JP7037827B2 - 修飾されたGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼを含む組成物及びその使用方法 - Google Patents

修飾されたGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼを含む組成物及びその使用方法 Download PDF

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Description

米国政府の権利
本発明は、National Institutes of Health(NIH)により付与されたCA008759に基づく政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明に関して一定の権利を有する。
関連出願の相互参照
本出願は、開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、2016年9月30日に出願された米国特許仮出願第62/402,468号に基づく利益を主張するものである。
本開示は、リソソーム酵素をリン酸化させる能力が増強された、修飾されたUDP-GlcNAc:リソソーム酵素GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ、及びその使用方法を提供する。
酵素補充療法(ERT)は現在、いくつかのリソソーム蓄積症のための主要な処置形態であるが、その効力は個々の障害において異なる。これらの遺伝性障害のほとんどは、単一のリソソーム酵素の活性不足により、この酵素によって通常分解される物質が蓄積することに起因する。リソソーム内の蓄積物質が増えると、やがて細胞及び臓器の機能不全が生じる。ERTの目的は、欠損細胞のリソソームに十分な量の正常な酵素を導入して蓄積物質を排出し、リソソーム機能を回復させることである。この形態の療法が初めて使用されたのは、酸性β-グルコセレブロシダーゼ活性が欠如しており、主にマクロファージ系細胞にグルコシルセラミドが蓄積する、1型ゴーシェ病患者においてであった。末端マンノース残基を含むN-結合型グリカンを含有する補充酵素が静脈内に注入され、細胞表面マンノース受容体を介してマクロファージに取り込まれる。飲食された酵素は次にエンドソームによってリソソームに輸送され、ここで酵素が機能することでこの障害の良好な臨床結果が得られる。
ほとんどの細胞型はマンノース受容体を欠いているため、マクロファージ以外の細胞型が関与するリソソーム蓄積障害を処置するために使用される補充酵素は、その後のリソソームへの送達のために、細胞表面のマンノース6-リン酸(Man-6-P)受容体への結合を利用する。これらの酵素は、目的の酵素を高レベルで産生するように工学操作された哺乳動物細胞、主にチャイニーズハムスター卵巣細胞の分泌物から精製される。この手法は、発現されたリソソーム酵素のN-グリカンのマンノース残基をリン酸化させる内在性GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼの能力に依存する。この技術により産生される補充酵素の一部は高度にリン酸化されており、Man-6-P受容体に良好に結合する。しかしながら、その他のものは十分にリン酸化されず、ERTにおけるその有効性は限られている。これには、ポンペ病酵素(酸性α-グルコシダーゼ、GAA)及びアルファマンノシドーシス酵素(リソソーム酸性α-マンノシダーゼ、LAMAN)が含まれる。
よって、酵素補充療法の方法の改善及び酵素産生の改善が当技術分野では必要とされている。
ある態様において、本開示は、配列番号1の全長ヒトGlcNAc-1-PTα/βサブユニットを基準にしてアミノ酸の内部欠失を含む、修飾されたGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-PT)α/βサブユニットを提供する。全長GlcNAc-1-PTα/βは、ポリペプチドのN末端からC末端の順に配置された、スペーサー1ドメイン(スペーサー1)、Notch1ドメイン(Notch1)、Notch2ドメイン(Notch2)、スペーサー2ドメイン(スペーサー2)、DNAメチルトランスフェラーゼ関連タンパク質相互作用ドメイン(DMAP)、スペーサー3ドメイン(スペーサー3)、α/βサブユニット切断部位、及びスペーサー4ドメイン(スペーサー4)を含む。この修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットにおいて、スペーサー1は内部欠失している。加えて、Notch-1とα/βサブユニット切断部位との間の領域も欠失していてよい。
別の態様では、本開示は、修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットのポリヌクレオチドを含むベクターであって、スペーサー1、またはスペーサー1及びNotch-1とα/βサブユニット切断部位との間の領域が欠失している、ベクターを提供する。
ある態様において、本開示は、修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットのポリヌクレオチドを含むベクターを含む宿主細胞であって、スペーサー1、またはスペーサー1及びNotch-1とα/βサブユニット切断部位との間の領域が欠失している、宿主細胞を提供する。
ある態様において、本開示は、細胞において、外来性GlcNAc-1-PTα/βサブユニットを発現させることにより、目的のタンパク質、例えばβ-グルコセレブロシダーゼ(GBA)、GalA、カテプシンD(CathD)、ニーマン・ピック病C2型(NPC2)、β-ヘキソサミニダーゼ(HEXB)、α-ガラクトシダーゼ(GLA)、β-マンノシダーゼ(MANBA)、アルファ-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、アリールスルファターゼB、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、またはリソソーム酸性α-マンノシダーゼ(LAMAN)のオリゴ糖リン酸化を増加させる方法を提供する。
ある態様において、本開示は、細胞において、修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットを発現させることにより、細胞表面マンノース6-リン酸(Man-6-P)受容体(Man-6-P)に対する目的のタンパク質の結合を増加させる方法を提供する。
ある態様において、本開示は、細胞において、修飾されたGlcNAc-1-PTα/βを、目的のリソソーム酵素、例えばGBA、GalA、CathD、NPC2、HEXB、GLA、MANBA、アルファ-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、アリールスルファターゼB、GAA、またはLAMANと共発現させることにより、リソソーム酵素のリン酸化を増強させる方法を提供する。
いくつかの態様において、本開示は、以下の項に記載のものを提供する:
[項1]
配列番号1の配列を有する全長ヒトGlcNAc-1-PTα/βサブユニットを基準にしてアミノ酸の内部欠失を含む、修飾されたGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-PT)α/βサブユニットであって、配列番号1が、N末端からC末端の順に、スペーサー1ドメイン(スペーサー1)、Notch1ドメイン(Notch1)、Notch2ドメイン(Notch2)、スペーサー2ドメイン、DNAメチルトランスフェラーゼ関連タンパク質相互作用ドメイン(DMAP)、スペーサー3ドメイン(スペーサー3)、α/βサブユニット切断部位、及びスペーサー4ドメイン(スペーサー4)を含み、前記スペーサー1が内部欠失している、前記修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニット。
[項2]
配列番号1を基準にしてアミノ酸86とアミノ酸322との間のアミノ酸が欠失している、上記項1に記載の修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニット。
[項3]
Notch1と前記α/β切断部位との間の領域が欠失している、上記項1に記載の修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニット。
[項4]
配列番号1を基準にしてアミノ酸438とアミノ酸928との間のアミノ酸が欠失している、上記項1に記載の修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニット。
[項5]
スペーサー1が欠失しており、Notch1と前記α/β切断部位との間の領域が欠失している、上記項1に記載の修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニット。
[項6]
配列番号1を基準にしてアミノ酸86とアミノ酸322との間のアミノ酸が欠失しており、アミノ酸438とアミノ酸928との間のアミノ酸が欠失している、上記項1に記載の修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニット。
[項7]
Notch1と前記α/β切断部位との間の前記欠失が、配列番号1を基準にしてアミノ酸928を超えて伸長しない、上記項4~6に記載の修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニット。
[項8]
上記項1~7のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[項9]
上記項8に記載のベクターを含む宿主細胞。
[項10]
前記宿主細胞が哺乳動物細胞である、上記項9に記載の宿主細胞。
[項11]
前記宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、上記項9に記載の宿主細胞。
[項12]
前記宿主細胞が、目的のタンパク質を高レベルで産生するように工学操作されている、上記項9~11のいずれかに記載の宿主細胞。
[項13]
前記目的のタンパク質がリソソームタンパク質である、上記項12に記載の宿主細胞。
[項14]
前記リソソームタンパク質が、β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)、GalA、カテプシンD(CathD)、ニーマン・ピック病C2型(NPC2)、β-ヘキソサミニダーゼ(HEXB)、α-ガラクトシダーゼ(GLA)、β-マンノシダーゼ(MANBA)、アルファ-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、アリールスルファターゼB、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、及びリソソーム酸性α-マンノシダーゼ(LAMAN)からなる群から選択される、上記項13に記載の宿主細胞。
[項15]
前記目的のタンパク質が非リソソームタンパク質である、上記項12に記載の宿主細胞。
[項16]
前記非リソソームタンパク質が、DNase1、レニン、白血病抑制因子(LIF)、タンパク質O-フコシルトランスフェラーゼ2(PoFUT2)、グリコペプシノゲン(GP)、及びフォンウィルブランド因子A1A2A3ドメインからなる群から選択される、上記項15に記載の宿主細胞。
[項17]
前記目的のタンパク質が、ポンペ病酵素(酸性α-グルコシダーゼ、GAA)及びアルファマンノシドーシス酵素(リソソーム酸性α-マンノシダーゼ、LAMAN)からなる群から選択される、上記項13に記載の宿主細胞。
[項18]
細胞において、外来性の修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットを発現させることを含む、目的のタンパク質のオリゴ糖リン酸化を増加させる方法。
[項19]
細胞において、修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットを発現させることを含む、細胞表面マンノース6-リン酸受容体(Man-6-P)に対する目的のタンパク質の結合を増加させる方法。
[項20]
前記細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、上記項18または19に記載の方法。
[項21]
前記細胞が、前記目的のタンパク質を高レベルで産生するように工学操作されている、上記項18~20のいずれかに記載の方法。
[項22]
前記目的のタンパク質がリソソームタンパク質である、上記項21に記載の方法。
[項23]
前記リソソームタンパク質が、β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)、GalA、カテプシンD(CathD)、ニーマン・ピック病C2型(NPC2)、β-ヘキソサミニダーゼ(HEXB)、α-ガラクトシダーゼ(GLA)、β-マンノシダーゼ(MANBA)、アルファ-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、アリールスルファターゼB、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、及びリソソーム酸性α-マンノシダーゼ(LAMAN)からなる群から選択される、上記項22に記載の方法。
[項24]
前記目的のタンパク質が非リソソームタンパク質である、上記項21に記載の方法。
[項25]
前記非リソソームタンパク質が、DNase1、レニン、白血病抑制因子(LIF)、タンパク質O-フコシルトランスフェラーゼ2(PoFUT2)、グリコペプシノゲン(GP)、及びフォンウィルブランド因子A1A2A3ドメインからなる群から選択される、上記項24に記載の方法。
[項26]
前記目的のタンパク質が、ポンペ病酵素(酸性α-グルコシダーゼ、GAA)及びアルファマンノシドーシス酵素(リソソーム酸性α-マンノシダーゼ、LAMAN)からなる群から選択される、上記項21に記載の方法。
[項27]
前記GlcNAc-1-PTα/βサブユニットがマンノース-6-リン酸(Man-6-P)タグを糖タンパク質上に生成することを条件として、前記ポリペプチドが配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を含む、上記項19~26のいずれかに記載の方法。
[項28]
前記GlcNAc-1-PTα/βサブユニットが配列番号1を含み、配列番号1が、N末端からC末端の順に、スペーサー1ドメイン(スペーサー1)、Notch1ドメイン(Notch1)、Notch2ドメイン(Notch2)、スペーサー2ドメイン、DNAメチルトランスフェラーゼ関連タンパク質相互作用ドメイン(DMAP)、スペーサー3ドメイン(スペーサー3)、α/βサブユニット切断部位、及びスペーサー4ドメイン(スペーサー4)を含む、上記項19~26のいずれかに記載の方法。
[項29]
前記スペーサー1が内部欠失している、上記項28に記載の方法。
[項30]
配列番号1を基準にしてアミノ酸86とアミノ酸322との間のアミノ酸が欠失している、上記項28に記載の方法。
[項31]
Notch1と前記α/β切断部位との間の領域が欠失している、上記項28に記載の方法。
[項32]
配列番号1を基準にしてアミノ酸438とアミノ酸928との間のアミノ酸が欠失している、上記項28に記載の方法。
[項33]
スペーサー1が欠失しており、Notch1と前記α/β切断部位との間の領域が欠失している、上記項28に記載の方法。
[項34]
配列番号1を基準にしてアミノ酸86とアミノ酸322との間のアミノ酸が欠失しており、アミノ酸438とアミノ酸928との間のアミノ酸が欠失している、上記項28に記載の方法。
[項35]
Notch1と前記α/β切断部位との間の前記欠失が、配列番号1を基準にしてアミノ酸928を超えて伸長しない、上記項31~34のいずれかに記載の方法。
[項36]
2つのMan-6-P残基を含むグリカンの量が、GlcNAc-1-PTα/βサブユニットと比べて増加する、上記項28~35のいずれかに記載の方法。
[項37]
上記項1~7のいずれかに記載の修飾されたGlcNAc-1-PTα/βを目的のリソソーム酵素と共発現させることを含む、リソソーム酵素のリン酸化を増強させる方法。
[項38]
前記目的のリソソーム酵素が、β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)、GalA、カテプシンD(CathD)、ニーマン・ピック病C2型(NPC2)、β-ヘキソサミニダーゼ(HEXB)、α-ガラクトシダーゼ(GLA)、β-マンノシダーゼ(MANBA)、アルファ-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、アリールスルファターゼB、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、及びリソソーム酸性α-マンノシダーゼ(LAMAN)からなる群から選択される、上記項37に記載の方法。
本出願ファイルは、カラーで作成された図面を少なくとも1つ含む。カラー図面(複数可)を含む本特許出願公報のコピーは、要請及び必要な手数料の支払いに応じて特許庁より提供される。

