本発明者らは、ある範囲の、Fv FW/CDRを「スワッピング」した、Fab-dsscFvのグラフティングを介して、dsscFvのフレームワーク(FW)残基及びCDR残基による、多量体化に対する影響について探索した。驚くべきことに、本発明者らは、ある特定のフレームワークが、達成される単量体レベルに対して、ポジティブな影響を及ぼしうることを見出した。
本開示は、各々が、重鎖可変領域であるVHと、軽鎖可変領域であるVLとを伴う、少なくとも2つの結合性ドメインを含み、各結合性ドメインが、抗原に特異的であり、6つのCDRを含む、多特異性抗体分子であって、少なくとも1つの結合性ドメインが、VHA内のCDRH3がRYYSAMPFAY(配列番号129)以外であるという条件で、5位におけるバリン、13位におけるリシン、24位におけるアラニン、及び96位におけるトレオニンを含むフレームワークを有する、重鎖可変領域であるVHAと、11位におけるロイシン、及び103位におけるグルタミンを含むフレームワークを有する、軽鎖可変領域であるVLAとを含むことを特徴とする上記多特異性抗体分子を提示する。一実施形態では、VHA内のCDRH3はまた、PPQYYEGSIYRLWFAH(配列番号117)以外のCDRH3でもある。一実施形態では、VLA内のCDRL3は、QQNYDFPLT(配列番号136)又はQQTWSDPWT(配列番号120)以外である。
一実施形態では、少なくとも1つの可変領域であるVHAは、48位におけるバリン、78位におけるロイシン、86位におけるリシン、87位におけるトレオニン、及び97位におけるトレオニンのうちの1又は複数をさらに含むフレームワークを有する。
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの可変領域であるVLAは、1位におけるアラニン及び4位におけるロイシンのうちの1又は複数をさらに含むフレームワークを有する。
したがって、本発明は、表1における、497フレームワーク残基の、以下:
の組合せのうちの1つを有する、VH
A可変領域及びVL
A可変領域を含む多特異性抗体を提供する。
代替的実施形態では、少なくとも1つの可変領域であるVHAは、71位におけるバリン、74位におけるアラニン、77位におけるセリン、及び78位におけるアラニンのうちの1又は複数をさらに含むフレームワークを有する。
一実施形態では、少なくとも1つの可変領域であるVLAは、44位におけるバリン、66位におけるトレオニン、72位におけるチロシン、84位におけるバリン、88位におけるフェニルアラニン、及び107位におけるロイシンのうちの1又は複数をさらに含むフレームワークを有する。
したがって、本発明は、表2における、2109フレームワーク残基の、以下:
の組合せのうちの1つを有する、VH
A可変領域及びVL
A可変領域を含む多特異性抗体を提供する。
本発明のさらなる実施形態では、少なくとも1つの可変領域であるVHAが、VHA内のCDRH3がRYYSAMPFAY(配列番号129)以外であるという条件で、FR1についての配列番号1、FR2についての配列番号141[配列中、X9は、V又はIである]、FR3についての配列番号142[配列中、X10は、R又はVであり、X11は、D又はKであり、X12は、S又はAであり、X13は、T又はSであり、X14は、L又はAであり、X15は、K又はRであり、X16は、T又はAであり、X17は、T又はRである]、及びFR4についての配列番号5を含むフレームワークを有する多特異性抗体が提示される。
この態様の一実施形態では、VHAが、VLAと対合し、VLAは、FR1についての配列番号137[配列中、X1は、A又はDであり、X2は、L又はMである]、FR2についての配列番号138[配列中、X3は、A又はVである]、FR3についての配列番号139[配列中、X4は、S又はTであり、X5は、F又はYであり、X6は、F又はVであり、X7は、Y又はFである]、及びFR4についての配列番号140[配列中、X8は、V又はLである]を含むフレームワークを有する。一実施形態では、VLA内のCDRH3は、QQNYDFPLT(配列番号136)又はQQTWSDPWT(配列番号120)以外である。
本発明において記載される、VHAフレームワーク及びVLAフレームワークの残基及び配列を有する多特異性抗体分子は、任意の適切なCDR残基を含みうる。一実施形態では、多特異性抗体分子は、CDRH1についての配列番号143、CDRH2についての配列番号144、及びCDRH3についての配列番号145において与えられる配列を有する、VHA内の、3つの重鎖CDRを含む。さらなる実施形態では、多特異性抗体分子は、CDRL1についての配列番号146、CDRL2についての配列番号147、及びCDRL3についての配列番号148において与えられる配列を有する、VLA内の、3つの軽鎖CDRを含む。一実施形態では、多特異性抗体分子は、CDRH1についての配列番号143、CDRH2についての配列番号144、及びCDRH3についての配列番号145において与えられる配列を有する、VHA内の、3つの重鎖CDRと、CDRL1についての配列番号146、CDRL2についての配列番号147、及びCDRL3についての配列番号148において与えられる配列を有する、VLA内の、3つの軽鎖CDRとを含む。
本発明のさらなる実施形態では、多特異性抗体は、497フレームワーク配列を含む。
したがって、本開示は、各々が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を伴う、少なくとも2つの結合性ドメインを含み、各結合性ドメインが、抗原に特異的であり、6つのCDRを含む、多特異性抗体分子であって、少なくとも1つの可変領域であるVHAが、FR1についての配列番号1、FR2についての配列番号2若しくは3、FR3についての配列番号4、及びFR4についての配列番号5、又は全フレームワーク内の、1、2、3、4、若しくは5カ所の変化を伴い、FR1、FR2、FR3、及びFR4のうちのどの1つにおけるアミノ酸変化も2カ所を超えない、これらの誘導体を含むフレームワークを有することを特徴とする上記多特異性抗体分子を提示する。一実施形態では、FR1、FR2、FR3、及びFR4のうちのどの1つにおけるアミノ酸変化も1カ所を超えない。
一実施形態では、各々が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を伴う、少なくとも2つの結合性ドメインを含み、各結合性ドメインが、抗原に特異的であり、6つのCDRを含む、多特異性抗体分子であって、少なくとも1つの可変領域であるVHAが、FR1についての配列番号1、FR2についての配列番号2又は3、FR3についての配列番号4、及びFR4についての配列番号5を含むフレームワークを有することを特徴とする上記多特異性抗体分子が提供される。
一実施形態では、VHAが、VLAと対合し、VLAが、FR1についての配列番号6、FR2についての配列番号7、FR3についての配列番号8、及びFR4についての配列番号9又は10を含むフレームワークを有する、本開示に従う多特異性抗体分子が提供される。
一実施形態では、各々が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を伴う、少なくとも2つの結合性ドメインを含み、各結合性ドメインが、抗原に特異的であり、6つのCDRを含む、多特異性抗体分子であって、少なくとも1つの可変領域であるVLAが、FR1についての配列番号6、FR2についての配列番号7、FR3についての配列番号8、及びFR4についての配列番号9若しくは10、又は全フレームワーク内の、1、2、3、4、若しくは5カ所の変化を伴い、FR1、FR2、FR3、及びFR4のうちのどの1つにおけるアミノ酸変化も2カ所を超えない、これらの誘導体を含むフレームワークを有することを特徴とする上記多特異性抗体分子が提供される。一実施形態では、FR1、FR2、FR3、及びFR4のうちのどの1つにおけるアミノ酸変化も1カ所を超えない。
一実施形態では、VLAが、FR1についての配列番号6、FR2についての配列番号7、FR3についての配列番号8、及びFR4についての配列番号9又は10を含むフレームワークを有する、本開示に従う多特異性抗体分子が提供される。
一実施形態では、VHAが、VLAと対合し、VHAが、配列番号21を含むフレームワークを有し、且つ、VLAが、配列番号23を含むフレームワークを有するか、又はVHAが、配列番号22を含むフレームワークを有し、且つ、VLAが、配列番号24を含むフレームワークを有し、CDR位置の各々におけるXXXが、独立に、例えば、scFv又はこれを含む分子における使用のための、1~35アミノ酸を表す、本開示に従う多特異性抗体分子が提供される。
本開示の一実施形態では、凝集を最小化するためのアクセプターフレームワークであって、配列番号21及び配列番号23又は配列番号22及び配列番号24を含み、CDR位置の各々におけるXXXが、独立に、例えば、scFv又はこれを含む分子における使用のための、1~35アミノ酸を表す、上記アクセプターフレームワークが提示される。
本開示の一実施形態では、各々が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を伴う、少なくとも2つの結合性ドメインを含み、各結合性ドメインが、抗原に特異的であり、6つのCDRを含む、多特異性抗体分子であって、1つの可変領域であるVH
Aが、可変領域であるVL
Aと対合し、表3における、VH
Aのアミノ酸配列及びVL
Aのアミノ酸配列の、以下:
の組合せのうちの1つを有することを特徴とする上記多特異性抗体分子が提示される。
独立の態様では、本開示は、配列番号106又は配列番号107を含むscFv抗体を提示する。一実施形態では、scFv抗体は、BYbe又はTrYbeなど、多特異性抗体の一部である。
本発明の代替的実施形態では、下記で記載される、2109フレームワーク配列を含む、重鎖可変領域であるVHAと、軽鎖可変領域であるVLAとを伴う、少なくとも1つの結合性ドメインが提示される。
本発明のこの態様についての、さらなる実施形態では、多特異性抗体は、2109フレームワーク配列を含む。したがって、本発明は、各々が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を伴う、少なくとも2つの結合性ドメインを含み、各結合性ドメインが、抗原に特異的であり、6つのCDRを含む、多特異性抗体分子であって、少なくとも1つの可変領域であるVHAが、VHA内のCDRH3がRYYSAMPFAY(配列番号129)又はPPQYYEGSIYRLWFAH(配列番号117)以外であるという条件で、FR1についての配列番号16、FR2についての配列番号17若しくは18、FR3についての配列番号19、及びFR4についての配列番号20、又は全フレームワーク内の、1、2、3、4、若しくは5カ所の変化を伴い、FR1、FR2、FR3、及びFR4のうちのどの1つにおけるアミノ酸変化も2カ所を超えない、これらの誘導体を含むフレームワークを有することを特徴とする上記多特異性抗体分子を提供する。一実施形態では、FR1、FR2、FR3、及びFR4のうちのどの1つにおけるアミノ酸変化も1カ所を超えない。
本開示は、各々が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を伴う、少なくとも2つの結合性ドメインを含み、各結合性ドメインが、抗原に特異的であり、6つのCDRを含む、多特異性抗体分子であって、少なくとも1つの可変領域であるVHAが、VHA内のCDRH3がRYYSAMPFAY(配列番号129)又はPPQYYEGSIYRLWFAH(配列番号117)以外であるという条件で、FR1についての配列番号16、FR2についての配列番号17又は18、FR3についての配列番号19、及びFR4についての配列番号20を含むフレームワークを有することを特徴とする上記多特異性抗体分子を提示する。
一実施形態では、VHAが、VLAと対合し、VLAが、VLA内のCDRH3がQQNYDFPLT(配列番号136)又はQQTWSDPWT(配列番号120)以外であるという条件で、FR1についての配列番号11、FR2についての配列番号12、FR3についての配列番号13、及びFR4についての配列番号14又は15を含むフレームワークを有する、本開示に従う多特異性抗体分子が提供される。
一実施形態では、各々が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を伴う、少なくとも2つの結合性ドメインを含み、各結合性ドメインが、抗原に特異的であり、6つのCDRを含む、多特異性抗体分子であって、少なくとも1つの可変領域であるVLAが、VLA内のCDRL3がQQNYDFPLT(配列番号136)又はQQTWSDPWT(配列番号120)以外であるという条件で、FR1についての配列番号11、FR2についての配列番号12、FR3についての配列番号13、及びFR4についての配列番号14若しくは15、又は全フレームワーク内の、1、2、3、4、若しくは5カ所の変化を伴い、FR1、FR2、FR3、及びFR4のうちのどの1つにおけるアミノ酸変化も2カ所を超えない、これらの誘導体を含むフレームワークを有することを特徴とする上記多特異性抗体分子が提供される。一実施形態では、FR1、FR2、FR3、及びFR4のうちのどの1つにおけるアミノ酸変化も1カ所を超えない。
一実施形態では、各々が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を伴う、少なくとも2つの結合性ドメインを含み、各結合性ドメインが、抗原に特異的であり、6つのCDRを含む、多特異性抗体分子であって、少なくとも1つの可変領域であるVLAが、VLA内のCDRL3がQQNYDFPLT(配列番号136)又はQQTWSDPWT(配列番号120)以外であるという条件で、FR1についての配列番号11、FR2についての配列番号12、FR3についての配列番号13、及びFR4についての配列番号14又は15を含むフレームワークを有することを特徴とする上記多特異性抗体分子が提供される。
一実施形態では、VHAが、VLAと対合し、VHAが、配列番号27を含むフレームワークを有し、且つ、VLAが、配列番号25を含むフレームワークを有するか、又はVHAが、配列番号28を含むフレームワークを有し、且つ、VLAが、配列番号26を含むフレームワークを有し、CDR位置の各々におけるXXXが、独立に、例えば、scFv又はこれを含む分子における使用のための、1~35アミノ酸を表す本開示に従う多特異性抗体分子が提供される。
一実施形態では、本開示は、凝集を最小化するためのアクセプターフレームワークであって、配列番号25及び配列番号27又は配列番号26及び28を含み、CDR位置の各々におけるXXXが、独立に、例えば、scFv又はこれを含む分子における使用のための、1~35アミノ酸を表す、上記アクセプターフレームワークを提示する。
第2の態様の実施形態では、本開示は、各々が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を伴う、少なくとも2つの結合性ドメインを含み、各結合性ドメインが、抗原に特異的であり、6つのCDRを含む、多特異性抗体分子であって、1つの可変領域であるVH
Aが、可変領域であるVL
Aと対合し、VH
Aのアミノ酸配列及びVL
Aのアミノ酸配列の、以下:
の組合せのうちの1つを有することを特徴とする上記多特異性抗体分子を提示する。
独立の態様では、本開示は、配列番号111又は配列番号112を含むscFv抗体を提示する。一実施形態では、scFv抗体は、BYbe又はTrYbeなど、多特異性抗体の一部である。
本発明の多特異性抗体は、2つなど、1又は複数の結合性ドメインにおける、上記で規定した、497フレームワーク残基又は497フレームワーク配列を含有しうる。本発明の多特異性抗体は、2つなど、1又は複数の結合性ドメインにおける、上記で規定した、2109フレームワーク残基又は2109フレームワーク配列を含有しうる。本発明の多特異性抗体は、1つの結合性ドメインにおける、上記で規定した、497フレームワーク残基又は497フレームワーク配列と、別の結合性ドメインにおける、上記で規定した、2109フレームワーク残基又は2109フレームワーク配列とを含有しうる。
