本発明は、以下に説明する複数の発明を包含する発明群に属する発明であり、以下に、その発明群の実施形態として、第1ないし第3の実施形態について説明するが、そのうち、第1および第2の実施形態が、本出願人が特許請求の範囲に記載した発明に対応するものである。
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、後方超小旋回式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
まず、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、油圧ショベル1は、前,後方向に自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載され、下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体4と、上部旋回体4の前,後方向の前側に俯仰の動作が可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行うフロント装置5とにより構成されている。旋回装置3は、下部走行体2と上部旋回体4との間に設けられた旋回輪3Aと、上部旋回体4を旋回駆動する後述の旋回モータ10とを含んで構成されている。
ここで、図2に示すように、本実施の形態の油圧ショベル1は、上部旋回体4の旋回中心Oから後述するカウンタウエイト7の外周面7Aまでの距離寸法を旋回半径Rとした場合、上部旋回体4の後部(カウンタウエイト7の外周面7A)は、旋回半径Rによって描かれる仮想円C内で旋回することができる。この上部旋回体4の後部が描く仮想円Cの直径寸法は、下部走行体2の車幅寸法Wに対して上部旋回体4の旋回時に大きくはみ出さない範囲内、例えば車幅寸法Wの120%の範囲内に設定されている。
旋回フレーム6は、上部旋回体4の支持構造体を構成している。図2、図4に示すように、旋回フレーム6は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板からなる底板6Aと、底板6A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板6B,右縦板6Cと、各縦板6B,6Cの左,右方向の外側に間隔をもって配置され、前,後方向に延びた左サイドフレーム6D,右サイドフレーム6Eと、底板6A、各縦板6B,6Cから左,右方向に張出し、その先端部に左,右のサイドフレーム6D,6Eを支持する複数本の張出しビーム6Fとを含んで構成されている。
カウンタウエイト7は、旋回フレーム6の後側に取付けられている。カウンタウエイト7は、フロント装置5との重量バランスをとるために重量物として形成されている。カウンタウエイト7は、上部旋回体4を旋回動作したときに、上部旋回体4の旋回半径が小さくなるように形成されている。具体的には、カウンタウエイト7は、左,右方向の両側を前側に向けて湾曲させることにより円弧状の外周面7Aを有し、この形状をもって旋回フレーム6の旋回中心に近い前側寄りに配置されている。これにより、カウンタウエイト7は、左側の端部が後述するキャブ12の後面に近接した位置に配置され、右側の端部が後述する燃料タンク9の後部に近接した位置に配置されている。
図2、図3に示すように、円弧状のカウンタウエイト7は、左,右方向の中央に位置する中央ウエイト部7Bと、中央ウエイト部7Bの左側に位置して中央ウエイト部7Bよりも低い高さ寸法、例えば、旋回フレーム6の左サイドフレーム6Dと同等の高さ寸法もって形成された左側方ウエイト部7Cと、中央ウエイト部7Bの右側に位置して左側方ウエイト部7Cと同等の高さ寸法をもって形成された右側方ウエイト部7Dとにより構成されている。
中央ウエイト部7Bは、後方に突出し、左,右の側方ウエイト部7C,7Dは、中央ウエイト部7Bから左,右方向の外側に延びつつ前側に湾曲している。これにより、カウンタウエイト7の左側には、中央ウエイト部7Bと左側方ウエイト部7Cとの段差によって外装カバー13の左側面カバー13Aを配置するためのスペースが形成されている。一方、カウンタウエイト7の右側には、中央ウエイト部7Bと右側方ウエイト部7Dとの段差によって右側面カバー13Bを配置するためのスペースが形成されている。
