以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(実施形態)
本実施形態の工具システム1のブロック図を図1に示す。本実施形態の工具システム1は、例えば、工場における製品の組立作業を行う組立ラインに用いられる。本実施形態では、組立ラインにおいて、1つの製品に対して作業対象箇所が複数あり、作業者は、工具2を用いて同じ作業場所で複数の作業対象箇所の各々に締付部品(例えば、ボルト、ナット等)を取り付ける作業を行うことを想定している。「作業対象箇所」とは、製品における工具2を用いて作業を行う部位であり、本実施形態では、締付部品が取り付けられるねじ孔を含むねじ孔周囲の部位を示す。製品は、作業者が持ち運びできる程度の大きさの製品であってもよいし、車体やエンジン等の比較的大きな製品であってもよい。なお、工具システム1の使用用途は、上記の組立ラインに限らず、他の使用用途であってもよい。
以下に、本実施形態の工具システム1の詳細な構成について図1を参照して説明する。
工具2は、例えば電動のインパクトレンチ(図2A,2B参照)であり、締付部品を作業対象箇所に取り付ける締付作業が可能である。工具2は、駆動部24と、制御部3と、記憶部4と、撮像部5と、電池パック201と、を有している。
図2A,2Bに示すように、工具2のボディ20は、筒形状の胴体部21と、胴体部21の周面から径方向に突出するグリップ22と、電池パック201が着脱自在に装着される装着部23と、を有している。
胴体部21には、駆動部24が収納されている。駆動部24は、モータを有しており、動力源である電池パック201から供給される電力を動力として回転動作するように構成されている。胴体部21の軸方向における一端側からは出力軸241が突出している(図2A,2B参照)。出力軸241は、駆動部24の回転動作によって回転するように構成されている。出力軸241には、締付部品(ボルト、ナット等)を締め付ける又は緩めるための円筒状のソケット242が着脱自在に取り付けられる。出力軸241に取り付けられるソケット242のサイズは、作業者によって締付部品のサイズに合わせて適宜選択される。工具2は、駆動部24の回転動作よって出力軸241が回転することにより、締付部品を締め付ける又は緩めるといった作業が可能となる。
また、出力軸241には、ソケット242の代わりにソケットアンビルが着脱自在に取り付け可能であり、ソケットアンビルを介してビット(例えばドライバビット、ドリルビット等)の装着が可能となる。
本実施形態の工具2は、インパクト機構25を備えている。インパクト機構25は、締付トルクが所定レベルを超えると、出力軸241の回転方向に打撃力を加えるように構成されている。これにより、締付部品に対して、より大きな締付トルクを与えることが可能となる。
グリップ22は、作業者が作業を行う際に握る部分であり、トリガスイッチ221、及び正逆切替スイッチ222が設けられている。トリガスイッチ221は、駆動部24の回転動作のオン/オフを制御するためのスイッチであり、引込量に応じて駆動部24の回転数の調整が可能である。正逆切替スイッチ222は、出力軸241の回転方向を正転と逆転とに切り替えるスイッチである。グリップ22における胴体部21と反対側の端部には装着部23が設けられている。
装着部23は、扁平な矩形体状に形成されており、グリップ22と反対側の一面に電池パック201が着脱自在に装着される。電池パック201は、矩形体状に形成された樹脂製のケース202(図2A,2B参照)を有しており、ケース202の内部に充電池(例えば、リチウムイオン電池)を収納している。電池パック201は、駆動部24、制御部3、撮像部5等に電力を供給する。
また、装着部23には、操作パネル231が設けられている。操作パネル231は、例えば、複数の押ボタンスイッチ232、及び複数のLED233(Light Emitting Diode)を備えており、工具2の種々の設定、状態確認等を行うことができる。作業者は、例えば、操作パネル231(押ボタンスイッチ232)を操作することにより、工具2の動作モードの変更、電池パック201の残容量の確認等を行うことができる。また、装着部23には、発光部234が設けられている。発光部234は、例えばLEDで構成されている。発光部234は、作業時において作業対象箇所に向けて光を照射するように配置されている。発光部234のオン/オフは、操作パネル231の操作で行うことができる。また、発光部234は、トリガスイッチ221がオンした際に点灯するように構成されていてもよい。また、発光部234は、工具2が作業対象箇所にセットされると点灯するように構成されていてもよいし、明るさセンサの出力値が閾値を下回る(暗くなる)と点灯するように構成されていてもよい。
また、装着部23には、制御部3が収納されている。制御部3は、例えばプロセッサとメモリとを有するマイクロコンピュータ(マイコン)を備えている。制御部3は、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することによって、駆動制御部31、撮像制御部32、画像処理部33、通知制御部34、判定部35、取得部36、選択部37等の機能が実現される。プロセッサが実行するプログラムは、マイクロコンピュータのメモリに予め記憶されているが、メモリカード等の記録媒体に記録されて提供されてもよいし、電気通信回線を通じて提供されてもよい。なお、制御部3は、一定時間の間、トリガスイッチ221又は操作パネル231への操作入力が行われなかった場合、スリープ状態となる。制御部3は、スリープ状態中にトリガスイッチ221又は操作パネル231への操作入力が行われると起動する。
駆動制御部31は、駆動部24を制御するように構成されている。具体的には、駆動制御部31は、トリガスイッチ221の引込量に基づいた回転速度で、正逆切替スイッチ222によって設定された回転方向に駆動部24を回転させる。
また、駆動制御部31は、締付トルクがトルク設定値となるように駆動部24を制御するように構成されている。駆動制御部31は、締付トルクの大きさを推定するトルク推定機能を有している。駆動制御部31は、締付トルクの推定値が着座判定レベルに達するまでは、インパクト機構25の打撃間における駆動部24(モータ)の回転速度、回転量変化等に基づいて締付トルクの大きさを推定する。なお、締付トルクは、推定する構成に限らず、トルクセンサによって計測されてもよい。駆動制御部31は、締付トルクの推定値が着座判定レベルに達すると、インパクト機構25の打撃数に基づいて締付トルクの大きさを推定する。駆動制御部31は、インパクト機構25の打撃数が、トルク設定値に基づいた閾値回数に達すると、締付トルクがトルク設定値に達したと判断してモータを停止させる。これにより、締付部品を取り付ける際の締付トルクがトルク設定値となる。トルク設定値については後述する。
撮像制御部32は、撮像部5を制御するように構成されている。撮像部5は、例えば、撮像素子とレンズを有するカメラで構成されており、ボディ20の胴体部21に収納されている。撮像部5は、作業時に作業対象箇所を撮像するように配置されている。本実施形態では、撮像部5は、出力軸241の先端側を撮像するように、出力軸241に沿って配置されている。また、撮像部は、出力軸241に取り付けられたソケット242が撮像範囲に収まるように設けられている。撮像部5は、制御部3の起動中に撮像を継続して行うように構成されており、時系列で連続する撮像画像を動画形式に生成して画像処理部33に出力する。
