JP7017302B2 - 配合物用硬化剤 - Google Patents

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Description

本明細書では、配合物(硬化性組成物とも呼ばれる)(特に、パーフルオロエラストマーを含んでいる配合物が含まれる)で用いるための硬化剤、およびそうした配合物を硬化して得られる物品について記載する。
フルオロエラストマーを含んでいるエラストマー配合物は、商業分野で際立った成功を成し遂げてきた。それらは、過酷な環境、特に、高温や浸食性のある化学薬品にさらされている間でも使用できるからである。例えば、そうした配合物は、航空機エンジンの熱い区画または他の区画におけるシールで、石油掘削装置で、さらに高温で操作される工業設備のシーリング部品として使用される。
硬化エラストマー配合物の特性は、主としてこうした配合物のポリマー主鎖の主要部分を構成する共重合モノマーが安定していて不活性であることから得られる。そのようなモノマーとしては、テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルがある。ゴム状弾性を十分に発揮させるためには、エラストマー配合物は、通常は架橋させる(すなわち、加硫処理するかまたは硬化させる)。この目的のため、わずかな割合の硬化部位モノマーをモノマー(フッ素化されているか、過フッ素化されているかにかかわりなく)と共重合させる。架橋されると、硬化部位モノマーは硬化剤と反応して、物品の形態として架橋エラストマー物質(crosslinked elastomer entity)を形成する。
少なくとも1つのニトリル基を含んでいる硬化部位モノマー(例えば、パーフルオロ-8-シアノ-5-メチル-3,6-ジオキサ-1-オクテン)を使用でき、そうした硬化部位モノマーを含んでいる組成物は、(特許文献1)の第10~16欄(本明細書に援用する)に記載されている。
米国特許第7,999,049号明細書 米国特許第5,565,512号明細書 米国特許第6,281,296号明細書 米国特許第5,554,680号明細書 米国特許第5,789,489号明細書
(特許文献2)は、配合物用の硬化剤として、有機酸または無機酸のアンモニウム塩を開示している。そうした硬化剤は、配合物に完全には溶けないことがある。
(特許文献3)は、ニトリル含有フルオロエラストマー用の硬化剤として、アンモニアを発生することができる成分を開示している。こうしたアンモニア発生成分の中には、ニトリル含有フルオロエラストマーと混ぜた場合に、完全には溶解できないものもある。
本明細書では、硬化の際にアンモニアを発生する要素を含まない、こうした配合物用の硬化剤について記載する。また本明細書では、本明細書に記載する配合物を含む物品、ならびにその物品の製造方法についても記載する。
略号
本明細書の説明および請求項は、以下に示す略号および定義によって解釈されるべきである。
「h」、「hrs」は、時間を表す。
「%」は、パーセントという用語を表す。
「モル%」は、モルパーセントを表す。
「重量%」は、重量パーセントを表す。
「部」は、重量部を表す。
「phr」は、フルオロエラストマー(ゴム)100部当たりの部数を表す。当業者は、この計量用語を理解し、使用している。例えば、フルオロエラストマー100部当たりの成分3部は、3phrと書く。本明細書に記載のこれらの配合物、方法、および物品では、phrは、100部のフルオロエラストマーAに対するものである。
「g」はグラムを表す。
「Ph」はフェニル環を表す。
定義
本明細書で使用される冠詞の「1つの(a)」は、1つおよび複数を表し、必ずしも指示対象の名詞を単数の文法カテゴリーに限定するわけではない。
本明細書で使用される「約」および「またはそのくらい」という用語は、量または値を修飾するために用いられている場合、請求項に挙げられているかまたは本明細書に記載されている正確な量または値よりも大きいかまたは小さい、量または値の近似を表す。近似の正確な値は、当業者が正確な値の適切な近似として認めるであろうものによって定められる。本明細書で使用されるこの用語は、類似値(請求項に正確に挙げられておらず、または本明細書に記載されてもいない)でも、請求項に挙げられているかまたは本明細書に記載されているものと同等の結果または効果をもたらすことができるということを伝えている。当業者は、その類似値によって、受け入れられる仕方で結果または効果がもたらされると認めるであろう。
本明細書で使用される「物品」という用語は、完成していないかまたは完成した商品、物、物体、または要素、あるいは完成していないかまたは完成した商品、物、または物体の特徴を表す。本明細書で使用される「物品」という用語は、物品がまだ完成していない場合、完成した物品になるためにさらに処理されるであろう、形、形状、配置を有する任意の商品、物、物体、要素、デバイスなどを表しうる。物品が完成していない場合、「プリフォーム」という用語は、完成されるためにその一部がさらに処理されるであろう、その形、形状、配置を表しうる。本明細書で使用される「物品」という用語は、物品が完成されている場合、物質全体またはその一部をさらに処理しなくても、特定の用途/目的に適している、ある形、形状、配置の、商品、物、物体、要素、デバイスなどを表す。
物品は、1種または複数種の要素またはサブアセンブリー(どちらも、部分的に完成され、さらに処理されることになるもの)またはアセンブリーを、他の要素/サブアセンブリーと一緒に含むことができる(それらは、完成した物品を一緒になって含むことになる)。さらに、本明細書で使用される「物品」という用語は、物品の仕組みまたは配置を表しうる。
本明細書で使用される「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、またはそれらの他のいずれの変化形も、非排他的な包含を表す。例えば、一式の要素を含む方法、方式、物品、または装置は、その一式の要素しか含まないわけではなく、明確に挙げられていない他の要素または固有の要素も含みうる。さらに、逆のことを特に述べていない限り、「または」は、包含的な「または」であり、排他的な「または」ではない。例えば、AまたはBという条件は、以下のいずれによって満たされる:Aが正しく(または存在し)かつBが誤りである(または存在しない)、Aが誤りであり(または存在せず)かつBが正しい(または存在する)、さらにAおよびBの両方が正しい(または存在する)。
本明細書で使用される「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」またはそれらの他のいずれの変化形も、非排他的な包含または排他的な包含のいずれかを表しうる。
これらの用語が、より排他的な包含(more exclusive inclusion)を表す場合、こうした用語により、請求項の範囲は、記載された発明の新規要素に実質的に影響を与える挙げられた材料またはステップに限定される。
こうした用語が、完全排他的包含(wholly exclusive inclusion)を表す場合、こうした用語により、請求項に明確に挙げられていないどんな要素もステップも成分も排除される。
本明細書で使用されている分子またはポリマーを記述する用語は、IUPAC Compendium of Chemical Terminology_version 2.15(International Union of Pure and Applied Chemistry)(2009年9月7日)の用語に従っている。
本明細書で使用される「不飽和フッ素化オレフィン」という用語は、少なくとも1つの不飽和二重結合を含み、かつ少なくとも1個のフッ素原子を含む、直鎖、分枝、または環状の炭化水素構造体を表す。