図1A、図1B、図1C、図1D、図1E、図1F及び図1Gは、スペーサー1ドメインがα/β前駆体の切断部位を調節することを示す、概略図、アライメント、イムノブロット、及びグラフを示す。(図1A)GlcNAc-1-PTα/βサブユニットモジュール配置及びD.discoideumスペーサー1とのヒトスペーサー1配列の置き換えの概略図。(図1B)抗V5抗体を用いてプローブされたGNPTAB-/-HeLa細胞において発現されたDS1欠失変異体に対する野生型(WT)α/βのイムノブロット解析。(図1C)ベクター、WTα/β前駆体、または種々の変異体cDNAをトランスフェクトしたGNPTAB-/-細胞の抽出物を使用した、単糖αMMに対するホスホトランスフェラーゼ活性。活性は、全タンパク質濃度に対して正規化した。(図1D)WTα/β前駆体またはDS1変異体cDNAのいずれかをトランスフェクトしたGNPTAB-/-HeLa細胞のS1P活性の阻害。トランスフェクションの24時間後、PF-429242を10μMの最終濃度で細胞に添加し、細胞を更に24時間インキュベートしてから採取した。細胞抽出物を調製し、各ライセート20μgをSDS-PAGEによって分離させ、ウェスタンブロッティングに供した。(図1E)2つのGlcNAc-1-PTαサブユニットS1P基質部位の、他の既知のS1P部位とのアミノ酸アライメント。網掛けの四角は、保存されたコンセンサス切断モチーフを示す。(図1F)WTα/βまたはDS1欠失変異体のいずれかとの関連における、点変異体R925A、R879A、及びR925A/R879Aのイムノブロット解析。GNPTAB-/-HeLa細胞において発現されたタンパク質をSDS-PAGEゲルによって分離させ、ニトロセルロースに移し、抗V5抗体を用いてプローブした。(図1G)CI-MPR親和性ビーズに対する3種の内在性リソソーム酵素の結合によって定量した場合の酵素のリン酸化を定量するための、WTα/βまたは図1Fに示した種々の変異体のいずれかのGNPTAB-/-HeLa細胞へのトランスフェクション。結合した物質の活性についてアッセイした。WTα/βをトランスフェクトした細胞で得られた値を100%に設定してある。 図2A、図2B、及び図2Cは、スペーサー1の欠失がいくつかの非リソソーム糖タンパク質のリン酸化を増強させることを示すグラフ及びイムノブロットを示す。(図2A)ベクター単独、WTα/β前駆体、またはDS1変異体cDNAのいずれかをGNPTAB-/-HeLa細胞にトランスフェクトした後、[2-H]マンノース標識を行うことにより、全可溶性タンパク質のマンノースリン酸化を定量した。示されている値は、CI-MPR親和性ビーズを用いて回収された計数の百分率を、リンタングステン酸沈殿物中の総計数に対する割合として計算したものである。*は、p=<0.05を表す。(図2B)3種のリソソームタンパク質または4種の非リソソームタンパク質のいずれかをコードするプラスミドを、WTα/β前駆体またはDS1変異体cDNAと併せて、GNPTAB-/-HeLa細胞にコトランスフェクトした。細胞を[2-H]-マンノースで標識し、その後、培地に分泌されたタンパク質の免疫沈降を行い、Man-6-Pを含むN-グリカンのパーセントを判定した。WTで得られた値を1.0に設定してある。WTα/β前駆体と共発現された、示されているタンパク質のリン酸化の絶対値は、GLA、36±3%;NPC2、51±6%C;CathD 25±8%;DNaseI、23±4%;レニン、21±4%;LIF、24±7%;PoFut2、12.6%であった。(図2C)示されているタンパク質の発現プラスミドを、空ベクター、WTα/β前駆体、またはDS1変異体cDNAと併せてコトランスフェクトしたGNPTAB-/-HeLa細胞のウェスタンブロット。細胞ライセートをCI-MPR親和性ビーズとともにインキュベートし、レニン-抗HA、NPC2、GP、Lamp1及びLamp2の各抗体を用いてブロットをプローブすることにより、種々のタンパク質の結合を定量した。抗体は天然タンパク質に対して生成されたものであった。 図3A、図3B、図3C、図3D、図3E、図3F、及び図3Gは、多くの糖タンパク質を非特異的にリン酸化することができる最小限の酵素の生成を示す概略図、グラフ、及びイムノブロットを示す。(図3A)GNPTAB-/-HeLa細胞において発現された種々のα/β前駆体欠失構築物の概略図。(図3B)WTα/β前駆体または示されている欠失変異体cDNAをGNPTAB-/-HeLa細胞にトランスフェクトした後、[2-H]マンノース標識を行うことにより、全可溶性タンパク質のマンノースリン酸化を定量した。示されている値は、CI-MPR親和性ビーズを用いて回収された計数の百分率を、リンタングステン酸沈殿物中の総計数に対する割合として計算したものである。0.8±0.3%のバックグラウンド値を差し引いて、最終的な表示値を求めた。*は、p=<0.05を表し、**は、p=<0.01を表す。(図3C)WTα/β前駆体、N1-D、またはS1-D欠失変異体cDNAのいずれかのGNPTAB-/-HeLa細胞へのトランスフェクション。WTまたは変異体タンパク質によって媒介されるリン酸化の度合いを、CI-MPR親和性ビーズに対する3種の内在性リソソーム酵素の結合によって定量した。結合した物質の活性についてアッセイした。WTα/βをトランスフェクトした細胞で得られた値を100%に設定してある。(図3D)GNPTAB-/-HeLa細胞において発現されたWTα/β前駆体及び欠失変異体のウェスタンブロット。示されている量で各細胞抽出物を負荷し、α/β前駆体及びβサブユニットを抗V5抗体によって検出した。(図3E)等量の全細胞抽出物を使用したαMMに対するWTα/β前駆体及び変異体の触媒活性。ベクター単独をトランスフェクトしたGNPTAB-/-HeLa細胞抽出物を対照とし、ベクター単独のバックグラウンドを差し引いた後のWT値を100%に設定した。(図3F)示されているタンパク質の発現プラスミドを、空ベクター、WTα/β前駆体、または示されている欠失変異体cDNAと併せてコトランスフェクトしたGNPTAB-/-HeLa細胞のイムノブロット解析。細胞ライセートをCI-MPR親和性ビーズとともにインキュベートし、図2Cに記載の抗体を用いて、またはPoFut2には抗myc、vWF A1A2A3ドメインには抗Strepタグを用いてブロットをプローブすることにより、種々のタンパク質の結合を定量した。(図3G)WTα/β前駆体、N1-S3、またはS1-S3欠失変異体cDNAのいずれかのGNPTAB-/-HeLa細胞へのトランスフェクション。WTまたは変異体タンパク質によって媒介されるリン酸化の度合いを、CI-MPR親和性ビーズに対する3種の内在性リソソーム酵素の結合によって定量した。結合した物質の活性についてアッセイした。WTα/βをトランスフェクトした細胞で得られた値を100%に設定してある。 図4は、非リソソーム糖タンパク質のリン酸化が最小限のα/β前駆体によって媒介されることを示すグラフを示す。WTα/β前駆体またはS1-S3欠失変異体cDNAのいずれかを、4種の非リソソーム糖タンパク質の発現プラスミドと併せてGNPTAB-/-HeLa細胞にコトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、[2-H]-マンノースで細胞を2時間標識し、その後、培地に分泌されたタンパク質の免疫沈降を行い、Man-6-Pを含むN-グリカンのパーセントを判定した。WTで得られた値を1に設定してある。WTα/β前駆体と共発現された、示されているタンパク質のリン酸化の絶対値は、LIF、26±5%;レニン、22±2%;PoFut2、26±2%、DNaseI、22±3%であった。 図5は、GlcNAc-1-PT機能のモデルを示す。(上部)基礎状態にあるGlcNAc-1-PTは、4つのステルスドメイン(ピンク)によって形成された触媒部位とスペーサー1ドメイン(紫)が干渉するため、基質分子のグリカン鎖と会合することができない。リソソーム酵素タンパク質ドッキング部位がNotchモジュール/DMAP相互作用ドメイン(オレンジ)に結合することでコンフォメーション変化が誘導され、その結果スペーサー1ドメインが移動し、リソソーム酵素の高マンノースグリカンのマンノース残基が触媒部位に入り、リン酸化できるようになる。一部の事例では、γサブユニット(緑)のMan-6-P受容体相同性ドメインが、オリゴ糖を触媒部位に対して導くのに役立つ。(下部)スペーサー1ドメイン及びNotchモジュール/DMAP相互作用ドメインを欠いている最小限の酵素は、阻害されることもなければ、リン酸化のために基質分子にタンパク質ドッキング部位がある必要もない。この酵素は非常に高いレベルで発現し、ゴルジを通過する全ての可溶性糖タンパク質をその最終的な目的地にかかわらずリン酸化することができる。 図6は、ヒトGlcNAc-1-PTα/β前駆体の様々なドメインのモジュール構成ならびにD.discoideum及びN.meningitidisのGlcNAc-1-PTとのアライメントを示す概略図を示す。D.discoideumタンパク質がヒトタンパク質のようにタンパク質分解プロセシングを受けるかどうかは分かっていない。緑で示されている4つの領域は一緒になってステルスを構成する。ステルスは、莢膜多糖類の生合成に関与する細菌タンパク質において初めて特定された進化的に保存されたドメインである。 図7は、WTα/β前駆体または示されている変異体cDNAのいずれかをトランスフェクトしたHEK293細胞のウェスタンブロットを示す。種々の構築物はV-エピトープに加えて6X-HisヒスチジンタグをC末端に有したため、α/β前駆体及びβサブユニットの親和性精製を行うために細胞ライセートをNi-NTAアガロースとともにインキュベートした。矢印は、WTタンパク質で見られた小量のQ882切断βサブユニットを示し、*は、K928における切断に起因する正常なβである。R925A変異体は小量のQ882切断βも示したが、K928切断βはこの場合完全になくなっている。DS1/R879A/R925A変異体では両方のβサブユニットが全く存在しない。 図8Aは、GlcNAc-1-PTα/βサブユニットモジュール配置ならびにGly及びSer残基を含む26aaのリンカー配列とのヒトスペーサー1配列の置き換えの概略図を示す。 図8Bは、GNPTAB-/-HeLa細胞において発現され、抗V5抗体を用いてプローブされたDS1及びΔS1欠失変異体に対するWTα/βのイムノブロット解析を示す。 図8Cは、WTα/β前駆体またはΔS1変異体cDNAをトランスフェクトしたGNPTAB-/-細胞の抽出物を使用した、単糖αMMに対するホスホトランスフェラーゼ活性を示すグラフを示す。活性は、全タンパク質濃度に対して正規化した。 図8Dは、WTα/β前駆体、DS1変異体cDNA、またはΔS1変異体cDNAのいずれかをトランスフェクトしたGNPTAB-/-HeLa細胞のS1P活性の阻害を示すイムノブロットを示す。トランスフェクションの24時間後、PF-429242を10μMの最終濃度で細胞に添加し、細胞を更に24時間インキュベートしてから採取した。細胞抽出物を調製し、各ライセート20μgをSDS-PAGEによって分離させ、ウェスタンブロッティングに供した。 図9は、それぞれ、WTα/β前駆体、DS1変異体cDNA、またはΔS1変異体cDNAのいずれかをトランスフェクトし、ゴルジマーカーGOLPH4と共存させた、GNPTAB-/-HeLa細胞の共焦点免疫蛍光画像を示す(「方法」を参照されたい)。 図10は、それぞれ、WTα/β前駆体、または示されている変異体cDNAのいずれかをトランスフェクトし、ゴルジマーカーGOLPH4と共存させた、GNPTAB-/-HeLa細胞の共焦点免疫蛍光画像を示す(「方法」)。 図11は、それぞれ、WTα/β前駆体、N1-S3変異体cDNA、またはS1-S3変異体cDNAのいずれかをトランスフェクトし、ゴルジマーカーGOLPH4と共存させた、GNPTAB-/-HeLa細胞の共焦点免疫蛍光画像を示す(「方法」を参照されたい)。 図12A、図12B、及び図12Cは、最小限のGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼの発現及び酵素活性の解析を示す概略図及びグラフを示す。(図12A)WTのGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/βサブユニットのモジュール配置及び最小限の酵素であるS1-S3のモジュール配置の概略図。最小限の酵素は、ヒトスペーサー1配列をD.discoideumスペーサー1に置き換え、アミノ酸438~928を除去することにより生成された。(図12B)示されているリソソーム酵素の発現プラスミドを、空ベクター、WTα/β前駆体、またはS1-S3変異体cDNAと併せて、Expi293F細胞またはマウスD9細胞にコトランスフェクトした。「方法」において記述されるように、CI-MPR親和性ビーズへの結合、及び結合した物質の活性をアッセイすることにより、WTα/β前駆体またはS1-S3変異体のいずれかによって媒介されるリン酸化の度合いを各酵素で定量した。空ベクターで得られた値は、内在性GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼによって媒介される活性を示す。(図12C)WTα/β前駆体またはS1-S3欠失変異体cDNAのいずれかを、4種のリソソーム酵素の発現プラスミドと併せて、GNPTAB-/-HeLa細胞にコトランスフェクトしたが、親HeLa細胞には後者のcDNAのみをトランスフェクトし、内在性GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ活性を利用した。トランスフェクションの48時間後、[2-H]-マンノースで細胞を2時間標識し、その後、培地に分泌されたタンパク質の免疫沈降を行い、Man-6-Pを含むN-グリカンのパーセントを判定した。リン酸化%の絶対値を示してある。
本発明者らは、触媒的「ステルス」ドメインを保持しながらもαサブユニットエレメントのうちのいくつかを欠いている切断型α/β前駆体が非常に高いレベルで発現され、WT酵素の場合に生じるものよりも20倍高い触媒活性をもたらすことを示す。切断型α/β前駆体は、種々のリソソームタンパク質及び非リソソームタンパク質の内在性レベルを超えるマンノースのリン酸化を刺激した。更に、この切断型酵素は、マンノース-6-P受容体への大幅に高い親和性をもたらす、2つのMan-6-P残基を含むグリカンの形成を増加させた。リソソーム酵素のリン酸化は、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼのWTまたは切断型のいずれかのα/β前駆体とのコトランスフェクションにより、実質的に増加し得る。リン酸化の増強は、結合及び細胞による取り込みを増加させる。この効果は、内在性GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼによって良好にリン酸化されるGalAなどのリソソーム酵素においても生じる。更にこの方法は、LAMAN及びGAAという、内在性GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼにより十分にリン酸化されない2つのリソソーム酵素のリン酸化及び取り込みを増強させる。本開示の種々の態様について、より詳細に以下に記述する。
I.組成物
ある態様において、本開示は、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-PT)α/βサブユニットを含む単離されたポリペプチドを提供する。別の態様では、本開示は、少なくとも1つのポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドであって、ポリペプチドがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-PT)α/βサブユニットを含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。更に別の態様では、本開示は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターであって、ポリペプチドがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-PT)α/βサブユニットを含む、ベクターを提供する。なおも更に別の態様では、本開示は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む宿主細胞であって、ポリペプチドがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-PT)α/βサブユニットを含む、宿主細胞を提供する。
ある態様において、全長GlcNAc-1-PTタンパク質は、αサブユニット、βサブユニット、及びγサブユニットという3つのサブユニットを含み得る。α及びβ(GlcNAc-1-PTα/β)サブユニットは、γサブユニットの非存在下でほとんどのリソソーム酵素をリン酸化させることができる場合がある。GlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、種々の保存ドメインを含み得る。GlcNAc-1-PTα/βサブユニットの保存ドメインは、ポリペプチドのN末端からC末端の順に配置された、スペーサー1ドメイン(スペーサー1)、Notch1ドメイン(Notch1)、Notch2ドメイン(Notch2)、スペーサー2ドメイン(スペーサー2)、DNAメチルトランスフェラーゼ関連タンパク質相互作用ドメイン(DMAP)、スペーサー3ドメイン(スペーサー3)、及びスペーサー4ドメイン(スペーサー4)を含み得る。αサブユニットは、ポリペプチドのN末端からC末端の順に配置された、スペーサー1、Notch1、Notch2、スペーサー2、及びDMAPを含み得る。スペーサー3は、α及びβサブユニットにまたがっていてよく、αサブユニットとβサブユニットとが切断され得る部位、すなわちα/βサブユニット切断部位を含み得る。スペーサー4はβサブユニット内にあってもよい。
ある態様において、GlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、1つ以上の保存ドメインの欠失によって修飾されていてよい。非限定的な例として、修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、スペーサー1、Notch1、Notch2、スペーサー2、DMAP、及びスペーサー3の一部のうちの1つ以上の欠失を含み得る。ある態様において、修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、スペーサー1の欠失を含み得る。ある態様において、修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、スペーサー1及びNotch1の欠失を含み得る。ある態様において、修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、スペーサー1及びNotch2の欠失を含み得る。ある態様において、修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、スペーサー1、Notch1、及びNotch2の欠失を含み得る。ある態様において、修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、スペーサー1、Notch1、Notch2、及びスペーサー2の欠失を含み得る。ある態様において、修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、スペーサー1、Notch1、Notch2、スペーサー2、及びDMAPの欠失を含み得る。ある態様において、修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、スペーサー1、Notch1、Notch2、スペーサー2、及びDMAPの欠失、ならびにスペーサー3のα/βサブユニット切断部位におけるスペーサー3の一部の欠失を含み得る。
ある態様において、本開示は、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-PT)α/βサブユニットを含む単離されたポリペプチドであって、スペーサー1が欠失しており、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失している、ポリペプチドを提供する。別の態様では、本開示は、少なくとも1つのポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドであって、ポリペプチドがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-PT)α/βサブユニットを含み、スペーサー1が欠失しており、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失している、単離されたポリヌクレオチドを提供する。更に別の態様では、本開示は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターであって、ポリペプチドがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-PT)α/βサブユニットを含み、スペーサー1が欠失しており、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失している、ベクターを提供する。なおも更に別の態様では、本開示は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む宿主細胞であって、ポリペプチドがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-PT)α/βサブユニットを含み、スペーサー1が欠失しており、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失している、宿主細胞を提供する。
