JP7038230B2 - 細胞数を推定する方法および細胞数を推定する装置 - Google Patents
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Description
関係情報は、細胞代謝物の濃度とある細胞の細胞数との関係を示す情報である。関係情報は、細胞代謝物毎に存在する。
非侵襲的かつ連続的に測定結果が得られる方法であることが好ましい。培地中に含まれる細胞代謝物の濃度に応じた値としては、光学的もしくは電気的な値が挙げられる。これらの値は、たとえば公知のセンサーを用いて取得することができる。
細胞代謝物の濃度は、上記方法によって得られた吸光度や散乱度の値、或いは電気的な値を、統計的手法を用いて解析することにより得られる。
ここで、第1の例として、培地中に含まれる細胞代謝物の濃度に応じた値を取得する方法として分光法を用い、統計的手法として多変量解析を用いることにより、細胞代謝物の濃度の推定を行う例について述べる。
推定した細胞代謝物の濃度を、当該細胞代謝物に対応する関係情報に当てはめることにより、細胞数を推定することができる。
図1を参照して、第1の例に係る細胞数を推定する装置10について説明する。
記憶部11は、装置10に関する各種情報を記憶する。本実施形態に係る記憶部11は、予め得られた複数の細胞代謝物の濃度とある細胞の細胞数との関係を示す関係情報を記憶する。
分光測定部12は、培地に対して所定波長の帯域を持つ光を照射し、吸収光、反射光および散乱光を受光する。分光測定部12は、受光した光を制御部13に出力する。
制御部13は、CPUおよびメモリ(図示なし)を備える。CPUは、メモリに記憶された動作プログラムを実行することにより各種の制御機能を実現する。メモリは、CPUに実行されるプログラムを記憶したり、プログラムの実行時に各種情報を一時的に記憶したりする記憶装置である。本実施形態において、制御部13は、分光解析部13a、第一の推定部13b、判定部13c、第二の推定部13d、及び表示制御部13eとして機能する(図2参照)。
表示部14は、ディスプレイ等、各種情報を表示する構成である。操作部15は、マウスやキーボード、或いは表示部14に表示されるタッチパネル等、装置10に対して各種指示入力を行うための構成である。なお、装置10は、表示部14に表示された情報をプリントアウトする機能や、外部のプリンタから出力する機能を持っていてもよい。
次に、図3を参照して、装置10を利用して細胞Cの細胞数を推定する方法について説明する。この例では、細胞Cが細胞消費物Xを消費し、細胞産生物Yを産生する例について述べる。また、細胞消費物Xの濃度を先に推定するものとする。さらに、細胞消費物Xの濃度と細胞Cの細胞数との関係を示す第一の関係情報、及び細胞産生物の濃度と細胞Cの細胞数との関係を示す第二の関係情報は、バイオアッセイ法を用いて予め求められているものとする。
次に、第2の例として、培地中に含まれる細胞代謝物の濃度に応じた値を取得する方法として電気化学方式を用い、細胞代謝物の濃度と取得した電気的な値との相関性を解析することにより、細胞代謝物の濃度の推定を行う例について述べる。
第1の例と同様であるため詳細な説明を省略する。
図4を参照して、第2の例に係る細胞数を推定する装置20について説明する。装置20は、記憶部21、電気測定部22、制御部23、表示部24、及び操作部25を備える。
記憶部21、表示部24、及び操作部25は、第1の例における記憶部11、表示部14、及び操作部15と同様の構成であるため詳細な説明を省略する。
電気測定部22は、特定の細胞代謝物の変化に伴う電気的な値を測定する。電気測定部22は、上述の酵素センサーを用いることができる。電気測定部22は、測定した値を制御部23に出力する。
本実施形態における、制御部23は、第一の推定部23a、判定部23b、第二の推定部23c、及び表示制御部23dとして機能する(図5参照)。
次に、図6を参照して、装置20を利用して細胞Cの細胞数を推定する方法について説明する。この例では、細胞Cが細胞消費物Xを消費し、細胞産生物Yを産生する例について述べる。また、細胞消費物Xの濃度を先に推定するものとする。さらに、細胞消費物Xの濃度と細胞Cの細胞数との関係を示す第一の関係情報、及び細胞産生物の濃度と細胞Cの細胞数との関係を示す第二の関係情報は、バイオアッセイ法を用いて予め求められているものとする。