本明細書で使用される、「アルキル」という用語は、直鎖、分枝、または環状の炭化水素構造体およびそれらの組合せを表す。アルキルは、芳香族の構造体を含まない。直鎖アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルの各基を含む。分枝アルキル基としては、例えば、s-およびt-ブチル、およびイソプロピルの各基を含む。環状炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロブチル、およびシクロオクチルの各基を含む。
本明細書で使用される「不飽和フッ素化オレフィン」という用語は、少なくとも1つの不飽和二重結合を含み、かつ少なくとも1個のフッ素原子を含む、直鎖、分枝、または環状の炭素構造体を表す。
本明細書で使用される「アルコキシ」または「アルコキシル」という用語は、単結合によって酸素原子に結合しているアルキル基を表す。酸素原子の他の結合は炭素原子につながっている。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、およびシクロヘキシルオキシを含む。
本明細書で使用される「硬化剤Bとは異なる硬化剤C」という用語は、硬化剤Bと同じ化学構造を有していない硬化剤Cを表す。
本明細書で使用される「配合物」という用語は、硬化可能な組成物(すなわち、硬化性組成物)、ならびに少なくともフルオロエラストマーと硬化剤とを含む、化学物質(chemical entities)の混合物を表す。化学物質の混合物は、硬化されたものでも、また化学物質の混合物の硬化を引き起こして硬化させるような処理条件にさらされたものでもない。
本明細書で使用される、「フルオロ」という接頭語は、化学物質名の前に接頭語として置かれる場合、少なくとも1個のフッ素原子を有する化学物質を表す。以下の名称で例示される通りである:フルオロエラストマー、パーフルオロエラストマー、フルオロビニル、およびパーフルオロビニルエーテル。接頭語「フルオロ」は、化学物質名の前に接頭語として置かれる場合、特に「パーフルオロ」化学物質を含む。したがって、接頭語「フルオロ」は、化学物質名の前に来る場合、「フルオロ」の物質および「パーフルオロ」の物質の両方を指す。
本明細書で使用される「硬化(cured)」という用語は、フルオロエラストマーを含んでいたもので、フルオロエラストマー分子が十分に架橋されるようにする条件(すなわち、硬化条件)にさらされて得られた物質に関係した言葉である。その条件にさらされた結果として、得られた物質は、再加工、成形、押出しを行って別のものにすることができない形態または形状または配置または構造を持つ。すなわち、フルオロエラストマーを含んでいた得られた物質が硬化条件にさらされて硬化されたなら、その物質は、実質的に異なる形態または形状または配置または構造となるように再び硬化させることはできない。
本明細書で使用される「硬化させる(curing)」、「硬化(cured)」という用語は、配合物(本明細書では硬化性組成物)のそうした処理を表し、それにより、再加工、成形、または押出しを行って別のものにすることができない形態または形状または配置または構造となる物質が得られる。そのような処理は、「硬化のプロセス/処理」を表し、硬化プロセスを開始させるために配合物をある特定の条件にさらすことが必要となる(そのような条件を硬化条件と呼ぶ)。
硬化プロセスの結果得られた物質は、「硬化」物質、すなわち、上に定義した物品である。分かりやすく言うと、硬化により、配合物が、ある形態または形状または配置または構造の物品となる。本明細書に記載の配合物の硬化物品としては、Oリング、シール、およびガスケットがあるが、これらに限定されない。
「硬化させる」、「硬化」という用語には、配合物の処理のいろいろ異なる度合いが明らかに含まれ、結果として、得られた物質は、再加工、成形、または押出しをして異なるものにすることができず、かつ硬化の結果として、ある特定の物理的性質を示しうる、形態または形状または配置または構造を持つ。
この段階になるように、こうした配合物は、最初に硬化されて、再加工不能な形態、形状などを実現する(本明細書では、このことを「硬化」と呼んでいる)。硬化配合物は、更なる硬化条件に更にさらすことができ、それにより、更なる後続の硬化が行われる。そのような更なる硬化条件は、本明細書では、「硬化」または「後硬化」と呼ぶことがあり、呼び方はまちまちである。すなわち、「硬化させる」、「硬化」という用語は、初期硬化の生成物質をもたらす初期硬化プロセスを表すと共に、特に、初期硬化の生成物質とは異なる物質特性または物理的性質を有しうる(または有し得ない)後続硬化の生成物質をもたらす、後続硬化プロセスも表す。
範囲および好ましい変形形態
本明細書に明示的に述べられているどんな範囲も、特に明確な断りがなければ、その端点を含む。量、濃度、あるいは他の値またはパラメータを範囲として述べている場合、それにより、可能な範囲の上限および可能な範囲の下限から作られる可能な全範囲が具体的に開示されていることになり、範囲のそのような上限および下限のペアが本明細書に明示的に開示されているかどうかとは無関係である。本明細書に記載の配合物、方法および物品は、説明の中で範囲を明示する際に開示されている特定の値に限定されない。
本明細書に具体的に記載した方法、配合物および物品について、材料、化学物質、方法、ステップ、値、及び/または範囲などによって本明細書に開示した任意の変形形態は、(好ましいものとして示されているかどうかに関わりなく)、材料、方法、ステップ、値、範囲などの任意の可能な組合せを含むことを意図している。請求項の正確かつ十分な裏付けとなるようにするため、開示されている組合せはいずれも、本明細書に記載の方法、配合物、および物品の好ましい変形形態である。
この説明において、本明細書に記載の任意の化学種(式(I)の硬化剤を含む)の化学名に関して、命名法の間違いまたは誤植があった場合、化学名よりも化学構造が優先される。また、もし本明細書に記載の任意の化学種の化学構造に誤りがあった場合、説明が意図していると当業者が見なす化学種の化学構造が優先される。
概要
本明細書では、本明細書に記載の配合物の硬化剤について記載する。また本明細書では、硬化前にそのような配合物を含んでいた、硬化された物品についても記載する。さらに、本明細書に記載の配合物を硬化させる方法についても記載する。
さらに具体的には、本明細書の記載の配合物は、
A.フルオロエラストマーであって、
(1)1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンと、
(2)フルオロビニルエーテル、不飽和フッ素化オレフィン、不飽和オレフィン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、(1)とは異なる1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンコモノマーと、
(3)ニトリル含有フッ素化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビニルエーテルからなる群から選択される1種または複数種の硬化部位モノマーと
の共重合単位を含むフルオロエラストマーと、
B.0.1~10部の、式(I):
1N=CR23 (I)
[式中、
1はHであり、
2は、H、NH2、およびNR45からなる群から選択され、
3は、Ph、SO2H、NR67、2-ピリジン、およびCH2CONH2からなる群から選択され、
4はHであり、