(a)GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ
ある態様において、本開示は、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-PT)を提供する。本明細書で使用される場合、「GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ」という用語には、野生型GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ、変異体GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼの機能的ホモログ、及びそれらの断片が含まれる。GlcNAc-1-PTは、2つの遺伝子によってコードされるα2β2γ2六量体タンパク質である。より小さなγサブユニットは、GNPTG遺伝子によってコードされ、一方でαサブユニット及びβサブユニットは、GNPTAB遺伝子によって単一のα/β前駆体としてコードされる。ゴルジ内のサイト1プロテアーゼ(S1P)により、ヒトα/β前駆体のK928におけるタンパク質分解切断が媒介され、この切断は、このタンパク質の触媒能力に必須である。GlcNAc-1-PTは、リソソーム酸性ヒドロラーゼのコンフォメーション依存性タンパク質決定基に特異的に結合し、このヒドロラーゼの高マンノース型N-結合型グリカン上のマンノース残基に対するUDP-GlcNAcからのGlcNAc-1-Pの輸送を触媒することにより、Man-6-Pタグの生成において最初で最も重要なステップを行う。したがって、本開示のGlcNAc-1-PTは、機能的ホモログまたは断片を含め、Man-6-Pタグを生成する。ある特定の実施形態では、本開示のGlcNAc-1-Pは、α/βサブユニットを含む。全長ヒトα/βGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼアミノ酸配列の配列情報は、例えば、GenBank受入番号CAJ30014.1を使用して入手することができる。全長ヒトα/βGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼmRNA配列の配列情報は、例えば、GenBank受入番号AM085438.1を使用して入手することができる。ある特定の実施形態では、本開示のα/βGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼは、配列番号1(MLFKLLQRQT YTCLSHRYGL YVCFLGVVVT IVSAFQFGEV VLEWSRDQYH VLFDSYRDNI AGKSFQNRLC LPMPIDVVYT WVNGTDLELL KELQQVREQM EEEQKAMREI LGKNTTEPTK KSEKQLECLL THCIKVPMLV LDPALPANIT LKDLPSLYPS FHSASDIFNV AKPKNPSTNV SVVVFDSTKD VEDAHSGLLK GNSRQTVWRG YLTTDKEVPG LVLMQDLAFL SGFPPTFKET NQLKTKLPEN LSSKVKLLQL YSEASVALLK LNNPKDFQEL NKQTKKNMTI DGKELTISPA YLLWDLSAIS QSKQDEDISA SRFEDNEELR YSLRSIERHA PWVRNIFIVT NGQIPSWLNL DNPRVTIVTH QDVFRNLSHL PTFSSPAIES HIHRIEGLSQ KFIYLNDDVM FGKDVWPDDF YSHSKGQKVY LTWPVPNCAE GCPGSWIKDG YCDKACNNSA CDWDGGDCSG NSGGSRYIAG GGGTGSIGVG QPWQFGGGIN SVSYCNQGCA NSWLADKFCD QACNVLSCGF DAGDCGQDHF HELYKVILLP NQTHYIIPKG ECLPYFSFAE VAKRGVEGAY SDNPIIRHAS IANKWKTIHL IMHSGMNATT IHFNLTFQNT NDEEFKMQIT VEVDTREGPK LNSTAQKGYE NLVSPITLLP EAEILFEDIP KEKRFPKFKR HDVNSTRRAQ EEVKIPLVNI SLLPKDAQLS LNTLDLQLEH GDITLKGYNL SKSALLRSFL MNSQHAKIKN QAIITDETND SLVAPQEKQV HKSILPNSLG VSERLQRLTF PAVSVKVNGH DQGQNPPLDL ETTARFRVET HTQKTIGGNV TKEKPPSLIV PLESQMTKEK KITGKEKENS RMEENAENHI GVTEVLLGRK LQHYTDSYLG FLPWEKKKYF QDLLDEEESL KTQLAYFTDS KNTGRQLKDT FADSLRYVNK ILNSKFGFTS RKVPAHMPHM IDRIVMQELQ DMFPEEFDKT SFHKVRHSED MQFAFSYFYY LMSAVQPLNI SQVFDEVDTD QSGVLSDREI RTLATRIHEL PLSLQDLTGL EHMLINCSKM LPADITQLNN IPPTQESYYD PNLPPVTKSL VTNCKPVTDK IHKAYKDKNK YRFEIMGEEE IAFKMIRTNV SHVVGQLDDI RKNPRKFVCL NDNIDHNHKD AQTVKAVLRD FYESMFPIPS QFELPREYRN RFLHMHELQE WRAYRDKLKF WTHCVLATLI MFTIFSFFAE QLIALKRKIF PRRRIHKEAS PNRIRV)に記載の配列を含む。他の実施形態では、本開示のGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼは、GlcNAc-1-PTと同じ機能活性を有することを条件として、配列番号1に対して約80%の同一性を有し得る。例えば、本開示のGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼは、GlcNAc-1-PTと同じ機能活性を有することを条件として、配列番号1に対して約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の同一性を有し得る。
ある態様では、全長GlcNAc-1-PT(配列番号1)を基準にして、スペーサー1は、およそアミノ酸86とアミノ酸322との間にあり、Notch1及びNotch2は、およそアミノ酸438とアミノ酸435との間にあり、スペーサー2は、およそアミノ酸535とアミノ酸694との間にあり、DMAPは、およそアミノ酸694とアミノ酸819との間にあり、スペーサー3は、およそアミノ酸819とアミノ酸955との間にあり、α/βサブユニット切断部位は、およそアミノ酸928にあり、スペーサー4は、およそアミノ酸1041とアミノ酸1149との間にある。
本開示は他の生物におけるGlcNAc-1-PTのホモログも対象とし、ヒトGlcNAc-1-PTに限定されないことが理解される。他の種におけるホモログは、当技術分野で公知の方法により見出され得る。タンパク質が本発明の配列と有意な相同性を有するかどうか、または本発明の配列とある特定の配列同一性百分率を共有するかどうかを判定する際、従来のアルゴリズムによって配列類似性が判定され得る。このアルゴリズムは通常、最良な適合度を達成するために少数のギャップを導入することを可能にするものである。特に、2つのポリペプチドまたは2つの核酸配列の「同一性パーセント」は、Karlin及びAltschul(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268,1993)のアルゴリズムを使用して判定される。かかるアルゴリズムは、Altschulら(J.Mol.Biol.215:403-410,1990)のBLASTN及びBLASTXプログラムに組み込まれている。BLASTNプログラムを用いてBLASTヌクレオチド検索を行うことにより、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。同様に、BLASTXプログラムを用いてBLASTタンパク質検索を行うことにより、本発明のポリペプチドと相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためにギャップ付きアライメントを得るためには、Altschul et al.(Nucleic Acids Res.25:3389-3402,1997)に記述されているGapped BLASTを利用する。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合は、それぞれのプログラム(例えば、BLASTX及びBLASTN)のデフォルトパラメータを用いる。更なる詳細についてはwww.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
GlcNAc-1-PTホモログは、GlcNAc-1-PTと同じ機能活性を有することを条件として、ヒトGlcNAc-1-PTと少なくとも65、70、75、80、85、90、または95%相同であり得る。ある特定の実施形態では、GlcNAc-1-PTホモログは、GlcNAc-1-PTと同じ機能活性を有することを条件として、ヒトGlcNAc-1-PTと少なくとも65、66、67、68、69、または70%相同であり得る。異なる実施形態では、GlcNAc-1-PTホモログは、GlcNAc-1-PTと同じ機能活性を有することを条件として、ヒトGlcNAc-1-PTと少なくとも71、72、73、74、75、76、77、78、または79%相同であり得る。一実施形態では、GlcNAc-1-PTホモログは、ヒトGlcNAc-1-PTと少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、または89%相同であり得る。別の実施形態では、GlcNAc-1-PTホモログは、GlcNAc-1-PTと少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%相同であり得る。なおも別の実施形態では、GlcNAc-1-PTホモログは、全長GlcNAc-1-PTと同じ機能活性を有する切断型またはバリアントであり得る。
他の実施形態では、本開示のGlcNAc-1-Pは、スペーサー1が欠失しているα/βサブユニットを含む。より特定すると、本開示のGlcNAc-1-Pは、配列番号1を基準にして約アミノ酸86と約アミノ酸322との間のアミノ酸が欠失しているα/βサブユニットを含む。スペーサー1の欠失は、野生型GlcNAc-1-Pにより十分にリン酸化されないいくつかの非リソソーム糖タンパク質をリン酸化させる能力が増強されたGlcNAc-1-Pをもたらす。更に他の実施形態では、本開示のGlcNAc-1-Pは、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失しているα/βサブユニットを含む。より特定すると、本開示のGlcNAc-1-Pは、配列番号1を基準にして約アミノ酸438と約アミノ酸928との間のアミノ酸が欠失しているα/βサブユニットを含む。特定の実施形態では、本開示のGlcNAc-1-Pは、スペーサー1が欠失しており、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失している、α/βサブユニットを含む。より特定すると、本開示のGlcNAc-1-Pは、配列番号1を基準にして約アミノ酸86と約アミノ酸322との間のアミノ酸が欠失しており、約アミノ酸438と約アミノ酸928との間のアミノ酸が欠失している、α/βサブユニットを含む。重要なことに、欠失は、アミノ酸928を超えて伸長してはならない。Notch1とα/β切断部位との間の領域とともにスペーサー1を除去すると、細菌タンパク質を思わせるGlcNAc-1-Pがもたらされ、この最小限のGlcNAc-1-PTを発現する細胞は、その高い発現レベルの結果として、単糖α-メチルD-マンノシド(αMM)及び非リソソーム糖タンパク質に対して劇的に増加した活性を提示する。スペーサー1が欠失しており、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失しているGlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、野生型GlcNAc-1-PTα/βサブユニットと比べて約5倍高い触媒活性を有する。例えば、スペーサー1が欠失しており、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失しているGlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、野生型GlcNAc-1-PTα/βサブユニットと比べて約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、または約30倍高い触媒活性を有する。スペーサー1が欠失しており、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失しているGlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、2つのMan-6-P残基を含むグリカンの含有量を、野生型GlcNAc-1-PTα/βサブユニットと比べて増加させる。例えば、スペーサー1が欠失しており、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失しているGlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、2つのMan-6-P残基を含むグリカンの含有量を、野生型GlcNAc-1-PTα/βサブユニットと比べて約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、または約25%増加させる。図3Aには、他の本開示の修飾されたGlcNAc-1-Pが示されている。
(b)酵素構築物
ある態様において、本開示は、酵素構築物を提供する。本開示のある酵素構築物は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であって、ポリペプチドがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼまたはその断片を含む、ポリヌクレオチド配列である。本明細書で使用される場合、「本開示のポリヌクレオチド配列」及び「酵素構築物」という用語は交換可能である。本開示は、酵素構築物によってコードされる単離されたポリペプチド、酵素構築物を含むベクター、及び該ベクターを含む単離細胞も提供する。
i.ポリヌクレオチド配列
本開示のある酵素構築物は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であって、ポリペプチドがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼまたはその断片を含む、ポリヌクレオチド配列である。ある特定の実施形態では、酵素構築物は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であって、ポリペプチドがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/βサブユニットを含む、ポリヌクレオチド配列である。別の実施形態では、酵素構築物は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であって、ポリペプチドがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/βサブユニットを含み、スペーサー1が欠失している、ポリヌクレオチド配列である。更に別の実施形態では、酵素構築物は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であって、ポリペプチドがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/βサブユニットを含み、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失している、ポリヌクレオチド配列である。なおも更に別の実施形態では、酵素構築物は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であって、ポリペプチドがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/βサブユニットを含み、スペーサー1が欠失しており、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失している、ポリヌクレオチド配列である。異なる実施形態では、酵素構築物は、少なくとも2つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であって、ポリペプチドがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼまたはその断片を含む、ポリヌクレオチド配列である。
1つより多くのポリペプチドが本開示のポリヌクレオチドによってコードされる場合、ポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコードする各ポリヌクレオチドに作動可能に連結した1つより多くのプロモーターを含んでいてよい。非限定的な例として、第1のGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼまたはその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、第1のプロモーターに作動可能に連結していてよく、第2のGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼまたはその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、第2のプロモーターに作動可能に連結していてよい。第1及び第2のGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼまたはその断片は、同じであっても異なっていてもよい。第1及び第2のプロモーターは、同じであっても異なっていてもよい。プロモーターについては、以下により詳細に記述する。