したがって、本発明は、2つ又はこれを超える結合性ドメインを含む多特異性抗体のための、本発明の第1の態様及び第2の態様で規定される、以下の、表5におけるフレームワークの組合せを提供する。
本開示の上記の、第1の態様及び第2の態様のうちのいずれかについての、任意の実施形態では、本開示の可変領域は、抗体1の、以下のCDR:
CDRH1:GFTFSDYNMA(配列番号115)
CDRH2:TITYEGRNTYYRDSVKG(配列番号116)
CDRH3:PPQYYEGSIYRLWFAH(配列番号117)
CDRL1:RADESVRTLMH(配列番号118)
CDRL2:LVSNSEI(配列番号119)
CDRL3:QQTWSDPWT(配列番号120)
の全てなど、1又は複数を含まない。
本開示の上記の、第1の態様及び第2の態様のうちのいずれかについての、一実施形態では、本開示の可変領域は、抗体2の、以下のCDR:
CDRH1:GVIFSDYYMA(配列番号121)
CDRH2:SINFNADISYYRESVKG(配列番号122)
CDRH3:DANRQNYDWFAY(配列番号123)
CDRL1:KASESVSSSMYSYMH(配列番号124)
CDRL2:RASNLES(配列番号125)
CDRL3:QQSWTAPRT(配列番号126)
の全てなど、1又は複数を含まない。
本開示の上記の、第1の態様及び第2の態様のうちのいずれかについての、一実施形態では、本開示の可変領域は、抗体3の、以下のCDR:
CDRH1:GYTFTDNYIH(配列番号127)
CDRH2:YINPSSAYAHYNEKFKT(配列番号128)
CDRH3:RYYSAMPFAY(配列番号129)
CDRL1:RASEDIYSGLA(配列番号130)又は
RASEDIYNGLA(配列番号131)
CDRL2:DSSTLHT(配列番号132)、又は
NSNTLHT(配列番号133)、又は
NSSTLHT(配列番号134)、又はDSNTLHT(配列番号135)
CDRL3:QQNYDFPLT(配列番号136)
の全てなど、1又は複数を含まない。
一実施形態では、本開示に従う可変ドメインは、配列番号149に示される配列を有さない。
一実施形態では、本開示に従う可変ドメインは、配列番号150に示される配列を有さない。
一実施形態では、本開示に従う可変ドメインは、配列番号151に示される配列を有さない。
一実施形態では、本開示に従う可変ドメインは、配列番号152に示される配列を有さない。
一実施形態では、本開示に従う可変ドメインは、配列番号153に示される配列を有さない。
本発明に従う多特異性抗体の一実施形態では、可変領域は、上記で規定した抗体1のCDR、上記で規定した抗体2のCDR、又は上記で規定した抗体3のCDRを含まない。
一実施形態では、多特異性抗体分子における1つの結合性ドメインなど、少なくとも1つの結合性ドメインは、本開示のフレームワークを含まない。
例えば、ブリージングと称する動的過程を介して凝集しやすい可変領域内の、本開示のフレームワーク配列の使用は、単量体の収率の改善及び/又は凝集しようとする傾向の低減をもたらしうるので有利である。
本発明はまた、各可変領域が、フレームワークと、3つずつのCDRとを有する、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を伴う、少なくとも1つの結合性ドメインを有する抗体分子の単量体発現のレベルを改善する方法であって、可変領域のフレームワークを、
i)FR1についての配列番号1、FR2についての配列番号2又は3、FR3についての配列番号4、及びFR4についての配列番号5を含むフレームワーク(VH領域のフレームワークなど);
ii)FR1についての配列番号16、FR2についての配列番号17又は18、FR3についての配列番号19、及びFR4についての配列番号20を含むフレームワーク(VH領域のフレームワークなど);
iii)FR1についての配列番号6、FR2についての配列番号7、FR3についての配列番号8、及びFR4についての配列番号9又は10を含むフレームワーク(VL領域のフレームワークなど);
iv)FR1についての配列番号11、FR2についての配列番号12、FR3についての配列番号13、及びFR4についての配列番号14又は15を含むフレームワーク(VL領域のフレームワークなど);
v)これらのVHフレームワーク及びVLフレームワークの組合せ;並びに
vi)全フレームワーク内の、1、2、3、4、又は5カ所の変化を伴い、FR1、FR2、FR3、及びFR4のうちのいずれか1つにおけるアミノ酸変化も2カ所を超えない、これらのうちのいずれか1つの誘導体
を含むか、又はこれらからなる群から選択されるフレームワークへと変化させるステップを含む上記方法も提供する。
一実施形態では、VHフレームワークを、FR1についての配列番号1、FR2についての配列番号2又は3、FR3についての配列番号4、及びFR4についての配列番号5を含むフレームワークへと変化させる、本開示に従う方法が提供される。
一実施形態では、VHフレームワークを、FR1についての配列番号16、FR2についての配列番号17又は18、FR3についての配列番号19、及びFR44についての配列番号20を含むフレームワークへと変化させる、本開示に従う方法が提供される。
一実施形態では、VLフレームワークを、FR1についての配列番号6、FR2についての配列番号7、FR3についての配列番号8、及びFR4についての配列番号9又は10を含むフレームワークへと変化させる、本開示に従う方法が提供される。
一実施形態では、VLフレームワークを、FR1についての配列番号11、FR2についての配列番号12、FR3についての配列番号13、及びFR4についての配列番号14又は15を含むフレームワークへと変化させる、本開示に従う方法が提供される。
一実施形態では、抗体分子の単量体のレベルを、フレームワーク(単数又は複数)を変化させる前に解析する、本開示に従う方法が提供される。
一実施形態では、抗体分子が、多特異性抗体分子、例えば二特異性又は三特異性抗体分子、例えば二特異性抗体分子である、本開示に従う方法が提供される。
一実施形態では、多特異性抗体分子が、少なくとも2つの結合性ドメインを含み、方法が、抗体分子内の結合性ドメインの相対位置を変化させる、さらなるステップを含む、本開示に従う方法が提供される。
一実施形態では、多特異性抗体の、少なくとも1つの結合性ドメインは、本明細書で開示される、凝集する傾向を低減したフレームワークを用いない。
一態様では、本開示の方法から得られるか、又は得ることが可能な抗体分子が提供される。
本発明はまた、抗体分子の単量体のレベルを改善するための、
i)FR1についての配列番号1、FR2についての配列番号2又は3、FR3についての配列番号4、及びFR4についての配列番号5を含むフレームワーク(VH領域のフレームワークなど);
ii)FR1についての配列番号16、FR2についての配列番号17又は18、FR3についての配列番号19、及びFR4についての配列番号20を含むフレームワーク(VH領域のフレームワークなど);
iii)FR1についての配列番号6、FR2についての配列番号7、FR3についての配列番号8、及びFR4についての配列番号9又は10を含むフレームワーク(VL領域のフレームワークなど);
iv)FR1についての配列番号11、FR2についての配列番号12、FR3についての配列番号13、及びFR4についての配列番号14又は15を含むフレームワーク(VL領域のフレームワークなど);
v)これらの組合せ;並びに
vi)全フレームワーク内の、1、2、3、4、又は5カ所の変化を伴い、FR1、FR2、FR3、及びFR4のうちのいずれか1つにおけるアミノ酸変化も2カ所を超えない、これらのうちのいずれか1つの誘導体
を含むか、又はこれらからなる群から選択されるフレームワークの使用も提供する。
一態様では、本発明は、各々が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を伴う、少なくとも2つの結合性ドメインを含み、各結合性ドメインが、抗原に特異的であり、6つのCDRを含む、多特異性抗体分子であって、少なくとも1つの可変領域であるVHAが、FR1についての配列番号1、FR2についての配列番号2若しくは3、FR3についての配列番号4、及びFR4についての配列番号5、又は全フレームワーク内の、1、2、3、4、若しくは5カ所の変化を伴い、FR1、FR2、FR3、及びFR4のうちのどの1つにおけるアミノ酸変化も2カ所を超えない、これらの誘導体を含むフレームワークを有することを特徴とする上記多特異性抗体分子を提供する。VHAが、VLAと対合する、一実施形態では、VLAは、FR1についての配列番号6、FR2についての配列番号7、FR3についての配列番号8、及びFR4についての配列番号9又は10を含むフレームワークを有する。
さらなる態様では、本発明は、各々が、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を伴う、少なくとも2つの結合性ドメインを含み、各結合性ドメインが、抗原に特異的であり、6つのCDRを含む、多特異性抗体分子であって、少なくとも1つの可変領域であるVLAが、FR1についての配列番号6、FR2についての配列番号7、FR3についての配列番号8、及びFR4についての配列番号9若しくは10、又は全フレームワーク内の、1、2、3、4、若しくは5カ所の変化を伴い、FR1、FR2、FR3、及びFR4のうちのどの1つにおけるアミノ酸変化も2カ所を超えない、これらの誘導体を含むフレームワークを有することを特徴とする上記多特異性抗体分子を提供する。
一実施形態では、本開示で用いられる、重鎖生殖細胞系列アクセプター配列は、一般に、ヒトJH4 VH31-U3-15(VBASE、http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)であり、選択された軽鎖生殖細胞系列アクセプター配列は、ヒトJK1、又はヒト4VK1 2-1-(1)L4、同L18、同O2、若しくは同O12(VBASE、http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)であった。
一実施形態では、ドナー配列から、アクセプター配列へとグラフトされるCDRは、Chothia/Kabatの組合せ定義が使用されるCDR-H1を例外として、Kabatにより規定される通りである。
この番号付けシステムは、Kabatら、1987、「免疫学的に重要なタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、US Department of Health and Human Services、NIH、USA(本明細書の下記では、「Kabatら(前出)」と称する)において明示されている。そうでないことが指し示される場合を除き、本明細書では、この番号付けシステムを使用する。
Kabatによる残基の表示は、常に、アミノ酸残基の直線的な番号付けと直接対応するわけではない。実際の直線的なアミノ酸配列は、Kabatによる厳密な番号付けより少数のアミノ酸を含有する場合もあり、さらなるアミノ酸を含有する場合もあり、基本的な可変ドメイン構造の、フレームワークであれ、相補性決定領域(CDR)であれ、構造的構成要素の短縮、又はこれへの挿入に対応する。与えられた抗体についての、残基に対する、Kabatによる適正な番号付けは、抗体の配列内の、Kabatにより番号付けされた「標準」配列との相同性を有する残基のアライメントにより決定することができる。
重鎖可変ドメインのCDRは、Kabatによる番号付けシステムに従う、残基31~35(CDR-H1)、残基50~65(CDR-H2)、及び残基95~102(CDR-H3)に位置する。しかし、Chothia(Chothia,C.及びLesk,A.M.、J.Mol.Biol.、196、901~917(1987))に従うと、CDR-H1に相当するループは、残基26~残基32にわたる。したがって、本明細書で使用される「CDR-H1」は、Kabatによる番号付けシステムと、Chothiaによるトポロジカルなループ定義との組合せにより記載される通り、残基26~35を含む。
軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabatによる番号付けシステムに従う、残基24~34(CDR-L1)、残基50~56(CDR-L2)、及び残基89~97(CDR-L3)に位置する。
本明細書で用いられる「多特異性抗体」とは、2つ又はこれを超える結合性ドメイン、例えば、2つ又は3つの結合性ドメインを有する、本明細書で記載される抗体分子を指す。一実施形態では、本開示の多特異性抗体分子は、2つの抗原結合性部位だけを有する。
一実施形態では、構築物は、二特異性抗体である。本明細書で用いられる「二特異性分子」とは、同じ抗原に結合する場合もあり、異なる抗原に結合する場合もある、2つの抗原結合性部位を伴う分子を指す。一実施形態では、二特異性分子は、2つの異なる抗原に結合する。一実施形態では、ドメインは全て、同じ抗原に結合し、これは、抗原上の同じエピトープへの結合又は同じ抗原上の異なるエピトープへの結合を含む。
本明細書で用いられる「抗原結合性部位」とは、標的抗原と特異的に相互作用する、可変領域の対、特に、コグネイト対を含む、分子の部分、すなわち、別のタンパク質/ポリペプチドにおける領域、形状、帯域、エピトープを、特異的に認識する、分子の部分を指す。
本明細書で用いられる「特異的に」とは、それが特異的である抗原だけを認識する結合性部位、又はそれが特異的である抗原に対して、それが非特異的である抗原に対して有する親和性と比較して、著明に大きな結合親和性、例えば、5、6、7、8、9、10倍の結合親和性を有する結合性部位を指すことを意図する。
結合親和性は、標準的なアッセイ、例えば、BIAcoreなどの表面プラズモン共鳴により測定することができる。
一実施形態では、抗体分子が、二特異性など、二特異性又は三特異性である、本開示に従う多特異性抗体分子が提供される。
一実施形態では、多価フォーマットは、分子フォーマットが、下記でより詳細に論じられる、ダイアボディー、scダイアボディー、トリアボディー、テトラボディー、タンデムscFv、FabFv、Fab’Fv、FabdsFv、Fab-dsscFv(BYbeともまた称する)、Fab-(dsscFv)2Fab-scFv、diFab、diFab’、タンデムscFv-Fc、scFv-Fc-scFv、scダイアボディー-Fc、scダイアボディー-CH3、Ig-scFv、scFv-Ig、V-Ig、Ig-V、及びDVDIgを含むか、又はこれらからなる群から選択される多価フォーマットなど、当技術分野で公知の多価フォーマット、及び本明細書で記載される(本明細書の定義節における開示を含む)多価フォーマットを含む。FabdsFv及びFab-dsscFv(BYbe))はまた、図7にも示される。一実施形態では、多特異性抗体は、FabdsFvでないか、又はdsFvを含有しない。Fab-(dsscFv)2フォーマット及びFab-dsscFv-dsFvフォーマットはまた、図8にも示され、また、TrYbeフォーマットとしても公知である。
一実施形態では、本発明において記載されるフレームワーク残基又はフレームワーク配列を有するVHA領域及びVLA領域は、scFv内又はdsscFv内に存在する。scFv又はdsscFvは、scFv又はdsscFvを、Fabなど、別の抗原結合性ドメインへと連結しうる、多特異性抗体分子の部分である。具体例は、scFv又はdsscFvが、BYbe抗体分子又はTrYbe抗体分子の部分である場合である。
したがって、本発明の一態様では、多特異性抗体分子は、
a)式(I)のポリペプチド鎖:
VH-CH1-X-(V1)p;
b)式(II)のポリペプチド鎖:
VL-CL-Y-(V2)q;
[式中、
VHは、重鎖可変ドメインを表し;
CH1は、重鎖定常領域のドメイン、例えば、そのドメイン1を表し;
Xは、結合又はリンカーを表し;
Yは、結合又はリンカーを表し;
V1は、dsscFvを表し;
VLは、可変ドメイン、例えば、軽鎖可変ドメインを表し;
CLは、定常領域、例えば、Cカッパなど、軽鎖定常領域ドメインに由来するドメインを表し;
V2は、dsscFvを表し;
pは、0又は1であり;
qは、0又は1であり;及び
