以下、第1の実施の形態の計測装置について説明する。図1は、第1の実施の形態の計測装置の概略構成図である。図2は、比較例の計測処理の一例を示す図である。なお、図1の計測装置は一例を示すものであり、図で示した構成に限定されない。
図1に示すように、計測装置1は、配管10の外面11に超音波プローブ20を設置して、超音波プローブ20による超音波の送受信によって配管10内の流体15の密度を計測するように構成されている。配管10は、例えば、所定の厚みを持った円筒状に形成されており、配管10内は測定対象である流体15で満たされている。超音波プローブ20は、いわゆる二振動子垂直型の探触子であり、音響絶縁板(不図示)を挟んで一対の超音波振動子21a、21bと一対の楔22a、22bを並列に設けて構成されている。超音波プローブ20は、超音波振動子21a、21bから楔22a、22bに超音波を印加して配管10内に超音波を入射させている。
このとき、超音波プローブ20では、超音波振動子21a、21bの僅かに傾いた入射角が配管10の外面11の垂線を基準に対象になっている。このため、一対の超音波振動子21a、21bのいずれか一方から出射された超音波が流体15を通過して配管10の内面12で反射し、一対の超音波振動子21a、21bのいずれか他方に入射される。配管10の外面11には、管壁を伝搬するノイズ成分を吸収するノイズ吸収体16が設置されている。ノイズ吸収体16は、超音波ノイズを吸収減衰させるためのもので、主に超音波の信号振幅の小さな場合、例えば流体15が気体の場合に効果的に機能する。
超音波振動子21aにはスイッチ部24aを介して送信部25及び受信部26が接続され、超音波振動子21bにはスイッチ部24bを介して送信部25及び受信部26が接続されている。送信部25は超音波振動子21a、21bのいずれか一方に送信信号を入力して超音波信号を発生させ、受信部26は超音波振動子21a、21bのいずれか他方で超音波信号を受けて受信信号を受信する。スイッチ部24a、24bによって超音波振動子21a、21bの接続先が送信部25又は受信部26に交互に切り替えられることで、一組の超音波振動子21a、21bが受信センサ又は送信センサとして機能する。
受信部26で受信信号が受信されると、増幅及びフィルタされて受信信号が計測処理部30に出力される。計測処理部30は、データ記憶部40に記憶されているパラメータを参照し、受信部26からの受信信号に基づいて流体15の密度を算出している。計測処理部30、データ記憶部40、送信部25、受信部26、スイッチ部24a、24bには制御部27が接続されている。制御部27は、計測装置1の各部を統括制御している。例えば、制御部27は、計測処理部30で算出された流体15の密度を外部装置(不図示)に出力すると共に、外部装置からデータ記憶部40に既知のパラメータを入力している。
なお、制御部27、計測処理部30、データ記憶部40は、各種処理を実行するプロセッサやメモリ等で構成されている。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。メモリには、計測装置1に流体15の密度の算出処理等の各種処理を実行させるプログラムが記憶されている。送信部25は増幅回路等の各種回路で構成され、受信部26は増幅回路及びフィルタ回路等の各種回路で構成されている。また、計測処理部30及びデータ記憶部40の詳細構成については後述する。
一般に、配管内の流体の密度を確認するためにはバルブ等を開いて流体を取り出す必要があるが、配管の内圧が高い場合等には流体を容易に取り出すことができない。技量の高い作業者になると、配管を叩いた打音によって配管の外側から流体の密度を確認することができるが、経験の浅い作業者では流体の密度を確認することは難しい。このため、未知の流体であっても流体の音響インピーダンスと音速を求めることができる点に着目し、配管の外側から超音波を使用して求めた流体の音響インピーダンスと音速から密度を算出する方法が検討されている。
音響インピーダンスは、物質の密度と音速の積で表される。楔の音響インピーダンスZwは、楔の密度をρw、楔内の超音波の音速をCwとすると次式(1)で表される。同様に、配管の音響インピーダンスZpは、配管の密度をρp、配管内の超音波の音速をCpとすると次式(2)で表される。流体の音響インピーダンスZfは、流体の密度をρf、流体内の超音波の音速をCfとすると次式(3)で表される。ρw、Cw、ρp、Cpは既知のパラメータであるため、Zw、Zpを求めておくことができる。これら既知のパラメータは密度の算出時に参照できるように事前に記憶されている。
(1)
Zw=ρw・Cw
(2)
Zp=ρp・Cp
(3)
Zf=ρf・Cf
超音波振動子から楔に向かう超音波の信号振幅Bは、予め計測されて既知のパラメータとして記憶されている。楔から配管に向かう超音波の透過率Qwpは、次式(4)で表される。配管から流体に向かう超音波の透過率Qpfは、次式(5)で表される。配管の内面で反射した超音波の反射率Rfpは、次式(6)で表される。流体から配管に向かう超音波の透過率Qfpは、次式(7)で表される。最後に配管から楔に向かう超音波の透過率Qpwは、次式(8)で表される。楔から超音波振動子に向かう透過率Qwvは、予め計測されて既知のパラメータとして事前に記憶されている。
(4)
Qwp=2・Zp/(Zp+Zw)
(5)
Qpf=2・Zf/(Zf+Zp)
(6)
Rfp=(Zp-Zf)/(Zp+Zf)
(7)
Qfp=2・Zp/(Zp+Zf)
(8)
Qpw=2・Zw/(Zw+Zp)
このとき、Qwpに含まれるZp、Zwは既知のパラメータであるため、Qwpを求めておくことができる。Qpf、Rfp、Qfpには未知のパラメータであるZfが含まれている。Qpwに含まれるZp、Zwは既知のパラメータであるため、Qpwは既知のパラメータとして求めておくことができる。そして、超音波振動子、楔、配管、流体を伝搬して配管の内面で反射し、流体、配管、楔、超音波振動子を伝搬した超音波の信号振幅Aは次式(9)で表される。式(9)の中で未知のパラメータはZfだけなので、受信信号の信号振幅Aを検出することでZfを算出することが可能になっている。