なお、図3及び図6の例では細胞代謝物が2つの例について述べたがこれに限られない。すなわち、細胞代謝物が3つ以上の場合も利用できる。たとえば図3において、S106で推定した細胞産生物Yの濃度が、閾値未満である場合(S107でNOの場合)、細胞Cを培養する培地に含まれる、細胞消費物Xおよび細胞産生物Yとは別の細胞代謝物Zについて、上記と同様の手法により濃度を推定する。そして、推定した細胞代謝物Zの濃度を、予め得られている細胞代謝物Zの濃度とある細胞の細胞数との関係を示す関係情報に当てはめることにより、細胞Cの細胞数を推定する。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるべきものではない。
(実験条件、方法)
グルコース及びラクテートを、それぞれ個別に下記の試薬を用いて反応させ、発光シグナルを検出することによって濃度を測定した。細胞数は、コロニー数の測定等による公知の方法で測定した。なお、再現性を確認するため、同じ条件で3つのサンプルを用意し、実験を行った。
グルコース:Glucose-Glo Assay(プロメガ株式会社製)
ラクテート:Lactate-Glo Assay(プロメガ株式会社製)
SpectraMax iD3(モレキュラーデバイスジャパン株式会社製)
図7は、バイオアッセイ法を用いて得られたT細胞の細胞数と培養日数との関係を表すグラフである。具体的には、図7中のマーカーの通り、T細胞の播種直後、播種から3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、および10日後に測定を行っている。
本実施例では分光法として近赤外線分光法を用いて、グルコースおよびラクテートの吸光度を測定することにより、T細胞の濃度を推定した。
(近赤外線波長)
近赤外線の波長帯域幅は、1069~2221nmである。
グルコースの吸収波長は、1600±30nmである。
ラクテートの吸収波長は、1587~1851nm、2083nm~2380nmである。なお、ラクテートについて、2221nmより大きい波長は近赤外線の波長帯域を外れるので、実際に用いられた波長は、1587~1851nm、2083nm~2221nmである。
分光測定部分としてC9914GB(浜松ホトニクス社製)を具備した分光測定機器(PHC株式会社製)を用いた。
結果を図9Aおよび図9Bに示す。図9Aの横軸は、バイオアッセイ法を用いて得られたグルコースの濃度である。図9Aの縦軸は、多変量解析を用いて推定したグルコースの濃度である。図9Bの横軸は、バイオアッセイ法を用いて得られたラクテートの濃度である。図9Bの縦軸は、多変量解析を用いて推定したラクテートの濃度である。すなわち分光法を用いて推定したグルコースおよびラクテートの濃度の結果が、図9Aおよび図9B中のドットの縦軸である。
上記実施例から明らかなように、グルコースの濃度が8×10-6mol/L以上となるT細胞の培養日数は、T細胞の播種後4日後までである。すなわち、グルコースを用いてT細胞の細胞数を推定することができる期間は、T細胞の播種後4日後までである。一方、ラクテートはグルコースが消費されることにより、産生する細胞代謝物であるため、T細胞の培養日数が経過するにつれて濃度は上昇する。上記実施例によれば、ラクテートの濃度が10×10-6mol/L以上となるT細胞の培養日数は、T細胞の播種後4日後以降である。すなわち、ラクテートを用いてT細胞の細胞数を推定することができる期間は、T細胞の播種後4日後以降から細胞培養終期(上記実施例では10日)までである。
Claims (9)
- 培地中に含まれる細胞代謝物の濃度に応じた値を取得可能な分光法または電気化学方式を用いて、ある細胞を培養する培地に含まれる細胞消費物の濃度を推定する工程と、
推定した前記細胞消費物の濃度が、閾値以上である場合、推定した前記細胞消費物の濃度を、予め得られている前記細胞消費物の濃度と前記ある細胞の細胞数との関係を示す第一の関係情報に当てはめることにより、前記ある細胞の細胞数を推定する工程と、
推定した前記細胞消費物の濃度が、閾値未満である場合、前記分光法または電気化学方式を用いて、前記培地に含まれる細胞産生物の濃度を推定する工程と、
推定した前記細胞産生物の濃度を、予め得られている前記細胞産生物の濃度と前記ある細胞の細胞数との関係を示す第二の関係情報に当てはめることにより、前記ある細胞の細胞数を推定する工程と、