画像処理部33は、撮像部5が生成した撮像画像に画像処理を行うことにより、複数の作業対象箇所のうち撮像画像に写っている作業対象箇所(以下、実写作業箇所ともいう)を識別するように構成されている。画像処理部33は、撮像部5が生成した撮像画像と、複数の作業対象箇所に対応する複数の基準画像(テンプレートデータ)とを比較することにより、実写作業箇所を識別する。具体的には、画像処理部33は、撮像部5が生成した撮像画像から複数の特徴点を抽出し、複数の基準画像それぞれの特徴点と比較することにより、実写作業箇所を識別する。画像処理部33は、例えば、撮像部5から出力される動画形式のデータに対してフレーム単位で画像処理を行い、実写作業箇所を識別する。したがって、撮像部5の撮像範囲に作業対象箇所が収まっている場合、画像処理部33は、撮像部5が撮像中の作業対象箇所が、複数の作業対象箇所のうちいずれの作業対象箇所であるかを識別することができる。複数の基準画像は、記憶部4(画像記憶部41)に記憶されている。
記憶部4は、例えばフラッシュメモリ等の半導体メモリで構成されており、画像記憶部41と、トルク記憶部42と、結果記憶部43と、の機能を有する。なお、本実施形態では、画像記憶部41と、トルク記憶部42と、結果記憶部43と、が1つのメモリで構成されているが、複数のメモリで構成されていてもよい。また、記憶部4は、工具2に対して着脱自在なメモリカードであってもよい。
画像記憶部41は、複数の基準画像を複数の作業対象箇所と対応付けて記憶しているデータベースである。基準画像は、対応する作業対象箇所を写した静止画像である。また、画像記憶部41には、複数の製品それぞれの1乃至複数の作業対象箇所に対応した複数の基準画像が記憶されている。つまり、画像記憶部41には、複数の製品それぞれの作業対象箇所を写した複数の静止画像(基準画像)がまとめて記憶されている。なお、1つの作業対象箇所に対して複数の基準画像が対応付けられていてもよい。例えば、1つの作業対象箇所に対して、1つの作業対象箇所を様々な角度や大きさで写した複数の基準画像が対応付けられていてもよい。
画像記憶部41に記憶されている複数の基準画像の各々にはタグ情報が付加されている。タグ情報とは、作業対象箇所の属性を示すメタデータである。つまり、タグ情報とは、作業対象箇所を属性ごとに分類するためのデータである。タグ情報には、例えばグループ情報、作業エリア情報、作業者情報が含まれている。
グループ情報とは、複数の作業対象箇所を所定条件で分類した情報である。所定条件とは、例えば製品の種類、カラー、オプションの有無等の条件である。グループ情報は、基準画像に写っている製品を特定するための情報である。本実施形態では、複数の作業対象箇所を製品の種類ごとに分類した情報を、グループ情報としている。したがって、複数の基準画像のうち同一の製品が写っている基準画像には、共通のグループ情報が付加される。なお、ここでいう「製品」とは、組立完了後の完成品(商品)だけでなく、部品の概念も含む。
作業エリア情報とは、複数の作業対象箇所に各々に対して作業が行われる作業エリア別に分類するため情報である。つまり、作業エリア情報は、基準画像に写っている作業対象箇所に対して作業を行う作業エリアを特定するための情報である。作業エリアは、工場内の領域を作業内容、作業工程などに基づいて分割した領域である。例えば、作業エリアは、工場内に設けられている組立ラインのベルトコンベアの周囲の領域に設定されており、ベルトコンベアごとに作業エリアが異なる。したがって、複数の基準画像のうち、同一のベルトコンベアで作業が行われる作業対象箇所が写っている基準画像には、同一の作業エリア情報が付加される。なお、作業エリアは、1つのベルトコンベアの周囲の領域を更に分割した領域であってもよい。また、同じ作業対象箇所に対する作業が、複数の組立ライン(ベルトコンベア)で並行して行われる場合、1つの作業対象箇所に対応する基準画像には、複数の作業エリア情報(タグ情報)が付加される。
作業者情報とは、複数の作業対象箇所の各々に対して作業を行う作業者別に分類するための情報である。つまり、作業者情報は、基準画像に写っている作業対象箇所に対する作業を割り当てられた作業者を特定するための情報である。また、同じ作業対象箇所に対する作業が複数の作業者に割り当てられている場合、1つの作業対象箇所に対応する基準画像には、複数の作業者情報(タグ情報)が付加される。ここでいう「作業者」とは、個人だけでなく、チームの概念も含む。
表1に、基準画像に対応付けられたタグ情報の一例を示す。表1に示す例では、画像記憶部41に90個の基準画像P1~P90が記憶されており、基準画像P1~P90の各々に、タグ情報としてグループ情報、作業エリア情報、作業者情報が付加されている。
基準画像P1~P30は、写っている製品が互いに同じであり、タグ情報としてグループ情報G1が付加されている。また、基準画像P1~P20は、写っている作業対象箇所の作業エリアは互いに同じであり、タグ情報として作業エリア情報A1が付加されている。基準画像P21~P30は、写っている作業対象箇所の作業エリアが、基準画像P1~P20に写っている作業対象箇所の作業エリアと異なり、タグ情報として作業エリア情報A2が付加されている。また、基準画像P1~P10、P11~P20、P21~P30に写っている作業対象箇所の作業者は、互いに異なっている。基準画像P1~P10は、タグ情報として作業者情報W1が付加され、基準画像P11~P20は、タグ情報として作業者情報W2が付加され、基準画像P21~P30は、タグ情報として作業者情報W3が付加されている。
基準画像P31~P60は、写っている製品が基準画像P1~P30に写っている製品と異なっており、タグ情報としてグループ情報G2が付加されている。また、基準画像P31~P40、P41~P50に写っている作業対象箇所の作業エリアは、互いに異なっている。基準画像P31~P40は、タグ情報として作業エリア情報A3が付加され、基準画像P41~P50は、情報として作業エリア情報A4が付加されている。また、基準画像P51~P60に写っている作業対象箇所に対する作業は2つの作業エリアで行われる。したがって、基準画像P51~P60は、タグ情報として作業エリア情報A3,A4が付加されている。また、基準画像P31~50は、写っている作業対象箇所の作業者が互いに同じであり、タグ情報として作業者情報W4が付加されている。基準画像P51~P60は、写っている作業対象箇所の作業者が、基準画像P31~P50に写っている作業対象箇所の作業者と異なり、タグ情報として作業者情報W5が付加されている。
