JP7007958B2 - 高温超電導ケーブル - Google Patents

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Description

本発明は、高温超電導ケーブルに関する。
大容量の送電が可能な超電導ケーブル、特に超電導導体として高温超電導線材を用いた高温超電導ケーブルの開発が進められている。
大容量送電用の高温超電導ケーブルは、通常、内側から順に銅等の金属製のフォーマと超電導導体と電気絶縁層と磁気シールド層等でケーブルコアが形成されており、フォーマの内部やケーブルコアの外側に液体窒素等の冷媒を流通させることで超電導導体等が冷却されるように構成されている(例えば特許文献1~4等参照)。
特開平9-180553号公報 特開2001-52542号公報 特開2001-52545号公報 特開2002-8459号公報
ところで、送電ケーブルで送電する場合、送電先で短絡が生じると、送電ケーブルに非常に大きな電流が流れる場合がある。そして、大電流が流れると電流遮断器が作動してすぐに送電が停止される。また、仮にこの電流遮断器(主保護遮断器)が作動しなくても、通常、予備のために設置された後備遮断器が作動して、送電が停止される。
一方、例えば2本の送電ケーブルが近接していると、上記のようにして一方の送電ケーブルの送電先で短絡が生じて当該送電ケーブルに大電流が流れた場合、送電される電力が交流である場合には、両方の送電ケーブルが互いに電気的に接続されていなくても、それらの近接している部分の間に形成されたキャパシタ様の構造を介して交流の大電流が他方の送電ケーブルにも流れてしまう場合がある。この現象は、もらい短絡とも呼ばれる。
この場合、後者の送電ケーブル(すなわち最初に短絡が生じた側ではなく、それに伴ってもらい短絡で短絡通電が生じた側の送電ケーブル)が、導体部が銅やアルミニウム等からなる従来の送電線であれば、送電ケーブル自体が比較的大きな熱容量を有しており、しかも上記のように一方の送電ケーブル側の送電がすぐに停止されればこの送電ケーブルでもすぐに電流が流れなくなるため、大電流が流れて比較的大きな発熱があっても、送電ケーブルの温度上昇はさほど大きくない範囲で収まる。そのため、大した問題にはならない。
しかし、もらい短絡が生じた側の送電ケーブルが高温超電導ケーブルである場合には、深刻な問題が生じ得る。
一般に、高温超電導ケーブルでは、超電導導体に臨界電流を大きく上回る電流が流れると、電流が超電導導体から溢れて、金属製のフォーマや、超電導導体を構成する高温超電導線材の安定化層等の、常電導体を流れるようになる。その際、常電導体には電気抵抗と電流に応じた電圧降下が生じるが、キルヒホッフの法則により、常電導体と並列構造になっている超電導導体にも同じ電圧降下が生じる。
そのため、図10に示すように、超電導導体にはこの電圧降下ΔVに応じた電流Iが流れ、それに応じた熱が超電導導体内で発生するため、超電導導体の温度が上昇し、超電導導体の温度上昇に応じて臨界電流の値が急激に低下する(図10の二点鎖線参照)。そのため、超電導導体にはほとんど電流が流れなくなり、超電導導体から溢れて金属製のフォーマ等の常電導体に流れる電流がますます増大するという悪循環に陥る可能性がある。なお、図10中のIaは、高温超電導ケーブルの定格電流を表す。
そして、上記のように短絡通電が生じた側の送電ケーブルが高温超電導ケーブルである場合、短絡通電が生じて高温超電導ケーブルに大きな電流が流れた際に、主保護遮断器(あるいは後備遮断器)が作動して高温超電導ケーブル自体の送電が停止されれば、常電導体や超電導導体では電圧降下がなくなり発熱しなくなる。
そのため、上記のように超電導導体で発熱が生じたとしても、冷媒により冷却されるため、やがて超電導導体での超電導性が回復して高温超電導ケーブルが復旧し得る。
しかし、もらい短絡が生じた高温超電導ケーブル側の大電流は、高温超電導ケーブルの全区間(なお、区間とは、ケーブルの中間接続部同士の間の区間や中間接続部と終端接続部との間の区間等をいう。)を流れるとは限らない。そして、例えば、遮断器に過電流通電を知らせる過電流検出器が設置されていない区間のみに大電流が流れたような場合には、遮断器はそれを検知することができないため、当該高温超電導ケーブルに対する送電が停止されずに継続する場合があり得る。
その場合、もらい短絡が生じた高温超電導ケーブルの当該区間(その区間の全部又は一部。以下同じ。)では、上記のようにもらい短絡が生じた時点で超電導導体の温度が高くなり、臨界電流の値が非常に低くなっている。その状態で、その後も高温超電導ケーブルの送電が継続されると、超電導導体の温度は急には下がらず臨界電流の値が上昇しないため、金属製のフォーマ等の常電導体に電流が流れ続け、金属製のフォーマ等が発熱し続ける。
また、上記のように金属製のフォーマ等の常電導体に電流が流れている場合、高温超電導ケーブルの超電導導体には、金属製のフォーマ等の常電導体に生じている電圧降下と同じ電圧降下が生じている。そのため、超電導導体の温度が低下して臨界電流の値が少し回復して超電導導体に電流が流れ始めると、超電導導体に発熱が生じるため、超電導導体の温度が再び上昇して臨界電流の値が低下してしまい、結局、超電導導体にはほとんど電流が流れない状態に戻る。
このように、もらい短絡が生じた後も高温超電導ケーブルに送電が継続される場合、もらい短絡が生じた区間では、超電導導体の超電導性、すなわち臨界電流の値が回復しにくい状態になる。あるいはいくら時間をかけても超電導導体の超電導性が回復せず、高温超電導ケーブルが復旧しなくなる可能性がある。
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、もらい短絡事故が生じた高温超電導ケーブルの送電が事故後も継続する場合であっても、超電導導体での超電導性を回復させて復旧することが可能な高温超電導ケーブルを提供することを目的とする。
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
金属製のフォーマと、前記フォーマの外周に設けられた超電導導体層と、前記超電導導体層の外周に設けられた電気絶縁層とを備え、それらが冷媒の流通により冷却される高温超電導ケーブルにおいて、
前記超電導導体層の外側に、前記超電導導体層の熱を吸収するための熱浴層が設けられており、
前記超電導導体層を構成する高温超電導線材が、熱抵抗性部材を介して前記熱浴層と面接触していることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の高温超電導ケーブルにおいて、前記熱浴層は、前記超電導導体層の内側にも設けられていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の高温超電導ケーブルにおいて、前記熱抵抗性部材は、有機高分子材料を含むテープ又は不織布シートで構成されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の高温超電導ケーブルにおいて、前記熱浴層は、金属線材で構成されており、前記金属線材が前記熱抵抗性部材で巻回されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルにおいて、前記熱浴層は、低電気伝導性の金属で形成されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルにおいて、前記熱浴層は、金属線材で構成されており、高温超電導ケーブルの延在方向に直交する方向の前記金属線材の断面積が、前記高温超電導線材の断面積よりも大きいことを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルにおいて、前記熱浴層は、金属線材で構成されており、前記金属線材が前記高温超電導線材と6度未満の角度を有するように配設されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルにおいて、前記高温超電導線材と高温超電導ケーブル内の常電導体とが、高温超電導ケーブル同士を接続して高温超電導ケーブルを延伸するための中間接続部の設置間隔よりも短い間隔で電気的に接触していることを特徴とする。
