JP7028111B2 - 軸受の異常診断システム及び軸受の異常診断方法 - Google Patents

軸受の異常診断システム及び軸受の異常診断方法 Download PDF

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Description

本発明は、軸受の異常診断システム及び軸受の異常診断方法に関する。
鉄道車両の台車等に設けられ車軸を支持する軸受は、車両走行のための重要な部品であり、故障がないよう厳重に管理されている。また、車両走行中においても、軸受に発生した異常の発見が遅れないように、軸受異常はできるだけ早い段階で把握しておく必要がある。
軸受の状態を監視する技術としては、軸受の近傍に配置されたセンサから得られる加速度データ、又は温度データを用いて異常を検出する方法が知られている(特許文献1参照)。
特開平8-159151号公報
しかしながら、軸受の加速度や温度に基づいて診断する場合、車両の種類や車両の走行条件等によって診断結果が大きく変化することがある。そのため、診断結果の信頼性の更なる向上が望まれていた。
本発明の目的は、車両の走行条件を考慮して従来よりも信頼性の高い診断が可能な軸受の異常診断システム及び軸受の異常診断方法を提供することにある。
本発明は下記構成からなる。
(1) 車両に使用される軸受の状態を監視して、前記軸受の異常診断を行う軸受診断システムであって、
前記軸受の軸受温度を検出する軸受温度検出部と、
前記軸受に生じる加速度を検出する加速度検出部と、
前記車両周囲の環境情報を検出する環境情報検出部と、
前記軸受の識別情報が記憶された識別情報記憶部と、
前記軸受の正常状態における軸受温度と前記軸受の加速度の各検出値を、前記環境情報及び前記識別情報に対応して分類した基準データ情報を記憶する基準データ記憶部と、
前記軸受の異常診断を行う異常診断部と、
を備え、
前記異常診断部は、
診断対象車両の前記軸受の軸受温度及び加速度の各検出値を、前記診断対象車両の前記環境情報検出部により検出された前記環境情報と前記識別情報の項目毎に分類し、
分類された前記軸受温度の検出値に対応する軸受温度基準値と、前記加速度の検出値に対応する加速度基準値を、前記基準データ情報における同じ分類項目の情報から求め、
前記軸受温度の検出値と前記軸受温度基準値との差、及び前記加速度の検出値と前記加速度基準値との差を、それぞれ予め定めた閾値と比較した結果に応じて前記軸受を診断する、
軸受の異常診断システム。
(2) 車両に使用される軸受の状態を監視して、前記軸受の異常診断を行う軸受診断方法であって、
前記軸受の軸受温度を検出する軸受温度検出ステップと、
前記軸受に生じる加速度を検出する加速度検出ステップと、
前記車両周囲の環境情報を検出する環境情報検出ステップと、
前記軸受の正常状態における軸受温度と前記軸受の加速度の各検出値を、前記車両周囲の環境情報及び前記軸受の識別情報に対応して分類した基準データ情報を取得する基準データ取得ステップと、
診断対象車両の前記軸受の軸受温度及び加速度の各検出値を、前記診断対象車両の前記環境情報と前記識別情報の項目毎に分類し、
分類された前記軸受温度の検出値に対応する軸受温度基準値と、前記加速度の検出値に対応する加速度基準値を、前記基準データ情報における同じ分類項目の情報から求め、
前記軸受温度の検出値と前記軸受温度基準値との差、及び前記加速度の検出値と前記加速度基準値との差を、それぞれ予め定めた閾値と比較した結果に応じて前記軸受の異常診断を行う異常診断ステップと、
を有する、軸受の異常診断方法。
本発明によれば、車両の走行条件を考慮して従来よりも信頼性の高い軸受の異常診断ができる。
本発明の実施形態に係る軸受の異常診断システムを備えた車両の模式的なブロック構成図である。 図1に示す車両の構成を模式的に示す構成図である。 軸受の概略構成を示す側面図である。 異常診断システムの機能を説明するブロック図である。 異常診断システムの動作を説明するタイミングチャートである。 異常診断システムの他の実施形態を示す概略構成図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る軸受の異常診断システムを備えた車両の模式的なブロック構成図、図2は図1に示す車両の模式的な構成図である。
