JP7041918B2 - 曲げ性能が高いジオポリマー硬化体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明のジオポリマー硬化体の原料組成物は、石粉、高炉スラグ粉、及びアルカリ活性剤を含有する。ここで、「石粉」とは、岩石を原料に砕石、砕砂を製造する際に副産する砕石粉(微粒分)または脱水ケーキ、または岩石を粉砕して得られる微粉を原料として、必要に応じて分級処理を行ったものを指す。つまり、本発明における「石粉」は、乾燥粉のみに限らず脱水ケーキ状態等であるものも含む。
本発明のジオポリマー硬化体は、以上で詳述した本発明の原料組成物が硬化してなるものである。ジオポリマーは、アルミノシリケート成分を含有する活性フィラーが、アルカリ活性剤の刺激で縮重合反応して得られる非結晶質無機ポリマーであることが知られている。
本発明の製造方法は、石粉、高炉スラグ粉、及びアルカリ活性剤を含有し、前記石粉/高炉スラグ粉の質量比が30/70~70/30である原料組成物を混練する混練工程と、混練後の原料組成物を形成する成形工程と、成形後の原料組成物を硬化させる硬化工程と、を含むことを特徴とする。
炭酸カルシウムを主成分とする石灰質砕石粉(石灰石微粉末、比表面積7200cm2)又は山口県内の砕石場から排出された珪酸質砕石粉(比表面積7020cm2)を使用した。各石粉の化学組成を表1に示す。
高炉スラグ微粉末(BFS)として、JIS規格品3000級(日鉄住金高炉セメント社製、エスメント、比表面積3200cm2/g、密度2.9g/cm3)と、4000級(日鉄住金高炉セメント社製、エスメント、比表面積4180cm2/g、密度2.88g/cm3)とを使用した。また、4000級BFSの化学組成を表1に併せて示す。
JIS1号ナトリウム系水ガラス水溶液(以下、1号液と記す)、1号液と苛性ソーダ水溶液の混合物(以下、0号液と記す)を使用した。1号液は、市販のJIS1号水ガラス(Na2O・2SiO2・aq)を水で1:1の体積比に希釈したものであった。0号液は、モル濃度が10Mの苛性ソーダ(NaOH)水溶液と1号液を1:3の体積比で混合したものであった。
ジオポリマー(GPと略称する場合がある)モルタルの硬化体の製造には、セメント強度試験用標準砂を使用した。標準砂の絶乾比重は2.64、吸水率0.42%、単位容積質量1.76kg/L、実積率66.7%であった。
表2に示す組成となるように、石粉(石灰質砕石粉)、BFS(JIS規格品4000級)および細骨材を1分間混ぜ合わせ、その後アルカリ水溶液(0号液)を投入し、さらに2分間練り混ぜた。強度試験体として、練り混ぜ直後に、4×4×16cmの3連型枠に2層に分けて詰め、各層を11回程度突き棒で突き、コテを使い表面を仕上げした。可使時間測定で試験体が凝結に近いと判断した段階で、試験体の上面をラップで封緘し80±5℃で24時間の高温養生を行った後に脱型して、ジオポリマー硬化体を得た。
実施例1-1において、表2に示す組成となるように、石粉(石灰質砕石粉)とBFS(JIS規格品4000級)を混合したこと以外は、実施例1-1と同じ条件で、ジオポリマー(GP)硬化体を得た。
表3に示す組成となるように、石粉(珪酸質砕石粉)、BFS(JIS規格品4000級)および細骨材を1分間混ぜ合わせ、その後アルカリ水溶液(0号液)を投入し、さらに2分間練り混ぜた。強度試験体として、練り混ぜ直後に、4×4×16cmの3連型枠に2層に分けて詰め、各層を11回程度突き棒で突き、コテを使い表面を仕上げした。可使時間測定で試験体が凝結に近いと判断した段階で、試験体の上面をラップで封緘し80±5℃で24時間の高温養生を行った後に脱型して、ジオポリマー硬化体を得た。
実施例2-1において、表3に示す組成となるように、石粉(珪酸質砕石粉)とBFS(JIS規格品4000級)を混合したこと以外は、実施例2-1と同じ条件で、ジオポリマー硬化体を得た。
表4に示す組成となるように、メタカオリン(中国産、比表面積2480cm2/g、比重2.43g/cm3)、BFS(JIS規格品4000級)および細骨材を1分間混ぜ合わせ、その後アルカリ水溶液(0号液)を投入し、さらに2分間練り混ぜた。強度試験体の作製として、練り混ぜ直後に、4×4×16cmの3連型枠に2層に分けて詰め、各層を11回程度突き棒で突き、コテを使い表面を仕上げした。可使時間測定で試験体が凝結に近いと判断した段階で、試験体の上面をラップで封緘し80±5℃で24時間の高温養生を行った後に脱型して、ジオポリマー硬化体を得た。