本発明によれば、短絡通電事故が生じて超電導導体層で熱が発生して温度が上昇しても、超電導導体層と熱浴層との間に熱抵抗性部材が介在しているため、熱浴層の温度は一気に上昇しない。そのため、超電導導体層と熱浴層との間で温度差を形成することが可能となり、熱浴層が熱抵抗性部材を介して超電導導体層から熱を吸収して超電導導体層の温度を強制的に下げることが可能となる。
そのため、高温超電導ケーブルでもらい短絡事故が生じた後も送電が継続する場合であっても、熱浴層が熱抵抗性部材を介して超電導導体層から熱を吸収して超電導導体層の温度を強制的に下げるため、超電導導体層での超電導性を回復させることが可能となり、高温超電導ケーブルを確実に復旧させることが可能となる。
本実施形態に係る高温超電導ケーブルの構成を表す斜視図である。 構成例1に係る高温超電導線材や熱浴層、熱抵抗性部材の構成を表す断面図である。 高温超電導線材と熱浴線材との相対的な位置がずれた状態を表す断面図である。 構成例2において熱浴線材と高温超電導線材51とのなす角度θを説明する図である。 角度θがなす縦横比を説明する図である。 熱抵抗性部材で熱浴線材を巻回した状態を表す図である。 高温超電導ケーブル1の端部同士を中間接続部で接続した状態や高温超電導ケーブルの末端部に設けられた終端接続部を表すイメージ図である。 隙間を設けるように2本のカーボン紙テープをフォーマに巻回した状態を表す図である。 熱浴線材の一部を高電気伝導性の金属条で差し替えた状態を表す図である。 超電導体の電圧-電流特性の例を表すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明に係る高温超電導ケーブルについて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の各実施形態や図示例に限定するものではない。
また、例えば、高温超電導ケーブルで交流送電を行う場合、通常、3本の高温超電導ケーブルが必要になるが、そのそれぞれについて、以下で説明する高温超電導ケーブルを用いることができる。
[高温超電導ケーブルの構成]
図1は、本実施形態に係る高温超電導ケーブルの構成を表す斜視図である。
高温超電導ケーブル1は、主にケーブルコア2と断熱管3とで構成されている。そして、ケーブルコア2は、フォーマ4と、超電導導体層5と、熱浴層6と、電気絶縁層7と、磁気シールド層8と、保護層9とを備えて構成されている。
フォーマ4は、金属製であり、ケーブルコア2の中心部分に設けられている。そして、本実施形態では、フォーマ4は、複数本の銅の丸線41が束ねられて円筒状に形成されている。
また、円筒状のフォーマ4の中空部4aには、冷媒(例えば液体窒素)が流通されている。そして、冷媒は、フォーマ4を冷却するとともに、その中空部4aから銅の丸線41の隙間を通り、後述する各高温超電導線材51の間を浸透してそれらを冷却するようになっている。
フォーマ4は、ケーブルコア2の形状を維持する機能を有している。また、フォーマ4は、前述したように超電導導体層5に過大な電流が流れた場合にはバイパス経路として機能し、超電導導体層5から溢れた電流が流れるようになっている。なお、高温超電導ケーブル1が正常に機能している場合(すなわち超電導導体層5の超電導性が維持されている場合)には、フォーマ4には電流は流れない。
フォーマ4の外周には、超電導導体層5が設けられており、超電導導体層5が高温超電導ケーブル1における通常時の電流の流路になっている。
本実施形態では、超電導導体層5は、複数条の高温超電導線材51を並べるようにして構成されており、各高温超電導線材51をフォーマ4に緩い螺旋状に巻回させるようにして構成されている。なお、超電導導体層5は、1つの層で構成されていてもよく複数の層であってもよい。
また、本実施形態では、フォーマ4の外側に図示しない整形用のカーボン紙が1枚又は複数枚巻き付けられており、カーボン紙で円筒面を形成し、それに各高温超電導線材51が螺旋状に巻回されている。
このようにして超電導導体層5を設けることで、超電導導体層5が円筒形状になるため(あるいはほぼ円筒形状になるため)、超電導導体層5での交流損失の発生が抑制され、交流損失による発熱の発生が抑制されるように構成されている。なお、カーボン紙は必ずしも設けられていなくてもよい。
高温超電導線材51は、テープ状の線材であり、例えば後述する図2に示すように、基板金属条53の一面側に超電導層52が形成され、基板金属条53の他面側に銀等で構成された保護層54が形成され、それらが銅等で形成された安定化層55で被覆されて構成されている。なお、超電導層52の実際の厚さは高温超電導線材51の厚さの1/100程度である。
超電導層52を構成する超電導体としては、例えば、液体窒素温度(77K)以上の臨界温度を有するイットリウム系超電導体(REBCO線材。化学式はYBa2Cu37-y(yは酸素不定比量)で表される。)を用いることができる。
なお、高温超電導線材51を、フォーマ4(図2では図示省略。図中下側に配置されている。)に近い方から順に保護層54、基板金属条53、超電導層52となる向きに配置することも可能であり、逆向き(すなわちフォーマ4に近い方から順に超電導層52、基板金属条53、保護層54となる向き)に配置することも可能である。
図2に記載されている熱浴層6や熱抵抗性部材20等については後で詳しく説明する。
図1に示すように、超電導導体層5や熱浴層6の外周には、電気絶縁層7が設けられている。
電気絶縁層7は、例えば、絶縁紙にポリプロピレンフィルムをラミネートした半合成紙やクラフト紙等の絶縁性紙類等で形成されており、それらが超電導導体層5や熱浴層6の上に分厚く巻回されて構成されている。
電気絶縁層7の外周には、磁気シールド層8が設けられており、本実施形態では、磁気シールド層8は、主に超電導シールド層81と銅シールド層82とで構成されている。
超電導シールド層81は、超電導導体層5と同様に複数条の高温超電導線材を電気絶縁層7に螺旋状に巻回させるようにして構成されている。そして、超電導導体層5を電流が流れることによって形成される磁場の外部への漏れがこの超電導シールド層81によって完全に遮断されるようになっている。
また、銅シールド層82は、例えば銅編組線からなるシールド層で構成されており、ケーブルコア2を外部からの衝撃から守るように機能する。
磁気シールド層8の外周には、不織布等で形成された保護層9が設けられており、ケーブルコア2を保護するようになっている。
そして、以上のように構成されたケーブルコア2の外側に、冷媒(例えば液体窒素)が流通されている。そして、この冷媒は、前述したフォーマ4の中空部4aを流通する冷媒と協働してケーブルコア2全体を冷却するようになっている。
一方、断熱管3は、ケーブルコア2を収容するとともに冷媒が充填される断熱内管10と、断熱内管10の外周を覆うように配設された断熱外管11とを備えており、断熱内管10と断熱外管11の間が真空状態とされた二重管構造である。