本実施形態に係る軸受の異常診断システム100は、例えば、図1に示す複数の車両、即ち、鉄道車両である第一車両11と第二車両13が連結された列車3に適用される。図示例の列車3は、第一車両11と第二車両13が連結された2両編成であるが、本発明は、これに限らず、1両編成や3両以上の編成の列車、又は自動車等の他の車両にも好適に適用できる。
第一車両11及び第二車両13のそれぞれは、車体15と、車体15を支持する台車17とを備える。台車17は、車体15の下方の進行方向前方及び後方にそれぞれ配置される。図2に示すように、それぞれの台車17には、一対の車輪19が車軸23に取り付けられた輪軸24が一組設けられる。
車軸23は、複数の軸受25を介して台車17に回転自在に支持される。また、車軸23には、動力伝達部27を介して電動機29が接続される。電動機29からの駆動力は、動力伝達部27を介して輪軸24に伝達され、車輪19を回転駆動する。図示例の場合、動力伝達部27と電動機29が全輪軸24にそれぞれ設けてあるが、いずれかの輪軸24のみに設置されていてもよく、設置個数は任意である。
軸受の異常診断システム100は、第一車両11及び第二車両13の各車軸23を支持する複数の軸受25の異常診断を行う。異常診断システム100は、図1に示す軸受温度検出部31、加速度検出部33、走行位置検出部35、天候検出部37、外気温検出部39、異常診断部41、識別情報記憶部43を備える。
以下に上記した各部について説明する。
図3は軸受25の概略構成を示す側面図である。
軸受25は、内輪51と、外輪53と、内輪51と外輪53との間に転動可能に複数個が配置された転動体55と、転動体55を保持する保持器(図示略)とを有する。内輪51は車軸23に外嵌めされ、外輪53はハウジング50に内嵌される。ハウジング50は、図示を省略するが図2に示す台車17に固定される。
ハウジング50には、軸受温度検出部31と加速度検出部33が設けられる。軸受温度検出部31は、例えば、熱電対、サーミスタ、又は赤外線センサ等が用いられ、軸受25の温度を検出する。加速度検出部33は、圧電型、サーボ型、ひずみゲージ式、半導体式の加速度センサ等が用いられ、軸受25に生じた加速度を検出する。
軸受温度検出部31及び加速度検出部33は、第一車両11及び第二車両13における各台車17において、車軸23を支持する複数の軸受25それぞれに設置される。
走行位置検出部35、天候検出部37及び外気温検出部39は、図1に示す第一車両11の車体15上部に設けられている。
走行位置検出部35は、例えば、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)の位置検出センサであり、列車の現在の走行位置を検出する。天候検出部37には、天気計等の気象観測機器が用いられ、晴れ、雨、曇等の車両周囲の天候を検出する。外気温検出部39は、軸受温度検出部31と同様のセンサであり、車両周囲の外気温を検出する。
走行位置検出部35、天候検出部37及び外気温検出部39は、列車3が走行する際の車両周囲の環境情報を検出する環境情報検出部40(図2参照)を構成する。環境情報検出部40は、列車3毎に1つ設けられる。
また、第一車両11には異常診断部41及び識別情報記憶部43が設けられる。異常診断部41には、第一車両11と第二車両13における各台車17の軸受25それぞれに配置された軸受温度検出部31及び加速度検出部33が、中継器45を介して接続される。これにより、異常診断部41に、各部に配置された軸受25の軸受温度と加速度の情報が入力される。また、異常診断部41には環境情報検出部40を構成する走行位置検出部35、天候検出部37及び外気温検出部39が接続され、列車3の走行位置の情報、車両周囲の天候及び外気温の情報が入力される。
さらに、異常診断部41は、識別情報記憶部43が接続され、識別情報記憶部43との間で各種情報の送受信が可能となっている。識別情報記憶部43には、詳細を後述する列車3の車両や軸受25等に関する識別情報が記憶されている。
図4は異常診断システム100の機能を説明するブロック図である。
異常診断部41は、基準データ記憶部61と、データ収集部63と、判定部65と、報知部67と、を備える。
基準データ記憶部61は、軸受25の正常状態である場合の、軸受温度検出部31、加速度検出部33及び環境情報検出部40からの各種検出情報、並びに車両情報を含む各軸受25の識別情報が、それぞれ情報種毎に対応付けされた基準データ情報を記憶する。識別情報とは、列車の列車番号、車両の型式、車両内の軸受25の位置等、軸受を特定するための各軸受固有の情報である。
