駆動装置50の応答遅れが大きい場合に位置偏差と速度偏差に基づく補正を行うなど、適切な補正を行うことが可能になる。
以上説明したように、本実施形態によれば、作業装置10を駆動する駆動装置50の応答遅れによる施工精度の低下を防止して、従来よりも施工精度を向上させることが可能な作業機械1を提供することができる。
[実施形態2]
次に、図1から図7Bまでを援用し、図9を参照して、本開示に係る作業機械の実施形態2を説明する。図9は、本開示の作業機械の実施形態2に係る補正値演算機能F3の機能ブロック図である。
本実施形態の作業機械1は、実施形態1に係る作業機械1と同様に、作業装置10が、旋回体20に取り付けられたブーム11と、そのブーム11の先端部に取り付けられたアーム12と、そのアーム12の先端部に取り付けられた作業具であるバケット13と、を備えている。また、駆動装置50は、ブーム11を駆動するブームシリンダ51と、アーム12を駆動するアームシリンダ52と、バケット13を駆動するバケットシリンダ53とを備えている。本実施形態に係る作業機械1は、以下の構成が前述の実施形態1に係る作業機械1と異なっている。記憶装置81は、ブームシリンダ51とアームシリンダ52のそれぞれの補正情報が記憶され、中央処理装置82は、ブームシリンダ51とアームシリンダ52のそれぞれの補正係数を算出し、ブームシリンダ51とアームシリンダ52のそれぞれの補正値を算出する。本実施形態の作業機械1のその他の構成は、前述の実施形態1に係る作業機械1と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図9に示す例において、記憶装置81は、ブームシリンダ51の補正情報として、位置補正情報D4と速度補正情報D5とが記憶されている。また、記憶装置81は、アームシリンダ52の補正情報として、位置補正情報D4’と速度補正情報D5’とが記憶されている。本実施形態の制御装置80は、ブームシリンダ51の応答遅れを補償するために、前述の位置係数算出機能F31、位置補正値算出機能F32、速度係数算出機能F33、速度補正値算出機能F34、および補正値算出機能F35を有している。
また、本実施形態の制御装置80は、アームシリンダ52の応答遅れを補償するために、位置係数算出機能F31’、位置補正値算出機能F32’、速度係数算出機能F33’、速度補正値算出機能F34’、および補正値算出機能F35’を含んでいる。これらの各機能は、それぞれ、前述の実施形態1に係る位置係数算出機能F31、位置補正値算出機能F32、速度係数算出機能F33、速度補正値算出機能F34、および補正値算出機能F35と同様である。
なお、位置補正情報D4’と前述の位置補正情報D4とは、異なっている。具体的には、位置補正情報D4’は、アームシリンダ52の応答遅れが「小」から「中」までの範囲で、位置補正係数が「小」であり、アームシリンダ52の応答遅れが「中」よりも大きくなると、位置補正係数がアームシリンダ52の応答遅れに比例することを示している。一方、速度補正情報D5’と前述の速度補正情報D5とは、同様である。
位置係数算出機能F31’において、中央処理装置82は、アームシリンダ52の応答遅れと、位置補正情報D4’とに基づいて位置補正係数を算出する。位置補正値算出機能F32’において、中央処理装置82は、位置・姿勢検出装置であるセンサ60によって検出された作業装置10の位置および姿勢に含まれるバケット13の爪先位置と、施工目標情報に含まれる施工目標との間の位置偏差と、位置係数算出機能F31’で算出した位置補正係数とを乗算して、位置偏差に基づく補正値を算出する。
速度係数算出機能F33’において、中央処理装置82は、アームシリンダ52の応答遅れと、速度補正情報D5’とに基づいて速度補正係数を算出する。速度補正値算出機能F34’において、中央処理装置82は、操作量演算機能F1で算出されたアームシリンダ52の動作目標値であるアーム12の速度目標値と、位置・姿勢検出装置であるセンサ60によって作業装置10の位置および姿勢に基づくアーム12の実速度との間の速度偏差と、速度係数算出機能F33’で算出した速度補正係数とを乗算して、速度偏差に基づく補正値を算出する。
補正値算出機能F35’において、中央処理装置82は、位置補正値算出機能F32’で算出した位置偏差に基づく補正値と、速度補正値算出機能F34’で算出した速度偏差に基づく補正値とを加算する。これにより、補正値算出機能F35’において、中央処理装置82は、アームシリンダ52の動作目標値を補正するための最終的な補正値を算出する。
ここで、記憶装置81に記憶された位置補正情報D4と位置補正情報D4’とを変更することで、ブームシリンダ51の応答遅れの補正条件と、アームシリンダ52の応答遅れの補正条件とを、それぞれ調整することができる。これにより、ブームシリンダ51の応答遅れが小さい場合には、ブームシリンダ51の応答遅れの補償のみで対応し、ブームシリンダ51の応答遅れが大きい場合には、さらにアームシリンダ52の応答遅れも補償することができる。また、記憶装置81に記憶された速度補正情報D5および速度補正情報D5’を変更してもよい。また、ブームシリンダ51およびアームシリンダ52と同様に、バケットシリンダ53や旋回モータ54の応答遅れの補償を行ってもよい。
本実施形態の作業機械1によれば、前述の実施形態1の作業機械1と同様に、作業装置10を駆動する駆動装置50の応答遅れによる施工精度の低下を防止して、従来よりも施工精度を向上させることが可能な作業機械1を提供することができる。さらに、本実施形態の作業機械1によれば、駆動装置50を構成する複数のアクチュエータの応答遅れを補償することができ、駆動装置50の応答遅れによる施工精度の低下をより確実に防止して、施工精度をより向上させることができる。
[実施形態3]