断熱内管10と断熱外管11は、例えばステンレス製のコルゲート管(波付き管)で構成される。そして、断熱内管10と断熱外管11の間には、例えばアルミを蒸着したポリエステルフィルムの積層体で構成された多層断熱層12が介在されている。
そして、断熱外管11の外周が、ポリ塩化ビニルやポリエチレン等の外部被覆(防食層)13で被覆されている。
[超電導導体層と熱浴層の構成]
次に、本実施形態に係る高温超電導ケーブル1における超電導導体層5と熱浴層6の構成について説明する。
以下、超電導導体層5やそれを構成する各高温超電導線材51と熱浴層6や熱抵抗性部材20との配置関係について2つの構成例に分けて説明するが、熱浴層6や熱抵抗性部材20の機能や作用効果等はいずれの構成例においても同様である。
なお、以下では、熱浴層6や熱抵抗性部材20が、超電導導体層5やそれを構成する各高温超電導線材51の外側に設けられている場合について説明するが、熱浴層6や熱抵抗性部材20は、超電導導体層5や各高温超電導線材51の外側と内側の両方に設けられていてもよい。
さらに、図示を省略するが、例えば、超電導導体層5が2層の線材配列層から形成されている場合は、2層の間に熱浴層6や熱抵抗性部材20を設ける(すなわち超電導導体層5の各層で熱浴層6や熱抵抗性部材20を挟むように熱浴層6や熱抵抗性部材20を設ける)ことが可能である。
この場合、熱浴層6を1層として超電導導体層5を構成する2層の線材配列層が共通の熱浴層6を有するように構成してもよく、超電導導体層5に対応して熱浴層6も2層に分けて設けるように構成してもよい。
また、上記とは逆に、超電導導体層5の内側と外側にそれぞれ熱浴層6や熱抵抗性部材20を設けて、熱浴層6や熱抵抗性部材20で超電導導体層5を挟むように構成することも可能である。
このように、熱浴層6や熱抵抗性部材20を、超電導導体層5や各高温超電導線材51の外側や内外の適宜の位置に配置することが可能である。
[構成例1]
図2は、構成例1に係る高温超電導線材51や熱浴層6、熱抵抗性部材20の構成を表す断面図である。
前述したように、本実施形態では、超電導導体層5は複数条の高温超電導線材51で構成されているが、構成例1では、図2に示すように、高温超電導線材51ごとに、高温超電導線材51が熱抵抗性部材20を介して熱浴層6と面接触するように設けられる。そして、高温超電導線材51と熱抵抗性部材20と熱浴層6とが1セットとされ、このような高温超電導線材51等のセットをフォーマ4(図1参照)の外周に複数条並べて配置することで、超電導導体層5の外側に熱浴層6が設けられるように構成される。
すなわち、構成例1では、超電導導体層5を構成する各高温超電導線材51が、熱抵抗性部材20を介して熱浴層6と全体で(すなわち1本の高温超電導線材51の延在方向の全域にわたって)面接触している。
熱浴層6は、超電導導体層5の高温超電導線材51で熱が発生した場合にその熱を吸収するようになっている。
そして、本実施形態では、熱浴層6は、熱の吸収効率が高い金属で形成されており、上記のように高温超電導線材51ごとに1本ずつ金属線材として構成されている。なお、以下、熱浴層6を構成する金属線材を熱浴線材61という。
熱抵抗性部材20は、超電導導体層5の高温超電導線材51で発生した熱が熱浴層6に即座に移動しないようにするためのものである。
すなわち、熱抵抗性部材20は、超電導導体層5の高温超電導線材51で熱が発生した場合に、その熱を、ある程度時間をかけて熱浴層6に移動させるようになっている。
本実施形態では、熱抵抗性部材20は、有機高分子材料を含むテープや不織布シートで構成されている。
具体的には、熱抵抗性部材20は、例えばポリイミド等の有機高分子材料で構成されたテープやそれに有機高分子以外の成分が添加されたり有機高分子以外の材料でコートされる等したテープや、有機高分子からなる繊維を含む不織布等で構成することが可能である。
なお、熱抵抗性部材20は、半合成紙やクラフト紙、カーボン紙等で形成されていてもよい。
また、熱浴層6やそれを構成する熱浴線材61、熱抵抗性部材20の材質や機能等については、以下で説明する構成例2においても同様である。また、これらの点については後で詳しく説明する。
[構成例2]
一方、構成例1のように、高温超電導線材51と熱抵抗性部材20と熱浴線材61とを互いに面接触させた高温超電導線材51等のセットを形成してフォーマ4の外周に並べて配置する代わりに、フォーマ4の外周に複数条の高温超電導線材51を並べて巻回して超電導導体層5を形成した後、その外周に、複数条の熱浴線材61を並べて巻回して熱浴層6を形成するように構成することも可能である。
このように構成すれば、構成例1のように高温超電導線材51等のセットを形成する手間をかける必要がなくなり、フォーマ4の外周に超電導導体層5と熱浴層6とを容易に形成することが可能となる。
ただし、この場合、各高温超電導線材51の外周に各熱浴線材61を配置する際、各高温超電導線材51と各熱浴線材61とが平行になるように配置すると、例えば図3に示すように高温超電導線材51と熱浴線材61の角度が僅かにずれてしまい、高温超電導線材51と熱浴線材61や熱抵抗性部材20との面接触が得られにくい状態になり得る。
そして、このような状態になると、高温超電導線材51から熱浴線材61に熱が伝わりにくくなり、熱浴線材61すなわち熱浴層6による高温超電導線材51の熱の吸収効率が著しく低下してしまう可能性がある。
そこで、構成例2のように構成する場合には、図4に示すように、熱浴層6を構成する各熱浴線材61が、超電導導体層5を構成する各高温超電導線材51とある程度の角度θを有するように配設されていることが望ましい。
なお、図4は、超電導導体層5とその外周に設けられた熱浴層6とを外側から見た図である。また、図4では、熱抵抗性部材20等の図示が省略されている。
このように構成すれば、高温超電導線材51には、その延在方向において各熱浴線材61がそれぞれ面接触する状態になる。そのため、図3に示したような、高温超電導線材51の延在方向の全域にわたって高温超電導線材51と熱浴線材61とが僅かにしか面接触しない状態は生じず、各高温超電導線材51と各熱浴線材61とがそれぞれ確実に面接触する状態になる。
そのため、高温超電導線材51から熱浴線材61に熱が的確に伝わるようになり、熱浴線材61すなわち熱浴層6による高温超電導線材51の熱の吸収効率が低下することを的確に防止することが可能となる。
また、図4に示したように各熱浴線材61が各高温超電導線材51とある程度の角度θを有するように構成すれば、各熱浴線材61を超電導導体層5に巻回する際に、ある程度の角度θを有するように巻回することが許容されることになる。
上記の角度θが0度になるように各熱浴線材61を超電導導体層5に巻回しなければならないとすると巻回作業に高度な厳密さが要求されることになるが、上記のように角度θにある程度の幅が許容されれば巻回作業における厳密さが緩和されることになり、実際に巻回作業を行う上で有益な効果が得られる。
なお、上記のように各熱浴線材61を各高温超電導線材51の外周に角度θを有するように巻回する際、その角度θが大きいと、各熱浴線材61を、超電導導体層5の円周方向(すなわち高温超電導ケーブル1の長手方向に直交する方向)に近い角度で巻回しなければならなくなる。
しかし、その場合、各熱浴線材61の曲がりが大きくなり、熱浴線材61を構成する金属の剛性により各熱浴線材61の超電導導体層5への密着性が悪くなる可能性がある。そのため、上記の角度θは小さい方が好ましい。