Figure 0007028111000001
表1は、基準データ記憶部61に記憶される基準データ情報のイメージの一例を表示したものである。表1に示すように、基準データ情報は、列車番号、車両型式、軸受位置、走行位置、外気温、天候、加速度、軸受温度の各項目を含む情報である。
列車番号とは、列車3の運行ダイヤ上の識別番号であり、始発駅から終着駅までの運行路と運行時間とを示す列車固有の番号である。この列車番号は、列車3自体を特定するものではなく、使用される車両自体が異なっても変わらない。
車両型式とは、車両形状を示す型式であり、例えば、運転台を有する制御車、モータが配置された電動車、客席を有する普通車等が挙げられる。各型式の車両に応じて、前述した動力伝達部27及び電動機29(図2参照)の有無や、台車の形状等が異なる。
軸受位置とは、診断対象である軸受25の位置を特定する情報で、例えば、診断対象の軸受25が第一車両11又は第二車両13における前後左右のどの位置に配置されたものかを特定する。
走行位置とは、走行中又は停止中の列車3の現在位置情報である。外気温、天候とは、列車3の走行位置における外気温、天候の情報である。加速度とは、列車3の走行位置において正常時の軸受25が受けた加速度の検出値である。軸受温度とは、列車3の走行位置において正常時の軸受25の温度を検出した検出値である。
データ収集部63は、軸受温度検出部31、加速度検出部33及び環境情報検出部40からリアルタイムで検出される各種の検出情報と、識別情報記憶部43からの識別情報とを受信する。データ収集部63は、収集した検出情報及び識別情報を、基準データ記憶部61及び判定部65へ出力する。
判定部65は、入力されたデータ収集部63からの検出情報及び識別情報と、これに対応する基準データ情報とを比較する。判定部65は、入力された検出情報のそれぞれに対応する基準データ情報を基準データ記憶部61から適宜参照して求め、双方の情報を比較する。これにより、診断対象である軸受25に異常が生じたか否かを判定する。また、判定部65は、比較した基準値と検出値との差の大きさに応じて、異常状態を段階的に評価して診断する。
表2は、車両走行時における上記した各項目の検出値と、各軸受の診断結果のイメージを表示したものである。
Figure 0007028111000002
図4に示す判定部65は、診断対象となる列車3の軸受に配置された軸受温度検出部31から検出された軸受温度を、この軸受温度検出部31が検出した軸受と同じ列車番号、同じ車両形式、同じ軸受位置の軸受において、同じ走行位置、同じ外気温、同じ天候のときの基準値を、基準データ記憶部61に記憶された基準データ情報から抽出し、抽出した基準値と比較する。つまり、軸受の軸受温度の検出値を、この軸受の環境情報及び識別情報の項目毎に分類し、この分類された検出値に対応する軸受温度基準値を、基準データの同じ分類項目の情報から求める。求めた軸受温度基準値と検出値とを比較する。そして、軸受温度の検出値と基準値との差が所定の範囲内に収まっているかを判定する。
同様にして、判定部65は、診断対象の列車3の軸受に配置された加速度検出部33から検出された加速度を、この加速度検出部33が検出した軸受と同じ列車番号、同じ車両形式、同じ軸受位置の軸受において、同じ走行位置、同じ外気温、同じ天候のときの基準値を基準データ情報から抽出し、抽出した基準値と比較する。そして、加速度の検出値と基準値との差が所定の範囲内に収まっているかを判定する。
なお、ここでいう「同じ」とは、必ずしも厳密に一致するものに限らず、例えば、略同等と見なせる範囲内であってもよい。例えば、走行位置については±3~5km、気温については±3~5℃等と、ある範囲を設定して、その範囲内であれば同じであると見なすことでもよい。また、基準データ情報が複数存在する場合は、それらの平均値を採用するのが好ましい。
上記のように、検出された軸受温度と加速度の双方が、対応する基準データとの差が所定の範囲内に収まっている場合には、判定部65は、その軸受が「正常」であると判定する。一方、軸受温度と加速度のいずれか一方の差が所定の範囲内に収まっていない場合は「注意」、いずれの差も所定の範囲内に収まっていない場合は「異常」と判定する。ここでいう所定の範囲とは、検出値と基準値との差の範囲に限らず、基準データの値等を閾値として、閾値以下の範囲を正常と判定される範囲に設定してもよい。その場合、基準データの基準値を段階的に増加させた各値を、段階評価の閾値として用いてもよい。これら判定の閾値は、必要に応じて適宜増減調整すればよい。