基準画像P61~P90は、写っている製品が互いに同じであり、タグ情報としてグループ情報G3が付加されている。また、基準画像P61~P80は、写っている作業対象箇所の作業エリアが互いに同じであり、タグ情報として作業エリア情報A5は付加されている。基準画像P81~P90は、写っている作業対象箇所の作業エリアが、基準画像P61~P80と異なっており、タグ情報として作業エリア情報A1が付加されている。また、基準画像P61~P70、P71~P80に写っている作業対象箇所の作業者が互いに異なっている。基準画像P61~P70は、タグ情報として作業者情報W5が付加され、基準画像P71~P80は、タグ情報として作業者情報W1が付加されている。基準画像P81~P90は、写っている作業対象箇所は、2人(2チーム)の作業者のうち少なくとも一方の作業者によって行われる。したがって、基準画像P81~P90は、タグ情報として作業者情報W1,W5が付加されている。
本実施形態では、画像記憶部41に記憶されている複数の基準画像の各々には、上述した3つのタグ情報(グループ情報、作業エリア情報、作業者情報)が付加されているが、これに限らない。基準画像には、少なくとも1つのタグ情報が付加されていることが好ましい。また、画像記憶部41に記憶されている複数の基準画像の全てにタグ情報が付加されていなくてもよく、タグ情報が付加されていない基準画像が含まれていてもよい。
基準画像にタグ情報を付加するタイミングは、特に限定されない。基準画像を画像記憶部41に記憶する際に基準画像にタグ情報が付加されてもよいし、予めタグ情報が付加された基準画像を画像記憶部41に記憶してもよいし、画像記憶部41に記憶された基準画像にタグ情報を後から付加してもよい。また、基準画像に付加されたタグ情報は、適宜変更可能である。
取得部36は、タグ情報に対応する絞込み情報を取得するように構成されている。絞込み情報とは、画像記憶部41に記憶された複数の基準画像の全てから、画像処理部33が撮像画像と優先的に比較する基準画像を選択する処理(絞込み処理)に用いられる情報である。絞込み情報は、タグ情報に対応している。具体的には、絞込み情報には、履歴情報、工具位置情報、及びID情報(ID:identification)が含まれている。取得部36は、履歴情報を取得する履歴情報取得部361、工具位置情報を取得する位置情報取得部362、及びID情報を取得するID情報取得部363としての機能を有している。
履歴情報とは、画像処理部33が識別した実写作業箇所の履歴を示す情報である。つまり、履歴情報とは、画像処理部33による実写作業箇所の識別結果の履歴である。履歴情報取得部361は、画像処理部33から履歴情報を取得する。履歴情報は、タグ情報のグループ情報に対応している。具体的には、履歴情報に対応するグループ情報とは、画像処理部33の最新(直近)の識別結果である実写作業箇所に対応する基準画像に付加されたグループ情報(製品)に対応する情報である。言い換えれば、履歴情報取得部361は、画像処理部33の最新(直近)の識別結果である実写作業箇所が属するグループ情報を絞込み情報とする。例えば、画像処理部33が直近に識別した実写作業箇所が基準画像P10に対応していた場合、履歴情報に対応するタグ情報(グループ情報)とは、グループ情報G1となる(表1参照)。
工具位置情報とは、工具2の位置を示す情報である。位置情報取得部362は、工具2に設けられた位置測定部61から工具位置情報を取得する。位置測定部61は、例えばGPS受信装置(GPS:Global Positioning System)であり、工具2の位置を測定し、測定結果である工具位置情報を位置情報取得部362に出力する。工具位置情報は、タグ情報の作業エリア情報に対応している。具体的には、工具位置情報に対応する作業エリア情報とは、工具位置情報が含まれている作業エリアを示す情報である。例えば、工具位置情報が、作業エリア情報A1が示す作業エリア内である場合、工具位置情報に対応するタグ情報(作業エリア情報)とは、作業エリア情報A1となる(表1参照)。なお、位置測定部61は、GPS受信装置に限らず、工場内に設けられた複数の送信装置から送信されるビーコン信号を受信するビーコン受信装置であってもよい。
ID情報とは、工具2の使用者を識別するための情報である。ID情報取得部363は、工具に設けられた入力装置62からID情報を取得する。入力装置62は、例えばRFID(Radio Frequency Identification)のリーダ装置である。入力装置62は、工具2の使用者が携帯している身分証と兼用したICタグ(IC:Integrated Circuit)がかざされることにより、ICタグが保持しているID情報を受信し、ID情報出力部に出力する。ID情報は、タグ情報の作業者情報に対応している。具体的には、ID情報に対応する作業者情報とは、ID情報に含まれる使用者の個人名、あるいは使用者が所属するチーム名を示す情報である。例えば、ID情報に、作業者情報W1が示す作業者の個人名が含まれていた場合、ID情報に対応するタグ情報(作業者情報)とは、作業者情報W1となる(表1参照)。
選択部37は、取得部36が取得した絞込み情報(履歴情報、工具位置情報、ID情報)に基づいて、画像記憶部41に記憶された複数の基準画像の全てから、撮像画像と優先的に比較する基準画像を選択する処理(絞込み処理)を行う。具体的には、選択部37は、絞込み処理において、取得部36が取得した絞込み情報に対応するタグ情報が付加された基準画像の優先度を上げる。ここで、選択部37は、絞込み情報の履歴情報、工具位置情報、ID情報のそれぞれについて、対応するタグ情報が付加された基準画像の優先度を上げる。したがって、履歴情報に対応するグループ情報、工具位置情報に対応する作業エリア情報、ID情報に対応する作業者情報の全てが付加された基準画像の優先度が最も高くなる。例えば、取得部36が取得した絞込み情報に対応するタグ情報が、グループ情報G1、作業エリア情報A1、作業者情報W1であった場合、基準画像P1~P90のうち基準画像P1~P10の優先度が最も高くなる(表1参照)。選択部37は、優先度が最も高い基準画像を、画像処理部33が撮像画像と優先的に比較する基準画像として選択する。
なお、履歴情報、工具位置情報、ID情報のそれぞれについて、対応するタグ情報が基準画像に付加されていた場合に上げる優先度の度合いは互いに同じであってもよいし、互いに異なってもよい。例えば、履歴情報に対応するタグ情報(グループ情報)が付加されていた場合に上げる優先度の度合いは、工具位置情報、ID情報に対応するタグ情報(作業エリア情報、作業者情報)が付加されていた場合に上げる優先度の度合いよりも低くてもよい。これにより、選択部37による絞込み処理において、グループ情報、作業エリア情報、作業者情報に優先順位を付けることができる。
画像処理部33は、画像記憶部41に記憶されている全ての基準画像のうち、選択部37が選択した1つ以上の基準画像を優先的に撮像画像と比較する画像処理を行い、実写作業箇所を識別する。また、画像処理部33は、実写作業箇所を識別すると、画像処理を停止する。したがって、画像処理部33は、選択部37が選択した複数の基準画像の全てと撮像画像との比較を行う前であっても、実写作業箇所を識別すると画像処理を停止する。つまり、画像処理部33は、必ずしも選択部37が選択した複数の基準画像の全てと撮像画像とを比較するとは限らない。