ここで、本実施の形態による後方超小旋回型の油圧ショベル1は、前述したように、上部旋回体4の旋回中心Oからカウンタウエイト7の外周面7Aまでの距離寸法を旋回半径Rとした場合、旋回動作時にカウンタウエイト7の外周面7Aが描く軌跡は仮想円Cで示される。この仮想円Cを小さくすることにより、旋回に必要なスペースを小さくできるから、狭い現場でも効率よく作業を行うことができる。このために、油圧ショベル1は、カウンタウエイト7を旋回中心Oに近付けて配置することにより、仮想円Cの直径寸法は、最大で下部走行体2の車幅寸法Wの120%に収めることができる。従って、油圧ショベル1は、各種機器類を設置するための設置スペースが狭くなるから、後述するエンジン14の周囲に、カウンタウエイト7、旋回モータ10、作動油タンク8および各種配管、ホース類が接近して配置されている。
作動油タンク8は、フロント装置5の右側に位置して旋回フレーム6の前,後方向の中間位置に配設されている。これにより、作動油タンク8は、後述する油圧ポンプ33の前側に接近して配置されている。作動油タンク8は、内部に作動油を貯えるもので、上,下方向に長尺な直方体状のタンクとして形成されている。
燃料タンク9は、エンジン14に供給する燃料を貯えるもので、作動油タンク8の右側に並ぶように旋回フレーム6上に配設されている。具体的には、燃料タンク9は、カウンタウエイト7の右側方ウエイト部7Dの直前に配置され、後述する外装カバー13の右側面カバー13Bを開いたときに形成されるメンテナンス開口13Dの前側の仕切をなしている。
旋回モータ10は、旋回フレーム6の左,右の縦板6B,6C間に位置して底板6Aに上側に突出した状態で設けられている。旋回モータ10は、旋回装置3の駆動源を構成するもので、油圧モータとして形成されている。
制御弁群11は、旋回フレーム6の右前部に設けられている。制御弁群11は、複数個の制御弁を連ねることにより構成されている。制御弁群11は、一部の制御弁が図示しない油圧ホースを介してフロント装置5の油圧アクチュエータ、旋回モータ10、油圧ポンプ33等に接続されている。
キャブ12は、旋回フレーム6の左前部に設けられている。即ち、キャブ12は、フロント装置5のフート部を挟んで左,右方向の左前側に配置されている。キャブ12は、オペレータが搭乗する居住空間を形成するもので、上,下方向に長尺なボックス体を形成している。
図1ないし図3に示すように、外装カバー13は、カウンタウエイト7とキャブ12との間に配置され、エンジン14、油圧ポンプ33、熱交換装置34等を覆うものである。外装カバー13は、左側面カバー13A、右側面カバー13B、エンジンカバー13Cを含んで構成されている。
左側面カバー13Aは、熱交換装置34の左側方を開閉可能に覆うもので、カウンタウエイト7の中央ウエイト部7Bと左側方ウエイト部7Cとの段差によるスペースを利用して配置されている。左側面カバー13Aは、カウンタウエイト7の円弧形状に沿うように湾曲しつつ、上,下方向に延びて形成されている。左側面カバー13Aは、例えばキャブ12側となる前側部位が回動可能に支持され、後側が開閉可能となっている。これにより、左側面カバー13Aは、後側を開いた状態では、熱交換装置34等のメンテナンスを行うことができる。
図2、図3に示すように、右側面カバー13Bは、油圧ポンプ33、オイルフィルタ25の右側方を覆うものである。右側面カバー13Bは、カウンタウエイト7の中央ウエイト部7Bと右側方ウエイト部7Dとの段差によるスペースを利用して配置されている。右側面カバー13Bは、左側面カバー13Aと同様に、カウンタウエイト7の円弧形状に沿うように湾曲して形成されている。ここで、図3に示すように、右側面カバー13Bは、前端部を支点として後側を開くことができる。右側面カバー13Bを開いた状態では、カウンタウエイト7、燃料タンク9、エンジンカバー13C等によって囲まれたメンテナンス開口13Dが形成される。このメンテナンス開口13Dによって車体の外部から油圧ポンプ33のメンテナンス、オイルフィルタ25の交換作業等を行うことができる。