pが、1の場合、qは、0であり、qが、1の場合、pは、0である]
を含むか、又はこれらからなる。
一実施形態では、多特異性抗体分子は、
a)式(Ia)のポリペプチド鎖:
VH-CH1-X-V1;
b)式(IIa)のポリペプチド鎖:
VL-CL;
[式中、VH、CH1、X、VL、CL、及びV1は、上記で規定した通りである]
を含むか、又はこれらからなる。
一実施形態では、
a)式(Ib)のポリペプチド鎖:
VH-CH1;
b)式(IIb)のポリペプチド鎖:
VL-CL-Y-V2;
[式中、VH、CH1、X、VL、CL、及びV2は、上記で規定した通りである]
を含むか、又はこれらからなる多特異性抗体分子が提供される。
一実施形態では、本開示に従う多特異性抗体分子は、BYbe(すなわち、図7においてもまた示される、式(Ia及びIIa)又は式(Ib及びIIb)の抗体分子)である。
本発明に従う方法では、一実施形態では、挿入される/置きかえられるフレームワーク(単数又は複数)は、scFv、Fv、dsscFv、又はdsFvを含む、scFv、Fv、dsscFv、又はdsFv内におけるものであり、これらのうちのいずれか1つが、BYbeなどの多特異性抗体分子の部分である場合を含む。
一実施形態では、挿入されるフレームワークは、BYbeなど、本開示の抗体分子のscFv構成要素内に挿入される。一実施形態では、挿入されるフレームワークは、BYbeなど、本開示の抗体分子のdsscFv構成要素内に挿入される。
一実施形態では、本開示に従う多特異性抗体分子は、
・式(I)及び(II)のそれぞれ[式中、VH-CH1部分が、VL-CL部分と一体に、機能的なFab断片又はFab’断片を形成する];又は
・式(Ia)及び(IIa)のそれぞれ[式中、VH-CH1部分が、VL-CL部分と一体に、機能的なFab断片又はFab’断片を形成する];又は
・式(Ib)及び(IIb)のそれぞれ[式中、VH-CH1部分が、VL-CL部分と一体に、機能的なFab断片又はFab’断片を形成する]
の重鎖及び軽鎖(本明細書では、一体となった1対を、「単量体」と称する)の二量体として提供される。
本発明の一態様では、多特異性抗体分子は、
a)式(I)のポリペプチド鎖:
VH1-CH1-X-V1;及び
b)式(II)のポリペプチド鎖:
VL1-CL-Y-V2;
[式中、
VH1は、重鎖可変ドメインを表し;
CH1は、重鎖定常領域のドメイン、例えば、そのドメイン1を表し;
Xは、結合又はリンカーを表し;
Yは、結合又はリンカーを表し;
V1は、dsFv、sdAb、scFv、又はdsscFvを表し;
VL1は、軽鎖可変ドメインを表し;
CLは、Cカッパなど、軽鎖定常領域に由来するドメインを表し;
V2は、dsFv、sdAb、scFv、又はdsscFvを表す]
を含むか、又はこれらからなる二量体として提供される。
一実施形態では、V1は、dsscFvであり、V2は、dsscFvであり、これらはまた、Fab-(dsscFv)2とも称する。V1及び/又はV2は、本発明に従うVHAフレームワーク配列及びVLAフレームワーク配列を含有しうる。
VHは、可変ドメインを表す。一実施形態では、VHは、重鎖可変ドメインを表す。一実施形態では、VHは、キメラ可変ドメインである、すなわち、VHは、少なくとも2つの種に由来する構成要素、例えば、ヒトフレームワーク及び非ヒトCDRを含む。一実施形態では、VHをヒト化する。一実施形態では、VHは、完全ヒトVHである。
VLは、可変ドメインを表す。一実施形態では、VLは、軽鎖可変ドメインを表す。一実施形態では、VLは、キメラ可変ドメインである、すなわち、VLは、少なくとも2つの種に由来する構成要素、例えば、ヒトフレームワーク及び非ヒトCDRを含む。一実施形態では、VLをヒト化する。一実施形態では、VLは、完全ヒトVLである。
一般に、VH及びVLは一体に、抗原結合性ドメインを形成する。一実施形態では、VH及びVLは、コグネイト対を形成する。
本明細書で用いられる「コグネイト対」とは、in vivoにおいて発生した、単一の抗体に由来する可変ドメインの対、すなわち、宿主から単離された、可変ドメインの天然における対合を指す。したがって、コグネイト対は、VHとVLとの対である。一例では、コグネイト対は、抗原に協同作用的に結合する。宿主では、抗原に対する親和性の成熟が生じ、高度な最適化が可能であり、前記抗原に極めて特異的であるため、コグネイト対は、有利であることが多い。
本明細書で用いられる「可変領域」とは、3つのCDRと、適切なフレームワークとを含む、抗体鎖内の領域を指す。本開示における使用のための可変領域は、一般に、当技術分野で公知の任意の方法により作出されうる抗体(宿主から単離された抗体など)に由来するであろう。
本明細書で用いられる「~に由来する」とは、用いられる配列、又は用いられる配列と高度に類似する配列が、抗体の軽鎖又は重鎖など、元の遺伝子素材から得られたという事実を指す。
本明細書で用いられる「高度に類似する」とは、その全長にわたり、96、97、98、又は99%類似するなど、95%又はこれを超えて類似するアミノ酸配列を指すことを意図する。
一実施形態では、VH及びVLにより形成される結合性ドメインは、第1の抗原に特異的である。
一実施形態では、CH1ドメインとは、重鎖に由来する天然におけるドメイン1、又はこれらの誘導体、例えば、配列番号108に提示されるIgG1 CH1配列、又は配列番号109に提示されるIgG4 CH1配列である。
一実施形態では、軽鎖内のCL断片とは、定常カッパ配列若しくは定常ラムダ配列、又はこれらのいずれかの誘導体、例えば、配列番号110に提示されるカッパ配列である。
本明細書で用いられる、天然におけるドメインの誘導体とは、天然における配列内の、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸を、置きかえるか、又は欠失させて、例えば、所望されない特性を消失させることなど、ドメインの特性を最適化させるが、ドメインの特徴的な特色(単数又は複数)は保持した誘導体を指すことを意図する。
一実施形態では、フレームワークの誘導体は、代替的アミノ酸、例えば、ドナー残基で置きかえられた、1つ、2つ、3つ、又は4つのアミノ酸を有しうる。
一実施形態では、機能的なFab断片内又はFab’断片内には、1又は複数の、天然であるか、又は操作された、鎖間(すなわち、軽鎖と重鎖との間の)ジスルフィド結合が存在する。
一実施形態では、「天然」ジスルフィド結合は、本開示の構築物、例えば、式(I)及び(II);又は式(Ia)及び(IIa);又は式(Ib)及び(IIb)のポリペプチド鎖内の、CH1とCLとの間に存在する。
CLドメインが、カッパ鎖又はラムダ鎖に由来する場合、結合を形成するシステインの天然の位置は、ヒトcカッパ鎖内及びcラムダ鎖内の214である(Kabatによる番号付け、4版、1987)。
CH1内の、ジスルフィド結合を形成するシステインの正確な位置は、実際に用いられる、特定のドメインに依存する。したがって、例えば、ヒトガンマ1では、ジスルフィド結合の天然の位置は、233位に位置する(Kabatによる番号付け、4版、1987)。ガンマ2、ガンマ3、ガンマ4、IgM、及びIgDなど、他のヒトアイソタイプについての、結合を形成するシステインの位置も公知であり、例えば、ヒトのIgM、IgE、IgG2、IgG3、IgG4では、127位であり、ヒトのIgD及びIgA2Bの重鎖では、128位である。
VHと、VLとの可変ドメイン対の間のジスルフィド結合に加えて、分子の定常領域内のジスルフィド結合(単数又は複数)も存在しうる。
一実施形態では、本開示に従う多特異性抗体は、位置CH1とCLとの間における、天然におけるジスルフィド結合と同等な位置、又はこれに対応する位置において、ジスルフィド結合を有する。
一実施形態では、CH1を含む定常領域、及びCLなどの定常領域は、天然におけるものではない位置にあるジスルフィド結合を有する。これは、システイン(単数又は複数)を、必要とされる位置(単数又は複数)において、アミノ酸鎖へと導入することにより、分子へと操作することができる。この非天然のジスルフィド結合は、CH1と、CLとの間に存在する天然のジスルフィド結合に加えたジスルフィド結合であるか、又はこれへの代替物としてのジスルフィド結合である。
操作システインの導入は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して実施することができる。これらの方法は、オーバーラップエクステンションPCRによる突然変異誘発、部位指向突然変異誘発、又はカセット突然変異誘発(一般に、Sambrookら、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning,A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989;Ausbelら、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、Greene Publishing & Wiley-Interscience、NY、1993を参照されたい)を含むがこれらに限定されない。部位指向突然変異誘発キットは、例えば、QuikChange(登録商標)Site-Directed Mutagenesisキット(Stratagene、La Jolla、CA)が市販されている。カセット突然変異誘発は、Wellsら、1985、Gene、34:315~323に基づき実施することができる。代替的に、突然変異体は、アニーリング、ライゲーション、及びPCR増幅、並びに重複するオリゴヌクレオチドのクローニングを介する、全遺伝子合成により作ることができる。
一実施形態では、CH1とCLとの間のジスルフィド結合は、全く存在しない、例えば、鎖間システインは、セリンなど、別のアミノ酸で置きかえることができる。したがって、分子の機能的なFab断片内には、鎖間ジスルフィド結合は存在しない。参照により本明細書に組み込まれる、WO2005/003170などの開示は、どのようにして、鎖間ジスルフィド結合を伴わないFab断片をもたらすのかについて記載している。
一実施形態では、V1は、dsscFvを表す。一実施形態では、V2は、dsscFvを表す。しかし、V1及びV2の両方が、同時に、dsscFvを表すことはない(すなわち、1つだけが、与えられた構築物中に存在する)。
一実施形態では、pは、1であり、qは、0である。一実施形態では、pは、0であり、qは、1である。
本明細書で用いられる「単鎖可変断片」又は「scFv」とは、VH可変ドメインと、VL可変ドメインとの間のペプチドリンカーにより安定化させた単鎖可変断片を指す。
本明細書で用いられる「ジスルフィドにより安定化させた単鎖可変断片」又は「dsscFv」とは、VH可変ドメインと、VL可変ドメインとの間のペプチドリンカーにより安定化させた単鎖可変断片を指し、また、VHとVLとの間の、ドメイン間ジスルフィド結合も含む。
一実施形態では、V1又はV2の可変ドメインであるVHとVLとの間のジスルフィド結合は、下記で列挙される残基のうちの2つの間に存在する(文脈により、そうでないことが指し示されない限りにおいて、下記の一覧では、Kabatによる番号付けを用いる)。Kabatによる番号付けに言及する場合、関与する参考文献は、Kabatら、1987、「免疫学的に重要なタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、US Department of Health and Human Services、NIH、USAである。
一実施形態では、ジスルフィド結合は、
・VH37+VL95C(例えば、Protein Science、6、781~788、Zhuら(1997)を参照されたい);
・VH44+VL100(例えば、Biochemistry、33、5451~5459、Reiterら(1994);又はJournal of Biological Chemistry、269巻、28号、18327~18331頁、Reiterら(1994);又はProtein Engineering、10巻、12号、1453~1459頁、Rajagopalら(1997)を参照されたい);
・VH44+VL105(例えば、J Biochem.、118、825~831、Luoら(1995)を参照されたい);
・VH45+VL87(例えば、Protein Science、6、781~788、Zhuら(1997)を参照されたい);
・VH55+VL101(例えば、FEBS Letters、377、135-139、Youngら(1995)を参照されたい);
・VH100+VL50(例えば、Biochemistry、29、1362~1367、Glockshuberら(1990)を参照されたい);
・VH100b+VL49;
・VH98+VL46(例えば、Protein Science、6、781~788、Zhuら(1997)を参照されたい);
・VH101+VL46;
・VH105+VL43(例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90巻、7538~7542頁、Brinkmannら(1993);又はProteins、19、35~47、Jungら(1994)を参照されたい);
・VH106+VL57(例えば、FEBS Letters、377、135~139、Youngら(1995)を参照されたい);
及び分子内に位置する可変領域対内の、これらに対応する位置(単数又は複数)を含む群から選択される位置にある。
一実施形態では、ジスルフィド結合は、VH44位と、VL100位との間に形成される。
ジスルフィド結合が形成されうるように、上記で列挙したアミノ酸対は、システインによる置きかえに資する位置にある。システインは、公知の技法により、これらの所望の位置へと操作されうる。一実施形態では、したがって、本開示に従う、操作システインとは、所与のアミノ酸位置における天然における残基が、システイン残基で置きかえられた場合を指す。
操作システインの導入は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して実施することができる。これらの方法は、オーバーラップエクステンションPCRによる突然変異誘発、部位指向突然変異誘発、又はカセット突然変異誘発(一般に、Sambrookら、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning,A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989;Ausbelら、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、Greene Publishing & Wiley-Interscience、NY、1993を参照されたい)を含むがこれらに限定されない。部位指向突然変異誘発キットは、例えば、QuikChange(登録商標)Site-Directed Mutagenesisキット(Stratagen、La Jolla、CA)が市販されている。カセット突然変異誘発は、Wellsら、1985、Gene、34:315~323に基づき実施することができる。代替的に、突然変異体は、アニーリング、ライゲーション、及びPCR増幅、並びに重複するオリゴヌクレオチドのクローニングを介する、全遺伝子合成により作ることができる。
したがって、一実施形態では、V1又はV2の可変ドメインであるVHとVLとを、2つのシステイン残基の間のジスルフィド結合により連結することができ、この場合、システイン残基の対の位置は、VH37及びVL95、VH44及びVL100、VH44及びVL105、VH45及びVL87、VH100及びVL50、VH100b及びVL49、VH98及びVL46、VH101及びVL46、VH105及びVL43及びVH106及びVL57を含むか、又はこれらからなる群から選択される。
一実施形態では、V1又はV2の可変ドメインであるVHとVLとを、CDRの外部にある、VH内の1つ及びVL内の1つである、2つのシステイン残基の間のジスルフィド結合により連結することができ、この場合、例えば、システイン残基の対の位置は、VH37及びVL95、VH44及びVL100、VH44及びVL105、VH45及びVL87、VH100及びVL50、VH98及びVL46、VH105及びVL43及びVH106及びVL57からなる群から選択される。