(9)
A=B・Qwp・Qpf・Rfp・Qfp・Qpw・Qwv
また、送信信号の出力から受信信号の入力までの時間を計測して超音波の総伝搬時間Tが検出される。また、超音波の総伝搬時間Tは、楔内伝搬時間をTw、配管内伝搬時間をTp、流体内伝搬時間をTf、信号の遅れ時間をTlとすると次式(10)で表される。Tlは、装置内の各種回路や超音波振動子で生じる遅れ時間であり、既知のパラメータとして求めておくことができる。
(10)
T=2(Tw+Tp+Tf)+Tl
Twは、楔内の超音波の音速をCw、楔内の伝搬距離をLwとすると、次式(11)で表される。Cw、Lwは既知のパラメータであるため、Twを予め求めておくことができる。Tpは、配管外径をDo、配管内径をDi、配管内の超音波の音速をCpとすると、次式(12)で表される。Doは測定可能であるが、Diは直接測定することが難しい。この場合、Diとして規格で定まった公称値を使用してもよいし、超音波厚さ計等を使用して配管厚さTHpを実測して、次式(13)から求めてもよい。したがって、Do、Di、Cpは既知のパラメータであるためTpを求めておくことができる。上記の式(10)の中で未知のパラメータはTfだけなので、総伝搬時間Tを検出することでTfを算出することが可能になっている。
(11)
Tw=Lw/Cw
(12)
Tp=(Do-Di)/(2・Cp)
(13)
Di=Do-2・THp
また、流体内の超音波の音速Cfは、配管の内径をDi、流体内伝搬時間をTfとすると、次式(14)で表される。このように、未知のパラメータであるZf、Cfが求められることで、上記した式(3)を変形した式(15)によって流体の密度ρfが求められる。
(14)
Cf=Di/Tf
(15)
ρf=Zf/Cf
ところで、上記の算出方法では、流体の密度を算出することができるものの、超音波の減衰までは考慮されていない。超音波は流体を伝搬する間に減衰しており、超音波の減衰によって信号振幅Aが減少するため、十分な精度で流体の密度を算出することができない。また、式(10)に示すように、Tfの算出時にはTw、Tp、Tlといった既知のパラメータに含まれる誤差の影響を受けてしまう。このように、単一の超音波の信号振幅を用いた方法では、減衰や既知のパラメータの誤差によって流体の密度の計測精度に限界があった。
この場合、図2の比較例に示すように、超音波プローブ100a、100bと一体になった専用配管101を用いることで、流体15の密度の測定精度を向上させることが可能である。専用配管101が大径部102と小径部103を連ねて形成されており、大径部102と小径部103にそれぞれ超音波プローブ100a、100bが取り付けられている。超音波プローブ100aからの超音波は流体15を伝搬して大径部102の内面で反射して超音波プローブ100aで受信され、超音波プローブ100bからの超音波は流体15を伝搬して小径部103の内面で反射して超音波プローブ100aで受信される。これら伝搬距離が異なる2つの超音波の信号振幅、伝搬時間差を利用することで、超音波の減衰の影響、既知のパラメータに含まれる誤差の影響を無くしている。
比較例に示す専用配管101は、大径部102及び小径部103の配管径の違いによって2つの超音波の伝搬距離の差分を作り出している。このため、既設配管内の流体15の密度を測定するためには、配管工事を実施して既設配管の途中に専用配管101を取り付けなければならない。また、専用配管101の配管径の変わり目では流体15の流れが乱れるため、超音波プローブ100a、100bを専用配管101の延在方向に十分に離して取り付ける必要がある。このため、専用配管101が大型化するという不具合がある。このように、超音波プローブ100a、100bの専用配管101を既設配管に適用して流体15の密度を計測することが困難になっていた。
そこで、本実施の形態の計測装置1(図1参照)では、配管10内での反射回数によって超音波の伝搬距離の違いを出せる点に着目し、反射回数の異なる複数の超音波を用いて流体15の減衰を考慮した密度を計測可能な計測処理部30を設けている。配管10の径を変える必要がないため、比較例に示すような専用配管101を使用することなく、既設配管の外面に対して超音波プローブ20を設置するだけで、配管10内の流体15の密度を精度良く計測することが可能になっている。
以下、図3から図5を参照して、計測装置による密度計測について詳細に説明する。図3は、第1の実施の形態の計測処理部及びデータ記憶部のブロック図である。図4は、第1の実施の形態の計測処理の一例を示す図である。図5は、第1の実施の形態の計測処理の他の一例を示す図である。なお、図3の計測処理部及びデータ記憶部は一例を示すものであり、図で示した構成に限定されない。
図3及び図4に示すように、計測処理部30には、配管10内で反射回数が異なる複数の超音波の信号振幅を検出する振幅検出部31と、複数の信号振幅から流体15の音響インピーダンスを算出するインピーダンス算出部32とが設けられている。また、計測処理部30には、配管10内の流体15を伝搬する超音波の伝搬時間を検出する伝搬時間検出部33と、超音波の伝搬時間から流体15を伝搬する超音波の音速を算出する音速算出部34とが設けられている。さらに、計測処理部30には、音響インピーダンスと音速によって配管10内の流体15の密度を算出する密度算出部35が設けられている。
データ記憶部40には、パラメータ記憶部41が設けられている。パラメータ記憶部41には、計測処理部30によって適宜読み出される既知のパラメータが記憶されている。既知のパラメータとしては、既知の密度ρw、ρp、既知の音速Cw、Cp、既知の音響インピーダンスZw、Zp、既知の透過率Qwp、Qpw、Qwv、既知の超音波の信号振幅B、配管10の外径Do、内径Di、既知の時間Tw、Tp、Tl等が必要に応じて記憶されている。なお、データ記憶部40には、後述する補正係数記憶部42、温度補正データ記憶部43が設けられていてもよい。
