JP7015062B2 - 明日葉・浜ぼうふうの栽培方法 - Google Patents

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本発明は、明日葉や浜ぼうふうを栽培する方法に関する。特には、苦味や香り(臭み)が少なく、柔らかで淡い色合いの明日葉や浜ぼうふうの茎(軸)を収穫できる栽培方法に関する。
明日葉(アシタバ)は、セリ科シシウド属の多年草であり、伊豆諸島などに自生するものがよく知られ、栽培もされている(特許文献1、2参照)。明日葉は、ビタミンやミネラル等の栄養素を豊富に含んでいる。
明日葉は、以下のような効果があるとされている。
(ア)「抗菌作用」や「抗酸化作用」があるカリウムを含み、アルツハイマー病や認知症の予防効果がある。
(イ)老廃物や「取りすぎた塩分」を体外に排出する「デトックス効果」によって、浮腫(むくみ)の改善や、便秘の解消の効果がある。
(ウ)通常食用される野菜では摂れない「カルコン」に含まれるポリフェノールの働きにより、高血圧予防の効果が期待できる。
浜ぼうふうは、セリ科ハマボウフウ属の一種であり、日本各地の海岸の砂地に自生する多年草である。山菜として食用にするほか、漢方薬・民間療法薬として利用される。近年、海浜の侵食や乱獲によって、自生地が著しく減少しており、福島県ではレッドデータブックに記載されている(評価は絶滅危惧II類)。
浜ぼうふうは、以下のような効果があるとされている。
(ア)長い根は、漢方薬(地沙参)として、解熱・去痰・鎮痛・風邪予防などの効用を有する。また、糖尿病・中風・リュウマチなどにも良いとされている。
(イ)「ぼうふう風呂」;乾燥させた浜ぼうふうの根や茎を木綿袋に入れて鍋で煮沸したものを、入浴直前に、風呂の湯に入れて入浴する養生法である。血行を良くし体が温まることから、疲労回復・筋肉痛緩和・風邪予防・湯冷め防止などの効能があるとされている。
特開昭59-159714 特開昭63-109721
明日葉の軟質茎の栽培方法として、従来の典型的なものは、直射日光の当たらない、「榛(はん)の木」の根元で栽培する方法や、圃場におけるマルチ栽培方法がある。従来の栽培方法で栽培された明日葉の軟質茎は、強い苦味や独特の香味があり、それらを苦手とする人が多く、好みに偏りがあった。浜ぼうふうも、明日葉と同様に、苦味・香味が強く、好みに偏りがあった。
本発明は、以下の少なくとも一つを達成することを目的とする。
(1)苦味や香りが少なく(適度に残った)、多くの人に好まれ易い、明日葉や浜ぼうふうの軟質茎を収穫できる方法を提供する。
(2)白色あるいは淡い色合い(黄色やピンク)を有する、明日葉や浜ぼうふうの軟質茎を収穫できる方法を提供する。
(3)明日葉や浜ぼうふうが自生する環境に近い状態で、滋養に富んでおり、強靭で耐性の高い明日葉や浜ぼうふうを栽培する方法を提供する。
(4)成長が早い明日葉や浜ぼうふうの軟質茎を収穫できる方法を提供する。
(5)藻屑や竹チップといった要廃棄処理物の有効活用方法を提供する。
本発明の第一の明日葉・浜ぼうふうの栽培方法は、 明日葉又は浜ぼうふうの成株を採取するか栽培し、その後、前記成株を、太陽光を遮蔽した環境に置いた状態で、該成株の茎を軟質茎として伸長させて収穫する方法であって、 海藻を、前記成株の苗床に敷くか、前記成株の周囲に置くか、及び/又は、前記成株を定植する土に混ぜ込むかすることを特徴とする。上記海藻に加えて、あるいは海藻に代えて、竹チップを、前記成株の苗床に敷くか、前記成株の周囲に置くか、及び/又は、前記成株を定植する土に混ぜ込むかすることも好ましい。
本発明の第二の明日葉・浜ぼうふうの栽培方法は、 明日葉又は浜ぼうふうの成株を採取するか栽培し、その後、前記成株を、太陽光を遮蔽した環境に置いた状態で、該成株の茎を軟質茎として伸長させて収穫する方法であって、 前記成株の、ある程度伸長した茎の先の部分を除くほとんどの部分を、籾殻、切藁、おが屑、竹チップ、藻屑、落ち葉、及び/又は、白砂などの粒片状物からなる被覆材で覆うことを特徴とする。