一実施形態では、V1の可変ドメインであるVHとVLとを、一方をVH44位とし、他方をVL100位とする、2つの操作システイン残基の間のジスルフィド結合により連結する。
一実施形態では、V2の可変ドメインであるVHとVLとを、一方をVH44位とし、他方をVL100位とする、2つの操作システイン残基の間のジスルフィド結合により連結する。
一実施形態では、dsscFv V1の重鎖可変ドメインを、Xへと接合させるか、又はdsscFv V2の重鎖可変ドメインを、Yへと接合させる。
一実施形態では、dsscFv V1の軽鎖可変ドメインを、Xへと接合させるか、又はdsscFv V2の軽鎖可変ドメインを、Yへと接合させる。
一実施形態では、V1のVHドメインを、Xへと接合させる、例えば、CH1へと接合させる。一実施形態では、V1のVLドメインを、Xへと接合させる、例えば、CH1へと接合させる。一実施形態では、V2のVHドメインを、Yへと接合させる、例えば、Cカッパへと接合させる。一実施形態では、V2のVLドメインを、Yへと接合させる、例えば、Cカッパへと接合させる。一実施形態では、Xは、結合である。一実施形態では、Yは、結合である。一実施形態では、X及びYのいずれも、結合である。明らかに、pが、0であり、且つ、Xが、結合である場合、鎖は、CH1で終結するため、本質的に、Xは、存在しない。明らかに、qが、0であり、且つ、Yが、結合である場合、鎖は、CLで終結するため、本質的に、Yは、存在しない。
一実施形態では、Xは、リンカー、例えば、部分CH1と部分V1とを接続するのに適するペプチドである。一実施形態では、Yは、リンカー、例えば、部分CLと部分V2とを接続するのに適するペプチドである。一実施形態では、X及びYのいずれも、リンカーである。
一実施形態では、pは、1であり、Xは、リンカーであり、qは、0であり、Yは、存在しない。
一実施形態では、qは、1であり、Yは、リンカーであり、pは、0であり、Xは、存在しない。
一実施形態では、ペプチドリンカーは、50アミノ酸の長さ又はこれ未満の長さ、例えば、19、10、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1アミノ酸など、20アミノ酸又はこれ未満の長さである。
一実施形態では、リンカーは、G4S(すなわち、GGGGS;配列番号42)の反復単位、例えば、SGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号45)など、この、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの単位に基づく。本開示の構築物中で用いられるリンカーが、配列番号46に示される配列を有する実施形態では、例えば、配列は、X又はYが、リンカーである場合に用いることができる。
当然ながら、本開示の構築物中のX、Y、及びscFv構成要素には、リンカーのための、少なくとも3つの可能な位置が存在する。
一実施形態では、リンカーは、本明細書で示される配列、例えば、配列番号29~97から選択される。一実施形態では、リンカーは、配列番号29又は配列番号30に示される配列から選択される。一実施形態では、Xは、配列番号29に示される配列を有する。一実施形態では、Yは、配列番号30に示される配列を有する。ヒンジ配列を、配列番号31~39に示す。可撓性リンカー配列を、配列番号40~80[配列番号42~47の配列中、(S)は、任意選択である]に示す。
非可撓性リンカーの例は、配列番号81、配列番号82に示されるペプチド配列、及びPPPを含む。
一実施形態では、ペプチドリンカーは、アルブミン結合性ペプチドである。
アルブミン結合性ペプチドの例は、WO2007/106120に提示されており、配列番号83~96におけるリンカーを含む。
アルブミン結合性ペプチドの、リンカーとしての使用は、二特異性抗体分子の半減期を延長しうるので、有利である。
一実施形態では、V1の可変ドメインであるVHとVLとを接続する(すなわち、VHとVLとの間の)リンカー(例えば、適切なペプチドリンカー)が存在する。一実施形態では、V2の可変ドメインであるVHとVLとを接続する(すなわち、VHとVLとの間の)リンカー(例えば、適切なペプチドリンカー)が存在する。
一実施形態では、V1の可変ドメインであるVHとVLとを接続するリンカーは、配列であるGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号97)を有する。
一実施形態では、V2の可変ドメインであるVHとVLとを接続するリンカーは、配列であるGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号97)を有する。
本明細書で使用される「Fab断片」という用語は、VL(可変軽鎖)ドメイン及び軽鎖の定常ドメイン(CL)を含む軽鎖断片と、VH(可変重鎖)ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む重鎖断片とを含む抗体断片を指す。
Fvとは、2つの可変ドメイン、例えば、コグネイト対又は親和性成熟可変ドメイン、すなわち、VHとVLとの対など、協同作用的可変ドメインを指す。
本明細書で用いられる、協同作用的可変ドメインとは、互いに補完し合い、且つ/又はいずれも、Fvを、目的の抗原に特異的とする抗原結合性に寄与する可変ドメインである。
本明細書で使用される「単鎖Fv」という用語又は「scFv」と略記される用語は、単一のポリペプチド鎖を形成するように連結された(例えば、ペプチドリンカーにより)、VH抗体ドメイン及びVL抗体ドメインを含む抗体断片を指す。このフォーマットでは、重鎖及び軽鎖の定常領域は、除外される。
本明細書で使用される「単一ドメイン抗体」という用語は、単一の単量体である、抗体の可変ドメインからなる抗体断片を指す。単一ドメイン抗体の例は、VH若しくはVL又はVHHを含む。本明細書では、これらの用語を、互換的に使用する。
本明細書で用いられるダイアボディーとは、VH/VL対と、さらなるVH/VL対とによる、2つのFv対であって、第1のFvのVHが、第2のFvのVLへと連結され、第1のFvのVLが、第2のFvのVHへと連結されるように、2つのFv間リンカーを有する、上記2つのFv対を指す。
本明細書で用いられるトリアボディーとは、ダイアボディーと同様のフォーマットであって、3つのFvと、3つのFv間リンカーとを含む、上記フォーマットを指す。
本明細書で用いられるテトラボディーとは、ダイアボディーと同様のフォーマットであって、4つのFvと、4つのFv間リンカーとを含む、上記フォーマットを指す。
本明細書で用いられるタンデムscFvとは、単一のFv間リンカーが存在するように、単一のリンカーを介して連結された、2つのscFvを指す。
本明細書で用いられるタンデムscFv-Fcとは、1つずつのタンデムscFvが、例えば、定常領域断片である-CH2CH3のヒンジを介して、CH2ドメインのN末端へと付加された、2つのタンデムscFvを指す。
本明細書で用いられるFabFvとは、可変領域が、以下:重鎖のCH1及び軽鎖のCLの各々のC末端へと付加されたFv断片を指す。フォーマットは、このPEG化形としてもたらされうる。
本明細書で用いられるFab’Fvは、Fab部分が、Fab’で置きかえられた、FabFvと同様である。フォーマットは、このPEG化形としてもたらされうる。
本明細書で用いられるFabdsFvとは、Fv間ジスルフィド結合が、付加されたC末端の可変領域を安定化させるFabFvを指す。フォーマットは、このPEG化形としてもたらされうる。
本明細書で用いられるFab-scFvとは、scFvが、軽鎖又は重鎖のC末端上に付加されたFab分子である。
本明細書で用いられるFab’-scFvとは、scFvが、軽鎖又は重鎖のC末端上に付加されたFab’分子である。
本明細書で用いられるdiFabとは、それらの重鎖のC末端を介して連結された、2つのFab分子を指す。
本明細書で用いられるdiFab’とは、これらのヒンジ領域内の、1又は複数のジスルフィド結合を介して連結された、2つのFab’分子を指す。
本明細書で用いられるscダイアボディーとは、分子が、3つのリンカーを含み、そのVH末端及びVL末端が各々、さらなるFv対の可変領域のうちの1つへと連結された、通常のscFvを形成するように、Fv内リンカーを含むダイアボディーである。
本明細書で用いられるscダイアボディー-Fcとは、1つずつが、例えば、定常領域断片である-CH2CH3のヒンジを介して、CH2ドメインのN末端へと付加された、2つのscダイアボディーである。
本明細書で用いられるscFv-Fc-scFvとは、1つずつが、-CH2CH3断片の重鎖及び軽鎖の両方のN末端及びC末端へと付加された、4つのscFvを指す。
本明細書で用いられるscダイアボディー-CH3とは、各々が、例えば、ヒンジを介して、CH3ドメインへと連結された、2つのscダイアボディー分子を指す。
本明細書で用いられるIgG-scFvとは、重鎖の各々又は軽鎖の各々のC末端上に、scFvを伴う全長抗体である。
本明細書で用いられるscFv-IgGとは、重鎖の各々又は軽鎖の各々のN末端上に、scFvを伴う全長抗体である。
本明細書で用いられるV-IgGとは、重鎖の各々又は軽鎖の各々のN末端上に、可変ドメインを伴う全長抗体である。
本明細書で用いられるIgG-Vとは、重鎖の各々又は軽鎖の各々のC末端上に、可変ドメインを伴う全長抗体である。
DVD-Ig(二重VドメインIgGとしてもまた公知である)とは、各重鎖及び各軽鎖のN末端上に1つずつの、4つのさらなる可変ドメインを伴う全長抗体である。
本開示はまた、本明細書で開示される配列と、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%類似する配列も提供する。
本明細書で使用される「同一性」とは、アライメントされた配列内の、任意の特定の位置において、アミノ酸残基が、配列間で同一であることを指し示す。
本明細書で使用される「類似性」とは、アライメントされた配列内の、任意の特定の位置において、アミノ酸残基が、配列間で同種であることを指し示す。例えば、ロイシンで、イソロイシン又はバリンを置換することができる。互いを置換し合いうることが多い、他のアミノ酸は、
・フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);
・リシン、アルギニン、及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);
・アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);
・アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);及び
・システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)
を含むがこれらに限定されない。
同一性及び類似性の程度は、たやすく計算することができる(「計算分子生物学(Computational Molecular Biology)」、Lesk,A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;「生物計算:イフォマティクス及びゲノムプロジェクト(Biocomputing.Informatics and Genome Projects)」、Smith,D.W.編、Academic Press、New York、1993;「コンピュータによる配列データの解析(Computer Analysis of Sequence Data)」、第1部、Griffin,A.M.及びGriffin,H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994;「分子生物学における配列解析(Sequence Analysis in Molecular Biology)」、von Heinje,G.、Academic Press、1987;「配列解析プライマー(Sequence Analysis Primer)」、Gribskov,M.及びDevereux,J.編、M Stockton Press、New York、1991;NCBIから市販されているBLAST(商標)ソフトウェア(Altschul,S.F.ら、1990、J.Mol.Biol.、215:403~410;Gish,W.及びStates,D.J.、1993、Nature Genet.、3:266~272;Madden,T.L.ら、1996、Meth.Enzymol.、266:131~141;Altschul,S.F.ら、1997、Nucleic Acids Res.、25:3389~3402;Zhang,J.及びMadden,T.L.、1997、Genome Res.、7:649~656)。
一実施形態では、CDRが、ヒト以外の由来、特に、哺乳動物、例えば、ラット、マウス、ウサギ、ラクダ科動物、ヒツジ、ヤギなどの由来である、本開示に従う多特異性抗体分子が提供される。一実施形態では、CDRは、ヒトである。
動物の免疫化が必要である場合、周知で規定のプロトコールを使用して、ポリペプチドを、動物、好ましくは、非ヒト動物へと投与することにより、抗原ポリペプチドに対して発生する抗体を得ることができる(例えば、「実験免疫学ハンドブック(Handbook of Experimental Immunology)」、D.M.Weir(編)、4巻、Blackwell Scientific Publishers、Oxford、England、1986)を参照されたい)。ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ラクダ、又はブタなど、多くの温血動物も、免疫化することができる。しかし、マウス、ウサギ、ブタ、及びラットが、一般に、最も適する。
ヒト抗体レパートリーを、ヒトから単離するための方法、例えば、末梢血試料からの単離が公知であり、この場合、試料は、問題の抗原(病原体など)へと、既に曝露された者に由来する。
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(Kohler及びMilstein、1975、Nature、256:495~497)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozborら、1983、Immunology Today、4:72)、及びEBV-ハイブリドーマ法(Coleら、「モノクローナル抗体とがん治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」、77~96頁、Alan RLiss,Inc.、1985)など、当技術分野で公知の任意の方法により調製することができる。
抗体はまた、例えば、Babcook,J.ら、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93(15):7843~7848;WO92/02551;WO2004/051268及びWO2004/106377により記載されている方法により、特異的抗体の作製のために選択された、単一のリンパ球から作出された、免疫グロブリン可変領域のcDNAをクローニングし、発現させることを介する、単一のリンパ球抗体法を使用して作出することもできる。
本開示における使用のための抗体はまた、当技術分野で公知の、多様なファージディスプレイ法を使用しても作出することができ、Brinkmanら(J.Immunol.Methods、1995、182:41~50)、Amesら(J.Immunol.Methods、1995、184:177~186)、Kettleboroughら(Eur.J.Immunol.、1994、24:952~958)、Persicら(Gene、1997、1879~18)、Burtonら(Advances in Immunology、1994、57:191~280);並びにWO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;及びUS5,698,426;US5,223,409;US5,403,484;US5,580,717;US5,427,908;US5,750,753;US5,821,047;US5,571,698;US5,427,908;US5,516,637;US5,780,225;US5,658,727;US5,733,743;US5,969,108;及びWO2011/30305により開示される抗体を含む。