表2に示す軸受位置1の軸受の診断では、判定の閾値を、基準データの基準値と、基準値を所定割合で増加させた値を段階評価の閾値としている。例えば、加速度は基準値+5Gの値を「注意」レベルの閾値とし、軸受温度は基準値+15℃の値を「注意」レベルの閾値とする。この場合、注意レベルの閾値より大きい項目が1つのみ存在する場合を「注意」、複数存在する場合を「異常」と判定する。
例えば、走行位置1km,20km,40kmにおいては、軸受に生じた加速度の検出値(11G,11G,16G)は、表1に示される対応する基準データの基準値(10G,10G,15G)より僅かに大きい。しかし、軸受に注意を要する注意レベルの閾値より小さい。また、軸受温度の検出値(25℃、40℃、50℃)は、いずれも基準データ(25℃,40℃,50℃)の閾値以下である。そのため、判定部65は、これら各走行位置での軸受を「正常」レベルであると判定する。
これに対して、走行位置10kmにおける軸受位置1の軸受は、生じた加速度の検出値が25Gで閾値(基準値:15G)を超え、注意レベルの閾値(20G)も超えている。軸受温度の検出値は30℃であり、閾値(基準値:30℃)以下である。また、したがって、判定部65は、この走行位置の軸受を「注意」レベルであると判定する。
また、走行位置30kmにおける軸受位置1の軸受は、生じた加速度及び温度の検出値は、いずれも閾値(基準値を所定割合で増加させた値)を超えている。つまり、生じた加速度の検出値は30Gであり、基準値の10Gと注意レベルの閾値(15G)も超えている。また、軸受温度の検出値は60℃であり、基準値(40℃)と注意レベルの閾値(55℃)も超えている。したがって、判定部65は、この走行位置の軸受を「異常」レベルであると判定する。
さらに、走行位置50kmにおける軸受位置1の軸受は、生じた加速度の検出値が11Gであり、閾値(基準値:10G)を僅かに超えるが、注意レベルの閾値(15G)を超えていない。また、軸受温度の検出値は60℃であり、閾値(基準値:40℃)を超え、注意レベルの閾値(55℃)も超えている。したがって、判定部65は、この走行位置の軸受を「注意」レベルであると判定する。
なお、診断対象とする車両の軸受位置2の軸受では、走行位置1km、10kmにおいて、軸受に生じた加速度及び軸受温度の検出値がいずれも基準値以下であることから、診断結果が「正常」となっている。
判定部65は、上記の診断結果の情報を報知部67に出力する。報知部67は、判定部65が診断した診断結果に「異常」や「注意」と判定された軸受が存在する場合、その軸受の診断結果の情報を報知する。例えば、診断結果の情報を、制御車の運転台に設置された表示デバイスへの表示や、スピーカからの音による警報等によって、車両の運転士等に報知する。運転士は、この診断結果の情報から、早期に適切な対処が行えるようになる。
また、判定部65は、診断の結果、軸受が正常であった場合に、その診断時の各種情報を基準データ情報にフィードバックさせ、基準データを更新する。具体的には、診断対象の車両の各軸受温度検出部31から検出された軸受温度、及び各加速度検出部33から検出された加速度を、環境情報検出部40から検出された環境情報、及び識別情報記憶部43に登録された識別情報と対応させて、基準データ記憶部61の基準データに加える。
この基準データの更新により、基準データ記憶部61では、記憶されている基準データ情報を、車両走行時に新たな基準データ情報が追加された情報に更新できる。更新処理は、例えば、診断に用いる基準値(閾値)を、現在の基準値と、この基準値に対応して、新たに追加される検出値と、の平均値に再設定する。これ以外にも種々の更新処理が可能であるが、いずれの場合でも、基準データ情報の信頼度が向上し、より正確な診断が可能となる。また、「正常」と判定された場合にも運転士への報知を行ってもよい。
次に、上記した異常診断システム100の異常診断部41の動作をさらに詳細に説明する。図5は異常診断システムの動作を説明するタイミングチャートである。
(基準データ情報の作成)