海藻(藻屑など)や竹チップを、明日葉・浜ぼうふうの成株の苗床に敷いたり、成株の周囲に置く、あるいは、成株を定植する土に混ぜ込むことにより、明日葉・浜ぼうふうの自生地(海岸やその近くの竹林周辺など)に似た滋養環境を、畑作栽培において作ることができる。例えば、成株の植え込み時に、露地面より約30cm下に藻屑を敷く。これにより、丈夫な根が良く伸びて、根腐れ防止となり越冬も可能となる。また、作物をさらにしっかりと、より早く成長させることができる。また、通常栽培よりも苦味や香りが少なく柔らかい軟質茎を収穫できる。
竹チップを明日葉の栽培に利用することにより、本来、竹やぶなどで自生している明日葉は、成長も早く、色も良い。また、甘みが増す。
藻屑は、海岸に打ち寄せられた、あるいは打ち上げられた、雑多な海藻の屑のことである。竹チップは、竹の幹や枝を、粉砕機で砕いた片状のものである。藻屑や竹は、以前は、集めて積み上げたものを野焼きして処理したりしていた。しかしながら、環境保護や生活環境維持のために、地方行政機関などにより、野焼きが禁止される地域が多くなっている。そのため、藻屑や竹の処理に苦慮しているのが実情である。本発明の栽培方法においては、藻屑や竹チップといった要廃棄処理物の有効活用方法を提供できる。
浜ぼうふうの栽培において、海藻(藻屑)を利用することにより、浜ぼうふうの自生地である海岸に似た滋養環境を畑作栽培において作ることができることは、近年、海浜の浸食や乱獲により、自生浜ぼうふうが減少状況にある中で、特に意義深いことである。
粒片状物からなる被覆材で成株や茎の相当部分を覆う方法においては、被覆材によりある程度の遮光効果を得るとともに、雨や風から保護され、かつ保温性を増し、従来より早く、また高品質の長い軟質茎を生育させることができる。また、被覆材のない場合、例えば海岸などで本来は地面から横に茎が伸びるが、チップなどの被覆材を入れることにより茎が上(太陽)に向かって伸びるので、収穫しやすい。被覆材として藻屑や竹チップを用いれば、上述の自生地に似た滋養環境を作る作用もある。なお、被覆材と遮光シートを併用することもできる。また、被覆材を使用しないか、被覆材の使用を最低限として、遮光を遮光シートや遮光ビニールハウスにより行うこともできる。
粒片状物からなる被覆材で成株や茎の大部分を覆う方法においては、茎の伸長にあわせて被覆材の層を厚くし、茎が所望の長さとなった時点で茎を収穫することもできる。この方法では、苦味・匂いがより少ない軟質茎を栽培できる。また、収穫後、被覆材の層に延びている別の茎を伸長させることにより、繰り返し軟質茎を収穫することもできる。
軟質茎の収穫後には、被覆材を除けて成株の葉を出すか、遮光シートを外す(あるいは遮光性の低いものに変える)かして、成株に太陽光と風にさらした状態で10日程度生育させ、成株の状態を自然回復させることも、好ましい。その後、軟質茎伸長栽培工程(収隠栽培)を繰り返し、軟質茎をほぼ2年間収穫できる。その後は、根を収穫し、漢方薬の原料などにすることができる。
本発明の他の明日葉・浜ぼうふうの栽培方法は、 海藻若しくは竹チップを苗床に敷くか、株の周囲に置くか、及び/又は、前記成株を定植する土に混ぜ込むかすることを特徴とする。この栽培方法は、軟質茎を得ることを主目的とするのではなく、主に薬用の根などを得ることを目的とするものである。この方法においても、明日葉・浜ぼうふうの自生地に似た滋養環境を作ることができ、作物をさらにしっかりと、より早く成長させることができる。
本発明の明日葉・浜ぼうふうの栽培方法においては、成株は、野生の自生しているものや、種付け栽培したもの、株分け栽培したものなどを用いることができる。太陽光を遮蔽した環境(暗黒・薄明)において軟質茎を伸長させる軟質茎伸長栽培(収隠栽培)工程に入る前には、必要十分な程度、例えば成株高さが20~30cmになる程度に成株を成長させることが好ましい。
成株育成工程においては、自生環境と同様程度の、太陽光が当たる、風通しの良い環境で成株を栽培することができる。なお、風通しが良いと、根腐れや新芽(特に太陽光遮蔽下で出たもの)の腐れを防ぐことができるので好ましい。あるいは、日当たりの良い圃場における栽培では、寒冷紗で覆うなどして、太陽光や風を三分の一程度遮断した状態で生育させることも好ましい。畝に播種するときは、寒冷紗などで畝を覆い、神津島などの比較的温暖な地域では、2月中旬~10月中旬は自然温度で育てることができる。