5は、Ph、NH2、およびCNからなる群から選択され、
6は、H、NHPh、CCONH2、C1~C8の直鎖アルキル基、およびC1~C8の分枝アルキル基からなる群から選択され、かつ
7は、Ph、COOC(CH33、NH2、CH2COOH、CSNH2、CNHNH3 +Cl-、p-フェニルCN、COPh、
Figure 0007017302000001
からなる群から選択される]
の硬化剤とを含む。
さらに具体的には、本明細書に記載の物品は、
A.フルオロエラストマーであって、
(1)1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンと、
(2)フルオロビニルエーテル、不飽和フッ素化オレフィン、不飽和オレフィン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、(1)とは異なる1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンコモノマーと、
(3)ニトリル含有フッ素化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビニルエーテルからなる群から選択される1種または複数種の硬化部位モノマーと
の共重合単位を含むフルオロエラストマーと、
B.0.1~10部の、式(I):
1N=CR23 (I)
[式中、
1はHであり、
2は、H、NH2、およびNR45からなる群から選択され、
3は、Ph、SO2H、NR67、2-ピリジン、およびCH2CONH2からなる群から選択され、
4はHであり、
5は、Ph、NH2、およびCNからなる群から選択され、
6は、H、NHPh、CCONH2、C1~C8の直鎖アルキル基、およびC1~C8の分枝アルキル基からなる群から選択され、かつ
7は、Ph、COOC(CH33、NH2、CH2COOH、CSNH2、CNHNH3 +Cl-、p-フェニルCN、COPh、
Figure 0007017302000002
からなる群から選択される]
の硬化剤とを、硬化の前に含有した硬化配合物を含む。
本明細書に記載の方法は、フルオロエラストマーAを含む配合物を、式(I)
1N=CR23 (I)
の少なくとも1種の硬化剤Bによって硬化させるステップであって、
フルオロエラストマーAが、
(1)1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンと、
(2)フルオロビニルエーテル、不飽和フッ素化オレフィン、不飽和オレフィン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、(1)とは異なる1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンコモノマーと、
(3)ニトリル含有フッ素化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビニルエーテルからなる群から選択される1種または複数種の硬化部位モノマーと
の共重合単位を含み、
1はHであり、
2は、H、NH2、およびNR45からなる群から選択され、
3は、Ph、SO2H、NR67、2-ピリジン、およびCH2CONH2からなる群から選択され、
4はHであり、
5は、Ph、NH2、およびCNからなる群から選択され、
6は、H、NHPh、CCONH2、C1~C8の直鎖アルキル基、およびC1~C8の分枝アルキル基からなる群から選択され、かつ
7は、Ph、COOC(CH33、NH2、CH2COOH、CSNH2、CNHNH3 +Cl-、p-フェニルCN、COPh、
Figure 0007017302000003
からなる群から選択される、フルオロエラストマーAを含む配合物を硬化させるステップを含む。
本明細書に記載の配合物、物品、および配合物の硬化方法における変形形態では、以下の要素のいずれかまたは以下の要素の任意の組合せを、特に含めるかまたは除外することができる。すなわち、本明細書に記載され請求項に列挙されている配合物、物品および方法は、この段落にリストされている特定の要素またはこうした特定要素の任意の組合せを含むかまたは除外するよう変えることができることを特に意図している。
- 配合物は、硬化剤Bとは異なる硬化剤Cを含むことができ、かつ/または
- 硬化剤Cの部数は、0.1~5部の範囲であってよく、かつ/または
- 硬化剤Cは、有機錫硬化剤、ビス(アミノフェノール)硬化剤、ビス(アミノチオフェノール)硬化剤、テトラアミン硬化剤、トリアミン硬化剤、ジアミン硬化剤、およびこれらの硬化剤の組合せからなる群から選択することができ、かつ/または
- 不飽和フッ素化オレフィンA(1)は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、1,1-ジフルオロエチレン;1,1,2-トリフルオロエチレン;1-フルオロエチレン、およびこれらの組合せからなる群から選択することができ、かつ/または
- 不飽和フッ素化オレフィンコモノマーA(2)は、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(プロピルビニル)エーテル、およびこれらの組合せからなる群から選択することができ、かつ/または
- 硬化剤Bは、アミジノアミジンHCl、N’,N’’-ジアミノアミジン;フェニルオキソアミノアミジン、3-(5-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾリル)アミジン、1H-ピロリルアミジン、ベンゾイミダゾリルアミジン、アミノチオキソアミジン;アミノカルボニルメチルアミジンHCl、N-アミノアミジンビカーボネート(N-aminoamidine bicarbonate)、N’’-1H-ピラゾリル-N’-t-ブトキシカルボニルアミジン、2-ピリジルアミジンHCl、スルフィノアミジン、およびこれらの組合せからなる群から選択することができ、かつ/または
- こうした配合物は、少なくとも1種の充填剤をさらに含むことができ、かつ/または
- 少なくとも1種の充填剤は、過フッ素化されていない(nonperfluoro)フッ素含有エラストマー、微細粉末、カーボンブラック、安定剤、可塑剤、潤滑剤、加工助剤、およびこれらの組合せを含む群から選択することができる。
本明細書に記載の硬化剤は、本明細書に記載の配合物を硬化させることができる。ある材料が硬化剤として働く能力を測定する1つの方法は、そうした配合物のトルクの増大を、配合物を硬化条件にさらしているときに、経時的に測定することである。特に、本明細書に記載の配合物は、トルク値(MH)が、硬化条件にさらす前のそうした配合物の初期トルク値(ML)よりも、少なくとも0.5dNm、好ましくは1.0dNm、より好ましくは2dNm大きい。
本明細書に記載の硬化剤は、硬化条件にさらされるそうした配合物のトルク値を、硬化条件にさらされない同一配合物の初期トルク値より、少なくとも50パーセント、好ましくは少なくとも100パーセント、より好ましくは少なくとも150パーセント増大させることができる。
配合物
A)フルオロエラストマー