次に、図1から図7Bまでを援用し、図10を参照して、本開示に係る作業機械の実施形態3を説明する。図10は、本開示の作業機械の実施形態3に係る補正値演算機能F3の機能ブロック図である。
本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、駆動装置50の動作速度のしきい値が記憶されている。また、中央処理装置82は、操作量検出装置によって検出された操作装置70の操作量に基づく駆動装置50の目標速度が、記憶装置81に記憶された動作速度のしきい値よりも大きい場合に、補正値を制限する。本実施形態の作業機械1のその他の構成は、前述の実施形態1に係る作業機械1と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図10に示すように、制御装置80の補正値演算機能F3は、たとえば、前述の位置係数算出機能F31、位置補正値算出機能F32、速度係数算出機能F33、速度補正値算出機能F34、および、補正値算出機能F35に加えて、補正値制限機能F36を含んでいる。補正値制限機能F36において、中央処理装置82は、たとえば、操作量演算機能F1において算出された駆動装置50の動作目標値に含まれるアーム12の目標速度と、記憶装置81に記憶された動作速度のしきい値とを比較する。
その結果、アーム12の目標速度が動作速度のしきい値を超えている場合、補正値制限機能F36において、中央処理装置82は、補正値算出機能F35で算出された補正値を、記憶装置81に記憶された補正値の上限値に制限する。一方、アーム12の目標速度が動作速度のしきい値を超えていない場合、中央処理装置82は、補正値制限機能F36において、補正値算出機能F35で算出された補正値を制限せずに出力する。
作業装置10による掘削作業では、施工目標とバケット13の爪先との間の上下方向または鉛直方向の距離が近い場合、施工目標とバケット13の爪先位置との間の位置偏差の符号の正負が頻繁に入れ替わる傾向がある。このような場合でも、アーム12の目標速度のしきい値に基づいて補正値を制限することで、掘削作業などによるアーム12の動作中に位置偏差の符号の正負が頻繁に入れ替わっても、バケット13が上下に波打つように振動することが防止される。
これにより、施工対象の過剰な掘削が防止され、施工精度を向上させることができる。なお、アーム12の目標速度だけでなく、ブーム11の目標速度やバケット13の目標速度のしきい値を用い、ブームシリンダ51やバケットシリンダ53の動作目標値の補正値の制限を行うようにしてもよい。
本実施形態の作業機械1によれば、前述の実施形態1に係る作業機械1と同様に、作業装置10を駆動する駆動装置50の応答遅れによる施工精度の低下を防止して、従来よりも施工精度を向上させることが可能な作業機械1を提供することができる。さらに、本実施形態の作業機械1によれば、作業装置10の振動を防止して、施工精度をより向上させることができる。
[実施形態4]
次に、図1から図7Bまでを援用し、図11を参照して、本開示に係る作業機械の実施形態4を説明する。図11は、本開示の作業機械の実施形態4に係る補正値演算機能F3の機能ブロック図である。
本実施形態の作業機械1において、記憶装置81は、作業装置10の重量と重量補正係数との関係である重量係数情報D6が記憶されている。また、中央処理装置82は、重量補正係数に基づいて補正値を変更する。本実施形態の作業機械1のその他の構成は、前述の実施形態1に係る作業機械1と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図11に示すように、制御装置80の補正値演算機能F3は、前述の位置係数算出機能F31、位置補正値算出機能F32、速度係数算出機能F33、速度補正値算出機能F34、および補正値算出機能F35に加えて、重量係数算出機能F37と補正値変更機能F38とを含んでいる。また、図11に示す例において、重量係数情報D6は、たとえば、作業装置10の作業具であるバケット13の重量を横軸とし、重量補正係数を縦軸とするグラフである。
重量係数情報D6は、バケット13の重量と重量補正係数とが比例し、バケット13の重量が「小」から「大」まで増加すると、重量補正係数が「小」から「大」まで連続的に増加することを示している。すなわち、重量係数情報D6は、バケット13の重量が大きくなるほど、重量補正係数が大きくなることを示している。バケット13の重量は、たとえば、入力装置90によって入力され、または、駆動装置50に作用する負荷に基づいて算出される。
重量係数算出機能F37において、中央処理装置82は、作業装置10の重量、たとえばバケット13の重量と、重量係数情報D6とに基づいて、重量補正係数を算出する。さらに、補正値変更機能F38において、中央処理装置82は、補正値算出機能F35で算出された補正値と、重量係数算出機能F37で算出された重量補正係数とを乗算して、駆動装置50の動作目標値、たとえばブームシリンダ51の動作目標値の最終的な補正値を算出する。
このように、たとえばバケット13の重量など、作業装置10の重量に基づいて補正値を変更することで、作業装置10の重量に応じて、駆動装置50の動作指令値を補償することができる。すなわち、バケット13の重量が小さい場合と大きい場合とでは、駆動装置50の応答遅れが異なるが、その異なる応答遅れに応じた応答補償を行うことができる。
本実施形態の作業機械1によれば、前述の実施形態1に係る作業機械1と同様に、作業装置10を駆動する駆動装置50の応答遅れによる施工精度の低下を防止して、従来よりも施工精度を向上させることが可能な作業機械1を提供することができる。さらに、本実施形態の作業機械1によれば、作業装置10の重量に応じて駆動装置50の応答遅れを補償して、施工精度をより向上させることができる。
以上、図面を用いて本開示に係る作業機械の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。