振幅検出部31には、受信部26で複数の超音波が受信されて、受信部26から入力された受信信号に応じて複数の超音波の信号振幅が検出される。この場合、超音波振動子21aから配管10に超音波が出力されると、配管10の内面12で超音波の反射が繰り返されて、反射回数の異なる超音波が超音波振動子21bを介して受信部26で受信される。受信部26で異なるタイミングで複数の超音波を受信することで、受信部26から振幅検出部31に伝搬距離が異なる複数の超音波の信号振幅が出力される。振幅検出部31では、配管10内で1回反射された超音波Sc、配管10内で3回反射された超音波Sdの信号振幅Ac、Adが検出される。
インピーダンス算出部32では、複数の超音波Sc、Sdの信号振幅Ac、Adを用いて、流体15内での減衰を補正した音響インピーダンスが算出される。この場合、超音波の減衰は、信号振幅をA、減衰定数をα、伝搬距離をd、減衰が無い状態の信号振幅をA0とすると、次式(16)で表される。超音波Scは、超音波振動子21a、楔22a、配管10、流体15を伝搬して配管10の内面12で反射し、流体15、配管10、楔22b、超音波振動子21bに入射する。信号振幅Acは減衰が無い状態では上記式(9)で表され、A0を用いると次式(17)で表される。また、信号振幅Acは減衰を考慮すると、超音波Scが配管10の内径を1往復するため、伝搬距離dが2Diとなって次式(18)で表される。
(16)
A=A0・e-2αd
(17)
A0=B・Qwp・Qpf・Rfp・Qfp・Qpw・Qwv
(18)
Ac=A0・e-4αDi
超音波Sdは、超音波Scの一部が配管10内で更に一往復して、配管10の内面12で3回反射したものである。すなわち、超音波Sdは、超音波振動子21a、楔22a、配管10、流体15を伝搬して配管10の内面12で3回反射し、流体15、配管10、楔22b、超音波振動子21bに入射する。このため、減衰が無い状態の信号振幅をAd0とすると次式(19)で表される。また、信号振幅Adは減衰を考慮すると、超音波Sdが配管10の内径を2往復するため、伝搬距離dが4Diとなって次式(20)で表される。
(19)
Ad0=B・Qwp・Qpf・Rfp3・Qfp・Qpw・Qwv
=A0・Rfp2
(20)
Ad=Ad0・e-8αDi
=A0・Rfp2・e-8αDi
式(18)と式(20)の連立方程式の未知のパラメータはZfとαの2つであり、A0の未知のパラメータはZfであるため、これを解くことで超音波の減衰の影響を補正した形でZfが求められる。このように、インピーダンス算出部32は、反射回数が異なる超音波の複数の信号振幅を用いて、流体15内での減衰を補正した音響インピーダンスを算出している。ここでは、1回反射した超音波Sc、3回反射した超音波Sdを一例として説明したが、反射回数が異なる超音波を用いることで同様に減衰の影響を補正することが可能である。
伝搬時間検出部33は、伝搬距離が異なる複数の超音波Sc、Sdの総伝搬時間を検出している。この場合、制御部27(図1参照)で送信部25に送信タイミングが制御されるが、送信部25の送信タイミングに合わせて伝搬時間検出部33で伝搬時間の検出が開始される。超音波の送信タイミングを基準に、受信部26から超音波Sc、Sdの受信信号が入力されるまでの総伝搬時間がそれぞれ計測される。そして、流体内伝搬時間Tfは、超音波Scの総伝搬時間をTc、超音波Sdの総伝搬時間をTdとすると、次式(21)で表される。式(10)のように、Tw、Tp、Tlといった既知のパラメータを使用しないため、これらパラメータに含まれる誤差の影響を受けることがない。
(21)
Tf=(Td-Tc)/2
音速算出部34では配管10の内径Di、流体内伝搬時間Tfから上記の式(14)によって流体15内の超音波の音速Cfが算出される。また、密度算出部35では音響インピーダンスZf、流体15内の超音波の音速Cfから上記の式(15)によって流体15の密度ρfが算出される。計測装置1では、2つの超音波Sc、Sdの反射回数の違いから伝搬距離差を作り出して、超音波Sc、Sdの信号振幅Ac、Adから流体15の密度を精度良く計測している。既設配管の外面に超音波プローブ20を設置すればよく、比較例に示す専用配管101(図2参照)を用意して配管工事を実施する必要もない。
このように構成された計測装置1(図1参照)では、配管10の外面11に超音波プローブ20が設置され、超音波プローブ20の一方の超音波振動子21aから超音波が出力される。超音波振動子21aから出力された超音波は楔22a、配管10に伝搬し、さらに配管10から流体15を透過して配管10の内面12で反射される。配管10の内面12で反射した超音波は流体15を透過し、配管10、楔22bに伝搬して超音波Scとして超音波振動子21bに入力される。超音波Scの一部は、配管10内で反射を繰り返して1往復した後に、配管10、楔22bに伝搬して超音波Sdとして超音波振動子21bに入力される。
超音波振動子21bに超音波Scが受信されると、振幅検出部31で受信信号の信号振幅が検出される。その後、超音波振動子21bに超音波Sdが受信されると、振幅検出部31で受信信号の信号振幅が検出される。インピーダンス算出部32で、パラメータ記憶部41から既知のパラメータを読み出しながら、超音波Sc、Sdの信号振幅から減衰を考慮した流体15の音響インピーダンスが算出される。一方で、伝搬時間検出部33で超音波Sc、Sdの総伝搬時間の時間差から流体内伝搬時間が算出され、音速算出部34で流体内伝搬時間から流体15内の超音波の音速が算出される。
そして、密度算出部35で音響インピーダンスと音速から流体15の密度が算出される。この場合、単一の超音波プローブ20内に一対の超音波振動子21a、21bが内包されているため、配管10に対する設置作業を簡略化することができる。また、超音波プローブ20内の一方の超音波振動子21aが送信センサとして機能するときは、他方の超音波振動子21bが受信センサとして機能している。超音波プローブ20には送信センサと受信センサの間に音響絶縁板もあることから、送信センサの残響が受信センサに影響を与えることがなく精度が高められている。