本明細書に記載のフルオロエラストマーAは、フッ素化または過フッ素化されていてよく、少なくとも以下の3種類の共重合モノマー単位を含むことができる:A(1)約25~74.9モルパーセントの1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィン;A(2)不飽和フッ素化オレフィンA(1)とは異なり、かつフルオロビニルエーテル、不飽和フッ素化オレフィン、不飽和オレフィン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、約25~74.9モルパーセントの1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンコモノマー;およびA(3)ニトリル含有フッ素化オレフィン、ニトリル含有フッ素化ビニルエーテル、またはこれらの組合せからなる群から選択される、約0.1~10モルパーセントの1種または複数種の硬化部位モノマー(ここで、A(1)、(2)、および(3)のそれぞれのモルパーセントは、フルオロエラストマーA中のA(1)、(2)、および(3)の全モルパーセントに対するものである)。
本明細書に記載のフルオロエラストマーAは、重合の際に様々な開始剤または連鎖移動剤を使用した結果として生じるさまざまな末端基の任意のものを含みうる。末端基の非限定的な例としては、スルホネート、スルホン酸、カルボキシレート、カルボン酸、カルボキサミド、ジフルオロメチル基、トリフルオロビニル基、または過フッ素化されたアルキル基が含まれる。
A(1)不飽和フッ素化オレフィン
不飽和フッ素化オレフィンA(1)としては、少なくとも1個のフッ素原子を含む不飽和モノマー、好ましくは少なくとも2個のフッ素原子を含む不飽和モノマー、もっとも好ましくは過フッ素化されているモノマーが含まれる。不飽和フッ素化オレフィンの例としては、テトラフルオロエチレン(C24)、ヘキサフルオロプロピレン、1,1-ジフルオロエチレン;1,1,2-トリフルオロエチレン;1-フルオロエチレン、およびこれらの組合せが含まれる。不飽和フッ素化オレフィンA(1)の濃度は、フルオロエラストマーA中のモノマー単位の全モル数の25~74.9モルパーセントの範囲であってよい。
A)(2)不飽和フッ素化オレフィンコモノマー
不飽和フッ素化オレフィンコモノマーA(2)(不飽和フッ素化オレフィンA(1)とは異なるもの)は、フルオロビニルエーテル、不飽和フッ素化オレフィン、不飽和オレフィン、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
フルオロエラストマーAの製造に用いられるフルオロビニルエーテルの例としては、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、フルオロ(アルキルビニル)エーテル、フルオロ(アルコキシビニル)エーテル、およびこれらの組合せが含まれる。本明細書に記載の配合物を製造するのに使用できる適切な過フッ素化されている(アルキルビニル)エーテルとしては、式(II)~(VI)に示されるものが含まれる。
CF2=CFO(Rf’O)n(Rf’’O)mf (II)
[式中、Rf’およびRf’’は、2~6個の炭素原子の異なる直鎖または分枝のパーフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立に0~10であり、さらにRfは1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である]。
パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルの更なる例として、式(III)の組成物がある。
CF2=CFO(CF2CFXO)nf (III)
[式中、XはFまたはCF3であり、nは0~5であり、Rfは1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である]。好ましくは、nは0または1であり、Rfは1~3個の炭素原子を含む。そのような過フッ素化されている(アルキルビニル)エーテルの例としては、パーフルオロ(メチルビニル)エーテルおよびパーフルオロ(プロピルビニル)エーテルが含まれる。
フルオロエラストマー(A)を製造するための他のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルモノマーとしては、式(IV)、(V)、および(VI)のモノマーが含まれる。
CF2=CFO[(CF2mCF2CFZO]nf (IV)
[式中、Rfは、1~6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、m=0または1、n=0~5、およびZ=FまたはCF3である];
CF2=CFO[(CF2CFCF3O)n(CF2CF2CF2O)m(CF2p]Cx2x+1 (V)
[式中、mおよびn=1~10、p=0~3、およびx=1~5である](この部類の特定の実施形態としては、n=0~1、m=0~1、およびx=1であるモノマーが含まれる);および
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mn2n+1 (VI)
[式中、n=1~5、m=1~3であり、好ましくは、n=1である)]。
パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルの例としては、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル、およびパーフルオロエチルビニルエーテルが含まれる。パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテルの例としては、パーフルオロメトキシビニルエーテル、パーフルオロプロポキシビニルエーテル、およびパーフルオロエトキシビニルエーテルが含まれる。
不飽和フッ素化オレフィンの例としては、テトラフルオロエチレン(C24);ヘキサフルオロプロピレン;1,1-ジフルオロエチレン;1,1,2-トリフルオロエチレン;1-フルオロエチレン;1-フルオロプロピレン;1,1-ジフルオロプロピレン;1,1,3-トリフルオロプロピレン;1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロピレン;およびこれらの組合せが含まれる。不飽和オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、およびこれらの組合せが含まれる。フルオロビニルエーテルと不飽和フッ素化オレフィンと不飽和オレフィンとの組合せを使用してもよい。
フルオロエラストマーA中の不飽和フッ素化オレフィンコモノマーの濃度は、フルオロエラストマーA中のモノマー単位の全モルパーセントに対して、25~74.9モルパーセント、好ましくは30~65モルパーセント、より好ましくは45~55モルパーセントの範囲である。
A(3)硬化部位モノマー
フルオロエラストマーAは、1種または複数種の硬化部位モノマー(3)の共重合単位を、一般には、フルオロエラストマーAの製造に使用される重合可能モノマー単位の全モルパーセントに対して、0.1~10モルパーセント、好ましくは0.3から1.5モルパーセントの間の量さらに含む。複数種の硬化部位モノマーが存在してもよいが、少なくとも1つのニトリル置換基を含む硬化部位モノマーが好ましい。適切な硬化部位モノマーとしては、ニトリル含有フッ素化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビニルエーテルを含むが、これらに限定されない。有用なニトリル含有硬化部位モノマーとしては、式(VII)~(XI)のものが含まれる。
CF2=CF-O(CF2n-CN (VII)
[式中、n=2~12、好ましくは2~6である];
CF2=CF-O[CF2-CFCF3-O]n-CF2-CFCF3-CN (VIII)
[式中、n=0~4、好ましくは0~2である];
CF2=CF-[OCF2CFCF3x-O-(CF2n-CN (IX)
[式中、x=1~2、およびn=1~4である];および