角度θの具体的な値について考察する際、角度θがなす縦横比(すなわち図5に示すように高温超電導線材51と熱浴線材61とを仮想平面上に置いた場合の横の長さxに対する縦の長さyの比y/x)が0.1未満すなわちtanθ=0.1未満になるように構成することが1つの目安になり得る。tanθ=0.1に対応する角度θは約6度である。
すなわち、構成例2(図4参照)のように構成する場合、各熱浴線材61が各高温超電導線材51と6度未満の角度を有するように配設されていることが好ましい。
このように構成すれば、各熱浴線材61が各高温超電導線材51に対してある程度の角度θを有する状態で配設されるため、上記のような有益な作用効果を得ることが可能となる。
また、それとともに、各熱浴線材61の曲がりがさほど大きくならないため、熱浴線材61を構成する金属の剛性により各熱浴線材61の超電導導体層5への密着性が悪化することなく、各熱浴線材61を超電導導体層5に的確に面接触させた状態で配設することが可能となる。
[熱浴線材と熱抵抗性部材との配置について]
ここで、上記の構成例1、2における熱浴線材61と熱抵抗性部材20との配置の構成例について説明する。
熱浴線材61と熱抵抗性部材20とをそれらの配置の点で見た場合、上記の構成例1では(図2参照)、熱抵抗性部材20が熱浴線材61の一面側(高温超電導線材51側)に位置する状態でそれらの延在方向の全域にわたって面接触するように配置した。
そして、この構成を、上記の構成例2に適用することも可能である。
また、上記の構成例2では、例えば図6に示すように、熱抵抗性部材20で熱浴線材(金属線材)61を巻回するように構成することも可能である。このように構成すれば、熱浴線材61と熱抵抗性部材20とを的確に面接触させることが可能となるとともに、熱浴線材61と高温超電導線材51(図示省略)との間に的確に熱抵抗性部材20を介在させることが可能となる。
そして、この構成を、上記の構成例1に適用することも可能である。
なお、図6では、熱抵抗性部材20を、熱浴線材61に隙間なく巻回させた場合を示したが、このように構成する代わりに、図示を省略するが、例えば、熱抵抗性部材20の端を少しずつ重ねるようにして隙間なく巻回させるように構成してもよく、あるいは、隙間をあけるように巻回させるように構成することも可能である。
また、図6では、熱抵抗性部材20を熱浴線材61に1層だけ巻回させた場合を示したが、多層巻回させるように構成することも可能である。このように構成すると、層数を調整することで熱抵抗性部材20の厚さを調整することができる。
[作用]
次に、本実施形態に係る高温超電導ケーブル1の作用について説明する。
前述したように、もらい短絡事故が生じて高温超電導ケーブルに大きな電流(過電流)が流れた後も当該高温超電導ケーブルに対する送電が継続する場合があるが、その場合、超電導導体層の温度が上昇する。
そして、一般的な高温超電導ケーブルでは、一旦、超電導導体層の温度が上昇すると、超電導導体層の温度が臨界温度付近のままとなり(いわば臨界温度に張り付いたままになり)、超電導導体層の臨界電流の値が著しく低下した状態が続くため、超電導導体層には電流がほとんど流れない状態、あるいは全く流れない状態が継続してしまい、結局、高温超電導ケーブルが復旧しなくなる可能性がある。
本実施形態に係る高温超電導ケーブル1では、上記のように、超電導導体層5(高温超電導線材51)の外側(又は内側の少なくとも一方。以下同じ。)に熱浴層6(熱浴線材61)が設けられている。
そのため、超電導導体層5で熱が発生した場合には、熱浴層6がその熱を吸収して超電導導体層5から熱を強制的に奪い取るため、熱浴層6で超電導導体層5の温度をいわば強制的に下げることができる。
このようにして、本実施形態では、高温超電導ケーブル1で短絡通電事故が生じて超電導導体層5で熱が発生しても、熱浴層6がその熱を吸収して超電導導体層5の温度を強制的に下げることが可能となる。
そのため、高温超電導ケーブル1でもらい短絡事故が生じた後も送電が継続する場合であっても、超電導導体層5での超電導性を回復させることが可能となり、高温超電導ケーブル1を確実に復旧させることが可能となる。
このような有益な作用効果を発揮するために、熱浴層6は、超電導導体層5で発生した熱を的確に吸収するものであることが望ましい。
本実施形態のように、熱浴層6を構成する熱浴線材61が金属線材で形成されていれば、金属は一般にプラスチック等に比べて熱伝導性が高いため、超電導導体層5で発生した熱を熱浴層6内で伝導させて取り込むことが可能となり、熱を効率良く吸収することができる。
また、熱浴層6は、例えば図2に示したように、高温超電導ケーブル1の延在方向に直交する方向の熱浴線材61の断面積が、高温超電導線材51の断面積よりも大きくなるように構成されていることが望ましい。
なお、図2は上記の構成例1を説明するための図であるが、熱浴線材61の断面積が大きいことが望ましいことは構成例2においても同様である。
このように熱浴層6を構成する熱浴線材61の断面積を大きくすれば、熱浴層6(熱浴線材61)の熱容量が大きくなるため、熱浴層6による超電導導体層5の熱の吸収効率をより向上させることが可能となる。
また、超電導導体層5と熱浴層6との接触面積(正確には超電導導体層5と熱抵抗性部材20との接触面積や熱抵抗性部材20と熱浴層6との接触面積)を調整して、熱浴層6による超電導導体層5の熱の吸収効率を適切な値に調整することも可能である。
一方、単に熱浴層6で超電導導体層5の熱を吸収するように構成すると、上記のように短絡通電事故が発生して高温超電導ケーブル1の超電導導体層5の温度が上昇した際に、熱浴層6が急速に超電導導体層5の熱を奪い、超電導導体層5の温度上昇に伴って熱浴層6の温度も上昇する。特に、本実施形態のように熱浴層6を構成する熱浴線材61として金属線材を用いると、熱伝導性が高いため、超電導導体層5の温度上昇と同時に(あるいはほぼ同時に)熱浴層6の温度も上昇してしまう。
そのため、超電導導体層5と熱浴層6との間で温度差がなくなり、超電導導体層5の温度を強制的に下げるという熱浴層6の上記の機能を果たせなくなる(すなわち超電導導体層5の冷却の役に立たなくなる)可能性がある。
この問題を解決する方法としては、例えば、熱浴層6の熱容量が超電導導体層5の熱容量に比べて非常に大きくなるように構成すれば、超電導導体層5の温度が上昇して熱浴層6に熱が移動しても、熱浴層6の温度はさほど急速には上昇しなくなる。
そのため、超電導導体層5と熱浴層6との間で温度差が生じ、熱浴層6で超電導導体層5の温度を強制的に下げることが可能となると考えられる。
しかし、これを実現するためには、熱浴線材61を非常に分厚くして熱容量を大きくすることが考えられるが、熱浴層6を非常に分厚くすると、高温超電導ケーブル1自体が巨大化してしまう等の問題が生じ得る。
また、熱浴層6の熱容量を大きくすると、短絡通電の間、超電導導体層5の温度が低い状態、すなわち超電導導体層5の臨界電流が高い状態が維持され、超電導導体層5を流れる電流が減少せずに発熱が続くため、結局、超電導導体層5でのトータルの発熱量が多くなってしまうという事態も生じ得る。
それに対し、本実施形態に係る高温超電導ケーブル1では、上記のように、超電導導体層5を構成する高温超電導線材51が、熱抵抗性部材20を介して熱浴層6(熱浴線材61)と面接触している。
すなわち、超電導導体層5と熱浴層6との間に、有機高分子材料を含むテープや不織布シート等で構成された熱抵抗性部材20が介在している。
そして、超電導導体層5で熱が発生した場合には、熱抵抗性部材20が超電導導体層5から熱浴層6への熱の移動に抵抗するため、超電導導体層5での熱の発生時点では、超電導導体層5から熱浴層6に熱が一気に移動することはない。そのため、超電導導体層5で熱が発生して超電導導体層5の温度が上昇しても、熱浴層6の温度はすぐには上昇せず、超電導導体層5と熱浴層6との間で温度差が形成される。