エンジンカバー13Cは、エンジン14、排気ガス後処理装置32等の上側を覆うものである。このエンジンカバー13Cは、カウンタウエイト7の中央ウエイト部7B上に位置して円弧状に延びた後面部13C1と、後面部13C1の上端縁から前側に延びた上面部13C2とにより構成されている。上面部13C2の前端部は、旋回フレーム6上に設けられた構造体(図示せず)に対して上,下方向に回動可能に取付けられている。これにより、エンジンカバー13Cは、前側を支点にして後側を持ち上げることができ、この開扉状態では、エンジン14等のメンテナンスを行うことができる。
次に、本実施の形態の特徴部分を備えているエンジン14の構成について詳細に説明する。
図4に示すように、エンジン14は、原動機を構成するもので、カウンタウエイト7の前側となる旋回フレーム6の後部位置に、旋回フレーム6に対して左,右方向に延びる横置き状態で設けられている。エンジン14の左側には、後述の熱交換装置34に冷却風を供給するための冷却ファン14Aが設けられている。一方、エンジン14の右側には、後述の油圧ポンプ33が取付けられている。
図5に示すように、エンジン14は、クランクケース、シリンダブロック等からなるエンジンブロック15と、エンジンブロック15の下部を閉塞するように設けられたオイルパン16と、エンジンブロック15の内部に設けられたクランクシャフト、ピストン、コネクティングロッド、カムシャフト、ロッカーアーム等(いずれも図示せず)と、エンジンブロック15の外部に設けられたターボ過給機17とを含んで構成されている。
図6に示すように、エンジンブロック15には、上部旋回体4の前側に位置する前面部位15Aに位置して、流出口15Bと流入口15Cとが互いに接近して設けられている。この流出口15Bには、後述する上流ライン20の吸上げ管20Aと供給管路26とが接続されている。一方、流入口15Cには、後述する戻り管路28と下流ライン21のオイルクーラ21Aとが接続されている。また、オイルパン16には、潤滑、冷却用のエンジンオイル18が所定量貯留されている。さらに、エンジン14には、クランクシャフト、ピストン、コネクティングロッド、カムシャフト、ロッカーアーム、ターボ過給機17等の摺動部位(回転部位)に対し、エンジンオイル18を供給するためのエンジンオイル供給装置19が設けられている。
エンジンオイル供給装置19は、オイルパン16内のエンジンオイル18を吸い上げて後述のオイルフィルタ25に向けて供給する上流ライン20と、オイルフィルタ25によって小さな異物が除去されたエンジンオイル18を各摺動部位21D~21Gに振り分ける後述の下流ライン21と、オイルフィルタ25の位置を移動させるためのフィルタ移動ライン22とを含んで構成されている。
上流ライン20は、オイルパン16の底部からエンジンブロック15の流出口15Bとの間に設けられた吸上げ管20Aと、吸上げ管20Aの上流端に設けられたストレーナ20Bと、吸上げ管20Aの途中に設けられたオイル供給ポンプ20Cと、オイル供給ポンプ20Cよりも下流側に位置して吸上げ管20Aに設けられた圧力弁(リリーフ弁)20Dとにより構成されている。
吸上げ管20Aの下流端は、エンジンブロック15の流出口15Bを通じてエンジン側オイルフィルタブラケット23の供給油路23Aに連通している。ストレーナ20Bは、オイルパン16内のエンジンオイル18に混在する比較的に大きな異物を除去するものである。オイル供給ポンプ20Cは、オイルパン16内からエンジンオイル18を吸い上げてクランクシャフト、ピストン、コネクティングロッド、カムシャフト、ロッカーアーム、ターボ過給機17等の摺動部位21D~21Gに供給するものである。圧力弁20Dは、吸上げ管20A内の圧力を一定に保持するためのリリーフ弁を構成している。
下流ライン21は、エンジンブロック15の流入口15Cに接続されたオイルクーラ21Aと、オイルクーラ21Aに接続された状態でエンジンブロック15に形成されたオイルギャラリ21Bと、オイルギャラリ21Bに接続して設けられた圧力センサ21Cとを含んで構成されている。オイルクーラ21Aは、エンジンオイル18を冷却するものである。