CF2=CF-O-(CF2n-O-CF(CF3)CN (X)
[式中、n=2~4である]。
好ましくは、式(IX)のモノマーを硬化部位モノマーとして使用する。特に好ましい硬化部位モノマーとしては、ニトリル基およびトリフルオロビニルエーテル基を有する過フッ素化されているポリエーテルが含まれる。最も好ましい硬化部位モノマーは、パーフルオロ(8-シアノ-5-メチル-3,6-ジオキサ-1-オクテン)(8-CNVE)であり、式(XI)で表される。
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN (XI)
B)硬化剤
本明細書に記載の硬化剤は、式(I):
1N=CR23 (I)
[式中、
1はHであり、
2は、H、NH2、およびNR45からなる群から選択され、
3は、Ph、SO2H、NR67、2-ピリジン、およびCH2CONH2からなる群から選択され、
4はHであり、
5は、Ph、NH2、およびCNからなる群から選択され、
6は、H、NHPh、CCONH2、C1~C8の直鎖アルキル基、およびC1~C8の分枝アルキル基からなる群から選択され、かつ
7は、Ph、COOC(CH33、NH2、CH2COOH、CSNH2、CNHNH3 +Cl-、p-フェニルCN、COPh、
Figure 0007017302000004
からなる群から選択される]
の化学物質で表される。
式(I)の硬化剤非限定的な例としては、アミジノアミジン(ビグアニド);N’,N’’-ジアミノアミジン;フェニルオキソアミノアミジン;3-(5-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾリル)アミジン;1H-ピロリルアミジン;ベンゾイミダゾリルアミジン;アミノチオキソアミジン;アミノカルボニルメチルアミジン;N-アミノアミジン;N’’-1H-ピラゾリル-N’-t-ブトキシカルボニルアミジン;2-ピリジルアミジン;およびスルフィノアミジン(ホルムアミジンスルフィン酸)がある。
本明細書に開示されている式(I)の硬化剤は、塩、互変異性体の形であってもよく、かつ/または他の対イオンと結びついていてもよい。本明細書に開示されている硬化剤の塩の例としては、アミジノアミジンHCl(ビグアニドHCl);アミノカルボニルメチルアミジンHCl(カルボキサミドメチルアミジン(carboxamidomethylamidine)HClまたはマロンアミドアミジン);N-アミノアミジンビカーボネート(重炭酸アミノグアニジン);2-ピリジルアミジンHCl;N-アミノアミジンビカーボネート(重炭酸アミノグアニジン);スルフィノアミジン(ホルムアミジンスルフィン酸);アミジノアミジンHCl(ビグアニドHCl);およびアミノカルボニルメチルアミジンHClが含まれるが、これらに限定されない。
こうした配合物中の硬化剤Bの濃度は、0.1~10phr、好ましくは0.2~3phr、最も好ましくは0.3~2phrの範囲である。フルオロエラストマーA中に存在するすべての硬化部位と反応するのに必要な量に対して過剰の硬化剤Bを使用してもよい。
C)硬化剤Bとは異なる硬化剤
任意選択の硬化剤Cは硬化剤Bとは異なる。硬化剤Cの例としては、8-CNVE、オクタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、およびデシルアミンが含まれる。
任意選択の硬化剤Cを、こうした配合物で、硬化剤Bと一緒に共硬化剤(co-curing agent)として使用すると、「二重硬化(dual cure)」硬化系と呼ばれることがあるものが得られる。二重硬化の硬化系を使用すると、硬化剤Cの性質に応じて、こうした配合物に少なくとも2種類の異なるタイプの架橋を形成させることができる。二重硬化配合物では、2つのタイプの異なる硬化剤を用いることによって、物理的性質の利点(例えば、1つのタイプの硬化剤からは耐薬品性、別の硬化剤からは耐熱性)がもたらされうる。
本明細書に記載の配合物で使用できる硬化剤Cのタイプの例としては、有機錫硬化剤またはアミノ基含有ベンゼン硬化剤がある。有機錫硬化剤の非限定例としては、アリル-、プロパルギル-、トリフェニル-およびアレニル錫硬化剤があるが、これらに限定されない。有機錫硬化剤の具体例としては、テトラアルキル錫、テトラアリール錫、およびテトラフェニル錫の各硬化剤が含まれる。使用する硬化剤Cの量は、最終生成物において望まれる架橋度、ならびに本明細書に記載の配合物の反応部分のタイプおよび濃度に必然的に依存するであろう。
アミノ基含有ベンゼン硬化剤の例としては、式(XII)のビス(アミノフェノール)、式(XIII)のビス(アミノチオフェノール)、
Figure 0007017302000005
および式(XIV)のテトラアミン
Figure 0007017302000006
が含まれる。上式において、Aは、SO2、O、CO、1~6個の炭素原子のアルキル、1~10個の炭素原子のパーフルオロアルキル、または2つの芳香環をつなぐ炭素-炭素結合である。上記の式XIIおよびXIII中のアミノ基およびヒドロキシル基は、A基に対してメタ位およびパラ位で交換可能である。ビス(アミノフェノール)およびビス(アミノチオフェノール)硬化剤の具体例としては、2,2-ビス[3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(ジアミノビスフェノールAF);4,4’-スルホニルビス(2-アミノフェノール);3,3’-ジアミノベンジジン;および3,3’、4,4’-テトラアミノベンゾフェノンが含まれ、3,3’-ジアミノベンジジンが好ましい。
こうした配合物中の硬化剤C(存在する場合)の濃度は、0.5~5.0phr、好ましくは1.0~2.5phrの範囲である。
任意選択の硬化在Cが存在する場合、硬化剤Bおよび硬化剤Cの総量は、本明細書に記載の配合物中に存在するすべての硬化部位と反応するのに必要なモル量に対してモル過剰であってよい。本明細書に記載の配合物の特に好適なものは、次のものを含む。
A.フルオロエラストマーであって、
(1)テトラフルオロエチレンと、
(2)パーフルオロ(メチルビニル)エーテルと、
(3)パーフルオロ(8-シアノ-5-メチル-3,6-ジオキサ-1-オクテン)と
の共重合単位を含むフルオロエラストマー;
B.アミジノアミジンHCl(ビグアニドHCl);N’,N’’-ジアミノアミジン;フェニルオキソアミノアミジン;3-(5-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾリル)アミジン;1H-ピロリルアミジン;ベンゾイミダゾリルアミジン;アミノチオキソアミジン;アミノカルボニルメチルアミジンHCl;N-アミノアミジンビカーボネート;N’’-1H-ピラゾリル-N’-t-ブトキシカルボニルアミジン;2-ピリジルアミジンHCl;およびスルフィノアミジン(ホルムアミジンスルフィン酸)からなる群から選択される1種または複数種の硬化剤;および
C.有機錫、ビス(アミノフェノール)、ビス(アミノチオフェノール)、およびテトラアミンの各硬化剤からなる群から選択される1種または複数種の硬化剤。
添加剤
本明細書に記載の配合物は、任意のフルオロエラストマーA硬化部位と独立に架橋することのできるパーフルオロでないフッ素含有エラストマー(non-perfluoro-containing elastomer)をさらに含むことができる。パーフルオロでないフッ素含有エラストマーの例には、少なくとも主鎖かあるいはその側鎖の一端に、シアノ(-CN)、カルボキシル(-COOH)、アルコキシカルボニル(-COOR9(ここで、R9は一価の有機基である)、および酸ハロゲン化物基(-COX1(ここで、X1はハロゲン原子である))からなる群から選択される少なくとも1種の架橋可能な基(フルオロエラストマーAと架橋反応することができる基)を有するものがある。