まず、診断対象とする列車3の基準データ情報を作成する。具体的には、図5の基準データ作成段階で示すように、列車を走行させて、この列車が備える軸受温度検出部31、加速度検出部33及び環境情報検出部40から検出される各種出力信号の検出情報を、識別情報記憶部43に記憶された識別情報とともにデータ収集部63でリアルタイムに収集する。
データ収集部63は、収集された検出情報及び識別情報を基準データ記憶部61に出力する。基準データ記憶部61は、入力された検出情報を、識別情報、走行位置、外気温、天候等の項目毎に分類してマッピングデータを生成する。そして、データ収集部63は、項目毎に分類されたマッピングデータを、基準データ情報として基準データ記憶部61に登録する。なお、基準データ作成段階では、通常の列車運行時に、軸受温度検出部31、加速度検出部33及び環境情報検出部40から検出される情報、及び識別情報を用いて、基準データ情報を作成する以外にも、基準データ情報作成のために列車を走行させてもよい。
(異常診断)
基準データ情報の作成後、通常の列車運行時における軸受の異常診断を行う。具体的には、図5の診断段階に示すように、通常の列車運行時に検出される軸受温度検出部31、加速度検出部33及び環境情報検出部40からの出力信号である検出情報、及び識別情報を、データ収集部63で収集する。データ収集部63は、収集した検出情報を判定部65に出力する。
判定部65は、入力された検出情報及び識別情報に対応する基準データ情報を、基準データ記憶部61を参照して求め、前述した軸受の異常診断を実施する。これによる診断結果は、報知部67に出力される。
また、判定部65は、診断結果が「正常」である場合に、入力された軸受温度検出部31、加速度検出部33及び環境情報検出部40からの検出情報を、識別情報、走行位置、外気温、天候等の情報と対応付けして、基準データ記憶部61に出力する。
基準データ記憶部61は、判定部65から入力された各種の検出情報を、基準データ情報に追加して、基準データ情報を更新する。上記の検出情報の取得から診断結果の出力と基準データ情報の更新までを、列車の終点まで繰り返し実施する。
以上、本実施形態に係る異常診断システム100によれば、列車や車両の種別、軸受位置、走行時における走行経路上の位置、走行時の外気温、天候等の環境情報を含む走行条件に応じて、軸受の環境状態を細かく分類し、それぞれ分類された環境の項目毎に軸受の検出情報が記憶される。このため、診断する軸受の現在の環境状態にきめ細かに対応して、適正な基準値、閾値を設定でき、軸受25の診断をより適正に実施できる。よって、軸受温度又は軸受に生じた加速度の検出値だけで軸受の異常診断を行う場合と比較して、診断結果の信頼性を向上できる。
また、判定部65が、検出値と基準値との差や、検出値と設定された閾値との比較に応じて段階的に異常状態を診断するので、発生した異常の程度に応じて適切に対応することができる。
また、軸受25を列車3の車体15に支持させるハウジング50に軸受温度検出部31と加速度検出部33を設けることで、軸受温度及び軸受25に生じた加速度を正確に検出できる。
上記した実施形態では、異常診断システム100を図1に示す列車3の第一車両11に全て搭載された態様を例示したが、異常診断システム100は、各種の検出部と車両側通信部が列車3に搭載されて、異常診断を基地局で行う態様としてもよい。
次に、基地局から車両の異常診断を行う異常診断システム200の他の実施形態を説明する。この場合、車両は1つの列車に限らず、複数の列車を同時に異常診断できる。
図6は、異常診断システムの他の実施形態を説明する概略構成図である。図中の符号は前述の構成要素と同一のものについては、同一の符号を付与することで、その説明を省略又は簡単化する。
本実施形態では、列車3の運行の管理等を行う基地局71に異常診断部41が設置される。基地局71は、通信部73を備えており、各列車3は、通信部73と通信可能な車両側通信部75をそれぞれ備えている。これにより、基地局71と各列車3とは、通信部73と車両側通信部75によって、各種データの送受信を個別に行うことが可能なっている。
この場合は、各列車3の運行に伴って、それぞれの車両に設けられた軸受温度検出部31、加速度検出部33及び環境情報検出部40によって検出された検出情報及び識別情報が、車両側通信部75から基地局71の通信部73へ送信される。
