JP7018154B1 - ウィルス不活化特性を有する光触媒材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】人体に安全で、実用性が高く、ウィルスを不活化する特性を有する光触媒材料及びその製造方法、並びに前記光触媒材料を用いたウィルス不活化装置を提供すること。【解決手段】ウィルス不活化特性を有する光触媒材料に用いることができる、表面に結晶性酸化チタン皮膜が形成された金属チタン材料又はチタン合金材料の製造方法であり、金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン化合物を形成させ、この金属チタン材料又はチタン合金材料を、金属チタンにエッチング性を有しない電解液中において、火花放電が発生しない陽極酸化処理に供し、得られた陽極酸化処理を施した金属チタン材料又はチタン合金材料を、大気雰囲気、酸素ガスと窒素ガスとを混合させた雰囲気及び酸素ガス雰囲気よりなる群から選択された少なくとも1種の雰囲気下で550℃以上の温度で加熱処理に供して結晶性酸化チタン皮膜を形成して光触媒材料を製造する。【選択図】なし

Description

本発明は、ウィルス不活化特性を有する光触媒材料の製造方法、並びにウィルス不活化特性を有する光触媒材料に関する。また、前記光触媒材料を用いたウィルス不活化装置に関する。
近年、人体の健康に悪影響を及ぼす新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)等が発見され、その感染拡大が日本のみならず、海外においても社会的に大きな影響を与えている。
前記ウィルスを不活化する技術として、酸化チタン光触媒を用いることが知られている。酸化チタン光触媒は、比較的安価で化学安定性に優れ、人体に無害で、有機化合物分解性や抗菌性能等に関して、高い光触媒活性を示すことから、広く用いられている。
酸化チタン光触媒にバンドギャップ以上の光照射がなされると、価電子帯の電子が伝導帯に励起され、価電子帯に正孔が生成される、このようにして生成された正孔は強い酸化力を有する。この正孔の酸化力により水分子が酸化され、酸化力に富んだOHラジカルが生成される。このOHラジカルによりウィルスを不活化させることができる。
例えば、特許文献1には、銅を含有するアナターゼ型酸化チタンからなるウィルスの不活化剤が開示されている。実際の適用を図るためには、この不活化剤を塗料用バインダーに混ぜ込んだ水溶性塗料として利用するが、酸化チタン自体は、人体に対して安全であるが、銅は人体に有害であり、また、光触媒反応は、表面反応であるために、塗料用バインダーに埋没した大部分のアナターゼ型酸化チタンは、ウィルスの不活化反応に寄与できないことや皮膜の密着性や耐久性が劣る等という問題点があった。
また、特許文献2には、ルチル型酸化チタンと銅化合物とを水熱処理した固形物を用いたウィルスの不活化剤が開示されている。実際の適用を図るためには、塗料として利用するものであるが、酸化チタン自体は、安全であるが銅は人体に有害であり、また、光触媒反応は、表面反応であるために、塗料用バインダーに埋没した大部分のルチル型酸化チタンは、ウィルスの不活化反応に寄与できないことや皮膜の密着性や耐久性が劣る等という問題点があった。
特開2006-232729号公報 特開2018-111063号公報
そこで、本発明の目的は、上記従来の課題を解決するためである。具体的には、本発明は人体に安全で、実用性が高く、ウィルスを不活化する特性を有する光触媒材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、前記光触媒材料を用いたウィルス不活化装置を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討をした所、以下の製造方法にて作製される光触媒材料は、人体に安全で、実用性が高く、ウィルス不活化特性の高い光触媒材料であることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、
[1]ウィルス不活化特性を有する光触媒材料に用いることができる、表面に結晶性酸化チタン皮膜が形成された金属チタン材料又はチタン合金材料の製造方法であって、
(1)金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン化合物を形成させる工程
(2)前記工程(1)で得られた表面にチタン化合物が形成された金属チタン材料又はチタン合金材料を、金属チタンにエッチング性を有しない電解液中において、火花放電が発生しない陽極酸化処理に供する工程
(3)前記工程(2)で得られた陽極酸化処理を施した金属チタン材料又はチタン合金材料を、大気雰囲気、酸素ガスと窒素ガスとを混合させた雰囲気、及び酸素ガス雰囲気よりなる群から選択された少なくとも1種の雰囲気下で、550℃以上の温度で加熱処理に供し、次いで大気雰囲気中で、再度加熱処理に供して、アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンとの混合物である結晶性酸化チタン皮膜を形成する工程
を含むことを特徴とする製造方法
]前記工程(1)の前処理として、ブラスト処理及び化学的エッチング処理よりなる群から選択された少なくとも1種の粗面化処理を行う、前記[1]記載の製造方法、
]前記工程(1)で形成されるチタン化合物が、チタン窒化物、チタン炭化物、チタン炭窒化物及びチタンホウ窒化物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、前記[1]又は[2]に記載の製造方法、
