JP7018355B2 - トンネル切羽監視システム、及びトンネル切羽監視方法 - Google Patents
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Description
(1)トンネル切羽の状態を観測することができるため、安定した掘削と安全な施工を実現することができる。
(2)レーダーアンテナを利用することによってトンネル切羽全体の変位を面的に計測することができ、この結果、トンネル切羽全体の状態を監視することができる。
(3)粉塵が多い掘削後やコンクリート吹付後であっても、トンネル切羽の変位を計測することができ、この結果、発破時を除く一連の掘削サイクルの中で常に(リアルタイムで)トンネル切羽の状態を観測することができる。
(4)従来、トンネル切羽へのコンクリート吹付は、施工者の経験と感覚、あるいは用意されるコンクリート量によってその出来形を管理していた。レーダーアンテナによって実績吹付厚を管理すれば、より適切なコンクリート吹付を行うことができ、より効果的な補助工法とすることができる。
(5)トンネル切羽の変位に応じて吹付コンクリートの計画吹付厚を設定し、これにしたがってコンクリート吹付を行うことで、より効率的かつ効果的なコンクリート吹付を行うことができる。
本願発明トンネル切羽監視システムは、トンネル内周面に設置された観測手段によってトンネル切羽の状態を監視するものである。ここで「トンネル切羽」とは、図1(a)のトンネル縦断面図に示すように掘削中のトンネルにおける最先端(最坑奥)にある地山面である。なお便宜上、掘削方向に合わせて、トンネル切羽に近づく方向を「前方」、坑口(掘削中のトンネル入り口)に近づく方向を「後方」ということとする。また、観測手段が設置される「トンネル内周面」とは、図1(b)のトンネル横断面図に示すように天端~肩部~側壁部を含む(土平を含んでもよい)面のことであり、いわばトンネル内空と地山との境界面である。
観測手段110は、比較的長い波長(例えば、数mm~数百mm)の電波を照射するとともにその反射波を受信するレーダーアンテナを用いたものであり、固定した(移動しない)1のレーダーアンテナを観測手段110とすることもできるが、図3に示すように合成開口レーダー(SAR:Synthetic Aperture Radar)として形成することが望ましい。なお、観測手段110を合成開口レーダーとして形成するには、図3(a)に示す「非動作型」とすることもできるし、図3(b)に示す「動作型」とすることもできる。
解析手段120は、観測手段110(レーダーアンテナ111)が受信した反射波を解析することでトンネル切羽の変位を求める手段である。解析手段120が反射波を解析する手法としては種々の手法を採用することができ、例えば干渉SARによってトンネル切羽の変位を求めることもできる。
吹付厚設定手段130は、鏡吹付けの計画吹付厚を設定するものであり、解析手段120と同様、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。具体的には、図2に示すように解析手段120が求めたトンネル切羽の変位データを受け取り、その結果に基づいてリアルタイムに鏡吹付けの計画吹付厚を設定する。このとき、適正吹付厚記憶手段140が記憶する「適正吹付厚」と、解析手段120によるトンネル切羽の変位データを照らし合わせることで計画吹付厚を設定するとよい。この適正吹付厚は、過去の実績に基づいてあらかじめ設定されるものであり、トンネル切羽の変位と、掘削断面積や掘削パターン(支保分類)、地質、湧水状況といった条件に応じて設定されるものである。すなわち、当該トンネル(掘削中のトンネル)に合致する条件及びトンネル切羽の変位データを適正吹付厚記憶手段140に照会することで適正吹付厚を取得し、この適正吹付厚をそのまま計画吹付厚とし、あるいは安全率を乗じたうえで計画吹付厚とするわけである。なお計画吹付厚は、トンネル切羽全体を一様に設定してもよいし、例えば図4に示すような小領域ごとに設定することもできる。ここで設定された計画吹付厚は、後述する出力手段160に出力してもよい。
吹付厚管理手段150は、鏡吹付けの計画吹付厚に対する実績吹付厚を管理するものであり、いわば鏡吹付けの出来形管理(進捗管理)を行う手段である。この吹付厚管理手段150も、解析手段120や吹付厚設定手段130と同様、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。具体的には、図2に示すように吹付厚設定手段130が設定した計画吹付厚を受け取るとともに、解析手段120が求めた実績吹付厚を受け取り、この計画吹付厚と実績吹付厚を照らし合わせる。そして、実績吹付厚が計画吹付厚に到達した(あるいは、計画吹付厚以上になった)時点で、その到達したという情報(以下、「出来形達成情報」という。)を出力手段160に出力する。このとき、トンネル切羽全体に対して出来形達成情報を出力することもできるが、図4に示すような小領域ごとに出来形達成情報を出力するとより適正な鏡吹付けを行うことができて好適となる。小領域ごとに出来形達成情報を出力する場合、解析手段120が小領域ごとに実績吹付厚を求め、吹付厚設定手段130が小領域ごとに計画吹付厚を設定するとよい。なお出力手段160は、鏡吹付けを行っている場所(つまり、トンネル切羽前)に設置され、例えばディスプレイなど小領域ごとに出来形達成情報を表示するものであり、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。