パーフルオロでないフッ素含有エラストマーの例としては、フッ素含有(ただし、パーフルオロでないフッ素含有の)ゴム;熱可塑性フッ素含有ゴム;およびフッ素含有ゴムを含むゴム組成物が含まれるが、これらに限定されない。
フッ素含有ゴムは、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロピレン、および少なくとも1種の更なるモノマー(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、フッ化ビニル、およびヨウ素含有フッ素化ビニルエーテルなどが挙げられる)、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル、およびこれらの組合せからなる群から独立に選択されるモノマー単位を含むことができる。
カーボンブラック、安定剤、可塑剤、潤滑剤、充填剤、および加工助剤などの添加剤(典型的には、配合に利用されるもの)は、本明細書に記載の配合物に混ぜることができる。但し、それらは、意図している使用状況で十分に安定性があることを条件とする。特に、低温性能は、パーフルオロポリエーテルを含めることによって向上させることができる。
カーボンブラック充填剤は、こうした配合物のモジュラス、引張り強さ、伸び率、硬さ、耐摩耗性、伝導率、および加工性の釣り合いを取るための手段として、エラストマーで使用できる。こうした配合物では、粒径が小さく、表面積の大きなカーボンブラックが好ましい。一般に選択されるカーボンブラックの等級は、SAFカーボンブラックであり、これは、平均粒径が約14nmである、グループNo.1の中のN 110と呼ばれる(ASTM D 1765による)、高補強ブラックである。これらの配合物に役立つ特定クラスのカーボンブラックが、(特許文献4)に記載されている。こうしたカーボンブラックは、ASTM D 3849で測定した平均粒径が少なくとも約100nm~約500nmである。例としては、MTブラック(中間サーマルブラック(medium thermal black))(N-991、N-990、N-908、およびN-907と呼ばれる)、および大きな粒径の加熱炉ブラック(furnace blacks)が含まれる。MTブラックが好ましい。カーボンブラックを加える場合、カーボンブラックの量は、1~70phr、好ましくは約0.01~約50phr、より好ましくは1~50phr、もっとも好ましくは10~50phrの範囲である。
カーボンブラック充填剤に加えて、またはカーボンブラック充填剤と一緒に、カーボンブラック以外の充填剤が、本明細書に記載の配合物中に存在してもよい。使用してよいカーボンブラック以外の充填剤の例としては、酸性シリカまたはヒュームドシリカなどの無水シリカが含まれる。そのようなシリカは、Aerosil(登録商標)という商標でDegussa Aktiengesellschaft(Frankfurt,Germany)から入手できる。特に有用なタイプは、Aerosil(登録商標)200シリカである。他の適切なシリカとしては、Reolosil(登録商標)シリカ(Tokuyama KK(Tokyo,Japan)から入手可能)があり、例えば、Reolosil(登録商標)QS13、Reolosil(登録商標)QS102、およびReolosil(登録商標)QS30がある。シリカの量は、1~25phrの範囲であるが、好ましくは1~7phr以下である。
充填剤の更なるタイプとして微細粉末、またはフルオロ添加剤が含まれる。微細粉末は、通常は部分結晶のポリマーである。微細粉末としては、容易に分散される微粉の可塑性フルオロポリマーが含まれるが、それは、本明細書に記載の配合物の製造および硬化で使用される最も高い温度でも固体である。「固体」という用語は、本明細書に記載の配合物の加工温度より上の結晶溶融温度を有する可塑性フルオロポリマーのことを意味する。
こうした配合物で使用できる微細粉末としては、テトラフルオロエチレン(TFE)ポリマーとして知られるポリマー群に基づいている微細粉末が含まれるが、これらに限定されない。この群には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ならびに少なくとも1種の共重合性改質モノマーが(微細粉末を含んでいるフルオロエラストマーAの処理時に微細粉末が溶融したり軟化したりしないようにするため)約1モルパーセント以下の低濃度で含まれるTFEのコポリマーが含まれる。改質モノマーは、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)、パーフルオロブチルエチレン、クロロトリフルオロエチレン、あるいは側基をポリマー分子に導入する別のモノマーであってよい。
これらの配合物の添加剤として使用されるテトラフルオロエチレンポリマーとしては、融点をPTFEの融点よりも下げるのに十分な濃度の1種または複数種のモノマーの共重合単位を有する、TFEのコポリマーが含まれる。そのようなコポリマーは一般に、0.5~60×103Pa.sの範囲の溶融粘度を有するが、この範囲外の粘度も知られている。パーフルオロオレフィンおよびパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルが好ましいコモノマーである。ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロ(プロピルビニル)エーテルが最も好ましい。TFEコポリマーの例としては、TFE/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーおよびTFE/パーフルオロ(プロピルビニル)エーテルコポリマーが含まれるが、但し、パーフルオロエラストマー加工温度に関する溶融温度の制約条件を満たすことを条件とする。こうしたコポリマーは、重合媒体から分離された粉末形態で利用できるか(粒径が条件にかなっている場合)、またはそれらを粉砕して、大きな寸法のストックから好適な粒径にすることができる。
こうした配合物中のカーボンブラック以外の充填剤の量は、約0.01~33phr、好ましくは少なくとも約1~5phrの範囲である。
本明細書に記載の配合物の調製およびそうした配合物を含む本明細書に記載の物品の硬化
本明細書記載の配合物は、ゴム用二本ロール機、密閉式ミキサー(例えば、Banbury密閉式ミキサー)などのゴム配合手法を用いて、または押出機によって、均質になるまで、フルオロエラストマーA、硬化剤B、および任意選択成分を混合することにより、調製できる。そうした配合物は、加熱によって、かつ/または硬化剤Bによる硬化部位モノマーとの架橋を生じさせるのに十分な加圧によって硬化させてもよく、あるいは二重硬化系を使用してもよい。圧縮成形を使用して硬化させる場合、プレス硬化サイクル(press cure cycle)の後に、好ましくは硬化後サイクル(post cure cycle)を行う。このサイクルの間に、プレス硬化配合物は、300℃を超える高温で数時間加熱される。
硬化させると、本明細書に記載の配合物は、本明細書に記載の物品となり、そうした物品が使用される用途において好適な熱安定性および耐薬品性を示す。そうした物品は、広範囲の化学環境において、高温の状況でシールおよびガスケットとして、高温の自動車用途ではシールとして、およびOリングとして役立つ。