表5に示す組成となるように、フライアッシュ(JIS II種)、BFS(JIS規格品4000級)および細骨材を1分間混ぜ合わせ、その後アルカリ水溶液(0号液)を投入し、さらに2分間練り混ぜた。強度試験体の作製として、練り混ぜ直後に、4×4×16cmの3連型枠に2層に分けて詰め、各層を11回程度突き棒で突き、コテを使い表面を仕上げした。可使時間測定で試験体が凝結に近いと判断した段階で、試験体の上面をラップで封緘し80±5℃で24時間の高温養生を行った後に脱型して、ジオポリマー硬化体を得た。
表6に示す組成となるように、メタカオリン(中国産、比表面積2480cm2/g、比重2.43g/cm3)、珪酸質砕石粉および細骨材を1分間混ぜ合わせ、その後アルカリ水溶液(0号液)を投入し、さらに2分間練り混ぜた。強度試験体の作製として、練り混ぜ直後に、4×4×16cmの3連型枠に2層に分けて詰め、各層を11回程度突き棒で突き、コテを使い表面を仕上げした。可使時間測定で試験体が凝結に近いと判断した段階で、試験体の上面をラップで封緘し80±5℃で24時間の高温養生を行った後に脱型して、ジオポリマー硬化体を得た。
表7に示す組成となるように、フライアッシュ(JIS II種)、珪酸質砕石粉および細骨材を1分間混ぜ合わせ、その後アルカリ水溶液(0号液)を投入し、さらに2分間練り混ぜた。強度試験体の作製として、練り混ぜ直後に、4×4×16cmの3連型枠に2層に分けて詰め、各層を11回程度突き棒で突き、コテを使い表面を仕上げした。可使時間測定で試験体が凝結に近いと判断した段階で、試験体の上面をラップで封緘し80±5℃で24時間の高温養生を行った後に脱型して、ジオポリマー硬化体を得た。
実施例1-1~3において、表8に示す組成となるように、石粉として珪酸質砕石粉を使用し、アルカリ水溶液として1号液を60質量部使用したこと以外は、実施例1-1~3と同じ条件で、ジオポリマー硬化体を得た。
実施例3-1において、表8に示す組成となるように、石粉(珪酸質砕石粉)とBFS(JIS規格品4000級)を混合したこと以外は、実施例3-1と同じ条件で、ジオポリマー硬化体を得た。
実施例1-1~3において、表9に示す組成となるように、石粉として珪酸質砕石粉を使用し、アルカリ水溶液として0号液を60質量部使用し、酒石酸ナトリウムを主成分とした遅延剤(東邦化学工業株式会社製)を添加したこと以外は、実施例1-1~3と同じ条件で、ジオポリマー硬化体を得た。
実施例4-1において、表9に示す組成となるように、石粉(珪酸質砕石粉)とBFS(JIS規格品4000級)と遅延剤を混合したこと以外は、実施例4-1と同じ条件で、ジオポリマー硬化体を得た。
実施例2-1~3において、高温養生を80±5℃×6時間で行なったこと以外は、実施例2-1~3と同じ条件で、ジオポリマー硬化体を得た。原料混合時の組成を表10に示す。
比較例2-1において、高温養生を80±5℃×6時間で行なったこと以外は、比較例2-1と同じ条件で、ジオポリマー硬化体を得た。原料混合時の組成を表10に示す。
実施例2-1~3において、高温養生80±5℃×24時間の後に、常温養生27日を行なったこと以外は、実施例2-1~3と同じ条件で、ジオポリマー硬化体を得た。原料混合時の組成を表10に示す。
比較例2-1において、高温養生80±5℃×24時間の後に、常温養生27日を行なったこと以外は、比較例2-1と同じ条件で、ジオポリマー硬化体を得た。原料混合時の組成を表10に示す。
実施例2-1~3において、BFSとしてBFS(JIS規格品3000級)を使用したこと以外は、実施例2-1~3と同じ条件で、ジオポリマー硬化体を得た。原料混合時の組成を表11に示す。
比較例2-1において、BFSとしてBFS(JIS規格品3000級)を使用したこと以外は、比較例2-1と同じ条件で、ジオポリマー硬化体を得た。原料混合時の組成を表11に示す。
石粉として乾燥した脱水ケーキ70質量部、BFS(JIS規格品4000級)30質量部および細骨材200質量部を1分間混ぜ合わせ、その後アルカリ水溶液(0号液)60質量部を投入し、さらに2分間練り混ぜた。原料混合時の組成を表12に示す。強度試験体として、練り混ぜ直後に、4×4×16cmの3連型枠に2層に分けて詰め、各層を11回程度突き棒で突き、コテを使い表面を仕上げした。可使時間測定で試験体が凝結に近いと判断した段階で、試験体の上面をラップで封緘し20℃で28日間の常温養生を行った後に脱型して、ジオポリマー硬化体を得た。
実施例8-1において、乾燥した脱水ケーキの使用量を70質量部から80質量部に、BFSの使用量を30質量部から20質量部に変えたこと以外は、実施例8-1と同じ条件で、ジオポリマー硬化体を得た。原料混合時の組成を表12に示す。
実施例8-1において、アルカリ水溶液(0号液)の代わりにアルカリ水溶液(1号液)を使用したこと以外は、実施例8-1と同じ条件で、ジオポリマー硬化体を得た。原料混合時の組成を表12に示す。