一実施形態では、本開示に従う多特異性分子をヒト化する(1つ、2つ、又は全ての結合性ドメインをヒト化する)。
本明細書で用いられるヒト化(CDRグラフト抗体を含む)とは、非ヒト種に由来する、1又は複数の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域とを有する分子(例えば、US5,585,089;WO91/09967を参照されたい)を指す。全CDRではなく、CDRの特異性決定基を移植することだけが必要でありうることが理解されるであろう(例えば、Kashmiriら、2005、Methods、36、25~34を参照されたい)。ヒト化抗体は、任意選択で、CDRが由来する非ヒト種に由来する、1又は複数のフレームワーク残基をさらに含みうる。
本明細書で使用される「ヒト化抗体分子」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖が、ドナー抗体(例えば、マウスのモノクローナル抗体)に由来する、1又は複数のCDR(所望の場合、1又は複数の改変CDRを含む)であって、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域のフレームワークへとグラフトされた、上記CDRを含有する抗体分子(例えば、US5,585,089;WO91/09967を参照されたい)を指す。総説については、Vaughanら、Nature Biotechnology、16、535~539、1998を参照されたい。一実施形態では、全CDRを移植するのではなく、本明細書の上記で記載したCDRのうちのいずれか1つに由来する特異性決定基のうちの1又は複数だけを、ヒト抗体フレームワークへと移植する(例えば、Kashmiriら、2005、Methods、36、25~34を参照されたい)。一実施形態では、本明細書の上記で記載したCDRのうちの1又は複数に由来する特異性決定基だけを、ヒト抗体フレームワークへと移植する。別の実施形態では、本明細書の上記で記載したCDRの各々に由来する特異性決定基だけを、ヒト抗体フレームワークへと移植する。
一実施形態では、本開示に従う多特異性分子をヒト化する。
CDR又は特異性決定基をグラフトする場合、CDRが由来するドナー抗体のクラス/種類を考慮して、マウス、霊長動物、及びヒトのフレームワーク領域を含む、任意の適切なアクセプターの、可変領域フレームワーク配列を使用することができる。本発明に従うヒト化抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域のほか、ドナー抗体からもたらされるCDR又は本明細書で開示されるCDRのうちの1又は複数を含む可変ドメインを有すると適切である。
本発明のヒト化抗体では、フレームワーク領域は、アクセプター抗体のフレームワーク領域と、正確に同じ配列を有する必要がない。例えば、希少な残基を、このアクセプター鎖のクラス又は種類に、より高頻度で発生する残基へと変化させることができる。代替的に、アクセプターフレームワーク領域内で選択された残基は、それらが、ドナー抗体内の同じ位置に見出される残基に対応するように変化させることもできる(Reichmannら、1998、Nature、332、323~324を参照されたい)。このような変化は、ドナー抗体の親和性を回復する最小限の必要に保たれるべきである。変化させることが必要でありうる、アクセプターフレームワーク領域内の残基を選択するためのプロトコールは、WO91/09967において明示されている。
本明細書で用いられるドナー抗体とは、宿主から単離されるか、又はライブラリー内で同定された、元の抗体を指す。
本明細書で用いられるドナー残基とは、CDRを供与した抗体内で見出される残基である。一般に、ドナー抗体は、非ヒト抗体であるので、ドナー残基は、非ヒト抗体に由来するであろう。一実施形態では、ドナー残基は、ヒト化抗体内で置きかえられる残基の位置と同じであるか、又はこれと対応する、ドナー抗体内の位置における残基である。
本開示で使用されうるヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY、及びPOM(Kabatら、前出)である。例えば、KOL及びNEWMを、重鎖に使用することができ、REIを、軽鎖に使用することができ、EU、LAY、及びPOMを、重鎖及び軽鎖の両方に使用することができる。代替的に、ヒト生殖細胞系列の配列を使用することができ、これらは、http://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/list2.phpにおいて利用可能である。
本開示のヒト化抗体分子では、アクセプターの重鎖及び軽鎖は、必ずしも、同じ抗体に由来する必要がなく、所望の場合、異なる鎖に由来するフレームワーク領域を有する複合鎖を含みうる。
フレームワーク領域は、アクセプター抗体のフレームワーク領域と、正確に同じ配列を有する必要がない。例えば、希少な残基を、このアクセプター鎖のクラス又は種類に、より高頻度で発生する残基へと変化させることができる。代替的に、アクセプターフレームワーク領域内で選択された残基は、それらが、ドナー抗体内の同じ位置に見出される残基に対応するように変化させることもできる(Reichmannら、1998、Nature、332、323~324を参照されたい)。このような変化は、ドナー抗体の親和性を回復する最小限の必要に保たれるべきである。変化させることが必要でありうる、アクセプターフレームワーク領域内の残基を選択するためのプロトコールは、WO91/09967において明示されている。
ドナー残基は、ドナー抗体、すなわち、CDRが、本来由来する抗体に由来する残基である。ドナー残基、例えば、マウス、ラット、又はウサギの残基は、ヒト受容体フレームワーク(アクセプター残基)に由来する、適切な残基で置きかえることができる。
一実施形態では、本開示の多特異性抗体は、完全ヒト抗体であり、特に、可変ドメインのうちの1又は複数は、完全ヒトドメインである。
完全ヒト分子とは、重鎖及び軽鎖の両方の可変領域及び定常領域(存在する場合)が全て、ヒト由来であるか、又は、必ずしも、同じ抗体に由来するわけではないが、ヒト由来の配列と実質的に同一である分子である。完全ヒト抗体の例は、例えば、上記で記載したファージディスプレイ法により作製された抗体並びにマウスにより作製される抗体であって、例えば、一般に、EP0546073;US5,545,806;US5,569,825;US5,625,126;US5,633,425;US5,661,016;US5,770,429;EP0438474;及びEP0463151において記載されている通り、抗体マウスの免疫グロブリンの可変領域遺伝子と、任意選択で、定常領域遺伝子とを、それらのヒト対応物で置きかえた、上記抗体を含みうる。
一実施形態では、本開示の多特異性抗体分子は、2つ、3つ、又はこれを超える、異なる、目的の抗原に、選択的に結合することが可能である。
一実施形態では、VH/VL、又はV1若しくはV2により形成される抗原結合性ドメインが結合する、目的の抗原は、細胞会合タンパク質、例えば、細菌細胞、酵母細胞、T細胞、内皮細胞又は腫瘍細胞、及び可溶性タンパク質などの細胞上の、細胞表面タンパク質から独立に選択される。
目的の抗原はまた、疾患時又は感染時に上方調節されるタンパク質、例えば、受容体及び/又はそれらの対応するリガンドなど、任意の医学的関連性があるタンパク質でもありうる。細胞表面タンパク質の特定の例は、接着分子、例えば、β1インテグリン、例えば、VLA-4、E-セレクチン、Pセレクチン、又はL-セレクチンなどのインテグリン、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD11a、CD11b、CD18、CD19、CD20、CD23、CD25、CD33、CD38、CD40、CD45、CDW52、CD69、CD134(OX40)、ICOS、BCMP7、CD137、CD27L、CDCP1、DPCR1、DPCR1、dudulin2、FLJ20584、FLJ40787、HEK2、KIAA0634、KIAA0659、KIAA1246、KIAA1455、LTBP2、LTK、MAL2、MRP2、ネクチン様2、NKCC1、PTK7、RAIG1、TCAM1、SC6、BCMP101、BCMP84、BCMP11、DTD、癌胎児性抗原(CEA)、ヒト乳脂肪グロブリン(HMFG1及び2)、MHCクラスI抗原及びMHCクラスII抗原、並びにVEGF、並びに、該当する場合、これらの受容体を含む。
可溶性抗原は、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-12、IL-16、IL-23などのインターロイキン、ウイルス抗原、例えば、RS(respiratory syncytial)ウイルス又はサイトメガロウイルスの抗原、IgEなどの免疫グロブリン、インターフェロンα、インターフェロンβ、又はインターフェロンγなどのインターフェロン、G-CSF又はGM-CSFなどのコロニー刺激因子、及びPDGF-α及びPDGF-βなどの血小板由来増殖因子、並びに、該当する場合、これらの受容体を含む。他の抗原は、細菌の細胞表面抗原、細菌毒素、インフルエンザ、EBV、HepA、HepB、及びHepCなどのウイルス、生物テロ剤、放射性核種、及び重金属、並びにヘビ及びクモの毒及び毒素を含む。
一実施形態では、本開示の抗体分子を使用して、目的の抗原の活性を、機能的に変更することができる。例えば、抗体分子は、前記抗原の活性を、直接的に、又は間接的に、中和する場合もあり、アンタゴナイズする場合もあり、アゴナイズする場合もある。
一実施形態では、V1は、ヒト血清アルブミンに特異的である。
一実施形態では、V2は、ヒト血清アルブミンに特異的である。
一実施形態では、V1又はV2及びVH/VLは、2つの異なる抗原に特異的である。一実施形態では、V1又はV2及びVH/VLは、同じ抗原に特異的である、例えば、この中の、同じエピトープ又は異なるエピトープに結合する。
一実施形態では、VH/VL及び/又はV1若しくはV2が結合する目的の抗原は、補体経路の活性化及び/又はエフェクター細胞の動員など、エフェクター機能を動員する能力をもたらす。
エフェクター機能の動員は、エフェクター機能が、その表面上に動員分子を保有する細胞と関連するという点で、直接的でありうる。間接的動員は、本開示に従う分子内の抗原結合性ドメイン(V1又はV2など)に対する抗原の、動員ポリペプチドへの結合が、例えば、因子の放出を引き起こし、これが、エフェクター機能を、直接的又は間接的に動員する場合に生じる場合もあり、シグナル伝達経路の活性化を介して生じる場合もある。例は、IL2、IL6、IL8、IFNγ、ヒスタミン、C1q、オプソニン、及びC2、C4、C3コンベルターゼ、及びC5~C9など、古典的な補体活性化カスケード及び代替的な補体活性化カスケードの他のメンバーを含む。
本明細書で使用される「動員ポリペプチド」は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIなどのFcγR、C1q及びC3などであるがこれらに限定されない、補体経路タンパク質、CD68、CD115、CD16、CD80、CD83、CD86、CD56、CD64、CD3、CD4、CD8、CD28、CD45、CD19、CD20、及びCD22などであるがこれらに限定されない、CDマーカータンパク質(Cluster of differentiationマーカー)を含む。CDマーカータンパク質である、さらなる動員ポリペプチドは、CD1、CD1d、CD2、CD5、CD8、CD9、CD10、CD11、CD11a、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD40、CD43、CD44、CD45、CD46、CD49、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD58、CD59、CD61、CD62、D62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64、CD66e、CD68、CD70、CD71、CD72、CD79、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、CD86、CD88、CD89、CD90、CD94、CD95、CD98、CD106、CD114、CD116、CD117、CD118、CD120、CD122、CD130、CD131、CD132、CD133、CD134、CD135、CD137、CD138、CD141、CD142、CD143、CD146、CD147、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD162、CD164、CD169、CD184、CD206、CD209、CD257、CD278、CD281、CD282、CD283及びCD304、又は細胞媒介性エフェクター機能を、直接的に、又は間接的に動員する能力を保持する、これらの任意の断片を含む。動員ポリペプチドはまた、エフェクター機能を有する、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、及びIgAなどの免疫グロブリン分子も含む。
一実施形態では、本開示に従う多特異性抗体分子内の抗原結合性ドメイン(V1又はV2など)は、補体経路タンパク質、例えば、C1qに対する特異性を有する。
さらに、本開示の多特異性抗体分子を使用して、核種キレータータンパク質に結合する抗体又は断片により、放射性核種をキレート化することができる。このような融合タンパク質は、イメージング又は治療のための放射性核種ターゲティング法において有用である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Altaiら、Bioconjug Chem、2013年6月19日:24(6)1102~9を参照されたい。
一実施形態では、本開示に従う分子内の抗原結合性ドメイン(V1又はV2など)は、CD68、CD80、CD86、CD64、CD3、CD4、CD8 CD45、CD16、及びCD35を含む群から選択される、CDマーカータンパク質に対する特異性を有する。
一実施形態では、本開示に従う分子内の抗原結合性ドメイン(V1又はV2など)は、例えば、前記血清担体タンパク質、循環免疫グロブリン分子、又はCD35/CR1に結合することにより、前記目的の抗原に対する特異性を伴う抗体断片に、半減期の延長をもたらすために、血清担体タンパク質、循環免疫グロブリン分子、又はCD35/CR1に対する特異性を有する。
本明細書で使用される「血清担体タンパク質」は、チロレキシン結合性タンパク質、トランスサイレチン、α1-酸糖タンパク質、トランスフェリン、フィブリノーゲン、及びアルブミン、又はこれらのうちのいずれかの断片を含む。
本明細書で使用される「循環免疫グロブリン分子」は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、sIgA、IgM、及びIgD、又はこれらのうちのいずれかの断片を含む。
CD35/CR1とは、36日間の半減期(28~47日間の正常範囲;Lanaroら、1971、Cancer、28(3):658~661)を有する、赤血球上に存在するタンパク質である。
一実施形態では、VH/VLが特異性を有する、目的の抗原は、アルブミン、特に、ヒト血清アルブミンなど、ヒト血清担体などの血清担体タンパク質である。
一実施形態では、V1が特異性を有する、目的の抗原は、アルブミン、特に、ヒト血清アルブミンなど、ヒト血清担体などの血清担体タンパク質である。
一実施形態では、V2が特異性を有する、目的の抗原は、アルブミン、特に、ヒト血清アルブミンなど、ヒト血清担体などの血清担体タンパク質である。
一般に、V1又はV2及びVH/VLのいずれもが、血清担体タンパク質に対する特異性を有するわけではない。
