JP7033471B2 - 長大な壁型構造物及び長大な壁型構造物の施工方法 - Google Patents

長大な壁型構造物及び長大な壁型構造物の施工方法 Download PDF

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Description

本発明は、城壁のような長大な壁型構造物及び長大な壁型構造物の施工方法に関する。
領域区分を明確にするなどを目的に敷地境界等に壁を設けるようにしている。また、周知の通り、欧州などには、都市全体を取り囲むように、又は国境の境界線に設けられた長大な城壁(壁型構造物)が数多く存在する(例えば、特許文献1参照)。
ここで、例えば、欧州に残る城壁には、城壁部(幕壁)と、隣り合う城壁部の間に設けられ、城壁部に達した敵兵等に攻撃を加えるために突出形成された城壁塔部(城壁塔)とを石材を積み重ねるなどして構築したものが多々ある。また、城壁部や城壁塔部の天端を通路とし、石造りの高欄を備えるなどして構成されている。このような歴史的建造物である城壁は、そのデザイン性も非常に優れているため、観光資産としての価値が非常に高いものとなっている。
特表2004-521213号公報
一方、例えば、優れたデザイン性を活かし、テーマパークやアミューズメントパークなどに、敷地境界などに沿って長大な城壁のような壁型の構造物を設けようとした場合、長大であるが故に平面的、断面的な敷地の不整形さによって構造物が極めて複雑な形状にならざるを得ず、従来の合理的な工業化構法を適用することもできないため、非常に高コストになってしまう。
本発明は、上記事情に鑑み、低コストで合理的に構築することができ、また、単に敷地領域を区分したり、見栄えをよくするだけでなく、さらに機能を付与して有効活用できるようにした長大な壁型構造物を提供することを目的とする。
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明に係る長大な壁型構造物は、PC部材を用いて形成される壁ユニット部と、隣り合う壁ユニット部の間に設けられ、隣り合う一方の壁ユニット部と他方の壁ユニット部が設置される地盤のレベルの違い及び隣り合う一方の壁ユニット部と他方の壁ユニット部の延設方向の違いを吸収するように、隣り合う壁ユニット部の端部同士を接続するための節部とを備え、前記壁ユニット部と前記節部を複数多連状に接続して構成され、且つ、前記壁ユニット部と前記節部の内部に建築用途機能空間を設けて形成されていることを特徴とする。
また、本発明に係る長大な壁型構造物においては、前記壁型構造物が防潮堤であってもよい。
本発明に係る長大な壁型構造物の施工方法は、上記のいずれかの長大な壁型構造物を構築する方法であって、前記壁型構造物を構築する施工領域の地盤に対し各壁ユニット部を構築する部分毎に整地を行い、基礎構造を構築する基礎構造構築工程と、整地した地盤面に、前記壁ユニット部を構築する施工領域の両側にそれぞれ、前記壁ユニット部の延設方向に沿って平行且つ水平にスライドレールを設置し、該一対のスライドレールに走行可能に支持させてスライドゲートクレーンを設置するスライドゲートクレーン設置工程と、前記スライドゲートクレーンをスライドレール上で走行移動させ、該スライドゲートクレーンでPC部材を順次搬送しつつ組み上げ、工業化構法によって前記建築用途機能空間を備えた前記壁型構造物を構築してゆくPC部材組み上げ工程とを備えることを特徴とする。
本発明の長大な壁型構造物及び長大な壁型構造物の施工方法によれば、低コストで合理的に構築することができ、また、単に敷地領域を区分したり、見栄えをよくするだけでなく、さらに機能を付与して有効活用することが可能になる。
本発明の一実施形態に係る長大な壁型構造物を示す正面図である。 本発明の一実施形態に係る長大な壁型構造物を示す平面図である。 本発明の一実施形態に係る長大な壁型構造物を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る長大な壁型構造物の基礎構造を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る長大な壁型構造物の施工方法を示す図である。 本発明の一実施形態に係る長大な壁型構造物の施工方法を示す図である。