また、配管10の外面11に超音波プローブ20を設置する際に、配管10の形状や表面状態等によって超音波Sc、Sdの信号振幅に誤差が生じる場合がある。このため、本実施の形態では、予め密度が判っている既知の流体で算出した補正係数を用いて、複数の超音波Sc、Sdの信号振幅を補正してもよい。この場合、既知の流体で超音波の信号振幅の実測値と流体内伝搬時間が検出される。式(14)によって流体内伝搬時間から流体内の音速が算出され、式(15)によって音速と既知の密度から音響インピーダンスが算出される。そして、式(9)によって超音波の信号振幅の理論値が求められる。
この超音波の信号振幅の理論値が本来の振幅であるが、実際には理論値と異なる実測値が検出されている。これは、配管10の形状等によって超音波の信号振幅が理論値から実測値に変化したことを示している。この変化の割合は一定であり、音波の信号振幅の理論値をAt、実測値をAsとすると超音波の信号振幅がAs/At倍されるように変化している。この誤差を補正するために、補正係数At/Asを用いて式(17)が次式(22)に置き換えられる。なお、補正の際に使用する流体は既知である必要があるが、補正係数は流体の種類を問わず使用することができる。補正係数は補正係数記憶部42に記憶され、インピーダンス算出部32によって参照される。インピーダンス算出部32では、補正係数で補正した複数の信号振幅から流体15の音響インピーダンスが算出される。
(22)
A0・At/As=B・Qwp・Qpf・Rfp・Qfp・Qpw・Qwv
また、上記した算出方法では、式(17)や式(22)に示すようにB、Qwvという超音波プローブ20の性能を示すパラメータが必要であり、事前に超音波プローブ20の校正を行ってB、Qwvを求めておかなければならない。また、配管10の外面11に超音波プローブ20を設置する際に、配管10の形状等によって、楔22a、22b、配管10の間の透過率Qwp、Qpwの既知のパラメータに含まれる誤差の影響を受けるおそれがある。このため、本実施の形態では、流体15の手前の配管10の内面で反射した超音波Sbの信号振幅を利用して、さらに誤差を低減するようにしてもよい。
図5に示すように、超音波Sbは、超音波振動子21a、楔22a、配管10を伝搬して配管10の内面で反射し、配管10、楔22b、超音波振動子21bに入射する。配管10の内面で反射した超音波の反射率Rpfは次式(23)で表され、超音波Sbの信号振幅Abは次式(24)で表される。そして、式(24)を式(17)に代入すると式(25)に変形され、式(17)の代わりに式(25)を用いることができる。式(25)にはB、Qwvが含まれず、超音波プローブ20の校正を行ってB、Qwvを求める必要がない。Qwp、Qpw、B、Qwvという既知のパラメータの誤差を無くすことができ、音響インピーダンスの算出精度を向上させることができる。
(23)
Rpf=(Zf-Zp)/(Zf+Zp)
(24)
Ab=B・Qwp・Rpf・Qpw・Qwv
(25)
A0=Qpf・Rfp・Qfp・Ab/Rpf
また、本実施の形態では、反射回数の異なる2つの超音波の信号振幅を用いる構成にしたが、3つ以上の超音波の信号振幅を用いる構成にすることで、さらに計測精度を向上させることができる。配管の内面での超音波の反射回数をkとして、式(18)及び式(20)を一般化すると次式(26)で表される。3つ以上のkに対して式(26)を適用するとk個の連立方程式になるが、未知のパラメータがZfとαの2つなので、未知のパラメータよりも方程式が多くなって厳密解が求めることができない。
(26)
Ak=A0・Rfp(k-1)・e-2(k+1)αDi
この場合には、最小2乗法を適用すると最も誤差が小さくなる解を求めることができ、反射回数kのときの誤差εkが次式(27)で定義される。このとき、3つ以上のkに対する誤差εkの合計Σεkを最小にする解は、Σεkを未知のパラメータZf、αで微分して0になる次式(28)、次式(29)の連立方程式の解である。このように、最小2乗法を適用すると、一般にkの値が大きくなるほどZfの算出精度を向上させることができる。
(27)
εk=(Ak-A0・Rfp(k-1)・e-2(k+1)αDi)2
(28)
δ(Σεk)/δZf=0
(29)
δ(Σεk)/δα=0
以上のように、第1の実施の形態では、配管10内で超音波を反射させることで複数の超音波の伝搬距離に差分を作り出して、伝搬距離が異なる複数の超音波の信号振幅から減衰を考慮した流体15の密度を算出している。よって、配管10の外面11に超音波プローブ20を設置するという簡易な作業で、配管10内の流体15の密度を安全かつ精度良く計測することができる。また、流体15を伝搬する超音波の音速を算出しているため、音速変化による誤差を抑制することができる。
第1の実施の形態では、流体の音響インピーダンスと音速から密度を算出する構成にしたが、この構成に限定されない。流体の減衰定数と音速から密度を算出する構成にしてもよい。以下、図6を参照して、第2の実施の形態の計測装置について説明する。図6は、第2の実施の形態の計測処理部及びデータ記憶部のブロック図である。なお、第2の実施の形態は、第1の実施の形態と計測処理部について相違している。したがって、相違点について詳細に説明する。また、図6の計測処理部及びデータ記憶部は一例を示すものであり、図示した構成に限定されない。第2の実施の形態では流体の種類を予め知っているものとする。
計測処理部50には、配管10内で反射回数が異なる複数の超音波の信号振幅を検出する振幅検出部51と、複数の信号振幅から流体15の減衰定数を算出する減衰定数算出部52とが設けられている。また、計測処理部50には、配管10内の流体15を伝搬する超音波の伝搬時間を検出する伝搬時間検出部53と、超音波の伝搬時間から流体15を伝搬する超音波の音速を算出する音速算出部54とが設けられている。さらに、計測処理部50には、減衰定数と音速によって配管10内の流体15の密度を算出する密度算出部55が設けられている。
