JP7014387B2 - 寝具の寝返り動作感評価方法および装置 - Google Patents
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Description
評価対象の寝具の表面に沿って、人体あるいはその一部を模した所定重量の評価用モデルを、前記寝具に載せた前記評価用モデルをその中心軸線回りに回転自在に支持した状態で水平方向に移動させるモデル転動機構を用いて、転がり運動させるモデル転動ステップ(ただし、前記評価用モデルを支持する支持装置を昇降可能とする昇降装置を用いて前記寝具に対して前記評価用モデルを押し付けて回転するよう制御する場合を除く。)と、前記評価用モデルの転がり運動時に生じる前記評価用モデルの転がり抵抗値および角度ずれ値のうちの少なくとも一方の値を測定する測定ステップと、測定した前記の値に基づき、前記寝具について人が感じる寝返り動作感を評価する評価ステップとを含み、前記角度ずれ値は、前記評価用モデルが90度回転した姿勢になるまでの間における前記評価用モデルと前記寝具の間に生じる滑りに起因する前記評価用モデルの回転角度の角度ずれ値であることを特徴としている。
前記評価ステップでは、前記総転がり抵抗値量および前記角度ずれ値に基づき、前記寝具の寝返り動作感を評価することができる。
前記相関関係として、前記寝返り動作感を表す値を目的変数とし、前記総転がり抵抗値量および前記角度ずれ値を説明変数として、重回帰分析を行って構築された検量線を用いることができる。
表面に載せる前記評価用モデルと、前記評価用モデルを、その中心軸線回りに回転自在に支持した状態で水平方向に移動させることにより、前記寝具の表面に沿って当該評価用モデルを転がり運動させるモデル転動機構と、前記モデル転動機構によって転がり運動を行う前記評価用モデルの転がり抵抗値を測定する転がり抵抗値測定部と、前記モデル転動機構によって転がり運動を行う前記評価用モデルが前記中心軸線回りに90度回転した時点における前記評価用モデルと前記寝具の間のすべりに起因する角度ずれ値を測定する角度ずれ値測定部と、測定された前記転がり抵抗値および前記角度ずれ値に基づき、前記寝具の寝返り動作感を評価する評価部とを有していることを特徴としている。
前記相関関係として、前記寝返り性を表す値を目的変数とし、前記総転がり抵抗値量および前記角度ずれ値を説明変数として、重回帰分析を行って構築された検量線を用いることができる。
所定寸法の長径および短径を備えた楕円状外周面を備えた所定長さの楕円形本体部と、
前記楕円形本体部を、その中心軸線の方向に貫通して延びる複数の錘穴と、
前記錘穴のそれぞれに対して、取り外し可能な状態で装着される少なくとも1本の錘と、
前記楕円形本体部の前記楕円状外周面を覆う表層材料と、
を備えており、
前記錘穴に装着される前記錘の本数、重量を調整することにより前記腰部モデルの総重量が増減可能となっていることが望ましい。
図1には、官能実験で用いる実験試料の一覧表を示してある。この図に示すように、実験試料として、5種類の試料を用いた。以下の説明においては、それぞれ、試料A、試料B、試料C、試料Dおよび試料Eと呼ぶ。
各試料について寝返り動作感についての官能実験を行った。図2には実験概要の一覧を示してある。
上記の官能実験結果に基づき、敷き布団上において寝返りを行う際の抵抗値である転がり抵抗値と寝返り動作感との相関を調べた。また、転がり運動時における人体の沈み込み量と寝返り動作感との相関、および、人体と敷き布団との間の滑りに起因する寝返り動作時に生じる角度ずれ値と寝返り動作感との相関を調べた(転がり抵抗値、沈み込み量および角度ずれ値については、後述の図10、図11参照)。
図6は寝返り動作における転がり抵抗および角度ずれ値の測定に用いた転がり抵抗試験機を示す図面代用写真であり、図7は転がり抵抗試験機の信号の流れを示す制御ブロック図である。
図8は評価用モデル3を示す説明図である。評価用モデル3として図8(a)に示す楕円形モデル3Aを用いた。楕円形モデル3Aは人体の腰部モデルである。また、参考モデルとして図8(b)に示す円形モデル3Bも用いた。