一実施形態では、本開示の多特異性抗体分子は、標的抗原(単数又は複数)に対する親和性の改善をもたらすように加工される。このような変異体は、CDRの突然変異(Yangら、J.Mol.Biol.、254、392~403、1995)、鎖シャッフリング(Marksら、Bio/Technology、10、779~783、1992)、大腸菌(E.coli)の突然変異株の使用(Lowら、J.Mol.Biol.、250、359~368、1996)、DNAシャッフリング(Pattenら、Curr.Opin.Biotechnol.、8、724~733、1997)、ファージディスプレイ(Thompsonら、J.Mol.Biol.、256、77~88、1996)、及びセクシャルPCR(Crameriら、Nature、391、288~291、1998)を含む、多数の親和性成熟プロトコールにより得ることができる。Vaughanら(前出)は、これらの親和性成熟法について論じている。
この文脈における、本明細書で用いられる、親和性の改善とは、出発分子に対する改善を指す。
所望の場合、本開示における使用のための抗体分子を、1又は複数のエフェクター分子(単数又は複数)へとコンジュゲートさせることができる。エフェクター分子は、本発明の抗体へと接合させうる、単一の部分を形成するように連結された、単一のエフェクター分子、又は2つ若しくはこれを超えるこのような分子を含みうることが理解されるであろう。エフェクター分子へと連結された抗体断片を得ることが所望され場合、これは、抗体断片を、直接、又はカップリング剤を介して、エフェクター分子へと連結する、標準的な化学的手順又は組換えDNA手順により調製することができる。当技術分野では、このようなエフェクター分子を、抗体へとコンジュゲートするための技法が周知である(Hellstromら、「制御薬物送達(Controlled Drug Delivery)」、2版、Robinsonら編、1987、623~53頁;Thorpeら、1982、Immunol.Rev.、62:119~58;及びDubowchikら、1999、「薬理学と治療剤(Pharmacology and Therapeutics)」、83、67~123を参照されたい)。特定の化学的手順は、例えば、WO93/06231、WO92/22583、WO89/00195、WO89/01476、及びWO03/031581において記載されている手順を含む。代替的に、エフェクター分子が、タンパク質又はポリペプチドである場合、連結は、例えば、WO86/01533及びEP0392745に記載されている、組換えDNA手順を使用して達成することもできる。
本明細書で使用される「エフェクター分子」という用語は、例えば、生物学的に活性のタンパク質、例えば、酵素、他の抗体又は抗体断片、合成ポリマー又は天然におけるポリマー、核酸及びこの断片、例えば、DNA、RNA、及びこれらの断片、放射性核種、特に、放射性核種、放射性同位体、キレート化金属、ナノ粒子、及び蛍光化合物、又はNMR若しくはESR分光光度法により検出されうる化合物などのレポーター基を含む。
他のエフェクター分子は、111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリフォルニウム252、イリジウム192、及びタングステン188/レニウム188などのキレート化放射性核種;又はアルキルホスホコリン、トポイソメラーゼ阻害剤、トキソイド、及びスラミンなどであるがこれらに限定されない薬物を含みうる。
他のエフェクター分子は、タンパク質、ペプチド、及び酵素を含む。目的の酵素はタンパク質分解性酵素、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼを含むがこれらに限定されない。目的のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドは免疫グロブリン、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、若しくはジフテリア毒素などの毒素、インスリン、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来増殖因子、若しくは組織プラスミノーゲン活性化因子などのタンパク質、抗血栓剤若しくは抗血管新生剤、例えば、アンギオスタチン若しくはエンドスタチン、又はリンホカイン、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、神経成長因子(NGF)などの生物学的応答修飾剤、或いは他の増殖因子及び免疫グロブリンを含むがこれらに限定されない。
他のエフェクター分子は、例えば、診断において有用な、検出用物質を含みうる。検出用物質の例は、多様な酵素、補欠分子群、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性核種、ポジトロン放射金属(ポジトロン断層法における使用のための)、及び非放射性常磁性金属イオンを含む。一般に、診断剤としての使用のための抗体へとコンジュゲートさせうる金属イオンについては、US4,741,900を参照されたい。適切な酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを含み;適切な補欠分子群は、ストレプトアビジン、アビジン、及びビオチンを含み;適切な蛍光材料は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン(dichlorotriazynylamine fluorescein)、ダンシルクロリド、及びフィコエリトリンを含み;適切な発光材料は、ルミノールを含み;適切な生物発光材料は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンを含み;適切な放射性核種は、125I、131I、111In、及び99Tcを含む。
別の実施形態では、エフェクター分子は、in vivoにおける抗体の半減期を延長する場合もあり、且つ/又は抗体の免疫原性を低減する場合もあり、且つ/又は抗体の、上皮障壁を越える、免疫系への送達を増強する場合もある。この種類の、適切なエフェクター分子の例は、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合性タンパク質、又はWO05/117984において記載されている、アルブミン結合性化合物などのアルブミン結合性化合物を含む。
エフェクター分子が、ポリマーである場合、エフェクター分子は一般に、合成ポリマー又は天然におけるポリマー、例えば、任意選択で置換された直鎖状鎖又は分枝状鎖である、ポリアルキレン、ポリアルケニレン又はポリオキシアルキレンポリマーの場合もあり、分枝状多糖又は非分枝状多糖、例えば、ホモ多糖又はヘテロ多糖の場合もある。
上述の合成ポリマー上に存在しうる、具体的な、任意選択の置換基は、1又は複数の、ヒドロキシ基、メチル基、又はメトキシ基を含む。
合成ポリマーの具体例は、任意選択で、置換された直鎖状鎖又は分枝状鎖のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、又はこれらの誘導体、とりわけ、任意選択で、メトキシポリ(エチレングリコール)などの置換ポリ(エチレングリコール)、又はこれらの誘導体を含む。
具体的な、天然におけるポリマーは、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン、又はこれらの誘導体を含む。
本明細書で使用される「誘導体」とは、反応性の誘導体、例えば、マレイミドなど、チオール選択的な反応性基を含むことを意図する。反応性基は、ポリマーへと、直接連結することもでき、リンカーセグメントを介して連結することもできる。このような基を有する残基は、場合によって、抗体断片とポリマーとの間の連結基として、生成物の部分を形成することが理解されるであろう。
ポリマーのサイズは、所望に応じて、変動させうるが、一般に、500Da~50000Da、例えば、20000~40000Da5000~40000Daの範囲の平均分子量であろう。ポリマーサイズは、特に、生成物の意図される使用、例えば、腫瘍など、ある特定の組織に局在化する能力、又は循環半減期を延長する能力(総説については、Chapman、2002、Advanced Drug Delivery Reviews、54、531~545を参照されたい)に基づき選択することができる。したがって、例えば、生成物が、例えば、腫瘍の処置における使用のために、循環を離れ、組織に浸透することが意図される場合、例えば、分子量を、約5000Daとする、低分子量ポリマーを使用することが有利でありうる。生成物が循環内に滞留する適用のためには、例えば、20000Da~40000Daの範囲の分子量を有する、高分子量ポリマーを使用することが有利でありうる。
適切なポリマーは、ポリ(エチレングリコール)、若しくは、とりわけ、メトキシポリ(エチレングリコール)、又はこれらの誘導体などのポリアルキレンポリマーを含み、とりわけ、分子量を、約15000Da~約40000Daの範囲とする。
一実施形態では、本開示における使用のための抗体を、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分へと接合させる。特定の一例では、抗体は、抗体断片であり、PEG分子は、抗体断片内に位置する、任意の利用可能なアミノ酸側鎖、又は末端のアミノ酸官能基、例えば、任意の遊離アミノ基、イミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基を介して接合させることができる。このようなアミノ酸は、抗体断片内で、天然において存在する場合もあり、組換えDNA方法を使用して、断片へと操作される場合もある(例えば、US5,219,996;US5,667,425;WO98/25971、WO2008/038024を参照されたい)。一実施形態では、本発明の抗体分子は、修飾Fab断片であり、この場合、修飾は、エフェクター分子への接合を可能とする、1又は複数のアミノ酸の、その重鎖のC末端への付加である。さらなるアミノ酸は、エフェクター分子を接合させうる、1又は複数のシステイン残基を含有する、修飾ヒンジ領域を形成すると適切である。複数の部位を使用して、2つ又はこれを超えるPEG分子を接合させることができる。
PEG分子は、抗体断片内に位置する、少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を介して、共有結合的に連結されると適切である。修飾抗体断片へと接合させた各ポリマー分子は、断片内に位置するシステイン残基の硫黄原子へと、共有結合的に連結することができる。共有結合的連結は、一般に、ジスルフィド結合であるか、又は、特に、硫黄-炭素結合であろう。チオール基を、適切に活性化したエフェクター分子の接合点として使用する場合、例えば、マレイミド及びシステイン誘導体など、チオール選択的誘導体を使用することができる。活性化ポリマーを、上記で記載した、ポリマー修飾された抗体断片の調製における出発材料として使用することができる。活性化ポリマーは、α-ハロカルボン酸又はα-ハロカルボン酸エステルなど、チオール反応性基を含有する任意のポリマー、例えば、ヨードアセトアミド、イミド、例えば、マレイミド、ビニルスルホン、又はジスルフィドでありうる。このような出発材料は、市販品(例えば、Nektar、旧称:Shearwater Polymers Inc.、Huntsville、AL、USA製の)を得ることもでき、従来の化学的手順を使用して、市販の出発材料から調製することもできる。特定のPEG分子は、20Kのメトキシ-PEG-アミン(Nektar、旧称:Shearwaterから市販されている;Rapp Polymere;且つ、SunBioからも市販されている)、及びM-PEG-SPA(Nektar、旧称:Shearwaterから市販されている)を含む。
一実施形態では、本開示の構築物中のFab又はFab’は、PEG化される、すなわち、例えば、EP0948544又はEP1090037[また、「ポリ(エチレングリコール)の化学、生物工学的応用、及び生物医学的応用(Poly(ethyleneglycol) Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications)」、1992、J.Milton Harris(編)、Plenum Press、New York;「ポリ(エチレングリコール)の化学及び生物学的応用(Poly(ethyleneglycol) Chemistry and Biological Applications)」、1997、J.Milton Harris及びS.Zalipsky(編)、American Chemical Society、Washington DC;並びに「生物医科学のためのバイオコンジュゲーションによるタンパク質カップリング法(Bioconjugation Protein Coupling Techniques for Biomedical Sciences)」、1998、M.Aslam及びA.Dent、Grove Publishers、New York;Chapman,A.、2002、Advanced Drug Delivery Reviews、2002、54:531~545も参照されたい]において開示されている方法に従い、これへと、PEG(ポリ(エチレングリコール))を共有結合的に接合させている。一実施形態では、PEGを、ヒンジ領域内のシステインへと接合させる。一例では、PEG修飾Fab断片は、修飾ヒンジ領域内の単一のチオール基へと共有結合的に連結されたマレイミド基を有する。リシン残基を、マレイミド基へと、共有結合的に連結することができ、リシン残基上のアミン基の各々へと、約20,000Daの分子量を有する、メトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーを接合させることができる。したがって、Fab断片へと接合させるPEGの全分子量は、約40,000Daでありうる。
特定のPEG分子は、PEG2MAL40K(Nektar、旧称:Shearwaterから市販されている)としてもまた公知の、N,N’-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール))(MW20,000)の、2-[3-(N-マレイミド)プロピオンアミド]エチルアミドで修飾されたリシンを含む。
PEGリンカーの代替的な供給元は、GL2-400MA2(この場合、下記の構造におけるmは、5であり、nは、約450である)及びGL2-400MA(この場合、mは、2であり、nは、約450である):
を供給するNOFを含む。
すなわち、各PEGは、約20,000Daである。
以下の種類:
の、さらなる代替的なPEGエフェクター分子は、Dr Reddy、NOF、及びJenkemから市販されている。
一実施形態では、PEG化された(例えば、本明細書で記載されるPEGにより)、本開示の抗体分子であって、残基鎖内のアミノ酸226、例えば、重鎖のアミノ酸226(連番による番号付け)におけるシステインアミノ酸、又はこの近傍のシステインアミノ酸残基を介して接合させた、上記本開示の抗体分子が提供される。
一実施形態では、DNA配列など、本開示の分子をコードするポリヌクレオチド配列が提供される。一実施形態では、式(I)、(Ia)、又は(Ib)のポリペプチド鎖をコードするDNA配列が提供される。一実施形態では、式(II)、(IIa)、又は(IIb)のポリペプチド鎖をコードするDNA配列が提供される。一実施形態では、本開示の分子の、2つ又はこれを超えるポリペプチド構成要素など、1又は複数のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列が提供され、例えば、式(I)及び(II)、又は(Ia)及び(IIa)、又は(Ib)及び(IIb)のポリペプチドをコードするDNA配列が提供される。
一実施形態では、DNAなどのポリヌクレオチドは、ベクター内に含まれる。
一実施形態では、ベクターは、式(I)、(Ia)、又は(Ib)のポリペプチドをコードするDNA配列を含み、例えば、DNAは、式(I)、(IIa)、及び/又は(IIb)のポリペプチドをコードするDNA配列へと直接的につながれたり、接続されたりしていない。