オイルギャラリ21Bは、その大部分がエンジンブロック15に枝分かれした油路として形成されている。それぞれの油路の先端側(下流側)は、エンジンブロック15内に配置されたクランクシャフト、ピストン、コネクティングロッド、カムシャフト、ロッカーアーム等の摺動部位、図6中に簡略的に示すと、各油路の先端は、内部摺動部位21D,21E,21Fに向けて形成されている。一方、オイルギャラリ21Bの一部は、エンジンブロック15の外部に延びて配置され、ターボ過給機17の摺動部位となる外部摺動部位21Gに向けて形成されている。
ここで、後述のオイルフィルタ25を取付けるエンジンブロック15の位置は、エンジン14によって予め決まっている。このために、上部旋回体4(旋回フレーム6)にエンジン14を搭載したときには、オイルフィルタ25がエンジンブロック15の前側に配置されることで、オイルフィルタ25の着脱が困難になることがある。この場合には、後述のフィルタ移動ライン22を用いてオイルフィルタ25を外部から着脱ができる位置まで移動させている。
次に、本実施の形態の特徴部分となるフィルタ移動ライン22について、図5、図6等を参照して説明する。
フィルタ移動ライン22は、後述のオイルフィルタ25を車体の外部から交換できる位置、具体的には、外装カバー13の右側面カバー13Bを開いたときに形成されたメンテナンス開口13Dを通して外部から交換できる位置に配置するものである。フィルタ移動ライン22は、エンジン側オイルフィルタブラケット23、フィルタ側オイルフィルタブラケット24、供給管路26、戻り管路28を含んで構成されている。
エンジン側オイルフィルタブラケット23は、流出口15B、流入口15Cに対面するようにエンジンブロック15の前面部位15Aに取付けられている。エンジン側オイルフィルタブラケット23は、流出口15Bに連通している供給油路23Aと流入口15Cに連通している戻り油路23Bとを有している。エンジン側オイルフィルタブラケット23は、外部から手が届く位置に配置されている場合には、直接的にオイルフィルタ25を取付けることができる。一方で、オイルフィルタ25を別の場所に移動させた場合には、エンジン側オイルフィルタブラケット23には、オイルフィルタ25を取付けていた位置に、閉塞用のプラグ23Cが取付けられている。
フィルタ側オイルフィルタブラケット24は、オイルフィルタ25を付設するためのもので、オイルフィルタ25に接続して設けられている。フィルタ側オイルフィルタブラケット24内には、エンジンオイル18の供給を受ける供給油路24Aと、エンジンオイル18をエンジン14側に戻す戻り油路24Bとが形成されている。フィルタ側オイルフィルタブラケット24には、供給油路24Aと戻り油路24Bとに接続されるようにオイルフィルタ25が着脱可能に取付けられている。
ここで、フィルタ側オイルフィルタブラケット24は、オイルフィルタ25を外部から交換できる位置、具体的には、オイルフィルタ25を外装カバー13のメンテナンス開口13Dと対面する位置に配置するものである。フィルタ側オイルフィルタブラケット24は、取付板24Cを介して後述のファイヤウォール35に取付けられている。この場合、図5に示すように、フィルタ側オイルフィルタブラケット24は、エンジン側オイルフィルタブラケット23、後述のオイル溜め部30,31よりも高い位置に配置されている。
オイルフィルタ25は、フィルタ側オイルフィルタブラケット24に設けられている。オイルフィルタ25は、エンジン14のエンジンオイル18に含まれる小さな異物を除去するものである。オイルフィルタ25は、例えば専用工具を用いて水平方向に回転させることにより、フィルタ側オイルフィルタブラケット24に対して着脱可能に取付けることができる。
供給管路26は、エンジン14を構成するエンジンブロック15の流出口15Bとオイルフィルタ25とを接続するものである。供給管路26は、エンジン側オイルフィルタブラケット23の供給油路23A、フィルタ側オイルフィルタブラケット24の供給油路24Aおよび後述の供給ホース27により構成されている。
供給ホース27は、エンジンブロック15の流出口15Bとフィルタ側オイルフィルタブラケット24とを接続するもので、供給管路26の一部を構成している。具体的には、供給ホース27は、可撓性を有する樹脂製ホースからなり、エンジンオイル18を供給するときの流れ方向の上流端がエンジン側オイルフィルタブラケット23の供給油路23Aに接続されている。一方、供給ホース27の下流端は、フィルタ側オイルフィルタブラケット24の供給油路24Aに接続されている。供給ホース27の長さ方向の途中位置には、後述の供給側オイル溜め部30が設けられている。