データ記憶部60には、パラメータ記憶部61が設けられている。パラメータ記憶部61には、計測処理部50によって適宜読み出される既知のパラメータが記憶されている。既知のパラメータとしては、既知の密度ρw、ρp、既知の音速Cw、Cp、既知の音響インピーダンスZw、Zp、既知の透過率Qwp、Qpw、Qwv、既知の超音波の信号振幅B、配管10の外径Do、内径Di、既知の時間Tw、Tp、Td、粘性係数η、超音波の角周波数ω等が必要に応じて記憶されている。なお、データ記憶部60には、補正係数記憶部62、温度補正データ記憶部63が設けられていてもよい。
減衰定数算出部52では、式(18)と式(20)又は式(28)と式(29)の連立方程式の未知のパラメータはZfとαの2つであり、これを解くことで減衰定数αを求めることができる。減衰定数αは、粘性係数をη、超音波の角周波数をω、流体15内の超音波の音速をCf、流体15の密度をρfとすると、次式(30)で表される。密度算出部55では、式(30)を変形した次式(31)によって、減衰定数αと音速Cfから流体15の密度が計算される。なお、振幅検出部51、伝搬時間検出部53、音速算出部54の各処理については第1の実施の形態と同様である。
(30)
α=η・ω2/(2・Cf3・ρf)
(31)
ρf=η・ω2/(2・Cf3・α)
第2の実施の形態の計測装置でも、補正係数記憶部62に補正係数が記憶され、減衰定数算出部52によって補正係数で補正した複数の信号振幅から流体15の減衰定数が算出されてもよい。また、流体15の手前の配管10の内面で反射する超音波Sbを用いて、減衰定数算出部52でQwp、Qpw、B、Qwvの既知のパラメータの誤差の影響を無くして減衰定数の算出精度を向上させてもよい。さらに、反射回数が異なる3つ以上の超音波の振幅を利用して、減衰定数の算出精度を向上させてもよい。
以上のように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、配管10の外面に超音波プローブ20を設置するという簡易な作業で、配管10内の流体15の密度を安全かつ精度良く計測することができる。
第1、第2の実施の形態では、単一の超音波プローブを使用する構成にしたが、この構成に限定されない。複数の超音波プローブを配管に対して間隔を空けて設置して、超音波に流体を斜め横切らせるようにしてもよい。以下、図7及び図8を参照して、第3の実施の形態の計測装置について説明する。図7は、第3の実施の形態の計測装置を示す図である。図8は、第3の実施の形態の楔、配管、流体の入射角の関係を示す図である。なお、第3の実施の形態では、第1、第2の実施の形態と超音波プローブの設置構成について相違している。したがって、相違点について詳細に説明する。
図7に示すように、配管10の外面11には一対の超音波プローブ70a、70bが斜めに対向して設置されている。各超音波プローブ70a、70bは、楔72a、72bに超音波振動子71a、71bの入射角が向かい合うように取り付けて構成されている。一方の超音波プローブ70aは配管10内の流体15の流れに対して上流側に設置され、他方の超音波プローブ70bは配管10内の流体15の流れに対して下流側に設置されている。超音波振動子71aから楔72a、配管10に超音波が斜めに入射され、超音波が流体15内を斜めに横切って配管10、楔72bを介して超音波振動子71bに受信される。
超音波プローブ70a、70bの配置は、スイッチ部によって送受信が切り換えられる。超音波が流体15を斜めに横切るため、流体15の上流側の超音波プローブ70aから下流側の超音波プローブ70bへの超音波の伝搬時間が短くなる。逆に、流体15の下流側の超音波プローブ70bから上流側の超音波プローブ70aへの超音波の伝搬時間が長くなる。これらの超音波の伝搬時間差が流体15の流れの速度によって変化するため、図示しない伝搬時間差計測部で伝搬時間差を計測することで、流体15の速度から体積流量を求めることが可能になっている。
第3の実施の形態の計測装置でも流体15の密度を計測することが可能である。流体15の密度を計測することで、体積流量と密度から質量流量を求めることも可能になっている。よって、第3の実施の形態では、流体15の密度に加えて、体積流量、質量流量を計測することが可能になっている。ここで、密度の計測について説明する。図8に示すように、楔72a、72bの入射角をθw、配管10の入射角をθp、流体15の入射角をθfとすると、入射角θw、θp、θfはスネル則によって次式(32)の関係がある。式(32)を変形すると、次式(33)、次式(34)で表される。なお、θwは既知のパラメータである。
(32)
Cw/sinθw=Cp/sinθp=Cf/sinθf
(33)
θp=sin-1(Cp・sinθw/Cw)
(34)
θf=sin-1(Cf・sinθw/Cw)
次に、Qwpは次式(35)、Qpfは次式(36)、Rfpは次式(37)、Qfpは次式(38)、Qpwは次式(39)、Tpは次式(40)、Cfは次式(41)でそれぞれ表される。そして、式(41)に式(34)が代入されると次式(42)になる。式(42)の未知のパラメータはCfだけなのでCfを求めることができる。式(4)から式(8)を式(35)から式(39)、式(12)を式(40)、式(14)を式(42)にそれぞれ入れ替えることで、流体15の密度を求めることが可能になっている。
(35)
Qwp=2・Zp・cosθw/(Zp・cosθw+Zw・cosθp)
(36)
Qpf=2・Zf・cosθp/(Zf・cosθp+Zp・cosθf)
(37)
Rfp=(Zp・cosθf-Zf・cosθp)/(Zp・cosθf+Zf・cosθp)
(38)
Qfp=2・Zp・cosθf/(Zp・cosθf+Zf・cosθp)
(39)
Qpw=2・Zw・cosθp/(Zw・cosθp+Zp・cosθw)
(40)
Tp=(Do-Di)/(2・Cp・cosθf)
(41)
Cf=Di/cosθf/Tf
(42)
Cf=Di/cos(sin-1(Cf・sinθw/Cw))/Tf
また、式(23)を式(43)に入れ替えることで、流体15の手前の配管10の内面で反射する超音波Sbを用いて、Qwp、Qpw、B、Qwvの既知のパラメータの誤差の影響を無くして算出精度を向上させることができる。
(43)
Rpf=(Zf・cosθp-Zp・cosθf)/(Zf・cosθp+Zp・cosθf)