通知制御部34は、工具2に設けられた通知部211を制御するように構成されている。通知部211は、例えば、LEDで構成されている。通知部211は、作業者が作業中に通知部211を目視しやすいように、ボディ20の胴体部21における出力軸241とは反対側の端部に設けられている(図2B参照)。通知制御部34は、画像処理部33が実写作業箇所を識別した場合、通知部211を点灯させる。作業者は、通知部211が点灯していることを目視することによって、画像処理部33が実写作業箇所を識別したことを認識することができる。なお、通知部211は、音(音声を含む)を発生させることにより、画像処理部33が実写作業箇所を識別したことを通知するように構成されていてもよい。
トルク記憶部42は、複数の目標トルク値を、複数の作業対象箇所と一対一に対応付けて記憶している。目標トルク値とは、対応する作業対象箇所に締付部品を取り付ける際における締付トルクの目標値である。
駆動制御部31は、画像処理部33が実写作業箇所を識別した場合、実写作業箇所に対応する目標トルク値をトルク記憶部42から取得する。そして、駆動制御部31は、取得した目標トルク値をトルク設定値に設定する。
また、駆動制御部31は、画像処理部33が実写作業箇所を一旦識別すると、撮像画像に他の作業対象箇所が写るまで、又は一定時間が経過するまで、実写作業箇所に対応した目標トルク値をトルク設定値として保持している。したがって、例えば、締付作業の直前に画像処理部33が実写作業箇所の識別ができなくなった場合でも、この実写作業箇所に対応する目標トルク値で締付部品の締め付けを行うことができる。これにより、実写作業箇所に対応する目標トルク値とは異なるトルク値で締付作業が行われることを抑制することができる。
また、駆動制御部31は、締付作業中にトルク設定値が変化しないように、トリガスイッチ221が一旦オンされると、トリガスイッチ221がオフされるまでトルク設定値を保持する。
また、駆動制御部31は、画像処理部33が実写作業箇所を識別している場合にのみ、トリガスイッチ221がオンした際に駆動部24を動作させるように構成されていてもよい。したがって、画像処理部33が実写作業箇所を識別できていない場合、実写作業箇所に対応する目標トルク値とは異なるトルク値で締付作業が行われることを抑制することができる。
判定部35は、締付部品が締付対象箇所に取り付けられた際の締付トルクが正常であるか否かを判定するように構成されている。判定部35は、インパクト機構25の打撃数が閾値回数に達することによって駆動制御部31が駆動部24を停止させた場合、締付トルクが正常であると判定する。また、判定部35は、インパクト機構25の打撃数が閾値回数に達する前に、例えばトリガスイッチ221がオフされることによって駆動制御部31が駆動部24を停止させた場合、締付トルクが不十分(正常ではない)と判定する。また、判定部35は、判定結果(作業結果)を、締付対象箇所と対応付けて結果記憶部43に記憶させる結果記憶処理を行う。
結果記憶部43は、複数の作業対象箇所と、判定部35による複数の締付対象箇所における判定結果とを対応付けて記憶している。また、結果記憶部43は、判定部35の判定結果に作業時刻を示すタイムスタンプを付加して記憶することが好ましい。これにより、組立ラインにおいて製品ごとに作業対象箇所の判定結果を区別することが可能となる。
(動作例)
次に、本実施形態の工具システム1の動作例について説明する。
(第1動作例)
第1動作例では、組立ラインにおいて、作業者が所定の作業位置で、ベルトコンベアに流れる複数の同一製品に対して作業を行う場合を例に説明する。ここでは、作業者は、作業者情報W1に対応し、作業位置は、作業エリア情報A1に対応し、製品は、グループ情報G1に対応する(表1参照)。また、製品には複数の作業対象箇所があり、作業者は、この複数の作業対処箇所に締付作業を行うとする。
まず、作業者が工具2を用いて締付作業を行う前に、取得部36が絞込み情報を取得する(S1)。具体的には、工具2の使用者(作業者)は、締付作業を行う前に、工具2の入力装置62に身分証(ICタグ)をかざす。これにより、ID情報取得部363は、入力装置62が受信したID情報(絞込み情報)を取得する。また、位置測定部61が工具2の位置の測定を行う。これにより、位置情報取得部362は、位置測定部61が測定した工具位置情報(絞込み情報)を取得する。なお、本実施形態では、一定時間の間、工具2が操作されない場合、制御部3がスリープ状態となる。制御部3がスリープ状態となると、履歴情報取得部361が取得した履歴情報がリセットされる。つまり、制御部3がスリープ状態から復帰し、締付作業が行われるまでの間は、履歴情報がない状態となる。
次に、選択部37は、取得部36が取得した絞込み情報に基づいて、画像記憶部41に記憶された複数の基準画像の全てから、画像処理部33が撮像画像と優先的に比較する基準画像を選択する絞込み処理を行う(S2)。具体的には、選択部37は、ID情報取得部363が取得したID情報に対応する作業者情報W1と、位置情報取得部362が取得した工具位置情報に対応する作業エリア情報A1とが付加された基準画像P1~P10、P81~P90を選択する(表1参照)。
また、選択部37は、取得部36が取得した絞込み情報が変化したか否かを確認する(S3)。選択部37は、取得部36が取得した絞込み情報が変化した場合(S3:Yes)、変化後の絞込み情報に基づいて絞込み処理を行う(S2)。
工具2の使用者(作業者)が、ベルトコンベアに流れてきた製品の作業対象箇所に撮像部5を向けると、画像処理部33は、画像処理を行い実写作業箇所を識別する(S4)。画像処理部33は、画像処理において、選択部37が絞込み処理により選択した基準画像を優先的に撮像画像と比較する。
画像処理部33が実写作業箇所を識別すると、駆動制御部31は、実写作業箇所(作業対象箇所)に対応する目標トルク値をトルク記憶部42から取得し、取得した目標トルク値をトルク設定に設定する(S5)。
作業者は、通知部211で作業対象箇所が識別されたことを確認すると、第1の作業対象箇所に締付部品を取り付ける締付作業を行う(S6)。判定部35は、締付部品が作業対象箇所(実写作業箇所)に取り付けられた際における締付トルクが正常であるか否かの判定結果(作業結果)を、結果記憶部43に記憶させる(S7)。これにより、1つめの作業対象箇所への締付作業が完了する。作業者が、別の作業対象箇所の締付作業を継続して行う場合、ステップS3に戻る(S8)。
上述したステップS4において、画像処理部33が1つ目の実写作業箇所を識別している。履歴情報取得部361は、画像処理部33から履歴情報(絞込み情報)を取得しているので、取得部36が取得した絞込み情報が変化している(S3:Yes)。選択部37は、取得部36が取得した変化後の絞込み情報に基づいて、画像記憶部41に記憶された複数の基準画像の全てから、画像処理部33が撮像画像と優先的に比較する基準画像を選択する絞込み処理を行う(S2)。具体的には、選択部37は、既に取得されて情報が変化していない作業者情報W1、及び作業エリア情報A1と、履歴情報取得部361が取得した履歴情報に対応するグループ情報G1が付加された基準画像P1~P10を選択する(表1参照)。これにより、選択部37の絞込み処理によって選択される基準画像がより絞り込まれ、画像処理部33が実写作業箇所を識別するのに要する時間の短縮を図ることができる。
(第2動作例)