妥当性確認手段170は、吹付厚設定手段130が設定した計画吹付厚の妥当性を確認するものであり、解析手段120や吹付厚設定手段130などと同様、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。具体的には、鏡吹付け施工後のトンネル切羽の変位データを受け取り、その変位があらかじめ設定した許容値以内であればその計画吹付厚は適切と判断し、その変位が許容値を超えるときはその計画吹付厚は不適と判断する。妥当性確認手段170が適否判断した結果は、今後の適正施工のため適正吹付厚記憶手段140が記憶する適正吹付厚に反映させるとよい。また妥当性確認手段170が計画吹付厚を不適としたときは、その情報を出力手段160に表示し、さらなる鏡吹付けを行うよう作業者に促すこともできる。
移動手段180は、観測手段110を前方に(つまり、トンネル切羽に接近するように)移動させるとともに、観測手段110を後方に(つまり、トンネル切羽から後退するように)移動させるものである。トンネル切羽を観測するときは、図5(a)に示すように観測手段110をできるだけトンネル切羽の近くに配置することが望ましい。他方、トンネル切羽を発破するときは、図5(b)に示すように観測手段110はトンネル切羽から遠ざける方がよい。移動手段180は、観測時には観測手段110をトンネル切羽の近くに配置し、発破時にはトンネル切羽から遠ざけることができるものである。
次に本願発明のトンネル切羽監視方法について図を参照しながら説明する。なお、本願発明のトンネル切羽監視方法は、ここまで説明したトンネル切羽監視システム100を使用して行う方法であり、したがってトンネル切羽監視システム100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明のトンネル切羽監視方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「1.トンネル切羽監視システム」で説明したものと同様である。
110 (トンネル切羽監視システムの)観測手段
111 (観測手段の)レーダーアンテナ
120 (トンネル切羽監視システムの)解析手段
130 (トンネル切羽監視システムの)吹付厚設定手段
140 (トンネル切羽監視システムの)適正吹付厚記憶手段
150 (トンネル切羽監視システムの)吹付厚管理手段
160 (トンネル切羽監視システムの)出力手段
170 (トンネル切羽監視システムの)妥当性確認手段
180 (トンネル切羽監視システムの)移動手段
Claims (8)
- トンネル切羽の状態を監視するシステムにおいて、
トンネル切羽後方のトンネル内周面に設置され、トンネル切羽に電波を照射するとともにトンネル切羽で散乱した反射波を受信するレーダーアンテナからなる観測手段と、
前記レーダーアンテナが受信した反射波を解析することでトンネル切羽の変位を求める解析手段と、
を備えたことを特徴とするトンネル切羽監視システム。 - 前記解析手段が求めたトンネル切羽の変位に基づいて、トンネル切羽を分割した小領域ごとに吹付けコンクリートの計画吹付厚を設定する吹付厚設定手段を、さらに備えた、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル切羽監視システム。 - 前記解析手段が、コンクリート吹付け前の反射波と、コンクリート吹付け開始後の反射波と、に基づいて吹付けコンクリートの実績吹付厚を求め、
前記実績吹付厚が前記計画吹付厚に達したときに、前記小領域ごとに吹付けコンクリートの出来形達成情報を出力する吹付厚管理手段を、さらに備えた
ことを特徴とする請求項2記載のトンネル切羽監視システム。 - トンネル内周面に固定されたレールに沿って、前記レーダーアンテナを前後移動させる移動手段を、さらに備え、
前記移動手段によって前方に移動させると前記レーダーアンテナがトンネル切羽に接近し、前記移動手段によって後方に移動させると前記レーダーアンテナがトンネル切羽から後退する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のトンネル切羽監視システム。 - 前記観測手段が、一列又は略一列に配置された複数のレーダーアンテナによって形成される非動作型の合成開口レーダーである、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のトンネル切羽監視システム。 - トンネル切羽の状態を監視する方法において、
トンネル切羽後方のトンネル内周面に設置されたレーダーアンテナが、連続して、定期的に、又は断続的に、トンネル切羽に電波を照射するとともにトンネル切羽で散乱した反射波を受信する観測工程と、
前記レーダーアンテナが受信した反射波を解析することでトンネル切羽の変位を求める解析工程と、を備えた、
ことを特徴とするトンネル切羽監視方法。 - 前記解析工程で求めたトンネル切羽の変位に基づいて、トンネル切羽を分割した小領域ごとに吹付けコンクリートの計画吹付厚を設定する吹付厚設定工程と、
コンクリート吹付け前に前記レーダーアンテナが受信した反射波と、コンクリート吹付け開始後に前記レーダーアンテナが受信した反射波と、に基づいて吹付けコンクリートの実績吹付厚を求める吹付厚計測工程と、
前記小領域ごとの吹付けコンクリートの出来形達成情報に基づいて、トンネル切羽にコンクリートの吹付けを行う鏡吹付け工程と、をさらに備え、
前記吹付けコンクリートの出来形達成情報は、前記実績吹付厚が前記計画吹付厚に達したときに出力される、
ことを特徴とする請求項6記載のトンネル切羽監視方法。 - トンネル切羽の発破後、又はズリ搬出後に、トンネル切羽後方のトンネル内周面に固定されたレールに沿って前記レーダーアンテナをトンネル切羽に接近するように移動させる観測準備工程と、
トンネル切羽を発破する直前に、前記レールに沿って前記レーダーアンテナをトンネル切羽から後退するように移動させる退避工程と、をさらに備え、
前記観測工程では、トンネル切羽に接近した前記レーダーアンテナが電波を照射するとともに反射波を受信する、
ことを特徴とする請求項6又は請求項7記載のトンネル切羽監視方法。
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