基地局71の通信部73は、受信情報を異常診断部41のデータ収集部63に出力する。異常診断部41は、前述したように、受信した検出情報及び識別情報と、これに対応する基準データ記憶部61の基準データ情報とを判定部65で比較して、診断対象の列車3の各軸受25に対する異常診断を行う。判定部65による診断結果は報知部67へ出力され、報知部67は、通信部73を通じて診断対象の列車3に診断結果を送信する。
診断対象の列車3においては、車両側通信部75で受信された診断結果に応じた報知がなされる。また、基地局71の異常診断部41は、診断結果に異常が生じた場合にのみ、診断対象の列車に診断結果を送信してもよい。その場合、報知が必要なときにのみ診断結果が列車3に送信されるので、無用な送受信や信号処理をなくすことができる。
このように、本実施形態によれば、列車3の軸受に生じる異常を基地局71で診断し、その診断結果が通信を介して列車3に報知されるため、列車3の軸受の遠隔診断が可能となる。これにより、複数の列車3を異常診断する場合でも、車両側に検出部や車両側通信部等の最小限の設備を設けるだけで済み、設備コストを低減できる。また、基地局71で複数の列車3の異常診断結果を統括して管理でき、異常を生じた列車の運行を調整する等、利便性が向上する。
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
例えば、上記例では車両の輪軸の車軸を支持する軸受を診断する構成例を示したが、車軸支持用の軸受に限らず、電動機内の軸受など、車両で使用される他の軸受であってもよい。
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 車両に使用される軸受の状態を監視して、前記軸受の異常診断を行う軸受診断システムであって、
前記軸受の軸受温度を検出する軸受温度検出部と、
前記軸受に生じる加速度を検出する加速度検出部と、
前記車両周囲の環境情報を検出する環境情報検出部と、
前記軸受の識別情報が記憶された識別情報記憶部と、
前記軸受の正常状態における軸受温度と前記軸受の加速度の各検出値を、前記環境情報及び前記識別情報に対応して分類した基準データ情報を記憶する基準データ記憶部と、
前記軸受の異常診断を行う異常診断部と、
を備え、
前記異常診断部は、
診断対象車両の前記軸受の軸受温度及び加速度の各検出値を、前記診断対象車両の前記環境情報検出部により検出された前記環境情報と前記識別情報の項目毎に分類し、
分類された前記軸受温度の検出値に対応する軸受温度基準値と、前記加速度の検出値に対応する加速度基準値を、前記基準データ情報における同じ分類項目の情報から求め、
前記軸受温度の検出値と前記軸受温度基準値との差、及び前記加速度の検出値と前記加速度基準値との差を、それぞれ予め定めた閾値と比較した結果に応じて前記軸受を診断する、
軸受の異常診断システム。
この軸受の異常診断システムによれば、軸受温度と加速度の各検出値を、車両周囲の環境情報や識別情報の各種項目に分類して、分類項目毎に設定される基準値と比較して、軸受の異常診断を行っている。そのため、単に軸受の温度や軸受に生じた加速度を閾値と比較だけで診断する場合と比較して、軸受の診断をより適切に行うことができ、診断結果の信頼性を向上できる。
(2) 前記環境情報は、前記車両の走行位置、走行時の外気温、走行時の天候の少なくともいずれかの分類項目の情報を含む、(1)に記載の軸受の異常診断システム。
この軸受の異常診断システムによれば、車両の走行位置、走行時の外気温、天走行時の天候等の項目毎に、各検出値を基準値と比較するため、環境状況に応じたより適切な軸受の診断を行うことができる。
(3) 前記識別情報は、前記車両の個体番号、前記車両の型式、前記車両内における前記軸受の位置の少なくともいずれかの分類項目の情報を含む、(1)又は(2)に記載の軸受の異常診断システム。
この軸受の異常診断システムによれば、車両の個体番号、車両の型式、車両内における軸受の位置等の項目毎に、各検出値を基準値と比較するため、軸受毎により適切な診断を行うことができる。
(4) 前記異常診断部は、前記軸受温度の検出値と該検出値に対応する前記軸受温度基準値との差、及び前記加速度の検出値と該検出値に対応する前記加速度基準値との差の大きさに応じて、段階的に異常状態を診断する(1)~(3)のいずれか一つに記載の軸受の異常診断システム。
この軸受の異常診断システムによれば、検出値と基準値との差の大きさに応じて軸受の異常状態を段階的に診断するので、発生した異常の程度に応じて、より適切に対応が可能となる。