]前記工程(1)が、酸素トラップ剤を用いて、窒素ガス雰囲気下で、加熱処理を行うことにより、金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン窒化物を形成させる工程である、前記[1]~[]のいずれかに記載の製造方法、
]前記工程(1)が、CVD、熱CVD、RFプラズマCVD、PVD、溶射、イオンプレーティング及びスパッタリングよりなる群から選択される少なくとも1種の処理を行うことにより、金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン窒化物、チタン炭化物、チタン炭窒化物及びチタンホウ窒化物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を形成させる工程である、前記[1]~[]のいずれかに記載の製造方法、
]前記工程(2)で得られた陽極酸化処理に用いる電解液が、金属チタンにエッチング性を有しないリン酸、有機酸及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する、前記[1]~[5]のいずかに記載の製造方法、
]前記工程(3)の加熱処理の温度が550~750℃である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法、
]前記工程(3)の加熱処理の時間が、30時間以下である、前記[]に記載の製造方法
]前記[1]~[]のいずれかに記載の製造方法により製造される、表面にアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンとの混合物である結晶性酸化チタン皮膜が形成された金属チタン材料又はチタン合金材料を用いることを特徴とする、ウィルス不活化特性を有する光触媒材料の製造方法
10]前記[]記載の製造方法により製造されるウィルス不活化特性を用いることを特徴とする、光触媒材料を用いた、ウィルス不活化装置の製造方法
に関する。
本発明は、人体に安全で、バインダー等を使用せず、金属チタン表面を結晶性酸化チタンを形成させた材料であるために、反応性が高く、皮膜の密着性や耐久性において優れる実用性が高く、ウィルスを不活化する特性を有する光触媒材料を金属チタン、チタン合金表面上に製造することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明でいうウィルス不活化特性を有する光触媒材料は、表面に結晶性酸化チタン皮膜が形成された金属チタン材料又はチタン合金材料(以下、本発明の材料ともいう。)をいう。
対象となるウィルスの種類としては、ヒト、非ヒト動物(家畜動物、ペット動物など)に対して有害なウィルスであれば特に限定はない。
また、前記ウィルス不活化特性は、例えば、JIS R 1706及びJIS R 1756で規定されている手法等の各種手法に基づいて確認することができる。
本発明の材料の製造方法としては、下記の2つの方法が挙げられる。
第一の製造方法は、
(1)金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン化合物を形成させる工程
(2)前記工程(1)で得られた表面にチタン化合物が形成された金属チタン材料又はチタン合金材料を、金属チタンにエッチング性を有しない電解液中において、火花放電が発生しない陽極酸化処理に供する工程
(3)前記工程(2)で得られた陽極酸化処理を施した金属チタン材料又はチタン合金材料を、大気雰囲気、酸素ガスと窒素ガスとを混合させた雰囲気、及び酸素ガス雰囲気よりなる群から選択された少なくとも1種の雰囲気下で、550℃以上の温度で加熱処理に供して、結晶性酸化チタン皮膜を形成する工程
を含むことを特徴とする。
第二の製造方法は、
(1)金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン化合物を形成させる工程
(2’)前記工程(1)で得られた表面にチタン化合物が形成された金属チタン材料又はチタン合金材料を、硫酸、リン酸及び過酸化水素を含み、かつ金属チタンにエッチング性を有する混合液中において火花放電が発生する陽極酸化処理に供する工程
を含むことを特徴とする。
工程(1):金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン化合物を形成する工程
第一の製造方法と第二の製造方法とでは、工程(1)は共通する。
本工程(1)では、金属チタン材料又はチタン合金材料に対する陽極酸化処理の前工程としてチタン化合物を形成させる。具体的には、前記材料表面にある金属チタン材料又はチタン合金材料をチタン化合物に変化させる。
本発明に用いられる金属チタン材料又はチタン合金材料とは、ウィルス不活化特性を発揮できるように、表面の一部又は表面全体に金属チタン又はチタン合金を有する材料をいう。
前記金属チタン材料又はチタン合金材料は、材料全体が金属チタン又はチタン合金材料で構成されていてもよい。前記チタン合金材料としては、Ti-6Al-4V、Ti-5Al-2.5Sn、Ti-8Al-1Mo-1V、Ti-0.15Pd等が挙げられるが、その種類については、特に限定されない。
前記金属チタン材料又はチタン合金材料の形状としては、特に限定はないが、例えば、板状、棒状、パイプ状、ホイル状、線状、メッシュ状、スポンジ状等が挙げられる。