超音波Sgは、超音波振動子71a、楔72a、配管10、流体15を伝搬して配管10、楔72b、超音波振動子71bに入射する。減衰が無い状態の超音波の信号振幅A0は、次式(44)で表される。なお、Qwp、Qpf、Qfp、Qpwは、それぞれ式(35)、式(36)、式(38)、式(39)で表される。次に、配管10で反射しない超音波Sgの信号振幅Agは次式(45)で表され、配管10で反射して一往復した超音波Shの信号振幅Agは次式(46)で表される。超音波Shは流体15を斜めに3回横切るため、伝搬距離dが3・Di/cosθfになっている。式(45)と式(46)の連立方程式の未知のパラメータはZfとαの2つなので、これを解くことでZf又はαが求められる。
(44)
A0=B・Qwp・Qpf・Qfp・Qpw・Qwv
(45)
Ag=A0・e-2αDi/cosθf
(46)
Ah=A0・Rfp2・e-6αDi/cosθf
第3の実施の形態でも、3つ以上の超音波の信号振幅を用いることで、さらに測定精度を向上させることができる。式(45)、式(46)の反射回数をkとして一般化すると次式(47)で表される。なお、図7Aはk=0、図7Bはk=2、図7Cはk=4の例を示している。また、最小2乗法を適用すると最も誤差が小さくなる解を求めることができ、反射回数kのときの誤差εkが次式(48)で定義される。そして、上記した式(28)、式(29)の連立方程式の解を求めることで、α及びZfの算出精度を向上させることができる。
(47)
Ak=A0・Rfpk-1・e-2(k+1)αDi/cosθf
(48)
εk=(Ak-A0・Rfpk・e-2(k+1)αDi/cosθf)2
第3の実施の形態の計測装置でも、補正係数で補正した複数の信号振幅から流体15の音響インピーダンス又は減衰定数が算出されてもよい。また、流体15の手前の配管10の内面で反射する超音波Sbを用いて、Qwp、Qpw、B、Qwvの既知のパラメータの誤差の影響を無くして音響インピーダンス又は減衰定数の算出精度を向上させてもよい。
以上のように、第3の実施の形態では、第1、第2の実施の形態と同様に、配管10の外面11に超音波プローブ20を設置するという簡易な作業で、配管10内の流体15の密度を安全かつ精度良く計測することができる。また、流体15の密度に加えて、流体15の体積流量及び質量流量を算出することができる。さらに、超音波の信号振幅を大きくして、伝搬時間の計測精度を高めて密度の算出精度を向上できる場合がある。実際に、発明者が以下のパラメータで超音波の信号振幅を算出したところ、信号振幅が垂直入射の2倍となる結果が得られた。
(共通パラメータ)
楔音速:2730[m/s](材質PVC、縦波)
楔密度:1188[kg/m3](材質PVC)
配管密度:7910[kg/m3](材質SUS)
流体音速:340[m/s](空気)
流体密度:1.2[kg/m3](空気)
(垂直入射)
楔入射角:0[°]
配管音速:6000[m/s](材質SUS、縦波)
(斜め入射)
楔入射角:45[°]
配管音速:3075[m/s](材質SUS、横波)
第1-第3の実施の形態では、計測装置で流体の密度を計測する構成にしたが、この構成に限定されない。計測装置では、流体の密度に加えて圧力を計測してもよい。以下、図9を参照して、第4の実施の形態の計測装置について説明する。図9は、第4の実施の形態の計測処理部及びデータ記憶部のブロック図である。なお、第4の実施の形態は、第1、第2の実施の形態と温度算出部と圧力算出部を備える点で相違している。したがって、相違点について詳細に説明する。また、図9の計測処理部及びデータ記憶部は一例を示すものであり、図示した構成に限定されない。第4の実施の形態では流体の種類を予め知っているものとする。
計測処理部80には、配管10内で反射回数が異なる複数の超音波の信号振幅を検出する振幅検出部81と、複数の信号振幅から流体15の音響インピーダンスを算出するインピーダンス算出部82とが設けられている。また、計測処理部80には、配管10内の流体15を伝搬する超音波の伝搬時間を検出する伝搬時間検出部83と、超音波の伝搬時間から流体15を伝搬する超音波の音速を算出する音速算出部84とが設けられている。さらに、計測処理部80には、音響インピーダンスと音速によって配管10内の流体15の密度を算出する密度算出部85と、音速から配管10内の流体15の温度を算出する温度算出部86と、流体15の密度と温度から圧力を算出する圧力算出部87とが設けられている。なお、計測処理部80にはインピーダンス算出部82の代わりに減衰定数算出部が設けられていてもよい。
データ記憶部90には、パラメータ記憶部91が設けられている。パラメータ記憶部91には、計測処理部80によって適宜読み出される既知のパラメータが記憶されている。既知のパラメータとしては、既知の密度ρw、ρp、既知の音速Cw、Cp、既知の音響インピーダンスZw、Zp、既知の透過率Qwp、Qpw、Qwv、既知の超音波の信号振幅B、配管10の外径Do、内径Di、既知の時間Tw、Tp、Td、粘性係数η、超音波の角周波数ω、比熱比κ、モル気体定数R、モル質量M等が必要に応じて記憶されている。なお、データ記憶部90には、補正係数記憶部92、温度補正データ記憶部93が設けられていてもよい。
また、データ記憶部90には、温度変換データ記憶部94、圧力変換データ記憶部95が設けられている。温度変換データ記憶部94には流体15内の超音波の音速と温度の対応関係を示す温度変換データが記憶されており、圧力変換データ記憶部95には流体15の密度、温度、圧力の対応関係を示す圧力変換データが記憶されている。温度変換データは、超音波の音速と温度の対応関係を示すものであればよく、テーブル形式で記憶されていてもよいし、マップ形式で記憶されていてもよい。同様に、圧力変換データは、流体15の密度、温度、圧力の対応関係を示すものであればよく、テーブル形式で記憶されていてもよいし、マップ形式で記憶されていてもよい。