戻り管路28は、オイルフィルタ25とエンジンブロック15の流入口15Cとを接続するものである。戻り管路28は、エンジン側オイルフィルタブラケット23の戻り油路23B、フィルタ側オイルフィルタブラケット24の戻り油路24Bおよび後述の戻りホース29により構成されている。
戻りホース29は、フィルタ側オイルフィルタブラケット24とエンジンブロック15の流入口15Cとを接続するもので、戻り管路28の一部を構成している。具体的には、戻りホース29は、供給ホース27と同様に、可撓性を有する樹脂製ホースからなり、上流端がフィルタ側オイルフィルタブラケット24の戻り油路24Bに接続されている。一方、戻りホース29の下流端は、エンジン側オイルフィルタブラケット23の戻り油路23Bに接続されている。戻りホース29の長さ方向の途中位置には、後述の戻り側オイル溜め部31が設けられている。
供給側オイル溜め部30は、エンジン14を構成するエンジンブロック15の流出口15Bとオイルフィルタ25との間に設けられている。供給側オイル溜め部30は、エンジン14が停止した状態でエンジンオイル18を貯留するものである。供給側オイル溜め部30は、供給ホース27の長さ方向の途中部位を下側に向けてU字状に屈曲させることによりU字管路として形成されている。この場合、供給側オイル溜め部30は、可撓性を有する樹脂製ホースからなる供給ホース27の途中部分に外力を加えて弾性変形させたり、塑性変形させたりすることによりU字状に形成することができる。また、供給側オイル溜め部30は、U字状に形成された金属管として形成し、その両端部に2分割した供給ホースを接続する構成としてもよい。
ここで、エンジン14を駆動しているときには、上流ライン20、供給管路26、戻り管路28、下流ライン21を通じて各摺動部位21D~21Gにエンジンオイル18が供給されている。一方、エンジン14が停止したときには、供給管路26内のエンジンオイル18が重力によってオイルパン16側に戻される。このときに、供給側オイル溜め部30は、供給管路26内をオイルパン16側に戻されるエンジンオイル18の一部を、図5に示す高さ寸法Hの範囲で溜めオイル18Aとして貯留することができる。供給側オイル溜め部30に溜められた溜めオイル18Aは、次回にエンジン14が始動されたときに、オイルパン16からのエンジンオイル18に供給管路26内の空気を介して押圧されることで、オイルパン16からのエンジンオイル18よりも早く各摺動部位21D~21Gに供給される。
図6に示すように、戻り側オイル溜め部31は、オイルフィルタ25とエンジン14を構成するエンジンブロック15の流入口15Cとの間に設けられている。戻り側オイル溜め部31は、供給側オイル溜め部30と同様に、エンジン14が停止した状態でエンジンオイル18を貯留するものである。戻り側オイル溜め部31は、戻りホース29の長さ方向の途中部位を下側に向けてU字状に屈曲させることによりU字管路として形成されている。戻り側オイル溜め部31の構造は、供給側オイル溜め部30と同様であるために省略する。
エンジン14が停止して戻り管路28内のエンジンオイル18が重力によってエンジン14側に移動したときに、戻り側オイル溜め部31は、戻り管路28内をエンジン14側に移動するエンジンオイル18の一部を溜めオイル18Aとして貯留することができる。戻り側オイル溜め部31に溜められた溜めオイル18Aは、前述した供給側オイル溜め部30に溜められた溜めオイル18Aと同様に、次回にエンジン14が始動されたときに、オイルパン16からのエンジンオイル18に空気を介して押圧されることで、オイルパン16からのエンジンオイル18よりも早く各摺動部位21D~21Gに供給される。
排気ガス後処理装置32は、エンジン14の右側に位置して前,後方向に延びて設けられている。排気ガス後処理装置32は、エンジン14から排出される排気ガスを浄化するもので、エンジン14の排気側に接続されている。排気ガス後処理装置32内には、例えば、酸化触媒、粒子状物質捕集フィルタ、尿素水還元触媒等(いずれも図示せず)が設けられている。
