JP7015517B2 - 枝管付きループ型熱音響機関 - Google Patents
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さらに、枝管付きループ型熱音響機関は、位相差調整機構を簡易な計算モデルで表すことができる。
かかる構成によれば、枝管付きループ型熱音響機関は、熱音響コア部の蓄熱器が1個の場合、その熱効率をより向上させることができる。
かかる構成によれば、枝管付きループ型熱音響機関は、原動機、冷凍機又は昇温機として利用することができる。
<枝管付きループ型熱音響機関の構成>
図1を参照し、本発明の第1実施形態にかかる枝管付きループ型熱音響機関(以下、「熱音響機関」)1の構成について、説明する。
熱音響コア部10は、蓄熱器11の両端部間に温度勾配を形成し、音響パワーと熱との変換を行うものである。本実施形態では、熱音響コア部10は、作動気体の音響パワーを増幅させる原動機であり、蓄熱器11と加熱器12と冷却器13とを備える。ここで、熱音響コア部10は、図2に示すように、蓄熱器11の両端を挟むように、加熱器12が蓄熱器11の一端側に配置され、冷却器13がその反対側、すなわち蓄熱器11の他端側に配置されている。
蓄熱器11は、ループ管30の管路に設けられ、作動気体を加熱及び冷却するものである。すなわち、蓄熱器11は、加熱器12及び冷却器13によって蓄熱器11の両端部間に温度勾配を形成して作動気体の音響パワーを増幅させる。蓄熱器11は、その一端部(以下、適宜、高温部11aと称する)と、その他端部(以下、適宜、常温部11bと称する)との間に生じる温度差を保つことによって、主として作動気体の音響パワーを増幅する機能を有している。蓄熱器11は、その構造や材料が特に限定されず、例えば、ループ管30の延在方向(管路方向)に多数の平行通路を有するセラミックス製のハニカム構造体や、多数枚のステンレス鋼メッシュ薄板を微小ピッチで積層した構造体とすることができる。あるいは、蓄熱器11として、金属繊維よりなる不織布状物等を用いることも可能である。
なお、図2には、後記する蓄熱器11の軸方向中心位置を破線で図示した。
加熱器12は、蓄熱器11の一端側に隣接してループ管30の管路に設けられ、蓄熱器11の一端部(高温部11a)を加熱するものである。すなわち、加熱器12は、外部熱を用いて蓄熱器11の一端を加熱する熱入力部として機能する。加熱器12は、例えば、加熱用の熱交換器から構成される。具体的には、加熱器12は、例えば、メッシュ板等の多数枚の金属板が微小ピッチで積層された構成とされる。この加熱器12には図示しない加熱装置が接続されており、その外周に設けられた環状部材12aを介して加熱処理される構成とされている。なお、図面では便宜上、蓄熱器11と加熱器12の間に環状部材12aの左壁が示されているが、加熱器12は、この左壁を通して蓄熱器11の一端側と隣接、すなわち密着している。さらに、加熱器12には、音響インピーダンス調整機構20の側に熱緩衝管(サーマルバッファチューブ)を設けてもよい(不図示)。
冷却器13は、蓄熱器11の他端側に隣接してループ管30の管路に設けられ、蓄熱器11の他端部(常温部11b)の熱を外部に放出するものである。すなわち、冷却器13は、冷却水や空気等を用いて蓄熱器11の他端の熱を外部に放出して冷却する機能を有している。冷却器13は、例えば、冷却用の熱交換器から構成される。冷却器13としては、基本的には加熱器12と同一構成とされており、例えば、メッシュ板等の多数枚の金属板が微小ピッチで積層された構成とされている。この冷却器13は、その周囲に冷却ブラケット13aが配設されている。この冷却ブラケット13aには図示しない冷却水路が接続されており、冷却水路を流れる冷却水により、冷却器13は冷却ブラケット13aを介して一定の冷却温度を維持しうる構成とされている。なお、図面では便宜上、蓄熱器11と冷却器13の間に冷却ブラケット13aの右壁が示されているが、冷却器13は、この右壁を通して蓄熱器11の他端側と隣接、すなわち密着している。