本例では、評価用モデル3の転がり運動時の滑りに起因する角度ずれ値を算出している。このために、ラック12の移動量と、ラック12によって転がり運動を行う評価用モデル3の実際の回転角度(回転量)とを測定し、その差を角度ずれ値として求めている(図11(b)参照)。
上記構成の転がり抵抗試験機1を用いた測定手順は次の通りである。まず、実験試料(図1参照)の敷き布団Wを試料台2に載せるセッティングを行い、敷き布団Wにおける測定位置を設定する。次に、ラックを移動させて評価用モデル3を測定開始位置にセットする。測定開始位置において、評価用モデル3の錘穴35に必要本数の錘33を装着する。次に、評価用モデル3の端面に取り付けたマーカーが試料台2と平行となるように調節する。楕円形モデル3Aの場合には、マーカーがその楕円形の長径位置に取り付けられており、長径が試料台2と平行となるように設定される。この後は、ロードセル13の0点調整を行った後に測定を開始する。
転がり抵抗試験におけるモデル周りの素材(表層材料)について検証した。素材変更によって発生する摩擦力の違いが、楕円形モデル3Aの立ち上がり(長径位置が水平から垂直になる状態)に与える影響について検証した。次の素材を用いて検証を行った。
人工皮革(皮膚を想定)
人工皮革+綿100%ニット生地(皮膚+寝具を想定)
人工皮革+塩化ビニル製滑り止め
りの程度が異なっていた。転がり抵抗試験は、人工皮革+塩化ビニル製滑り止めを用いるのが妥当であると判断した。
ラック12の移動速度(評価用モデルの転がり運動時の移動速度)が転がり抵抗値の大きさに影響を与えるか否かを検証した。測定条件としては、腰部モデルである楕円形モデル3Aを使用し、モデル重量を30kg、ラック移動速度を1mm/sおよび30mm/sとし、測定回数を各試料3回とした。
評価用モデル重量が転がり抵抗値の大きさに影響を与えるかを検証した。日本人50代男性の平均体重は65kgであり、先に図8(c)に示したように、仰臥位時において各部分に加わる重量比に基けば、腰部には略30kgが加わることになる。
転がり抵抗試験特徴量として、総転がり抵抗値量(N)、10度毎の転がり抵抗値(N)、10度毎のモデル沈み込み量(mm)、角度ずれ値(°)を用いた。
み量を表す(10度毎、経時的に記録する)。沈み込み量の解析方法は次の通りである。楕円形モデルの端面中心に取り付けたマーカーの垂直方向の変位量を動作解析装置で記録する。変形が0の試料台上で測定を行い、そこから各試料上の測定結果を減算することにより算出される。
角度ずれ値(°)=90(°)-ラック移動量250mm時点の実測角度(°)
図12は、上記のように設定した測定条件により転がり抵抗試験機1を用いて5種類の試料Wについて行った試験結果を示す説明図である。ここには、測定された転がり抵抗値、モデル沈み込み量および角度ずれ値を示してある。
上記の転がり抵抗試験機を用いて測定した総転がり抵抗値量、10度毎の転がり抵抗値、10度毎のモデル沈み込み量、および角度ずれ値について、官能量との相関を調べた。
図13は、総転がり抵抗値量および10度毎の転がり抵抗値と、「寝返りしやすい」ことについての平均嗜好度との相関を示す説明図である。図13(a)には有意差判定結果を示し、図13(b)は総転がり抵抗値量と「寝返りしやすい」ことの平均嗜好度との関係を示すグラフであり、図13(c)は70度における転がり抵抗値と「寝返りしやすい」ことの平均嗜好度との関係を示すグラフである。
図14(a)は、重量15kgでラック移動速度が30mm/sの場合におけるモデル沈み込み量と官能量の相関係数および有意差判定結果を示す一覧表、図14(b)は重量30kgでラック移動速度が30mm/sの場合におけるモデル沈み込み量と官能量の相関係数および有意差判定結果を示す一覧表、図14(c)は重量15kgでラック移動速度が30mm/sの場合における10度毎のモデル沈み込み量の測定結果を示すグラフである。
にくいと評価されることを意味する。したがって、モデル沈み込み量は少なくとも上記の測定条件の下では指標としては適切ではないと判断される。
図15には、角度ずれ値と寝返りのしやすさとの間の関係を示す説明図である。角度ずれ値と寝返りのしやすさとの間には相関係数R=-0.803の高い負の相関が確認され、転がりに伴って発生する滑りが大きいほど、腰部の立ち上がりに影響が出て寝返りがしにくいと評価される。よって、角度ずれ値の大きさで、寝返り動作感を客観的に評価できる可能性があることが分かった。