前記チタン化合物としては、チタン窒化物、チタン炭化物、チタン炭窒化物、チタンホウ窒化物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
金属チタン材料又はチタン合金材料の表面に、チタン窒化物、チタン炭化物、チタン炭窒化物、チタンホウ窒化物を形成させる工程としては、CVD、熱CVD、RFプラズマCVD、PVD、溶射、イオンプレーティング及びスパッタリングよりなる群から選択される少なくとも1種の処理を行うことが挙げられるが、特に限定はない。
中でも、金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン窒化物を形成させる方法としては、PVD処理、CVD処理、溶射処理、アンモニアガス雰囲気下での加熱処理、窒素ガス雰囲気下での加熱処理等が好ましい。簡便性、安全性及び経済性の観点から、窒素ガス雰囲気下で加熱処理を行うことが好ましい。
前記窒素ガス雰囲気下での加熱処理は、金属チタン材料又はチタン合金材料が極めて酸素親和性が高い材料であり、微量な酸素が共存すると、金属チタン材料又はチタン合金材料と窒素ガスとの反応が十分にできないために、酸素トラップ剤の共存下、窒素ガスを導入し、熱処理することが好ましい。
酸素トラップ剤として、例えばカーボン材料、金属粉末、水素ガス等を好ましく用いることができる。これらの酸素トラップ剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせ使用しても良い。簡便性、経済性及び安全性の観点から、カーボン材料を用いることが好ましい。
カーボン材料として、特に制限されないが、例えば、黒鉛質系カーボン、非晶質カーボン、これらの中間的結晶構造を持つカーボン等が挙げられる。カーボン材料は、平板状、箔状、粉末状等如何なる形状のものでもよいが、取扱性が良く、チタン材料の加熱処理中の熱歪を防止できる理由から、平板状のカーボン材料が好ましい。
窒素ガス雰囲気下での加熱処理の反応気圧としては、0.01~1MPa程度が好ましく、0.05~0.5MPa程度がより好ましい。窒素ガス雰囲気下での加熱処理の反応気圧としては、経済性、安全性、簡便性等の観点から、0.05~2MPaが更に好ましい。
窒素ガス雰囲気下での加熱処理温度としては、1分~12時間程度が好ましく、10分~8時間がより好ましく、1時間~6時間が更に好ましい。
金属チタン材料又はチタン合金材料を窒素ガス雰囲気下での加熱処理する方法としては、金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン窒化物を効率よく形成するために、ロータリー式真空ポンプや、必要に応じてメカニカルブースターポンプ、油拡散ポンプを用いて炉内を減圧し、加熱処理する炉内に残留する酸素濃度を減少させておくことが好ましい。それら炉内を減圧する為に用いるロータリー式真空ポンプ、メカニカルブースターポンプ及び油拡散ポンプを、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせ使用してもよい。
加熱処理する前の炉内の真空度は、好ましくは10Pa程度以下、より好ましくは1Pa程度以下、更に好ましくは0.1Pa程度以下まで減圧する。この減圧処理により、金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン窒化物を効率良く形成できる。
また、加熱処理する炉内に残留する酸素濃度を減少させる減圧処理と、その減圧処理し
た炉に対して、窒素ガスを炉内に供給する復圧処理とを交互に繰り返すことが好ましい。この減圧処理と復圧処理とを交互に繰り返すことで、炉内の酸素濃度はより減少させることができる。この処理により、金属チタン又はチタン合金は、酸素と反応できず、窒素と反応するために、金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン窒化物をより効率よく形成できる。
金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン炭化物、チタン炭窒化物及びチタンホウ窒化物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を形成する方法も、前記チタン窒化物を形成する方法に準じて、適宜適当な条件を選択すればよい。
また、本(1)工程の前処理としては、チタン化合物を形成させる前の金属チタン材料又はチタン合金材料の表面に粗面化処理を行い、粗面化材料形成してもよい。
ウィルスの不活化反応は表面反応であることから、光触媒材料とウィルスの接触機会が多い程、つまり表面積が大きい程、ウィルスの不活化の反応効率は向上する。
その為、チタン化合物を形成させる前に、ブラスト処理等の機械的粗面化処理することが好ましい。また、そのブラスト処理を実施した後に、化学的なエッチングを行うことが好ましい。
粗面化処理する方法としては、電解処理、放電加工、ブラスト処理、プラズマエッチング等の群から選択される少なくとも1種の処理を実施することが好ましい。
ブラスト処理は、機械的粗面化処理であり、設備と工程を簡便にできる点で、好ましい処理方法である。
ブラスト処理としては、サンドブラスト、ショットブラスト、グリットブラスト、ビーズブラストの群から選択された少なくとも1類の方法を選択することが好ましい。ブラスト処理としては、直圧式及び吸引式がある。