音響インピーダンス調整機構20は、ループ管30内の音響インピーダンスや位相差を調整するものである。具体的には、音響インピーダンス調整機構20は、蓄熱器11の位置を基準に予め設定した調整範囲内において、作動気体の圧力振動と断面平均体積流速振動との位相差(以下、「位相差」)が±50度の範囲内になるように調整する。ここで、蓄熱器11が1個の場合、その蓄熱器11の位置において、0度に近いことが好ましく、0度になるのがより好ましい。
さらに、音響インピーダンス調整機構20は、前記した位相差に加え、調整範囲内でループ管30内の音響インピーダンスがピークとなるように調整してもよい。このとき、蓄熱器11の位置において、音響インピーダンスがピークになることが好ましい。
また、音響インピーダンスのピークとは、音響インピーダンスの最大値のことである。
なお、音響インピーダンス調整機構20による音場調整は、詳細を後記する。
ループ管30は、作動気体が満たされる丸角長方形状の円筒管である。また、ループ管30は、始点x=0から時計回りに、熱音響コア部10の前段のループ管301と、熱音響コア部10と音響インピーダンス調整機構20との間のループ管302と、音響インピーダンス調整機構20の後段のループ管303とで構成される。ここで、ループ管30は、図1に示すように、その始点xを=0とし、その始点x=0から時計回りで熱音響コア部10までの長さをコア位置距離Xとする。つまり、コア位置距離Xは、ループ管301の長さである。また、ループ管長さXloopは、始点x=0から時計回りでループ管303の終点までを含む長さである。本実施形態では、ループ管長さXloopは、駆動周波数に応じた1/4波長よりも短いこととする。
ここでは、作動気体として大気圧空気を用いる場合は、枝管40の一端を開口していてもよい。また、枝管40の一端には、作動気体を封入するバッファータンクを設けてもよい(不図示)。すなわち、バッファータンクを設ける場合は、作動気体はループ管30内にも封入されて満たされるものであり、枝管40の一端を開口した場合は、大気圧空気で満たされるものである。
以下、音響インピーダンス調整機構20による調整を具体的に説明する。
まず、音響インピーダンス調整機構20以外の伝達マトリクスを求めるため、以下の式(1)に基づいて計算を行う。この式(1)は、Rottの波動方程式を行列化したものである。
なお、SVAL1が音響インピーダンス調整機構20の前面断面積、SVAL2が音響インピーダンス調整機構20の後面断面積、mがマス21の質量、kがばね22のばね定数、dがダンパ23の減衰係数を表す。
また、伝達マトリクスMloopは、式(7)に限定されず、熱音響機関1の構造や形状に対応した各要素の追加、削除、並べ替えを行えばよい。
本発明の第1実施形態にかかる熱音響機関1は、音響インピーダンス調整機構20によって、蓄熱器11の位置に応じて、音響インピーダンスや位相差を調整することができる。これにより、熱音響機関1は、装置形状の変更を少なくし、その熱効率を向上させることができる。
さらに、熱音響機関1は、音響インピーダンス調整機構20をばね・マス・ダンパ系のような簡易な計算モデルで表すことができる。
図4を参照し、本発明の第2実施形態にかかる熱音響機関1Bの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。
すなわち、熱音響機関1Bは、作動気体を満たしたループ管30に熱音響コア部10及び音響インピーダンス調整機構20Bを配置し、ループ管30から分岐した枝管40を有するものである。
なお、音響インピーダンス調整機構20B以外は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
音響インピーダンス調整機構20Bは、音響インピーダンス調整機構20(図3)と同様に音場を調整することに加え、熱音響コア部10で増幅された音響パワーに応動して発電を行なうリニア発電機50を備える。
なお、リニア発電機50は、その構成が特に限定されず、音響パワーにより永久磁石53がストロークする構成であればよい。
本発明の第2実施形態にかかる熱音響機関1Bは、第1実施形態と同様、装置形状の変更を少なくし、その熱効率を向上させることができる。さらに、熱音響機関1Bは、リニア発電機50が音響パワーを利用して発電するので、その熱効率をより向上させることができる。