第2動作例では、組立ラインにおいて、作業者が所定の作業位置で、ベルトコンベアに流れる互いに異なる2つの製品(第1製品、第2製品)に対して作業を行う場合を例に説明する。ここでは、作業者は、作業者情報W1に対応し、作業位置は、作業エリア情報A1に対応し、第1製品は、グループ情報G1に対応し、第2製品は、グループ情報G3に対応する(表1参照)。また、第1製品、第2製品それぞれには複数の作業対象箇所がある。ここでは、作業者は、複数の第1製品のグループと、複数の第2製品のグループと、に対して交互に作業を行うとする。なお、以下の説明では、第1動作例と同様の動作については、詳細な説明を省略する。
作業者が第1製品のグループに対して作業を行っている間は、選択部37が絞込み処理によって、作業者情報W1、作業エリア情報A1、及びグループ情報G1が付加された基準画像P1~P10が選択される。
ここで、基準画像P1~P10は、第1製品に対応するグループ情報G1が付加された基準画像であり、第2製品の作業対象箇所に対応していない。したがって、第1製品のグループの作業が完了し、第2製品のグループの作業に移った場合、画像処理部33は、撮像画像と基準画像P1~P10との比較では、実写作業箇所を識別できない。この場合、選択部37は、基準画像P1~P10の次に優先度が高い基準画像を選択する。具体的には、選択部37は、画像記憶部41に記憶された複数の基準画像の全てから、基準画像P1~P10を除き、作業エリア情報A1と作業者情報W1とが付加された基準画像P81~P90を選択する。以降の第2製品のグループに対して作業を行っている間は、選択部37が絞込み処理によって、作業者情報W1、作業エリア情報A1、及びグループ情報G3が付加された基準画像P81~P90が選択される。
本動作例では、1つの作業エリアで2つの製品の作業が行われる場合を例に説明したが、3つ以上の製品の作業が行われる場合も同様である。
また、本動作例では、作業を行う製品が切り替わることによって、絞込み情報(グループ情報)が変化し、選択部37の選択処理によって選択される基準画像が変化する場合を例に説明したが、作業エリア情報、作業者情報が変化する場合も同様である。例えば、セル工程により、作業者が作業位置を変化させながら作業を行う場合、作業者が作業エリアを超えると作業エリア情報が変化し、選択部37の絞込み処理によって、変化後の作業エリア情報が付加された基準画像が選択される。また、工具2を複数の作業者で共用している場合、工具2の使用者が切り替わると、作業者情報が変化し、選択部37の絞込み処理によって、変化後の作業者情報が付加された基準画像が選択される。
(変形例)
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、工具システム1と同様の機能は、画像処理方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した記録媒体等で具現化されてもよい。
次に、本実施形態に係る工具システム1の変形例について説明する、以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。以下の説明では、上記実施形態と同様の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
(第1変形例)
本変形例の工具システム1Aのブロック構成図を図4に示す。
本変形例の工具システム1Aは、工具2との間で通信可能な外部装置9を備えている点が上述した実施形態の工具システム1と異なる。本変形例の工具システム1Aでは、外部装置9において、撮像部5が撮像した作業対象箇所(実写作業箇所)を識別する処理を行うように構成されている。
本変形例の工具2は、制御部3(以降、工具側制御部3ともいう)と、撮像部5と、位置測定部61と、入力装置62と、工具側通信部63と、を備えている。工具側制御部3は、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することによって、駆動制御部31、撮像制御部32、通知制御部34、判定部35、及び取得部36等の機能が実現される。つまり、本変形例の工具側制御部3は、画像処理部33、選択部37としての機能が省略されている点が、工具システム1(図1参照)と相違する。また、本変形例の工具2は、記憶部4を備えていない点が、工具システム1(図1参照)と相違する。
工具側通信部63は、例えば、Wi-Fi(登録商標)等の無線通信が可能な通信モジュールであり、ボディ20に収納されている。
外部装置9は、例えば、工場内に設けられたサーバであり、装置側通信部91と、装置側制御部92と、装置側記憶部93と、を備えている。なお、外部装置9の設置場所は、工場内に限らず、工場外に設けられていてもよい。また、外部装置9は、複数の装置に分散されていてもよいし、クラウドコンピューティングで構成されていてもよい。
装置側通信部91は、工具2の工具側通信部63との間で無線通信を行う通信モジュールである。なお、装置側通信部91が無線通信機能を有していない場合、無線通信と有線通信との相互変換を行う通信装置を介して、工具側通信部63と通信を行うように構成されていてもよい。
装置側制御部92は、例えばマイコンを備えており、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することによって、画像処理部921、選択部922、トルク選択部923等の機能が実現される。画像処理部921、選択部922は、それぞれ上述した画像処理部33、選択部37と同様の機能を有しており、詳細な説明を省略する。装置側記憶部93は、例えばフラッシュメモリ等の半導体メモリで構成されており、画像記憶部931と、トルク記憶部932と、結果記憶部933と、の機能を有する。画像記憶部931、トルク記憶部932、結果記憶部933は、それぞれ上述した画像記憶部41、トルク記憶部42、結果記憶部43と同様であるので説明を省略する。
本変形例では、撮像部5が生成した撮像画像は、工具側通信部63を介して外部装置9に出力(送信)される。また、取得部36が取得した絞込み情報(履歴情報、工具位置情報、及びID情報)は、工具側通信部63を介して外部装置9に出力(送信)される。
選択部922は、取得部36が取得した絞込み情報に基づいて、画像記憶部931に記憶された複数の基準画像の全てから、画像処理部921が撮像画像と優先的に比較する1つ以上の基準画像を選択する絞込み処理を行う。画像処理部921は、画像記憶部931に記憶されている全ての基準画像のうち、選択部922が選択した1つ以上の基準画像を優先的に撮像画像と比較する画像処理を行い、撮像部5が撮像した作業対象箇所(実写作業箇所)を識別する。
トルク選択部923は、トルク記憶部932を参照して、画像処理部921が識別した実写作業箇所に対応する目標トルク値を選択する。トルク選択部923が選択した目標トルク値は、装置側通信部91を介して工具2に送信される。工具2の駆動制御部31は、工具側通信部63が外部装置9から受信した目標トルク値を、トルク設定値に設定する。
また、判定部35は、締付作業の判定結果を、工具側通信部63を介して外部装置9に送信する。外部装置9の結果記憶部933には、工具2から送信された判定部35の判定結果が記憶される。