実施例8-2において、脱水ケーキの使用量を70質量部から80質量部に、BFSの使用量を30質量部から20質量部に変えたこと以外は、実施例8-2と同じ条件で、ジオポリマー硬化体を得た。原料混合時の組成を表12に示す。
実施例及び比較例で得られたジオポリマー硬化体について、以下の評価を行なった。
表3と表9に示す実施例及び比較例について、試料を練り混ぜた直後から、試料面を実験室用ミクロスパーテルで突き刺し、圧痕に液の進入が認められず、かつ圧痕が明瞭に残るまでの時間を計測し、アルカリ溶液の投入からこの時点までの経過時間を可使時間とした。その結果を表3と表9に示す。
得られたジオポリマー硬化体について、曲げ試験と圧縮試験を万能試験機で行った。曲げ試験は3点法(支点間距離100mm、載荷速度50±10N/秒)で行い、曲げ試験後の折片を用いて圧縮試験を行った。曲げ強度は3本の角柱試験体、圧縮強度は6つの折片の測定結果の平均値とした。その結果を表2~表9、図1~図6、図10に示す。
珪酸質砕石粉と石灰質砕石粉を用い、4000級のBFSをそれぞれ50質量部と30質量部混合した4種類(実施例1-1、1-3、2-1、2-3相当)のGPペーストで作製した硬化体を20±3℃の気中で28日養生した後、5%の硫酸に4週間浸漬し、質量変化率を測定し外観変化を考察した。硬化体は、サイズが直径5cm、高さ10cmの円柱であった。その結果を図7に示す。
石灰質砕石粉、珪酸質砕石粉およびそれらを用いたジオポリマー硬化体のX線回折(XRD)分析を行った。ジオポリマー硬化体に0号液を用い、液固比は石灰質砕石粉を用いた場合には0.50であり、珪酸質砕石粉を用いた場合には0.60であった。石粉の30質量部を4000級のBFSに代替された2種類(実施例1-3、2-3相当)のGPペーストであった。また、ジオポリマー硬化体は、20±3℃の気中で28日間封緘養生された。石灰質砕石粉、珪酸質砕石粉を用いて得られた硬化体の結果を、それぞれ図8と図9に示す。
図1の結果が示すように、実施例1-1~1-3では、石灰質砕石粉の使用によって、曲げ強度が7N/mm2以上のジオポリマーモルタルが容易に得られた。これに対して、高炉スラグ粉(BFS)の含有量が少ない比較例1-1、BFSを使用していない比較例1-2では曲げ強度が7N/mm2以下である。
Claims (7)
- 石粉、高炉スラグ粉、及びアルカリ活性剤を含有し、前記石粉/高炉スラグ粉の質量比が30/70~70/30であって、
前記石粉は、安山岩、硬質砂岩、もしくは粘板岩の少なくともいずれか1種を含む珪酸質岩石又は石灰石の少なくともいずれか1種を原料として、砕石又は砕砂を乾式で製造する際に副産する砕石粉であるか、又は、砕石又は砕砂を湿式で製造する際に副産する脱水ケーキから得られる乾燥粉であり、
且つ、前記砕石粉又は前記乾燥粉は、JIS A 5041:2009の規格値により、150μmふるい残分が5質量%以下であり、湿分が1.0%以下であり、密度が2.5g/cm 3 以上であり、フロー値比が90%以上のものであるジオポリマー硬化体用の原料組成物。 - 前記石粉が、比表面積が3000cm2/g以上である請求項1に記載のジオポリマー硬化体用の原料組成物。
- 前記高炉スラグ粉の比表面積が2000cm2/g以上である請求項1又は2に記載のジオポリマー硬化体用の原料組成物。
- 骨材を更に含有する請求項1~3のいずれか1項に記載のジオポリマー硬化体用の原料組成物。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載のジオポリマー硬化体の原料組成物が硬化してなるジオポリマー硬化体。
- 曲げ強度が7MPa以上である請求項5記載のジオポリマー硬化体。
- 石粉、高炉スラグ粉、及びアルカリ活性剤を含有し、前記石粉/高炉スラグ粉の質量比が30/70~70/30であって、
前記石粉は、安山岩、硬質砂岩、もしくは粘板岩の少なくともいずれか1種を含む珪酸質岩石、又は石灰石の少なくともいずれか1種を原料として、砕石又は砕砂を乾式で製造する際に副産する砕石粉であるか、又は、砕石又は砕砂を湿式で製造する際に副産する脱水ケーキから得られる乾燥粉であり、
且つ、前記砕石粉又は前記乾燥粉は、JIS A 5041:2009の規格値により、150μmふるい残分が5質量%以下であり、湿分が1.0%以下であり、密度が2.5g/cm 3 以上であり、フロー値比が90%以上のものである原料組成物を混練する混練工程と、
混練後の原料組成物を形成する成形工程と、
成形後の原料組成物を硬化させる硬化工程と、
を含むジオポリマー硬化体の製造方法。
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