ブラスト処理で用いる研磨材としては、酸化アルミニウム、ガラスビーズ、炭化ケイ素、スチールグリッド、スチールショット等を好ましく用いることができる。ブラスト処理は、前記研磨材よりなる群から選択される少なくとも1種の研磨材を使用することが好ましい。前記研磨材を組み合わせて使用してもよい。
ブラスト処理で用いる研磨材の粒子径は、5~3,000μmであることが好ましい。研磨材の粒子径は、好ましくは20~2,000μmであり、より好ましくは30~500μmであり、更に好ましくは50~100μmである。
上記したプラズマ処理以外の粗面化処理としては、化学的エッチング処理が挙げられる。
この化学的エッチング処理では、エッチング剤として酸の水溶液を用いることが好ましい。この酸の水溶液として、フッ化水素酸、フッ化水素アンモニウム、硫酸、塩酸及びシュウ酸、熱濃硫酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸の水溶液を用いることがより好ましい。
化学的エッチングによる処理条件は、酸の水溶液の種類や濃度等により調整することができる。化学的エッチングによる処理として、例えばフッ化水素酸水溶液を使用する場合、フッ化水素酸の濃度は通常0.5重量%以上であり、好ましくは1~5重量%程度である。
化学的エッチングによる処理のエッチング温度は、酸の種類とその水溶液濃度等により調整することができる。化学的エッチングによる処理として、例えばフッ化水素酸を使用する場合、通常10~40℃程度であり、好ましくは20~30℃程度である。
以上のような(1)工程により、前記金属チタン材料又はチタン合金材料の表面に、チタン化合物の層が形成される。
(2)工程:火花放電が発生しない陽極酸化処理
第一の製造方法では、前記(1)工程で得られた表面にチタン化合物が形成された金属チタン材料又はチタン合金材料を、金属チタンにエッチング性を有しない、火花放電が発生しない電解液を用いた陽極酸化処理に供することで、前記チタン化合物を酸化チタンに変化させる。
本(2)工程は、火花放電現象に伴う工程ではないことから高電流を必要としない。また、本発明の陽極酸化処理は、電解液の発熱もそれほど上がらないので、高電流を付与する高額な電源装置や高電力を必要としない。また、電解液の発熱量をそれほどないので、高額な冷却装置を必要としないことから、経済性が高いという利点がある。
本(2)工程で用いる電解液は、無機酸、有機酸及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する電解液であることが好ましい。
前記無機酸としては、リン酸が挙げられる。有機酸としては、酢酸、アジピン酸、乳酸等が好ましい。またこれらの酸の塩である、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、アジピン酸カリウム、乳酸ナトリウム等を用いることもできる。これらの酸や塩化合物水溶液としては、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせで使用してもよい。
前記電解液は、前記酸等の希薄な水溶液であることが好ましい。電解液中の前記酸等の濃度は、経済性等の理由から、総量で0.01~10重量%程度が好ましく、0.1~10重量%程度がより好ましく、1~3重量%程度が更に好ましい。
陽極酸化処理の処理温度は、10~50℃程度で行うことが好ましく、20~30℃程度の温度で陽極酸化処理を行うことが好ましい。陽極酸化処理の処理時間は、1~30分程度の時間で行うことが好ましく5~20分程度で陽極酸化処理を行うことが好ましい。
また、定電圧陽極酸化処理の電圧としては、50V~300V程度の電圧で行うことが好ましく、50V~200V程度の電圧で行うことが更に好ましい。
定電流陽極酸化処理条件としては、0.1~100A/dm程度の電流密度で行うことが好ましく、0.2~2/dm程度の電流密度で行うことが更に好ましい。
(3)工程:加熱処理工程
第一の製造方法では、前記(2)工程で得られた陽極酸化処理を施した金属チタン材料又はチタン合金材料を、大気雰囲気、酸素ガスと窒素ガスとを混合させた雰囲気、及び酸素ガス雰囲気よりなる群から選択された少なくとも1種の雰囲気下で、550℃以上の温度で加熱処理に供することで、前記(2)工程で得られた酸化チタンの層の表面を結晶性酸化チタンに変化させて、ウィルスを不活化する光触媒に適した結晶性酸化チタン皮膜を金属チタン材料又はチタン合金材料の表面に形成させることができる。
酸素ガスと窒素ガスとを混合させた雰囲気における酸素ガスと窒素ガスとの比率については特に限定はない。
簡便性、経済性、安全性の観点から、大気雰囲気下での加熱処理が好ましい。
前記加熱処理温度としては、光触媒活性が高く、ウィルス不活化特性が発揮し易く、また、密着性も良いという観点から、550℃以上で熱処理する。
また、加熱処理温度を750℃以下に調整することで、光触媒活性が高く、かつ、結晶性酸化チタン皮膜中に光触媒活性を抑制させるリン等の不純物が少なく、密着性に優れた結晶性酸化チタン皮膜を得ることができる。
加熱処理を行う反応気圧としては、0.01~10MPa程度が好ましく、0.1~1MPa程度がより好ましい。簡便性、経済性、安全性等の観点から、加熱処理を行う反応気圧としては、0.1MPa程度が更に好ましい。加熱処理を行う時間としては、10分~48時間程度が好ましく、30分~36時間程度がより好ましい。また、密着性に優れる観点から、加熱処理を行う時間としては、30時間以下に調整すればよく、1~30時間以下、さらには6~30時間に調整してもよい。