(5) 前記異常診断部は、前記軸受温度の検出値が前記軸受温度基準値を超え、且つ前記加速度の検出値が前記加速度基準値を超えるか、又は、いずれか一方の検出値のみが前記軸受温度基準値又は前記加速度基準値を超えるかに応じて、段階的に異常状態を診断する(4)に記載の軸受の異常診断システム。
この軸受の異常診断システムによれば、発生した異常の数に応じて、より適切に対応が可能となる。
(6) 前記異常診断部は、前記軸受が正常状態であると診断した場合に、当該軸受の前記軸受温度と前記加速度の各検出値を、前記車両周囲の前記環境情報及び前記識別情報に対応させて前記基準データ記憶部に記憶させ、前記基準データ情報を更新する(1)~(5)のいずれか一つに記載の軸受の異常診断システム。
この軸受の異常診断システムによれば、異常診断を行いながら基準データ情報の蓄積が可能となり、更新された最新の基準値を用いて異常診断が行える。そのため、診断結果の信頼性をより高められる。
(7) 前記異常診断部が診断した前記軸受の診断結果を、前記車両側に報知する報知部を備える(1)~(6)のいずれか一つに記載の軸受の異常診断システム。
この軸受の異常診断システムによれば、軸受の診断結果を車両側に報知することで、発生した異常にいち早く対応することができる。
(8) 前記軸受温度検出部と前記加速度検出部は、前記軸受を前記車両に支持させるハウジングに一体に設けられた(1)~(7)のいずれか一つに記載の軸受の異常診断システム。
この軸受の異常診断システムによれば、軸受への検出部の設置が煩雑とならず、システムを簡便に構築できる。しかも、各軸受で同じ条件で軸受温度と加速度が検出されるため、軸受温度及び加速度の検出精度のばらつきが抑えられる。
(9) 前記車両に、前記軸受温度検出部と、前記加速度検出部と、前記環境情報検出部と、前記識別情報記憶部とが配置され、
前記車両から離れた基地局に、前記基準データ記憶部と、前記異常診断部とが配置され、
前記基地局と前記車両との間で情報を通信する通信部を備える、
(1)~(8)のいずれか一つに記載の軸受の異常診断システム。
この軸受の異常診断システムによれば、車両の軸受に生じる異常を基地局で診断した診断結果が、通信を介して車両に報知されるため、車両の軸受を遠隔診断できる。これにより、複数の車両を異常診断する場合でも、車両側に検出部や車両側通信部等の最小限の設備を設けるだけで済み、設備コストを低減できる。
(10) 車両に使用される軸受の状態を監視して、前記軸受の異常診断を行う軸受診断方法であって、
前記軸受の軸受温度を検出する軸受温度検出ステップと、
前記軸受に生じる加速度を検出する加速度検出ステップと、
前記車両周囲の環境情報を検出する環境情報検出ステップと、
前記軸受の正常状態における軸受温度と前記軸受の加速度の各検出値を、前記車両周囲の環境情報及び前記軸受の識別情報に対応して分類した基準データ情報を取得する基準データ取得ステップと、
診断対象車両の前記軸受の軸受温度及び加速度の各検出値を、前記診断対象車両の前記環境情報と前記識別情報の項目毎に分類し、
分類された前記軸受温度の検出値に対応する軸受温度基準値と、前記加速度の検出値に対応する加速度基準値を、前記基準データ情報における同じ分類項目の情報から求め、
前記軸受温度の検出値と前記軸受温度基準値との差、及び前記加速度の検出値と前記加速度基準値との差を、それぞれ予め定めた閾値と比較した結果に応じて前記軸受の異常診断を行う異常診断ステップと、
を有する、
軸受の異常診断方法。
この軸受の異常診断方法によれば、軸受温度と加速度の各検出値を、車両周囲の環境情報や識別情報の各種項目に分類して、分類項目毎に設定される基準値と比較して、軸受の異常診断を行う。そのため、単に軸受の温度や軸受に生じた加速度を閾値と比較だけで診断する場合と比較して、軸受の診断をより適切に行うことができ、診断結果の信頼性を向上できる。
3 列車
11 第一車両(車両)
13 第二車両(車両)
25 軸受
31 温度センサ(軸受温度検出部)
33 加速度センサ(加速度検出部)
40 環境情報検出部
43 識別情報記憶部
50 ハウジング
61 基準データ記憶部
65 判定部
100,200 異常診断システム

Claims (10)

  1. 車両に使用される軸受の状態を監視して、前記軸受の異常診断を行う軸受診断システムであって、
    前記軸受の軸受温度を検出する軸受温度検出部と、
    前記軸受に生じる加速度を検出する加速度検出部と、