温度算出部86では、音速算出部84で算出された音速が温度変換データの音速と温度の対応関係に照らし合わされて流体15の温度が算出される。一般に、流体15内の超音波の音速は温度変化が大きく、圧力変化が小さいことが知られている。特に流体15が気体の場合には、温度変換データを参照する代わりに、方程式を使用して流体15の温度を算出することもできる。流体15内の超音波の音速Cfは、比熱比をκ、モル気体定数をR、モル質量をM、流体15の温度をtfとすると次式(49)で表される。式(49)を変形した次式(50)を用いて流体15の温度tfを算出することができる。
(49)
Cf=√(κ・R・tf/M)
(50)
tf=Cf2・M/(κ・R)
圧力算出部87では、密度算出部85で算出された流体15の密度と温度算出部86で算出された流体15の温度が、圧力変換データの密度、温度、圧力の対応関係に照らし合されて流体15の圧力が算出される。特に流体15が気体の場合には、圧力変換データを参照する代わりに、方程式を使用して流体15の圧力を算出することもできる。流体15の圧力Pは、流体15の体積をV、物質量をn、モル気体定数をR、流体15の温度をtfとすると次式(51)で表される。
(51)
P・V=n・R・tf
密度ρfは体積をV、質量をmとすると次式(52)で表され、質量mは物質量をn、モル質量をMとすると次式(53)で表される。式(52)と式(53)から密度ρfが次式(54)で表され、体積Vは式(54)を変形した次式(55)で表される。そして、式(51)に式(55)を代入して圧力Pについて整理すると次式(56)となり、流体15の温度tfと密度ρfから圧力Pを算出することができる。
(52)
ρf=m/V
(53)
m=n・M
(54)
ρf=n・M/V
(55)
V=n・M/ρf
(56)
P=R・tf・ρf/M
第4の実施の形態でも、補正係数で補正した複数の信号振幅から流体15の音響オンピーダンス又は減衰定数が算出されてもよい。この場合、既知の流体で超音波の信号振幅の実測値と流体内伝搬時間が検出される。式(14)によって流体内伝搬時間から流体15内の超音波の音速が算出される。次に音速から温度変換データ又は式(50)を用いて流体15の温度が算出される。さらに既知の流体15の圧力と温度から圧力変換データまたは式(56)を用いて流体15の密度が算出され、式(15)によって音速と既知の密度から音響インピーダンスが算出される。そして、式(9)によって超音波の信号振幅の理論値が求められ、信号振幅の理論値と実測値から求めた補正係数が補正係数記憶部92に記憶される。
また、流体15の手前の配管10の内面で反射する超音波Sbを用いて、Qwp、Qpw、B、Qwvの既知のパラメータの誤差の影響を無くして音響インピーダンス又は減衰定数の算出精度を向上させてもよい。さらに、反射回数が異なる3つ以上の超音波の振幅を利用して、音響インピーダンス又は減衰定数の算出精度を向上させてもよい。また、第3の実施の形態のように、入射角が斜めになるように一対の超音波プローブを対向させて、流体15の圧力に加えて、密度、体積流量、質量流量を計測するようにしてもよい。
以上のように、第4の実施の形態では、第1-第3の実施の形態と同様に、配管10の外面に超音波プローブ20を設置するという簡易な作業で、配管10内の流体15の密度及び圧力を安全かつ精度良く計測することができる。
また、上記した第1-第4の実施の形態において、計測処理部30、50、80で温度特性を持った物性値が補正されてもよい。この場合、第1-第3の実施の形態では、配管外面には外面温度を計測する温度計測部99が設置され、温度計測部99で計測された温度に基づいて温度特性を持った物性値が補正される。第4の実施の形態では、圧力算出の過程で流体15の温度が算出されるため、温度算出部86で算出した温度に基づいて温度特性を持った物性値が補正される。したがって、第4の実施の形態では温度計測部99は不要である。物性値は、密度を算出するのに使用するρw、Cw、ρP、Cp、Td、Lw、Do、Di、η等のパラメータである。各パラメータの温度特性は、データ記憶部40、60、90の温度補正データ記憶部43、63、93に温度補正データとして記憶されており、計測処理部30、50、80によって適宜参照される。なお、温度補正データは、温度と補正値の対応関係を示すものであればよく、テーブル形式で記憶されていてもよいし、マップ形式で記憶されていてもよい。
なお、上記した各実施の形態では、超音波プローブとして二振動子垂直型の探触子や斜角型の探触子を例示したが、この構成に限定されない。超音波プローブは、垂直型の探触子で構成されてもよい。この場合、図10の変形例に示すように、配管10の外面11に単一の超音波プローブ97が設置されてもよいし、図11の変形例に示すように、配管10の外面11に対向するように一対の超音波プローブ98a、98bが設置されてもよい。これらの構成であっても、反射回数の異なる複数の超音波の信号振幅を利用して流体15の密度を精度よく計測することができる。したがって、超音波プローブの構成は特に限定されず、いずれか一方が送信センサとして機能し、いずれか他方が受信センサとして機能する一対の超音波振動子を有する構成にしてもよいし、送信センサ及び受信センサとして機能する単一の超音波振動子を有する構成にしてもよい。
また、上記した各実施の形態では、データ記憶部に補正係数記憶部、温度補正データ記憶部が設けられる構成にしたが、この構成に限定されない。データ記憶部には、補正係数記憶部及び温度補正データ記憶部が設けられていなくてもよい。すなわち、計装装置では補正係数を用いた振幅補正、温度補正データを用いた温度補正が実施されなくてもよい。
また、上記した各実施の形態では、各部の算出処理が上記数式で実施される構成に限定されない。例えば、伝搬時間検出部は、流体を伝搬する超音波の伝搬時間を検出可能であれば、どのような方式で伝搬時間を検出してもよい。インピーダンス算出部は、流体の音響インピーダンスを算出可能であれば、どのような方式で音響インピーダンスを算出してもよい。減衰定数算出部は、減衰定数を算出可能であれば、どのような方式で減衰定数を算出してもよい。音速算出部は、流体を伝搬する超音波の音速を算出可能であれば、どのような方式で音速を算出してもよい。密度算出部は、流体の密度を算出可能であれば、どのような方式で密度を算出してもよい。温度算出部は、流体の温度を算出可能であれば、どのような方式で温度を算出してもよい。圧力算出部は、流体の圧力を算出可能であれば、どのような方式で圧力を算出してもよい。