以下、図1から図6を参照し、本発明の一実施形態に係る長大な壁型構造物及び長大な壁型構造物の施工方法について説明する。
本実施形態の長大な壁型構造物Aは、図1から図3に示すように、PC(プレキャストコンクリート)の柱材、梁材、床材、壁材を組み付けて形成される壁ユニット部1と、隣り合う壁ユニット部1の間に設けられ、隣り合う一方の壁ユニット部1と他方の壁ユニット部1が設置される地盤Gの高さ(レベル)の違いや隣り合う一方の壁ユニット部1と他方の壁ユニット部1の延設方向の違いを吸収するように、隣り合う壁ユニット部1の端部同士を接続するための節部2とを備えてなり、これら壁ユニット部1と節部2を複数多連状に接続して構成されている。
なお、本実施形態の長大な壁型構造物Aの壁ユニット部1は、例えば、長さが30~60m程度の直線で、幅(奥行き)が10m程度、高さが15m程度を基本としている。
また、この長大な壁型構造物Aは、図4に示すように、各壁ユニット部1、節部2の施工領域Rの地盤G内に複数の支持杭3を打設し、その杭頭部に杭頭基礎4を設け、且つ各壁ユニット部1の施工領域R毎に地盤面を整地してなる基礎構造5を備えている。なお、基礎構造は、特に本実施形態のように限定する必要はなく、支持杭を打設するとともに、複数の支持杭の杭頭部を一体に接続するように基礎スラブを設けて構成してもよい。また、基礎構造5は直接基礎であってもよい。
一方、本実施形態の長大な壁型構造物Aは、例えば電車(鉄道等)、自動車、歩行者などの交通路、商業施設、研究施設、オフィス、駐車場、宿泊施設、住戸、倉庫など、適宜選択した建築用途機能を壁型構造物Aに具備させるための建築用途機能空間6が壁ユニット部1、節部2の内部に形成されている。また、壁型構造物Aの内部が複数の階層に分かれ、異なる建築用途機能を各階層に設けることができるように形成されている。
例えば、節部2は地上階から上層階、頂部まで達する階段やエレベーターなどで上下移動可能に構成されていたり、壁ユニット部1は、地上階から上層階、頂部の上下の複数階層をそれぞれ、交通路、駐車場、商業施設、研究施設、オフィス、駐車場、宿泊施設、住戸、倉庫などを設けて構成されている。また、節部3には、壁ユニット部1の端部を接合する部分にフレキシブルジョイントが用いられ、フレキシブルジョイントと壁ユニット部1の端部が構造的なエキスパンションジョイント(図1、図2、図3の符号S部)となっている。なお、構造的なエキスパンションジョイント(フレキシブルジョイント)は、構造上問題がなければ、節部3の片側だけに設けてもよいし、なくてもよい。また、壁型構造物Aの建築用途機能空間6に鉄道、モノレールなどを設ける場合には壁ユニット部1と節部3を剛接合することが望ましい。
この長大な壁型構造物Aは、例えば、表面に石材を打ち込むなどした壁用PC部材7を用いることによって欧州の城壁のような外観で形成されている(図1参照)。また、屋上には、石材を打ち込むなどしたPC部材を用いて壁高欄を設けたり、緑化を施して屋上ガーデンが設けられ、デザイン性に優れた壁型構造物Aとされている。
また、商業施設8などを設け際には、その区画の節部2及び壁ユニット部1の奥行き(壁厚に相当)を他の部分よりも大きくして十分な建築用途機能空間6を確保できるように形成されている(図2、図3参照)。
上記構成からなる本実施形態の長大な壁型構造物Aを構築する方法の一例を説明する。
はじめに、図4に示すように、壁型構造物Aを構築する部分の地盤Gに対し各壁ユニット部1を構築する部分毎に例えば地表面が水平になるように整地を行い、整地を行った施工領域Rに複数の支持杭3を打設する(基礎構造構築工程)。また、複数の支持杭3の杭頭に杭頭基礎4を一体に形成する。