油圧ポンプ33は、エンジン14の右側に設けられている。油圧ポンプ33は、エンジン14によって駆動されることにより各種油圧アクチュエータを駆動するための圧油を供給するものである。
熱交換装置34は、エンジン14の左側に位置して旋回フレーム6上に設けられている。熱交換装置34は、エンジン14の冷却ファン14Aに対面する位置にラジエータ、オイルクーラ等を有している。
図4に示すように、ファイヤウォール35は、排気ガス後処理装置32の右側を覆うように仕切板として旋回フレーム6上に立設されている。ファイヤウォール35は、エンジン14、排気ガス後処理装置32と油圧ポンプ33との間を仕切ることにより、油圧ポンプ33側の油液がエンジン14側に飛散するのを防止している。また、ファイヤウォール35は、旋回フレーム6上に立設された構造体の1つを形成しており、その右側面には、フィルタ側オイルフィルタブラケット24が取付けられている。
本実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
オペレータは、キャブ12に搭乗し、エンジン14を始動した後、走行用の操作レバー・ペダル(図示せず)を操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。一方、オペレータが、左,右のフロント操作用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、上部旋回体4の旋回動作、フロント装置5による土砂の掘削作業等を行うことができる。
エンジン14を始動したときには、エンジン14を構成するクランクシャフト、ピストン、コネクティングロッド、カムシャフト、ロッカーアーム、ターボ過給機17等の摺動部位、即ち、下流ライン21の各摺動部位21D~21Gに、エンジンオイル供給装置19によって潤滑、冷却用のエンジンオイル18が供給される。
具体的には、エンジン14が始動されると、エンジンオイル供給装置19は、上流ライン20のオイル供給ポンプ20Cが駆動され、吸上げ管20Aを通じてオイルパン16内のエンジンオイル18が吸い上げられる。エンジンオイル18を供給するためのエンジンオイル供給装置19が設けられている。上流ライン20によって吸い上げられたエンジンオイル18は、供給管路26を介してオイルフィルタ25に供給され、このオイルフィルタ25によって微細な異物が除去される。微細な異物が除去されたエンジンオイル18は、戻り管路28を介して下流ライン21に戻される。下流ライン21では、オイルクーラ21Aによって冷却された後、オイルギャラリ21Bによってクランクシャフト、ピストン、コネクティングロッド、カムシャフト、ロッカーアーム等の摺動部位となる内部摺動部位21D~21Fと、ターボ過給機17の摺動部位となる外部摺動部位21Gとにエンジンオイル18が供給される。これにより、各摺動部位21D~21Gは、エンジンオイル18によって潤滑、冷却することができる。
異物が除去するオイルフィルタ25は、定期的な交換が必要になる。そこで、オイルフィルタ25の交換作業について述べる。まず、オイルフィルタ25は、供給管路26と戻り管路28とを備えたフィルタ移動ライン22により、エンジン14の前側から外装カバー13の右側面カバー13Bに対面するファイヤウォール35の右側面に移動されている。
従って、図3に示すように、外装カバー13の右側面カバー13Bを開くことにより、メンテナンス開口13Dによってオイルフィルタ25を露出させることができる。オイルフィルタ25を露出させたら、外部から手を伸ばし、専用工具を用いてオイルフィルタ25を水平方向に回転させることにより、オイルフィルタ25をフィルタ側オイルフィルタブラケット24から取外すことができる。一方、専用工具を用いて新しいオイルフィルタ25をフィルタ側オイルフィルタブラケット24に取付けることができる。
ここで、エンジン14を停止させたときには、供給管路26内のエンジンオイル18がオイルパン16に戻され、戻り管路28内のエンジンオイル18が下流ライン21を介してオイルパン16に戻される。この場合、本実施の形態では、供給管路26および戻り管路28によってオイルフィルタ25をエンジン14の通常の取付位置から離れた位置に配置している。このために、オイルパン16から各摺動部位21D~21Gまでの距離が長くなっている。従って、エンジン14の始動時には、各摺動部位21D~21Gに形成される油膜が不十分な状態で摺動が始まる虞がある。