また、外部装置9は、複数の工具2と通信可能に構成されていてもよい。選択部922は、工具2ごとに、各工具2の取得部36が所得した絞込み情報に基づいて基準画像を選択する絞込み処理を行う。また、画像処理部921は、工具2ごとに、選択部922が選択した1つ以上の基準画像を優先的に撮像画像と比較する画像処理を行い、実写作業箇所を識別する。つまり、1つの外部装置9で、複数の工具2のそれぞれの撮像部5が撮像している作業対象箇所に応じたトルク設定値を設定することが可能となる。
(第2変形例)
本変形例の工具システム1Bのブロック構成図を図5に示す。
本変形例の工具システム1Bでは、工具2と外部装置9とで並行して、撮像部5が撮像した作業対象箇所(実写作業箇所)を識別する処理を行うように構成されている。
本変形例の工具システム1Bにおける画像処理部330は、工具2に設けられた画像処理部33(工具側画像処理部33ともいう)と、外部装置9に設けられた画像処理部921(装置側画像処理部921ともいう)とを有する。言い換えれば、画像処理部330は、工具側画像処理部33と装置側画像処理部921とに分散されている。
また、本変形例の工具システム1Bにおける画像記憶部410は、工具2に設けられた画像記憶部41(工具側画像記憶部41ともいう)と、外部装置9に設けられた画像記憶部931(装置側画像記憶部931ともいう)とを有する。言い換えれば、画像記憶部410は、工具側画像記憶部41と装置側画像記憶部931とに分散されている。なお、工具システム1Bでは、判定部35の判定結果は、工具側通信部63を介して外部装置9に送信され、外部装置9が有する結果記憶部933に記憶される。したがって、本変形例の工具2の記憶部4は、結果記憶部43(図1参照)の機能を有していない。
本変形例の工具システム1Bでは、外部装置9に設けられた装置側画像記憶部931には、複数の基準画像が記憶されている。具体的には、装置側画像記憶部931には、複数の製品それぞれの1乃至複数の作業対象箇所に対応した複数の基準画像が記憶されている。つまり、装置側画像記憶部931には、複数の製品それぞれの作業対象箇所を写した複数の静止画像(基準画像)がまとめて記憶されている。
一方、工具2に設けられた工具側画像記憶部41には、装置側画像記憶部931に記憶されている複数の基準画像の少なくとも一部の基準画像が記憶されている。具体的には、工具側画像記憶部41には、装置側画像記憶部931に記憶されている全ての基準画像のうち、外部装置9の選択部922が絞込み処理によって選択した1つ以上の基準画像が記憶されている。選択部922が選択した1つ以上の基準画像は、装置側通信部91を介して工具2に送信される。工具2の工具側制御部3は、工具側画像記憶部41に記憶されている1つ以上の基準画像を、工具側通信部63が外部装置9から受信した1つ以上の基準画像に更新する。つまり、工具側画像記憶部41は、装置側画像記憶部931に記憶されている全ての基準画像のうち、取得部36が取得した絞込み情報に対応するタグ情報が付加された1つ以上の基準画像を記憶する。
工具側画像処理部33は、工具側画像記憶部41に記憶されている1乃至複数の基準画像を撮像画像とを比較する画像処理を行い、撮像部5が撮像した作業対象箇所(実写作業箇所)を識別する。
本変形例の工具システム1Bでは、工具2のトルク設定値は、工具側画像処理部33と装置側画像処理部921とのうち、先に実写作業箇所を識別した画像処理部の識別結果(実写作業箇所)に基いて設定される。
(第3変形例)
本変形例の工具システム1Cのブロック構成図を図6に示す。
本変形例の工具システム1Cでは、取得部36は、順番情報取得部364としての機能を更に有している。工具システム1Cにおいて、上述した工具システム1と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
本変形例では、タグ情報に、上述したグループ情報、作業エリア情報、作業者情報の他に、工程情報が含まれている。工程情報とは、複数の作業対象箇所の各々に対応する作業工程における作業順番を示す情報である。つまり、工程情報は、基準画像に写っている製品に対応する作業工程において、基準画像に写っている作業対象箇所が何番目の作業順番であるかを特定するための情報である。
例えば、表1に示した基準画像P1~P10、P11~P20、P21~P30、P31~P40、P41~P50、P51~P60、P61~P70、P71~P80、P81~P90のそれぞれにおいて、写っている製品の作業工程が同一であり、作業工程における作業順番が異なる。言い換えれば、例えば、基準画像P1~P10は、第1の作業工程に対応し、基準画像P11~P20は、第2の作業工程に対応している。また、基準画像P1~P10に写っている作業対象箇所は、1つの第1の作業工程に対応しており作業順番が連続している。この第1の作業工程において、基準画像P1に対応する作業順番が1番目、基準画像P2に対応する作業順番が2番目、基準画像P3に対応する作業順番が3番目と続き、基準画像P10に対応する作業順番が10番目である。また、この第1の作業工程において、作業順番が最後である10番目(基準画像P10)の後は、作業順番が最初である1番目(基準画像P1)に戻る。
順番情報取得部364は、工程情報に対応する順番情報を取得する。順番情報とは、次の作業順番を示す情報(絞込み情報)である。順番情報取得部364は、画像処理部33が識別した実写作業箇所の履歴情報を取得することにより、順番情報を取得する。具体的には、順番情報取得部364は、画像処理部33の最新(直近)の識別結果である実写作業箇所に対応する作業工程の作業順番における、次の作業順番を絞込み情報とする。例えば、画像処理部33の直近の識別結果である実写作業箇所に対応する基準画像が、作業順番が第1の作業工程の2番目である基準画像P2であった場合、順番情報取得部364は、作業順番“第1の作業工程の3番目”を絞込み情報として取得する。また、例えば、画像処理部33の直近の識別結果である実写作業箇所に対応する基準画像が、作業順番が最後の10番目である基準画像P10であった場合、順番情報取得部364は、作業順番“第1の作業工程の1番目”を絞込み情報として取得する。
選択部37は、取得部36が取得した絞込み情報(履歴情報、工具位置情報、ID情報、順番情報)に基づいて、画像記憶部41に記憶された複数の基準画像の全てから、撮像画像と優先的に比較する基準画像を選択する処理(絞込み処理)を行う。
このように、本変形例の工具システム1Cでは、タグ情報として工程情報を用いて絞込み処理を行うので、画像記憶部41に記憶された複数の基準画像の全てから、撮像画像と優先的に比較する基準画像の数をより絞り込むことができる。
(その他の変形例)
上述した例では、取得部36(履歴情報取得部361)は、タグ情報のグループ情報に対応する絞込み情報として、履歴情報を取得しているが、この構成に限らない。取得部36は、グループ情報に対応する絞込み情報として撮像情報を取得してもよい。この場合、取得部36は、撮像部5によって生成された、製品の全体(又は一部)の撮像画像に基づいて、製品の種類、カラー等を識別し、識別した情報情報(撮像情報)を絞込み情報とする。
上述した例では、位置情報取得部362は、工具2に設けられた位置測定部から工具位置情報を取得するように構成されているが、これに限らない。