また、熱抵抗性部材20は、熱を遮断するわけではないため、超電導導体層5で発生した熱は超電導導体層5から熱浴層6に徐々に移動する。そのため、熱浴層6は、熱抵抗性部材20を介して超電導導体層5から熱を徐々に奪い取る。
本実施形態では、このようにして、高温超電導ケーブル1で短絡通電事故が生じて超電導導体層5で熱が発生した際、熱抵抗性部材20が介在しているため、温度が上昇した超電導導体層5と温度がまだ上昇していない熱浴層6との間で温度差を形成することが可能となり、熱浴層6が熱抵抗性部材20を介して超電導導体層5から熱を吸収して超電導導体層5の温度を強制的に下げることが可能となる。
そのため、高温超電導ケーブル1でもらい短絡事故が生じた後も送電が継続する場合であっても、超電導導体層5での超電導性を回復させることが可能となり、高温超電導ケーブル1をより確実に復旧させることが可能となる。
なお、短絡通電事故が生じて高温超電導ケーブル1の超電導導体層5に大きな電流(臨界電流)が流れ、超電導導体層5で発熱が生じた際、冷媒(本実施形態では液体窒素)の一部が気化してガスが発生する場合がある。
そして、発生したガスが超電導導体層5と熱抵抗性部材20との間や熱抵抗性部材20と熱浴層6との間に入り込むと、超電導導体層5から熱浴層6への熱の移動に対する熱抵抗が、熱抵抗性部材20による熱抵抗(すなわち設計値)よりも格段に大きくなってしまう。また、発生したガスが超電導導体層5と熱抵抗性部材20との間などに入り込むと除去することが困難になる等の問題が生じ得る。
しかし、本実施形態では、上記のように、高温超電導線材51が熱抵抗性部材20を介して熱浴層6と面接触しているため、すなわち超電導導体層5と熱抵抗性部材20や熱抵抗性部材20と熱浴層6が面接触(密着)しているため、仮に冷媒の一部がガス化してもそのガスが超電導導体層5と熱抵抗性部材20との間や熱抵抗性部材20と熱浴層6との間に入り込むことがない。
そのため、上記のような問題が生じることを的確に防止することが可能となる。なお、超電導導体層5と熱抵抗性部材20とを面接触(密着)させたり、熱抵抗性部材20と熱浴層6とを面接触(密着)させる場合、それらを固着する(すなわち相対的な位置ずれを生じないように固定する)必要はないが、後述するように粘着させる(すなわち相対的な位置ずれが生じることを許容する状態で接着する)ことは可能である。
ここで、熱抵抗性部材20の熱抵抗の大きさについて説明する。
前述したように、遮断器は、短絡通電事故などが生じて送電ケーブルに過電流が流れたことを検知すると、当該送電ケーブルに対する送電を遮断する。その際、後備遮断器は、通常、送電ケーブルに過電流が流れ始めてから0.6秒程度でその送電ケーブルに対する送電を遮断するようになっている。
そのため、ある送電ケーブルの送電先で短絡が生じて送電ケーブルに過電流が流れると、0.6秒程度後には当該送電ケーブルに対する送電が停止される。
そして、短絡を生じた送電ケーブルに近接している高温超電導ケーブル1でもらい短絡事故が生じた際に、過電流が流れたことでその高温超電導ケーブル1の遮断器が起動しなくても、上記のように短絡が生じた元の送電ケーブルでは送電が短絡発生後長くても0.6秒程度で遮断されるため、高温超電導ケーブル1にももらい短絡で0.6秒間程度過電流が流れるが、その後、過電流は流れなくなる(なお、この場合、上記のように高温超電導ケーブル1の遮断器が起動していないため、高温超電導ケーブル1での通常の送電は継続する。すなわち高温超電導ケーブル1でもらい短絡事故が生じた後も送電が継続する状態になる。)。
そのため、熱抵抗性部材20の熱抵抗の大きさとしては、例えば、この0.6秒の間に超電導導体層5(高温超電導線材51)が発熱して温度が上昇しても、熱浴層6(熱浴線材61)の温度はあまり上昇しないが、0.6秒より一桁程度長い数秒のオーダーの時間(例えば6秒)をかけて熱浴層6が超電導導体層5の熱を奪い取るような熱抵抗になるように、熱抵抗性部材20の熱抵抗の大きさを調整することが1つの目安になり得る。
なお、熱抵抗性部材20の熱抵抗が大きすぎると、超電導導体層5の熱を奪う間に継続される送電による超電導導体層5での発熱の蓄積が大きくなり、熱浴層6では取り切れなくなる可能性がある。また、熱抵抗性部材20の熱抵抗が小さすぎると、前述したように超電導導体層5の温度上昇と同じように熱浴層6の温度が上昇してしまい、熱浴層6が熱浴としての機能を果たさなくなる可能性がある。
そのため、熱抵抗性部材20の熱抵抗の大きさは、超電導導体層5や熱浴層6の構成や性能等に基づいて最適な大きさに調整、設定されることは言うまでもない。
[効果]
以上のように、本実施形態に係る高温超電導ケーブル1によれば、高温超電導ケーブル1で短絡通電事故が生じて超電導導体層5で熱が発生しても、熱浴層6がその熱を吸収して超電導導体層5の温度を強制的に下げることが可能となる。
また、本実施形態に係る高温超電導ケーブル1では、超電導導体層5と熱浴層6との間に熱抵抗性部材20が介在しているため、短絡通電事故が生じて超電導導体層5の温度が上昇しても、超電導導体層5から熱浴層6に熱が一気に移動せず、徐々に移動する。そのため、温度が上昇した超電導導体層5と温度が上昇していない熱浴層6との間で温度差を形成することが可能となり、熱浴層6が熱抵抗性部材20を介して超電導導体層5から熱を吸収して超電導導体層5の温度を強制的に下げることが可能となる。
そのため、本実施形態に係る高温超電導ケーブル1によれば、高温超電導ケーブル1でもらい短絡事故が生じた後も送電が継続する場合であっても、熱浴層6が熱抵抗性部材20を介して超電導導体層5から熱を吸収して超電導導体層5の温度を強制的に下げるため、超電導導体層5での超電導性を回復させることが可能となり、高温超電導ケーブル1をより確実に復旧させることが可能となる。
[実施例及び比較例]
以下、本実施形態に係る高温超電導ケーブル1の実施例と、本実施形態に係る高温超電導ケーブル1とは異なる構成とした高温超電導ケーブルにおける比較例とを示す。
なお、本発明の範囲は、以下に示す実施例等には限定されない。
[実施例における構成]
まず、以下で説明する実施例における高温超電導ケーブル1の構成について説明する。なお、以下で説明する比較例では、当該比較例で特に説明する構成以外の構成は、以下の実施例と同じ構成とされている。
実施例では、高温超電導ケーブル1の超電導導体層5を2層の線材配列層で構成し、2層の熱浴層6で超電導導体層5全体を挟み込むように構成した。なお、ケーブルコア2のフォーマ4から電気絶縁層7までの具体的な構成は、内側から、銅製のフォーマ4、整形用のカーボン紙、内側の熱浴層6、熱抵抗性部材20、内側の超電導導体層5、整形用のカーボン紙、外側の超電導導体層5、熱抵抗性部材20、外側の熱浴層6、電気絶縁層7の順となる。なお、実施例では上記の構成例2(図4参照)の構成が採用されている。
熱浴層6を構成する熱浴線材61は、銅に対して10%以下の錫とわずかなリンを加えたリン青銅のテープ形線材として形成した。そして、それに、熱抵抗性部材20としてポリイミドテープを螺旋状に巻回し、それらを並べて熱浴層6を形成した。
リン青銅の電気伝導度は液体窒素温度付近において銅の電気伝導度よりも二桁以上小さい。したがって、リン青銅製の熱浴層6と超電導導体層5とが電気的に接触していても、超電導導体層5への通常の送電時や短絡通電事故が生じて超電導導体層5から電流が溢れても熱浴層6を流れる電流は小さく、そこでのジュール発熱は無視してよい。