また、各実施の形態及び変形例を説明したが、他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
また、本実施の形態は上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらに、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
また、本実施の形態では、本開示の技術を配管内の流体の密度計測に適用した構成について説明したが、流量計測が必要な他の流路に適用することも可能である。
下記に、上記の実施の形態における特徴点を整理する。
上記実施の形態に記載の計測装置は、配管の外面に超音波プローブを設置して、配管内の流体の密度を計測する計測装置であって、配管内で反射回数が異なる複数の超音波の信号振幅を検出する振幅検出部と、配管内の流体を伝搬する超音波の伝搬時間を検出する伝搬時間検出部と、複数の信号振幅から流体の音響インピーダンスを算出するインピーダンス算出部と、超音波の伝搬時間から流体を伝搬する超音波の音速を算出する音速算出部と、音響インピーダンスと音速から配管内の流体の密度を算出する密度算出部とを備え、インピーダンス算出部は、複数の信号振幅を用いて超音波の減衰を補正した音響インピーダンスを算出することを特徴とする。
上記実施の形態に記載の他の計測装置は、配管の外面に超音波プローブを設置して、配管内の流体の密度を計測する計測装置であって、配管内で反射回数が異なる複数の超音波の信号振幅を検出する振幅検出部と、配管内の流体を伝搬する超音波の伝搬時間を検出する伝搬時間検出部と、複数の信号振幅から流体の減衰定数を算出する減衰定数算出部と、超音波の伝搬時間から流体を伝搬する超音波の音速を算出する音速算出部と、減衰定数と音速から配管内の流体の密度を算出する密度算出部とを備えることを特徴とする。
これらの構成によれば、配管内で超音波を反射させることで複数の超音波の伝搬距離に差分を作り出して、伝搬距離が異なる複数の超音波の信号振幅から減衰を考慮した流体の密度を算出している。よって、配管の外面に超音波プローブを設置するという簡易な作業で、配管内の流体の密度を安全かつ精度良く計測することができる。また、流体を伝搬する超音波の音速を算出しているため、音速変化による誤差を抑制することができる。
上記実施の形態に記載の計測装置において、インピーダンス算出部は、配管内での反射回数が異なる3つ以上の超音波の信号振幅から音響インピーダンスを算出しており、3つ以上の超音波が反射したときの誤差の合計が最小となるような音響インピーダンスを算出する。この構成によれば、3つ以上の超音波の信号振幅を用いることで、音響インピーダンスの算出精度を向上させることができる。
上記実施の形態に記載の計測装置において、既知の密度の流体を伝搬する超音波の信号振幅の理論値及び実測値から求めた補正係数を記憶する補正係数記憶部を備え、インピーダンス算出部は、補正係数で補正した複数の信号振幅から流体の音響インピーダンスを算出する。この構成によれば、配管の形状等に起因した信号振幅の誤差を抑えて、音響インピーダンスの算出精度を向上させることができる。
上記実施の形態に記載の他の計測装置において、減衰定数算出部は、配管内での反射回数が異なる3つ以上の超音波の信号振幅から減衰定数を算出しており、3つ以上の超音波が反射したときの誤差の合計が最小となるような減衰定数を算出する。この構成によれば、3つ以上の超音波の信号振幅を用いることで、減衰定数の算出精度を向上させることができる。
上記実施の形態に記載の他の計測装置において、既知の密度の流体を伝搬する超音波の信号振幅の理論値及び実測値から求めた補正係数を記憶する補正係数記憶部を備え、減衰定数算出部は、補正係数で補正した複数の信号振幅から流体の減衰定数を算出する。この構成によれば、配管の形状等に起因した信号振幅の誤差を抑えて、減衰定数の算出精度を向上させることができる。
上記実施の形態に記載の計測装置及び他の計測装置において、音速から配管内の流体の温度を算出する温度算出部と、配管内の流体の密度と温度から圧力を算出する圧力算出部とを備えている。この構成によれば、配管の外面に超音波プローブを設置するという簡易な作業で、配管内の流体の密度及び圧力を安全かつ精度良く計測することができる。
上記実施の形態に記載の計測装置及び他の計測装置において、温度算出部で算出された配管内の流体の温度から温度特性を持った物性値を補正する。この構成によれば、配管や超音波プローブ等の物性値の温度変化による誤差を補正して、流体の密度の算出精度を向上させることができる。
上記実施の形態に記載の計測装置及び他の計測装置において、配管外面に設置されて外面温度を計測する温度計測部を備え、温度計測部で計測された外面温度から温度特性を持った物性値を補正する。この構成によれば、配管や超音波プローブ等の物性値の温度変化による誤差を補正して、流体の密度の算出精度を向上させることができる。
上記実施の形態に記載の計測装置及び他の計測装置において、伝搬時間検出部は、複数の超音波の総伝搬時間から配管内の流体を伝搬する超音波の伝搬時間を検出する。この構成によれば、超音波が流体以外を横断する際に生じる誤差を抑えて、流体を伝搬する超音波の伝搬時間の算出精度を向上させることができる。
上記実施の形態に記載の計測装置及び他の計測装置において、超音波プローブは、送信センサ及び受信センサとして機能する単一の超音波振動子を有する。この構成によれば、簡易な構成で流体の密度の算出精度を向上させることができる。
上記実施の形態に記載の計測装置及び他の計測装置において、超音波プローブは、いずれか一方が送信センサとして機能し、いずれか他方が受信センサとして機能する一対の超音波振動子を有する。この構成によれば、超音波の送信と受信が別々の超音波振動子で実施されるため、超音波を送信した際の残響ノイズが受信信号に重なることがなく、流体の密度の算出精度を向上させることができる。