本発明者等は、上記の測定結果などに基づき、寝返り動作感を表す官能量を目的変数とし、総転がり抵抗値量および角度ずれ値を説明変数として、重回帰分析を行った。図16(a)には、重回帰分析によって構築された検量線(作成した重回帰式)を示し、図16(b)には、平均嗜好度観測値と平均嗜好度予測値の関係を示す。
上記のように得られた寝返り動作感の評価方法の妥当性を検証するための検証実験を行った。
検証実験では、試料として、上記の実験において使用した試料Bおよび試料Cの旧試料2点と、試料F、試料Gおよび試料Hの新規試料3点の合計5点の試料を用いた。
検証実験の手順は上記の転がり抵抗試験の場合と同様であり、被験者20代の男性大学生10名による官能検査を行い(ステップ1:官能検査)、次に、上記の転がり抵抗試験機(図6、7参照)を用いて5点の試料について総転がり抵抗値量および角度ずれ値の測定を行い(ステップ2:物理量測定)、測定した物性値と官能量との間の相関分析を行った(ステップ3:相関分析)。
図17(a)は相関分析の結果を示し、寝返りがしやすいを表す平均嗜好度と総転がり抵抗値量の相関および平均嗜好度と角度ずれ値との相関を示す説明図である。図17(b)は、重相関分析の結果を示す説明図である。これらの図に示すように、総転がり抵抗値量および角度ずれ値と、寝返りのしやすさとの間に高い負の相関が確認された。また、作成した重回帰式(検量線)を用いた試料評価の有効性が確認された。
以上の官能実験、転がり抵抗試験および検証実験から、転がり抵抗試験機を寝返り動作感評価装置として用いて、寝返り動作感を客観的に評価できることが分かる。
転した立ち上がり状態となるまで転動させる(ST2:モデル転動ステップ)。
上記の説明では、敷き布団を評価するために用いる評価用モデルとして人体の腰部モデルを用いている。人体の肩部モデルを用いることも可能であり、腰部および肩部を含むトルソモデルを用いることも可能である。
2 試料台
3 評価用モデル
3A 楕円形モデル
3B 円形モデル
W 敷き布団(実験試料)
4 モデル転動機構
5 制御装置
6 プログラマブルコントローラ(PLC)
7 制御用パソコン
8 モータ
9 モータドライバ
10 ラック・ピニオン
11 支持アーム
12 ラック
13 ロードセル
Claims (13)
- 評価対象の寝具の表面に沿って、人体あるいはその一部を模した所定重量の評価用モデルを、前記寝具に載せた前記評価用モデルをその中心軸線回りに回転自在に支持した状態で水平方向に移動させるモデル転動機構を用いて、転がり運動させるモデル転動ステップ(ただし、前記評価用モデルを支持する支持装置を昇降可能とする昇降装置を用いて前記寝具に対して前記評価用モデルを押し付けて回転するよう制御する場合を除く。)と、
前記評価用モデルの転がり運動時に生じる前記評価用モデルの転がり抵抗値および角度ずれ値のうちの少なくとも一方の値を測定する測定ステップと、
測定した前記の値に基づき、前記寝具について人が感じる寝返り動作感を評価する評価ステップと、
を含み、
前記角度ずれ値は、前記評価用モデルが90度回転した姿勢になるまでの間における前記評価用モデルと前記寝具の間に生じる滑りに起因する前記評価用モデルの回転角度の角度ずれ値である
寝具の寝返り動作感評価方法。 - 請求項1において、
前記測定ステップでは、前記転がり抵抗値および前記角度ずれ値の双方を測定し、前記評価用モデルが90°回転した姿勢になるまでの間の前記転がり抵抗値の総計を、総転がり抵抗値量として算出し、
前記評価ステップでは、前記総転がり抵抗値量および前記角度ずれ値に基づき、前記寝具の寝返り動作感を評価する
寝具の寝返り動作感評価方法。 - 請求項2において、
前記評価ステップでは、複数種類の前記寝具について官能実験によって求めた前記寝返り動作感を表す値と、複数種類の前記寝具について求めた前記総転がり抵抗値量および前記角度ずれ値との間の相関関係に基づき、前記寝具の寝返り動作感を評価し、