軟質茎伸長栽培工程においては、白色の軟質茎を得るには、太陽光をほとんど遮断した暗黒環境、ただし完全遮断すると株の根が傷むので、90%程度の遮断とする。黄色あるいはピンクの軟質茎を得るには、70~80%程度の遮断とする(太陽光や風がほぼ入らなければ具体的な遮断方法は限定されない)。およそ20日前後で、やわらかな茎が収穫できる。
溝の中で栽培する方法では、例えば幅40cm、深さ45cmの溝の中で、溝の上に遮光シートを被せることにより、暗黒あるいは隠薄明環境を実現できる。ビニールハウス栽培では、表面(外面)がシルバー、裏面(内面)が黒色の遮光シートを用いることが好ましい。
本発明の第一実施形態に係る明日葉の栽培方法において、成株の植え付け時の様子、及び、軟質茎伸長栽培工程の第一期の模様を説明するための模式的断面図である。 第一実施形態に係る明日葉の栽培方法において、図1から進んで、軟質茎伸 長栽培工程の第二期の模様を説明するための模式的断面図である。 第一実施形態に係る明日葉の栽培方法において、図2から進んで、軟質茎伸長栽培工程の第三期の模様を説明するための模式的断面図である。 本発明の第四実施形態に係る明日葉の栽培方法を説明するための模式的断面図である。(A)は軟質茎伸長栽培工程の第三期の模様を説明するための図であり、(B)は一般の明日葉の形態を説明する図である。 本発明の第五実施形態に係る浜ぼうふうの栽培方法を説明するための模式的断面図である。(A)は軟質茎伸長栽培工程の第三期の模様を説明するための図であり、(B)は海岸で自生する一般の浜ぼうふう形態を説明する図である。
1;明日葉の成株、1b;葉、1f・1h・1k・1p・1r・1w;茎、1x;根
3;土、5;藻屑、7;溝、11;被覆材、15;寒冷紗、19;遮光シート
51;本発明実施形態の明日葉、51b;葉、51f・51k・51p;茎、51x;根、61;被覆材、
101;一般の明日葉、101b;葉、101f・101k;茎、101x;根
71;本発明実施形態の浜ぼうふう、71b;葉、71f・71k・71p;茎、71x;根、81;被覆材
171;一般の浜ぼうふう、171b;葉、171f・171k;茎、171x;根
第一実施形態
図1に示すように、圃場の地面の土3に溝7を掘る。溝7の寸法は、図の成株1を植え付けた状態では、幅40cm、深さ45cm程度であるが、溝掘りの際には、深さ75cm程度の溝を掘り、底に藻屑5を成株1一株当たり50g置き、土を30cm程度(図のDK)被せる。藻屑は、海岸に打ち上げられたものを、3分ほど水に浸し乾燥させた後に用いることが好ましい。
そして、生育した成株1を、溝7の底に植え付ける。植え付ける成株1は、葉1bの高さ(図のHS)が20~30cm程度にまで生育したものが好ましい。成株は、自生する明日葉の株を採取したものでも、種から栽培したものでも、溝7の中で種から育てたものでもよい。溝7の中で成株1を生育させる場合は、茎1fの硬化を防ぐため、溝7の上(開口部)に寒冷紗15を引くことが好ましい。
溝7の底には、被覆材11を入れる。被覆材11の厚さは、成株1の一番上に延びた葉1bが顔を出す程度である。被覆材11は、籾殻、切藁、おが屑、竹チップ、藻屑、落ち葉、及び/又は、白砂などの粒片状物からなるものである。被覆材で成株や茎の相当部分を覆う方法においては、竹チップを、成株1一株当たり50グラム程度以上を、被覆材11に含有させることが好ましい。これにより、明日葉の自生する竹林の近辺の環境に似た栽培環境を実現できる。なお、被覆材11の遮光効果が不十分な場合は、寒冷紗15又は遮光シートを溝7の上(開口部)に引く。
図2は、図1の状態から、明日葉の茎1f・1h・1k・1pが伸びた状態である。茎1f・1hは、図1の状態でも存在していたものが伸びたものである。茎1kは、図1の状態では出ていなかった脇芽が出て伸びたものである。茎1pは、地中の根1xから出て伸びたものである。なお、これらの図は、あくまでも説明のための模式的な図であって、厳密な整合性を有するものではない。