次に、図5及び図6に示すように、整地した地盤面に、壁ユニット部1(及び節部2)を構築する施工領域Rを挟み込むように、施工領域Rの両側、すなわち、壁型構造物Aの前面と背面の外側にそれぞれ、壁ユニット部1の延設方向に沿って平行且つ水平にスライドレール10を設置する。また、一対のスライドレール10に走行可能に支持させてスライドゲートクレーン11を設置する(スライドゲートクレーン設置工程)。
ここで、スライドゲートクレーン11は、例えば、下端をスライドレール10に係合させて鉛直方向に立設される柱状あるいは壁状の一対のスライド支持部11aと、一対のスライド支持部11aの上端部同士を連結するように架設された架設部11bとを備えて門型に形成され、走行方向に沿う前後方向及び走行方向に直交する幅方向(XY方向)にそれぞれ可動するクレーン装置(揚重装置)11cを架設部11bに備えて構成されている。
なお、スライド支持部11aなどに、スライドゲートクレーン11をスライドレール10上で走行移動させるための駆動手段が適宜設けられている。
本実施形態では、スライドゲートクレーン11の一方のスライド支持部11aと施工領域Rの一側端部との間に、PC部材などの資機材を搬入するための車両走行領域Tが設けられ、車両が走行してスライドゲートクレーン11の内側に入出可能とされている。
壁ユニット部1(や節部2)を構築する際には、資機材を車両走行領域Tに搬入するとともにスライドゲートクレーン11のクレーン装置11cで各種PC部材7、12を吊り上げ、スライドゲートクレーン10の走行移動及びクレーン装置11cの可動によって所定位置に搬送し、整地された施工領域R上に、所望の建築用途空間6が形成されるように組み上げてゆく。
そして、スライドゲートクレーン11を順次スライドレール10上で走行移動させながらPC部材7、12の各部材を組み上げてゆくことによって、工業化構法を適用し、効率的に長大な壁型構造物Aを構築することが可能になる(PC部材組み上げ工程)。
また、壁用PC部材7として、例えばその表面に化粧石の石材を打ち込んだPC部材を用いることでこの壁用PC部材7を設置してゆくとともに欧州の城壁のようなデザイン性に優れた壁型構造物Aを容易に構築することができる。
さらに、スライドゲートクレーン11を用いて、壁型構造物Aの天井部/屋上に石打ち込み済みのPC部材を用いて壁高欄を設けたり、緑化を施して屋上ガーデンを設けるなどすれば、さらにデザイン性に優れた城壁型の構造物を構築することができる。
また、各壁ユニット部1を構築する部分毎に地表面が水平になるように整地を行うことで、言い換えれば、各壁ユニット部1を設ける施工領域Rのレベル面を水平で均一にしておくことで、隣り合う節部3の間に設けられる壁ユニット部1の延設方向一端部から他端部の高さ、厚さ(幅)、構造的な断面形状を均一/一定にすることができる。これにより、確実にユニット化ひいては工業化構法に適した構造にすることができる。
したがって、本実施形態の壁型構造物A及びこの壁化型構造物Aの施工方法によれば、長大な壁型構造物Aを低コストで合理的に構築することができる。また、単に敷地領域を区分したり、見栄えをよくするだけでなく、内部に建築用途機能6を設ける空間を備え、内部空間を有効活用可能な壁型構造物Aを構築することができる。
以上、本発明に係る壁型構造物及びこの壁化型構造物の施工方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、主要構成部材としてPC部材7、12のみを用い、壁型構造物Aを構築するものとして説明を行ったが、例えば、スライドゲートクレーン11を用いて基礎構造5上に鉄骨枠を組み上げ、この鉄骨枠に床用PC部材や壁用PC部材等のPC部材7、12を取り付けて壁型構造物Aを構築/構成してもよい。この場合においても、本実施形態と同様の作用効果を得ることができ、工業化構法によって効率的に長大な壁型構造物Aを構築することができる。また、支持杭3に構真柱を建て込むなどして構成すれば、さらなる施工性の向上、壁型構造物Aの耐力の向上等を図ることも可能になる。