図7を参照し、本発明の第3実施形態にかかる熱音響機関1Cの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。
すなわち、熱音響機関1Cは、作動気体を満たしたループ管30に熱音響コア部10及び音響インピーダンス調整機構20Cを配置し、ループ管30から分岐した枝管40を有するものである。
なお、音響インピーダンス調整機構20C以外は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
本発明の第3実施形態にかかる熱音響機関1Cは、第1実施形態と同様、装置形状の変更を少なくし、その熱効率を向上させることができる。さらに、熱音響機関1Cは、メッシュや膜など、音響インピーダンス調整機構20Cを簡易な構成にすることができる。
図8を参照し、本発明の第4実施形態にかかる熱音響機関1Dの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。
なお、冷凍機60以外は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
冷凍機60は、ループ管30から伝搬する音響パワーを消費して熱(熱エネルギー)に変換することで、冷却を行うものである。この冷凍機60は、図1の熱音響コア部10の可逆機構であり、冷凍用蓄熱器(蓄熱器)61と、冷凍用冷却器62と、冷気放出器63とを備える。つまり、冷凍機60は、冷凍用蓄熱器61と、冷凍用冷却器62と、冷気放出器63とを1つのユニットとして扱ったものである。ここで、冷凍機60は、冷凍用蓄熱器61の両端を挟むように、冷凍用冷却器62が冷凍用蓄熱器61の一端側に配置され、冷気放出器63がその反対側、すなわち冷凍用蓄熱器61の他端側に配置されている。
冷凍用蓄熱器61は、ループ管30の管路に設けられ、作動気体を冷却するものである。すなわち、冷凍用蓄熱器61は、ループ管30を通じて冷凍用蓄熱器61の一端部(以下、適宜、常温部と称する)に伝達された音響パワーを、冷凍用蓄熱器61の一端部(常温部)と冷凍用蓄熱器61の他端部(以下、適宜、低温部と称する)との間における温度差に変換する機能を有している。冷凍用蓄熱器61の常温部は、冷凍用冷却器62によって冷却されているため、伝達された音響パワーによって、冷凍用蓄熱器61の低温部は、常温部よりも低い温度まで冷却されて冷気が発生する。この冷気は、冷気放出器63によって外部に取り出される。冷凍用蓄熱器61は、熱容量の大きい蓄冷材からなる。蓄冷材としては、例えば、ステンレス鋼、銅、鉛等を用いることができ、また、冷凍用蓄熱器61の形状は多様な形状を適用することが可能である。
冷凍用冷却器62は、冷凍用蓄熱器61の一端側に隣接してループ管30の管路に設けられ、冷凍用蓄熱器61の一端部(常温部)の熱を外部に放出するものである。すなわち、冷凍用冷却器62は、冷却水や空気等を用いて冷凍用蓄熱器61の一端の熱を外部に放出して冷却する機能を有している。冷凍用冷却器62は、例えば、冷却用の熱交換器から構成される。具体的には、冷凍用冷却器62は、例えば、メッシュ板等の多数枚の金属板を微小ピッチで積層している。この冷凍用冷却器62は、その周囲に冷却ブラケット(不図示)を配設している。この冷却ブラケットには冷却水路が接続されており、冷却水路を流れる冷却水により、冷凍用冷却器62は冷却ブラケットを介して一定の冷却温度を維持する。
冷気放出器63は、冷凍用蓄熱器61の他端側に隣接してループ管30の管路に設けられ、冷凍用蓄熱器61の他端部(低温部)に発生する冷気を外部に放出するものである。すなわち、冷気放出器63は、冷凍用蓄熱器61の他端において発生する冷気を外部に取り出す冷気出力部として機能する。冷気放出器63は、例えば、冷凍用の熱交換器から構成される。冷気放出器63としては、基本的には冷凍用冷却器62と同一構成であり、例えば、メッシュ板等の多数枚の金属板を微小ピッチで積層している。この冷気放出器63の外周位置には、冷気(冷熱)を取り出す高熱伝導率材料(例えば、銅)よりなる環状部材を配設している。
本発明の第4実施形態にかかる熱音響機関1Dは、第1実施形態と同様、装置形状の変更を少なくし、その熱効率を向上させることができる。すなわち、熱音響機関1Dは、熱効率のよい熱音響冷凍機を実現できる。