図2の状態で、図1の状態で置いた被覆材11-1の上に、追加の被覆材11-2を足す。この際も、一番先(上)の葉1bが被覆材11-2の上に少し出る程度とする。つまり、被覆材で成株や茎の相当部分を覆う方法においては、茎の伸長にあわせて被覆材の層を厚くする。これにより、茎に日光や風が当たるのを防止する。なお、日光や風をシート15により防ぐよりも、被覆材で防ぐほうが、雨や風から保護され、かつ保温性を増すので、有利である。
図3は、図2からさらに明日葉の茎1f・1h・1k・1pが伸びた状態である。また、茎1r・1wなども、芽が出て伸びている。この図3の状態でさらに追加の被覆材を積み重ねることもできる。しかし、被覆材を追加せず、溝7の上に遮光シート19を被せることにより、溝7内を暗黒あるいは隠薄明環境としている。図3の状態は、長さ20~30cm程度の軟質茎を収穫可能な状態である。
竹チップを含む被覆材11や、藻屑5を明日葉の成株1の周りに配した実施形態1の栽培方法の場合、収穫の周期を20日程度と従来よりも短くできる。また、藻屑5や竹チップの存在により、自生環境に似た環境で栽培できるので、従来の栽培方法よりも、苦味や香りが少なく、苦味や香りが適度に残った、多くの人に好まれ易い、白色あるいは淡い色合いの明日葉の軟質茎を収穫できる。
成株1の勢いを回復させる必要がある場合は、遮光シートを外し、被覆材11を除けて成株1に太陽光や風が当たる状態として、10日程度、成株1を自然回復させる。
第二実施形態
第一実施形態において成株1の根1xの下に藻屑5を埋めた代わりに、溝7の底の成株1の周りに藻屑を置いた。この方法でも、実施形態1同様の品質の明日葉の軟質茎を収穫できた。
第三実施形態
第一実施形態の栽培方法において、被覆材として、成株一株あたり50gの竹チップを含むものを用いた。その結果、成長が早く、色も良い甘みが増す明日葉の軟質茎を栽培できた。
第四実施形態
第一実施形態における栽培方法の変形例として、図4(A)に、被覆材61の層の厚さを収穫時まで厚くした明日葉51の例を模式的に示す。その対比として、一般の明日葉101の形態を図4(B)に模式的に示す。本発明の実施形態の例(A)では、明日葉の軟質茎51fの伸び・太り(図の高さH4は45cm)が、一般の場合(B)の軟質茎101fよりも良い。これは、本実施形態の明日葉51の根元に埋めた海藻5、及び、被覆材61の効果である。なお、図中の「S」は太陽を模式的に示し、「SL」は日光を模式的に示す。根51xと海藻5の間は、成株の植え付け時は10cm程度であるが、その後海藻は溶けて、根は伸びて、海藻のミネラル・滋養成分を吸収する。
第五実施形態
第四実施形態における栽培方法と同様の方法により、図5(A)に示すように、明日葉に替えて浜ぼうふう71を栽培した。その結果、茎71fが長く上に延びた(図中の被覆材81の厚さH5は30cm)、収穫しやすい浜ぼうふうの軟質茎を栽培できた。図5(B)に模式的に示すように、海岸に自生する浜ぼうふう171の場合、茎171f・kは、砂浜173の面に沿って広がるように延びるので、収穫しにくい。
本発明の栽培方法においては、様々な変更あるいは追加の処置を採用することができる。なお、本来、明日葉は海の潮風を浴びて育ち、浜ぼうふうは海岸で育つので、本来の生育に近づけることを基本的構想として、本発明のような栽培方法を開発した。

Claims (2)

  1. 明日葉又は浜ぼうふうの成株を採取するか栽培し、その後、前記成株を、太陽光を遮蔽した環境に置いた状態で、該成株の茎を軟質茎として伸長させて収穫する方法であって、
    海藻を、前記成株の苗床に敷くか、前記成株の周囲に置くか、及び/又は、前記成株を定植する土に混ぜ込むかすることを特徴とする明日葉・浜ぼうふうの栽培方法。
  2. 明日葉又は浜ぼうふうの栽培方法であって、
    藻を苗床に敷くか、株の周囲に置くか、及び/又は、前記成株を定植する土に混ぜ込むかすることを特徴とする明日葉・浜ぼうふうの栽培方法。
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