JP7032222B2 - クライストロン - Google Patents

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本発明の実施形態は、マイクロ波を増幅するクライストロンに関する。
クライストロンにおけるマイクロ波の増幅は、直流の電子ビームとマイクロ波とが相互作用することによって電子の速度変調が密度変調に成り代わることで行われている。マイクロ波の存在領域は共振空胴によって限定されている。
クライストロンは、複数の共振空胴を備え、これら共振空胴の配置とインピーダンスの設計によりマイクロ波の増幅特性が特徴付けられている。多くの場合、効率的なマイクロ波の増幅を達成するために、共振空胴の共振周波数は入力されるマイクロ波の動作周波数よりも高い側に離調されている。このため、マイクロ波の周波数が動作周波数から変化して、共振空胴の共振周波数に近付く場合には共振空胴の空胴電圧が増加して利得も増加し、一方、共振空胴の共振周波数から遠ざかる場合には共振空胴の空胴電圧が減少して利得も減少する。
クライストロンでは、逆行電子の発生や発振等のためにその動作が不安定になることがあるが、マイクロ波の周波数が動作周波数から外れた周波数での利得が高い場合には、マイクロ波の周波数が動作周波数で安定に動作していても、周波数が意図せず変化すると、不安定な動作に陥る可能性がある。例えば、マイクロ波の周波数が動作周波数の場合には、逆行電子が存在しても、逆行電子によるマイクロ波が増幅される利得が低いために安定に動作するが、マイクロ波の周波数が動作周波数から外れて利得が高くなった場合には、逆行電子によるマイクロ波が増幅される利得が高くなって発振に至るために不安定な動作が発生する。
実公平6-38364号公報
本発明が解決しようとする課題は、利得帯域を平準化し、安定に動作するクライストロンを提供することである。
本実施形態のクライストロンは、電子銃部、相互作用部およびコレクタを備える。電子銃部は、電子を放出する。相互作用部は、電子銃部から電子の進行方向に沿って順に位置される入力空胴、第2空胴、第3空胴および出力空胴を含む複数の共振空胴を有する。入力空胴および第3空胴は入力空胴に入力されるマイクロ波の動作周波数よりも高い共振周波数に離調されているとともに、第2空胴は動作周波数よりも低い共振周波数に離調され、出力空胴でのマイクロ波の周波数に応じた利得が動作周波数で最大となる。コレクタは、相互作用部を通過した電子を捕捉する。
第1の実施形態を示すクライストロンの断面図である。 同上クライストロンの入力空胴、第2空胴および第3空胴が動作周波数よりも高い共振周波数に離調されている場合のマイクロ波の周波数と空胴電圧との関係を示すグラフである。 同上クライストロンの第2空胴が動作周波数よりも低い共振周波数に離調されるが入力空胴、第2空胴および第3空胴の共振周波数が調整されていない場合のマイクロ波の周波数と空胴電圧との関係を示すグラフである。 同上クライストロンの第2空胴が動作周波数よりも低い共振周波数に離調されているとともに入力空胴、第2空胴および第3空胴の共振周波数が調整された場合のマイクロ波の周波数と空胴電圧との関係を示すグラフである。 図3の関係を有するクライストロンの入出力特性を示すグラフである。 図4の関係を有するクライストロンの入出力特性を示すグラフである。 第2の実施形態を示すクライストロンの断面図である。
以下、第1の実施形態を、図1ないし図6を参照して説明する。
図1にクライストロン10の断面図を示す。クライストロン10は、電子11を放出する電子銃部12を備えている。電子銃部12は、電子(電子ビーム)11を発生する陰極13および電子11を加速する陽極14を備えている。
電子11の進行方向である電子銃部12の前方には、電子ビーム-マイクロ波の相互作用部(高周波相互作用部)15が設けられている。相互作用部15は、電子11の進行方向に配列された複数の共振空胴16を備えている。本実施形態では、複数の共振空胴16には、電子銃部12から電子11の進行方向に沿って、第1空胴である入力空胴16aと、中間空胴である第2空胴16b、第3空胴16cおよび第4空胴16dと、第5空胴である出力空胴16eとが含まれている。入力空胴16aには所定の動作周波数のマイクロ波を入力する例えば同軸線路である入力部17が接続されている。出力空胴16eには例えば導波管である出力部18が接続されている。
電子11の進行方向である相互作用部15のさらに前方には、相互作用部15を通過した電子11を捕捉するコレクタ19が設けられている。
また、相互作用部15の周囲には、電子ビームを集束するための磁場を発生する図示しない集束磁場装置が配置されている。
そして、複数の共振空胴16のうちの電子11の進行方向上流側に位置する共振空胴16がクライストロン10の利得に関わっており、さらに、その電子11の進行方向上流側に位置する共振空胴16のうちの第2空胴16bがクライストロン10の利得に最も影響がある。