あるいは、1つより多くのポリペプチドが本開示のポリヌクレオチドによってコードされる場合、ポリヌクレオチドは、単一のプロモーターに作動可能に連結していてもよい。かかる実施形態では、当技術分野において一般的ないくつかの方策を使用して、1つより多くの発現産物を生成してよい。非限定的な例として、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド同士の間に、スプライシングシグナル、内部リボソーム侵入部位(IRES)、またはタンパク質分解切断部位を挿入してよい。非限定的な例として、単一のプロモーターに作動可能に連結した第1のGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼまたはその断片と第2のGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼまたはその断片とを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、第1及び第2のGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼまたはその断片のコード領域同士の間に、スプライシングシグナル、IRES、またはタンパク質分解切断部位を更に含み得る。
上記実施形態のそれぞれにおいて、「GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ」、「その断片」、「GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/βサブユニット」、及び「GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼS1-S3」は、参照により本セクションに組み込まれている上記セクションI(a)に詳細に記述した通りであり得る。
本開示のポリヌクレオチド配列は、当技術分野で公知の分子生物学的方法を使用して核酸分子から産生され得る。本開示のポリヌクレオチド配列を構築するためには、当業者に公知のポリヌクレオチド断片を増幅する方法及びポリヌクレオチド断片をベクターに挿入する方法のうち、いずれを使用してもよい。これらの方法には、インビトロ組換えDNA及び合成技術ならびにインビボ組換えが含まれ得る(Sambrook et al.Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory、Current Protocols in Molecular Biology,Eds.Ausubel,et al.,Greene Publ.Assoc.,Wiley-Interscience,NYを参照されたい)。
ii.ベクター
別の態様では、本開示は、本開示の酵素構築物を含むベクターを提供する。本明細書で使用される場合、ベクターは、遺伝子材料を輸送するためのビヒクルとして使用される核酸分子と定義される。ベクターとしては、プラスミド、ファージミド、コスミド、転位因子、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、及び植物ウイルス)、及び人工染色体(例えば、YAC)、例えばレトロウイルスベクター(例えば、モロニーマウス白血病ウイルスベクター(MoMLV)、MSCV、SFFV、MPSV、SNVなどに由来するもの)、レンチウイルスベクター(例えば、HIV-1、HIV-2、SIV、BIV、FIVなどに由来するもの)、アデノウイルス(Ad)ベクター(その複製可能形態、複製欠損形態、及びガットレス(gutless)形態を含む)、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、サルウイルス40(SV-40)ベクター、ウシパピローマウイルスベクター、エプスタイン・バーウイルス、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ハーベイマウス肉腫ウイルスベクター、マウス乳癌ウイルスベクター、ラウス肉腫ウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
ベクターは、高コピー数、中コピー数、または低コピー数を有し得る。コピー数は、酵素構築物の発現レベルを制御するために、また発現ベクターの安定性を制御する手段として利用することができる。一実施形態では、高コピー数ベクターが利用される場合がある。高コピー数ベクターは、細菌細胞1つ当たり少なくとも31、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100個のコピーを有し得る。他の実施形態では、高コピー数ベクターは、宿主細胞1つ当たり少なくとも100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、または400個のコピーを有し得る。代替的な実施形態では、低コピー数ベクターが利用される場合がある。例えば、低コピー数ベクターは、宿主細胞1つ当たり1個、または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のコピーを有し得る。別の実施形態では、中コピー数ベクターが利用される場合がある。例えば、中コピー数ベクターは、宿主細胞1つ当たり少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のコピーを有し得る。
本開示のベクターは、通常、タンパク質発現のために使用される。当技術分野において周知であるように、かかるベクターは、幅広い複製起点、複数のクローニング配列、プロモーター、リボソーム結合部位/リボソーム侵入部位、翻訳開始部位、転写ターミネーターなどを保有し得る。ベクターは、選択可能マーカー、レポーター、及びペプチドタグをコードする1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む場合もある。
酵素構築物をコードする核酸は、選択可能マーカーをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結していてもよい。選択可能マーカーを使用すると、外来性核酸を組み込んだ細胞を効率的に選択及び特定することができる。選択可能マーカーは、外来性核酸を受ける細胞に、ある特定の毒素または抗生物質に対する耐性といった選択上の利点を与える。抗生物質耐性マーカーの好適な例としては、限定されるものではないが、カナマイシン、スペクトマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン(G418)、アンピシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、ゼオシン、及びブラストサイジンに対する耐性をもたらすタンパク質をコードするものが挙げられる。
一部の実施形態では、ベクターは、レポータータンパク質を発現させるための転写カセットを含んでもよい。例として、レポータータンパク質としては、蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、ベータラクタマーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、及びそれらのバリアントを挙げることができる。
酵素構築物をコードする発現ベクターは、ウイルスベクターを使用して、またはウイルスによらない輸送方法によって、細胞に送達され得る。核酸を細胞に導入するために好適なウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ラブドウイルス、及びヘルペスウイルスが挙げられる。ウイルスによらない核酸輸送方法としては、ネイキッド核酸、リポソーム、及びタンパク質/核酸コンジュゲートが挙げられる。細胞に導入される酵素構築物をコードする発現構築物は、線状であっても環状であってもよく、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、DNA、RNA、またはそれらの任意の修飾形態もしくは組み合わせであってもよい。
酵素構築物をコードする発現構築物は、トランスフェクションによって細胞に導入されてもよい。核酸をトランスフェクトするための方法は、当業者に周知である。トランスフェクション方法としては、ウイルス形質導入、カチオン性トランスフェクション、リポソームトランスフェクション、デンドリマートランスフェクション、電気穿孔、熱ショック、ヌクレオフェクショントランスフェクション、マグネトフェクション、ナノ粒子、微粒子銃送達(遺伝子銃)、及びLipofectamine、Dojindo Hilymax、Fugene、jetPEI、Effectene、またはDreamFectなどの商標登録されたトランスフェクション試薬が挙げられるが、これらに限定されない。
細胞に導入されると、酵素構築物をコードする発現構築物は、染色体に組み込まれ得る。一部の実施形態では、酵素構築物をコードする発現構築物の細胞染色体への組み込みは、可動エレメントを用いて達成され得る。可動エレメントは、トランスポゾンまたはレトロエレメントであってよい。様々なトランスポゾンが、本発明において使用するのに好適である。使用することのできるDNAトランスポゾンの例としては、Muトランスポゾン、Drosophila由来のPエレメントトランスポゾン、及び魚由来のsleeping beautyトランスポゾンといったトランスポゾンのTc1/Marinerスーパーファミリーのメンバーが挙げられる。様々なレトロエレメントが本発明において使用するのに好適であり、これには、LTRを含むレトロトランスポゾン及び非LTRレトロトランスポゾンが含まれる。レトロトランスポゾンの非限定的な例としては、Drosophila melanogaster由来のCopia及びgypsy、Saccharomyces cerevisiae由来のTyエレメント、真核生物由来の長鎖散在反復配列(LINE)及び短鎖散在反復配列(SINE)が挙げられる。LINEの好適な例としては、哺乳動物由来のL1及びカイコ由来のR2Bmが挙げられる。
外来性核酸の細胞染色体への組み込みは、ウイルスによって媒介されてもよい。核酸を染色体に組み込むウイルスとしては、バクテリオファージ、アデノ随伴ウイルス、及びレトロウイルスが挙げられる。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、ヒトまたは非ヒト霊長類AAVの血清型及びそれらのバリアントに由来してよい。好適なアデノ随伴ウイルスとしては、AAV1型、AAV2型、AAV3型、AAV4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型、及びAAV11型が挙げられる。様々なレトロウイルスが、本発明において使用するのに好適である。レトロウイルスベクターは、複製可能または複製欠損のいずれでもよい。レトロウイルスベクターは、アルファレトロウイルス、ベータレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、デルタレトロウイルス、イプシロンレトロウイルス、レンチウイルス、またはスプーマレトロウイルスであってよい。ある実施形態では、レトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクターであってよい。レンチウイルスベクターは、ヒト、サル、ネコ、ウマ、ウシ、または他の哺乳動物種に感染するレンチウイルスに由来し得る。好適なレンチウイルスの非限定的な例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、及びウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)が挙げられる。
酵素構築物をコードする発現構築物の、細胞の染色体への組み込みは、ランダムであってよい。あるいは、酵素構築物をコードする発現構築物の組み込みは、染色体の特定の配列または位置を標的としてもよい。概して、組み込み部位における全体的環境は、組み込まれた酵素構築物をコードする発現構築物が発現されるかどうかだけでなく、その発現レベルにも影響を与え得る。
酵素構築物をコードする発現構築物がトランスフェクトされた細胞は、概して、核酸が染色体に組み込まれている細胞を単離して増やすため、選択下で増殖する。酵素構築物をコードする発現構築物が染色体に組み込まれている細胞は、上述の選択可能マーカーを用いた連続選択により維持され得る。組み込まれた外来性核酸配列の存在及び維持は、当業者に公知の標準的技術、例えばサザンブロット、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用した特定の核酸配列の増幅、及び/またはヌクレオチドシーケンシングを使用して検証することができる。
核酸分子は、適切な宿主細胞に導入された場合に融合ポリペプチドを発現することのできるベクターに挿入される。適切な宿主細胞としては、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
iii.調節
ある特定の態様において、本開示のポリヌクレオチド配列の発現は調節され得る。かかる調節により、酵素構築物がいつどこで機能するかの制御が可能になり得る。
発現ベクターは通常、次のエレメント:プロモーター、ターミネーター、リボソーム結合部位/リボソーム侵入部位、及び翻訳開始部位のうちの1つ以上を含む。かかるエレメントは、本開示の酵素構築物の発現を制御するために使用され得る。本開示の核酸分子の発現は、組換えDNA分子によって形質転換された宿主において分子が発現されるように、第2の核酸配列によって調節され得る。例えば、本開示の核酸分子の発現は、当技術分野で公知の任意のプロモーター/エンハンサーエレメントによって制御されてよい。本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、核酸の発現をもたらすこと、活性化させること、または増強することができる、合成または天然由来の分子を意味する場合がある。プロモーターは、構成的、誘導性/抑制性、または細胞型特異的であってよい。ある特定の実施形態では、プロモーターは構成的であり得る。哺乳動物細胞の構成的プロモーターの非限定的な例としては、CMV、UBC、EF1α、SV40、PGK、CAG、CBA/CAGGS/ACTB、CBh、MeCP2、U6、及びH1が挙げられる。他の実施形態では、プロモーターは誘導性プロモーターであり得る。誘導性プロモーターは、テトラサイクリン、熱ショック、ステロイドホルモン、重金属、ホルボールエステル、アデノウイルスE1Aエレメント、インターフェロン、及び血清誘導性プロモーターからなる群から選択され得る。異なる実施形態では、プロモーターは細胞型特異的であり得る。例えば、ニューロン(例えばシナプシン)、アストロサイト(例えばGFAP)、オリゴデンドロサイト(例えばミエリン塩基性タンパク質)、ミクログリア(例えばCX3CR1)、神経内分泌細胞(例えばクロモグラニンA)、筋細胞(例えばデスミン、Mb)、または心筋細胞(例えばアルファミオシン重鎖プロモーター)の各細胞型特異的プロモーターを使用してよい。例示的な実施形態において、プロモーターは、Nrl(杆体光受容器特異的)プロモーターまたはHBB(ヘモグロビンベータ)プロモーターであり得る。プロモーターは、核酸の発現を更に増強するため、及び/または空間的発現及び/または時間的発現を変化させるための、1つ以上の特異的転写調節配列を更に含んでいてよい。エンハンサーの非限定的な例としては、CMVエンハンサー及びSP1エンハンサーが挙げられる。
1つより多くのポリペプチドが本開示のポリヌクレオチドによってコードされ、かつポリヌクレオチドが、ポリペプチドをコードする各ポリヌクレオチドに作動可能に連結した1つより多くのプロモーターを含む実施形態において、プロモーターは、同じであっても異なっていてもよい。本明細書で使用される「作動可能に連結した」という用語は、核酸配列の発現が、それが空間的に結合しているプロモーターの制御下にあることを意味する。プロモーターは、その制御下にある核酸配列の5’(上流)に位置し得る。プロモーターと、発現される核酸配列との間の距離は、プロモーターと、それが制御する天然核酸配列との間の距離とおよそ同じであってよい。当技術分野において公知であるように、この距離のばらつきは、プロモーター機能を喪失することなく許容される場合がある。
iv.宿主細胞
別の態様では、本開示は、本開示のベクターを含む宿主細胞を提供する。この細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい。適切な細胞としては、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。本開示による宿主細胞は、実質的に純粋な培養物においてインビトロで維持される細胞(すなわち単離された細胞)である。本開示のベクターを含む宿主細胞は、タンパク質発現、また場合により精製のために使用され得る。タンパク質を発現させ、場合により、宿主から発現されたタンパク質を精製するための方法は、当技術分野において標準的である。
一部の実施形態では、本開示のベクターを含む宿主細胞を使用して、本開示の酵素構築物によってコードされるポリペプチドを産生することができる。概して、本開示のポリペプチドの産生は、酵素構築物を含むベクターを宿主細胞にトランスフェクトし、次に、この細胞が所望のポリペプチドを転写及び翻訳するように細胞を培養することを伴う。次に、単離された宿主細胞を溶解させて、発現されたポリペプチドをその後の精製のために抽出することができる。