一実施形態では、ベクターは、式(II)、(IIa)、又は(IIb)のポリペプチドをコードするDNA配列を含み、例えば、DNAは、式(I)、(Ia)、及び/又は(Ib)のポリペプチドをコードするDNA配列へと直接的につながれたり、接続されたりしていない。
一実施形態では、重鎖及び軽鎖をコードするDNAが、1つのプラスミド上に与えられるベクター、又は重鎖が、1つのプラスミド/ベクター上に与えられ、軽鎖が、異なるプラスミド/ベクター上に与えられるベクターなど、ベクターは、本開示に従う抗体構築物の重鎖配列及び軽鎖配列をコードするDNAを、例えば、同じDNA鎖上又は異なるDNA鎖上(すなわち、接続されたDNA又は個別のDNA)に含む。
当業者には、ベクターを構築しうる、一般的な方法、トランスフェクション法、及び培養法が周知である。この点で、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、1999、F.M.Ausubel(編)、Wiley Interscience、New York;及びCold Spring Harbor Publishingにより刊行されている、Maniatisによるマニュアルが参照される。
また、本開示の抗体をコードする、本明細書で記載される、1又は複数のDNA配列を含む、1又は複数のクローニングベクター又は発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。任意の適切な宿主細胞/ベクター系を、本発明の抗体分子をコードするDNA配列を発現させるために使用することができる。細菌系、例えば、大腸菌系、及び他の微生物系を使用することもでき、真核細胞発現系、例えば、哺乳動物の宿主細胞発現系もまた、使用することができる。適切な哺乳動物の宿主細胞は、CHO細胞、骨髄腫細胞、又はハイブリドーマ細胞を含む。
本開示はまた、本開示に従う抗体分子を作製するためのプロセスであって、本発明の抗体分子をコードするDNAからの、タンパク質の発現をもたらすのに適する条件下で、本発明のベクターを含有する宿主細胞を培養するステップと、抗体分子を単離するステップとを含む上記プロセスも提供する。
重鎖及び軽鎖の両方を含む生成物を作製するために、細胞系に、第1のベクターが、軽鎖ポリペプチドをコードし、第2のベクターが、重鎖ポリペプチドをコードする、2つのベクターをトランスフェクトすることができる。代替的に、例えば、本明細書で記載される、軽鎖ポリペプチド及び重鎖ポリペプチドをコードする配列を含む、単一のベクターを使用することができる。一例では、細胞系に、各々が、本発明の抗体分子のポリペプチド鎖をコードする、3つのベクターをトランスフェクトすることができる。
一実施形態では、細胞に、1つずつが、例えば、同じベクター上、又は異なるベクター上に与えられる、本開示の異なるポリペプチドをコードする、2つのベクターをトランスフェクトする。一実施形態では、細胞(細胞系)は、式(Ia)のポリペプチド及び式(IIa)のポリペプチドをコードするDNAを含み、例えば、この場合、各ポリペプチドをコードするDNAは、同じベクター上、又は異なるベクター上にある。一実施形態では、細胞(細胞系)は、式(Ib)のポリペプチド及び式(IIb)のポリペプチドをコードするDNAを含み、例えば、この場合、各ポリペプチドをコードするDNAは、同じベクター上、又は異なるベクター上にある。
多特異性抗体生成物の発現を最適化するために、宿主細胞へとトランスフェクトされる各ベクターの比を変動させうることが理解されるであろう。一実施形態では、ベクターの比は、1:1である。当業者は、トランスフェクション後における、タンパク質の発現レベルについての規定の試験により、最適の比を見出すことが可能であることが理解されるであろう。
また、ポリペプチド構成要素のうちの、2つ又はこれを超える構成要素が、単一のベクター内のポリヌクレオチドによりコードされる場合、本開示のポリペプチド構成要素をコードする、各ポリヌクレオチドのために、異なるプロモーターを用いることにより、各ポリペプチド構成要素の相対的発現を変動させうることも理解されるであろう。
本開示に従う抗体及び断片は、宿主細胞から、良好なレベルで発現する。したがって、抗体及び/又は断片の特性は、市販品の加工に資すると考えられる。
本開示の抗体は、例えば、病理学的状態の処置及び/又は予防において、有用である。
本開示はまた、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体のうちの1又は複数と組み合わせて、本開示の抗体分子を含む、医薬組成物又は診断用組成物も提供する。したがって、本開示の抗体又はこれを含む組成物の、処置及び医薬の製造における使用のための使用が提供される。
組成物は通例、薬学的に許容される担体を通常含む、滅菌医薬組成物の部分として供給される。
本開示はまた、医薬組成物又は診断用組成物を調製するためのプロセスであって、本開示の抗体分子を添加し、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体のうちの1又は複数と併せて混合するステップを含む上記プロセスも提供する。
抗体分子は、医薬組成物又は診断用組成物中の、唯一の有効成分の場合もあり、他の抗体成分、例えば、抗IL-1β抗体、抗T細胞抗体、抗IFNγ抗体、若しくは抗LPS抗体、又はキサンチンなどの非抗体成分を含む、他の有効成分を伴う場合もある。他の適切な有効成分は、免疫学的寛容を誘導することが可能な抗体、例えば、抗CD3抗体又は抗CD4抗体を含む。
さらなる実施形態では、本開示に従う抗体分子又は組成物を、さらなる、薬学的に活性の薬剤、例えば、コルチコステロイド(フルチカゾンプロピオン酸エステルなど)及び/若しくはベータ-2-アゴニスト(サルブタモール、サルメテロール、又はフォルモテロールなど)、又は細胞増殖(cell grwoth及びcell proliferation)の阻害剤(ラパマイシン、シクロホスファミド、メトトレキサートなど)、又は、代替的に、CD28及び/若しくはCD40阻害剤と組み合わせて用いる。一実施形態では、阻害剤は、低分子である。別の実施形態では、阻害剤は、生物学的治療剤又は生物学的診断剤、例えば、標的に特異的な抗体である。
医薬組成物は、治療有効量の、本発明の抗体を含むと適切である。本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、標的の疾患若しくは状態を処置、改善、若しくは防止するか、又は検出可能な治療効果若しくは防止効果を呈するのに必要とされる、治療剤の量を指す。任意の抗体について、治療有効量は、まず、細胞培養物アッセイ、又は通例、齧歯動物、ウサギ、イヌ、ブタ、若しくは霊長動物における動物モデルにおいて推定することができる。動物モデルはまた、適切な濃度範囲投与経路を決定するのにも使用することができる。次いで、このような情報を使用して、ヒトにおける投与に有用な用量及び経路を決定することができる。
ヒト対象のための、正確な治療有効量は、対象の疾患状態の重症度、一般的な健康状態、対象の年齢、重量、及び性別、食餌、投与の時期及び頻度、薬物の組合せ(単数又は複数)、治療に対する反応感受性及び忍容性/応答に依存するであろう。この量は、規定の実験により決定することができ、医師の判断の範囲内にある。一般に、治療有効量は、0.01mg/kg~50mg/kg、例えば、0.1mg/kg~20mg/kgであろう。代替的に、用量は、1日当たり10~100、200、300、又は400mgなど、1日当たり1~500mg1日当たりでありうる。医薬組成物は、所定量の、本発明の活性薬剤を含有する単位剤形で存在すると好都合でありうる。
組成物は、患者へと、個別に投与することもでき、他の薬剤、薬物、又はホルモンと組み合わせて(例えば、同時に、逐次的に、又は別個に)投与することもできる。
一実施形態では、本開示の抗体又は組成物を、組合せ治療、例えば、がんを処置する組合せ治療において、特に、治療が、化学療法剤の投与及び/又は放射線療法の投与を含む場合に、用いる。
本開示の抗体分子が投与される用量は、処置される状態の性格、存在する炎症の広がり、及び抗体分子が、予防的に使用されるのか、既存の状態を処置するのに使用されるのかに依存する。
投与頻度は、抗体分子の半減期及びその効果の持続に依存するであろう。抗体分子の半減期が短い(例えば、2~10時間である)場合、1日当たり1又は複数回の投与を施すことが必要でありうる。代替的に、抗体分子の半減期が長い(例えば、2~15日間である)場合、毎日1回、毎週1回、なお又は1又は2カ月ごとに1回の投与を施しさえすればよい場合もある。
薬学的に許容される担体それ自体は、組成物を施される個体に有害な抗体の産生を誘導すべきではなく、毒性であるべきではない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー、アミノ酸コポリマー、及び不活性のウイルス粒子など、大型で、代謝が緩徐な高分子でありうる。
薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、及び硫酸塩などの無機酸塩、又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、及び安息香酸塩などの有機酸塩を使用することができる。
治療用組成物中の薬学的に許容される担体は、加えて、水、生理食塩液、グリセロール、及びエタノールなどの液体を含有しうる。加えて、保湿剤又は乳化剤又はpH緩衝物質などの補助物質も、このような組成物中に存在しうる。このような担体は、医薬組成物が、患者による服用のための、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、及び懸濁液として製剤化されることを可能とする。
投与に適する形態は、例えば、ボーラス注射又は連続注入による、例えば、注射又は注入による非経口投与に適する形態を含む。生成物は、注射又は注入のための生成物である場合、油性媒体中又は水性媒体中の、懸濁液、溶液、又はエマルジョンの形態を取ることが可能であり、懸濁剤、保存剤、安定化剤、及び/又は分散剤などの製剤化剤を含有しうる。代替的に、抗体分子は、適切な滅菌液体を伴う使用の前における復元のための乾燥形態でありうる。
製剤化したら、本発明の組成物は、対象へと直接投与することができる。処置される対象は、動物でありうる。しかし、1又は複数の実施形態では、組成物を、ヒト対象への投与に適合させる。
一実施形態では、本開示に従う製剤中では、最終製剤のpHは、抗体又は断片の等電点の値に類似しないが、これは、製剤のpHが7であれば、8~9又はこれを上回るpIが適切でありうるからである。理論に束縛されることを望まずに述べると、これは、最終製剤に、安定性の改善をもたらしうる、例えば、抗体又は断片は、溶液中に滞留すると考えられる。
本開示の医薬組成物は、経口経路、静脈内経路、筋内経路、動脈内経路、髄内経路、髄腔内経路、脳室内経路、皮内経路、経皮経路(例えば、WO98/20734を参照されたい)、皮下経路、腹腔内経路、鼻腔内経路、腸内経路、局所経路、舌下経路、膣内経路、又は直腸内経路を含むがこれらに限定されない、任意の数の経路により投与することができる。皮下噴射器もまた、本発明の医薬組成物を投与するのに使用することができる。治療用組成物は、溶液又は懸濁液としての注射剤として調製しうることが典型的である。注射の前における、液体媒体中の溶解又は懸濁に適する固体形態もまた、調製することができる。一実施形態では、本発明の抗体分子を、皮下投与する。
一実施形態では、本開示に従う抗体又は組成物を、例えば、自己投与に適するフォーマットで、シリンジへとあらかじめ充填して提供する。
組成物の直接的送達は一般に、皮下、腹腔内、静脈内、若しくは筋内において、注射により達せられるか、又は組織の間質腔へと送達される。組成物はまた、目的の特異的組織へも投与することができる。投薬治療は、単回の投与スケジュールの場合もあり、複数回の投与スケジュールの場合もある。
組成物中の有効成分は、本開示の抗体分子であることが理解されるであろう。組成物中の有効成分は、したがって、消化管内の分解を受けやすいであろう。したがって、組成物を、消化管を使用する経路により投与する場合、組成物は、抗体を分解から保護するが、消化管から吸収されたら、抗体を放出する、薬剤を含有する必要があるであろう。
薬学的に許容される担体についての完全な考察は、「レミントン薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」(Mack Publishing Company、N.J.、1991)において入手可能である。
一実施形態では、製剤は、吸入を含む局所投与のための製剤として提供される。
適切な吸入用調製物は、吸入用粉末、高圧ガスを含有する計量型エアゾール、又は高圧ガスを含有しない吸入用溶液(噴霧用溶液又は懸濁液など)を含む。活性物質を含有する、本開示に従う吸入用粉末は、上述の活性物質だけからなる場合もあり、上述の活性物質の、生理学的に許容される賦形剤との混合物からなる場合もある。
これらの吸入用粉末は、単糖(例えば、グルコース又はアラビノース)、二糖(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ糖及び多糖(例えば、デキストラン)、ポリアルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、又はこれらの、互いとの混合物を含みうる。単糖又は二糖を使用することが適切であるが、特に、ラクトース又はグルコースの使用が適切であるが、必ずしも、それらの水和物の形態における使用が適切なわけではない。
肺内沈着のための粒子は、1~9ミクロン、例えば、0.1~5μm、特に、1~5μmなど、10ミクロン未満の粒子サイズを必要とする。活性薬剤(抗体又は抗体断片など)の粒子サイズは、非常に重要である。
当技術分野では、吸入用エアゾールを調製するのに使用しうる高圧ガスが公知である。適切な高圧ガスは、n-プロパン、n-ブタン、又はイソブタンなどの炭化水素、並びにメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン、又はシクロブタンの塩素化誘導体及び/又はフッ素化誘導体などのハロ炭化水素から選択される。上述の高圧ガスは、それら自体で使用することもでき、これらの混合物中で使用することもできる。
特に、適切な高圧ガスは、TG11、TG12、TG134a、及びTG227から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。上述のハロゲン化炭化水素のうち、TG134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)及びTG227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)並びにこれらの混合物が、特に適する。
高圧ガス含有吸入用エアゾールはまた、共溶媒、安定化剤、界面活性剤(surface-active agent(surfactant))、抗酸化剤、滑沢剤、及びpHを調整するための手段など、他の成分も含有しうる。当技術分野では、これらの成分全てが公知である。
本発明に従う高圧ガス含有吸入用エアゾールは、重量で最大5%の活性物質を含有しうる。本発明に従うエアゾールは、例えば、重量で0.002~5%、重量で0.01~3%、重量で0.015~2%、重量で0.1~2%、重量で0.5~2%、又は重量で0.5~1%の活性物質を含有する。
代替的に、肺への局所投与はまた、例えば、噴霧器、例えば、コンプレッサーへと接続された噴霧器(例えば、Pari Respiratory Equipment,Inc.、Richmond、Va.製の、Pari Master(登録商標)コンプレッサーへと接続されたPari LC-Jet Plus(登録商標)噴霧器)などのデバイスを用いる、溶液製剤又は懸濁液製剤の投与による局所投与でもありうる。
一実施形態では、製剤は、噴霧化による送達のための単位用量を含有する、個別のアンプルとして提供される。
一実施形態では、抗体は、復元のための凍結乾燥形態、又は、代替的に、懸濁液製剤としての凍結乾燥形態で供給される。