以下の表において「E」で示されている例示的配合物は、さらに明確にするためだけのものであり、本明細書に記載し列挙した配合物、方法、および物品の範囲を限定するものではない。比較例は、以下の表で「C」で示されている。
材料
- フルオロエラストマーA:48.8重量%のTFE単位と、49.0重量%のパーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)と、2.2重量%の8-CNVE単位とを含む。フルオロエラストマーAは、(特許文献5)の第10~11欄に開示されている方法で製造できる。
- パーフルオロ(メチルビニル)エーテル:E.I.DuPont de Nemours and Company(Wilmington,DE)[「DuPont」]から入手可能。
- 8-CNVE:パーフルオロ(8-シアノ-5-メチル-3,6-ジオキサ-1-オクテン)(DuPontから入手可能)。
- CA-1:重炭酸アミノグアニジン(Alfa Aesar(登録商標)(Ward Hill,MA,USA)から入手可能)。
- CA-2:N-アミジノチオ尿素(Alfa Aesar(登録商標)(Ward Hill,MA,USA)から入手可能)。
- CA-3:塩酸マロンアミドアミジン(malonamidamidine hydrochloride)(Alfa Aesar(登録商標)(Ward Hill,MA,USA)から入手可能)。
- CA-4:塩酸ビグアニド(biguanide hydrochloride)(Waterstone Technology/Brookview Scientific,LLC.(Carmel,Indiana,USA)から入手可能。
- CA-A:o-トリルビグアニド(o-tolylbiguanide)(Sigma Aldrich(St.Louis,Missouri,USA)から入手可能)。
- ArmeenI8D:オクタデシルアミン(Akzo Nobel(Amersfoort,The Netherlands)から入手可能)。
- カーボンブラック:平均粒径が280nmであるThermax(登録商標)N990中間サーマルカーボンブラック(medium thermal carbon black)(Cancarb Limited(Alberta,Canada)から入手可能)。
- Proton Sponge(登録商標):1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(N,N,N’,N’-テトラメチル-1,8-ナフタレンジアミン)(Sigma Aldrich(St.Louis,Missouri,USA)から入手可能)。
試験方法
硬化特性
硬化特性は、Monsanto MDR 2000測定器を用いて以下の条件下で測定した。
可動ダイの振動数(moving die frequency):1.66Hz
振動振幅:±0.5度
温度:199℃(特に記載のない場合)
試料サイズ:直径が1.5インチ(38mm)の円板
試験時間:本発明の実施例では30分間、比較例では20分間。
以下の硬化パラメータを記録した。
MH:試験期間の最後のトルク値(単位:dNm)
ML:初期トルク値(単位:dNm)
トルク試験に使用した本明細書に記載の配合物は、表1に開示されている成分から調製した。配合はゴム用ロール機で行った。ロール機にかけた配合物をシートに成形し、10gの試料を打ち抜ぬいて円板にして試験体を作った。
硬化特性は、正圧および199℃の試験温度に保持された測定器の試験キャビティに試験体を入れて測定した。試験体を試験キャビティに入れたらすぐに、双円錐円板(biconical disk)を試験体に埋め込み、その円板を指定の振動数で0.5°の弧を描くように振動させた。そのようにして試験体にせん断ひずみを加えた。双円錐円板を試験キャビティに入れたらすぐに試験体でトルク値を測定した。このトルク値はML(初期トルク値)である。試験の間、試験体を199℃に維持し、トルク値を時間に対して記録した。試験は、本発明の実施例では30分後に、比較例では20分後に完了する。指定時間後の試験体のトルク値を、MH(最終トルク値)として記録した。
円板を回転させるのに必要な最大振幅での力(トルク)は、ゴムのスチフネス(せん断弾性率)に比例する。このトルクを時間に対して記録した。ゴム試験片のシチフネスは硬化の間に増大するので、試験により硬化性の尺度が得られる。
こうした配合物の硬化の結果として生じるトルク値の増大を、初期トルク値(ML)と、試験の終了時における最終トルク値(MH)との間の差として計算する。
こうした配合物に対するある材料の硬化剤としての効果性を予測するための1つの試験法は、そうした配合物を硬化条件にさらしている間にトルクの増大を測定することである。式(I)の硬化剤を本明細書に記載の配合物を硬化させるのに使用すると、配合物のトルクが、硬化条件にさらされていない同一配合物の初期トルク値と比べて、少なくとも0.5dNm、好ましくは少なくとも1.0dNm、より好ましくは少なくとも2.0dNm、もっとも好ましくは少なくとも3.0dNmだけ増大する。トルクの増大が0.5dNm未満である場合、それは、望ましい物理的性質を有する物品を提供するだけのかなりの数の架橋をこうした配合物に与えない材料であることを示す。
こうした化合物で材料が硬化剤としてどれほど効果的かを予測するための別の方法は、Monsanto MDR 2000測定器または経時的にトルクの増大を測定できる類似の機器を用いて、ML値とMH値との間のトルクの向上パーセントを調べるというものである。トルク値の向上パーセントは次の式で表される。
(MH-ML)/ML×100=トルクの増大パーセント。
式(I)の硬化剤を使用して本明細書に記載の配合物を硬化させて、Oリングおよびシールなどの物品を調製できる。こうした配合物を硬化させるのに式(I)の硬化剤を使用した場合、配合物は、硬化条件にさらされると、硬化条件にさらされていない同一配合物の初期トルク値と比べて、トルクが少なくとも100パーセント増大し、好ましくは、トルクが少なくとも150パーセント増大し、最も好ましくは、トルクが少なくとも200パーセント増大する。トルクの増大が約50パーセント未満である場合、それは、望ましい物理的性質を有する物品を提供するだけのかなりの数の架橋をこうした配合物に与えない硬化剤量であることを示す。
表1に示す物質を使用し、ゴム用二本ロール機で成分を配合することにより、実施例E1~E3を調製した。これらの硬化特性も表1に示す。
本明細書に開示されているアミン硬化剤とは化学的に異なるアミン硬化剤を含む比較例(C)を、実施例E1~E3の場合と同様にして作り、試験した。
Figure 0007017302000007
表1のデータから分かるように、C1およびC2は、硬化条件にさらされたとき、トルクの(MHからMLへの)上昇は0.5dNm未満であるか、またはほんの25パーセントの最大パーセントの向上であり、有意ではなかった。これに対して、E1~E3で使用した硬化剤では、比較例のわずか0.41dNmの最大トルク増大と比べて、最小トルク増大でも6.65dNmというトルクの大きな増大が見られた。E1~E3のトルクの最小増大パーセントは、硬化剤Bを使用した場合に192パーセントであり、トルクの最大増大は641パーセントであった。試験の間の実施例のトルクの増大は、比較例で使用された硬化剤と比べて著しい硬化が起きていることを示す優れた指標である。
Figure 0007017302000008
E4は、望ましい硬化特性を示す、本明細書に記載の硬化剤Bの塩である。C3では、本明細書に記載の配合物を硬化させないアミン硬化剤を使用している。C3は、硬化剤がこうした配合物を硬化させて少なくとも0.5dNmのトルクの増大を達成するかどうかに、式(I)の置換基R2およびR3が直接影響を与えうることを示す。