一部の実施形態では、宿主細胞は原核細胞である。好適な原核細胞の非限定的な例としては、E.coli及び他の腸内細菌科、Escherichia種、Campylobacter種、Wolinella種、Desulfovibrio種、Vibrio種、Pseudomonas種、Bacillus種、Listeria種、Staphylococcus種、Streptococcus種、Peptostreptococcus種、Megasphaera種、Pectinatus種、Selenomonas種、Zymophilus種、Actinomyces種、Arthrobacter種、Frankia種、Micromonospora種、Nocardia種、Propionibacterium種、Streptomyces種、Lactobacillus種、Lactococcus種、Leuconostoc種、Pediococcus種、Acetobacterium種、Eubacterium種、Heliobacterium種、Heliospirillum種、Sporomusa種、Spiroplasma種、Ureaplasma種、Erysipelothrix種、Corynebacterium種、Enterococcus種、Clostridium種、Mycoplasma種、Mycobacterium種、Actinobacteria種、Salmonella種、Shigella種、Moraxella種、Helicobacter種、Stenotrophomonas種、Micrococcus種、Neisseria種、Bdellovibrio種、Hemophilus種、Klebsiella種、Proteus mirabilis、Enterobacter cloacae、Serratia種、Citrobacter種、Proteus種、Serratia種、Yersinia種、Acinetobacter種、Actinobacillus種、Bordetella種、Brucella種、Capnocytophaga種、Cardiobacterium種、Eikenella種、Francisella種、Haemophilus種、Kingella種、Pasteurella種、Flavobacterium種、Xanthomonas種、Burkholderia種、Aeromonas種、Plesiomonas種、Legionella種、及びアルファプロテオバクテリア、例えばWolbachia種、シアノバクテリア、スピロヘータ、緑色硫黄細菌及び緑色非硫黄細菌、グラム陰性球菌、偏好性グラム陰性桿菌、腸内細菌科グルコース発酵グラム陰性桿菌、非グルコース発酵性グラム陰性桿菌、グルコース発酵性グラム陰性桿菌、オキシダーゼ陽性グラム陰性桿菌が挙げられる。タンパク質発現に特に有用な細菌宿主細胞としては、Escherichia coli、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas haloplanctis、Pseudomonas putida AC10、Pseudomonas pseudoflava、Bartonella henselae、Pseudomonas syringae、Caulobacter crescentus、Zymomonas mobilis、Rhizobium meliloti、Myxococcus xanthusなどのグラム陰性細菌、ならびにBacillus subtilis、Corynebacterium、Streptococcus cremoris、Streptococcus lividans、及びStreptomyces lividansなどのグラム陽性細菌が挙げられる。E.coliは、最も広く使用されている発現宿主のうちの1つである。したがって、E.coliにおける過剰発現のための技術は十分に開発されており、当業者にとって容易に利用可能である。更に、Pseudomonas fluorescensは、組換えタンパク質の高レベル産生のために(すなわち、バイオ治療薬及びワクチンの開発のために)一般的に使用されている。
一部の実施形態では、宿主細胞は酵母または真菌細胞である。タンパク質発現のために特に有用な真菌宿主細胞としては、Aspergillis oryzae、Aspergillis niger、Trichoderma reesei、Aspergillus nidulans、Fusarium graminearumが挙げられる。タンパク質発現のために特に有用な酵母宿主細胞としては、Candida albicans、Candida maltose、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces fragilis、Kluyveromyces lactis、Pichia guillerimondii、Pichia pastoris、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、及びYarrowia lipolyticaが挙げられる。
一部の実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。タンパク質発現のために特に有用な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)、ヒト胎児腎臓細胞、Bos primigenius、及びMus musculusが挙げられる。特定の実施形態では、宿主細胞はCHO細胞である。更に、哺乳動物宿主細胞は、確立された市販の細胞株であってよい(例えば、American Type Culture Collection(ATCC),Manassas,VA)。宿主細胞は不死化細胞であってもよい。あるいは、宿主細胞は初代細胞であってもよい。「初代細胞」とは、生きた組織(すなわち生検材料)から直接採取され、インビトロ増殖のために確立された細胞で、ごくわずかな集団倍加しか経ていないため、連続分裂性(continuous tumorigenic)細胞株または人工的に不死化した細胞株と比較して、細胞の由来となる組織の主要な機能的構成要素及び特徴をよりよく代表するものである。
ある態様において、宿主細胞は、目的のタンパク質を高レベルで産生するように工学操作されている。例えば、宿主細胞は、マンノース-6-リン酸(Man-6-P)でタグ付けすることにより役立つタンパク質を産生するように工学操作されている。ある特定の実施形態では、目的のタンパク質はリソソームタンパク質である。リソソームタンパク質の非限定的な例としては、β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)、GalA、カテプシンD(CathD)、ニーマン・ピック病C2型(NPC2)、β-ヘキソサミニダーゼ(HEXB)、α-ガラクトシダーゼ(GLA)、β-マンノシダーゼ(MANBA)、アルファ-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、アリールスルファターゼB、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、及びリソソーム酸性α-マンノシダーゼ(LAMAN)が挙げられる。特定すると、リソソームタンパク質は、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)またはリソソーム酸性α-マンノシダーゼ(LAMAN)である。これらのタンパク質は、内在性GlcNAc-1-PTにより十分にリン酸化されない場合があるため、本開示のGlcNAc-1-PTと組み合わせた場合に特に有用である。他の実施形態では、目的のタンパク質は非リソソームタンパク質である。非リソソームタンパク質の非限定的な例としては、DNase1、レニン、白血病抑制因子(LIF)、タンパク質O-フコシルトランスフェラーゼ2(PoFUT2)、グリコペプシノゲン(GP)、及びフォンウィルブランド因子A1A2A3ドメインが挙げられる。
v.ポリペプチド配列
別の態様では、本開示は、本開示のポリヌクレオチド配列によってコードされる1つ以上の単離されたポリペプチド(複数可)を提供する。本開示のポリヌクレオチド配列は、セクションI(b)iに詳細に記述されており、参照により本セクションに組み込まれている。本明細書で使用される場合、「単離されたポリペプチド」という用語は、ポリペプチドを産生した細胞から部分的または完全に精製されたポリペプチドを指す。本開示の単離されたポリペプチドは、当技術分野で公知の分子生物学的方法を使用して産生され得る。大まかに言うと、このポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、適切な宿主細胞に導入された場合にポリペプチドを発現することのできるベクターに挿入される。適切なベクター及び宿主細胞については、それぞれセクションI(b)iii及びセクションI(b)ivに記述されている。ポリペプチドが発現されたら、一般的な精製方法を使用してこれを細胞から得ることができる。例えば、ポリペプチドが分泌シグナルを有する場合、発現されたポリペプチドを細胞培養上清から単離することができる。あるいは、分泌シグナルを欠いているポリペプチドは、封入体及び/または細胞抽出物から精製することができる。本開示のポリペプチドは、例えば、クロマトグラフィ(例えば、イオン交換、親和性、特にプロテインA後の特定の抗原に対する親和性によるもの、及びサイズカラムクロマトグラフィ)、遠心分離、溶解度差、例えば硫酸アンモニウム沈殿法、またはタンパク質の精製のための任意の他の標準的技術(例えば、Scopes,“Protein Purification”,Springer Verlag,N.Y.(1982)を参照されたい)を含む、当業者に公知の任意の方法を使用して、培養上清、封入体、または細胞抽出物から単離することができる。ポリペプチドの単離は、ポリペプチドが本明細書に記述されている親和性タグまたは精製タグを含む場合、大いに促進される。
ある実施形態では、本開示の単離されたポリペプチドは、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼまたはその断片を含む。別の実施形態では、本開示の単離されたポリペプチドは、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/βサブユニットを含む。更に別の実施形態では、本開示の単離されたポリペプチドは、スペーサー1が欠失しているGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/βサブユニットを含む。なおも更に別の実施形態では、本開示の単離されたポリペプチドは、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失している、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/βサブユニットを含む。なおも更に別の実施形態では、本開示の単離されたポリペプチドは、スペーサー1が欠失しており、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失している、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/βサブユニットを含む。
II.方法
ある態様において、本開示は、細胞において、外来性GlcNAc-1-PTを発現させることを含む、目的のタンパク質のオリゴ糖リン酸化を増加させる方法を提供する。外来性GlcNAc-1-PTは、セクションI(a)に記述した通りであり得る。細胞は、セクションI(b)ivに記述した通りの宿主細胞であり得る。特定すると、細胞はCHO細胞である。リン酸化の量は、内在性GlcNAc-1-PTのみの存在下におけるリン酸化と比べて1%超増加し得る。更に、リン酸化の量は、内在性GlcNAc-1-PTのみの存在下におけるリン酸化と比べて2%超、3%超、4%超、5%超、10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、または75%超増加し得る。特定すると、外来性GlcNAc-1-PTがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/βサブユニットである場合、リン酸化の量は、内在性GlcNAc-1-PTのみの存在下におけるリン酸化と比べて2%超、3%超、4%超、5%超、10%超、15%超、20%超、または25%超増加し得る。更に、外来性GlcNAc-1-PTがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/βサブユニットであり、スペーサー1が欠失しており、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失している場合、リン酸化の量は、内在性GlcNAc-1-PTのみの存在下におけるリン酸化と比べて5%超、10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、または75%超増加し得る。更に、本方法は、2つのMan-6-P残基を含むグリカンの含有量を増加させ得る。例えば、スペーサー1が欠失しており、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失しているGlcNAc-1-PTα/βサブユニットは、2つのMan-6-P残基を含むグリカンの含有量を、野生型GlcNAc-1-PTα/βサブユニットと比べて約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、または約25%増加させる。目的のタンパク質は、マンノース-6-リン酸(Man-6-P)でタグ付けすることにより役立つタンパク質である。ある特定の実施形態では、目的のタンパク質はリソソームタンパク質である。リソソームタンパク質の非限定的な例としては、β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)、GalA、カテプシンD(CathD)、ニーマン・ピック病C2型(NPC2)、β-ヘキソサミニダーゼ(HEXB)、α-ガラクトシダーゼ(GLA)、β-マンノシダーゼ(MANBA)、アルファ-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、アリールスルファターゼB、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、及びリソソーム酸性α-マンノシダーゼ(LAMAN)が挙げられる。特定すると、リソソームタンパク質は、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)またはリソソーム酸性α-マンノシダーゼ(LAMAN)である。他の実施形態では、目的のタンパク質は非リソソームタンパク質である。非リソソームタンパク質の非限定的な例としては、DNase1、レニン、白血病抑制因子(LIF)、タンパク質O-フコシルトランスフェラーゼ2(PoFUT2)、グリコペプシノゲン(GP)、及びフォンウィルブランド因子A1A2A3ドメインが挙げられる。
別の態様では、本開示は、細胞において、外来性GlcNAc-1-PTを発現させることを含む、細胞表面(Man-6-P)受容体に対する目的のタンパク質の結合を増加させる方法を提供する。外来性GlcNAc-1-PTは、セクションI(a)に記述した通りであり得る。細胞は、セクションI(b)ivに記述した通りの宿主細胞であり得る。特定すると、細胞はCHO細胞である。細胞表面(Man-6-P)受容体に対する目的のタンパク質の結合が増加すると、目的のタンパク質の取り込みが増加し得る。結合は、内在性GlcNAc-1-PTのみの存在下におけるリン酸化と比べて1.5倍超増加し得る。更に、結合は、内在性GlcNAc-1-PTのみの存在下における結合と比べて2倍超、3倍超、4倍超、5倍超、10倍超、20倍超、30倍超、40倍超、50倍超、60倍超、70倍超、80倍超、90倍超、100倍超、110倍超、120倍超、130倍超、140倍超、または150倍超増加し得る。特定すると、外来性GlcNAc-1-PTがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/βサブユニットである場合、結合は、内在性GlcNAc-1-PTのみの存在下における結合と比べて1.5倍超、2倍超、3倍超、4倍超、5倍超、10倍超、20倍超、30倍超、40倍超、50倍超、60倍超、70倍超、80倍超、90倍超、100倍超、110倍超、120倍超、130倍超、140倍超、または150倍超増加し得る。更に、外来性GlcNAc-1-PTがGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/βサブユニットであり、スペーサー1が欠失しており、Notch1とα/β切断部位との間の領域が欠失している場合、結合は、内在性GlcNAc-1-PTのみの存在下における結合と比べて2倍超、3倍超、4倍超、5倍超、10倍超、20倍超、30倍超、40倍超、50倍超、60倍超、70倍超、80倍超、90倍超、100倍超、110倍超、120倍超、または130倍超増加し得る。目的のタンパク質は、マンノース-6-リン酸(Man-6-P)でタグ付けすることにより役立つタンパク質である。ある特定の実施形態では、目的のタンパク質はリソソームタンパク質である。リソソームタンパク質の非限定的な例としては、β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)、GalA、カテプシンD(CathD)、ニーマン・ピック病C2型(NPC2)、β-ヘキソサミニダーゼ(HEXB)、α-ガラクトシダーゼ(GLA)、β-マンノシダーゼ(MANBA)、アルファ-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、アリールスルファターゼB、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、及びリソソーム酸性α-マンノシダーゼ(LAMAN)が挙げられる。特定すると、リソソームタンパク質は、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)またはリソソーム酸性α-マンノシダーゼ(LAMAN)である。他の実施形態では、目的のタンパク質は非リソソームタンパク質である。非リソソームタンパク質の非限定的な例としては、DNase1、レニン、白血病抑制因子(LIF)、タンパク質O-フコシルトランスフェラーゼ2(PoFUT2)、グリコペプシノゲン(GP)、及びフォンウィルブランド因子A1A2A3ドメインが挙げられる。
種々の態様において、本方法は、酵素補充療法において使用される目的のタンパク質を単離または精製することを更に含む。タンパク質を単離または精製する方法は、当技術分野において公知である。酵素補充療法(ERT)は、リソソーム蓄積症を処置するために使用され得る。ERTにおいて使用される酵素(及びそれに対応するリソソーム蓄積症)の非限定的な例としては、グルコセレブロシダーゼ(ゴーシェ病)、α-ガラクトシダーゼA(ファブリー病)、酸性α-グルコシダーゼ(ポンペ病)、アルファ-L-イズロニダーゼ(ムコ多糖症I、ハーラー症候群、ハーラー・シャイエ症候群、シャイエ症候群)、イズロン酸スルファターゼ(ムコ多糖症II、ハンター症候群)、アリールスルファターゼB(ムコ多糖症VI、マロトー・ラミー症候群)が挙げられる。酵素補充療法は、生涯にわたる療法である。産物は全て、末梢ラインまたは中心アクセスデバイスのいずれかによって静脈内投与される。注入は通常、2週間毎、または場合によっては毎週行われる。本開示のGlcNAc-1-PTを使用した場合、調製した酵素は、より低い用量またはより低頻度の間隔で投与され得る。更に、本開示のGlcNAc-1-PTを使用した場合、リン酸化が低いため通常は使用できないリソソーム酵素が、ERTに使用され得る。更に、高レベルのMan-6-Pを含むGBAの産生は、マンノース受容体を欠いているゴーシェ病患者の細胞型に対する酵素活性を回復させる機会を提示する。
以下の実施例は、本開示の種々の実施形態を示すために含まれている。当業者には、続く実施例において開示される技術が、本発明の実施において良好に機能するものとして本発明者らが発見した技術を代表するものであり、したがって発明を実施するための好ましい形態を構成するものと解釈され得ることが理解されるはずである。しかしながら、当業者は、本開示を踏まえ、開示されている特定の実施形態に多くの変更を行っても、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく同様または類似の結果が得られる場合があることを理解すべきである。
実施例1~4の序論。