複数の共振空胴16のうち、第2空胴16b以外はマイクロ波の動作周波数よりも高い共振周波数に離調され、第2空胴16bのみはマイクロ波の動作周波数よりも低い共振周波数に離調されている。第2空胴16bとともに入力空胴16aおよび第3空胴16cを含めた3つ共振空胴16の各共振周波数は、出力空胴16eでのマイクロ波の周波数の変化に対する空胴電圧の変化、つまり空胴電圧に応じた利得の変化が平準化されるように調整されている。この平準化では、出力空胴16eでのマイクロ波の周波数に応じた利得が動作周波数のときに最大となるように調整されている。各共振空胴16の共振周波数は、例えば、共振空胴16の径を変えることによって調整でき、径を小さくすると共振周波数が高くなり、径を大きくすると共振周波数が低くなる。
次に、クライストロン10の入力空胴16a、第2空胴16bおよび第3空胴16cにおけるマイクロ波の周波数の変化に対する空胴電圧(利得)の変化の関係について説明する。
図2には、クライストロン10の入力空胴16a、第2空胴16bおよび第3空胴16cが、動作周波数よりも高い共振周波数に離調されている場合に、これら入力空胴16a、第2空胴16bおよび第3空胴16cにおけるマイクロ波の周波数と空胴電圧との関係を示す。なお、図面には、マイクロ波の動作周波数をf0、動作周波数f0よりも高い周波数をf0+dfおよびf0+2df、動作周波数f0よりも低い周波数をf0-dfおよびf0-2dfと示す。
第2空胴16b、第3空胴16cのそれぞれの空胴電圧が、マイクロ波の周波数の変化に対して片側に単調に変化する。すなわち、利得(小信号利得)は、動作周波数から外れて高くなった周波数(f0+2df)のところで最大となる。そして、第3空胴16cでのマイクロ波の周波数の変化と空胴電圧の変化との関係が第4空胴16dおよび出力空胴16eにおいても同様の関係となる。つまり、出力空胴16eの空胴電圧が、マイクロ波の周波数の変化に対して片側に単調に変化する。
マイクロ波の周波数が動作周波数の場合には、逆行電子が発生しても、逆行電子によってマイクロ波が増幅される利得が低いために安定に動作するが、マイクロ波の周波数が動作周波数から外れて利得が高くなった場合には、逆行電子によってマイクロ波が増幅される利得が高くなって発振に至るために不安定な動作が発生する。
また、図3には、クライストロン10の第2空胴16bが動作周波数よりも低い共振周波数に離調されるが、単純に第2空胴16bの共振周波数が動作周波数よりも低くしただけで、入力空胴16a、第2空胴16bおよび第3空胴16cの各共振周波数が調整されていない場合に、これら入力空胴16a、第2空胴16bおよび第3空胴16cにおけるマイクロ波の周波数と空胴電圧との関係を示す。
第2空胴16b、第3空胴16cのそれぞれの空胴電圧が、マイクロ波の周波数の変化に対して片側に単調に変化する。すなわち、利得(小信号利得)は、動作周波数から外れて低くなった周波数(f0-2df)のところで最大となる。そして、第3空胴16cでのマイクロ波の周波数の変化と空胴電圧の変化との関係が第4空胴16dおよび出力空胴16eにおいても同様の関係となる。つまり、出力空胴16eの空胴電圧が、マイクロ波の周波数の変化に対して片側に単調に変化する。
マイクロ波の周波数が動作周波数の場合には、逆行電子が発生しても、逆行電子によってマイクロ波が増幅される利得が低いために安定に動作するが、マイクロ波の周波数が動作周波数から外れて利得が高くなった場合には、逆行電子によってマイクロ波が増幅される利得が高くなって発振に至るために不安定な動作が発生する。
また、図4に、本実施形態のクライストロン10であって、クライストロン10の第2空胴16bが動作周波数よりも低い共振周波数に離調されているとともに、入力空胴16a、第2空胴16bおよび第3空胴16cの共振周波数が調整された場合に、これら入力空胴16a、第2空胴16bおよび第3空胴16cにおけるマイクロ波の周波数と空胴電圧との関係を示す。
第2空胴16bとともに入力空胴16aおよび第3空胴16cを含めた3つ共振空胴16の各共振周波数は、出力空胴16eでのマイクロ波の周波数の変化に対する空胴電圧の変化、つまり空胴電圧に応じた利得の変化が平準化されるように調整されている。この平準化では、出力空胴16eでのマイクロ波の周波数に応じた利得が動作周波数のときに最大となるように調整されている。そして、第3空胴16cでのマイクロ波の周波数の変化と空胴電圧の変化との関係が第4空胴16dおよび出力空胴16eにおいても同様の関係となる。つまり、出力空胴16eの空胴電圧が、マイクロ波の周波数の変化に対して平準化される。