本(3)工程において、前記加熱処理の回数は1回でもよいし2回以上でもよい。2回目以降の加熱処理の温度は、1回目の加熱処理の温度と同じでもよいし、より高く調整して行ってもよい。
このように2回以上加熱処理を行うことで、得られる結晶性酸化チタン皮膜中のルチル型酸化チタンの混合物を増加させることができ、さらに光触媒活性が高く、かつ、結晶性酸化チタン皮膜中に光触媒活性を抑制させるリン等の不純物が少なく、密着性に優れた結晶性酸化チタン皮膜を得ることができる。
本(3)工程において形成される結晶性酸化チタンは、アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンの混合物であることが好ましい。
アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンの混合物は、アナターゼ型酸化チタンより光触媒特性が高くウィルス不活化特性もより好ましいものである。
前記結晶性酸化チタン中におけるアナターゼ型酸化チタン(A)に対するルチル型酸化チタン(R)の比率(%)は、0.1%以上であることが好ましく、1%以上がより好ましく、5%以上がより好ましい。また、前記比率は、500%以下であることが好ましく、300%以下であることが好ましく、さらに密着性に優れる観点から、220%以下であることがより好ましい。
なお、結晶性酸化チタンの組成については、XRD(X線回折装置 (株)リガク SmartLab)等を用いた集中法又は薄膜法で評価することができる。
また、前記比率については、被膜全体の結晶性を測定する集中法で測定することができる。
(2’)工程:火花放電が発生する陽極酸化処理を行う工程
第二の製造方法では、前記(1)工程で得られた表面にチタン化合物が形成された金属チタン材料又はチタン合金材料を硫酸とリン酸と過酸化水素とを含有し、かつ金属チタンにエッチング性を有する混合液中において火花発生電圧以上において陽極酸化処理に供することで、前記チタン化合物を結晶性酸化チタンに変化させて、ウィルスを不活化する光触媒に適した結晶性酸化チタン皮膜を金属チタン材料又はチタン合金材料の表面に形成させることができる。
前記混合液中における硫酸、リン酸、過酸化水素のそれぞれの濃度は、金属チタンにエッチング性を有する混合液とする観点から、硫酸1~8M、リン酸0.01~1M、過酸化水素は、0.1~1Mが好ましい。
定電圧電解処理の火花放電発生電圧以上の電圧としては、通常100V以上、好ましくは150V以上が好ましい。
定電流陽極酸化処理条件としては、0.1~100A/dm程度の電流密度で行うことが好ましく、1~15A/dm程度の電流密度で行うことが更に好ましい。
陽極酸化時間としては、通常1分間、好ましくは1~60分間、更に好ましくは、10~30分間である。
前記結晶性酸化チタンは、アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンの混合物であることが好ましい。
アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンの混合物は、アナターゼ型酸化チタンより光触媒特性が高くウィルス不活化特性もより好ましいものである。
前記結晶性酸化チタン中におけるアナターゼ型酸化チタン(A)に対するルチル型酸化チタン(R)の比率(%)は、0.1%以上であることが好ましく、1%以上がより好ましく、5%以上がより好ましい。また、前記比率は、500%以下であることが好ましく、300%以下であることが好ましく、さらに密着性に優れる観点から、220%以下であることがより好ましい。
なお、結晶性酸化チタンの組成については、XRD(X線回折装置 (株)リガク SmartLab)等を用いて測定することができる。
(ウィルス不活化特性を有する光触媒材料)
以上のようにして得られた、表面に結晶性酸化チタン皮膜を形成させた金属チタン材料又はチタン合金材料は、ウィルス不活化特性を有する光触媒材料として用いることができる。
具体的には、光触媒作用により発生した活性酸素種が、ウィルスの外膜(エンベロープあるいはカプシド)を酸化分解することにより、ウィルスの活性(感染能)を抑制すること等が考えられる。
また、エンベロープを持たないウィルスは、一般的に消毒薬等に対する耐性が高いとされているが、光触媒はエンベロープの有無に関わらずウィルス不活化効果を発現すると考えられる。
本発明の光触媒材料は、前記のように、金属チタン材料又はチタン合金材料から構成されるため、人体に対して安全であり、かつ、様々な形状に加工が可能であることから、実用性が高い、ウィルス不活化用の材料である。
(ウィルス不活化装置)
ウィルス不活化装置の光触媒材料として、本発明の材料を用いることができる。
光触媒反応は、表面反応であるために、光触媒材料の表面に吸着する量が多い程、ウィルスを不活化させることが可能である。ウィルス表面は負に帯電することから、発明の材料に直流電源を用いて正に帯電させることにより、ウィルスを静電気的に本発明の材料に捕捉させることができ、ウィルスの不活化効率をより向上させることができる。
また、前記ウィルス不活化装置に、放電電極と対向電極とを備えた帯電部を新たに設けてもよい。前記帯電部と前記光触媒材料を設置することで、放電電極と対向電極とを備えた帯電部によって、ウィルスは電荷を帯びることになる。そして、前記光触媒材料に直流電源を用いて異なる帯電させれば、ウィルスは静電的に光触媒材料に捕捉されるために、ウィルスの不活化効率はさらに向上することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