細胞内の飲食された物質を効率的に分解するリソソームの能力は、60種程度の可溶性酸性ヒドロラーゼがこの小器官に適切に輸送されることに依存する。高等真核生物において、この選別プロセスは、マンノース6-リン酸(Man-6-P)認識系によって媒介される。新しく合成された酸性ヒドロラーゼは、シスゴルジにおいてMan-6-P残基を獲得し、この残基が、トランスゴルジ網におけるMan-6-P受容体(MPR)への結合、及びその後のエンドリソソーム系への輸送のための高親和性リガンドとしての役割を果たす(1)。シスゴルジ酵素UDP-GlcNAc:リソソーム酵素N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-PT)は、リソソーム酸性ヒドロラーゼのコンフォメーション依存性タンパク質決定基に特異的に結合し、このヒドロラーゼの高マンノース型N-結合型グリカン上のマンノース残基に対するUDP-GlcNAcからのGlcNAc-1-Pの輸送を触媒することにより、Man-6-Pタグの生成において最初で最も重要なステップを行う(2)。同一のN-結合型グリカンを有する分泌性糖タンパク質は、分泌経路を通過する際にMan-6-Pタグを獲得しない。我々の研究室による過去の研究は、GlcNAc-1-PTの2つのNotchモジュール及びDNAメチルトランスフェラーゼ関連タンパク質(DMAP)相互作用ドメインが、リソソーム酸性ヒドロラーゼにあるタンパク質決定基を特異的に認識し、結果としてそれらの高マンノースオリゴ糖をリン酸化させる役割を示した(3)。非リソソームN-グリコシル化タンパク質がこのプロセスから除外され、誤ってリソソームを標的とすることが防止される理由はおそらく、かかる決定基の欠如である。
GlcNAc-1-PTは、2つの遺伝子によってコードされるα2β2γ2六量体タンパク質である。より小さなγサブユニットは、GNPTG遺伝子によってコードされ、一方でαサブユニット及びβサブユニットは、GNPTAB遺伝子によって単一のα/β前駆体としてコードされる(4、5)。ゴルジ内のサイト1プロテアーゼ(S1P)により、ヒトα/β前駆体のK928におけるタンパク質分解切断が媒介され、この切断は、このタンパク質の触媒能力に必須である(6)。α及びβサブユニットは、Notch及びDMAP相互作用ドメインの他に、併せてタンパク質の触媒コアを形成する4つのステルスドメインも保有する(図1A)。あらゆる真核生物のGlcNAc-1-PTのステルスドメインは高度に保存されており、細胞壁多糖類の生合成に関与する糖リン酸トランスフェラーゼをコードする細菌遺伝子内の配列に似ている(図6)(7)。細菌酵素はタンパク質決定基の関与なしに糖リン酸を多糖受容体に直接輸送するため、現在持たれている見解は、哺乳動物GlcNAc-1-PTが、タンパク質の進化過程において、リソソーム酸性ヒドロラーゼにあるタンパク質決定基の特異的認識において機能するようにNotch及びDMAP相互作用ドメインを獲得したというものである。
加えて、GlcNAc-1-PTは、4つのいわゆる「スペーサー」ドメインを有し、そのうちの1つであるスペーサー2のみが、γ-サブユニット結合部位として特徴付けられている(3、8)。これまで、他のスペーサー領域に帰するとされる機能はない。この研究において我々は、GlcNAc-1-PTの機能におけるスペーサー1の役割を調査した。我々は予想外にも、スペーサー1の除去により代替的部位(Q882)における切断及び触媒的に損なわれた酵素がもたらされることから、スペーサー1が正確にK928におけるサイト1プロテアーゼ(S1P)によるα/β前駆体の切断を決定付けることで、完全な触媒活性を可能にしていることを見出した。加えて、スペーサー1の欠失は、WT酵素により十分にリン酸化されないいくつかの非リソソーム糖タンパク質をリン酸化させる能力が増強された酵素をもたらす。Notch1とα/β切断部位との間の領域とともにスペーサー1を除去すると、細菌タンパク質を思わせる最小限の酵素がもたらされる。この最小限のGlcNAc-1-PTを発現する細胞は、その高い発現レベルの結果として、単糖α-メチルD-マンノシド(αMM)及び非リソソーム糖タンパク質に対して劇的に増加した活性を提示する。これらの所見をまとめると、非リソソームタンパク質のリン酸化の阻害におけるスペーサー1の新規かつ予想外の役割が明らかになり、また、GlcNAc-1-PTがリソソーム酵素を特異的にリン酸化すると同時に非リソソームタンパク質をリン酸化及びリソソームへの誤った選別の対象となることから除外するように進化した経緯に関する新たな見識がもたらされる。
実施例1。スペーサー1の欠失は、代替的部位におけるGlcNAc-1-PTα/βの切断をもたらす。
GlcNAc-1-PTのα/βサブユニットのスペーサー1ドメインの機能を解析するため、まず、ヒト及びD.discoideumのGlcNAc-1-PTタンパク質配列、ならびに細菌のN-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼ配列の間でアライメントを行った。図6に示したように、ヒトのスペーサー1配列は、配列データが入手可能である全ての哺乳動物GlcNAc-1-PTスペーサー1領域と同様に、D.discoideum及び細菌タンパク質のものよりも200aa長い。このことは、哺乳動物のスペーサー1領域が、D.discoideumのスペーサー1配列には関連付けられない特有の役割を果たし得ることを示唆した。よって、236aaのヒトスペーサー1配列をDNAレベルにおいてD.discoideum配列の29aaに置き換え、結果として得られた構築物(図1A、DS1)を、CRISPR/Cas9法(3)により生成されたGNPTAB-/-HeLa細胞にトランスフェクトした。WT及びDS1変異体を発現する全細胞抽出物のウェスタンブロット解析を行うことで、ヒトスペーサー1のD.discoideum配列への置き換えにより変異体タンパク質の効率的なフォールディングが起こり、それが小胞体(ER)から出て、α/β前駆体がα及びβのサブユニットに切断されるシスゴルジに至ったかどうかを判定した。図1B及び図1Cに示したように、変異体タンパク質は実際に良好に発現され、ERを出て、単糖αMMに対するWT触媒活性の60%を呈する。しかしながら、タンパク質分解切断のβサブユニット産物の大部分は、WTのβサブユニットよりもゆっくりとSDS-PAGEゲル上を泳動し(図1B、矢印)、K928で切断されるWTタンパク質に対して、DS1変異体のほとんどが代替的部位で切断されていることが示された(図1B、*)。DS1では、小量の正常なβサブユニットも見られた(図1B及び図1D、長時間曝露、*)。このことから、スペーサー1の除去から生じる代替的な切断が、WTα/β前駆体をK928で切断するS1Pと同じプロテアーゼに起因するのか、または異なるプロテアーゼが関与し得るのかに関する疑問が生じた。我々はこの問題に対処するため、S1Pの阻害剤であるアミノピロリジンアミドPF-429242(9)で細胞を処置した。この阻害剤の存在は、WTのGlcNAc-1-PT及びDS1変異体の両方においてβサブユニット形成の喪失をもたらし(図1D)、代替的部位における切断がS1Pによって媒介されていることを示した。これが事実であれば、元の切断部位のN末端側に更なるコンセンサスS1P切断部位が存在するはずである。GlcNAc-1-PTα/βアミノ酸配列の調査により、コンセンサスの主要なアルギニン残基R879がインバリアントな-4位に存在することから、これが真実であることが明らかになり、切断はQ882で起こると仮定された(図1E)(10)。Q882における切断は、DS1で見られるβサブユニットの分子質量の増加と一致している。R925の変異は、K928におけるWTのGlcNAc-1-PTの切断を消失させる(図1F、レーン2)。その一方で、R879の変異は、K928における全長α/β前駆体の正常なプロセシングには影響を与えなかったが(図1F、レーン3)、よりゆっくりと泳動するβサブユニットの喪失(図1F、レーン6)によって示されるように、DS1変異体のQ882における切断を消失させた。この場合、微量のK928切断βは影響を受けなかった(図1F、レーン6、長時間曝露)。R925及びR879両方の変異は、β形成の完全な喪失をもたらした(図1F、レーン7)。これらのデータは、スペーサー1の非存在下を除いては稀にしか利用されないGlcNAc-1-PTにおける新規のS1P切断部位としてQ882を明らかに特定するものである(図7)。
236aaのヒトスペーサー1配列を29aaのD.discoideum配列に置き換えたため、代替的な切断部位の利用がヒトスペーサー1配列の除去ではなくD.discoideum配列の導入の結果である可能性があった。この可能性を排除するため、ヒトスペーサー1を小さな残基Gly及びSerを含む26aaリンカーに置き換えた別のスペーサー1欠失変異体を作製した(図8A、ΔS1)。Δスペーサー1(ΔS1)は、S1Pにより媒介されるタンパク質分解プロセシングがほとんどの場合において新たな部位(Q882)での切断をもたらし(図8B)、ΔS1がαMMに対するWT活性の40%を有した(図8C)という意味で、あらゆる点でDS1と同様の性質を示した。更に、S1P阻害剤であるPF-429242は、GlcNAc-1-PTのWT及びDS1変異体とともに用いた場合と同じく、ΔS1とともにβサブユニットの形成を遮断した(図8D)。また、DS1及びΔS1はいずれも、WTのGlcNAc-1-PTと同一のゴルジ局在化を示し(図9)、これら2つの変異体の誤った局在化が切断の変化の原因である可能性が除外された。これらの結果は、ヒトGlcNAc-1-PTにおける236aaのスペーサー1配列の存在がQ882ではなくK928における切断を確実にすることを明白に示す。
実施例2。Q882における切断は、不活性なGlcNAc-1-PTをもたらす。
ゴルジ内の残基K928におけるGlcNAc-1-PTα/β前駆体のタンパク質分解プロセシングは、触媒活性酵素に不可欠である(5、11)。α/βには2つのS1P切断部位があるため、K928ではなく新たな部位における切断も活性酵素をもたらすかどうかという疑問が提起される。この疑問に対処するため、図1Fに示した点変異体のαMMに対する活性(図1C)及びいくつかのリソソーム酵素に対する活性(図1G)を、WTのGlcNAc-1-PTα/β前駆体及びDS1変異体の両方との関連において試験した。種々の構築物をGNPTAB-/-HeLa細胞において発現させ、トランスフェクションの48時間後、細胞抽出物を調製し、それぞれのアリコートを取ってαMM活性アッセイを行った(図1C)。固定化されたカチオン非依存性(CI)-MPRを含むビーズとともに残りの抽出物をインキュベートし、リン酸化されたリソソーム酵素に結合させた。ビーズを洗浄し、3種のリソソーム酵素の結合度について「方法」に記述したようにアッセイした(図1G)。図1C及び図1Gに示したように、WTα/β前駆体との関連におけるR925A変異体は、α/β前駆体の切断が活性に不可欠であるという有力な仮説と一致して、αMM及びリソソーム酵素のいずれに対してもバックグラウンド活性しか有しなかった。その一方でR879A/WTは、WTα/β前駆体と比較して、αMMに対する活性の30%、及び3種のリソソーム酵素に対する活性の110~125%を呈した。これらの点変異を個別にまたはDS1バックグラウンドと併せて試験したとき、種々の変異体は依然としてWTのαMM活性の20~30%を保持していた(図1C)。タンパク質分解プロセシングを一切受けないR925A/R879A/DS1変異体が、αMMに対する相当な活性(図1C)及びリソソーム酵素に対する低レベルの活性(図1G)を保持したという事実は、スペーサー1の非存在下において切断されていないα/βが部分的に活性であることを示す。全ての変異体がWTと同一のゴルジ局在化を提示した(図10)。これらの結果は、DS1に関連するリソソーム酵素に対する触媒活性が、K928における切断から生じる小量のβと、α/β前駆体が寄与する活性の組み合わせに起因し、Q882において切断される主な形態のβが不活性であることを示す。
実施例3。スペーサー1の欠失は、いくつかの非リソソーム糖タンパク質のリン酸化を増強させる。
WTもしくはDS1変異体の構築物、またはベクター単独をトランスフェクトしたGNPTAB-/-HeLa細胞における、可溶性糖タンパク質の全マンノースリン酸化を定量した。トランスフェクションの48時間後、[2-H]マンノースで細胞を2時間標識してから採取し、界面活性剤不含バッファー中で洗浄し溶解させた後、超遠心分離により膜タンパク質を可溶性画分から分離させた。次に、「方法」において記述したように、固定化されたCI-MPRとともに可溶性画分をインキュベートしてMan-6-P修飾タンパク質を特異的に結合させてから、[2-H]マンノース標識糖タンパク質の含有量についてそれらを解析した。驚くべきことに、ベクター単独の値を差し引いた後、DS1変異体は、WT構築物と比較して、全可溶性糖タンパク質のリン酸化レベルのわずかだが統計的に有意な上昇を一貫してもたらした(図2A)。WTまたはDS1のいずれかによるリソソームタンパク質GalA、カテプシンD(CathD)、及びニーマン・ピック病C2型(NPC2)のリン酸化の度合いも、「方法」に記述した[2-H]マンノース標識、免疫沈降、及び直接的なグリカンの解析を使用して測定した。個々の酵素の発現ベクターと併せてWTまたはDS1構築物のいずれがGNPTAB-/-HeLa細胞にコトランスフェクトされたかにかかわらず、3種全てのリソソーム酵素が同様のリン酸化度を示した(図2B、左パネル、WT値が1.0に設定されている)。これらの所見をまとめると、DS1による全リン酸化において観察された増加が、リソソームタンパク質に加えて非リソソーム糖タンパク質のリン酸化に起因したという可能性が高まった。これが事実であるかどうかを判定するために、非リソソーム糖タンパク質のDNase1、レニン、白血病抑制因子(LIF)、及びタンパク質O-フコシルトランスフェラーゼ2(PoFUT2)の各cDNAをWTα/β前駆体またはDS1変異体cDNAのいずれかと併せてコトランスフェクトし、リン酸化度を[2-H]マンノース標識によって定量化した。これらの糖タンパク質は本質的にリソソームタンパク質ではないが、低レベルのMan-6-Pタグを獲得することが知られているため(12~15)、これらを解析のために選択した。4つの場合全てにおいて、DS1によって媒介されるマンノースリン酸化の程度は、WT構築物を用いて達成されたものよりも1.5~2倍高かった(図2B、右パネル)。これと一致して、レニン及びNPC2のcDNAをDS1とコトランスフェクトしたとき、レニンは、WTα/β前駆体と比べて固定化されたCI-MPRに対する結合の増加を提示したが、NPC2はこの結合の増加を提示しなかった(図2C)。グリコペプシノゲン(GP)も、膜糖タンパク質のLamp1及びLamp2のいずれも、これらの条件下では結合を一切示さなかった(図2C)。これらの結果は、スペーサー1の非存在下では、非リソソーム基質のサブセットのうちの修飾されたα/βサブユニットによって媒介されるリン酸化が増加することを示す。これらのデータをまとめると、スペーサー1は、GlcNAc-1-PTα/β前駆体の切断がほぼK928でのみ起こることを決定付け、かついくつかの非リソソーム糖タンパク質のリン酸化を最小限に抑えるように機能することが示される。
実施例4。アミノ酸438~926の欠失は、活性GlcNAc-1-PTの高レベル発現をもたらす。
αサブユニットのDMAP相互作用ドメインと併せて2つのNotchリピートがリソソーム酵素の選択的認識を媒介することは、これまでに示された(図3A、WTα/β)。この領域の欠失(図3A、N1-D)は、[2-H]マンノース標識によって定量される全可溶性糖タンパク質のリン酸化を劇的に低減させた(図3B)。GlcNAc-1-PTによってリン酸化されるタンパク質の大部分が事実上リソソームタンパク質であることを考えると、N1-D領域の非存在下におけるこの結果は驚くべきものではない。したがって、固定化されたCI-MPRに結合する能力によって測定される、β-ヘキソサミニダーゼ(HEXB)、α-ガラクトシダーゼ(GLA)、及びβ-マンノシダーゼ(MANBA)のリン酸化は、ほぼ完全に抑止された(図3C)。スペーサー1が阻害性ドメインとして機能するという所見を踏まえ、N1-Dと組み合わせてスペーサー1を欠失させれば(図3A、S1-D)、2つのNotchモジュール及びDMAP相互作用ドメインを欠いているGlcNAc-1-PTがリソソーム酵素をリン酸化できないことが部分的に克服され得ると仮定した。この予想は、N1-Dと比べてS1-D変異体により媒介される全可溶性タンパク質のリン酸化のわずかだが統計的に有意な増加(図3B、N1-D対S1-Dの比較)、ならびにHEXB、GLA、及びMANBAのリン酸化のわずかな増加(それぞれWT値の14%、13%、及び5%)(図3C)を示す結果によって証明された。単糖αMMに対するN1-D及びS1-D変異体の活性は同様であるため(図3E、N1-D対S1-D)、S1-D欠失変異体によって媒介されるリソソーム酵素リン酸化のこうした増加は、スペーサー1の阻害機能の喪失によって最もよく説明される。
GlcNAc-1-PTα/β前駆体から更にドメインを欠失させても触媒活性が保持されるかについて調べた。スペーサー3の大部分を含むNotch1の始点(C438)からK928までの全てのアミノ酸(aa)の欠失は、GNPTAB-/-HeLa細胞においてWTよりもおよそ10倍多く発現された(図3D、レーン3及び6の比較)、切断形態のGlcNAc-1-PT(図3A、N1-S3)をもたらし、この変異体は、2つのNotchリピート及びDMAP相互作用ドメインが存在しないにもかかわらず、可溶性糖タンパク質の全リン酸化をWTレベルまで回復させた(図3B、WT対N1-S3の比較)。欠失した領域が切断部位まで伸長したため、この変異体はタンパク質分解プロセシングを受けなかったが(図3D)、単糖αMMに対して劇的に増加した触媒活性を提示した(図3E)。この結果は、α/β前駆体の切断自体が触媒活性の必要条件ではないことを示した。K928を超える欠失は許容されなかった。
N1-S3との関連においてスペーサー1を欠失させることの結果を判定した。この新たな構築物(図3A、S1-S3)は、更なる切断形態のGlcNAc-1-PTα/β前駆体をもたらし、これもまた、N1-S3と同様のレベルで劇的に増強された発現(図3D、レーン3及び7の比較)及びαMMに対する触媒活性(図3E)を提示した。最も注目すべきことには、S1-S3により媒介される可溶性糖タンパク質の全リン酸化は、WTと比べて3倍超増加したが、N1-S3はWTと同様であった(図3B、WT、N1-S3及びS1-S3の比較)。S1-S3とN1-S3との間の唯一の違いはスペーサー1の非存在であるため、これらの結果は、スペーサー1の阻害的役割の更なる証拠を提供する。非リソソームタンパク質であるレニン、PoFut2、GP、及びフォンウィルブランド因子A1A2A3ドメインのS1-S3によって媒介されるリン酸化もまた、N1-S3と比べて増加し(図3F)、リソソームタンパク質であるHEXB、GLA、及びMANBAの場合も同様であった(図3G)。4つ全ての変異体(N1-D、S1-D、N1-S3、及びS1-S3)がWTと同様にゴルジに局在化した(図11)。
S1-S3変異体により媒介されるMan-6-P形成の度合いのより定量的な測定値を得るために、LIF、レニン、PoFut2、及びDNase1のいずれかのcDNAを、WTのGlcNAc-1-PTまたはS1-S3変異体のα/β前駆体cDNAのいずれかと併せてコトランスフェクトした細胞の[2-H]マンノース標識を行った。これらのタンパク質のそれぞれとS1-S3との共発現は、発現の著しい増強及びそれに付随したαMMに対する活性の増加(図3D及び図3E)と一致して、WTと比べてリン酸化を2~4倍増加させた(図4)。これらのタンパク質のリン酸化は、DS1変異体によって達成されたものよりもわずかに高かった(図4と図2Bの比較)。