Claims (11)

  1. A.フルオロエラストマーであって、
    (1)1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンと、
    (2)フルオロビニルエーテル、不飽和フッ素化オレフィン、および、これらの組合せ(更に、任意選択的に不飽和オレフィンを含む)からなる群から選択される、(1)とは異なる1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンコモノマーと、
    (3)ニトリル含有フッ素化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビニルエーテルからなる群から選択される1種または複数種の硬化部位モノマーとの共重合単位を含むフルオロエラストマーと、
    B.0.1~10phrの、アミジノアミジンHCl、N’,N’’-ジアミノアミジン;フェニルオキソアミノアミジン、3-(5-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾリル)アミジン、1H-ピロリルアミジン、ベンゾイミダゾリルアミジン、アミノチオキソアミジン;アミノカルボニルメチルアミジンHCl、N-アミノアミジンビカーボネート、N’’-1H-ピラゾリル-N’-t-ブトキシカルボニルアミジン、2-ピリジルアミジンHCl、スルフィノアミジン、およびこれらの組合せから選択される、の少なくとも1種の硬化剤と
    を含み、
    前記不飽和フッ素化オレフィン(1)が、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、1,1-ジフルオロエチレン;1,1,2-トリフルオロエチレン;1-フルオロエチレン、およびこれらの組合せからなる群から選択される
    配合物。
  2. 硬化剤Bとは異なる0.1~5phrの硬化剤Cをさらに含む、請求項1に記載の配合物。
  3. 前記不飽和フッ素化オレフィンコモノマー(A)(2)が、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(プロピルビニル)エーテル、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の配合物。
  4. 過フッ素化されていないフッ素含有エラストマー、微細粉末、カーボンブラック、安定剤、可塑剤、潤滑剤、加工助剤、およびこれらの組合せを含む群から選択される少なくとも1種の充填剤をさらに含む、請求項1~3の何れか一項に記載の配合物。
  5. 前記硬化剤Cが、有機錫硬化剤、ビス(アミノフェノール)硬化剤、ビス(アミノチオフェノール)硬化剤、テトラアミン硬化剤、トリアミン硬化剤、ジアミン硬化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項2~4の何れか一項に記載の配合物。
  6. A.フルオロエラストマーであって、
    (1)1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンと、
    (2)パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、フルオロ(アルキルビニル)エーテル、フルオロ(アルコキシビニル)エーテル、およびこれらの組合せからなる群から選択される1種または複数種のフルオロビニルエーテルと、
    (3)ニトリル含有フッ素化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビニルエーテルからなる群から選択される1種または複数種の硬化部位モノマーとの共重合単位を含むフルオロエラストマーと、
    B.0.1~10phrの、アミジノアミジンHCl、N’,N’’-ジアミノアミジン;フェニルオキソアミノアミジン、3-(5-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾリル)アミジン、1H-ピロリルアミジン、ベンゾイミダゾリルアミジン、アミノチオキソアミジン;アミノカルボニルメチルアミジンHCl、N-アミノアミジンビカーボネート、N’’-1H-ピラゾリル-N’-t-ブトキシカルボニルアミジン、2-ピリジルアミジンHCl、スルフィノアミジン、およびこれらの組合せから選択される、硬化剤と、を含有する硬化配合物を含む、物品であって
    前記不飽和フッ素化オレフィン(1)が、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、1,1-ジフルオロエチレン;1,1,2-トリフルオロエチレン;1-フルオロエチレン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、物品。
  7. 硬化剤Bとは異なる0.1~5phrの硬化剤Cを、硬化の前に、前記硬化配合物がさらに含有していた、請求項6に記載の物品。
  8. ガスケット、チューブ、シール、およびOリングの形の、請求項6又は7に記載の物品。
  9. フルオロエラストマーAを、
    アミジノアミジンHCl、N’,N’’-ジアミノアミジン;フェニルオキソアミノアミジン、3-(5-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾリル)アミジン、1H-ピロリルアミジン、ベンゾイミダゾリルアミジン、アミノチオキソアミジン;アミノカルボニルメチルアミジンHCl、N-アミノアミジンビカーボネート、N’’-1H-ピラゾリル-N’-t-ブトキシカルボニルアミジン、2-ピリジルアミジンHCl、スルフィノアミジン、およびこれらの組合せから選択される、少なくとも1種の硬化剤Bによって硬化させるステップであって、
    前記フルオロエラストマーAが、
    (1)1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンと、
    (2)フルオロビニルエーテル、不飽和フッ素化オレフィン、およびこれらの組合せ(更に、任意選択的に不飽和オレフィンを含む)からなる群から選択される、(1)とは異なる1種または複数種の不飽和フッ素化オレフィンコモノマーと、
    (3)ニトリル含有フッ素化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビニルエーテルからなる群から選択される1種または複数種の硬化部位モノマーと
    の共重合単位を含む、
    フルオロエラストマーAを硬化させるステップを含み、
    前記不飽和フッ素化オレフィン(1)が、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、1,1-ジフルオロエチレン;1,1,2-トリフルオロエチレン;1-フルオロエチレン、およびこれらの組合せからなる群から選択される
    方法。
  10. フルオロエラストマーAが、硬化剤Bとは異なる0.1~5phrの硬化剤Cをさらに含む、請求項9に記載の方法。
  11. 前記不飽和フッ素化オレフィンコモノマー(2)が、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(プロピルビニル)エーテル、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項9又は10に記載の方法。
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