特に、エンジン14の外部に位置するターボ過給機17に設けられた外部摺動部位21Gは、エンジンブロック15の流入口15Cから遠い位置に配置されている上に、高い位置に配置されている。また、ターボ過給機17(外部摺動部位21G)は、エンジン14が始動された直後から高速で回転する。従って、外部摺動部位21Gは、エンジン14の停止によってエンジンオイル18が切れ易い上に、エンジン14が始動されてからエンジンオイル18が供給されるまでに時間を要する。
然るに、本実施の形態によれば、エンジン14を構成するエンジンブロック15の流出口15Bとオイルフィルタ25との間の供給管路26には、エンジン14が停止した状態でエンジンオイル18を貯留する供給側オイル溜め部30を設けている。また、オイルフィルタ25とエンジンブロック15の流入口15Cとの間の戻り管路28には、エンジン14が停止した状態でエンジンオイル18を貯留する戻り側オイル溜め部31を設けている。
従って、エンジン14が停止したときには、供給管路26内のエンジンオイル18が重力によってオイルパン16側に戻されるが、供給側オイル溜め部30には、エンジンオイル18の一部を溜めオイル18Aとして貯留することができる。また、戻り管路28内のエンジンオイル18が重力によってエンジン14側に移動されるが、戻り側オイル溜め部31には、エンジンオイル18の一部を溜めオイル18Aとして貯留することができる。
これにより、エンジン14を始動したときには、オイルパン16からのエンジンオイル18が各管路26,28内の空気を介して溜めオイル18Aを押圧することにより、オイルパン16からのエンジンオイル18よりも早く各摺動部位21D~21Gにエンジンオイル18を供給することができる。この結果、オイルフィルタ25をエンジン14の通常の取付位置から離れた位置に配置した場合でも、エンジン14の始動時には、各摺動部位21D~21Gに早急にエンジンオイル18を供給することができる。
供給側オイル溜め部30は、供給管路26を構成する供給ホース27に設ける構成としている。また、戻り側オイル溜め部31は、戻り管路28を構成する戻りホース29に設ける構成としている。従って、例えば、可撓性を有する樹脂製ホースを用いてオイル溜め部30,31を容易に設けることができる。
各オイル溜め部30,31は、下側に向けてU字状に屈曲したU字管路として形成されている。これにより、簡単なU字構造でエンジンオイル18を貯留することができ、既存の機種にも容易に対応することができる。
次に、図7ないし図10は、本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、オイルフィルタをエンジンの後側に移動させ、外装カバーのエンジンカバーを開いてオイルフィルタを交換する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図7、図8において、第2の実施の形態によるフィルタ移動ライン41は、第1の実施の形態で述べたエンジン側オイルフィルタブラケット23、フィルタ側オイルフィルタブラケット24、オイルフィルタ25と、後述する供給ホース42(供給管路)、戻りホース43(戻り管路)、供給側オイル溜め部44、戻り側オイル溜め部45とにより構成されている。
図9に示すように、フィルタ側オイルフィルタブラケット24は、エンジン14の後側に配置され、取付板24Cを介してカウンタウエイト7の中央ウエイト部7Bの前面に取付けられている。即ち、フィルタ側オイルフィルタブラケット24およびオイルフィルタ25は、第1の実施の形態よりもエンジン側オイルフィルタブラケット23から離れた位置に配置されている。