陽極酸化処理したチタン材料の作製
(1)工程
金属チタン板(135×150×1mm)を、アセトンと2-プロパノールを用いて脱脂処理した後、窒化炉(NVF-600-PC、中日本炉工業製)を使用して、脱脂処理した金属チタン板の表面にチタン化合物(チタン窒化物)を形成した。
先ず、窒化炉内に設置した平板状の酸素トラップ剤であるカーボン材により、金属チタン板を挟んだ。次いで、酸素を取り除くために窒化炉を1Pa以下まで減圧処理した後、窒化炉に99.99%以上の高純度の窒素ガスを導入して0.1MPaまで復圧させた。次いで、窒化炉を2時間かけて950℃まで昇温した。次いで、この950℃の窒化炉において、1時間加熱処理を行い、金属チタン板の表面にチタン窒化物を形成させた。
(2)工程
次に、直流安定化電源(HX0300-50、高砂製作所製)を使用して、表面にチタン窒化物を形成させた金属チタン板の表面にチタンの酸化被膜を形成させた。
先ず、直流安定化電源の陽極に、表面にチタン窒化物を形成させた金属チタン板を接続させ、直流安定化電源の陰極に金属チタン板を接続させた。次いで、1容量%リン酸水溶液中に浸漬した。
直流安定化電源を用いて、電流密度0.5A/dmに設定し、液温20℃で、10分間通電することにより、表面にチタン窒化物を形成させた金属チタン板を陽極酸化し、金属チタン板の表面にチタンの酸化皮膜を形成させた。
(3)工程
次に、前記酸化皮膜を形成させた金属チタン板を卓上小型電気炉(NHK-170、日陶科学製)に入れ、大気雰囲気下で、加熱処理することにより、金属チタン表面上に結晶性酸化チタンを形成させた。
先ず、卓上小型電気炉を1時間かけて目標温度より50℃低い温度まで昇温した後、さらに1時間かけて目標温度まで昇温した。次いで、目標温度の卓上小型電気炉で1時間の加熱処理を行った後、電気炉を冷却した。
目標温度は、500℃、600℃、700℃、800℃の5条件にて検討した。
得られた結晶性酸化チタンの光触媒活性は、アセトアルデヒドの酸化分解により評価した。
具体的には、1000ppmのアセトアルデヒドガスを空気で希釈して100ppmのアセトアルデヒドガスを3L調製し、面積2.0dmの結晶性酸化チタン皮膜とともにテドラー(R)バッグに入れた検体を紫外線直下に設置したものに対して、2mW/cm(波長365nm)のブラックライト(FL15SBLB、東芝製)を照射した。その後、所定の時間ごとにガスクロマトグラフ(GC-2014、島津製作所製)を用いてアセトアルデヒドの濃度を測定した。
次いで、得られたアセトアルデヒドの濃度から反応速度を求めることで、時間を変化させて焼成することで得た結晶性酸化チタンの光触媒活性を比較した。結果を表1に示す。
なお、反応速度は、下記式(1)を用いて測定した。
反応速度=ln(C/C)/t (1)
ln:自然対数
:初期濃度(ppm)
C:t時間後の濃度(ppm)
t:時間(h)
Figure 0007018154000001
表1の結果から、焼成温度は500℃の場合、0.79と低いが、600℃~700℃では約4倍の光触媒活性があることがわかった。
したがって、少なくとも550℃以上で焼成した場合に、良好な光触媒活性が示されることがわかる。
得られた結晶性酸化チタンの組成については、XRD(X線回折装置 (株)リガク SmartLab)を用いて測定し、アナターゼ型酸化チタン(101)とルチル型酸化チタンのピーク(110)の積分強度から同定した。なお結晶性酸化チタンの全体の組成は、XRD測定結果(集中法)(表2)、結晶性酸化チタンの表面の組成は、XRD測定結果(薄膜法)(表3)から評価した。また、集中法で測定した積分強度からアナターゼ型酸化チタン(A)に対するルチル型酸化チタン(R)の比率(R/A)を算出した。
なお、XRD測定の条件については、以下のように設定した。
XRD(集中法):電圧45kV、電流値200mA
XRD(薄膜法):電圧45kV、電流値200mA、X線入射角度0.5°
Figure 0007018154000002
Figure 0007018154000003
表2、3の結果から、結晶性酸化チタン皮膜の全体、表面の結晶性は、焼成温度500℃においては、アナターゼ型酸化チタンしか存在しないが(比率0%)、600℃以上の焼成を行うと、ルチル型酸化チタンが生成することがわかる(比率8.4%)。また、アナターゼ型酸化チタンの量も焼成温度を上昇させると700℃までは増加するが、700℃~800℃の間では、600~700℃の間と比べて増加していないのに対し、比率については焼成温度が上昇すると高くなることが見いだされた。
以上のようなXRD測定結果から、本発明のように金属チタン材料又はチタン合金材料の表面に形成される結晶性酸化チタン皮膜は、アナターゼ型とルチル型の両方を含んだ皮膜であることで、優れた光触媒活性が発揮されることがわかる。
ルチル型酸化チタンは、光触媒活性自体はアナターゼ型酸化チタンより低いとされているが、本発明のように、金属チタン材料又はチタン合金材料の表面を所定の処理で改質して結晶性酸化チタン皮膜とした場合には、この結晶性酸化チタン皮膜においてアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンとが複合化されていることで、アナターゼ型酸化チタン単独に比べて光触媒活性が向上すると考えられる。