実施例1~4に関する考察。
GlcNAc-1-PTのNotchモジュール及びDMAP相互作用ドメインは、リソソームタンパク質の選択的認識及びそれらのN-結合型グリカンのリン酸化において必須の役割を有する(3、16)。分泌経路を通過する数多くの他の糖タンパク質は、リン酸化されないか、または低レベルのMan-6-Pタグしか獲得しないかのいずれかである、極めて類似または同一のN-結合型グリカンを提示する(17)。この観察に関する有力な説明は、非リソソームタンパク質は、リソソームタンパク質とは異なり、GlcNAc-1-PTのNotchモジュール及び/またはDMAP相互作用ドメインによって認識され結合される構造決定基を欠いているというものである。よって、タンパク質に高マンノースオリゴ糖が存在するというだけでは、GlcNAc-1-PTがグリカンをインビボでリン酸化させるには不十分である。インビトロでは、GlcNAc-1-PTは単糖αMMをリン酸化させることができるが、この基質に対するこの酵素のKmはリソソーム酵素のそれを優に3桁上回り、リソソームタンパク質にあるGlcNAc-1-PTに対するタンパク質ドッキング部位の主要な役割を示している(18)。この研究の主要な所見は、GlcNAc-1-PTは、リソソームタンパク質を特異的に認識しリン酸化することに加えて、非リソソームタンパク質のリン酸化を防止する役割を果たすエレメント(スペーサー1)を含むというものである。これは、スペーサー1ドメインに割り当てられた第1の機能である。ヒトGlcNAc-1-PTのスペーサー1は236aa長であり、脊椎動物種間で高度に保存されている。これは、単に「スペーサー」として機能する以外の役割と一致して(19)、明確な構造(PDB ID:2N6D)を有する。その一方で、下等真核生物であるD.discoideumのスペーサー1領域は、N.meningitidisの細菌性N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼのそれと長さが同様であり(図6)、ヒト配列と同じように機能する可能性は極めて低い。ヒトとD.discoideumとのスペーサー1配列間にアミノ酸レベルで有意な同一性は存在しない。隣接するステルス1&2ドメインはこれら2つの種の間で酷似しているため、ヒトGlcNAc-1-PTは、ヒト配列のD.discoideum配列との置換を許容する可能性がある。GNPTAB-/-HeLa細胞においてこのキメラを発現させると、DS1はちょうどWT酵素のようにERにおいて効率的にフォールディングされシスゴルジに輸送されたものの、後者の区画では差次的にタンパク質分解プロセシングされたという、予想外の結果がもたらされた。この代替的な切断を媒介したのはS1Pであったということが、S1P阻害剤PF-429242の使用によって確認された。GlcNAc-1-PT患者変異を解析する近年の研究においてVelhoらは、残基Y937~M972のインフレーム欠失が、αサブユニット内の代替的な上流部位におけるS1Pによるα/β前駆体の切断をもたらしたことを報告したが、この研究ではこの新たな部位は特定されなかった(20)。代替的切断部位としてのQ882の特定は、DS1で見られるβ-サブユニットのより高い分子質量と一致している。S1Pがスペーサー1の非存在下でαサブユニット内のK928ではなくQ882で切断する理由は、現時点では不明である。残基937~972の欠失も新たな部位における切断をもたらしたという所見を踏まえると、1つの可能性は、スペーサー1がスペーサー3の一部の領域(aa819~955、図1)と相互作用することにより、S1Pが切断される場所に影響が及ぶというものである。スペーサー1の非存在下でのS1Pによる新たな部位の使用についての代替的な説明は、通常はこのドメインによってもたらされるQ882での切断を妨げる立体障害がもはや存在しないことから、小量の前駆体はK928でも切断されるものの、S1Pが主にQ882で切断できるようになるというものである。興味深いことに、WTのGlcNAc-1-PTは、Q882におけるタンパク質分解プロセシングの結果として、微量の触媒不活性酵素をもたらすことが分かった。これらの結果により、脊椎動物のGlcNAc-1-PTが、K928における切断を促進し、その触媒効率を最大にするためにスペーサー1を獲得したという可能性が高まる。
こうした結果は、スペーサー1が、正しくプロセシングされた形態のGlcNAc-1-PTを生成するためにS1Pによって利用される切断部位を決定付けることに加えて、非リソソーム酵素の高マンノースグリカンのリン酸化を最小限に抑えるにあたって重要な役割を有することも示す。DNaseI、レニン、LIF、及びPoFut2を含め、いくつかの非リソソーム糖タンパク質がそのオリゴ糖鎖に低レベルのMan-6-Pタグを獲得することは、十分に裏付けられている。これらのタンパク質の低レベルのMan-6-P修飾の生理学的意義は明らかではないが、Man-6-P修飾タンパク質はエンドソーム/リソソーム区画への送達のために分泌経路から分離されることになるため、GlcNAc-1-PTによるこれらのタンパク質の広範なリン酸化は、細胞にとって非生産的である可能性が高いように思われる。DNaseI、レニン、LIF、及びPoFut2のWT酵素と比べて、DS1により媒介されるリン酸化における1.5~2倍の増加を示すデータは、非リソソームタンパク質のリン酸化の阻害におけるスペーサー1の役割を示す。
2つのNotchモジュール及びDMAP相互作用ドメインの欠失(N1-D)が、試験した全てのリソソーム酵素に対する変異体GlcNAc-1-PTのリン酸化活性を実質的に消失させたことは、これまでに示された(3)。これに関して、スペーサー1欠失が、Notch1-DMAP欠失と組み合わせると(S1-D)、HEXB、GLA、及びMANBAの低レベルのリン酸化を回復させることができたのは興味深い(それぞれWT値の14%、13%、及び5%)。N1-S3変異体は、触媒活性のためにタンパク質分解プロセシングを必要としないため、同じ背景におけるスペーサー1欠失の影響を評価するための良好な対照としての役割を果たす。この新たな構築物S1-S3は、細菌の糖リン酸トランスフェラーゼ(図6)に似ており、N1-S3で得られたものと同様に高いレベルで発現され、αMMに対して同様の活性を有した。しかしながら、S1-S3構築物は、全可溶性糖タンパク質のリン酸化をWTと比べてほぼ4倍増加させたが、N1-S3の値はWTと同様であった。非リソソーム糖タンパク質であるグリコペプシノゲン及びvWF A1A2A3ドメインのリン酸化と同じく、リソソーム酵素HEXB、GLA、及びMANBAのS1-S3媒介性リン酸化もN1-S3と比較して増加した。WT酵素の作用を受けない非リソソームタンパク質をリン酸化させるS1-S3構築物の能力は、これが細菌の糖リン酸トランスフェラーゼと同様にタンパク質ドッキング部位の非存在下で機能し得ることを示す。
これらの所見をまとめると、GlcNAc-1-PTα/β前駆体が、脊椎動物の進化の過程において、リソソームタンパク質のリン酸化を促進すると同時に、非リソソーム糖タンパク質をリン酸化させるこの酵素固有の能力を無効にする、正の調節ドメイン(Notchモジュール及びDMAP相互作用ドメイン)と負の調節ドメイン(スペーサー1)との両方を獲得したという仮説が支持される。我々はこれらの所見に基づき、GlcNAc-1-PTがどのように機能するかを説明するために以下のモデルを提案する。基礎状態において(図5A)、スペーサー1ドメインは、4つのステルスドメインによって形成された触媒部位のオリゴ糖との会合に干渉する。リソソーム酵素タンパク質ドッキング部位がNotchモジュール及びDMAP相互作用ドメインに結合すると、スペーサー1ドメインが移動するようなコンフォメーション変化が起こり、リソソーム酵素の高マンノースグリカンのマンノース残基が触媒部位に入り、リン酸化できるようになる。一部の事例では、γサブユニットのマンノース-6-リン酸受容体相同性ドメインが、オリゴ糖を触媒部位に対して導くのに役立つ。DNaseIといった弱結合性の非リソソーム糖タンパク質は、スペーサー1を移動させるのに必要なコンフォメーション変化を誘導することができず、そのリン酸化の程度を限定する場合がある。スペーサー1が欠失すると、これらのタンパク質のリン酸化が増加する。Notchモジュール及びDMAP相互作用ドメインを結合させる構造決定基が完全に欠如している非リソソーム糖タンパク質は、全くリン酸化されない。スペーサー1をN1-S3エレメントと併せて除去すると、ゴルジを通過する可溶性糖タンパク質の全てをリン酸化することを可能にする完全な触媒活性を有する、高度に発現される酵素がもたらされる(図5B)。
実施例1~4の方法。
細胞株 - GNPTAB-/-HeLa細胞株については、他所で詳細に記述されている(3)。0.11g/Lのピルビン酸ナトリウム及び4.5g/Lのグルコースを含み、10%(vol/vol)のFBS(Atlanta Biologicals)、100,000U/Lのペニシリン、100mg/Lのストレプトマイシン(Life Technologies)、及び2mMのL-グルタミン(Life Technologies)を補充したDMEM(Life Technologies)において、細胞を維持した。
DNA構築物 - pcDNA6におけるヒトGNPTAB-V5/Hisについては記述されている(11)。PCRによって生成された問題の欠失をコードする制限断片が同じ領域内の天然cDNAと取り替えられる、2ステップのオーバーラップ伸長(OE)PCRプロセスのいずれかにより、種々のα/β欠失構築物を作製した。DS1構築物を生成するために、D.discoideumのスペーサー1配列をヒトのステルス1及びステルス2配列と併せてコードする0.5kbのgBlocks遺伝子断片を合成し(IDT Inc.)、OE-PCRの第1のステップで利用した。QuikChangeの部位特異的変異誘発法によって点変異を生成し、全ての配列が正しいことをDNAシーケンシングによって確認した。
LIF cDNA構築物はRichard Steet(University of Georgia.Athens,GA)により提供していただき、PoFut2-myc cDNAはRobert Haltiwanger(University of Georgia.Athens,GA)から寄贈された。DNaseI、グリコペプシノゲン、CathD-myc、a-GalA、及びNPC2-mycについては記述されている(3、12、21)。レニン-HA cDNAはAddgene(Cambridge,MA)から購入し、プラスミドのvWF-A1A2A3-Strep-pCDNA6はJ.Evan Sadler(Washington University School of Medicine,St.Louis,MO)から提供された。
免疫蛍光顕微鏡 - WTα/β及び種々の変異体の細胞内局在を可視化するため、Lipofectamine 3000(Life Technologies)を製造元のプロトコールに従って使用して、様々な構築物をGNPTAB-/-HeLa細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を固定し、マウス抗V5モノクローナル抗体(Life Technologies)を用いてα/βサブユニットを検出した。それぞれ、ウサギ抗GOLPH4ポリクローナル抗体(Abcam)を用いて、ゴルジマーカーのGOLPH4を検出した。プロセシングされた細胞をProLong(登録商標)Gold退色防止封入剤(Life Technologies)に封入し、LSM880共焦点顕微鏡(Carl Zeiss Inc.)のいずれかを用いて画像を取得した。Image Jソフトウェア(Fiji)によって画像を解析した。
ウェスタンブロッティング - 還元条件下でSDS-PAGEにより分解したタンパク質をニトロセルロース膜に移し、図の凡例に示されている抗体を用いて検出した。
全可溶性糖タンパク質の[2-H]マンノース標識実験 - トランスフェクトしたGNPTAB-/-HeLa細胞を用いた標識実験を次のように行った。トランスフェクションの48時間後、6ウェルプレート内の細胞を10μCiの[2-H]マンノース(Perkin Elmer)とともに2時間インキュベートした。2時間のパルスの後、細胞をPBSで2回すすいで採取し、次に、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Life Technologies)とともに25mM Tris.Cl(pH7.2)及び150mM NaClを含む4℃の界面活性剤不含バッファーに再懸濁した。超音波処理により細胞を溶解させ、次に100,000×gで1時間の超遠心分離に供し、膜タンパク質を可溶性画分から分離させた。次に、マンノースがリン酸化した糖タンパク質をペレット化するため、臭化シアン活性化Sepharose 4Bに共有結合により共役した精製したCI-MPRとともに、可溶性画分の100μlをインキュベートした。一方、可溶性画分の10μlを1.5%リンタングステン酸によって沈殿させて、全[2-H]マンノース標識を可溶性タンパク質に組み込ませた。この方法により、WTまたは変異体GlcNAc-1-PTのいずれかによってリン酸化されたマンノース標識糖タンパク質の全てを正確に数量化することができた。
リソソーム酵素の[2-H]マンノース標識実験 - トランスフェクトしたGNPTAB-/-HeLa細胞を用いた標識実験を次のように行った。トランスフェクションの48時間後、60-mm組織培養プレート内の細胞を50~150μCiの[2-H]マンノース(Perkin Elmer)とともに2時間インキュベートし、その後、5mMグルコース、5mMマンノース、及び10mM NHClを含む完全培地を添加してマンノースの取り込みを停止させ、分泌を誘導した。細胞を更に3時間インキュベートした後、培地を収集した。いくつかの実験において細胞抽出物を調製し、βサブユニットの含有量についてウェスタンブロッティングに供して、構築物が比較可能なレベルで発現されていることを確認した。
免疫沈降及びオリゴ糖解析 - 本質的にはこれまでに詳細に記述されているように(23)、培地に分泌された酸性ヒドロラーゼを免疫沈降させ、オリゴ糖を単離し、解析した。CathD-myc、NPC2-myc、PoFut2-myc、及びレニン-HAの実験では、20μlの抗mycモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology)または5μlの抗HAモノクローナル抗体(Sigma-Aldrich)を、100μlのProtein G-agarose-PLUSビーズ(Santa Cruz Biotechnology)に予め結合させてから、標識されたリソソームヒドロラーゼを培地から免疫沈降させた。GLA、DNaseI、及びLIFの場合は、抗β-Gal抗体(Amicus Therapeutics)に予め結合させたProtein G-agarose-PLUSビーズ、及び抗DNaseI抗体(Sigma,St.Louis,MO)または抗LIF抗体(寛大にもFrederic Blanchard,University of Nantes,Nantes,Franceから提供された)に予め結合させたrProteinA-agaroseビーズ(RepliGen)を用いて、分泌された酵素の免疫沈降を行った。免疫沈降した物質をEndo H(NEB)で処置し、Ultracel-10K(EMD Millipore)で濾過した。中性及びリン酸化された高マンノースグリカンを含む濾液を弱酸で処置して、リン酸部分に未だ結合しているN-アセチルグルコサミン残基があればこれを除去し、QAE-カラムマトリックスに加えて、0個、1個または2個のMan-6-P残基を有するオリゴ糖を分離させた。Endo H耐性のある複合オリゴ糖を含む残余分をPronase(Roche Diagnostics)で処置し、ConA-sepharose 4B(GE Healthcare)で分画した。各画分の[2-H]-マンノース含有量を定量し、記述されているように(23)リン酸化パーセントを計算した。全ての場合において、偽性トランスフェクションで得られた値は差し引いた。
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実施例5。酵素補充療法のための高度にリン酸化されたリソソーム酵素を産生するための方法。
酵素補充療法(ERT)は現在、いくつかのリソソーム蓄積症のための主要な処置形態であるが、その効力は個々の障害において異なる[1]。これらの遺伝性障害のほとんどは、単一のリソソーム酵素の活性不足により、この酵素によって通常分解される物質が蓄積することに起因する。リソソーム内の蓄積物質が増えると、やがて細胞及び臓器の機能不全が生じる。ERTの目的は、欠損細胞のリソソームに十分な量の正常な酵素を導入して蓄積物質を排出し、リソソーム機能を回復させることである。この形態の療法が初めて使用されたのは、酸性β-グルコセレブロシダーゼ活性が欠如しており、主にマクロファージ系細胞にグルコシルセラミドが蓄積する、1型ゴーシェ病患者においてであった[2]。末端マンノース残基を含むN-結合型グリカンを含有する補充酵素が静脈内に注入され、細胞表面マンノース受容体を介してマクロファージに取り込まれる。飲食された酵素は次にエンドソームによってリソソームに輸送され、ここで酵素が機能することでこの障害の良好な臨床結果が得られる[3]。
ほとんどの細胞型はマンノース受容体を欠いているため、マクロファージ以外の細胞型が関与するリソソーム蓄積障害を処置するために使用される補充酵素は、その後のリソソームへの送達のために、細胞表面のマンノース6-リン酸(Man-6-P)受容体への結合を利用する。これらの酵素は、目的の酵素を高レベルで産生するように工学操作された哺乳動物細胞、主にチャイニーズハムスター卵巣細胞の分泌物から精製される。この手法は、発現されたリソソーム酵素のN-グリカンのマンノース残基をリン酸化させる内在性GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼの能力に依存する。この技術により産生される補充酵素の一部は高度にリン酸化されており、Man-6-P受容体に良好に結合する。しかしながら、その他のものは十分にリン酸化されず、ERTにおけるその有効性は限られている。これには、ポンペ病酵素(酸性α-グルコシダーゼ、GAA)及びアルファマンノシドーシス酵素(リソソーム酸性α-マンノシダーゼ、LAMAN)が含まれる[4、5]。
産生細胞により合成されている高レベルのGAA及びLAMANを効果的にリン酸化させるためには、内在性GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼの活性では不十分である可能性がある。この可能性について調査するため、Expi293Fまたはカチオン非依存性マンノース6-リン酸受容体(CI-MPR)陰性マウスD9 L細胞に、目的のリソソーム酵素をコードするプラスミドを、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼα/β前駆体のcDNAと併せてコトランスフェクトした。GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼは2つの遺伝子(GNPTAB及びGNPTG)によってコードされるα2β2γ2六量体であるが、α/βサブユニットは、γの非存在下でほとんどのリソソーム酵素をリン酸化させることができる[6]。加えて、触媒的「ステルス」ドメインを保持しながらもαサブユニットエレメントのうちのいくつかを欠いている切断型α/β前駆体(S1-S3)も試験した(図12A)。この切断型酵素は非常に高いレベルで発現され、WT酵素の場合に生じるものよりも20倍高い触媒活性をもたらす[7]。