前記相関関係は、前記寝返り性を表す値を目的変数とし、前記総転がり抵抗値量および前記角度ずれ値を説明変数として、重回帰分析を行って構築された検量線である
寝具の寝返り動作感評価方法。 - 請求項3において、
前記評価用モデルは、所定の年齢層の人の平均体形に基づき設定した重量、長さ、並びに、所定寸法の長径および短径の楕円状外周面を備えた腰部モデルであり、
前記モデル転動ステップにおける前記評価用モデルの転動時の水平方向への移動速度を、人の寝返り時の平均速度に基づき設定する
寝具の寝返り動作感評価方法。 - 請求項4において、
前記モデル転動ステップでは、評価用モデルの重量を15kgとし、前記移動速度を30mm/sとする
寝具の寝返り動作感評価方法。 - 請求項5において、
前記モデル転動ステップでは、
測定対象の前記寝具の上に、前記長径が水平方向を向く状態に置いた前記評価用モデルを、その中心軸線を中心として回転自在に支持し、
この状態の前記評価用モデルを、前記中心軸線に直交する水平方向に所定の速度で移動することにより、前記長径が鉛直方向を向く90°回転した状態となるまで転動させる
寝具の寝返り動作感評価方法。 - 請求項1に記載の寝具の寝返り動作感評価方法により寝具の寝返り動作感を評価する寝具の寝返り動作感評価装置であって、
評価対象の寝具を載せる試料台と、
前記試料台に載せた前記寝具の表面に載せる評価用モデルと、
前記評価用モデルを、その中心軸線回りに回転自在に支持した状態で水平方向に移動させることにより、前記寝具の表面に沿って当該評価用モデルを転がり運動させるモデル転動機構と、
前記モデル転動機構によって転がり運動を行う前記評価用モデルの転がり抵抗値を測定する転がり抵抗値測定部と、
前記モデル転動機構によって転がり運動を行う前記評価用モデルが前記中心軸線回りに90度回転した時点における前記評価用モデルと前記寝具の間のすべりに起因する角度ずれ値を測定する角度ずれ値測定部と、
測定された前記転がり抵抗値および前記角度ずれ値に基づき、前記寝具の寝返り動作感を評価する評価部と
を有している寝具の寝返り動作感評価装置。 - 請求項7において、
前記評価部は、前記評価用モデルが90°回転した姿勢になるまでの間の前記転がり抵抗値の総計を、総転がり抵抗値量として算出し、当該総転がり抵抗値量と前記角度ずれ値とに基づき、前記寝具の寝返り動作感を評価する
寝具の寝返り動作感評価装置。 - 請求項8において、
前記評価部は、複数種類の前記寝具について官能実験によって求めた前記寝返り動作感を表す値と、複数種類の前記寝具について求めた前記総転がり抵抗値量および前記角度ずれ値との間の予め設定した相関関係に基づき、前記寝具の寝返り動作感を評価し、
前記相関関係は、前記寝返り性を表す値を目的変数とし、前記総転がり抵抗値量および前記角度ずれ値を説明変数として、重回帰分析を行って構築された検量線である
寝具の寝返り動作感評価装置。 - 請求項9において、
前記評価用モデルは人体の腰部をモデル化した腰部モデルであり、前記腰部モデルは、
所定寸法の長径および短径を有する楕円状外周面を備えた所定長さの楕円形本体部と、
前記楕円形本体部を、その中心軸線の方向に貫通して延びる複数の錘穴と、
前記錘穴のそれぞれに対して、取り外し可能な状態で装着される複数本の錘と、
前記楕円形本体部の前記楕円状外周面を覆う表層材料と、
を備えており、
前記錘穴に装着される前記錘の本数、あるいは前記錘の種類に基づき、前記腰部モデルの総重量を増減可能である
寝具の寝返り動作感評価装置。 - 請求項10において、
前記腰部モデルは、長さが250mm~350mmであり、長径が310mm~410mmであり、短径が220mm~320mmである
寝具の寝返り動作感評価装置。 - 請求項11において、
前記モデル転動機構は、モータおよびラック・ピニオン機構を備えた直動機構である
寝具の寝返り動作感評価装置。 - 請求項11において、
前記転がり抵抗値測定部はロードセルを備えており、
前記角度ずれ値測定部は、前記評価用モデルの実際の回転角度と、前記モデル転動機構による前記評価用モデルの水平方向への移動量とに基づき、前記角度ずれ値を算出する
寝具の寝返り動作感評価装置。
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