上記のように、焼成温度を500℃、600℃、700℃、800℃に調整して得られた結晶性酸化チタン皮膜中のリンの量を、SEM-EDX(走査電子顕微鏡 SU3500、日立ハイテクノロジーズ製 EDX(Genesis APEX2:Apollo XL、アメテック製)を用いて測定した。皮膜中に含まれるリンの量は、重量%で算出した。その結果を表4に示す。
Figure 0007018154000004
表4の結果から、皮膜中に含まれるリンは、焼成温度が上がることで徐々に除去され、800℃では顕著に減少していることがわかる。
リン酸を用いて陽極酸化を行うことで、酸化チタン皮膜にリンが取り込まれるが、このリンは、光触媒活性を阻害する傾向がある。したがって、本発明では、上記のように焼成温度を値550~750℃に調整することで、光触媒活性を阻害する酸化チタン皮膜中のリン量が減少する。
上記のように、焼成温度を500℃、600℃、700℃、800℃に調整して得られた結晶性酸化チタン皮膜の密着性試験を行った。
具体的には、それぞれの結晶性酸化チタン皮膜にセロハンテープをよく密着させ、45°の角度で勢いよく引き剥がしたとき、テープに皮膜が残らなければ○、少しでも皮膜が残れば×とした。その結果を表5に示す。
Figure 0007018154000005
表5の結果から、500~700℃の温度で焼成した場合に比べて、800℃以上の温度で焼成すると密着性が低下することが認められたことから、密着性の観点から焼成温度は750℃以下であることが好ましいことがわかった。
(実施例2)
(1)工程
金属チタン板(135×150×1mm)を、アセトンと2-プロパノールを用いて脱脂処理した後、窒化炉(NVF-600-PC、中日本炉工業製)を使用して、脱脂処理した金属チタン板の表面にチタン化合物であるチタン窒化物を形成した。
先ず、窒化炉内に設置した平板状の酸素トラップ剤であるカーボン材により、金属チタン板を挟んだ。次いで、酸素を取り除くために窒化炉を1Pa以下まで減圧処理した後、窒化炉に99.99%以上の高純度の窒素ガスを導入して0.1MPaまで復圧させた。次いで、窒化炉を2時間かけて950℃まで昇温した。次いで、この950℃の窒化炉において、1時間加熱処理を行い、金属チタン板の表面にチタン窒化物を形成させた。
(2)工程
次に、直流安定化電源(HX0300-50、高砂製作所製)を使用して、表面にチタン窒化物を形成させた金属チタン板の表面にチタンの酸化被膜を形成させた。
先ず、直流安定化電源の陽極に、表面にチタン窒化物を形成させた金属チタン板を接続させ、直流安定化電源の陰極に金属チタン板を接続させた。次いで、1容量%リン酸水溶液中に浸漬した。
直流安定化電源を用いて、電流密度0.5A/dmに設定し、液温20℃で、10分間通電することにより、表面にチタン窒化物を形成させた金属チタン板を陽極酸化し、金属チタン板の表面にチタンの酸化皮膜を形成させた。
(3)工程
次に、前記酸化皮膜を形成させた金属チタン板をフロアー型ボックス炉(MB-242020、光洋サーモシステム株式会社製)に入れ、大気中で、フロアー型ボックス炉を1時間かけて670℃まで昇温した後、さらに30分間かけて700℃まで昇温した。次いで、この700℃のフロアー型ボックス炉で1時間の加熱処理を行うことで、金属チタン表面に結晶性酸化チタン皮膜を形成させた。この表面に結晶性酸化チタン皮膜を形成させた金属チタン板をフロアー型ボックス炉(MB-242020、光洋サーモシステム株式会社製)に入れ、大気雰囲気中で、再度加熱処理(再焼成)した。
加熱時間を12時間、24時間、36時間の3条件にて検討した。
再焼成は、フロアー型ボックス炉(MB-242020、光洋サーモシステム株式会社製)を1時間かけて650℃まで昇温した後、さらに1時間かけて700℃まで昇温した。次いで、700℃の卓上小型電気炉で12時間、24時間、36時間の加熱処理を行った。
上記のように、得られた結晶性酸化チタンの光触媒活性を、アセトアルデヒドの酸化分解により評価した。
具体的には、1000ppmのアセトアルデヒドガスを空気で希釈して100ppmのアセトアルデヒドガスを3L調製し、面積2.0dmの結晶性酸化チタン皮膜とともにテドラー(R)バッグに入れた検体を紫外線直下に設置したものに対して、2mW/cm(波長365nm)のブラックライト(FL15SBLB、東芝製)を照射した。その後、所定の時間ごとにガスクロマトグラフ(GC-2014、島津製作所製)を用いてアセトアルデヒドの濃度を測定した。
次いで、得られたアセトアルデヒドの濃度から反応速度を求めることで、時間を変化させて再焼成することで得た結晶性酸化チタンの光触媒活性を比較した。なお、反応速度は、前記式(1)を用いて測定した。結果を表6に示す。
Figure 0007018154000006
表6の結果から、12時間以上の再焼成により光触媒活性が向上していることがわかる。また、光触媒活性は、再焼成時間が24時間の時に最も高くなり、36時間すると低下した。
得られたチタン酸化皮膜の組成を、実施例1と同様に、XRD(X線回折装置 (株)リガク SmartLab)を用いて集中法(表7)及び薄膜法(表8)から評価した。また、集中法で測定した積分強度からアナターゼ型酸化チタン(A)に対するルチル型酸化チタン(R)の比率(R/A)を算出した。
Figure 0007018154000007
Figure 0007018154000008
表7、8に示される結果から、再焼成を行うと、再焼成の時間が長くなるにしたがい、アナターゼ型酸化チタンが減少し、ルチル型酸化チタン量の形成量が多くなり、比率も高くなることがわかった。