    前記車両周囲の環境情報を検出する環境情報検出部と、
    前記軸受の識別情報が記憶された識別情報記憶部と、
    前記軸受の正常状態における軸受温度と前記軸受の加速度の各検出値を、前記環境情報及び前記識別情報に対応して分類した基準データ情報を記憶する基準データ記憶部と、
    前記軸受の異常診断を行う異常診断部と、
    を備え、
    前記異常診断部は、
    診断対象車両の前記軸受の軸受温度及び加速度の各検出値を、前記診断対象車両の前記環境情報検出部により検出された前記環境情報と前記識別情報の項目毎に分類し、
    分類された前記軸受温度の検出値に対応する軸受温度基準値と、前記加速度の検出値に対応する加速度基準値を、前記基準データ情報における同じ分類項目の情報から求め、
    前記軸受温度の検出値と前記軸受温度基準値との差、及び前記加速度の検出値と前記加速度基準値との差を、それぞれ予め定めた閾値と比較した結果に応じて前記軸受を診断する、
    軸受の異常診断システム。
  2. 前記環境情報は、前記車両の走行位置、走行時の外気温、走行時の天候の少なくともいずれかの分類項目の情報を含む、請求項1に記載の軸受の異常診断システム。
  3. 前記識別情報は、前記車両の個体番号、前記車両の型式、前記車両内における前記軸受の位置の少なくともいずれかの分類項目の情報を含む、請求項1又は2に記載の軸受の異常診断システム。
  4. 前記異常診断部は、前記軸受温度の検出値と該検出値に対応する前記軸受温度基準値との差、及び前記加速度の検出値と該検出値に対応する前記加速度基準値との差の大きさに応じて、段階的に異常状態を診断する請求項1~3のいずれか一項に記載の軸受の異常診断システム。
  5. 前記異常診断部は、前記軸受温度の検出値が前記軸受温度基準値を超え、且つ前記加速度の検出値が前記加速度基準値を超えるか、又は、いずれか一方の検出値のみが前記軸受温度基準値又は前記加速度基準値を超えるかに応じて、段階的に異常状態を診断する請求項4に記載の軸受の異常診断システム。
  6. 前記異常診断部は、前記軸受が正常状態であると診断した場合に、当該軸受の前記軸受温度と前記加速度の各検出値を、前記車両周囲の前記環境情報及び前記識別情報に対応させて前記基準データ記憶部に記憶させ、前記基準データ情報を更新する請求項1~5のいずれか一項に記載の軸受の異常診断システム。
  7. 前記異常診断部が診断した前記軸受の診断結果を、前記車両側に報知する報知部を備える請求項1~6のいずれか一項に記載の軸受の異常診断システム。
  8. 前記軸受温度検出部と前記加速度検出部は、前記軸受を前記車両に支持させるハウジングに一体に設けられた請求項1~7のいずれか一項に記載の軸受の異常診断システム。
  9. 前記車両に、前記軸受温度検出部と、前記加速度検出部と、前記環境情報検出部と、前記識別情報記憶部とが配置され、
    前記車両から離れた基地局に、前記基準データ記憶部と、前記異常診断部とが配置され、
    前記基地局と前記車両との間で情報を通信する通信部を備える、
    請求項1~8のいずれか一項に記載の軸受の異常診断システム。
  10. 車両に使用される軸受の状態を監視して、前記軸受の異常診断を行う軸受診断方法であって、
    前記軸受の軸受温度を検出する軸受温度検出ステップと、
    前記軸受に生じる加速度を検出する加速度検出ステップと、
    前記車両周囲の環境情報を検出する環境情報検出ステップと、
    前記軸受の正常状態における軸受温度と前記軸受の加速度の各検出値を、前記車両周囲の環境情報及び前記軸受の識別情報に対応して分類した基準データ情報を取得する基準データ取得ステップと、
    診断対象車両の前記軸受の軸受温度及び加速度の各検出値を、前記診断対象車両の前記環境情報と前記識別情報の項目毎に分類し、
    分類された前記軸受温度の検出値に対応する軸受温度基準値と、前記加速度の検出値に対応する加速度基準値を、前記基準データ情報における同じ分類項目の情報から求め、
    前記軸受温度の検出値と前記軸受温度基準値との差、及び前記加速度の検出値と前記加速度基準値との差を、それぞれ予め定めた閾値と比較した結果に応じて前記軸受の異常診断を行う異常診断ステップと、
    を有する、
    軸受の異常診断方法。
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