トランスフェクト細胞により分泌された4種のリソソーム酵素のCI-MPRビーズへの結合が図12Bに示されている。この場合の結合の増加は、これらの酵素のリン酸化度の上昇を反映する。全ての事例において、切断型α/β前駆体をコトランスフェクトした細胞により分泌された酵素は、細胞において単独で発現される酵素について観察されるよりも大幅に大きくCI-MPRビーズに結合した。CI-MPRビーズへのリソソーム酵素の結合に対してWTα/β前駆体とのコトランスフェクションが与える影響は、GAA結合の最小限の刺激から、LAMANの場合における結合の12倍の増強に至るまでまちまちであった。α/β前駆体構築物がリソソーム酵素のリン酸化に与える影響をより直接的に調べるため、CRISPR-Cas9不活性化GNPTAB遺伝子[8]を有するHeLa細胞に種々のプラスミドをトランスフェクトし、次に[2-H]マンノースとともに1時間インキュベートして、リソソーム酵素のN-結合型グリカンを標識した。対照として、活性な内在性GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼを有する親HeLa細胞に、リソソーム酵素をコードするプラスミドのみをトランスフェクトした。標識された酵素の分泌を刺激するため、NHClの存在下で4時間追跡した後、培地を採取し、目的のリソソーム酵素を免疫沈降させた。次に、1つまたは2つのMan-6-P残基を含む高マンノースN-結合型グリカンの含有量について、免疫沈降物を解析した[8、9]。これらの実験は、切断型α/β前駆体が、リソソーム酵素に応じて種々のレベルで親HeLa細胞よりもマンノースリン酸化を刺激したことを示した(図12C)。更に、切断型酵素は、2つのMan-6-P残基を含むグリカンの形成を増加させた(表2)。これが重要であるのは、2つのMan-6-P残基を含むグリカンが、1つのMan-6-P残基しか含まないグリカンよりも大幅に高い親和性でCI-MPRに結合するからである[10]。WTα/β前駆体もMan-6-P形成を刺激したが、その程度は変異体α/βの場合に観察されたものよりも低かった。
表1には、種々のリソソーム酵素のMan-6-P含有量の増加が、HeLa細胞によるそれらの取り込みに与える影響が示されている。GAAを例外として、WTまたは切断型のいずれかのα/β前駆体をコードするプラスミドをコトランスフェクトした細胞によって分泌された酵素は、内在性GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼのみを利用する細胞によって分泌された酵素より何倍も良好に内部移行した。取り込みのほとんどは、培地中に5mMのMan-6Pが存在したことにより遮断され、取り込みがMan-6-P受容体により媒介されていることが示された。LAMANでの結果は特に顕著であり、Man-6-Pに阻害され得る取り込みが130~153倍刺激された。GAAの場合、切断型α/β前駆体をコトランスフェクトした細胞によって分泌された酵素のMan-6-P依存性取り込みは、WTα/β前駆体をコトランスフェクトした、または内在性GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼのみを発現する細胞によって分泌されたGAAよりも、2.6倍高かった。
これらの所見は、リソソーム酵素のリン酸化が、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼのWTまたは切断型のいずれかのα/β前駆体とのコトランスフェクションにより、実質的に増加し得ることを立証する。リン酸化の増強は、CI-MPRへの結合及び細胞による取り込みを増加させる。この効果は、内在性GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼによって良好にリン酸化されるGalAなどのリソソーム酵素においても生じる。しかし最も重要であるのは、この方法が、LAMAN及びGAAという、内在性GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼにより十分にリン酸化されない2つのリソソーム酵素のリン酸化及び取り込みを増強させるという所見である。この方法により調製された酵素は、ERTにおけるその有用性を著しく改善する可能性を有する。これらの調製物は、より良好な細胞取り込みをもたらすことに加えて、より低い用量を、ことによるとより低頻度の間隔で患者に投与することを可能にし得る。この方法は、ERTに適し得る他のリソソーム蓄積症のためのリソソーム酵素の産生に適用可能なはずである。加えて、高レベルのMan-6-Pを含むGBAの産生は、マンノース受容体を欠いているゴーシェ病患者の細胞型に対する酵素活性を回復させる機会を提示する。これは、特にマクロファージを対象とする現在の療法に更なる利益を提供する役割を果たし得る。
実施例5の方法。
細胞株 - Expi293F細胞は、Life Technologiesによるものである。これらの細胞は、Expi293発現培地(Life Technologies)に懸濁して増殖させた。GNPTAB-/-HeLa細胞株については、他所で詳細に記述されている[8]。0.11g/Lのピルビン酸ナトリウム及び4.5g/Lのグルコースを含み、10%(vol/vol)のFBS(Atlanta Biologicals)、100,000U/Lのペニシリン、100mg/Lのストレプトマイシン(Life Technologies)、及び2mMのL-グルタミン(Life Technologies)を補充したDMEM(Life Technologies)において、親細胞及びGNPTAB-/-HeLa細胞を単層として維持した。CI-MPR陰性マウスL-細胞(D9細胞株)については記述されている[11]。100,000U/Lのペニシリン及び100mg/Lのストレプトマイシン(Life Technologies)を含むα-MEM(Life Technologies)において、D9細胞を単層として維持した。
DNA構築物 - pcDNA6におけるヒトGNPTAB-V5/His及びS1-S3欠失変異体については記述されている[7]。LAMAN-myc-Flag cDNAはOrigeneから購入し、GAA cDNAは親切にもEline van Meel(Leiden University,The Netherlands)から寄贈された。GBA及びGLA cDNAは、寛大にもAmicus Therapeuticsから提供された。
CI-MPR親和性クロマトグラフィ及び酵素アッセイ - 可溶性ウシCI-MPRをウシ胎仔血清から精製し、記述されているように[12]、臭化シアン活性化Sepharose 4B(Sigma-Aldrich)に共有結合により共役した。2日間トランスフェクトしたExpi293F細胞またはマウスD9細胞の培地を、CI-MPRビーズとともに4℃で1時間インキュベートして、リン酸化されたリソソーム酵素に結合させた。次にビーズを沈降させ、バッファー(25mM Tris-Cl、pH7.2、150mM NaCl、及び1% Triton-X100)で洗浄し、リソソーム酵素活性について記述されているように[13]アッセイした。ビーズで回収された出発酵素の量を計算した。
リソソーム酵素の細胞取り込み - 細胞取り込み実験の1日前に、親HeLa細胞を約80%の密度で12ウェルプレートに播種した。産生細胞からの各酵素を含む培地を親HeLa細胞に加え、500μlの最終体積とした。競合実験のために、5mMの最終濃度までMan-6-Pを加えた。細胞を更に24時間インキュベートした後、培地及び細胞を別々に収集した。細胞をPBSで2回すすぎ、次に、25mM Tris-Cl、pH7.2、150mM NaCl、1%Triton-X100、及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Life Technologies)に溶解させた。培地及び溶解した細胞を20,000×gで遠心分離し、培地及び細胞ライセートの上清中の酵素の活性をアッセイした。
リソソーム酵素の[2-H]マンノース標識実験 - トランスフェクトしたGNPTAB-/-親HeLa細胞を用いた標識実験を次のように行った。トランスフェクションの48時間後、60-mm組織培養プレート内の細胞を50~150μCiの[2-H]マンノース(Perkin Elmer)とともに2時間インキュベートし、その後、5mMグルコース、5mMマンノース、及び10mM NHClを含む完全培地を添加してマンノースの取り込みを停止させ、分泌を誘導した。細胞を更に3時間インキュベートした後、解析のために培地を収集した。
免疫沈降及びオリゴ糖解析 - 本質的にはこれまでに詳細に記述されているように[9]、培地に分泌された酸性ヒドロラーゼを免疫沈降させ、オリゴ糖を単離し、解析した。LAMAN、GAA、及びGBA cDNAにmycタグが付加されたため、20μlの抗mycモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology)を、100μlのProtein G-agarose-PLUSビーズ(Santa Cruz Biotechnology)に予め結合させてから、標識されたリソソームヒドロラーゼを培地から免疫沈降させた。GLAの場合は、抗β-Gal抗体(Amicus Therapeutics)に予め結合させたProtein G-agarose-PLUSビーズを用いて、分泌された酵素の免疫沈降を行った。免疫沈降した物質をEndo H(NEB)で処置し、Ultracel-10K(EMD Millipore)で濾過した。中性及びリン酸化された高マンノースグリカンを含む濾液を弱酸で処置して、リン酸部分に未だ結合しているN-アセチルグルコサミン残基があればこれを除去し、QAE-カラムマトリックスに加えて、0個、1個または2個のMan-6-P残基を有するオリゴ糖を分離させた。Endo H耐性のある複合オリゴ糖を含む残余分をPronase(Roche Diagnostics)で処置し、ConA-sepharose 4B(GE Healthcare)で分画した。各画分の[2-H]-マンノース含有量を定量し、記述されているように[9]リン酸化パーセントを計算した。
表1。内在性GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ、または過剰発現したWT酵素、またはS1-S3変異体でリン酸化された、リソソーム酵素の細胞取り込み。取り込み実験は、リン酸化された酵素の取り込みを競合的に阻害するように、Man-6-Pの非存在下で、または5mM Man-6-Pを用いて行った。
Figure 0007037827000001
表2。リソソーム酵素に存在する1つまたは2つのMan-6-P残基を含む高マンノースグリカンの分布。内在性GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ、または過剰発現したWTα/β前駆体、またはS1-S3欠失変異体の作用を受けたリソソーム酵素間の、1つまたは2つのMan-6-P残基を含むグリカンの含有量を示すため、図12Cに提示されるデータを更に分析している。

Figure 0007037827000002

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Claims (25)

  1. 配列番号1の配列を有する全長ヒトGlcNAc-1-PTα/βサブユニットを基準にしてアミノ酸の欠失を含む、修飾されたGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-PT)α/βサブユニットであって、スペーサー1ドメインが欠失しており、前記スペーサー1ドメインが配列番号1のアミノ酸86からアミノ酸322までのアミノ酸を含む、前記修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニット。
  2. Notch1からα/β切断部位までの領域が欠失しており、前記Notch1からα/β切断部位までの領域が配列番号1のアミノ酸438からアミノ酸928までのアミノ酸を含む、請求項1に記載の修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニット。
  3. 請求項1または2に記載の修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットをコードするポリヌクレオチドを含むベクター。
  4. 請求項に記載のベクターを含む宿主細胞。
  5. 前記宿主細胞が哺乳動物細胞である、請求項に記載の宿主細胞。
  6. 前記宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項に記載の宿主細胞。
  7. 前記宿主細胞が、目的のタンパク質を高レベルで産生するように工学操作されている、請求項4~6のいずれかに記載の宿主細胞。
  8. 前記目的のタンパク質がリソソームタンパク質である、請求項に記載の宿主細胞。
  9. 前記リソソームタンパク質が、β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)、GalA、カテプシンD(CathD)、ニーマン・ピック病C2型(NPC2)、β-ヘキソサミニダーゼ(HEXB)、α-ガラクトシダーゼ(GLA)、β-マンノシダーゼ(MANBA)、アルファ-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、アリールスルファターゼB、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、及びリソソーム酸性α-マンノシダーゼ(LAMAN)からなる群から選択される、請求項に記載の宿主細胞。
  10. 前記目的のタンパク質が非リソソームタンパク質である、請求項に記載の宿主細胞。
  11. 前記非リソソームタンパク質が、DNase1、レニン、白血病抑制因子(LIF)、タンパク質O-フコシルトランスフェラーゼ2(PoFUT2)、グリコペプシノゲン(GP)、及びフォンウィルブランド因子A1A2A3ドメインからなる群から選択される、請求項10に記載の宿主細胞。
  12. 前記目的のタンパク質が、ポンペ病酵素(酸性α-グルコシダーゼ、GAA)及びアルファマンノシドーシス酵素(リソソーム酸性α-マンノシダーゼ、LAMAN)からなる群から選択される、請求項に記載の宿主細胞。
  13. 細胞により産生される目的のタンパク質のオリゴ糖リン酸化を増加させる方法であって、目的のタンパク質を産生する細胞において請求項1または2に記載の修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットを発現させることを含む、方法
  14. 細胞により産生される目的のタンパク質の、細胞表面マンノース6-リン酸受容体(Man-6-P)に対する結合能を高める方法であって、目的のタンパク質を産生する細胞において請求項1または2に記載の修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットを発現させることを含む、方法
  15. 前記目的のタンパク質を産生する細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項13または14に記載の方法。
  16. 前記目的のタンパク質を産生する細胞が、前記目的のタンパク質を高レベルで産生するように工学操作されている、請求項13~15のいずれかに記載の方法。
  17. 前記目的のタンパク質がリソソームタンパク質である、請求項13~16のいずれかに記載の方法。
  18. 前記リソソームタンパク質が、β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)、GalA、カテプシンD(CathD)、ニーマン・ピック病C2型(NPC2)、β-ヘキソサミニダーゼ(HEXB)、α-ガラクトシダーゼ(GLA)、β-マンノシダーゼ(MANBA)、アルファ-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、アリールスルファターゼB、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、及びリソソーム酸性α-マンノシダーゼ(LAMAN)からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
  19. 前記目的のタンパク質が非リソソームタンパク質である、請求項13~16のいずれかに記載の方法。
  20. 前記非リソソームタンパク質が、DNase1、レニン、白血病抑制因子(LIF)、タンパク質O-フコシルトランスフェラーゼ2(PoFUT2)、グリコペプシノゲン(GP)、及びフォンウィルブランド因子A1A2A3ドメインからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
  21. 前記目的のタンパク質が、ポンペ病酵素(酸性α-グルコシダーゼ、GAA)及びアルファマンノシドーシス酵素(リソソーム酸性α-マンノシダーゼ、LAMAN)からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
  22. 前記目的のタンパク質上にマンノース-6-リン酸(Man-6-P)タグ生成される、請求項13~21のいずれかに記載の方法。
  23. 前記修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットが、野生型GlcNAc-1-PTα/βサブユニットと比べて、前記目的のタンパク質において2つのMan-6-P残基を含むグリカンの量増加させる、請求項13~22のいずれかに記載の方法。
  24. 請求項1または2に記載の修飾されたGlcNAc-1-PTα/βサブユニットを目的のリソソーム酵素と共発現させることを含む、リソソーム酵素のリン酸化を増強させる方法。
  25. 前記目的のリソソーム酵素が、β-グルコセレブロシダーゼ(GBA)、GalA、カテプシンD(CathD)、ニーマン・ピック病C2型(NPC2)、β-ヘキソサミニダーゼ(HEXB)、α-ガラクトシダーゼ(GLA)、β-マンノシダーゼ(MANBA)、アルファ-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、アリールスルファターゼB、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、及びリソソーム酸性α-マンノシダーゼ(LAMAN)からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
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