図9を参照し、本発明の第5実施形態にかかる熱音響機関1Eの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。
なお、昇温機70以外は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
昇温機70は、ループ管30から伝搬する音響パワーを消費して熱(熱エネルギー)に変換することで、昇温を行うものである。この昇温機70は、昇温用蓄熱器(蓄熱器)71の両端部間に温度勾配を形成して作動気体の音響パワーで昇温するものであり、昇温用蓄熱器71と、昇温用加熱器72と、昇温用冷却器73とを備える。このように、昇温機70は、昇温用蓄熱器71と、昇温用加熱器72と、昇温用冷却器73とを1つのユニットとして扱ったものである。ここで、昇温機70は、昇温用蓄熱器71の両端を挟むように、昇温用加熱器72が昇温用蓄熱器71の一端側に配置され、昇温用冷却器73がその反対側、すなわち昇温用蓄熱器71の他端側に配置されている。ここで、昇温を行う場合、昇温用冷却器73を常温に保持することで、昇温用加熱器72が高い温度に上昇する。
本発明の第5実施形態にかかる熱音響機関1Eは、第1実施形態と同様、装置形状の変更を少なくし、その熱効率を向上させることができる。すなわち、熱音響機関1Eは、熱効率のよい熱音響昇温機を実現できる。
図1の熱音響機関1を実施例とし、図10の熱音響機関9を比較例とする。この図10の熱音響機関9は、図1の熱音響機関1から音響インピーダンス調整機構20を取り除いたものである。
なお、本発明では、作動気体の圧力、駆動周波数、ループ管の形状や材料、加熱器や冷却器の温度が前記した実施例に限定されないことは言うまでもない。
本発明にかかる熱音響機関は、前記した実施形態や実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で変形を加えることができる。
前記した各実施形態では、熱音響機関が1/4波長モードで駆動することとして説明したが、本発明は、これに限定されない。
また、本発明では、音響インピーダンス調整機構の設定条件を変更しながら、音響インピーダンス及び位相差を測定することにより、実験的に音響インピーダンス調整機構を構築してもよい。
10 熱音響コア部
11 蓄熱器
12 加熱器
13 冷却器
20,20B,20C 音響インピーダンス調整機構(位相差調整機構)
21 マス(質量)
22 ばね
23 ダンパ
24 コイル
25 抵抗
26 抵抗
27 コンデンサ
30 ループ管
40 枝管
50 リニア発電機
60 冷凍機
61 冷凍用蓄熱器(蓄熱器)
62 冷凍用冷却器
63 冷気放出器
70 昇温機
71 昇温用蓄熱器(蓄熱器)
72 昇温用加熱器
73 昇温用冷却器
Claims (3)
- 作動気体を満たしたループ管に、音響パワーと熱との変換を行う熱音響コア部、及び、前記ループ管内の位相差を調整する位相差調整機構を配置し、前記ループ管から分岐した枝管を有する枝管付きループ型熱音響機関であって、
前記位相差調整機構は、前記ループ管の管路方向を基準に前記熱音響コア部の蓄熱器内で予め設定した位置において、前記作動気体の圧力振動と断面平均体積流速振動との位相差が0度に近づくように調整し、
前記位相差調整機構は、質量、ばね、ダンパ、コイル、コンデンサ及び抵抗の何れか1以上からなる等価音響回路でモデル化できる機構であることを特徴とする枝管付きループ型熱音響機関。 - 前記枝管付きループ型熱音響機関は、前記熱音響コア部を1つ備えることを特徴とする請求項1に記載の枝管付きループ型熱音響機関。
- 前記熱音響コア部は、冷却器と前記蓄熱器と加熱器とを備える原動機、冷凍用冷却器と前記蓄熱器と冷気放出器とを備える冷凍機、又は、昇温用加熱器と前記蓄熱器と昇温用冷却器とを備える昇温機の何れかであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の枝管付きループ型熱音響機関。
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