本開示の抗体は、例えば、溶液又は懸濁液の形態で、溶媒中に分散させて送達することができる。本開示の抗体は、適切な生理学的溶液中、例えば、生理学的生理食塩液中、薬理学的に許容可能な溶媒中、又は緩衝液中に懸濁させることができる。当技術分野で公知の緩衝液は、約4.0~5.0のpHを達成するように、水1ml当たり、0.05mg~0.15mgのエデト酸二ナトリウム、8.0mg~9.0mgのNaCl、0.15mg~0.25mgのポオリソルバート、0.25mg~0.30mgの無水クエン酸、及び0.45mg~0.55mgのクエン酸ナトリウムを含有しうる。前述の通り、懸濁液は、例えば、凍結乾燥抗体から作ることができる。
治療用の懸濁液又は溶液による製剤はまた、1又は複数の賦形剤も含有しうる。当技術分野では、賦形剤が周知であり、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、及び重炭酸緩衝液)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば、血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール、及びグリセロールを含む。溶液又は懸濁液は、リポソーム内又は生体分解性マイクロスフェア内に封入することができる。製剤は、一般に、滅菌製造工程を用いて、実質的な滅菌形態で提供されるであろう。
これは、滅菌緩衝溶媒による溶液中の、抗体の無菌懸濁液である製剤に使用される、緩衝溶媒溶液の濾過と、当業者が精通している方法による、製剤の、滅菌容器への分注とによる、作製及び滅菌処理を含みうる。
本開示に従う噴霧用製剤は、例えば、フォイル製の包装材料内に包装された、単回投与単位(例えば、密封されたプラスチック製容器又はバイアル)として提供されうる。各バイアルは、ある容量、例えば、2mlの溶媒/溶液用緩衝液中に、単位用量を含有する。
本開示の抗体は、噴霧化を介する送達に適すると考えられる。
また、本開示に従う多特異性抗体分子と、賦形剤、希釈剤、又は担体とを含む医薬組成物も提供される。
本開示はまた、処置における使用のための、特に、感染症(ウイルス性感染症、細菌性感染症、真菌性感染症、及び寄生虫性感染症)、感染と関連する内毒性ショック、関節リウマチなどの関節炎、重度の喘息などの喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨盤内炎症性疾患、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣洞、腹膜炎、乾癬、血管炎、術後癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、髄膜脳炎、自己免疫性ブドウ膜炎、多発性硬化症、ループス(全身性エリテマトーデスなど)、及びギラン-バレー症候群など、中枢神経系及び末梢神経系の免疫媒介性炎症性障害、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化性肺胞炎、グレーブス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、他の自己免疫障害、膵炎、外傷(手術)、移植片対宿主病、移植片拒絶、心筋梗塞のほか、アテローム性動脈硬化、血管内凝固などの虚血性心疾患を含む心疾患、骨吸収、骨粗鬆症、骨関節炎、歯周病、低塩酸症、がん、例えば、上皮がんからなる群から選択される、状態又は障害の処置における使用のための、本開示に従う多特異性抗体分子又は医薬組成物へも拡張される。
したがって、感染症(ウイルス性感染症、細菌性感染症、真菌性感染症、及び寄生虫性感染症)、感染と関連する内毒性ショック、関節リウマチなどの関節炎、重度の喘息などの喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨盤内炎症性疾患、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣洞、腹膜炎、乾癬、血管炎、術後癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、髄膜脳炎、自己免疫性ブドウ膜炎、多発性硬化症、ループス(全身性エリテマトーデスなど)、及びギラン-バレー症候群など、中枢神経系及び末梢神経系の免疫媒介性炎症性障害、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化性肺胞炎、グレーブス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、他の自己免疫障害、膵炎、外傷(手術)、移植片対宿主病、移植片拒絶、心筋梗塞のほか、アテローム性動脈硬化、血管内凝固などの虚血性心疾患を含む心疾患、骨吸収、骨粗鬆症、骨関節炎、歯周病、低塩酸症、がん、例えば、上皮がんからなる群から選択される、状態又は障害の処置のための医薬の製造のための、本開示の多特異性抗体分子又は医薬組成物の使用が提示される。
本明細書で、本明細書の文脈において使用される「~を含むこと(comprising)」という用語は、「~を含むこと(including)」として解釈されるべきである。
実施形態及び優先形態は、技術的に適切である限りにおいて、組み合わせることができる。
本開示は、本明細書において、ある特定の整数を含む実施形態について記載する。本開示また、前記整数からなるか、又はこれらから本質的になる、同じ実施形態へも拡張される。
特許文献を含む参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書で引用される、実証的な実施形態は、免責事項の基盤として用いられうる。
本出願は、参照により本明細書に完全に組み込まれる、G1621591.5による優先権を主張する。本開示に対する補正は、本開示、特に、前記優先権の文献において開示された配列に基づきうる。
(例1)
645 CDRを、Fab内及びFab-dsscFv内の、497フレームワーク又は2109フレームワークへとグラフトした、645変異体についての解析
Fabを、ヒンジを伴わないFab(Fab)フォーマットとしてデザインし、全てのFab-dsscFv抗体(BYbeともまた称する)は、G4Sベースのリンカー(SGGGGSGGGGS;配列番号43)を介して、Fab重鎖(HC)を、ジスルフィドで安定化させたscFv(ds HL;すなわち、VH-リンカー-VL;リンカー=GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS;配列番号97)へと連結したHC BYbeとして構築した。HC BYbeは、645 CDRを、497フレームワーク又は2109フレームワークへとグラフトした、親645グラフト(gL4gH5)及びその645変異体を使用して構築した。645変異体は、scFv位において、ds HLとして、又はジスルフィドで安定化させたscFvとして、A26と共に、Fab位において使用した。図1に示される抗体を構築したが、ここで、FWとは、フレームワークを意味する。
方法
一過性のexpiHEK発現
製造元(Life Technologies)により推奨される通りに、50mlのスケール、二連で、ExpiFectamine(登録商標)法により、比を1:1とする、軽鎖プラスミド及び重鎖プラスミドを、ExpiHEK細胞へとトランスフェクトした。トランスフェクションを、37℃、140rpm、及び8%のCO2で振盪しながら、インキュベートした。7日後、上清を採取し、0.22μmのフィルターを介して濾過し、発現収率は、特許権のあるFabを、標準物質として使用するプロテインG HPLCにより決定した。
タンパク質の精製
MWCOを10kDとするCentricon濃縮器を使用して、上清を、40倍に濃縮し、その後、HiTrap Protein Gカラム(GE Healthcare)上にロードした。カラムを、PBS pH7.4で洗浄するのに続き、結合した材料を、0.1MのグリシンpH2.7で溶出させた。溶出物を、2Mのトリス-HCl(pH8.5)で中和してから、PBS pH7.4へと緩衝液交換した。溶出させたタンパク質を、280nmの吸光度で定量化し、PBS pH7.4中1mg/mlへと希釈し、さらなる解析の前に、4℃で、少なくとも16時間にわたり保管した。
サイズ除外(SE)HPLC
G3000におけるSE HPLCのために、精製されたタンパク質試料(約20μg)を、TSKgel G3000SW,10μm,7.5mm ID×300mmカラム(東ソー株式会社)へとロードし、0.2Mリン酸pH7の定組成勾配により、1mL/分で展開した。連続検出を、280nmの吸光度で行った。
SDS-PAGE
精製タンパク質(2μg)試料を、製造元の推奨(Life Technologies)に従い、4~20%、非還元及び還元の、Novexアクリルアミドトリス/グリシンSDS-ポリアクリルアミドゲルによる分離のために調製した。非還元ゲルでは、100mMのN-エチルマレイミドもまた、試料へと添加した。試料を、ゲルへとロードし、トリス/グリシンランニング緩衝液中、125Vの一定電圧で、約200分間にわたり分離した。SeeBlue2(Life Technologies)タンパク質ラダーを、標準物質として使用した。ゲルを、Instant Blue(Expedeon)で染色し、蒸留水を何回かにわたり交換することにより脱染色した。
熱安定性
Thermofluorアッセイを使用して、精製されたタンパク質の熱安定性をモニタリングした。反応ミックスは、5000倍濃度の原液から水で希釈された、30倍濃度のSYPRO(登録商標)Orange色素5μlと、PBSpH7.4中に0.11mg/mLの精製タンパク質試料45μlとを含有した。混合物のアリコート(10μl)を、384PCR用光学ウェルプレートへと、四連で分注し、7900HT Fast Real-Time PCR System(Agilent)にかけた。ペルチエベースのサーマルサイクリングシステムを、温度傾斜率を1.1℃/分とする、20℃~99℃に設定した。電荷結合素子(CCD)により、ウェル内の蛍光変化をモニタリングした。蛍光強度の増大をプロットし、傾きの屈曲点(単数又は複数)を使用して、熱安定性の遷移中心点(Tm)を得た。
表面プラズモン共鳴/二重親和性アッセイ
抗体の相互作用についての結合親和性及び反応速度についてのパラメータは、CM5センサーチップ(GE Healthcare Bio-Sciences AB)及びHBS-EP(10mMのHEPES(pH7.4)、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%v/vの界面活性剤P20)ランニング緩衝液を使用して、Biacore T100又はBiacore 3000上で行われる、表面プラズモン共鳴(SPR)により決定した。全ての実験は、25℃で実施した。ヒトF(ab’)2特異的ヤギFab(Jackson ImmunoResearch)、又は社内で作出された抗ヒトCH1モノクローナル抗体を使用して、抗体試料を、センサーチップ表面へと捕捉した。捕捉抗体の共有結合による固定化は、6000~7000応答単位(RU)のレベルまでの、標準的なアミンカップリング化学反応により達成した。
ヒトアルブミンである、ChromPure(Jackson ImmunoResearch)を、50nMから、捕捉抗体により滴定した。各アッセイサイクルは、3分間にわたる抗原(ヒトアルブミン)の注射からなる会合相の前に、1分間にわたる注射を使用して、抗体試料を捕捉し、この後で、10分間にわたり、解離をモニタリングすることからなった。各サイクルの後で、捕捉表面を再生させた。使用される流速は、捕捉には、10μl/分、会合相及び解離相には、30μl/分であり、再生には、10μl/分であった。リガンド(二特異性抗体)を、センサーチップ表面へと捕捉することにより、二特異性抗体が、ヒト血清アルブミン及びT細胞受容体リガンド(リガンド抗原)の両方に同時に結合する潜在的可能性を評価してから、3分間にわたる、5μMのヒト血清アルブミン:50nMのリガンド抗原;又は5μMのヒト血清アルブミン及び50nMのリガンド抗原の両方の混合溶液の個別の注入を実施した。
反応速度アッセイのために、抗原の滴定(ヒト血清アルブミンについては、62.5nM~2μMが典型的である)を実施し、ブランクのフローセルを、基準を差し引くために使用し、装置によるノイズ及びドリフトを差し引くために、緩衝液によるブランク注入を含めた。
反応速度パラメータは、Biacore T100 evaluation software v2.0.1、又はBiacore 3000 Biaevaluation v3.2を使用して、結果として得られるセンサーグラムを、標準的な1:1の結合モデルに、同時にグローバルフィッティングすることにより決定した。
結果
Fab及びBYbeの一過性の発現
図3:497フレームワーク又は2109フレームワークを伴うFabの発現収率(図3;2~3)は、親645 Fab(図1;1)と同等であった。ジスルフィドで連結されたHL scFvとしての、645を伴うHC BYbeでは、親645グラフトのフレームワークを、497フレームワーク又は2109フレームワークで置換したところ、発現の2倍の増大が観察された(図1;7~9)。645を、HC BYbeフォーマット内のFab位に置いたところ、親645と、497フレームワーク又は2109フレームワークを伴う変異体BYbeとの間で、発現の著明な変化は、観察されなかった(図3;10~12)。
Fab及びBYbeについての生物物理的解析
サイズ除外HPLC
図4:全てのFabは、フレームワークのアイソタイプ又はCDRに関わらず、高度に単量体であった(図4;1~6)。scFv(ds HL)位に645を伴うHC BYbeとしての、親645BYbe(図4;7)が、59単量体%であるのに対し、645 CDRを、2109フレームワーク(図4;9)又は497フレームワーク(図4;8)へとグラフトしたところ、単量体%は、それぞれ、80%及び93%へと増大したことから、フレームワーク残基は、多量体化に、著明に影響を及ぼすことが確認される。他方、HC BYbeフォーマットのFab位に645を伴う場合、497フレームワークは、効果を及ぼさず、親645及びこの変異体のいずれも、高度に単量体であった(図4;10~11)。2019フレームワーク(図4;12)を伴う場合、フレームワーク残基は、Fabとしてであっても、多量体化に影響を及ぼすと考えられ、CDRとフレームワークとのこの組合せ、及び親2109(図4;3、6)は、いずれも、高度に単量体である。
SDS-PAGE
図5:非還元SDS-PAGE上及び還元SDS-PAGE上では、全長Fab(図5;a)並びに軽鎖及び重鎖(図5;b)は、それらの予測Mrである、それぞれ、約49kDa及び約24~26kDaへと泳動された(図5;1~6)。
図6:非還元SDS-PAGEにより、全長BYbe生成物(図6;a)は、その予測Mr(約79kDa)より大きい、約89kDaへと泳動されることが観察された。全てのレーンの、このバンドの、それぞれ、上方及び下方において、多量体分子種並びに遊離軽鎖及び遊離重鎖を表す副次的なバンドを観察することができる。還元ゲル上では、重鎖(図6;b)及び軽鎖(図6;c)は、それらの予測分子量へと泳動された。
親645 Fab、497 Fab、及び2109 FabのTmは、それぞれ、83.1℃、71.4℃、及び70.8℃であった(表9;1;5~6)。645 CDRの、497フレームワーク又は2019フレームワークへのグラフティングは、それぞれ、80.2℃及び79.2℃のTmを結果としてもたらしたことから、熱安定性の決定における、CDR残基の重要性が確認される。しかし、645変異体を、A26 Fab重鎖へと連結したジスルフィド安定化scFvとしたHC BYbeでは、645 CDR/497 FW及び645 CDR/2109 FWのTmでは、それぞれ、15及び18℃の著明な低減が生じた(表9;7~9)。645変異体を、HC BYbeのFab位に置いたところ、Tmは、それほど大きな影響を受けず、645 CDR/2109 FWは、親645と同程度に安定性であると考えられた(表9;10~12)。
ヒト血清アルブミン(HSA)に対する親和性
桁数の点で、被験の組合せにおける、フォーマットのHSAに対する、オン速度及びオフ速度、並びに親和性は、親フォーマットと同等である。