例えば、位置情報取得部362は、入力装置62から工具位置情報を取得するように構成されていてもよい。この場合、各作業エリアには、タグ装置が設けられており、作業者は、作業前に工具2をタグ装置にかざす。これにより、入力装置62は、タグ装置から工具位置情報を取得することができ、取得した工具位置情報を位置情報取得部362に出力する。
また、位置情報取得部362は、工具側通信部63を介して工具位置情報を取得するように構成されていてもよい。例えば、作業者が作業エリア間を移動しながら作業を行うセル工程において、各作業エリアにカメラが設けられている。各カメラは、処理装置に接続されており、処理装置は、各カメラの撮像データから作業者のいる作業エリアを判定する。処理装置は、判定した作業エリアに対応する位置情報(工具位置情報)を、工具2の工具側通信部63に送信する。位置情報取得部362は、工具側通信部63が処理装置から受信した工具位置情報を取得する。
また、取得部36は、工具側通信部63を介して絞込み情報を取得するように構成されていてもよい。例えば、取得部36は、工具側通信部63を介して外部装置9から絞込み情報を取得する。これにより、外部装置9を用いて、工具2に絞込み情報を出力することができる。
また、取得部36は、工具2の装着部23に設けられた操作パネル231から絞込み情報を取得するように構成されていてもよい。作業者は、作業前に操作パネル231の押ボタンスイッチ232を操作して、絞込み情報(例えば工具位置情報)を入力する。取得部36は、操作パネル231の操作内容に応じた絞込み情報を取得する。
上述した例では、タグ情報の例としてグループ情報、作業エリア情報、作業者情報を上げたが、タグ情報はこれらの情報に限らず他の情報であってもよい。
上述した例では、工具2がインパクトレンチである場合を説明したが、工具2はインパクトレンチに限らず、ナットランナー、オイルパルスレンチ等であってもよい。また、工具2は、例えば、ねじ(締付部品)の締付作業に用いられるドライバ(インパクトドライバ)であってもよい。この場合、ソケット242の代わりに、ビット(例えばドライバビット等)が工具2に取り付けられる。また、工具2は、電動工具に限らず、エアコンプレッサ(動力源)から供給される圧縮空気(動力)で動作するエアモータ(駆動部)を有するエア工具であってもよい。
本開示における工具システム1(1A,1B)の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを有する。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における工具システム1(1A,1B)、又は撮像部5が生成した撮像画像を識別する画像処理方法の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
(まとめ)
第1態様に係る工具システム(1,1A,1B,1C)は、工具(2)と、撮像部(5)と、画像記憶部(41,410,931)と、画像処理部(33,330,921)と、取得部(36)と、を備える。工具(2)は、動力源(電池パック201)からの動力(電力)によって動作する駆動部(24)を有する可搬型の工具である。撮像部(5)は、工具(2)に設けられている。画像記憶部(41,410,931)は、複数の作業対象箇所に対応し、複数の作業対象箇所の各々の属性を示すタグ情報が付加された複数の基準画像を記憶する。画像処理部(33,330,921)は、撮像部(5)が生成した撮像画像と複数の基準画像のうち少なくとも1つの基準画像とを比較する画像処理を行い、複数の作業対象箇所のうち撮像画像に写っている作業対象箇所である実写作業箇所を識別する。取得部(36)は、タグ情報に対応する絞込み情報を取得する。画像処理部(33,330,921)は、画像処理において、複数の基準画像のうち、取得部(36)が取得した絞込み情報に対応するタグ情報が付加された基準画像を優先的に撮像画像と比較する。
この態様によれば、工具システム(1,1A,1B,1C)は、画像処理部(33,330,921)の画像処理により複数の作業対象箇所を個別に特定することが可能となる。また、工具システム(1,1A,1B,1C)は、作業者が同じ作業場所で複数の作業対象箇所に作業を行う場合、または複数の作業対象箇所が互いに近い場合であっても、複数の作業対象箇所を個別に特定することができる。
また、画像処理部(33,330,921)は、複数の基準画像のうち、絞込み情報に対応するタグ情報が付加された基準画像を優先的に撮像画像と比較する。つまり、複数の基準画像から、画像処理部(33,330,921)が画像処理に用いる基準画像が絞り込まれ、画像処理において不要な基準画像が撮像画像と比較することが抑制される。これにより、画像処理部(33,330,921)が実写作業箇所を識別するのに要する時間の短縮、及び画像処理部(33,330,921)による実写作業箇所の識別精度の向上を図ることが可能となる。
第2態様に係る工具システム(1,1A,1B,1C)では、第1態様において、タグ情報は、複数の作業対象箇所を所定条件で分類したグループ情報を含む。取得部(36)は、画像処理部(33,330,921)が識別した実写作業箇所の履歴情報を取得し、実写作業箇所が属するグループ情報を絞込み情報として取得する履歴情報取得部(361)を有する。
この態様によれば、画像処理部(33,330,921)は、複数の基準画像から、撮像画像に写っている作業対象箇所とは異なるグループ情報に属する基準画像を除外した基準画像を用いて画像処理を行うことができる。これにより、画像処理部(33,330,921)が実写作業箇所を識別するのに要する時間の短縮、及び実写作業箇所の識別精度を図ることが可能となる。
第3態様に係る工具システム(1,1A,1B,1C)では、第1又は第2態様において、タグ情報は、複数の作業対象箇所の各々に対して、作業が行われる作業エリアを示す作業エリア情報を含む。取得部(36)は、工具(2)の位置を示す工具位置情報を、絞込み情報として取得する位置情報取得部(362)を有する。
この態様によれば、画像処理部(33,330,921)は、複数の基準画像から、撮像画像に写っている作業対象箇所に作業が行われる作業エリアとは異なる作業エリアに対応した基準画像を除外した基準画像を用いて画像処理を行うことができる。これにより、画像処理部(33,330,921)が実写作業箇所を識別するのに要する時間の短縮、及び実写作業箇所の識別精度を図ることが可能となる。
第4態様に係る工具システム(1,1A,1B,1C)では、第1~第3態様のいずれかにおいて、タグ情報は、複数の作業対象箇所の各々に作業を行う作業者を示す作業者情報を含む。取得部(36)は、工具の使用者を識別するためのID情報を、絞込み情報として取得するID情報取得部(363)を有する。
この態様によれば、画像処理部(33,330,921)は、複数の基準画像から、撮像画像に写っている作業対象箇所に作業を行う作業者とは異なる作業者に対応した基準画像を除外した基準画像を用いて画像処理を行うことができる。これにより、画像処理部(33,330,921)が実写作業箇所を識別するのに要する時間の短縮、及び実写作業箇所の識別精度を図ることが可能となる。