なお、リン青銅の熱容量は純銅とさほど違わない。また、熱伝導度(熱抵抗の逆数)は純銅と比べれば劣るが、例えば熱抵抗性部材20を構成する有機高分子材料と比較すればはるかに大きい。したがって、熱抵抗を評価する際には、近似としてリン青銅(熱浴層6)の寄与を無視してよい。
寸法は、超電導導体層5を構成する高温超電導線材51の幅を3.0mm、厚さを0.1mm、熱浴層6を構成する熱浴線材61の幅を2.1mm、厚さを0.2mmとした。また、熱抵抗性部材20としてのポリイミドテープは1層分の寸法が幅6mm、厚さ0.025mmであり、それを10層重なるように熱浴線材61に巻回した。なお、高温超電導線材51と面接触するようにするために、少なくとも最外層のポリイミドテープの外面に粘着性を持たせることが好ましい。
このように構成すると、熱抵抗性部材20の厚さは0.25mmとなり、熱浴線材61と熱抵抗性部材20とで構成される線材の幅は2.6mm、厚さは0.7mmとなる。
熱抵抗性部材20(ポリイミドテープ)の熱伝導度は0.1W/K・m程度であり、これは20K以上の温度領域ではほとんど変化しない。また、上記のように熱浴線材16(リン青銅線材)が延べ10枚分のポリイミドテープで巻回された状態を考えると、ポリイミドテープの厚さと接触面積から導出される熱抵抗は、単位長さあたりで1.2K・m/W程度になる。
しかし、実際にはポリイミドテープの積層界面が無視できない熱抵抗を持っており、それを考慮すると熱抵抗性部材20全体の単位長さあたりの熱抵抗は6K・m/Wであると考えられる。
また、超電導導体層5を構成する高温超電導線材51は、高温超電導ケーブル1の延在方向に対して±15度(すなわち内側の線材配列層では+15度、外側の線材配列層では-15度。以下も同様。)とし、熱浴層6を構成する熱浴線材61は±20度とした。そのため、この場合、高温超電導線材51とそれに対応する熱浴線材61とのなす角θは5度である。
また、高温超電導線材51をそれぞれ30本ずつ並べて2層構造の超電導導体層5をそれぞれ形成した(2層合わせて60本)。また、熱浴線材61もそれぞれ同数の30本ずつ並べて内側と外側の熱浴層6をそれぞれ形成した(内外合わせて60本)。
なお、上記のように熱浴線材61(熱抵抗性部材20を含めて幅2.6mm)は高温超電導線材51(幅3.0mm)よりも幅が狭いため、円周状に均等に配置すると熱浴線材61間に隙間ができる。そのため、この隙間に冷媒が染み込み、冷媒の浸透と循環が促されるようになっている。
また、上記のように構成すると、各層の断面積を比較した場合、高温超電導線材51の1本あたりの断面積が0.30mm(=幅3.0mm×厚さ0.1mm)、熱浴線材61の1本あたりの断面積が0.42mm(=幅2.1mm×厚さ0.2mm)である。そして、互いに本数が同じであることから金属部の総断面積では高温超電導線材51(超電導導体層5)に対する熱浴線材61(熱浴層6)の比率が1.4となり、熱容量の比率もほぼこれに近い値になっている。
[比較例1]
以下、比較例1として、熱浴層6も熱抵抗性部材20も設けられていない場合において、短絡通電で過電流が流れた場合の温度挙動のシミュレーションの結果を示す。なお、この比較例1における高温超電導ケーブルは、熱浴層6が設けられている本実施形態の高温超電導ケーブル1とは異なるため、以下、各部材等に符号を付さずに説明する。
いま、高温超電導ケーブルの定格電流が3kA、超電導導体層全体での延べ臨界電流(図10のIに対応)が6kA、短絡通電時に電流のバイパスとなるフォーマの断面積が300mmであるとして、AC30kA、0.6秒の過電流が発生した場合を考える。
液体窒素温度近傍での銅の比抵抗は2nΩ・mであるため、長さ1mあたりのフォーマの電気抵抗は約6.7μΩ/mになる。そして、超電導導体層の延べ臨界電流をオーバーした24kAの電流が流れると、フォーマでの長さ1mあたりの電圧降下は0.16V/mとなる。
そして、前述したように、短絡通電時には超電導導体層にもこれと同じだけの電圧降下が生じることになり、超電導導体層での発熱量は0.96kW/m(=6kA×0.16V/m)になる。これを、超電導導体層を構成する高温超電導線材1本あたりの発熱量に換算すると、16W/mになる。そのため、通電時間(0.6秒)を考慮すると、高温超電導線材1本あたりの総発熱量は、9.6J/mになる。
高温超電導線材を構成する主な要素である基板金属条(図2の基板金属条53参照)が鉄系合金で形成されているとすると、鉄系合金と銅の液体窒素温度付近での比熱はいずれも2J/K・cm程度であり、高温超電導線材の寸法が幅3mm、厚さ0.1mm(断面積0.3mm)であるため、高温超電導線材の長さ1mあたりの熱容量は0.6J/K・mになる。
そのため、0.6秒の短絡通電による高温超電導線材の温度上昇(総発熱量÷熱容量)は、16Kと算出される。
ただし、実際には高温超電導線材の温度が上昇するにつれてその臨界電流が低下し、それに伴って高温超電導線材を流れる電流量も減少していくため、高温超電導線材での総発熱量は上記の値よりも小さくなる。
高温超電導線材での総発熱量が上記の値の6割程度であったとすると、短絡通電による高温超電導線材の温度上昇は、9.6Kと算出される。
短絡通電が生じた高温超電導ケーブルのある地点での短絡通電直前の温度が80Kであったとすると、その地点では、短絡通電直後に高温超電導線材の温度が90K近くまで上昇することになる。高温超電導線材の臨界温度は90K程度であるため、高温超電導線材には電流がほとんど流れない状態になる。
そして、たとえばもらい短絡でこの高温超電導ケーブルに定格電流3kAの交流送電が継続される場合を想定すると、電流の多くは臨界電流の低下した超電導導体層ではなくフォーマを流れ、その双方を加熱し続ける。そして、その加熱量が冷媒による冷却量(抜熱量)を上回っていると、超電導導体層はいつまでも超電導性を回復させられないことになる。
[比較例2]
次に、比較例2として、熱浴層6は設けられているが、熱抵抗性部材20が設けられていない場合(すなわち熱浴層6が超電導導体層5に直接面接触している場合)において、短絡通電が生じたときの温度挙動のシミュレーションの結果を示す。なお、この比較例2においても、各部材等に符号を付さずに説明する。
ここでは、熱浴層の熱浴線材が純銅製である場合について説明する。なお、上記のように、熱浴線材が純銅製である場合の熱容量はリン青銅製である場合とさほど違わない(熱伝導度はリン青銅製よりも高くなる。)。
この場合、熱浴層6を構成する熱浴線材は純銅製であるため、冷却熱浴として機能するだけでなくフォーマと同様に電流のバイパスとしても機能し得る。熱浴線材の寸法(幅2.1mm、厚さ0.2mm)と数(60本)から計算される総断面積は約25mmであり、フォーマの断面積300mmとあわせてバイパスの断面積が約325mmになる。
そのため、バイパスがフォーマのみの場合に比べて短絡通電時のバイパス部の電流密度や電圧降下が約8%低下する。その結果、高温超電導線材1本あたりの総発熱量は8.9J/mとなる(ただし温度上昇による臨界電流の低下の効果は考慮されていない。)。
また、熱浴線材の熱浴としての機能により、高温超電導線材の熱容量が実質的に(すなわち高温超電導線材+熱浴線材として)長さあたり1.44J/K・mまで上昇する。ただし、発熱に関してこの熱浴線材でのジュール発熱が加わることになり、その分が1本あたり約2.7J/mとなる。
これらを考慮して高温超電導線材の温度上昇を計算すると、8.1Kとなる。そして、この場合も温度上昇による臨界電流の低下の効果が期待できるが、上記の比較例1の場合よりも温度上昇が少ない分、その効果は小さくなる。仮にその効果による総発熱量の減少が2割あったとすると、高温超電導線材の温度は短絡通電により6~7K上昇することになる。