これに伴い、第2の実施の形態による供給ホース42と戻りホース43は、第1の実施の形態による供給ホース27と戻りホース29よりも長尺に形成されている。そして、図8、図10に示すように、供給ホース42には、フィルタ側オイルフィルタブラケット24の近傍に位置して供給側オイル溜め部44が設けられている。戻りホース43には、フィルタ側オイルフィルタブラケット24の近傍に位置して戻り側オイル溜め部45が設けられている。各オイル溜め部44,45は、第1の実施の形態によるオイル溜め部30,31と同様の構成であるために、説明は省略する。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態と同様に、外装カバー13のエンジンカバー13Cを開くことにより、外部からオイルフィルタ25を容易に交換することができる。この上で、各オイル溜め部44,45によってエンジン14の始動後に早急にエンジンオイル18を供給することができる。
次に、図11ないし図13は、本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、供給側オイル溜め部は、オイルフィルタブラケットの供給油路に設けられ、戻り側オイル溜め部は、オイルフィルタブラケットの戻り油路に設けられていることにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図11において、第3の実施の形態によるフィルタ移動ライン51は、第1の実施の形態で述べたエンジン側オイルフィルタブラケット23、オイルフィルタ25と、後述するフィルタ側オイルフィルタブラケット52、供給ホース53(供給管路)、戻りホース54(戻り管路)、供給側オイル溜め部55、戻り側オイル溜め部56とにより構成されている。
第3の実施の形態によるフィルタ側オイルフィルタブラケット52は、エンジン14の後側に配置され、取付板(図示せず)を介してカウンタウエイト7の中央ウエイト部7Bの前面に取付けられている。即ち、フィルタ側オイルフィルタブラケット52およびオイルフィルタ25は、第1の実施の形態よりもエンジン側オイルフィルタブラケット23から離れた位置に配置されている。フィルタ側オイルフィルタブラケット52は、オイルフィルタ25を付設するためのもので、オイルフィルタ25に接続して設けられている。図12、図13に示すように、フィルタ側オイルフィルタブラケット52内には、エンジンオイル18の供給を受ける供給油路52Aと、エンジンオイル18をエンジン14側に戻す戻り油路52Bとが形成されている。
図11に示すように、第3の実施の形態による供給ホース53と戻りホース54は、第1の実施の形態による供給ホース27と戻りホース29よりも長尺に形成されている。また、供給ホース53と戻りホース54には、オイル溜め部は設けられていない。
図12、図13に示すように、供給側オイル溜め部55は、フィルタ側オイルフィルタブラケット52の供給油路52Aに設けられている。また、戻り側オイル溜め部56は、フィルタ側オイルフィルタブラケット52の戻り油路52Bに設けられている。各オイル溜め部55,56は、第1の実施の形態によるオイル溜め部30,31と基本的な構造の点で同様に構成されているため、説明は省略するものとする。
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態と同様に、外装カバー13のエンジンカバー13Cを開くことにより、外部からオイルフィルタ25を容易に交換することができる。この上で、フィルタ側オイルフィルタブラケット52の供給油路52Aに設けた供給側オイル溜め部55と、戻り油路52Bに設けた戻り側オイル溜め部56とによって溜めオイル18Aをエンジン14の始動後に早急に供給することができる。
なお、第1の実施の形態では、供給管路26に供給側オイル溜め部30を設け、戻り管路28に戻り側オイル溜め部31を設ける構成とした場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、供給管路26に供給側オイル溜め部30を設け、戻り管路28の戻り側オイル溜め部31を省略する構成としてもよい。また、戻り管路28に戻り側オイル溜め部31を設け、供給管路26の供給側オイル溜め部30を省略する構成としてもよい。これらの構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができる。
各実施の形態では、各実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン、ホイルローダ等の他の建設機械にも広く適用することができる。