第5態様に係る工具システム(1C)では、第1~第4態様のいずれかにおいて、タグ情報は、複数の作業対象箇所の各々に対応する作業工程の作業順番を示す工程情報を含む。取得部(36)は、順番情報取得部(364)を有する。順番情報取得部(364)は、画像処理部(33,330,921)が識別した実写作業箇所の履歴情報を取得する。順番情報取得部(364)は、実写作業箇所に対応する作業工程の作業順番における、次の作業順番を示す作業情報を絞込み情報として取得する。
この態様によれば、画像処理部(33,330,921)は、複数の基準画像のうち次の作業順番に対応した基準画像を用いて画像処理を行うことができる。これにより、画像処理部(33,330,921)が実写作業箇所を識別するのに要する時間の短縮、及び実写作業箇所の識別精度を図ることが可能となる。
第6態様に係る工具システム(1,1A,1B,1C)では、第1~第5態様のいずれかにおいて、取得部(36)が取得した絞込み情報が変化したとする。この場合、画像処理部(33,330,921)は、変化後の絞込み情報に対応するタグ情報が付加された基準画像を優先的に撮像画像と比較する。
この態様によれば、絞込み情報が変化した場合、変化後の絞込み情報に応じて、画像処理部(33,330,921)が画像処理に優先的に用いる基準画像を切り替えることができる。これにより、作業工程の途中において絞込み情報が変化した場合であっても、画像処理部(33,330,921)が実写作業箇所を識別するのに要する時間の短縮、及び実写作業箇所の識別精度の向上を図ることが可能となる。
第7態様に係る工具システム(1,1C)では、第1~第6態様のいずれかにおいて、画像記憶部(41)、画像処理部(33)、及び取得部(36)は、工具(2)に設けられている。
この態様によれば、画像処理部(33)が画像処理を行い実写作業箇所を識別するために、工具(2)が外部と通信する必要がなく、画像処理部(33)が実写作業箇所を識別するのに要する時間の短縮、及び実写作業箇所の識別精度の向上を図ることが可能となる。
第8態様に係る工具システム(1A)では、第1~第6態様のいずれかにおいて、装置側通信部(91)を有する外部装置(9)を更に備える。工具(2)は、装置側通信部(91)と通信可能な工具側通信部(63)を有している。工具側通信部(63)は、撮像画像を装置側通信部(91)に送信するように構成されている。画像記憶部(931)、及び画像処理部(921)は、外部装置(9)に設けられている。
この態様によれば、処理負荷が比較的大きい画像処理部(921)による画像処理を、外部装置(9)で行うことができ、工具(2)での処理負荷の軽減を図ることができる。
第9態様に係る工具システム(1B)では、第1~第6態様のいずれかにおいて、装置側通信部(91)を有する外部装置(9)を更に備える。工具(2)は、装置側通信部(91)と通信可能な工具側通信部(63)を有している。工具側通信部(63)は、撮像画像を装置側通信部(91)に送信するように構成されている。画像記憶部(410)は、工具側画像記憶部(41)と、装置側画像記憶部(931)と、を有する。工具側画像記憶部(41)は、工具(2)に設けられ複数の基準画像のうち少なくとも1つの基準画像を記憶する。装置側画像記憶部(931)は、外部装置(9)に設けられ複数の基準画像を記憶する。画像処理部(330)は、工具側画像処理部(33)と、装置側画像処理部(921)と、を有する。工具側画像処理部(33)は、工具(2)に設けられ実写作業箇所を識別する。装置側画像処理部(921)は、外部装置(9)に設けられ実写作業箇所を識別する。
この態様によれば、工具(2)と外部装置(9)とで、撮像部(5)が撮像した作業対象箇所(実写作業箇所)を識別する処理を行うことができるので、実写作業箇所を識別するのに要する時間の短縮、及び実写作業箇所の識別精度の向上を図ることが可能となる。
第10態様に係る工具システム(1B)では、第9態様において、工具側画像記憶部(41)は、複数の基準画像のうち、取得部(36)が取得した絞込み情報に対応するタグ情報が付加された基準画像を記憶する。
この態様によれば、工具側画像記憶部(41)の記憶容量を、装置側画像記憶部(931)の記憶容量よりも小さくすることができ、工具(2)のコスト削減を図ることができる。
第11態様に係る工具システム(1,1A,1B,1C)は、第1~第10態様のいずれかにおいて、複数の基準画像の各々には、タグ情報が複数付加されている。取得部(36)は、絞込み情報を複数取得するように構成されている。複数のタグ情報は、複数の絞込み情報に対応する。
この態様によれば、複数の基準画像から、画像処理部(33,330,921)が画像処理に用いる基準画像をより絞り込むことができる。これにより、画像処理部(33,330,921)が実写作業箇所を識別するのに要する時間の短縮、及び実写作業箇所の識別精度の向上を図ることが可能となる。
第12態様に係る画像処理方法は、撮像部(5)が生成した撮像画像と、複数の基準画像のうち少なくとも1つの基準画像とを比較し、複数の作業対象箇所のうち撮像画像に写っている作業対象箇所である実写作業箇所を識別する画像処理方法である。撮像部(5)は、動力源(電池パック201)からの動力(電力)によって動作する駆動部(24)を有する可搬型の工具(2)に設けられている。複数の基準画像は、複数の作業対象箇所に対応し、複数の作業対象箇所の各々の属性を示すタグ情報が付加されている。画像処理方法は、複数の基準画像のうち、絞込み情報に対応するタグ情報が付加された基準画像を優先的に撮像画像と比較する。
この態様によれば、複数の作業対象箇所を個別に特定することが可能となる。また、この画像処理方法では、作業者が同じ作業場所で複数の作業対象箇所に作業を行う場合、または複数の作業対象箇所が互いに近い場合であっても、複数の作業対象箇所を個別に特定することができる。
また、この画像処理方法では、複数の基準画像のうち、絞込み情報に対応するタグ情報が付加された基準画像を優先的に撮像画像と比較する。つまり、複数の基準画像から、画像処理に用いる基準画像が絞り込まれ、画像処理において不要な基準画像が撮像画像と比較することが抑制される。これにより、画像処理において実写作業箇所を識別するのに要する時間の短縮、及び実写作業箇所の識別精度の向上を図ることが可能となる。
第13態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに、第12態様の画像処理方法を実行させる。
この態様によれば、複数の作業対象箇所を個別に特定することが可能となる。また、このプログラムでは、作業者が同じ作業場所で複数の作業対象箇所に作業を行う場合、または複数の作業対象箇所が互いに近い場合であっても、複数の作業対象箇所を個別に特定することができる。
また、このプログラムでは、複数の基準画像のうち、絞込み情報に対応するタグ情報が付加された基準画像を優先的に撮像画像と比較する。つまり、複数の基準画像から、画像処理に用いる基準画像が絞り込まれ、画像処理において不要な基準画像が撮像画像と比較することが抑制される。これにより、画像処理において実写作業箇所を識別するのに要する時間の短縮、及び実写作業箇所の識別精度の向上を図ることが可能となる。
なお、第2~第11態様に係る構成は、工具システム(1,1A,1B,1C)に必須の構成ではない。