そして、この場合は、上記のように短絡通電で高温超電導線材の温度が上昇するとそれに伴って熱浴線材の温度も上昇するため、熱浴線材が高温超電導線材とほぼ同じ温度に加熱されている。
そのため、この後の冷却効果は期待できないため、冷媒による冷却が送電の継続による高温超電導線材での発熱を上回らない限り、超電導導体層の超電導性を回復することができないことになる。
[実施例]
次に、前述した実施例における構成を有する高温超電導ケーブル1において、短絡通電が生じたときの温度挙動のシミュレーションの結果を示す。
この場合、熱浴層6の熱浴線材61はリン青銅製の線材であるため、上記のように電流のバイパスにはならない。そのため、電圧降下を引き下げる効果はないが、熱浴線材61でのジュール発熱はない。
また、この場合、熱抵抗性部材20としてポリイミドテープが多層巻回されているため、短絡通電程度の短い間(0.6秒間)には熱浴としての機能をほとんど示さない。したがって、短絡通電直後の高温超電導線材51の温度上昇は、熱浴層がない上記の比較例1の場合と同程度、すなわち10K程度と見積もることができる。
また、前述したように、ポリイミドテープの積層界面が無視できない熱抵抗を持っているため熱抵抗性部材20全体の単位長さあたりの熱抵抗は6K・m/Wであると考えられる。そして、上記のように10Kの温度差が生じると、熱抵抗性部材20を介して高温超電導線材51から熱浴線材61に1.7W/mの熱の移動があることになる。
そして、0.6秒の短絡通電により10Kの温度差が形成されるとき、その間に移動する熱の総量は0.5J/m(=1.7W/m×0.6s÷2)と算出される。
液体窒素温度における熱浴線材61(リン青銅製、幅2.1mm、厚さ0.2mm)の単位長さ当たりの熱容量は0.84J/K・mである。これに熱抵抗性部材20の熱容量が加わった熱浴線材61と熱抵抗性部材20の熱容量の合計が1J/K・mであったとすると、短絡通電中の0.6秒間に、熱浴線材16の温度は0.5K上昇する。
なお、高温超電導線材51の基板金属条53(図2参照)が鉄系合金で形成されている場合、上記の比較例1で算出したように高温超電導線材51の単位長さあたりの熱容量は0.6J/K・mになる。そのため、上記のように短絡通電中の0.6秒間に1J/mの熱量が高温超電導線材51から奪われると、高温超電導線材51の温度上昇は1K近く抑えられることになる。
しかし、上記のように短絡通電後も当該高温超電導ケーブル1での通常の送電が継続する場合、短絡通電よりも長い時間(例えば数秒)で見れば、熱浴線材61(熱浴層6)は十分に熱浴として機能し、加熱された高温超電導線材51から熱抵抗性部材20を介して熱を奪う。
仮に10K分の温度上昇をもたらす熱量を高温超電導線材51と熱浴線材61とで分け合うとすると、高温超電導線材51と熱浴線材61の短絡通電前と比べた温度上昇は、数秒後には4Kよりも小さくなる。なお、この間、高温超電導ケーブル1に定格電流分の送電が継続しているため、その分の発熱が生じる。しかし、電流の大きさが短絡通電時の1/10で発熱は1/60以下となり、時間を短絡通電の10倍(6秒)としても温度上昇は短絡通電時の1/6以下である。それらを考慮すると、高温超電導線材51の温度上昇は4Kから多くても5K程度と見積もられる。
以上のように、この実施例では、短絡通電による高温超電導線材51の温度上昇は4~5K程度になり、短絡通電による高温超電導線材51の温度上昇を、上記の比較例1(9.6K)に比べると5K程度、上記の比較例2(6~7K)に比べても2K程度低く抑えることが可能となる。
そのため、冷媒による冷却が、高温超電導線材51がより高温になる比較例1、2の場合よりも容易に行われ、超電導導体層5の超電導性が(多少時間がかかるとしても)確実に回復される。
[熱浴層を低電気伝導性の金属で形成することについて]
なお、前述した比較例2で述べたように、熱浴層6(熱浴線材61)を銅等の高電気伝導性の金属で形成すると、短絡通電時にフォーマ4とともに熱浴層6にも電流が流れて発熱し、超電導導体層5と熱浴層6での総発熱量が増大してしまい、熱浴層6による超電導導体層5の冷却を阻害してしまう可能性がある。
そのため、熱浴層6(熱浴線材61)を、前述したリン青銅等の低電気伝導性の金属で形成することが望ましい。このように構成すれば、短絡通電時に熱浴層6に流れる電流を小さく抑え、熱浴層6では発熱しないようにすることが可能となる。
[高温超電導線材と常電導体との電気的な接触について]
ところで、前述したように、高温超電導ケーブル1を製造する際、フォーマ4の外側に整形用のカーボン紙を1枚又は複数枚巻き付け、カーボン紙の外周に高温超電導線材51を巻回させて超電導導体層5を形成する場合がある。
そして、カーボン紙は、一般的には導電性と認識されているが、液体窒素温度付近における超電導導体層5の超電導性や銅製のフォーマ4の電気伝導度に比べるとカーボン紙の電気伝導度は非常に小さく、実質的に電気絶縁体と見なすことができる。
一方、実際に高温超電導ケーブル1を敷設する際、例えば図7にイメージ的に示すように、高温超電導ケーブル1の端部同士を中間接続部(ジョイント部等ともいう。)Aで接続しながら高温超電導ケーブル1を延伸するようにして敷設される。また、高温超電導ケーブル1の末端部には終端接続部Bが設けられる。
そして、高温超電導ケーブル1の超電導導体層5(高温超電導線材51)とフォーマ4は、中間接続部Aや終端接続部Bでは例えば半田付けされる等して互いに電気的に接触されるが、それ以外の部分(すなわち前述した中間接続部A同士の間の区間や中間接続部Aと終端接続部Bとの間の区間)では、上記のようにカーボン紙が介在しているため互いに電気的に接触しないように構成される場合がある。なお、中間接続部Aの設置間隔は、例えば数百mから数km間隔とされる。
いま、仮に中間接続部Aの設置間隔が500mの区間で短絡通電事故が発生して、高温超電導ケーブル1に過電流が流れると、超電導導体層5から溢れた電流が、当該区間の高温超電導ケーブル1のフォーマ4に流れる。そして、フォーマ4には電気抵抗と電流に応じた電圧降下が生じるが、キルヒホッフの法則により、フォーマ4と並列構造になっている超電導導体層5にも同じ電圧降下が生じる。
しかし、この場合、当該区間が500mと長いため、フォーマ4で生じる電圧降下が大きくなり、超電導導体層5に生じる電圧降下も大きくなる。これが超電導性の回復の遅れた領域に集中するとそこでの発熱量が大きくなり、その結果、超電導導体層5が超電導性を全領域で完全に回復することが困難となる。
そのため、高温超電導ケーブル1では、超電導導体層5を構成する高温超電導線材51と金属製のフォーマ4とが短い間隔で電気的に接触していることが望ましい。すなわち、具体的には、高温超電導線材51と、フォーマ4とが、中間接続部Aの設置間隔よりも短い間隔で電気的に接触していることが望ましい。
そして、高温超電導線材51とフォーマ4とが短い間隔で電気的に接触していれば、高温超電導線材51と並列構造になるフォーマ4の長さが短くなり、並列構造の部分のフォーマ4で生じる電圧降下の大きさが小さくなるため、この並列構造の部分の高温超電導線材51に生じる電圧降下も小さくなり発熱量が小さくなる。そのため、短絡通電事故で超電導導体層5の超電導性が一旦失われたとしても超電導性を回復しやすくなる。
また、高温超電導線材51とフォーマ4とを短い間隔で電気的に接触させるためには、例えば、以下のように構成することが可能である。