この場合、マイクロ波の入出力特性は、図5に示すクライストロン10の入出力特性から図6に示すクライストロン10の入出力特性のように変化し、利得(小信号利得)も動作周波数で最大とすることができる。なお、図5は図3の関係を有するクライストロン10の入出力特性を示すグラフであり、図6は図4の関係を有するクライストロン10の入出力特性を示すグラフである。
これは、共振周波数が動作周波数よりも高い側に離調された第2空胴16b以外の共振空胴16ではマイクロ波の周波数が高くなることで空胴電圧が高くなるのに対し、共振周波数が動作周波数よりも低い側に離調された第2空胴16bでは逆の特性になるため、それらの組み合わせによって動作波周波数よりも高い側への離調による特性と低い側への離調による特性とが相殺され、出力空胴16eでのマイクロ波の周波数に応じた利得が動作周波数のときに最大となるように平準化されるためである。そのため、第2空胴16bと第3空胴16cの離調の幅を等しくすることにより、利得の平準化を容易に行える。しかも、入力空胴16a、第2空胴16bおよび第3空胴16cの各共振周波数は、第2空胴16bと第3空胴16cの離調の幅を等しくすると、バランスがとりやすい。
このように、本実施形態のクライストロン10は、第2空胴16b以外はマイクロ波の動作周波数よりも高い共振周波数に離調され、第2空胴16bはマイクロ波の動作周波数よりも低い共振周波数に離調され、出力空胴16eでのマイクロ波の周波数に応じた利得が動作周波数のときに最大となるように、利得帯域を平準化しているため、安定に動作するクライストロン10を提供できる。
また、第2空胴16bと第3空胴16cの離調の幅が等しいことにより、動作波周波数よりも高い側への離調による特性と低い側への離調による特性とが相殺され、出力空胴16eでのマイクロ波の周波数に応じた利得が動作周波数のときに最大となる平準化を容易に行えるとともに、入力空胴16a、第2空胴16bおよび第3空胴16cの各共振周波数のバランスをとりやすく調整しやすい。
次に、図7に第2の実施形態を示す。
クライストロン10は、高い効率を実現するため、共振空胴16の数を10以上とする。本実施形態では、共振空胴16には、電子銃部12から電子11の進行方向に沿って、第1空胴である入力空胴16a、中間空胴である第2空胴16b、第3空胴16c、第4空胴16d、第5空胴16f、第6空胴16g、第7空胴16h、第8空胴16i、第9空胴16j、および第10空胴である出力空胴16kが含まれている。
この場合でも、マイクロ波の動作周波数よりも低い共振周波数に離調する共振空胴16は第2空胴16bとし、この第2空胴16bと入力空胴16aと第3空胴16cの各共振周波数の調整によって、出力空胴16eでのマイクロ波の周波数に応じた利得が動作周波数のときに最大となるように、利得帯域の平準化を図る。
そして、第2空胴16bをマイクロ波の動作周波数よりも低い共振周波数に離調した場合、電子11の集群作用とは逆の働きをすることになるため、効率は低下する傾向にある。そのため、第2空胴16bをマイクロ波の動作周波数よりも低い共振周波数に離調するクライストロン10では、共振空胴16を10以上備えたものとすることにより、高い効率を実現できる。
さらに、10個の共振空胴16により、電子11を徐々に集群させることができる。これにより、集群した電子11はその進行方向への広がりが抑えられ、速度が均一化されることで、高周波電力への変換効率を向上させることができる。
なお、共振空胴16の数は、第2空胴16bでの効率の低下を補って、電子11を徐々に集群させるために、10個以上であることが好ましい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10 クライストロン
11 電子
12 電子銃部
15 相互作用部
16 共振空胴
16a 入力空胴
16b 第2空胴
16c 第3空胴
16e,16k 出力空胴
19 コレクタ

Claims (3)

  1. 電子を放出する電子銃部と、
    前記電子銃部から電子の進行方向に沿って順に位置される入力空胴、第2空胴、第3空胴および出力空胴を含む複数の共振空胴を有し、前記入力空胴および前記第3空胴は前記入力空胴に入力されるマイクロ波の動作周波数よりも高い共振周波数に離調されているとともに、前記第2空胴は前記動作周波数よりも低い共振周波数に離調され、前記出力空胴での前記マイクロ波の周波数に応じた利得が前記動作周波数で最大となる相互作用部と、
    前記相互作用部を通過した電子を捕捉するコレクタと
    を具備することを特徴とするクライストロン。
  2. 前記第2空胴と前記第3空胴の離調の幅が等しい
    ことを特徴とする請求項1記載のクライストロン。
  3. 前記共振空胴は10個以上である
    ことを特徴とする請求項1または2記載のクライストロン。
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