次いで、得られた結晶性酸化チタン皮膜中のリンの量を、実施例1と同様に、SEM-EDX(走査電子顕微鏡 SU3500、日立ハイテクノロジーズ製EDX(Genesis APEX2:Apollo XL、アメテック製))を用いて測定した。皮膜中に含まれるリンの量は、重量%で算出した。得られた結果を表9に示す。
Figure 0007018154000009
表9の結果から、再焼成する時間が長くなることにより、結晶性酸化チタン皮膜中のリンの含有量が減少することがわかった。また、24時間までは、再焼成時間を長くするとリンの含有量は減少していくが、36時間では変化しなくなった。
リン酸を用いて陽極酸化を行うことで、酸化チタン皮膜にリンが取り込まれるが、このリンは、光触媒活性を阻害する傾向がある。したがって、本発明では、上記のように長時間の熱処理を実施することで、光触媒活性を阻害する酸化チタン皮膜中のリン量が減少する。
次いで、時間を変化させて再焼成した結晶性酸化チタン皮膜の密着性試験を行った。
具体的には、それぞれの結晶性酸化チタン皮膜にセロハンテープをよく密着させ、45°の角度で勢いよく引き剥がしたとき、テープに皮膜が残らなければ○、少しでも皮膜が残れば×とした。結果を表10に示す。
Figure 0007018154000010
表10に示す結果より、再焼成する時間が12時間、24時間では未焼成(1時間焼成したもの)と同様に密着性があったのに対して、再焼成する時間が36時間になると、密着性の低下が認められた。
したがって、焼成時間は、30時間以下に調整することで、密着性が優れたものとなることがわかる。

Claims (10)

  1. ウィルス不活化特性を有する光触媒材料に用いることができる、表面に結晶性酸化チタン皮膜が形成された金属チタン材料又はチタン合金材料の製造方法であって、
    (1)金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン化合物を形成させる工程
    (2)前記工程(1)で得られた表面にチタン化合物が形成された金属チタン材料又はチタン合金材料を、金属チタンにエッチング性を有しない電解液中において、火花放電が発生しない陽極酸化処理に供する工程
    (3)前記工程(2)で得られた陽極酸化処理を施した金属チタン材料又はチタン合金材料を、大気雰囲気、酸素ガスと窒素ガスとを混合させた雰囲気、及び酸素ガス雰囲気よりなる群から選択された少なくとも1種の雰囲気下で、550℃以上の温度で加熱処理に供し、次いで大気雰囲気中で、再度加熱処理に供して、アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンとの混合物である結晶性酸化チタン皮膜を形成する工程
    を含むことを特徴とする製造方法
  2. 前記工程(1)の前処理として、ブラスト処理及び化学的エッチング処理よりなる群から選択された少なくとも1種の粗面化処理を行う、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記工程(1)で形成されるチタン化合物が、チタン窒化物、チタン炭化物、チタン炭窒化物及びチタンホウ窒化物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記工程(1)が、酸素トラップ剤を用いて、窒素ガス雰囲気下で、加熱処理を行うことにより、金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン窒化物を形成させる工程である、請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記工程(1)が、CVD、熱CVD、RFプラズマCVD、PVD、溶射、イオンプレーティング及びスパッタリングよりなる群から選択される少なくとも1種の処理を行うことにより、金属チタン材料又はチタン合金材料の表面にチタン窒化物、チタン炭化物、チタン炭窒化物及びチタンホウ窒化物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を形成させる工程である、請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記工程(2)で得られた陽極酸化処理に用いる電解液が、金属チタンにエッチング性を有しないリン酸、有機酸及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1~5のいずかに記載の製造方法。
  7. 前記工程(3)の加熱処理の温度が550~750℃である、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 前記工程(3)の加熱処理の時間が、30時間以下である、請求項に記載の製造方法
  9. 請求項1~のいずれかに記載の製造方法により製造される、表面にアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンとの混合物である結晶性酸化チタン皮膜が形成された金属チタン材料又はチタン合金材料を用いることを特徴とする、ウィルス不活化特性を有する光触媒材料の製造方法
  10. 請求項記載の製造方法により製造されるウィルス不活化特性を有する光触媒材料を用いることを特徴とする、ウィルス不活化装置の製造方法
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