また、本実施形態では、壁用PC部材等が表面に石材を打ち込むなどして城壁のような外観を実現できるように形成されているものとしたが、PC部材の表面等のデザイン性に関しては特に限定を必要としない。例えば、表面が石材を積み上げた形となるような型枠、顔料で着色したフレッシュコンクリートを用いるなどし、あたかも表面に石材を打ち込んだ外観を模した形でPC部材を製造し、これを用いても構わない。この場合には、数十年単位の長期的な観点での経年劣化で石材が剥離するようなことがなく、メンテナンス性を向上させることができる。
また、本発明に係る壁型構造物は防潮堤として用いられてもよい。
東日本大震災で巨大な津波の被害が発生したことを受け、被災地や今後巨大地震に伴い津波の発生、被害が予測されている地域では、津波による被害の防止、抑止を目的に防潮堤を設ける検討、計画が進められている。しかしながら、海岸線に沿って巨大なコンクリート製の防潮堤を設ける場合には、多大なコストが必要になるだけでなく、景観が損なわれ、圧迫感が発生し、さらに土地利用の観点からも課題が残されている。
これに対し、本発明に係る長大な壁型構造物は、上記の通り、施工性に優れ、低コストで構築可能であり、さらに、PC部材で組み上げたその内部空間にPC部材を積み上げたり、コンクリートを現場打ちするなどすれば、容易に必要な耐荷重を確保することができる。
そして、外観のデザイン性の自由度が高く、欧州の城壁のようなデザインにすることができるため、長大、高大な壁型構造物が海岸線に沿って構築された場合であっても、従来のコンクリート製の防潮堤と比較すれば、景観の悪化、圧迫感の発生を解消することも可能になる。
さらに、本発明に係る長大な壁型構造物は、内部の建築用途機能空間を道路や鉄道、商業施設等に利用できるため、最大予想津波高さよりも高い位置等に道路や鉄道、避難所等になり得る空間を設けておくことで、通常時は長大な壁型構造物を一般の社会生活の営みに活用しつつ、地震発生時には津波による被害を効果的に防止できるものとなり得る。
なお、必要に応じ、内部空間にPC部材を積み上げたり、コンクリートを現場打ちするだけでなく、プレストレスを導入したり、繊維シートや鋼板などの補強材を一体化するなどすれば、防潮堤としての耐力を確保することは可能である。
1 壁ユニット部
2 節部
3 支持杭
4 杭頭基礎
5 基礎構造
6 建築用途機能空間
7 壁用PC部材
8 商業施設
10 スライドレール
11 スライドゲートクレーン
12 PC部材
A 長大な壁型構造物
G 地盤
R 施工領域
S 構造的なエキスパンションジョイント
T 車両走行領域

Claims (3)

  1. PC部材を用いて形成される壁ユニット部と、隣り合う壁ユニット部の間に設けられ、隣り合う一方の壁ユニット部と他方の壁ユニット部が設置される地盤のレベルの違い及び隣り合う一方の壁ユニット部と他方の壁ユニット部の延設方向の違いを吸収するように、隣り合う壁ユニット部の端部同士を接続するための節部とを備え、前記壁ユニット部と前記節部を複数多連状に接続して構成され、
    且つ、前記壁ユニット部と前記節部の内部に建築用途機能空間を設けて形成されていることを特徴とする長大な壁型構造物。
  2. 請求項1記載の長大な壁型構造物において、
    前記壁型構造物が防潮堤であることを特徴とする長大な壁型構造物。
  3. 請求項1または請求項2に記載の長大な壁型構造物を構築する方法であって、
    前記壁型構造物を構築する施工領域の地盤に対し各壁ユニット部を構築する部分毎に整地を行い、基礎構造を構築する基礎構造構築工程と、
    整地した地盤面に、前記壁ユニット部を構築する施工領域の両側にそれぞれ、前記壁ユニット部の延設方向に沿って平行且つ水平にスライドレールを設置し、該一対のスライドレールに走行可能に支持させてスライドゲートクレーンを設置するスライドゲートクレーン設置工程と、
    前記スライドゲートクレーンをスライドレール上で走行移動させ、該スライドゲートクレーンでPC部材を順次搬送しつつ組み上げ、工業化構法によって前記建築用途機能空間を備えた前記壁型構造物を構築してゆくPC部材組み上げ工程とを備えることを特徴とする長大な壁型構造物の施工方法。
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