を有する細胞数の推定方法。 - 培地中に含まれる細胞代謝物の濃度に応じた値を取得可能な分光法または電気化学方式を用いて、ある細胞を培養する培地に含まれる細胞産生物の濃度を推定する工程と、
推定した前記細胞産生物の濃度が、閾値以上である場合、推定した前記細胞産生物の濃度を、予め得られている前記細胞産生物の濃度と前記ある細胞の細胞数との関係を示す第一の関係情報に当てはめることにより、前記ある細胞の細胞数を推定する工程と、
推定した前記細胞産生物の濃度が、閾値未満である場合、前記分光法または電気化学方式を用いて、前記培地に含まれる細胞消費物の濃度を推定する工程と、
推定した前記細胞消費物の濃度を、予め得られている前記細胞消費物の濃度と前記ある細胞の細胞数との関係を示す第二の関係情報に当てはめることにより、前記ある細胞の細胞数を推定する工程と、
を有する細胞数の推定方法。 - 推定した前記細胞消費物及び前記細胞産生物の濃度が、共に閾値未満である場合、前記分光法または電気化学方式を用いて、前記培地に含まれる他の細胞消費物または他の細胞産生物の濃度を推定する工程と、
推定した前記他の細胞消費物または前記他の細胞産生物の濃度を、予め得られている前記他の細胞消費物または前記他の細胞産生物の濃度と前記ある細胞の細胞数との関係を示す第三の関係情報に当てはめることにより、前記ある細胞の細胞数を推定する工程と、
を有する、請求項1または2記載の細胞数の推定方法。 - 前記第一の関係情報、前記第二の関係情報、および前記第三の関係情報は、バイオアッセイ法を用いて取得されることを特徴とする、請求項3に記載の細胞数の推定方法。
- 前記濃度の推定は、多変量解析を用いて行われることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の細胞数の推定方法。
- 前記分光法は、近赤外分光法、可視分光法、蛍光分光法、およびラマン分光法から選択されるものであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の細胞数の推定方法。
- 前記細胞消費物はグルコースであり、前記細胞産生物はラクテートであり、前記分光法は、近赤外分光法であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の細胞数の推定方法。
- 前記閾値は、
既知の細胞代謝物の濃度(「実測濃度」とする)を有する培地の吸光度を近赤外分光法を用いて測定し、
多変量解析を用いて前記吸光度から細胞代謝物の濃度を推定し、
前記工程を繰り返すことにより、実測濃度と推定した細胞代謝物の濃度との関係のデータを蓄積し、
交差検証法を用いて、実測濃度と推定した細胞代謝物の濃度との相関係数が0.7以上になるまで前記測定データから低い濃度のデータを削除し、
相関係数が0.7以上になった時の測定データの最低濃度の値とする、請求項1または2記載の細胞数の測定方法。 - 培地中に含まれる細胞代謝物の濃度に応じた値を取得可能な分光法または電気化学方式を用いて測定されたデータに基づいて、ある細胞を培養する培地に含まれる、細胞消費物及び細胞産生物の濃度を推定する第一の推定部と、
推定した前記細胞消費物または前記細胞産生物の濃度が、閾値以上であるかどうかを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に応じて、推定した前記細胞消費物または前記細胞産生物の濃度を、予め得られている前記細胞消費物または前記細胞産生物の濃度と前記ある細胞の細胞数との関係を示す関係情報に当てはめることにより、ある細胞の細胞数を推定する第二の推定部と、
を有し、
前記第二の推定部は、
前記第一の推定部により推定した細胞消費物の濃度が、閾値以上であると判定された場合、推定した前記細胞消費物の濃度を、予め得られている前記細胞消費物の濃度と前記ある細胞の細胞数との関係を示す第一の関係情報に当てはめることにより、前記ある細胞の細胞数を推定し、
推定した前記細胞産生物の濃度が、閾値以上であると判定された場合、推定した前記細胞産生物の濃度を、予め得られている前記細胞産生物の濃度と前記ある細胞の細胞数との関係を示す第二の関係情報に当てはめることにより、前記ある細胞の細胞数を推定する、
細胞数を推定する装置。
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