前述したように、フォーマ4の外周等にカーボン紙を巻回する理由は、カーボン紙で円筒面を形成することであるため、通常、高温超電導線材51をフォーマ4に巻回する場合(例えば図1参照)などと比べてカーボン紙テープがフォーマ4にきついらせんピッチで巻回される。1本又は2本の少数のカーボン紙テープを巻回させることが多い。
そして、フォーマ4の外周にカーボン紙テープを巻回する際、隣接するらせんの間に1cm程度の隙間を設ければ、その隙間を介してカーボン紙テープの外周に巻回される高温超電導線材51と内側のフォーマ4とを電気的に接触させることができる。
例えば、図8に示すように、2本の幅20mmのカーボン紙テープ21A、21Bをフォーマ4に巻回する際、2本のカーボン紙テープ21A、21Bを隣接させて巻回するとともに、フォーマ4の長手方向に幅10mmの隙間αを設けるようにしてフォーマ4に巻回する。
このように巻回すると、あたかもフォーマ4の長手方向に50mmの周期構造をもち、そのうち10mm分の隙間αの部分で内側のフォーマ4が外側に露出している状態になる。そのため、このカーボン紙テープ21A、21Bの外周に高温超電導線材51を巻回させれば、隙間αを介して高温超電導線材51とフォーマ4とを電気的に接触させることが可能となる。
また、図示を省略するが、カーボン紙テープ21と同程度の厚さ(~0.1mm)の銅箔テープを、この隙間の部分に位置するようにフォーマ4に巻回させれば、銅箔テープを介してより確実にフォーマ4と外側の高温超電導線材51との電気的な接触を得ることが可能となる。
なお、熱浴層6や熱抵抗性部材20が高温超電導線材51の外側に設けられている場合は、上記のように構成すれば、高温超電導線材51とフォーマ4とが直接あるいは銅箔テープを介して電気的に接触するようになるため、高温超電導線材51とフォーマ4とを短い間隔で電気的に接触させることが可能となる。
しかし、熱浴層6や熱抵抗性部材20が高温超電導線材51の内側に設けられている場合は、上記のように構成しても、高温超電導線材51とフォーマ4の間や高温超電導線材51と銅箔テープとの間に熱浴層6や熱抵抗性部材20が介在する状態になるため、高温超電導線材51とフォーマ4とを直接あるいは銅箔テープを介して電気的に接触させることができない。
そこで、この場合は、例えば、上記の構成例2の構成を採用して(ただし熱浴層6や熱抵抗性部材20は高温超電導線材51の内側に設けられている。)、上記のように熱浴線材61を30本ずつ並べて1層分の熱浴層6を形成する場合、例えば図9に示すように、そのうち所定本数(例えば2、3本)の熱浴線材61(及び熱抵抗性部材20)を高電気伝導性の金属条62で差し替えるように構成することが可能である。なお、図9ではフォーマ4は熱浴線材61や熱抵抗性部材20の内側にある。
このように構成すれば、高温超電導線材51は、内側の所定本数の高電気伝導性の金属条62を介して、あるいは内側の所定本数の高電気伝導性の金属条62と銅箔テープを介して、フォーマ4と電気的に接触するようになるため、高温超電導線材51とフォーマ4とを短い間隔で電気的に接触させることが可能となる。
その際、カーボン紙テープと高電気伝導性の金属条62とが直角に近い角度で交わるように構成することが好ましい。
また、超電導導体層5を複数層で構成する際、超電導導体層5とその外側の超電導導体層5との間に整形用のカーボン紙テープが巻回される場合があるが、その際も上記と同様に隙間を持たせて巻回させるとともに、銅箔テープを設けたり、熱浴線材61等の一部を高電気伝導性の金属条62で差し替えたりすることで、各層の超電導導体層5をフォーマ4と直接あるいは間接的に電気的に接触させることが可能となる。
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記の実施例における構成では、熱浴線材16(リン青銅線材)にポリイミドテープを延べ10枚巻回して熱抵抗性部材20を形成した場合を示したが、ポリイミドテープを巻回する枚数は少なくてもよい(例えば4枚等)。
また、上記の実施形態や実施例では、熱抵抗性部材20を、熱浴層6を構成する熱浴線材61ごとに設ける場合について説明したが、熱浴線材61とは独立に設けるように構成することも可能である。
例えば、図示を省略するが、フォーマ4の外周にカーボン紙21(例えば図8参照)を巻回し、その外周に高温超電導線材51を巻回して超電導導体層5を形成し、その外周にポリイミドテープ等を巻回して熱抵抗性部材20を設け、その外周に、ポリイミドテープに平行でない状態で熱浴線材61を巻回して熱浴層6を形成することが可能である。
また、超電導導体層5を例えば2層構成とする場合には、例えば、上記のようにして内側の線材配列層の外周に形成した熱浴層6の外周に、さらに、熱浴線材61に平行でない状態でポリイミドテープ等を巻回して熱抵抗性部材20を設け、その外周に高温超電導線材51を巻回して外側の配列層を形成するように構成することが可能である。
なお、上記のポリイミドテープ等に替えて、例えば半合成紙やクラフト紙、カーボン紙等を巻回して熱抵抗性部材20を設けてもよい。また、電気的な接触が必要である場合は、隙間に銅箔テープを巻回させる等することも可能であることは前述した通りである。
1 高温超電導ケーブル
4 フォーマ(フォーマ、常電導体)
5 超電導導体層
7 電気絶縁層
6 熱浴層
20 熱抵抗性部材
51 高温超電導線材
61 熱浴線材(金属線材)
62 金属条(常電導体)
A 中間接続部

Claims (8)

  1. 金属製のフォーマと、前記フォーマの外周に設けられた超電導導体層と、前記超電導導体層の外周に設けられた電気絶縁層とを備え、それらが冷媒の流通により冷却される高温超電導ケーブルにおいて、
    前記超電導導体層の外側に、前記超電導導体層の熱を吸収するための熱浴層が設けられており、
    前記超電導導体層を構成する高温超電導線材が、熱抵抗性部材を介して前記熱浴層と面接触していることを特徴とする高温超電導ケーブル。
  2. 前記熱浴層は、前記超電導導体層の内側にも設けられていることを特徴とする請求項1に記載の高温超電導ケーブル。
  3. 前記熱抵抗性部材は、有機高分子材料を含むテープ又は不織布シートで構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高温超電導ケーブル。
  4. 前記熱浴層は、金属線材で構成されており、前記金属線材が前記熱抵抗性部材で巻回されていることを特徴とする請求項に記載の高温超電導ケーブル。
  5. 前記熱浴層は、低電気伝導性の金属で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブル。
  6. 前記熱浴層は、金属線材で構成されており、高温超電導ケーブルの延在方向に直交する方向の前記金属線材の断面積が、前記高温超電導線材の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブル。
  7. 前記熱浴層は、金属線材で構成されており、前記金属線材が前記高温超電導線材と6度未満の角度を有するように配設されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブル。
  8. 前記高温超電導線材と高温超電導ケーブル内の常電導体とが、高温超電導ケーブル同士を接続して高温超電導ケーブルを延伸するための中間接続部の設置間隔よりも短い間隔で電気的に接触していることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブル。
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